JP2003034108A - 安全タイヤ - Google Patents

安全タイヤ

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JP2003034108A
JP2003034108A JP2002128555A JP2002128555A JP2003034108A JP 2003034108 A JP2003034108 A JP 2003034108A JP 2002128555 A JP2002128555 A JP 2002128555A JP 2002128555 A JP2002128555 A JP 2002128555A JP 2003034108 A JP2003034108 A JP 2003034108A
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tire
compression elastic
elastic body
hollow body
composite
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JP2002128555A
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Toshiyuki Ishiguro
俊行 石黒
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Bridgestone Corp
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Bridgestone Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 通常走行時における転がり抵抗および乗り心
地性を犠牲にすることなく、タイヤ受傷後にあっても安
定した走行を可能とした安全タイヤの提供。 【解決手段】 互いに独立に存在する複数の圧縮弾性体
をタイヤ内側に配置した安全タイヤにより、上記課題を
解決する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、タイヤ、特に安全
タイヤに関する。特に、本発明は、外傷を受けた後も通
常の走行が可能であり、安全に退避できるのに十分な空
気圧を所定時間保持する安全タイヤ、特にタイヤ受傷後
の走行における耐久性および乗り心地性が共に優れた安
全タイヤに関する。さらに、本発明は、該安全タイヤに
用いる圧縮弾性体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、パンク状態においても走行を
可能とする、安全タイヤについて多くの提案がなされて
いる。例えば、自動車用の空気入り安全タイヤとして、
二重壁構造を有するもの、タイヤ内に荷重支持装置を配
設したもの、タイヤサイド部を補強したものなど種々の
タイプのものが提案されている。
【0003】これらの提案のうち、タイヤサイド部を補
強する手法は、タイヤ重量を30〜40%も増加してタ
イヤの縦ばね定数を上昇するため、転がり抵抗の大幅な
悪化とパンク前の通常走行時の乗り心地性低下を招く不
利がある。
【0004】また、タイヤ内に荷重支持装置を配設する
手法、例えばリムに中子などの内部支持体を配設する手
法は、パンク後のランフラット時にタイヤと内部支持体
との間で発生する、局所的な繰り返し応力への耐久性が
低いこと、及び内部支持体を配設する作業が煩雑で長時
間を要することなどの問題を有していた。
【0005】さらに、二重壁構造の手法として、タイヤ
とこれに組付けるリムとの組立体の内部空洞へ独立気泡
を有する複合体を充填したタイヤが提案されている(例
えば特開平6−127207号公報、特開平6−183
226号公報、特開平7−186610号公報および特
開平8−332805号公報などを参照のこと)。これ
らのタイヤは、主に農耕用タイヤなど特殊な用途に限ら
れており、乗用車用タイヤなど、転がり抵抗や乗り心地
性を重視するタイヤへの適用は未知数であった。また、
ここで用いた気泡を有する複合体は、予想外に重量が大
きく、振動乗り心地性及び燃費の悪化をもたらしてい
た。
【0006】特許第2987076号公報は、発泡体充
填材を内周部に挿入したパンクレスタイヤを開示する。
しかし、このタイヤは、気泡内圧が大気圧に極めて近
く、タイヤ転動時のくり返し変形により発泡体が発熱
し、大幅に耐久性が低下するなどの欠点を有していた。
【0007】特開昭48−47002号公報は、独立気
泡を主体とする多気泡体の外周をゴム等の外包皮膜で一
体的に包被密封した膨張圧力気泡体の多数をタイヤ内に
充填し、該タイヤを規定内圧に保持した、パンクレスタ
イヤを開示する。しかしながら、このパンクレスタイヤ
は、製造工程において不所望なブローン現象が発生し、
それに付随する問題、又はそれを回避するための問題を
有していた。さらに、特開昭50−38203号公報
は、独立気泡性の発泡粒子をタイヤ内に充填するタイヤ
を開示する。しかしながら、このタイヤは、タイヤ損傷
時の発熱性及び/又は耐久性に問題を有していた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的
は、従来の課題を解決することにある。具体的には、本
発明の目的は、通常走行時における転がり抵抗および乗
り心地性を犠牲にすることなく、タイヤ受傷後にあって
も安定した走行を可能とした安全タイヤを提供すること
にある。また、本発明は、上記目的の他に、又は上記目
的に加えて、上記安全タイヤ内側に配置するのが好適で
ある圧縮弾性体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】発明者らは、鋭意検討し
た結果、以下の発明により上記課題を解決できることを
見出した。 即ち、<1> 互いに独立に存在する複数の圧縮弾性体
をタイヤ内側に配置した安全タイヤ。 <2> 上記<1>において、圧縮弾性体は中空体を有
してなり、該中空体は気体又は複合体を有してなるのが
よい。
【0010】<3> 上記<2>において、中空体が、
ポリオレフィン類、熱可塑性ポリウレタン、及びブチル
系ゴムを有してなるゴム組成物からなる群から選ばれる
少なくとも1種からなるのがよい。 <4> 上記<2>において、中空体が、熱可塑性ポリ
ウレタンから成るのがよい。
【0011】<5> 上記<2>〜<4>のいずれかに
おいて、中空体の30℃における空気透過係数が、10
−10〜10−9(cc・cm/(cm・s・cmH
g))であるのがよい。 <6> 上記<2>〜<5>のいずれかにおいて、気体
は、空気及び/又は窒素であるのがよい。
【0012】<7> 上記<2>〜<6>のいずれかに
おいて、複合体は、重合体と連続気泡とを有してなるの
がよい。 <8> 上記<7>において、重合体が、極性官能基を
分子中に有する重合体類、ポリオレフィン類及びエラス
トマー類からなる群から選ばれる少なくとも1種を有し
てなるのがよい。
【0013】<9> 上記<8>において、極性官能基
を分子中に有する重合体類が、ポリウレタン、メラミン
樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリロニトリル系
重合体、アクリル系重合体、塩化ビニリデン系重合体、
アクリロニトリル/スチレン樹脂、又はポリエステル樹
脂であるのがよい。 <10> 上記<8>において、極性官能基を分子中に
有する重合体が、ポリウレタンであるのがよい。
【0014】<11> 上記<9>において、アクリロ
ニトリル系重合体は、アクリロニトリル重合体、アクリ
ロニトリル/メタアクリロニトリル共重合体、アクリロ
ニトリル/メチルメタクリレート共重合体、及びアクリ
ロニトリル/メタアクリロニトリル/メチルメタクリレ
ート3元共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1
種であるのがよい。
【0015】<12> 上記<9>において、アクリル
系重合体は、メチルメタクリレート樹脂、メチルメタク
リレート/アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリ
レート/メタアクリロニトリル共重合体、及びメチルメ
タクリレート/アクリロニトリル/メタアクリロニトリ
ルクリレート3元共重合体からなる群から選ばれる少な
くとも1種であるのがよい。
【0016】<13> 上記<9>において、塩化ビニ
リデン系重合体が、塩化ビニリデン/アクリロニトリル
共重合体、塩化ビニリデン/メチルメタクリレート共重
合体、塩化ビニリデン/メタアクリロニトリル共重合
体、塩化ビニリデン/アクリロニトリル/メタアクリロ
ニトリル共重合体、塩化ビニリデン/アクリロニトリル
/メチルメタクリレート共重合体、塩化ビニリデン/メ
タアクリロニトリル/メチルメタクリレート共重合体、
及び塩化ビニリデン/アクリロニトリル/メタアクリロ
ニトリル/メチルメタクリレート共重合体からなる群か
ら選ばれる少なくとも1種であるのがよい。
【0017】<14> 上記<8>において、エラスト
マー類が、熱可塑性エラストマー又はイオウ硬化性エラ
ストマーであるのがよい。 <15> 上記<3>及び<8>において、ポリオレフ
ィン系樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹
脂、及びポリスチレン/ポリエチレン共重合体からなる
群から選ばれるのがよい。
【0018】<16> 上記<14>において、イオウ
硬化性エラストマーが、イソブチレン/パラメチルスチ
レン共重合体のハロゲン化物、ブチルゴム、及びハロゲ
ン化ブチルゴムからなる群から選ばれるのがよい。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の安全タイヤ及びこれに用
いられる圧縮弾性体について、以下に詳細に説明する。
まず、本発明の安全タイヤについて説明する。図1は、
本発明の安全タイヤの幅方向断面図を示す。
【0020】図1の安全タイヤは、タイヤ1の内部に、
複数の圧縮弾性体2を配置して成る。圧縮弾性体2は、
タイヤ1の内側、特にタイヤ内空洞部に配置することが
できる。特に、図1は、タイヤ内圧を付加する前の、本
発明の圧縮弾性体2の配置を示している。なお、タイヤ
1は、各種自動車用タイヤ、例えば乗用車用タイヤなど
の一般に従うものであれば、特に構造は限定されない。
例えば、図1のタイヤは一般的な自動車用タイヤを例示
しており、1対のビードコア3間でトロイド状に延びる
カーカス4のクラウン部に、その半径方向外側へ順にベ
ルト5およびトレッド6を配置して成る。符号7及び8
はぞれぞれインナーライナー層およびリムを表す。
【0021】圧縮弾性体2は、中空体を有し、さらに中
空体の内部に、気体又は複合体を含んで成るのがよい。
なお、本明細書において、「圧縮弾性体」とは、圧縮し
たときに体積が変化し且つ応力を発揮し、該圧縮を解除
したときに復元能を有するものをいう。
【0022】また、複数の圧縮弾性体は、そのすべてが
中空体内に気体を内包して成っても、そのすべてが中空
体内に複合体を内包して成ってもよい。複数の圧縮弾性
体のうち、一部がその中空体内に気体を内包して成って
おり、他の残りがその中空体内に複合体を内包してなっ
てもよい。さらに、複数の圧縮弾性体に含まれる中空体
種、気体種及び複合体種は、1種であっても2種以上で
あってもよい。
【0023】本発明の圧縮弾性体の中空体は、それ自体
がある所定の形状へと自己回復する自己回復能を有して
いてもよい。例えば、本発明の圧縮弾性体が中空体内部
に気体を含有して成る場合、該中空体が自己回復能を有
することが有効である。
【0024】中空体は、その30℃における空気透過係
数が、10−10〜10−9cc・cm/(cm・s
・cmHg)であるのがよい。
【0025】本発明に用いられる中空体は、上記特性を
有する材料から成るのがよい。具体的には、本発明に用
いられる中空体は、ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレ
タン、及びブチル系ゴムを有してなるゴム組成物からな
る群から選ばれる少なくとも1種からなるのがよい。特
に伸縮性を有する熱可塑性ポリウレタンであるのが好ま
しい。ポリオレフィンとして、ポリエチレン、ポリプロ
ピレン、及びポリスチレン/ポリエチレン共重合体など
を挙げることができ、ポリエチレンが好ましい。また、
ブチル系ゴムとして、イソブチレン/パラメチルスチレ
ン共重合体のハロゲン化物、ブチルゴム及びハロゲン化
ブチルゴムを挙げることができる。
【0026】中空体は、その厚さが10〜200μm、
好ましくは20〜100μmであるのがよい。
【0027】中空体2は、上述のように、その内部に、
気体又は複合体を内包してなるのがよい。中空体が気体
を含んで成る場合、該気体として、種々の気体を用いる
ことができる。例えば、安定性の高いものを挙げること
ができる。安定性の高い気体として、空気及び/又は窒
素を挙げることができる。空気及び窒素の双方を用いる
場合、それらの混合比は、いかなる混合比も採ることが
できる。
【0028】また、中空体2は、その内部に複合体を含
んで成ってもよい。中空体に含まれれる複合体は、重合
体と連続気泡を有する。なお、本明細書において、「連
続気泡」の語に代えて、「連通孔」又は「連通気泡」の
語を用いる場合がある。
【0029】複合体を構成する重合体として、例えば、
極性官能基を分子中に有する重合体類、ポリオレフィン
類、及びエラストマー類を挙げることができるが、これ
らに限定されない。極性官能基を分子中に有する重合体
として、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリビニルアル
コール樹脂、アクリロニトリル系重合体、アクリル系重
合体、塩化ビニリデン系重合体、アクリロニトリル/ス
チレン樹脂、及びポリエステル樹脂を挙げることができ
る。
【0030】ここで、アクリロニトリル系重合体とし
て、アクリロニトリル重合体、アクリロニトリル/メタ
アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル/メチル
メタクリレート共重合体、及びアクリロニトリル/メタ
アクリロニトリル/メチルメタクリレート3元共重合体
を挙げることができる。
【0031】アクリル系重合体として、メチルメタクリ
レート樹脂、メチルメタクリレート/アクリロニトリル
共重合体、メチルメタクリレート/メタアクリロニトリ
ル共重合体、及びメチルメタクリレート/アクリロニト
リル/メタアクリロニトリルクリレート3元共重合体を
挙げることができる。
【0032】また、塩化ビニリデン系重合体として、塩
化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリ
デン/メチルメタクリレート共重合体、塩化ビニリデン
/メタアクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン/ア
クリロニトリル/メタアクリロニトリル共重合体、塩化
ビニリデン/アクリロニトリル/メチルメタクリレート
共重合体、塩化ビニリデン/メタアクリロニトリル/メ
チルメタクリレート共重合体、及び塩化ビニリデン/ア
クリロニトリル/メタアクリロニトリル/メチルメタク
リレート共重合体を挙げることができる。
【0033】ポリオレフィン類として、ポリエチレン、
ポリプロピレン、及びポリスチレン/ポリエチレン共重
合体などを挙げることができ、ポリエチレンが好まし
い。また、エラストマーとして、イソブチレン/パラメ
チルスチレン共重合体のハロゲン化物、ブチルゴム、及
びハロゲン化ブチルゴムなどのイオウ硬化性エラストマ
ー、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体
などの熱可塑性エラストマーを挙げることができる。
【0034】本発明の複合体を構成する重合体として、
特に、極性官能基を分子中に有する重合体であるのがよ
く、好ましくはポリウレタンであるのがよい。
【0035】複合体の連続気泡の径は、タイヤを用いる
用途又は目的などにより適宜選択することができ、特に
制限されない。但し、連続気泡の径が大きすぎると、複
合体自体の耐久性を損なう傾向が生じる。
【0036】複合体は、その常圧下での密度が0.01
2〜0.12g/cm、好ましくは0.015〜0.
06g/cmであるのがよい。密度が高すぎるとタイ
ヤ重量が増加する傾向が生じ、密度が低すぎると複合体
の耐久性が低くなる傾向が生じる。
【0037】本発明の複合体が発泡体からなる場合、そ
の常圧下での発泡倍率は、10〜100倍、好ましくは
20〜80倍であるのがよい。発泡倍率が低すぎるとタ
イヤ重量が増加する傾向が生じ、発泡倍率が高すぎると
複合体の耐久性が低くなる傾向が生じる。
【0038】この圧縮弾性体をタイヤ内に配置する。こ
のタイヤが一旦受傷して、タイヤ内に充填されていた空
気などが散逸し且つ圧縮弾性体Aの張力T1が消失した
としても、該圧縮弾性体Aに隣接する圧縮弾性体Bの張
力T2がT1をカバーするため、受傷状態であっても、
走行性能が著しく悪化することがない。また、圧縮弾性
体が、中空体内に気体又は複合体を内包して成る場合、
タイヤ受傷により、ある圧縮弾性体Aとタイヤ内面との
間の充填気体が散逸した場合、圧縮弾性体A内に内包さ
れていた複合体および圧縮空気の張力により、タイヤの
大幅な変形を抑制することができる。
【0039】本発明に用いられる、個々の圧縮弾性体の
体積は、目的及び用途に応じて適宜選択することがで
き、特に制限されない。本発明には、複数の圧縮弾性体
が用いられるが、それらがすべて同じ体積であっても異
なっていてもよい。但し、ある程度体積が大きすぎる
と、上記弾性体の作用が生じなくなる傾向が生じる。即
ち、受傷した圧縮弾性体Aの体積が大きすぎると、受傷
し、該圧縮弾性体Aの張力が消失したときに、この消失
が他の圧縮弾性体Bがカバーしきれない程大きくなり、
タイヤ内圧が著しく低下し、本発明の目的を達成できな
くなることがある。一方、1個の圧縮弾性体の体積が小
さすぎると、用いる中空体の量が多くなるため、タイヤ
重量が増加する傾向が生じる。また、タイヤ受傷時の穴
が大きい場合、その穴から小さな圧縮弾性体がこぼれ落
ち、所望の効果を発揮できない傾向が生じる。さらに、
体積が比較的小さな圧縮弾性体の作製に、コストがかか
る傾向が生じる。
【0040】本発明の圧縮弾性体は、そのタイヤ内の充
填量が、常圧で、タイヤ内容積の30〜100%、好ま
しくは40〜80%であるのがよい。充填量が多いと、
圧縮弾性体自体が荷重を支持することとなり、熱の発生
及びそれによる耐久性低下を招く傾向がある。
【0041】本発明のタイヤは、圧縮弾性体を配置する
以外、通常用いられるタイヤと同様に、空気などの圧縮
ガスを充填することによりタイヤ内圧を付与する。この
間、圧縮弾性体の内圧はタイヤ内圧に均衡している。一
旦受傷すると、タイヤ内圧を保持していた空気などの外
部への散逸後に生じた圧力差によって圧縮弾性体又は複
合体が外部圧力に均衡するまで膨張する。その結果、限
定された距離、限定された時間、走行可能とするのに十
分な内圧、つまりたわみ抑制能力及び荷重支持機能を圧
縮弾性体が発現することができる。従って、タイヤ構造
自体を規制する必要はなく、汎用のタイヤ、そして汎用
のリムを活用して、新たに安全タイヤを提供することが
できる。
【0042】なお、複数の圧縮弾性体を配置する際、潤
滑剤を隣接する圧縮弾性体の間に配置してもよい。これ
により、圧縮弾性体の中空体同士の摩擦を減少させるこ
とができ、圧縮弾性体の耐久性を向上させることができ
る。
【0043】ここで用いられる潤滑剤は、本業界におい
て通常用いられる種々の潤滑剤を用いることができ、特
に制限されない。例えば、中空体との親和性が高くない
特性を有するものを挙げることができ、例えばシリコン
系オイルを挙げることができる。
【0044】また、潤滑剤の量は、用いる中空体などに
依存して適宜選択でき、特に制限されない。但し、その
量が多すぎると、タイヤ重量が増加する傾向が生じる
か、及び/又はタイヤ製造の作業性を低下させる傾向が
生じ得る。
【0045】本発明の圧縮弾性体の調製法は、特に限定
されないが、例えば以下の第1〜第4の方法を挙げるこ
とができる。以下の第1〜第3の方法は、中空体が複合
体を内包する圧縮弾性体の製法であり、第4の方法は、
中空体が気体を内包する圧縮弾性体の製法である。
【0046】第1の方法は、袋状の中空体を準備し、こ
の中に複合体を入れ、その後、袋状の中空体の開口部を
閉じる方法である。開口部を閉じる方法として、用いる
中空体の材質等に依存するが、例えば、高周波シール法
及び超音波シール法などの内部加熱方式、ヒートシール
法及びインパルスシール法などの外部加熱方式などを挙
げることができる。
【0047】第2の方法は、袋状の中空体を準備し、こ
の中に発泡性組成物を入れる。この発泡性組成物は、後
に複合体となる組成物である。その後、発泡性組成物を
入れた中空体を金型内などに配置して、成形する。な
お、袋状の中空体を準備する場合、該中空体を上記金型
に密着させ成形したものを用いるのが好ましい。
【0048】第3の方法は、発泡性組成物を金型内など
に配置して、成形発泡させる方法である。この場合、発
泡させたものの最外層に生じる無発泡層が、中空体に相
当する。
【0049】第4の方法は、袋状の中空体を準備し、こ
の中に気体を充填し、その後、袋状の中空体の開口部を
閉じる方法である。開口部を閉じる方法は、上述のもの
を用いることができる。
【0050】なお、複合体として発泡性材料を用いる場
合、発泡剤を用いる方法が好ましい。発泡剤として、熱
分解によって気体を発生する熱分解性発泡剤のほか、高
圧圧縮ガス及び液化ガスなどを挙げることができる。特
に、熱分解性発泡剤は窒素を発生させる特徴のあるもの
が多く、その反応を適宜制御することによって得られる
複合体の気泡内を窒素とすることができる。
【0051】また、複合体として発泡性材料、特にウレ
タンフォームを用いる場合、発泡剤として水を用い、該
水とモノマーの一種であるイソシアネートとの反応によ
って炭酸ガスを発生させる方法を挙げることができる。
さらに、ポリマー生成時の反応熱を用いて不活性・低沸
点溶媒を気化させる物理的方法も挙げることができる。
【0052】図1に、リム組みした汎用タイヤの内部の
空洞に、所定量の圧縮弾性体を充填した状態であって、
タイヤ内圧付加前の状態を示す。図2及び図3には、タ
イヤに空気を補填し、タイヤ内圧を張った状態を示す。
この状態の初期、即ち図2に示す、タイヤ内圧付加時又
はその直後の状態において、弾性体の外圧(圧縮弾性体
の外側の圧力)が弾性体の内圧(圧縮弾性体の内側の圧
力)よりも相対的に高いため圧縮弾性体2aは、図1の
状態(2)よりも多少小さくなっている。内圧付加後、
一定時間が経過すると、図3に示す状態となる。即ち、
圧縮弾性体2cは、中空体などを通して気体が圧縮弾性
体内に進入し、弾性体の外圧に均衡する弾性体の内圧を
保持することにより、ほぼ元の大きさに戻ることができ
る(図1の圧縮弾性体2と図3の圧縮弾性体2cを参照
のこと)。また、図1〜3は、汎用タイヤへの圧縮弾性
体の適用を示す一方、図4は、ランフラットに適した構
造を持つタイヤに本発明の圧縮弾性体を適用した場合を
示す図である。すなわち、図4は、タイヤのサイドウォ
ール部の内側に硬質ゴム等によるサイド補強層9を設け
て、サイド部を補強したタイヤであって、該タイヤ内部
の空洞に、所定量の圧縮弾性体を充填し、タイヤ内圧付
加後、一定時間経過させた状態のタイヤの断面図を示し
ている。なお、ランフラットに適した構造を持つタイヤ
に関して、タイヤ内圧付加後、一定時間経過した状態
(図4)を示すのみであるが、該タイヤの場合であって
も、タイヤ内圧付加時又はその直後には図2に示すよう
な圧縮弾性体が多少小さくなる状態を示す。
【0053】さらに、図5は、汎用タイヤの受傷後、タ
イヤ内がタイヤ外の圧力(常圧)と同じになった状態を
示すタイヤ断面図である。この状態で、各圧縮弾性体は
膨張し、隣接する膨張した圧縮弾性体同士が密着した状
態となる。その結果、その断面図を見ると、圧縮弾性体
は、図5に示すようなハニカム状態又は擬ハニカム状態
(2b)となる。タイヤが受傷するとタイヤに補填した
空気が外部へ散逸するが、この空気の散逸後に生じた圧
力差によって圧縮弾性体が膨張し図5に示すようなハニ
カム状態をとる。このハニカム状態により、限定された
距離を走行可能とするに足るタイヤ内圧、つまりたわみ
抑制能力並びに荷重支持機能を、圧縮弾性体が発現する
ことができるため、ランフラットタイヤとして十分な性
能を有するものとなる。なお、圧縮弾性体内に複合体を
有する場合、複合体自身の大きさはタイヤ受傷後であっ
ても変化しないように設計することができる。
【0054】
【実施例】以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
ない。 (実施例1〜5及び比較例1〜3)実施例1〜5及び比
較例3において、表1に記載した中空体材質、該中空体
材質に表1記載の複合体を内包してなる圧縮弾性体を調
製した。該圧縮弾性体を図1に示した構造のタイヤに適
用した。一方、比較例1及び2は、中空体材料も、該中
空体に内包する複合体も用いなかった。なお、比較例1
は図1に示す構造のタイヤを形成し、比較例2は図3に
示すサイド補強ゴム層を有するタイヤを形成した。
【0055】実施例1〜5及び比較例1〜3で調製した
タイヤは、いずれもサイズ175/70R13の乗用車
用安全タイヤであり、圧縮弾性体を用いる場合はいずれ
もサイズ5J×13のリムに組み込んだ。表1におい
て、「LDPE」は東洋紡社製の低密度ポリエチレン
(密度:0.93、融点:110℃)を表し、「LLD
PE」は宇部興産社製の直鎖状低密度ポリエチレン(密
度:0.92、融点:120℃)を表す。また、複合体
として用いた「ポリウレタン」は、バイエル社製のポリ
ウレタン(U073)であった。
【0056】表1中、「複合体50%圧縮時弾性率(g
/cm)」は、用いた複合体を5×5×5cmの立方
体に切り出して、直径10cmのパラレルプレートで高
さが50%まで圧縮した際に得られる圧縮応力を、島津
製作所製オートグラフを用いて測定した結果を示す。な
お、比較例2で用いるサイド補強ゴムの配合を表2に示
す。
【0057】実施例1〜5及び比較例1〜3で得られた
タイヤに関して、(A)RF耐久試験でタイヤが径:3
mmおよび長さ:3cmの釘による外傷を受けてからの
走行可能距離(km)、(B)転がり抵抗係数、及び
(C)振動乗り心地性を測定した。これらの結果も表1
に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】以下に、上記(A)〜(C)の詳しい測定
方法を記載する。 (A)RF耐久試験でタイヤが径:3mmおよび長さ:
3cmの釘による外傷を受けてからの走行可能距離(k
m)の評価 実施例1〜5及び比較例1〜3で得られたタイヤを、1
500ccクラスの乗用車に装着した。次いでタイヤに
径:3mmおよび長さ:3cmの釘をタイヤトレッドの
外側からトレッドに貫通させることによって外傷を与え
た。その後、4名乗車時に相当する荷重を負荷して、テ
ストコースを90km/hで走行させて最大500km
の走行を実施した。走行可能距離200km以上を合格
とした。
【0061】(B)転がり抵抗係数の評価 転がり抵抗計測試験において、上述のタイヤに内圧:2
00kPaにて381kgfを負荷した状態で直径17
07mmのドラムに押し付けて、時速200km/hか
ら惰力走行をして、回転中の速度の変化の度合いから転
がり抵抗係数を算出した。表1において、比較例1の転
がり抵抗係数を100として実施例1〜5並びに比較例
2及び3の値を標準化して、その値を記載した。なお、
値が小さければ小さいほど、転がり抵抗係数が小さく、
良好なタイヤを提供することを示す。
【0062】(C)振動乗り心地性の評価 振動乗心地性は、上述で得られたタイヤを1500cc
クラスの乗用車に装着し、4名乗車時に相当する荷重を
負荷して、テストコースを走行した際のドライバーのフ
ィーリング評価で行った。評価はドライバー2名による
一定基準に従った絶対評価で行い、その平均を示してい
る。評点が高いほど、振動乗心地に優れていることを表
す。
【0063】表1を見れば明らかなように、実施例1〜
5の本発明を適用したタイヤは、良好な転がり抵抗係数
及び振動乗り心地性をもたらすことができ、かつ受傷後
も500kmという長距離を走行しても異常が発生しな
かった。一方、比較例1及び2は、中程度の値の転がり
抵抗係数及び振動乗り心地性を示すが、受傷後の走行距
離が短く、所望の安全タイヤを提供することができなか
った。なお、比較例3は、十分な受傷後走行距離を有す
るが、タイヤの重量増加が著しく、かつ振動乗り心地性
も十分なものではなかった。
【0064】
【発明の効果】本発明により、従来の課題を解決するこ
とができる。具体的には、本発明により、通常走行時に
おける転がり抵抗および乗り心地性を犠牲にすることな
く、タイヤ受傷後にあっても安定した走行を可能とした
安全タイヤを提供することができる。また、本発明によ
り、上記効果の他に、又は上記効果に加えて、上記安全
タイヤ内側の充填物として好適な圧縮弾性体を提供する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 汎用タイヤの場合のタイヤ内圧を付加する前
の、圧縮弾性体2を配置した本発明の安全タイヤのタイ
ヤ幅方向断面図である。
【図2】 図1の状態からタイヤ内圧を付加した際、ま
たはその直後の本発明の安全タイヤのタイヤ幅方向断面
図であって、タイヤ内圧によって圧縮弾性体2aが多少
小さくなった状態を示す図である。
【図3】 図2のタイヤ内圧付加後、一定時間経過した
際の本発明の安全タイヤのタイヤ幅方向断面図であっ
て、圧縮弾性体2cが図1の圧縮弾性体2とほぼ同じ大
きさに戻った状態を示す図である。
【図4】 サイドウォール部にゴム補強層を有するラン
フラットに適した構造を有するタイヤの幅方向断面図で
あって、タイヤ内圧付加後、一定時間経過した状態を示
す図であって、圧縮弾性体2cが内圧付加前とほぼ同じ
大きさに戻った状態を示す図である。
【図5】 この発明に従う、受傷後の安全タイヤのタイ
ヤ幅方向断面図である。
【符号の説明】
1 タイヤ 2 圧縮弾性体 2a タイヤ内圧付加時の圧縮された圧縮弾性体 2b 受傷後、内圧低下時に膨張した圧縮複合体 2c タイヤ内圧付加後、一定時間経過した際の、圧縮
から解放された圧縮弾性体 2d 圧縮弾性体内の複合体 3 ビードコア 4 カーカス 5 ベルト 6 トレッド 7 インナーライナー層 8 リム 9 サイド補強層

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 互いに独立に存在する複数の圧縮弾性体
    をタイヤ内側に配置した安全タイヤ。
  2. 【請求項2】 前記圧縮弾性体は中空体を有してなり、
    該中空体は気体又は複合体を有してなる請求項1記載の
    安全タイヤ。
  3. 【請求項3】 前記中空体が、ポリオレフィン類、熱可
    塑性ポリウレタン、及びブチル系ゴムを有してなるゴム
    組成物からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる
    請求項2記載の安全タイヤ。
  4. 【請求項4】 前記中空体が、熱可塑性ポリウレタンか
    ら成る請求項2記載の安全タイヤ。
  5. 【請求項5】 前記中空体の30℃における空気透過係
    数が、10−10〜10−9(cc・cm/(cm
    s・cmHg))である請求項2〜請求項4のいずれか
    1項記載の安全タイヤ。
  6. 【請求項6】 前記気体は、空気及び/又は窒素である
    請求項2〜請求項5のいずれか1項記載の安全タイヤ。
  7. 【請求項7】 前記複合体は、重合体と連続気泡とを有
    してなる請求項2〜請求項6のいずれか1項記載の安全
    タイヤ。
  8. 【請求項8】 前記重合体が、極性官能基を分子中に有
    する重合体類、及びエラストマー類からなる群から選ば
    れる少なくとも1種を有してなる請求項7記載の安全タ
    イヤ。
  9. 【請求項9】 前記極性官能基を分子中に有する重合体
    類の1つが、ポリウレタンである請求項8記載の安全タ
    イヤ。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006240470A (ja) * 2005-03-03 2006-09-14 Bridgestone Corp 安全タイヤ用中空粒子の点検方法
WO2011021834A2 (ko) * 2009-08-19 2011-02-24 Kang Heung Mook 다중 림과 다중 타이어를 갖는 차륜

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