JP2003025054A - マグネシウム合金の射出成形方法及び装置 - Google Patents

マグネシウム合金の射出成形方法及び装置

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JP2003025054A
JP2003025054A JP2001209952A JP2001209952A JP2003025054A JP 2003025054 A JP2003025054 A JP 2003025054A JP 2001209952 A JP2001209952 A JP 2001209952A JP 2001209952 A JP2001209952 A JP 2001209952A JP 2003025054 A JP2003025054 A JP 2003025054A
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magnesium alloy
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JP2001209952A
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Tatsuya Tanaka
達也 田中
Seiji Nishi
誠治 西
Hideharu Fukunaga
秀春 福永
Hajime Sasaki
元 佐々木
Makoto Yoshida
吉田  誠
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生産性とコスト削減において優位な半凝固プ
ロセスによってマグネシウム合金の射出成形を行うに当
たり、初晶マグネシウムを効率よく微細化してより均一
な固相粒子を得る方法を確立し、もって、最終製品の品
質を向上する。 【解決手段】 本発明は、次の工程(a)〜(c)を備
えていることを特徴とするマグネシウム合金の射出成形
方法である。 (a) アルミニウムを合金要素として含有するマグネ
シウム合金の溶融金属に結晶粒の微細化機能を有する微
細化剤を添加する第一工程 (b) 前記微細化剤が添加された溶融金属をチャンバ
ー内で撹拌しながら冷却することにより、当該溶融金属
をマグネシウムの初晶を有する半凝固スラリーに遷移さ
せる第二工程 (c) 前記半凝固スラリーを前記チャンバーの排出口
から排出して外部の成形金型に射出する第三工程

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルミニウムを合
金要素として含有するマグネシウム合金を鋳造するため
の射出成形方法及び装置に関するものである。より具体
的には、本発明は、マグネシウム合金の半凝固プロセス
を用いた素形材加工の方法であって、溶融金属の冷却時
における半凝固スラリーの微細化を改善することによっ
て、強度と伸び及び疲労特性に優れたマグネシウム合金
材料よりなる製品を製造する方法及び装置に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】従来より、固体を固液共存領域まで加熱
して金属を加工成形する半溶融プロセス(チクソキャス
トプロセス)、または、液体を固液共存領域まで冷却し
て加工成形する半凝固プロセス(レオキャストプロセ
ス)で得られた製品の機械的性質は、成型品中のαマグ
ネシウム初晶が微細なほど、機械的特性が優れているこ
とが知られている。特に、初晶マグネシウムの平均サイ
ズを50ミクロン以下とすることで、著しく機械的特性
が向上することが知られている。
【0003】上記各プロセスのうち、半溶融プロセス
(チクソキャストプロセス)は、固体状態のビレットや
チップを再加熱して固液共存状態にしてから、金型内の
空間(キャビティー)内に射出して成型する方法である
ため、溶融金属をいったん適切な方法で凝固させてビレ
ットを作製した後、再加熱して成形する必要があり、製
品を得るまでの加工プロセスが半凝固プロセス(レオキ
ャストプロセス)よりも多くなるという欠点がある。ま
た、ビレットを切削加工などでチッピングして切り子を
得て、これを再加熱するいわゆるチクソモールディング
プロセスでは、さらに、半凝固プロセス(レオキャスト
プロセス)よりも加工プロセスが複雑となる。その理由
は、半凝固プロセス(レオキャストプロセス)は、溶融
金属を固液共存領域まで冷却せしめて固液共存状態のス
ラリーを得た後、直ちに金型内部へ射出して成形するか
らである。
【0004】よって、半凝固プロセス(レオキャストプ
ロセス)の方が成形加工プロセスが簡易であり、製品の
生産性が高く、工数が少ない分だけ製造コストの低減が
可能である。さらには、半溶融のためのビレットを製造
するためのエネルギーや、これを再加熱するためのエネ
ルギーが削減される分だけ、製造コストの低減が可能で
ある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】これに対して、半凝固
プロセス(レオキャストプロセス)では、溶融金属の冷
却過程において晶出した初晶αデンドライトに対して適
切な方法でせん断や引張の応力を与えることでそれを分
断し、その初晶を微細化する必要がある。しかし、現状
の半凝固プロセス(レオキャストプロセス)の冷却過程
で行われているような単なる機械的撹拌や電磁力による
撹拌では、デンドライトを十分に分断することができな
いことが多く、このため、従来の半凝固プロセス(レオ
キャストプロセス)では、初晶のサイズが50ミクロン
以下となる高品質の製品を成形することは極めて困難で
あった。
【0006】実際、現時点で実用化されている半凝固プ
ロセス(レオキャストプロセス)で得られている初晶α
相のサイズは未だ平均100ミクロン程度にしか達して
おらず、平均初晶サイズが100ミクロン以下の製品は
皆無である。一方、微細化剤を含むアルミニウム合金溶
湯又はマグネシウム合金溶湯を冷却治具を使用せずに保
持容器に注ぎ、この保持容器内において前記溶湯を所定
時間内で所定温度まで冷却を行って微細化し、これによ
って得られた半溶融のビレットを成形金型に移送して加
圧成形する成形方法も開発されている(特開平10−1
58756号公報参照)。
【0007】しかし、この方法では、保持容器内での冷
却過程において、微細化剤を含む合金溶湯に対して何ら
の物理的な処理を加えていないので、合金スラリー中に
微細化した部分とそうではない部分が偏在し、初晶サイ
ズの分布にむらのある不均一なビレットになることが多
く、このため、製品の品質をそれほど向上することがで
きないものと考えられる。本発明は、このような実情に
鑑み、生産性とコスト削減において優位な半凝固プロセ
スによってマグネシウム合金の射出成形を行うに当た
り、初晶マグネシウムを効率よく微細化してより均一な
固相粒子を得る方法を確立し、もって、最終製品の品質
を向上する点にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本願発明者らが種々の実験を行った結果、アルミニ
ウムを合金元素として含むマグネシウム合金の溶融金属
(完全溶融状態の溶湯及び固液共存状態の双方を含
む。)を半凝固プロセスによって冷却及び撹拌して半凝
固スラリーにするに際して、その合金元素であるアルミ
ニウムと化学反応を起こしてアルミニウムカーバイト
(Al4C3)を生成するような炭素を含む物質(以
下、これを「微細化機能を有する物質」または単に「微
細化剤」という。)を予め添加しておき、当該物質を含
む溶融金属を冷却しながらスクリュー等により撹拌およ
び混合するようすれば、その冷却の際に生成したAl4
C3が均一に分散し、微細かつ均一にαマグネシウムの
初晶が分散した半凝固スラリーが得られることを見いだ
した。
【0009】本発明は、上記知見に基づいて成されたも
のであり、その基本的構成は次の通りである。すなわ
ち、液相線温度に対する過熱度が200°C以内の溶
湯、より好ましくは、液相線温度に対する過熱度が50
°C以内の溶湯に対して炭素を含む化合物を添加し、合
金中のアルミニウムと反応させて溶湯内にAl4C3を
生成させ、引き続いて、スクリューによる機械的撹拌、
または電磁撹拌などの撹拌や、あるいはそれらと超音波
との組合せによる攪拌混合を行いながら、微細化剤およ
び化学反応により生成したAl4C3を溶湯中または半
溶融スラリー中に均一に分散せしめる。その結果、αマ
グネシウムの核生成サイトを溶湯中または半溶融スラリ
ー中に均一に分散させることで、初晶マグネシウムの微
細化を図ることができる。
【0010】一方、微細化剤を加えた溶湯または固液共
存状態の合金を、貯留ホッパー内で撹拌羽根や攪拌棒等
により攪拌しても、微細化剤は均一に合金中に行きわた
らない。従って、合金スラリー中に、微細化した部分と
そうではない部分が生じ、初晶サイズの分布にむらのあ
る合金スラリーとなる。これを回避するため、本発明で
は、半凝固プロセスを行う射出成形装置における溶融金
属の貯留部分、すなわち、溶湯を冷却しながら撹拌可能
な装置に付帯する合金溶融炉、または、貯留ホッパーや
タンディッシュと呼ばれる合金の一時的な溜置き場にお
いて微細化剤を添加し、それに引き続いて、射出成形装
置に溶融金属を導入してチャンバー内部に組み込まれた
押出スクリュー等により強力なせん断力で撹拌しかつ冷
却を行うようにした。
【0011】このため、本発明によれば、微細化剤を均
一に溶湯中に分散させながら、αマグネシウム初晶の有
効不均質核生成サイトを均一に分散させることができ、
その結果として、微細かつ均一な初晶マグネシウムを有
する合金スラリーを得ることが出来る。なお、この場
合、微細化剤は溶融金属が冷却及び攪拌されるチャンバ
ー内に直接微細化剤を添加してもよい。この方法で得ら
れた半凝固スラリーは、引き続きチャンバ内で計量し
て、プランジャ機構等を用いて金型などの鋳型の内部へ
射出し、完全に凝固せしめて製品を得ることが出来る。
【0012】なお、微細化剤の添加は、液相線温度に対
する過熱度が200°C以内、より好ましくは、液相線
温度に対する過熱度が50°C以内である溶湯に対して
添加することが望ましい。その理由は、熱力学的には、
溶湯中に安定に存在できるアルミニウムカーバイト量、
および、不均質核生成サイトとなるクラスターの溶湯中
における数密度を最大にできるためである。また、微細
化剤の添加は、液相線温度以下の固液共存状態の溶融金
属に対して行うこともできる。この場合の微細化剤の添
加は、液相線温度を超えている溶湯の場合とは異なり、
スクリューを回転自在に有するチャンバー内に直接注入
することによって実現できる。そして、この時の半凝固
スラリー温度は、液相線温度以下で、固相率が30%以
内の状態で添加することが望ましく、より好ましくは、
固相率10%以下の状態で添加する。
【0013】その理由は、固液共存状態では、種々の撹
拌手段による微細化剤の均一な分散が、完全溶融状態に
比べて促進されるかわりに、既に晶出している固相に対
しては、微細化剤が微細化の能力を発揮しないためであ
る。本発明において、微細化が可能な合金の種類は特に
限定されないが、少なくともアルミニウムを合金元素と
して含むマグネシウム合金の範疇に属するものに限られ
る。この場合のアルミニウムの含有量は、好ましくは、
1重量%以上、20%以下、より好ましくは、5%以
上、10%以下である。
【0014】その理由は、アルミニウムの組成が1%以
下の場合は、合金中のアルミニウムの活量が小さく、従
って、微細化剤と反応して、アルミニウムカーバイトを
生成しにくくなり、その一方で、20%以上の場合は、
製品中の金属間化合物の量が増えるため、良好な機械的
性質が得られにくいからである。本発明において、微細
化剤の種類は特に制限を受けるものではなく、熱力学的
に合金元素であるアルミニウムと反応して、アルミニウ
ムカーバイトを生成するものであればどのような物質で
も良いが、例えば、グラファイトなどの炭素の同素体、
ワックスなどの炭化水素化合物、ヘキサクロロエタンな
どの炭素を含む化合物、金属の炭化物を使用することが
でき、より好ましくは、グラファイト、無定型炭素、常
温で固体状態の炭化水素、シリコンカーバイトの粉末で
ある。
【0015】また、微細化剤の粒径にも特に制限はない
が、50ミクロン以下、特に、10ミクロン以下が望ま
しい。その理由は、微細化剤の粒径が大きいと、と生成
した核生成サイトが均一に溶湯中に分散しにくくなり、
所望の微細化効果(50ミクロン以下)が得られなくな
るからである。なお、本発明に使用する微細化剤の添加
量は、炭素当量に換算して、0.01〜0.5wt%、
より好ましくは、0.05〜0.1wt%である。その
理由は、0.01wt%以下の場合は、溶湯中において
不均質核生成物質となるAl4C3の生成が十分でな
く、0.5wt%以上の場合は、未反応の炭素を溶湯に
残存せしめることになり、機械的性質を劣化させる可能
性があるからである。また、0.05wt%以上でかつ
0.1wt%の場合には、Al4C3が生成しやすく、
かつ、未反応の炭素が溶湯中に残存する可能性も小さく
なり、成形後に良好な機械的性質の製品が得られるため
である。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実
施の形態を説明する。図1は、本発明方法を実施するた
めの射出成形装置1の第一の実施形態を示している。こ
の実施形態に係る軽合金の射出成形装置1は、前記半凝
固プロセスによる射出成形を行う装置であり、チャンバ
ー2の内部に押出スクリュー3を回転自在に有する垂直
に配置されたスクリュー押出機4と、チャンバー2の上
端部に接続された溶融金属5を貯溜するための貯溜ホッ
パー6と、を備えている。
【0017】また、この射出成形装置1は、貯溜ホッパ
ー6からチャンバー2内に供給された溶融金属5が半凝
固スラリー7となるように冷却するための温度制御手段
8と、チャンバー2の下端排出口から排出された半凝固
スラリー7が射出される型締め装置9と、を備えてい
る。この射出成形装置1の構成部材のうち、貯溜ホッパ
ー6(このホッパー6をタンディッシュ等より構成する
こともできる。)は、溶解炉10で溶解された溶融金属
5を受け入れてこれを溶融状態で貯溜するもので、この
ホッパー6の下端開口部はチャンバー2の上端部に接続
されている。
【0018】また、貯溜ホッパー6の下部には、アルゴ
ン等の不活性ガスを当該ホッパー6の下部から吹き込む
シール手段(図示せず)が接続されており、このシール
手段からの不活性ガスにより貯溜ホッパー6内の溶融金
属5をバブリングして不純物を除去するとともに、溶融
金属5の湯面を不活性ガスでシールするようにしてい
る。チャンバー2の上端には、押出スクリュー3を回転
駆動するための駆動モーター11が直結されている。こ
の駆動モーター11の内部には、チャンバー2の内部に
回転自在に挿通された押出スクリュー3の延長部分(軸
封部分)3Aが挿通されていて、この押出スクリュー3
は、その下端がチャンバー2内で自由端となるように片
持ち状に配置されている。
【0019】駆動モーター11の上部には、押出スクリ
ュー3を下方に突出させるための射出シリンダ12が接
続されていて、この射出シリンダ12の内部に、前記押
出スクリュー3の延長部分3Aがシールされた状態で挿
通されている。このため、本実施形態のスクリュー押出
機4では、射出シリンダ12の油圧力で押出スクリュー
3を軸方向下方に移動させることにより、チャンバー2
内の下端部に溜まっている半凝固スラリー7を外部に射
出できるようになっている。チャンバー2の壁部内に
は、前記した温度制御手段8を構成する熱媒流路19が
形成されており、この流路19内に溶融金属5の温度よ
りも低い油等の熱媒体を流通させることにより、チャン
バー2内の溶融金属5が液相温度以下でかつ固相温度以
上の温度範囲になるように冷却できるようになってい
る。また、チャンバー2の外周部には、チャンバー2内
の溶融金属5を高精度に温度制御するために、バンド抵
抗ヒーター又は誘導加熱コイル等よりなるヒーター13
が巻き付けられている。
【0020】従って、本実施形態の温度制御手段8は、
チャンバー2の壁部内の熱媒流路19とその外周部のヒ
ーター13とから構成されており、チャンバー2を加熱
する機能も兼ね備えている。なお、ヒーター13をチャ
ンバー2の壁部内に設けることにしてもよく、熱媒流路
19をチャンバー2の外周部に設けることもできる。チ
ャンバー2の下端排出口には、ほぼL字形に形成された
接続管路(接続部材)14が接続され、この接続管路1
4は、垂直方向の第一流路15とこの流路15の下端か
ら水平方向に延びる第二流路16とからなる射出流路1
7を内部に備えている。このうち、第一流路15の上端
はチャンバー2の下端排出口に接続され、第二流路16
の出口は、後述する型締め装置9の固定盤23に固定さ
れた固定金型24に接続されている。
【0021】本実施形態では、上記第一流路15と第二
流路16の交差部分に半凝固スラリー7を滑らかに方向
転換させるためのアール部17Rが形成されており、こ
れにより、押出スクリュー3の下方移動により半凝固ス
ラリー7をスムーズに水平方向に射出できるようにして
いる。なお、接続管路14の外周面にも、その内部の半
凝固スラリー7を一定温度に保つためのヒーター13が
設けられている。第二流路16の出口内には、射出する
とき以外は閉じた状態になっているノズル18が設けら
れている。このノズル18は、その外周部に設けた温度
制御ジャケット等よりなる温度制御手段によりノズル先
端に金属固体栓を形成してノズル封鎖するものや、ノズ
ル先端に設けた機械式又はばね式のシャットオフバルブ
によりノズル封鎖するものを使用できる。もっとも、金
属固体栓を形成する際にノズル先端付近に固相率の高い
部分が生じない点、及び、固体栓が製品に混入する可能
性がない点で、シャットオフバルブを用いる後者タイプ
のノズルの方が好ましい。
【0022】前記型締め装置9は、基台20上に立設さ
れたリンクハウジング21と、このハウジング21に水
平方向のタイバー22を介して固定された固定盤23
と、この固定盤23に固定された固定金型24と、タイ
バー22に対して摺動自在に貫通支持された可動盤25
と、固定金型24に対して水平方向に開閉自在となるよ
う可動盤25に固定された移動金型26と、を備えてい
る。リンクハウジング21の外面中央部には型締めシリ
ンダ27が固定され、この型締めシリンダ27のシリン
ダロッド28の先端は可動盤25に連結されている。こ
のリンクハウジング21と可動盤25同士は、これらが
接近したときに折り畳まれかつ離反したときに水平方向
にほぼ一直線に並ぶ複数のリンク29で連結されてい
る。
【0023】可動盤25のリンクハウジング21側の側
面には押出シリンダ30が設けられ、この押出シリンダ
30の押出ロッド31は可動盤25を貫通して移動金型
26に連結されている。従って、この型締め装置9で
は、型締めシリンダ27のシリンダロッド28を突出さ
せてリンク29を一直線上に伸びた状態にし、このリン
ク29の突っ張り状態において押出シリンダ30の押出
ロッド31を突出させることにより、移動金型26を可
動金型24に対して強力に押圧できるようになってい
る。
【0024】また、本実施形態の射出成形装置1では、
前記貯留ホッパー6に、その内部に結晶粒の微細化機能
を有する微細化剤を添加するための、例えばスクリュー
フィーダ等よりなる添加手段32が接続されている。な
お、図1において破線で示すように、この添加手段32
は、前記溶解炉10またはチャンバー2に接続すること
もできる。上記添加手段32をチャンバー2に接続する
場合の接続位置は、そのチャンバー2内の半凝固スラリ
ー7の温度が液相線温度以下でかつ固相率が30%以内
の状態となっている部分に対応する位置に設定され、よ
り好ましくは、固相率10%以下の状態となっている部
分に対応する位置に設定される。
【0025】次に、上記射出成形装置1の作用とそれに
よる軽合金(アルミニウムを合金要素として含有するマ
グネシウム合金)の射出成形方法について説明する。ま
ず、電磁誘導加熱方式の溶解炉10からAl−Mg合金
よりなる溶融金属5が機械式あるいは電磁ポンプ等の手
段で貯溜ホッパー6内に供給されると同時に、添加手段
32から前記微細化剤が所定の微量だけ貯留ホッパー6
内に供給される。その後、この微細化剤を含有する溶融
金属5は、ガスシールされた状態でスクリュー押出機4
のチャンバー2の上部に供給され、温度制御手段8によ
って液相温度以下でかつ固相温度以上に冷却され、その
内部にデンドライト(樹枝状結晶)が成長する。このデ
ンドライトは回転する押出スクリュー3の剪断作用によ
って破砕し、微細な結晶粒が生成されて半凝固スラリー
7に遷移する。
【0026】このさい、本実施形態では、合金元素であ
るアルミニウムと化学反応を起こしてアルミニウムカー
バイト(Al4C3)を生成する炭素を含む微細化剤が
溶融金属5に予め添加されていて、当該物質を含む溶融
金属5を冷却しながら押出スクリュー3により撹拌およ
び混合するようにしているので、その冷却の際に生成し
たAl4C3がチャンバー2内で均一に分散し、微細か
つ均一にαマグネシウムの初晶が分散した半凝固スラリ
ー7が得られる。その後、この半凝固スラリー7は、押
出スクリュー3によってスラリーポンプと同じように温
度制御されながら下方へ押し出される。この際、接続管
路14のノズル18は閉鎖されているので、押出スクリ
ュー3には自らの回転に伴う押出力によって軸方向上方
に負荷がかかる。
【0027】一方、スクリュー押出機4の射出シリンダ
12には一定の背圧が設定されており、この背圧に打ち
勝つ内圧がチャンバー2内に発生すると、押出スクリュ
ー3が軸方向上方に移動し、チャンバー2の下端部に半
凝固スラリー7が溜まり、所定量に計量される。なお、
このとき、半凝固スラリー7と言えども合成樹脂等に比
べると非常に低粘度であるため、そのスラリー7の粘度
によっては、射出シリンダ12への逆背圧によって押出
スクリュー3を強制的に上方へ移動させて所定量の計量
を行わねばならないこともある。
【0028】このようにして、半凝固スラリー7の計量
が行われると、押出スクリュー3の上方移動と回転が停
止し、射出シリンダ12が押出スクリュー3を下方に一
気に移動させる。この押出スクリュー3の下方移動によ
り、チャンバー2の下端部に溜まっていた計量済みの半
凝固スラリー7が接続管路14の射出流路17を介して
成形金型(固定金型24及び移動金型26)のキャビテ
ィ内に射出され、一定形状に成形される。上記した本実
施形態の射出成形方法によれば、前記微細化剤を含有す
る溶融金属5から出発し、この溶融金属5を押出スクリ
ュー3で強い剪断をかけながら冷却するようにしている
ので、微細化剤および化学反応により生成したAl4C
3が溶湯5中または半溶融スラリー7中に均一に分散
し、その結果、αマグネシウムの核生成サイトを溶湯5
中または半溶融スラリー5中に均一に分散し、これによ
ってマグネシウムの微細化を図ることができる。
【0029】また、本実施形態の射出成形方法では、実
質的に垂直なチャンバー2内において溶融金属5を半凝
固スラリー7に遷移させているので、溶融金属5に含ま
れている不活性ガスを圧力及び浮力によって抜き出して
から、同溶湯5が半凝固スラリー7に遷移することにな
る。このため、射出時の計量を正確に行えるとともに、
不活性ガスの巻き込みによって成形品に気泡が混じるの
も防止でき、不良品の発生が極力防止される。なお、出
発原料が溶融金属5でありこれを半凝固スラリー7に冷
却しながら下方に搬送しているので、押出スクリュー3
の上流部の磨損や折損を低減できるとともに、スクリュ
ー押出機3の負荷トルクや攪拌経路をそれほど大きく取
る必要がなくなり、装置のコンパクト化が可能になると
なる利点もある。
【0030】更に、チャンバー2の下端排出口から射出
される半凝固スラリー7をいったん水平方向に向きを変
えたあと水平方向に型開閉する成形金型24,26に射
出しているので、成形金型24,26やそのストローク
量の大きさとは関係なく、スクリュー押出機4を必要以
上に高く配置する必要がなくなる。このため、装置全体
の高さ寸法を過大に設定しなくても、気泡や引けの少な
い高品質な軽金属成形品を射出成形することができる。
なお、本実施形態の射出成形方法において、チャンバー
2内に供給された溶融金属5を押出スクリュー5側から
も冷却できるようにすれば(特願2000−34410
6号参照)、チャンバー2の内面側と押出スクリュー5
の溝底面側の双方からデンドライト(樹枝状結晶)が成
長し、このため、粉砕された固相粒が押出スクリュー3
のフライト間の溝底部に移動できなくなり、デンドライ
トに対する剪断応力を均一に作用させ易くなるので、押
出スクリュー3による微細化効率を向上することができ
る。
【0031】図2は、本発明方法を実施するための射出
成形装置1の第二の実施形態を示している。本実施形態
の射出成形装置1では、スクリュー押出機4のチャンバ
ー2が型締め装置9の反対側にやや倒れた状態に傾斜し
て設けられており、これにより、第一実施形態の場合に
比べて、装置全体の高さをより低く抑えるようにしてい
る。なお、このスクリュー押出機4の傾斜度合いは、押
出スクリュー3のヘリカル角とほぼ同程度になるように
設定されており、この程度の傾斜度合いであれば、チャ
ンバー2の内部での気泡の除去や半凝固スラリー7の軸
上部への付着が発生することがなく、良好な安定運転が
行える。
【0032】しかして、本明細書における「実質的に縦
向き」とは、チャンバー2が垂直に立設されている場合
だけでなく、チャンバー2の内部での気泡の除去や半凝
固スラリー7の軸上部への付着が発生しない程度に傾い
た状態をも包含する。なお、その他の構成及び作用は第
一実施形態の場合と同様であるので、図2に同一符号を
付して詳細説明を省略する。図3は、本発明方法を実施
するための射出成形装置1の第三の実施形態を示してい
る。
【0033】この実施形態の射出成形装置1では、押出
スクリュー3は軸方向に移動しないようにチャンバー2
内に挿通され、このため、駆動モーター11の上端には
前記射出シリンダ12は設けられていない。その代わり
に、チャンバー2の下端排出口は、水平方向に出退する
射出プランジャ33が内部に挿通された計量シリンダ
(接続部材)34の前端上部に接続されている。この計
量シリンダ34の前端部には、垂直方向の第一流路15
と水平方向の第二流路16よりなる射出流路17が構成
されていて、第二流路16内の半凝固スラリー7がチャ
ンバー2側に逆流するのを防止する逆止弁(図示せず)
が第一流路15に設けられている。
【0034】また、計量シリンダ34の後端には、射出
プランジャ33を固定金型24側へ突出させるための射
出シリンダ36が設けられている。このため、この射出
成形装置1では、計量シリンダ34の第二流路16内に
一定量の半凝固スラリー7を溜めたあと、射出プランジ
ャ33を一気に突出させることにより、その半凝固スラ
リー7を成形金型24,26内に射出することができ
る。このように、本実施形態によれば、水平方向に射出
する射出プランジャ33で第二通路16内の半凝固スラ
リー33を水平方向に射出するようにしているので、ス
クリュー押出機4の上部に射出シリンダ12を設ける必
要がなくなり、第一実施形態の場合に比べて装置全体の
高さをより低く抑えることができる。
【0035】また、図3に示すように、本実施形態で
は、型締め装置9の固定盤23の中央部を切り欠いて形
成した内空部35にスクリュー押出機4のチャンバー2
が埋め込まれており、これにより、水平方向の射出プラ
ンジャ33を採用したことに伴う装置長さの増大を極力
防止するようにしている。更に、本実施形態の射出成形
装置1によれば、第一及び第二実施形態の場合では得ら
れない次の作用効果を奏することができる。すなわち、
本実施形態では、押出スクリュー3とは別の射出プラン
ジャ33で半凝固スラリー33を射出しているので、第
一及び第二実施形態の場合のように半凝固スラリー33
を射出するために押出スクリュー3を高速移動させる必
要がない。このため、押出スクリュー3を高速移動する
ことに伴う同スクリュー3の先端部の摩耗を防止できる
し、仮に射出プランジャ33が摩耗しても安価な当該プ
ランジャ33のみを交換するだけで済む。
【0036】また、インライン方式の場合、例えチャン
バー2を縦型に配置しても、押出スクリュー3の軸方向
移動によって多少は軸シール部へスラリーが侵入する恐
れがある。この点、本実施形態では、押出スクリュー3
を軸方向移動させる必要がないので、溶融金属5の湯面
高さよりそれほど高くない位置に軸シール部を配置する
ことができる。このため、本実施形態では、駆動モータ
ー11の設置高さそのものを低く設定することができ、
併せてその上に射出シリンダ12を配置する必要がない
ので、装置全体の高さをより低く抑えることができる。
従って、第一及び第二実施形態の場合に比べて、設備の
安全性を向上できかつメンテナンスの容易化を図ること
ができる。
【0037】なお、その他の構成は第一実施形態の場合
(図1)と同様であるから、その場合と同じ符号を図3
に付すことにより、詳細な構造説明は省略する。以上、
本発明の各実施の形態を説明したが、これらの実施の形
態は例示的なものであって限定的なものではない。本発
明の技術的範囲は冒頭の特許請求の範囲により決定さ
れ、その意味に入るすべての態様は本発明の範囲に含ま
れる。
【0038】
【実施例】図3に示す半凝固射出成形装置1(型締め力
20tでスクリュ径32mm、L/D=12)を用い
て、実際に、微細化剤入りのMg−Al合金を射出成形
し、本発明方法の実効性を確認した。同装置1におい
て、貯留ホッパー6あるいはタンディシュに、溶解炉1
0で溶解された670°CのMg−Al合金の溶湯5を
搬送ポンプにより供給した。この貯留部において金属溶
湯5を温度低下させてより温度の均一性を確保された6
30°Cの金属溶湯5とし、添加手段10Aから炭素添
加量が0.1wt%となるように調整した微細化剤(A
l粉末と黒鉛粉末の混合粉末)を添加した。
【0039】その後、上記混合粉末が入った金属溶湯5
がチャンバー2内に入ると同時に、押出スクリュー3を
500rpmで回転させて金属溶湯5に強力なせん断応
力を作用させ、かつ、温度制御手段8による抜熱により
金属溶湯5がチャンバー2の下部において590°Cに
なるまで冷却しながら攪拌混合し、同金属溶湯5を半凝
固スラリー7に変異させた。その後、この半凝固スラリ
ー7をチャンバー2の排出口から押出スクリュー3によ
って計量シリンダ34内に押し出して計量し、その計量
された半凝固スラリー7を射出プランジャ33によって
金型24,26内に射出し、60mm×60mm×2m
mの平板を得た。
【0040】この平板の固相粒径を測定したところ、平
均粒子径は48μmで、固相率は平均で22%となって
いた。また、この時の空隙率は、0.5%で通常の熱処
理が可能であった。
【0041】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
生産性とコスト削減において優位な半凝固プロセスによ
るマグネシウム合金の射出成形を行う場合において、初
晶マグネシウムを効率よく微細化してより均一な固相粒
子を得ることができるので、最終製品の品質を向上する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実施するための射出成形装置の第
一実施形態を示す全体側面図である。
【図2】同射出成形装置の第二実施形態を示す全体側面
図である。
【図3】同射出成形装置の第三実施形態を示す全体側面
図である。
【符号の説明】
1 射出成形装置 2 チャンバー 3 押出スクリュー 4 スクリュー押出機 5 溶融金属 6 貯留ホッパー 7 半凝固スラリー 8 温度制御手段 9 型締め装置 10 溶解炉 32 添加手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22C 1/02 503 C22C 1/02 503L 23/02 23/02 // C22B 9/10 102 C22B 9/10 102 (72)発明者 福永 秀春 広島県広島市南区向洋新町3丁目31−36 (72)発明者 佐々木 元 広島県東広島市鏡山2−365 ががら第一 宿舎3−504 (72)発明者 吉田 誠 広島県東広島市鏡山2−360 ががら第二 宿舎2−406 Fターム(参考) 4K001 AA02 AA38 EA05 GB05 GB06

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次の工程(a)〜(c)を備えているこ
    とを特徴とするマグネシウム合金の射出成形方法。 (a) アルミニウムを合金要素として含有するマグネ
    シウム合金の溶融金属に結晶粒の微細化機能を有する微
    細化剤を添加する第一工程 (b) 前記微細化剤が添加された溶融金属をチャンバ
    ー内で撹拌しながら冷却することにより、当該溶融金属
    をマグネシウムの初晶を有する半凝固スラリーに遷移さ
    せる第二工程 (c) 前記半凝固スラリーを前記チャンバーの排出口
    から排出して外部の成形金型に射出する第三工程
  2. 【請求項2】 次の工程(a)〜(c)を備えているこ
    とを特徴とするマグネシウム合金の射出成形方法。 (a) アルミニウムを合金要素として含有するマグネ
    シウム合金の溶融金属をチャンバ内に供給する第一工程 (b) 結晶粒の微細化機能を有する微細化剤を前記チ
    ャンバ内に供給して、前記溶融金属をその微細化剤とと
    もに同チャンバー内で撹拌しながら冷却することによ
    り、当該溶融金属をマグネシウムの初晶を有する半凝固
    スラリーに遷移させる第二工程 (c) 前記半凝固スラリーを前記チャンバーの排出口
    から排出して外部の成形金型に射出する第三工程
  3. 【請求項3】 結晶粒の微細化機能を有する微細化剤
    は、溶融金属の合金スラリー中の成分元素であるアルミ
    ニウムと化学反応を起こしてアルミニウムカーバイトを
    生成することが熱力学的に可能な物質よりなる請求項1
    または2に記載のマグネシウム合金の射出成形方法。
  4. 【請求項4】 チャンバー内における溶融金属に対する
    撹拌は、同チャンバー内で回転するスクリューを用いた
    機械的撹拌、電磁誘導による撹拌または超音波による撹
    拌若しくはこれらのを併用した撹拌である請求項1〜3
    のいずれかに記載のマグネシウム合金の射出成形方法。
  5. 【請求項5】 アルミニウムを合金要素として含有する
    マグネシウム合金を溶融金属となるように加熱する溶解
    炉と、チャンバーの内部に押出スクリューを回転自在に
    有する実質的に縦向きに配置されたスクリュー押出機
    と、前記チャンバーの上端部に接続されかつ前記溶解炉
    からの溶融金属を内部に貯留するための貯留ホッパー
    と、前記チャンバーに設けられかつ同チャンバー内に供
    給された前記溶融金属を半凝固スラリーとなるように冷
    却するための温度制御手段と、前記チャンバーの排出口
    から排出された前記半凝固スラリーを射出成形するため
    の型締め装置と、を備えているマグネシウム合金の射出
    成形装置において、 前記溶解炉、貯留ホッパーまたはチャンバーに、その内
    部に結晶粒の微細化機能を有する微細化剤を添加するた
    めの添加手段が接続されていることを特徴とするマグネ
    シウム合金の射出成形装置。
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