JP2002525131A - 生物学的組成物においてウイルスを選択的に不活化する方法 - Google Patents

生物学的組成物においてウイルスを選択的に不活化する方法

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JP2002525131A JP2000572416A JP2000572416A JP2002525131A JP 2002525131 A JP2002525131 A JP 2002525131A JP 2000572416 A JP2000572416 A JP 2000572416A JP 2000572416 A JP2000572416 A JP 2000572416A JP 2002525131 A JP2002525131 A JP 2002525131A
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クラーク マクフォーター エドソン
アンドレイ エイ. パーマル
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ブイ.アイ. テクノロジーズ インク.
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、ウイルスを不活化する条件において、調製物中の動物ウイルスの少なくともいくつかを不活化するために十分な期間、選択的なエチレンイミンオリゴマー不活化剤を調製物に接触させることを含む、成熟すると核を失う精製哺乳類細胞(例えば、赤血球または血小板)の調製物において、動物ウイルスを不活化する方法を特徴とする。同様に、ウイルス不活化後に、如何なる消去剤も加えずに、処置した生物学的組成物からエチレンイミンオリゴマー不活化剤を除去する方法も開示する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】発明の背景 本発明は、血液のような、生物学的組成物において動物ウイルスを選択的に不
活化する方法および組成物に関する。
【0002】 外傷による損傷後(または手術の際)、生物は、血液の損失による死を防止す
るために輸血を必要とする場合がある。ヒトおよび特定の家畜動物では、輸血に
よって、そうでなければ血液の損失によって死亡したであろう損傷個体が生存で
きるようになった。
【0003】 全血は、多くの異なるタイプの蛋白質および細胞で構成される。血液蛋白質に
は、抗体、補体蛋白質、および血液凝固カスケードに関係する蛋白質が含まれる
。さらに、異なるタイプの血球のそれぞれが生物の健康を維持するために独自の
役割を果たしている。例えば、赤血球は、多細胞生物の細胞への、そして細胞か
らの酸素と二酸化炭素ガスの輸送にとって必須である。もう一つのタイプの血球
である血小板は、血液凝固の開始に関与している:血小板減少症の患者は血小板
が欠乏しており、出血性障害を起こしやすい。
【0004】 輸血を用いる際に一つ注意しなければならないことは、血液媒介ウイルスがド
ナー血液からレシピエントに伝播する危険性である。ウイルス性疾患(例えば、
A型、B型、およびC型肝炎、後天性免疫不全症候群、ならびにサイトメガロウイ
ルス感染症)の血液または血液製剤による伝播は、医学における重要な問題であ
る。ドナー血液をウイルスマーカーに関してスクリーニングすれば、レシピエン
トに対するウイルス伝播を減少させるために役立ちうるが、多くのスクリーニン
グ方法はごく少数の別個のウイルスのみを対象としており、したがって、不完全
であるか、または感度が100%未満である。
【0005】 血液中に存在するウイルスと共に、哺乳類およびハイブリドーマ細胞株、細胞
株の産物、乳汁、初乳、尿ならびに精液のような他の生物学的組成物中に存在す
るウイルスを不活化できる多くの物質が開発されている。例えば、エチレンイミ
ンモノマーおよびエチレンイミンオリゴマーは、非常に有効なウイルス不活化剤
である。これらの物質はそれ自身毒性があり、したがって血液または乳蛋白質の
ような産物を臨床的に用いる前に無毒にしなければならない。典型的に、エチレ
ンイミンダイマーのようなウイルス不活化剤は、組成物中に存在する可能性があ
る感染性ウイルスを不活化するために生物学的組成物に加えられる。次に、失活
剤を加えて、ウイルスの不活化が起こった後に残っているエチレンイミンダイマ
ーを不活化させる。その結果、最終的に、感染性ウイルスを比較的含まないが、
失活させた不活化剤と失活剤とが混入している生物学的組成物となる。
【0006】発明の概要 一般的に、本発明は、哺乳類の精製無核細胞調製物においてウイルスを不活化
する方法、および不活性溶液によって洗浄することによって、処置した生物学的
組成物からウイルス不活化剤を除去する方法を特徴とする。
【0007】 したがって、第一の局面において、本発明は、ウイルスを不活化させる条件下
で、調製物中の動物ウイルスの少なくとも一部を不活化させるために十分な期間
、選択的エチレンイミンオリゴマー不活化剤を調製物に接触させることを含む、
哺乳類の精製無核細胞の調製物において動物ウイルスを不活化する方法を特徴と
する。
【0008】 本発明の第一の局面の様々な態様において、細胞は赤血球、または血小板であ
り、エチレンイミンオリゴマーはPEN102である。他の態様において、調製物中の
動物ウイルスの少なくとも90%が不活化される、または好ましくは、調製物中の
動物ウイルスの少なくとも98%が不活化される。もう一つの態様において、哺乳
類細胞はヒト、ヒト以外の霊長類、家畜哺乳類、または遺伝子操作した哺乳類で
ある、哺乳類に由来する。
【0009】 第一の局面のもう一つの態様において、本方法は、エチレンイミンオリゴマー
を失活させない溶液によって、接触させた調製物を洗浄する段階をさらに含み、
該洗浄によって洗浄した調製物中のエチレンイミンオリゴマーの濃度が減少する
段階。好ましくは、洗浄した調製物中のエチレンイミンオリゴマーの濃度は、毒
性を示すエチレンイミンオリゴマーの濃度、またはそれ未満である。他の態様に
おいて、溶液は滅菌非緩衝生理食塩液であり、洗浄は手動で行う。
【0010】 第一の局面のもう一つの態様において、洗浄は以下の段階を含む:(i)無核
細胞の直径より小さい直径の孔を有するメッシュ上で、接触させた調製物を層状
にする段階;および(ii)接触させた調製物の上で、エチレンイミンオリゴマー
を失活させない溶液を絶えず流動させる段階。さらにもう一つの態様において、
洗浄は以下の段階を含む:(i)調製物の容量の少なくとも3倍量の溶液を加え
る段階;および(ii)調製物から該溶液を除去する段階。好ましくは、洗浄は少
なくとも2回繰り返す。
【0011】 第一の局面のもう一つの態様において、洗浄は自動である。好ましくは、洗浄
工程において、接触させた調製物を含む容器は、無菌条件下で以下の段階を実施
する機械である:(i)容器から調製物をポンプで送り出す段階;(ii)エチレ
ンイミンオリゴマーを失活させない溶液によって調製物を希釈する段階;(iii
)調製物から溶液を除去し、溶液が廃棄される段階;および(iv)調製物をポン
プによって容器に戻す段階。好ましくは、機械は段階(ii)および(iii)を少
なくとも2回実施する。
【0012】 本発明の第一の局面のもう一つの態様において、本方法は、接触させた調製物
を失活剤によって失活させる段階をさらに含む。失活剤は溶液であってもよく、
または固相支持体上に固定してもよい。
【0013】 第二の局面において、本発明は、以下の段階を含む、生物学的組成物中の動物
ウイルスを選択的に不活化する方法を特徴とする:(a)ウイルスを不活化させ
る条件下で、組成物中の動物ウイルスの少なくとも一部を不活化するために十分
な期間、選択的エチレンイミンオリゴマー不活化剤を組成物に接触させる段階;
および(b)エチレンイミンオリゴマーを失活させない溶液によって組成物を洗
浄する段階であって、洗浄によって組成物中のエチレンイミンオリゴマーの量が
減少する段階。好ましくは洗浄した組成物中のエチレンイミンオリゴマーの濃度
は、毒性を示すエチレンイミンオリゴマーの濃度またはそれ未満である。様々な
態様において、溶液は滅菌非緩衝生理食塩液であり、洗浄段階は自動である。
【0014】 本発明の第二の局面のさらにもう一つの態様において、洗浄段階において、接
触させた組成物を含む容器は、無菌条件下で以下の段階を実施する機械に存在す
る:(i)容器から組成物をポンプで送り出す段階;(ii)エチレンイミンオリ
ゴマーを失活させない溶液によって該組成物を希釈する段階;(iii)該組成物
から溶液を除去する段階であって、溶液が廃棄される段階;および(iv)該組成
物をポンプによって容器に戻す段階。好ましくは、機械は段階(ii)および(ii
i)を少なくとも2回実施する。
【0015】 第二の局面のさらにもう一つの態様において、洗浄段階は、(i)組成物の容
量の少なくとも3倍量の溶液を加えること;および(ii)該組成物から溶液を除
去すること、を含む。好ましくは、洗浄段階は少なくとも2回繰り返す。
【0016】 第二の局面の様々な他の態様において、本組成物は哺乳類細胞を含み、洗浄段
階は以下の段階を含む:(i)哺乳類細胞の直径より小さい直径の孔を有するメ
ッシュ上で、接触させた組成物を積層する段階;および(ii)接触させた該組成
物の上に、エチレンイミンオリゴマーを失活させない溶液を絶えず流動させる。
哺乳類細胞は無核細胞(例えば、血小板または赤血球)であってもよい。他の態
様において、本組成物は無細胞組成物であり、洗浄段階は手動である。
【0017】 「精製」とは、表示の成分を容積で少なくとも50%、より好ましくは少なくと
も70%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも95%
、および最も好ましくは少なくとも98%を含む調製物を意味する。例えば、赤血
球の精製調製物は容積で赤血球を少なくとも50%含む。
【0018】 「エチレンイミンオリゴマー」とは、(1)アジリジノ部分またはハロ-炭化水
素-アミン部分、および好ましくは(2)炭化水素部分で隔てられた2つまたはそ
れ以上の窒素原子を有する化合物を意味する。これらの化合物はまた、「不活化
剤」、または「選択的不活化剤」とも呼ばれる。本発明の一つの好ましいエチレ
ンイミンオリゴマーはPEN102であり、以下の式で表される:
【化1】
【0019】 本発明の第二の好ましいエチレンイミンオリゴマーは、PEN103であり、以下の
式で表される:
【化2】
【0020】 不活化剤は、核酸に対する「選択性」を有し、または不活化剤と核酸との反応
の相対速度が、他の生体分子、例えば蛋白質、炭水化物または脂質との反応速度
より大きい場合には核酸に「選択的に」反応する。
【0021】 「核酸」とは、一本鎖および二本鎖の、DNAおよびRNAの双方を意味する。
【0022】 核酸について言及する場合「不活化した」、「不活化」または「不活化する」
とは、例えば、メッセージの複製能、転写能または翻訳能を破壊することによっ
て、DNAまたはRNAの鋳型活性を実質的に消失させることを意味する。例えば、RN
A分子の翻訳の阻害は、適したインビトロまたはインビボ翻訳系において産生さ
れたRNAの明確な量によってコードされた蛋白質の量を測定することによって決
定することができる。ウイルスについて言及する場合、この用語は、感染力価、
または1 mlあたりの感染ウイルス粒子数の減少として測定した、感染性ウイル
ス粒子数の減少または消失を意味する。感染性ウイルス粒子のそのような減少は
、当業者に周知のアッセイ法によって決定される。
【0023】 「ウイルスを不活化する条件」とは、ウイルスゲノムを所望の程度に不活化さ
せるために、例えば選択的不活化剤の処置期間、pH、温度、塩の組成および濃度
を含む、ウイルス粒子を、本発明の選択的エチレンイミンオリゴマー不活化剤と
共にインキュベートする条件を意味する。ウイルスを不活化する条件は、参照と
して本明細書に組み入れられる、米国特許出願第08/855,378号に記載の核酸の選
択的改変条件から選択される。
【0024】 「動物ウイルスの少なくとも一部を不活化する」とは、処置した調製物中のウ
イルスの少なくとも50%が不活化される、好ましくはウイルスの少なくとも70%
が不活化される、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なく
とも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なく
とも99%、および最も好ましくは処置した調製物中のウイルスの100%が不活化
されることを意味する。調製物中のウイルスの数は、調製物1 mlあたりの感染
性ウイルス粒子の数または力価によって測定してもよい。そのような測定は、多
様な周知のウイルス力価アッセイ法によって行うことができる。
【0025】 「動物ウイルス」とは、動物由来の細胞に感染することができるウイルスを意
味する。動物ウイルスは、DNAまたはRNAウイルスであってもよく、外皮を有する
、または外皮を有しないウイルスまたはウイロイドであってもよい。動物ウイル
スの例には、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、パポバウ
イルス、パルボウイルス、レオウイルス、オルビウイルス、ピコルナウイルス、
ロタウイルス、アルファウイルス、ルビウイルス、インフルエンザウイルスA型
およびB型、フラビウイルス、コロナウイルス、パラミクソウイルス、麻疹ウイ
ルス、肺炎ウイルス、ラブドウイルス、リッサウイルス、オルスミクソウイルス
、ブニヤウイルス、フレボウイルス、ナイロウイルス、ヘパドナウイルス、アレ
ナウイルス、レトロウイルス、エンテロウイルス、リオウイルス、およびフィロ
ウイルスが含まれるが、これらに限定されない。動物ウイルスの定義から特に除
外されるウイルスは、動物以外の細胞に感染するウイルス(例えば、細菌細胞に
感染するバクテリオファージ)である。
【0026】 「生物学的組成物」とは、細胞を含む組成物、1つもしくは複数の生体分子を
含む組成物、または細胞と1つもしくは複数の生体分子の双方を含む組成物を意
味する。細胞含有組成物には、例えば、哺乳類の血液、赤血球濃縮物、血小板濃
縮物、白血球濃縮物、血漿、血小板に富む血漿、精液、胎盤抽出物、哺乳類の培
養細胞、または培養培地、発酵産物、および腹水が含まれる。生物学的組成物は
また、無細胞であってもよく、少なくとも1つの生体分子を含んでもよい。「生
体分子」とは、例えば、核酸、ポリペプチド、翻訳後修飾された蛋白質(例えば
糖蛋白質)、多糖類、および脂質を含む、生体に通常認められる任意のクラスの
有機分子を意味する。生体分子含有生物学的組成物には、例えば血清、血球蛋白
質、血漿濃縮物、血漿蛋白質画分、精製もしくは部分精製血液蛋白質もしくは他
の成分、血漿の如何なる画分からの上清もしくは沈降物、精製もしくは部分精製
血液成分(例えば、蛋白質もしくは脂質)、哺乳類の初乳、乳汁、尿、唾液、細
胞溶解物、凍結沈殿物、凍結上清、またはその一部もしくは誘導体、血球におい
て誘導される蛋白質を含む組成物、および正常もしくは形質転換細胞(例えば、
組換えDNAまたはモノクローナル抗体技術によって)による培養細胞において生
じた産物を含む組成物が含まれる。
【0027】 「無核細胞」とは、成熟すると、核を失う細胞を意味する。無核細胞の好まし
い例は、血小板および赤血球である。
【0028】 「エチレンイミンオリゴマーを失活させない溶液」とは、失活剤(例えば、チ
オリン酸塩またはチオ硫酸塩)を含まない溶液を意味する。失活剤は、エチレン
イミンオリゴマーと接触させると、接触したエチレンイミンオリゴマーを無毒に
する。エチレンイミンオリゴマーと反応することができない好ましい溶液は、非
緩衝生理食塩液および水である。
【0029】 「失活剤」とは、エチレンイミンオリゴマーと接触させた場合に、接触したエ
チレンイミンオリゴマーを無毒にすることができる、チオリン酸塩もしくはチオ
硫酸塩、またはチオリン酸塩もしくはチオ硫酸塩を含む化合物を意味する。
【0030】 「家畜哺乳類」とは、ヒトが維持するヒト以外の任意の哺乳類を意味する。例
えば、ウシ、ロバ、ラバ、ゾウ、ウマ、ラマ、ラクダ、ヤギ、ヒツジ、トナカイ
、イヌ、ネコ、ブタ、フェレット、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、およ
びモルモットが家畜動物である。さらに、ペットとしてのスカンク、またはペッ
トとしてのオオカミヒトのように、ヒトがペットとして維持する如何なる哺乳類
も家畜哺乳類である。
【0031】 「絶滅危惧哺乳類」とは、1998年9月25日現在、米国魚類野生動物局が編集す
る絶滅危惧種リストに含まれる哺乳動物を意味する。
【0032】 現在のところ、赤血球調製物は、事前にウイルスを不活化することなくレシピ
エントに輸血するために用いられている。したがって、本発明の方法および組成
物は、輸血にそれらを用いる前に赤血球調製物においてウイルスを不活化するこ
とを可能にする。本明細書に記述した不活化剤は、ウイルスの主成分である核酸
に対して選択的であるため、ウイルス核酸は、赤血球調製物中に存在する他の分
子(例えば、蛋白質および脂質)より選択的に不活化される。
【0033】 さらに、本発明は、ウイルスを不活化した後に、失活剤を用いないで生物学的
組成物からエチレンイミンオリゴマーを除去するインビトロ方法を特徴とする。
本方法によって、混入ウイルスのみならず、失活した(すなわち無毒の)エチレ
ンイミンオリゴマーおよび無反応の失活剤を比較的含まない生物学的組成物が得
られる。
【0034】 本発明の他の特徴および利点は以下の説明および特許請求の範囲から明らかと
なると思われる。
【0035】詳細な説明 本発明者らは、調製物をエチレンイミンオリゴマー不活化剤で処置することに
よって、無核細胞調製物においてウイルスを選択的に不活化する方法を見出した
。例えば、ほとんどの成熟哺乳類赤血球は、他の脊椎動物の赤血球とは異なり、
核を欠損しており、したがって、核酸を欠損している。したがって、核酸を不活
化するエチレンイミンオリゴマー不活化剤で細胞を処置すると、赤血球に影響を
及ぼさずに、赤血球調製物に混入している如何なるウイルスの核酸をも選択的に
不活化できる。したがって、下記に示すように、赤血球調製物におけるエチレン
イミンオリゴマーによる核酸の不活化は、細胞のインビボ寿命に影響を及ぼさな
い。同様に、成熟血小板細胞(血小板としても知られる)も核を欠損するため、
それらも、ウイルス不活化エチレンイミンオリゴマーでの処置によって同様に影
響を受けない。
【0036】 本発明はまた、エチレンイミンオリゴマーを失活させない溶液(例えば、滅菌
非緩衝生理食塩液)によって組成物を繰り返し洗浄することによって、組成物を
使用する前に、処置した生物学的組成物(例えば、血液)からエチレンイミンオ
リゴマーを除去する方法も提供する。生物学的組成物が細胞を含有する組成物(
例えば、精液)である場合、処置した細胞は、エチレンイミンオリゴマーを失活
させない溶液中に再懸濁し、細胞を遠心によって単離する段階を繰り返すことに
よって洗浄してもよい。生物学的組成物が無細胞組成物(例えば、乳汁)である
場合、処置した乳汁蛋白質を、例えば、エチレンイミンオリゴマーを失活させな
い溶液で希釈した後、透析してエチレンイミンオリゴマーを除去してもよい。
【0037】 このように、処置した生物学的組成物においてエチレンイミンオリゴマーを失
活剤によって不活化させ、生物学的組成物を、失活したエチレンイミンオリゴマ
ーおよび過剰量の失活剤が混入したままにする現行の方法とは異なり、本発明の
方法は、ウイルスと失活剤の双方を含まない生物学的組成物を生成する。
【0038】エチレンイミンオリゴマー 本発明のエチレンイミンオリゴマー不活化剤は、(1)アジリジノ部分または
ハロ-炭化水素-アミン部分、および好ましくは(2)炭化水素部分で隔てられた
二つまたはそれ以上の窒素原子、を有する化合物である。例えば、エチレンイミ
ンオリゴマーは、以下の5個の式の1個を有してもよい:
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【0039】 エチレンイミンオリゴマーはまた、これがエチレンイミンの本質的な特性(す
なわち、核酸の不活化)を失わない限り、置換することができる。一つの変法に
おいて、エチレンイミンオリゴマーをハロゲンによって置換し、一般式β-Hal-(
CH2-CH2-NH)nHを有する。好ましくは、「n」は2から5までの整数である。
【0040】 本発明のエチレンイミンオリゴマー不活化剤はまた、アジリジノ化合物および
ハロ-炭化水素-アミン化合物の双方を含む。
【0041】 アジリジノ化合物は以下の式を有する:
【化8】 式中、R1、R2、R3、R4、R6、R7、およびR8はそれぞれ、独立してHまたは、炭素
原子1〜4個までを有する一価炭化水素部分であるが、但し、R1、R2、R3、R4
R6、R7、およびR8は全てHとはなりえず;R5は炭素原子2〜4個までを含む二価
炭化水素部分であり;Xは薬学的に許容される対イオンであり;且つnは2〜10ま
での整数である。これらの化合物はハロ-炭化水素-アミノ化合物のアジリジン開
始重合化によって調製することができる。
【0042】 ハロ-炭化水素-アミン化合物は式ω-X1-[R1-N+(R2,R3)-]nR4・(X2 -)nとなり得
て、式中X1はClまたはBrであり;R1は炭素原子2〜4個までを含む二価炭化水素
部分であり;R2、R3およびR4のそれぞれは独立してH、または炭素原子1〜4個
までを含む一価炭化水素部分であるが、但しR1が炭素原子2個を含む場合、R2
R3、およびR4は全てHとはなり得ず;X2は薬学的に許容される対イオンであり;
且つnは2〜10までの整数である。これらの化合物は対応するハロ-炭化水素-ア
ミノ化合物のオリゴマー形成によって調製することができる。
【0043】 または、これらの化合物は、式β-X1-CH2CH2-N+H(R1)-[R2-N+(R3,R4)-]nR5・(X 2 - )n+1となりえて、式中X1はClまたはBrであり;R1、R3、R4およびR5のそれぞれ
は独立してH、または炭素原子1〜4個までを含む一価炭化水素部分であり;R2
は炭素原子3または4個を含む二価炭化水素部分であり;X2は薬学的に許容され
る対イオンであり;且つnは2〜10までの整数である。これらの化合物は、ハロ-
炭化水素-アミノ化合物のアジリジン開始オリゴマー形成の後に、アジリジノ基
を対応するハロゲン化物に変換させることによって調製しうる。
【0044】 生物学的組成物においてウイルスを不活化するためにエチレンイミンオリゴマ
ーを生成および使用する方法は、参照として本明細書に組み入れられる、米国特
許出願第08/835,446号(1997年4月8日提出)、第08/521,245号(1995年4月29
日提出)、第08/855,378号(1997年3月13日提出)、第09/005,606号(1998年1
月12日提出)、および第09/005,719号(1998年1月12日提出)に一般的に記載さ
れている。
【0045】無核細胞調製物 輸血の目的はしばしば、赤血球の移入であるため、白血球(例えば、リンパ球
、好中球、および血小板)および生体分子(例えば、凝固因子および補体)のよ
うな他の血液成分からこれらの細胞を分離することが望ましい場合がある。一つ
の例において、輸血を行う前に、全血を以下の成分に分離してもよい:(1)赤
血球(RBC)部分(白血球の一部を含む)および(2)血漿(白血球の一部を同様
に含む)。
【0046】 他の血液成分から赤血球を分離するための標準的な方法が存在する。例えば、
フィコールまたはパーコール勾配を用いて密度の差に基づいて全血の異なる成分
を分離してもよい。そのような勾配は、例えば、ファルマシアバイオテック社(
アップサラ、スウェーデン)から市販されている試薬を用いて生成してもよい。
【0047】 さらに、MCS(登録商標)+アフェレーシスシステム(ハモネティックス社から
販売、ブレインツリー、マサチューセッツ州)のような市販のシステムを用いて
、全血から赤血球を単離してもよい。このシステムはまた、他の無核細胞(例え
ば血小板細胞)を全血から分離するために用いてもよいことに注目すべきである
【0048】処置した生物学的組成物からのエチレンイミンオリゴマー化合物の除去 エチレンイミンオリゴマーは、ウイルス核酸の選択的な不活化のために有用な
化合物であるが、それらの固有のアルキル化能のために、それらはほとんどの有
核細胞にとって毒性となる可能性がある。したがって、処置した赤血球をレシピ
エント動物に導入する前に、細胞からエチレンイミンオリゴマーを除去すること
、またはエチレンイミンオリゴマーの濃度を無毒なレベルに少なくとも減少させ
ることが望ましい。当然のこととして、細胞または生体分子をインビボで用いる
場合には、エチレンイミンオリゴマー処置段階に加えて洗浄段階も無菌条件下で
行わなければならない。
【0049】 本発明者らは、エチレンイミンオリゴマーの毒性(すなわち、変位誘発)レベ
ルを検出するためにマウスリンパ腫変異誘発アッセイ法を用いて、下記の実験に
おいて用いられるエチレンイミンオリゴマーの毒性レベルは、PEN102では、1μ
g/mlより大きい(すなわちPEN102の1μg/mlまたはそれ未満の濃度が無毒である
)ことを見出した。他のエチレンイミンオリゴマーの毒性レベルは、マウスリン
パ腫変異誘発アッセイ法を用いて容易に評価できる。したがって、洗浄段階の目
的は、処置した所望の生物学的組成物中のエチレンイミンオリゴマーの濃度を、
無毒であることが決定されたレベルまたはそれ未満に減少させることである。
【0050】 処置した赤血球調製物からエチレンイミンオリゴマー化合物を除去する1つの
方法は、非緩衝滅菌生理食塩液(すなわち、滅菌0.9%NaCl)によって細胞に繰
り返し洗浄を行うことである。それぞれの洗浄段階の後、処置すべき(および洗
浄すべき)生物学的組成物の試料に、これまで毒性であると決定された濃度以上
の濃度でエチレンイミンオリゴマーが存在するか否かを調べてもよい。濃度が毒
性レベルであることが判明したら、それが非常に低レベルであっても、処置した
組成物をインビボで用いる前に少なくともさらに1回の洗浄段階を行うべきであ
る。安全策として、エチレンイミンオリゴマーの無毒レベルに一度達しても、処
置した組成物をインビボで用いる前にさらにもう一度洗浄段階を実施することが
好ましい。
【0051】 全血の処置後に赤血球(RBC)を洗浄する一つの例において、処置した全血を
滅菌0.9%NaClの約3倍量で希釈する(すなわち、血液5 mlに生理食塩液15 ml
を加える)。遠心してRBC成分を単離した後、赤血球沈層容積を滅菌0.9%NaClの
約9倍量に再懸濁し、22℃で10分間混合する(機械によって静かに攪拌しながら
)。次に、RBC成分を遠心によって単離して、RBC成分中のエチレンイミンオリゴ
マーの濃度が無毒であることが決定された濃度(例えば、下記のマウスリンパ腫
変異誘発アッセイ法を用いて決定する)またはそれ未満になるまで、滅菌生理食
塩液の9倍量による洗浄段階を繰り返す。
【0052】 第二の例において、単離された血小板(例えば、標準的な血液バンク施設で血
小板フェレーシスを用いて単離された)を、血小板調製物中のウイルスの少なく
とも一部を不活化するために十分なエチレンイミンオリゴマーの濃度を用い十分
な時間およびインキュベーション温度で処理する。次に、エチレンイミンオリゴ
マーの濃度が無毒であることが決定された濃度またはそれ未満となるまで、血小
板を滅菌生理食塩液の少なくとも4倍量で繰り返し洗浄する。
【0053】 もう一つの例において、組成物が既知の直径の細胞を含む場合、細胞の直径よ
り小さい直径の孔を有するメッシュで細胞を回収して、その後細胞中のエチレン
イミンオリゴマーの濃度を無毒レベルに低下させるために十分な期間、エチレン
イミンオリゴマーを失活させない溶液の連続的な流れの下で洗浄する。当然のこ
ととして、メッシュ上に積層される細胞が少ない程、連続的な流れの下で細胞を
洗浄するために必要な時間は短くなる。この洗浄方法の変法において、エチレン
イミンオリゴマー処置細胞は細胞の直径より小さい直径の孔を有するメッシュバ
ッグに回収してもよい。次に、バッグを、細胞中のエチレンイミンオリゴマー濃
度が無毒レベルに減少するまで、エチレンイミンオリゴマーを失活させない溶液
に繰り返し浸してもよい。
【0054】 以下の実施例に記載した洗浄段階は無菌条件での手動の洗浄であるが、生物学
的組成物がエチレンイミンオリゴマーを含まないようにするために自動洗浄を用
いてもよいことが理解されると思われる。例えば、無菌条件下でエチレンイミン
オリゴマーによって処置した細胞を洗浄する機械をデザインしてもよい。
【0055】 そのような機械の一つの例において、精製血小板を、ウイルス不活化条件下で
、血小板調製物においてウイルスの少なくとも一部を不活化するために十分な期
間、エチレンイミンオリゴマーによって処置してもよい。この処置段階は、滅菌
プラスチックバッグのような滅菌容器においてエチレンイミンオリゴマーと血小
板とを混合することによって行ってもよい。次に、機械が無菌条件でバッグから
細胞をポンプで送り出すことができるように(そして、さらに滅菌0.9%NaClに
よってバッグをすすぐことができるように)、バッグを機械に取り付けてもよい
。完全な無菌条件下において、次に機械は、血小板を滅菌生理食塩液で希釈して
、所望の温度にて所望の時間血小板と静かに混合し、遠心によって血小板を回収
して、「使用済みの」滅菌0.9%NaClを廃棄して、「新しい」0.9%NaClを加えて
、混合・遠心・廃棄プロセスを所望の回数繰り返すことができる。遠心によって
血小板を最終的に回収した後、血小板を「新鮮な」0.9%NaCl、または他の所望
の溶液(例えば、血液)に再懸濁して、元の容器に戻してもよい。このように、
ウイルスを不活化して洗浄された血小板は、直ちに使用してもよく、保存または
必要に応じて凍結してもよい。
【0056】エチレンイミンオリゴマーの毒性スクリーニング エチレンイミンオリゴマーがウイルス核酸を不活化することができる同じアル
キル化能によって、哺乳類細胞のゲノムDNAも損傷を受ける、および/または該
ゲノムDNAに変異を誘発しうる。したがって、エチレンイミンオリゴマー処置生
物学的組成物をインビボで用いる前に(または例えば、インビトロ受精のために
処置した精液の場合にはインビトロで)、組成物中のエチレンイミンオリゴマー
の濃度を、ほとんどの哺乳類細胞に対して無毒であるレベルまで減少させること
が望ましい。
【0057】 マウスリンパ腫変異誘発アッセイ法は、特定のエチレンイミンオリゴマーの毒
性濃度レベルを決定する一つの方法である。このアッセイ法は、特定のエチレン
イミンオリゴマーの異なる濃度をスクリーニングするために、毒素である、5-ト
リフルオロチミジン(TFT)の存在下で増殖させた、チミジンキナーゼ(TK)座
がヘテロ接合(すなわち、TK+/-)であるマウスリンパ種細胞を使用する。TK+/-
細胞およびTK-/-細胞はいずれも正常な培養培地において生存可能であるが、TK+
/-細胞は、毒性のTFTをそのDNAに取り込むため、TFTの存在下ではTK-/-細胞のみ
が増殖する。TK+/-マウスリンパ腫細胞をエチレンイミンオリゴマーの毒性濃度
に暴露すると、それらは、一段階フォワード変異を起こしてTK-/-遺伝子型とな
り、TFTの存在下で増殖可能となる。このように、5-トリフルオロチミジン(TFT
)の存在下でTK+/-マウスリンパ腫細胞の増殖が起こらないエチレンイミンオリ
ゴマーの濃度が無毒である。
【0058】 エチレンイミンオリゴマーPEN102の毒性レベルをスクリーニングするために本
発明者らが下記で用いた変異誘発試験は、コンバンス・ラボラトリーズインク(
ビエナ、バージニア州)によって実施された。5-トリフルオロチミジン(TFT)
の存在下で増殖させたL5178Yマウスリンパ腫細胞(TK座がヘテロ接合である)に
、様々な濃度のPEN102を暴露した。その結果、PEN102の1μg/ml濃度は5-トリフ
ルオロチミジン(TFT)の存在下でL5178Y TK+/-細胞を増殖(すなわちフォワー
ド変異)させないことが示された。したがって、PEN102の1μg/ml未満またはこ
れに等しい濃度は無毒であり、PEN102の1μg/mlまでを含むPEN102処置した生物
学的組成物(例えば、処置したRBC調製物)は、レシピエントに注入しても安全
である。
【0059】エチレンイミンオリゴマーの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)解析 エチレンイミンオリゴマーは、陽イオン交換HPLCによって定常的に解析される
。エチレンイミンオリゴマーは、発色団を含まないため、以下の方法は、一級ア
ミノ基に限って反応するカラム後誘導体化を利用しており、このため、多数の反
応部位(エチレンイミンオリゴマーは、一級アミノ基1個のみを含む)または干
渉化合物によって反応が複雑になることはない。PEN102および失活させたPEN102
のHPLCの際に起こる反応の図式を図1に示す。方法は、PEN102の10〜230 ngの範
囲内で直線的であることが決定された。
【0060】a. HPLC解析の出発物質 HPLCカラム後反応ハードウェアの概略図を図2に示す。 1.リン酸カリウム溶出剤、ピッカリングラボラトリーズ、カタログ番号1700-1
101;pH 6.00;0.1 N(Pickering Laboratories, Inc.、マウンテンビュー、カ
リフォルニア州)。 2.塩化カリウム溶出剤、ピッカリングラボラトリーズ、カタログ番号1700-110
2;pH 6.00;0.1 N。 3.o-フタルアルデヒド(OPA)希釈剤、ピッカリングラボラトリーズ、カタロ
グ番号OD104。 4.o-フタルアルデヒド(OPA)希釈剤、ピッカリングラボラトリーズ、カタロ
グ番号O120。 5.チオフルオロ、ピッカリングラボラトリーズ、カタログ番号3700-2000。 6.窒素、等級4.8 7.装置および条件 ベックマン126溶媒モジュール(または同等物);(Beckman Instruments Inc
.、フラートン、カリフォルニア州)。 ベックマンゴールドヌーボー(Beckman Gold Nouveau)ソフトウェア(または同
等物) ジャスコFP-920インテリジェント蛍光検出器(Jansco Inc.、イーストン、メ
リーランド州) ピッカリングラボラトリーズPCX 3100カラム後反応モジュール アルキオン陽イオン交換カラム4×150 mm;ピッカリングラボラトリーズ、カ
タログ番号9410917 励起波長:330 nm 吸収波長:465 nm カラム温度:40℃ 反応器温度:45℃ 反応器ポンプ流速:0.3 ml/分。
【0061】b. 試薬溶液の調製 1.希釈剤に窒素ガスを通すことによって、OPA希釈剤450 mlを約10分間脱気す
る。 2.最小量のメタノールにo-フタルアルデヒド(OPA)約0.05 gを溶解して、OPA
希釈剤を加える。 3.少量のOPA希釈剤にチオフルオロ約1 gを溶解して、段階2からのOPA溶液に
加える。
【0062】c. PEN102のHPLC解析のプロトコール 本方法は、エチレンイミンオリゴマーの一級アミノ基のカラム後の誘導体化お
よび蛍光検出と共に陽イオン交換クロマトグラフィーを使用する。PEN102のHPLC
溶出プロフィールを図3に示す。 1.リン酸カリウム溶出剤、pH 6中で試料を調製する。PEN102 1μlを最終濃度
1:8×104となるように溶出剤で希釈する。 2.塩化カリウム溶出剤pH 6を使用する。 3.分析のために試料10 μlを注入する。流速は0.8 ml/分に設定する。 4.0〜4分、100%流速リン酸カリウム溶出剤;4〜8分、0〜100%流速塩化
カリウム溶出剤;9〜10分、100〜0%流速塩化カリウム溶出剤。 5.分析の間に、100%リン酸カリウム溶出剤によってカラムをさらに10分間再
度平衡化する。
【0063】 この方法は、混入に対して非常に感受性があるため、緩衝液または試料を調製
する際は常に手袋を着用しなければならない。
【0064】 以下の特定の実施例は、単なる説明として解釈されるべきであり、いずれにせ
よ、開示の残りを制限すると解釈されない。さらに、実施例のいくつかは、全血
にエチレンイミンオリゴマーを加えてから、血液成分を単離することを記述して
いるが、好ましくは、所望の血液成分(例えば、赤血球)を単離してからエチレ
ンイミンオリゴマーを加える。これによって、所望の血液成分に含まれるウイル
スを不活化するために必要なエチレンイミンオリゴマーの量が減少するのみなら
ず、他の無処置の血液成分(例えば、血漿)を保持することが可能となり、その
後(または同時に)エチレンイミンオリゴマーによってウイルスを不活化しても
よい。例えば、ウイルス不活化血漿を用いて、血液凝固因子またはアルブミンの
ようなウイルス不含血漿蛋白質を精製してもよい。
【0065】実施例I PEN102またはPEN103によって処置したヒヒRBCの生化学 新鮮なヒヒ血液15 mlをヒヒ205(ナバル血液研究ラボラトリー)から、CPD-AD
SOL(血液凝固を防止する標準的な血液保存溶液)に採取した。新鮮な全血を240
mM PEN102の0.25 M NaH2PO4溶液0.79 mlによって処置した(PEN102の20倍保存
溶液は、処置の直前に調製した)。血液中のPEN102の最終濃度は12 mM(1000 μ
g/ml;0.1%v/v)であった。対照実験として、0.25 M NaH2PO4溶液0.79 mlを新
鮮なヒヒ血液15 mlに加えた。対照およびPEN102処置試料を共に、室温で揺り動
かしながら6時間インキュベートした。インキュベーション期間の終了後、赤血
球細胞を遠心によって分離して、PEN102を除去せずに一連の生化学パラメータを
直ちに決定した。
【0066】 さらに、第二のエチレンイミンオリゴマーPEN103について平行した実験を実施
した。上記のように、新鮮なヒヒ血液15 mlをヒヒ205(ナバル血液研究ラボラト
リー)から、CPD-ADSOLに採取した。新鮮な全血を310 mM PEN103の0.5 M NaH2PO 4 溶液0.79 mlによって処置した(PEN103の20倍保存溶液は処置の直前に調製した
)。PEN103の血液中の最終濃度は15.5 mM(2000 μg/ml;0.2%v/v)であった。
対照実験として、0.5 M NaH2PO4溶液0.79 mlを新鮮なヒヒ血液15 mlに加えた。
対照およびPEN103処置試料を共に、室温(すなわち22℃)で揺り動かしながら6
時間インキュベートした。インキュベーション期間の終了後、赤血球を遠心によ
って分離して、PEN103を除去せずに一連の生化学パラメータを直ちに決定した。
【0067】 表1はRBC生化学試験の結果を示す。
【表1】 12 mM PEN102または15.5 mM PEN103によって22℃で6時間処置したCP
D-ADSOLヒヒRBCの生化学
【0068】 表1からわかるように、対照(すなわち、無処置)、PEN102処置、またはPEN1
03処置血液の間に有意差は認められなかった。したがって、PEN102またはPEN103
を処置しても、赤血球の生化学機能に影響を及ぼさないと考えられる。
【0069】実施例II PEN102処置および洗浄ヒヒRBCの生化学とインビボ生存性 IIa 新鮮なCPDヒヒ血液のPEN102による処置 ヒヒ214(ナバル血液研究ラボラトリー)からCPDに採取した新鮮なヒヒ血液80
ml(遠心HCT 38%)を、240 mM PEN102の0.25 M NaH2PO4溶液4.2 mlによって処
置した(PEN102の20倍保存溶液は処置直前に調製した)。血液中のPEN102の計算
した最終総濃度は12 mMであった(1000 μg/ml;0.1%v/v)。
【0070】 IIb 新鮮な全CPDヒヒ血液におけるRBCおよび血漿へのPEN102の分布。 血液を室温で6時間インキュベートした後、血液を血漿画分と赤血球(RBC)
画分に分離した。血漿およびRBC画分中のPEN102濃度を、上記のようにHPLC解析
を用いて決定した。
【0071】 血漿画分におけるPEN102の濃度は、10.7 mM(893 μg/ml)であることが判明
したが、RBC画分中のPEN102の濃度は5.6 mM(469 μg/ml)に過ぎなかった。し
たがって、6時間のインキュベーション後、血液のRBCおよび血漿画分は総PEN10
2のそれぞれ24%および76%を含有していた(図4)。
【0072】 IIc PEN102処置後のヒヒRBCの手動による洗浄 処置したヒヒ血液80 mlを、50 mlの滅菌チューブ6本に分割した(それぞれ約
13 ml)。それぞれの部分におけるRBCの平均容積は約5 mlであった。非緩衝滅
菌生理食塩液(すなわち、0.9%NaCl水溶液)を加えてそれぞれのチューブに約5
0 mlとなるように満たした。RBC画分を2000 rpm(1248×g)で5分間遠心するこ
とによって分離し、希釈した血漿画分を除去した。
【0073】 次に、RBC画分に洗浄サイクルを実施した:残りのRBC(それぞれのチューブに
約5 ml)に、非緩衝滅菌生理食塩液(約4.5 ml)の新しい部分を加えた。チュ
ーブは室温で10分間緩く攪拌してインキュベートした。インキュベーション終了
時、RBC画分を遠心によって分離した。それぞれのサイクルの終了時、少量のRBC
懸濁液を採取して、PEN102の濃度をHPLCによって測定した(上記の方法を参照の
こと)。
【0074】 洗浄サイクルは4回繰り返した。第4のサイクルの後、RBCのチューブ6本を
合わせて、非緩衝滅菌生理食塩液を、最終的なヘマトクリット(HCT)が46%と
なるように加えた。洗浄技法の効果を図5に示し、これはRBC画分においてPEN10
2の百分率が急速に減少したことを証明している。それぞれの洗浄サイクル後にR
BC画分に残存しているPEN102の濃度(RBCのμg/ml)を図6に示す。図6のデー
タは、4回洗浄後のRBCにおけるPEN102の残留濃度が、PEN102の安全レベル、す
なわちマウスリンパ腫細胞に対する変異誘発試験(コバンス社が実施、ビエナ、
バージニア州)によって決定された1μg/mlより低かったことを証明している。
【0075】 IId PEN102処置、洗浄、および18時間保存後のヒヒRBCの生化学 洗浄して、処置したRBC(上記のIIc章を参照のこと)を、0.9%生理食塩液-0.
2%グルコースに、ヘマトクリット(HCT)が約46%となるように再懸濁し、4℃
で一晩(18時間)保存した。保存の後、一連の生化学パラメータを決定した。こ
れらの処置、洗浄、および保存RBCについて実施した生化学試験の結果を表2に
示す。
【表2】 対照(無処置)ならびにPEN102-処置、洗浄、および保存したヒヒRBC
の生化学 * 新鮮な無処置CPDヒヒ血液 ** PEN102によって処置して、洗浄し、4℃で18時間保存したヒヒCPD血液。
【0076】 図5および6に示すように、処置したRBCの手動での洗浄サイクルを4回行う
と、PEN102の濃度は、手引きとなる変異誘発試験において決定された安全性レベ
ル未満に効果的に減少した。表2は、RBCをPEN102によって処置した後、洗浄し
て、4℃で18時間保存しても、RBCの主要な生化学的特性に影響を及ぼさなかっ
たことを示している。
【0077】 IIe RBCの処置後のインビボ生存性 ヒヒ214からのPEN102処置RBCの5 mlを、標準的な標識プロトコールを用いて5 1 Crまたはビオチンのいずれかによって標識した(例えば、バレリ(Valeri)ら
、Transfusion 24:105〜108、1984参照)。例えば、RBCを51Crによって標識す
る場合、RBC約20〜30 mlを、血液1 ml(例えば、デュポン/NEN社、ボストン、
マサチューセッツ州から販売されている)当たり、0.5 μCi 51Cr (クロム酸二
ナトリウム)と共に37℃で30分インキュベートした後、洗浄して、取り込まれて
いない51Cr-標識を除去した。RBCは、カルビオケム社(サンジエゴ、カリフォル
ニア州)から販売されているビオチン-X-NHSキットを用いてビオチン標識した。
次に、51Cr標識RBCおよびビオチン標識RBCを合わせて、ヒヒ214に注入して戻し
た。表2は、ヒヒ214から採取して、標識し、再度注入した正常RBCのインビボ生
存時間と、PEN102処置して、洗浄して、保存したRBCのインビボ生存時間との比
較を示す。RBCの半減期(T50)は日数で示す。
【表3】 RBCのPEN102処置後のインビボ生存性
【0078】 表3に示すように、12 mM PEN102によってヒヒRBCを処置した後、手動で洗浄
して、RBCを4℃で18時間保存しても、RBCの生化学または寿命のいずれにも影響
を及ぼさなかった。
【0079】実施例III チオ硫酸ナトリウムまたは固相失活剤によって処置したヒト血液におけるエチレ
ンイミンオリゴマーの失活 処置した赤血球からエチレンイミンオリゴマーを除去するもう一つの方法にお
いて、可溶性(すなわち、チオ硫酸ナトリウム)、または固相のいずれかである
失活剤を用いた。本実施例において記述した試薬および方法は、パーマル(Purm
al)ら「固相クエンチングシステム(Solid Phase Quenching Systems)」(199
8年9月25日に提出された米国特許出願第09/161,078号)により詳細に記述され
ている。
【0080】 この実験において、120 mM PEN102の0.25 M NaH2PO4溶液50 μlを全ヒトCPD血
液0.9 mlに加えて(PEN102の最終濃度は6 mM、全体で6μモル)、23℃で4時
間インキュベートした。4時間のインキュベーション期間の終了時、アルゴポア
(ArgoPore)-チオリン酸塩支持体68 mg(ホスホチオモノエステル基の50 μモル
等量)を加えた。平行実験において、1 M Na2S2O3 50 μl(最終濃度50 mM)を
、PEN102処置血液の同量に加えた。いずれの試料も23℃で2時間インキュベート
した。血液の赤血球(RBC)および血漿画分を、遠心(10,000 rpm、5分)によ
って分離して、9倍量の水を加えてRBCを破裂させた。PEN102の濃度を、HPLCに
よって血液のRBCおよび血漿画分において決定した(図7)。
【0081】 図7に示すように、チオ硫酸ナトリウムと固相結合チオリン酸基はいずれも、
PEN102を失活させることができた。2時間後、チオ硫酸ナトリウムによって失活
させた血漿は、PEN102 6.8 μg/mlを含むに過ぎず、チオ硫酸ナトリウムによっ
て失活させた赤血球はPEN102 2.2 μg/mlを含んでいた。チオ硫酸基を含む固相
失活剤は、さらにより有効であった。この系によって失活させた血漿はPEN102 1
.5 μg/mlを含むに過ぎず、赤血球は2時間後でPEN102 0.9 μg/mlを含むに過ぎ
なかった。このように、PEN102処置赤血球細胞を固相失活剤と共に2時間インキ
ュベートすると、赤血球におけるPEN102の濃度は無毒レベルに低下した。
【0082】実施例IV エチレンイミンオリゴマー処置、洗浄、および凍結したイヌRBCのインビボ生存
血液をイヌから採取して、2つに分けた。最初の部分を、その部分における動
物ウイルスの少なくとも一部を不活化するために十分量のエチレンイミンオリゴ
マーと共にインキュベートする。インキュベーション後、この処置部分から赤血
球を単離して、上記のように滅菌非緩衝生理食塩液によって4回洗浄して、グリ
セロール中で-70℃にて2週間凍結した。
【0083】 同時に、第二の部分を22℃で6時間インキュベートするが、エチレンイミンオ
リゴマーは加えない。インキュベーション後、赤血球を単離して、滅菌生理食塩
液によって4回洗浄した後、グリセロール中で-70℃にて2週間凍結した。
【0084】 凍結インキュベーション時間の2週間後、細胞を融解して、第一の部分の細胞
(すなわち、エチレンイミンオリゴマー処置部分)を51Crによって標識し、第二
の部分の細胞(すなわち、無処置部分)をビオチンで標識する。次に、細胞を合
わせて、ドナーのイヌに再注入する。51Cr標識赤血球の生存期間を、ビオチン標
識細胞の生存期間と比較したところ、両者の間には有意差が存在しないと予想さ
れる。したがって、エチレンイミンオリゴマー処置は、インビボでイヌ赤血球の
生存時間に影響を及ぼさない。
【0085】実施例V PEN102処置、洗浄、および凍結したヒヒ血小板のインビボ生存性 新鮮なヒヒ血液80 mlをヒヒから採取して、血小板を残りの血液成分(廃棄す
る)から直ちに分離する。精製した血小板を等量の2つに分けて、その一つ(す
なわち、PEN102処置部分)を、血小板含有溶液中のPEN102の計算した最終総濃度
が12 mM(1000 μg/ml;0.1%v/v)となるように、240 mM PEN 102の0.25 M NaH 2 PO4溶液(PEN102の20倍保存溶液は処置直前に調製する)2.1 mlによって室温で
6時間処置する。第二の部分(すなわち、無処置部分)は、0.25 M NaH2PO4の2.
1 mlによって室温で6時間処置する。
【0086】 次に、血小板の2つの部分を遠心によって分離して、上清を除去した。次に、
沈殿した細胞を滅菌緩衝生理食塩液に再懸濁し、ロッカー上で室温にて10分間イ
ンキュベートして、遠心によって再度沈降させる。この再懸濁/沈降を4サイク
ル行った後、血小板をグリセロール中で-70℃にて2週間凍結する。
【0087】 2週間後、血小板の処置および無処置部分を融解して、上記のように51Crによ
って標識する。盲検試験において、51Cr標識PEN102処置血小板をレシピエントの
ヒヒ1匹に輸血して、51Cr標識無処置血小板を第二のレシピエントヒヒに輸血す
る。レシピエントヒヒはいずれも同じ性別であり、ほぼ同じ年齢である。PEN102
処置血小板のT50は無処置血小板の値とほぼ同一であると予想される。
【0088】実施例VI エチレンイミンオリゴマー処置、洗浄、および保存ヒトRBCの生化学およびイン
ビボ生存性 ヒト血液ドナーから献血された血液を、血液中の動物ウイルスの少なくとも一
部を不活化するために十分量のエチレンイミンオリゴマーと共にインキュベート
する。インキュベーション後、MCS(登録商標)+アフェレーシスシステム(ヘモ
ネティックス社、ブレインツリー、マサチューセッツ州から販売されている)を
用いて、エチレンイミンオリゴマー処置血液を3つの成分に分離する:(1)赤
血球(RBC)、(2)血小板、および(3)血漿。血漿と血小板はグリセロール中
で凍結して-70℃で保存する。
【0089】 単離したRBCをヒトRBCの直径より小さい直径の孔を有するメッシュ上に広げて
、細胞中のエチレンイミンオリゴマーの濃度が上記のマウスリンパ腫フォワード
変異アッセイ法において無毒であると決定された濃度またはそれ未満になるまで
、滅菌非緩衝生理食塩液の連続的な流れによってすすぐ。次に、洗浄した細胞を
4℃で18時間保存する。細胞の試料を2つに分ける。洗浄、処置、および保存し
たRBCの2つの部分の第一の部分に、一連の生化学パラメータに関して試験を行
う。洗浄、無処置のRBC試料と比べてわかるように、洗浄、処置されたRBCの生化
学特性に有意な変化は見られないと予想される。
【0090】 洗浄、処置、および保存RBCの2つの部分の第二の部分をビオチンで標識して
、同じヒトドナーに再注入して戻した。ビオチン標識細胞を追跡すると、エチレ
ンイミンオリゴマー処置細胞は、同様に単離(すなわち、MCS(登録商標)+ア
フェレーシスシステムを用いて)、洗浄および保存された無処置ビオチン標識赤
血球と同等の期間、インビボで生存することが示される。
【0091】実施例VII エチレンイミンオリゴマー処置および洗浄ウシ尿からの蛋白質の精製 ウシ尿の第一の試料を採取して、尿におけるウイルスの少なくとも一部を不活
化するために十分量のエチレンイミンオリゴマーと共にインキュベートする。同
時に、ウシ尿の第二の試料を採取して、第一の試料と同じインキュベーション条
件であるが、エチレンイミンオリゴマーを加えずにインキュベートする。次に、
いずれの尿試料もエチレンイミンオリゴマーの濃度が、マウスリンパ腫変異誘発
アッセイ法(上記のように、そしてコバンス、ビエナ、バージニア州によって有
料で実施されている)において毒性であると決定された濃度未満となるまで滅菌
水で大きく希釈する。
【0092】 次に、両試料からの尿に蛋白質精製技術を行って、所望の尿蛋白質(例えば、
Tamm-Horsfall糖蛋白質)を単離する。標準的な蛋白質精製技術には、HPLCが含
まれ、一般的な実験技術マニュアルに記載されている(例えば、スコープス(Sc
opes, R.K.)「蛋白質の精製:原理と実践(Protein Purification:Principles
and Practice)」カンター(C.R. Cantor)編、スプリング・バーラグインク、
ニューヨーク、ニューヨーク州、1982;コリガン(Colligan, J.E.)「蛋白質科
学の現行プロトコール(Current Protocols in Protein Science)」、ジョンウ
ィリー&サンズ、ニューヨーク、ニューヨーク州、1996参照)。所望の尿蛋白質
の同等の量は、エチレンイミンオリゴマー処置尿および無処置尿の双方から精製
されると予想される。
【0093】他の態様 上記の説明から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に確認することがで
き、様々な用途および条件に適合させるために、本発明に様々な変更および改変
を行うことができ、それらもその精神および範囲に含まれる。このように、他の
態様も同様に、特許請求の範囲に含まれる。
【0094】 さらなる実験を行うことなく、当業者は本明細書の説明に基づいて、本発明を
最大限に利用することができると考えられる。本明細書において言及した全ての
出版物およひ特許出願は、それぞれの独立した出版物または特許出願が参照とし
て本明細書に組み入れられることを特にそして個々に示されるのと同じ程度に参
照として本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 PEN102または失活させたPEN102のカラム後誘導体化の際に起こる
化学反応を示す略図である。
【図2】 エチレンイミンオリゴマーのHPLC解析において用いられるカラム
後反応ハードウェアを示す流れの概略図である。
【図3】 PEN102のHPLC溶出プロフィールである。
【図4】 12 mM(1000 μg/ml;0.1%v/v)PEN102によって20℃で6時間処
置した後の、新鮮なヒヒ全血(遠心ヘマトクリット(HCT)38%)の赤血球成分
と血漿成分に対するPEN102の分布を示す棒グラフである。
【図5】 12 mM PEN102によって20℃で6時間処置した後の、ヒヒ全血(遠
心ヘマトクリット(HCT)38%)の赤血球画分からのPEN102の手動による洗浄の
効果を示す棒グラフである。RBC画分を非緩衝生理食塩液(1:10 v/v)によっ
て20℃で10分間手動で洗浄した回数を示し、RBC画分における残留PEN102を百分
率で示す。
【図6】 1000μg/ml PEN102によって20℃で6時間処置した後の、ヒヒ全
血(遠心ヘマトクリット(HCT)38%)の赤血球画分からのPEN102の手動による
洗浄の効果を示す棒グラフである。RBC画分を非緩衝生理食塩液(1:10 v/v)
によって20℃で10分間手動で洗浄した回数を示し、RBC画分における残留PEN102
をRBC1 mlあたりのPEN102のμgとして示す。
【図7】 50 mM チオ硫酸ナトリウムまたは等量のアグロポア(AgroPore)-
チオリン酸固相(チオリン酸モノエステル基を含む固相失活剤)のいずれかによ
って23℃で2時間インキュベートした後の、ヒト血液(血漿(灰色の棒)および
赤血球(黒色の棒))からのPEN102(6 mM)のエチレンイミンダイマーの失活
を示す棒グラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) //(C12N 7/06 (C12N 7/06 C12R 1:93) C12R 1:93) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZW ),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU, TJ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ, BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,C U,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,GD ,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN, IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,L K,LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK ,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO, RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,T M,TR,TT,UA,UG,UZ,VN,YU,ZA ,ZW (72)発明者 アッカーマン サミュエル ケイ. アメリカ合衆国 マサチューセッツ州 ウ エストン キングス グラント ロード 175 Fターム(参考) 4B065 AA90X AA93X AA95X BD13 BD15 BD34 BD50 CA43 CA44 CA46 4C087 AA01 AA02 AA05 BB34 BB36 BB38 DA06 MA66 NA01 ZA52 ZA53

Claims (35)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 精製した哺乳類の無核細胞の調製物において、動物ウイルス
    を不活化する方法であって、ウイルスを不活化させる条件下で、該調製物中の動
    物ウイルスの少なくともいくつかを不活化するために十分な期間、選択的エチレ
    ンイミンオリゴマー不活化剤と、該調製物とを接触させる段階を含む方法。
  2. 【請求項2】 上記細胞が赤血球である、請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 上記細胞が血小板である、請求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】 上記エチレンイミンオリゴマーがPEN102である、請求項1記
    載の方法。
  5. 【請求項5】 上記調製物中の動物ウイルスの少なくとも90%が不活化され
    る、請求項1記載の方法。
  6. 【請求項6】 上記調製物中の動物ウイルスの少なくとも98%が不活化され
    る、請求項5記載の方法。
  7. 【請求項7】 上記哺乳類が、ヒト、ヒト以外の霊長類、家畜哺乳類および
    絶滅危惧哺乳類からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
  8. 【請求項8】 上記エチレンイミンオリゴマーを失活させない溶液によって
    上記の接触させた調製物を洗浄する段階をさらに含み、該洗浄段階が該洗浄した
    調製物中の該エチレンイミンオリゴマーの濃度を減少させる、請求項1記載の方
    法。
  9. 【請求項9】 上記の洗浄した調製物における上記エチレンイミンオリゴマ
    ーの上記濃度が、毒性である上記エチレンイミンオリゴマーの濃度である、また
    はそれより低い、請求項8記載の方法。
  10. 【請求項10】 上記溶液が滅菌非緩衝生理食塩液である、請求項8記載の
    方法。
  11. 【請求項11】 上記洗浄が手動である、請求項8記載の方法。
  12. 【請求項12】 上記洗浄が以下の段階を含む、請求項8記載の方法: (i)上記無核細胞の直径より小さい直径の孔を有するメッシュ上に、上記の接
    触した調製物を積層する段階;および (ii)該接触させた調製物の上に、上記エチレンイミンオリゴマーを失活させな
    い上記溶液を絶えず流動させる段階。
  13. 【請求項13】 上記洗浄段階が以下の段階を含む、請求項8記載の方法:
    (i)上記調製物の少なくとも3倍量である容積の上記溶液を加える段階;およ
    び (ii)上記調製物から上記溶液を除去する段階。
  14. 【請求項14】 上記洗浄段階が少なくとも2回繰り返される、請求項13記
    載の方法。
  15. 【請求項15】 上記洗浄段階が自動である、請求項8記載の方法。
  16. 【請求項16】 上記洗浄工程において、上記の接触させた調製物を含む容
    器が無菌条件下で以下の段階を実施する機械に存在する、請求項15記載の方法:
    (i)上記容器から上記調製物をポンプで送り出す段階; (ii)上記エチレンイミンオリゴマーを失活させない上記溶液によって上記調製
    物を希釈する段階; (iii)上記溶液が廃棄される、上記調製物から上記溶液を除去する段階;およ
    び (iv)上記容器に上記調製物をポンプで戻す段階。
  17. 【請求項17】 上記の機械が段階(ii)および(iii)を少なくとも2回
    行う、請求項16記載の方法。
  18. 【請求項18】 上記の接触した調製物を失活剤によって失活させる段階を
    さらに含む、請求項1記載の方法。
  19. 【請求項19】 上記失活剤が可溶性である、請求項18記載の方法。
  20. 【請求項20】 上記失活剤が固相支持体に固定されている、請求項18記載
    の方法。
  21. 【請求項21】 以下の段階を含む、生物学的組成物において動物ウイルス
    を選択的に不活化する方法: (a)ウイルスを不活化させる条件下で、上記組成物における動物ウイルスの少
    なくともいくつかを不活化するために十分な期間、選択的エチレンイミンオリゴ
    マー不活化剤を上記組成物に接触させる段階; (b)エチレンイミンオリゴマーを失活させない溶液によって、上記組成物を洗
    浄する段階であって、該洗浄段階により該組成物中の上記エチレンイミンオリゴ
    マーの量を減少させる段階。
  22. 【請求項22】 上記の洗浄した組成物中の上記エチレンイミンオリゴマー
    の上記濃度が、毒性である上記エチレンイミンオリゴマーの濃度、またはそれ未
    満である、請求項21記載の方法。
  23. 【請求項23】 上記の溶液が滅菌非緩衝生理食塩液である、請求項21記載
    の方法。
  24. 【請求項24】 上記洗浄段階が自動である、請求項21記載の方法。
  25. 【請求項25】 上記の洗浄段階において、上記の接触させた組成物を含む
    容器が無菌条件下で以下の段階を実施する機械に存在する、請求項24記載の方法
    : (i)上記容器から上記組成物をポンプで送り出す段階; (ii)上記エチレンイミンオリゴマーを失活させない上記溶液によって上記組成
    物を希釈する段階; (iii)上記組成物から上記溶液を除去する段階であって、該溶液が廃棄される
    段階;および (iv)上記容器に上記組成物をポンプで戻す段階。
  26. 【請求項26】 上記機械が段階(ii)および(iii)を少なくとも2回実
    施する、請求項25記載の方法。
  27. 【請求項27】 上記洗浄段階が以下の段階を含む、請求項21記載の方法:
    (i)上記組成物の少なくとも3倍量である容積の上記溶液を加える段階;およ
    び (ii)上記組成物から上記溶液を除去する段階。
  28. 【請求項28】 上記洗浄段階が少なくとも2回繰り返される、請求項27記
    載の方法。
  29. 【請求項29】 上記組成物が哺乳類細胞を含む、請求項21記載の方法。
  30. 【請求項30】 上記洗浄段階が以下の段階を含む、請求項29記載の方法:
    (i)上記哺乳類細胞の直径より小さい直径の孔を有するメッシュ上に上記の接
    触した組成物を積層する段階;および (ii)上記の接触した組成物の上に、上記エチレンイミンオリゴマーを失活させ
    ない上記溶液を絶えず流動させる段階。
  31. 【請求項31】 上記哺乳類細胞が無核細胞である、請求項29記載の方法。
  32. 【請求項32】 上記哺乳類細胞が血小板である、請求項31記載の方法。
  33. 【請求項33】 上記哺乳類細胞が赤血球である、請求項31記載の方法。
  34. 【請求項34】 上記組成物が無細胞組成物である、請求項21記載の方法。
  35. 【請求項35】 上記洗浄段階が手動である、請求項21記載の方法。
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