JP2003001477A - 鋼管柱基部及び鋼管柱基部の強化方法 - Google Patents

鋼管柱基部及び鋼管柱基部の強化方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 繰返し曲げモーメントが作用した場合におい
てもリブの溶接止端部付近の強度低下がない鋼管柱基部
及び鋼管柱基部の強化方法を提供する。 【解決手段】 鋼管柱10の基部にT字溶接された各リ
ブ12の溶接止端部14に、超音波振動によるピーニン
グ処理部20を形成する。処理条件は振幅20〜50μ
m、振動数10〜50kHzが好ましい。なお処理区間
の母材に鋼管軸方向の引張応力が作用するような荷重を
鋼管柱基部に与えた状態で、超音波振動によるピーニン
グ処理を施すことにより、一段と優れた強化効果を得る
ことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば道路照明用
ポールや道路標識用ポール等の鋼管柱を、道路等の躯体
に固定するための鋼管柱基部及びそのような鋼管柱基部
の強化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】上記のような鋼管柱をコンクリート等か
らなる躯体に固定する鋼管柱基部としては、図5に示す
ように鋼管柱10の下端部にベースプレート11を溶接
するとともに、鋼管柱10とベースプレート11との間
を複数枚のリブ12により補強した構造が一般的であ
る。各リブ12は平板状であり、上端部が斜めになった
いわゆる三角リブとなっている。各リブ12は鋼管柱1
0に対してT字溶接されている。そしてベースプレート
11をアンカーボルト13を用いて躯体に固定すること
によって、鋼管柱10を垂直に支持している。
【0003】しかし上記のような従来の鋼管柱基部は、
風や振動などによって鋼管柱10に曲げモーメントが作
用したとき、リブ12の溶接止端部14付近の鋼管柱1
0に大きい応力集中が生じ、繰返し応力によりこの部分
の強度が低下するおそれがあった。また、リブ12の上
端部の回し溶接部が溶接熱による引張り残留応力と熱影
響部材質劣化との重複により構造欠陥となりやすく、耐
力や疲労性能が低下するという問題があった。
【0004】このような問題は構造部材に補強用のリブ
をT字溶接した接合構造体に共通するものであって、日
本鋼構造協会「鋼構造物の疲労設計指針・同解説」で
も、ガセットをすみ肉溶接した継手が鋼部材の耐力や疲
労性能を低下させるので、設計に配慮するように指摘さ
れている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記した従来
の問題点を解決し、鋼管柱に繰返し曲げモーメントが作
用した場合においてもリブの溶接止端部付近の強度低下
を抑制することができ、またリブの上端部の回し溶接部
の耐力や疲労性能の低下を防止することができる鋼管柱
基部及び鋼管柱基部の強化方法を提供するためになされ
たものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めになされた本発明の鋼管柱基部は、鋼管柱の基部にT
字溶接された板状のリブの溶接止端部に、超音波振動に
よるピーニング処理部を形成したことを特徴とするもの
である。また本発明の鋼管柱基部の強化方法は、鋼管柱
の基部に板状のリブをT字溶接したのち、各リブの溶接
止端部に超音波振動によるピーニング処理を施すことを
特徴とするものである。なお、処理区間の母材に鋼管軸
方向の引張応力が作用するような荷重を鋼管柱基部に与
えた状態で、超音波振動によるピーニング処理を施すこ
とにより、さらに強化効果を高めることができる。超音
波振動によるピーニング処理の好ましい条件は、振幅2
0〜50μm、振動数10〜50kHzである。
【0007】上記のように本発明によれば、鋼管柱の基
部にT字溶接された板状のリブの溶接止端部に、超音波
振動によるピーニング処理を施す。この処理は超音波に
より棒状工具を軸方向に振動させ、その先端を処理対象
となる金属表面にあてがうことによって表面を窪ませる
方法である。この方法によれば、金属表面に高密度のエ
ネルギを与えて塑性変形を生じさせ、応力集中を緩和さ
せるとともに、溶接止端部に圧縮残留応力を与えること
により、鋼管柱基部を強化することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下に本発明の好ましい実施形態
を示す。図1において、10は道路照明用ポールや道路
標識用ポール等として用いられる鋼管柱、11はこの鋼
管柱10の下端部に溶接されたベースプレート、12
は、鋼管柱10とベースプレート11との間を補強する
ためにT字溶接された複数枚のリブである。各リブ12
は平板状で上端部が斜めになったいわゆる三角リブとな
っている。そして道路用ポールの場合には、ベースプレ
ート11をアンカーボルト13を用いてコンクリート製
の躯体に固定することにより、鋼管柱10を垂直に支持
している。以上の構成は従来と同様である。
【0009】しかし本発明においては、各板状のリブ1
2の溶接止端部14に、図2に示されるように超音波振
動によるピーニング処理部20が形成されている。この
超音波振動によるピーニング処理は、図3に示されるよ
うに超音波打撃装置21の棒状工具22の先端を処理対
象となる金属表面に当てて軸方向に超音波振動させ、処
理対象部分に打撃を与え表面を窪ませる方法である。
【0010】棒状工具22の先端は一般的に断面円形で
あり、その直径は1〜6mm程度が好ましい。直径が1
mm未満では強度が不足して十分な打撃を与えることが
できず、直径が6mmを超えると質量が大きくなるため
に超音波振動を行なわせ難くなるためである。
【0011】棒状工具22の振動数は10〜50kH
z、振幅は20〜50μmが望ましい。これは鋼材に与
えられる打撃のエネルギーがこの周波数の領域で効率よ
く大きくなることによる。また振幅が20μm未満では
十分な打撃を与えることができない一方、振幅が50μ
mを超えると、鋼材に入る塑性変形が大きくなり過ぎる
ことがあり、好ましくない。
【0012】上記のような条件で処理された金属表面
は、高密度のエネルギにより塑性変形を生じて0.1〜
0.5mm程度の深さに凹み、表層から10mm以上の
深さまで引張応力を導入することができる。また表層か
ら100μm程度の深さまで金属組織に大きな変化を生
じてホワイトレイヤーと呼ばれる組織層が形成され、良
好な耐食性、耐磨耗性、摩擦抵抗の低減を図ることがで
きる。
【0013】本発明ではこのような超音波振動によるピ
ーニング処理部20を、図2に示されるように各板状の
リブ12の溶接止端部14に形成する。ピーニング処理
部20はリブ12の上端から少なくとも10mm程度下
方まで形成することが好ましい。この結果、溶接止端部
14の応力集中が緩和されるとともに、溶接止端部14
に引張応力が導入され、疲労強度が飛躍的に向上する。
また前記したようにリブ12の溶接止端部14は溶接熱
による引張り残留応力と熱影響部材質劣化との重複によ
り構造欠陥となり易い部分であるが、超音波振動による
ピーニング処理により組織変化を生じさせることによっ
て、微細なクラックなどの構造欠陥をも修復することが
できる。
【0014】従って本発明の方法により強化された鋼管
柱基部は、風や振動などによって鋼管柱10に曲げモー
メントが作用したときにリブ12の溶接止端部付近に生
ずる大きい応力集中を緩和することができ、また後記す
る実施例のデータに示されるように、この部分の疲労強
度を著しく向上させることができる。しかも本発明は超
音波打撃装置21以外の付帯設備を必要とせず、現場に
おいても容易に施工できる利点がある。
【0015】なお、通常は鋼管柱10の基部にT字溶接
された各リブ12の溶接止端部14に超音波打撃装置2
1の棒状工具22の先端を当ててピーニング処理を施せ
ばよいが、処理区間の母材に鋼管軸方向の引張応力が作
用するような荷重(例えば曲げ荷重)を鋼管柱基部に与
えた状態で、超音波振動によるピーニング処理を施すこ
ともできる。このようにして外力を加えて引張応力を作
用させた状態でピーニング処理を施して溶接止端部14
に圧縮応力を与えれば、外力を取り除くとさらに大きい
圧縮応力を溶接止端部14に残留させることが可能とな
る。このため一段と優れた補強効果を得ることができる
ようになる。
【0016】以上の説明では各リブ12の溶接止端部1
4のみに超音波振動によるピーニング処理を施したが、
その他の溶接部にもピーニング処理を施しても差し支え
ないことはもちろんである。しかしリブ12の下方部分
等は鋼管柱基部の疲労強度を直接左右する部分ではない
ため、あまり実益はないと考えられる。
【0017】
【実施例】図1に示す構造の鋼管リブ廻りの部分試験片
に繰返し引張り応力を加え、疲労強度試験を行なった。
使用した材料は鋼管、リブともにSM490である。リ
ブを溶接したままの従来構造の疲労特性は、図4に黒丸
で示すように鉄道橋設計示方書の設計寿命曲線のE等級
〜D等級に相当するものであった。これに対して、溶接
止端部に超音波振動によるピーニング処理を施した本発
明品の疲労特性は、白丸で示すように設計寿命曲線のB
等級以上にまで大幅に上昇した。なお、先端工具の振幅
は40μmであり、振動数は30kHzとした。
【0018】さらに引張応力が作用する荷重を鋼管柱基
部に与えた状態で、超音波振動によるピーニング処理を
施した場合には、その疲労特性は黒三角で示すように設
計寿命曲線のA等級にまで上昇した。しかも、疲労亀裂
を発生した溶接止端部に超音波振動によるピーニング処
理を施したものも、白三角で示すように設計寿命曲線の
A等級にまで上昇した。このデータは、超音波振動によ
るピーニング処理が疲労亀裂を修復する機能を持つこと
を裏付けるものである。
【0019】なお、図4のグラフ中に示した右上向きの
矢印は、その時点で試験体に変化が見られなかったの
で、載荷を終了したことを意味する。またn=2は試験
体数が2体であることを意味する。ただしこの試験に使
用した部分試験片の溶接品質は非常にグレードが高いも
のであるため、通常の工業製品レベルでは疲労寿命が若
干短くなる可能性がある。
【0020】
【発明の効果】以上に説明したように本発明によれば、
リブの溶接止端部に超音波振動によるピーニング処理を
施すことにより、リブ上端の回し溶接部の耐力や疲労性
能の低下を防止することができる。その結果、鋼管柱に
繰返し曲げモーメントが作用した場合においてもリブの
溶接止端部付近の強度低下がなく、長期間にわたり使用
しても安全上の問題がない。しかも本発明は鋼管柱基部
の構造を変える必要がないため、既存の設備に対しても
容易に適用できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す斜視図である。
【図2】超音波振動によるピーニング処理部分の説明図
であり、(A)は側面図、(B)は正面図、(C)は斜視図であ
る。
【図3】超音波打撃装置の側面図である。
【図4】実施例における疲労強度試験の結果を示すS-
N曲線である。
【図5】従来例を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 鋼管柱 11 ベースプレート 12 リブ 13 アンカーボルト 14 溶接止端部 20 ピーニング処理部 21 超音波打撃装置 22 棒状工具
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 近藤 哲己 東京都千代田区大手町2−6−3 新日本 製鐵株式会社内 Fターム(参考) 2D064 AA11 AA22 BA01 BA19 CA04 DB03

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼管柱の基部にT字溶接された板状のリ
    ブの溶接止端部に、超音波振動によるピーニング処理部
    を形成したことを特徴とする鋼管柱基部。
  2. 【請求項2】 鋼管柱の基部に板状のリブをT字溶接し
    たのち、各リブの溶接止端部に超音波振動によるピーニ
    ング処理を施すことを特徴とする鋼管柱基部の強化方
    法。
  3. 【請求項3】 処理区間の母材に鋼管軸方向の引張応力
    が作用するような荷重を鋼管柱基部に与えた状態で、超
    音波振動によるピーニング処理を施すことを特徴とする
    請求項2記載の鋼管柱基部の強化方法。
  4. 【請求項4】 振幅20〜50μm、振動数10〜50
    kHzの条件下で超音波振動によるピーニング処理を施
    すことを特徴とする請求項2または3に記載の鋼管柱基
    部の強化方法。
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