JP2012015008A - ショートアーク型放電ランプ - Google Patents

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Abstract

【課題】発光管の内部に陰極と陽極とが対向配置され、前記陰極が、タングステンからなる本体部と、その先端に接合されたトリエーテッドタングステン(トリタン)からなるエミッター部と、からなるショートアーク型放電ランプにおいて、エミッター部の内部に含有される酸化トリウムを有効活用して、エミッター部表面での酸化トリウムの枯渇を防止した構造を提供することである。
【解決手段】前記陰極の前記本体部とエミッター部の接合面には局所的に隙間が形成されており、エミッター部中の酸化トリウムの還元反応で発生する一酸化炭素が該隙間を介して外部に放出されることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

この発明は、ショートアーク型放電ランプに関するものであり、特に、陰極に酸化トリウムが含有されたエミッター部が設けられているショートアーク型放電ランプに係わるものである。
従来、水銀を封入したショートアーク型放電ランプは、発光管内に対向配置された一対の電極の先端間距離が短く、点光源に近いことから、光学系と組み合わせることにより集光効率の高い露光装置の光源として利用されている。また、キセノンを封入したショートアーク型放電ランプは、映写機などにおいて可視光光源として用いられており、近年ではデジタルシネマ用光源としても重用されている。
そして、かかるショートアーク型放電ランプにおいては、陰極にエミッター材を設けて、電子放出特性を高めるようにしたものが知られている。
特許文献1(特開2010−33825号公報)に従来のショートアーク型放電ランプの構造およびその陰極構造が開示されている。
図3にこの従来技術が示されていて、(A)はランプ全体図、(B)はその陰極構造を表している。
図3(A)に示されるように、ショートアーク型放電ランプ1の発光管10内には、タングステンからなる陰極11と陽極12とが対向配置されている。前記発光管10内には水銀やキセノン等の発光物質が封入されている。なお、同図ではショートアーク型放電ランプ1は垂直点灯される態様を示しているが、その用途によっては水平点灯されるものもある。
そして、このランプにおける陰極構造が図3(B)に示されていて、陰極12は、エミッターが含有されたエミッター部12aと、これと一体形成された本体部12bとからなる。この電極エミッター部12aは、例えば酸化トリウムなどのエミッター物質を含有させたタングステンからなり、電極本体部12bは純度の高いタングステンで形成される。
このように放電ランプの陰極先端に、エミッター物質を含有させて電子放出特性の良好なランプを構成することは従来から知られている。
ところで近時では、エミッター材物質の使用に制限が設けられるようになってきており、その大量使用を避ける要請がなされてきている。
エミッター物質としてのトリウムや希土類元素といった希少資源の節約という観点からその大量使用は好ましいものではなく、その上、トリウムを使用するものにあっては、該トリウムが放射性物質であり、法的規制により取り扱いが制限されているという事情もある。
そのため、エミッター物質の使用を極力控えるべく、従来例のように陰極の先端にのみエミッター物質を含有させた放電ランプが種々開発されている。
そして、この種のランプにおいてエミッター物質としてトリウムを用いたものでは、陰極の先端部分のトリエーテッドタングステンに含有された酸化トリウムが、陰極表面ではランプ点灯中に高温になることによって還元され、トリウム原子となって陰極の外表面を拡散して温度が高い先端側へと移動し蒸発する。
これにより、仕事関数を小さくして電子放出特性を良好なものにするものである。
しかしながら、上記従来技術においては、実際にはランプ点灯時に電子放出特性の改善に寄与するエミッター物質は、陰極先端の表面からごく浅い領域までに含有されたエミッター物質に限られている。これは、陰極先端の表面の温度が最も高くなるために、その熱によってエミッター物質が蒸発して消耗される量に比べて、より温度の低い陰極内部から熱拡散によって陰極先端表面にまで供給されてくるエミッター物質の量が少ないためである。
その結果、陰極内部には豊富にエミッター物質を含有していたとしても、内部から表面への供給が十分になされず、その表面ではエミッター物質が枯渇してしまうという現象が出現するからである。
このように、上記従来技術では、陰極先端にエミッター物質を含有させても、そのエミッター物質が十分に活用されず、陰極先端表面でエミッター物質が枯渇すると、電子放出特性が低下してフリッカーが生じてしまうという問題があった。
特開2010−33825号公報
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、先端にエミッター物質を設けた陰極構造を有するショートアーク型放電ランプにおいて、陰極先端の内部に含有されたエミッター物質の有効利用を図ることにより、陰極表面でのエミッター物質の枯渇を防ぎ、エミッター材の使用量を減らしてもエミッター物質の十分な活用によりこれを補うことにより、電子放出機能を長時間維持し、ランプのフリッカー寿命の長期化を図るようにした構造を提供しようとするものである。
上記課題を解決するために、この発明では、発光管の内部に、陰極と陽極とが対向配置され、前記陰極が、タングステンからなる本体部と、該本体部に拡散接合されたトリエーテッドタングステンからなるエミッター部と、からなるショートアーク型放電ランプにおいて、前記本体部とエミッター部の接合面には局所的に隙間が形成されていることを特徴とする。
また、前記本体部は先端が小径となる縮径部を有し、前記エミッター部は該縮径部の先端において拡散接合されていることを特徴とする。
また、前記縮径部が、前記エミッター部を含んでテーパー状であることを特徴とする。
更には、前記本体部とエミッター部の少なくともいずれか一方の接合端面は、凹凸が存在する粗面に形成されており、前記隙間は該凹凸によって形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、陰極本体部とエミッター部との接合面に局所的な隙間が形成されていることにより、エミッター部に含まれる酸化トリウムと周囲の炭素との還元反応がなされる際に、生成される一酸化炭素が前記隙間を介して陰極外部に放出されるので、前記還元反応が促進されて、陰極内部に含まれる酸化トリウムが有効的に利用され、その結果、表面での酸化トリウムの枯渇といった事態が発生することがなく、エミッター物質の使用を制限しても、フリッカー寿命の長いランプを実現できるという効果を奏するものである。
本発明に係る放電ランプの電極の断面図。 図1の部分拡大説明図。 従来のショートアーク型放電ランプの断面図。
図1はこの発明のショートアーク型放電ランプの陰極構造を示し、陰極2は、タングステンからなる本体部3と、その先端に拡散接合されたエミッター部4とからなる。ここで拡散接合とは、金属同士を面で重ね合わせて、融点未満の固相状態で塑性変形が生じない程度に加熱・加圧し、接合部の原子を拡散させる固相接合することをいう。
前記本体部3は、例えば純度が99.99重量%以上の純タングステンより構成されており、一方、エミッター部4は、主成分であるタングステンに、エミッター物質として酸化トリウム(ThO)を含有する、いわゆるトリエーテッドタングステン(以下、トリタンということもある)で構成されていて、酸化トリウムの含有量は、例えば2wt%である。
通常、このエミッター部4を構成するトリタンに含有された酸化トリウムは、ランプ点灯中に高温になることによって還元され、トリウム原子となって陰極外表面を拡散して、温度が高い先端側へと移動し蒸発する。これにより、仕事関数を小さくして電子放出特性を良好なものにするものである。
そして、前記エミッター部4の形状は、全体として略円錐台形状であって、前記本体部3の縮径部3aに接合され、その先端面がここには図示しない陽極と対向配置されている。前記本体部3の縮径部3aは、先端側ほど径が小さくなっており、この図ではテーパー形状とされていて、エミッター部4の形状もこれに合わせたテーパー形状である。
しかしながら、前記本体部3の縮径部3aの形状はこのテーパー形状に限られず、円弧形状であってもよく、また、エミッター部4もその先端が、いわゆる砲弾型の円弧形状であってもよい。
更には、エミッター部4は、本体部3の縮径部3aにおいて接合されるものを示したが、陰極全体の形状によっては、本体部3の円柱部分において接合されるものであってもよい。
本発明においては、図2に示されるように、前記陰極2の本体部3とエミッター部4との接合面5には局所的に隙間6が形成されている。
この隙間6は、接合される本体部3かエミッター部4のうち、少なくともいずれか一方の表面に凹凸が形成されて粗面にされていて、当該凹凸によって隙間6が形成される。
前記凹凸による粗面は、その算術平均粗さRaが0.4a〜6.3aの範囲の粗さであり、他方の表面はいわゆる鏡面であってもよいし、または、適度な粗面であってもよく、その算術平均粗さは、例えば0.012a〜6.3aであればよい。
これによって本体部3とエミッター部4との接合面5では、数μm程度の隙間6が形成される。
上記において、ランプの点灯中には、エミッター部4を構成するトリタン中の酸化トリウムの表面では、タングステン中に固溶した炭素原子との間で還元反応が起こり、トリウムが生成されると同時に一酸化炭素が発生する。
ThO+C⇔Th+2CO
一酸化炭素の圧力が高くなると、上記還元反応は停止して、それ以上トリウムは生成されなくなる。発生したこの一酸化炭素は周囲のタングステンに固溶する。
CO⇔[C]+[O]
ここで、[C]はタングステンに固溶した炭素、[O]はタングステンに固溶した酸素を表す。
そして、タングステン中を[C]や[O]が移動して外部に拡散すると、一酸化炭素の圧力が低下し、前記した酸化トリウムの還元が進む。すなわち、酸化トリウムの還元は、[C]や[O]の拡散に律速されることになる。
純タングステン(本体部3)とトリタン(エミッター部4)の接合が密着していて、その接合面5に隙間6が存在しない場合では、[C]や[O]はタングステン中を拡散しなければならないため、拡散速度は非常に遅くなる。そのため、酸化トリウムの周辺のタングステン中で一酸化炭素の圧力が高くなってしまい、前記還元反応が停止する。
一方、接合面5に隙間6が形成されていると、[C]や[O]はタングステン中を長距離にわたって拡散することなく、短時間でこの隙間6に到達し、一酸化炭素を生成する。一酸化炭素は気体であるために、非常に速く拡散する。
こうして、隙間6に到達した一酸化炭素は該隙間6から陰極の外部に放出され、タングステン中での一酸化炭素の圧力が低下して、前記トリウムの還元反応が促進されることになる。
陰極の作成方法の一例を説明する。
直径10mm、厚さ5mmのトリタン、直径10mm、厚さ20mmの純タングステンを用意する。旋盤加工にて、切削速度や送り速度などを調整して、トリタン、純タングステンの接合面の少なくとも一方の表面粗さを、中心線平均粗さRaで0.4a〜6.3aの範囲にする。次に、トリタンと純タングステンの接合面を合わせて、真空中で軸方向に2.5kN程度の圧縮力を印加する。そして、通電加熱により接合部の温度を約2000℃にして、5分程度トリタンと純タングステンを拡散接合させる。結果、上記の表面粗さの範囲では、接合界面5に数μm程度の隙間6が出来る。
拡散接合後の材料を切削加工することで、先端がエミッター部4(トリタン)、後方が本体部3(純タングステン)の陰極2となる。
なお、隙間6の存在に関しては、接合陰極の断面を研磨して、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron
Microscope)や金属顕微鏡などで観察することにより確認することができる。
以上のように、本発明によれば、陰極本体部(タングステン)とエミッター部(トリタン)との接合面に隙間を形成したので、エミッター部の酸化トリウムと炭素との還元反応時に生成される一酸化炭素を速やかに拡散除去することができて、タングステン中の一酸化炭素の圧力が低く抑えられるので、前記還元反応が促進されて、陰極内部に存在する酸化タングステンをも有効に機能させることができる。このため、陰極表面部のみの酸化タングステンが使用されてしまうということがなく、エミッター物質の枯渇による短寿命化を防止できる。
これにより、エミッター物質の使用量の制限という社会的な要請にも応えることのできる陰極構造が実現でき、その具体的な構造として陰極本体部の縮径部においてエミッター部を接合する構造としても、十分長期にわたるフリッカーの防止機能が発揮できるものである。
1 ショートアーク型放電ランプ
2 陰極
3 本体部
3a 縮径部
4 エミッター部
5 接合面
6 隙間


Claims (5)

  1. 発光管の内部に、陰極と陽極とが対向配置され、前記陰極が、タングステンからなる本体部と、該本体部に拡散接合されたトリエーテッドタングステンからなるエミッター部と、からなるショートアーク型放電ランプにおいて、
    前記本体部とエミッター部の接合面には局所的に隙間が形成されていることを特徴とするショートアーク型放電ランプ。
  2. 前記本体部は先端が小径となる縮径部を有し、前記エミッター部は該縮径部の先端において拡散接合されていることを特徴とする請求項1に記載のショートアーク型放電ランプ
  3. 前記縮径部が、前記エミッター部を含んでテーパー状であることを特徴とする請求項2に記載のショートアーク型放電ランプ。
  4. 前記本体部とエミッター部の少なくともいずれか一方の接合端面は、凹凸が存在する粗面に形成されており、前記隙間は該凹凸によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のショートアーク型放電ランプ。
  5. 前記粗面は算術平均粗さRaが0.4a〜6.3aの範囲であり、該粗面と接合される面は算術平均粗さRaが0.012a〜6.3aであることを特徴とする請求項4に記載のショートアーク型放電ランプ。


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