JP2003003956A - 密閉形コンプレッサ - Google Patents

密閉形コンプレッサ

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JP2003003956A
JP2003003956A JP2002142730A JP2002142730A JP2003003956A JP 2003003956 A JP2003003956 A JP 2003003956A JP 2002142730 A JP2002142730 A JP 2002142730A JP 2002142730 A JP2002142730 A JP 2002142730A JP 2003003956 A JP2003003956 A JP 2003003956A
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Japan
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compressor
sliding
oil
refrigerant
sliding member
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JP2002142730A
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English (en)
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Kenji Komine
健治 小峰
Hiroyuki Isekawa
浩行 伊勢川
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Publication date
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    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F05INDEXING SCHEMES RELATING TO ENGINES OR PUMPS IN VARIOUS SUBCLASSES OF CLASSES F01-F04
    • F05CINDEXING SCHEME RELATING TO MATERIALS, MATERIAL PROPERTIES OR MATERIAL CHARACTERISTICS FOR MACHINES, ENGINES OR PUMPS OTHER THAN NON-POSITIVE-DISPLACEMENT MACHINES OR ENGINES
    • F05C2201/00Metals
    • F05C2201/04Heavy metals
    • F05C2201/0433Iron group; Ferrous alloys, e.g. steel
    • F05C2201/0436Iron
    • F05C2201/0439Cast iron
    • F05C2201/0442Spheroidal graphite cast iron, e.g. nodular iron, ductile iron

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  • Compressor (AREA)
  • Rotary Pumps (AREA)
  • Compressors, Vaccum Pumps And Other Relevant Systems (AREA)
  • Applications Or Details Of Rotary Compressors (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】コンプレッサ摺動部の耐摩耗性を向上させ、長
期間安定した運転を保証でき、HFC冷媒下で使用可能
な密閉形コンプレッサを提供する。 【解決手段】本発明に係る密閉形コンプレッサ10は、
密閉ケース11内に電動機12と圧縮機械13とを収容
し、この圧縮機械13で圧縮される冷媒にHFC冷媒を
用いたものである。密閉形コンプレッサ10はコンプレ
ッサ摺動部を潤滑する冷凍機油に4価以上のエステル油
を用い、コンプレッサの摺動部を構成する一方の摺動部
材18,21(19,22)に、摺動面を窒化処理して
表面硬さHv1000以上の材料を用い、他方の摺動部
材19,22(18,21)にMo−Ni−Cr含有鋳
鉄を用いたものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐摩耗性に優れた摺動
部材を有する密閉形コンプレッサに係り、特にHFC冷
媒と4価以上のエステル油を用いた密閉形コンプレッサ
に関する。
【0002】
【従来の技術】冷蔵庫や冷凍ショーケース等の冷凍装
置、室内を冷暖房する空気調和機には冷凍サイクルが備
えられ、この冷凍サイクルには冷媒を循環させる密閉形
コンプレッサが組み込まれている。
【0003】密閉形コンプレッサは密閉ケース内に電動
機とこの電動機により駆動される圧縮機械とが収容され
る。この圧縮機械でコンプレッサ用冷媒を圧縮し、高温
・高圧化して冷凍サイクルに吐出させるようになってい
る。
【0004】従来の密閉形コンプレッサには、コンプレ
ッサ用冷媒としてクロロフルオロカーボンのCFC12
冷媒(以下、R12冷媒という。)やハイドロクロロフ
ルオロカーボンのHCFC22冷媒(以下、R22冷媒
という。)が用いられ、また、冷凍機油にはR12やR
22冷媒と相溶性の優れたナフテン系やパラフィン系の
鉱油が用いられている。
【0005】R12冷媒をコンプレッサ用冷媒に用いた
場合には、R12冷媒中に含まれる塩素(Cl)原子が
金属基材の鉄(Fe)原子と反応して塩化鉄なる潤滑被
膜を形成する。この塩化鉄からなる潤滑被膜は、自己潤
滑性を有し耐摩耗性に優れ、金属同士の接触を防止して
摩耗防止に有効に作用する。
【0006】加えて、R12冷媒と従来の冷凍機油は無
極性であるため吸湿性が低い。このため、鉄系金属基材
上に形成される塩化鉄層は加水分解を起こさず安定した
潤滑被膜として存在する。
【0007】ところが、R12冷媒は大気圏で化学的に
極めて安定しており、オゾン層を破壊するおそれが強い
ためフロン規制対象の特定フロンに指定される一方、R
22冷媒は、大気圏で分解し易く、オゾン層を破壊する
力が弱い指定フロンであるが、オゾン層破壊効果が残る
ため、将来的には使用しない方針が国際的に決定してい
る。
【0008】最近では、特定フロンや指定フロンに代わ
る代替フロンとしてオゾン層を破壊することのないHF
C(ハイドロフルオロカーボン)冷媒が開発されてい
る。HFC冷媒はオゾン破壊係数がゼロであるが、塩素
原子を有さないため、自己潤滑性が劣る問題がある。
【0009】また、HFC冷媒をコンプレッサ用冷媒と
して用いて密閉形コンプレッサを運転させると、冷凍機
油にナフテン系やパラフィン系の鉱油を用いたものでは
HFC冷媒との相溶性が悪い。これらの鉱油はHFC冷
媒に溶け込まないため、油戻りが悪く、コンプレッサ摺
動部の潤滑や冷却を阻害し、焼付等の問題を生じさせる
おそれがある。
【0010】このため、HFC冷媒と相溶性に優れた冷
凍機油の開発が余儀なくされており、種々の冷凍機油の
開発が進められている。その中で、PAG(ポリアルキ
レングリコール)油がHFC冷媒との相溶性が良好なこ
とから、カーエアコンで多く採用されている。
【0011】しかし、PAG油は体積抵抗率が低く、電
気絶縁抵抗に問題があり、電動機のモータが冷凍機油に
つかる密閉形コンプレッサでは採用できない。
【0012】近年、密閉形コンプレッサ用の冷凍機油と
して脂肪酸とアルコールにより合成されるエステル油が
注目を集めている。エステル油はHFC冷媒との相溶性
も優れ、鉱油より耐熱性に優れ、熱的安定性や電気絶縁
抵抗特性も良好である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】HFC冷媒を用いた密
閉形コンプレッサの冷凍機油として採用される、エステ
ル油は脂肪酸やアルコールの基油構造により油特性が異
なる。エステル油は耐熱性や電気絶縁抵抗特性は良好で
あるが、耐摩耗性や耐加水分解性が基油構造により大き
く低下し、冷凍機油としての潤滑性も、従来のCFC冷
媒やHCFC冷媒と鉱油との組合せたものに較べ低い等
の問題があった。
【0014】また、HFC冷媒を用いた密閉形コンプレ
ッサにエステル油を採用しても、圧縮機械の摺動部材と
して使用される鋳鉄,炭素鋼,合金鋼,焼結合金,ステ
ンレス鋼などの耐摩耗性が低下し、長期間安定してコン
プレッサを運転させることができないという問題があっ
た。
【0015】本発明は上述した事情を考慮してなされた
もので、コンプレッサ摺動部の耐摩耗性を向上させ、長
期間安定した運転を保証でき、HFC冷媒下で使用可能
な密閉形コンプレッサを提供することを目的とする。
【0016】本発明の他の目的は、冷凍機油として適正
なエステル油を選択して耐加水分解性を良好にして腐食
摩耗を防止し、長寿命化を図り、信頼性を向上させた密
閉形コンプレッサを提供するにある。
【0017】本発明の別の目的は、HFC冷媒との相溶
性に優れ、冷凍機油として耐熱性,電気絶縁抵抗性が良
好で、スラッジ等の発生を有効的に防止できる密閉形コ
ンプレッサを提供するにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明に係る密閉形コン
プレッサは、上述した課題を解決するために、請求項1
に記載したように、密閉ケース内に電動機と圧縮機械と
を収容し、この圧縮機械で圧縮される冷媒にHFC冷媒
を用いた密閉形コンプレッサにおいて、このコンプレッ
サの摺動部を潤滑する冷凍機油に4価以上のエステル油
を用い、前記コンプレッサの摺動部を構成する一方の摺
動部材に、摺動面を窒化処理して表面硬さHv1000
以上の材料を用い、他方の摺動部材にMo−Ni−Cr
含有鋳鉄を用いたものである。
【0019】また、上述した課題を解決するために、本
発明に係る密閉形コンプレッサは、請求項2に記載した
ように、前記密閉形コンプレッサはロータリコンプレッ
サであり、一方の摺動部材はベーン、他方の摺動部材は
ローラであり、前記ベーンの少なくとも先端が窒化処理
されてHv1000以上の硬度を有したり、また、請求
項3に記載したように、前記ベーンはSKH材あるいは
SUS材で表面が窒化処理される一方、窒化処理された
ベーン表面の化合物層が4μm以上の層厚を有するもの
である。
【0020】さらに、本発明に係る密閉形コンプレッサ
は、上述した課題を解決するために、請求項4に記載し
たように、密閉ケース内に電動機と圧縮機械とを収容
し、この圧縮機械で圧縮される冷媒にHFC冷媒を用い
た密閉形コンプレッサにおいて、このコンプレッサの摺
動部を潤滑する冷凍機油に4価以上のエステル油を用
い、前記コンプレッサの摺動部を構成する一方の摺動部
材に周期律表4族の窒化物,4族の炭化物,4族の酸化
物またはこれらの混合物を用い、他方の摺動部材に鋳鉄
等の鉄合金材料を用いたものである。
【0021】上述した課題を解決するために、本発明に
係る密閉形コンプレッサは、請求項5に記載したよう
に、前記一方の摺動部材は母材表面を未処理構造とし、
他方の摺動部材にMo−Ni−Cr含有鋳鉄を用いた
り、さらに、請求項6に記載したように、前記密閉コン
プレッサはロータリコンプレッサであり、一方の摺動部
材はベーンであり、他方の摺動部材はローラであるもの
である。
【0022】本発明に係る密閉形コンプレッサは、上述
した課題を解決するために、請求項7に記載したよう
に、密閉ケース内に電動機と圧縮機械とを収容し、この
圧縮機械で圧縮される冷媒にHFC冷媒を用いた密閉形
コンプレッサにおいて、このコンプレッサの摺動部を潤
滑する冷凍機油に4価以上のエステル油を用い、前記コ
ンプレッサの摺動部を構成する一方の摺動部材を、周期
律表4族,5族もしくは6族の炭化物,窒化物または酸
化物を母材とし、母材表面に同族の窒化物,炭化物また
は窒化物の薄膜でそれぞれ表面処理したものを用い、他
方の摺動部材にMo−Ni−Cr含有鋳鉄等の鉄系材料
を用いたものである。
【0023】
【作用】請求項1記載の密閉形コンプレッサにおいて
は、冷凍機油に4価以上のエステル油を用いたので、潤
滑性が向上し、耐摩耗性が良好となる。エステル油は脂
肪酸とアルコールの合成により得られるが、脂肪酸のO
H基の数によりきまるエステル油中のエステル結合の数
により潤滑性が異なる一方、4価以上のエステル油は3
価以下のエステル油に較べ耐摩耗性が良好となる。例え
ば4価のエステル油は3価のエステル油に較べ官能基と
してのエステル結合が多いため、コンプレッサ摺動部の
摺動部材との結合力が高く、耐摩耗性が改善される。5
価以上のエステル油は、コストの点を除けばさらに結合
力の向上が期待でき、好ましい。
【0024】また、コンプレッサ摺動部を構成する一方
の摺動部材の表面を窒化処理してHv1000以上の表
面硬度を有するようにしたので、摩耗の進行を極力抑え
ることができ、他方の摺動部材にMo−Ni−Cr含有
鋳鉄を用いると、この鋳鉄に含まれる黒鉛の自己潤滑性
により良好な潤滑性能を得ることができる。
【0025】請求項2記載の密閉形コンプレッサでは、
ロータリコンプレッサのベーン(ブレード)材料を窒化
処理してHv1000以上の表面硬さとしたので、ベー
ンに作用する切削摩耗の進行を抑えることができる。摺
動部材をSKH51やSUS材2のようなHv600〜
800程度の材料で構成すると、摺動による切削摩耗が
進行するおそれがあるが、Hv1000以上にすると、
この摩耗の進行を有効的に抑えることができる。
【0026】請求項3記載の密閉形コンプレッサでは、
ロータリコンプレッサのベーン(ブレード)材料をSK
H材あるいはSUS材で構成した表面を窒化処理し、ベ
ーン表面の化合物層の厚さを4μm以上としたので、摩
耗量が少なく、コンプレッサ性能を向上させることがで
きる。密閉形コンプレッサの単体耐久試験をしたとき、
窒化処理なしのSKH材ではベーン先端摩耗量が15μ
mであるのに対し、窒化処理を施すと4μm程度と非常
に小さく、したがって、窒化処理された化合物層の厚さ
を4μm以上とすることにより、ベーン材料に摩耗によ
る悪影響を及ぼさない。
【0027】請求項4記載の密閉形コンプレッサでは、
コンプレッサ摺動部を構成する一方の摺動部材を周期律
表4族の窒化物,4族の炭化物,4族の酸化物またはこ
れらの混合物とすると、コンプレッサ冷媒としてHFC
冷媒,冷凍機油として4価以上のエステル油を使用した
とき、摩耗量が小さく、良好な摩耗形態を得ることがで
きる。
【0028】請求項5記載の密閉形コンプレッサでは、
コンプレッサ摺動部を構成する他方の摺動部材にMo−
Ni−Cr含有鋳鉄を用いると、この鋳鉄に含まれる黒
鉛の自己潤滑性により良好な潤滑性能が得られた。
【0029】請求項6記載の密閉形コンプレッサでは、
ロータリコンプレッサのベーン(ブレード)材料に周期
律表4族の窒化物,4族の炭化物,4族の酸化物または
これらの混合物を用い、ローラにMo−Ni−Cr含有
鋳鉄を用いると、HFC冷媒をコンプレッサ用冷媒と
し、4価以上のエステル油を用いた中でベーンの先端摩
耗量が小さく、また良好な潤滑性能が得られる。
【0030】請求項7記載の密閉形コンプレッサでは、
コンプレッサ摺動部を構成する一方の摺動部材を、周期
律表4族,5族もしくは6族の炭化物,窒化物または酸
化物を母材とし、母材表面に同種の窒化物,炭化物また
は窒化物の薄膜でそれぞれ表面処理すると、摺動部材表
面が改質され、Hv1000以上の表面硬度を得ること
ができる。表面改質の際、表面改質膜と同種の材料を母
材に入れることにより、表面改質膜と母材との密着強度
を上げることができ、HFC冷媒や4価以上のエステル
油を使用したコンプレッサでの薄膜使用が可能となる。
【0031】
【実施例】以下、本発明に係る密閉形コンプレッサの実
施例について添付図面を参照して説明する。
【0032】本発明に係る密閉形コンプレッサは、冷蔵
庫や冷凍ショーケース等の冷凍装置、室内を冷暖房する
空気調和機の冷凍サイクルに組み込まれるもので、レシ
プロタイプ,ロータリタイプ,スクロールタイプ,ヘリ
カルタイプに大別される。ロータリタイプの密閉形コン
プレッサは、冷蔵庫等に用いられる低温用ロータリコン
プレッサと、空気調和機等に用いられる高温用ロータリ
コンプレッサに分けられる。
【0033】このうち、レシプロタイプの密閉形コンプ
レッサ10は、代表的には図1に示すように構成され、
密閉ケース11内に下部の電動機12とこの電動機12
により駆動される上部の圧縮機械13が収容される。電
動機12と圧縮機械13は固定フレーム14に一体的に
組み付けられ、複数の支持スプリング15により浮上状
態に支持される。
【0034】電動機12はステータ16とロータ17と
を有し、ロータ17に回転シャフトを形成するクランク
シャフト18が回転一体に軸装される。クランクシャフ
ト18は固定フレーム14に固定された軸受19に回転
自在に支持される。
【0035】クランクシャフト18のクランク部18a
は軸受の上方に突出して形成され、このクランク部18
aにピストンロッドを形成するコンロッド20の大端部
20aが軸装される。コンロッド20の小端ボール部2
0bはピストン21に球継手を介して連結され、このピ
ストン21がシリンダ22のシリンダ室23内を摺動自
在に支持される。球継手はコンロッド20の小端ボール
部20bとピストン21の球座部21aとにより形成さ
れる。
【0036】シリンダ22の一側は図示しない吐出弁お
よび吸込弁を備えたヘッドプレート24を介してシリン
ダカバー25で覆われており、このシリンダカバー25
内に吸込室および吐出室26が形成される。吐出室26
は図示しない吐出マフラから吐出パイプ27を経て密閉
ケース11外の吐出管(図示せず)に吐出されるように
なっている。
【0037】一方、図示しない吸込管から密閉ケース1
1内に吸い込まれたコンプレッサ用冷媒は、図示しない
吸込チャンバから吸込室に入り、この吸込室からシリン
ダ室23内に入り、このシリンダ室23内でピストン2
1の往復運動により、断熱圧縮作用が行われる。この密
閉形コンプレッサ10は、縦置型で密閉ケース11内を
低圧とするコンプレッサである。密閉形コンプレッサ1
0は密閉ケース11内を高圧とするタイプのものでも、
また、横置型コンプレッサであってもよい。
【0038】密閉ケース11の底部にはコンプレッサ摺
動部を潤滑し、冷却する冷凍機油30が貯溜されてい
る。この冷凍機油30はクランクシャフト18内に形成
されたオイルポンプ31によりコンプレッサ摺動部に案
内され、コンプレッサ摺動部を油潤滑している。
【0039】コンプレッサ摺動部は、摺動材を摺動自在
に支持する支持構造に形成され、一方の摺動部材とこの
摺動部材の相手方を構成する他方の摺動部材とから構成
される。具体的には、コンプレッサ摺動部には、クラン
クシャフト18と軸受19,クランクシャフト18のク
ランク部18aとコンロッド大端部20a,コンロッド
小端ボール部20bとピストン21の球座部21a,ピ
ストン21とシリンダ22とがあり、これらの摺動部材
には、鉄系金属に特定目的を満足させるために、珪素,
マンガン,ニッケル,クロム,銅,アルミニウム,タン
グステン,モリブデン,バナジウム,コバルト,ジルコ
ニウム等を少なくとも一種添加した鉄系合金が主に用い
られ、この鉄系合金として合金鋼,炭素鋼,ステンレス
鋼,焼結合金などがある。コンプレッサ摺動部の軽量化
のためとに少なくとも一方の摺動部材にアルミニウム材
料を用いたものもある。
【0040】また、コンプレッサ用冷媒としてオゾン破
壊係数がゼロで、地球環境に優しいHFC冷媒が用いら
れる。HFC冷媒には、単冷媒として1,1,1,2−
テトラフルオロエタン(以下、R134a冷媒とい
う。)が代表的に存在するが、この他に、HCFCのR
22冷媒より吐出圧力(温度)の高いジフルオロメタン
(R32),ペンタフルオロエタン(R125),1,
1,2,2−テトラフルオロエタン(R134),1,
1,2−トリフルオロエタン(R143),1,1,1
−トリフルオロエタン(R143a),1,1−ジフル
オロエタン(R152a),モノフルオロエタン(R1
61)が挙げられる。
【0041】これらのHFC単冷媒の中では、従来のC
FCのR12冷媒に近い沸点を有し、熱的特性が近似す
るR134,R134a,R143,R143aが代替
冷媒として好ましい。
【0042】HFC冷媒は単冷媒として用いるだけでな
く、HFC単冷媒を2種以上混合させた混合物であって
もよく、HFC混合冷媒として、R125/R143a
/R134aの混合冷媒,R32/R134aの混合冷
媒,R32/R125の混合冷媒,R32/R125/
R134aの混合冷媒,R125/R134aの混合冷
媒が考えられる。
【0043】一方、密閉形コンプレッサ10のコンプレ
ッサ摺動部を潤滑し、冷却する冷凍機油30にはHFC
冷媒と相溶性に優れた4価のエステル油が用いられる。
4価エステル油は4価アルコール(ペンタエリエストー
ル)と脂肪酸とにより合成される合成油である。4価エ
ステル油は3価エステル油に較べ耐摩耗性が良好であ
る。
【0044】4価エステル油は3価エステル油に較べ官
能基としてのカルボニキル基が多いため、コンプレッサ
摺動部を構成する摺動部材との結合力が高く、耐摩耗性
が改善される。冷凍機油30に5価以上のエステル油を
用いると、摺動部材との結合力がより向上するので、製
造コストを無視すれば好ましい。
【0045】次に、レシプロタイプの密閉形コンプレッ
サの作用を説明する。
【0046】密閉形コンプレッサ10の電動機12に通
電すると、電動機12が起動してロータ17が回転せし
められる。このロータ17と一体にクランクシャフト1
8が回転する。電動機12の回転トルクは、クランクシ
ャフト18からそのクランク部18a,コンロッド20
を介してピストン21に伝達され、このピストン21を
シリンダ22内で往復運動させる。
【0047】ピストン21の往復運動に伴ってコンプレ
ッサ用冷媒であるHFC冷媒が吸込室からシリンダ室2
3内に吸い込まれて圧縮される。コンプレッサ用冷媒の
圧縮により高温・高圧化された冷媒は吐出室26に吐出
され、続いて吐出マフラに案内されて消音される一方、
吐出圧力の脈動がならされ、吐出パイプ27を通り吐出
管から冷凍サイクル内に吐出される。
【0048】一方、冷凍サイクルからのコンプレッサ用
冷媒は、密閉ケース11内に吸い込まれ、密閉ケース1
1内に形成される吸込チャンバから吸込室を経てシリン
ダ室23に導かれ、次の冷媒圧縮作用に備えられる。
【0049】図2に示された密閉形コンプレッサは、冷
蔵庫に組み込まれる横置タイプの低温用ロータリコンプ
レッサを示すものである。図1と同じ機能を有する部材
は同一符号を付して説明する。低温用ロータリコンプレ
ッサは冷媒の蒸発温度が5℃未満のコンプレッサをい
う。
【0050】この密閉形コンプレッサ40は、密閉ケー
ス11内に電動機12とこの電動機12にて駆動される
圧縮機械13とが組み込まれ、収容される。電動機12
は密閉ケース11に圧入されるステータ16とこのステ
ータ16内に収容されるロータ17とを有し、ロータ1
7に回転シャフトとしてのクランクシャフト18が回転
一体に軸装される。
【0051】クランクシャフト18は圧縮機械13を構
成するメインベアリング41とサブベアリング42によ
り回転自在に支持される。このメインベアリング41と
サブベアリング42により圧縮機械13はブロック状シ
リンダ43内にシリンダ室44を画成しており、このシ
リンダ室44内にピストンローラ45が転動自在に収容
される。ピストンローラ45はクランクシャフト18の
クランク部18aに軸装され、クランクシャフト18の
回転によりシリンダ室44内を偏心回転せしめられるよ
うになっている。
【0052】シリンダ43内に形成されるシリンダ室4
4はベーンとしてのブレード46により吸込側と吐出側
とに分けられる。ブレード46はシリンダ43に形成さ
れるブレード溝47に摺動自在に収容され、ブレード背
側に形成されたスプリング48により常時ピストンロー
ラ45側にばね付勢され、ローラ外周面を押圧してい
る。
【0053】密閉ケース11の下部にはコンプレッサ摺
動部を潤滑し、冷却する冷凍機油30が貯溜されてお
り、この冷凍機油30はブレード46の背側に形成され
るオイルポンプ50により供給管51を経てコンプレッ
サ摺動部に供給され、コンプレッサ摺動部を潤滑してい
る。コンプレッサ摺動部は、クランクシャフト18とメ
インベアリング41やサブベアリング42,ピストンロ
ーラ45とメインベアリング41やサブベアリング4
2,ブレード(ベーン)46とピストンローラ45,シ
リンダ43のブレード溝47とブレード46等で構成さ
れる。冷凍機油30には脂肪酸(カルボン酸)とアルコ
ールを合成した4価以上のエステル油が用いられる。
【0054】また、密閉ケース11に収容される圧縮機
械13のシリンダ室44には、吸込管53を通ってコン
プレッサ用冷媒が吸い込まれる。このコンプレッサ用冷
媒には、オゾン破壊係数がゼロで地球環境に優しいR1
34a等のHFC冷媒が用いられる。
【0055】シリンダ室44の吸込側から吸い込まれた
コンプレッサ用冷媒はピストンローラ45の回転により
圧縮され、吐出ポート54から吐出室55を経て密閉ケ
ース11内に案内される。その後、吐出管56から冷凍
サイクル内に吐出される。
【0056】なお、図2において、符号57はオイルク
ーラであり、このオイルクーラ57により冷凍機油30
を冷却し、密閉ケース11内を冷却している。
【0057】次に、密閉形コンプレッサ40の作用を説
明する。
【0058】低温ロータリコンプレッサの密閉形コンプ
レッサ40の電動機12に通電すると、電動機12が起
動してロータ17が回転せしめられ、このロータ17と
一体にクランクシャフト18が回転する。このクランク
シャフト18の回転により、そのクランク部18aに装
着されたピストンローラ45が偏心回転せしめられる。
【0059】ピストンローラ45がシリンダ室44内で
偏心回転することにより、シリンダ室44の吸込側から
吸い込まれたコンプレッサ用冷媒は次第に圧縮されて圧
縮冷媒となり、吐出ポート54から吐出室55を経て密
閉ケース11内に放出され、続いてこの密閉ケース11
から吐出管56を経て冷凍サイクルに吐出されるように
なっている。
【0060】一方、冷凍サイクルを循環したコンプレッ
サ用冷媒は吸込管53から圧縮機械13のシリンダ室4
4に吸い込まれ、次の冷媒圧縮作用に備えられる。
【0061】図3に示された密閉形コンプレッサは、空
気調和機の冷凍サイクルに組み込まれる縦置タイプの高
温用ロータリコンプレッサを示すものである。この高温
用ロータリコンプレッサにおいても、図1および図2と
同じ機能を有する部材には同じ符号を付して説明する。
高温用ロータリコンプレッサは冷媒の蒸発温度が5℃以
上のコンプレッサをいう。
【0062】この密閉形コンプレッサ60はツインタイ
プのロータリコンプレッサを示すものである。密閉形コ
ンプレッサ60は密閉ケース11内に電動機12とこの
電動機12により駆動される圧縮機械13とが収容さ
れ、電動機12は上部に、圧縮機械13は下部にそれぞ
れ設置される。
【0063】電動機12は密閉ケース11内の上部に圧
入されるステータ16とこのステータ16に回転自在に
設けられるロータ17とを有し、ロータ17にはクラン
クシャフト18が回転一体に設けられる。
【0064】クランクシャフト18はロータ17より下
方に突出して延び、圧縮機械13のメインベアリング4
1とサブベアリング42により回転自在に支持される。
【0065】圧縮機械13は2個のシリンダ(シリンダ
ブロック)43,43を有し、各シリンダ43,43の
シリンダ室44,44内にピストンローラ45,45が
収容される。ピストンローラ45はクランクシャフト1
8のクランク部18a,18bに軸装され、このクラン
クシャフト18の回転によりピストンローラ45,45
が偏心回転せしめられるようになっている。
【0066】圧縮機械13の各シリンダ43,43間は
仕切プレート61で仕切られている。この圧縮機械13
はメインベアリング41側のシリンダ43を断面コの字
状固定フレーム62にボルト固定し、このフレーム62
を密閉ケース11内周部に溶接にて固定している。各シ
リンダ43,43のシリンダ室はブレード46により吸
込側と吐出側とに分けられる。ブレード46は各シリン
ダ43,43に形成されたブレード溝47に摺動自在に
収容され、スプリング48により常時ピストンローラ4
5側にばね付勢される。
【0067】密閉ケース11内に収容されたロータリ式
圧縮機械13の各シリンダ43,43に対向して吸込用
貫通孔64,64が形成され、この吸込用貫通孔64,
64を介してアキュムレータ65からの吸込管66が、
各シリンダ43の吸込孔にそれぞれ連通される。
【0068】吸込管66を通って吸い込まれたHFC冷
媒のコンプレッサ用冷媒は、圧縮機械13の各シリンダ
室44,44の吸込側に吸い込まれ、ここで圧縮作用が
行われる。シリンダ室44で圧縮された冷媒は各吐出室
55から第2吐出室56を経て密閉ケース11に放出さ
れ、その後、吐出管56を経て密閉ケース11外の冷凍
サイクルに吐出されるようになっている。
【0069】この密閉形コンプレッサ60では、密閉ケ
ース11の底部にコンプレッサ摺動部を潤滑する冷凍機
油30が貯溜される。この冷凍機油は脂肪酸とアルコー
ルを合成して得られる4価以上のエステル油である。密
閉ケース11の底部に貯溜された冷凍機油30はクラン
クシャフト18内の下部に形成されるオイルポンプ(図
示せず)によりコンプレッサ摺動部に送られてこのコン
プレッサ摺動部を油潤滑し、冷却している。
【0070】この密閉形コンプレッサ60のコンプレッ
サ摺動部は、クランクシャフト18とメインベアリング
41やサブベアリング42,ピストンローラ45と各ベ
アリング41,42や仕切プレート61,ブレード46
とピストンローラ45,ブレード46とシリンダ43の
ブレード溝47などで構成される。
【0071】この密閉形コンプレッサにおいても、図2
に示す低温用密閉形ロータリコンプレッサと同様なコン
プレッサ冷媒の圧縮作用が行なわれる。
【0072】図4および図5は密閉形コンプレッサをス
クロールタイプのコンプレッサに適用した例を示す。
【0073】スクロールタイプの密閉形コンプレッサ7
0は大型の空気調和機等の冷凍サイクルに組み込まれる
ものであり、密閉ケース11内に電動機12とこの電動
機12により駆動されるスクロールタイプの圧縮機械1
3とを収容している。電動機12は密閉ケース11内下
部に、圧縮機械13は密閉ケース11内上部にそれぞれ
配置される。
【0074】電動機12は密閉ケース11内に固定され
たステータ16とこのステータ16に収容されるロータ
17とを有し、ロータ17には回転シャフトとしてのク
ランクシャフト18が回転一体に軸装される。クランク
シャフト18は固定フレーム62の軸受部62aに回転
自在に支持される一方、クランクシャフト18は固定フ
レーム62より上方に突出し、突出部にクランク部18
aが形成される。
【0075】一方、圧縮機械13は密閉ケース11に固
定される固定スクロール71とこの固定スクロール71
に対して旋回運動する旋回スクロール72とを有し、両
スクロール71,72が組み合されて圧縮室73が形成
される。旋回スクロール72はクランクシャフト18の
クランク部18aに回転自在に軸装される一方、クラン
クシャフト18の回転に伴う旋回スクロール72の旋回
運動に伴って旋回スクロール72が自転することがない
ように旋回スクロール72と固定フレーム62の間にオ
ルダム継手としてのオルダムリング75が介装される。
固定フレーム62は旋回スクロール72のスラスト荷重
をオルダムリング75を介して受けるようになってい
る。
【0076】密閉ケース11の途中には吸込管53が設
けられ、この吸込管53からコンプレッサ用冷媒として
のHFC冷媒を吸い込むようになっている。密閉ケース
11内に吸い込まれたコンプレッサ用冷媒は、吸込通路
76を介して圧縮機械13の圧縮室73に案内される。
【0077】圧縮室73に導かれたコンプレッサ用冷媒
は電動機12の作動により駆動されて冷媒圧縮作用が行
なわれ、圧縮されたコンプレッサ用冷媒は固定スクロー
ル71の中心部側に案内され、この中心部に形成された
吐出口77から吐出室78に送られ、その後、吐出管5
6を経て密閉ケース11外に吐出される。吐出室78は
密閉ケース11と隔壁79とにより画成される。
【0078】一方、密閉ケース11の底部にはコンプレ
ッサ摺動部を潤滑する冷凍機油が貯溜されており、この
冷凍機油30はクランクシャフト18の下部に設けられ
たオイルポンプ(図示せず)によりコンプレッサ摺動部
に案内される。冷凍機油30にはコンプレッサ冷媒であ
るHFC冷媒と相溶性に優れた4価以上のエステル油が
用いられる。
【0079】クランクシャフト18にはオイルポンプか
ら組み上げられた冷凍機油30を、コンプレッサ摺動部
であるクランクシャフト18と固定フレーム62の軸受
部およびクランクシャフト18のクランク部18aと旋
回スクロール72との軸装部に案内する給油孔74が穿
設されている。
【0080】クランクシャフト18の各摺動部に対応す
る位置には、供給された冷凍機油を固定フレーム62の
上面と旋回スクロール72の下面で形成される環状空間
80に導く給油溝が設けられている。
【0081】また、固定フレーム62には、この環状空
間80に開口してこの空間80に導かれた冷凍機油の一
部を固定フレーム62のスラスト受面Aに供給する給油
孔81が設けられている。固定フレーム62のスラスト
受面Aには環状油溝82が形成され、スラスト受面Aに
供給された冷凍機油を流動させるようになっている。
【0082】また、旋回スクロール72の下面には、図
に83,84で示す第1,第2の2つの円形の凹陥部が
設けられている。この第1,第2の凹陥部83,84に
は、この旋回スクロール72の上面に貫通する貫通孔8
5が形成され、各貫通孔85は、この円形の第1,第2
の凹陥部83,84の偏心した位置に設けられている。
このうち、一方の貫通孔85は、上記旋回スクロール7
2の翼72aのラップ巻き終り端に位置している。
【0083】旋回スクロール72は、固定フレーム62
に対して偏心して旋回するので、この旋回スクロール7
2の旋回動作に伴って、2つの凹陥部83,84は、交
互に環状油溝82と連通するようになっている。なお、
図4および図5は、第1の凹陥部83が上記環状油溝8
2と連通した状態を示すものである。
【0084】次にスクロールタイプの密閉形コンプレッ
サの作用を説明する。
【0085】この密閉形コンプレッサ70は電動機12
への通電により電動機12が起動されてロータ17が回
転せしめられ、クランクシャフト18がロータ17と一
体に回転せしめられる。クランクシャフト18の回転に
より旋回スクロール72が自転することなく偏心回転
し、固定スクロール71に対して旋回(スクロール)運
動する。
【0086】この旋回運動により、吸込管53から密閉
ケース11内の吸込通路76を介して圧縮機械13の圧
縮室73に案内されたコンプレッサ用冷媒は圧縮作用を
受ける。このとき、固定スクロール71と旋回スクロー
ル72によって形成された圧縮室73は旋回しながら固
定スクロール71の径方向中心側にシフトし、このシフ
トする際に容積を縮小しながら移動して冷媒の圧縮作用
を行ない、固定スクロール71の中心部に形成された吐
出口77から吐出室78を経て吐出管56に吐出され
る。
【0087】一方、密閉形コンプレッサ70の運転によ
り、密閉ケース11の底部に貯溜された冷凍機油30は
電動機12の駆動に運動するオイルポンプの作動でクラ
ンクシャフト18に汲み上げられ、給油孔74を通して
クランクシャフト18の摺動部B,Cに供給される。
【0088】クランクシャフト18の各摺動部B,Cを
潤滑した冷凍機油30は給油溝を通って環状空間80に
導かれ、続いて給油孔81を通って上記スラスト受面A
の環状油溝82に供給される。この環状油溝82に供給
された冷凍機油の一部は、このスラスト受面Aを潤滑す
るのに使用され、他の潤滑油は、第1,第2の凹陥部8
3,84および貫通孔85を通って旋回スクロール72
の上面の外周部に供給される。
【0089】この潤滑油は、圧縮機械13の圧縮室73
内に吸引されたコンプレッサ用冷媒と共に、この固定ス
クロール71および旋回スクロール72の中心部に導か
れ、この固定スクロール71と旋回スクロール72の摺
動部の潤滑に使用される。
【0090】この密閉形コンプレッサ70では、環状溝
である圧縮室用給油孔82を設けることにより圧縮室7
3内に冷凍機油を積極的に供給して潤滑作用を良好に行
なうことができる。特に冷凍機油は旋回スクロール72
の回転数に応じた量が供給されるので、固定スクロール
71と旋回スクロール72の摺動部をより適正に潤滑で
きる。
【0091】図6および図7は密閉形コンプレッサをヘ
リカルタイプのコンプレッサに適用した例を示す。
【0092】このヘリカルタイプの密閉形コンプレッサ
90は、密閉ケース11内に収容される電動機12と圧
縮機械13とで構成され、電動機12と圧縮機械13は
一体的に組み立てられる。
【0093】電動機12は密閉ケース11内に固定され
るステータ16とこのステータ16に収容されるロータ
17とを有する。
【0094】電動機12のロータ17には圧縮機械13
のシリンダ91がシリンダカバー92を介して回転一体
に軸装される。シリンダ91は両端が開口しており、シ
リンダ軸受93,94を介して主軸受95および副軸受
96に支持される。
【0095】シリンダ91内にはピストン97が偏心配
置されて収容され、シリンダ91の回転がオルダム継手
98を介してピストン97に伝達されるようになってい
る。ピストン97の外周壁の一部は軸方向に沿ってシリ
ンダ91の内周壁に転接される。ピストン97の外周面
には、一端側から他端側に向って徐々にピッチを小とす
る螺旋状のブレード溝が形成され、このブレード溝に螺
旋状のヘリカルブレード99が出し入れ自在に嵌め込ま
れる。
【0096】ピストン97は軸方向一端部に主軸部97
aが、他端部に副軸部97bがそれぞれ一体に設けら
れ、両軸部が主軸受95および副軸受96の偏心位置に
形成された支持孔に挿入されて回転自在に支持される。
主軸受95および副軸受96は密閉ケース11に固定さ
れるフランジ部95a,96aとこのフランジ部から一
体に突出する軸受ボス部95b,96bとを有し、この
軸受ボス部95b,96bにスリーブ状メタルのシリン
ダ軸受93,94が回転自在に支持される。
【0097】しかして、圧縮機械13を構成するシリン
ダ91とピストン97との間の空間はヘリカルブレード
99により軸方向に複数仕切られ、シリンダ91内にヘ
リカルブレード99の一端側から他端側、すなわち、コ
ンプレッサ用冷媒の吸込側から吐出側に向ってその容積
を漸次小さくなる複数の圧縮室100が形成される。
【0098】シリンダ91とピストン97との回転に伴
ってヘリカルブレード99に軸方向のスライドが生じな
いように、シリンダ91の一側にブレードストッパ10
1が突出して設けられる。ブレードストッパ101はオ
ルダム機構98の近傍位置に設けられ、ピストン97の
端部に設けられる凹陥部102に対向している。
【0099】オルダム機構98は図7に示すようにシリ
ンダ91に回転一体に軸装されるシリンダ軸受94に回
転一体で径方向にスライド可能なオルダムリング104
を有し、このオルダムリング104にピストン97のオ
ルダム部97cを回転一体に連結して構成され、シリン
ダ91の回転力をピストン97に伝達するようになって
いる。
【0100】また、密閉ケース11の一側には吸込管が
設けられ、この吸込管53から吸い込まれたコンプレッ
サ用冷媒としてのHFC冷媒は、主軸受95の支持孔お
よびピストン97の吸込通路105を通って圧縮機械1
3の圧縮室100に案内される。圧縮室100に案内さ
れたコンプレッサ用冷媒は電動機12の駆動により圧縮
機械13が駆動し、シリンダ91がピストン97ととも
に回転することにより圧縮作用が行なわれる。
【0101】シリンダ91とピストン97とヘリカルブ
レード99とにより形成される圧縮機械13で圧縮室1
00が軸方向に偏位することによりコンプレッサ用冷媒
が圧縮され、圧縮されたコンプレッサ用冷媒はブレード
ストッパ101に形成される冷媒導出孔106を経て密
閉ケース11内に放出され、続いて吐出管56から密閉
ケース11外に吐出される。
【0102】この密閉形コンプレッサ90においても、
コンプレッサ摺動部は図示しないオイルポンプにより、
コンプレッサ摺動部に案内され、コンプレッサ摺動部を
冷凍機油30で潤滑している。冷凍機油30は密閉ケー
ス11の下部に貯溜される。冷凍機油30にはコンプレ
ッサ用冷媒と相溶性に優れた4価以上のエステル油が用
いられる。
【0103】コンプレッサ摺動部にはピストン97のブ
レード溝とヘリカルブレード99,オルダム継手98の
オルダムリング104,シリンダ軸受93,94と主軸
受95や副軸受96,ピストン97の軸部と主軸受95
や副軸受96等がある。
【0104】次に、密閉形コンプレッサの具体的実施例
を説明する。
【0105】図8に示す実施例1は密閉形コンプレッサ
としてレシプロタイプの密閉形コンプレッサ10とスク
ロールタイプの密閉形コンプレッサ70を用意し、コン
プレッサ用冷媒であるHFC冷媒の種類と冷凍機油を種
々変えて、16Hz〜90Hzの暖房運転を連続100
0時間行なった後のコンプレッサ摺動部の摩耗評価とコ
ンタミ評価の実機試験を行なったものである。コンタミ
評価とは、冷凍サイクル中のキャピラリチューブや膨脹
弁等の減圧機構へのスラッジ付着量を評価するものであ
る。
【0106】レシプロタイプの密閉形コンプレッサ10
では、コンプレッサ摺動部の例としてコンロッド20と
クランクシャフト18の摺動部の摩耗評価とコンタミ評
価を行なった。コンプレッサ摺動部の一方の摺動部材に
コンロッド20を、相手材である他方の摺動部材をクラ
ンクシャフト18に設定した。コンロッド20はアルミ
ニウム材料を母材(主体)とし、表面を陽極酸化により
アルマイト処理したものを使用し、クランクシャフト1
8にJIS規格においてS45Cの炭素鋼を用いた。
【0107】スクロールタイプの密閉形コンプレッサ7
0では、コンプレッサ摺動部として翼である旋回スクロ
ール72とオルダムリング104の摺動部の摩耗評価と
コンタミ評価を行なった。一方の摺動部材を翼である旋
回スクロール72とし、相手材である他方の摺動部材を
オルダムリング104とした。旋回スクロール72はレ
シプロタイプのコンロッドと同様にアルミニウム材料を
母材とし、表面をアルマイト処理したものを、オルダム
リング104はJIS規格のS45Cの炭素鋼を用い
た。
【0108】実機試験による摩耗評価において、☆印は
摩耗量1μm以下で摩耗無,◎印は摩耗量5μm以下で
摩耗無,○印は10μm以下の正常摩耗,△印は摩耗量
20μm以下で摩耗大・傷有,×印は摩耗量20μm以
上で傷・凝着大の5段階評価を行なった。ここに凝着と
は、摺動部材同士が固着した状態をいう。○印以上が実
用運転可能で好ましい摺動材料であることを示してい
る。
【0109】また、スラッジ(コンタミ)評価は、冷凍
サイクル中のスラッジ付着量が微小で実用上問題のない
◎印と、スラッジ付着量が小であり、実用上良好で問題
の無い○印と、スラッジ付着量が中であり、実用上正常
で問題のない△印と、スラッジ付着量大で問題がある×
印の4段階評価を行なった。
【0110】実施例1によると、コンプレッサ用冷媒に
R134aのHFC単冷媒と、R32(25wt%)/
R125(25wt%)/R134a(50wt%)の
HFC混合冷媒を使用し、冷凍機油として3価のエステ
ル油と4価のエステル油を用いて評価試験を行なった。
【0111】評価試験結果では、4価のエステル油を使
用したものは、摩耗量が正常摩耗で、スラッジ付着量も
少なく、良好であることがわかった。これに対し、3価
のエステル油を冷凍機油として用いたものでは、摩耗評
価でいずれも摩耗量が大きく問題があることがわかっ
た。
【0112】また、比較例1〜3で示すように、密閉形
コンプレッサのコンプレッサ摺動部の一方の摺動部材に
アルミニウム材料を用い、他方の摺動部材にアルミニウ
ム材料あるいはJIS規格のS45Cの炭素鋼を用いた
ものでは、コンプレッサ用冷媒にHFC冷媒(R134
a冷媒あるいはR32/R125/R134a混合冷
媒)、冷凍機油に3価あるいは4価のエステル油を用い
ても、いずれも摩耗が大であり、摩耗評価の点で不適で
あることがわかった。
【0113】実施例1から、HFC冷媒を使用したレシ
プロタイプあるいはスクロールタイプの密閉形コンプレ
ッサ10,70のコンプレッサ摺動部に、摺動材である
一方の摺動部材にアルミニウム材料を用いてもアルマイ
ト処理し、他方の摺動部材を炭素鋼とし、4価のエステ
ル油を冷凍機油として使用すれば、潤滑性が向上し、耐
摩耗性が良好となることがわかった。
【0114】4価のエステル油は、脂肪酸と4価アルコ
ール(ペンタエリエストール)により合成された合成油
であるが、脂肪酸のOH基の数によりきまるエステル油
中のエステル結合の数により潤滑性が異なり、4価のエ
ステル油は、3価以下のエステル油に較べ、官能基とし
てエステル結合が多いため、コンプレッサ摺動部におい
て摺動部材との結合力が高く、耐摩耗性が改善される。
5価以上のエステル油を用いると製造コストが従来の鉱
油の10倍〜20倍程度と高いが、このコストの点を除
けば、さらに結合力の向上が期待できる。
【0115】また、コンプレッサ摺動部の摺動材である
一方の摺動部材をアルミニウム材で形成した場合には、
摺動部材の軽量化が図れ、慣性力が低下するので、摺動
面の面圧低下が図れ、エネルギロスを低減させることが
できる。
【0116】また、コンプレッサ摺動部の一方の摺動部
材をアルマイト処理で表面処理することにより、アルマ
イトに生じる小孔にエステル油を蓄えることができ、ア
ルミニウム材に対するエステル油の吸着性,摺動性,保
油性を向上させ、摺動状態を良好にすることができ、摺
動面の油切れ,焼付・異常摩耗を防止し、HFC冷媒の
使用下で長時間安定した運転を保証できる。
【0117】図9に示す実施例2〜実施例5に示す密閉
形コンプレッサも、実施例1と同じ運転条件でレシプロ
タイプの密閉形コンプレッサ10とスクロールタイプの
密閉形コンプレッサ70とをそれぞれ1000時間の連
続実機試験を行ない、摩耗評価とスラッジ評価を行なっ
たものである。
【0118】コンプレッサ用冷媒としてHFC冷媒(R
134単冷媒あるいはR32/R125/R134a混
合冷媒)の使用下で、コンプレッサ摺動部の一方の摺動
部材(レシプロタイプのコンロッド,スクロールタイプ
の翼(旋回スクロール))にはアルミニウム材料を母材
とし、表面をアルマイト処理した後、さらに二硫化モリ
ブデン(MoS2)で表面処理したものを用いると、相
手材の他方の摺動部材(クランクシャフト,オルダムリ
ング)に、アルミニウム材料(実施例2),JIS規格
S45Cの炭素鋼(実施例3)、炭素鋼に窒化処理で表
面処理したもの(実施例4)をそれぞれ用いても、4価
のエステル油を冷凍機油としてと使用すれば、摩耗評価
やコンタミ評価が良好で好ましいことがわかった。な
お、摩耗量については、実施例12から実施例14の順
に少なくなることがわかった。一方、3価のエステル油
を使用した場合には、いずれも摩耗評価の点で劣り、好
ましくないことがわかった。
【0119】また、実施例5に記載のように、コンプレ
ッサ摺動部の一方の摺動部材(コンロッド;翼)の表面
をアルマイト処理し、さらにPTFE(ポリテトラフロ
ロエチレン)で表面処理した場合には、相手材である他
方の摺動部材(クランクシャフト,オルダムリング)に
JIS規格FC2000の鋳鉄を用いても、4価のエス
テル油を冷凍機油として使用すれば、摩耗評価やコンタ
ミ評価が共に良好であることがわかる。3価のエステル
油では摩耗評価の点で劣り、好ましくない。
【0120】実施例2〜実施例5に記載のHFC冷媒使
用の密閉形コンプレッサにおいては、コンプレッサ摺動
部の一方の摺動部材としてアルミニウム材料を母材と
し、表面をアルマイト処理した後から、二硫化モリブデ
ンやPTFEで表面処理を行なうと、4価のエステル油
を冷凍機油として使用した場合、一方の摺動表面に潤滑
被膜を形成して自己潤滑性を高めることができ、良好な
摺動状態を維持でき、摺動表面の油切れ、焼付・異常摩
耗を有効的に防止できる。
【0121】そして、コンプレッサ摺動部の相手材であ
る他方の摺動部材にはアルミニウム材料,炭素鋼,鋳
鉄,炭素鋼に窒化処理を施したものを用いることがで
き、炭素鋼に窒化処理を施すことにより、表面硬度を向
上させることができ、摩耗量の軽減を図ることができ
る。
【0122】図10に示す実施例6および実施例7の密
閉形コンプレッサは、吐出圧力が2.5MPa,吸込圧
力が0.5MPaの圧力条件でロータリコンプレッサの
運転周波数が90Hzで連続1000時間運転してコン
プレッサ摺動部の摩耗評価を実機試験にて行なったもの
である。摩耗量はクランクシャフト18とベアリングの
摩耗量の和をとったものである。このロータリコンプレ
ッサではコンプレッサ用冷媒としてR134aのHFC
冷媒を、冷凍機油に添加剤入りの4価のヒンダードエス
テル油を使用した。
【0123】実施例6および実施例7の密閉形コンプレ
ッサでは、コンプレッサ摺動部を構成する一方の摺動部
材をクランクシャフト18とし、他方の摺動部材をベア
リング41,42とした。一方の摺動部材には実施例6
ではフェライト率40%以下の球状黒鉛鋳鉄かなる鋳物
材を、実施例7では、フェライト率15%以下の片状黒
鉛鋳鉄からなる鋳物材を、軸材料にそれぞれ使用し、相
手材である他方の摺動部材のベアリングには、JIS規
格FC250相当の片状黒鉛鋳鉄を軸受材料に用いた。
【0124】フェライト率を複数種変えて行なった評価
試験の結果、コンプレッサ摺動部の一方の摺動部材のフ
ェライト量と摩耗量の関係は、一方の摺動部材には球状
黒鉛鋳鉄を用いたものが図10の実線aで示すように表
され、片状黒鉛鋳鉄を用いたものが実線bで示すように
表わされる。球状黒鉛鋳鉄を用いるとフェライト量が4
0%以上で摩耗量が増大することがわかり、また、片状
黒鉛鋳鉄ではフェライト量が15%以上で急速に摩耗量
が増大することがわかる。したがって、コンプレッサ摺
動部を構成する一方の摺動部材にフェライト率40%以
下の球状黒鉛鋳鉄あるいはフェライト率15%以下の片
状黒鉛鋳鉄を用いることにより、軸摩耗を効果的に防止
できる。相手材の他方の摺動部材には、自己潤滑特性を
有する片状黒鉛鋳鉄だけでなく、自己潤滑特性とともに
剛性の大きな球状黒鉛鋳鉄を用いてもよい。
【0125】また、一方の摺動部材である軸材料に球状
黒鉛鋳鉄を用いることにより、軸材料の剛性を高めるこ
とができ、高速回転可能なインバータ機種に適したもの
となる。インバータ機種では、電動機がインバータ制御
されるため、軸材料の摺動部材に生じるアンバランスマ
スが高速回転下で大きなアンバランス力となるため、剛
性の大きな軸材料が必要となる。
【0126】したがって、一方の摺動部材に球状黒鉛鋳
鉄を用い、他方の摺動部材に片状あるいは球状黒鉛鋳鉄
を用いたものは、密閉形コンプレッサのコンプレッサ摺
動部に適した材料となり、レシプロタイプのクランクシ
ャフトと軸受のコンプレッサ摺動部,ロータリコンプレ
ッサのクランクシャフトとメインベアリング,サブベア
リングのコンプレッサ摺動部,スクロールコンプレッサ
のクランクシャフトと軸受部のコンプレッサ摺動部,ヘ
リカルコンプレッサのピストンと主軸受,副軸受のコン
プレッサ摺動部に適用できる。
【0127】軸材料に片状黒鉛鋳鉄を用いた場合には、
50〜60Hzで運転される商用機種に適したものとな
り、片状黒鉛鋳鉄に含まれる黒鉛による自己潤滑特性に
より、軸摩耗が防止される。
【0128】さらに、冷凍機油に添加剤入りの4価のヒ
ンダードエステル油を用いることにより、熱安定性を向
上させ、耐熱性を向上させることができる。
【0129】ヒンダートタイプアルコールを使って生成
したヒンダートエステル油は、エステル結合のアルコー
ル側のβ炭素に水素結合がないため、六員環構造をとる
ことができず、低エネモルギ熱分解反応によるカルボン
酸の生成が阻止され、熱安定性が向上する。
【0130】これに対し、非ヒンダードタイプアルコー
ルでは、図11に示すように、β炭素に結合した水素原
子が、エステル結合中の酸素と結合し、六員環構造の中
間体を介して低エネルギでカルボン酸を生成し易く、熱
安定性に欠ける。
【0131】4価のエステル油は、図8および図9に示
すように、3価のエステル油に較べ、摩耗量やコンタミ
量が減少する傾向にあるが、4価のエステル油をヒンダ
ードエステル油とすることにより、熱安定性や耐熱性が
より一層向上する。4価のヒンダードエステル油には、
安定剤や酸化防止剤,銅不活性剤等の添加剤を選択的に
入れ、極圧添加剤は注入しない。
【0132】安定剤添加は、混入水分による加水分解か
ら生成した酸(エステル油の加水分解により生じた酸)
や混入水分そのものを捕捉することを目的とする。酸化
防止剤の添加は、密閉形コンプレッサ保管時の酸化劣化
の防止を目的とする。エステル油は鉱油に較べ酸化安定
性は優れているが、吸湿性が高いため、この吸湿性に起
因した酸化防止を図るためである。また、銅不活性剤添
加は、冷凍サイクルの銅管内の活性化エネルギの高い部
分に保護膜を形成し、銅を主体とする冷凍サイクル内付
着物の生成を抑制することを目的とする。
【0133】さらに、極圧添加剤を不採用の理由は、既
存のリン酸エステル系の極圧添加剤は、HFC冷媒下で
は塩素原子が存在しないため潤滑被膜が生成されず、エ
ステル油自身の摺動面吸着に妨害されて効果が少ない。
特に、ロータリコンプレッサのベーンとピストンローラ
間では金属接触による摩耗が生じ易い。効果を上げよう
とすると極圧添加剤濃度を上げる必要があり、新たに腐
食(摩耗)の問題が発生するおそれがあるためである。
【0134】安定剤にはエポキシ化合物があり、4価の
ヒンダードエステル油では0.2〜0.8wt%の安定
剤が添加される。安定剤の増加はエステル油の体積抵抗
率を低下させることから、製品としての電気絶縁抵抗率
を満足できる範囲の添加量(例えば0.5wt%)が選
択される。
【0135】また安定剤により捕捉されるのは、酸が優
先するが、酸の発生がない場合には、所要量、例えば5
00ppmまで油中水分の捕捉が可能となる。
【0136】酸化防止剤にはDBPC(ジブチル・パラ
クレゾール)があり、0.1〜0.5wt%添加され
る。DBPCを0.1wt%の添加で常温保管1年の酸
化防止剤残存率は100%に保つことができる。
【0137】銅不活性剤にはBTA(ベンゾ・トリアゾ
ール)があり、5〜20ppm添加される。銅不活性剤
の添加量は冷凍サイクル内の総銅表面積を計算すること
により定められる。
【0138】図12は、密閉形コンプレッサのコンプレ
ッサ摺動部に用いられる摺動部材の材料特性値を別の観
点から評価したものである。図12に示す密閉形コンプ
レッサでは、摺動部材の材料の特性値を実機試験ではな
く図13で示す摩擦摩耗試験機のテーブルテストの評価
試験により評価したものである。
【0139】この評価試験は、HFC冷媒の雰囲気中に
おいて一方の摺動部材であるピンPを、他方の摺動部材
であるディスクDに所要の荷重で押し付けて、ピンPと
ディスクDの摺動部分に3価エステル油や4価エステル
油を噴射してピンPとディスクDの摩耗量を測定したも
のである。
【0140】一方の摺動部材であるピンPには、変形例
1では、JIS規格のSMF4のCuが1.0wt%,
Cが0.8wt%,残部がFeの焼結材料に、水蒸気処
理で表面を酸化した密度比88%の材料を用い、他方の
摺動部材であるディスクには、Mo−Ni−Cr含有鋳
鉄を使用した。ここに、密度比とは、材料の全体の体積
に対する空孔を除いた体積の比をいう。
【0141】変形例1のように摺動部材の密度比が95
%未満のピン材料では、保水量が大きく、水分排除を効
果的に行なうことができない。冷凍機油にエステル油を
用いると、水分の存在下で可逆反応(加水分解)が生
じ、生じた脂肪酸によりエステル油そのものが劣化さ
れ、潤滑性が低下したり、密閉形コンプレッサ内の有機
材料の劣化を促進させるおそれがあり、好ましくない。
ちなみに、密度比95%以上の材料は密度比70%の材
料の保水量の1/3以下となり、水分排除を有効的に行
なうことができる。
【0142】変形例2および3は、一方の摺動部材であ
るピンPに、密度比95%以上の焼結材料を使用し、他
方の摺動部材であるディスクDには、Mo−Ni−Cr
含有鋳鉄を用いたものである。変形例2のピンPは、S
MF4のCuが2wt%,Cが0.8wt%,残部がF
eの焼結材料にCu−Snで表面を溶浸させ、密度比9
9%としたものであり、変形例3のピンPは、SMF4
のCuが2wt%,Cが0.8wt%,残部がFeの焼
結材料にCuで表面を溶浸させたものである。変形例2
と3の摺動部材では、摩耗量が極めて少なく、好ましい
摺動材料であることがわかる。
【0143】摺動部材には密度比95%以上の焼結材料
を用いると水分排除を効果的に行なうことができ、エス
テル油等の劣化を有効的に防止できる。また、空孔を各
々独立させることにより、空孔内への水分の侵入を効果
的に防止でき、水分排除機能を向上させることができ
る。
【0144】また、コンプレッサ摺動部を構成する一方
の摺動部材を鉄合金材料で形成し、Cu−SnやCuで
表面を溶浸させる表面処理とした場合には、加工時の冷
却水が空孔内に保持されるのを防止でき、エステル油を
加水分解して劣化させるのを効果的に防ぐことができ
る。
【0145】さらに、コンプレッサ摺動部を構成する摺
動部材に密度比95%未満の材料を用いた場合には、空
孔を封止する必要があるが、その際、空孔の封止をPT
FE,MoS,銅,錫,または青銅等の自己潤滑剤で
行なうことにより、水分の排除と潤滑性の向上を図るこ
とができ、エステル油の劣化を効果的に防止できる。
【0146】図14は密閉形コンプレッサをロータリコ
ンプレッサに適用した例を示す。図14に示される実施
例8および9,比較例1および2に表示された摩耗評価
やコンタミ評価は図8に示すものと同じ条件でしたもの
である。
【0147】実施例8および9の密閉形コンプレッサ
は、図2に示す低温用ロータリコンプレッサ40や図3
に示す高温用ロータリコンプレッサ60に適用した例を
示すもので、コンプレッサ温度120℃,吐出圧力が
2.5MPa,吸込圧力が0.05MPaの圧力条件で
連続1500時間コンプレッサ運転した後の摩耗評価と
コンタミ評価を表わしたものである。
【0148】密閉形コンプレッサのコンプレッサ用冷媒
には、R134a冷媒あるいはR32/R134a混合
冷媒のHFC冷媒を使用した。
【0149】実施例8では、密閉形コンプレッサのコン
プレッサ摺動部を構成する一方の摺動部材にベーン(ブ
レード)を用い、他方の摺動部材であるピストンローラ
にMo−Ni−Cr含有鋳鉄を用いたものである。一方
の摺動部材であるベーンは、高速工具鋼であるSKH5
1等のSKH材の表面、少なくともブレード先端側表面
を窒化処理し、表面硬度をビッカース硬度(Hv)10
00以上としたものである。
【0150】実施例9は、一方の摺動部材であるベーン
にSUS440Cのようなステンレス鋼(SUS材)を
用いて、ベーンの少なくとも先端を窒化処理し、Hv1
000以上の表面硬度としたものである。
【0151】実施例8および9で示すHFC冷媒使用の
密閉形コンプレッサにおいては、コンプレッサ摺動部の
一方の摺動部材であるベーンの少なくとも先端部をSK
H材あるいはSUS材で構成し、表面を窒化処理してH
v1000以上の表面硬度とすることにより、4価のエ
ステル油を冷凍機油として用いると、摩耗量が極めて少
なく、良好な摺動態様が得られる。
【0152】3価のエステル油を用いた場合には、摩耗
量が大きく、好ましくない。
【0153】また、比較例1および2に示すように、密
閉形コンプレッサのコンプレッサ摺動部の一方の摺動部
材(ベーン)をCr含有のSKH材やSUS材を用いて
も、ベーンの表面硬さがHv1000未満であると、冷
媒にHCFCのR22を用い、冷凍機油に鉱油を用いる
従来の組合せでは正常摩耗であるが、冷媒にHFC冷媒
を、冷凍機油に4価のエステル油を使用した場合、摩耗
量が多く、好ましくない。
【0154】すなわち、実施例8および9に示すよう
に、コンプレッサ摺動部を構成する一方の摺動部材(ベ
ーン)の表面を窒化処理してHv1000以上の表面硬
度を有するようにすることにより、ベーンの切削摩耗を
極力低くすることができる。一方の摺動部材を比較例1
および2で示すように、SKH51やSUJ2のように
Hv600〜800の材料では、切削摩耗が進行し、好
ましくない。
【0155】また、ベーンをSKH材やSUS材で構成
し、表面を窒化処理して化合物層(表面層)を4μm以
上とすることにより、窒化処理しないSKH材の15μ
m摩耗量(比較例1参照)に較べ窒化処理したものは4
μm程度と非常に少なく、コンプレッサ性能も良好であ
る。
【0156】ベーン表面を窒化処理し、表面硬度をHv
1000以上としたベーン(ブレード)では、単体耐久
試験によるブレード先端の摩耗量が4μm前後であるの
で、ベーン表面に形成される化合物層を4μm以上とす
ることにより、ブレード先端摩耗によるベーン材料に悪
影響を及ぼさない。
【0157】さらに、HFC冷媒使用の密閉形コンプレ
ッサにおいて、図15に実施例10〜13で示すよう
に、コンプレッサ摺動部を構成する一方の摺動部材であ
るベーン(ブレード)に周期律表4族の窒化物(Ti
N),4族の炭化物(TiC),4族の酸化物(Ti
O),またはこれらの混合物(例えばTiCとTiNの
混合物)を使用し、相手材である他方の摺動部材(ロー
ラ)にMo−Ni−Cr含有鋳鉄を用い、HFC冷媒と
4価のエステル油を使用したとき、摩耗量やコンタミ量
が少なく、良好な摩耗形態を得ることができる。
【0158】コンプレッサ摺動部の相手材である他方の
摺動部材(ローラ)にMo−Ni−Cr含有鋳鉄を用い
ると、この鋳鉄に含まれる黒鉛の自己潤滑性により良好
な潤滑性能が得られる。
【0159】図16には密閉形コンプレッサをロータリ
コンプレッサに適用した実施例14で示すもので、この
実施例14で示すように、密閉形コンプレッサのコンプ
レッサ摺動部を構成する一方の摺動部材(ベーン)に周
期律表4族の酸化物と3族の酸化物との混合材料、例え
ばジルコニアとアルミナの混合物あるいはこの混合物と
イットリアとの混合物(混合セラミックス)を用いるこ
とにより、HFC冷媒中で4価のエステル油を用いる
と、ブレード先端摩耗量は1μm未満とほとんど摩耗せ
ず、極めて良好な摺動状態を長期間にわたり期待でき
る。
【0160】特に、ロータリコンプレッサで、一方の摺
動部材であるベーン(ブレード)にアルミナとジルコニ
アを主体とする混合セラミックスを用い、相手材である
他方の摺動部材(ローラ)にMo−Ni−Cr含有鋳鉄
を使用したものは、冷凍機油に4価のエステル油を使用
すると摩耗量は1μm未満ではほとんどなく、コンタミ
量もスラッジ付着量が微小で極めて優れているので、低
周波数から高周波数まで能力可変なインバータ駆動方式
のような摺動条件の厳しいコンプレッサへの適用が考え
られる。この実施例では、3価のエステル油を冷凍機油
として用いても好ましいことがわかる。なお、この実施
例ではジルコニウムを75wt%,アルミナを20wt
%,残部を安定化剤としたブレードを採用したコンプレ
ッサで実機試験を行なった。
【0161】図17はHFC冷媒のR134a冷媒を使
用したロータリコンプレッサを、吐出圧力が2MPa,
吸込圧力が0.02MPaの圧力条件で、コンプレッサ
温度120℃で連続2000時間運転したときのベーン
のブレード先端摩耗量を冷凍機油の種類で比較して示し
たものであり、ベーンの相手材であるピストンローラは
Mo−Ni−Cr含有鋳鉄を用いたものである。
【0162】図17からも、アルミナとジルコニアの複
合セラミックスをベーンに用いたものは、表面硬度をH
v1000以上とすることができ、4価のエステル油中
で使用すると摩耗量が1μm以下とほとんど存在せず、
4価のエステル油中で極めて良好な摩耗形態を示す。
【0163】図15および図16に示す実施例10〜1
4は、密閉形コンプレッサとして低温用ロータリコンプ
レッサと高温用ロータリコンプレッサを用いて、吐出圧
力Pdが2.5MPa,吸込圧力が0.5MPaの圧力
条件、コンプレッサ運転周波数90Hz,コンプレッサ
用冷媒にR134a冷媒あるいはR32/R134a混
合冷媒を使用し、冷凍機油に3価のヒンダードエステル
油と4価のヒンダードエステル油を用いて連続1000
時間の運転を行なって摩耗評価とコンタミ評価を行なっ
たものである。
【0164】図18は密閉形コンプレッサの実施例15
〜17を示すものである。実施例15〜17に示すもの
は、コンプレッサ摺動部を構成する一方の摺動部材(ピ
ン)を相手材である他方の摺動部材(ディスク)に押し
付け、摩擦摩耗試験機のテーブルテストにより評価試験
を行なったものである。
【0165】評価試験は、雰囲気圧力が2MPaの圧力
条件で、250kgの荷重を作用させ、コンプレッサ温
度120℃,摺動速度1m/sec,摺動時間4時間の
試験条件で、摺動部材の摩耗評価を行なったものであ
る。
【0166】コンプレッサ摺動部を構成する一方の摺動
部材(ピン)を、周期律表4族,5族もしくは6族の炭
化物(TiC,VC,CrC)を母材とし、母材表面に
同族の窒化物の薄膜でそれぞれ表面処理すると、摺動部
材表面が改質され、Hv1000以上の表面硬度を得る
ことができる。表面改質の際、表面改質膜と同種の材料
を母材に入れることにより、表面改質膜と母材との密着
強度を上げることができ、HFC冷媒および4価のエス
テル油中での薄膜使用を可能とする。
【0167】図19および図20も図18と同じ方法で
テーブルテストにより評価試験を行なった実施例18〜
20と実施例21〜23をそれぞれ示すものである。
【0168】図19および図20で示す密閉形コンプレ
ッサでは、コンプレッサ摺動部を構成する一方、摺動部
材(ベーン)を、周期律表4族,5族,もしくは6族の
窒化物(TiN,VN,CrN)、または周期律表4
族,5族もしくは6族の酸化物(TiO,VO,Cr
O)を母材とし、母材表面に同族の炭化物(TiC,V
C,CrC)の薄膜あるいは同族の窒化物(TiN,V
N,CrN)の薄膜でそれぞれ表面処理して表面改質を
行ない、Hv1000以上の表面硬度を得るようにした
ものである。表面改質の際、表面改質膜と同種の材料を
母材に入れることにより、表面改質膜を母材との密着強
度を上げることができ、HFC冷媒および4価のエステ
ル油中での薄膜使用を可能とする。このように4族,5
族または6族の窒化物,炭化物または酸化物に、同族の
炭化物,窒化物,酸化物を組み合せたものも、コンプレ
ッサ摺動部の摺動部材としての好ましいものになる。
【0169】HFC冷媒と4価のエステル油中では、塩
化物の潤滑物質が形成されないため、表面摩擦係数が増
大する。このため、表面改質膜と母材との密着強度が重
要となる。
【0170】この密閉形コンプレッサは、ロータリコン
プレッサやヘリカルコンプレッサのコンプレッサ摺動部
に適用することが望ましく、ロータリコンプレッサでは
一方の摺動部材がベーン(ブレード)、他方の摺動部材
がローラの摺動部分に、ヘリカルコンプレッサでは一方
の摺動部材がオルダムリングは、他方の摺動部材がピス
トンまたはシリンダ軸受の摺動部分に使うことが好まし
い。ヘリカルコンプレッサのピストンまたはシリンダ軸
受には例えば炭素鋼が用いられる。
【0171】なお、図20の比較例1で示すように、一
方の摺動部材を6族の窒化物(CrN)に4族の窒化物
(TiN)で薄膜処理し、他方の摺動部材(ローラ)に
Mo−Ni−Cr含有鋳鉄を用いても、密着強度が弱い
ため摩耗量が大きく、不適である。
【0172】また、実施例15〜23の密閉形コンプレ
ッサにおいて、他方の摺動部材を周期律表6A族もしく
は5族の金属を含む鉄合金金属を用いたので、HFC冷
媒や4価以上のエステル油のコンプレッサで、摺動部材
の摩耗を低減できる。
【0173】例えば、ロータリコンプレッサに他方の摺
動部材であるローラにMo−Ni−Cr含有鋳鉄を用い
ることで、ベーン材との組合せで摩耗を低減できる。
【0174】この密閉形コンプレッサでは、ロータリコ
ンプレッサのブレード溝のうち、吸込側ブレード溝の内
面をブローチ加工した後、研摩加工して1.6S以下の
表面精度に成形することで、シリンダのブレード溝とベ
ーンとの接触面積を増大させ、摩耗を低減できる。
【0175】HFC冷媒と4価以上のエステル油を用い
たロータリコンプレッサにおいて、ベーン硬度をHv1
000以上としても、全体の摩耗を少なくするために、
ベーンと相対運動するシリンダのブレード溝内の表面粗
さを小さくしてなめらかにする必要がある。通常シリン
ダのブレード溝はブローチ加工で行なわれるため、表面
粗さが4S〜8Sと大きく、ベーン硬度がHv1000
以上としただけでは充分な摩耗低減を図ることができな
い。
【0176】さらに、この密閉形コンプレッサにおい
て、HFC冷媒とともに使用される4価以上のエステル
油を構成するアルコールに、ヒンダードタイプアルコー
ルを用いることが望ましい。4価のヒンダードタイプア
ルコールを用いた4価のヒンダードタイプエステル油
は、熱安定性や耐熱性に優れたものとなるので、特にジ
フルオロメタン(R32冷媒)を多く含むHFC冷媒の
ようにコンプレッサ温度の高い場合に必要となる。
【0177】また、密閉形コンプレッサに使用されるエ
ステル油は、脂肪酸がC7〜C11級の酸で作られ、分
岐型脂肪酸を50vol%以上とすることが望ましい。
【0178】エステル油は脂肪酸とアルコールの合成に
より作られるが、C4〜C6級の脂肪酸は、脂肪酸エス
テルと鉄や銅等の金属との反応性が高いため、スラッジ
原因となる鉄や銅等の金属石鹸を作り易い。金属石鹸の
作り易さを阻害するため、脂肪酸はC7〜C11級にす
る必要があり、脂肪酸を分岐型主体とする必要がある。
【0179】分岐型エステル油は、図21の分岐構造に
示すように、エステル基の隣りにあるα炭素(エステル
基に近い方からα,β,γと呼ぶ。)上に炭素分岐(C
2H5)があるため、この炭素分岐が立体障害となり、
水分子の侵入を妨害するため、加水分解が起こりにく
い。
【0180】また、分岐型エステル油は分岐型脂肪酸を
主体とすることにより、HFC冷媒との相溶性が改善さ
れ、油戻りが良好となるので、冷凍機油の不足を防止で
きる。
【0181】冷凍機油の選別は、HFC冷媒の相溶性の
観点とは別に、吸湿性や電気絶縁性の観点から3価以上
のアルコールであるポリオールとモノカルボン酸(カル
ボニキル基が1つ)を合成したポリオールエステル油に
絞られ、さらにポリオールは、摺動部材との結合力を考
慮して図22に示すように、4価のヒンダードタイプア
ルコールを採用し、熱的安定性や酸化安定性が劣る非ヒ
ンダードタイプアルコールは対象外とし、また、ヒンダ
ードタイプアルコールであっても3価のアルコールは摩
耗が大きいため対象外とした。
【0182】また、4価以上のエステル油を構成するモ
ノカルボン酸は、加水分解性や安定性,HFC冷媒との
相溶性、等を考慮して分岐型の脂肪酸(カルボン酸)を
90vol%以上とし、直鎖型の脂肪酸(エステル基に
近い方の炭素)上に炭素分岐をもつものを主体とし、具
体的には分岐型の脂肪酸と直鎖型の脂肪酸は、耐加水分
解性を重視して、分岐型が例えば約90vol%,直鎖
型が残りの10vol%の比率に設定される。
【0183】なお、本発明の一実施例においては冷凍機
油として4価のエステル油、好ましくは4価のヒンダー
ドタイプアルコールを原料とする例を主に説明したが、
冷凍機油は結合力がより大きな5価以上のエステル油で
あってもよい。
【0184】また、本発明の密閉形コンプレッサに用い
られる密閉ケースには、蓋体と有底筒状の容器を嵌め合
せて溶接固定して完全密閉とするものや、蓋体と容器と
をボルトナットで固定して半密閉とするものがある。
【0185】その他、本発明の精神を逸脱しない範囲で
種々の変形が考えられる。
【0186】
【発明の効果】以上に述べたように本発明に係る密閉形
コンプレッサにおいては、HFC冷媒で使用でき、耐摩
耗性に優れ、冷凍機油の耐加水分解性(安定性)が良好
であるため、腐食やスラッジの発生問題を有効的に回避
できる。
【0187】本発明に係る密閉形コンプレッサにおいて
は、冷凍機油に4価以上のエステル油を用いたので、潤
滑性が向上し、耐摩耗性が良好となる。エステル油は脂
肪酸とアルコールの合成により得られるが、脂肪酸のO
H基の数によりきまるエステル油中のエステル結合の数
により潤滑性が異なる一方、4価以上のエステル油は3
価以下のエステル油に較べ耐摩耗性が良好となる。例え
ば4価のエステル油は3価のエステル油に較べ官能基と
してのエステル結合が多いため、コンプレッサ摺動部の
摺動部材との結合力が高く、耐摩耗性が改善される。5
価以上のエステル油は、コストの点を除けばさらに結合
力の向上が期待でき、好ましい。
【0188】また、コンプレッサ摺動部を構成する一方
の摺動部材の表面を窒化処理してHv1000以上の表
面硬度を有するようにしたので、摩耗の進行を極力抑え
ることができ、他方の摺動部材にMo−Ni−Cr含有
鋳鉄を用いると、この鋳鉄に含まれる黒鉛の自己潤滑性
により良好な潤滑性能を得ることができはる。
【0189】さらに、この密閉形コンプレッサは、ロー
タリコンプレッサのベーン(ブレード)材料を窒化処理
してHv1000以上の表面硬さとしたので、ベーンに
作用する切削摩耗の進行を抑えることができる。摺動部
材をSKH51やSUS材2のようなHv600〜80
0程度の材料で構成すると、摺動による切削摩耗が進行
するおそれがあるが、Hv1000以上にすると、この
摩耗の進行を有効的に抑えることができる。
【0190】また、密閉形コンプレッサは、ロータリコ
ンプレッサのベーン(ブレード)材料をSKH材あるい
はSUS材で構成した表面を窒化処理し、ベーン表面の
化合物層の厚さを4μm以上としたので、摩耗量が少な
く、コンプレッサ性能を向上させることができる。密閉
形コンプレッサの単体耐久試験をしたとき、窒化処理な
しのSKH材ではベーン先端摩耗量が15μmであるの
に対し、窒化処理を施すと4μm程度と非常に小さく、
したがって、窒化処理された化合物層の厚さを4μm以
上とすることにより、ベーン材料に摩耗による悪影響を
及ぼさない。
【0191】さらに、密閉形コンプレッサは、コンプレ
ッサ摺動部を構成する一方の摺動部材を周期律表4族の
窒化物,4族の炭化物,4族の酸化物またはこれらの混
合物とすると、コンプレッサ冷媒としてHFC冷媒,冷
凍機油として4価以上のエステル油を使用したとき、摩
耗量が小さく、良好な摩耗形態を得ることができる。
【0192】また、この密閉形コンプレッサは、コンプ
レッサ摺動部を構成する他方の摺動部材にMo−Ni−
Cr含有鋳鉄を用いると、この鋳鉄に含まれる黒鉛の自
己潤滑性により良好な潤滑性能が得られた。
【0193】一方、この密閉形コンプレッサは、ロータ
リコンプレッサのベーン(ブレード)材料に周期律表4
族の窒化物,4族の炭化物,4族の酸化物またはこれら
の混合物を用い、ローラにMo−Ni−Cr含有鋳鉄を
用いると、HFC冷媒をコンプレッサ用冷媒とし、4価
以上のエステル油を用いた中でベーンの先端摩耗量が小
さく、また良好な潤滑性能が得られる。
【0194】本発明に係る密閉形コンプレッサでは、コ
ンプレッサ摺動部を構成する一方の摺動部材を、周期律
表4族,5族もしくは6族の炭化物,窒化物または酸化
物を母材とし、母材表面に同種の窒化物,炭化物または
窒化物の薄膜でそれぞれ表面処理すると、摺動部材表面
が改質され、Hv1000以上の表面硬度を得ることが
できる。表面改質の際、表面改質膜と同種の材料を母材
に入れることにより、表面改質膜と母材との密着強度を
上げることができ、HFC冷媒や4価以上のエステル油
を使用したコンプレッサでの薄膜使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る密閉形コンプレッサをレシプロタ
イプのコンプレッサに適用した例を示す縦断面図。
【図2】本発明に係る密閉形コンプレッサを低温用ロー
タリコンプレッサに適用した例を示す縦断面図。
【図3】本発明に係る密閉形コンプレッサを高温用ロー
タリコンプレッサに適用した例を示す縦断面図。
【図4】本発明に係る密閉形コンプレッサをスクロール
タイプのコンプレッサに適用した例を示す縦断面図。
【図5】図4に示すスクロールタイプのコンプレッサに
備えられる旋回スクロールを示す平面図。
【図6】本発明に係る密閉形コンプレッサをヘリカルタ
イプのコンプレッサに適用した例を示す縦断面図。
【図7】図6に示すヘリカルタイプのコンプレッサに備
えられるオルダム機構を示す分解組立図。
【図8】本発明に係る密閉形コンプレッサの実施例およ
び比較例を用いて実機試験によりコンプレッサ摺動部の
摩耗評価とコンタミ評価を表示したデータ図。
【図9】実施例2〜実施例5に係る密閉形コンプレッサ
でコンプレッサ摺動部の摩耗評価とコンタミ評価を行な
った図8と同様なデータ図。
【図10】密閉形コンプレッサとして実施例6および7
に示す密閉形コンプレッサを用いてコンプレッサ摺動部
の摩耗量を求めた実機試験によるデータ図。
【図11】非ヒンダードタイプアルコールからカルボン
酸が生成される過程を説明する図。
【図12】コンプレッサ摺動部の材料特性を別の観点か
らウォッチしたデータ図。
【図13】摺動部材の摩擦摩耗試験機を簡略的に示す原
理図。
【図14】本発明に係る密閉形コンプレッサの実施例と
比較例を比較してコンプレッサ摺動部の摩耗評価とコン
タミ評価を行なったデータ図。
【図15】実施例10〜13の密閉形コンプレッサのコ
ンプレッサ摺動部の摩耗評価とコンタミ評価を行なった
図14と同様なデータ図。
【図16】実施例14の密閉形コンプレッサの摩耗評価
とコンタミ評価を行なった図14と同様なデータ図。
【図17】種々の冷凍機油に対するベーン材の摩耗量を
比較して示す図。
【図18】実施例15〜17に示す密閉形コンプレッサ
を摩擦摩耗試験機のテーブルテストにより評価試験を行
なったデータ図。
【図19】実施例18〜20の密閉形コンプレッサをテ
ーブルテストにより評価試験を行なった図18と同様な
データ図。
【図20】実施例21〜23の密閉形コンプレッサをテ
ーブルテストにより評価試験を行なった図18と同様な
データ図。
【図21】分岐型エステル油の分子構造を核磁気共鳴イ
メージング装置を用いて解析した結果を示す図。
【図22】冷凍機油としてポリオールエステルの選択基
準例を示した図。
【符号の説明】
10,40,60,70,90 密閉形コンプレッサ 11 密閉ケース 12 電動機 13 圧縮機械 14 固定フレーム 16 ステータ 17 ロータ 18 クランクシャフト(回転シャフト) 18a クランク部 20 コンロッド(連結ロッド) 21 ピストン 22 シリンダ 23 シリンダ室 30 冷凍機油 31,50 オイルポンプ 41 メインベアリング 42 サブベアリング 43 シリンダ(シリンダブロック) 45 ピストンローラ 46 ブレード(ベーン) 47 ブレード溝 48 スプリング 53 吸込管 56 吐出管 61 仕切プレート 65 アキュムレータ 66 吸込管 71 固定スクロール 72 旋回スクロール 73 圧縮室 75 オルダムリング 78 吐出室 80 環状油溝 91 シリンダ 93,94 シリンダ軸受 95 主軸受 96 副軸受 97 ピストン 98 オルダム機構 99 ヘリカルベーン 100 圧縮室 104 オルダムリング
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3H003 AA01 AB01 AC03 AD00 AD01 BD02 3H029 AA01 AA11 BB11 CC35 3H039 AA01 AA11 BB11 CC35 3H076 AA02 BB17 CC30 CC34 CC37 CC99

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 密閉ケース内に電動機と圧縮機械とを収
    容し、この圧縮機械で圧縮される冷媒にHFC冷媒を用
    いた密閉形コンプレッサにおいて、このコンプレッサの
    摺動部を潤滑する冷凍機油に4価以上のエステル油を用
    い、前記コンプレッサの摺動部を構成する一方の摺動部
    材に、摺動面を窒化処理して表面硬さHv1000以上
    の材料を用い、他方の摺動部材にMo−Ni−Cr含有
    鋳鉄を用いたことを特徴とする密閉形コンプレッサ。
  2. 【請求項2】 前記密閉形コンプレッサはロータリコン
    プレッサであり、一方の摺動部材はベーン、他方の摺動
    部材はローラまたはシリンダであり、前記ベーンの少な
    くとも先端が窒化処理されてHv1000以上の硬度を
    有する請求項1記載の密閉形コンプレッサ。
  3. 【請求項3】 前記ベーンはSKH材あるいはSUS材
    で表面が窒化処理される一方、窒化処理されたベーン表
    面の化合物層が4μm以上の層厚を有する請求項2記載
    の密閉形コンプレッサ。
  4. 【請求項4】 密閉ケース内に電動機と圧縮機械とを収
    容し、この圧縮機械で圧縮される冷媒にHFC冷媒を用
    いた密閉形コンプレッサにおいて、このコンプレッサの
    摺動部を潤滑する冷凍機油に4価以上のエステル油を用
    い、前記コンプレッサの摺動部を構成する一方の摺動部
    材に周期律表4族の窒化物,4族の炭化物,4族の酸化
    物またはこれらの混合物を用い、他方の摺動部材に鋳鉄
    等の鉄合金材料を用いたことを特徴とする密閉形コンプ
    レッサ。
  5. 【請求項5】 前記一方の摺動部材は母材表面を未処理
    構造とし、他方の摺動部材にMo−Ni−Cr含有鋳鉄
    を用いた請求項4記載の密閉形コンプレッサ。
  6. 【請求項6】 前記密閉コンプレッサはロータリコンプ
    レッサであり、一方の摺動部材はベーンであり、他方の
    摺動部材はローラまたはシリンダである請求項4記載の
    密閉形コンプレッサ。
  7. 【請求項7】 密閉ケース内に電動機と圧縮機械とを収
    容し、この圧縮機械で圧縮される冷媒にHFC冷媒を用
    いた密閉形コンプレッサにおいて、このコンプレッサの
    摺動部を潤滑する冷凍機油に4価以上のエステル油を用
    い、前記コンプレッサの摺動部を構成する一方の摺動部
    材を、周期律表4族,5族もしくは6族の炭化物,窒化
    物または酸化物を母材とし、母材表面に同族の窒化物,
    炭化物または窒化物の薄膜で表面処理したものをそれぞ
    れ用い、他方の摺動部材にMo−Ni−Cr含有鋳鉄等
    の鉄系材料を用いたことを特徴とする密閉形コンプレッ
    サ。
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