JP2009059787A - 軟磁性材料および圧粉磁心 - Google Patents
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Abstract
【課題】絶縁被膜の耐熱性を向上することにより、ヒステリシス損失を低減する軟磁性材料および圧粉磁心を提供する。
【解決手段】軟磁性材料は、鉄を含む鉄基粒子10と、鉄基粒子10の表面を取り囲む絶縁被膜20とを有する複数の複合磁性粒子30を備えた軟磁性材料である。絶縁被膜は、チタン、アルミニウム、シリコン、カルシウム、マグネシウム、バナジウム、クロム、ストロンチウムおよびジルコニウムからなる群より選ばれた少なくとも一種の物質を有する有機酸由来の有機基を含んでいる。絶縁被膜20の有機酸由来の有機基を介して、絶縁被膜20の少なくとも一種の物質と鉄基粒子10の鉄とが結合している。
【選択図】図1
【解決手段】軟磁性材料は、鉄を含む鉄基粒子10と、鉄基粒子10の表面を取り囲む絶縁被膜20とを有する複数の複合磁性粒子30を備えた軟磁性材料である。絶縁被膜は、チタン、アルミニウム、シリコン、カルシウム、マグネシウム、バナジウム、クロム、ストロンチウムおよびジルコニウムからなる群より選ばれた少なくとも一種の物質を有する有機酸由来の有機基を含んでいる。絶縁被膜20の有機酸由来の有機基を介して、絶縁被膜20の少なくとも一種の物質と鉄基粒子10の鉄とが結合している。
【選択図】図1
Description
本発明は軟磁性材料および圧粉磁心に関する。
電磁弁、モータ、または電源回路などを有する電気機器には、軟磁性材料を加圧成形した圧粉磁心が使用されている。この軟磁性材料は、複数の複合磁性粒子よりなっており、複合磁性粒子は鉄基粒子と、その表面を被覆するガラス状の絶縁被膜とを有している。軟磁性材料には、小さな磁場の印加で大きな磁束密度を得ることができ、外部からの磁界変化に対して敏感に反応できる磁気的特性が求められる。
圧粉磁心を交流磁場で使用した場合、鉄損と呼ばれるエネルギー損失が生じる。この鉄損は、ヒステリシス損と渦電流損との和で表わされる。ヒステリシス損を低下させるためには、鉄基粒子内の歪や転位を除去して磁壁の移動を容易にすることで、圧粉磁心の保磁力Hcを小さくすればよく、また、渦電流損を低下させるためには、鉄基粒子を絶縁被膜で被覆し、鉄基粒子間の絶縁性を確保することで、軟磁性材料の電気抵抗率ρを大きくすればよい。
鉄基粒子内の歪や転位を除去するためには、成形した圧粉磁心を400℃以上の高温、好ましくは550℃、より好ましくは650℃以上の高温で熱処理する必要がある。しかしながら、圧粉磁心を400℃以上の高温で熱処理しようとすると、絶縁被膜が熱により破壊されてしまい、圧粉磁心の電気抵抗率ρが低下し、渦電流損が大きくなってしまうという問題がある。このため、耐熱性の高い絶縁被膜が求められている。
ここで、絶縁被膜の形成方法として、化成処理法やゾルゲル法などが従来より用いられている。化成処理法は、たとえば特表2000−504785号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1には、水−噴霧化鉄粉またはスポンジ鉄粉からなる原粉を調整し、その混合物を有機溶媒中でリン酸水溶液による処理を施して、乾燥させることにより、絶縁被膜を形成する方法が開示されている。
また、ゾルゲル法としては、たとえば特開2005−206880号公報(特許文献2)および特開2006−89791号公報(特許文献3)に開示されている。特許文献2には、軟磁性粒子粉末を有機溶剤に分散した懸濁液中に金属アルコキシドの溶液を加えた後、軟磁性材料を風乾し、その後60〜120℃で乾燥させることにより絶縁被膜を形成する方法が開示されている。特許文献3には、アルコキシシラン溶液およびマグネシウムアルコキシド溶液とを一定比率で混合して得られた酸化マグネシウムと二酸化シリコンとの混合酸化物ゾル溶液を軟磁性金属粉末に添加し混合した後加熱乾燥することにより、軟磁性金属粉末の表面に酸化マグネシウムと二酸化シリコンとの混合酸化物ゲル被覆層を形成する方法が開示されている。
特表2000−504785号公報
特開2005−206880号公報
特開2006−89791号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示された化成処理法により絶縁被膜を形成する技術においては、リン酸鉄非晶質(−Fe−P−O−)を基本構造としているため、耐熱性が低いという問題があった。
ここで、耐熱性を向上するために、リン酸水溶液にアルミニウムなどの耐熱性を向上する金属イオンを添加して、リン酸アルミニウム結晶を有する絶縁被膜を形成する方法が考えられる。しかし、リン酸水溶液に金属イオンを添加すると、水溶液中にリン酸アルミニウムが沈殿してしまい、絶縁被膜にリン酸アルミニウム結晶を取り込むことが難しかった。
また、上記特許文献2および3に開示されたゾルゲル法により絶縁被膜を形成する技術においては、耐熱性が十分でないという問題があった。一般的に、鉄基粒子を製造すると、鉄基粒子の表面の鉄原子にOH基が吸着し、それにより鉄基粒子の表面には自然酸化膜が形成されている。特許文献2および3の技術では、金属アルコキシドが加水分解され、加水分解により生成されたOH基と鉄基粒子の表面に存在するOH基とが脱水縮合されることにより、鉄基粒子の表面に絶縁被膜が形成される。しかし、鉄基粒子の表面に存在するOH基の密度はそれほど高くないので、鉄基粒子と絶縁被膜との界面での鉄原子と上記金属との結合密度が低くなる。その結果、ゾルゲル法により形成された絶縁被膜を備えた軟磁性材料を加圧成形してなる成形体を高温で熱処理をすると、鉄基粒子中の鉄が絶縁被膜へ拡散してしまうので、耐熱性が十分でないという問題があった。
そこで、本発明の目的は、絶縁被膜の耐熱性を向上することにより、ヒステリシス損失を低減する軟磁性材料および圧粉磁心を提供することである。
本発明の軟磁性材料は、鉄を含む鉄基粒子と、鉄基粒子の表面を取り囲む絶縁被膜とを有する複数の複合磁性粒子を備えた軟磁性材料である。絶縁被膜は、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、ストロンチウム(Sr)およびジルコニウム(Zr)からなる群より選ばれた少なくとも一種の物質を有する有機酸由来の有機基を含んでいる。絶縁被膜の有機酸由来の有機基を介して、絶縁被膜の少なくとも一種の物質と鉄基粒子の鉄とが結合している。
本発明の軟磁性材料によれば、有機酸由来の有機基を含んでいるので、有機酸により鉄基粒子の表面に形成されている自然酸化膜が除去されている。これにより、鉄基粒子の表面に形成されている自然酸化膜のOH基の数に依らずに、鉄基粒子の鉄原子と有機酸由来の有機基とがイオン結合している。鉄基粒子と有機酸由来の有機基との結合が自然酸化膜のOHの数に制限されないため、鉄基粒子と絶縁被膜との界面において鉄原子と有機酸由来の有機基との結合密度を向上できる。そのため、この軟磁性材料を加圧成形してなる成形体を熱処理すると、鉄基粒子中の鉄原子が絶縁被膜内へ拡散することを抑制できる。また、絶縁被膜中の上記物質と有機酸由来の有機基とは共有結合しているので、鉄基粒子の表面に形成された絶縁被膜中に上記物質が高密度で取り込まれている。上記物質は酸素との親和性が鉄よりも強いので、絶縁被膜中の酸素原子が鉄基粒子内へ拡散することを抑制できる。そのため、この軟磁性材料を加圧成形してなる成形体を熱処理すると、絶縁被膜中の酸素原子が鉄基粒子内へ拡散することを抑制できる。したがって、鉄基粒子中の鉄原子が絶縁被膜内へ拡散することを抑制でき、かつ絶縁被膜中の酸素原子が鉄基粒子内へ拡散することを抑制できるので、絶縁被膜の耐熱性を向上させることができる。その結果、この軟磁性材料を加圧成形してなる成形体をより高い温度で熱処理することが可能になるため、鉄基粒子内の歪や転位を除去することによって、ヒステリシス損失を低減できる。
上記軟磁性材料において好ましくは、絶縁被膜の平均膜厚が20nm以上200nm以下である。
絶縁被膜の平均膜厚を20nm以上とすることによって、渦電流によるエネルギー損失を効果的に抑制することができる。また、絶縁被膜の平均膜厚を200nm以下とすることによって、軟磁性材料に占める絶縁被膜の割合が大きくなりすぎない。このため、この軟磁性材料を加圧成形して得られる圧粉磁心の磁束密度が著しく低下することを防止できる。
なお、上記「平均膜厚」とは、組成分析(TEM−EDX:transmission electron microscope energy dispersive X-ray spectroscopy)によって得られる膜組成と、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS:inductively coupled plasma-mass spectrometry)によって得られる元素量とを鑑みて相当厚さを導出し、さらに、TEM写真により直接、被膜を観察し、先に導出された相当厚さのオーダーが適正な値であることを確認して決定されるものをいう。
上記軟磁性材料において好ましくは、鉄基粒子の平均粒径が5μm以上500μm以下である。
鉄基粒子の平均粒径を5μm以上とすることにより、保磁力を低減することができる。平均粒径を500μm以下とすることにより、渦電流損を低減することができる。また、加圧成形時において混合粉末の圧縮性が低下することを抑止できる。これにより、加圧成形によって得られた成形体の密度が低下せず、取り扱いが困難になることを防ぐことができる。
なお、上記「鉄基粒子の平均粒径」とは、粒径のヒストグラム中、粒径の小さいほうからの質量の和が総質量の50%に達する粒子の粒径、つまり50%粒径をいう。
上記軟磁性材料において好ましくは、絶縁被膜は、一の絶縁被膜であり、一の絶縁被膜の表面を取り囲む他の絶縁被膜をさらに備え、他の絶縁被膜は、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂、および高級脂肪酸塩の少なくともいずれかよりなっている。
他の絶縁被膜によって、一の絶縁被膜が他の絶縁被膜によって保護されるので、軟磁性材料を加圧成形する際に絶縁被膜の破損を緩和することができる。このため、絶縁被膜全体として耐熱性をより向上できる。また、他の絶縁被膜は、鉄基粒子と絶縁被膜とを備える複合磁性粒子同士の接合強度を高めるので、高強度を発現できる。
本発明の圧粉磁心は、上記軟磁性材料を用いて作製されている。本発明の圧粉磁心によれば、絶縁被膜の耐熱性を向上した軟磁性材料を備えているので、より高い温度で熱処理をして、鉄基粒子内の歪や転位を除去することによって、ヒステリシス損失を低減できる。
本発明の軟磁性材料および圧粉磁心によれば、絶縁被膜の耐熱性を向上できるので、ヒステリシス損失を低減することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
図1は、本発明の実施の形態における軟磁性材料を模式的に示す図である。図1に示すように、本実施の形態における軟磁性材料は、鉄基粒子10と、鉄基粒子10の表面を取り囲む絶縁被膜20とを有する複数の複合磁性粒子30とを備える。
図2は、本発明の実施の形態における圧粉磁心の拡大断面図である。なお、図2の圧粉磁心は、図1の軟磁性材料に加圧成形および熱処理を施すことによって製造されたものである。図1および図2に示すように、本実施の形態における圧粉磁心において、複数の複合磁性粒子30の各々は、有機物(図示せず)によって接合されていたり、複合磁性粒子30が有する凹凸の噛み合わせなどによって接合されていたりする。
本実施の形態の軟磁性材料および圧粉磁心において、鉄基粒子10は鉄を含んでおり、たとえば、鉄(Fe)、鉄(Fe)−シリコン(Si)系合金、鉄(Fe)−アルミニウム(Al)系合金、鉄(Fe)−窒素(N)系合金、鉄(Fe)−ニッケル(Ni)系合金、鉄(Fe)−炭素(C)系合金、鉄(Fe)−ホウ素(B)系合金、鉄(Fe)−コバルト(Co)系合金、鉄(Fe)−リン(P)系合金、鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)系合金および鉄(Fe)−アルミニウム(Al)−シリコン(Si)系合金などから形成されている。鉄基粒子10は、金属単体でも合金でもよいが、鉄基粒子10は、金属単体でも合金でもよいが、鉄の割合が50質量%以上であることが好ましく、鉄の割合が99質量%以上の純鉄であることがより好ましい。
鉄基粒子10の平均粒径は、5μm以上500μm以下であることが好ましい。鉄基粒子10の平均粒径を5μm以上とすることにより、保磁力を低減することができる。平均粒径を500μm以下とすることにより、渦電流損を低減することができる。また、加圧成形時において混合粉末の圧縮性が低下することを抑止できる。これにより、加圧成形によって得られた成形体の密度が低下せず、取り扱いが困難になることを防ぐことができる。
絶縁被膜20は、鉄基粒子10間の絶縁層として機能する。鉄基粒子10を絶縁被膜20で覆うことによって、この軟磁性材料を加圧成形して得られる圧粉磁心の電気抵抗率ρを大きくすることができる。これにより、鉄基粒子10間に渦電流が流れるのを抑制して、圧粉磁心の渦電流損を低減させることができる。
絶縁被膜20は、チタン、アルミニウム、シリコン、カルシウム、マグネシウム、バナジウム、クロム、ストロンチウムおよびジルコニウムからなる群より選ばれた少なくとも一種の物質(M)を有する有機酸由来の有機基を含んでいる。これらの物質(M)は、鉄よりも酸素との親和性が高いため、絶縁被膜20においてこれらの物質(M)と酸素との結合が解除されることを防止できる。そのため、絶縁被膜20中のこれらの物質(M)と酸素とが鉄基粒子10に移動することを防止できるとともに、鉄基粒子10中の鉄が絶縁被膜20に移動することを防止できる。すなわち、絶縁被膜20の金属化を防止でき、絶縁被膜20の電気抵抗の低下を抑制できる。酸素との親和性がより高いことから、絶縁被膜20はアルミニウム、チタンおよびマグネシウムからなる群より選ばれた少なくとも一種の物質を含んでいることがより好ましい。
有機酸は、一般的にカルボキシル基を有しているため、たとえばA1COOH(化学式1)で表わされる。化学式1において、COOHはカルボキシル基を示し、A1は有機酸からカルボキシル基を除いた残基を示す。上記物質をMとすると、上記物質(M)を有する有機酸は、たとえばM(A2COOH)n(化学式2)またはM(OH)x(A3COOH)n-x(化学式3)で表わされる。なお、化学式2において、A2は、A1が物質Mと結合した残基であり、nは物質Mの価数に等しい。化学式3において、A3は、A1が物質M(OH)xと結合した残基であり、nは物質Mの価数に等しく、xはnより小さい整数である。化学式2または3と鉄(Fe)とが結合すると、カルボキシル基のCOO-とFe2+とが化学結合されているので、M(A2COO)nFe(n/2)(化学式4)またはM(OH)x(A3COO)n-xFe(n-x/2)(化学式5)で表わされる。化学式4および5では、た
とえばn=1のときはFe原子1つに対して2個のカルボキシル基が結合できることを示す。この場合、上記物質Mを有する有機酸由来の有機基は、M(A2COO-)n(化学式6)またはM(OH)x(A3COO-)n-x(化学式7)で表わされる。また、有機酸由来の有機基は、A2COO-(化学式8)またはA3COO-(化学式9)で表わされる。すなわち、絶縁被膜20の有機酸由来の有機基(A3COO-:化学式9)を介して、絶縁被膜20中の物質(M)と鉄基粒子10中の鉄とが結合している。
とえばn=1のときはFe原子1つに対して2個のカルボキシル基が結合できることを示す。この場合、上記物質Mを有する有機酸由来の有機基は、M(A2COO-)n(化学式6)またはM(OH)x(A3COO-)n-x(化学式7)で表わされる。また、有機酸由来の有機基は、A2COO-(化学式8)またはA3COO-(化学式9)で表わされる。すなわち、絶縁被膜20の有機酸由来の有機基(A3COO-:化学式9)を介して、絶縁被膜20中の物質(M)と鉄基粒子10中の鉄とが結合している。
なお、上記物質Mを有する有機酸由来の有機基(A2COO-またはA3COO-:化学式8または9)は、たとえば核磁気共鳴分析(NMR)、ラマン分光分析、赤外吸光分析(FT−IR)、または熱分解ガスクロマトグラフ質量分析(Py−GCMS)などにより確認され得る。
たとえば、チタン(Ti)を有する乳酸(C3H6O3)由来の有機基(A3COO-:化学式9)と鉄とは、Ti(OH)2(OCHCH3COO)2Feで表わされるように結合されている。化学式5のM(OH)x(A3COO)n-xFe(n-x/2)がTi(OH)2(OCHCH3COO)2Feの場合には、有機酸(A1COOH:化学式1)はCH(OH)CH3COOHであり、上記物質(M)を有する有機酸(M(OH)x(A3COOH)n-x:化学式3)はTi(OH)2(OCHCH3COOH)2であり、上記物質を有する有機酸由来の有機基(M(OH)x(A3COO-)n-x:化学式7)はTi(OH)2(OCHCH3COO-)2であり、有機酸由来の有機基(A3COO-:化学式9)はOCHCH3COO-である。
なお、上記チタンを有する乳酸由来の有機基は、チタンと共有結合しているOHが脱水縮合されていてもよい。
化学式1〜9では1価のカルボキシル基を有する有機酸に由来する有機基を例に挙げて説明したが、有機酸由来の有機基は特にこれに限定されない。有機酸に由来する有機基は、複数のカルボキシル基を有する有機酸に由来していてもよく、またアミノ基など他の官能基を有する有機酸に由来していてもよい。ここで、有機酸とは、有機化合物のうち酸性をもつものを意味する。
たとえば、上記物質(M)を有する有機酸由来の有機基(M(A2COO-)nまたはM(OH)x(A3COO-)n-x:化学式6または7)は、アルミニウムを有する乳酸由来の有機基([Al(OCH2CHCOO)3]3-)、カルシウムを有する乳酸由来の有機基([Ca(OCH2CHCOO)2]2-)、マグネシウムを有する乳酸由来の有機基([Mg(OCH2CHCOO)2]2-)、マグネシウムを有する酢酸由来の有機基([Mg(CH2COO)2]2-)、カルシウムを有するギ酸由来の有機基([Ca(COO)2]2-)、およびカルシウムを有するクエン酸由来の有機基(Ca[OC(CH2COO)3]2 6-などが挙げられる。また、有機酸としてアミノ基を有する有機酸は、たとえば、チタンを有する有機酸(チタンアミネート)の有機基(Ti[O(C4H8)](OC3H7)2[O(C4H8)(CH)(NH2)COO-])などが挙げられる。
絶縁被膜20の平均膜厚みは、20nm以上200nm以下であることが好ましい。絶縁被膜20の平均膜厚を20nm以上とすることによって、トンネル電流の発生を防止でき、渦電流によるエネルギー損失を効果的に抑制することができる。また、絶縁被膜20の平均膜厚を200nm以下とすることによって、軟磁性材料に占める絶縁被膜20の割合が大きくなりすぎない。このため、この軟磁性材料を加圧成形して得られる圧粉磁心の磁束密度が著しく低下することを防止できる。
なお、上記においては軟磁性材料を構成する複合磁性粒子が1層の絶縁被膜により構成
されている場合について示したが、軟磁性材料を構成する複合磁性粒子が以下に述べるように複数層の絶縁被膜により構成されていてもよい。
されている場合について示したが、軟磁性材料を構成する複合磁性粒子が以下に述べるように複数層の絶縁被膜により構成されていてもよい。
図3は、本発明の一実施の形態における他の軟磁性材料を模式的に示す図である。図3に示すように、本実施の形態における他の軟磁性材料において、絶縁被膜20は一の絶縁被膜としての絶縁被膜20aと、他の絶縁被膜としての絶縁被膜20bとを有している。絶縁被膜20aは鉄基粒子10の表面を取り囲んでおり、絶縁被膜20bは絶縁被膜20aの表面を取り囲んでいる。
絶縁被膜20aは、図1および図2における絶縁被膜20とほぼ同様の構成を有している。
絶縁被膜20bとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂および高級脂肪酸塩の少なくともいずれかよりなることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、シリコーン樹脂などの有機シリコン化合物、有機チタン化合物、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、高分子量ポリエチレンまたは全芳香族ポリエステルなどが挙げられる。なお、高分子量ポリエチレンとは、分子量が10万以上のポリエチレンをいう。熱硬化性樹脂としては、熱硬化性シリコーン樹脂、全芳香族ポリイミド、および非熱可塑性ポリアミドイミドなどが挙げられる。高級脂肪酸塩としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸リチウム、パルミチン酸カルシウム、オレイン酸リチウムまたはオレイン酸カルシウムなどが挙げられる。また、これらの有機物を互いに混合して用いることもできる。
特に、耐熱性をより一層向上できる観点から、絶縁被膜20bは、有機シリコン化合物および有機チタン化合物の少なくともいずれか一方よりなることが好ましい。シリコーン樹脂は耐熱温度が高く、シリコーン樹脂からなる絶縁被膜20bを熱処理した後にはSi−O結合の分解残渣を有しており絶縁維持が高いため、シリコーン樹脂よりなることがより好ましい。
図4は、本発明の一実施の形態における他の圧粉磁心の拡大断面図である。図4の圧粉磁心は、図3の軟磁性材料に加圧成形および熱処理を施すことによって製造されたものである。図3および図4に示すように、絶縁被膜20bとして樹脂を用いた場合には、熱処理の際に樹脂が化学変化する。複数の複合磁性粒子30の各々は、絶縁被膜20bによって接合されていたり、複合磁性粒子30が有する凹凸の噛み合わせなどによって接合されていたりする。
図1に示す軟磁性材料は添加剤(図示せず)をさらに備えていてもよく、図2に示す圧粉磁心は、添加剤が熱処理されてなる有機物(図示せず)をさらに備えていてもよい。添加剤は、たとえば金属石鹸および六方晶系の結晶構造を有する無機潤滑剤の少なくとも一方からなることが好ましい。これらの添加剤は、潤滑性が高いので、鉄基粒子10の流動性を向上できる。
続いて、図1示す軟磁性材料および図2に示す圧粉磁心を製造する方法(有機酸法)について図5を参照して説明する。図5は、本発明の一実施の形態における圧粉磁心の製造方法を工程順に示す図である。
図5に示すように、始めに、鉄を含む鉄基粒子10を準備する(ステップS1)。具体的には、たとえば鉄の割合が50質量%以上、好ましくは鉄の割合が99質量%以上の純鉄の鉄基粒子を準備し、この鉄基粒子をたとえば温度400℃以上900℃未満で熱処理
する。熱処理前の鉄基粒子10の内部には、多数の歪み(転位、欠陥)が存在している。鉄基粒子10に熱処理を実施することによって、この歪みを低減させることができる。なお、この熱処理は省略されてもよい。
する。熱処理前の鉄基粒子10の内部には、多数の歪み(転位、欠陥)が存在している。鉄基粒子10に熱処理を実施することによって、この歪みを低減させることができる。なお、この熱処理は省略されてもよい。
鉄基粒子10を準備する工程(ステップS1)では、平均粒径が5μm以上500μm以下の鉄基粒子10を準備することが好ましい。
図6は、鉄基粒子10を示す模式図である。図7は、図6における領域R1の拡大模式図である。図6および図7に示すように、空気中の水分により、準備される鉄基粒子10の表面には自然酸化膜が形成されている。自然酸化膜と鉄基粒子10とは、鉄基粒子10の表面の鉄原子(Fe2+)とOH-とが共有結合されている。ただし、自然酸化膜が表面に形成された鉄基粒子10においては、Fe2+:OH-=1:2の割合でOH基が存在しているのではなく、OH基はこれよりも低い割合で存在している。すなわち、鉄基粒子10の表面に存在するOH基の密度はそれほど高くない。
次に、鉄基粒子10の表面を取り囲む絶縁被膜20を形成する(ステップS2)。絶縁被膜20を形成する工程(ステップS2)では、チタン、アルミニウム、シリコン、カルシウム、マグネシウム、バナジウム、クロム、ストロンチウムおよびジルコニウムからなる群より選ばれた少なくとも一種の物質(M)を有する有機酸を鉄基粒子10の表面に接触させる。有機酸を接触させる方法としては、上記有機酸を鉄基粒子10の表面に塗布してもよいし、上記有機酸中に鉄基粒子10を浸漬してもよい。
上記「物質(M)」は、鉄よりも酸素との親和性が高い物質である。また、本実施の形態における「物質(M)を有する有機酸」とは、上記物質(M)が有機酸と共有結合し、かつ水溶液中で電離し得るHを備えたカルボキシル基(COOH)を有している。
具体的には、たとえば、乳酸チタン(Ti(OH)2(OCH3CHCOOH)2)、乳酸アルミニウム(Al(OCH2CHCOOH)3)、乳酸カルシウム(Ca(OCH2CHCOOH)2)、乳酸マグネシウム(Mg(OCH2CHCOOH)2)、酢酸マグネシウム(Mg(CH2COOH)2)、ギ酸カルシウム(Ca(COOH)2)およびクエン酸カルシウム(Ca[OC(CH2COOH)3]2)、チタンアミネート(Ti[O(C4H8)](OC3H7)2[O(C4H8)(CH)(NH2)COOH])などの上記物質(M)を有する有機酸を準備する。
上記物質(M)を有する有機酸を準備する方法は、特に限定されない。有機酸が有する酸性基としては、たとえば、ギ酸(−[COOH]n)、酢酸(−[CH3COOH]n)、乳酸(−[OCH3COOH]n)、リンゴ酸(−[OCH(COOH)CH2COOH]n)、クエン酸(−[OC(CH2COOH)3]n)などが挙げられる。なお、nは物質Mの価数に等しい。
その後、上記物質(M)を有する有機酸に鉄基粒子10を浸漬することにより、鉄基粒子10に上記物質(M)を有する有機酸が塗布される。鉄基粒子10に上記物質を有する有機酸としてたとえば乳酸チタン(Ti(OH)2(OCH3COOH)2)を塗布すると、下記の化学式10のように、水素イオン(H+)と乳酸チタンのカルボキシル基(COOH)がイオン化(COO-)された乳酸イオン(Ti(OH)2(OCH3COO-)2)とが生成される。
そして、下記の化学式11のように、自然酸化膜のOH基を有する鉄基粒子と乳酸チタンから電離された水素イオンとが反応して、鉄基粒子中の鉄原子と結合していたOH基が水分子として鉄から除去される。なお、化学式12において、自然酸化膜のOH基を有する鉄は、上述したように形成されるOH基の鉄に対する割合が少ないことから、FeOHとしている。
そして、下記の化学式12のように、乳酸チタンから電離された水素イオンと鉄とが反応して、鉄が鉄イオンとして溶解する。また、自然酸化膜のOH基と結合していなかった鉄原子についても下記の化学式12のように鉄イオンとして溶解される。
そして、化学式10で生成された乳酸チタンイオンと、化学式12で生成された鉄イオンとは、下記の化学式13のようにイオン結合される。すなわち、絶縁被膜20の有機酸由来の有機基(A3COO-:化学式9)としてのOCHCH3COO-を介して、絶縁被膜20中の物質(M)と鉄基粒子10中の鉄とが結合される。
物質(M)と鉄とが結合される際に、脱水縮合される場合があり、この場合も本発明には含まれる。これにより、絶縁被膜20を成長させることができる。たとえば、チタンを有する乳酸を鉄基粒子10に接触させることにより、有機酸由来の有機基と鉄とを結合させた場合には、下記の化学式14に示すように、チタンに結合しているOH基において脱水縮合される。
絶縁被膜を形成する工程(ステップS2)では、平均膜厚が20nm以上200nm以下である絶縁被膜20を形成することが好ましい。絶縁被膜20の平均膜厚を20nm以上とすることによって、トンネル電流の発生を防止でき、渦電流によるエネルギー損失を効果的に抑制することができる。また、絶縁被膜20の平均膜厚を200nm以下とすることによって、軟磁性材料に占める絶縁被膜20の割合が大きくなりすぎない。このため、この軟磁性材料を加圧成形して得られる圧粉磁心の磁束密度が著しく低下することを防
止できる。
止できる。
図3に示すような2層の絶縁被膜を形成する場合には、上記絶縁被膜を一の絶縁被膜20aとすると、一の絶縁被膜20aの表面を取り囲む他の絶縁被膜20bをさらに形成する。この場合、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂、および高級脂肪酸塩の少なくともいずれかよりなる他の絶縁被膜20bを形成することが好ましい。
具体的には、一の絶縁被膜20aの形成された鉄基粒子10の各々と、樹脂とを混合し、他の絶縁被膜20bを形成する。混合方法については特に制限はなく、たとえばメカニカルアロイング法、振動ボールミル、遊星ボールミル、メカノフュージョン、共沈法、化学気相蒸着法(CVD法)、物理気相蒸着法(PVD法)、めっき法、スパッタリング法、蒸着法またはゾル−ゲル法などのいずれを使用することも可能である。また必要に応じて潤滑剤がさらに混合されてもよい。
他の絶縁被膜20bの形成方法としては、上記方法の他、有機溶媒に溶かしたシリコーン樹脂を混合あるいは噴霧し、その後シリコーン樹脂を乾燥させて有機溶媒を除去するといった方法、または、液状のシリコーン樹脂を混合または噴霧する方法を用いてもよい。
次に、絶縁被膜を形成する工程(ステップS2)の後で、絶縁被膜20を熱処理する(ステップS3)。絶縁被膜20を熱処理すると、物質(M)を有する有機酸を構成する炭素原子鎖を分解し、炭素原子(C)を気化分離させることができる。この熱処理(ステップS3)では、炭素原子を気化させる温度で行なわれ、たとえば絶縁被膜20の分解温度以上、鉄基粒子10の酸化が生じない温度以下で熱処理を行なう。鉄基粒子10の酸化が生じない温度とは、たとえば、飽和磁化の低下が起こったときの温度である。この熱処理(ステップS3)によって、絶縁被膜20において炭素の含有量が減少されると、絶縁被膜の耐熱温度をより向上できる。なお、この工程は省略されてもよい。
以上の工程(S1〜S3)により、本実施の形態の軟磁性材料が得られる。なお、本実施の形態における圧粉磁心を製造する場合には、さらに以下の工程が行なわれる。
次に、得られた軟磁性材料の粉末を金型に入れ、加圧成形することにより成形体を得る(ステップS4)。この成形体を得る工程(ステップS4)では、たとえば390(MPa)以上1500(MPa)以下の圧力で加圧成形する。これにより、軟磁性材料が圧粉成形され、上記物質(M)を高い密度で取り込んだ絶縁被膜20を有する成形体が得られる。なお、加圧成形する雰囲気は、不活性ガス雰囲気または減圧雰囲気とすることが好ましい。この場合、大気中の酸素によって混合粉末が酸化されるのを抑制することができる。
次に、加圧成形によって得られた成形体を熱処理する(ステップS5)。ステップS5では、たとえば550℃以上絶縁被膜20の熱分解温度以下の温度で熱処理する。加圧成形を経た成形体の内部には欠陥が多数発生しているので、熱処理によりこれらの欠陥を取り除くことができる。得られる圧粉磁心は、高密度に耐熱性を有する物質(M)を含む絶縁被膜20を備えているため、高温で熱処理を行なっても、鉄基粒子10の鉄原子が絶縁被膜20に移動することを防止できる。また、酸素との親和性の高い物質(M)により酸素が鉄基粒子10へ移動することを防止できる。
以上より、図2に示す本実施の形態の圧粉磁心を製造できる。また、絶縁被膜20を2層有する軟磁性材料を用いる場合には、図4に示すような圧粉磁心を製造できる。
続いて、本実施の形態における圧粉磁心の製造方法と、従来の圧粉磁心の製造方法とを
比較しながら、本実施の形態の作用効果について説明する。
比較しながら、本実施の形態の作用効果について説明する。
まず、化成処理法により絶縁被膜を形成する方法について説明する。化成処理法(下記の表1における化成処理法1)では、たとえばリン酸水溶液に鉄基粒子を浸漬させる。リン酸により、鉄基粒子の表面に形成されていた自然酸化膜が溶解する。反応が平衡状態になると、リンと酸素とが取り込まれた絶縁被膜が形成される。
化成処理法により形成された絶縁被膜を備えた軟磁性材料を加圧成形して得られる成形体を熱処理すると、酸素との親和性の低い鉄により酸素が鉄基粒子へ移動する。すなわち、下記の表1に示すように、酸素拡散抑制能が十分でない軟磁性材料を用いているので、圧粉磁心の熱処理耐性が十分でない。
次に、上述した化成処理法と別の化成処理法(下記の表1における化成処理法2)により絶縁被膜を形成する方法を説明する。この化成処理法では、たとえばリン酸水溶液に塩化アルミニウムを溶解させてリン酸アルミニウム水溶液を準備する。このリン酸アルミニウム水溶液に鉄基粒子を浸漬させると、鉄基粒子の表面に形成されていた自然酸化膜が溶解する。反応が平衡状態になると、リン酸イオンとアルミニウムイオンとがリン酸アルミニウム(Al2(PO4)3)として単独で存在して、リン酸アルミニウム(Al2(PO4)3)のカチオンの状態で存在しない。そのため、アルミニウムが絶縁被膜に取り込まれ難しく、リン酸アルミニウム非晶質(−Al−P−O−)を形成することが難しい。
次に、ゾルゲル法により絶縁被膜を形成する方法を説明する。ゾルゲル法では、チタンアルコキシド(Ti−(O−R)4)を有機溶剤に添加し、さらに水を注入すると、下記の化学式15のように、チタンアルコキシドが加水分解されて、チタンアルコキシドのチタンに配位する複数のアルコキシ基(−O−R−)の一部がヒドロシキル基(−O−H)に変化する。なお、化学式15〜18中、Rは、チタンアルコキシドのアルコキシド残基を示す。
そして、鉄基粒子の表面に形成された自然酸化膜のOH基を有する鉄と、加水分解により生成されたOH基を有するチタンアルコキシドとは、下記の化学式16のように、鉄基粒子の表面に形成された自然酸化膜のOHと、チタンアルコキシドのOHとが脱水縮合することによって、Oを介して結合される。すなわち、鉄原子とチタンとは、酸素原子を介して結合される。なお、化学式16において、自然酸化膜のOH基を有する鉄は、上述したように形成されるOH基の鉄に対する割合が少ないことから、FeOHとしている。
そして、下記の化学式17および18に示す加水分解および脱水縮合の反応によって、絶縁被膜を成長させることができる。
化学式15〜18を参照して、ゾルゲル法では、鉄基粒子10の表面に存在する自然酸
化膜のOHが存在している部分でのみチタンアルコキシドが結合される。すなわち、酸の力で鉄基粒子の表面に形成された自然酸化膜が除去されないので、自然酸化膜のOH基とチタンアルコキシドの加水分解で生成されたOH基との脱水縮合により鉄原子とチタンアルコキシドとが結合されるため、結合されるチタンアルコキシドの数は自然酸化膜のOH基の数に依存する。上述したように、自然酸化膜中のOHは鉄に対する割合が低いため、鉄基粒子表面の鉄原子と結合されるチタンアルコキシド(チタンアルコキシドが鉄と結合した後のたとえばTi−(O−R)3−O−)の結合密度が低くなる。なお、有機溶剤は非常に弱い酸性なので、有機溶剤中では鉄基粒子に形成された自然酸化膜は除去されない。
化膜のOHが存在している部分でのみチタンアルコキシドが結合される。すなわち、酸の力で鉄基粒子の表面に形成された自然酸化膜が除去されないので、自然酸化膜のOH基とチタンアルコキシドの加水分解で生成されたOH基との脱水縮合により鉄原子とチタンアルコキシドとが結合されるため、結合されるチタンアルコキシドの数は自然酸化膜のOH基の数に依存する。上述したように、自然酸化膜中のOHは鉄に対する割合が低いため、鉄基粒子表面の鉄原子と結合されるチタンアルコキシド(チタンアルコキシドが鉄と結合した後のたとえばTi−(O−R)3−O−)の結合密度が低くなる。なお、有機溶剤は非常に弱い酸性なので、有機溶剤中では鉄基粒子に形成された自然酸化膜は除去されない。
ゾルゲル法により形成された絶縁被膜122を備えた軟磁性材料を加圧成形することにより、得られる成形体を熱処理すると、絶縁被膜122の鉄基粒子との結合密度が低いため、鉄原子が絶縁被膜122へ拡散してしまうことにより、電流パスを作り出してしまう。なお、酸素との親和性が高いチタンにより酸素が鉄基粒子10へ移動することは抑制されている。すなわち下記の表1に示すように、鉄基粒子との結合密度が低いことにより鉄拡散抑制能が十分でない絶縁被膜を備えた軟磁性材料を用いているので、圧粉磁心の熱処理耐性が十分でない。
なお、ゾルゲル法においても炭素を気化させるための熱処理を行なった場合であっても、除去した炭素による耐熱性低下相当分のみの向上であり、ほぼ同様の課題を有している。
本実施の形態における圧粉磁心の製造方法および従来の圧粉磁心の製造方法により形成された絶縁被膜の特性および圧粉磁心の特性について、上述した内容をまとめた表を表1に示す。
表1に示すように、上述したように、化成処理法1により形成されるリン酸鉄非晶質(−Fe−P−O−)よりなる絶縁被膜は、酸素と親和性の低い鉄を含んでいる。そのため、酸素との親和性が低い鉄が酸素との結合を解除され、絶縁被膜中の酸素が鉄基粒子に拡散するという欠点がある。
化成処理法2では、アルミニウムとリン酸との反応が、溶解した鉄イオンとリン酸との反応よりも優先的に進んでしまい、アルミニウムとリン酸との化合物(リン酸アルミニウム)が安定化するので、絶縁被膜を形成することが難しい。また、ゾルゲル法のようにリン酸アルミニウムにOH基がないので、リン酸アルミニウムは鉄基粒子上に形成された自然酸化膜を構成するOH基と脱水縮合しない。そのため、化成処理法2により形成されるリン酸アルミニウム結晶(−Al−P−O−)よりなる絶縁被膜は、絶縁被膜に含まれるアルミニウムの密度が低いという欠点がある。この場合には、鉄基粒子中の鉄が絶縁被膜に拡散することにより、絶縁被膜の金属化が進み、絶縁被膜の電気抵抗が低下してしまい、渦電流損が大きくなってしまう。
ゾルゲル法により形成される酸化チタン非晶質(−Ti−O−)よりなる絶縁被膜は、鉄基粒子の表面に形成されている自然酸化膜の酸素を介してチタンが結合されている。そのため、この絶縁被膜は、自然酸化膜の酸素との結合を超えた量の酸化アルミニウム非晶質を含有することはできない。したがって、絶縁被膜を構成する酸素原子と鉄原子との結合数が少ないため、熱処理を施したときに鉄が絶縁被膜中に拡散しやすく、拡散した鉄原子により電流パスを形成することによる絶縁機能が破壊されやすくなる。
一方、本実施の形態において、有機酸を出発とした有機酸法により形成される酸化チタン結晶または酸化チタン非晶質よりなる絶縁被膜20は、有機酸により鉄基粒子10の表面に形成されている自然酸化膜が取り除かれている。そのため、有機酸由来の有機基(たとえばA2COO-またはA3COO-)のアニオン(COO-)と鉄基粒子10のFe2+とが化学結合されることにより、鉄基粒子10の表面に絶縁被膜20が形成されている。その結果、鉄基粒子10の鉄原子と結合されるチタンを有する有機酸由来の有機基の結合密度が高くなるので、鉄基粒子10から鉄原子が絶縁被膜へ拡散することを防止できる。また、チタンは酸素と親和性が鉄よりも高いため、絶縁被膜20からの酸素の解離または拡散を防止できる。その結果、この軟磁性材料を用いて成形された圧粉磁心の熱処理耐性が高く、成形耐性が高いという利点がある。
また、有機酸由来の有機基と鉄原子とがイオン結合しているため、結合強度が高い。そのため、絶縁被膜20が鉄基粒子10から剥がれることを抑制できるので、耐成形性を向上できる。
なお、本実施の形態は上記物質(M)をチタンを用いて説明したが、上述した物質(M)に置き換えても同様の効果を有する。
以上説明したように、本実施の形態における軟磁性材料および圧粉磁心は、チタン、アルミニウム、シリコン、カルシウム、マグネシウム、バナジウム、クロム、ストロンチウムおよびジルコニウムからなる群より選ばれた少なくとも一種の物質(M)を有する有機酸由来の有機基を含む絶縁被膜20を備えている。絶縁被膜20の有機酸由来の有機基を介して、絶縁被膜20の少なくとも一種の物質と鉄基粒子10の鉄とが結合している。
本発明の軟磁性材料および圧粉磁心によれば、有機酸由来の有機基を含んでいるので、鉄基粒子10の表面に形成されている自然酸化膜が除去されている。これにより、鉄基粒子の表面に形成される自然酸化膜のOH基の数に制限されるゾルゲル法と異なり、本実施の形態では、鉄基粒子10の表面に形成される自然酸化膜のOH基の数に制限されずに、鉄基粒子10の鉄原子と有機酸由来の有機基とがイオン結合している。鉄基粒子10と有機酸由来の有機基との結合が自然酸化膜のOHの数に制限されないため、鉄基粒子10と絶縁被膜20との界面において鉄原子と有機酸由来の有機基との結合密度を向上できる。そのため、この軟磁性材料を加圧成形してなる成形体を熱処理すると、鉄基粒子10中の鉄原子が絶縁被膜20内へ拡散することを抑制できる。また、絶縁被膜20中の上記物質
(M)と有機酸由来の有機基とは共有結合しているので、鉄基粒子10の表面に形成された絶縁被膜20中に上記物質(M)が高密度で取り込まれている。上記物質は酸素との親和性が鉄よりも強いので、絶縁被膜中の酸素原子が鉄基粒子内へ拡散することを抑制できる。そのため、この軟磁性材料を加圧成形してなる成形体を熱処理すると、絶縁被膜20中の酸素原子が鉄基粒子10内へ拡散することを抑制できる。したがって、鉄基粒子10中の鉄原子が絶縁被膜20内へ拡散することを抑制でき、かつ絶縁被膜20中の酸素原子が鉄基粒子10内へ拡散することを抑制できるので、絶縁被膜20の耐熱性を向上させることができる。その結果、この軟磁性材料を加圧成形してなる成形体をより高い温度で熱処理することが可能になるため、鉄基粒子内の歪や転位を除去することによって、ヒステリシス損失を低減できる。
(M)と有機酸由来の有機基とは共有結合しているので、鉄基粒子10の表面に形成された絶縁被膜20中に上記物質(M)が高密度で取り込まれている。上記物質は酸素との親和性が鉄よりも強いので、絶縁被膜中の酸素原子が鉄基粒子内へ拡散することを抑制できる。そのため、この軟磁性材料を加圧成形してなる成形体を熱処理すると、絶縁被膜20中の酸素原子が鉄基粒子10内へ拡散することを抑制できる。したがって、鉄基粒子10中の鉄原子が絶縁被膜20内へ拡散することを抑制でき、かつ絶縁被膜20中の酸素原子が鉄基粒子10内へ拡散することを抑制できるので、絶縁被膜20の耐熱性を向上させることができる。その結果、この軟磁性材料を加圧成形してなる成形体をより高い温度で熱処理することが可能になるため、鉄基粒子内の歪や転位を除去することによって、ヒステリシス損失を低減できる。
また、有機酸由来の有機基と鉄原子とがイオン結合しているため、結合強度が高い。そのため、絶縁被膜20が鉄基粒子10から剥がれることを抑制できるので、耐成形性を向上できる。
[実施例]
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例では、本発明の軟磁性材料を加圧成形して得られた圧粉磁心における耐熱温度の向上およびヒステリシス損の低減の効果を調べた。始めに、軟磁性材料である実施例1、2および比較例1〜4を以下の方法により作製した。
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例では、本発明の軟磁性材料を加圧成形して得られた圧粉磁心における耐熱温度の向上およびヒステリシス損の低減の効果を調べた。始めに、軟磁性材料である実施例1、2および比較例1〜4を以下の方法により作製した。
(実施例1)
実施例1は、実施の形態1の製造方法に従って作製した。具体的には、鉄の純度が99.8%以上で平均粒径が80μmであるヘガネスAB社製のABC100.30を鉄基粒子10として準備した。この鉄基粒子10を乳酸チタン(松本製薬工業社製の商品名「オルガッチックスTC315」)に浸漬させて、Ti(OH)2(OCHCH3COO)2を含有し平均膜厚が50nmの絶縁被膜20を鉄基粒子10の表面に形成した。その後、500℃で有機基の炭素元素を気化させるための熱処理を行なった。これにより、実施例1の軟磁性材料が得られた。
実施例1は、実施の形態1の製造方法に従って作製した。具体的には、鉄の純度が99.8%以上で平均粒径が80μmであるヘガネスAB社製のABC100.30を鉄基粒子10として準備した。この鉄基粒子10を乳酸チタン(松本製薬工業社製の商品名「オルガッチックスTC315」)に浸漬させて、Ti(OH)2(OCHCH3COO)2を含有し平均膜厚が50nmの絶縁被膜20を鉄基粒子10の表面に形成した。その後、500℃で有機基の炭素元素を気化させるための熱処理を行なった。これにより、実施例1の軟磁性材料が得られた。
(実施例2)
実施例2は、基本的には実施例1と同様に行なったが、絶縁被膜の表面を取り囲む他の絶縁被膜を形成した点においてのみ異なる。
実施例2は、基本的には実施例1と同様に行なったが、絶縁被膜の表面を取り囲む他の絶縁被膜を形成した点においてのみ異なる。
具体的には、シリコーン樹脂として、0.2wt%のTSR116(GE東芝シリコーン株式会社製)と、0.1wt%のXC96−B0446(GE東芝シリコーン株式会社製)とをキシレン溶媒に溶解および分散し、この溶液に上述の複合磁性粒子30を投入した。その後、室内で攪拌処理および揮発乾燥処理を経た。これにより、主組成がTi−O−Tiであり、平均膜厚が50nmの絶縁被膜20の表面を取り囲む、シリコーン樹脂を含有し平均膜厚が150nmの絶縁被膜20bを形成した。
(比較例1)
比較例1は、ゾルゲル法により絶縁被膜を形成した点においてのみ実施例1と異なる。具体的には、実施例1と同様に鉄基粒子10を準備し、この鉄基粒子10をチタンアルコキシド(松本製薬工業社製の商品名「オルガッチックスTA10」)に接触させて、酸化チタン非晶質よりなる絶縁被膜を形成した。
比較例1は、ゾルゲル法により絶縁被膜を形成した点においてのみ実施例1と異なる。具体的には、実施例1と同様に鉄基粒子10を準備し、この鉄基粒子10をチタンアルコキシド(松本製薬工業社製の商品名「オルガッチックスTA10」)に接触させて、酸化チタン非晶質よりなる絶縁被膜を形成した。
(比較例2)
比較例2は、ゾルゲル法により絶縁被膜を形成した点においてのみ実施例2と異なる。具体的には、比較例1と同様にゾルゲル法により酸化チタン非晶質よりなる絶縁被膜を形
成した後に、実施例2と同様にこの絶縁被膜上にシリコーン樹脂より絶縁被膜をさらに形成した。
比較例2は、ゾルゲル法により絶縁被膜を形成した点においてのみ実施例2と異なる。具体的には、比較例1と同様にゾルゲル法により酸化チタン非晶質よりなる絶縁被膜を形
成した後に、実施例2と同様にこの絶縁被膜上にシリコーン樹脂より絶縁被膜をさらに形成した。
(比較例3)
比較例3は、化成処理法により絶縁被膜を形成した点、および炭素元素を気化させるための熱処理をしなかった点においてのみ実施例1と異なる。具体的には、実施例1と同様に鉄基粒子10を準備し、この鉄基粒子10をリン酸溶液に接触させてリン酸鉄非晶質よりなる絶縁被膜を形成した。
比較例3は、化成処理法により絶縁被膜を形成した点、および炭素元素を気化させるための熱処理をしなかった点においてのみ実施例1と異なる。具体的には、実施例1と同様に鉄基粒子10を準備し、この鉄基粒子10をリン酸溶液に接触させてリン酸鉄非晶質よりなる絶縁被膜を形成した。
(比較例4)
比較例4は、化成処理法により絶縁被膜を形成した点、および炭素元素を気化させるための熱処理をしなかった点においてのみ実施例2と異なる。具体的には、比較例3と同様に化成処理法によりリン酸鉄非晶質よりなる絶縁被膜を形成した後に、実施例2と同様にこの絶縁被膜上にシリコーン樹脂よりなる絶縁被膜をさらに形成した。
比較例4は、化成処理法により絶縁被膜を形成した点、および炭素元素を気化させるための熱処理をしなかった点においてのみ実施例2と異なる。具体的には、比較例3と同様に化成処理法によりリン酸鉄非晶質よりなる絶縁被膜を形成した後に、実施例2と同様にこの絶縁被膜上にシリコーン樹脂よりなる絶縁被膜をさらに形成した。
(測定方法)
次に、実施例1、2および比較例1〜4の軟磁性材料を、面圧1280MPaの圧力で加圧成形し、リング状(外径34mm、内径20mm、厚み5mm)の成形体に関し、窒素雰囲気中において、成形体を400、450、500、550、600、650および700℃でそれぞれ1時間熱処理した。これにより、圧粉磁心を作製した。
次に、実施例1、2および比較例1〜4の軟磁性材料を、面圧1280MPaの圧力で加圧成形し、リング状(外径34mm、内径20mm、厚み5mm)の成形体に関し、窒素雰囲気中において、成形体を400、450、500、550、600、650および700℃でそれぞれ1時間熱処理した。これにより、圧粉磁心を作製した。
こうして得られた圧粉磁心について、一次300巻き、二次20巻きの巻き線を施して、AC−BHトレーサを用いてヒステリシス損Kh、渦電流損Ke、および鉄損Wを測定した。これらの測定の際には、励起磁束密度を10kG(=1.0T(テスラ))とし、測定周波数を400Hzとした。ここで、ヒステリシス損および渦電流損の分離については、鉄損の周波数曲線を次の3つの式で最小2乗法によりフィッティングし、ヒステリシス損係数および渦電流損係数を算出することで行なった。この結果を表2に示す。表2において、鉄損の「測定不可」は測定下限値の100W/kgを超えていることを示し、ヒステリシス損および渦電流損の「−」は鉄損の測定不可により値を算出できなかったことを示す。
(鉄損)=(ヒステリシス損係数)×(周波数)+(渦電流損係数)×(周波数)2
(ヒステリシス損)=(ヒステリシス損係数)×(周波数)
(渦電流損)=(渦電流損係数)×(周波数)2
(ヒステリシス損)=(ヒステリシス損係数)×(周波数)
(渦電流損)=(渦電流損係数)×(周波数)2
(測定結果)
表2に示すように、シリコーン樹脂よりなる絶縁被膜を含んでいない1層の絶縁被膜を備える実施例1の圧粉磁心は、650℃で熱処理を行なっても絶縁被膜が破損しなかった。一方、シリコーン樹脂よりなる絶縁被膜を含んでいない1層の絶縁被膜を備える比較例1および比較例3ではそれぞれ650℃および600℃では絶縁被膜が破壊した。そのため、実施例1は、比較例1および比較例3よりも高温で熱処理が可能であり、ヒステリシス損を低減できた。また、実施例1の圧粉磁心の各温度で熱処理したときの鉄損が最小と
なる温度は550℃であったのに対し、比較例1および比較例3の鉄損が最小となる温度は500℃および450℃であった。このことから、実施例1は絶縁被膜の耐熱温度を向上できることがわかった。また、実施例1の鉄損の最小値は、比較例1および3の鉄損の最小値よりも小さい36W/kgであった。
表2に示すように、シリコーン樹脂よりなる絶縁被膜を含んでいない1層の絶縁被膜を備える実施例1の圧粉磁心は、650℃で熱処理を行なっても絶縁被膜が破損しなかった。一方、シリコーン樹脂よりなる絶縁被膜を含んでいない1層の絶縁被膜を備える比較例1および比較例3ではそれぞれ650℃および600℃では絶縁被膜が破壊した。そのため、実施例1は、比較例1および比較例3よりも高温で熱処理が可能であり、ヒステリシス損を低減できた。また、実施例1の圧粉磁心の各温度で熱処理したときの鉄損が最小と
なる温度は550℃であったのに対し、比較例1および比較例3の鉄損が最小となる温度は500℃および450℃であった。このことから、実施例1は絶縁被膜の耐熱温度を向上できることがわかった。また、実施例1の鉄損の最小値は、比較例1および3の鉄損の最小値よりも小さい36W/kgであった。
また、実施例1で鉄損が最小となった550℃の高温で、比較例1および3の圧粉磁心を熱処理したときの渦電流損失は、実施例1よりも高かった。このことから、実施例1は、高温で熱処理をした場合に渦電流損失は維持でき、ヒステリシス損失を低減できることから、鉄損を低減できることがわかった。
また、シリコーン樹脂よりなる絶縁被膜を含んでいる2層の絶縁被膜を備える実施例2の圧粉磁心は、700℃での熱処理が可能であった。シリコーン樹脂よりなる絶縁被膜を含む2層の絶縁被膜を備える比較例2および4ではそれぞれ7000℃および650℃では、絶縁被膜が破壊した。そのため、実施例2は、比較例2および比較例4よりもヒステリシス損を低減できた。また、実施例2の圧粉磁心の各温度で熱処理したときの鉄損が最小となる温度は650℃であったのに対し、比較例2および比較例4の鉄損が最小となる温度は600℃および500℃であった。このことから、実施例2は絶縁被膜の耐熱温度を向上できることがわかった。また、実施例2の鉄損の最小値は、比較例2および4の鉄損の最小値よりも小さい25W/kgであった。
特に、実施例1と実施例2とを比較して、上記物質を有する有機酸由来有機基としての(Ti(OH)2(OC2H4COO)2)を含有する絶縁被膜と、この絶縁被膜の表面を取り囲む他の絶縁被膜とを備えていた圧粉磁心は、耐熱性を非常に向上できるとともに、ヒステリシス損失および鉄損をより一層低減できた。
以上より、本実施例によれば、絶縁被膜が酸素との親和性の高い物質(M)を有する有機酸由来の有機基を含んでいることにより、この絶縁被膜の有機酸由来の有機基を介して、絶縁被膜の少なくとも一種の物質と鉄基粒子の鉄とが結合していたので、この絶縁被膜から炭素を気化させるための熱処理を行なうと、この絶縁被膜を備える軟磁性材料より得られた圧粉磁心の耐熱性を向上できることが確認できた。また、この結果から、本発明によれば、絶縁被膜が酸素との親和性の高い物質(M)を有する有機酸由来の有機基を含んでいると、絶縁被膜中の上記物質(M)の密度を高めることができると考えられる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の軟磁性材料および圧粉磁心は、たとえば、モーターコア、電磁弁、リアクトルもしくは電磁部品一般に利用される。
10 鉄基粒子、20,20a,20b 絶縁被膜、30 複合磁性粒子。
Claims (5)
- 鉄を含む鉄基粒子と、前記鉄基粒子の表面を取り囲む絶縁被膜とを有する複数の複合磁性粒子を備えた軟磁性材料であって、
前記絶縁被膜は、チタン、アルミニウム、シリコン、カルシウム、マグネシウム、バナジウム、クロム、ストロンチウムおよびジルコニウムからなる群より選ばれた少なくとも一種の物質を有する有機酸由来の有機基を含み、
前記絶縁被膜の前記有機酸由来の有機基を介して、前記絶縁被膜の前記少なくとも一種の物質と前記鉄基粒子の鉄とが結合している、軟磁性材料。 - 前記絶縁被膜の平均膜厚が20nm以上200nm以下である、請求項1に記載の軟磁性材料。
- 前記鉄基粒子の平均粒径が5μm以上500μm以下である、請求項1または2に記載の軟磁性材料。
- 前記絶縁被膜は、一の絶縁被膜であり、
前記一の絶縁被膜の表面を取り囲む他の絶縁被膜をさらに備え、
前記他の絶縁被膜は、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂、および高級脂肪酸塩の少なくともいずれかよりなる、請求項1〜3のいずれかに記載の軟磁性材料。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の軟磁性材料を用いて作製された、圧粉磁心。
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