JP4652083B2 - 安全タイヤ用中空粒子の点検方法 - Google Patents
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つまり、使用後のタイヤの平均粒径が使用前のそれの平均粒径に対し±10%を越える変化を起こした場合は、中空粒子の破壊や膨張が起こっていて、所望の性能を発揮できない、と判断することができる。
なお、測定された粒度分布がほぼ正規分布と判断される場合には、頻度分布曲線のピークから求める最大頻度径をもって平均粒径としても良い。
走行前のタイヤ内の中空粒子および、使用したタイヤ内の中空粒子のそれぞれの全体積を求めるとともに、それらの全体積の変化率に基いて、使用したタイヤ内の中空粒子の適否の判定を行うにある。
この場合は、たとえば、使用後の充填率が使用前の充填率に対して、−15%〜+5%の範囲を超える変化を起こした場合は、中空粒子の性能劣化が起こっている、と判定することができる。
ここで「全体積」とは、全ての中空粒子の体積の合計を意味する。
つまり、タイヤの新品時のタイヤ気室内容積に対し、走行入力を受けたタイヤの内容積は+5%程度の増加傾向を示す為、中空粒子の体積変化が無くとも、あたかも体積減少が起こったかのような、誤差を含むデータが得られてしまう為である。
ところで、ここで言うタイヤ内容積の増加率は、タイヤの構造や使用環境によって異なる為、一概に何%と定義することは難しい。
従って、その粒度分布に基いて、例えば、平均粒径が±10%以上変化していた場合は、中空粒子が健全な状態とは言えない、つまり、中空粒子の破壊や膨張が起こっていると判断し、充填粒子の速やかな交換等を行うこととする。
例えば、色差計にて測定したb*値が3以上の変化を起こした時には、中空粒子の健全性を疑うに足る熱履歴を受けたと考えることができるので、タイヤ内の中空粒子を不適当なものと判定してそれらの入れ替え等を行う。
アクリロニトリル共重合体を主成分とする中空粒子を例に挙げるなら、当初、白色〜クリーム色であったものが、熱履歴を受ける事により色調変化を起こし、オレンジ色〜茶褐色へと変化する為、その変化をb*値にて捉えやすく、中空粒子の健全性を判断する材料として応用できるものである。
図示の安全タイヤは、タイヤ1をリム2に装着し、該タイヤ1とリム2とで区画されたタイヤ気室3に、熱膨張可能な、樹脂による連続相と独立気泡とからなる中空粒子4の多数を、加圧下で配置してなる。
なおここで、タイヤ1は、規格に従う各種自動車用タイヤ、たとえば、トラックやバス用タイヤ、乗用車用タイヤ等であれば、特に構造を限定する必要はない。すなわち、この発明はタイヤとリムとの組立体になるすべての安全タイヤに適用できる技術であり、図示のタイヤは、1対のビードコア5間でトロイド状に延びるカーカス6のクラウン部に、その半径方向外側へ順にベルト7およびトレッド8を配設してなる一般的な自動車用タイヤである。
図において、符号9はインナーライナー層、符号10は中空粒子4周囲の空隙、そして11はサイド部をそれぞれ示す。
また、この粒子が独立気泡を有することは、該粒子が独立気泡を密閉状態で内包するための『樹脂製の殻』を有することを指し、さらに、樹脂による連続相とは、この『樹脂製の殻を構成する成分組成上の連続相』を指す。なお、この樹脂製の殻の組成は後述のとおりである。
ここで、『使用内圧』とは、『自動車メーカーが各車両毎に指定した、装着位置ごとのタイヤ気室圧力値(ゲージ圧力値)』を指す。
更に、この加熱膨張によって得られた中空粒子を室温から再度加熱すると、中空粒子は更なる膨張を開始し、ここに中空粒子の膨張開始温度Ts2が存在する。発明者らは、これまで多くの膨張性樹脂粒子から中空粒子を製造し検討を重ねてきた結果、Ts1を膨張特性の指標としてきたが、中空粒子の膨張特性の指標としてはTs2が適切であることを見出すに到った。
この一方で、中空粒子を再度加熱膨張させる場合には、中空粒子の殻部の厚さが極端に薄く、中空体としての剛性が低い状態にある。したがって、加熱膨張の過程で殻部の連続相がガラス転移点を越えると同時に膨張を開始するため、Ts2はTs1より低い位置づけとなる。
これはすなわち、中空粒子のTs2が90℃未満では、常用走行時のタイヤ気室内の温度環境下にて膨張するおそれがあるからであり、一方200℃を超えると、パンク受傷後のランフラット走行において、中空粒子の摩擦発熱に起因する急激な温度上昇が起こっても、Ts2に達することが出来ない場合があり、よって目的とする『内圧復活機能』を十分に発現させることが出来なくなる場合がある。
R1−O−R2・・・・ (I)
(式中のR1およびR2は、それぞれ独立に炭素数が1から5の一価の炭化水素基であり、該炭化水素基の水素原子の一部をフッ素原子に置き換えても良い)にて表されるエーテル化合物、からなる群の中から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
また、タイヤ気室内に充填する気体は空気でも良いが、上記粒子中の気体がフルオロ化物でない場合には、安全性の面から酸素を含まない気体、たとえば窒素や不活性ガス等が好ましい。
この発泡剤としては、高圧圧縮ガス及び液化ガスなどの蒸気圧を活用する手法、熱分解によって気体を発生する熱分解性発泡剤を活用する手法などを挙げることができる。
中空粒子を形成する前記樹脂による連続相を重合する際、炭素数が2から8の直鎖状及び分岐状の脂肪族炭化水素およびそのフルオロ化物、炭素数が2から8の脂環式炭化水素およびそのフルオロ化物、そして次の一般式(II):
R1−O−R2・・・・ (II)
(式中のR1およびR2は、それぞれ独立に炭素数が1から5の一価の炭化水素基であり、該炭化水素基の水素原子の一部をフッ素原子に置き換えても良い)にて表されるエーテル化合物、からなる群の中から選ばれた少なくとも1種を発泡剤として高圧下で液化させ、反応溶媒中に分散させつつ、乳化重合させる手法である。これにより上記に示されるガス成分を液体状態の発泡剤として前述の樹脂連続相にて封じ込めた『膨張性樹脂粒子』を得ることができ、これを加熱膨張させる事によって、所望の中空粒子を得る事が出来る。
すなわち、連続相を構成する樹脂は、ガス透過性の低い材質によること、具体的には、アクリロニトリル系共重合体、アクリル系共重合体、塩化ビニリデン系共重合体のいずれか少なくとも1種からなることが好ましい。これらの材料は、タイヤ変形による入力に対して中空粒子としての柔軟性を有するため、安全タイヤに適用して特に有効である。
なぜなら、通常の空気入りタイヤにおけるインナーライナー層のガス透過係数は300×10-12(cc・cm/cm2・s・cmHg)以下のレベルにあって十分な内圧保持機能を有している実績を鑑み、粒子の連続相についても、30℃におけるガス透過係数を300×10-12(cc・cm/cm2 ・s・cmHg)以下とした。ただし、このガス透過係数のレベルでは、3〜6カ月に1度程度の内圧補充が必要であるから、そのメンテナンス性の点からも、20×10-12 (cc・cm/cm2 ・s・cmHg)以下、さらに好ましくは2×10-12(cc・cm/cm2・s・cmHg)以下とすることが推奨される。
つまり、受傷部の傷口はタイヤ気室内の気体が漏れ出る流路となるが、中空粒子は、その流路内に『圧密』状態で入り込んで多数の中空粒子によって流路を詰まらせることができる。
したがって、パンクの原因となった傷口は、中空粒子によって、瞬時にかつ確実に塞がれることになる。
ここでこの判定は、その粒度分布に基いて、たとえば、平均粒径が±10%以上変化していた場合は、中空粒子が健全な状態ではないと判断することによって行うことができる。
この場合は、たとえば、中空粒子を液体中に分散させ、壊れた中空粒子を沈下させることによって、非破壊粒子と破壊粒子とを弁別し、そして、特定質量の中空粒子中に占める破壊粒子の比率がたとえば1%に達したときは、中空粒子の劣化等が全体的に進行していると判断して、平均粒径、体積変化率等のいかんにかかわらず、無条件で中空粒子の全てを交換することにより、タイヤ1のパンク時等における、中空粒子の不測の不作用のおそれを有効に取り除くことができる。
走行前後のタイヤ内から採取したそれぞれの中空粒子を、n−ヘキサン中に分散させて、壊れた中空粒子を沈下させる。
上記ヘキサンに浮いているそれぞれの非破壊中空粒子の、所定質量(3g)分の粒度分布を下記の装置をもって測定した。
機器:Sympatec GmbH 社製、レーザー回折式粒度分布測定装置 HELOS & RODOSシステム
測定条件:2S−100ms/DRY
分散圧:2.00bar、送り:50.00%、回転60.00%、形状係数:1.00
なお図2中の仮想線は、タイヤ内圧を一旦大気圧として、中空粒子に内圧回復機能を発揮させた後の粒度分布を示し、そして、実線及び破線はそれぞれ、使用前、および使用後のそれぞれの粒度分布を示す。
図はそれぞれ、松本油脂製薬株式会社の試作品中空粒子である。その代表物性を表1に示す。
その走行前後の粒度分布を、図2(a)に実線及び破線にて示す。
更に、その走行後タイヤを3.0リッタークラスのセダン型乗用車(前輪駆動)に装着し、バルブコアより内圧を除去した後にバルブコアを戻し、0kPaからランフラット走行を開始した。そのランフラット走行後の粒度分布を、図2(a)上に仮想線によって示す。このランフラット走行は、一周4kmのテストコース周回路を、時速90km/hにて30分間巡航することにより行った。装着輪は左前輪で、該当輪にかかる車重は550kgfである。
更に、その走行後タイヤを同クラスの乗用車に装着して上述したと同様にランフラット走行を行った。そのランフラット走行後の粒度分布を、図2(b)に仮想線で示す。この時、該当輪にかかる車重は390kgfである。
タイヤバルブに取り付け可能な、三又の治具を作製する。残る二又の内の一つは、タイヤへの空気充填や内圧調整が可能なタイヤバルブ状とする。残る一つは、耐圧ホースなどにより、開閉可能なボールバルブを経由して、体積流量計へと導かれる。上記タイヤに、ゲージ圧で200kPaの空気を充填した後、ボールバルブを開放して、排出された充填空気量を体積流量計によって測定する事により、中空粒子体積を求めることができる。
例えば、空タイヤから排出された充填空気が60リットルであった場合、そのタイヤの内容積は30リットルである。同様に、同タイヤに中空粒子が封入されている場合、中空粒子がタイヤ外に排出されないように、つまり充填空気のみを排出して、その排出量が40リットルに減少していたら、充填されている中空粒子の総体積は10リットルであった事がわかる。
機器:株式会社シナガワ製、DRY TEST GAS METER DC−2C
測定条件:25℃、流速2リットル/分以下、充填には空気を使用。
タイヤ内圧200kPaから0kPaまでの排出量を計測し、中空粒子体積に換算。
実施例1で述べたそれぞれのタイヤについての測定結果を表3および4に示す。
使用したタイヤ中から採取した特定質量(10g)の中空粒子を、n−ヘキサン中に分散させて、沈下した破壊粒子の質量を測定した。その後、走行前に充填した中空粒子の総質量に対する、破壊粒子の質量の割合を算出した。
実施例1で述べたそれぞれのタイヤについての測定結果を表5および6に示す。
使用したタイヤ中から採取した適量の中空粒子を、PE等の透明な袋に移し、平らに整形した後、袋の外側から色差計を当て、中空粒子の色調を数値化した。
機器:MINOLTA製 CHROMA METER(色彩色差計) CR-200
実施例1で述べたそれぞれのタイヤについての測定結果を表7および8に示す。
2 リム
3 タイヤ気室
4 中空粒子
5 ビードコア
6 カーカス
7 ベルト
8 トレッド
9 インナーライナー層
11 サイド部
Claims (5)
- タイヤの、リムへの装着姿勢の下で、タイヤとリムとで区画されたタイヤ気室内に、樹脂よりなる連続相と、それに囲まれた独立気泡とからなる熱膨張可能な中空粒子の多数個を加圧下で封入してなる安全タイヤにおいて、
走行前のタイヤ内もしくは、それと同一の条件下の中空粒子および、使用したタイヤ内の中空粒子のそれぞれを採取し、所定量のそれぞれの中空粒子の粒度分布を測定するとともに、測定結果を相互に対比して、使用したタイヤ内の中空粒子の適否を判定する安全タイヤ用中空粒子の点検方法。 - 使用したタイヤ内の中空粒子の適否の判定を、平均粒径の変化によって行う請求項1に記載の安全タイヤ用中空粒子の点検方法。
- タイヤの、リムへの装着姿勢の下で、タイヤとリムとで区画されたタイヤ気室内に、樹脂よりなる連続相と、それに囲まれた独立気泡とからなる熱膨張可能な中空粒子の多数個を加圧下で封入してなる安全タイヤにおいて、
走行前のタイヤ内の中空粒子および、使用したタイヤ内の中空粒子のそれぞれの全体積を求めるとともに、それらの全体積の変化率に基いて、使用したタイヤ内の中空粒子の適否の判定を行う安全タイヤ用中空粒子の点検方法。 - タイヤ内で破壊した中空粒子の量をも考慮して中空粒子の適否を判定する請求項1〜3のいずれかに記載の安全タイヤ用中空粒子の点検方法。
- 使用したタイヤ内の中空粒子の色調をも考慮して中空粒子の適否を判定する請求項1〜4のいずれかに記載の安全タイヤ用中空粒子の点検方法。
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