JP3596448B2 - ショートアーク型水銀放電ランプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、データプロジェクタ等の光源に使用するショートアーク型放電ランプに係わり、特に、放電容器内に0.15mg/mm3 以上の水銀を封入したショートアーク型水銀放電ランプの電極構造または少なくとも発光用金属とハロゲンとを封入したショートアーク型水銀放電ランプの電極構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
データプロジェクタ等の投射用光源には高照度、高演色が求められると共に、小型化が望まれている。これらの要望に応えるために放電容器内に0.15mg/mm3 以上の水銀を封入した、または種々の発光用金属とハロゲンとを封入したショートアーク型超高圧水銀ランプが採用されている。
【0003】
なお、ここで、ショートアーク型水銀放電ランプとはメタルハライドランプや超々高圧水銀ランプを含む水銀放電ランプのことを意味し、ランプ電極には始動時に放電の起点となるコイルが電極側面に一様に接触するように固着されている。
【0004】
このようなショートアーク型水銀放電ランプの始動は、ランプ電極間に電源電圧が印加されると、一方の電極と他方の電極側面に固着されたコイル間でグロー放電が開始され、次第にアーク放電に移行していく。この場合、放電により加熱されたコイルの熱がコイルが固着されている電極に伝わり、また、この電極はコイルからのアークによる放射熱を受け、熱電子を放出し易い状態になる。さらに、内部圧力が上昇するに従ってアークが絞られていき、安定したアーク放電が電極先端へと移行して定常点灯状態に移行していく。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のようなショートアーク型水銀放電ランプでは、始動時にコイルから開始される放電が往々にしてコイル上で安定化してしまい、電極先端に移行しないという問題が発生する。このような現象はコイルの先端部が電極から離れている場合には顕著に起こる。これはコイルで発生したアークによって生ずる熱が、コイルと電極とが接触しているため、例えば、コイルの後端部から電極の後端部へと熱が逃げてしまい、電極先端部への熱伝導が円滑に行われないため、電極先端部での熱電子放出が起こりにくくなり、アークが電極先端部に移行しないでコイルに留まってしまうために起こるものと考えられる。
【0006】
このような異常放電が起こると、アークがランプ外壁に接触してランプ破裂やランプの白濁、またはコイルの異常加熱によるタングステンコイルの蒸発による黒化等の不具合が起こる。また、グロー放電が長時間持続する場合も、タングステンコイルの蒸発に伴う黒化が起こる場合もある。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題点に鑑みて、ランプ始動時に、グロー放電からアーク放電へ速やかに移行させ、かつアーク放電位置をコイルから電極先端部へ速やかに移動させて、安定した放電状態を維持することを可能にしたショートアーク型水銀放電ランプを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような手段を採用した。
【0009】
第1の手段は、一方の電極の側面にコイルを配置し、放電容器内に0.15mg/mm3以上の水銀を封入したショートアーク型水銀放電ランプにおいて、
前記コイルの電極先端側が前記電極の側面に固着され、前記コイルの電極先端部に後続する部分が前記電極の側面から離れるように構成され、さらに前記後続する部分に後続する部分が前記電極の側面に徐々に近接するように巻回されて前記電極の側面に固着されるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
第2の手段は、第1の手段において、放電容器内にハロゲンを封入したことを特徴とする。
【0011】
第3の手段は、一方の電極の側面にコイルを配置し、放電容器内に少なくとも発光用金属とハロゲンとを封入したショートアーク型水銀放電ランプにおいて、
前記コイルの電極先端側が前記電極の側面に固着され、前記コイルの電極先端部に後続する部分が前記電極の側面から離れるように構成され、さらに前記後続する部分に後続する部分が前記電極の側面に徐々に近接するように巻回されて前記電極の側面に固着されるように構成されていることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施形態を図1および図2を用いて説明する。
【0014】
図1は本実施形態に係るショートアーク型水銀放電ランプの一部外観図、図2は図1に示す一方の電極構造の拡大図である。
【0015】
これらの図において、1は放電容器内に0.15mg/mm3 以上の水銀を封入した、または種々の発光用金属とハロゲンとが封入されたショートアーク型水銀放電ランプ、2はガラス封体、3、4は電極、5は、電極4の先端部に近い側51が電極4の側面に固着され、前記固着した部分に後続する部分52が電極4の側面から離れるように構成されているコイルである。
【0016】
ここで、電極4は、例えば、電極径Φが0.8mmの電極である。また、コイル5は、例えば、材質がタングステンで、素線径Φが0.25mm、コイルターン数が4、電極4側面に固着される小径部d1の径Φ1が1.3mm、電極4側面から離れている大径部d2の径Φ2が1.5mmのコイルである。
【0017】
なお、コイル5の電極4への固着法には、かしめによる方法、電極4に巻回されたコイル5にタングステン粉末を散布してタングステン炉で焼結する方法、および電子ビームやYAGレーザによる溶着等による方法がある。
【0018】
上記のごとく、本実施形態に係る発明では、図1,2に示すように、コイル5の電極先端側51は電極4側面に固着され、コイル5の電極封止部側52は電極4側面から離れ、浮かせた状態になっている。そのため、ショートアーク型水銀放電ランプ1の始動は、電極3とコイル5の前記浮いた箇所52との間でグロー放電が開始されるが、この浮いた箇所52は電極4に接触していないので熱容量が小さく、そのためこの箇所52での温度上昇が速やかに行われ、グロー放電からアーク放電に容易に移行させることができる。また、コイル5の電極先端側51は固着されているので、コイル5の熱を電極4先端部に効率良く伝えることができ、電極4先端部の温度上昇も速やかに行われ、コイル5において開始されたグロー放電を電極4先端部でのアーク放電に円滑に移行させることができる。
【0019】
そのため、本実施形態の発明によれば、ショートアーク型水銀放電ランプの始動時に、コイルにおける持続的な異常なアーク放電によるランプ放電容器の黒化や立ち消えを防止することができる。さらには異常なグロー放電も抑制することができるので、異常なグロー放電時によるコイル加熱に起因する黒化を防止でき、ランプの長寿命化を図ることができる。さらに、上記の各種の異常な放電による放電容器の白濁化による放射強度の低下やランプ破裂等の不具合、さらには光学特性の低下や異常な電気特性の発生を防止することができる。
【0020】
本発明の第2の実施形態を図3を用いて説明する。
【0021】
図3は、図2に示すコイル形状とは異なるコイル形状を有する電極構造の拡大図である。
【0022】
同図において、6は、電極4の先端部に近い側61が電極4の側面に固着され、前記固着した部分に後続する中間部62では電極から離れるように構成され、さらに電極4の封止部側63では電極4の側面に固着するように構成されているコイルである。
【0023】
ここで、コイル6は、例えば、材質がタングステンで、素線径Φが0.25mm、コイルターン数が7、電極4側面に固着される小径部d1の径Φ1が1.3mm、電極4側面から離れている大径部d2の径Φ2が1.5mmからなるコイルである。
【0024】
上記のごとく、本実施形態に係る発明では、図3に示すように、コイル6の電極先端側61は電極4側面に固着され、コイル5の中間部62は電極4側面から離れ、浮いた状態になっている。そのため、ショートアーク型水銀放電ランプ1の始動は、まず、電極3とコイル6の前記浮いた箇所62との間でグロー放電が開始される。この浮いた箇所62は熱容量が小さいので、速やかに温度上昇し、グロー放電からアーク放電に容易に移行させることができる。コイル6の電極先端側61は固着されているので熱を電極4先端部に効率良く伝えることができ、温度上昇も速やかに行われ、グロー放電から電極4先端部でのアーク放電に円滑に移行させることができる。
【0025】
従って、本実施形態に係る発明では、第1の実施形態に係る発明と同様の効果に加え、コイル6が電極4の封止部側63でも電極側面に固着されているので、コイル6の両端が電極4側面に固定され電極構造が堅牢化される。
【0026】
【発明の効果】
請求項1乃至請求項4に記載の発明によれば、始動時の、コイルにおける持続的な異常なアーク放電によるランプ放電容器の黒化や立ち消えを防止することができる。さらに異常なグロー放電も抑制できるので、異常なグロー放電時のコイル加熱による黒化を防止でき、ランプの長寿命化を図ることができる。さらに、上記の各種の異常な放電による放電容器の白濁化による放射強度の低下やランプ破裂等の不具合、さらには光学特性の低下や異常な電気特性の発生を防止することができる。また、コイルが電極の封止部側でも電極面に固着されるので、コイルの両端が電極面に固定され電極構造が堅牢化される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るショートアーク型水銀放電ランプの一部外観図である。
【図2】図1に示す一方の電極構造の拡大図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る図2に示すコイル形状とは異なるコイル形状を有する電極構造の拡大図である。
【符号の説明】
1 ショートアーク型水銀放電ランプ
2 ガラス封体
3,4 電極
5 コイル
51 コイルの電極先端側
52 コイルの電極封止側
6 コイル
61 コイルの電極先端側
62 コイルの中間部
62 コイルの電極封止側
Claims (3)
- 一方の電極の側面にコイルを配置し、放電容器内に0.15mg/mm3以上の水銀を封入したショートアーク型水銀放電ランプにおいて、
前記コイルの電極先端側が前記電極の側面に固着され、前記コイルの電極先端部に後続する部分が前記電極の側面から離れるように構成され、さらに前記後続する部分に後続する部分が前記電極の側面に徐々に近接するように巻回されて前記電極の側面に固着されることを特徴とするショートアーク型水銀放電ランプ。 - 放電容器内にハロゲンを封入したことを特徴とする請求項1に記載のショートアーク型水銀放電ランプ。
- 一方の電極の側面にコイルを配置し、放電容器内に少なくとも発光用金属とハロゲンとを封入したショートアーク型水銀放電ランプにおいて、
前記コイルの電極先端側が前記電極の側面に固着され、前記コイルの電極先端部に後続する部分が前記電極の側面から離れるように構成され、さらに前記後続する部分に後続する部分が前記電極の側面に徐々に近接するように巻回されて前記電極の側面に固着されることを特徴とするショートアーク型水銀放電ランプ。
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