JP2006151118A - タイヤ粒子集合体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 受傷部を完全に封止することができるとともに、受傷後における走行に必要な内圧まで早期に復活させることができるタイヤ粒子集合体を提供する。
【解決手段】 本発明に係るタイヤ粒子集合体100は、少なくともサイド補強層7を有するタイヤ1と、タイヤ1とリム2とによって区画されるタイヤ気室3に、大気圧を超える高圧気体とともに充填される複数の中空粒子4とのタイヤ粒子集合体100であって、中空粒子4が、樹脂による連続相と独立気泡とからなる略球形状であり、中空部圧力がタイヤ気室の内圧の70%以上であり、タイヤ気室3の内圧が低下した場合に、所定の温度(Ts2)に達することによって膨張し、サイド補強層7における径方向外側領域Outの少なくとも一部が、高発熱性ゴム層により構成されていることを要旨とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、少なくともカーカス層を有するタイヤと、タイヤとリムとによって区画されるタイヤ気室に、大気圧を超える高圧気体とともに充填される複数の中空粒子との集合体であるタイヤ粒子集合体に関する。
従来、タイヤとリムとによって区画されタイヤ気室の内圧が、大気圧まで低下した状態(いわゆる、パンク状態)においても走行可能であるタイヤについて、多くの提案がなされている。
例えば、タイヤ幅方向断面における形状が三日月状の比較的硬質のゴムストックからなり、サイドウォールを補強するサイド補強層を備えたタイヤ(以下、サイド補強型タイヤ)が知られている。
また、所定のガス(空気でも可)が充填された中空粒子が、タイヤ気室に大気圧を超える高圧気体とともに充填されることにより、タイヤへの外傷を受けた部分である受傷部を当該中空粒子により封止して、タイヤ気室の高圧気体の漏れを遅らせるタイヤ(以下、受傷封止型タイヤ)が開示されている(例えば、特許文献1)。
特開昭51−126604号公報
しかしながら、上述したサイド補強型タイヤでは、サイド補強層を備えたことにより、一般的なサイド補強層を備えていないタイヤと比較して、タイヤ重量が30〜40%も増加してしまうという問題があった。
このことにより、タイヤへの入力に対してタイヤの粘性の働きによりタイヤ変形に対して遅れて生じるエネルギーであるヒステリシスロス(履歴損失)も増加してしまう。そのため、転がり抵抗の大幅な増大による省燃費性や乗り心地等にも悪影響を与えてしまうことがあった。
一方、上述した受傷封止型タイヤでは、中空粒子の内圧がタイヤ気室の温度と当該中空粒子の内部にある所定のガスの特性等とによって決定される。そのため、中空粒子が、所定の内圧で気体とともにタイヤ気室に充填されると、中空粒子の内圧である中空部圧力が低いため、略球形状を保つことができずに、扁平化して歪んだ形状、いわゆるつぶれたラグビーボールのような形状でタイヤ気室に存在することとなる。この中空粒子が歪んだ形状では、パンク状態において受傷部を封止することが難しい。
具体的には、内圧50kpa程度の低い内圧であるタイヤでは、外傷を受けると中空粒子が略球形状で保たれているため、釘等によるφ2.5mm程度までの受傷部を封止することができる。
しかし、常用走行に必要な200kpa程度の高い内圧であるタイヤでは、外傷を受けると、中空粒子が扁平化して歪んだ形状(つぶれたラグビーボールのような形状)であるため、φ2.5mm程度の受傷部を封止することができず、中空粒子がタイヤ気室の高圧気体と一緒に噴出してしまう。
また、現在の市場でのパンク実態調査から、タイヤに刺さる異物の平均直径はφ3.5mm程度であるため、中空粒子については、さらに改善の余地があった。
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、受傷部を完全に封止することができるとともに、受傷後における走行に必要な内圧まで早期に復活させることができるタイヤ粒子集合体を提供することを目的とする。
発明者らは、上記の状況を解決すべく鋭意検討した結果、受傷によりタイヤ気室の高圧気体が漏れた際、受傷後における走行(いわゆる、ランフラット走行)に必要な最低限以上のタイヤ気室の内圧を中空粒子により復活させる過程で、より早期に内圧復活させることが必要かつ有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
まず、本発明の第1の特徴は、少なくともカーカス層(カーカス層6)を有するタイヤ(タイヤ1)と、タイヤとリム(リム2)とによって区画されるタイヤ気室(タイヤ気室3)に、大気圧を超える高圧気体とともに充填される複数の中空粒子(中空粒子4)との集合体であるタイヤ粒子集合体(タイヤ粒子集合体100)であって、タイヤが、カーカス層のタイヤ幅方向内側に配置され、タイヤ幅方向断面における形状が三日月状のゴムストックからなり、サイドウォール(サイドウォールSW)を補強するサイド補強層(サイド補強層7)を備え、中空粒子において、樹脂による連続相と独立気泡とからなる略球形状であり、中空粒子の内圧である中空部圧力が、タイヤ気室の内圧の70%以上であり、タイヤ気室の内圧が低下した場合に、所定の温度(再膨張開始温度(Ts2))に達することによって膨張し、サイド補強層が、タイヤ最大幅の位置よりもタイヤ径方向外側に位置する領域である径方向外側領域(径方向外側領域Out)の少なくとも一部が、他の部分(径方向内側領域In)よりも発熱性が高い高発熱性ゴム層により構成されていることを要旨とする。
かかる特徴によれば、中空部圧力が、タイヤ気室の内圧の70%以上であることにより、球形状から扁平化して歪んだ形状(つぶれたラグビーボールのような形状)でタイヤ気室に存在することがなくなるため、常用走行における中空粒子の破壊を回避でき、かつ一般的な200kpa程度の高い内圧であるタイヤが外傷を受けた場合でも、受傷部を完全に封止することができる。
また、中空粒子が略球形状で保たれるとともに、受傷後に当該中空粒子が膨張するため、良好な流動性と弾力性を実現することできるため、中空部圧力が低い場合に比べて、受傷部を封止する封止限界が大幅に向上する。
また、中空部圧力が、タイヤ気室の内圧の70%以上であることにより、タイヤ気室の内圧が低下した場合において、タイヤの撓み変形量の増加に伴うタイヤ発熱による中空粒子の温度上昇と、低下したタイヤ気室の内圧と中空部圧力との差圧が中空粒子の膨張の原動力となって、タイヤ気室の圧力を復活(回復)させることができる。なお、中空部圧力が、タイヤ気室における内圧の80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、100%以上であることが最も好ましい。
また、タイヤがサイド補強層を備えていることにより、サイドウォールが岩や瓦礫に接触したときの外傷(カット傷など)が入りにくくなり、耐カット性を向上させることができるとともに、受傷後から中空粒子が膨張するまでの間、安全かつ確実に走行(移動)することができる。
また、サイド補強層における径方向外側領域の少なくとも一部が、高発熱性ゴム層で構成されていることにより、高発熱性ゴム層の部分が受傷後の走行における発熱源として活用され、中空粒子の温度上昇を促進させ、早期に内圧復活機能を実現することができる。すなわち、中空粒子の温度上昇が促進することにより、早期に所定の温度に達するため、中空粒子の膨張を促進させることができる。
ここで、受傷後のタイヤの内圧復活機能とは、タイヤ気室における内圧が大気圧まで低下した状態(パンク状態)において、中空粒子が膨張することにより、タイヤ気室に充填された高圧気体を圧縮することとなるため、タイヤ気室の内圧を復活させることができる機能である。この内圧復活機能は、パンク状態において早期に実現することが望ましい。パンク状態のタイヤは、操縦性が著しく低下しているため、一定時間内にできるたけ早期に増圧させることが望まれる。
また、サイド補強層における径方向外側領域の少なくとも一部以外が、高発熱性ゴム層よりも発熱性が低いゴム層で構成されていることにより、常用走行での中空粒子の温度上昇を抑制することができる。すなわち、常用走行において、タイヤ気室の内部の温度が所定の温度に達することを抑制することができる。
このように、本発明の第1の特徴によれば、受傷部を完全に封止することができるとともに、受傷後における走行に必要な内圧まで復活させることができる。
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、所定の温度(Ts2)が、90〜200℃であることを要旨とする。なお、所定の温度(Ts2)は、110℃〜200℃がより好ましく、130℃〜200℃がさらに好ましく、160℃〜200℃が最も好ましい。
本発明の第3の特徴は、本発明の第1の特徴又は第2の特徴に係り、高発熱性ゴム層における50℃、100℃、150℃での応力とひずみとの比例関係における縦弾性係数である損失ヤング率の平均値が、他の部分における50℃、100℃、150℃での損失ヤング率の平均値に対して10%以上高いことを要旨とする。なお、高発熱性ゴム層における損失ヤング率の平均が、他の部分における損失ヤング率の平均に対して20%以上高いことがより好ましい。
本発明の第4の特徴は、本発明の第1の特徴乃至第3の特徴に係り、下記一般式(I)
中空粒子の充填率=(粒子体積値/タイヤ気室容積値)×100 …(I)
によって算出される前記中空粒子の充填率は、5vol%以上80vol%以下であり、粒子体積値が、タイヤ気室に充填される全中空粒子の大気圧下での合計体積と粒子周囲の空隙体積との合計量(cm3)であり、タイヤ気室容積値が、タイヤ気室に空気のみを充填して使用内圧(kPa)に調整した後、充填空気を内圧が大気圧になるまで排出した際の充填空気排出量(cm3)を用いて、下記一般式(II)
タイヤ気室容積値=(充填空気排出量)/(使用内圧/大気圧) …(II)
から求めた値(cm3)であることを要旨とする。なお、中空粒子の充填率は、70vol%以下であることがより好ましく、60vol%以下であることがさらに好ましく、50vol%以下であることが最も好ましい。
本発明の第5の特徴は、本発明の第1の特徴乃至第4の特徴に係り、タイヤ気室に充填される前において、中空粒子の内部にある気体が、タイヤ気室に充填される高圧気体と異なる気体であることを要旨とする。
本発明の第6の特徴は、本発明の第5の特徴に係り、タイヤ気室に充填される前において、中空粒子の内部にある気体が不燃性ガスであり、タイヤ気室に高圧気体が充填された後において、中空粒子の内部にある気体が、不燃性ガスとタイヤ気室に充填された前記高圧気体との混合物であることを要旨とする。
本発明の第7の特徴は、本発明の第1の特徴乃至第6の特徴に係り、不燃性ガスが、炭素数2〜8の直鎖状あるいは分岐状の脂肪族炭化水素及びそのフルオロ化物、炭素数2〜8の脂環式炭化水素及びそのフルオロ化物、そして下記一般式(III):
1−O−R2 …(III)
(式中のR1およびR2は、それぞれ独立に炭素数が1〜5の一価の炭化水素基であり、該炭化水素基の水素原子の一部をフッ素原子に置き換えても良い)にて表されるエーテル化合物、からなる群の中から選ばれた少なくとも1種の気体であることを要旨とする。
本発明の第8の特徴は、本発明の第1の特徴乃至第7の特徴に係り、中空粒子を構成する連続相が、アクリロニトリル系樹脂であることを要旨とする。
本発明の第9の特徴は、本発明の第8の特徴に係り、アクリロニトリル系樹脂が、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、メチルメタクリレートからなる三元共重合体、又は、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、メタクリル酸からなる三元共重合体であることを要旨とする。
本発明の第10の特徴は、本発明の第1の特徴乃至第9の特徴に係り、中空部圧力が、常用走行使用時における車両指定タイヤの内圧以上であること要旨とする。
本発明の第11の特徴は、本発明の第1の特徴乃至第10の特徴に係り、タイヤ気室に充填された複数の中空粒子である中空粒子群の平均粒径が、40〜200μmであり、タイヤ気室に充填された中空粒子群の平均真比重が、0.01〜0.06g/cm3の範囲にあることを要旨とする。
本発明の第12の特徴は、本発明の第1の特徴乃至第11の特徴に係り、タイヤ圧力センサー(タイヤ圧力センサー14)によるタイヤ気室の圧力の直接測定方式に基づいて、タイヤ気室における内圧の低下を警報する第1タイヤ圧力低下警報機能をタイヤ粒子集合体が備えることを要旨とする。
本発明の第13の特徴は、本発明の第1の特徴乃至第12の特徴に係り、車輪速度センサー(車輪速度センサー15)により検知される車輪速度に基づいて、タイヤ気室における内圧の低下を警報する第2タイヤ圧力低下警報機能をタイヤ粒子集合体が備えることを要旨とする。
本発明の第14の特徴は、本発明の第1の特徴乃至第13の特徴に係り、中空粒子及び気体の充填に併用するタイヤ用バルブをタイヤ粒子集合体が有し、タイヤ用バルブが、中空粒子をタイヤ気室に堰き止め、かつ気体のみをタイヤ気室外に通過可能とした所定の織物により形成されているフィルターを備えることを要旨とする。
本発明の第15の特徴は、本発明の第1の特徴乃至第14の特徴に係り、タイヤ気室における大気圧下での平均嵩比重が、中空粒子の平均真比重よりも大きく、中空粒子と混在してタイヤ気室に充填される多数の発泡体をタイヤ粒子集合体が備えることを要旨とする。
本発明の第16の特徴は、本発明の第15の特徴に係り、発泡体において、直径が1〜15mmの略球体形状又は一辺が1〜15mmの立方体形状であり、平均嵩比重が0.06〜0.3(g/cc)であり、独立気泡又は連通気泡を有するものであることを要旨とする。
本発明によれば、受傷部を完全に封止することができるとともに、受傷後における走行に必要な内圧まで早期に復活させることができるタイヤ粒子集合体を提供することができる。
(タイヤ粒子集合体の構成)
次に、本発明に係るタイヤ粒子集合体の一例について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なのものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることを留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
図1は、本実施形態におけるタイヤ粒子集合体100を示す断面図である。図1に示すように、タイヤ粒子集合体100は、少なくともカーカス層6を有するタイヤ1と、タイヤ1とリム2とによって区画されタイヤ気室3に、大気圧を超える高圧気体とともに充填された充填された複数の中空粒子4との集合体である。
タイヤ1は、ビードコア5a及びビードフィラー5bを含む1対のビード部5を有している。具体的には、ビード部5を構成するビードコア11aには、スチールコードなどが用いられる。
タイヤ1は、ビードコア5aの周りでタイヤ径方向内側からタイヤ径方向外側に折り返されたカーカス層6を有している。
カーカス層6の幅方向内側には、サイドウォールSWを補強するサイド補強層7が配置されている。なお、サイド補強層7の詳細については、後述する。
カーカス層6及びサイド補強層7のタイヤ径方向内側には、チューブに相当する気密性の高いゴム層であるインナーライナー8が設けられている。また、カーカス層6のタイヤ径方向外側には、ベルト層9が配置されている。さらに、ベルト層9のタイヤ径方向外側には、路面と接地するトレッド部10が配置されている。
リム2には、中空粒子4をタイヤ気室3で堰止め、かつ気体のみをタイヤ気室外に通過可能とするバルブ12が配置されている。図2に示すように、このバルブ12は、所定の繊維(例えば、不織布)で構成されているフィルター13を備えている。
このようなタイヤ用バルブ12を取り付けることによって、常用走行におけるタイヤ気室3の内圧の自然低下に対し、中空粒子4を漏洩させることなく気体補充作業を行うことができ、簡便にタイヤ気室3の内圧をメンテナンスすることができる。また、本発明のタイヤ粒子集合体100を製造する際、1つのバルブ13のみにて中空粒子4をタイヤ気室3に充填することが可能となるため、1つのバルブ穴しか持たない汎用リムをそのまま使用することができる。
中空粒子4は、タイヤ1とリム2とによって区画されタイヤ気室3に、大気圧を超える高圧気体とともに充填されている。なお、中空粒子4の詳細については、後述する。
ここで、タイヤ1は、各種自動車用タイヤ、トラックやバス用のタイヤ等、例えば乗用車用のタイヤなどの一般に従うタイヤであれば、特に構造を限定する必要はない。
ところで、タイヤ気室3の内圧が低下したまま走行する(いわゆる、パンク状態で走行する)と、後述する中空粒子4の機構により内圧が復活するため、状況によっては運転者がパンクしたことに気が付かない場合がある。また、タイヤ1は外傷を受けてパンクしているため、そのまま走行を続けるとタイヤ1が故障してしまう恐れがあり大変危険である。
そのため、運転者にパンクしたことを警報(報知)する機能として、以下のようなものがあげられる。図3は、本実施形態におけるタイヤ粒子集合体100を示す断面図である。
図3に示すように、バルブ12の近傍には、タイヤ圧力センサー14が配置されている。
このタイヤ圧力センサー14は、タイヤ気室3の内圧の直接測定方式に基づいて、タイヤ気室3における内圧の低下を警報するものである。
具体的には、図4に示すように、タイヤ圧力センサー14は、タイヤ気室3の内圧の直接測定方式に基づいて、タイヤ気室3における内圧が低下(いわゆる、パンク)したことを検知した場合、車輌50の受信部50aに、パンクしたことに関するデータを送信する。
車輌50の受信部50aが、パンクしたことに関するデータを受信したことにより、警報部50bを介して運転者に警報(報知)することができる。
なお、本実施形態において、パンクしたことを運転者に警報(報知)する機能として、タイヤ圧力センサー14のみに限定されるものではなく、車輪速度センサーが用いられてもよい。
例えば、図4に示すように、アンチロックブレーキシステムにおける車輪速度センサー15は、検知した車輪速度に基づいて、パンクしたことを検知した場合、警報部50bを介して運転者に警報(報知)する。また、アンチロックブレーキシステムにおける車輪速度センサー15に限定されるものではなく、アンチロックブレーキシステムにおける車輪速度センサーとは別の車輪速度センサーが用いられてもよい。
なお、本実施形態において、タイヤ圧力センサー14が用いられて運転者に警報する機能は、第1タイヤ圧力低下警報機能を構成し、アンチロックブレーキシステムにおける車輪速度センサー15が用いられて運転者に警報する機能は、第2タイヤ圧力低下警報機能を構成する。
(サイド補強層の構成)
次に、上述したサイド補強層の構成について説明する。
サイド補強層7は、タイヤ最大幅THの位置よりもタイヤ径方向外側に位置する領域である径方向外側領域Outの少なくとも一部が、他の部分(後述する低発熱性ゴム層)よりも発熱性が高い高発熱性ゴム層により構成されている。
また、サイド補強層7は、タイヤ最大幅THの位置よりもタイヤ径方向内側に位置する領域である径方向内側領域Inが、上述した高発熱性ゴム層よりも低い発熱性を有する低発熱性ゴム層により構成されている。
このように、タイヤ1がサイド補強層7を備えていることにより、サイドウォールが岩や瓦礫に接触したときの外傷(カット傷など)が入りにくくなり、耐カット性を向上させることができるとともに、パンクにより傷ついてしまったタイヤ気室3の受傷部を中空粒子4によって封止するまでの間における走行(移動)を安全かつ確実に実現することができる。
また、サイド補強層7における径方向外側領域Outの少なくとも一部が、高発熱性ゴム層で構成されていることにより、高発熱性ゴム層の部分が受傷後の走行における発熱源として活用され、中空粒子の温度上昇を促進させ、早期に内圧復活機能を実現することができる。すなわち、中空粒子の温度上昇が促進することにより、早期に所定の温度に達するため、中空粒子の膨張を促進させることができる。
また、サイド補強層7における径方向内側領域Inが、低発熱性ゴム層で構成されていることにより、常用走行での中空粒子4の温度上昇を抑制することができる。すなわち、常用走行において、タイヤ気室の内部の温度が所定の温度に達することを抑制することができる。
(中空粒子の構成)
次に、上述した中空粒子の構成について説明する。
中空粒子4は、略球形状の樹脂による連続相で囲まれた独立気泡を有する、例えば粒径が10μm〜500μm程度の範囲で粒径分布を持った中空体、あるいは独立気泡による小部屋の多数を含む海綿状構造体である。
すなわち、中空粒子4は、外部と連通せずに密閉された独立気泡を内包する粒子であり、独立気泡の数は単数であってもよく、複数であってもよい。
本実施形態では、この『中空粒子群の独立気泡内部』を略称して『中空部』と表現する。また、この中空粒子4が独立気泡を有することは、中空粒子4が独立気泡を密閉状態で内包するための『樹脂製の殻』を有することを指す。さらに、上記の樹脂による連続相とは、この『樹脂製の殻を構成する成分組成上の連続相』を指す。なお、この樹脂製の殻の組成については後述する。
この中空粒子4の複数個(多数個)である中空粒子群は、高圧気体とともにタイヤ気室3の内側に充填されることによって、通常の使用条件下ではタイヤの『使用内圧』を部分的に担うとともに、タイヤが外傷を受けた(以下、受傷)時には、タイヤ気室3の失った内圧を復活(回復)させる機能を発現する源となる。この『内圧復活機能』については後述する。
ここで、『使用内圧』とは、『自動車メーカーが各車両毎に指定した、装着位置ごとのタイヤ気室圧力値(ゲージ圧力値)』を指す。
さて、従来の空気入りタイヤは、タイヤ気室3の内圧が大気圧まで低下した状態で走行すると、荷重によりタイヤ1が大きく撓み、タイヤ1のトレッド10端部(以下、サイド部)が路面に接地するか、インナーライナー8同士が接触するため、摩擦と繰り返し屈曲変形とによる発熱によって、タイヤ1の骨格であるカーカス層6が疲労し、サイド部の摩耗傷が最終的にタイヤ気室3内まで貫通することで破壊に到る。
そこで、本実施形態では、外傷によってタイヤ気室3の気体が漏れ出た際に、その後の走行に必要な最低限のタイヤ気室3の内圧を適正に与え、失った内圧を復活させることを主目的としている。よって、本実施形態では、タイヤ1とリム2とによって区画されたタイヤ気室3を圧力容器と捉えている。
すなわち、パンクにより傷ついてしまったタイヤ気室3の受傷部を、タイヤ気室3に充填された中空粒子群により暫定的に封止した上で、中空粒子4を機能させて失った圧力を復活することによって、この目的を達成しようとするものである。
タイヤ気室3の内圧が大気圧にまで低下したとしても、サイド補強層7を配置しておくことによって最低限の撓み量を維持しつつ、早期に失った内圧を復活させる機能(後述する内圧復活機能)を発揮させることによって、圧力容器として機能させることが肝要である。
より具体的には、タイヤ気室3に充填される中空粒子4について、下記式(I)
中空粒子4の充填率=(粒子体積値/タイヤ気室3容積値)×100 …(I)
によって算出される中空粒子4の充填率が、5vol%以上80vol%以下とすることが好ましい。
ここで、粒子体積値は、タイヤ気室3に充填された中空粒子群の大気圧下での合計体積と粒子周囲の空隙体積との合計量(cm3)であり、以下の方法で算出できる。
まず、中空粒子4の大気圧下での平均嵩比重を求める。例えば、大気圧下にて既知体積であるものの重量を測定することにより算出する。最初に、大気圧下でメスシリンダーに中空粒子4を量りとり、超音波水溶液中にて振動を与え、中空粒子4間のパッキングが安定した状態にて、中空粒子4の総体積(粒子周囲の空隙体積を含む)と中空粒子4の総重量とを測定することによって、上記大気圧下での平均嵩比重を算出する。すなわち、中空粒子4の大気圧下での平均嵩比重は、
中空粒子の大気圧下での平均嵩比重=(粒子の総重量)/(粒子の総体積)
である。
次に、タイヤ気室3に充填された中空粒子4の総重量を測定し、上述した中空粒子4の大気圧下での平均嵩比重で割ることによって、タイヤ1の内部に充填された『粒子体積』を算出することができる。すなわち、
粒子体積=(タイヤに充填した粒子の総重量)/(粒子の大気圧下での平均嵩比重)
である。
なお、容積が既知の容器に粒子を量り取りながらタイヤ気室3に充填する方法でも所望の粒子体積の中空粒子4をタイヤ1内に充填することができる。
また、タイヤ気室容積値は、タイヤ1とリム2とによって区画されたタイヤ気室3に空気のみを充填して使用内圧(kPa)に調整した後、充填空気を内圧が大気圧になるまで排出した際の充填空気排出量(cm3)を用いて、次式(II)から求めた値(cm3)である。
タイヤ気室容積値=(充填空気排出量)/(使用内圧/大気圧) …(II)
なお式(II)において使用内圧はゲージ内圧(kPa)を、大気圧値は気圧計による絶対値(kPa)を用いる。すなわち、大気圧は、ゲージ圧では0[kPa]で表されるが、大気圧値自体は日々刻々と変動するものであるため、その時点での気圧計から観測される絶対値を用いる。よって例えばある時の大気圧が1013hPaであった場合は、大気圧絶対値として101.3kPaを式(II)に用いる。
次に、上記した中空粒子4の充填率を5vol%以上80vol%以下とする理由について、常用使用からパンク状態となった場合の態様へと順に説明する。
まず、タイヤ気室3に中空粒子4が多数充填され、さらにタイヤ気室3に高圧気体が充填されて、タイヤ気室3の内圧を使用内圧とする場合から説明する。
本実施形態では、タイヤ気室3に中空粒子4が充填された後、中空粒子4の周囲の空隙部11、言い換えればタイヤ気室3の内圧が、装着車両指定内圧等の所望の使用内圧となるように、空気や窒素等の高圧気体を充填することが肝要である。
タイヤ気室3に中空粒子4が充填され、さらに気体が充填されてタイヤ気室3の内圧を所望の内圧に設定すると、当初、中空粒子の中空部圧力(独立気泡内の内圧)がタイヤ気室の内圧より小さいために、粒子は体積減少する。この時点での中空粒子4の形状は略球形状ではなく、球形状から扁平化して歪んだ形状(いわゆる、つぶれたラグビーボールのような形状)となっている。
この中空粒子4の形状が扁平化して歪んだ状態のまま車両の走行が開始すると、中空粒子4は、球形状の場合と比べて、当該中空粒子4同士の衝突やタイヤ1およびリム2内面との衝突により、破壊しやすくなる。すなわち、中空粒子4が扁平化して歪んだ形状では、衝突による入力を均一に分散させることができず、耐久性面で大きな不利をもたらすことになる。
一方、扁平化して歪んだ中空粒子4は、その中空部圧力とタイヤ気室3の内圧との差により体積減少した状態であるわけだが、一定期間にわたりタイヤ気室3(粒子周囲の空隙部11)の内圧を保ち続けることによって、中空粒子4の中空部圧力、言い換えれば、中空粒子4の独立気泡内の内圧を、タイヤ気室3の内圧程度に高めることができる。すなわち、扁平化した中空粒子4は変形させられているため、その殻の部分には元の略球形状に戻ろうとする力が働いている。
また、扁平化した中空粒子4の中空部圧力は、タイヤ気室3の内圧よりも低いことから、その内圧差を解消するために、タイヤ気室3の気体の分子が樹脂による連続相の殻を通過して粒子の中空部内に浸透する。さらに、中空粒子4の中空部は独立気泡であり、その中の気体は発泡剤に起因するガスで満たされているため、タイヤ気室3(粒子周囲の空隙部11)の気体とは異なる場合がある。この場合は、上述の単なる内圧差だけではなく気体の分圧差に従いながら、その分圧差を解消するまでタイヤ気室3の高圧気体が粒子中空部内へ浸透していく。
このように、タイヤ気室3の高圧気体は、時間とともに中空粒子4の中空部内へ浸透していくため、この中空部内に浸透した分だけ、タイヤ気室3の内圧が低下することとなる。よって、中空粒子4の中空部内に浸透した分を補うために、高圧気体を充填した上で所望の内圧をかけ続けることにより、所望の使用内圧に調整した、本実施形態のタイヤを得ることができる。
中空粒子4の中空部内の内圧は、タイヤ気室3(中空粒子4の周囲の空隙部11)の内圧に近づきながら、一旦減少した粒子体積を復活していき、粒子形状は扁平化されて歪んだ形状から元の略球形状へと復活していく。この形状を復活していく過程の中で、中空粒子4の中空部内の内圧がタイヤ気室3の内圧に対して少なくとも70%にまで増加することにより、粒子形状は扁平化した状態から略球形へ復活することができ、これによって上述した中空粒子の耐久性を保証することができる。
このように、中空粒子4のまわりに高圧気体が介在することとなり、通常走行時に中空粒子4が負担する荷重を無視できるほど軽減できる。また、上述の粒子体積を復活した中空粒子4においては、粒子形状が略球形に復活するため、タイヤ転動時の繰り返し変形に伴って、中空粒子4に加わる疲労や破壊も大幅に低減できる。この結果、中空粒子4の耐久性が損なわれることはない。中空粒子の4耐久性が損なわれない範囲は、タイヤ気室3の内圧が、装着される車両指定内圧等の所望する高圧下環境のなかで、中空粒子4が体積を復活しながら中空部圧力が増加する過程において、中空粒子4の中空部圧力が所望のタイヤ気室3の内圧に対して少なくとも70%であることが好ましい。さらには、80%以上、90%以上、そして100%以上と高く設定することが推奨される。
ここで、中空粒子4の中空部圧力が所望のタイヤ気室3の内圧に対して少なくとも70%である状態とするには、中空粒子4周囲の空隙気体の圧力を、少なくとも装着される車両指定内圧等の所望するタイヤ気室3の内圧に対して70%以上まで高めた状態で保持され、この圧力をかけ続けたまま適切な時間を経過させればよい。あるいは、中空粒子4がタイヤ1とは別の圧力容器内に充填され、中空粒子4の周囲の空隙11の内圧を少なくとも所望のタイヤ気室3の内圧に対して70%以上まで高めた状態で保持し、この圧力をかけ続けたまま圧力容器内にて適切な時間保持したうえで、中空粒子4の中空部圧力が増加した状態の中空粒子4をその周囲の気体とともにタイヤ気室3に充填することによっても、所望のタイヤ粒子集合体100を得ることができる。
なお、上述の適切な保持時間は、中空粒子4の殻の部分、すなわち中空粒子の連続相に対する空隙気体の透過性と、粒子中空部内の気体と空隙気体との分圧差とを考慮して設定すればよい。
以上の中空粒子4における機構、形状、体積の変化過程に則り、タイヤ気室3(中空粒子4の周囲の空隙11)に充填される気体の種類と圧力とを適宜に選択、そして調節することによって、中空粒子4の中空部圧力を所望の範囲に設定できる。
以上のように、中空粒子4の中空部圧力を所望のタイヤ気室3の内圧に対して少なくとも70%とした中空粒子4が、タイヤ気室3に充填されることにより、タイヤ気室3の内圧が大気圧となった状態から走行した時に、少なくとも一定距離の走行を可能とするタイヤ気室の内圧まで、タイヤ気室3の内圧を復活させることを実現する必要がある。
次に、上述したタイヤ気室3の失った内圧を復活させる機能(いわゆる、『内圧復活機能』)について説明する。
上述した中空粒子群がタイヤ気室3に充填されたタイヤ粒子集合体100では、タイヤ1が外傷を受けると、中空粒子4の周囲の空隙11に存在するタイヤ気室3の高圧気体がタイヤ1の外側に漏れ出る結果、タイヤ気室3の内圧は大気圧と同程度の内圧にまで低下する。そして、このタイヤ気室3の内圧低下の過程において、以下のことがタイヤ気室3で起こっている。
まず、タイヤ1が外傷を受け、タイヤ気室3の内圧が低下し始めると、多数の中空粒子4が、外傷を受けたタイヤ部分である受傷部を封止し、急激なタイヤ気室3の内圧の低下を抑制する。
ここで、本実施形態では、中空粒子4の中空部圧力が、少なくとも常用走行使用時車両指定タイヤの内圧の70%以上と規定しているが、受傷部の封止能力は中空部圧力に依存する。すなわち、中空部圧力が70%以上であれば略球形状を保つことが出来ることを上述したが、略球形状を保つことによって良好な流動性と弾力性を発現できるため、中空部内圧が低い場合に比べて、受傷部の封止限界が大幅に向上する。
また、タイヤ気室3の内圧の低下に伴いタイヤ1の撓み量は増加し、タイヤ気室容積が減少する。さらに、タイヤ気室3の内圧が低下するとタイヤが大きく撓み、タイヤ気室3の温度はタイヤ1自身の発熱によって上昇し始める。
一方、上述の使用内圧下で存在していた中空粒子4の中空部圧力(独立気泡中の気泡内圧力)は、受傷後も使用内圧に準じた高い圧力を保ったまま、言い換えれば、受傷前の粒子体積と中空部圧力を保持したままタイヤ気室3に存在することとなる。よって、さらにタイヤが転動することにより、タイヤ気室3の温度上昇に伴って中空粒子温度が上昇する。
そして、中空粒子温度が、中空粒子4の再膨張開始温度(Ts2:樹脂のガラス転移温度に相当する)を超えると、中空粒子4の殻は軟化し始める。このとき、中空粒子4の中空部内圧力が使用内圧に準じた高い圧力であるのに加え、中空粒子温度の上昇によりさらに中空部内圧力が上昇しているために、中空粒子4が体積膨張し、中空粒子4の周囲の空隙11にある気体を圧縮することになるため、タイヤ気室3の内圧を復活(回復)させることができるのである。
ここで、タイヤの受傷後におけるタイヤ1の内圧復活機能は、できるだけ早期に発現することが望ましい。内圧が低下したタイヤ1は、操縦性能(例えば、操縦安定性)において低下しているため、一定時間内にできるだけ早期に増圧することが望まれる。
発明者らは鋭意検討の結果、上述の内圧復活機能を早期に発現させる手段として、タイヤの受傷後における走行でのタイヤ気室3の温度上昇に着目し、本実施形態を完成するに至った。すなわち、上述したサイド補強層7の一部分について発熱性を高めた高発熱性ゴム層とし、この部分をタイヤの受傷後における走行での発熱源として活用することで、中空粒子の温度上昇を促進させ、早期に内圧復活機能を発現させることを実現した。
上述したサイド補強層7の一部分とは、『ビード部5からベルト部9の端部近傍にかけてのサイドウォール部SWに配置されたサイド補強層7におけるタイヤ最大幅THの位置よりもタイヤ径方向外側に位置する領域である径方向外側領域Sの少なくとも一部』であることを見出した。径方向外側領域Out以外(すなわち、径方向内側領域In)の領域に高発熱性ゴム層を配置した場合、目的とする効果が得られないばかりか、常用走行における転がり抵抗が増加するデメリットが発生する。
また、所望する領域に高発熱性ゴム層とサイド補強層7とを併用することで、サイド補強層7のゲージ(厚さ)を減らすことができるため、従来のサイド補強層を有するタイヤと比べてタイヤ重量の増加を抑制することができる。この結果、受傷後の走行能力の大幅な向上が可能となり、さらにヒステリシスロス(履歴損失)の増加が抑制されるとともに、転がり抵抗の大幅な悪化を防止することができるため、省燃費性や乗り心地等が向上する。
上述した高発熱性ゴム層を有するサイド補強層7が配置されていることにより、早期にタイヤ気室3の温度を高めること可能となり、これにより、中空粒子4自身の温度を早期に所定の温度まで高めることができるため、内圧復活機能を早期に実現させることができる。
すなわち、タイヤ気室3の内圧を復活させるには、中空部内圧力が使用内圧の少なくとも70%である中空粒子4を、5vol%以上80vol%以下の充填率の下にタイヤ気室内に充填しておくことが肝要である。その理由を、以下に示す。
中空粒子4の充填率が5vol%よりも小さいと、受傷部の封止は問題なく行えるが、中空粒子4の絶対量が不足しているために、充分な復活内圧を得ることが難しくなる。一方、中空粒子の充填率が80vol%を超えると、タイヤによっては常用時の高速走行での粒子摩擦による発熱のために、中空粒子4の再膨張開始温度(Ts2)を超えて膨張してしまい、本実施形態の主たる機能である内圧復活機能が常用走行中に失われる可能性がある。
また、内圧復活機能を確実に発現させるためには、内圧復活機能が発現する前に、受傷部を確実に封止する事が肝要である。すなわち、受傷部の封止が不完全であると、復活したはずの内圧が、受傷部から漏洩してしまう結果、内圧復活機能により得られた内圧がその後の走行に一時的にしか貢献できないために、タイヤの受傷後の走行性能を保証できなくなる恐れがあるからである。
中空粒子4は、中空構造による低比重かつ弾力性に富んだ粒子であるために、タイヤ1が外傷を受けた受傷部から中空粒子周囲の空隙気体が漏洩し始めると、空隙気体の漏洩による流れに乗って即座に受傷部に密集し、受傷部の傷口を瞬時に封止する。このように、中空粒子1による受傷部の封止機能は、本実施形態の内圧復活機能を支える必須機能である。
以上のように、タイヤ1とリム2とにより区画されたタイヤ気室3に中空粒子4が充填されると、パンク後の内圧低下に伴うタイヤ気室容積の減少とタイヤ1の撓み量の増大により、タイヤ気室3の温度上昇に伴う中空粒子4の温度上昇によって、中空粒子4の膨張による内圧復活を果たし、パンク状態での安全走行を実現できる。
ところで、タイヤ粒子集合体100における中空粒子4間の摩擦は、常用走行下においても、微小ではあるが発生している。しかし、走行速度が100km/h以下の領域では、発生した摩擦熱自体が小さく、発生した熱が外気へ放熱されるため、中空粒子4の温度は、再膨張開始温度(Ts2)未満の範囲で均衡している。
しかしながら、150km/hを超える高速度領域において、さらには外気の温度循環が著しく高い酷暑環境下においては、発生する摩擦熱が増加するわりに外気への放熱が不足する状態となり、中空粒子4の温度が著しく上昇してしまう。このような状況が長時間続くと、中空粒子4の温度が再膨張開始温度(Ts2)を上回ることによって、中空粒子が膨張してしまい、その結果、前述したパンク時の『内圧復活機能を実現することができない(損失する)こと』がある。
すなわち、タイヤ1は高速で回転することにより、速度に応じた遠心力を発生している。タイヤ気室3に充填された中空粒子群も同様の遠心力を受けている。この遠心力は、中空粒子4の重量に比例かつ速度の2乗に比例し、タイヤ1の半径に反比例する。さらに、タイヤ1に荷重を負担させることにより一定の撓みを生じており、路面と接地している領域は、路面と平行な面の状態となっているため、この接地領域は曲率を持たずに、遠心力がほぼゼロとなる。
これにより、荷重を負担しつつ回転するタイヤ粒子集合体100における中空粒子4は、路面と接地していない非接地領域おいて、上述のように遠心力を受ける。また、中空粒子4は、その一方で接地領域に入った瞬間に遠心力が抜けるといった『遠心力の変動が繰り返された状態』に置かれるのである。
従って、タイヤ気室3に充填された中空粒子群としては、粒子重量を極力抑えることが好ましい。すなわち、中空粒子4の平均真比重としては、出来るだけ小さいものを選択することが好ましい。
中空粒子4の充填率が80vol%を超えると、タイヤによっては常用時の高速走行での粒子摩擦による発熱のために、中空粒子4の再膨張開始温度(Ts2)を超えて膨張してしまい、本実施形態の主たる機能である内圧復活機能が失われる可能性があるため好ましくない。よって、中空粒子充填率の好ましい範囲は、5vol%以上80vol%以下であり、さらには、70vol%以下、60vol%以下、そして50vol%以下である。
また、中空粒子4の平均真比重は、0.01〜0.06g/ccの範囲が好ましい。すなわち、0.01g/ccよりも小さいと、常用走行下での中空粒子4の耐久性が低下し、常用使用中に『内圧復活機能』が失われることがある。一方、0.06g/ccを超えると、常用高速走行における遠心力変動入力が大きくなって、発熱量が大きくなるため好ましくない。
ところで発明者らは、中空粒子4の発熱の実態についても鋭意検討し、中空粒子4の更なる耐熱耐久性の向上を達成した。
さて、中空粒子4はその原料である『膨張性樹脂粒子』を加熱膨張することにより得られ、この膨張性樹脂粒子には膨張開始温度『Ts1』が存在する。更に、加熱膨張によって得られた中空粒子4が再度加熱されると、中空粒子4は更なる膨張を開始し、ここに中空粒子の再膨張開始温度『Ts2』が存在する。
発明者らは、これまで多くの膨張性樹脂粒子から中空粒子4を製造し検討を重ねてきた結果、膨張開始温度『Ts1』を耐熱耐久性の指標としてきたが、耐熱耐久性の指標としては再膨張開始温度『Ts2』が適切であることを見出すに到った。
まず、膨張性樹脂粒子を膨張(加熱膨張)させる場合における膨張挙動を観察した。膨張性樹脂粒子は膨張する前の段階にあるため、中空粒子4の状態と比較して、粒径が極端に小さく、樹脂製の殻部の厚さが極端に厚い。よって、マイクロカプセルとしての剛性が高い状態にある。したがって、加熱膨張の過程で樹脂製の殻部の連続相がガラス転移点を越えても、更なる加熱により殻部がある程度柔らかくなるまでは、内部ガスの膨張力が殻部の剛性にうち勝つことが出来ない。よって、膨張開始温度『Ts1』は実際の殻部のガラス転移点よりも高い値を示す。
一方で、中空粒子を再度膨張(再加熱膨張)させる場合では、中空粒子4の殻部の厚さが極端に薄く、中空体としての剛性が低い状態にある。したがって、加熱膨張の過程で殻部の連続相がガラス転移点を越えると同時に膨張を開始するため、再膨張開始温度『Ts2』は、膨張開始温度『Ts1』より低い位置づけとなる。
本実施形態では、膨張性樹脂粒子の膨張特性を活用するのではなく、いったん膨張させた中空粒子4の更なる膨張特性を活用するものであるため、耐熱性(耐久性)を議論するには、従来の膨張開始温度『Ts1』ではなく、再膨張開始温度『Ts2』を指標とすべきである。
また、中空粒子4の再膨張開始温度『Ts2』が90℃〜200℃であることが肝要である。なぜなら、中空粒子4の再膨張開始温度『Ts2』が90℃よりも低いと、選択したタイヤサイズによっては、そのタイヤの保証速度に到達する以前に、中空粒子4が再膨張を開始する場合があるからである。
一方、中空粒子4の再膨張開始温度『Ts2』が200℃を超えると、パンク状態でのランフラット走行において、中空粒子4の摩擦発熱に起因する急激な温度上昇が起こっても、再膨張開始温度『Ts2』に達することが出来ない場合があり、よって目的とする『内圧復活機能』を十分に発現させることが出来なくなる場合がある。
このため、再膨張開始温度『Ts2』の範囲は90℃〜200℃であり、好ましくは110℃〜200℃、更に好ましくは130℃〜200℃であり、もっとも好ましくは160〜200℃の範囲である。
以上のように、上述した上限値および下限値に従う際、再膨張開始温度『Ts2』を有する中空粒子4が充填されることにより、内圧復活機能を確実に発現させるとともに、高速度走行での耐熱耐久性を向上させることで、常用走行時の『内圧復活機能保持』が達成される。
なお、本実施形態において、再膨張開始温度『Ts2』は、所定の温度であることを示し、中空粒子4は、タイヤ気室3の内圧が低下した(いわゆる、タイヤが外傷を受けた)場合に、タイヤ気室3の内部の温度が再膨張開始温度『Ts2』に達することによって再膨張(膨張)するものである。
次に、中空粒子の中空部(独立気泡)を構成する気体としては、不燃性ガスであることが好ましい。不燃性ガスは、炭素数2〜8の直鎖状あるいは分岐状の脂肪族炭化水素及びそのフルオロ化物、炭素数2〜8の脂環式炭化水素及びそのフルオロ化物、そして次の一般式(III):
1−O−R2 …(III)
(式中のR1およびR2は、それぞれ独立に炭素数が1から5の一価の炭化水素基であり、該炭化水素基の水素原子の一部をフッ素原子に置き換えても良い)にて表されるエーテル化合物、からなる群の中から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
また、タイヤ気室3に充填される気体は空気でも良いが、中空粒子4中の気体がフルオロ化物でない場合には、安全性の面から酸素を含まない気体、たとえば窒素や不活性ガス等であってもよい。
なお、独立気泡を有する中空粒子4を得る方法は特に限定されないが、発泡剤を用いて『膨張性樹脂粒子』を得、これを加熱膨張させる方法が一般的である。この発泡剤としては、高圧圧縮ガス及び液化ガスなどの蒸気圧を活用する手法、熱分解によって気体を発生する熱分解性発泡剤を活用する手法などを挙げることができる。特に、熱分解性発泡剤には窒素を発生させる特徴のあるものが多く、これらによる発泡によって得られる膨張性樹脂粒子の反応を適宜制御することによって得た粒子は気泡内に主に窒素を有するものとなる。
この熱分解性発泡剤としては溶くに限定されないがジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、パラトルエンスルフォニルヒドラジンおよびその誘導体、そしてオキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジンを好適に挙げることができる。
以下、高圧圧縮ガス及び液化ガスなどの蒸気圧を活用して中空粒子4となる『膨張性樹脂粒子』を得る手法を説明する。
中空粒子4を形成する樹脂による連続相を重合する際、炭素数2〜8の直鎖状あるいは分岐状の脂肪族炭化水素及びそのフルオロ化物、炭素数2〜8の脂環式炭化水素及びそのフルオロ化物、そして上述した一般式(III)にて表されるエーテル化合物、からなる群の中から選ばれた少なくとも1種を発泡剤として高圧下で液化させ、反応溶媒中に分散させつつ、乳化重合させる手法である。
これにより上記に示されるガス成分を液体状態の発泡剤として、上述した樹脂連続相にて封じ込めた『膨張性樹脂粒子』を得ることができ、これを加熱膨張させることによって、所望の中空粒子4を得ることができる。
また、『膨張性樹脂粒子』の表面に、シリカ粒子等のアンチブロッキング剤、カーボンブラック微粉、帯電防止剤、界面活性剤、油剤等をコーティングした上で加熱膨張させることにより、目的の中空粒子を得ることができる。
本実施形態の効果をさらに高める工夫としては以下の手法が挙げられる。すなわち、上述の中空粒子4に加え、『膨張性樹脂粒子』を一部添加することである。これにより、タイヤの受傷後の本実施形態による内圧復活機能をさらに早期に実現させることができる。
しかしながら、共存する中空粒子4の耐久性を低下させる要因となるために以下の範囲での適用が好ましい。両者の相反する特性をうまく活用しうる範囲として、タイヤ気室3に充填された全粒子重量に対する『膨張性樹脂粒子』の含有率を40mass%以下、さらには含有率を30mass%以下、20mass%以下、そして10mass%以下とすることが好ましい。
また、受傷によりタイヤ気室3の内圧が低下した状態において、中空粒子4によって必要最低限の内圧を付与するには、中空粒子4の中空部内に所定圧力で封入された気体が、粒子外部へ漏れでないこと、換言すると、中空粒子の殻の部分に相当する樹脂による連続相が気体を透過し難い性質を有することが肝要である。
すなわち、連続相を構成する樹脂は、ガス透過性の低い材質によること、具体的には、アクリロニトリル系共重合体、アクリル系共重合体、塩化ビニリデン系共重合体のいずれか少なくとも1種から成ることが肝要である。これらの材質は、タイヤ変形による入力に対して中空粒子としての柔軟性を有するため、本実施形態に特に有効である。
また、中空粒子4の連続相には、アクリロニトリル系重合体、アクリル系重合体および塩化ビニリデン系重合体のいずれかを適用することが好ましい。さらに詳しくは、重合体を構成するモノマーが、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、メチルメタクリレート、メタクリル酸、塩化ビニリデンから選択される重合体であり、好ましくはアクリロニトリル/メタアクリロニトリル/メチルメタクリレート3元共重合体、アクリロニトリル/メタアクリロニトリル/メタクリル酸3元共重合体から選ばれた少なくとも1種がそれぞれ有利に適合する。これらの材料は、いずれもガス透過係数が小さくて気体が透過し難いために、中空粒子の中空部内の気体が外部に漏れ難く、中空部内圧力を適切に保持することができる。
さらに、中空粒子4の連続相は、30℃におけるガス透過係数が300×10-12(cc・cm/cm2・s・cmHg)以下、好ましくは30℃におけるガス透過係数が20×10-12(cc・cm/cm2・s・cmHg)以下、さらに好ましくは30℃におけるガス透過係数が2×10-12(cc・cm/cm2・s・cmHg)以下であることが推奨される。
なぜなら、通常の空気入りタイヤにおけるインナーライナーのガス透過係数は300×10-12(cc・cm/cm2・s・cmHg)以下のレベルにあって、十分な内圧保持機能を有している実績を鑑み、粒子の連続相についても、30℃におけるガス透過係数を300×10-12(cc・cm/cm2・s・cmHg)以下とした。ただし、このバス透過係数のレベルでは、3〜6カ月に1度程度の内圧補充が必要であるから、そのメンテナンス性の点からも、20×10-12(cc・cm/cm2・s・cmHg)以下、さらに好ましくは2×10-12(cc・cm/cm2・s・cmHg)以下とすることが推奨される。
ここで、本実施形態に従って、タイヤ気室3に中空粒子4が充填されるにあたり、タイヤ1が外傷を受けた際の受傷部の封止機能を高めるために、平均嵩比重が中空粒子の平均真比重よりも大きい発泡体の多数を中空粒子群に混在させる手段が有効である。
具体的には、直径が1〜15mmの略球体形状または一辺が1〜15mmの立方体形状であり独立または連通気泡を有し、平均嵩比重が0.06〜0.3g/ccであり、かつ粒子の平均真比重よりも大きい嵩比重値である発泡体の多数を加えることにより、内圧復活機能させる期間(タイミング)が早まり、タイヤの受傷後の走行能力を増大させることが可能である。
すなわち、中空粒子4は略球形状であるために流動性が高く、よってタイヤ用バルブ13等の内径の小さい導入口からタイヤ気室3の内部に、容易に充填することができる。その一方、タイヤの受傷時に、受傷部からタイヤの外側へ中空粒子4がタイヤ気室3の高圧気体とともに吹き出ようとして、受傷部の内面に集まることになる。
しかしながら、受傷部の内面からタイヤ外周面までの受傷経路は直線ではなく複雑に入り組んだ形状を呈するため、受傷部から入り込んだ中空粒子4は、経路の途上行く手を阻まれる結果、多数の中空粒子4が受傷部の内面に圧縮状態で集合することになり、受傷部が暫定的に封止される。ここで、暫定的に封止とは、中空粒子4そのものの漏洩はないが、中空粒子4の周囲の空隙11にある気体が徐々に漏洩する状態を指す。
その際、受傷部の外傷の形や大きさによっては、中空粒子のみによる暫定的封止が不完全な場合がある。このような場合において、上述した発泡体の多数を加えておくことにより、次のように封止のレベルを向上させることができる。
すなわち、転動中のタイヤ気室3においては、速度に応じた遠心力が発生しており、その遠心力下において嵩比重の大きい発泡体はタイヤ1のインナーライナー8側へ、そして真比重の小さい中空粒子4は、発泡体より回転中心に近い側へ夫々偏在する。
この状態においては、もし中空粒子4のみでは封止できない程の大きさの外傷を受けたとしても、タイヤ1の内面に配置されたインナーライナー8の近傍に、発泡体が多数偏在しているため、発泡体がタイヤ1の外部へ吹き出ようとして、受傷部の内面にいち早く密着することによって、受傷部を封止することとなり、極めて有効である。
特に、発泡体が連通気泡を持つ熱可塑性ウレタンによる発泡体の場合、圧縮性が高く、タイヤの受傷の形状に密着しやすいことと、結果的に大きな受傷部を発泡体により極めて複雑かつ微細化できることによって、その複雑・微細化された気体の散逸流路を中空粒子4にて封止するに最も適した様態へ変化させることが出来るため、大変有効な手段となる。
次に、本発明の効果をさらに明確にするために、以下の比較例1〜比較例6及び実施例1〜実施例4に係るタイヤを用いて行った試験結果について説明する。
Figure 2006151118
<タイヤの作成>
まず、図1に示した本発明のサイド補強層、発熱性を高めた高発熱性ゴム層等を配置したタイヤを作成した。サイド補強層は、カーカス層のタイヤ幅方向内側に、タイヤ幅方向断面における形状が三日月状のゴムストックからなる。
上述のサイド補強層(ゴム種A)の内号内容は、以下に示すとおりである。また各タイヤのゴム層におけるゲージ(厚さ)を表1に示した。
天然ゴム30.0重量部及びブタジエンゴム「VR01」〔商標、ジェイエスアール(株)製〕70.0重量部からなるゴム成分100重量部に対し、カーボンブラックFEF50.0重量部、スピンドルオイル3.0重量部、亜鉛華5.0重量部、ステアリン酸1.0重量部、老化防止剤「ノクラック6C」〔商標、大内新興化学(株)製、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン〕2.0重量部、加硫促進剤「ノクセラ−NS」〔商標、大内新興化学(株)製、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド〕2.5重量部、硫黄5.0重量部を配合し、ゴム組成物を調製した。
次に、発熱性が高い高発熱性ゴム層(ゴム種B)の配合内容を以下に示す。また各タイヤのゴム層のゲージと配置位置を表1に示した。
天然ゴム30.0重量部及びブタジエンゴム「BR01」〔登録商標、ジェイエスアール(株)製〕70.0重量部からなるゴム成分100重量部に対し、カーボンブラックISAF70.0重量部、スピンドルオイル5.0重量部、亜鉛華5.0重量部、ステアリン酸1.0重量部、老化防止剤「ノクラック6C」〔商標、大内新興化学(株)製、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン〕2.0重量部、加硫促進剤「ノクセラ−NS」〔商標、大内新興化学(株)製、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド〕2.5重量部、硫黄4.0重量部を配合し、ゴム組成物を調製した。
次に、ゴム種Bよりもさらに発熱性が高い高発熱性ゴム層(ゴム種C)の配合内容を以下に示す。また各タイヤのゴム層のゲージと配置位置を表1に示した。
天然ゴム30.0重量部及びブタジエンゴム「BR01」〔商標、ジェイエスアール(株)製〕70.0重量部からなるゴム成分100重量部に対し、カーボンブラックISAF90.0重量部、スピンドルオイル10.0重量部、亜鉛華5.0重量部、ステアリン酸1.0重量部、老化防止剤「ノクラック6C」〔商標、大内新興化学(株)製、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン〕2.0重量部、加硫促進剤「ノクセラ−NS」〔商標、大内新興化学(株)製、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド〕2.5重量部、硫黄4.0重量部を配合し、ゴム組成物を調製した。
なお、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
また、得られたゴム組成物の諸特性及びタイヤのランフラット耐久性は、下記の要領に従い求めた。
(1)ゴム組成物の損失ヤング率(E”)
ゴム組成物を160℃、12分間の条件で加硫して得られた厚さ2mmのスラブシートから、幅5mm、長さ40mmのシートを切り出し、試料とした。
この試料について、上島製作所(株)製スペクトロメータを用い、チャック間距離10mm、初期歪200マイクロメートル(ミクロン)、動的歪1%、周波数52Hzの測定条件で、25〜150℃の範囲の温度において、3℃/分の昇温速度で損失ヤング率を測定し、50℃、100℃、150℃における損失ヤング率値の平均値を求めた。なお、損失ヤング率とは、応力とひずみとの比例関係における縦弾性係数を示す。
この結果から、サイド補強層(ゴム種A)と高発熱性ゴム層(ゴム種B)について比較したところ、発熱性が高い高発熱性ゴム層は、損失ヤング率の平均値が10%高い位置づけであることがわかった。
また、サイド補強層(ゴム種A)と、ゴム種Bよりもさらに発熱性が高い高発熱性ゴム層ゴム(ゴム種C)について比較したところ、さらに発熱性が高い高発熱性ゴム層は、損失ヤング率の平均値が22%高い位置づけであることがわかった。
表1に示すサイズの各タイヤに、表1に示すサイズのリムを組み込み、乗用車用タイヤとリムとを準備した。
次に、荷重が負荷されていない状態下で各タイヤ気室の内圧を使用内圧である200kPaに調整し、気室内の高圧空気を排出させることで気体の排出量を求め、各タイヤの気室容積を算出した結果を表1に示した。
ここで、タイヤ気室における気室容積の測定は、以下に示す手順によって行った。
〔タイヤ気室容積の測定方法〕
手順1:タイヤ気室に荷重がかからない状態を保持したまま、常温の空気を充填し、所定内圧(使用内圧)P2に調整する。このとき、P2下における目的のタイヤ気室容積をV2とする。
手順2:タイヤバルブを開放し、タイヤ気室の内部の空気を大気圧P1に放出させつつ積算流量計に流し、充填空気排出量V1を測定する。なお、積算流量計には、品川精機(株)製 DC DRYガスメーター DC−2C、インテリジェントカウンターSSFを用いた。
以下の各測定値を用いて、
タイヤ気室容積値=(充填空気排出量)/(使用内圧/大気圧) …(II)
に従って、使用内圧P2時のタイヤ気室容積V2を求めることができる。
なお、式(II)において使用内圧はゲージ圧値(kPa)を、大気圧値は気圧計による絶対値(kPa)を用いた。
さらに、上記のタイヤ粒子集合体におけるタイヤ気室に、中空粒子を表1に示すように適用し、表1に示すタイヤ粒子集合体を得た。ここで、タイヤ1は、当該タイヤの種類およびサイズの一般的構造に従うものである。
なお、表1における、中空粒子の連続相を構成する組成物の種類は表2に示すとおりである。
Figure 2006151118
この表2に示す膨張性樹脂粒子を加熱して膨張させることによって中空粒子とし、得られた粒子群の平均粒径、平均真比重を測定した結果は表3に示した。
Figure 2006151118
表3に示した中空粒子を表1に示す充填率の下で、各タイヤ気室に充填した。
なお、中空粒子の平均真比重の計測法は、次に示す通りである。
〔平均真比重の計測法〕
粒子の平均真比重値は、イソプロパノールを用いた、常法である液置換法(アルキメデス法)により測定するのが一般的であり、本発明においても、この常法に従うこととした。
また、中空粒子の平均粒径および粒径分布の計測法は、次に示す通りである。
機器:Sympatec Gmbh 社製 レーザ回折式粒度分布測定装置
HELOS&RODOSシステム
測定条件:2S−100ms/DRY
分散圧:2.00bar、送り:50.00%、回転:60.00%
形状係数:1.00
上記の条件にて測定し、以下の測定値を採用する。
すなわち、体積基準平均粒径を、本発明の平均粒径値(D50値)とする。
さらに、各膨張製樹脂粒子の熱膨張開始温度『Ts1』及び各中空粒子の再膨張開始温度『Ts2』の測定法は、以下に示す通りである。
〔粒子の熱膨張開始温度測定法〕
表2における再膨張開始温度『Ts1』及び再膨張開始温度『Ts2』は、以下に示す条件にて膨張変位量を測定し、その変位量の立ち上がり時の温度とした。
機器:PERKIN−ELMER 7Series
“Thermal Analysis System”
測定条件:昇温速度10℃/min、測定開始温度25℃、測定終了温度220℃、
測定物理量:加熱による膨張変位量を測定。
次に、タイヤ気室に、空気又は窒素を充填し使用内圧である200kPaに調整した。そして、あらかじめ以下に示す調査法に基づき粒子体積復活挙動を調査の上、目的の中空部内圧力となるに相当する保持時間を割り出し、室温又は45℃に保たれた加温室にてタイヤ気室の内圧を保つことで、中空粒子の中空部圧力を増加させ粒子体積を復活させながら、評価するタイヤ粒子集合体の調製を行った。
ここで、中空粒子の中空部内圧力を増加させるための適切な保持時間を見出す方法は、次のとおりである。
まず、内容積が1000cm3程度の内断面直径が一定で透明なアクリル樹脂製の円筒型耐圧容器を準備し、容器に超音波水溶等で振動を与えながら、本発明の中空粒子を容器内が一杯になるまで充填した。次にこの容器にタイヤ気室に充填する気体を、車両指定内圧等の所望する使用圧力になるまで充填した。圧力が高まるにつれて容器内の粒子は体積減少するため、中空粒子で満たされた部分の容器内側の高さ(以下、中空粒子高さ)は低下する。容器内圧が目標圧力に達したら、超音波水溶等で容器に5分間の振動を与えた後、5分間静置した。そして、容器内の中空粒子高さが安定したところで中空粒子高さを測定し、『加圧開始時の中空粒子高さ:H1』とした。更に上記使用圧力をかけ続け、『一定期間経過した状態での中空粒子高さ:Hx』を計測した。
次に、上記の圧力を付与したまま一定時間ごとに上記の中空粒子高さを測りながら経時変化を記録していき、中空粒子高さが変化しなくなるまで測定を継続し、最終的な『安定した中空粒子高さ:H2』を計測した。以上から次式により、粒子体積復活率を算出した。
すなわち、
粒子体積復活率(%)=〔(H2−H1)/(H2−H1)〕×100
以上の測定結果を基に、目標とする体積復活率となるまでの時間を割り出し、中空粒子を充填したタイヤ粒子集合体に所望する圧力の気体を充填した上で、上記にて割り出した保持時間に従って粒子総体積の復活処置を施すことにより、中空粒子の中空部内圧力を増加させた。
さらに、表1に示したタイヤ気室に充填された中空粒子の中空部内圧力は、次のように測定した。
〔中空部内圧力レベル確認方法〕
タイヤ気室に中空粒子が充填されて所望の使用内圧P2に一定期間保った、目的のタイヤを準備する。バルブにはフィルターを配置することで、バルブを開放した時、中空粒子がタイヤ気室に留まり、高圧の気体だけが排出される状態を得られる。次に、一旦タイヤ気室の内圧を大気圧とし、再度気体を充填したうえでP2の50%に相当する圧力P50%に調整し、タイヤバルブを開放してタイヤ気室の内部の気体を大気圧P1に放出させつつ積算流量計に流し、空気排出量V50%を測定する。そして、次式
50%下における粒子周囲空隙容積値V(cm3)=
〔空気排出量値V50%(cm3)〕/〔内圧値P50%(kPa)/大気圧P1(kPa)〕
により、圧力P50%における粒子周囲空隙容積値Vを求める。同様に、P30%、P70%、P80%、P90%等の各圧力水準における粒子周囲空隙容積を算出する。もし、中空部内圧力がタイヤ気室の内圧に満たない場合は、中空粒子体積が減少するためその分粒子周囲空隙容積が増加した状態となる。よって、充分に低い圧力水準から上記測定を開始し、粒子周囲空隙容積が増加し始めた水準の圧力をもって、中空粒子の中空部内圧力レベルとした。
各評価タイヤにおけるタイヤ気室の内圧を使用内圧値に調整し、転がり抵抗計測ドラムにて一軸蛇行計測法により、50km/h、90km/hにおける転がり抵抗値を求め、その平均値を指数にて表1に示した。指数が小さい方が転がり抵抗が少ないことを示す。
次に、各評価タイヤにおけるタイヤ気室の内圧を使用内圧値に調整し、各サイズのタイヤに相当するクラスの乗用車を4名乗車相当の積載量に設定後、評価タイヤを左前輪に装着した。次に、直径5.0mm、長さ50mmの釘4本を組立体のトレッド表面からタイヤ内部に向けて踏み抜き、タイヤ気室の内圧が大気圧にまで低下するのを確認した後、90km/hの速度でテストコースの周回路をランフラット走行させ、タイヤ気室の粒子温度とタイヤ気室3の内圧とを連続的に計測し、内圧復活機能の発現状況を調査した。
なお、評価を行うタイヤ気室におけるリム内面には、タイヤ気室の内圧をモニターする圧力センサーを組み込み、測定した圧力データの信号を一般に使用されているテレメータを用いて電波伝送し、試験車両内部に設置した受信機にて受信することで圧力の変化を計測しながら、最大100kmの走行を実施し、80km以上走行できた場合を合格と判断した。
(従来技術と比較した本実施形態に係る作用・効果)
従来、タイヤ、例えば乗用車用タイヤにおいては、タイヤ気室内部にゲージ圧で150kPa〜250kPa程度の圧力下に空気を封じ込めて、タイヤのカーカス層及びベルト層等のタイヤ骨格部に張力を発生させ、この張力によって、タイヤへの入力に対してタイヤの変形並びにその復元を可能としている。
すなわち、タイヤ気室の内圧が所定の範囲で保持されることによって、タイヤの骨格に一定の張力が発生されて、荷重を指示する荷重支持機能を付与するとともに、タイヤの剛性が高められ、駆動、制動および旋回性能などの車両走行に必要な基本性能が付与される。
ところで、この所定の範囲の内圧で保持されたタイヤが外傷を受けると、この外傷による受傷部を介してタイヤ気室の空気が外部に漏れて、タイヤの内圧が大気圧まで減少する、いわゆるパンク状態となるため、タイヤ骨格部に発生させていた張力はほとんど失われることになる。
この結果、タイヤに所定の範囲の内圧が付与されることによって得られる荷重支持機能や、駆動、制動および旋回性能も失われるため、パンク状態となったタイヤを装着した車両は走行不能となってしまう。
そこで、タイヤとリムとによって区画されタイヤ気室の内圧が、大気圧まで低下した状態(いわゆる、パンク状態)においても走行可能であるタイヤについて、多くの提案がなされている。例えば、二重壁構造を有するタイヤ、荷重支持装置を配設したタイヤ、サイドウォールを補強したタイヤなど、種々のタイプのものが提案されている。
これらの提案のうち、実際に使用されている技術としては、カーカス層のタイヤ幅方向内側に配置され、タイヤ幅方向断面における形状が三日月状の比較的硬質のゴムストックからなり、サイドウォールを補強するサイド補強層を備えたタイヤがあり、この技術は主にへん平比が60%以下の、いわゆる『ランフラットタイヤ』に適用されている。
しかし、サイド補強層が備えられたタイヤでは、サイド補強層が備えられたことにより、一般的なサイド補強層を有していないタイヤと比較して、タイヤ重量が30〜40%も増加してしまうという問題があった。このことにより、タイヤへの入力に対してタイヤの粘性の働きによりタイヤ変形に対して遅れて生じるエネルギーであるヒステリシスロス(履歴損失)も増加してしまう。そのため、転がり抵抗の大幅な増大による省燃費性や乗り心地等にも悪影響を与えてしまうことがあった。
本発明のタイヤ粒子集合体100によれば、中空粒子4とサイド補強層7とが併用されることにより、サイド補強層が備えられたタイヤと比べて、タイヤ重量の増加を防止することができる。この結果、ヒステリシスロス(履歴損失)の増加を抑制するとともに、転がり抵抗の大幅な悪化を防止することができるため、省燃費性や乗り心地等を向上させることができる。
また、へん平比が50%以上のタイヤ(タイヤの断面での高さが高いタイヤ)においては、比較的高速かつ長距離の走行によるサイドウォールの発熱を避けるために、リムに中子などの内部支持体を固定してパンク状態での荷重を支持する構造とした、ランフラットタイヤが提案されている。
しかし、パンク状態(いわゆる、ランフラット状態)にタイヤと内部支持体との間で発生する、局所的な繰り返し入力にタイヤが耐えることができずに、結果としてパンク状態での走行距離(いわゆる、ランフラット走行距離)は100〜200km程度が限界である。また、ランフラット状態で走行(いわゆる、ランフラット走行)により、タイヤ及び内部支持体は大きなダメージを受けるために、再利用性が低く経済性及び環境負荷の面からは不利である。
さらに、内部支持体をタイヤの内部に配置してからタイヤをリムに組み付ける作業は、煩雑で長時間を要することも問題である。この点、リムの幅方向一端側と他端側とのリム径に差を設けて、内部支持体を挿入し易くした工夫も提案されているが、特殊な専用リム組み機を必要とするためインフラの再整備、組み付け作業者の特別教育などが必要となるため、いまだ汎用性に乏しく、サービスを提案していくには課題が多い。
また、従来のタイヤとリムの組立体と比較して、内部支持体が追加されることにより、タイヤ重量が30〜40%も増加してしまうため、上述したサイド補強を備えたタイヤと同様の問題がある。
なお、サイド補強を備えたタイヤや内部支持体を備えたタイヤのランフラット走行距離を延ばすには、骨格材を追加してタイヤ構造をより重厚にすることが考えられるが、骨格材を追加した分、さらにタイヤ重量が増加してしまうため、この技術を採用することは現実的ではない。
本発明のタイヤ粒子集合体100によれば、中空粒子4とサイド補強層7とが併用されることにより、内部支持体が備えられたタイヤと比べて、タイヤ重量の増加を防止することができる。また、中空粒子4とサイド補強層7とが併用されることにより、内部支持体が不要となるため、内部支持体が備えられたタイヤにおいて必須である組み付け作業が不要であるとともに、作業者の特別教育などが不要である。
また、タイヤに外傷を受けたことによる内圧低下に対する対応力や、ランフラット走行での能力(いわゆる、ランフラット走行性)が充分でないものの、サイド補強を備えたタイヤや内部支持体を備えたタイヤほど通常走行での性能を悪化させない技術がある。
その通常走行での性能を悪化させない技術の1つ目のとしては、シーラントタイヤと呼ばれるものである。タイヤ内面に粘着性の高い層を配置させ、タイヤに刺さった異物(釘等)が抜ける時に受傷部を粘着層にて封止するものである。
しかし、このシーラントタイヤは、あくまでパンク状態のタイヤにおける内圧の低下を遅延させるものであり、車両が駐車中にタイヤの内圧がゼロになった場合などでは、ランフラット走行はできない。
そのため、スペアタイヤを装着することが必要となり、車両が駐車した場所での交換作業が必要となる。また、異物近傍の粘着層が熱老化による硬化を起こすことがあるため、封止する能力の信頼性に欠け、実用性は充分ではない。
さらに、長距離走行によりタイヤ温度が上昇した状態で長時間停車すると、粘着層の流動性が増しているために、重力によって粘着層が流動してしまい、タイヤ内面での偏在化が起こることがある。この場合、タイヤのウエイトバランスが崩れ、不快な振動発生の原因となるばかりでなく、操縦安定性が損なわれるため、いまだ実用性に乏しい技術である。
次に、通常走行での性能を悪化させない技術の2つ目としては、パンク修理剤である。粘着性のシール液と圧縮した空気を送り込む電動ポンプにより構成され、外傷を受けた後のタイヤを応急的に修理するものである。
これは、あくまで車両が駐車中にタイヤ気室の内圧がゼロになった場合、かつドライバー等がパンクした事実に気がついた場合に、上述の修理によりランフラット走行が可能となる。
しかし、修理するためには安全な場所を選ばねばならず、特に冬季の氷雪路面上や治安の悪い市街地内では、命の危険にさらされる状況がありうるため、パンク修理のための路上駐車は出来るだけ避けるべきであり、安全な駐車場などでのパンクトラブル時に限定的に用いられる技術といえる。
また、車両が走行中にタイヤの受傷部からタイヤ気室の内圧が徐々に抜けていく場合には、その異常にドライバー等が気付かない限り、いつタイヤ気室の内圧がゼロとなり走行不能に陥るかわからない中で走行することとなるため、実際にはきわめて危険な走行状況が続くこととなり、安全面から充分な技術とはいえない。
また、タイヤとリムとの組立体の内部空洞へ独立気泡を有する発泡体を充填したタイヤが、例えば特開平6−127207号公報、特開平6−183226号公報、特開平7−186610号公報、及び特開平8−332805号公報などに記載されている。
これらのタイヤは、主に農耕用タイヤ、ラリー用タイヤ、二輪車用タイヤおよび自転車用タイヤなど特殊な、又は小型のタイヤに限定されるものである。従って、乗用車用タイヤやトラックおよびバス用タイヤなどのように、走行速度が高く、長期間の使用に耐え、とりわけ転がり抵抗や乗り心地を重視するタイヤへの適用は未知数であった。
そして、いずれの発泡体も発泡倍率が低いために、気泡を有する発泡体のわりには重量が重く、省燃費性や乗り心地等の悪化を避けられず、その独立気泡内部は大気圧であるため、従来タイヤの高圧空気の代替とするには機能的に不十分であった。
さらに、特許第2987076号公報には、発泡体充填材をタイヤ気室に配置したバンクレスタイヤが開示されているが、気泡内圧が大気圧に極めて近いことによる不利に加え、発泡体がウレタン系材料であるため、ウレタン基の分子間水素結合に起因するエネルギーロスが大きく、自己発熱性が高い。
よって、ウレタン発泡体をタイヤの内部に充填した場合、タイヤ転動時のくり返し変形により、発泡体が発熱し大幅に耐久性が低下する。また、気泡を独立して形成するのが難しい素材を用いているため、気泡が連通しやすく空気を保持することが難しいため、所望の荷重支持機能を得られない不利がある。
さらに、特開昭48−47002号公報には、独立気泡を主体とする多気泡体の外周をゴムや合成樹脂等の厚さ0.5〜3mmも外包皮膜で一体的に包被密封した膨張圧力気泡体の多数をタイヤの内部に充填し、タイヤを規定内圧に保持した、パンクレスタイヤが提案されている。
この技術は、発泡体の気泡内気圧を常圧より高くするために、膨張圧力気泡体となる独立気泡体形成配合原料中の発泡剤配合量をタイヤ内容積に対して、少なくとも同等以上の発生ガスが発生する発泡剤配合量に設定しており、これによって通常の少なくとも空気入りタイヤと同様の性能を目指している。
上述した技術では、膨張圧力気泡体中の気泡内ガスの散逸を防ぐために、外包皮膜で一体的に包被密封しているが、この外包皮膜の材料として例示されているものは、自動車用チューブ又はチューブ形成用配合物のような材料のみである。つまり、タイヤチューブ等に用いられる、窒素ガス透過性の低いブチルラバーを主体とした軟質弾性外包皮膜にて包被密封を施し、これらの多数をタイヤの内部に充填している。
製法としては、軟質弾性外包皮膜として未加硫のタイヤチューブを、膨張圧力気泡体として未加硫の独立気泡体形成配合原料を用い、これらの多数をタイヤ気室の内部に配置した後、加熱により発泡させ、発泡体充填タイヤを得ている。発泡体の膨張によるタイヤの内部の状圧空気は、リムに開けられた排気小孔から自然排気される。
ここで、乗用車用タイヤの内圧は、一般的に常温における150〜250kPa程度に設定されるため、上記の発泡体充填タイヤを製造するには、その加硫成形の加熱時(140℃程度)の状態において、絶対圧で上記内圧の約1.5倍程度になっているものと、空気の状態方程式から推定される。
ところが、この程度の圧力レベルでは、加硫圧力不足をまねいてブローンが発生するのを避けることは出来ない。このブローン現象を回避するためには、加硫時の圧力を増やすために発泡剤配合量を大幅に増量するか、加熱温度を高めて架橋反応を促進させる必要がある。
しかしながら、発泡剤配合量を増加する手法は、発泡剤配合量の増加により常温時の内圧が300kPaを大きく超えてしまうため、従来の空気入りタイヤの代替品とするのは困難であった。
また、加熱温度を高める手法は、熱老化によるタイヤのダメージが大きくなってタイヤの耐久性を大幅に悪化させるため、長期使用における耐久性に問題が生じる。
一方、タイヤ気室には、軟質弾性外包皮膜に包まれた膨張圧力気泡体が多数配置されているが、上記ブローンが発生した軟質弾性外包皮膜同士の摩擦、タイヤ内面およびリム内面との摩擦等、耐久性面での問題が大きい。
以上、上述した問題は、膨張圧力気泡体の形状が一体的なドーナツ形状をとるのとは異なり、分割された多数の膨張圧力気泡体を配置することに起因する、大きな欠点とも言える。
また、リムに開けられた排気小孔は、膨張圧力気泡体の膨張によるタイヤの内部の状圧空気を自然排気するためには有効であるものの、膨張圧力気泡体中の気泡内ガスの散逸経路となってしまう。よって、膨張圧力気泡体中の圧力が長期間保持できず、長期間の使用に耐えうるものではない。
さらに、軟質弾性外包皮膜として、タイヤチューブ等の、窒素ガス透過性が小さいブチルラバーを主体とした配合組成物を用いているが、ブチルラバーは加硫反応速度が極めて遅いために、反応を完結させるためには、140℃程度の温度では多大なる加熱時間を必要とする。
このことは、軟質弾性外包皮膜の架橋密度不足を意味し、軟質弾性外包皮膜の剥離発生の一要因になることはいうまでもない。また、加熱時間の延長は、前述した熱老化によるタイヤのダメージをさらに大きくするため、耐久性の低下を避けられず、得策とはいえない。
また、特開昭51−126604号公報には、ガスを包蔵した合成物質からなる中空粒子をタイヤが備えることにより、タイヤへの外傷を受けた部分である受傷部を当該中空粒子により封止して、タイヤとリムによって区画されたタイヤ気室の空気の漏れを遅らせる技術がある。
この技術では、中空粒子の内圧がタイヤ気室の温度と当該中空粒子の内部にある所定のガスとによって決定される。そのため、中空粒子が、タイヤ気室に充填されて、所定の内圧まで空気が充填されると、中空粒子の内圧が低いため、略球形状を保つことができずに、球形状から扁平化して歪んだ形状、いわゆるつぶれたラグビーボールのような形状でタイヤ気室に存在することとなる。この中空粒子がつぶれたラグビーボールのような形状では、パンク状態において受傷部を封止することには好ましくない。
具体的には、内圧50kpa程度の低い内圧であるタイヤでは、外傷を受けると中空粒子が略球形状で保たれているため、釘等によるφ2.5mm程度の受傷部であれば封止することができる。
しかし、常用走行に必要な200kpa程度の高い内圧であるタイヤは、外傷を受けると、中空粒子が扁平化して歪んだ形状(つぶれたラグビーボールのような形状である)ため、釘等によるφ2.5mm程度の受傷を封止することができず、中空粒子がタイヤ気室の高圧気体と一緒に噴出してしまう。
また、現在の市場でのパンク実態調査から、タイヤに刺さる異物の平均直径はφ3.5mm程度であるため、中空粒子については、さらに改善の余地があった。
そこで、本発明に係るタイヤ粒子集合体100によれば、タイヤ1に外傷を受けた後のパンク状態から、例えばタイヤ修理を行うことが出来る場所までの、最低限の移動を安全かつ確実に実現することが勿論可能であり、従来のタイヤに比べ、タイヤ重量による転がり抵抗の大幅な悪化を防止し、常用走行に必要な内圧以上でも受傷を完全に封止することにより、パンク状態でのランフラット走行距離を延ばすことができる。
具体的には、中空部圧力が、タイヤ気室3の内圧の70%以上であることにより、球形状から扁平化して歪んだ形状(つぶれたラグビーボールのような形状)でタイヤ気室3に存在することがなくなるため、常用走行における中空粒子4の破壊を回避することができ、かつ一般的な200kpa程度の高い内圧であるタイヤが外傷を受けた場合でも、受傷部を完全に封止することができる。
また、中空粒子4が略球形状で保たれるとともに、受傷後に当該中空粒子が膨張するため、良好な流動性と弾力性を実現することできるため、中空部圧力が低い場合に比べて、受傷部を封止する封止限界が大幅に向上する。
また、中空部圧力が、タイヤ気室の内圧の70%以上であることにより、タイヤ気室3の内圧が低下した場合において、タイヤの撓み変形量の増加に伴うタイヤ発熱による中空粒子4の温度上昇と、低下したタイヤ気室3の内圧と中空部圧力との差圧が中空粒子4の膨張の原動力となって、タイヤ気室3の内圧を復活(回復)させることができる。なお、中空部圧力が、タイヤ気室3における内圧の80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、100%以上であることが最も好ましい。
また、タイヤがサイド補強層7を備えていることにより、サイドウォールSWが岩や瓦礫に接触したときの外傷(カット傷など)が入りにくくなり、耐カット性を向上させることができるとともに、受傷後から中空粒子が膨張するまでの間、安全かつ確実に走行(移動)することができる。
また、サイド補強層7における径方向外側領域Outの少なくとも一部が、高発熱性ゴム層で構成されていることにより、高発熱性ゴム層の部分が受傷後の走行における発熱源として活用され、中空粒子4の温度上昇を促進させ、早期に内圧復活機能を実現することができる。すなわち、中空粒子4の温度上昇が促進することにより、早期に所定の温度に達するため、中空粒子4の膨張を促進させることができる。
また、サイド補強層7における径方向内側領域Inが、高発熱性ゴム層よりも発熱性が低い低発熱性ゴム層で構成されていることにより、常用走行での中空粒子4の温度上昇を抑制することができる。すなわち、常用走行において、タイヤ気室3の内部の温度が所定の温度に達することを抑制することができる。
以上のように、本発明によれば、受傷部を完全に封止することができるとともに、受傷後における走行に必要な内圧まで復活させることができる。
本発明の実施形態に係るタイヤ粒子集合体100を示すタイヤ幅方向断面図である。 本発明の実施形態に係るタイヤ粒子集合体100に充填される中空粒子及び気体の充填に併用するフィルターを備えたタイヤ用バルブの一例を示す図である。 本発明の実施形態に係るタイヤ気室の圧力の低下を警報する装置を搭載したタイヤ粒子集合体100の一例を示すタイヤ幅方向断面図である。 本発明の実施形態に係るタイヤ気室の圧力の低下を警報する装置と車輌とを示すブロック図である。
符号の説明
1…タイヤ、2…リム、3…タイヤ気室、4…中空粒子、5…ビード部、5a…ビードコア、5b…ビードフィラー、6…カーカス層、7…サイド補強層、8…インナーライナー、9…ベルト層、10…トレッド部、11…中空粒子の周囲の空隙、12…バルブ、13…フィルター、14…タイヤ圧力センサー、15…車輪速度センサー、50…車輌、50a…受信部、50b…警報部

Claims (16)

  1. 少なくともカーカス層を有するタイヤと、前記タイヤとリムとによって区画されるタイヤ気室に、大気圧を超える高圧気体とともに充填される複数の中空粒子との集合体であるタイヤ粒子集合体であって、
    前記タイヤは、前記カーカス層のタイヤ幅方向内側に配置され、タイヤ幅方向断面における形状が三日月状のゴムストックからなり、サイドウォールを補強するサイド補強層を備え、
    前記中空粒子は、樹脂による連続相と独立気泡とからなる略球形状であり、前記中空粒子の内圧である中空部圧力が、前記タイヤ気室の内圧の70%以上であり、前記タイヤ気室の内圧が低下した場合に、所定の温度(Ts2)に達することによって膨張し、
    前記サイド補強層は、タイヤ最大幅の位置よりもタイヤ径方向外側に位置する領域である径方向外側領域の少なくとも一部が、他の部分よりも発熱性が高い高発熱性ゴム層により構成されていることを特徴とするタイヤ粒子集合体。
  2. 前記所定の温度(Ts2)は、90〜200℃であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ粒子集合体。
  3. 前記高発熱性ゴム層における50℃、100℃、150℃での応力とひずみとの比例関係における縦弾性係数である損失ヤング率の平均値は、他の部分における50℃、100℃、150℃での前記損失ヤング率の平均値に対して10%以上高いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタイヤ粒子集合体。
  4. 下記一般式(I)
    中空粒子の充填率=(粒子体積値/タイヤ気室容積値)×100 …(I)
    によって算出される前記中空粒子の充填率は、5vol%以上80vol%以下であり、
    粒子体積値は、前記タイヤ気室に充填される全中空粒子の大気圧下での合計体積と粒子周囲の空隙体積との合計量(cm3)であり、
    タイヤ気室容積値は、前記タイヤ気室に空気のみを充填して使用内圧(kPa)に調整した後、充填空気を内圧が大気圧になるまで排出した際の充填空気排出量(cm3)を用いて、下記一般式(II)
    タイヤ気室容積値=(充填空気排出量)/(使用内圧/大気圧) …(II)
    から求めた値(cm3)であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のタイヤ粒子集合体。
  5. 前記タイヤ気室に充填される前において、前記中空粒子の内部にある気体は、前記タイヤ気室に充填される前記高圧気体と異なる気体であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のタイヤ粒子集合体。
  6. 前記タイヤ気室に充填される前において、前記中空粒子の内部にある気体は、不燃性ガスであり、
    前記タイヤ気室に前記高圧気体が充填された後において、前記中空粒子の内部にある気体は、前記不燃性ガスと前記タイヤ気室に充填された前記高圧気体との混合物であることを特徴とする請求項5に記載のタイヤ粒子集合体。
  7. 前記不燃性ガスは、炭素数2〜8の直鎖状あるいは分岐状の脂肪族炭化水素及びそのフルオロ化物、炭素数2〜8の脂環式炭化水素及びそのフルオロ化物、そして下記一般式(III):
    1−O−R2 …(III)
    (式中のR1およびR2は、それぞれ独立に炭素数が1〜5の一価の炭化水素基であり、該炭化水素基の水素原子の一部をフッ素原子に置き換えても良い)にて表されるエーテル化合物、からなる群の中から選ばれた少なくとも1種の気体であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のタイヤ粒子集合体。
  8. 前記中空粒子を構成する連続相は、アクリロニトリル系樹脂であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のタイヤ粒子集合体。
  9. 前記アクリロニトリル系樹脂は、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、メチルメタクリレートからなる三元共重合体、又は、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、メタクリル酸からなる三元共重合体であることを特徴とする請求項8に記載のタイヤ粒子集合体。
  10. 前記中空部圧力は、常用走行使用時における車両指定タイヤの内圧以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のタイヤ粒子集合体。
  11. 前記タイヤ気室に充填された複数の前記中空粒子である中空粒子群の平均粒径は、40〜200μmであり、
    前記タイヤ気室に充填された前記中空粒子群の平均真比重は、0.01〜0.06g/cm3の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載のタイヤ粒子集合体。
  12. タイヤ圧力センサーによる前記タイヤ気室の圧力の直接測定方式に基づいて、前記タイヤ気室における内圧の低下を警報する第1タイヤ圧力低下警報機能を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載のタイヤ粒子集合体。
  13. 車輪速度センサーにより検知される車輪速度に基づいて、前記タイヤ気室における内圧の低下を警報する第2タイヤ圧力低下警報機能を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載のタイヤ粒子集合体。
  14. 前記中空粒子及び気体の充填に併用するタイヤ用バルブを有し、
    前記タイヤ用バルブは、前記中空粒子を前記タイヤ気室に堰き止め、かつ気体のみを前記タイヤ気室外に通過可能とした所定の織物により形成されているフィルターを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載のタイヤ粒子集合体。
  15. 前記タイヤ気室における大気圧下での平均嵩比重が、前記中空粒子の平均真比重よりも大きく、前記中空粒子と混在して前記タイヤ気室に充填される多数の発泡体を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載のタイヤ粒子集合体。
  16. 前記発泡体は、直径が1〜15mmの略球体形状又は一辺が1〜15mmの立方体形状であり、平均嵩比重が0.06〜0.3(g/cc)であり、独立気泡又は連通気泡を有するものであることを特徴とする請求項15に記載のタイヤ粒子集合体。





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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN109397989A (zh) * 2017-08-16 2019-03-01 张定玮 发泡填充式车轮及其制造方法

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