JP2012015008A - ショートアーク型放電ランプ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】前記陰極の前記本体部とエミッター部の接合面には局所的に隙間が形成されており、エミッター部中の酸化トリウムの還元反応で発生する一酸化炭素が該隙間を介して外部に放出されることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
そして、かかるショートアーク型放電ランプにおいては、陰極にエミッター材を設けて、電子放出特性を高めるようにしたものが知られている。
図3にこの従来技術が示されていて、(A)はランプ全体図、(B)はその陰極構造を表している。
図3(A)に示されるように、ショートアーク型放電ランプ1の発光管10内には、タングステンからなる陰極11と陽極12とが対向配置されている。前記発光管10内には水銀やキセノン等の発光物質が封入されている。なお、同図ではショートアーク型放電ランプ1は垂直点灯される態様を示しているが、その用途によっては水平点灯されるものもある。
そして、このランプにおける陰極構造が図3(B)に示されていて、陰極12は、エミッターが含有されたエミッター部12aと、これと一体形成された本体部12bとからなる。この電極エミッター部12aは、例えば酸化トリウムなどのエミッター物質を含有させたタングステンからなり、電極本体部12bは純度の高いタングステンで形成される。
このように放電ランプの陰極先端に、エミッター物質を含有させて電子放出特性の良好なランプを構成することは従来から知られている。
エミッター物質としてのトリウムや希土類元素といった希少資源の節約という観点からその大量使用は好ましいものではなく、その上、トリウムを使用するものにあっては、該トリウムが放射性物質であり、法的規制により取り扱いが制限されているという事情もある。
そのため、エミッター物質の使用を極力控えるべく、従来例のように陰極の先端にのみエミッター物質を含有させた放電ランプが種々開発されている。
これにより、仕事関数を小さくして電子放出特性を良好なものにするものである。
その結果、陰極内部には豊富にエミッター物質を含有していたとしても、内部から表面への供給が十分になされず、その表面ではエミッター物質が枯渇してしまうという現象が出現するからである。
このように、上記従来技術では、陰極先端にエミッター物質を含有させても、そのエミッター物質が十分に活用されず、陰極先端表面でエミッター物質が枯渇すると、電子放出特性が低下してフリッカーが生じてしまうという問題があった。
また、前記本体部は先端が小径となる縮径部を有し、前記エミッター部は該縮径部の先端において拡散接合されていることを特徴とする。
また、前記縮径部が、前記エミッター部を含んでテーパー状であることを特徴とする。
更には、前記本体部とエミッター部の少なくともいずれか一方の接合端面は、凹凸が存在する粗面に形成されており、前記隙間は該凹凸によって形成されていることを特徴とする。
前記本体部3は、例えば純度が99.99重量%以上の純タングステンより構成されており、一方、エミッター部4は、主成分であるタングステンに、エミッター物質として酸化トリウム(ThO2)を含有する、いわゆるトリエーテッドタングステン(以下、トリタンということもある)で構成されていて、酸化トリウムの含有量は、例えば2wt%である。
通常、このエミッター部4を構成するトリタンに含有された酸化トリウムは、ランプ点灯中に高温になることによって還元され、トリウム原子となって陰極外表面を拡散して、温度が高い先端側へと移動し蒸発する。これにより、仕事関数を小さくして電子放出特性を良好なものにするものである。
しかしながら、前記本体部3の縮径部3aの形状はこのテーパー形状に限られず、円弧形状であってもよく、また、エミッター部4もその先端が、いわゆる砲弾型の円弧形状であってもよい。
更には、エミッター部4は、本体部3の縮径部3aにおいて接合されるものを示したが、陰極全体の形状によっては、本体部3の円柱部分において接合されるものであってもよい。
この隙間6は、接合される本体部3かエミッター部4のうち、少なくともいずれか一方の表面に凹凸が形成されて粗面にされていて、当該凹凸によって隙間6が形成される。
前記凹凸による粗面は、その算術平均粗さRaが0.4a〜6.3aの範囲の粗さであり、他方の表面はいわゆる鏡面であってもよいし、または、適度な粗面であってもよく、その算術平均粗さは、例えば0.012a〜6.3aであればよい。
これによって本体部3とエミッター部4との接合面5では、数μm程度の隙間6が形成される。
ThO2+C⇔Th+2CO
一酸化炭素の圧力が高くなると、上記還元反応は停止して、それ以上トリウムは生成されなくなる。発生したこの一酸化炭素は周囲のタングステンに固溶する。
CO⇔[C]W+[O]W
ここで、[C]Wはタングステンに固溶した炭素、[O]Wはタングステンに固溶した酸素を表す。
そして、タングステン中を[C]Wや[O]Wが移動して外部に拡散すると、一酸化炭素の圧力が低下し、前記した酸化トリウムの還元が進む。すなわち、酸化トリウムの還元は、[C]Wや[O]Wの拡散に律速されることになる。
純タングステン(本体部3)とトリタン(エミッター部4)の接合が密着していて、その接合面5に隙間6が存在しない場合では、[C]Wや[O]Wはタングステン中を拡散しなければならないため、拡散速度は非常に遅くなる。そのため、酸化トリウムの周辺のタングステン中で一酸化炭素の圧力が高くなってしまい、前記還元反応が停止する。
一方、接合面5に隙間6が形成されていると、[C]Wや[O]Wはタングステン中を長距離にわたって拡散することなく、短時間でこの隙間6に到達し、一酸化炭素を生成する。一酸化炭素は気体であるために、非常に速く拡散する。
こうして、隙間6に到達した一酸化炭素は該隙間6から陰極の外部に放出され、タングステン中での一酸化炭素の圧力が低下して、前記トリウムの還元反応が促進されることになる。
直径10mm、厚さ5mmのトリタン、直径10mm、厚さ20mmの純タングステンを用意する。旋盤加工にて、切削速度や送り速度などを調整して、トリタン、純タングステンの接合面の少なくとも一方の表面粗さを、中心線平均粗さRaで0.4a〜6.3aの範囲にする。次に、トリタンと純タングステンの接合面を合わせて、真空中で軸方向に2.5kN程度の圧縮力を印加する。そして、通電加熱により接合部の温度を約2000℃にして、5分程度トリタンと純タングステンを拡散接合させる。結果、上記の表面粗さの範囲では、接合界面5に数μm程度の隙間6が出来る。
拡散接合後の材料を切削加工することで、先端がエミッター部4(トリタン)、後方が本体部3(純タングステン)の陰極2となる。
なお、隙間6の存在に関しては、接合陰極の断面を研磨して、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron
Microscope)や金属顕微鏡などで観察することにより確認することができる。
これにより、エミッター物質の使用量の制限という社会的な要請にも応えることのできる陰極構造が実現でき、その具体的な構造として陰極本体部の縮径部においてエミッター部を接合する構造としても、十分長期にわたるフリッカーの防止機能が発揮できるものである。
2 陰極
3 本体部
3a 縮径部
4 エミッター部
5 接合面
6 隙間
Claims (5)
- 発光管の内部に、陰極と陽極とが対向配置され、前記陰極が、タングステンからなる本体部と、該本体部に拡散接合されたトリエーテッドタングステンからなるエミッター部と、からなるショートアーク型放電ランプにおいて、
前記本体部とエミッター部の接合面には局所的に隙間が形成されていることを特徴とするショートアーク型放電ランプ。 - 前記本体部は先端が小径となる縮径部を有し、前記エミッター部は該縮径部の先端において拡散接合されていることを特徴とする請求項1に記載のショートアーク型放電ランプ
- 前記縮径部が、前記エミッター部を含んでテーパー状であることを特徴とする請求項2に記載のショートアーク型放電ランプ。
- 前記本体部とエミッター部の少なくともいずれか一方の接合端面は、凹凸が存在する粗面に形成されており、前記隙間は該凹凸によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のショートアーク型放電ランプ。
- 前記粗面は算術平均粗さRaが0.4a〜6.3aの範囲であり、該粗面と接合される面は算術平均粗さRaが0.012a〜6.3aであることを特徴とする請求項4に記載のショートアーク型放電ランプ。
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