JP2003003285A - オゾン発生用電解セルの取り扱い方法 - Google Patents

オゾン発生用電解セルの取り扱い方法

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JP2003003285A
JP2003003285A JP2001190268A JP2001190268A JP2003003285A JP 2003003285 A JP2003003285 A JP 2003003285A JP 2001190268 A JP2001190268 A JP 2001190268A JP 2001190268 A JP2001190268 A JP 2001190268A JP 2003003285 A JP2003003285 A JP 2003003285A
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solid electrolyte
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cell
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Akihisa Koganezawa
明央 小金澤
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TEEIKU WAN SOGO JIMUSHO KK
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  • Electrolytic Production Of Non-Metals, Compounds, Apparatuses Therefor (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 固体電解質膜を乾燥した状態で電解セルを保
存する。 【解決手段】 通気・通水構造を有する導電体からなる
陽極電極板と陰極電極板とによって固体電解質膜が狭持
され、前記陽極電極板と前記固体電解質との間に二酸化
鉛層が介在する構造を備えるオゾン発生用電解セルの取
り扱い方法であって、前記固体電解質膜を湿潤状態で固
定したまま前記陽極電極板と前記陰極電極板との間に狭
持して前記電解セルを組み立てるプロセスと、電解セル
内に組み込まれた前記湿潤状態の固体電解質膜を当該セ
ル内で乾燥させる乾燥プロセスと、組み立て済みの前記
電解セルに通水・通電してオゾンを発生するまでの保存
時に前記固体電解質膜を前記自然乾燥状態で放置する保
存プロセスとを含んでいるオゾン発生用電解セルの取り
扱い方法とした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はオゾン発生用電解セ
ルの取り扱い方法に関し、具体的には、固体電解質膜を
乾燥状態にしたまま電解セルを保存する場合の取り扱い
方法や保存状態にある電解セルを稼働するときの取り扱
い方法などに関する。
【0002】
【従来の技術】オゾンを工業的に発生させる方式として
電解セルを使用した方式がある。図1は一般的な電解セ
ルの概略構造を断面図として示している。電解セル1
は、メッシュ状あるいは多孔質状など通気・通水性構造
をなすチタンからなる陽極電極板3と、同じく通気・通
水構造をなすステンレスメッシュやチタンを基材とした
陰極電極板4とによってPEM(水素イオン交換膜)と
呼ばれる固体電解質膜2を狭持した構造を基本としてい
る。陽極電極板3における固体電極膜2側の面には二酸
化鉛層5が形成されている。また、陰極電極板4のPE
M2側表面には白金などの金属が担持されて水素発生触
媒層6を形成している。
【0003】さらに、両極の電極板3、4と電源とを接
続するためのリード端子部となる集電板7、8が電極板
3、4の外側に積層されている。陽極集電板7と陰極集
電板8との間に積層される各構成要素は圧接などによっ
て互いに電気的に接続される。集電板7、8には孔部
9、10が適宜に穿設されており、電解セル1の外部か
ら電極板3、4を通過してPEM2に至る通水経路や通
気経路を確保している。
【0004】この構造の電解セル1に対して陽極側に水
を供給するとともに陽・陰極電極板3、4間に電流を流
すと、水が電気分解される。水素イオンはPEM2を通
過して陰極側に到達し、ここで電子が供給されて水素に
なる。一方、陽極側で発生した酸素は、その一部が二酸
化鉛層5の触媒作用によってオゾンになる。
【0005】上述の電解セルは、柔らかいPEM2に二
酸化鉛層5が接触した構造となっているため、その取り
扱いには注意が必要である。しかもPEM2は湿度変化
で伸縮する性質があるため、伸縮によってPEM2と二
酸化鉛層5との間で摩擦が生じPEM2が破損する場合
がある。そこで電解セル1は、PEM2を湿潤させて膨
張(膨潤)させ、最大に膨潤した状態を維持したまま組
み立てている。
【0006】組み立て済みの電解セル1は、そのセル1
が発生するオゾンの用途によってさまざまな機器(オゾ
ン利用機器)に組み込まれて使用されることになるが、
膨潤状態のPEM2は乾燥すると再収縮し、ここでも二
酸化鉛層7との摩擦が発生することから、電解セル1
は、オゾン利用機器に組み込まれて通水・通電されて稼
働させるまで、PEM2の湿潤状態を維持したまま保存
される。普通、PEM2が乾燥する前に電解セル1を密
閉したり、組上がった電解セル1内に純水を充填してか
ら密閉したりして保存状態にする。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、従来
の電界セルの取り扱い方法によれば、電界セルを保存す
るときにはPEMを湿潤状態にしておくことが前提とな
っていた。しかし、この「湿式保存」には種々の問題が
ある。例えば、電解セルにおける二酸化鉛層は電着によ
って形成するのが主流であり、湿式保存では、その電着
二酸化鉛層が災いする。具体的には、二酸化鉛は電着時
の電解浴のPHによって結晶構造が変化することが知ら
れており、酸性であればβ型結晶、中性・アルカリ性で
あればα型結晶が得られる。オゾン発生に適した結晶構
造はβ型である。工業的に作成される電着二酸化鉛はα
型とβ型の混晶だとされている。
【0008】そこで、組み立て直後の電解セルに通水・
通電して初期稼働させ、結晶構造をβ型に転移させてい
る。すなわち、電解セルを稼働させると、PEMの界面
が強酸性雰囲気になり、二酸化鉛の表面がβ型結晶構造
に転移するのである。一般的には、発生するオゾン濃度
が平坦域(オゾン濃度プラトー)に達し、β型二酸化鉛
とPEMとの界面をオゾン発生に適した状態に安定化さ
せるまで、24時間程度連続的に稼働させることが必要
であるとされている。電解セルは、このように初期稼働
されたのち、上述したように密閉状態にするなどして湿
式保存される。
【0009】しかし湿式による保存時には、4価の鉛イ
オンPb4+が2価の鉛イオンPb 2+に還元する反応
が僅かながら発生する。Pb2+は水に溶解し易く、二
酸化鉛の結晶構造を崩壊させる。すなわち電着した二酸
化鉛層がはがれ落ち、電界セルのオゾン発生特性を劣化
させる。さらに、Pb2+がPEMのスルホン酸基と結
合し、PEMの導イオン性を劣化させることも知られて
いる。これも電界セルのオゾン発生特性を劣化させる要
因となる。そのため、湿式保存された電解セルを機器に
組み込み、電界セルを稼働させ、実際に機器が利用可能
な状態になるまでには、初期稼働時と同様にオゾンガス
濃度プラトーに達するまで待たなくてはならない。普通
は24時間程度でプラトーに達するが、場合によっては
一週間以上かかる場合もある。
【0010】また、初期稼働直後の電解セルは、陽極側
にはオゾンガス、陰極側には水素ガスというように、電
極付近に発生ガスが滞留する。この状態は水素をマイナ
ス極とした燃料電池であり、もし、この状態で両極間が
短絡すれば、陽極側では Pb4++2e→Pb2+ 陰極側では H→2H+2e の反応により、二酸化鉛層に致命的な劣化が生じる。場
合によっては、電解セルのオゾン発生能が消失する。短
絡がなくても一般の電池と同様、自然(自己)放電によ
っても、上記の反応は少なからず進行する。しかも、こ
のような二酸化鉛の致命的な劣化は、電解セルを組み込
んだ機器を実際に稼働させるまで分からないという点に
大きな問題がある。実際、オゾン利用機器を設置した後
で、その機器が所定濃度のオゾンガスを発生できず、不
良品として使用できないことがある。
【0011】この自然放電による二酸化鉛の劣化を防止
するために、電解セル内に絶縁体を挿入することも考え
られるが、電解セルを稼働するときには、電解セルを分
解して絶縁体を取り外し、再度電解セルを組み立てなく
てはならない。電解セル内に絶縁体を挿入するために
は、電解セルの組み立て時に電解セルの各構成要素と絶
縁体とを圧着することになり、絶縁体を取り外す際に二
酸化鉛層やPEMが破損する可能性もある。したがっ
て、初期稼働直後に電解セルが燃料電池として作用する
という問題に対し、絶縁体を電解セル内に挿入するとい
う対応方法は実用的でない。
【0012】そこで、燃料電池による起電力をうち消す
ような電力を電解セルに供給し続ける方法を採用する場
合がある。この場合、電解セルは、PEMの湿潤状態を
維持したり、両電極間に電力を供給したりするための付
帯装置を付加してユニット化した「オゾン発生器」の形
態で保存される。図2にこのオゾン発生器の一例を概略
図として示した。電解用水11を電解セル1の陽極側に
導入しつつ陽極から発生するオゾンガスを捕集するため
の気液分離容器12、バックアップ電源を内蔵して電解
セル1への電力供給を制御する電源制御装置13、各種
通水・通気管路14〜18、適宜な管路14〜18に介
在する各種バルブ(図示せず)などが電解セル1に付加
された構成となっている。しかし、このユニット状態で
の保存は、バックアップ電源の電力供給持続時間に限り
があるという問題がある。所定の期限以内にこのオゾン
発生器をオゾン利用機器に組み込み、さらに、その機器
をその設置場所へ搬送し、給・排水管路や給電線を接続
して電解セルを稼働可能状態にセットアップしなければ
ならない。期限以内にセットアップが完了しなければ、
上述したような電解セルの燃料電池化が起こる。期限を
延長しようとすれば、大容量のバックアップ電源が必要
となりコストアップとなる。また、組み込み先のオゾン
利用機器とその設置場所が決まらない限り、電解セルや
ユニットの組み立てに着手できず、納入期間も長くな
る。ユニットとして所定の形態を採用すれば、多種多様
なオゾン利用機器の形態に対応することも困難となり、
汎用性にも欠ける。
【0013】以上述べたように、電解セルを湿式保存す
るという従来の取り扱い方法にはさざまな問題がある。
本発明はこの問題を根本的に解決するための電解セルの
取り扱い方法を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】従来、電界セルの取り扱
いは湿式保存が原則であった。では、PEMを乾燥状態
にして保存(乾式保存)すればどうなるのであろうか。
オゾンガスの発生時に電界セルに通水すると、当然、P
EMは水分を含んで膨潤する。PEMは電界セル内にあ
り、膨潤して膜面方向に広がることができない。そのた
め、膨張して増えた表面積は、膜面鉛直方向に逃がれ皺
になる。膜面に皺が寄れば、PEMと二酸化鉛層とが不
均一な状態で接触することになり、PEMに電流が流れ
易い部分と流れ難い部分とができる。抵抗値が高い部分
に電流が流れれば当然発熱する。この発熱はオゾン発生
効率を低下させる。過熱すればPEMを破損させる可能
性もある。したがって、従来の電界セルの取り扱い方法
では乾式保存は極めて困難であった。
【0015】本発明は、従来困難であった乾式保存を可
能にし、湿式保存に係わる種々の問題点を根本から解決
するために成されたものである。第1の発明は、通気・
通水構造を有する導電体からなる陽極電極板と陰極電極
板とによって固体電解質膜が狭持され、前記陽極電極板
と前記固体電解質との間に二酸化鉛層が介在する構造を
備えるオゾン発生用電解セルの取り扱い方法であって、
前記固体電解質膜を湿潤状態で固定したまま前記陽極電
極板と前記陰極電極板とで狭持して前記電解セルを組み
立てるプロセスと、電解セル内に組み込まれた前記湿潤
状態の固体電解質膜を当該セル内で乾燥させる乾燥プロ
セスと、組み立て済みの前記電解セルに通水・通電して
オゾンを発生するまでの保存時に前記固体電解質膜を前
記乾燥状態で放置する保存プロセスとを含むオゾン発生
用電解セルの取り扱い方法とした。
【0016】第2の発明は、第1の発明において、前記
乾燥プロセスは、前記電解セルに通電することで湿潤状
態にある前記固体電解質膜を乾燥させるオゾン発生用電
解セルの取り扱い方法としている。
【0017】この第2の発明において、前記乾燥プロセ
スに引き続いて、前記電解セルの陰極側に残留する同伴
水と水素ガスとを前記電解セル外部に導出する再湿潤防
止プロセスを含むオゾン発生用電解セルの取り扱い方法
を第3の発明とした。
【0018】上記第1〜第3の発明は、PEMを湿潤状
態で電界セルに組み込んだ上で、乾式保存するための取
り扱い方法である。第4〜第6の発明は、PEMを乾燥
状態で電界セルに組み込んで乾式保存するための取り扱
い方法である。
【0019】第4の発明は、通気・通水構造を有する導
電体からなる陽極電極板と陰極電極板とによって固体電
解質膜が狭持され、前記陽極電極板と前記固体電解質と
の間に二酸化鉛層が介在する構造を備えるオゾン発生用
電解セルの取り扱い方法であって、前記固体電解質膜を
湿潤状態で固定したまま乾燥する乾燥プロセスと、当該
乾燥プロセスののち前記乾燥した固体電解質膜を前記電
解セルへの組み込み形状に裁断するプロセスと、当該裁
断済みの前記固体電解質膜を前記陽極電極板と前記陰極
電極板とで狭持して前記電解セルを組み立てるプロセス
と、組み立て済みの前記電解セルに通水・通電してオゾ
ンを発生するまでの保存時に前記固体電解質膜を前記乾
燥状態で放置する保存プロセスとを含むオゾン発生用電
解セルの取り扱い方法とした。
【0020】第5の発明は、通気・通水構造を有する導
電体からなる陽極電極板と陰極電極板とによって固体電
解質膜が狭持され、前記陽極電極板と前記固体電解質と
の間に二酸化鉛層が介在する構造を備えるオゾン発生用
電解セルの取り扱い方法であって、前記固体電解質膜を
湿潤状態のまま前記電解セルへの組み込み形状に固定す
るとともに、当該固定された形状のまま当該電解質膜を
乾燥する乾燥プロセスと、当該乾燥プロセスののち前記
乾燥した固体電解質膜を前記陽極電極板と前記陰極電極
板とで狭持して前記電解セルを組み立てるプロセスと、
組み立て済みの前記電解セルに通水・通電してオゾンを
発生するまでの保存時に前記固体電解質膜を前記乾燥状
態で放置する保存プロセスとを含むオゾン発生用電解セ
ルの取り扱い方法としている。
【0021】PEMは、湿度変化によって膜面の2次元
方向と膜面に対して鉛直方向に伸縮する。PEMは、こ
の3次元方向のそれぞれの方向に伸縮する割合が異な
る。すなわち伸縮率異方性を有する。この伸縮率異方
性、とくに、電極板や二酸化鉛層との接触面となる膜面
方向の伸縮率異方性を考慮した取り扱い方法が第6の発
明であり、第4または第5の発明において、前記乾燥プ
ロセスは、前記固体電解質膜を当該膜面における伸縮率
異方性に基づいた形状に固定したまま乾燥するオゾン発
生用電解セルの取り扱い方法としている。
【0022】第7の発明は、柔らかいPEMが二酸化鉛
層との摩擦によって破損するという問題点を解決するた
め、さらには、電解セルを長期間保存しても二酸化鉛層
自体の構造あるいはPEMとの接触構造を維持するため
の電界セルの取り扱い方法であって、第1〜第6の発明
のいずれかにおいて、前記二酸化鉛層は、粉末状の二酸
化鉛とPTFEディスパージョンと揮発性分散媒との混
練物を前記陽極電極板に、塗布あるいはシート状に形成
したのち、100℃以下の雰囲気で前記分散媒を揮発し
て乾燥させて形成したものであることとしている。
【0023】第8の発明は、第1〜第7の発明のいずれ
かにおいて、前記電解セルは、陽極電極板の少なくとも
前記二酸化鉛層に接する面に白金層が介在する構造であ
るとして、この構造の電解セルも本発明の方法による取
り扱い対象としている。
【0024】第9の発明は、乾式保存された電界セルを
稼働させる際の取り扱い方法であって、第1〜第8の発
明のいずれかにおいて、前記保存ステップにより乾燥状
態で放置されている固体電解質膜に水分を加えて湿潤状
態にする再湿潤ステップと、当該再湿潤ステップののち
前記電解セルに通水・通電してオゾンを発生させるセル
稼働ステップとを含んでいる。
【0025】
【発明の実施の形態】===電解セルの基本構造== 本発明の取り扱い方法が適用される電解セルの基本構造
は図1に示した一般的な電解セルの構成と同様である。
しかし、電解セルの乾式保存を可能にするためにPEM
を電解セルに組み込む過程でPEMに特殊な処理や加工
を施している。図3、図4は本発明の方法によって取り
扱われる電解セルの一例を詳細図として示しており、図
3は電解セルの分解図であり、図4はその分解図に従っ
てセルを組み立てたときの断面図を示している。なお、
この実施例における電解セルは図1に示した電解セル1
と若干構成が異なっている。具体的には、二酸化鉛層5
にシート状二酸化鉛5を採用している。このシート状二
酸化鉛5は、柔軟で、摩擦によるPEM2の破損を防止
し、長期間保存してもその構造を維持できるという利点
を有している。また、PEM2における膜面鉛直方向の
伸縮をも柔軟に吸収する。
【0026】本実施例における電解セルは、PEM2に
パーフロロスルフォン酸樹脂膜(米デュポン社製:ナフ
ィオン<登録商標>#117)を使用している。陽極電
極板3は開口率などが異なる4種のエキスパンドチタン
を4層積層している。また本実施例では、陽極電極板3
におけるPEM2側の面にメッキによって白金層を形成
している。陰極電極板4は、ステンレスメッシュを基材
とし、PEM2側の面にカーボンペーパーに白金を担持
させた陰極触媒層6を形成している。PEM2と陽極電
極板3との間には二酸化鉛層5が介在している。
【0027】また、通気・通水孔9が穿設されたチタン
板を陽極電極板3の外側に配置して陽極集電板7とし、
同じように通水・通気孔10が穿設されたステンレス板
を陰極電極板4の外側に配置して陰極集電板8としてい
る。そして、上記各構成要素を積層して電解セル本体を
組み立てる。
【0028】本実施例において、電解セルを組み立てる
段階では、二酸化鉛層5はシート状二酸化鉛として陽極
電極板3とPEM2との間に個別要素として挿入されて
いる。また、電解セルの各構成要素は概して円盤状に形
成され、所定の要素には、その周縁部にボルトの貫通孔
25が穿設されている。積層される各構成要素間にはフ
ッ素樹脂などオゾン耐性材料によって作製されたパッキ
ン22が適宜に挿入されるとともに、同じくオゾン耐性
材料によるケーシング23、24によって電解セル本体
を密閉している。このケーシング23、24には両極の
集電板7、8の通気・通水孔9,10にガスや水を導入
/導出するための孔26が開口している。そして、ケー
シング23、24の外側からセルの各構成要素の前記貫
通孔25にボルト27を通し、これをナット28に螺嵌
・締結して積層状態にある電解セルの各構成要素を互い
に圧着させている。
【0029】なお、本実施例において、陽極集電板7と
陽極電極板3とは、密着させた状態で電流を流して溶接
することで電気的に接続している。それによって、オゾ
ンによってチタン表面が酸化して表面の抵抗が増加して
も溶接による融着部では表層の酸化被膜の内側に低抵抗
の導電路が確保されるようにしている。また、陽極電極
板3と二酸化鉛層5、および二酸化鉛層5とPEM2と
は溶接ができないため、上述のボルト26による圧着に
よって互いに圧接させて電気的な接続をとっている。し
たがって、本実施例における陽極白金層は、チタン製の
陽極電極板3が二酸化鉛層5と接する面で陽極酸化し、
抵抗が増加するのを防ぐために設けられている。なお、
陰極電極板4についても圧着によってPEM2との接続
をとっている。
【0030】===PEMの処理・加工=== 本発明において、PEMの処理や加工過程は最も重要な
要件である。本実施例では、PEMは乾燥状態で電解セ
ルに組み込まれ、そのまま電解セルを乾式保存する。す
なわち、その組み立てから保存まで一貫して「乾式」で
取り扱われる。しかも、保存中の湿度変化に対するPE
Mの伸縮は極めて微少であり、電解セルの稼働時にPE
Mが水分を吸収してもその表面に皺が発生しない。この
乾式による電解セルの取り扱い方法におけるPEMに対
する処理や加工としては、概ね以下の〜のプロセス
がある。
【0031】 洗浄・前処理 当然、市販などによって提供されているPEMをそのま
ま電解セルに組み込むわけにはいかない。そこで、PE
M表面に付着している不純物を除去したり、オゾン発生
効率を向上させたりすることを目的としてPEMを洗浄
したり、前処理を施したりする。
【0032】普通、PEMの洗浄は、最終的に超純水で
30〜60分程度煮沸することで行われる。また、この
煮沸洗浄に先だって、PEMのスルホン酸基に捉えられ
ているNaイオンなどを水素イオンに置換したり、PE
M表面のスルホン酸基を活性化したりするためなど、種
々の目的応じて相応の前処理が施される。例えば、Na
イオンを水素イオンに置換するためには塩酸で煮沸した
のち、超純水で洗浄するというステップが一般的であ
る。超純水洗浄後は、そのあとに行われる後処理まで超
純水中に浸漬保存しておく。またスルホン酸基の活性化
には、シリカやガラスなどの微粒子を高速でPEM表面
に吹き付けて膜面を粗化する処理をしたのち超純水で洗
浄する。この場合も後処理まで超純水中に保存してお
く。
【0033】上述した前処理を適宜に行ったのち、最終
的に超純水による煮沸を経て超純水中にPEMを保存し
ておく。そして、この超純水保存時にPEMを十分に膨
潤させておく。
【0034】 固定・乾燥 十分に膨潤したPEMを治具を使って固定する。本実施
例では、枠状の治具にPEMを狭持して固定し、この状
態でPEMを自然乾燥させる。もちろん、温風による乾
燥など、PEMが過熱損傷しなければ加熱乾燥すること
もできる。治具はPEMの乾燥に伴う収縮に対して、そ
の形状を維持できる程度に十分な強度を有しており、少
なくとも枠内にあるPEMの形状は、収縮によって変化
しないようになっている。
【0035】 裁断 乾燥後のPEMを治具から取り外して、電解セルに組み
込まれる形状に裁断する。
【0036】 組み立て 裁断された乾燥PEMを電解セルに組み込む。電解セル
の保存時には、PEMはこの組み立て時の乾燥状態で放
置する。
【0037】〜によって取り扱われた電解セルは、
その後、密閉状態で保存してもよいし、開放状態で保存
しておいてもよい。なお、上記の固定・乾燥プロセス
において、治具によって固定されるPEMの形状が電解
セルに組み込まれる形状と同じであれば、の裁断プロ
セスは不要となる。また、電解セル自体を治具と見な
し、湿潤状態のPEMを電解セルに組み込んでそのまま
乾燥させれば、治具も不要となる。
【0038】膨潤したPEMを固定することで、乾燥時
にはその固定形状が維持される。すなわち、乾燥PEM
を再度湿潤させても、膨潤した状態がこの固定形状であ
ることから、膜面方向に膨潤仕切っても元の形状に戻る
だけであり、皺の発生など膜面の平坦性が極度に失われ
ることがない。
【0039】なお、PEMが伸縮する際の異方性を考慮
して湿潤状態のPEMを固定すれば、その膜面形状の変
化をさらに微少にすることができる。異方性を全く考慮
せずに固定・乾燥されたPEMを再湿潤させると、膜面
上のある方向への膨潤が電解セルヘの組み込み形状内に
収まらず、その方向への膨潤が妨げられて膜面の平坦性
が不均一になる可能性がある。そこで、例えば、PEM
の膜面上で最大伸縮率と最小伸縮率とを示す軸方向に楕
円の長径と短径とを設定し、その楕円形の枠にPEMを
所定方向に固定すれば、伸縮時のPEMの変形をさらに
小さくすることができる。
【0040】===シート状二酸化鉛=== 上述したように、本実施例ではシート状の二酸化鉛層を
採用している。参考までに、図5(A)〜(D)に、そ
のシート状二酸化鉛の作製プロセスにおける一実施例を
示した。
【0041】(A)粉末状の二酸化鉛と、市販のPTF
Eディスパージョン(MDF PTFE30−J<商品
名:三井・デュポンフロロケミカル株式会社製>など)
とを混合する。PTFEの量は二酸化鉛に対して約5w
t%の量としている。この混合物にエタノールを適量
(実施例では混合物と同量の体積分)加えて混合・攪拌
してスラリー状の混練物30とし、この混練物20を塩
化ビニル製のローラ31を用いてパラフィン紙32上に
膜厚300μmとなるように塗布する。なお、100℃
以下の融点で混合物を分散できればイソプロビルアルコ
ールなど他の分散媒を使用してもよい。 (B)工程(A)によってシート状に塗布された混練物
30を放置してエタノールを揮発させて自然乾燥させ
る。このとき、二酸化鉛が熱分解する温度(約100
℃)以上の温度に曝さなければ、加熱乾燥させることと
してもよい。 (C)乾燥したシート状混練物30を陽極電極板の形状
にカッティングする。 (D)パラフィン紙22から混練物30を剥離してシー
ト状の二酸化鉛とする。
【0042】この例では、粉末二酸化鉛と液状PTFE
との混練物をパラフィン紙に塗布することで、混練物が
含む分散媒を紙面に吸収させて、乾燥時間を短くするよ
うにしているが、混練物は、乾燥後に剥離できれば、金
属や樹脂などのプレート上に塗布してもよい。あるい
は、剥離用のプレートに塗布せず、PEM上や陽極電極
板上に直接塗布することとしてもよい。もちろん、塗布
方法はロールコート法に限るものでもない。
【0043】===稼働プロセス=== 本発明は、従来は存在しなかった電解セルの乾式保存を
可能にした。したがって、電解セルを実際に稼働してオ
ゾンを発生させる際の取り扱い方法も従来とは異なる。
本発明では、乾式保存された電解セルをオゾン利用機器
に組み込んで稼働させる際に、まず、PEMを湿潤状態
にして水素イオンによるPEMの導電性を確保し、この
導電性が確保された段階で、電解セルに通水・通電し、
オゾンを発生させることとしている。本実施例では、電
解セル内に超純水を滴下するなど適宜にPEMを湿潤さ
せ、この状態で15分程度放置したのち、電解セルに通
水・通電している。
【0044】===その他の実施例・変更例=== 電解セル自体を治具と見なしてPEMを電解セル内で乾
燥させる取り扱い方法において、電解セルに通電して乾
燥してもよい。この場合、PEMに含まれている水分が
電気分解されてガスとして放散されたり、通電による発
熱で水分が蒸発されたりして、自然乾燥よりも短時間で
PEMを乾燥させることができる。。なお、この通電乾
燥に際し、陰極側には水素ガスが発生する。また、水素
イオンがPEMの陽極側から陰極側に透過するのに伴っ
て、僅かではあるが水分(同伴水)が透過し、これが陰
極側に留まる。そこで、これら水素ガスや同伴水を電解
セル外に導出すれば、電解セルの保存中にPEMが再湿
潤することを確実に防止でき、より好ましい。なお、導
出方法としては、吸引したり自然に放散させたりするな
ど、適宜な方法が採用できる。
【0045】上記実施例では、陽極酸化を防止するため
に白金層を設けてあったが、この白金層は必しも必要で
はない。二酸化鉛層についても、電着など、他の方法で
も形成できる。なお、二酸化鉛層を電着形成する場合に
は、普通、白金メッキされた陽極電極板が採用される。
【0046】
【発明の効果】本発明の電解セルの取り扱い方法によれ
ば、固体電解質膜を膨潤状態で固定し、この固定された
状態で乾燥している。そのため、電解セル内の固体電解
質膜が湿度変化によって伸縮せず、二酸化鉛層との摩擦
による破損の可能性を極めて低くすることができる。そ
れによって、PEMを乾燥状態にしたまま電解セルを保
存する「乾式保存」が可能となった。
【0047】この乾式保存の実現は、湿式保存に係わる
さまざまな問題を全て解決することができる。すなわ
ち、二酸化鉛における結晶構造の変化やそれに伴う二酸
化鉛層の劣化を無くし、稼働時にオゾン濃度プラトーに
達するまでの時間を劇的に短縮させる。組み立て直後の
初期稼働も不必要となる。したがって、燃料電池化する
ことがなく、バックアップ電源を用いて保存する必要も
ない。
【0048】なお、膨潤した固体電解質膜を固定する
際、膜面方向の伸縮率異方性に応じてその固定形状を決
定すれば、乾燥時に収縮する際、膜面の平坦性をさらに
均一にすることができる。稼働時に湿潤させる際にもそ
の平坦性を精度よく維持することができる。
【0049】さらにこの発明は、取り扱い対象である電
解セルの製造方法・用途・要求される信頼性などに柔軟
に対応できる。例えば、シート状の二酸化鉛層を採用す
ることで、電解セルの組み立て時などにおける固体電解
質膜との摩擦をも緩和する。長期間の保存も可能とな
る。陽極電極板の少なくとも二酸化鉛層側に白金層を備
えさせれば陽極電極板の陽極酸化を防止し、二酸化鉛層
がシート状のものであれば、陽極電極板との電気的接続
を確実なものとする。もちろん、白金層は電着二酸化鉛
層を形成する際にも設けられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電解セルの基本構造の概略を断面図として示し
ている。
【図2】電解セルを使用したオゾン発生器の概略構成図
である。
【図3】本発明の実施例における電解セルの詳細な構造
を分解図として示している。
【図4】上記実施例における断面図を示している。
【図5】上記実施例に組み込まれるシート状二酸化鉛の
製造プロセスの一例を概略図として示している。
【符号の説明】
1 電解セル 2 固体電解質膜 3 陽極電極板 5 二酸化鉛層

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 通気・通水構造を有する導電体からなる
    陽極電極板と陰極電極板とによって固体電解質膜が狭持
    され、前記陽極電極板と前記固体電解質との間に二酸化
    鉛層が介在する構造を備えるオゾン発生用電解セルの取
    り扱い方法であって、前記固体電解質膜を湿潤状態で固
    定したまま前記陽極電極板と前記陰極電極板とで狭持し
    て前記電解セルを組み立てるプロセスと、電解セル内に
    組み込まれた前記湿潤状態の固体電解質膜を当該セル内
    で乾燥させる乾燥プロセスと、組み立て済みの前記電解
    セルに通水・通電してオゾンを発生するまでの保存時に
    前記固体電解質膜を前記乾燥状態で放置する保存プロセ
    スとを含むことを特徴とするオゾン発生用電解セルの取
    り扱い方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記乾燥プロセス
    は、前記電解セルに通電することで湿潤状態にある前記
    固体電解質膜を乾燥させることを特徴とするオゾン発生
    用電解セルの取り扱い方法。
  3. 【請求項3】 請求項2において、前記乾燥プロセスに
    引き続いて、前記電解セルの陰極側に残留する同伴水と
    水素ガスとを前記電解セル外部に導出する再湿潤防止プ
    ロセスを含むことを特徴とするオゾン発生用電解セルの
    取り扱い方法。
  4. 【請求項4】 通気・通水構造を有する導電体からなる
    陽極電極板と陰極電極板とによって固体電解質膜が狭持
    され、前記陽極電極板と前記固体電解質との間に二酸化
    鉛層が介在する構造を備えるオゾン発生用電解セルの取
    り扱い方法であって、前記固体電解質膜を湿潤状態で固
    定したまま乾燥する乾燥プロセスと、当該乾燥プロセス
    ののち前記乾燥した固体電解質膜を前記電解セルへの組
    み込み形状に裁断するプロセスと、当該裁断済みの前記
    固体電解質膜を前記陽極電極板と前記陰極電極板とで狭
    持して前記電解セルを組み立てるプロセスと、組み立て
    済みの前記電解セルに通水・通電してオゾンを発生する
    までの保存時に前記固体電解質膜を前記乾燥状態で放置
    する保存プロセスとを含むことを特徴とするオゾン発生
    用電解セルの取り扱い方法。
  5. 【請求項5】 通気・通水構造を有する導電体からなる
    陽極電極板と陰極電極板とによって固体電解質膜が狭持
    され、前記陽極電極板と前記固体電解質との間に二酸化
    鉛層が介在する構造を備えるオゾン発生用電解セルの取
    り扱い方法であって、前記固体電解質膜を湿潤状態のま
    ま前記電解セルへの組み込み形状に固定するとともに、
    当該固定された形状のまま当該電解質膜を乾燥する乾燥
    プロセスと、当該乾燥プロセスののち前記乾燥した固体
    電解質膜を前記陽極電極板と前記陰極電極板とで狭持し
    て前記電解セルを組み立てるプロセスと、組み立て済み
    の前記電解セルに通水・通電してオゾンを発生するまで
    の保存時に前記固体電解質膜を前記乾燥状態で放置する
    保存プロセスとを含むことを特徴とするオゾン発生用電
    解セルの取り扱い方法。
  6. 【請求項6】 請求項4または5において、前記乾燥プ
    ロセスは、前記固体電解質膜を当該膜面における伸縮率
    異方性に基づいた形状に固定したまま乾燥することを特
    徴とするオゾン発生用電解セルの取り扱い方法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれかにおいて、前記
    二酸化鉛層は、粉末状の二酸化鉛とPTFEディスパー
    ジョンと揮発性分散媒との混練物を前記陽極電極板に、
    塗布あるいはシート状に形成したのち、100℃以下の
    雰囲気で前記分散媒を揮発して乾燥させて形成したもの
    であることを特徴とするオゾン発生用電解セルの取り扱
    い方法。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれかにおいて、前記
    電解セルは、陽極電極板の少なくとも前記二酸化鉛層に
    接する面に白金層が介在する構造であることを特徴とす
    るオゾン発生用電解セルの取り扱い方法。
  9. 【請求項9】 請求項1〜8のいずれかにおいて、前記
    保存ステップにより乾燥状態で放置されている固体電解
    質膜に水分を加えて湿潤状態にする再湿潤ステップと、
    当該再湿潤ステップののち前記電解セルに通水・通電し
    てオゾンを発生させるセル稼働ステップとを含むことを
    特徴とするオゾン発生用電解セルの取り扱い方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005146302A (ja) * 2003-11-11 2005-06-09 Yamaguchi Yoshiharu 水素と酸素の混合ガス発生装置およびその電解槽
JP2008189969A (ja) * 2007-02-02 2008-08-21 Nikka Micron Kk オゾン水生成装置
JP5090574B1 (ja) * 2012-02-15 2012-12-05 日科ミクロン株式会社 オゾン水生成装置
WO2024177060A1 (ja) * 2023-02-22 2024-08-29 三菱重工業株式会社 電解セルの製造方法、および電解装置の製造方法

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