JP2009190319A - タイヤ及びリム組立体の内部に配置する中空粒子組成物の製造方法と中空粒子組成物 - Google Patents

タイヤ及びリム組立体の内部に配置する中空粒子組成物の製造方法と中空粒子組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】液体及び繊維が均一に分散した中空粒子組成物を提供することのできる、新規な中空粒子組成物の製造方法について提案する。
【解決手段】タイヤ及びリム組立体の内部に配置する、樹脂による連続相と独立気泡とからなる中空粒子の多数に液体及び繊維を添加した中空粒子組成物を製造するに当り、前記中空粒子に液体を添加して攪拌を行い、その後繊維を添加して攪拌を行う。
【選択図】なし

Description

本発明は、タイヤが外傷等を受けることによってパンク状態となってなお、必要とされる距離を安全に継続走行することができるタイヤ及びリム組立体の製造に用いる、中空粒子を主体とした中空粒子組成物の製造方法に関するものである。
タイヤをリムに装着し、該タイヤとリムとで区画された空間内へ、樹脂による連続相と、大気圧より高圧に保持された独立気泡とからなる中空粒子を多数個封入してなる安全タイヤは、たとえば、出願人の先の提案に係る特許文献1に記載されている。
この安全タイヤでは、タイヤが受傷して内圧が低下し始めると、気泡含有粒子と称する中空粒子が受傷部を封止し、急激な内圧低下が抑制される一方で、タイヤ内圧の低下に伴いタイヤの撓み量が増加し、タイヤ内容積が減少することによって、中空粒子そのものが直接的に荷重を負担することとなり、その後の走行に必要な最低限のタイヤ内圧を保持することになる。また、受傷前のタイヤ内圧下で存在していた中空粒子の独立気泡中の気泡内圧力は、受傷後も上記のタイヤ内圧に準じた圧力を保ったまま、言い換えれば、受傷前の粒子総体積を保持したままタイヤ内に存在することになるため、タイヤがさらに転動することによって、中空粒子そのものが直接的に荷重を負担しつつ中空粒子同士が摩擦を引き起して自己発熱し、これにより、タイヤ内の粒子温度が急上昇して、該温度が中空粒子の連続相を形成する樹脂の軟化温度を超えると、中空粒子の独立気泡中の気泡内圧力が受傷前のタイヤ内圧に準じた圧力であるのに加え、前記粒子温度の急上昇によりさらに気泡内圧力が上昇するため、中空粒子が一気に体積膨張し、タイヤ内圧は受傷前の状態に近い圧力まで復活するものである。
上記した中空粒子の径は10μm〜500μm程度と極めて小さく、また中空であるために比重も小さいことから、その取り扱いが難しい。例えば、特許文献1に記載があるように、気体とともにタイヤ内に供給するなどの工夫を必要としている。ところで、上述したように、中空粒子は、タイヤの受傷部を封止する機能を有することが特徴の1つである。この封止機能は、釘などによる小穴に対して有効であるが、サイドカットに代表される大きな傷をタイヤが受けた場合は、中空粒子による封止が及ばずに、この傷口からタイヤの外側に向けて中空粒子が連続的に多量に噴出することになる。
そこで、タイヤ気室内に中空粒子を充填したタイヤ及びリム組立体において、タイヤが大きく受傷した際に、該タイヤ内に充填した中空粒子が傷口から噴出するのを防止することが重要になる。
特開2003−118312号公報
かような背景の下、発明者は、特願2007−265488号明細書において、中空粒子に液体さらに繊維を添加した中空粒子組成物を、タイヤ及びリム組立体の内部に配置することによって、中空粒子相互の結合力を強めて中空粒子の噴出を防止することを提案した。ここで、中空粒子相互の結合力を強めて所期した効果を得るには、特に中空粒子に繊維が均一に分散していることが必要である。
そこで、本発明では、液体及び繊維が均一に分散した中空粒子組成物を提供することのできる、新規な製造方法について、提案することを目的とする。
すなわち、本発明の要旨は、次の通りである。
(1)タイヤ及びリム組立体の内部に配置する、樹脂による連続相と独立気泡とからなる中空粒子の多数に液体及び繊維を添加した中空粒子組成物を製造するに当り、前記中空粒子に液体を添加して攪拌を行い、その後繊維を添加して攪拌を行うことを特徴とするタイヤ及びリム組立体の内部に配置する中空粒子組成物の製造方法。
(2)前記中空粒子の体積に対して0.1vol%以上5.0vol%以下の液体を添加する請求項1に記載のタイヤ及びリム組立体の内部に配置する中空粒子組成物の製造方法。
(3)前記繊維は、2mm以上50mm以下の長さを有する請求項1または2に記載のタイヤ及びリム組立体の内部に配置する中空粒子組成物の製造方法。
(4)前記繊維の添加量が中空粒子の体積の0.1vol%以上1.0vol%以下である請求項1、2または3に記載のタイヤ及びリム組立体の内部に配置する中空粒子組成物の製造方法。
(5)前記液体はシリコンオイルまたは水である請求項1ないし4のいずれかに記載のタイヤ及びリム組立体の内部に配置する中空粒子組成物の製造方法。
(6)樹脂による連続相と独立気泡とからなる中空粒子の多数に、液体及び繊維を均一に分散したことを特徴とするタイヤ及びリム組立体の内部に配置する中空粒子組成物。
なお、本文中で記載するタイヤ気室の圧力とは、特に記載しない場合はゲージ圧(ゲージに示される圧力)を指す。
本発明の中空粒子組成物をタイヤ及びリム組立体の内部に配置すれば、タイヤ受傷後のタイヤ内圧低下時にあっても必要とされる距離を安定して走行し得る機能を発現し、通常走行下の低速から高速のより広い走行速度条件下においても、上記機能を確実に保持するタイヤ及びリム組立体を提供することができる。
以上の効果は、主にタイヤ内部に配置された中空粒子に負うところであり、本発明の中空粒子組成物は、中空粒子に液体及び繊維が均一に分散されているため、該液体を介して中空粒子相互が付着する力が強くなり、さらにはこの相互付着が繊維の介在によってより強固になっていることから、タイヤが稀に受ける大きな傷から中空粒子がタイヤ外側に噴出するのを防ぐことができる。
以下、本発明の中空粒子組成物を詳述するに際し、まず、該中空粒子組成物を適用して作製する、タイヤ及びリム組立体について説明する。
図1は、本発明で対象とするタイヤ及びリム組立体を例示する幅方向断面図である。図示のタイヤ及びリム組立体は、タイヤ1をリム2に装着し、該タイヤ1とリム2とで区画されたタイヤ気室3内に、樹脂よりなる連続相と独立気泡とからなる熱膨張可能な中空粒子4の多数を、加圧下で充填配置してなる。
なお、タイヤ1は、規格に従う各種自動車用タイヤ、たとえば、トラックやバス用タイヤ、乗用車用タイヤ等であれば、特に構造を限定する必要はない。すなわち、この発明はタイヤ及びリム組立体になるすべての安全タイヤに適用できる技術であり、図示のタイヤは、1対のビードコア5間でトロイド状に延びるカーカス6のクラウン部に、その半径方向外側へ順にベルト7及びトレッド8を配設してなる、一般的な自動車用タイヤである。図において、符号9は、タイヤ気室3に対して気体を給排するバルブを、10はインナーライナー層をそれぞれ示し、11はサイド部を、そして12は、中空粒子4の周囲の空隙をそれぞれ示す。
上記中空粒子4は、略球形状の樹脂による連続相で囲まれた独立気泡を有する、たとえば粒径が10μm〜500μm程度の範囲で粒径分布を持った中空体、あるいは、独立気泡による小部屋の多数を含む海綿状構造体である。すなわち、該中空粒子4は、外部と連通せずに密閉された独立気泡を内包する粒子であり、該独立気泡の数は単数であってもよいし、複数であってもよい。この明細書では、この『中空粒子群の独立気泡内部』を総称して『中空部』と表現する。また、この粒子が独立気泡を有することは、該粒子が独立気泡を密閉状態で内包するための『樹脂製の殻』を有することを指し、さらに、樹脂による連続相とは、この『樹脂製の殻を構成する成分組成上の連続相』を指す。なお、この樹脂製の殻の組成は後述のとおりである。
この中空粒子4の多数個である中空粒子群は、高圧気体とともにタイヤ気室3の内側に充填配置することによって、通常の使用条件下ではタイヤの『使用内圧』を部分的に担うと共に、タイヤ1の受傷時には、タイヤ気室3内の失った圧力を復活させる機能を発現する源となる。この『内圧復活機能』については後述する。ここで、『使用内圧』とは、『自動車メーカーが各車両毎に指定した、装着位置ごとのタイヤ気室圧力値(ゲージ圧力値)』を指す。
さて、近年の車両の高性能化や高速化の実態を鑑みたとき、タイヤ気室内に配置した中空粒子が所期した機能を発揮することが肝要であり、そのためには、中空粒子の耐久性をさらに向上することが求められている。そこで、発明者らは中空粒子の耐久性、具体的には耐熱性に関して、中空粒子の発熱の実態について鋭意検討し、中空粒子の更なる耐久性(耐熱性)の向上を達成した。まず、中空粒子はその原料である『膨張性樹脂粒子』、すなわちガス成分を液体状態の発泡剤として樹脂に封じ込めた粒子を加熱膨張することにより得られ、この膨張性樹脂粒子には膨張開始温度Ts1が存在する。更に、この加熱膨張によって得られた中空粒子を室温から再度加熱すると、中空粒子は更なる膨張を開始し、ここに中空粒子の膨張開始温度Ts2が存在する。
発明者らは、これまで多くの膨張性樹脂粒子から中空粒子を製造し検討を重ねてきた結果、Ts1を耐熱性の指標としてきたが、耐熱性の指標としてはTs2が適切であることを見出すに到った。まず、膨張性樹脂粒子を加熱膨張させる場合における膨張挙動を観察した。膨張性樹脂粒子は膨張する前の段階にあるため、中空粒子の状態に比して粒径が極端に小さく、樹脂製の殻部の厚さが極端に厚い。よって、マイクロカプセルとしての剛性が高い状態にある。したがって、加熱膨張の過程で樹脂製の殻部の連続相がガラス転移点を超えても、更なる加熱により殻部がある程度柔らかくなるまでは、内部ガスの拡張力が殻部の剛性にうち勝つことが出来ない。よって、Ts1は実際の殻部のガラス転移点よりも高い値を示す。
一方で、中空粒子を再度加熱膨張させる場合では、中空粒子の殻部の厚さが極端に薄く、中空体としての剛性が低い状態にある。したがって、加熱膨張の過程で殻部の連続相がガラス転移点を超えると同時に膨張を開始するため、Ts2はTs1より低い位置づけとなる。本発明では、膨張性樹脂粒子の膨張特性を活用するのではなく、一旦膨張させた中空粒子の更なる膨張特性を活用するものであるため、耐熱性を議論するには、従来のTs1ではなくTs2を指標とすべきである。
そして、中空粒子のTs2は、90℃以上200℃以下であることが肝要である。なぜなら、中空粒子のTs2が90℃未満では、選択したタイヤサイズによっては、そのタイヤの保証速度に到達する以前に、中空粒子が再膨張を開始する場合があるからである。一方、200℃を超えると、パンク受傷後のランフラット走行において、中空粒子の摩擦発熱に起因する急激な温度上昇が起こっても、膨張開始温度Ts2に達することが出来ない場合があり、よって目的とする『内圧復活機能』を十分に発現させることが出来なくなる場合がある。
よって、Ts2の範囲は90℃以上200℃以下に設定することが好ましく、更に好ましくは130℃以上200℃以下、そして150℃以上200℃以下であり、もっとも好ましいのは160℃以上200℃以下の範囲である。
以上のように、上記した上限値及び下限値に従う膨張開始温度Ts2を有する中空粒子をタイヤ気室内に配置することにより、内圧復活機能を確実に発現させることはもとより、高速度走行での耐熱性を向上させる事によって、常用走行時の『内圧復活機能保持』が達成される。
次に、上述のように耐久性を向上した中空粒子をタイヤ気室内に配置したタイヤ及びリム組立体が安全タイヤとして機能するための基本的要件を述べる。従来の空気入りタイヤは、タイヤ気室圧力が大気圧まで低下した状態で走行すると、荷重によりタイヤが大きく撓み、そのサイド部が路面に接地してしまうため、路面との摩擦と繰り返し屈曲変形とによる発熱によって骨格のカーカス材が疲労し、サイド部の磨耗傷が最終的にタイヤ気室内まで貫通することで破壊に到る。
そこで、本発明が対象とするタイヤ及びリム組立体では、外傷によってタイヤ気室内の気体が漏れ出た際に、その後の走行に必要な最低限のタイヤ気室圧力を適正に与え、失った圧力を回復させることを主目的としている。よって本発明では、タイヤ及びリム組立体を圧力容器と捉えている。すなわち、パンクにより傷ついてしまった圧力容器の傷口を、タイヤ気室内に配置した中空粒子群により暫定的に封止した上で、中空粒子を機能させて失った圧力を回復することによって、この目的を達成しようとするものである。従って、従来の空気入りタイヤのように、パンク後の走行自体がタイヤ、すなわち圧力容器を故障破壊に導くような事があってはならない。
すなわち、タイヤ気室圧力が大気圧にまで低下したとしても、早期に上述の機能を発揮させることによって、前述のタイヤ破壊に至ることを回避し、圧力容器として機能させることが重要であり、そのために、タイヤ気室内の圧力を『少なくともタイヤのサイド部が接地しなくなる圧力』まで復活させることが肝要である。
より具体的には、タイヤ気室に配置する中空粒子について、下記式(I)に従う中空粒子の充填率を20 vol%以上80 vol%以下とする。

中空粒子の充填率(%)=(中空粒子体積値/タイヤ気室容積値)×100 ---(I)
ここで、中空粒子体積値は、タイヤ気室に配置した全中空粒子の大気圧下での合計体積と粒子周囲の空隙体積との合計量(cm)であり、以下の方法で算出できる。まず、該中空粒子の大気圧下での平均嵩比重を求める。その方法は、例えば大気圧下にて既知体積であるものの重量を測定することにより算出する。最初に、大気圧下でメスシリンダーに粒子を量りとり、超音波水浴中にて振動を与え、中空粒子間のパッキングが安定した状態にて、中空粒子の総体積(粒子周囲の空隙体積を含む)と中空粒子の総重量とを測定することによって、上記大気圧下での平均嵩比重を算出する。すなわち、中空粒子の大気圧下での平均嵩比重は、
中空粒子の大気圧下での平均嵩比重=(中空粒子の総重量)/(中空粒子の総体積)
である。
次に、タイヤ気室内に配置した中空粒子の総重量を測定し、前記にて算出した該中空粒子の大気圧下での平均嵩比重で割ることによって、タイヤ内部に配置した『中空粒子体積値』を算出することができる。すなわち、
中空粒子体積値=(タイヤに充填した粒子の総重量)/(粒子の大気圧下での平均嵩比重)
である。なお、容積が既知の容器に中空粒子を量り取りながらタイヤ気室内に配置する方法でも所望の中空粒子体積値の中空粒子をタイヤ内に配置することが出来る。
また、タイヤ気室容積値は、タイヤ及びリム組立体に空気のみを充填して使用内圧(kPa)に調整した後、充填空気を内圧が大気圧になるまで排出した際の充填空気排出量(cm)を用いて、次式(II)から求めた値(cm)である。
タイヤ気室容積値=(充填空気排出量)/(使用内圧/大気圧)---(II)
なお、式(II)において使用内圧はゲージ圧値(kPa)を、大気圧値は気圧計による絶対値(kPa)を用いる。すなわち大気圧は、ゲージ圧では0[kPa]で表されるが、大気圧値自体は日々刻々と変動するものであるため、その時点での気圧計から観測される絶対値を用いる。よって例えばある時の大気圧が1013hPaであった場合は、大気圧絶対値として101.3kPaを式(II)に用いる。
以下に、上記した中空粒子の充填率を20vol%以上80vol%以下とする理由について、常用使用からパンク状態となった場合の態様へと順に説明する。
まず、タイヤ気室に中空粒子の多数を配置し、さらに該タイヤ気室に高圧気体を充填して、タイヤ気室圧力を使用内圧とする段階から説明する。本発明では、中空粒子4をタイヤ気室3に配置した後、該粒子4周囲の空隙部12、言い換えればタイヤ気室の圧力が、装着車両指定内圧等の所望の使用内圧となるように、空気や窒素等の高圧気体を充填することが肝要である。タイヤ気室3に中空粒子4を配置し、さらに気体を充填してタイヤ気室3の圧力を所望の圧力に設定すると、当初、中空粒子の中空部内の圧力(独立気泡内の圧力)がタイヤ気室の圧力より小さいために、粒子は体積減少する。この時点での中空粒子の形状は略球形状ではなく、球形状から扁平化して歪んだ形状となっている。この粒子形状が扁平化して歪んだ状態のままタイヤ走行を開始すると、中空粒子は、球形状の場合と比べて粒子同士の衝突やタイヤ及びリム内面との衝突により、破壊しやすくなる。すなわち、中空粒子が扁平化して歪んだ形状では、衝突による入力を均一に分散させることができず、耐久性の面で大きな不利をもたらすことになる。
一方、扁平化して歪んだ中空粒子は、その中空部内の圧力とタイヤ気室の圧力との差により体積減少した状態であるわけだが、一定期間にわたりタイヤ気室(粒子周囲の空隙部)の圧力を保ち続けることによって、中空粒子の中空部内の圧力、言い換えれば該粒子内の独立気泡内の圧力を、タイヤ気室の圧力程度に高めることができる。すなわち、扁平化した中空粒子は変形させられているため、その殻の部分には元の略球形状に戻ろうとする力が働いている。また、扁平化した中空粒子の中空部内の圧力は、タイヤ気室の圧力よりも低いことから、その圧力差を解消するために、タイヤ気室の気体の分子が樹脂による連続相の殻を通過して粒子の中空部内に浸透する。さらに、中空粒子の中空部は独立気泡であり、その中の気体は発泡剤に起因するガスで満たされているため、タイヤ気室(粒子周囲の空隙部)の気体とは異なる場合がある。この場合は、上述の単なる圧力差だけではなく気体の分圧差に従いながら、その分圧差を解消するまでタイヤ気室内の高圧気体が粒子中空部内へ浸透していく。このように、タイヤ気室内の高圧気体は、時間と共に中空粒子の中空部内へ浸透していくため、この中空部内に浸透した分だけ、タイヤ気室の圧力が低下することとなる。よって、中空粒子の中空部内に浸透した分を補うために、高圧気体を充填した上で所望の圧力をかけ続けることにより、所望の使用内圧に調整した、タイヤを得ることができる。
かように、中空粒子の中空部内の圧力は、タイヤ気室(粒子周囲の空隙部)の圧力に近づきながら、一旦減少した粒子体積を回復していき、粒子形状は扁平化されて歪んだ形状から元の略球形状へと回復していく。この形状を回復していく過程の中で、中空粒子中空部内の圧力がタイヤ気室の圧力に対して少なくとも70%にまで増加することにより、粒子形状は扁平化した状態から略球形へ回復することができ、これによって上述した粒子の耐久性を保証することができる。
上記の手法によれば、中空粒子のまわりに高圧気体が介在することになり、通常走行時に中空粒子が負担する荷重を無視できるほど軽減できるのは勿論のこと、上述の粒子体積を回復した中空粒子においては、粒子形状が略球形に回復するため、タイヤ転動時の繰り返し変形に伴って粒子に加わる疲労や破壊も大幅に低減できる結果、粒子の耐久性が損なわれることはない。中空粒子の耐久性が損われない範囲は、タイヤ気室内の圧力が、装着する車両指定内圧等の所望する高圧下環境のなかで粒子が体積を回復しながら粒子中空部の圧力が増加する過程において、中空粒子の中空部の圧力が所望のタイヤ気室内の圧力に対して少なくとも70%であることが好ましい。さらには、80%以上、90%以上、そして100%以上と高く設定することが推奨される。
ここで、中空粒子の中空部内の圧力を所望のタイヤ気室内の圧力に対して少なくとも70%とするタイヤ及びリム組立体を得るには、中空粒子周囲の空隙気体の圧力を、少なくとも装着する車両指定内圧等の所望するタイヤ気室内の圧力に対して70%以上まで高めた状態に保持し、この圧力をかけ続けたまま適切な時間を経過させればよい。あるいは、中空粒子をタイヤとは別の圧力容器内に配置し、粒子周囲の空隙圧力を少なくとも所望のタイヤ気室内の圧力に対して70%以上まで高めた状態に保持し、この圧力をかけ続けたまま該圧力容器内にて適切な時間保管したうえで、中空粒子の中空部内の圧力が増加した状態の粒子をその周囲の雰囲気と共にタイヤ気室内に配置することによっても、所望のタイヤ及びリム組立体を得ることができる。
なお、上述の適切な保持時間は、中空粒子の殻の部分、すなわち粒子の連続相に対する空隙気体の透過性と、粒子中空部内の気体と空隙気体との分圧差とを考慮して設定すればよい。
上述の機構と粒子の形状、体積の変化過程に則り、タイヤ気室(粒子周囲の空隙部)に充填する気体の種類と圧力とを適宜に選択、そして調節することによって、中空粒子の中空部内の圧力を所望の範囲に設定できる。
以上述べてきたように、中空粒子の中空部内の圧力を所望のタイヤ気室内の圧力に対して少なくとも70%とした粒子を、タイヤ気室内に配置することにより、該タイヤ気室の圧力が大気圧となった状態から走行した時に、少なくとも該タイヤのサイド部が接地しなくなるタイヤ気室圧力まで、該タイヤ気室の圧力を回復させることを実現する必要がある。以下に、そのタイヤ内圧の復活機構を説明する。
さて、上述した中空粒子群をタイヤ気室内に配置したタイヤ及びリム組立体にあっては、該タイヤが受傷すると、中空粒子4相互間の空隙10に存在するタイヤ気室内の高圧気体がタイヤの外側に漏れ出る結果、タイヤ気室の圧力は大気圧と同程度の圧力にまで低下する。そして、このタイヤ気室圧力低下の過程において、以下の事がタイヤ気室内で起こる。
まず、タイヤが受傷しタイヤ気室の圧力が低下し始めると、中空粒子の多数が受傷部を封止し、急激な気室圧力の低下を抑制する。ここで、本発明では中空粒子の中空部圧力が、少なくとも常用走行使用時の車両指定タイヤ内圧の70%以上と規定しているが、受傷部の封止能力は中空部圧力に依存する。すなわち、中空部圧力が70%以上であれば略球形状を保つことが出来ることを前述したが、略球形状を保つことによって良好な流動性と弾力性を発現できるため、中空部内圧が低い場合に比べて受傷部の封止限界が大幅に向上する。その一方、気室圧力の低下に伴いタイヤの撓み量は増加し、タイヤ気室容積が減少する。さらに、気室圧力が低下するとタイヤが大きく撓み、タイヤ気室内に配置した中空粒子は、タイヤ内面とリム内面との間に挟まれながら、圧縮とせん断の入力を受けることとなる。
一方、上述の使用内圧下で存在していた中空粒子の中空部内の圧力(独立気泡中の気泡内圧力)は、受傷後も上記使用内圧に準じた高い圧力を保ったまま、言い換えれば、受傷前の粒子体積と中空部圧力を保持したままタイヤ気室内に存在する事となる。よって、さらにタイヤが転動する事により、中空粒子そのものが直接的に荷重を負担しつつ中空粒子同士が摩擦を引き起こし自己発熱するために、タイヤ気室内の中空粒子の温度が急上昇する。そして、該温度が、中空粒子の熱膨張開始温度(Ts2:該樹脂のガラス転移温度に相当する)を超えると、該粒子の殻は軟化し始める。このとき、中空粒子の中空部内の圧力が使用内圧に準じた高い圧力であるのに加え、中空粒子温度の急上昇によりさらに中空部内圧力が上昇しているために、中空粒子が一気に体積膨張し粒子周囲の空隙気体を圧縮する事になり、さらには中空粒子の中空部内の気体が圧力差に応じて中空粒子の周囲に洩れ出るため、タイヤ気室の圧力を少なくともタイヤのサイド部が接地しなくなるタイヤ気室圧力まで回復させる事ができるのである。
上記の機構によって中空粒子の中空部内の圧力を、熱膨張を可能とする高い圧力に設定すれば、内圧復活機能を発現させることができる。すなわち、前述のサイド部が接地しないタイヤ内圧までタイヤ気室の圧力を復活させるには、前述の中空部内の圧力が使用内圧の好ましくは70%以上である中空粒子を、20 vol%以上80 vol%以下の充填率の下にタイヤ気室内に配置しておくことが肝要である。なぜなら、中空粒子の充填率が20 vol%未満であると、受傷部の封止は問題なく行えるが、該中空粒子の絶対量が不足しているために、サイド部が接地しない圧力レベルまでの充分な復活内圧を得る事が難しくなる。一方、中空粒子の充填率が80 vol%を超えると、タイヤによっては常用時の高速走行での粒子摩擦による発熱のために、前述した中空粒子の膨張開始温度(Ts2)を超えて膨張してしまい、本発明の主たる機能である内圧復活機能が失われる可能性が有る。この常用時の高速走行での粒子の発熱に関しては後述する。
また、前述した内圧復活機能を確実に発現させるためには、該内圧復活機能が発現する前に、受傷部を確実に封止する事が肝要である。すなわち、受傷部の封止が不完全であると、復活したはずの圧力が受傷部から漏洩してしまう結果、内圧復活機能により得られた圧力がその後の走行能力に一時的にしか貢献できないために、受傷後の走行性能を保証できなくなる恐れがあるからである。該中空粒子は、中空構造による低比重かつ弾力性に富んだ粒子であるために、タイヤが受傷し受傷部から中空粒子周囲の空隙気体が漏洩し始めると、空隙気体の漏洩による流れに乗って即座に受傷部に密集し、受傷部の傷口を瞬時に封止する。以上述べたように、中空粒子による受傷部の封止機能は、本発明の内圧復活機能を支える必須機能である。
以上述べたように、本発明に従う中空粒子を充填したタイヤ及びリム組立体では、パンク後の内圧低下に伴うタイヤ気室容積の減少とタイヤの撓み量の増大により、中空粒子間の摩擦を引き起こすことで中空粒子の急激な温度上昇とともに中空粒子の膨張並びに気体漏出による内圧復活を果たし、パンク後の安全走行を実現できる。
ところで、タイヤ及びリム組立体における中空粒子間の摩擦は、通常走行下においても、微小ではあるが発生している。しかし、走行速度が100km/h以下の領域では、発生した摩擦熱自体が小さく、走行による外気への放熱によって、その収支が保たれている。
しかしながら、150km/hを超える高速度領域において、さらには外気の温度環境が著しく高い酷暑環境下においては、発生する摩擦熱が増加するわりに外気への放熱が不足する状態となり、中空粒子の温度環境が著しく悪化することがある。こういった状況が長時間続くと、中空粒子の温度がその熱膨張開始温度(Ts2)を上回ることによって該粒子が膨張してしまい、その結果、前述したパンク時の『内圧復活機能を損失すること』がある。
発明者らは、この問題を解決すべく鋭意検討し、高速度走行での中空粒子群の発熱による『内圧復活機能の損失』を防ぎ、より高い速度での常用走行を可能とする新規中空粒子を見出すに到った。すなわち、タイヤは高速で回転することにより、速度に応じた遠心力を発生している。タイヤの気室内に配置した中空粒子群も同様の遠心力を受けている。この遠心力は、粒子の重量に比例かつ速度の2乗に比例し、タイヤの半径に反比例する。さらに、タイヤに荷重を負担させることにより一定の撓みを生じており、接地している領域は、路面と平行な面の状態となっているため、この接地領域は曲率を持たずに、遠心力がほぼゼロとなる。よって、荷重を負担しつつ回転するタイヤ及びリム組立体内における中空粒子は、非接地領域では上述のように遠心力を受けつつ、その一方で接地領域に入った瞬間に遠心力が抜けるといった『遠心力の繰り返し変動入力下』に置かれるのである。
従って、タイヤの気室内に配置する中空粒子群としては、粒子重量を極力抑えることが好ましい。すなわち、中空粒子の平均真比重としては、出来るだけ小さいものを選択することが好ましく、またタイヤ気室容積に対する中空粒子の充填率は、前述の『サイド部が接地しない圧力レベルまでの充分な内圧復活機能を発現する充填率』の範囲の中で、出来るだけ少ない充填率を選定する事が好ましい。中空粒子の充填率が20 vol%未満であると、タイヤによってはサイド部が接地しない圧力レベルまでの充分な復活内圧を得る事が難しくなる。一方、中空粒子の充填率が80 vol%を超えると、タイヤによっては常用時の高速走行での粒子摩擦による発熱のために、前述した中空粒子の膨張開始温度を超えて膨張してしまい、本発明の主たる機能である内圧復活機能が失われる可能性が有るため好ましくない。よって、中空粒子の充填率の好ましい範囲は、20 vol%以上80 vol%以下であり、さらには、70 vol%以下、60 vol%以下、そして50 vol%以下である。
また、中空粒子の平均真比重は、0.01〜0.06g/ccの範囲が好ましい。すなわち、0.01g/cc未満であると、常用走行下での中空粒子の耐久性が低下し、常用使用中に前述の『内圧復活機能』が失われる事がある。一方、0.06g/ccを超えると、前述の常用高速走行における遠心力変動入力が大きくなって、発熱量が大きくなるため好ましくない。
ここで、タイヤ気室内に配置する中空粒子群は真比重に分布を持っており、中空粒子一粒一粒が同一の真比重値を持つわけではない。その理由として、加熱膨張時の熱履歴の不均一性と、発泡剤に起因する膨張気体の保持性とが挙げられる。中空粒子の原料である『膨張性樹脂粒子』一粒一粒が加熱により膨張して中空粒子となる過程において、加熱時の熱履歴が不均一であると、十分に熱履歴を受け膨張した中空粒子と、受けた熱履歴が少ないために膨張を途中で停止してしまった中空粒子が共存することになる。また、『膨張性樹脂粒子』において、粒径の小さいものは相対的に粒子の殻(発泡剤を包んでいる表皮を指す)である連続相の厚さも薄く、粒径の大きいものは殻の厚さも厚い。加熱時の熱履歴が同等であったとしても、加熱により発生した膨張気体の中空粒子内での保持性は、殻の絶対厚さに依存する。よって、膨張前の粒径が小さい『膨張性樹脂粒子』は、殻が薄いために膨張気体の保持性が低く膨張率の低い中空粒子となり、真比重が大きい。その逆に粒径が大きい『膨張性樹脂粒子』は、殻が厚いために膨張気体の保持性が高く膨張率の高い中空粒子となり、より大きい粒径まで成長できるために、真比重が小さくなる。すなわち、一般的に、マイクロカプセル等の膨張性組成物の膨張によって得られる中空粒子は、膨張後の状態において粒径に分布を持っており、その中で粒径の小さい中空粒子であるほど真比重が大きく、粒径が大きい中空粒子であるほど真比重が小さいという、関係にある。
よって、十分に膨張した中空粒子は真比重が小さく、その逆に膨張を途中で停止した中空粒子は真比重が大きい成分となる。このような真比重分布を持った粒子群をタイヤ気室内に配置した場合、通常内圧の走行下では速度に応じた遠心力を受けることとなる。このとき、真比重の大きい粒子は、真比重の小さい粒子に比して、タイヤ気室内でより大きい遠心力を受ける。よって、タイヤ及びリム組立体内のホイール内面側近傍には、真比重の小さい粒子群が存在し、回転中心から離れるに従って、徐々に真比重の大きい中空粒子群が存在することとなる。そして、トレッド下のインナーライナー面側には、もっとも真比重の大きい粒子群が存在することとなり、粒子群はホイール内面側からトレッド下のインナーライナー面側に向かって(タイヤ回転半径方向外側に向かって)真比重的に傾斜を持つに到る。
ここで、タイヤが前述の『繰り返し変動入力下』に置かれているなかで、真比重の小さい中空粒子群に対して真比重の大きい中空粒子群は、接地領域での変動入力下で大きな慣性力を発生する。よって大きな真比重を有する中空粒子群は、共存する“より小さい真比重を有する中空粒子群”を掻き分けるように動き回るため、小真比重粒子と大真比重粒子との相対的な慣性力の差に起因する運動エネルギーの差が、余分な粒子間摩擦熱を発生させる結果、粒子全体の発熱性を悪化させることとなる。すなわち、中空粒子の発熱要因は、大真比重粒子群の小真比重粒子に対する相対的な慣性力差とその運動による摩擦発熱とにあるのである。
従って、その摩擦発熱抑制のために、第1に、上述の相対的な慣性力差を小さくする手段として、中空粒子の持つ真比重分布幅を狭くすることがあげられる。例えば、ある平均真比重を持つ中空粒子に対し、大真比重側(小粒径側)と小真比重側(大粒径側)から同体積率だけ除去することで、平均真比重は変わらずとも真比重分布幅を狭くすることができるため、上述の相対的な慣性力の差を抑制することが可能となり、中空粒子群全体の発熱を抑制することができる。
第2に、発熱源である大比重粒子群(小粒径側)だけを直接除去することで真比重分布を狭くしながら、平均真比重をも小さくすることで、相対的な慣性力の差だけではなく、慣性力のレベル自体を抑制することにより、さらに中空粒子群全体の発熱を抑制することができる。
ここに、中空粒子の平均粒径について、好ましい範囲は40μmから200μmの範囲である。該中空粒子の平均粒径が40μmを下回ると、前述の真比重分布が広がり大真比重粒子群の小真比重粒子群に対する相対的な慣性力差とその運動による摩擦発熱により発熱性が悪化するため、好ましくない。一方、該中空粒子の平均粒径が200μmを上回ると、常用走行下での粒子同士が衝突している状況や、パンクによりタイヤ気室の圧力が大気圧となったときの走行にて中空粒子群が直接的に荷重を支える状況において、大粒径側の粒子から選択的に破壊してしまい、所望するパンク後の走行性能を得られなくなる不利が生ずるおそれがあるため好ましくない。
次に、中空粒子の中空部(独立気泡)を構成する気体としては、窒素、空気、炭素数2から8の直鎖状及び分岐状の脂肪族炭化水素及びそのフルオロ化物、炭素数2から8の脂環式炭化水素及びそのフルオロ化物、そして次の一般式(III):
−O−R---- (III)
(式中のR及びRは、それぞれ独立に炭素数が1から5の一価の炭化水素基であり、該炭化水素基の水素原子の一部をフッ素原子に置き換えても良い)
にて表されるエーテル化合物、からなる群の中から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。また、タイヤ気室内に充填する気体は空気でも良いが、上記粒子中の気体がフルオロ化物でない場合には、安全性の面から酸素を含まない気体、たとえば窒素や不活性ガス等が好ましい。
尚、独立気泡を有する中空粒子を得る方法は特に限定されないが、発泡剤を用いて『膨張性樹脂粒子』を得、これを加熱膨張させる方法が一般的である。この発泡剤としては、高圧圧縮ガス及び液化ガスなどの蒸気圧を活用する手法、熱分解によって気体を発生する熱分解性発泡剤を活用する手法などを挙げることができる。特に、熱分解性発泡剤には窒素を発生させる特徴のあるものが多く、これらによる発泡によって得られる膨張性樹脂粒子の反応を適宜制御することによって得た粒子は気泡内に主に窒素を有するものとなる。この熱分解性発泡剤としては特に限定されないがジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、パラトルエンスルフォニルヒドラジン及びその誘導体、そしてオキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジンを好適に挙げることができる。
以下に高圧圧縮ガス及び液化ガスなどの蒸気圧を活用して中空粒子となる『膨張性樹脂粒子』を得る手法を説明する。粒子を形成する前記樹脂による連続相を重合する際、炭素数2から8の直鎖状及び分岐状の脂肪族炭化水素及びそのフルオロ化物、炭素数2から8の脂環式炭化水素及びそのフルオロ化物、そして次の一般式(III):
−O−R---- (III)
(式中のR及びRは、それぞれ独立に炭素数が1から5の一価の炭化水素基であり、該炭化水素基の水素原子の一部をフッ素原子に置き換えても良い)
にて表されるエーテル化合物、からなる群の中から選ばれた少なくとも1種を発泡剤として高圧下で液化させ、反応溶媒中に分散させつつ、乳化重合させる手法である。これにより上記に示されるガス成分を液体状態の発泡剤として前術の樹脂連続相にて封じ込めた『膨張性樹脂粒子』を得ることができ、これを加熱膨張させる事によって、所望の中空粒子を得る事が出来る。
また、受傷によりタイヤ気室圧力が低下した状態において、該中空粒子によって必要最低限の内圧を付与するには、粒子の中空部内に所定圧力で封入された気体が、粒子外部へ漏れ出ないこと、換言すると、中空粒子の殻の部分に相当する樹脂による連続相が気体を透過し難い性質を有することが肝要である。すなわち、連続相を構成する樹脂はガス透過性の低い材質によること、具体的には、アクリロニトリル系共重合体、アクリル系共重合体、塩化ビニリデン系共重合体のいずれか少なくとも1種から成ることが肝要である。これらの材料は、タイヤ変形による入力に対して中空粒子としての柔軟性を有するため、本発明に特に有効である。
とりわけ、中空粒子の連続相には、アクリロニトリル系重合体、アクリル系重合体及び塩化ビニリデン系重合体のいずれかを適用することが好ましい。さらに詳しくは、重合体を構成するモノマーが、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、メチルメタクリレート、メタクリル酸、塩化ビニリデンから選択される重合体であり、好ましくはアクリロニトリル/メタアクリロニトリル/メチルメタクリレート3元共重合体、アクリロニトリル/メタアクリロニトリル/メタクリル酸3元共重合体から選ばれた少なくとも1種がそれぞれ有利に適合する。これらの材料は、いずれもガス透過係数が小さくて気体が透過し難いために、中空粒子の中空部内の気体が外部に漏れ難く、中空部内の圧力を適切に保持することができる。
さらに、中空粒子の連続相は、30℃におけるガス透過係数が300×10-12 (cc・cm/cm2 ・s・cmHg)以下、好ましくは30℃におけるガス透過係数が20×10-12(cc・cm/cm2・s・cmHg)以下、さらに好ましくは30℃におけるガス透過係数が2×10-12(cc・cm/cm2・s・cmHg)以下であることが推奨される。なぜなら、通常の空気入りタイヤにおけるインナーライナー層のガス透過係数は300×10-12(cc・cm/cm2・s・cmHg)以下のレベルにあって十分な内圧保持機能を有している実績を鑑み、粒子の連続相についても、30℃におけるガス透過係数を300×10-12(cc・cm/cm2 ・s・cmHg)以下とした。ただし、このガス透過係数のレベルでは、3〜6カ月に1度程度の内圧補充が必要であるから、そのメンテナンス性の点からも、20×10-12 (cc・cm/cm2 ・s・cmHg)以下、さらに好ましくは2×10-12(cc・cm/cm2・s・cmHg)以下とすることが推奨される。
上述したように、中空粒子は略球形状であるために流動性が高く、よってタイヤバルブ等の内径の小さい導入口からタイヤ気室内部に、容易に配置することができる。その一方、タイヤが受傷したとき、該受傷部からタイヤの外側へ中空粒子がタイヤ気室の高圧気体と共に吹き出ようとして受傷部内面に集まることになる。しかしながら、受傷部内面からタイヤ外周面までの受傷経路は直線ではなく複雑に入り組んだ形状を呈するため、タイヤ内面傷口から入り込んだ該粒子は、該経路の途上行く手を阻まれる結果、多数の中空粒子が受傷部内面に圧縮状態で集合することになり、受傷部が暫定的に封止される。ここで、暫定的に封止とは、中空粒子そのものの漏洩はないが、該粒子周囲の空隙気体が徐々に漏洩する状態を指す。
その際、受傷部の傷の形や大きさによっては、粒子のみによる暫定的封止が不完全な場合がある。このような場合において、上述した発泡体の多数を加えておくことにより、次のように封止のレベルを向上させることができる。
すなわち、転動中のタイヤ気室内においては、速度に応じた遠心力が発生しており、その遠心力下において嵩比重の大きい該発泡体はタイヤのインナーライナー側へ、そして真比重の小さい該中空粒子は該発泡体よりは回転中心に近い側へ夫々偏在する。この状態においては、もし該粒子のみでは封止できない程の大きさの傷を受けたとしても、タイヤ内面のインナーライナー面近傍に、該発泡体が多数偏在しているため、該発泡体がタイヤ外部へ噴き出ようとして、受傷部の傷口内面にいち早く密着することによって受傷部を封止する事となり、極めて有効である。
しかしながら、タイヤがサイドカットのような裂傷を受けたときは、傷口が大きく拡がるため、上記した中空粒子による封止効果が及ばない場合がある。その際、大きな傷口を介して中空粒子が連続的に噴き出すため、かような事態に陥るのを未然に防ぐ必要がある。そこで、中空粒子を充填したタイヤ気室内に、さらに中空粒子の体積に対して0.1vol%以上5.0vol%以下の液体を添加することによって、中空粒子をウェット化し、傷口から噴き出しを防止することとした。
ここで、中空粒子のウェット化とは、図1に部分拡大して示すように、添加した液体13が中空粒子4全体に均一に分散した状態を意味し、上記の所定量の下で液体を添加したタイヤ及びリム組立体を車両に装着して通常走行を行うことによって、中空粒子のウェット化は実現する。
すなわち、タイヤ気室内に充填した中空粒子に液体を少量添加すると、図2に2つの粒子間モデルを示すように、液体13は中空粒子4間に保持され、粒子4間に液架橋を形成する。この液架橋は、中空粒子4間の付着力として働く結果、粉状の中空粒子4を塊状に変化させる。塊状となった中空粒子は、大きな傷口であっても容易に噴き出すことが難しくなり、結果として中空粒子の噴き出しは抑制されることになる。
その際、中空粒子の体積に対して0.1vol%以上5.0vol%以下の液体を添加することが好ましい。すなわち、液体の添加量が0.1vol%未満または5.0vol%を超えると、上記した中空粒子のウェット化を実現することが難しくなる。さらには、0.3 vol%以上1.5vol%以下とすることが好ましい。ここで、中空粒子の体積とは、前記した中空粒子の充填率を算出する際に用いる中空粒子体積値のことであり、その求め方は上述のとおりである。なお、液体としては、シリコンオイル、水またはエチレングリコールに代表される脂肪族多価アルコールなどを用いることができる。
また、中空粒子4間の付着力として働く液架橋力は、主に該粒子4間に働く静的液架橋力である。この静的液架橋力は、図2に示したところに従って幾何学的に近似させると、
2πRγ・cosθ
但し、γ:液体の表面張力
θ:液体の接触角
にて示すことができる。すなわち、静的液架橋力を大きくするには、液体に表面張力γを大きく液体の接触角θを小さくすることが有効である。従って、添加する液体としては、その表面張力γが大きく接触角θが小さいものを用いることが好ましい。具体的には、表面張力γ:28mN/m以上及び接触角θ:60°以下である液体が推奨される。なお、接触角θについては、小さすぎると液が粒子全体に濡れ広がり液架橋が形成されない可能性があることから、5°以上とすることが好ましい。より好ましくは、θ:10〜40°、さらに15〜25°である。
上記の条件に合致する液体としては、シリコンオイルや水を挙げることができ、中空粒子を膨潤させないものを選択することがより好ましい。
ここで、中空粒子4間に形成される液架橋によって中空粒子4を塊状にするに当り、さらに上記液体に加えて繊維を添加することが中空粒子4を強固に塊状化するのに有効である。
すなわち、図1の部分拡大部に示すように、液体13に加えて繊維14を添加し、中空粒子4相互間に繊維14を絡ませることによって、中空粒子相互間の結合力は高まるため、中空粒子4塊の強度が上昇する。その結果、大きな傷口からの中空粒子の噴き出しはより確実に抑制される。
該繊維14は、2mm以上50mm以下の長さ及び2dtex以上200dtex以下の繊度を有することが好ましい。すなわち、繊維14の長さが2mm未満では、上述の中空粒子4塊の強度上昇が小さくなる。一方、長さが50mmを超えると、繊維同士が絡まり中空粒子群の全体に均一に分散しにくくなる。
さらに、繊維14の繊度が2dtex未満では、上述の中空粒子4塊の強度上昇が小さくなる。一方、繊度が200dtexを超えると、繊維が太くなりすぎて中空粒子と絡まり難くなり、上述の中空粒子4塊の強度上昇が小さくなる。よって、繊維14の繊度は2〜200dtexであることが好ましい。
同様に、繊維14の添加量は、タイヤ気室内に充填した中空粒子の体積の0.1vol%以上1.0vol%以下であることが好ましい。すなわち、添加量が0.1vol%未満では上述の中空粒子4塊の強度上昇が小さくなる。一方、1.0vol%を超えると、繊維同士が絡まり中空粒子群の全体に均一に分散しにくくなる。
なお、繊維としては、化学繊維のほか、動物の毛や植物繊維などを用いることができる。
ここで、中空粒子4塊の強度を上昇するためには、液体13及び繊維14が中空粒子4全体に均一に分散していることが肝要である。そのためには、予め中空粒子4に液体13及び繊維14が均一に分散した中空粒子組成物を製造しておき、該中空粒子組成物をタイヤ気室内に装入することが、極めて簡便かつ有効である。
以下に、該中空粒子組成物の製造方法について詳しく述べる。
さて、中空粒子に液体及び繊維を添加するに際し、液体及び繊維の添加順序を検討したところ、先に繊維を中空粒子に添加すると、繊維同士が絡まって容易に塊状化して均一に分散しないこと、その後に液体を添加しても、繊維の塊状化は解消せずに、逆に液体が塊状化した繊維に吸収されて液体の均一分散も達成されないこと、が判明した。
一方、先に液体を中空粒子に添加して攪拌を行うと、液体が均一に分散した中空粒子−液体の2成分系組成物が簡単に作製できた。なお、液体の添加方法は、噴霧でも滴下でも同様に均一分散が可能であり、処理時間が短いのは噴霧式である。
そして、この2成分系組成物に、繊維を加えて攪拌したところ、繊維は塊状化することなく均一に分散し、極めて均等に混合された中空粒子−液体−繊維の3成分系組成物が作製できることを知見するに到った。
すなわち、中空粒子は極めて流動性の高い流体であり、ここに繊維を添加した場合、かような流体内では繊維の1本1本が容易に移動することが可能であるから、これらが相互に絡み合って塊状化することになる。そこで、繊維の添加に先立ち、中空粒子に液体を添加して攪拌することによって液体を均一に分散させれば、中空粒子の流動性は低下する。この流動性が低くバルク剛性の高い2成分系組成物に繊維を添加すれば、攪拌時に繊維へせん断力が効率的に伝わり、かつ繊維は容易に移動しないことから、繊維同士が絡み合うことなく混合される。
従って、多数個の中空粒子に液体及び繊維を添加するに当り、まず、中空粒子に液体を添加して攪拌を行い、その後繊維を添加して攪拌を行うことが重要である。
なお、繊維と異なり液体が中空粒子に対して均一に混合されるのは、液滴が容易に細分化されることと、中空粒子表面に対する適度な親和性(濡れ性)を有すること、のためと考えられる。
上述の通り、繊維には2mm以上50mm以下の長さを有するものが適しているが、本発明の中空粒子組成物の製造方法において、繊維の塊状化の回避と中空粒子組成物の塊状化の促進とを高い水準で両立させるには、4〜10mm、特に6〜8mmの長さの繊維を用いることが好ましい。
また、中空粒子に対する液体及び繊維の添加量は上述のとおりであり、その後の攪拌は、次の条件に従うことが好ましい。すなわち、中空粒子に液体を添加後に攪拌すると、図3に攪拌に要する負荷トルクと混合時間との関係を示すように、その攪拌にかかる負荷トルクが、あるときtを境に急激に増大する。この負荷トルクの急激な増大をもって液体の分散が進行したと判断できるため、負荷トルクが急激に増大し該トルク上昇が落ち着いた段階t以降に、繊維を添加(繊維添加1)することが最も好ましい。少なくとも、液体添加後の攪拌開始から負荷トルクが急激に増大するまでに要する時間tの70%の時間を経てから、繊維を添加(繊維添加2)すれば、繊維同士の絡まりを回避しつつ、繊維の良好な分散状態を得ることができる。
サイズ245/45 R18の空気入りラジアルタイヤに、標準リムを組み込み、乗用車用タイヤ及びリム組立体を準備した。ここで、タイヤ1は、当該タイヤ種及びサイズの一般的構造に従うものである。次に、タイヤサイズに対象となる車両を選定し4名乗車相当の荷重を搭載した上で、高圧の空気を充填しタイヤ気室の圧力を200kPaに調整し、それぞれのタイヤ及びリム組立体を前軸左側に装着した。ここで、荷重が負荷された状態を保ちながらタイヤ気室圧力を徐々に抜いていき、タイヤのサイド部が路面に接地するか、インナーライナー内面同士が接触するタイヤ気室圧力値を求めた。このタイヤ気室圧力値を『RF走行限界内圧値』と定義した。
次いで、荷重が負荷されていない状態下で各タイヤの気室圧力を使用内圧に調整し、気室内の高圧空気を排出させることで気体の排出量を求め、各タイヤの気室容積を算出した。ここで、タイヤとリムによる組立体の気室容積の測定は、以下に示す手順によって行った。〔タイヤ気室容積の測定方法〕
手順1:タイヤとリムの組立体に荷重がかからない状態を保持したまま、常温の空気を充填し、所定内圧(使用内圧)P2に調整する。このとき、P2下における目的のタイヤ気室容積をV2とする。
手順2:タイヤバルブを開放し、タイヤ気室内の空気を大気圧P1に放出させつつ積算流量計に流し、充填空気排出量V1を測定する。なお積算流量計には、品川精機株式会社製 DC DRYガスメーター DC−2C、インテリジェントカウンターSSF を用いた。以上の各測定値を用いて、
タイヤ気室容積値=(充填空気排出量)/(使用内圧/大気圧)---(II)
に従って、使用内圧P2時のタイヤ気室容積V2を求めることができる。なお、式(II)において使用内圧はゲージ圧値(kPa)を、大気圧値は気圧計による絶対値(kPa)を用いた。
さらに、上記のタイヤ及びリム組立体のタイヤ気室に、中空粒子を、上記に従って算出したタイヤ気室容積V2に対して表1に示す中空粒子組成物を用意した。なお、中空粒子は、連続相をアクリロニトリル/メタアクリロニトリル/メタクリル酸3元共重合体とし、前述の乳化重合により作製した膨張性樹脂粒子を加熱膨張させて得た、平均粒径:約100μm、平均真比重:0.032g/cc、膨張開始温度(Ts2):170℃のものである。
ついで、この中空粒子の体積に対して、表1に示す比率にて、シリコンオイル(信越化学株式会社製「フェニル系シリコンオイルHIVAC F−5」(商品名):表面張力34mN/m、接触角25°)と、表1に示す繊維とを添加し、中空粒子組成物を製造した。
すなわち、170リットルの攪拌容器の半分に中空粒子を装入し、ここに表1に示す添加率に従って液体及び繊維を装入した。具体的には、比較例1では、中空粒子に液体のみを噴霧にて添加し、比較例2および3では、中空粒子に繊維を添加して攪拌し、その後液体を噴霧にて添加して攪拌を行った。一方、発明例1及び2では、中空粒子に液体を噴霧にて添加して攪拌し、その後繊維を添加して攪拌を行った。このとき、得られた中空粒子組成物について、混合状態を目視にて確認した。
なお、攪拌条件は全て同じであり、GUIBAO社製のダブルリボンミキサーTRM−100を用いて、回転数60rpmの条件で実施した。
その後、製造した中空粒子組成物の所定量を秤量して、通気性及び伸縮性を有する袋体の内部に封入し、該袋体を予めタイヤの内部に配置し、該タイヤを所定のリムに組み付けた。この袋体の封入口は開閉糸で結ばれるとともに、該封入口から離間した位置に引出糸が固定されている。そして、タイヤをリムに組み付ける過程において、開閉糸および引出糸の先端部分を他方のビード部とリムのフランジとの隙間から外側に導出しておく。次いで、開閉糸を引いて前記袋体の封入口を開放したのち、前記引出糸を引いて袋体を前記隙間からタイヤの外側に引き抜く過程にて袋体を扱いて内部の中空粒子をタイヤ気室内に取り残し、タイヤ気室内に中空粒子を供給した。かくして、評価試験に供するタイヤ及びリムの組立体を得た。
次に、上記タイヤ及びリム組立体に窒素を充填し、使用内圧に調整した。そして、あらかじめ以下に示す調査法に基づき粒子体積回復挙動を調査の上、目的の中空部内圧力となるに相当する保持時間を割り出し、60℃に保たれた加温室にてタイヤ気室圧力を保つことで、中空粒子の中空部圧力を増加させ粒子体積を回復させながら、評価するタイヤ及びリム組立体の調製を行った。
ここで、中空粒子の中空部内圧力を増加させるための適切な保持時間を割り出す方法は、次のとおりである。まず、内容積が1000cm程度の内断面直径が一定で透明なアクリル樹脂製の円筒型耐圧容器を準備し、該容器に超音波水浴等で振動を与えながら、本発明の中空粒子を容器内が一杯になるまで充填した。次に、この容器にタイヤ気室に充填する気体を、車両指定内圧等の所望する使用圧力になるまで充填した。圧力が高まるにつれて容器内の粒子は体積減少するため、中空粒子で満たされた部分の容器内側の高さ(以下、中空粒子高さとする)は低下する。容器内圧が目標圧力に達したら、超音波水浴等で容器に5分間の振動を与えた後、5分間静置した。そして、容器内の中空粒子高さが安定したところで中空粒子高さを測定し、『加圧開始時の中空粒子高さ:H1』とした。更に上記使用圧力をかけ続け、『一定期間経過した状態での中空粒子高さ:Hx』を計測した。
次に、上記の圧力を付与したまま一定時間ごとに上記の中空粒子高さを測りながら経時変化を記録していき、中空粒子高さが変化しなくなるまで測定を継続し、最終的な『安定した中空粒子高さ:H2』を計測した。以上から次式により、粒子体積回復率を算出した。すなわち、
粒子体積回復率(%)=〔(Hx−H1)/(H2−H1)〕×100
以上の測定結果を基に、目標とする体積回復率となるまでの時間を割り出し、中空粒子を配置したタイヤ及びリム組立体に所望する圧力の気体を充填した上で、上記にて割り出した保持時間に従って粒子総体積の回復処置を施すことにより、中空粒子の中空部内圧力を増加させた。本実施例においては、約300時間の保持を行った。
さらに、タイヤ気室に配置した中空粒子の中空部内の圧力比率を、次のように測定し確認した。
〔中空部内の圧力レベル確認方法〕
タイヤ気室内に中空粒子を配置し所望の使用内圧P2に一定期間保った、目的のタイヤを準備する。バルブにはフィルターを配置することで、バルブを開放した時、中空粒子がタイヤ気室内に留まり、高圧の気体だけが排出される状態を得られる。その後、一旦タイヤ気室の圧力を大気圧とし、再度気体を充填したうえでP2の50%に相当する圧力P50%に調整し、タイヤバルブを開放してタイヤ気室内の空気を大気圧P1に放出させつつ積算流量計に流し、空気排出量V50%を測定する。そして、次式P50%下における粒子周囲空隙容積値V(cm)=〔空気排出量値V50%(cm)〕/〔内圧値P50%(kPa)/大気圧P1(kPa )〕により、圧力P50%における粒子周囲空隙容積値Vを求める。同様に、P30%、P70%、P80%、P90%等の各圧力水準における粒子周囲空隙容積を算出する。もし、中空部内圧力がタイヤ気室内の圧力に満たない場合は、中空粒子体積が減少するためその分粒子周囲空隙容積が増加した状態となる。よって、充分に低い圧力水準から上記測定を開始し、粒子周囲空隙容積が増加し始めた水準の圧力をもって、中空粒子の中空部内の圧力レベルとした。
更に上述の中空部内の圧力レベル確認方法を実施した後、同様の手法によりタイヤ気室の圧力を使用内圧(P100%)とし、下式より粒子周囲空隙容積値Vを求めた。
P100%下における粒子周囲空隙容積値V(cm)=〔空気排出量値V100%(cm)〕/〔内圧値P100%(kPa)/大気圧P1(kPa )〕
そして、前述のタイヤ気室容積と粒子周囲空隙容積値Vとの差分を求めることによって、使用内圧下におけるタイヤ気室内の中空粒子体積とした。
まず、得られたタイヤ及びリム組立体を用いて、高速発熱ドラム試験(常用限界速度)を実施した。すなわち、試験環境温度38℃に設定したドラム試験機に、内圧値200kPaに調整した上記評価組立体を取り付け、5.13kNの負荷荷重を与えながら速度100km/hにて走行を開始し、5分ごとに速度を10km/hずつ上昇させ、タイヤ気室内の粒子温度及びタイヤ気室圧力の変化を計測した。なお、評価を行うリムの内面には、タイヤ気室圧力をモニターする圧力センサーを、インナーライナー内面のタイヤ幅方向中央部には中空粒子の温度を計測する熱電対を配置し、測定した圧力データ及び温度データの信号を、一般に使用されているテレメータを用いて電波伝送し、試験室内に設置した受信機にて受信しながらタイヤ気室圧力及び中空粒子温度の変化を計測した。本試験では、各タイヤの速度記号に準じた保証速度に10km/hを加えた速度を『上限速度』として評価した。すなわち、上述の上限速度に達する前に中空粒子の温度が中空粒子の再膨張開始温度であるTs2に到達した場合は、その時点の速度までで走行を停止した。また、上限速度下においても中空粒子の温度が中空粒子の再膨張開始温度であるTs2に到達しない場合は、その上限速度までにて走行を停止した。そして走行停止を判断した時点の速度が、各タイヤの速度記号に準じた保証速度と同等以上である場合を合格と判定した。
また、別の各評価用タイヤ及びリム組立体の気室圧力を内圧200kPaに調整し、5.13kNの負荷荷重を与えながら速度90km/hで距離50000kmにわたるロングランドラム走行を実施し、走行による履歴を加えた。この走行後のタイヤを室温まで放置冷却した後、タイヤ気室圧力を使用内圧に調整し、前述の方法によって走行後の粒子周囲空隙容積値を計測した。そして、上述のタイヤ気室容積と走行後粒子周囲空隙容積値との差分を求めることによって、走行後の中空粒子体積とした。最後に、下式から中空粒子の高速耐久性指標となる『中空粒子体積保持率』を算出した。『中空微粒子体積保持率』は100%に近いほど優れており、95%以上を良(○)、90%以上95%未満を可(△)及び90%未満を不可(×)とした。
『中空微粒子体積保持率』=(走行後の中空微粒子体積/走行前の中空微粒子体積)×100
その後、別の各評価用タイヤ及びリム組立体を、上述の選定した車輌の左前輪に装着し、4名乗車相当の積載量に設定した。次に、直径5.0mm、長さ50mmの釘4本を該組立体のトレッド表面からタイヤ内部に向けて踏み抜き、タイヤ気室圧力が大気圧にまで低下するのを確認した後、90km/hの速度でテストコースの周回路をランフラット走行させ、タイヤ気室内の粒子温度と気室圧力とを連続的に計測し、内圧復活機能の発現状況を調査した。
なお、評価を行うタイヤ及びリム組立体のリム内面には、タイヤ気室圧力をモニターする圧力センサーを組み込み、測定した圧力データの信号を一般に使用されているテレメータを用いて電波伝送し、試験車両内部に設置した受信機にて受信することで圧力の変化を計測しながら、最大100kmの走行を実施した。前述の『RF走行限界内圧値』に対して、ランフラット走行下での内圧復活機能発現によるタイヤ気室内の圧力値が優り100km走行できた場合を良(◎)、50km以上100km未満を可(○)及び50km 未満を不可(×)とした。これらの調査結果を表1に併記する。
さらに別の各評価用タイヤ及びリム組立体について使用内圧に調整した上で、上述の選定した車輌の左前輪に装着し、4名乗車相当の積載量に設定した。次に、縁石に模した鉄板によってタイヤサイド部を受傷させ、その際、中空粒子のタイヤ外側への噴出状態を目視にて調査した。ここで、傷の長さは25〜30mmである。
なお、中空粒子の噴出状態は、下記の5レベルに分類して評価した。

レベル1:傷のタイヤ周上の位置に限らず連続的に多量噴出
レベル2:傷のタイヤ周上の位置に限らず連続的に少量噴出
レベル3:傷がタイヤ回転軸直下にある場合に多量噴出
レベル4:傷がタイヤ回転軸直下にある場合に少量噴出
レベル5:受傷直後のみ極く少量噴出し、その後は噴出なし
表1において、比較例1は繊維を添加しない例であり、比較例2及び3は繊維の添加後に液体を添加する例である。また、従来例は、中空粒子に液体及び繊維を添加しない事例である。
Figure 2009190319
本発明に従うタイヤ及びリム組立体を示すタイヤ幅方向断面図である。 本発明による液体の添加効果を示す図である。 中空粒子の攪拌に要する負荷トルクと混合時間との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 タイヤ
2 リム
3 タイヤ気室
4 中空粒子
5 ビードコア
6 カーカス
7 ベルト
8 トレッド
9 バルブ
10 インナーライナー層
11 サイド部
12 粒子周囲の空隙
13 液体
14 繊維

Claims (6)

  1. タイヤ及びリム組立体の内部に配置する、樹脂による連続相と独立気泡とからなる中空粒子の多数に液体及び繊維を添加した中空粒子組成物を製造するに当り、前記中空粒子に液体を添加して攪拌を行い、その後繊維を添加して攪拌を行うことを特徴とするタイヤ及びリム組立体の内部に配置する中空粒子組成物の製造方法。
  2. 前記中空粒子の体積に対して0.1vol%以上5.0vol%以下の液体を添加する請求項1に記載のタイヤ及びリム組立体の内部に配置する中空粒子組成物の製造方法。
  3. 前記繊維は2mm以上50mm以下の長さを有する請求項1または2に記載のタイヤ及びリム組立体の内部に配置する中空粒子組成物の製造方法。
  4. 前記繊維の添加量が中空粒子の体積の0.1vol%以上1.0vol%以下である請求項1、2または3に記載のタイヤ及びリム組立体の内部に配置する中空粒子組成物の製造方法。
  5. 前記液体はシリコンオイルまたは水である請求項1ないし4のいずれかに記載のタイヤ及びリム組立体の内部に配置する中空粒子組成物の製造方法。
  6. 樹脂による連続相と独立気泡とからなる中空粒子の多数に、液体及び繊維を均一に分散したことを特徴とするタイヤ及びリム組立体の内部に配置する中空粒子組成物。
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