JP2002525033A - 植物に疾患抵抗性を付与するPi−ta遺伝子 - Google Patents

植物に疾患抵抗性を付与するPi−ta遺伝子

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Abstract

(57)【要約】 真菌病原体によって引き起こされる疾患に対するPi−ta抵抗性遺伝子仲介防御応答を植物に付与する単離核酸フラグメントの製造および使用が記載されている。このような核酸フラグメントを導入する遺伝子は、単独でまたはAVR−Pita 単離核酸フラグメントまたはその機能的に均等なサブフラグメントおよび適当な調節配列と組み合わせて、各種真菌病原体とくにイネいもち病真菌に対してPi−ta抵抗性遺伝子仲介防御応答を産生できるトランスジェニック植物を創製するために使用できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】
本発明は、真菌病原体によって引き起こされる疾患に対し、植物にPi−ta
抵抗性遺伝子仲介防御応答を付与する単離核酸フラグメントの製造ならびに使用
に関する。このような核酸フラグメントの単独またはAVR−Pita 単離核酸フ
ラグメントもしくはその機能的に均等なサブフラグメントおよび適当な調節配列
との組み合わせを導入する遺伝子は、様々な真菌病原体とくにイネいもち病(bl
ast)真菌に対するPi−ta抵抗性遺伝子仲介防御応答を生じることが可能な
トランスジェニック植物の創製に使用することができる。
【0002】
【背景技術】
植物は、ウイルス、細菌、真菌および線虫を含む広範囲の病原性生物によって
損傷を受けることがある。潜在的な病原体による植物の侵襲は広範囲の帰結を生
じる。すなわち、病原体は宿主内での増殖に成功して関連する疾患症状の原因と
なり、または宿主の防御によりその増殖は停止する。一部の植物−病原体相互作
用では、能動的な防御応答の可視的特徴は、いわゆる過敏性応答(HR)である
。HRには感染部位付近の細胞の急速な壊死が関与し、また可視的な褐色の斑紋
もしくは病変の形成が包含される。与えられた宿主対してHRを誘発する病原体
はその宿主に対して無毒性(AVR)であるといわれ、宿主は抵抗性であるとい
われ、その植物−病原体相互作用は不和合性であるといわれる。特定の宿主上で
増殖して疾患を起こす株は毒性であるといわれ、この場合、宿主は感受性である
といわれ、その植物−病原体相互作用は和合性であるといわれる。
【0003】 特定の真菌または細菌病原体の一連の株(種族)が特定の宿主種の一連の栽培
種に対して毒性であるかまたは非毒性である場合には、遺伝子分析が植物−病原
体認知の遺伝的基礎の説明の補助に用いられてきた。このような場合の多くは、
宿主および病原体両者の遺伝子分析によって、無毒性真菌および細菌株の多くは
宿主中に相当する「抵抗性」(R)遺伝子をもつ1種もしくは2種以上の無毒性
("avr" または「AVR」)遺伝子を有することにより毒性株とは異なることが
明らかにされている。
【0004】 この無毒性遺伝子−抵抗性遺伝子モデルは「遺伝子対遺伝子」モデルと呼ばれ
ている(Cruteら, 1985, pp 197-309, in Mechanisms of Resistance of Plant
Disease. R.S.S.Fraser編; Ellingboe, 1981, Annu.Rev.Phytopathol. 19: 125-
143; Flor, 1971, Annu.Rev.Phytopathol. 9: 275-296)。このモデルの単純な
説明によれば、分子シグナルに特異的な受容体をコードする植物抵抗性遺伝子が
avr 遺伝子を発生させる。ついで、シグナル伝達経路によりシグナルが1組の標
的遺伝子に運ばれ、宿主防御が開始される。この単純な予測的モデルにもかかわ
らず、avr−抵抗性遺伝子相互作用の分子的基盤は依然として不明である。
【0005】 クローン化された最初のR−遺伝子は、トウモロコシ(Zea mays)からのHm
I遺伝子であった。これは真菌病原体 Cochliobolus carbonum の特定の種族に
対する抵抗性を付与する(Johalら, 1992, Science 258: 985-987)。HmIは
病原体により産生される毒素を解毒するレダクターゼをコードする。次にクロー
ン化されたのはトマト(Lycopersicon pimpinellifollium)からのPto遺伝子
であった(Martinら, 1993, Science 262: 1432-1436; 米国特許 5,648,599)。
Ptoは avrPto 無毒性の遺伝子を発現して、トマトに、細菌病原体 Pseudomon
assyringae pv. tomato 株に対する抵抗性を付与するセリン−スレオニンプロテ
インキナーゼをコードする。現在注目されているのは富ロイシンリピート(LR
R)を含有する蛋白質をコードするR−遺伝子である(Jones and Jones, 1997,
Adv. Res. Bot. Incorp. Adv. Plant Pathol. 24: 89-167)。細胞外LRRを
有する膜係留蛋白質の2つのクラスが同定されている。そのサブクラスには真菌
Cladosporium fulvum に対する抵抗性のトマトCf−9遺伝子のような細胞質
セリン/スレオニンキナーゼドメインを欠くR−遺伝子産物が包含され(Jones
ら, 1994, Science 266: 789-793; WO95/18230)、他のサブクラスには細胞質
セリン/スレオニンキナーゼドメインを有するR−遺伝子産物、細菌病原体 Xan
thomonas oryzae に対する抵抗性遺伝子、イネXa−21(Songら, 1995, Science
270: 1804-1806; 米国特許 5,859,339)が包含される。R−遺伝子の最大のク
ラスには細胞質LRRを有する蛋白質をコードする遺伝子、たとえば Arabidops
is R−遺伝子RPS2(Bentら, 1994, Science 265: 1856-1860; Mindrinosら,
1994, Cell 78:1089-1099)およびRPM1(Grantら, 1995, Science 269: 843
-846)が包含される。これらのR−蛋白質はまた推定ヌクレオチド結合部位(N
BS)およびロイシンジッパー(LZ)モチーフまたは Toll/Interleukin−1
受容体(TIR)に同種の配列のいずれかを有する。表1には、現在までにクロ
ーン化されたR−遺伝子のクラスの簡潔なまとめおよび各クラス内のクローン化
された遺伝子の例としてBakerら(1997, Science 276: 726-733)から一部再掲
した。
【0006】
【表1】
【0007】 ヌクレオチド結合部位(NBS)は、基礎的真核細胞機能たとえば細胞増殖、
分化、細胞骨格の組織化、小胞の輸送および防御に重要な蛋白質の多くのファミ
リー中に見いだされる。鍵となる実例には、RASグループ、アデノシントリホ
スファターゼ、延長因子およびG−蛋白質と呼ばれるヘテロトリマーGTP結合
蛋白質が包含される(Sarasteら, 1990, Trends in Biochem. Science 15: 430
)。これらの蛋白質は、共通してATPまたはGTPに結合する能力を有する(
Traut,1994, Eur.J.Biochem. 229: 9-19)。
【0008】 イネいもち病システムは H.H.Flor(Flor, 1971, Annu.Rev.Phytopathol. 19:
125-143)により定義された典型的遺伝子対遺伝子システムを表すものと長い間
考えられていた。イネいもち病病原体 Magnaporthe grisea 中にAVR−遺伝子
を同定するのに必要な遺伝子分析は、イネに感染する M.grisea の野生単離体の
特徴である低い稔性によって妨害されてきた。繁殖力の貧弱な M.grisea イネ病
原体と他の草(たとえば、weeping lovegrass, Eragrostis curvula, およびシ
コクビエ Eleusine coracana)の繁殖力の高い M.grisea 病原体との間の遺伝子
交配によりAVR−遺伝子の同定に要求される性的稔性レベルをもつ真菌の実験
室的株が提供された(Valentら, 1991, Genetics 127: 87-101)。稀な稔性のイ
ネ病原体は以来いもち病真菌AVR−遺伝子と特定のイネR−遺伝子の間の1対
1遺伝性または機能性対応の証明を可能にした(Silueら, 1992, Phytopatholog
y 82: 577-580)。
【0009】 真菌病原体 Magnaporthe grisea(Hebert)Barr(anamorph Pyricularia gris
ea Sacc.)により世界中に引き起こされるイネいもち病は、10年にもわたるその
制御に向けた研究にもかかわらず、イネ穀類に最も激しい損傷を与える可能性の
ある疾患として続いていることから、イネいもち病の病理体系にはきわめて興味
がもたれる。いもち病抵抗性遺伝子の操作は真菌集団が、展開される抵抗性戦略
の打破を徐々に導き出すことから、イネ品種改良プログラムのすべてにおいて、
主要標的の一つとして残されている(The Rice Blast Disease, 1994, Zeigler,
Leong & Teng ed., CAB International, Wallingford 参照)。
【0010】 遺伝子制御戦略を補充するための市販殺カビ剤の使用は、1915年頃にイネの栽
培者が無機銅をベースとした殺カビ剤を用いていた時代に開始された(Chapter
29, The Rice Blast Disease, 1994, Zeigler, Leong & Teng ed., CAB Interna
tional, Wallingford)。いもち病の制御に使用された殺カビ剤は時代とともに
変化し、1950年代には有機水銀のようなある種の化合物が用いられ、大きな環境
汚染を生じた。イネいもち病の殺カビ剤による制御は最近では1年に5億ドルを
越える栽培者の経費となっている。このいもち病制御の出費は世界のイネ殺カビ
剤市場の最大部分を占め、1998年には総計7億5200万ドルに達している
(Wood Mackenzie)。1990年と2025年の間に1年あたり1.7%と推定
される世界的コメ需要の増加に伴い(The Rice Blast Disease, 1994, Zeigler,
Leong & Teng ed, CAB International, Wallingford)この疾患の問題は深刻化
することが考えられる。増加する人口を養うために1年におよそさらに1300
万トンと見積もられるコメの需要増は減少する利用可能な土地での生産の増強に
よらねばならない。高収穫を目指した耕種学的生産実務ではイネいもち病には恵
まれ、したがって、イネいもち病に対し永続性のある遺伝子抵抗性をイネに操作
できるのでなければ、コメ穀類収率を抑制するものとしてこの疾患は続き、むし
ろ増加が見込まれる。本発明はとくにイネいもち病抵抗性遺伝子の一つのクロー
ン化を目標とするものであり、イネいもち病に対して永続性のある抵抗性遺伝子
を操作する長い間の目的に至る最初の重要な工程に関する。
【0011】 真菌 M.grisea は、緑草科内の様々な種族、Triticeae(たとえば、コムギ)
、Oryzeae(たとえばイネ)、Clorideae(たとえばシコクビエ)、Paniceae(た
とえばトウジンビエ)、Andropogoneae(たとえばモロコシ)および Maydeae(
たとえば、トウモロコシ)を包含する大きな宿主範囲を有する。分子分析により
、現在では、それぞれ限られたセットの宿主種特異的サブ集団を有する M.grise
a の8つの種特異的なサブ集団が定義されている(Valent, 1997, The Mycota V
, Plant Relationships, Carroll/Padzynski, eds., Springer-Verlag Berlin
Heidelberg, pp 37-54)。表2はミトコンドリアDNA(mtDNA)型による病
原体サブ集団の最近の概観を示す。この観察はリボソームDNA(rDNA)多
型[制限酵素断片長多型(RFLP)および内部転写スペーサー(ITS)配列
の両者を含む]、ならびに反復DNAおよび単一コピー配列の両者における多型
の別個の分析によって強く支持される。
【0012】 イネ、コムギ、シコクビエ、オオムギおよびトウモロコシの病原体(mtDNA
型Ia-e)はきわめて類似し、一方 Digitaria spp. および Pennisetum spp. の
病原体(mtDNA型II−IV)は前述のグループからおよび互いに著しく分岐して
いる。しかしながら、M.grisea 株はこの広い宿主範囲にわたり有意な穀物の損
害を起こすことができる。この病原体は、アフリカにおけるシコクビエ(Eleusi
ne coracana)の収穫の損失の主要な原因であり、一方ではコムギ(Triticum ae
stivum; Urashimaら,1993, Plant Disease 77: 1211-1216)、トウジンビエ(Pe
nnisetum glaucum; Hannaら, 1989, J.Heredity 80: 145-147)における感染は
それ程広範ではないが、湿気のある気候条件下にも働くことが可能である。この
疾患はオオムギおよびトウモロコシについても報告されている(Urashimaら, 19
93, Plant Disease 77: 1211-1216 参照)。
【0013】
【表2】
【0014】 植物病原体の真菌についての病原性および宿主特異性の知識は細菌およびウイ
ルス病原体の場合ほど進歩していない。同様に、穀類植物における抵抗性の分子
的基盤についても、双子葉植物もしくは双子葉モデル系、たとえば Arabidopsis
(Bakerら, 1997, Science 276: 726-733)の場合ほど知られていない。Sasaki
はイネいもち病に対する抵抗性の遺伝に関する最初の結果を1917年に日本で始め
た研究から報告した(Sasaki, 1922, Japanese Genetics, Japan 1: 81-85)。
【0015】 このときから、広範な遺伝子分析により全世界で 30 以上のR−遺伝子が定義
され、これらのいもち病抵抗性遺伝子の多くはイネの染色体にマップされている
(Takahashi, 1965, The Rice Blast Disease, Johns Hopkins Press, Baltimor
e,303-329; Causseら, 1994, Genetics 138: 1251-1274 参照)。これらのR−
遺伝子には、20種の主要抵抗性遺伝子と10種の推定定量的特徴部位(QTL
)が包含される。Kiyosawa は13種の主要抵抗性遺伝子について記載し、これ
らの遺伝子中の9種を3つの遺伝子座における多重対立遺伝子として、5種を染
色体11上のPi−k遺伝子座に、2種を染色体6上のPi−z遺伝子座にそし
て2種を染色体12上のPi−ta遺伝子座に見いだした(Kiyosawa, 1984, Ri
ce GeneticsNewsletter 1: 95-97)。日本(Ise, 1992, International Rice Re
search Newsletter 17: 8-9)および International Rice Research Institute
(IRRI)(Mackillら, 1992, Phytopathology 82: 746-749)における最近
の研究はどの抵抗性遺伝子が真菌の個々の株の制御に有効であるかを決定するた
めの「検定」イネ品種として使用される近同質イネ系統(NIL)を産生した。
熱帯地方のいもち病真菌集団のインディカ検定種を提供するIRRI NILは
それらの抵抗性遺伝子と Kiyosawa の検定種に存在する抵抗性遺伝子の間の遺伝
的関係について分析した(Inukaiら, 1994, Phytopathology 84: 1278-1283)。
【0016】 R−遺伝子に緊密に連結した分子マーカー(またはタグ)は品種改良プログラ
ムにおいてそれらのR−遺伝子の有効な浸透および操作に利用できる。近同質系
統、それらのドナーおよびそれらの反復親のゲノタイプパターンを比較すること
によって、Yuら(1987, Phytopathology 77: 323-326)は3つのいもち病抵抗性
遺伝子に連結した5つの制限酵素断片長多型(RFLP)マーカーを同定するこ
と、およびそれらを分断集団の使用によってイネ染色体にマッピングすることが
できた。R−遺伝子に連結したRFLPマーカーが報告されている(Yuら, 1991
,Theor Appl Genet 81: 471-476)。耕種学的に重要なR−遺伝子の分子クロー
ニングは、R−遺伝子を、鍵となる穀類品種における他のインプットおよびアウ
トプット特性と結合させる研究者の能力の更なる進歩を表している。
【0017】 抵抗性の遺伝に関する上述の研究の過程で Sasaki は、いもち病真菌の異なる
野生単離体が、イネの様々な品種に対し疾患を起こす能力には変動のあることを
観察し、イネいもち病真菌病原体の生理学的な種族を発見した(Sasaki, 1922,
Journal of Plant Protection 9: 631-644; Sasaki, 1923, Journal of Plant
Protection 10: 1-10)。イネいもち病真菌に対する主要なR−遺伝子抵抗性の
不安定性または野生条件における「分解」が、異なるイネ品種に対する毒性スペ
クトルによって定義される多数の種族または病理型の同定を生じた(Chapter 13
および 16, The Rice Blast Disease, 1994, ed. Zeigler, Leong & Teng, CAB
International, Wallingford)。病原体集団は新しい抵抗性遺伝子の発生に対し
てダイナミックな応答を示し、時には抵抗性遺伝子の野外での発生から1〜2年
以内に、抵抗性遺伝子を克服する新たな種族を生じた。
【0018】 研究者はまだイネいもち病の病理体系における無毒性遺伝子/R−遺伝子ペア
を徹底的に特性づけるには至っていない。
【0019】 1997年7月15日に Tanksley & Martin に発行された米国特許 5,648,599 には
植物の細菌病原体における無毒性遺伝子に応答して植物に疾患抵抗性を付与する
Pto セリン/スレオニンキナーゼをコードするトマトからの単離遺伝子フラグメ
ントが記載されている。
【0020】 1995年10月26日公開のWO95/28423 には Pseudomonas syringae RPS2遺
伝子ファミリーによる抵抗性、プライマー、プローブおよび検出方法が記載され
ている。この公開国際出願は、病原体に対して植物を保護する特定のNH2−末
端モチーフ、NBSモチーフ、および富ロイシンリピートを有する蛋白質をコー
ドする遺伝子の広範な請求の範囲を包含する。Pi−ta蛋白質のある種のユニ
ークな特徴が示されている。Pi−ta遺伝子産物はRPS2 遺伝子産物サブフ
ァミリーのロイシンジッパーモチーフの可能性(Bentら, 1994, Science 265: 1
856-1860; Mindrinosら, 1994, Cell 78: 1089-1099)またはN遺伝子サブファ
ミリーによりコードされるToll/Interleukin−1 受容体ホモロジー(Whitmanら,
1994, Cell78: 1101-1115)のいずれかを欠くユニークなアミノ末端を有する。
最も重要な点はPi−ta遺伝子産物のカルボキシ末端部分はロイシンに富むが
、R−遺伝子産物について報告されたロイシン富リピートのコンセンサス配列に
は適合しないことである(Jones & Jones, 1997, Adv.Bot.Res.Incorp.Adv.Plan
t Pathol. 24: 89-167)。
【0021】 1996年11月5日に Bakerらに発行された米国特許 5,571,706 はN遺伝子により
付与される植物ウイルス抵抗性をカバーするものである。 1999年1月12日に Staskawiczらに発行された米国特許 5,859,351 にはトマト
の疾患抵抗性に関与するPRF蛋白質および核酸配列が記載されている。
【0022】 1999年1月12日に Ronaldらに発行された米国特許 5,859,339 にはLRRおよ
びセリン/スレオニンキナーゼドメインの両者とともに完全な膜蛋白質をコード
するイネXa−21 からクローン化された最初の抵抗性遺伝子が記載され、これは
イネに細菌の胴枯れ病に対する抵抗性を付与する。
【0023】 1991年10月17日に公開されたWO91/15585 および 1999年2月2日に Witらに発
行された米国特許 5,866,776 には、病原体無毒性遺伝子および相当する植物抵
抗性遺伝子の組み合わせを用いる、病原体に対する植物の保護方法が記載されて
いる。
【0024】 1997年10月7日に Kawasakiらに発行された米国特許 5,674,993('993 特許)
には、イネいもち病抵抗性遺伝子Pi−b、Pi−taおよびPi−ta2 で共
分断される核酸マーカー、ならびにイネいもち病抵抗性遺伝子はこれらの核酸マ
ーカーを用いて単離されクローン化できるとの示唆が記載されている。しかしな
がら '993 特許には、イネいもち病抵抗性遺伝子のヌクレオチド配列は全く提供
されていない。Pi−bイネいもち病抵抗性遺伝子の推定配列は現在、Genbank
(受入番号:AB013448)から入手できることに留意すべきである。
【0025】 さらに Kawasakiらは2つの論文を発表した。第一の論文は“High Resolution
Mapping of the Indica-Derived Rice Blast Resistance Genes.II.Pi-ta2 and
Pi-ta and a Consideration of Their Origin."と題する MPMI, 10(4): 517-524
(1997) である。519頁の12欄の最初に掲げられたRAPDプライマーの配列は、
'993 特許の配列番号:2に掲げられたRAPDプライマーとは同じではない。
この論文におけるプライマー配列は TCCCCAGCCA である。'993 特許におけるプ
ライマー配列は TCGCCAGCCA である。どちらの配列が正しいかは明らかでない。
しかしながら、この論文がイネいもち病遺伝子のヌクレオチド配列は全く示して
いないことは明瞭である。第二の論文は Nakamuraら, Mol.Gen.Genet. 254:611-
62 (1997) である。この論文はイネBACライブラリーを用いてイネいもち病抵
抗性遺伝子Pi−ta2の近セントロメア領域における800−kbコンティグの
構造を記載している。この論文にも、イネいもち病遺伝子のヌクレオチド配列は
開示されていない。
【0026】 したがって Magnaporthe grisea の制御における有用性が証明され、他のイネ
科穀類に対しても同様に、穀類保護のツールとして重要な価値があると思われる
イネからのPi−ta抵抗性遺伝子はこれまで誰によってもクローン化されたこ
とも配列決定されたこともなかったと考えられる。したがって、ここに記載され
る発明は、イネいもち病病原性システムにおけるPi−ta無毒性遺伝子/R−
遺伝子ペアの分子的特徴を初めて提示するものである。
【0027】
【発明の開示】
本発明は、真菌病原体によって引き起こされる疾患に対するPi−ta抵抗性
遺伝子仲介防御応答を付与する単離核酸フラグメントに関し、上記核酸フラグメ
ントは配列番号:1もしくは68に示すヌクレオチド配列またはその機能的に均等
なサブフラグメントに実質的に相当する核酸フラグメントである。
【0028】 他の態様においては、本発明は、真菌病原体によって引き起こされる疾患に対
するPi−ta抵抗性遺伝子仲介防御応答を付与する単離核酸からなる遺伝子に
関し、上記核酸フラグメントは配列番号:1もしくは68に示すヌクレオチド配
列またはその機能的に均等なサブフラグメントに実質的に相当し、これらの核酸
フラグメントは適当な調節配列に操作性に連結している。
【0029】 さらに他の態様においては、本発明は真菌病原体により引き起こされる疾患に
対するPi−ta抵抗性遺伝子仲介防御応答を植物に付与する方法において、真
菌病原体により引き起こされる疾患に対するPi−ta抵抗性遺伝子仲介防御応
答を付与する単離核酸からなる遺伝子を植物に導入することからなり、上記核酸
フラグメントは配列番号:1もしくは68に示すヌクレオチド配列またはその機
能的に均等なサブフラグメントに実質的に相当し、これらのフラグメントは適当
な調節配列に操作性に連結している方法に関する。
【0030】 さらに他の態様においては、本発明は植物の真菌病原体による感染部位に抵抗
性遺伝子仲介防御応答を付与する方法において、(1)真菌病原体によって引き
起こされる疾患に対するPi−ta抵抗性遺伝子仲介防御応答を付与する単離核
酸フラグメントであり、上記核酸フラグメントは配列番号:1もしくは68に示
すヌクレオチド配列またはその機能的に均等なサブフラグメントに実質的に相当
するフラグメントならびに(2)配列番号:5もしくは7に掲げたヌクレオチド
配列またはそれと機能的に均等なサブフラグメントに実質的に相当するAVR−
Pita 単離核酸フラグメントからなる組換え発現構築体で植物をトランスフォー
ムすることからなり、上記核酸フラグメントは調節配列に操作性に連結し、さら
に上記構築体は感染部位に真菌病原体により引き起こされる疾患に対する抵抗性
遺伝子仲介防御応答を植物に付与する方法に関する。
【0031】 本発明はまた、(1)真菌病原体によって引き起こされる疾患に対してPi−
ta抵抗性遺伝子仲介防御応答を付与する単離核酸フラグメントであり、上記遺
伝子フラグメントは配列番号:1もしくは68に示すヌクレオチド配列またはその
機能的に均等なサブフラグメントに実質的に相当するフラグメントならびに(2
)配列番号:5もしくは7に掲げたヌクレオチド配列またはその機能的に均等な
サブフラグメントに実質的に相当するAVR−Pita 単離核酸フラグメントから
なり、上記核酸フラグメントは調節配列に操作性に連結している、真菌病原体に
よって感染部位に引き起こされる疾患に対する抵抗性遺伝子仲介防御応答を植物
に付与する組換え発現構築体に関する。
【0032】 このような遺伝子または組換え発現構築体によりトランスフォームされた植物
、およびこのような植物から得られる種子にも興味がもたれる。
【0033】生物の寄託 真菌株のO−137は、American Type Culture Collection(ATCC), 10801
University Boulevard, Manassas, VA 20110-2209 に寄託され、以下の名称、受
入番号および寄託日を与えられた。日本において Digitaria smutsii から単離
された病原体真菌株G−213 は、Jean Loup Notteghem, Laboratoire de phytop
athologie, Institut de Recherches Agronomiques Tropicales et des Culture
sVivrieres, Centre de Cooperation Internationale en Recherche Agronomiqu
epour le Developpement(CIRAD), BP 5035, 34032 Montpellier Cedex 1
,France の収集から得られ、JP34 の名称で利用可能である。この株もATC
Cに寄託された。
【0034】 生物体 受入番号 寄託日 M. grisea O−137 ATCC 74457 1998年8月3日 M. grisea G−213 PTA-191 1999年6月8日
【0035】配列番号の簡単な説明 本出願の一部である以下の詳細な説明および配列の記載から、本発明はさらに
完全に理解できるものと確信する。配列の記載は 37 C.F.R.1.822(引用により
本明細書に導入される)に記載されたアミノ酸の3文字記号を含有する。ヌクレ
オチド配列は5′から3′へと読む。
【0036】 配列番号:1は Oryza sativa の品種 Yashiro-mochi からのPi−ta遺伝
子のゲノムクローンの5757ヌクレオチド配列である。 配列番号:2は、配列番号:1に掲げたPi−ta遺伝子によってコードされ
る推定蛋白質配列である。 配列番号:3は感受性 Oryza sativa の品種 Tsuyuake からのPi−ta遺伝
子のゲノムクローンの 5113 ヌクレオチド配列である。 配列番号:4は、配列番号:3に掲げたpi−ta遺伝子によってコードされ
る推定蛋白質配列である。 配列番号:5は、M.grisea イネ病原体O−137からのAVR−Pita(以前には
AVR2−YAMOと呼ばれた)cDNAの672ヌクレオチドコード配列であ
る。
【0037】 配列番号:6は、配列番号:5に掲げた配列によってコードされる推定蛋白質
配列である。 配列番号:7は Digitaria 種に感染する M.grisea 病原体G−213からのAV
R−Pita cDNAの675ヌクレオチドコード配列である。 配列番号:8は、配列番号:7に掲げた配列によってコードされる推定蛋白質
配列である。 配列番号:9〜24はPi−ta領域の遺伝子マッピングおよびクローニング
に用いられるオリゴヌクレオチド(RAPD)プライマーの配列である。 配列番号:25〜31はBAC挿入端のPCR増幅に用いられるオリゴヌクレ
オチドプライマーである。
【0038】 配列番号:32および33は、RAPDマーカーSP4B9の位置を確証する
ために用いられるPCRプライマーである。 配列番号:34〜36はPi−ta候補遺伝子PRG2の単一コピーを含有す
るBACクローンRB142E8から得られる部分配列である。 配列番号:37〜64は配列番号:1に示したPi−ta(PRG2)のゲノ
ムクローンの完全配列決定に用いられる配列決定プライマーである。 配列番号:65はPi−ta核酸フラグメントを得るために用いられるオリゴ
ヌクレオチドプライマーである。 配列番号:66および67は、推定成熟プロテアーゼを直接コードするAVR
−Pita176およびAVR−Pita 核酸フラグメントを増幅するために用いられるP
CRプライマーである。
【0039】 配列番号:68は2425bpのネイティブなPi−taプロモーター(ヌクレ
オチド1〜2425)ならびにPi−ta cDNA(ヌクレオチド 2426〜5211)を
含有するEcoRI−Hind IIIフラグメントの5222ヌクレオチド配列である。 配列番号:69および70はpML135の構築においてリンカーフラグメント
の発生に用いられるオリゴヌクレオチドプライマーである。 配列番号:71および72は、トウモロコシゲノムDNAから Adh1−6イン
トロンを増幅するために用いられるPCRプライマーである。 配列番号:73および74はpAVR3 の構築過程においてAVR−Pita 核
酸フラグメント(配列番号:5)を増幅するために用いられるPCRプライマー
である。
【0040】 添付図面において: 図1は、R−遺伝子を含有する染色体領域の分子マップ。 A.1440 RAPDプライマーのそれぞれを、イネ品種 Yashiro-mochi に由来
するR−遺伝子に連結した多型の同定のために試験した。この図は、二重一倍体
(DH)集団の119のメンバーにおけるR−遺伝子で分断された多型DNAフ
ラグメントを同定する16プライマーを用いて調製された連結マップを示す。マ
ーカーの最も有望な順序(コンピュータープログラム Mapmaker, バージョン2
によって定義する)を左側にセンチモルガン(cM)で示したマーカー間の距離
とともに与える。マップは一定の比率で描かれたものではないことに注意すべき
である。この集団中、マーカーSP7C3,SP7H8 およびSP8C6 はR−遺伝
子との組換えを示さないが、マーカーSP8B8 およびSP3G6 は連結グループ
の遠位端にマッピングされた。 B.連結マップの分解能は付加的な 151DH系統および720のF2子孫に対
して16マーカーを試験して上昇させた。990個体のより大きな総集団におい
て、マーカーSP7C3、SP7H8 およびSP8C6 は同様にR−遺伝子との組換
えを示さなかった。しかしながらこの分析は、以前に群をなすとされた隣接マー
カーを分解した。マーカーSP4B9 およびSP9F3 はR−遺伝子領域に最も直
ぐに隣接する。
【0041】 図2は、Pi−taのポジショナルクローニング。 染色体歩行実験は、元はRAPDマーカーSP7C3 で同定された単一コピー
多型配列で開始された。左への一歩は、マーカーSP4B9 を含有するBACク
ローンである一方の組換え境界を同定し、これはR−遺伝子から、F2子孫系統
K25における組換え現象によって分離された。白い四角は重複BACクローンを
同定するために用いたBACプローブの位置を指示し、黒い四角は重複を確証す
るために用いたプローブを指示する。ランダムゲノム配列決定によって分析され
たBACクローンは破線で指示する。Pi-ta 遺伝子候補(PRG2)、ならびに
179G5Rから 77D8-12 までのDNAマーカー(ゲノム領域を表す線上に示す)
はマーカーSP7C3 と再結合せず、イネマッピング集団のメンバー中に表現型
によりR−遺伝子と定義された(感染アッセイにより決定)。右の境界を定義す
るマーカーSP9F3 は一つのDH系統、YT171 との組換えを示した。
【0042】 図3は、BAC RB142E8 のランダムゲノム配列決定により得られた最初の
3つのサブクローン(破線)の位置を示すR−遺伝子の制限マップである。 bac142e8.pk0001.f12(f12, 配列番号:34),bac142e8.pk0001.b7(b7, 配
列番号:35)および bac142e8.pk0001.f8(f8, 配列番号:36)があった。
以後の配列決定により「ヒットなしのクラス」から重複サブクローン bac142e8.
pk0001.e10(e10)および bac142e8.pk0005.c10(c10)が同定された。BAC
RB142E8(#7)からの5.3kbフラグメントをプラスミド bac142e8.pk0001.f8
にサブクローニングして図4Aに記載したように全R−遺伝子を含有するpC
B1641を得た。一番上部の線上の2つの濃い黒い線は、Pi−taコード配列を
指示し、介入する薄い黒い線は遺伝子中の単一イントロンを表し、矢印は遺伝子
転写の方向を示す。制限部位にはBamHI(B)およびEcoRI(E)が包含さ
れる。
【0043】 図4は、プラスミドpCB1641 およびpCB1645 の構築。制限部位はBamH
I(B)、EcoRI(E)、Hind III(H)、Sst IIおよびSalIを包含する
。イタリック表示の制限部位(SalI)はベクターからのもので、イネゲノ
ム配列からのものではない。 A.ゲノムの完全長PRG2コード配列を、1255bpプロモーター配列、1
463bpイントロンおよび2kbの3′非翻訳配列とともに含有するプラスミドp
CB1641 は、bac142e8.pk0001.f8中の2.2kbイネDNA挿入体からの(201
bp)EcoRIフラグメントの代わりに、クローン #7 からの5.3kb EcoRIイ
ネゲノムフラグメントをライゲートして構築した。 B.3′の1028bp PRG2コード配列(位置 4477〜5505)を含むプラス
ミドpCB1645 はプラスミドpCB1641 からのこの領域を、プライマーGB46
(配列番号:63)およびGB47(配列番号:64)を用いPCRで増幅して構
築した。これらのプライマーはそれぞれSalIおよびEcoRIの制限部位を含有
する。このPCRフラグメントをSalIおよびEcoRIで消化し、pGAL4-A
D(Stratagene)の相当する部位にクローン化した。
【0044】 図5は、プラスミドpCB1641 中に含まれるPRG2核酸フラグメントにお
ける相対的なプライマー位置。 これらのプライマーは抵抗性および感受性イネ品種からのゲノムDNAフラグ
メントの増幅およびDNA配列決定に使用した。
【0045】 図6は、推定 Pi-ta タンパク質配列。 感受性品種に見いだされた5つのアミノ酸の相違を上記R−蛋白質配列に指示
する。本文に論じた上記R−蛋白質の特徴に下線を付す。アミノ酸236〜24
4の間のP−ループドメイン、アミノ酸314〜323の間のキナーゼ 2a ドメ
イン、アミノ酸342〜353の間のキナーゼ 3a ドメイン、アミノ酸407〜
415間の疎水性ドメインである。4個のN−グリコシル化部位の可能性がある
位置、339、556、654および838には二重下線を付した。
【0046】 図7は、プラスミドpCB1947、pML63 およびpCB1926 における構築の
図解。 A.pCB1947 は、一過性発現実験のために、推定成熟プロテアーゼを直接
コードするように操作したAVR−Pita 単離核酸フラグメント(以前はAVR
2−YAMOと呼ばれた)の構築体を含有する。AVR−Pita176と命名された
単離核酸フラグメントのこのプロセッシングされた型は、配列番号:6に掲げた
アミノ酸 48〜223 からなるポリペプチドをコードする。開始メチオニンはクロ
ーニング過程で用いたNcoI部位により構築体に添加した。AVR−Pita コー
ド配列は、最初、インフレームなNcoI部位を含むプライマーYL30(配列番号
:66)およびKpnI部位を含有するYL37(配列番号:67)を用いてPCR
により増幅し、pML142 のNcoI−KpnI部位にクローニングしてpCB1947
を得た。35Sプロモーターの下流へのトウモロコシの Adh1-6 イントロンの挿
入は単子葉植物の発現を上昇させた。このイントロンは Mascarenhas D.ら, 199
0, Plant Mol Biol 15: 913-920 に記載されている。
【0047】 B.pML63 は、CaMV35Sプロモーターおよび3′NOS配列に操作性に
連結した uidA遺伝子(GUS酵素をコードする)を含有する。pML63はpM
H40 から修飾し、最小限の3′NOSターミネーターフラグメントを産生させ
た。pMH40 は 1998年4月23日に公開されたWO98/16650 に記載されている。
この開示は引用により本明細書に導入される。本技術分野の熟練者には周知の標
準技術を用いて、pMH40 に含まれる770塩基ペアターミネーター配列を De
pickerら(1982, J. Appl.Genet. 1: 561-574)によって報告されたヌクレオチ
ド 1277〜1556 からなる新しい3′NOSターミネーター配列で置換した。 C.pCB1926はまず、第一鎖cDNAからの2.1kb部分 Pi-ta cDNA核
酸フラグメントを、プライマーF12-1(配列番号:44)およびGB67(配列番
号:65)を用いて増幅することにより創製された Pi-ta cDNA構築体を含
有する。合成完全長cDNAを、pCB1641 からのゲノムPi−ta遺伝子の
5′末端を含む706bp NcoI−BamHIフラグメントを導入することによっ
て生成し、プラスミドpCB1906 を生成させた。ネイティブな Pi-ta プロモー
ター配列(pPi-ta)および736bpの5′Pi-ta コード配列を含有するpCB1
649 からの3.1kb EcoRIフラグメントをついでpCB1906のEcoRI部位に
挿入して合成cDNA核酸フラグメントの736bp 5′末端を置換し、pCB1
926 を産生させた。
【0048】 図8は、イネ植物におけるPi−ta機能の粒子ボンバードメント一過性アッ
セイ。 これらのイネの葉は図7における構築体を用いたイネにおけるGUSならびに
Pi−taおよびAVR−Pita cDNAのバイオリスティックな一過性発現の
結果を示す。実生はすべて 35S::GUS(pML63)および 35S/adh::AV
R−Pita(pCB1947)でコボンバードメントに付した。葉3および4は同じく
、ネイティブな2.425kb Pi-ta プロモーター(pCB1926)の制御下に Pi
−ta cDNAでボンバードされた実生から採取した。イネ品種YT14 およびY
T16 における内因性Pi−ta遺伝子の存在(Pi−ta)または不存在(−
)を指示する。GUSの発現は図中の葉における暗色の斑点のによって指示され
、これは一番左の葉で最も顕著である。青色のGUS染色の不存在はHR抵抗性
応答の指標として使用された。クローン化されたPRG2 候補核酸フラグメント
はこのアッセイでは内因性Pi−ta遺伝子を置換する。YT14 およびYT16
はイネの葉のソースを指示する。両者ともDHイネ系統であるが、YT14 は内
因性 Pi-ta 核酸フラグメントを含有し、一方YT16 はそれを含まない。
【0049】 図9は、無傷の Pi-ta 核酸フラグメントの存在を測定するための一次トラン
スフォーマントのDNAゲルブロット分析。 ゲノムDNAを、EcoRI(ブロットの左側)またはEcoRV(ブロットの右
側)で消化し、プラスミドpCB1645 にクローン化したPi−ta核酸フラグ
メントの1028bp EcoRI−SalI 3′末端フラグメントで探査した(図4
B)。Nipponbare トランスフォーマントおよびトランスフォームされていない
Nipponbare の親における内因性感受性 pi-ta 対立遺伝子に相当するバンドを指
示する。すべての他のバンドはプラスミドpCB1641 からのPi−ta核酸フ
ラグメントのコピーを表す。一次トランスフォーマント 22-6-1-1、 22-6-3-1 お
よび 22-6-11-4 は抵抗性であり、一方、22-2-7-2、 22-3-1-1 および 22-4-1-1
は中間抵抗性である。
【0050】 図10は、無傷のPi−ta核酸フラグメントの存在を測定するための中間抵
抗性一次トランスフォーマント 22-6-10-1 からの11のハイグロマイシン抵抗
性R1個体のDNAゲルブロット分析。 ゲノムDNAを、EcoRVで消化して、プラスミドpCB1926 から単離され
た Pi-ta 核酸フラグメントの860bp EcoRV−Hind III 3′末端フラグ
メントで探査した。Nipponbare トランスフォーマントおよびトランスフォーム
されていない Nipponbare の親における内因性感受性 pi-ta 対立遺伝子に相当
するバンドを指示する。上方の他のバンドはプラスミドpCB1641 からの Pi-t
a 核酸フラグメントのコピーを表す。R0一次トランスフォーマント 22-6-10-1
(レーン14)は11のR1子孫(A−K)と同じRFLPを有する。この植物か
らの貧弱なDNA量はサザンブロット上のレーン14に歪んだ不均一のバンドを
生じた。すべての11のR1 子孫は同じRFLPを含み、中間疾患抵抗性であり
、Pi−ta核酸フラグメントおよび疾患抵抗性表現型の安定な遺伝を指示する
【0051】 この開示に関連して、多くの技術用語が使用される。 「疾患抵抗性遺伝子」なる語は、植物細胞または植物組織に防御応答を誘導で
きるポリペプチドをコードする遺伝子を意味する。「疾患抵抗性遺伝子」、「抵
抗性(R)遺伝子」および「R」遺伝子なる語は本明細書においては同義に用い
られる。防御応答から生じる抵抗は数種の形態を取ることができる。たとえば、
ある遺伝的背景では抵抗は接種された植物組織上に目に見える形を取らないし、
また他の抵抗では、小さな褐色の斑点を生じ、ここからは真菌は胞子を形成でき
ず、感染を再開することがない。いずれの場合も真菌病原体はその生活環を全う
せずに疾患の進展は停止する。ある場合には、疾患抵抗性は完全な疾患に典型的
な量の真菌胞子を生じないサイズの小さな病変の形態を取る。
【0052】 「防御応答」は、感染物質または病原体の存在と戦うために宿主たとえば植物
によって生成される特異的な防御反応である。 「Pi−ta抵抗性遺伝子」は、真菌病原体たとえば Magnaporthe grisea に
対し植物細胞または植物組織内に防御応答を誘導できるポリペプチドをコードす
る疾患抵抗性遺伝子である。
【0053】 「Pi−ta抵抗性遺伝子仲介防御応答」なる語は、Pi−ta抵抗性遺伝子
によりコードされ、真菌病原体の存在により誘導されるポリペプチドの産生によ
る防御応答を意味する。 「AVR−Pita 単離核酸フラグメント」は病原体から単離される核酸フラグ
メントであり、この核酸フラグメントはPi−ta抵抗性蛋白質との直接的なま
たは間接的な相互作用がPi−ta抵抗性遺伝子仲介防御応答の誘発に関与する
ポリペプチドをコードする。
【0054】 「単離核酸フラグメント」は、一本鎖または二本鎖の、任意に合成、非天然ま
たは変化させたヌクレオチド塩基を含有するRNAまたはDNAのポリマーであ
る。DNAポリマー型の単離核酸フラグメントはcDNA、ゲノムDNAまたは
合成DNAの1または2以上のセグメントから構成されてもよい。
【0055】 「機能的に均等であるサブフラグメント」および「機能的に均等なサブフラグ
メント」なる語は本明細書では同義に用いられる。これらの語は、フラグメント
またはサブフラグメントが活性な酵素をコードするか否かにかかわらず、遺伝子
の発現を変えるまたはある種の表現型を生成する能力を維持している単離核酸フ
ラグメントの部分またはサブ配列を意味する。たとえば、そのフラグメントまた
はサブフラグメントは、トランスフォームされた植物に所望の表現型を生成させ
るキメラ遺伝子の設計に使用することができる。キメラ遺伝子は核酸フラグメン
トまたはそのサブフラグメントを植物プロモーター配列に関して適当な方向に連
結することにより、それが活性な酵素をコードするか否かにかかわらず、共抑制
またはアンチセンスに使用するために設計することができる。
【0056】 本明細書で用いられる「実質的に同じ」および「実質的に相当する」なる語は
、1または2以上のヌクレオチド塩基で核酸フラグメントの遺伝子発現の仲介能
力またはある種の表現型の生成能力に影響しない変化を受けた核酸フラグメント
を意味する。これらの語はまた、1または2以上のヌクレオチドの欠失または挿
入のような本発明の核酸フラグメントの修飾であって、最初の非修飾フラグメン
トに関して得られた核酸フラグメントの機能性は実質的に変化しない修飾を意味
する。したがって、本技術分野の熟練者には明らかなように本発明は特異的な例
示配列以上の配列を包含するものであることを理解すべきである。
【0057】 さらに、本発明に包含される実質的に同じ核酸配列はまた、熟練技術者には明
らかなように、中等度の緊縮条件下(たとえば、0.5×SSC、0.1%SDS
、60℃)において、ここに例示された配列と、またはここに報告されたヌクレ
オチド配列であり本発明のプロモーターと機能的に均等な任意の部分と、ハイブ
リダイズする能力によって定義される。本発明に包含される実質的に同じ核酸配
列は、好ましくは、ここに記載された核酸フラグメントと80%の同一性を示す
配列またはここに記載されたヌクレオチド配列の任意の部分と80%の同一性を
示す配列である。さらに好ましくは、ここに記載された核酸配列と90%の同一
性を示すか、またはここに記載されたヌクレオチド配列の任意の部分と90%の同
一性を示す核酸フラグメントである。最も好ましくは、ここに記載された核酸配
列と95%の同一性を示すかまたはここに記載されたヌクレオチド配列の任意の部
分と95%の同一性を示す核酸フラグメントである。配列のアラインメントと類似
性%の計算は、LASARGENE情報コンピューター装置の Megalign プログ
ラム(Dnastar Inc., Madison, WI)を用いて行った。配列の多重アラインメン
トは Clustal のアラインメント法(Higgins & Sharp, 1989, CABIOS. 5:151-15
3)によりデフォルトパラメーター(GAP PENALTY=10,GAP LENGTH PENALTY=
10)を用いて実施した。Clustal 法を用いたペア毎のアラインメントおよび蛋
白質配列の同一性%の計算のためのデフォルトパラメーターは KTUPLE=1、GAP
PENALTY=3、WINDOW=5および DIAGONALS SAVED=5とする。核酸については
これらのパラメーターは GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=10、KTUP
LE=2、GAP PENALTY=5、WINDOW=4および DIAGONALS SAVED=4とする。ア
ミノ酸またはヌクレオチド配列の「実質的部分」はBLAST(Altschul, S.F.
ら, 1993, J.Mol.Biol. 215: 403-410)およびギャップBLAST(Altschul,
S.F.ら, 1997, Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402)のようなアルゴリズムを用
いて、本技術分野の熟練者による配列の手作業での評価またはコンピューター自
動配列比較および同定により、そのポリペプチドもしくは遺伝子の同定候補を与
えるのに十分なポリペプチドのアミノ酸配列または遺伝子のヌクレオチド配列か
ら構成される(また、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/も参照)。
【0058】 「遺伝子」は、コード配列に先立つ(5′−非コード配列)および以後の(3
′−非コード配列)調節配列を含めて、特定の蛋白質を発現する核酸フラグメン
トを意味する。「ネイティブな遺伝子」は天然にそれ自身の調節配列とともに見
いだされる遺伝子を意味する。「キメラ遺伝子」は、天然に一緒に見いだされる
ことはない調節配列およびコード配列からなるネイティブではない遺伝子である
任意の遺伝子を意味する。したがって、キメラ遺伝子は、異なるソースに由来す
る調節配列およびコード配列からなるか、または同じソースに由来する調節配列
およびコード配列からなるが、天然に見いだされるのとは異なる様式でアレンジ
されている。「内因性遺伝子」配列は、生物のゲノム中の天然の位置におけるネ
イティブな遺伝子を意味する。「異種」遺伝子は宿主細胞中に正常には見いださ
れないが、遺伝子トランスファーによって宿主生物中に導入された遺伝子を意味
する。異種遺伝子は、ネイティブでない生物中に挿入されたネイティブな遺伝子
、またはキメラ遺伝子からなる。「トランスジーン」はトランスフォーメーショ
ン操作によってゲノム中に導入された遺伝子である。
【0059】 「コード配列」は、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を意味する。
「調節配列」はコード配列の上流(5′−非コード配列)、その配列内、または
下流(3′−非コード配列)に位置するヌクレオチド配列を意味し、それらは転
写、RNAプロセッシングもしくは安定性または会合コード配列の翻訳に影響す
る。このような配列はネイティブでもネイティブでなくてもよい。調節配列には
、それらに限定されるものではないが、プロモーター、翻訳リーダー配列、イン
トロン、およびポリアデニル化認識配列が包含される。
【0060】 「病原体」は、生存植物組織の細胞の周辺または内部へのその感染が疾患応答
を誘発する生物体または感染性物質を意味する。
【0061】 「プロモーター」はコード配列または機能性RNAの発現を制御できるDNA
配列を意味する。プロモーター配列は近位およびさらに遠位の上流エレメントか
らなり、後者のエレメントはエンハンサーと呼ばれることが多い。したがって、
「エンハンサー」はプロモーターの活性を刺激できるDNA配列であって、プロ
モーターの内生的エレメントまたはプロモーターのレベルもしくは組織特異性を
上昇させるために挿入された異種エレメントのDNA配列である。プロモーター
はそれらの全体がネイティブな遺伝子に由来するものであっても、天然に見いだ
される異種プロモーターに由来する異種エレメントから構成されても、また合成
DNAセグメントからなるものであってもよい。本技術分野の熟練者によれば、
異種プロモーターは異種組織もしくは細胞型において、分化の異なる段階でまた
は異なる環境条件に応答して、遺伝子の発現を指図するものと理解されている。
大部分の細胞型で、大部分の時期に遺伝子の発現を引き起こすプロモーターは、
一般に「構成的プロモーター」と呼ばれる。植物細胞において有用な様々な型の
新規プロモーターが絶えず発見され、多数の実例が Okamuro & Goldberg, 1989,
Biochemistry of Plants 15: 1-82 に列挙されている。調節配列の正確な境界は
大部分の場合、完全には定義されていないので、ある変動をもつDNAフラグメ
ントが同一のプロモーター活性をもつことがさらに認められている。
【0062】 「イントロン」は遺伝子中の介在配列であり、蛋白質配列の部分をコードする
ものではない。すなわちこのような配列はRNAには転写されるが、ついで切断
されて、翻訳されない。この語はまた、切断されたRNA配列にも使用される。
「エキソン」は転写される遺伝子配列の部分であり、遺伝子から誘導される成熟
メッセンジャーRNA中に見いだされるが、必ずしも最終の遺伝子産物をコード
する配列の部分ではない。
【0063】 「翻訳リーダー配列」とは遺伝子のプロモーター配列とコード配列の間に存在
するDNA配列を意味する。翻訳リーダー配列は、翻訳開始配列の上流の完全に
プロセッシングされたmRNA中に存在する。翻訳リーダー配列は、一次転写体
のmRNAへのプロセッシング、mRNAの安定性または翻訳効率に影響する。
翻訳リーダー配列の例は Turner,R. & Foster, G.D., 1995, Molecular Biotech
nology 3: 225 に記載されている。
【0064】 「3′-非コード配列」はコード配列の下流に存在するDNA配列を意味し、
ポリアデニル化認識配列およびmRNAプロセッシングまたは遺伝子発現に影響
できる調節シグナルをコードする他の配列を包含する。ポリアデニル化シグナル
は通常、mRNAプレカーサーの 3′末端へのポリアデニル酸領域への付加に
影響することを特徴とする。異なる 3′-非コード配列の使用は Ingelbrechtら
, 1989, Plant Cell 1: 671-680 に例示されている。
【0065】 「RNA転写体」は、DNA配列のRNAポリメラーゼ触媒転写から生じる産
物を意味する。RNA転写体がDNA配列の完全な相補性コピーである場合には
それは一次転写体と呼ばれるか、またはそれは一次転写体の転写後プロセッシン
グに由来するRNA配列であってもよく、成熟RNAと呼ばれる。「メッセンジ
ャーRNA(mRNA)」は、イントロンをもたず、細胞により蛋白質に翻訳さ
れるRNAを意味する。「cDNA」は、逆転写酵素を用いてmRNA鋳型から
合成され、それと相補性のDNAを意味する。cDNAは一本鎖でもよく、また
DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメントを用いて二本鎖型に変換すること
もできる。「センス」RNAはmRNAを包含し、したがって細胞内またはイン
ビトロで蛋白質に翻訳できるRNA転写体を意味する。「アンチセンスRNA」
は標的一次転写体またはmRNAのすべてまたは部分に相補性で、標的遺伝子の
発現を遮断するRNA転写体を意味する(米国特許 5,107,065)。アンチセンス
RNAは特定の遺伝子転写体の任意の部分、すなわち 5′-非コード配列、3′
-非コード配列、イントロン、またはコード配列と相補性であってよい。「機能
性RNA」とはアンチセンスRNA、リボザイムRNA、または翻訳されないが
細胞過程に影響する他のRNAを意味する。
【0066】 「操作性に連結」の語は、一方の機能が他方によって影響されるように、単一
核酸フラグメントに対する核酸配列の会合を意味する。たとえばプロモーターは
それがコード配列の発現に影響できる場合(すなわちコード配列がプロモーター
の転写制御下にある場合)、コード配列と操作性に連結している。コード配列は
センスまたはアンチセンス方向で調節配列に機能性に連結することができる。
【0067】 本明細書に使用される「発現」なる語は機能性最終産物の産生を意味する。遺
伝子の発現または過剰発現には、遺伝子の転写およびmRNAのプレカーサーま
たは成熟蛋白質への翻訳が包含される。「アンチセンス阻害」は標的蛋白質の発
現を抑制できるアンチセンスRNA転写体の産生を意味する。「過剰発現」なる
語はトランスジェニック生物における、正常なまたは非トランスジェニック生物
での産生レベルを越える遺伝子産物の産生を意味する。「共抑制」は、同一のま
たは実質的に同じ異種もしくは内因性遺伝子の発現を抑制できるセンスRNA転
写体の産生を意味する(米国特許第 5,231,020)。
【0068】 「変化した発現」とは、トランスジェニック生物における遺伝子産物の産生が
、野生型生物からの相当する組織(生物型および分化型)における活性から量ま
たは比率で有意に異なることを意味する。
【0069】 「成熟」蛋白質とは、翻訳後プロセッシングを受けたポリペプチド、すなわち
一次翻訳産物中に存在するプレまたはプロペプチドが除去されたポリペプチドを
意味する。「プレカーサー」蛋白質とはmRNAの翻訳の一次産物すなわちプレ
またはプロペプチドがまだ存在する産物を意味する。プレおよびプロペプチドは
、それらに限定されるものではないが細胞内の局在シグナルであってもよい。
【0070】 「葉緑体トランジットペプチド」は、蛋白質と接合して翻訳されその蛋白質を
葉緑体またはその蛋白質が作成された細胞内に存在する他のプラスチド型に向け
るアミノ酸配列である。「葉緑体トランジット配列」は葉緑体トランジットペプ
チドをコードするヌクレオチド配列を意味する。「シグナルペプチド」は蛋白質
と接合して翻訳されその蛋白質を分泌系に向けるアミノ酸配列である(Chrispee
ls, J.J., 1991, Ann.Rev.Plant Phys.Plant Mol.Biol. 42: 21-53)。蛋白質が
液胞に向けられる場合は、液胞ターゲティングシグナル(上述)をさらに付加さ
せ、小胞体に向けられる場合は、小胞体維持シグナル(上述)が付加される。蛋
白質が核へ向けられる場合は、存在するシグナルペプチドをすべて除去し、代わ
りに核局在シグナルを包含させる(Raikhel, 1992, Plant Phys. 100: 1627-163
2)。
【0071】 「トランスフォーメーション」は核酸フラグメントの宿主生物のゲノムへのト
ランスファーを意味し、遺伝的に安定な素因が生じる。トランスフォームされた
核酸フラグメントを含有する宿主生物は「トランスジェニック」生物と呼ばれる
。イネ、トウモロコシおよび他の単子葉植物の好ましい細胞トランスフォーメー
ション方法には、粒子加速もしくは「遺伝子ガン」トランスフォーメーション技
術(Kleinら, 1987, Nature (London) 327: 70-73; 米国特許 4,945,050)また
は導入遺伝子を含有する適当なTi プラスミドを用いるアグロバクテリウム-媒
介法(Ishida,Y.ら, 1996, Nature Biotech. 14: 745-750)の使用がある。
【0072】 本発明で使用される標準組換えDNAおよび分子クローニング技術は本技術分
野において周知であり、Sambrook,J., Fritsch,E.F. & Maniatis,T., Molecular
Cloning: A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold
Spring Harbor, 1989(以下 Sambrook という)にさらに詳細に記載されている
【0073】 「PCR」もしくは「ポリメラーゼ連鎖反応」は一連の反復サイクルから構成
される(Perkin Elmer Cetus Instruments, CT)大量の特異的DNAセグメント
を合成するための技術である。通常二本鎖DNAを加熱して変性させ、標的セグ
メントの3′境界に相補性の2つのプライマーを低温でアニーリングし、ついで
中間温度で伸長させる。この3つの連続工程の1セットを1サイクルとする。
【0074】 本明細書で用いられる「発現構築体」とは、本発明の任意の単離核酸フラグメ
ントからなり、本明細書で論じたように単独でまたは互いに組み合わせて用いら
れ、さらにベクターまたはそのサブフラグメントと接合して使用することもでき
る。ベクターを使用する場合、ベクターの選択は、本技術分野の熟練者には周知
のように宿主植物のトランスフォーメーションに使用する方法に依存する。たと
えば、プラスミドベクターを使用できる。本発明の単離核酸フラグメントからな
る宿主細胞を有効にトランスフォーム、選択および増殖させるためにベクター上
に存在しなければならない遺伝子エレメントは熟練者には周知である。また異な
る独立のトランスフォーメーション現象は異なる発現レベルおよび発現パターン
で起こること(Jonesら, 1985, EMBO J 4: 2411-2418; De Almeidaら, 1989, Mo
l.Gen.Genetics 218: 78-86)、したがって、所望の発現レベルおよびパターン
を示す系統を得るためには多くの現象をスクリーニングしなければならないこと
は熟練者には周知の通りである。このようなスクリーニングはDNAのサザン分
析、mRNA発現のノーザン分析、蛋白質発現のウエスタン分析または表現型分
析によって行われる。「発現構築体」および「組換え発現構築体」なる語は本明
細書においては同義に使用される。
【0075】 本発明は、真菌病原体によって引き起こされる疾患に対するPi−ta抵抗性
遺伝子仲介防御応答を付与する単離核酸フラグメントに関し、この場合、上記核
酸フラグメントは配列番号:1もしくは68に掲げたヌクレオチド配列またはそ
の機能的に均等なサブフラグメントに実質的に相当する。 これらの単離核酸フラグメントが適当な調節配列に操作性に連結してなる遺伝
子、このような遺伝子をそれらのゲノム中に有する植物、およびこのような植物
の種子にも興味がある。たとえば、このような遺伝子はネイティブまたはキメラ
である。 他の態様においては、本発明は植物に真菌病原体によって引き起こされる疾患
に対するPi−ta抵抗性遺伝子仲介防御応答を付与する方法において、上述の
いずれかの遺伝子を植物のゲノムに導入する方法に関する。
【0076】 さらに他の態様においては、本発明は植物に抵抗性遺伝子仲介防御応答を付与
する方法において(1)真菌病原体によって引き起こされる疾患に対するPi−
ta抵抗性遺伝子仲介防御応答を付与する単離核酸フラグメントであり、上記核
酸フラグメントは配列番号:1もしくは68に示すヌクレオチド配列またはその
機能的に均等なサブフラグメントに実質的に相当するフラグメント、ならびに(
2)配列番号:5もしくは7に掲げたヌクレオチド配列またはそれと機能的に均
等なサブフラグメントに実質的に相当するAVR−Pita 単離核酸フラグメント
からなる組換え発現構築体で植物をトランスフォームすることからなり、上記核
酸フラグメントは感染部位で発現するように調節配列に操作性に連結し、さらに
上記構築体は感染部位に真菌病原体により引き起こされる疾患に対する抵抗性遺
伝子仲介防御応答を植物に付与する方法に関する。
【0077】 さらに他の態様においては、本発明は(1)真菌病原体によって引き起こされ
る疾患に対してPi−ta抵抗性遺伝子仲介防御応答を付与する単離核酸フラグ
メントであり、上記核酸フラグメントは配列番号:1もしくは68に示すヌクレ
オチド配列またはその機能的に均等なサブフラグメントに実質的に相当するフラ
グメント、および(2)配列番号:5もしくは7に掲げたヌクレオチド配列また
はそれと機能的に均等なサブフラグメントに実質的に相当するAVR−Pita 単
離核酸フラグメントからなり、上記核酸フラグメントは調節配列に操作性に連結
している、感染部位において真菌病原体によって引き起こされる疾患に対する抵
抗性遺伝子仲介防御応答を植物に付与する組換え発現構築体に関する。このよう
な発現構築体でトランスフォームされた植物およびこのようなトランスフォーム
された植物から得られる種子にも興味がある。
【0078】 クローン化されたR−遺伝子は、病原体に抵抗性のある穀類植物の構築を促進
するために使用できる。とくに、トランスフォーメーション方法は、典型的品種
改良方法によりトランスファーした遺伝子に伴うゲノム配列に連結することなく
多重単一遺伝子を耕種学的生殖細胞質に一次記憶させるために用いることができ
る。クローン化R−遺伝子はまた典型的な品種改良による植物種間の疾患抵抗性
遺伝子のトランスファーが可能でないことを克服するために使用することができ
る。
【0079】 本発明は、イネに真菌 Magnaporthe grisea によって引き起こされるイネいも
ち病を制御するために有用性がある単離核酸フラグメントを提供する。本発明の
単離核酸フラグメントは病原体が配列番号:5もしくは7に掲げたヌクレオチド
配列またはそれと機能的に均等なサブフラグメントに実質的に相当するAVR−
Pita 単離核酸フラグメントからなる場合に有効である。また真菌病原体により
引き起こされる疾患に対してPi−ta抵抗性遺伝子仲介防御応答を付与する本
発明の単離核酸フラグメントは、配列番号:5もしくは7に掲げたヌクレオチド
配列またはその機能的に均等なサブフラグメントに実質的に相当するAVR−Pi
ta 無毒性核酸フラグメントが、プロモーターに操作性に連結され、AVR−Pit
a 核酸フラグメントを感染部位に発現する異種核酸フラグメントとして宿主植物
のゲノムに導入された場合に有効である。
【0080】 以下に述べるように、M.grisea の他のサブ集団は、イネにPi−ta特異的
防御応答を誘導する株に含有される遺伝子と相同なAVR−遺伝子を所有する。
Pi−ta抵抗性遺伝子仲介防御応答を誘発するAVR−遺伝子が、M.grisea
イネ病原体サブ集団I、Digitaria 病原体サブ集団II、および Pennisetum 病原
体のサブ集団IIIに存在できることの証明は、この真菌により感染されたイネ科
の広範囲の宿主での M.grisea の制御におけるこの遺伝子の広い有用性を支持す
るものである。
【0081】 すなわち、本発明の単離核酸フラグメントは、それらに限定されるものではな
いが、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、シコクビエおよびトウジンビエを包含
する他の穀類に対して M.grisea により引き起こされる疾患の制御にも有用性を
もつものと考えられる。
【0082】 イネPi−ta抵抗性核酸フラグメントは、以下に記載するような本技術分野
の熟練者にはよく知られているマップベースのクローニング戦略によってクロー
ン化された。感受性のイネへの、クローン化したPi−ta核酸フラグメントの
導入は、病原体株にPi−ta抵抗性核酸フラグメントに期待されるのと一致し
た様式で抵抗性を付与することを示している。
【0083】 Pi−ta抵抗性遺伝子産物は、既知クラスのすべての抵抗性遺伝子産物と比
べて新規な構造を有する。Pi−ta蛋白質は細胞外LRRをもつ膜係留蛋白質
のクラスとは類似性がない。Pi−ta遺伝子産物は細胞質LRRをもつR−遺
伝子産物たとえば Arabidopsis R−遺伝子RPS2(Bentら, 1994, Science 26
5: 1856-1860; Mindrinosら, 1994, Cell 78: 1089-1099)およびRPM1(Gran
tら, 1995, Science269: 843-846)と一部共通の特徴をもつが、このクラスのR
−遺伝子産物に特徴的なLRR構造を欠いている。Pi−ta蛋白質はまた、R
−遺伝子産物の細胞質LRRクラスをさらに細分割するロイシンジッパーモチー
フまたは Toll/Interleukin-1 受容体モチーフのいずれかを欠いている(Jones
& Jones, 1997, Adv.Bot.Res.Incorp.Adv.Plant Pathol. 24: 89-167)。すなわ
ち、Pi−ta抵抗性遺伝子産物はそれまでに同定された他のR−遺伝子産物と
は異なるクラスに分類される。
【0084】 日本産イネ品種 Yashiro-mochi(Yamadaら, 1976, Ann.Phytopath.Soc.Japan
42: 216)およびK1(Kiyosawa, 1984, Rice Genetics Newsletter 1: 95)は、
いもち病抵抗性遺伝子Pi−taについて検定用イネ品種として指定されている
。品種K1 におけるPi−ta遺伝子はインディカ産イネ品種 Tadukan から日
本産の背景に浸透させたものであるが Yashiro-mochi のPi−taの起源は Ok
aine と呼ばれる高地イネ品種であるように思われる(Rybkaら, 1997, Mol.Plan
t MicrobeInteract. 10: 517-524 およびそれに引用された文献参照)。品種 Ta
dukan に由来する他のもう一つの抵抗性遺伝子、Pi−ta2遺伝子はPi−t
aの対立遺伝子であるかまたはPi−taに緊密に連結していると思われるが、
Pi−taとPi−ta2間の関係は独立した対立遺伝子R−遺伝子ペアに期待
される以上に複雑であるように思われる(Kiyosawa, 1967, Japan, J. Breeding
17: 165-172; Kiyosawa, 1971, JARQ 6: 73-80)。IRRI NILの検定イネ
品種におけるPi−6(t)と命名されたR−遺伝子は緊密にPi−ta遺伝子に
連結しているかまたは実際にPi−ta遺伝子である可能性もある(Inukaiら,
1994, Phytopathology 84: 1278-1283)。さらに、Pi−taを有する染色体 1
2 のセントロメア領域は他の抵抗性遺伝子、主要R−遺伝子 Pi-6(t)(Abadassi
ら, 1990, Rice Genetics II, IRRI, Los Banos,the Philippines, 746-748)、
いもち病QTL(Wangら, 1994, Genetics 136: 1421-1434)ならびにウイルス
および昆虫R−遺伝子を含有すると思われる。
【0085】 PWL2遺伝子、weeping lovegrass において宿主種特異性を抑制するAVR
−遺伝子を同定した遺伝子交配(交配 4360)(Sweigardら, 1995, The Plant C
ell 7; 1221)は、また、イネ品種 Yashiro-mochiに感染するイネ病原体の能力
を決定する付加的な真菌遺伝子について分離された。この第二のAVR−遺伝子
、AVR−Pita(以前には Yashiro-mochi に対して、AVR2-YAMOと呼ば
れた)は親株、4224-7-8 から受け継がれ、中国の野生単離体O−137に由来した
(1995年に China National Rice Tesearch Institutein Hangzhou で収集され
た)。交配 4360 に由来する5つの完全な四分染色体のそれぞれで、8個の子襄
胞子の子孫中4個が Yashiro-mochi に感染可能であり、他は感染できなかった
。交配 4360 およびそれに続く交配のランダム胞子分析でAVR−Pita の分断
が確認された。交配 4360 からの無毒性子孫は、しばしば数個の完全な病理学的
病変を Yashiro-mochi に産生させた。これらの稀な病変はAVR−Pita 遺伝子
座に起こる自然突然変異によるものと推察された。AVR− Pita の機能を失っ
た突然変異体は Sweigardら(1995, The Plant Cell 7:1221)の記載のようにし
て単離された。Yashiro-mochi に対して今や完全に毒性であるこれらの突然変異
体は、推定される親の多型および稔性特性ならびにMGR586 DNAフィンガー
プリンティングトプロファイルを維持していた。他のR−遺伝子をもつイネ品種
に対する突然変異体の宿主特異性は変化しなかった。
【0086】 M.grisea のように、一倍体の真菌が支配的な遺伝子の優性を評価することは
容易ではないが、毒性突然変異体の出現は、遺伝子対遺伝子仮説から予測される
ように、このAVR−遺伝子の発現型は Yashiro-mochi の感染を停止させるよ
うに機能することを示唆した。AVR−Pita 遺伝子の遺伝的不安定性はそのク
ローニングに助けとなった。AVR−遺伝子は、交配 4360 から産生された M.g
riseaRFLPマップにおける連結グループの末端でテロメアリピート配列を含
む生理的マーカーのクラスターで共分断されることが見いだされた(Sweigardら
, 1993,Genetic Maps, S.J.O'Brien 編, Cold Spring Harbor Laboratory, pp 3
.112-3.117)。Yashiro-mochi イネに対して毒性になった自然突然変異体は無毒
性遺伝子でマッピングされたテロメア制限フラグメントに構造的な変化を示し、
遺伝子が染色体の先端1〜2kb以内にあることを示唆した(Valent & Chumley,
1994,The Rice Blast Disease, ed. by Zeigler, Leong & Teng, CAB Internati
onal,Wallingford)。野生型無毒性株および染色体の末端に後天的欠失を有する
自然突然変異体からのDNAゲノムのサザン分析によって、各種の制限酵素によ
るゲノムDNAの消化により産生した末端染色体フラグメントのサイズが同定さ
れた。この分析は、染色体末端に相当するテロメアの6.5kb Bgl IIフラグメ
ントの内部にAVR−遺伝子が存在することを示唆した。相当するテロメアのフ
ラグメントをクローンニングすると、それは、イネ栽培種 Yashiro-mochi の毒
性病原体を Yashiro-mochi の無毒性株にトランスフォームする機能を有するA
VR−Pita遺伝子を実際、含有することの証明を可能にした。
【0087】 本発明のAVR−Pita 核酸フラグメントは中国のイネ病原体O−137から
単離され、223 のアミノ酸(配列番号:5)を有する蛋白質をコードする。アミ
ノ酸173-182 は中性亜鉛メタロプロテイナーゼの特徴的モチーフを形成し、モチ
ーフ残基の天然またはインビトロ突然変異はAVR−遺伝子活性を破壊し、すな
わちそれはもはや病原体の毒性株をイネ品種 Yashiro-mochi の無毒性株にトラ
ンスフォームすることはない。推定アミノ酸配列は真菌から特徴づけられる他の
メタロプロテイナーゼ(Genbank 受入番号 L37524 および S16547)とのホモロ
ジーのレベルは低い。特徴が最もよく解明されている分泌された真菌メタロプロ
テイナーゼ、Aspergillus oryzae からのNp IIは177アミノ酸の成熟領域に
先立って175アミノ酸のプレプロ領域を含有する(Tatsumiら, 1991, Mol.Gen
.Genet.228: 97-103)。推定AVR−Pita アミノ酸配列はNp IIと35%のホ
モロジーおよび29%の同一性を示し、最も有意なホモロジーはNp IIの成熟1
77アミノ酸型に限定した場合にみられる。さらにAVR−Pita およびNp II
のアミノ酸配列のアラインメントは成熟Np II蛋白質のジスルフィド結合に関与
するシステインの保存を示した。AVR−Pita 単離核酸フラグメントは176
のアミノ酸を含有する成熟メタロプロテイナーゼにプロセッシングされるプレプ
ロ蛋白質をコードすると予想される。この推測に基づき、AVR−Pita176発現
構築体を操作して直接、推定成熟プロテアーゼを産生させ、機能性分析に付した
【0088】 M.grisea イネ病原体は実験室または野外の条件における適合性にAVR−Pit
a遺伝子を要求しないように思われる。たとえばソース株O−137 と同時に収集
され、特性が十分解明された中国産野生単離体O−135(Valentら, 1991, Genet
ics127: 87-101)は、このAVR−核酸フラグメントとのホモロジーを欠いてい
る。O−135 のようなイネ病原体は、それらがPi−ta含有イネに応答を誘発
しないので、現在はPi−ta仲介防御応答によって影響されない。
【0089】 機能性AVR−Pita 核酸フラグメントは、サブ集団IIIからの Digitaria 病
原体(JP34, 日本で単離)、およびサブ集団IVからの Pennisetum 病原体(B
F17, Burkina Fasoで単離)を含むサブ集団Iaのイネ病原体と遠い関係にある
イネ以外の宿主植物に感染する M.grisea 株からクローン化された。Digitaria
病原体からクローン化されたAVR−Pita の核酸フラグメント(配列番号:7
,G-213 AVR配列)は、University of Wisconnsin Computer Group のパッ
ケージ9.1の Bestfit アルゴリズム(Devereuxら,1984, Proc Natl Acad Sci
USA 12:387-395)により比較した場合、O−137 AVR−Pita アミノ酸配列と
類似性87.9%および同一性87.4%をもつ翻訳アミノ酸配列に相当する。G
-213AVR−Pita(無毒性)核酸フラグメントは毒性イネ病原体をPi−ta抵
抗性遺伝子仲介防御応答を誘発する無毒性株にトランスフォームする能力を維持
することが確認される最も多様な配列を有する。異なる草本種に感染する遠い関
係の M.grisea 株の間でのAVR−遺伝子機能の保存は、クローン化Pi−ta
抵抗性遺伝子がイネ以外の他の宿主植物におけるいもち病真菌の制御にも有効で
あることを示唆するものである。
【0090】 本発明はまた、真菌病原体によって引き起こされる疾患に対するPi−ta抵
抗性遺伝子仲介防御応答を付与する単離核酸フラグメントからなる遺伝子に関し
、この場合、上記核酸フラグメントは配列番号:1もしくは68に示すヌクレオ
チドコード配列またはその機能的に均等なサブフラグメントに実質的に相当し、
このフラグメントは適当な調節配列に操作性に連結している。このような遺伝子
は、単離されたネイティブな遺伝子またはキメラ遺伝子であってもよい。キメラ
遺伝子は本技術分野で周知の技術を用いて構築することができる。たとえば、配
列番号:68に示すネイティブなPi−taプロモーターフラグメントに操作性
に連結した配列番号:68のヌクレオチド配列のコード配列(ヌクレオチド 1-2
425)からなるキメラ遺伝子を作成することができる。
【0091】 真菌病原体に対するPi−ta抵抗性遺伝子仲介防御応答を装備できるトラン
スジェニック植物を作成することができる。本明細書に記載したように単離され
たネイティブな遺伝子またはキメラ遺伝子でトランスフォームできる植物の例に
はそれらに限定されるものではないが、単子葉植物が包含される。好ましくは単
子葉植物は穀類である。とくに好ましくは、単子葉植物はイネ、コムギ、オオム
ギ、トウモロコシ、シコクビエまたはトウジンビエである。このようなトランス
ジェニック植物の種子も興味がある。
【0092】 すなわち、本発明はまた、本明細書に記載した本発明の任意の遺伝子を植物に
導入することからなる、真菌病原体によって引き起こされる疾患に対するPi−
ta抵抗性遺伝子仲介防御応答を植物に付与する方法に関する。Pi−ta仲介
防御は、真菌病原体によって発現されるネイティブなAVR−遺伝子または病原
体に応答して植物によって発現されるキメラAVR−導入遺伝子のいずれかのA
VR−Pita無毒性遺伝子の発現に応答して穀類植物中に発生する。
【0093】 他の態様においては、本発明はまた(1)真菌病原体によって引き起こされる
疾患に対するPi−ta抵抗性遺伝子仲介防御応答を付与する単離核酸フラグメ
ントであり、上記核酸フラグメントは配列番号:1もしくは68に示すヌクレオ
チド配列またはその機能的に均等なサブフラグメントに実質的に相当するフラグ
メント、および(2)配列番号:5もしくは7に掲げたヌクレオチド配列または
それと機能的に均等なサブフラグメントに実質的に相当するAVR−Pita 単離
核酸フラグメントからなる組換え発現構築体で植物をトランスフォームすること
からなる方法であり、上記核酸フラグメントは調節配列に操作性に連結し、さら
に上記発現構築体は真菌病原体によって感染部位に引き起こされる疾患に対する
抵抗性遺伝子仲介防御応答を植物に付与する方法に関する。
【0094】 さらに他の態様においては、本発明は(1)真菌病原体によって引き起こされ
る疾患に対するPi−ta抵抗性遺伝子仲介防御応答を付与する単離核酸フラグ
メントであり、上記遺伝子フラグメントは配列番号:1もしくは 68 に示すヌク
レオチド配列またはその機能的に均等なサブフラグメントに実質的に相当するフ
ラグメント、および(2)配列番号:5もしくは7に掲げたヌクレオチド配列ま
たはそれと機能的に均等なサブフラグメントに実質的に相当する核酸フラグメン
トからなり、上記核酸フラグメントは調節配列に操作性に連結している、感染部
位に真菌病原体によって引き起こされる疾患に対する抵抗性遺伝子仲介防御応答
を植物に付与する組換え発現構築体に関する。
【0095】 また、このような組換え発現構築体でトランスフォームされた植物およびこの
ような植物から得られる種子にも興味がある。このような発現構築体は、上述の
ように本技術分野の熟練者に周知の技術を用いて製造することができる。植物へ
の導入遺伝子の導入、すなわちトランスフォーメーションは本技術分野の熟練者
には周知である。植物細胞トランスフォーメーションの好ましい方法は粒子加速
または「遺伝子ガン」トランスフォーメーション技術(Kleinら, 1978, Nature(
London) 327: 70-73; 米国特許 4,945,050)の使用である。このような組換え発
現構築体でトランスフォームできる植物の例には、それらに限定されるものでは
ないが、単子葉植物がある。好ましくは単子葉植物は穀類である。最も好ましく
は、単子葉植物はイネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、シコクビエまたはト
ウジンビエである。
【0096】
【実施例】
本発明を以下の実施例によりさらに明らかにする。以上の記載およびこれらの
実施例により、本技術分野の熟練者は、本発明の本質的な特徴を確認することが
可能であり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明を様々な用途
および条件に適合させるため、本発明に様々な変更および修飾を行うことができ
るものと確信する。
【0097】 とくに他の記載のない限り、すべての部および百分率は重量部および重量百分
率であり、温度は摂氏で表示する。分子生物学における技術は通常 Sambrook,J.
,Fritsch,E.F. & Maniatis,T. 1989, Molecular Cloning - A Laboratory Manua
l,2nded. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yo
rkの記載のように実施した。
【0098】実施例1 相当するR−遺伝子の同定のための病原体株の育成 病原体の無毒性単離体は宿主抵抗性遺伝子の同定に必要であり、新しい病原体
株の使用はこれまで検出を逃れてきた抵抗性遺伝子を同定できる可能性がある。
特定のR−遺伝子をもつイネの品種に対して毒性を示す(すなわち、それらはR
−遺伝子仲介防御応答を誘発しない)2種の真菌株は相当する機能性AVR−遺
伝子を欠くものと考えられる。しかしながら、相当するAVR−遺伝子をもつ無
毒性真菌株は宿主抵抗性遺伝子の同定に必要であるが、2種の株が特定のイネ品
種に対して無毒性である場合には、それらは同じAVR−遺伝子、または異なる
R−遺伝子仲介防御応答を誘発する異なるAVR−遺伝子をもつはずである。新
しいまたは特性が解明されていない真菌株の使用はまだ同定されていないR−遺
伝子を同定できる可能性がある。この注意は、野外単離体イネ病原体たとえばA
VR−Pita 遺伝子のソース、O-137 を取り扱う場合、とくに要求される。さら
に、イネいもち病感染アッセイは、環境条件とくにイネの品種がいもち病にある
程度のレベルの一般的抵抗性をもつかどうか、また用いた病原体が病原性および
形態学的性質で不安定であるかどうかにより著しく感受性である。したがって、
完全に特性が解明された病原体株の使用が成功の鍵である。
【0099】 AVR−Pita 遺伝子を分断する遺伝子集団を含有する多重病原体リソースは
、R−遺伝子のクローニングを容易にした。4360-R-17、4360-R-27、4360-R-
30 のような子孫株、および以後の世代の株 4375-R-26 (Sweigardら, 1995, Th
e Plant Cell 7: 1221)はこれらの研究のために性質が改善された。これらの実
験におけるイネの交配は、少なくとも2種のR-遺伝子Pi−taおよびPi−
kmに分断させたため、および病原体交配 4360 が両者とも既知のR−遺伝子に
相当するAVR−遺伝子に分断されたため、単一AVR−遺伝子をもつ遺伝的に
特徴のある病原体株を得る必要性があった。このような株は病変の発生に対する
各R−遺伝子/AVR遺伝子の相互作用の影響を同定するために必要であった。
またマッピング集団のイネ子孫中における抵抗性表現型の正確な評点を保証する
ために抵抗性および感受性相互作用の間の表現型の差を最大にする必要があった
。28の子孫株が交配 4360から得られ、これらはAVR-Pita を含有していた
がAVR1-TSUYは含有していなかった。AVR1-TSUYは日本産品種 Tsu
yuake におけるいもち病抵抗性遺伝子 Pi-km に相当するAVR−遺伝子と考え
られる。これらの 28 種の子孫を、一方の親のイネ品種に完全に感受性な疾患症
状(4型〜5型病変)および他のイネ品種に典型的な抵抗性応答(0型〜1型病
変)を生じる安定な能力についてスクリーニングした(Valentら, 1991, Geneti
cs 127: 87)。M.grisea の単離体 4360-R-62 をAVR-Pita のみを含有する
試験株として選択した。さらにスクリーニングした9株から、AVR1-TSUY
のみを含む優れた病原体として 4360-R-67 を選択した。以下に記載する大部分
のR−遺伝子のマッピングは、これらの2つの真菌株で行った。
【0100】 さらに、AVR−遺伝子機能を失った突然変異体は、それらが由来する親株と
の比較に有用である。たとえば、株CP987 は自然毒性突然変異体の単離により
株 4360-R-17 から誘導された。CP987 におけるAVR-Pita 遺伝子は小さな
欠失によって不活性化された。毒性突然変異体は Sweigardら, 1995, The Plant
Cell 7: 1221 の記載のように無毒性野生単離体または実験室株から容易に得る
ことができる。病原体の性質を逆の方向に変えるためには Yashiro-mochi に対
して毒性の野生単離体 Guy 11 をクローン化AVR-Pita 遺伝子によりトランス
フォームしてCP3285 を産生させるとこの宿主は無毒性になった。イネいもち
病系における真菌のトランスフォーメーションは Sweigardら, 1995, The Plant
Cell 7: 1221 の記載のようにして定常的に実施される。
【0101】実施例2 植物の感染および評価 感染アッセイは以前に記載されたように実施した(Valentら, 1991, Genetics
127: 87)。分生子をオートミールアガールプレート上で生育させた培養体から
滅菌0.25%ゼラチン溶液で洗浄して収集した。それぞれのイネ品種から4な
いし5の個体を生育チャンバーのプラスチックポット内の Metro-Mix(登録商標
)鉢植え用メジウム中に播いた。植物は明時1日14時間のサイクルにおいて28
℃、相対湿度70〜85%で生育させた。夜の条件は22℃、相対湿度85%とした
。2週齢の植物が入ったポットを病原体の浸透に必要な相対湿度95〜100%
に維持するためプラスチックバッグに移し、病原体株たとえば実施例1記載の 4
360-R-62 または 4360-R-67 を接種した。2.5×105/ml の分生子を含有する水
懸濁液 4 ml を、絵画用エアブラシ(Pasha, サイズ 1)を用いて植物上にスプ
レーした。接種した植物を含むプラスチックバッグをついでツイストタイで密閉
し、低照明条件、室温で24時間インキュベートした。24時間後、植物をバッ
グから取り出し、生育チャンバーに戻した。感染型すなわち病変症状に対して接
種7日後に評点を付した。感染表現型を明瞭にするため0〜5の評点を使用した
(Valentら, 1991,Genetics 127: 87-101)。病変0および1は抵抗性として、
病変3〜5は感受性として評価された。
【0102】実施例3 イネいもち病AVR−遺伝子に相当するR−遺伝子の同定およびマッピング コメマッピング集団の発生:R−遺伝子に連結した物理的マーカーを同定する
ために2種の植物集団を用いた。第一に、発明者らによる使用のためにCIAT
(Centro Internacional de Agricultura Tropical; Apdo aereo 6713, Cali,
Columbia)で二重半数体(DH)集団を発生させた。日本産品種とインディカ品
種の間の交配で起こることが知られている分断の歪みによる問題(Wangら, 1994
,Genetics 136: 1421-1434)を最小限にするため、2つの日本産の品種 Yashiro
-mochi(R−遺伝子Pi−taを有する)および Tsuyuake(R−遺伝子Pi−
kmを有する)の間の交配を用いることに決定した。2つの日本産品種の間に存
在する多型のレベルは全イネゲノムをマッピングする目的では低すぎるが、Pi-t
a 遺伝子はインディカ種のイネに起源を有するので、このR−遺伝子領域には疾
患抵抗性の特性のマッピングを可能にする十分な多型が存在すると推論された。
この交配の結果の集合分断分析は、以下に記載するように、ゲノムの特定の領域
についてのマッピングの努力に集中された。
【0103】 DHイネ系統の製造は本技術分野の熟練者に標準の技術によって実施された。
第一に、イネ品種 Yashiro-mochi と Tsuyuake の間の相互の交配に由来するF1
植物の花粉から半数体カルスを得た。ついでイネ植物をこのカルスから再生した
。この操作で誘導された稔性植物は、半数体ゲノムの自然二倍体化を受けた。相
互交配からの個々の植物を7代の自己発生に付し計429の独立のDH系統を産
生させた。これらの中から119の系統をこの研究の最初のマッピング集団とし
て使用した。
【0104】 微細な構造マッピングには、DuPont においてF2 集団を2つのDH系統、品
種 Yashiro-mochi からの活性なPi−ta R−遺伝子を含有するYT4 および
その遺伝子を含まないYT10 の交配により育成した。F2分析の方法は本技術
分野の熟練者には周知である。
【0105】 AVR-Pita に相当するR−遺伝子を同定する分断分析:2種の真菌株 4360-
R-62 および 4360-R-67 に対する 119DH系統の反応は次の通りであった。す
なわち、35は両株に対して抵抗性、24は 4360-R-62に対して抵抗性、29
は4360-R-67 に対して抵抗性および31は両株に対して感受性であった。これ
ら4表現型クラスにおける子孫は期待された 1:1:1:1 の比に適合し(χ2=2.
20;P>0.50)、Pi−taおよびPi−kmが期待通り独立にR−遺伝
子を分断したことを指示した。さらに115のDH系統を株 4360-R-62 単独で
接種した。その中62系統が抵抗型、53系統が感受性型を示した。すなわち株
4360-R-62 に対する抵抗性と感受性系統の総比は 126:108 であり、これはχ2 試験に基づき期待される1:1の比から偏位していなかった(χ2=1.38; P
>0.20)。
【0106】 イネ系統YT10 およびYT4 の間の微細構造マッピング交配からのF1およ
びF2子孫の分析は、さらに病原体におけるAVR-Pita 無毒性遺伝子に相当す
る優性R−遺伝子の分断が支持された。R−遺伝子表現型が推定されたように優
性またはセミ優性であるか否かを決定するため、4個のF1 ハイブリッドを 436
0-R-62で感染させた。F1 ハイブリッドはすべて0型または1型の反応を示し
、抵抗性の親と同じで、イネでは、いもち病抵抗性の対立遺伝子は感受性の対立
遺伝子に対して優性であることを指示した。720のF2子孫も 4360-R-62 で
感染させた。F2集団の感染アッセイにおいては、植物をプラスチックトレー中
に、トレーあたり60植物で播き、接種を1×105/ml分生子に減少させた以外
は実施例2の記載と本質的に同様とした。約30mlの分生子懸濁液を各トレーに
適用した。F2植物は、541が抵抗性、179が感受性として分断され、ほぼ
完全に3:1の比にフィットし(0.007; P>0.90)、単一優性遺伝子で
あることを指示した。将来の微細構造マッピング研究に使用するためには、この
分析からの植物を注意深くトリムして疾患組織を除き、新鮮な鉢植え用メジウム
中に植え変えた。
【0107】 R−遺伝子に連結したDNAマーカーを同定するためのRAPDスクリーニン :R−遺伝子に連結した物理的マーカーを同定するために、マッピングの初期
段階において Random Amplified Polymorphic DNA(RAPD)マーカーを採用
した(Williamsら, 1990, Nucleic Acids Research 18: 6531-6535)。多型、一
つの親からで他からではない増幅したDNAセグメントを、任意のヌクレオチド
配列の単一プライマーでランダムDNAセグメントの増幅に基づいて検出する。
R−遺伝子に連結したマーカー上に焦点を当てるために、集合分断分析を使用し
た。これは、一方は、すべてが興味ある遺伝子を有する個体、他方は、興味ある
遺伝子をもたない個体の2つのプールの個体間の多型をアッセイする方法である
(Michelmoreら, 1991, Proc Natl Acad Sci USA 88: 9828-9832)。連結してい
ないDNAセグメントは両プールで等しいようにみえるが、連結しているDNA
セグメントは一方のプールに現れ、他方にはない。イネの総ゲノムDNAは以前
に記載された方法(Dellaportaら, 1983, Plant Mol.Biol.Reporter 1: 19-21)
を用いて個々のDH系統から単離された。ゲル中電気泳動によってDNA濃度を
標準量に対して評価したのち、4360-R-62 に対して抵抗性の10DH系統からの
DNAアリコートおよび 4360-R-62 に対して感受性の10DH系統からのDNA
のアリコートを合して2セットの「集合」DNAを形成させた。集合DNAを鋳
型として用い、RAPDマーカーの増幅を評価した。RAPD反応は、80mMの
Tris-HCl(pH 9.0);0.2mM(NH4)2SO4;2.5mM MgCl2;100
μMの各dGTP,dATP,dCTP,dTTP;0.2μMのプライマー;1
0ngのDNA;ならびに1単位の Taq DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer Cetu
s)を含有する容量 20μl 中で実施した。この操作により増幅されたDNAフラ
グメントを2%アガロース(New England BioLabs)ゲル上1×TAE緩衝液中
で5時間分離した。抵抗性および感受性プール中に存在するかまたは存在しない
多型フラグメントを、両親、抵抗性および感受性プール、ならびに2つのプール
を形成するそれぞれの個体からのDNA鋳型を用いてさらに確認した。
【0108】 抵抗性または感受性系統いずれかからプールしたDNAを鋳型として使用して
、1440 RAPDプライマーをスクリーニングした。95%以上のプライマーが1
または2以上の増幅産物を生じた。プライマーあたり分離したバンドの平均数は
約8であった。これらの増幅から、RAPDプライマー、SP1B8、SP2C12
、SP3F4、SP3G6、SP4A5、SP4B9、SP6C2、SP6G10、SP7C3
、SP7H8、SP8B8、SP8C6、SP8E2、SP8F1、SP9F3 およびSP1
5B12(配列番号:9〜24)にAVR-Pita に相当するR−遺伝子に連結した
多型が同定された。
【0109】 SP1B8: 5′-TCAGCGCCT-3′ (配列番号:9) SP2C12: 5′-CCAATCGGAC-3′ (配列番号:10) SP3F4: 5′-TAATGGGCGG-3′ (配列番号:11) SP3G6: 5′-GTCGCTACTG-3′ (配列番号:12) SP4A5: 5′-ACAGCGCCTT-3′ (配列番号:13) SP4B9: 5′-AGGCGTCTTC-3′ (配列番号:14) SP6C2: 5′-TAGCCAGACC-3′ (配列番号:15) SP6G10: 5′-TCTATGCCCC-3′ (配列番号:16) SP7C3: 5′-ATGGCAGATG-3′ (配列番号:17) SP7H8: 5′-CGAGTCAACT-3′ (配列番号:18) SP8B8: 5′-GTAGAAGCCT-3′ (配列番号:19) SP8C6: 5′-TCATGCGGAG-3′ (配列番号:20) SP8E2: 5′-CCATTTCCGT-3′ (配列番号:21) SP8F1: 5′-GGGAGGACTT-3′ (配列番号:22) SP9F3: 5′-AAAGGCAGTG-3′ (配列番号:23) SP15B12: 5′-TGTGCAACGG-3′ (配列番号:24)
【0110】 R−遺伝子に連結したマーカーの初期マッピング:連結したRAPD分子マー
カーの分断を各DHイネ系統について評点を付した。これらのRAPDマーカー
およびR−遺伝子の間の連結分析はコンピュータープログラムMAPMAKER
(バージョン 2.0)(Konieczny & Ausubel,1993, The Plant Journal 4: 403)
によって実施した。LOD評点>3をRAPDマーカーおよびR−遺伝子の間の
連結の確立に使用した。
【0111】 2点分析により、同定されたRAPDマーカー間ならびにこれらのマーカーと
DH集団中のR−遺伝子間の強力な連結が明らかにされた。R−遺伝子に関連す
るこれらのマーカーの順序は多重点分析により決定した。組換えなしにR−遺伝
子に最も近くマッピングされたSP7C3、SP7H8およびSP8C6 は 119 の子
孫中に観察され、一方マッピング領域の遠位端にマッピングされたSP8B8 お
よびSP3G6 はそれぞれR−遺伝子から8.3および7.3cMの遺伝子距離に
あった。これらのマーカーの最も可能性の高い順序は図1Aに示す。しかしなが
ら、多数のマーカーの順序は、どの特定の順序の確率もこの集団サイズに基づく
他の別の順序に関して100:1より大きくないので、明白に決定できなかった
【0112】 R−遺伝子の微細構造マッピング:マッピングの解像度の上昇は、R−遺伝子
と連結マーカーの分断をより大きなマッピング集団で評価することによって達成
された。さらにDHイネ系統を包含させてマッピング集団中の系統を総計270
にした。さらに、DH系統YT4 とYT10 の間の遺伝的交配からの720のF
2子孫をこの分析に包含させた。記載したように、720のF2植物はいずれが
相当するR-遺伝子を含有するかを決定するために、真菌株 4360-R-62(AVR
−Pitaのみを含む)を接種した。この分析からの感受性植物は疾患組織の除去に
よって再生し、新鮮な鉢植え用メジウムに植え変えた。十分理解されるようにR
APDマーカーのF2分断分析は、これらのマーカーの優性がヘテロ接合とホモ
接合子孫の間の識別を妨害するので複雑である。この困難性はRAPDマーカー
から共優性のマーカーを単離することにより、場合によっては克服することがで
きる。たとえば、RAPDマーカーからのRFLPマーカーの単離は実施例4に
記載する。ヘテロ接合とホモ接合F2イネ系統の他の判別は、F3世代における
抵抗性表現型の分断をチェックすることによって達成された。この研究で作成さ
れた微細構造マップを図1Bに示す。
【0113】実施例4 AVR−Pita を認識するR-遺伝子は Pi-ta でることの証拠 クローン化された無毒性遺伝子に相当するR−遺伝子は以前にPi−taとし
て同定されたいもち病抵抗性遺伝子であることの3つの系統の証拠が得られた。 いもち病抵抗性遺伝子のイネ染色体12へのマッピング:192の個体の組換
え近交系(RI)集団(系統LH422 および9024の交配によって作成;Xiaoら,
1995, Genetics 140: 745)を、R−遺伝子領域のそのイネ染色体座へのマッピ
ングに使用した。R−遺伝子は多型RAPDマーカーから誘導された隣接RFL
Pマーカーを用いて間接的にマッピングした。RAPDフラグメントはゲルから
溶出し、Geneclean II(Bio 101, San Diego, CA)を用いて清浄化し、TAクロ
ーニングベクター(Invitrogen, San Diego, CA)にサブクローニングした。こ
のサブクローニングされたDNA挿入体を、T7(配列番号:27)およびSP6(
配列番号:28)プロモータープライマーを用いて増幅し、マッピング集団の2つ
の親を検査するためにプローブとして用いた。プローブ、P4A5,P1B8,P7
C3およびP8C6 はそれぞれ、制限酵素XbaI、EcoRI、EcoRVおよびDra
Iと多型を示した。4つのRFLPマーカーの対立遺伝子パターンはRI集団メ
ンバーについて評価し、MAPMAKER(バージョン 2.0)プログラムを用い
てマッピングした。マーカーはすべて3より大きいLOD評点で判定された。2
点分析によりすべてのこれらのマーカーは染色体12上でRFLPマーカーのメ
ンバーに連結していることが確立された。多重点分析では、P7C3 およびP8G
6 はRG341 およびRZ670 の間隔内にそれぞれ1.3cMおよび3.2cMの遺
伝子距離で位置した(Causseら, 1994, Genetics 138: 1251-1274)。マーカー
、P1B8 およびP4A5 はRG9 およびRG869 の間にマッピングされた。すな
わち、AVR−Pita に相当するR-遺伝子はPi−ta遺伝子と同じ染色体領域
にマッピングされる。
【0114】 AVR−Pita 突然変異体および分断子孫は Pi-ta を含有することが報告され た他のイネ品種に対して同一の特異性を示す :R−遺伝子はPi−ta抵抗性遺
伝子を含有する染色体領域にマッピングされたが、それは依然として未知の遺伝
子であるか、またはこの同じ領域にマッピングされる他のR−遺伝子の一つかも
しれない。AVR−Pita 遺伝子のソースである中国の野生単離体O−137;AV
R−遺伝子を含有する交配4360の子孫、4360-R-17 および 4360-R-27;A
VR-遺伝子を含まない交配4360の子孫、4360-R-30;ならびにAVR−遺
伝子機能が失われた突然変異体、CP987 およびCP983 を含む一連の病原体株
が同定された。これらの病原体の単離体は、Pi−ta遺伝子、とくに Tadukan
およびK1 を含有する他のイネ品種に対する感染アッセイに使用された。Yashi
ro-mochi, K1および Tadukan についてこれらの病原体株により示された同一の
無毒性スペクトル(表3)はAVR−Pita に相当するR−遺伝子が以前に同定
されたPi−ta遺伝子であることを示唆する。Pi−ta遺伝子を欠くイネ品
種 Sariceltik はこれらのすべての病原体株に対し感受性である。
【0115】
【表3】
【0116】 日本産検定病原体株による感染は特異性を確認する:最後に、日本産病原体株
、Ken 60-19, Ken 54-12, Ina 72, Ina 168, Ken 54-04(Kiyosawa, 1976, SABR
AOJournal 8: 53-67; Yamadaら, 1976, Ann.Phytopath.Soc.Japan 42: 216)で
接種を実施した。これらの株は、Pi-ta を含めてイネの各種いもち病抵抗性遺伝
子の同定に使用した。これらの株をDH子孫イネ系統およびこの研究で得られた
株4360-R-62 および 4360-R-67 とともに検定イネ品種に対して接種した。こ
れらの野生単離体は、ina 168 を除いて、Pi-ta R−遺伝子を含むことが知られ
ている両検定イネ品種およびAVR-Pita に相当するR−遺伝子を含有するDH
子孫イネ系統に無毒性であり、したがって、R-遺伝子はPi−taであること
と一致する感染および疾患特異性が証明される。
【0117】実施例5 BACライブラリーの構築 大きな挿入体ライブラリーの構築方法は、今日では本技術に通暁している研究
者にとって定常的な作業である(Wangら, 1995, The Plant Journal 7: 525)。
R−遺伝子をもつDHイネ系統YT14 の葉のプロトプラストからのゲノムDN
Aを用いる細菌性人工染色体(BAC)ライブラリーの構築には標準技術を使用
した。プロトプラストは以前に記載されたように、若い葉および葉鞘から単離し
た(Wu & Tanksley, 1993, Plant Mol.Biol. 23: 243)。DNAはアガロースプ
ラグ中Hind IIIにより部分消化し、CHEFゲル上で分画した。100〜15
0kbの範囲のDNAフラグメントを溶出し、小さな分子を除去すために第二のサ
イズ選択に付した。サイズ選択されたDNAをついでGELアーゼ(Epicentre
Tech)によって処理してアガロースから回収して、pBeloBAC IIベクターの
Hind III部位にライゲートした(Shizuyaら, 1992, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8
9: 8794)。大腸菌DH10B細胞のトランスフォーメーションは、Cell Porator
Electroporation System I(BRL)を用いるエレクトロポレーションで実施
した。BACコロニーをLBプレート上12.5μg/mlのクロラムフェニコール
で選択した。総計20,160の独立のコロニーを酸洗浄して、100μlの L
Bを含有する96-ウエルマイクロタイタープレートをクロラムフェニコールお
よび10%グリセロールとともに保存した。ライブラリーへのクローンの平均挿
入体サイズは28個のランダムに選択したコロニーの分析に基づき110kbであ
る。ライブラリーはイネDNAに約5の半数体ゲノム均等体を含有する。
【0118】実施例6 染色体歩行および Pi-ta R−遺伝子候補PRG2 の同定 210のマイクロタイタープレートに含まれるBACライブラリーを Biomek
ロボット(Beckman Instruments)を用いて高密度フィルター上にスポットした
。全ライブラリーをフィルターあたりスポットした16プレートの密度で、14
個のフィルター上にアレイした。フィルターのセットを、実施例3に記載のRA
PDマーカーSP7C3 から得られた単一コピーのRFLPプローブで探査した
。全DHおよびF2 マッピング集団においてこのマーカーはPi−ta遺伝子を
共分断した。このハイブリダイゼーションにおいて、4つの重複BACクローン
、5C1、22H9、136F8 および 179G5(図2参照)が同定された。出発時点の
これらの物質および情報により、BACイネ挿入体の末端からプローブを単離す
るために2つの方法を使用し、これらのプローブを再度、ライブラリーフィルタ
ーのスクリーニングに用いた。標準アルカリ分解プラスミド精製方法(Sambrook
)に基づくミディ-プレップ操作を用いてBAC DNAを単離した。ベクターの
一端の挿入体境界配列を単離するための方法は、挿入体DNAの大部分を除去す
るため、BamHIもしくはSphIのいずれかによるDNAの消化を包含した。残
りのベクターのを再ライゲートし、M13-20(配列番号:25)および逆(配列
番号:26)プライマーまたはT7(配列番号:27)およびSP6(配列番号:
28)プライマーのいずれかを用いるPCRにより単離した。
【0119】 M13-20: 5′-GTAAAACGACGGCCAGT-3′ (配列番号:25) M13-REV: 5′-GGAAACAGCTATGACCATG-3′ (配列番号:26) T7: 5′-GTAATACGACTCACTATAGGGC-3′ (配列番号:27) SP6: 5′-ATTTAGGTGACACTATAG-3′ (配列番号:28)
【0120】 反対の境界フラグメントは2つの方法の一つによって単離した。第一の方法で
は、ゲノム挿入体DNAの大部分を欠失させるScaIによってBACクローンを
消化した。BACクローンの残部を再ライゲートし、挿入体の残部をT7(配列
番号:27)および Belo840(配列番号:29)プライマーを用いるPCRによっ
て増幅した。第二の方法はBACクローンのBamHIによる消化および再ライゲ
ート後の逆PCR技術(Sambrook; Ochman H.ら, 1988, Genetics 120: 621-623
)を包含し、これにより反対の境界フラグメントはプライマーIBAC1(配列
番号:30)およびIBAC2(配列番号:31)を用いるPCRによって増幅
された。PCRによって得られた境界フラグメントをアガロースゲルからサブク
ローニングし、重複BACクローンを単離するプローブとして使用した。
【0121】 Belo840: 5′-TTTGTGATGGCTTCCATGTC-3′ (配列番号:29) IBAC1: 5′-GTCGACTCTAGAGGATCC-3′ (配列番号:30) IBAC2: 5′-CTGCAGGCATGCAAGCTT-3′ (配列番号:31)
【0122】 左側への一歩歩行は左側組換え境界を定義する:179G5Rと命名されたBAC
クローン 179G5 の一方の挿入体境界フラグメントはサザンゲルブロット分析を
用いて単一コピー配列であるように思われ、PBCライブラリーフィルターをプ
ローブするために使用された。このフラグメントから、以前に同定された4つの
BACクローン、5C1、22H9、136F8 および 179G5 ならびに新しい3つのク
ローン、31H3、107F10 および 157A9(図2)が同定された。31H3Rと命名
された挿入体末端フラグメントは新規BACクローン 70F1 および 147G7 に
ハイブリダイズした。重複イネBACクローン 31H3,107F10,157A9,70F1
および 147G7 は、続いてR−遺伝子領域の一方の境界を定義するRAPDマー
カーSP4B9 に相当するDNA配列を含有することが示された(組換えは試験
した全マッピング集団からの一つの子孫イネ系統においてSP4B9 と Pi-ta 遺
伝子の間で起こった)。SP4B9 配列は、アガロースゲルからの連結SP4B9
PCRフラグメントをサブクローニングおよび配列決定して製造された特異的な
PCRプライマーGB24 およびGB25(配列番号:32および33)を用いて
、BACコンティグ中のこの位置に存在することが示された。この結果は、図2
のBACコンティグにおける左側の境界を定義し、R−遺伝子はこの図の右に位
置することを示していた。
【0123】 GB24: 5′-AGGCGTCTTCAGTTTTGTAATA-3′ (配列番号:32) GB25: 5′-AGGCGTCTTCCGGAAAGCAGCG-3′ (配列番号:33)
【0124】 右への歩行:G179G5Lと呼ばれるBACクローン 179G5 の反対側の末端か
らの境界フラグメントは、BACライブラリーフィルター上それ自体、ならびに
新しいBACクローン 34H9、50E12、108E4 および 158C2 にハイブリダイ
ズした。BAC末端フラグメント 158C2Lは 158C2 ならびに新しいBACク
ローン 35B3、41F2 および 77D8 にハイブリダイズした。77D8 の右および
左境界フラグメントの両者が反復DNA配列を含有するので、77D8-12 と呼ば
れるBAC挿入体の内部単一コピーフラグメントをアガロースゲルからクローン
化し、BACライブラリーを探査するために用いた。このフラグメントは 77D8
および 41F2 ならびに新しいBACクローン 18D1,6D5 および 142E8 を同
定した。
【0125】 R−遺伝子候補を同定するためのBAC挿入体のランダムゲノム配列決定:重
複BACクローン 31H3,179G5,34H9,77D8 および 142E8 は反応チャン
バー(Nebulization tube, order #4207, IPI Medical Product, Chicago)中、
窒素ガスでの高圧処理(20psi)によって90秒間ネブライズした。末端を一
様に刈込み、再沈殿させたDNAフラグメントを、高い適合性を有するDNAポ
リメラーゼ(PFU, Stratagene)により誘導される補充反応によってブラント末
端化した。QIAEX IIゲル抽出キット(Qiagen, Chatsworth, CA)を用い、サイズ
範囲 1000〜2000 bp でDNAフラグメントをアガロースゲルから単離し、pU
C18 のSmaI部位にサブクローニングし、エレクトロポレーションによってD
H10B中にトランスフォームした。BAC DNA挿入体を含むクローンを、ユ
ニバーサル逆方向プライマーを用いて一方向に配列決定した。それから配列を得
て、クローンのセットに含有するすべての遺伝子を同定する合理的な機会がある
ように、それぞれのBACについて約 300〜400 のクローンを配列決定した。同
様の研究を、BlastXプログラム(Gish,W. & States,D.J,, 1993, Nature Gene
tics 3: 266-272)を用いて行った。便宜上、BLASTによって計算され、探
索されたデータベースに単に偶然含まれた配列に対する配列のマッチの観察のP
-値(確率)を、ここに報告されたP-値の対数のマイナスで表される「pLog」
値として報告する。したがって、pLog が大きいほど、その配列とBLAST
の「ヒット」は同じ蛋白質を表す可能性が大きい。クローンは3つの群に分割し
た。すなわち、高度に有意なヒット(pLog>10)、低度に有意なヒット[1
≦(最高のpLog)≦10]およびヒットなし(pLog<1)である。たとえば
、370の配列がRB142E8 から得られ、60(16.2%)は高度に有意なク
ラスに、71(19.2%)は低度に有意なクラスに、239(64.6%)はヒ
ットなしのクラスに分類された。既にクローン化されている抵抗性遺伝子、植物
受容体遺伝子、または植物防御遺伝子にホモロジーを有する配列はさらに検討し
た。詳細に検討した5つの候補中PRG2 と呼ばれる一つがPi−ta遺伝子と
して最も有望であった。
【0126】 PRG2 は低度に有意なヒットの分類中の3つの配列によって同定された。た
とえば 586 bp DNAフラグメントによってコードされるアミノ酸配列は、トマ
トにおけるR−遺伝子機能に要求される(Salmeronら, 1996, Cell 86: 123-133
)蛋白質PRF(GeneBank 受付番号 U653391)に中等度の類似性(pLog=5.8
0)を有する bac142e8.pk0001.f12(配列番号:34;図3中の “f12")中
で配列決定された。それはまた Arabidopsis R−遺伝子RPM1(X87851;Gra
ntら, 1995,Science 269: 843-846)によりコードされるアミノ酸配列に類似す
る(pLog=5.43)。bac142e8.pk0001.b7(配列番号:35;図3中の “b
7")から配列決定された598bpはPRF遺伝子および Arabidopsis ミオシン
重鎖ホモロー(U 19619)を同定し、bac142e8.pk0001.f8(配列番号:36;図
3の “f8")の605bp挿入体はRPM1 およびPRFの領域を含有するP-
ループにホモロジーを有する44アミノ酸領域を示した。これらのゲノムクロー
ンからのプライマーは、以下に記載する抵抗性イネ品種 Yashiro-mochi からの
この領域を、さらにゲノム配列決定するために作成された。配列決定が進行する
に従い、有意なヒットを示さなかった元のセットの 239 BACフラグメントか
らさらに重複サブクローンが同定された(図3)。
【0127】実施例7 Pi−ta候補遺伝子のためのゲノムおよびcDNAクローンの単離 推定 Pi-ta 遺伝子座からなると実施例6に記載のBAC 142E8 からサブク
ローニングされた核酸フラグメントを、完全長の遺伝子をクローニングする戦略
を設計するため、正確に配列決定した。とくに、bac142e8.pk0001.f8 中のイネ
ゲノムフラグメントは、サイズ 2 kb であり、開始コドンの前に1255bpのプ
ロモーター配列を含有した(図3)。クローン bac142e8.pk0001.b7 および bac
142e8.pk0001.f12 からのアガロースゲル精製イネ挿入体フラグメントを用いた
Yashiro-mochi ゲノムDNAおよびBAC142E8 のサザン分析は、BAC RB
142E8 がPRG2 の単一コピーを含有することを示した。この分析はまた遺伝
子の残部と約 2 kb の3′−非翻訳領域を含有する 142E8 から 5.3 kb BamH
Iフラグメントを同定した。この 5.3 kb BamHIフラグメントをBAC DN
Aからベクター pBluescript II SK+(Stratagene)にサブクローニングし
、クローン#7と命名された(図3)。bac142e8.pk0001.f8 およびクローン#
7の両者をEcoRIで消化し、クローン#7からの5.3kb EcoRIフラグメン
トをbac142e8.pk0001.f8 における小EcoRIフラグメントの代わりにライゲー
トして、全遺伝子をアセンブルした(図4)。得られたベクターpCB1641 は
2.7kbのベクター中にイネDNAの7.5kb挿入体を含有した。このイネクロー
ンは完全長PRG2 コード配列とともに1255bpのプロモーター配列および約
2kbの3′非翻訳配列を包含した。pCB1641 中、5757 bp のゲノムクローン
のDNA配列(配列番号:1;全5′配列、コード配列およびイントロンならび
に停止コドン後 246 bp を包含)を、DyeDeoxy ターミネーターサイクル配列決
定システムおよび 377A型DNA配列決定システム(Applied Biosystems, Fost
erCity, CA)を使用してプライマー歩行法により両鎖について測定した。使用し
た一部のプライマーの相対的位置を図5に示す(配列番号:37〜64)。
【0128】 F8-2: 5′-CCATCGGTGACCATGGG-3′ (配列番号:37) 1641-1: 5′-CCCTCTCCGTTGTTCCCATGG-3′ (配列番号:38) F8-4: 5′-GGGTTGGAGAATGCATGG-3′ (配列番号:39) 1641-2: 5′-CCATGCATTCTCCAACCC-3′ (配列番号:40) F8-3: 5′-CATGGATGGAGACCTCTGC-3′ (配列番号:41) F8-5: 5′-TCCTCAGAGGCGATCTCC-3′ (配列番号:42) F8-1: 5′-GAACAGGGTGACCTCGTCG-3′ (配列番号:43) F12-1: 5′-GTGGCTTCCATTGTTGGATC-3′ (配列番号:44) F12-5: 5′-CGAACGGCGCATCCAACC-3′ (配列番号:45) F12-6: 5′-GTGTCCTCTATTAGTAAATAC-3′ (配列番号:46) F12-7: 5′-GTATTTACTAATAGAGGACAC-3′ (配列番号:47) 1641-3: 5′-GGGCCTCCCTTGTTCGG-3′ (配列番号:48) 1641-4: 5′-CCGAACAAGGGAGGCCC-3′ (配列番号:49) F12-4: 5′-CCTACAGATCTGTAGCCAGC-3′ (配列番号:50) F12-3: 5′-GCTGGCTACAGATCTGTAGG-3′ (配列番号:51) F12-2: 5′-GCTGGCTACAGATCTGTAGG-3′ (配列番号:52)
【0129】 B7-1: 5′-GCTGGCTACAGATCTGTAGG-3′ (配列番号:53) B7-3: 5′-GTGATTCCATTGCTGCATTCC-3′ (配列番号:54) B7-4: 5′-CATGTGTAGTGCACCACATGG-3′ (配列番号:55) B7-2: 5′-CTGTCGTCTGAGAATGATCC-3′ (配列番号:56) C10-1: 5′-CCAAGGACTACAACACTTGC-3′ (配列番号:57) 173C12-5: 5′-GCATCCCCAAATGGACTGG-3′ (配列番号:58) 1641-5: 5′-CCAGTCCATTTGGGGATGC-3′ (配列番号:59) 173-6: 5′-CAAGCATCCGACGCCGAGC-3′ (配列番号:60) 173-7: 5′-TTGTATATCAACCATAAGAGTGC-3′ (配列番号:61) 1641-6: 5′-GTTCTTTGATCCAAGTGTTAGG-3′ (配列番号:62) GB46: 5′-CATTAAAGTCGACCTCAAACAATCATCAAGTCAGGT-3′(配列番号:63) GB47: 5′-AATGCAGAATTCACAACACCACTAGCAGGTTTG-3′ (配列番号:64)
【0130】 pCB1641 中にサブクローニングしたイネゲノムフラグメント(配列番号:
1;5757 ヌクレオチド)のDNA配列分析により、ヌクレオチド 1256 に始ま
り、ヌクレオチド 2199 と 3663 の間が1個の1463bpのイントロンで中断さ
れている 2748 ヌクレオチドのオープンリーデフィングフレームが同定された。
コード配列は928アミノ酸を有する推定ポリペプチドに相当する(図6)。推
定蛋白質は相対分子量105kDaを有し、pIは7.05である。N−グリコシ
ル化コンセンサス[NX(S/T),XはPではない]にマッチする4つのアミノ
酸配列(Kornfeldら, 1985, Ann.Rev.Biochem. 54: 631)が、PRG2 蛋白質中
に存在する。
【0131】 PRG2 がイネゲノム中、単一コピー内または多重コピー内に存在するのかを
決定するため、総ゲノムイネDNAのブロットを、遺伝子のアミノ末端部分(プ
ライマーF8-5 およびF12-5 によって増幅した639bpフラグメント)または
カルボキシ末端部分(プライマーGB47 およびGB46 によって増幅したヌクレ
オチド 4477〜5503)のいずれかにコードされる核酸フラグメントを用いて探査
した。ブロットを低緊縮ハイブリダイゼーションについては、0.1%SDS含
有 2×SSPE中 50〜55℃で、および高緊縮ハイブリダイゼーションについて
は、0.1%SDSを含む0.1×SSPE中65℃で洗浄した。高緊縮条件下で
も、N-末端プローブ(塩基1401〜2040からなる核酸フラグメント)に
よりバックグランドハイブリダイゼーションの一般的スミアに対して単一コピー
が同定された。全く同じブロットをC-末端核酸フラグメント(pBC1645 とし
てサブクローニング、以下に記載)でプロービングするとバックグランドスミア
のない一つのコピーが同定された。PRG2 は単一コピー遺伝子であるが、イネ
ゲノムには類似の遺伝子が存在すると結論された。
【0132】 単一コピーC-末端プローブをハイブリダイゼーションプローブとして使用す
るためにサブクローニングした。プライマーGB47 をヌクレオチド 4465〜4497
からのこの領域の配列に基づき合成し、残基 4471〜4476 はEcoRI制限部位が
導入されるように修飾した。同様に、プライマーGB46 はヌクレオチド 5512〜
5506 に相当する残基をSalI制限部位が導入されるように修飾したほかは、逆
相補性のヌクレオチド 5519〜5484 であった。プライマーGB46 およびGB47
は遺伝子フラグメントを増幅するために使用した。実施例6に記載のようにアガ
ロースゲルから精製し、指示した酵素で消化したのち、核酸フラグメントをベク
ターpBD-GAL4 Cam(Stratagene)のEcoRI/SalI部位にサブクローニ
ングしてプラスミドpCB1645(図4B)を調製した。サブクローニングしたフ
ラグメントはその構造を確認するために配列決定した。
【0133】 完全長 Pi-ta cDNAフラグメントを、逆転写酵素(RT)PCRおよびサ
ブクローニングを用いてクローン化した。このアプローチには、CaMV35Sプ
ロモーターに操作性に連結したゲノムPi−ta核酸フラグメントからなる導入
遺伝子(実施例10、発現構築体3)を含有し、ノーザンブロットで Pi-ta の過
剰発現を示したトランスジェニック Nipponbare 系統 27-4-8-1 からのmRNA
の単離を包含した。第一鎖cDNAは、鋳型として単離mRNA分画、プライマ
ーとしてオリゴヌクレオチドGB67(配列番号:65)を用いて合成した。 GB67: 5′-CCATTAAGCTTGGTTTCAAACAATC-3′ (配列番号:65)
【0134】 部分 Pi-ta cDNA(2.1 kb)を、プライマーF12-1(配列番号:44)およ
びGB67(配列番号:65)を用いて第一鎖cDNAから増幅した。これをつい
でBamHI(Pi-ta 核酸フラグメント中に制限部位が存在する)ならびにHindI
II(GB67 配列中に制限部位が存在する)クローニング部位を用いてpSL118
0(Pharmacia)にクローン化した。完全長の合成cDNAを得るために、Pi-ta
コード配列の5′末端を含有する 706 bp NcoI-BamHIフラグメントをpC
B1649 から単離し、2090 bp BamHI−Hind III部分 Pi-ta cDNAフラグ
メントの上流のNcoI-BamHI部位にクローン化して、完全長の、プロモータ
ーのない Pi-ta cDNAを創製した。DNA配列分析により、コドン 796 に存
在する2 bp の欠失があり(多分PCRアーチファクトであろう)推定 Pi-ta 蛋
白質を119 アミノ酸で先端を切断され、フレームシフト突然変異を生じたことが
確認された。これは、1400 bp SphI-Bgl IIフラグメントを、正しい配列を含
有するpCB1649 からの相当するフラグメントで置換することによって補正さ
れ、pCB1906 が創製された。DNA配列分析でも推定イントロンはこの合成
DNA中に正確にスプライスされたことが測定された。ネイティブなPi−ta
プロモーターフラグメント(2425 bp)はpCB1649 からの 3173 bp EcoRI
フラグメントをpCB1906 のEcoRI部位にクローニングすることにより付加
し、最終的な Pi-ta cDNA構築体を含むプラスミドpCB1926(図7C)が
生成した。
【0135】実施例8 感受性イネ品種 Tsuyuake からのPi−ta候補遺伝子のクローニングならびに 抵抗性および感受性対立遺伝子の比較のための配列分析 イネゲノムライブラリーは、感受性品種 Tsuyuake からのDNAを用いてバク
テリオファージλ中に構築した(Sambrook)。ゲノムDNAは、Dellaportaら,
1983, Plant Mol.Biology Reporter 1: 19-27 によって記載された操作を用いて
調製された。ゲノムDNAは制限酵素Tsp5091(5′−AATT-3′を切断)で部
分消化した。サイズ範囲7〜10kbのDNAフラグメントをアガロースゲルから
精製して、ベクターλZap II(Stratagene)のEcoRI部位にサブクローニン
グした。pCB1641 のDNA挿入体とのハイブリダイゼーションによる Tsuyua
ke ライブラリーのスクリーニングではPRG2 に類似の配列で8個の重複クロ
ーンが同定された。1kb重複し、全コード配列を含む2つのクローン T2-9 お
よびT2-2 を図5におけるプライマーを用いて配列決定した。Tsuyuake からの
クローン化ゲノムフラグメントの配列は感受性DHイネ系統YT16 のPCR増
幅ゲノムDNAから得られた配列と同一であった。
【0136】 多重イネ系統からの抵抗性および感受性対立遺伝子の比較:抵抗性の Yashiro
-mochi イネからの機能性Pi−taコード配列(配列番号:1および68に含
まれる)は感受性 Tsuyuake イネ(配列番号:3中に含まれる)からの非機能性
コード配列と7ヌクレオチド異なっている。コード領域における7塩基ペアの置
換は2つの蛋白質の間に5アミノ酸の違いを生じる(図6)。さらに6個の塩基
ペアの変化がイントロン配列中に起こる。コード領域におけるヌクレオチドの違
いの大部分はP−ループモチーフの前の領域に起こる。いずれの遺伝子も同じN
BSモチーフならびに4個のN−グリコシル化部位の可能性を位置 339, 556, 6
54 および 838 にもつ蛋白質をコードする。
【0137】 ポリA+-RNAによるRNAゲルブロット分析で測定して、Yashiro-mochi か
らのPi−ta遺伝子および Tsuyuake からの感受性対立遺伝子はいずれも、推
定転写サイズ3.3kbで転写される。さらに、RNAブロット分析では、両対立
遺伝子とも構成的に発現されることが証明される。この分析はポリA+−RNA
ブロットをpCB1645 中にクローン化されたC末端Pi−taフラグメントで
プロービングすることにより行った。ポリA+-mRNAは抵抗性イネ品種YT14
または感受性イネ品種YT16 の2週齢の葉から Perry & Francki(1992, J.Ge
n.Virol.73: 2105-2114)の方法によって調製した。RNAゲルブロット分析は
Ausubelら(1987, Protocols in Molecular Biology, New York, John Wiley an
d Sons)の方法により実施した。
【0138】 Pi−ta遺伝子の抵抗性対感受性型において核酸配列の差異が保存されてい
るか否かを明らかにするため、さらに他のイネの品種からのPi−ta核酸フラ
グメントのゲノムクローンの配列を得た。図5に掲げたプライマーを用いて、抵
抗性品種 Tadukan およびK1からPi−ta遺伝子のPCR産物を配列決定し
た。これらの品種は、Yashiro-mochi における遺伝子の存在を生じた様式とは独
立に、後天的に Pi-ta 抵抗性遺伝子を有するものと考えられている。さらに他
の感受性の日本産イネ品種、Nipponbare および無関係な感受性品種、Saricelti
k からの核酸フラグメントの配列決定に同じPCRプライマーを使用した。配列
の差が日本産対インディカの間の対立遺伝子の差によるのか否かを決定するため
に、感受性インディカ品種C101A51 からの核酸フラグメントを配列決定した。
結果は、核酸配列とAVR−Pita を含有するイネいもち病病原体の株に対する
抵抗性の間の強い相関を示して、配列決定した領域を越えて Tadukan およびK
1は Yashiro-mochi からのPi−taと同一の配列を有し(表4)、Nipponbar
e と Sariceltik からの遺伝子は Tsuyuake からの感受性pi−ta遺伝子と同
一の配列を有する。インディカC101A51 対立遺伝子のヌクレオチド配列は単一
アミノ酸の差、位置918 におけるアラニン対セリンがPi−ta機能の特異性を
決定することを示唆している。
【0139】
【表4】
【0140】実施例9 イネにおける一過性発現によるPi−ta機能の同定 本技術分野の熟練者には標準的実務であるように、興味ある組換え発現構築体
で被覆した粒子による植物組織の高速バイオリスティックボンバードメントは、
導入されたプラスミドからの核酸フラグメントの一過性発現を生じる。疾患抵抗
性遺伝子の機能は、過敏性細胞死抵抗性応答を誘発するためにアッセイすべきレ
ポーター遺伝子発現を用いる一過性の葉ボンバードメント実験で証明することが
できる。このようなアッセイは、抵抗性応答の誘発に必要な相当するAVR−遺
伝子が細菌病原体による植物組織の均一な浸潤によって供給できるので、細菌病
原体に対するR−遺伝子の有用性を実証した(Mindrinosら, 1994, Cell 78:108
9-1099)。均一な病原体浸潤は、植物キューティクルを通して直接浸透し浸透し
た点に局限された病変を生じる M.grisea のような真菌病原体では不可能である
【0141】 真菌AVR−遺伝子の植物組織内への均一な導入の障害を克服するためAVR
−Pita 発現構築体の導入をGUSレポーター遺伝子とともにコボンバードメン
トによって試験した。とくに構築体を、植物細胞における構成的発現のための35
Sプロモーターの制御下に推定成熟プロテアーゼ(AVR−Pita176)を発現す
るように操作した。まず、pML63(図7B)をNcoIで切断し、S1ヌクレア
ーゼでブラント末端にした。GUS核酸フラグメントをついでAsp718 でさらに
消化して除去した。プライマーML132(配列番号:69)およびML133(配列
番号:70)で発生させたリンカーフラグメントをブラント末端にしたNcoIお
よびAsp718 部位にクローン化し、pML135 を調製した。 ML132: 5′-CACGTGGAATTCCCCGGGG-3′ (配列番号:69) ML133: 5′-GTACCCCCGGGGAATTCCACGTG-3′ (配列番号:70)
【0142】 pML135 をPmlIおよびAsp718 で消化し、トウモロコシゲノムDNAから
プライマーML111(配列番号:71)ならびにML135(配列番号:72)を用
いてPCRによって増幅したAdh1-6 イントロンをML135 にクローン化してp
ML141 を調製した。 ML111:5′-CCCGGGGAATTCCTGCAGAAGGTGCAAGGATTGCTGGAGCG-3′ (配列番号:71) ML135:5′-TTTAAAGGTACCCCATGGCACGTGCCGGCTTGTTGTGGTCTTTTGGGTTCAC-3′ (配列番号:72) pML142 はpML141 をBamHIおよびNcoIで消化し、pML141 からの
35S/Adh1-6 配列を含む1.9kbフラグメントをpML63 のBamHI/NcoI部
位にクローニングして最終的に創製した。
【0143】 推定成熟プロテアーゼと1個の付加的N末端アミノ酸(AVR−Pita177,プ
レプロ蛋白質のIle-47 で開始する)をコードするAVR−Pita 核酸フラグメ
ント(配列番号:5)のヌクレオチド 139-672 を含むプラスミドpAVR3 お
よび開始コドン met を、ベクターpML142 中 35S/Adh1-6 プロモーターに
融合した。AVR−Pita 核酸フラグメント(配列番号:5)をプライマーAV1
(配列番号:73)およびAV3(配列番号:74)を用いてAVR−Pita cD
NAからPCRによって増幅し、PmlIおよびKpnIで消化し、クレノウポリメ
ラーゼでブラント末端化し、予めPmlIおよびKpnIで切断し、クレノウポリメ
ラーゼでブラント末端化したpML142 にクローン化するとpAVR3 が生成し
た。 AV1: 5′-GCCGGCACGTGCCATGATTGAACGCTATTCCCAATG-3′(配列番号:73) AV3: 5′-GCCGGGATCCCCCTCTATTGTTAGATTGAC-3′ (配列番号:74)
【0144】 推定成熟プロテアーゼのコード配列(プレプロ蛋白質のGlu-48 で開始する)
は、プラスミドpAVR3 中のAVR−Pita 核酸フラグメント(配列番号:5
)から、インフレームNcoI部位(配列番号:66)およびYL37(配列番号:
67)を含むオリゴヌクレオチドYL30 を用いPCR増幅によって得られた。
PCRフラグメントをpML142 中NcoI/KpnIにクローン化しベクターpC
B1947を得た。これはpAVR3 中のIle-47 コドン(att)を除去するために
行い、AVR−Pita176を発生させた。その他の詳細は図7Aの図の説明に記載
する。 YL30: 5′-ACAACAAGCCGGCACGTGCCATGGAACGCT-3′ (配列番号:66) YL31: 5′-TCCTTCTTTAGGTACCGCTCTCTC-3′ (配列番号:67)
【0145】 AVR−Pita176を Pi-ta 含有植物に導入した場合その構築体の発現がPi−
ta仲介防御応答を誘導するか否かを決定するために、Pi−ta植物(Yashir
o-mochi およびYT14)およびPi−taを欠く植物(Nipponbare およびYT1
6)からの実生を、35S/Adh1-6::AVR−Pita176遺伝子構築体および 35S::
GUSレポーター遺伝子でコボンバードメントに付した(図7)。種子を葉のア
ッセイメジウム、100mgのカゼイン加水分解物および0.5%アガロースを補
充した1/2濃度のMSメジウム上、25℃で48時間、100μEm-2s-1の
冷白色光の12時間明期で、インキュベーター中に1週間置き発芽させた。2葉の
実生を外科用レーザーでアガロースメジウムから切除し、予め湿らせたフィルタ
ーペーパーを含むペトリ皿中に置いた。植物を同定のために、永久マーカーでベ
ースにおいてラベルした。実生のバイオリスティックボンバードメントは、Bio-
Rad PDS-1000/He 装置および1150−psi破裂皿を用いて実施した。金粒子(
直径0.6μm)を製造業者により提供された指示書によって調製した。各ボンバ
ードメントごとに 1μg の金粒子を 1.5μg の 35S/GUSおよび 1μg の他
のプラスミドで被覆した。ボンバードメント後に、実生を予め湿らせたフィルタ
ーペーパーを含むペトリ皿中に25℃で48時間維持した。葉を70%エタノール
中で清浄化して、β-グルクロニダーゼ(GUS)活性を5−ブロモ−4−クロ
ロ−3−インドリルグルクロナイド(X-glu)を基質として用いて組織学的にア
ッセイした(Jefferson, 1987, Plant Mol.Bio.Rep. 5: 387-405)。
【0146】 機能性AVR−Pita176発現構築体では内因性 Pi-ta 遺伝子を含む葉にGUS
構築体をコボンバードメントした場合に、GUS発現の著しい減少が誘導された
(発現に先立つ細胞死が示唆される)。予期されたように、AVR−Pita176
現構築体は、完全長のAVR−Pita コード配列を含有する類似の発現構築体よ
りも有意に高い活性を示した。初期の実験では、無傷の Yashiro-mochi の葉の
ボンバードメントに際して、典型的なI型壊死病変およびGUS発現の減少の観
察に基づく過敏症様の応答が明らかにされたが、壊死病変の形成はGUS活性の
減少ほど再現性はなかった。無毒性を付与しないAVR−Pita176の突然変異型
では、GUS発現の減少も起こらない。内因性のPi−ta遺伝子を欠くイネ品
種ではその作用は見られない。すなわち、AVR−Pita コード配列の発現は内
因性Pi−ta遺伝子を含有するイネの葉に直接導入した場合に、イネ防御応答
を誘導する。
【0147】 一過性発現アッセイでの内因性Pi−ta遺伝子の代わりのPRG2 機能:抵
抗性(YT14)および感受性(YT16)イネの葉を、外因的に供給したPRG2
が内因性 Pi-ta 機能を補足できるか否かを見るために、AVR−Pita176(pC
B 1947;図7A)、GUS(pML63;図7B)および Pi-ta cDNA(pC
B 1926;図7C)発現構築体によるコボンバードメントに付した。このアッセ
イからの典型的な葉を図8に示す。GUS発現レベルの低下はPi−ta発現構
築体がAVR−Pita176 およびGUSとコボンバードメントされていてもされて
いなくても抵抗性(YT14)の葉に観察された。感受性(YT16)イネの葉では
しかしながら、Pi−ta発現構築体がAVR−Pita176 およびGUSとコボン
バードメントされた場合にのみ、GUS発現の著しい減少が記録された。すなわ
ちPRG2 は内因性Pi−ta遺伝子の代わりにAVR−Pita176 の認識および
局在する細胞死を誘導する機能を示す。AVR−Pita176 およびGUSのみでシ
ョットした感受性YT16 実生の対照の葉では高レベルのGUSが発現した。P
i−taからの単一アミノ酸で相違する品種C101A51 からの感受性対立遺伝子
は、AVR−Pita176およびGUSでコボンバードメントを行った場合、GUS
発現の減少は起こらないで、このアッセイの特異性が維持されていることを指示
した。これらの実験はPRG2 が実際 Pi-taであるとする結論に一致する。
【0148】実施例10 推定R−遺伝子を含有するトランスジェニックイネの産生 分子植物病理学における標準実務によれば、R−遺伝子機能の同定は、感受性
植物への導入遺伝子の安定な導入(すなわちトランスフォーメーション)および
この遺伝子が以前には感受性の特徴を示した宿主植物に抵抗性表現型を付与する
ことの証明を包含する。本技術分野の熟練者に利用できる、DNAを高級植物の
真核細胞にトランスフォームする方法の一つは、興味ある核酸構築体で被覆され
た金属粒子を使用する高速ボーリスティックボンバードメントである(Kleinら,
1987, Nature (London) 327: 70-73 参照;およびUS特許 4,945,050 参照)。
これらの実験には、バイオリスティック PDS-1000/He(Bio-Rad Laboratories,
Hercules, CA)を使用した。推定Pi−ta核酸フラグメントを含有する4つ
の異なる発現構築体で感受性イネ品種 Nipponbare をトランスフォームするため
には粒子ボンバードメント技術を使用した。
【0149】 1)pCB1641−1255 bp のネイティブなプロモーター領域を包含する7kb P
i-ta 核酸フラグメント含有プラスミド(図4A,配列番号:1)。 2)pCB1649−3kbのネイティブなプロモーターを包含する8.4kb Pi-ta
核酸フラグメント含有プラスミド。このベクターはそれがより長いプロモーター
領域を含有するほかは、pCB1641 と同じである。pCB1649 の作成には、p
CB1641 をHind III/Sac IIで切断して1.58kbフラグメントを除去した。
これをBAC142E8 の4.98kb Hind III/Sac IIサブクローンで置換し、
pCB1649を創製した。このクローニング工程では、本質的に、pCB1641 中
の1255bpプロモーターをより長い4656bpのプロモーターフラグメントで
置換した。 3)35S/Pi-ta−1.9kbの修飾 35Sプロモーターフラグメントに操作性に
連結した5.3kb Pi-ta 核酸フラグメント含有プラスミド。このベクターはpC
B1641 からの5.36kb NcoI/KpnIフラグメントを、35Sプロモーターフ
ラグメントを含有するプラスミドpML63 のNcoI/KpnI部位にクローニン
グして構築された。 4)pCB1926−Pi-ta cDNA核酸フラグメントおよび図7C、配列番号:
68に記載の2425bpのネイティブプロモーター領域含有プラスミド。
【0150】 抗生物質に対する抵抗性を付与する Streptomyces hygroscopicus からの細菌
ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(Hpt II)遺伝子をイネトラン
スフォーメーションの選択可能なマーカーとして使用した。ベクター中にはpM
L18 を使用し、Hpt II遺伝子を、カリフラワーモザイクウイルスからの 35S
プロモーターならびに Agrobacterium tumefaciens のオクトパインシンターゼ
からの停止およびポリアデニル化シグナルで操作した。pML18 は 1997年12月
18日に公開されたWO97/47731 に記載されている。この開示は参照により本明
細書に組み入れる。
【0151】 発芽した Nipponbare の種子の胚盤に由来する体細胞胚増殖カルスはトランス
フォーメーション実験のソース材料として役立つ。この材料はカルス開始メジウ
ム(MS塩、Nitsch and Nitsch vitamins, 1.0mg/Lの2,4−Dおよび10
μM AgNO3)上、暗所、27〜28℃で滅菌イネ種子を発芽させることによ
り発生させた。胚の胚盤から増殖する体細胞胚増殖カルスをCMメジウム(N6
塩、Nitschand Nitsch vitamins, 1mg/l の 2,4−D,Chuら, 1985, Sci. Sin
ica 18: 659-668)に移した。カルスの培養はCM上2週間隔の定常的な植え継
ぎによって維持し、開始10週以内に使用した。
【0152】 カルスは、CMメジウム上に置いた環状の Whatman #541 ろ紙の中央、直径
約4cmの環状領域に約1mm離れて配置した0.5〜1.0mmの小片を継代培養して
トランスフォーメーション用に調製した。カルスを置いたプレートを暗所、27〜
28℃で3〜5日間インキュベートした。ボンバートメントに先立ち、カルスを置
いたろ紙を、暗所の0.25Mマンニトールおよび0.25Mソルビトールを補充
したCMに3時間移した。ついで滅菌フード中でペトリ皿の蓋を20〜45分間
少し開いて組織上の湿気を消散させた。
【0153】 2つの異なるプラスミド、たとえばイネのトランスフォーメーションの選択可
能なマーカーを含むpML18 および推定R−遺伝子を含むpCB1641 からの環
状プラスミドDNAを金粒子上に共沈殿させた。これを達成するためには、総計
10μg のDNAを、形質:選択可能マーカーDNAの比2:1で、濃度60mg/
mlに再懸濁した金粒子の50μlアリコートに加えた。ついで塩化カルシウム(
2.5M溶液の50μl)およびスペルミジン(0.1M溶液の20μl)を金-D
NA懸濁液に、チューブを3分間ボルテックス撹拌しながら加えた。金粒子をミ
クロフュージで1秒間遠心分離し、上清を除去した。ついで金粒子を2回 1 ml
の無水エタノールで洗浄し、ついで50μl の無水エタノールに再懸濁し、1秒
間超音波処理(バスソニケーター)して金粒子を分散させた。金懸濁液を−70
℃で5分間インキュベートし、粒子を分散させる必要があれば超音波処理(バス
ソニケーター)した。ついで6μl のDNA-被覆金粒子をマイラーのマクロキ
ャリヤーディスク上に負荷してエタノールを蒸発させた。
【0154】 乾燥の終了時に、組織を含むペトリ皿をPDS-1000Heのチャンバー内に置い
た。ついでチャンバー内の空気を除き、28〜29inch Hgの真空にした。ショ
ックチューブ内のHeの圧力が 1080〜1100 psi に達したときに破裂する破裂膜
を用いてヘリウムショック波でマクロキャリヤーを加速した。組織を停止スクリ
ーンから約8cm離してに置き、カルスを2回ボンバートメントに付した。組織の
5〜7プレートがこの方法によりDNA−被覆金粒子でボンバートメントされた
。ボンバートメント後、カルス組織をソルビトールまたはマンニトーを補充しな
いCMメジウムに移した。
【0155】 ボンバートメント後3〜5日以内にカルス組織をSMメジウム(50mg/mlの
ハイグロマイシンを含有するCMメジウム)に移した。これを達成するには、カ
ルス組織をプレートから滅菌した50mlのコニカル管に移して秤量した。40℃
で溶融したトップ−アガールを、2.5mlトップ−アガール/100mgカルスで
用いて添加した。10mlのピペットを通して繰り返し分配して、カルスの塊を2
mm 未満のフラグメントにほぐした。カルス懸濁液の3mlアリコートを新鮮なS
Mメジウム上に置き、プレートを暗所で4週間、27〜28℃でインキュベート
した。4週後、トランスジェニックカルス現象を確認し、新鮮なSMプレートに
移し、さらに2週間、暗所、27〜28℃で生育させた。
【0156】 生育中のカルスをRM1メジウム(MS塩、Nitsch and Nitsch vitamins, 2
%スクロース、3%ソルビトール、0.4%ゲルライト+50ppm hygB)中暗所
25℃に2週間移した。2週後カルスをRM2メジウム(MS塩、Nitsch and N
itsch vitamins, 3%スクロース、0.4%ゲルライト+50ppm hygB)に移し
、冷白色光(〜40μEm-2s-1)下、12時間明期、25℃、湿度30〜40%
に置いた。2〜4週間光の下に置くと、カルスは組織化および苗条の形成を開始
した。苗条を周囲のカルス/メジウムから除き、植物トレー(Sigma Chemical C
o., St. Louis, MO)中RM3メジウム(1/2×MS塩、Nitsch and Nitsch vit
amins, 1%スクロース+50ppmハイグロマイシンB)に移し、前工程の記載と
同じ条件を用いてインキュベーションを続けた。
【0157】 2〜3週後、十分な根および苗条の成長が起こったとき、植物をRM3から、
Metro mix 350 を含有する4″ポットに移した。植物は、12時間/12時間明
暗サイクル、および〜30/18℃昼夜温度条件を用いて成長させた。
【0158】実施例11 トランスジェニックイネにおける機能補足によるPi−taの同定 トランスフォーマントの分子分析:R−遺伝子配列の存在についてトランスフ
ォーマントの分析には、対立遺伝子特異的PCRならびにDNAゲルブロットを
使用した。高緊縮DNAゲルブロット分析は、ハイブリダイゼーションプローブ
としてpCB1645からのPRG2 DNA挿入体を用いて、実施例7に記載のよう
にして実施した。図9は、pCB1641中のPRG2単離核酸フラグメントで生成
させたトランスフォーマントの分析からの典型的な結果を示す。推定Pi-ta遺伝
子の単一コピーの挿入から複合多重コピーの挿入までの範囲に及ぶ現象が認めら
れた。
【0159】 抵抗性表現型の獲得のアッセイ:AVR−遺伝子含有病原体株 4360-R-62ま
たはO−137を用いて、獲得された抵抗性機能を試験するために、実施例2に記
載したように病原性のアッセイを行った。表5は、pCB1641 および HygRプラ
スミド(pML18)でのコボンバードメントによって生成された一次トランスフ
ォーマントについて実施したアッセイからの結果を示す。
【0160】
【表5】
【0161】 構築体pCB1641 については、アッセイした42個のトランスフォーマント
中7つが抵抗性、42中13が中間型であった。中間型抵抗性の特徴は、均一に少な
い数の、またAVR-Pita を欠く真菌株によって生じるよりも少ない病変である
。35Sプロモーターに操作性に連結したPRG2 コード配列をもつ構築体につい
ては、41中の4つが中間型抵抗性を示した。Pi−ta導入遺伝子を含有する一
次トランスフォーマント(pCB1641)の 22/42 が感受性であったことは驚く
べきことではない。これはバイオリスティックな植物トランスフォーメーション
に影響する3つの異なる問題の結果から、ありそうに思われた。多くのインテグ
レーションの結果は Pi-ta 導入遺伝子の多重コピーを含有し(図9)、その一
部は分断された遺伝子を含む可能性がある。これは遺伝子サイレンシング現象に
おいて生じることがある。第二に、一部のインテグレーション現象では、導入遺
伝子が遺伝子発現に好ましくない染色体領域に挿入されることがある。第三の可
能性がある因子は、導入遺伝子における小さな欠失またはフレームシフト突然変
異による遺伝子の不活性化であり、これはサザンブロットで検出できる。
【0162】 単一R0 トランスフォーマントから誘導されるR1 実生を2セットに分割し、
抵抗性表現型が減数分裂を通じて安定であったか否か、および抵抗性が Pi-ta
抵抗性遺伝子の特異的な特性をもっていたかを決定するために、無毒性株 O−1
37または O−137 由来の毒性突然変異体(CP3337)のいずれかを接種した。
たとえば、R1実生ファミリー 22-6-10-1 のDNAゲルブロット分析(図10)
では、Pi-ta 特異的抵抗性に相関する導入遺伝子の安定な遺伝を示している。R
1 分析の結果は、PRG2 がPi−ta遺伝子の特異的特徴を有する抵抗性を付
与して、この抵抗性は安定に受け継がれることが証明された。すなわち、配列番
号:1はPi−ta抵抗性遺伝子に相当すると結論された。
【0163】実施例12 Pi−ta抵抗性遺伝子産物の特性 現在 Genebank で利用可能な Pi−b遺伝子配列候補のコードポリペプチド(
アクセス番号 AB013448)は配列番号:2に示す Pi-ta ポリペプチドのアミノ酸
残基200〜680に実質的に相当するサブフラグメントと30%の同一性(4
9%の類似性)を示す。BESTFIT(Smith & Waterman, 1981, Advances i
n Applied Mathematics 2: 482-489)を用いて、アミノ酸残基208〜527か
らの翻訳 Pi-taポリペプチド配列はRPM1 タンパク質のアミノ酸配列に対して
、30.3%の同一性(44.3%の類似性)を示すことが見出された(Grantら,
1995, Science 269: 843-846)。同じ領域が疾患抵抗性シグナル伝達経路(Sal
meronら, 1996, Cell 86: 123-133)に関係するトマトPRFタンパク質と 27
.4%の同一性(38.8%の類似性)を示し、Arabidopsis R−遺伝子RPS2
の産物に対して24.5%の同一性(38%の類似性)を示した(Bentら, 1994,
Science 265: 1856-1860; Mindrinosら, 1994, Cell 78: 1089-1099)。これら
の以前にクローン化されたR−遺伝子産物のいずれのロイシンの豊富な領域に対
しても有意な類似性は見られなかった。
【0164】 Pi−ta遺伝子産物の際立った特徴は多くのATPおよびGTP結合タンパ
ク質のNBSモチーフ特性である(Traut, 1994, Eur.J.Biochem. 229: 9-19)
。アミノ酸236〜244はリン酸結合(P)ループに対する全般性コンセンサ
ス GXGXXG(R/k)Vにマッチする。多分コンパニオンキナーゼドメイン
はアミノ酸314〜323(キナーゼドメイン2a)、およびアミノ酸342〜
353(キナーゼドメイン3a)の周辺に存在する。2つのサブクラスの細胞質
R−遺伝子産物中に見いだされる保存された内部疎水性ドメイン(Jones & Jone
s, 1997, Adv.Bot.Res.Incorp.Adv.Plant Pathol. 24: 89-167)は部分的にアミ
ノ酸 407〜415 の間に存在する。しかしながら、2つのR−遺伝子サブクラスは
、Pi−ta中には見いだされない。第一に、Pi−ta遺伝子産物はユニーク
なアミノ末端を有し、RPS2遺伝子産物サブファミリーのロイシンジッパーモ
チーフの可能性(Bentら, 1994, Science 265: 1856-1860; Mindrinosら, 1994,
Cell 78: 1089-1099)、あるいはN遺伝子サブファミリーによってコードされ
るToll/Interleukin−1受容体ホモロジー(Whitmanら, 1994, Cell 78: 1101-
1115)のいずれかを欠いている。多分最も重要な点は、Pi-ta 遺伝子産物のカル
ボキシ末端部分はロイシンに富んでいるが、それはR−遺伝子産物について報告
されたロイシンの豊富なリピートに対するいずれのコンセンサス配列にも適合し
ないことである(Jones & Jones, 1997, Adv.Bot. Res.Incorp.Adv.Plant Patho
l. 24: 89-167)。
【0165】
【表6】
【0166】
【表7】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 R−遺伝子を含有する染色体領域の分子マップ。
【図2】 Pi−taのポジショナルクローニング。
【図3】 BAC RB142E8 のランダムゲノム配列決定により得られた最初の3つのサ
ブクローン(破線)の位置を示すR−遺伝子の制限マップ。
【図4A】 プラスミドpCB1641の構築。
【図4B】 プラスミドpCB1645 の構築。
【図5】 プラスミドpCB1641 中に含まれるPRG2核酸フラグメントにおける相対
的なプライマー位置。
【図6】 推定Pi−taタンパク質配列。
【図7】 プラスミドpCB1947、pML63 およびpCB1926 における構築の図解。
【図8】 イネ植物におけるPi−ta機能の粒子ボンバードメント一過性アッセイ。
【図9】 無傷のPi−ta核酸フラグメントの存在を測定するための一次トランスフォ
ーマントのDNAゲルブロット分析。
【図10】 無傷のPi−ta核酸フラグメントの存在を測定するための中間抵抗性一次ト
ランスフォーマント 22-6-10-1 からの11のハイグロマイシン抵抗性R1個体
のDNAゲルブロット分析。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,UG,ZW),E A(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ ,TM),AE,AL,AU,BA,BB,BG,BR ,CA,CN,CR,CU,CZ,EE,GD,GE, HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KP,K R,LC,LK,LR,LT,LV,MG,MK,MN ,MX,NO,NZ,PL,RO,SG,SI,SK, SL,TR,TT,UA,US,UZ,VN,YU,Z A Fターム(参考) 2B030 AA02 AB03 AD05 CA06 CA17 CA19 CD03 CD07 CD10 CD13 CD17 4B024 AA08 CA04 DA01 EA04 EA10 FA02 GA11 HA20 4B065 AA89X AA89Y AA99Y AB01 AC20 BA02 CA53

Claims (35)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真菌病原体によって引き起こされる疾患に対するPi−ta
    抵抗性遺伝子仲介防御応答を付与する単離核酸フラグメントであり、上記核酸フ
    ラグメントは配列番号:1もしくは68に示すヌクレオチド配列またはその機能
    的に均等なサブフラグメントに実質的に相当する核酸フラグメント。
  2. 【請求項2】 適当な調節配列に作動的に連結した請求項1記載の核酸フラ
    グメントからなる遺伝子。
  3. 【請求項3】 遺伝子はキメラである請求項2記載の遺伝子。
  4. 【請求項4】 ネイティブなプロモーターに連結した請求項1記載の核酸フ
    ラグメントをそのゲノム中に有する植物。
  5. 【請求項5】 請求項2または3記載の遺伝子をそのゲノム中に有する植物
  6. 【請求項6】 植物は単子葉植物である請求項4記載の植物。
  7. 【請求項7】 植物は単子葉植物である請求項5記載の植物。
  8. 【請求項8】 植物は穀類である請求項4記載の植物。
  9. 【請求項9】 植物は穀類である請求項5記載の植物。
  10. 【請求項10】 穀類はイネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、シコクビ
    エおよびトウジンビエからなる群より選択される請求項8記載の植物。
  11. 【請求項11】 植物は Magnaporthe grisea の天然宿主である請求項4記
    載の植物。
  12. 【請求項12】 植物は Magnaporthe grisea の天然宿主である請求項5記
    載の植物。
  13. 【請求項13】 請求項4、6、8、10または11のいずれかに記載の植
    物の種子。
  14. 【請求項14】 請求項5記載の植物の種子。
  15. 【請求項15】 請求項7記載の植物の種子。
  16. 【請求項16】 請求項9記載の植物の種子。
  17. 【請求項17】 請求項12記載の植物の種子。
  18. 【請求項18】 フラグメントはイネいもち病真菌に対する抵抗性を付与す
    る請求項1記載の核酸フラグメント。
  19. 【請求項19】 フラグメントは、配列番号:5もしくは7に掲げたヌクレ
    オチド配列、またはその機能的に均等なサブフラグメントに実質的に相当するA
    VR−Pita 単離核酸フラグメントからなる、真菌病原体に対して抵抗性を付与
    する請求項1記載の核酸フラグメント。
  20. 【請求項20】 適当な調節配列に作動的に連結した請求項1記載の核酸フ
    ラグメントからなる発現構築体によって植物をトランスフォームすることからな
    る植物に抵抗性遺伝子仲介防御応答を付与する方法。
  21. 【請求項21】 (1)請求項1記載の核酸フラグメントおよび(2)配列
    番号:5もしくは7に掲げたヌクレオチド配列またはその機能的に均等なサブフ
    ラグメントに実質的に相当するAVR−Pita 単離核酸フラグメントからなる組
    換え発現構築体で植物をトランスフォームすることからなる植物に抵抗性遺伝子
    仲介防御応答を付与する方法において、上記核酸フラグメントは調節配列に作動
    的に連結し、さらに上記構築体は真菌病原体により感染部位に引き起こされる疾
    患に対する抵抗性遺伝子仲介防御応答を植物に付与する方法。
  22. 【請求項22】 イネいもち病真菌に対する抵抗性を付与する請求項20ま
    たは21記載の方法。
  23. 【請求項23】 植物は単子葉植物である請求項20または21記載の方法
  24. 【請求項24】 植物は穀類である請求項20または21記載の方法。
  25. 【請求項25】 穀類はイネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、シコクビ
    エおよびトウジンビエからなる群より選ばれる請求項20または21記載の方法
  26. 【請求項26】 植物は Magnaporthe grisea の天然宿主である請求項20
    または21記載の方法。
  27. 【請求項27】 真菌病原体によって感染部位に引き起こされる疾患に対す
    る抵抗性遺伝子仲介防御応答を植物に付与する組換え発現構築体であって、(1
    )請求項1記載の単離核酸フラグメントおよび(2)配列番号:5もしくは7に
    掲げたヌクレオチド配列またはその機能的に均等なサブフラグメントに実質的に
    相当するAVR−Pita 単離核酸フラグメントからなり、上記核酸フラグメント
    は調節配列に作動的に連結している組換え発現構築体。
  28. 【請求項28】 上記構築体は、イネいもち病真菌に対する抵抗性を付与す
    る請求項27記載の組換え発現構築体。
  29. 【請求項29】 請求項27または28記載の発現構築体をそのゲノム中に
    含有する植物。
  30. 【請求項30】 植物は単子葉植物である請求項29記載の植物。
  31. 【請求項31】 植物は穀類である請求項30記載の植物。
  32. 【請求項32】 穀類はイネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、シコクビ
    エおよびトウジンビエからなる群より選択される請求項31記載の植物。
  33. 【請求項33】 植物は Magnaporthe grisea の天然宿主である請求項29
    記載の植物。
  34. 【請求項34】 請求項29記載の植物の種子。
  35. 【請求項35】 請求項30〜33のいずれかに記載の植物の種子。
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