JP2003012538A - 抗酸化作用剤 - Google Patents

抗酸化作用剤

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JP2003012538A
JP2003012538A JP2001197090A JP2001197090A JP2003012538A JP 2003012538 A JP2003012538 A JP 2003012538A JP 2001197090 A JP2001197090 A JP 2001197090A JP 2001197090 A JP2001197090 A JP 2001197090A JP 2003012538 A JP2003012538 A JP 2003012538A
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Hitoshi Nagaoka
岡 均 長
Kenji Asano
野 健 治 浅
Yasuyo Yamaguchi
口 康 代 山
Ayako Inoki
木 彩 子 猪
Toyomi Ohara
原 豊 実 大
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Kobayashi Pharmaceutical Co Ltd
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Kobayashi Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 安全に使用できる新規な抗酸化作用剤を提供
すること、すなわち椎茸菌糸体抽出物の抗酸化作用を中
心とする生理作用を利用して、椎茸菌糸体抽出物の新し
い医薬用途および/または保健用途を提供することであ
る。 【解決手段】 バカスを基材とする固体培地上に、椎茸
菌を接種し、次いで菌糸体を増殖して得られる菌糸体を
含む固体培地を解束し、この解束された固体培地に、水
およびセルラーゼ、グルコシダーゼまたはプロテアーゼ
から選ばれる酵素の1種またはそれ以上を、前記固体培
地を30〜50℃に保ちながら添加し、そして前記固体
培地を酵素の存在下に粉砕および擂潰して椎茸菌糸体抽
出物を抽出し、次いで95℃までの温度に加熱すること
により酵素を失活させ、かつ滅菌してなる椎茸菌糸体抽
出物を含む抗酸化作用剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は新規な生物起源の抗酸化作
用剤に関する。さらに詳しくは椎茸菌糸体抽出物を含む
抗酸化作用剤およびその利用に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】古くから、椎茸、松茸、エノキ茸
などの担子菌類の茸は食用されており、中には、担子菌
類サルノコシカケ科に属する茸のように漢方薬として重
用されているものもある。そのなかでも椎茸(Lentinus
edodes)は、わが国および中国の代表的な食用キノコ
である。通常食用にしているキノコは子実体と呼ばれ、
菌類が子孫を残すために胞子を生じる生殖体である。栄
養体の菌糸細胞は地中や原木中で長い時間をかけて菌糸
体を形成する。
【0003】椎茸は古来より種々の疾患、症状に対して
薬理的作用があると言われてきたが、その多彩な生理効
果が具体的に解明されるようになったのは、比較的最近
のことである。椎茸菌糸体抽出物の作用に関しては、ラ
ット、マウスでの発癌実験において、その大腸、肝臓な
どの腫瘍形成、移植された腫瘍細胞の増殖を抑制し、そ
れらの動物の生存率を上昇させたこと(N.Sugano et a
l, Cancer Letter,17:109,1982;鈴木康将ら、日本大
腸肛門病会誌、43:178,1990など)、マイトジェン(mit
ogen)活性を示したこと(T,Tabata et al. Immunopharm
acology, 24:57,1992 ;Y.Hibino,et al., Immuno phar
macology,28:77,1994など)、抗体産生を増強し、抗体
を介するADCC(抗体介在性細胞作動性細胞傷害、anti
body-dependent cell-mediated cytotoxicity)による
免疫学的肝細胞障害に抑制効果を示したこと(溝口靖紘
ら、肝胆膵、15:127,1987)を含め、様々な報告がな
されている。
【0004】一方、近時、活性酸素種や過酸化脂質によ
る酸化的細胞傷害が、炎症、循環器系疾患、糖尿病の合
併症、癌、老化などの一因になるとして関心を集めてい
る(Packcr,L.and Giazer,A,N.,eds.:Methods in Enz
ymo‐logy,Vol.186,1990, Academic Press, Inc, S
an Diego)。酸化的細胞傷害とは活性酸素種や過酸化脂
質による細胞成分、たとえば、DNA、タンパク質など
の不可逆的酸化反応が原因で起こる細胞死、細胞の突然
変異、形態変化などの総称であり、これは通常の酸化的
な代謝過程では起こらない。
【0005】空気中に存在する酸素分子は三重項酸素(
3O2)と呼ばれており、それ自体は生体を構成する有機
物質に対して積極的な酸化作用を示さない。生体はこの
酸素を酵素の触媒作用の下に“活性化”することによ
り、基質の酸化反応や酸素添加反応に応用している。す
なわち、三重項酸素は一電子ずつ還元されて、スーパー
オキシドアニオンラジカル(・O2 -)、過酸化水素(H2O
2)、ヒドロキシラジカル(・OH)など化学的に活性な
分子種に変化する。これらの分子種に、光増感反応など
で生じる一重項酸素(1O2)も加えて活性酸素種と呼ん
でいる。
【0006】活性酸素種は、生体内において細胞などに
よる殺菌作用、レドックス制御を介する細胞内シグナル
伝達機構、また不要となったタンパク質の分解、アポト
ーシスなどに利用されているか、または関与する意味に
おいては、必要なものである。たとえば、炎症反応の場
では、免疫細胞のマクロファージなどが、自ら活性酸素
を生成し、これを異物の細菌細胞などを攻撃する細胞傷
害作用の手段としている。
【0007】しかしながら、酸化ストレスにより発生し
た過剰量の活性酸素種は、その高い反応性のために生体
にとって極めて有害なものになる。また活性酸素種のほ
かに、高度不飽和脂肪酸を基質にして動物体内で作られ
る過酸化脂質(多くはフリーラジカル)も、生体内で細
胞傷害や組織傷害を引き起こすと考えられている。その
理由は、フリーラジカルが一般的に不安定であり、他の
物質から電子を1個奪って電子対をつくるか、不対電子
を他に与えることによって安定化しようとする傾向が強
く、反応性に極めて富み、生体膜や組織を攻撃するから
である。
【0008】このようなフリーラジカル、活性酸素種ま
たは過酸化脂質による酸化的細胞傷害が各種疾患の一因
として注目され、その発生、進展の機序解明と抑制方法
の確立は、現在の医学的課題の一つとなっている。その
解決の鍵になるものとして、生体内のラジカルを捕捉、
消去することができ、種々の活性酸素種や過酸化脂質に
よる酸化的細胞傷害が関与する疾患の治療および/また
は予防に利用することができる、優れた抗酸化剤の出現
が期待されている。そのため様々な抗酸化剤がこれまで
に提案されてきたが、合成抗酸化剤では、その安全性が
危惧される。このことから、比較的安全性の高い天然物
由来の抗酸化物質に高い関心が寄せられている。
【0009】特開2000−159683において、椎茸菌糸体抽
出物が薬物性の肝障害に対する防御効果を有することが
開示されている。さらに上記課題を解決するため、本発
明者らは引き続き鋭意研究したところ、新たに椎茸菌糸
体抽出物が顕著なラジカル消去活性、脂質過酸化反応の
抑制活性などの抗酸化作用活性を示すことを見出すとと
もに本発明の着想を得てその完成に至ったものである。
【0010】
【発明の目的】本発明の目的は、安全に使用できる新規
な抗酸化作用剤を提供することである。また、椎茸菌糸
体抽出物の薬理作用をさらに詳しく解明して、椎茸菌糸
体抽出物の新しい医薬用途および/または保健用途を提
案することである。
【0011】
【発明の概要】本発明は、バカスを基材とする固体培地
上に、椎茸菌を接種し、次いで菌糸体を増殖して得られ
る菌糸体を含む固体培地を解束し、この解束された固体
培地に、水およびセルラーゼ、グルコシダーゼまたはプ
ロテアーゼから選ばれる酵素の1種またはそれ以上を、
前記固体培地を30〜50℃に保ちながら添加し、そし
て前記固体培地を酵素の存在下に粉砕および擂潰して椎
茸菌糸体抽出物を抽出し、次いで95℃までの温度に加
熱することにより酵素を失活させ、かつ滅菌してなる椎
茸菌糸体抽出物を含む抗酸化作用剤を提供する。
【0012】本発明の抗酸化作用剤は、椎茸菌糸体抽出
物および任意成分として薬剤的に許容できる担体を含
む、活性酸素種や過酸化脂質による酸化的細胞傷害が関
与する疾患の治療用および/または予防用組成物の形で
あってよい。前記疾患としては、薬物や有害物質による
肝障害、循環器系疾患、胃潰瘍および胃粘膜障害などの
消化器官系疾患、呼吸器系疾患、糖尿病の合併症、皮膚
疾患、癌、老化からなる群より選択されるものである。
【0013】また、本発明の抗酸化作用剤は、食品の形
でもよい。さらに、本発明の抗酸化作用剤は、飲料の形
であってもよい。
【0014】
【発明の具体的説明】以下、本発明について、椎茸菌糸
体抽出物、抗酸化作用剤、飲食物への利用について具体
的に説明する。本発明に係る抗酸化作用剤は、フリーラ
ジカル、活性酸素の消去または脂質過酸化の抑制を通じ
てこれらによる酸化的細胞傷害を防止する効果を有する
こと、これが関与する各種疾患に対して治療的或いは予
防的に作用するものであること、昔から食用されてきた
椎茸から得られた抽出物を主成分とするものであり、副
作用のおそれがなく安全性に優れていることなどを特徴
とする。本発明の椎茸菌糸体抽出物を含む抗酸化作用剤
は今まで知られておらず、椎茸菌糸体抽出物を配合した
製剤は画期的な抗酸化剤として今後、とくに生活習慣病
と中心とする疾病の治療、予防、あるいは健康食品など
を含む食品などへの利用においてその有用性が提案され
る。
【0015】なお、本明細書において、本発明における
「抗酸化作用」とは、活性酸素種や過酸化脂質による細
胞成分の不可逆的酸化反応が原因で起こるDNA損傷、細
胞の突然変異、形態変化、細胞死などを含む酸化的細胞
傷害を防止、または抑制する作用をいい、広義にフリー
ラジカル消去活性および脂質過酸化反応の抑制活性をも
包含するものである。椎茸菌糸体抽出物・ 製法 椎茸菌糸体抽出物の製法にはとくに制限はなく、たとえ
ば、椎茸菌糸体抽出物については、特開平2−1343
25号公報に記載されているように、椎茸菌糸体培養物
を必要により自己消化させた後、熱水抽出し、その熱水
抽出物をアルコールに沈殿させて得られるものでもよ
く、また、必要により、この沈殿物をさらにクロマトカ
ラムにて分画し、エチレングリコール等にて溶出画分を
分取して用いてもよい。
【0016】本発明では椎茸菌糸体抽出物に関して、抗
酸化作用剤に使用する場合、特公昭60-23826号
公報に記載された方法を利用して調製したものが望まし
い。以下、椎茸菌糸体抽出物の調製法を、以下に詳説す
る。椎茸菌糸体抽出物を調製するには、具体的には、ま
ずバカス(サトウキビのしぼりかす)、脱脂米糠を基材
とする固体培地に水、好ましくは純水を適度に混ぜた
後、椎茸菌を接種する。なお、このバカス培地に、米糠
の他、必要によりリン、鉄、ゲルマニウム等のミネラル
類、落花生表皮、玄米などを添加してもよい。
【0017】次いで、このように椎茸菌が接種された培
地を、温度および湿度が調節されさらには照度も調節さ
れた培養室内に入れて、菌糸体を増殖させる。菌糸体が
固体培地に蔓延し、子実体の発生直前・直後の時期に、
バカス基材の繊維素を解束し、12メッシュ通過分が3
0重量%以下となるようにすることが望ましい。なお、
バカス基材培地の解束は、上記のように子実体の発生直
前・直後の時期に行うことが好ましいが、子実体がかな
り成長した後の時期に行ってもよい。
【0018】このように解束された固体培地に、水およ
びセルラーゼ、プロテアーゼまたはグルコシダーゼから
選ばれる酵素の1種またはそれ以上を、固体培地を30
〜50℃に保ちながら添加する。添加される酵素として
は、セルラーゼが好ましい。酵素の添加量は、固体培地
1kgに対して0.5〜5g、好ましくは1〜3gであ
ることが望ましい。
【0019】また水は、金属イオン等のイオン類を含ま
ない純水が好ましく、この解束された培地1kgに対し
て、純水1〜10kg、好ましくは2〜6kgを加えて
バカス含有混合物とする。次いでこのバカス含有混合物
から椎茸菌糸体抽出物を抽出するが、このように椎茸菌
糸体抽出物を抽出するには、培地含有混合物を、たとえ
ば変速機付ギヤーポンプ等を用いて循環させながら、固
体培地に粉砕および擂潰作用を加えてバカス繊維の約7
0重量%以上が12メッシュ通過分となるようにするこ
とが望ましい。
【0020】バカス含有混合物の粉砕および擂潰は、該
混合物の温度を30〜50℃に保ちながら行ってもよ
く、温度を上記温度より徐々に上昇させながら行っても
よい。むしろ温度を上昇させながら行うほうが好まし
い。水温が60℃以上好ましくは70℃以上となったと
きに、バカス含有混合物中に室温の空気を噴入させる
と、空気泡は急激に加熱されて破裂し、バカス繊維に衝
撃を与え有効成分の抽出をより効率的に行うことができ
る。
【0021】次いで、このようにして処理されたバカス
含有混合物をさらに加熱して95℃までの温度、好まし
くは75〜90℃程度の温度に加熱し、この温度で数十
分間保持して該混合物中の酵素を失活させるとともに、
該混合物を殺菌すると、椎茸菌糸体抽出物が得られる。
なお、得られた椎茸菌糸体抽出物を必要に応じて、50
〜120メッシュ好ましくは60〜100メッシュ程度
の濾布を用いて濾過してもよい。
【0022】本発明の抗酸化作用剤に使用する「椎茸菌
糸体抽出物」とは、上記のようにして椎茸菌を固体培地
上で培養して得られる菌糸体、好ましくは菌糸体を含む
固体培地を水および酵素の存在下に粉砕、分解して得ら
れる抽出物を言う。 ・上記椎茸菌糸体抽出物の組成 上記のようにして得られた椎茸菌糸体抽出物は、そのま
ま本発明の抗酸化作用剤に使用してもよいが、濃縮、凍
結乾燥後、粉末の形で保存し、使用時に種々の態様で使
用するのが便利である。凍結乾燥して得られる粉末は、
褐色で、吸湿性を示し、特有の味と匂いをもつ。
【0023】本発明の抗酸化作用剤に使用する椎茸菌糸
体抽出物は、タンパク質、糖質、繊維質、ミネラル、脂
質などを含み、それらの含有割合が変動する組成を有す
ることから、この抽出物自体、食品に擬してもよい。組
成分析によれば、糖質を15〜50%、好ましくは20〜40%
(w/w)(フェノール‐硫酸法による糖質分析によ
る)、タンパク質を10〜40%、好ましくは13〜30%(w
/w)(Lowry法によるタンパク質分析による)、ポリフ
ェノールを1〜5%、好ましくは2.5〜3.5%(w/w)含む
(没食子酸を標準とするFolin‐Denis法による)、その
ほかに脂質約0.1%、繊維約0.4%、灰分約20%も含む。
【0024】また、椎茸菌糸体抽出物の構成糖類の組成
(%)の一例は次の通りであった:グルコース、39.4:
キシロース、15.2:アミノ糖、12.0:ウロン酸、11.3:
マンノース、8.4:アラビノース、8.2:ガラクトース、
5.4。抗酸化作用剤 本発明に係る抗酸化作用剤は、椎茸菌糸体抽出物および
任意成分として薬剤的に許容できる担体を含むものであ
り、活性酸素種や過酸化脂質による酸化的細胞傷害が関
与する疾患の治療用、および/または予防用の組成物と
して使用することができる。後記の実施例に示すよう
に、椎茸菌糸体抽出物はとくに活性酸素種や過酸化脂質
に基づく酸化的細胞傷害が関わる疾患の予防用組成物と
して有用であることが見出されている。
【0025】本発明に係る抗酸化作用剤が示す抗酸化作
用は、フリーラジカルのスカベンジャーとして作用し、
過酸化脂質の生成に拮抗する。あるいは過酸化脂質に対
する複数の分解防御系(スーパーオキシドディスムター
ゼ系、グルタチオンペルオキシダーゼ系など)において
何らかの働きをしていると考えられる。その直接の対象
は、活性酸素種(O2 -、H2O2、・OH、1O2)、過酸化脂質
であるが、これらにとどまらず、さらにその他のフリー
ラジカル、たとえば一酸化窒素(NO)、パーオキシ亜
硝酸イオン(ONOO-)などの酸化窒素態フリーラジ
カル、さらには・CCl3、ハロゲン化酸素(ClO-)な
どを含む酸化ストレスの実体化合物となるフリーラジカ
ルをも包含する。
【0026】過酸化脂質は、細胞膜などを構成する高度
不飽和脂肪酸が基質になり、活性酸素などの作用により
その不飽和基部位で酸化を受けて生成する。脂質酸化に
伴い細胞膜機能が損なわれると、生成過酸化脂質の作用
と相俟って細胞傷害に発展する。動物体内で作られる過
酸化脂質としては、脂肪酸遊離基L・、脂質ヒドロペル
オキシド(LOOH)、LCHOや、それから生じるフ
リーラジカル、たとえばペルオキシラジカルLOO・、
アルコキシラジカルLO・などの脂質ラジカルが挙げら
れる。 ・適用病態 活性酸素種や過酸化脂質による酸化的細胞傷害が関与す
る疾患には、薬物や有害物質による肝障害、虚血性再灌
流障害、動脈硬化などの循環器系疾患、胃潰瘍、胃粘膜
障害などの消化器官系疾患、呼吸器系疾患、糖尿病の合
併症、白内障、皮膚疾患、各種炎症性疾患、神経疾患、
癌、老化などを含むがこれらに限定されない。すなわ
ち、現在、活性酸素種や過酸化脂質による酸化的細胞傷
害が関与する疾患として明らかになっているもののみな
らず、本発明に係る抗酸化剤が適用可能となる活性酸素
種や過酸化脂質による酸化的細胞傷害が関与する疾患を
も包含する趣旨である。
【0027】以下、上に掲げた各種疾患における活性酸
素種、過酸化脂質の関与について若干述べる。肝臓は解
毒、代謝の中心臓器であることから肝毒性因子、薬物な
どによる障害を受けやすい。これまで椎茸菌糸体抽出物
が、ウィルス性肝障害、免疫性肝障害などに対し抑制効
果があることが報告されている。さらに、本発明者らは
特開2000−159683において、椎茸菌糸体抽出物が医薬
品、たとえばエタンブトール、イソニアジド、リファン
ピシンの併用による薬物性の肝障害に対する防御効果を
有することを開示している。引き続き研究を行なった結
果、今回、薬物による中毒性肝障害に対する効果もある
ことが判った。
【0028】肝障害、薬物中毒などによりもたらされる
肝障害の病理を明らかにしようとする場合、たとえば、
後述する四塩化炭素中毒ではフリーラジカルによる細胞
傷害の機序が提示される。四塩化炭素(CCl4)はフルオ
ロカーボン類の原料として使用されることが多く、その
他各種の溶剤や洗浄剤としても使用されている。しか
し、四塩化炭素は発ガン性や肝障害性の毒性を有するこ
とが判明している。
【0029】その毒性発現の主役は、・CCl3ラジカルで
あることが以前から知られている。このラジカルは脂質
過酸化を誘発し、肝障害を発症させる(「活性酸素と医
食同源」井上正康 編著 共立出版株式会社、p.135-13
7)。したがって、このような薬物による肝障害にもラ
ジカルが関与している。同様に、パラコート中毒におい
ても活性酸素による細胞傷害に由来する典型的な症状が
見られる。パラコートの毒性は、生体内で活性酸素を生
成することに起因し、その活性酸素が脂質の過酸化、細
胞膜の変性、細胞傷害を惹起する。重篤な場合、消化器
症状、肝機能障害、腎機能障害などの病態が不可逆的に
進行し、最後は進行性の肺線維症になり呼吸不全を起こ
し死に至る。
【0030】虚血性再灌流障害(I/R)とは、組織の
血流遮断または低灌流による虚血が一定時間生じ、引き
続いて血流が回復する場合に見られる障害である。虚血
状態、再酸素化過程において活性酸素、フリーラジカル
が発生し、脂質過酸化、細胞膜傷害、組織傷害をもたら
し、逆説的に症状の悪化を呈することが知られている。
その機序として、再酸素化後の酸化ストレス、細胞
内pHの変動、虚血前後のミトコンドリア障害、再酸
素化後の炎症担当細胞の活性化、細胞内Ca2+濃度の変
動、虚血中のhypoxia inducing factorの誘導、再
酸素化後のcaspase 3活性化によるアポトーシス、等の
因子が関与しており、好中球およびKupffer 細胞などの
貪食細胞の活性酸素産生が再灌流障害に深く関与してい
ることが知られている。
【0031】動脈硬化における関与は、LDL(低比重
リポタンパク質)の酸化に活性酸素が作用し、酸化LD
Lの変性過程でコレステロールなどの脂質過酸化を生起
し血管壁に沈着する。変性LDLをマクロファージが取
り込み泡沫細胞化するというようにアテローム硬化の進
行をもたらす。消化器官系疾患においても、活性酸素種
は、消化性潰瘍の重要な病原因子と想定されている。グ
ラム陰性桿菌であるヘリコバクター・ピロリHelicobact
er pyloriの感染により胃や十二指腸粘膜に炎症細胞が
浸潤しサイトカインを誘導したり、活性酸素を発生させ
て細胞傷害を引き起こす。これが胃潰瘍、胃粘膜障害、
十二指腸潰瘍などの消化器官系疾患の成因となると考え
られている。
【0032】糖尿病においては、過剰なブドウ糖がタン
パク質のグリケーション(非酵素的糖化)、続くAGE(a
dvanced glycation endproduct)をもたらす際に活性酸
素を発生する。インスリンを分泌するすい臓ランゲルハ
ンス島β細胞は、活性酸素の攻撃を受けて弱体化する。
白内障の病因の一つは、タンパク質である水晶体レンズ
が、紫外線などの作用により発生した活性酸素の攻撃を
受けて傷害を生起することによるとされている。
【0033】癌における関与は、活性酸素によるDNA
損傷が、遺伝子情報の翻訳ミス、遺伝子発現の調節の異
常をもたらし、癌細胞の発生を招く。老化に対しては、
加齢とともにスーパーオキシドディスムターゼ(SO
D)などの防御系活性が低下して活性酸素種の消去能力
が低下するため、器官、組織の傷害が自然老化を加速す
る。老齢の動物の脳、神経には過酸化脂質の蓄積が見出
されている。
【0034】皮膚疾患における関与として、紫外線、放
射線などの照射により表皮、真皮などの皮膚組織に活性
酸素が発生し、これがコラーゲン、エラスチンなどを酸
化して「しみ」、「しわ」の原因となる。ほかにアトピ
ー性皮膚炎などの皮膚障害、ケロイド、火傷、皮膚がん
などにも同様に活性酸素の関与が考えられている。・適
用態様上記の各種疾患に対し、椎茸菌糸体抽出物は、本
発明に係る抗酸化作用剤として、あるいは抗酸化作用に
加えて、該抽出物の多彩な薬効を活かす利用形態が考え
られる。すなわち、抗酸化作用を発揮させることができ
るとともに、さらに好ましくは椎茸菌糸体抽出物が有す
る他の様々な生理作用をも保持した形で、各種疾患を治
療する医薬品の成分原料としての用途が例示される。こ
のような医薬品としては感受性疾患、感染性疾患、循環
器系疾患等の予防剤または治療剤(抗感受性疾患剤);
経腸栄養剤、補助栄養剤、水薬、シロップ剤などの各種
薬剤が挙げられる。また、食餌療法用の食品、各種の健
康食品などへの利用も挙げられる。
【0035】上記椎茸菌糸体抽出物を含む、本発明に係
る抗酸化作用剤について、以下に最も有用と思われる利
用態様を例として挙げるが、該抗酸化作用剤の用途はこ
れらに限定されるわけではない。本発明に係る抗酸化作
用剤の剤型はとくに限定されず、粉末状の椎茸などの菌
糸体抽出物組成物をそのまま用いてもよく、液状物ある
いは必要に応じて増量剤などとも混合して、ペースト、
顆粒状、球状、キューブ、タブレット状などに成型して
使用することができる。また、この抗酸化作用剤を充填
する容器の性能・形態もとくに問わない。
【0036】投与経路は、経口投与が最も好ましい。場
合により経胃腸内投与、経静脈内投与、皮下投与などで
あってもよい。経口投与に適した製剤には、錠剤、カプ
セル剤、散剤、顆粒剤、溶液剤、シロップ剤などが含ま
れるが、これに限定されない。薬剤的に許容できる担体
には、一般に当業界で知られている適切な賦形剤(基
剤、溶剤、希釈剤、増量剤、補形剤など)、結合剤、崩
壊剤、滑沢剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、保
存剤、着香料、着色剤、溶解補助剤、光沢剤、コーティ
ング剤などが含まれるが、必ずしもこれらに限定されな
い。
【0037】本発明に係る抗酸化作用剤の至適投与量
は、患者あるいは摂取者の年齢、体重、症状、投与経路
などを考慮して医師、薬剤師、栄養士などにより決定さ
れよう。本発明の抗酸化作用剤の調製に用いられる椎茸
菌糸体は、従来より食品として使用されてきたものであ
り、極めて安全であるところから、投与量の範囲を厳し
く限定する必要はない。通常、椎茸菌糸体抽出物粉末に
換算して1日あたり40mg−6g、好ましくは400mg〜1.8gで
ある。
【0038】なお、上記投与量が40mg未満では、充分
な摂取効果が期待できないことがある。飲食物への利用 本発明の抗酸化作用剤は、普段から食品、飲料として手
軽に摂取することによって食生活を改善し、ラジカルお
よび活性酸素種が関与する疾患、とりわけ生活習慣病に
対する予防効果を期待できる。抗酸化能の増強のために
継続的に摂取もしくは投与が必要な場合には、とくに有
意義である。
【0039】本発明に係る抗酸化作用剤は、飲食物の形
態で提供することもできる。好ましい食品の例として、
顆粒、カプセルなどの形態で提供される健康食品、一般
食品、たとえば麺類、菓子類(クッキー、キャンディ
ー、ゼリーなど)を含む嗜好食品などが挙げられる。さ
らには、食事療法用の各種食品、機能性食品、栄養強化
食品、補助食品としての利用も考えられる。あるいは、
本発明の抗酸化作用剤は、飲料の形態でも提供すること
もできる。
【0040】本発明に係る食品または飲料としての抗酸
化作用剤には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記
椎茸菌糸体抽出物のほかに、賦形剤さらに他の物質を配
合して共存させてもよい。たとえば、各種アミノ酸、ビ
タミン類、カルシウムなどのミネラル類を加えて栄養滋
養の強化を図ってもよく、さらに摂取性および品質向上
のために甘味料、増量剤、香味料などの各種成分を1種
または2種以上、所望により配合することができる。
【0041】具体的に例示すると、水飴、ぶどう糖、マ
ルトース、砂糖、異性化糖、パラチノース、ステオビオ
シド、L-アスパラチルフェニルアラニンメチルエステ
ル、グリチルリチンなどの甘味料;酸味料としてクエン
酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸などの各種
有機酸塩類;キトサンなどの食物繊維;大豆抽出物など
の蛋白質;レシチンなどの脂質;果汁;各種フレーバー
などの香味料;などを配合してもよい。さらに必要に応
じて、一般に食品に使用されている各種添加物、たとえ
ば増粘剤、分散剤、安定化剤、保存剤など任意の成分を
含めることができる。 ・適用態様 以上述べたような一般飲食物、嗜好品、医薬品などに本
発明の抗酸化作用剤を使用するには、その製品が完成す
るまでの工程のうち適切な段階で、この抗酸化作用剤を
添加することができる。本発明に係る抗酸化作用剤の調
製に用いられる椎茸菌糸体抽出物の組成物が、水などに
も溶解するため、飲料、栄養剤、調味液などの液状物に
も良好に添加できる。たとえば、抗酸化作用剤を添加す
る際に他の配合成分と混合、混和、混捏してもよく、飲
食物などに抗酸化作用剤を浸透、溶解、散布、塗布、噴
霧、注入などしてもよく、また液状の抗酸化作用剤に飲
食物を浸漬してもよく、そのために従来より公知の方法
が適宜採用される。
【0042】本発明に係る抗酸化作用剤の飲食物におけ
る用量の範囲は、とくに限定する必要はない。本発明の
抗酸化作用剤に含まれる椎茸菌糸体は、昔から食品とし
て使用されてきたものであり、極めて安全であるためで
ある。
【0043】
【実施例】本発明を以下の実施例によりさらに具体的に
説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものでな
い。本発明に係る製剤を様々に変更、修飾して使用する
ことは、当業者には可能であるがそれらも本発明の範囲
に包含される。なお、以下の例において、%はとくに指
定しない限り「重量%」を意味する。
【0044】
【実施例1】・椎茸菌糸体抽出物の調製法 バカス90重量部、米糠10重量部からなる固体培地に純水
を適度に含ませた後に、椎茸種菌を接種し、温度および
湿度を調節した培養室内に放置し、菌糸体を増殖させ
た。菌糸体が固体培地に蔓延した後、バカス基材の繊維
素を解束し、12メッシュ通過分が24重量%以下となるよ
うにした。この解束された培地1.0kgに、純水3.5kgを加
え、40℃に保ちながら精製セルラーゼ2.0gを加え培地含
有混合物とした。
【0045】次いで培地含有混合物を変速付ギヤーボン
プにより循環させながら、固体培地にギヤー部分におい
て粉砕およびすりつぶし作用を200分間程度加えバカス
繊維の約80重量%が12メッシュ通過分となるようにし
た。培地含有混合物の粉砕およびすりつぶしは、該混合
物の温度を徐々に上昇させながら行った。その後培地含
有混合物をさらに加熱して、90℃として30分間放置し
た。90℃への加熱により、酵素を失活せしめ、かつ殺菌
を施した。得られた培地含有混合液を60メッシュ濾布を
用いて濾過して椎茸菌糸体抽出液とし、濃縮した後、凍
結乾燥粉末を得た。
【0046】
【実施例2】・四塩化炭素により誘導されたラット肝障
害に対する椎茸菌糸体抽出物の経時的ラジカル消去活性 実験群のWister雄ラット(3匹)に、椎茸菌糸体抽出物
の粉末を水に懸濁したもの(30mg/ml)を、300mg/Kg体
重/日となるように1日1回の経口投与で、3、5または10
日間投与した。
【0047】別途、10日間水を与えたラットを対照群と
した。投与終了後、オリーブオイルに懸濁させた25%CC
l4を1ml/kg体重で腹腔内投与し、肝障害を引き起こし
た。24時間後に、ラット腹部大動脈から採血し、血清中
のGPT、GOT活性を下記の方法で測定した。GPT、GOT活性
は、既報(Richard et al.,American Journal of Clini
cal Pathology,34:149‐166,1960)の方法に従い、NA
DH/NAD+系での吸光度減少量(340nm)を測定すること
により算出した。
【0048】GPT活性測定用緩衝液(80mM DL−アラニ
ン、0.12mM NADH,LDH)およびGOT活性測定用緩衝液
(125mM L−アスパラギン酸、0.12mM NADH、MDH)を3
0℃でインキュベートし、血清および450mMα‐ケトグル
タル酸を0.1ml添加し、1分間における吸光度減少(340n
m)を測定した。GPT、GOTの活性は、測定値から次式に
基づいて計算し、国際単位(IU/L)で表した。
【0049】
【数1】
【0050】ここで、△A/分は測定された吸光度変化で
あり、2.5は反応液容量(ml)、6.3はNADHのμmol吸光
係数(340nm)、そして0.1は使用血清の容量(ml)であ
る。得られた結果を図1に示す。なお、図中、CCl4(-)
で示したものは、椎茸菌糸体抽出物を0(10日間水を与
えたラット)、3、5または10日間、上記投与量で投与
し、かつCC14を投与しなかった四群のラットについて同
様にGPT、GOTの活性を測定した結果である。
【0051】図から明らかなように、椎茸菌糸体抽出物
は、CCl3ラジカルに起因した肝障害に対して、その肝障
害防御作用を示した。したがってラジカル消去作用があ
ると考えられる。また、GOTについては、椎茸菌糸体抽
出物の投与期間が長くなるほど消去能が大きくなること
が観察された。
【0052】
【実施例3】・四塩化炭素で誘導したラット肝障害に対
する椎茸菌糸体抽出物の用量依存的ラジカル消去活性 椎茸菌糸体抽出物粉末を20%含む(残余は乳糖)椎茸菌
糸体抽出物の顆粒を調製した。肝臓において四塩化炭素
誘導のラジカルを消去する活性を検討するため、実験群
のラット(3匹)に、椎茸菌糸体抽出物粉末に換算して
1日の投与量がそれぞれ10mg/kg体重、100mg/kg体重
および1000mg/kg体重となるように、7日間経口投与し
た。別途、10日間水を与えたラットを対照群とした。
【0053】投与終了後、実施例2と同様にして 四塩化
炭素を腹腔内投与して、肝障害を引き起こした後、腹部
大動脈から採血し、血清中のGOT活性、GPT活性を測定し
た。得られた結果を図2に示す。図から明らかなよう
に、四塩化炭素で誘導した肝障害はラジカルの作用に起
因しており、椎茸菌糸体抽出物は、用量依存的に肝障害
防御作用を示したことから、ラジカル消去作用があると
考えられる。
【0054】
【実施例4】・椎茸菌糸体抽出物のラジカル消去活性 椎茸菌糸体抽出物のラジカル消去活性は、安定ラジカル
であるDPPH(α‐α‐ジフェニル‐β‐ピクリルヒドラ
ジル)を用いる抗酸化剤の効力検定法により測定した。
フリーラジカルDPPHは、抗酸化剤との反応により非ラジ
カル体となって不活性化され、517nmの吸光度が減少す
る。この減少量を測定することによりそのラジカル消去
活性を測定することができる。
【0055】50mM MES(2‐モルホリノエタンスルホン
酸)緩衝液(pH7.4)、エタノール、0.5mMDPPHをそれぞ
れ2:2:1の割合で混合した反応液(PH7.4)を、25℃でイ
ンキュベートした。これに、椎茸菌糸体抽出物を、その
最終濃度がそれぞれ0.075、0.15および0.3mg/mlとなる
ように添加した。このときを0分として、以後15、30、6
0、90、120分後の517nmの吸光度を測定した。また、椎
茸菌糸体抽出物を添加しないものを陰性対照として、同
様に120分間の吸光度測定を行い、椎茸菌糸体抽出物を
添加した場合との吸光度の差を求めてこれをラジカル消
去活性とした。得られた結果を図3に示す。図には、参
考のためα−トコフェロール(最終濃度20μM)による
ラジカル消去活性も示されている。図3から明らかなよ
うに椎茸菌糸体抽出物は、濃度依存的にラジカル消去活
性を示した。このことにより、椎茸菌糸体抽出物はラジ
カル連鎖反応を抑制することが推察された。α-トコフ
ェロールは、脂溶性化合物であることから、その抗酸化
能力は、主として脂溶性組織、細胞の疎水性領域といっ
た脂質層にあるラジカルを捕捉し、連鎖反応を抑制する
ことによって発揮される。これに対して椎茸菌糸体抽出
物は組織、細胞の水溶性環境で抗酸化力を示すと考えら
れる。したがって、両者を混合して併用する場合、生物
体内のあらゆる場面で抗酸化作用を求める目的には都合
がよい。しかも両者の生理効果は、抗酸化作用以外では
異なる部分が多い。図3では、α-トコフェロールは椎
茸菌糸体抽出物よりも反応開始直後から、そのラジカル
消去活性が速やかであることを示す結果となっている。
さらに図1からも明らかなように、椎茸菌糸体抽出物の
抗酸化作用は、投与後しばらくしてから顕著に現われ
る。このため即効性および持続性もしくは安定的な抗酸
化作用の実現という観点からは、椎茸菌糸体抽出物のほ
かにα-トコフェロールをも含む抗酸化剤も考えられ
る。
【0056】
【実施例5】・脂質過酸化反応に対する椎茸菌糸体抽出
物の影響 椎茸菌糸体抽出物が脂質過酸化を抑制するかどうかにつ
いて、チオバルビツール酸(TBA)法により脂質過酸化
量を測定して検討した。種々の濃度(0〜2.0mg/ml)の
椎茸菌糸体抽出物を含む緩衝液(0.175M KCl、10mM Tri
s−HCl,PH7.4)に、ラット肝臓ミトコンドリア懸濁液
(Myers and S1aterの方法を用いて調製)を0.7mgタン
パク質/mlとなるように添加し、次いでADP、FeSO4をそ
れぞれ1mM,0.1mMとなるように加えて25℃で反応を開始
した。生成した過酸化脂質量は、Ohkawaらの方法(文
献:Ohkawa,H. Ohisi,N. and Yagi,K.; Anal, Bioche
m.95 358(1979))に準じて、TBA法により吸光度(53
2nm)を測定し、TBA反応陽性物質量(TBARS)として算
出した。得られた結果を図4に示す。
【0057】さらに、椎茸菌糸体抽出物の濃度を0〜3.0
mg/mlにして15分間反応させた結果を図5に示す。上記の
実験結果から、椎茸菌糸体抽出物が濃度依存的に、たと
えば0.5mg/mlでは約35%、また2.0mg/m1では約85%とい
う比率で脂質過酸化を抑制することが明らかとなった。
【0058】
【発明の効果】本発明の椎茸菌糸体抽出物を含有する抗
酸化作用剤は、フリーラジカル、活性酸素を消去し、脂
質過酸化反応を抑制する作用を発揮でき、活性酸素種や
過酸化脂質による酸化的細胞傷害が関与する様々な疾患
の予防および/または治療に使用できる。
【0059】最近、合成抗酸化剤の安全性が議論されて
おり、比較的安全性の高い天然物由来の抗酸化物質に注
目が集まっている。本発明により新たな天然物由来の抗
酸化作用剤が提供された。これにより本発明の抗酸化作
用剤を利用した健康食品などの食品、飲料も製造でき
る。そうした製品は、とくに本発明の抗酸化剤自体に副
作用のおそれがなく安全性に優れているため、継続的に
摂取もしくは投与が必要な場合にとくに有意義である。
よって本発明の抗酸化作用剤は、大きな産業上の利用可
能性が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】四塩化炭素(CCl4)で誘導したラット肝障害に
対する椎茸菌糸体抽出物(L・E・M)の経時的ラジカル消
去活性試験の結果を示すグラフである。
【図2】四塩化炭素(CCl4)で誘導したラット肝障害に
対する椎茸菌糸体抽出物(L・E・M)の用量依存ラジカル
消去活性についての試験結果を示すグラフである。
【図3】DPPHに対する椎茸菌糸体抽出物(L・E・M)のラジ
カル消去活性試験の結果を示すグラフである。α-トコ
フェロールの場合、最終濃度20μMになるように添加し
た。
【図4】脂質過酸化に対する椎茸菌糸体抽出物(L・E・M)
による経時的抗酸化能(TBA法により測定)を示すグラ
フである。
【図5】脂質過酸化に対する椎茸菌糸体抽出物(L・E・M)
による用量依存的な抗酸化能(TBA法により測定)を示
すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 1/16 A61P 3/10 3/10 9/00 9/00 11/00 11/00 17/00 17/00 35/00 35/00 A23L 2/00 F (72)発明者 浅 野 健 治 大阪府茨木市豊川1丁目30番3号 小林製 薬株式会社内 (72)発明者 山 口 康 代 大阪府茨木市豊川1丁目30番3号 小林製 薬株式会社内 (72)発明者 猪 木 彩 子 大阪府茨木市豊川1丁目30番3号 小林製 薬株式会社内 (72)発明者 大 原 豊 実 大阪府茨木市豊川1丁目30番3号 小林製 薬株式会社内 Fターム(参考) 4B017 LC03 LG19 LP01 4B018 LB08 MD83 ME06 MF01 MF04 MF07 MF12 4C088 AA04 AC17 BA08 MA52 NA14 ZA36 ZA59 ZA66 ZA69 ZA75 ZB26 ZC35

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】バカスを基材とする固体培地上に、椎茸菌
    を接種し、次いで菌糸体を増殖して得られる菌糸体を含
    む固体培地を解束し、この解束された固体培地に、水お
    よびセルラーゼ、グルコシダーゼまたはプロテアーゼか
    ら選ばれる酵素の1種またはそれ以上を、前記固体培地
    を30〜50℃に保ちながら添加し、そして前記固体培
    地を酵素の存在下に粉砕および擂潰して椎茸菌糸体抽出
    物を抽出し、次いで95℃までの温度に加熱することに
    より酵素を失活させ、かつ滅菌してなる椎茸菌糸体抽出
    物を含む抗酸化作用剤。
  2. 【請求項2】前記椎茸菌糸体抽出物および任意成分とし
    て薬剤的に許容できる担体を含む、活性酸素種や過酸化
    脂質による酸化的細胞傷害が関与する疾患の治療用およ
    び/または予防用である請求項1に記載の抗酸化作用
    剤。
  3. 【請求項3】前記疾患が、薬物や有害物質による肝障
    害、循環器系疾患、胃潰瘍および胃粘膜障害などの消化
    器官系疾患、呼吸器系疾患、糖尿病の合併症、皮膚疾
    患、癌、老化からなる群より選択される請求項2に記載
    の抗酸化作用剤。
  4. 【請求項4】経口で投与する請求項1に記載の抗酸化作
    用剤。
  5. 【請求項5】食品である請求項1に記載の抗酸化作用
    剤。
  6. 【請求項6】飲料である請求項1に記載の抗酸化作用
    剤。
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