JP2003022780A - 放電ランプ用陰極 - Google Patents

放電ランプ用陰極

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 陰極全体の温度低下を防止して長寿命化を実
現する。 【解決手段】 陰極の先端輝点範囲を除く先端近傍部分
の周囲を覆う遮蔽材3を設けた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高輝度発光動作を
行う放電ランプ用の陰極に係り、特にその長寿命化を図
る技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】放電ランプは、ガラス管に封入したキセ
ノン等の放電用ガス中でトリガーとして高圧パルスを印
加すると、グロー放電し直ちにアーク放電に移行して高
輝度発光動作を行う。グロー放電からアーク放電への移
行は、ガス圧や陰極にかかる電界の強さに由来するプラ
ズマ密度により決まり、放電ランプでは自動的に移行す
るよう設計されている。アーク放電時の陰極は、その表
面に電子放出材料の単原子層を形成して電子放出を行
い、アーク放電を維持する。
【0003】このようなガラス管内でのアーク放電によ
り高輝度発光を得るようにした放電ランプにおいて、そ
の陰極として、従来から酸化トリウムを電子放出材料と
したタングステン陰極(通称「トリタン陰極」)が使用
されている。
【0004】このトリタン陰極は、先端角度を22度〜
30度程度に鋭利に成形して実用に供されている。この
トリタン陰極は、アーク放電時に、タングステン粒界間
に分散されている酸化トリウムがタングステンとの接触
還元作用により還元され、陰極表面にトリウムの単原子
層を形成することにより、電子放出動作を行う。このト
リウムの単原子層の形成は、陰極先端表面へのトリウム
供給量とこのトリウムの陰極先端表面からの蒸発量(電
子放出量)とのバランスが保たれるように行われ、陰極
寿命に大きな影響を与える。
【0005】ここで、トリタン陰極動作を前記したバラ
ンス面から説明する。まず、動作初期においては、陰極
先端表面へのトリウムの供給量とその蒸発量のバランス
はほぼ良好な状態にある。すなわち、輝点(最高輝度
点)直下(直近)からトリウムが供給され充分な単原子
層の形成が得られる。このときの陰極輝点温度はトリタ
ン陰極の最適動作温度である約1800℃程度に設定さ
れる。
【0006】さらにこの設定条件で動作を続けると、輝
点直下の酸化トリウムはやがて使い尽くされ、次に輝点
隣接部の酸化トリウムが使われ始めるが、このとき、輝
点部から離れた位置の陰極温度は、輝点からの距離に応
じて急激な温度勾配で低下しており(例えば、数mm離
れた部分の温度は、1000℃程度に低下してい
る。)、このような温度では、前記した接触還元作用は
生じない事から、トリウムの供給は主として輝点の極近
傍からとなる。
【0007】そして、この後も動作を続けると、酸化ト
リウムの供給距離が少しずつ長くなってトリウムの供給
不足に陥り、前記バランスが少しずつ崩れ始め、終局的
には陰極先端に溶融変形が生じる。すなわち、トリウム
の供給距離が長くなって供給量が不足してくると電子放
出能力が低下し、これを補うために陰極先端温度がセル
フコンシステンスに上昇し、当該先端がタングステンの
融点温度に到達すると溶けて変形する。
【0008】以上説明した機構はアーク放電動作中逐次
生じており、約1000時間動作程度で陰極先端形状が
輝点の揺らぎ等の安定動作を逸脱する程度の変形に至
り、ランプ性能保証の限界を超え、寿命となる。
【0009】以上のように、トリタン陰極は寿命期間1
000時間程度を有する陰極であるが、高輝度陰極材料
としては殆ど唯一の材料であった。しかし、このトリタ
ン陰極に内在させてあるトリウムは放射性物質であり、
廃棄等の取り扱いに厳重な注意を必要としていた。この
ため、環境保全が重要視されている昨今においては、こ
れに代わる材料が望まれていた。
【0010】そこで本発明者等は、特願2000-262091号
において、酸化トリウムに代わる電子放出材料として酸
化ジルコニウム或いは酸化ハフニウムを分散して入れた
タングステン陰極を提供した。
【0011】このトリタン陰極代替材料である酸化ジル
コニウム入りタングステン陰極又は酸化ハフニウム入り
タングステン陰極も、トリタン陰極同様に、ある温度以
上でタングステンとの接触還元作用により、それぞれジ
ルコニウム単原子層、ハフニウム単原子層を陰極表面に
形成することにより、電子放出動作を行う。そして、ジ
ルコニウム或いはハフニウムの供給量と蒸発量のバラン
スが寿命にとって重量なことも、トリタン陰極と同様で
ある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この酸
化ジルコニウム入りタングステン陰極或いは酸化ハフニ
ウム入りタングステン陰極は、トリタン陰極と同一動作
条件で比較すると、上記接触還元作用の進行が遅く、ジ
ルコニウム或いはハフニウムの供給量が不足傾向になり
易い。
【0013】すなわち、動作初期は輝点直下の酸化ジル
コニウム又は酸化ハフニウムを消費するので、前記バラ
ンスは良好であり、トリタン陰極と同等の発光動作が行
われるが、輝点直下の酸化ジルコニウム又は酸化ハフニ
ウムを使い尽くし、輝点隣接部からの供給に移行する
と、トリタン陰極の場合よりも早期に供給不足となり、
陰極先端温度がセルフコンシステンスに上昇して溶融変
形し易い。
【0014】このように、放電ランプに用いた場合、酸
化ジルコニウム入りタングステン陰極及び酸化ハフニウ
ム入りタングステン陰極は、トリタン陰極と比較する
と、寿命が短いという問題があった。
【0015】本発明は以上のような点に鑑みてなされた
もので、その目的は、酸化ジルコニウム或いは酸化ハフ
ニウムを電子放出材料として入れたタングステン陰極を
使用する場合であっても、長寿命を実現できるようにし
た放電ランプ用陰極を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、電子
放出材料を含む高融点金属材料からなる放電ランプ用陰
極において、先端輝点範囲を除く先端近傍の周囲を覆う
遮蔽手段を設けたことを特徴とする放電ランプ用陰極と
した。
【0017】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、前記電子放出材料として、少なくともジルコニウム
酸化物又はハフニウム酸化物を含むことを特徴とする放
電ランプ用陰極とした。
【0018】請求項3の発明は、請求項1又は2におい
て、前記先端輝点範囲を除く部分の周囲に溝を形成し、
又は先端と反対側を胴部より小さい外径に形成したこと
を特徴とする放電ランプ用陰極とした。
【0019】
【発明の実施の形態】図1は本発明の1つの実施形態の
放電ランプ用陰極の断面図である。図1において、1は
タングステンの多結晶体又は多結晶多孔質体に酸化ジル
コニウム又は酸化ハフニウムを電子放出材料として分散
して入れたタングステン陰極、2は電圧印加用のモリブ
デン製の電極リード、3は遮蔽材である。陰極1は先端
が鋭利に形成され基部は電極リード2に形成された凹部
2aの底にロウ付けにより一体化されている。遮蔽材3
は電極リード2と同じモリブデン製であり、輝点範囲
(放電時の最高輝度点はタングステン陰極1の先端より
若干先方であるが、これを中心とするある範囲)を除く
陰極先端近傍を覆うよう円筒をタングステン陰極1の先
頭形状に合わせてテーパ状に絞った形状である。放電ラ
ンプは、ガラス管内において陰極1の先端と所定間隙を
介して対向するように陽極(図示せず)を配置し、キセ
ノン等の放電用ガスを封入して製造される。
【0020】前記した遮蔽材3は、陰極1全体の平均温
度を上昇させるためのものである。すなわち、ランプ管
内に封入されているキセノン等の放電用ガスは、放電動
作時の対流により陰極全体を冷却させる(1000℃〜
1200℃)が、遮蔽材3を設けることにより、このガ
ス対流が陰極1の大部分に直接接触しないようになっ
て、このガス対流による冷却が抑制され、陰極1全体の
平均温度が1500℃〜2000℃程度にまで上昇す
る。
【0021】陰極1全体の温度が上昇すると、前記した
接触還元作用が生じ易くなり、陰極1の表面へのジルコ
ニウム又はハフニウムの供給量が増え、これによりジル
コニウム又はハフニウムの供給と蒸発のバランスが改善
され、電子放出能力を長時間に亘って維持できるように
なるので、陰極1の先端の温度がセルフコンシステンス
に上昇することを抑制できる。この結果、陰極1の先端
の溶融変形に至るまでに要する時間を長くすることがで
き、長寿命を実現できる。
【0022】なお、遮蔽材3は図2に示すように、電極
リード2の先端部分の凹部2aをより深く形成すること
により、先端の筒部分を遮蔽材3’として機能させるよ
うに変形しても、同様にガス対流による陰極1冷却の抑
制を行うことができる。
【0023】また、図3或いは図4に示すように、陰極
1の先端輝点範囲から外れた位置の周囲方向に溝1aを
形成すると、この溝1aがヒートダムとして機能し、熱
が奥方向に散逸することが防止され、陰極1全体の平均
温度を接触還元作用が活発に生じる1800℃程度に上
昇させることができる。このため、効率的にジルコニウ
ム又はハフニウムが陰極表面に供給され、その供給と蒸
発とのバランスが良好となり、電子放出能力が更に向上
し、より長寿命を図ることができる。
【0024】さらに、図5に示すように、陰極1の先端
輝点範囲となる部分を除く部分1b(奥側)の外径を中
間の胴部よりも小径として凹部2a内に形成した凹部2
bにおいて電極リード2と接合させると、その小径の部
分1bが前記した図3や図4の溝1aによるヒートダム
作用と同様な作用を呈し、長寿命化を図ることができ
る。特に、陰極1が小型化してくると、図3や図4に示
す溝1aの加工が困難となるため、図5に示す構造の方
が陰極の加工が容易であり、利点が大きい。
【0025】なお、以上では、電子放出材料としてジル
コニウム酸化物又はハフニウム酸化物を入れた場合の陰
極について説明したが、トリウム酸化物を入れた陰極に
も同様に適用できることは勿論である。また、陰極基体
としては、タングステンに限られず他の高融点金属材
料、例えばモリブデンであってもよい。
【0026】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、陰極の先
端輝点範囲を除く先端近傍部分の周囲を覆う遮蔽手段を
設けたので、放電用ガスの対流による陰極全体の温度低
下を防止でき、長寿命を実現することができる。これは
電子放出材料としてジルコニウム酸化物又はハフニウム
酸化物を分散して入れた陰極に特に効果的である。さら
に、ヒートダム機能を呈する溝や小径部分を設けること
により陰極全体の温度低下の防止効果がより顕著とな
り、より長寿命を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の1つの実施形態の放電ランプ用陰極
の断面図である。
【図2】 別の実施形態の放電ランプ用陰極の断面図で
ある。
【図3】 別の実施形態の放電ランプ用陰極の断面図で
ある。
【図4】 別の実施形態の放電ランプ用陰極の断面図で
ある。
【図5】 別の実施形態の放電ランプ用陰極の断面図で
ある。
【符号の説明】
1:陰極、1a:溝、1b:小径部 2:電極リード,2a,2b:凹部 3、3’:遮蔽材(遮蔽手段)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 木村 親夫 埼玉県上福岡市福岡2丁目1番1号 新日 本無線株式会社川越製作所内 Fターム(参考) 5C015 JJ04 JJ06

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】電子放出材料を含む高融点金属材料からな
    る放電ランプ用陰極において、先端輝点範囲を除く先端
    近傍の周囲を覆う遮蔽手段を設けたことを特徴とする放
    電ランプ用陰極。
  2. 【請求項2】前記電子放出材料として、少なくともジル
    コニウム酸化物又はハフニウム酸化物を含むことを特徴
    とする請求項1に記載の放電ランプ用陰極。
  3. 【請求項3】前記先端輝点範囲を除く部分の周囲に溝を
    形成し、又は先端と反対側を胴部より小さい外径に形成
    したことを特徴とする請求項1又は2に記載の放電ラン
    プ用陰極。
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