JP2002524016A - イノシトールポリホスフェート誘導体およびその使用方法 - Google Patents

イノシトールポリホスフェート誘導体およびその使用方法

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Abstract

(57)【要約】 本発明は、イノシトールポリホスフェートの細胞浸透性アンタゴニストである組成物を提供する。さらに、本発明は、細胞をイノシトールポリホスフェートの細胞浸透性アンタゴニストと接触させることにより細胞からの塩化物イオン分泌を増強するための方法を提供する。本発明はまた、個体に、小野市トールポリホスフェートの細胞浸透性アンタゴニストを投与することにより個体において塩化物イオン分泌を増強するための方法を提供する。本発明は、さらに個体にイノシトールポリホスフェートの細胞浸透性アンタゴニストを投与することにより個体において嚢胞性線維症に関連する徴候または症状を軽減するための方法を提供する。本発明はまた、イノシトールポリホスフェートの細胞浸透性アゴニストである組成物を提供する。さらに、本発明は、細胞を、イノシトールポリホスフェートの細胞浸透性アゴニストと接触させることにより細胞からの塩化物イオン分泌を増強するための方法を提供する。本発明はまた、個体にイノシトールポリホスフェートの細胞浸透性アゴニストを投与することにより個体において塩化物イオン分泌を減少される方法を提供する。本発明は、さらに個体にイノシトールポリホスフェートの細胞浸透性アゴニストを投与することにより個体において分泌性下痢と関連する徴候または症状を軽減する方法を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、米国国立衛生研究所によって与えられた許可番号R01 DK47240-01A1 のもとで政府支援を得た。政府は本発明に一定の権利を有する。 発明の背景 発明の分野 本発明は、一般に、塩化物イオン輸送を調節する化合物および方法に、そして より詳細には、イノシトールポリホスフェートのアンタゴニストおよびアゴニス トに関する。 背景情報 すべての生きている生物は細胞から作られる。細胞の境界は、内側の物質を外 側の物質から分離するために役立つ形質膜によって決定される。細胞膜は、栄養 のような物質の細胞内へまたは細胞からの通過を調節することによって機能する 。細胞膜を横切る輸送は、細胞の膠質浸透圧の調節を含む、細胞における多くの 重要な機能に役立つ。イオン輸送の調節は、その完全性および機能を維持するた めに適切な濃度のイオンを有する細胞を提供する。不適切な条件下では、例えば 、細胞内部のイオン濃度が高すぎる場合、水が細胞中へ移動しそして細胞を膨張 または破裂させる。細胞中のイオン濃度が低すぎる場合、細胞は縮む。 生物は、特定の組織タイプにおいて体液を調節するために細胞膜イオン輸送特 性を利用する。例えば、腸に沿って並ぶ細胞は、イオン輸送を使用して水の取り 込みを調節する。細胞によって輸送される1つの特に重要なイオンは、塩化物イ オンである。塩化物イオン輸送は、浸透圧調節、細胞内pH調節、ならびに塩およ び体液分泌のような種々の細胞機能に重要な役割を果たす。 腸において、高レベルの塩化物イオン分泌は、分泌性下痢のような疾患に関連 する。分泌性下痢は、Salmonella、Shigella、およびEscherichia coliの特定の 株のような微生物による感染を含む、多くの原因がある。組織および塩化物イオ ン分泌における体液レベルの調節に関連する他の条件は、炎症、感染、または外 傷に関連する組織腫脹を含む。したがって、望ましくないレベルの塩化物イオン 分泌を阻害する方法が、これらの病理の症状を軽減するために使用され得る。 嚢胞性線維症は、白人において最も普通の致死的遺伝病であり、ヨーロッパ系 のアメリカ人のうち2,000人の誕生に約1人に影響を及ぼす。これは、慢性肺疾 患、膵不全、および腸閉塞になる異常な粘性の粘液分泌によって特徴づけられる 。米国では、約30,000人が嚢胞性線維症を有し、そして毎年約1,000の新しい症 例が診断される。過去において、罹患した子供はしばしば幼児として死亡したが 、現在、個体は、20代および30代まで生存し得る。それにもかかわらず、嚢胞性 線維症の治療法がなく、そして現在の治療は、根底にある細胞の欠陥を修正せず 、疾患の症状を管理するのみである。 嚢胞性線維症の現在の処置は、日和見感染の症状管理または制御に大きく制限 される。例えば、ウイルス病原体に対するワクチン接種および細菌感染に対する 培養特異的抗生物質の使用は、感染を防ぐために使用され得る。コルチコステロ イドは、感染に対する炎症性応答の処置にときどき有用であるが、種々の望まし くない長期副作用を有する。他の処置は、肺における異常に粘性の粘液分泌に関 連する慢性肺病の症状に焦点を合わせる。例えば、胸部打診法および姿勢排液法 (postural drainage)のような物理的補助は、肺からの分泌物を取り除くこと を助ける。気管支拡張器は、ある患者では有益であったが、他の患者では、気体 交換が減少した。異常に粘性の粘液分泌に関連する他の症状は、腸閉塞および膵 不全を含む。腸閉塞は、20%の成人で起こり、そして浣腸剤で処置されるかある いは浣腸剤が効果的でない場合は外科的手術によって処置される。 膵不全は、80〜90%の患者で起こり、そして細胞からの塩化物イオンの損傷し た再循環のため、重炭酸イオンおよび体液の減少した分泌によって引き起こされ る。対応する膵液は、タンパク質が高濃度になり、そして濃縮され、膵管の閉塞 およびそれに続く膵腺房の萎縮を生じる。膵不全は、酵素の補充によって処置さ れ、通常は、これにより適切な消化および吸収機能が回復し、それによって栄養 不良の症状を直す。しかし、根底にある疾患は持続し、しばしば、膵臓の萎縮を 導き得る膵炎の再発性の発作を引き起す。 正常な肺機能、結腸への正常な分泌機能、または正常な膵機能をもとに戻す処 置は、現在利用可能な治療に大きな利点を提供する。遺伝子治療は、嚢胞性線維 症患者で使用されている。しかし、遺伝子治療での試みは、遺伝子の並外れたサ イズ、遺伝子を移送するために使用されるアデノウイルスベクターへの免疫反応 、および上皮組織の迅速な代謝回転を含む種々の理由のため、成功していない。 したがって、異常な塩素輸送に関連する嚢胞性線維症および分泌性下痢のよう な病理の症状を改善するように、塩化物イオン分泌を変化させる手段の必要性が ある。本発明は、この必要性を満たし、そしてさらに関連する利点を提供する。 発明の要旨 本発明は、イノシトールポリホスフェートの細胞浸透性アンタゴニストである 組成物を提供する。例えば、本発明は、myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホ スフェートおよびホスファチジルイノシトールトリスホスフェートのアンタゴニ ストを提供する。さらに、本発明は、細胞をイノシトールポリホスフェートの細 胞浸透性アンタゴニストで接触させることによって、細胞からの塩化物イオン分 泌を増強する方法を提供する。本発明はまた、イノシトールポリホスフェートの 細胞浸透性アンタゴニストを個体に投与することによって、個体における塩化物 イオン分泌を増強する方法を提供する。本発明はさらに、イノシトールポリホス フェートの細胞浸透性アンタゴニストを個体に投与することによって、個体にお ける嚢胞性線維症に関連する徴候または症状を軽減する方法を提供する。 本発明はまた、イノシトールポリホスフェートの細胞浸透性アゴニストである 組成物を提供する。例えば、本発明は、myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホ スフェートおよびホスファチジルイノシトールトリスホスフェートのアゴニスト を提供する。さらに、本発明は、細胞をイノシトールポリホスフェートの細胞浸 透性アゴニストで接触させることによって、細胞からの塩化物イオン分泌を減少 させる方法を提供する。本発明はまた、イノシトールポリホスフェートの細胞浸 透性アゴニストを個体に投与することによって、個体における塩化物イオン分泌 を減少させる方法を提供する。本発明はさらに、イノシトールポリホスフェート の細胞浸透性アゴニストを個体に投与することによって、個体における分泌性下 痢に関連する徴候または症状を軽減する方法を提供する。 図面の簡単な説明 図1は、myo-イノシトール、scyllo-イノシトール、および代表的細胞浸透性 イノシトールポリホスフェート誘導体、2-Bt-1-Me-Ins(3,4,5,6)P4/AMの構造を 示す。 図2は、ウサギ結腸における塩化物イオン分泌のBt2-Ins(3,4,5,6)P4/AM阻害 を示す。 図3は、ヒスタミン刺激した塩化物イオン分泌のBt2-Ins(3,4,5,6)P4/AM媒介 阻害の逆転のため、200μMの2-Bt-1-Me-Ins(3,4,5,6)P4/AMで処理した結腸上皮T84 細胞における増強された塩化物イオン分泌を示す。 図4は、Bt2-Ins(3,4,5,6)P4/AMが細胞内カルシウムを増加させず、そしてタ プシガルギンに対するカルシウム応答に影響を及ぼさないことを示す。 図5は、以下のもので処理した結腸上皮T84細胞における増強された塩化物イ オン分泌を示す: D,L-1,2-シクロヘキシリデン-Ins(3,4,5,6)P4/AM(図5A); 1-Bu-2-Bt-Ins(3,4,5,6)P4/AM(図5B); Bu2-Ins(3,4,5,6)P4/AM(図5C); 3-Bt-2-Bu-Ins(1,4,5,6)P4/AM(図5D); Bu2-Ins(1,4,5,6)P4/AM(図5E); 1-Bt-2-Bu-Ins(3,4,5,6)P4/AM(図5F);および 3-Bu-2-Bt-Ins(1,4,5,6)P4/AM(図5G)。 図6は、塩化物イオン分泌のEGF媒介阻害の逆転のため、Bt2-Ins(1,4,5,6)P4/ AMで処理した結腸上皮T84細胞における増強された塩化物イオン分泌を示す。 図7は、EGFで処理されたか、またはPtdInsP3の細胞浸透性誘導体で処理した 結腸上皮T84細胞における減少した塩化物イオン分泌を示す。Bt2-Ins(1,4,5,6)P4 /AMは、塩化物イオン分泌のEGFおよびPtdInsP3媒介阻害の逆転のため、塩化物 イオン分泌を増強する。 図8は、PtdInsP3/AMの漸増濃度で処理した結腸上皮T84細胞における減少した 塩化物イオン分泌を示す。 図9は、細胞浸透性PtdInsP3およびジC16-Bt-PtdInsP3/AMの構造を示す。 図10は、細胞浸透性PtdInsP3/AM誘導体の合成の概略図を示す。 図11は、1,2-シクロヘキシリデン-Ins(3,4,5,6)P4//AMの合成の概略図を示す。 図12は、myo-イノシトール1,3,4-トリスホスフェートおよび2,5,6-Bt3-Ins(1, 3,4)P3/AMの構造を示す。化合物のD-立体配置のみを示す。 図13は、細胞浸透性イノシトールポリホスフェート誘導体の合成の概略図を示 す。 発明の詳細な説明 本発明は、イノシトールポリホスフェートのアンタゴニストまたはアゴニスト である細胞浸透性化合物と細胞とを接触させることによって、塩化物イオン分泌 を変化させる組成物および方法を提供する。本明細書で使用する場合、用語「変 化させる」は、細胞中へまたは細胞からの塩化物イオン輸送のレベルが、本発明 のアゴニストまたはアンタゴニストで処理されていない細胞における分泌のレべ ルとは異なるように、塩化物イオン分泌を増強または減少させることをいう。本 明細書で使用する場合、用語「アンタゴニスト」とは、化合物が、他の化合物の 生理学的活性を減少させる機能を有することを意味する。例えば、塩化物イオン 分泌を阻害する化合物のアンタゴニストは、その阻害を逆転する。同様に、用語 「アゴニスト」とは、化合物が、他の化合物の生理学的活性を模倣する機能を有 することを意味する。 本発明のアンタゴニストは、細胞からの塩化物イオン分泌を増強する。本明細 書で使用する場合、用語「増強する」とは、塩化物イオン分泌を増加させること に関して使用される場合、細胞からの塩化物イオン輸送のレベルが、アンタゴニ ストで処理されていない対応する細胞での分泌のレベルよりも高いことを意味す る。反対に、用語「減少させる」とは、塩化物イオン分泌を阻害することに関し て使用される場合、細胞からの塩化物イオン輸送のレベルが、アゴニストで処理 されていない対応する細胞での分泌のレベルよりも低いことを意味する。本明細 書で使用する場合、用語「接触する」とは、化合物が細胞膜を通過し得るように 、細胞浸透性化合物に細胞をインキュベートまたは曝露することをいう。 異常な塩化物イオン分泌は、種々の病理症状に関連する。したがって、本発明 の化合物は、塩化物イオン分泌を増強または減少させることに有用であり、それ によってこのような疾患の症状を軽減する。嚢胞性線維症のような特定の病理症 状では、塩化物イオン分泌の増強は疾患の症状を軽減するために有用であり得る が、分泌性下痢のような他の病理症状では、塩素分泌を減少させることは症状を 軽減し得る。本明細書で使用する場合、用語「軽減する」とは、疾患の症状を和 らげるまたは軽減することをいう。したがって、塩化物イオン分泌異常に依存し て、本発明は、特定の疾患に関連する異常な塩化物イオン分泌を補償する組成物 および方法を提供する。 本発明は、イノシトールポリホスフェートのアゴニストまたはアンタゴニスト である化合物を提供する。イノシトールポリホスフェート誘導体は、イノシトー ルポリホスフェートアゴニストおよびアンタゴニストとして機能し得る。カルシ ウム媒介塩化物イオン分泌のIns(3,4,5,6)P4およびPtdInsP3媒介阻害に対する、 本発明の化合物の効果は、実施例に記載され、そして表Iにまとめられる。 本発明は、カルシウム媒介塩化物イオン分泌の内因性インヒビターであるIns( 3,4,5,6)P4またはPtdInsP3の活性を模倣または拮抗することによって、カルシウ ム依存性塩化物イオンチャンネルを介する塩化物イオン分泌を調節する細胞浸透 性化合物を提供する。本明細書に開示されるように、Ins(3,4,5,6)P4またはPtdI nsP3の細胞内濃度を増加させる化合物は、塩化物イオン分泌を阻害するために有 用である。反対に、Ins(3,4,5,6)P4またはPtdInsP3の効果を拮抗する化合物は、 塩化物イオン分泌を増強させるために有用である。 表I.塩化物イオン分泌に対するイノシトールポリホスフェート誘導体の効果 表I 1挙げられた誘導体は、以下の略号を使用する:TK、テトラキスホスフェート;o ct、オクタキス;hex、ヘキサキス。他に指示がなければ、すべての化合物はD 型である。2 表でおよび本出願全体を通して使用した略号:Ins、イノシトール;P、ホスフ ェート;Pn、nはホスフェートの数を示す;AM、アセトキシメチルエステル;Bt 、ブチリル;Me、メチル;Bu、ブチル;C16、パルミトイル;C8、オクタノイル ;PtdIns、ホスファチジルイソシトール。他に指示がなければ、すべての誘導体 は、myo-イノシトール誘導体である。 原形質膜を容易に通過する、本発明の細胞浸透性化合物は、構造的類似性に起 因して、Ins(3,4,5,6)P4またはPtdInsP3の細胞内濃度を直接増加させるためか、 あるいはIns(3,4,5,6)P4またはPtdInsP3の効果を模倣するために有用であり得る 。あるいは、本発明の細胞浸透性化合物は、Ins(3,4,5,6)P4またはPtdInsP3の効 果に拮抗するために有用である。本明細書で開示されるように、イノシトールポ リホスフェート誘導体は、Ins(3,4,5,6)P4またはPtdInsP3の細胞浸透性アゴニス トまたはアンタゴニストとして機能し得る。 細胞浸透性イノシトールポリホスフェート誘導体を、実施例XIに記載のように 合成した。荷電したリン酸基が、アセトキシメチルエステル基によってマスクさ れ、そしてヒドロキシル基が疎水性化学基によってマスクされるので、これらの 化合物は細胞浸透性である(図1を参照のこと)。親水性基をマスクするために 有用な疎水性化学基は、例えば、アシル基、アルキル基、アルキリデン基、また はイノシトールポリホスフェート上の親水性基をマスクし得る任意の疎水性化学 基であり得る。アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル 、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチルブチル、2,2-ジメ チルブチル、2-メチルペンチル、2,2-ジメチルプロピル、ペンチル、およびヘキ シル、ならびにアルキレン基、シクロヘキシルおよびシクロペンチル基のような 炭素原子の環式鎖、ならびに直鎖または分枝鎖とメチル-シクロヘキシルまたは シクロプロピル-メチレン基のような炭素原子の環式鎖との組み合わせが挙げら れる。しかし、メチル誘導体については、2-Bt-1-Me-Ins(3,4,5,6)P4/AM、Me2-I ns(3,4,5,6)P4/AM、Me2-Ins(1,4,5,6)P4/AM、2-Bt-3-Me-Ins(1,4,5,6)P4/AM、お よびD,L-1-Bt-2-Me-Ins(3,4,5,6)P4/AMは、本発明の組成物の範囲内ではない。 さらに、本明細書で定義されるように、アルキルが、置換基で置換され得ること が認識されるべきである。アセタール基であるアルキリデン基としては、例えば 、メチリデン、エチリデン、プロピリデン、ブチリデン、ペンチリデン、ヘキシ リデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、および シクロヘプチリデンが挙げられる(KempおよびVellaccio,Organic Chemistry, Worth Publishers,New York(1980)、これは参考として本明細書に援用される) 。アシル基としては、例えば、アセチル、プロパニル、ブチリル、ヘキサノイル 、 およびバレリルが挙げられる。しかし、アシル誘導体については、Bt2-Ins(3,4, 5,6)P4/AM、D,L-Bt2-scyllo-Ins(3,4,5,6)P4/AM、およびBt2-Ins(1,4,5,6)P4/AM は、本発明の組成物の範囲内ではない。一旦細胞内にはいると、ブチリルおよび アセトキシメチルエステル基は、細胞内エステラーゼによって切断される。した がって、これらの疎水性官能基での修飾は、化合物が細胞膜を通過することを可 能にし、ここで化合物は加水分解されて、誘導体化されていない化合物の親水性 基を曝露する。対照的に、アルキル基およびアルキリデン基は、加水分解性でな く、したがって、細胞膜を通過した後に誘導体で保持される。 イノシトールポリホスフェートのさらなる修飾は、細胞浸透性誘導体を提供す る。例えば、1,2-ジデオキシ-Ins(3,4,5,6)P4/AM、1-Bt-2-デオキシ-Ins(3,4,5, 6)P4/AM、2-Bt-1-デオキシ-Ins(3,4,5,6)P4/AM、および1,2-ジクロロ-1,2-ジデ オキシ-myo-Ins(3,4,5,6)P4/AMを含むIns(3,4,5,6)P4誘導体も、細胞浸透性誘導 体である(表Iを参照のこと)。さらに、細胞浸透性PtdInsP3誘導体としては、 例えば、ジC16-6-O-Bt-PtdIns(3,4,5)P3/AMおよびジC8-6-O-Bt-PtdIns(3,4,5)P3 /AM、ならびにジC16-2-O-Bt-PtdIns(3,4,5)P3/AM、ジC8-2-O-Bt-PtdIns(3,4,5)P3 /AM、ジC16-2,6-O-Bt2-PtdIns(3,4,5)P3/AM、およびジC8-2,6-O-Bt2-PtdIns(3, 4,5)P3/AMが挙げられる。アシル化およびアセトキシメチルエステル誘導体を合 成する方法は、Roemerら(J .Chem.Soc.,Chem.Commun. N4:411(fat 1995);J .Chem.Soc.,Perkins Trans,1 N14:1683(fat 1996))に記載され、それらの それぞれは、参考として本明細書に援用される。 本発明は、イノシトールポリホスフェートのアンタゴニストである細胞浸透性 化合物を提供する。1つの実施態様では、細胞浸透性化合物は、Ins(3,4,5,6)P4 アンタゴニストである。本明細書に開示されるように、Ins(3,4,5,6)P4誘導体は 、Ins(3,4,5,6)P4アンタゴニストとして機能する。例えば、1位、2位、または 両方でヒドロキシル基に付加されたアルキル基を有するIns(3,4,5,6)P4誘導体は 、Ins(3,4,5,6)P4のアンタゴニストとして機能する(表Iならびに実施例IIIお よびIVを参照のこと)。特に有用なアルキル基誘導体は、メチル(ME)およびブ チル(Bu)誘導体である。例えば、2-Bt-1-Me-Ins(3,4,5,6)P4/AM、Me2-Ins-(3, 4,5,6)P4/AM、1-Bu-2-Bt-Ins(3,4,5,6)P4/AM、およびBu2-Ins-(3,4,5, 6)P4/AMはそれぞれ、塩化物イオン分泌のIns(3,4,5,6)P4媒介阻害を逆転し、し たがってIns(3,4,5,6)P4アンタゴニストである。他の有用なIns(3,4,5,6)P4誘導 体は、1位および2位にアルキリデン基を含む誘導体である。例えば、D,L-1,2- シクロヘキシリデン-Ins(3,4,5,6)P4/AMは、塩化物イオン分泌のカルバコール媒 介阻害を逆転し、したがってIns(3,4,5,6)P4アンタゴニストである。さらに、2 位および3位にアルキリデン基を有するIns(1,4,5,6)P4/AM誘導体もまた、Ins(1 ,4,5,6)P4誘導体として使用され得る。 別の実施態様では、細胞浸透性化合物は、PtdInsP3アンタゴニストである。本 明細書に開示されるように、細胞浸透性Ins(1,4,5,6)P4誘導体は、PtdInsP3アン タゴニストである。例えば、2および3位に結合されたブチリル基を有するIns( 1,4,5,6)P4誘導体は、カルシウム媒介塩化物イオン分泌のEGF媒介およびPtdInsP3 媒介阻害を逆転し、したがって、PtdInsP3アンタゴニストである(表Iならび に実施例VIIおよびVIIIを参照のこと)。 本発明はまた、イノシトールポリホスフェートのアゴニストである細胞浸透性 化合物を提供する。1つの実施態様では、細胞浸透性化合物は、Ins(3,4,5,6)P4 アゴニストである。本明細書に開示されるように、Ins(3,4,5,6)P4誘導体は、In s(3,4,5,6)P4アゴニストである。例えば、Bt2-Ins(3,4,5,6)P4/AM、Bt2-scyllo- Ins(3,4,5,6)P4/AM、および1-Bt-2-デオキシ-Ins(3,4,5,6)P4/AM(36%阻害)は 、細胞内カルシウム濃度から塩化物イオン分泌を切り離すことによってカルシウ ム媒介塩素分泌を阻害し、したがって、Ins(3,4,5,6)P4アゴニストである(表I および実施例I〜IIIを参照のこと)。さらに、Ins(1,3,4)P3誘導体は、Ins(3,4 ,5,6)P4アゴニストである。例えば、Bt3-Ins(1,3,4)P3/AMは、Ins(3,4,5,6)P4の 細胞内濃度を増加させることによってカルシウム媒介塩化物イオン分泌を阻害し 、したがって、Ins(3,4,5,6)P4アゴニストである(実施例Vを参照のこと)。 別の実施態様では、細胞浸透性化合物はPtdInsP3アゴニストである。本明細書 に開示されるように、PtdInsP3誘導体はPtdInsP3アゴニストである。例えば、ジ C16-Bt-PtdInsP3/AMおよびジC8-Bt-PtdInsP3/AMはカルシウム媒介塩化物イオン 分泌を阻害した。したがって、PtdInsP3アゴニストである(表Iおよび実施 例VIIIを参照のこと)。 イノシトールポリホスフェート誘導体の構造の分子モデリングは、イノシトー ルポリホスフェート誘導体の所望の活性を模倣する構造的特徴を有する合成化合 物を設計するために使用され得る。あるいは、イノシトールポリホスフェートの アゴニストまたはアンタゴニストとして作用する細胞浸透性合成化合物は、例え ば、コンビナトリアル化学ライブラリーをスクリーニングすることによって、同 定され得る。本明細書に記載される方法を使用して、合成化合物は、カルシウム 媒介塩化物イオン分泌における所定のイノシトールポリホスフェートの効果を模 倣または拮抗する所望の活性について、スクリーニングされ得る。コンビナトリ アル化学ライブラリーを作製およびスクリーニングする方法は、当業者に周知で ある(Combinatorial Peptide and Nonpeptide Libraries: A Handbook,Jung編 ,VCH,New York(1996)、これは参考として本明細書に援用される)。 本発明は、さらに、イノシトールポリホスフェートのアンタゴニストまたはア ゴニストである細胞浸透性化合物と細胞とを接触させることによって、塩化物イ オン分泌を変化させる方法を提供する。塩化物イオンの移動は、生物の体内での 水の流れを調節するために、細胞によって使用される。細胞は、チャンネルが開 いた場合に塩化物イオンが膜を通過することのみを可能にする特異的塩化物イオ ンチャンネルを有する。これらのチャンネルは、ムチンを分泌しそして水の流れ を調節する粘膜において細胞で特に重要である。細胞内へおよび細胞からの水の 流れが不足する場合、ムチン分泌は粘性の栓を生じ、これは肺の気道および嚢胞 性線維症のような疾患の腸の粘膜下層を閉塞する。しかし、すべての塩化物イオ ンチャンネルが同じではなく、そして異なるチャンネルは異なるように調節され る。 塩化物イオンチャンネルの特定の群の、カルシウム依存性塩化物イオンチャン ネルは、カルシウムイオン流量に連結される。カルシウムイオンの細胞内濃度が 上昇すると、塩化物イオン分泌が増加する。本明細書で使用される場合、用語「 塩化物イオン分泌」とは、細胞の形質膜を横切る塩化物イオンの輸送をいう。イ ノシトールポリホスフェート代謝に測定可能な長期効果を有さない生理学的に関 連するアゴニストであるヒスタミンのようなある化合物での細胞の処理は、増 加した塩化物イオン分泌を生じる細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を引き起こ す。 ムスカリン性コリン作動性化合物であるカルバコールも、細胞内カルシウムイ オン濃度を上昇させ、そして短期処理で塩化物イオン分泌を刺激する。しかし、 結腸上皮T84細胞のカルバコールでの長期処理の後、細胞なカルシウムイオンの 上昇した濃度は、もはや塩化物イオン分泌を刺激しない(Kachintornら,Am .J. Physiol.Cell 264:C671(1993)、これは参考として本明細書に援用される)。 カルバコールでの長期処理は、細胞内Ins(3,4,5,6)P4レベルのゆっくりしたおよ び延長された上昇を生じる(Vajanaphanichら,Nature 371:711(1994)、これは 参考として本明細書に援用される)。Bt2-Ins(3,4,5,6)P4/AMとBt2-Ins(1,4,5,6 )P4/AMとの混合物でのT84細胞の処理は、タプシガルギンによって誘導される細 胞内カルシウムの濃度の上昇に応じて塩化物イオン分泌を阻害したが、Bt2-Ins( 1,4,5,6)P4/AMは効果がなかった。本明細書に例示されるように、エナンチオマ ー的に純粋なBt2-Ins(3,4,5,6)P4/AMは、細胞内カルシウムの濃度の上昇に応じ て塩化物イオン分泌を阻害した(実施例Iを参照のこと)。したがって、Ins(3, 4,5,6)P4は、塩化物イオン分泌をカルシウムイオン濃度と切り離すので、カルシ ウム媒介塩化物イオン分泌の内因性のネガティブ調節である。 Ins(3,4,5,6)P4によって媒介されるものとは異なるカルシウム媒介塩化物イオ ン分泌を阻害するための他のメカニズムは、PtdInsP3のレベルを上昇させること による。EGFは、T84細胞においてカルバコールおよびタプシガルギンによって誘 導されるカルシウム媒介塩化物イオン分泌を阻害する(Uribeら,Am .J.Physio l. 271:C914(l996a))。EGFは、Ins(3,4,5,6)P4の20倍までの上昇の引き金にな るカルバコールと比較して、Ins(3,4,5,6)P4レベルの1.7倍上昇の引き金になる 。これらの結果は、EGFが、Ins(3,4,5,6)P4とは異なるメカニズムによるカルシ ウム媒介塩化物イオン分泌を調節することを示唆する。 EGFは、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI 3-キナーゼ)を活性化し 、そしてカルシウム媒介塩化物イオン分泌におけるEGFの効果は、PI 3-キナーゼ によって媒介される(Uribeら,J .Biol.Chem. 271:26588(1996b))。EGFは、P I 3-キナーゼ産物である、ホスファチジルイノシトール3,4-ビスホスフェート( P tdInsP2)およびPtdInsP3のレベルの上昇を刺激した。これらのPI 3-キナーゼ産 物は、塩化物イオン分泌のEGF阻害に類似する時間経過とともに増加した。非常 に特異的なPI 3-キナーゼインヒビターであるウォルトマンニンは、PtdInsP3お よびPtdInsP2の形成をブロックし、そして塩化物イオン分泌のEGF誘導阻害を逆 転した。したがって、PtdInsP3に関連するメカニズムは、カルシウム媒介塩化物 イオン分泌のEGF誘導阻害の原因であった。 本発明の化合物は、塩化物イオン分泌を調節するイノシトールポリホスフェー トのアゴニストおよびアンタゴニストであるので、これらの化合物は、細胞中で 塩化物イオン分泌を変化させるために有用である。化合物の細胞浸透性は、化合 物を細胞に接触させることによって、イノシトールポリホスフェートの作用部位 である細胞質への化合物の送達を可能にする。 本発明は、イノシトールポリホスフェートの細胞浸透性アンタゴニストと細胞 を接触させることによって、細胞膜を横切る塩化物イオン分泌を増強する方法を 提供する。1つの実施態様では、Ins(3,4,5,6)P4アンタゴニストを使用して塩化 物イオン分泌を増強する。本明細書に開示されるように、Ins(3,4,5,6)P4誘導体 は、Ins(3,4,5,6)P4アンタゴニストとして使用され得る。他の実施態様では、Pt dInsP3アンタゴニストを使用して塩化物イオン分泌を増強する。本明細書に開示 されるように、Ins(1,4,5,6)P4誘導体は、PtdInsP3アンタゴニストとして使用さ れ得る。 本発明はまた、イノシトールポリホスフェートの細胞浸透性アゴニストと細胞 を接触させることによって、細胞膜を横切る塩化物イオン分泌を減少させる方法 を提供する。1つの実施態様では、Ins(3,4,5,6)P4アゴニストを使用して、塩化 物イオン分泌を減少させる。本明細書で開始されるように、Ins(3,4,5,6)P4誘導 体は、Ins(3,4,5,6)P4アゴニストとして使用され得る。さらに、Ins(1,3,4)P3誘 導体は、Ins(3,4,5,6)P4アゴニストとして使用され得る。他の実施態様では、Pt dInsP3アゴニストを使用して塩化物イオン分泌を減少させる。本明細書に開示さ れるように、PtdInsP3誘導体は、PtdInsP3アゴニストとして使用され得る。 本発明は、Ins(3,4,5,6)P4またはPtdInsP3のアンタゴニストを個体に投与す ることによって、個体における塩化物イオン分泌を増強する方法を提供する。本 明細書で使用する場合、用語「個体」とは、塩化物イオン分泌を増強または減少 する本発明のアゴニストまたはアンタゴニスト化合物で処理されるべき生物、一 般的に哺乳動物、特にヒトをいう。塩化物イオン分泌増強または減少は、個体に おいて1つ以上の組織器官を含む細胞で生じる。本明細書で使用する場合、用語 「投与する」または「投与」とは、アンタゴニストまたはアゴニストが、標的細 胞と接触され得、それによって細胞の塩化物イオン分泌を変化させる、1つまた は複数の適切な標的組織に送達されるような方法および形態で、アンタゴニスト またはアゴニストを個体に導入することをいう。本発明はさらに、Ins(3,4,5,6) P4もしくはPtdInsP3または両方を徴候または症状を示す個体に投与することによ って、嚢胞性線維症に関連する徴候または症状を軽減する方法を提供する。 本発明はまた、Ins(3,4,5,6)P4またはPtdInsP3のアゴニストを個体に投与する ことによって、個体における塩化物イオン分泌を減少させる方法を提供する。さ らに、本発明は、Ins(3,4,5,6)P4またはPtdInsP3を徴候または症状を示す個体に 投与することによって、分泌性下痢に関連する徴候または症状を軽減する方法を 提供する。 アンタゴニストまたはアゴニストは、一般的に、薬学的組成物として個体に投 与される。このような薬学的組成物は、アンタゴニストまたはアゴニストおよび 薬学的に受容可能なビヒクルを含む。薬学的に受容可能なビヒクルは当該技術分 野で周知であり、そして生理学的緩衝化生理食塩水のような水性溶液、あるいは グリコール、グリセロール、オリーブ油のような油、または注射可能な有機エス テルのような他の溶媒もしくはビヒクルが含まれる。 薬学的に受容可能なビヒクルは、例えば、アンタゴニストまたはアゴニストを 安定化するまたは薬剤の吸収を増加させるために作用する、生理学的に受容可能 な化合物を含み得る。このような生理学的に受容可能な化合物としては、例えば 、グルコース、スクロース、またはデキストランのような炭水化物、アスコルビ ン酸またはグルタチオンのような抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質、 あるいは他の安定化剤もしくは賦形剤が挙げられる。当業者は、生理学的に受容 可能な化合物を含む薬学的に受容可能なビヒクルの選択が、例えば、本発明のア ン タゴニストまたはアゴニストの投与経路および1つまたは複数の標的組織に依存 することを知っている。 いくつかの投与経路は、処置されるべき個体および1つまたは複数の標的組織 に依存して使用され得る。薬学的組成物は、種々の経路によって投与され得、例 えば、経口投与、直腸投与、あるいは静脈内、筋肉内、皮下、眼窩内、嚢内、腹 腔内、槽内、または、例えば、皮膚パッチもしくは経皮イオン電気導入法を使用 する皮膚を介する受動または容易にされた吸収による非経口投与を含む。さらに 、組成物は、注射、挿管、または局所的に投与され得、その後者は、例えば、軟 膏もしくは粉末の直接塗布によって受動的であり、あるいは鼻スプレーもしくは 吸入を使用して能動的であり得る。 合計の有効用量は、ボーラスとしてまたは比較的短時間の潅流によるいずれか で単回用量として被験体に投与され得るか、あるいは、複数回用量がより長期間 にわたって投与される分画された処置プロトコルを使用して、投与され得る。被 験体における有効用量を得るために必要な薬剤の濃度が、被験体の年齢および一 般的健康ならびに投与経路および投与されるべき処置の数を含む多くの因子に依 存することは、当業者には公知である。これらの因子について、当業者は有効用 量を得るように特定の用量を調節する。 特定の化合物の投与量は、例えば、塩化物イオン分泌を増強または減少させる 、所望の効果を達成するために必要とされる細胞内濃度によって決定される。有 効な細胞内濃度は、本明細書に開示されるような方法または当該技術分野で公知 の他の方法を使用して決定され得る。例えば、アゴニストBt2-Ins(3,4,5,6)P4/A Mの有効な細胞内濃度を、インビトロIns(1,3,4)P3-5/6-キナーゼアッセイを使用 して、約4μMであると決定した(Vajanaphanichら,前出,1994)。したがって 、Bt2-Ins(3,4,5,6)P4/AMについて、投与量は、約4〜20μM、好ましくは4μM の細胞内誘導体濃度を提供するように選択される。最初の研究は、特定の化合物 の有効性を決定するためにモデルシステムで行われる。個体における病理状態を 処置するために必要な有効濃度は、第I相および第II相臨床試験で決定される。 本発明の化合物は、単独で、または互いの、もしくは異常な塩化物イオン分泌 と関連する病理状態を処置するための他の治療薬剤との組み合わせで使用され得 る。例えば、処置プロトコルは1つの化合物で開始され得、そして、第1の化合 物による軽減が不十分である場合、必要ならば、追加の化合物が第1の化合物と ともに投与され得る。処置はまた、ウリジン5'-三リン酸+アミロリドの投与の ような、処置の他の態様と組み合わせられ得る(Bennettら,Am .J.Respir.Cr it.Care Med. 153:1796(1996)を参照のこと、これは参考として本明細書に援用 される)。 本発明の組成物および方法は、異常な塩化物イオン分泌によって部分的に特徴 づけられる、嚢胞性線維症または分泌性下痢のような、種々の病理を処置するた めに有用である。不完全な塩化物イオン分泌は、嚢胞性線維症膜貫通レギュレー ター(CFTR)である上皮細胞塩化物イオンチャンネルでの変異のため、嚢胞性線 維症を生じる。上皮細胞の頂端表面に関連する塩化物イオンチャンネルは、塩お よび体液分泌を調節する主要な制御点である。嚢胞性線維症のほとんどの場合は 、アミノ酸508位でアミノ酸フェニルアラニンの喪失を生じるΔF508変異として 公知の単一点変異の結果である。この変異は、細胞膜へのCFTRの移動を妨害し、 それによって細胞による塩化物イオン分泌を減少させる。 嚢胞性線維症の処置のための1つのアプローチは、他の塩化物イオンチャンネ ルを人工的に活性化することである。例えば、上皮細胞では、表面で修正する塩 素チャンネル(ORCC)は、サイクリックAMPによって調節される塩化物イオンチ ャンネルである。しかし、ORCCはまた、CFTRによって調節されると考えられ、し たがって、嚢胞性線維症であまり活性ではない(Schwiebertら,Cell 81:1063(1 995);Eganら,Nature 358:581(1992);およびGabrielら,Nature 363:263 1993 )。逆に、カルシウム依存性塩化物イオンチャンネルは、嚢胞性線維症のマウス モデルの細胞でより豊富である(Grubbら,Am .J.Physiol. 266: C1478(1994) )。カルシウム依存性塩化物イオンチャンネルはCFTRとは異なり、そしておそら く嚢胞性線維症の患者の細胞でより豊富であるので、CFTRを介する流出の不足を 補うためにこれらのチャンネルを介する流出を増大することが可能であるべきで ある。本明細書に開示されるように、Ins(3,4,5,6)P4またはPtdInsP3の1つ以上 のアンタゴニストは、CFTRでの欠損によって冒された上皮細胞での塩化物イオン 分泌を元に戻すために使用され得る。 本発明のイノシトールポリホスフェート誘導体の塩化物イオン分泌を増強する 能力を評価するために、いくつかのモデルシステムが有用である。1つのこのよ うなモデルは、ヒト結腸上皮T84細胞株であり、これはモデル分泌上皮として広 く研究されている(Dhaemsathaphornら,Am .J.Physiol. 246:G204(1984))。T84 細胞は、透過性支持体上でコンフルエンスになるまで増殖した場合、比較的分 化した表現型を示し、タイトジャンクションおよび病因菌伝播性輸送を有する極 性化単層を形成する。T84単層は、遊離の細胞質カルシウムおよびCFTRでの変化 に関連するものを含む多くのレセプター媒介塩化物イオン分泌メカニズムを保持 する(Cohnら,Proc .Natl.Acad.Sci.USA 89:2340(1992))。ヒスタミン、カ ルバコール、カルシウムイオノホア、およびタプシガルギンのような薬剤は、細 胞内カルシウムイオンを上昇させ、そしてT84単層を横切る種々の程度の塩化物 イオン分泌を刺激する(Dharmsathaphornら,J .Clin.Invest. 84:945(1989); Kachintornら,前出,1993)。サイクリックAMPはまた、T84細胞においてCFTRを 介する塩化物イオン分泌を刺激する(AndersonおよびWelsh,Proc .Natl.Acad .Sci.USA 88:6003(1991))。したがって、T84細胞は、嚢胞性線維症のような 不完全な塩化物イオン輸送に関連する正常および病理状態での塩化物イオン分泌 の調節のためのインビトロモデルを提供する。さらに、ウサギ結腸の上皮細胞は また、結腸上皮細胞のモデルを提供する。 嚢胞性線維症のより衰弱する症状のうちの3つは、慢性肺病、膵不全、および 腸閉塞である。これらの症状の処置に対する本発明のイノシトールポリホスフェ ート誘導体の治療有効性を特徴づけるために、いくつかのモデルシステムが利用 可能である。例えば、T84細胞におけるCFTR遺伝子のノックアウト(CFTR-T84細 胞)は、嚢胞性線維症患者の結腸細胞のものと類似の遺伝的背景を有する結腸上 皮細胞についてのモデルを提供する(実施例Xを参照のこと)。CFTR-T84細胞株 は、漸増する塩化物イオン分泌でIns(3,4,5,6)P4およびPtdInsP3のアンタゴニス トである、本発明の化合物の有効性を評価するために有用である。 一次ヒト鼻上皮細胞は、塩化物イオン分泌における種々の化合物の効果を試験 するための、呼吸上皮のモデルである。一次ヒト鼻上皮細胞は、これらの細胞で の塩化物イオン分泌におけるIns(3,4,5,6)P4およびPtdInsP3のアンタゴニスト である、本発明の化合物の機能を試験するために有用である(実施例IXを参照の こと)。 膵臓機能を研究するために適切なモデルシステムは、ΔF508変異にホモ接合性 の患者の膵臓腺ガンに由来するヒト細胞株である、膵管上皮細胞CFTR-細胞株のC FPACを使用する。CFPAC細胞は、cAMP刺激したチャンネル機能がないが、カルシ ウム活性化された塩化物イオンチャンネル活性を示す(Shoemacherら,Proc .Na tl.Acad.Sci.USA 87:4012(1990))。イヌ膵管上皮細胞もまた、これらの細胞 における塩化物イオン分泌におけるIns(3,4,5,6)P4およびPtdInsP3のアンタゴニ ストである、本発明の化合物の機能を試験するために有用である(Nguyenら,Am .J.Physiol. 272:G172(1997)、これは参考として本明細書に援用される)。 Ins(3,4,5,6)P4およびPtdInsP3アンタゴニストの活性を評価するために、嚢胞 性線維症の動物モデルも利用可能である。例えば、嚢胞性線維症のモデルを提供 するCFTRノックアウトマウスが生成されている(Rozmahelら,Nature Gen. 12:2 80(1996);Snouwaertら,Science 257:1083(1992);Ratiffら,Nature Gen. 4:3 5(1992);O'Nealら,Hum .Molec.Genet. 2:1561(1993);およびDorinら,Natur e 359:211(1992)、これらのそれぞれは参考として本明細書に援用される)。カ ルシウム依存性塩化物イオンチャンネルの発現の上昇したレベルは、CFTRノック アウトマウスにおける改良された生存性に対応する(Clarkeら,Proc .Natl.Ac ad.Sci.USA 91:479(1994);およびRozmahelら,前出,1996)。動物モデルを 使用して、これらの動物での塩化物イオン分泌におけるIns(3,4,5,6)P4およびPt dInsP3のアンタゴニストである、本発明の化合物の効率を試験する。動物モデル はまた、動物での特定の組織における本発明の化合物の有効性を試験するために 有用である。 嚢胞性線維症状はいくつかの器官系で起こるので、当業者は処置されるべき症 状に基づいて、化合物の投与の特定の経路および方法を選択する。化合物は、幾 分両親媒性であり、そして水溶液に可溶である。あるいは、化合物は、界面活性 剤を含むジメチルスルホキシドに溶解され得る。化合物はまた、低い粘性の有利 点のあるFREON(1,1,2トリクロロトリフルオロメタン)を含む溶液に溶解され得 、さらに疾患の組織への接近を可能にし、したがって、急性炎症中または疾患の 初 期段階中の処置に有用である。例えば、呼吸病理にかかっている被験体では、本 発明のアンタゴニストは、適切な薬学的に受容可能なキャリアに懸濁または溶解 され、吸入噴霧器または鼻吸入器のような吸入デバイスを使用して肺に直接投与 され得る。したがって、肺における粘液蓄積を軽減するために、化合物は標的肺 組織にエアロゾル形態で直接的に投与され得る。あるいは、化合物は、FREONに 溶解され得、そして肺潅流によって送達され得る。このような処置は、噴霧され た水溶液の周期的呼吸によって維持され得る。 粘液粘性のような嚢胞性線維症の臨床的発現は周知であり、そして、処置プロ トコルが嚢胞性線維症のこれらの公知の呼吸徴候および症状を軽減または防止す ることに有効であるかどうかをどのように決定するかは、当業者にはわかる。例 えば、(99MTc)鉄酸化物粒子を使用する粘膜毛様体クリアランスの測定は、本発 明の化合物での処置の有効性を決定するために使用され得る(Bennett,前出,1 996)。 嚢胞性線維症の他の臨床的発現はまた、投与の適切な態様を使用して、Ins(3, 4,5,6)P4またはPtdInsP3のアンタゴニストで処置され得る。例えば、血脈洞(si nus)合併症(sinus complications)は、鼻スプレー中の薬学的組成物を投与す ることによって処置され得る。この処置は、嚢胞性線維症の患者における顔面変 形を生じ得る複数の内視鏡手術をしばしば必要とする血脈洞合併症を処置するた めの現在の方法に有利である。嚢胞性線維症での腸障害の軽減については、薬剤 は、適切な薬学的ビヒクル中の坐剤または浣腸によって投与され得る。あるいは 、腸溶性コート錠剤は経口投与され得る。膵炎にかかっている患者では、薬学的 組成物は、静脈内投与、経口投与、または膵臓を含む全身に化合物を分布する任 意の他の方法によって投与され得る。 嚢胞性線維症の他に、組織における体液蓄積に関連する他の病理状態は、塩化 物イオン分泌を変化させることによる処置を受容する。例えば、脳腫脹のような 、炎症、感染、または外傷に関連する腫脹は、塩化物イオン分泌を減少させるこ とによって軽減され得る(Bergerら,Acta Neurochir .Suppl.(Wien) 60:534(1 994);およびStaubら,J .Neurotrauma 11:679(1994))。 塩化物イオン分泌が異常に低い、嚢胞性線維症のような病理状態とは対照的に 、 他の病理状態は、一部は、異常に高レベルの塩化物イオン分泌によって特徴づけ られる。例えば、高レベルの塩化物イオン分泌は、分泌性下痢で生じる。分泌性 下痢を引き起こす侵襲性腸細菌であるSalmonellaは、発展途上国での子供の死亡 のおよび先進国での健康問題の最も重要な原因の1つである。胃腸炎の13億より 多くの症例および約3百万人の死亡が、Salmonella感染のため毎年起こる。分泌 性下痢は、腸上皮を横切る塩化物イオン流出の上昇に関連するので、塩化物イオ ン分泌の減少は、分泌性下痢の症状を軽減し得る。当業者は、分泌性下痢の症状 を軽減するためにイノシトールポリホスフェートのアゴニストで個体を処置する 方法が、上記の方法と類似することを認識する。 本発明は、イノシトールポリホスフェートの細胞浸透性アゴニストまたはアン タゴニストと細胞を接触させることによって、細胞膜を横切る塩化物イオン分泌 を変化させる組成物および方法を提供する。本発明はまた、イノシトールポリホ スフェートのアゴニストまたはアンタゴニストを個体に投与することによって、 個体における塩化物イオン分泌を変化させる方法を提供する。本発明はさらに、 イノシトールポリホスフェートのアゴニストまたはアンタゴニストを含む薬学的 組成物を投与することによって、異常な塩化物イオン分泌に関連する病理状態に 関連する症状を軽減するための方法を提供する。したがって、本発明の組成物は 、一部は、異常な塩化物イオン分泌によって特徴づけられる病理状態の徴候およ び症状を軽減するための医薬品として有用である。 以下の実施例は、例証する目的であり、本発明を限定することを意図しない。 実施例I T84 細胞におけるIns(3,4,5,6)P4の細胞浸透性誘導体によって減少した カルシウム媒介性塩化物イオン分泌 この実施例は、Ins(3,4,5,6)P4の細胞浸透性誘導体が、Ins(3,4,5,6)P4の細胞 内濃度を上昇させることによって結腸上皮T84細胞株でカルシウム媒介性塩化物 イオン分泌を減少させることを示す。 エナンチオマー的に純粋な1,2-Bt2-Ins(3,4,5,6)P4/AMを合成して、1,2-Bt2-I ns(3,4,5,6)P4/AMが、細胞内カルシウム濃度からの塩化物イオン分泌の切り離 しを媒介するかどうかを決定した。T84細胞(18〜48継代)を、既述のように維 持した(Weymerら,J .Clin.Invest. 76:1828(1985)、これは参考として本明細 書に援用される)。SNAP-WELLS(Corning Coster; Cambridge,MA)上でのイン キュベーションの7〜10日後、単層はタイトジャンクションを形成した。細胞単 層を、100、200、または400μMのBt2-Ins(3,4,5,6)P4/AMとともに、マウントの 前に30分間プレインキュベートした。さらに30分後、0.1mMヒスタミンを添加し 、そして塩化物イオン分泌をモニターした。塩化物イオン分泌を、コンフルエン スまで増殖したT84単層を横切る短回路電流(Isc)として測定し、そして電圧ク ランプを装着したUssingチャンバー(Physiologic Instrumetns; San Diego, CA )にマウントした。データを獲得し、そして「Acquire and Analyze」ソフトウ エア(Physiologic Instruments)を使用して分析した。 ヒスタミン刺激塩化物イオン分泌の最大減少を、200μMの1,2-Bt2-Ins(3,4,5, 6)P4/AMで得たが、400μMではさらなる減少はなかった(表II)。この結果は、2 00μMの細胞内濃度と等価なほぼ4μMのIns(3,4,5,6)P4の細胞内レベルが最大阻 害の開始に対応することを示すこれまでの研究(Vajanaphanichら,前出,1994 )と一致する。 表II.細胞浸透性Ins(3,4,5,6)P4誘導体による減少したカルシウム依存性塩化物 イオン分泌 表II Ins(3,4,5,6)P4の細胞浸透性誘導体による塩化物イオン分泌の減少とは逆に、 ジブチリルサイクリックAMPアセトキシメチルエステル刺激した塩化物イオン分 泌の阻害は観察されなかった(ピークΔIsc=96.3±9.1%またはコントロール; 平均±SEM;n=4)。この結果は、サイクリックAMP媒介塩化物イオン分泌が、カ ルシウム媒介性塩化物イオン分泌に関連するチャンネルとは異なる塩化物イオン チャンネルを介して起こるという観察(McRobertsら,J .Biol.Chem. 260:1416 3(1985))と一致する。 これらの結果は、Ins(3,4,5,6)P4の細胞浸透性誘導体に細胞を曝露することに よるIns(3,4,5,6)P4の細胞内濃度を上昇させることが、細胞内カルシウム濃度か ら塩化物イオン分泌を切り離すことによってカルシウム媒介性塩化物イオン分泌 を減少させること、および細胞浸透性Ins(3,4,5,6)P4誘導体が、Ins(3,4,5,6)P4 のアゴニストであることを示す。 実施例II ウサギ結腸における細胞浸透性Ins(3,4,5,6)P4誘導体による 減少したカルシウム媒介性塩化物イオン分泌 この実施例は、Ins(3,4,5,6)P4の細胞浸透性誘導体を使用してIns(3,4,5,6)P4 の細胞内濃度を上昇させることが、ウサギ結腸組織において減少したカルシウム 媒介性塩化物イオン分泌を引き起こすことを示す。 培養においてT84結腸上皮細胞を使用して上記を得た結果を、ウサギ結腸モデ ルシステムを使用して確認した(Frizzellら,J .Membrane Biol. 27:297(1976) ;ならびにFrizzellおよびSchultz,Int .Rev.Physiol. 19:205(1979)、これら のそれぞれは、参考として本明細書に援用される)。ウサギ結腸のセグメントを 切り出し、そしてウサギ結腸上皮の供給源として使用した。簡単にいえば、ウサ ギ結腸のセグメントを、141mM Na+、5mM K+、1.2mM Ca2+、1.2mM Mg2+、122mM Cl-、25mM HCO3、1.6mM HPO4、0.4mM H2PO4、および10mMグルコースを含むリン ゲル溶液で洗浄した。37℃にて、この溶液を、5%CO2および95%O2で気体処理 した場合pH7.4である。上皮を、基底筋肉層からはぎ取り、そして改変したSNAP WELLS中にマウントした(Frizzellら,前出,1976)。上皮を、37℃にて30分間 、200μMの1,2-Bt2-Ins(3,4,5,6)P4/AMとともにプレインキュベートし、 そしてUssingチャンバーにマウントした。単回路電流、コンダクタンス、および 抵抗を、実施例Iに記載のように4秒間隔で測定した。ピークIscは、ビヒクル とインキュベートしたコントロールの50.9%±10.4であった(図2;平均±SEM 、n=3;p<0.05、スチューデントの2テイルt検定)。図2に示される%コント ロールは、ヒスタミンで刺激したコントロール単層においてピークIscを越える ΔIscを示す。 これらの結果は、細胞浸透性誘導体Bt2-Ins(3,4,5,6)P4/AMが、Ins(3,4,5,6)P4 の細胞内濃度を上昇させることによってIns(3,4,5,6)P4のアゴニストとして作 用し、そしてウサギ結腸における塩化物イオン分泌を減少させることを示す。こ れらの結果はまた、細胞内Ins(3,4,5,6)P4の上昇が、結腸上皮組織中の細胞内カ ルシウム濃度から塩化物イオン分泌を切り離すことを確認する。 実施例III Ins(3,4,5,6)P4 アンタゴニストを使用するヒスタミン刺激した塩化物イオン分 泌のIns(3,4,5,6)P4阻害の逆転 この実施例は、ヒスタミン刺激した塩化物イオン分泌におけるIns(3,4,5,6)P4 の阻害効果が、Ins(3,4,5,6)P4のアンタゴニストとして機能するIns(3,4,5,6)P4 の細胞浸透性誘導体によって逆転され得ることを示す。 実施例IおよびIIに示す結果は、Ins(3,4,5,6)P4の漸増濃度が、カルシウム媒 介性塩化物イオン分泌を減少させることを示す。したがって、細胞中でIns(3,4, 5,6)P4の機能を拮抗する化合物は、この減少を逆転すべきである。 最初の研究は、カルシウム媒介性塩化物イオン分泌における阻害効果に対して 応答性であるIns(3,4,5,6)P4の構造決定基を理解することに関した。一連の細胞 浸透性イノシトールポリホスフェート誘導体を合成した。これらの誘導体は、1 、2、または3位に1つまたは2つのいずれかの非加水分解性化学基を含んだ。 T84単層を、200μMの2-Bt-1-Me-Ins(3,4,5,6)P4/AM、Me2-Ins(3,4,5,6)P4/AM、M e2-Ins(1,4,5,6)P4/AM、または2-Bt-3-Me-Ins(1,4,5,6)P4/AMとともに30分間プ レインキュベートした。 インキュベーション後、細胞をUssingチャンバーにおいてマウントした。カル シウム媒介塩化物イオン分泌を、ヒスタミン(10-4M)で刺激した。コントロー ル値は、同時インキュベートした単層におけるヒスタミンに対する応答であった 。データを、8〜10実験についての%コントロールとして表される、平均ピーク ΔIsc±SEMとして示す。有意差を、スチューデントの2テイルt検定を使用して 同定した。 表IIIに示すように、阻害効果は、誘導体のいずれかで処理した細胞で生じな かった。これらの結果は、1および2位での水素結合ドナー電位が、カルシウム 媒介塩化物イオン分泌に対するIns(3,4,5,6)P4の阻害効果を媒介することに関与 することを示す。細胞浸透性Bt2-Ins(3,4,5,6)P4/AMのscyllo誘導体は、myo誘導 体と少なくとも同じくらいの効果のインヒビターであり、2-ヒドロキシル位の方 向性が阻害活性に関連がないことを示す。 イノシトールポリホスフェート誘導体のいずれかが、カルシウム媒介塩化物イ オン分泌のIns(3,4,5,6)P4の阻害アンタゴニストとして機能するかどうかを決定 するために、T84細胞を、上記の細胞浸透性イノシトールポリホスフェートとと もにプレインキュベートした。ヒスタミン刺激後、短回路電流を測定した。図3 に示すように、Bt2-Ins(3,4,5,6)P4/AMとのインキュベーションは、コントロー ル細胞に対してヒスタミン刺激した塩化物イオン分泌を減少させた。図3に示す %コントロールは、ヒスタミンで刺激したコントロール単層においてピークIsc を越えるΔIscを示す。しかし、2-Bt-1-Me-Ins(3,4,5,6)P4/AMとのプレインキュ ベーションは、Bt2-Ins(3,4,5,6)P4/AMの阻害効果を逆転した。 表III.Ins(3,4,5,6)P4の誘導体による塩化物イオン分泌におけるIns(3,4,5,6)P4 媒介減少の逆転 表III ヒスタミン刺激した塩化物イオン分泌に対する種々のイノシトールポリホスフェ ート誘導体の効果を表IIIに示す。Ins(3,4,5,6)P4誘導体の、2-Btー1-Me-Ins(3,4 ,5,6)P4/AMおよびMe2-Ins(3,4,5,6)P4/AMは、ヒスタミン刺激した塩化物イオン 分泌に対するBt2-Ins(3,4,5,6)P4/AMの阻害効果を逆転した。対照的に、Ins(1,4 ,5,6)P4、Me2-Ins(1,4,5,6)P4/AM、および2-Bt-3-Me-Ins(1,4,5,6)P4/AMの誘導 体は、本質的に効果がなかった。これらの結果は、塩化物イオン分泌に関するBt2 -Ins(3,4,5,6)P4/AM減少の逆転が、立体特異的であることを示し、そしてIns(3 ,4,5,6)P4のこれらのアルキル誘導体が、Ins(3,4,5,6)P4のアンタゴニストとし て機能することを証明する。 他の誘導体も試験した。Bt2-Ins(1,4,5,6)P4/AMとのプレインキュベーション は、塩化物イオン分泌を阻害せず、そして実際に、塩化物イオン分泌においてわ ずかに上昇した。Ins(3,4,5,6)P4誘導体の、D,L-1,2-Cl2-ジデオキシ-Ins(3,4,5 ,6)P4/AMは、塩化物イオン分泌に対するわずかな阻害効果があった。D,L-1-Bt-2 -Me-Ins(3,4,5,6)P4/AMは、塩化物イオン分泌を阻害せず、そしてBt2-Ins(1,4,5 ,6)P4/AMの阻害を逆転しなかった。 細胞内カルシウム濃度の上昇は、塩化物イオン分泌を増加させる。塩化物イオ ン分泌に対するイノシトールポリホスフェート誘導体のどの効果もカルシウムレ ベルの変化によるものではないことを確実にするために、細胞内カルシウムの濃 度を、イノシトールポリホスフェート誘導体で処理した細胞で測定した。図4に 示すように、Bt2-Ins(1,4,5,6)P4/AMは、細胞内カルシウムまたはタプシガルジ ンに対するカルシウム応答を上昇しなかった。試験したどの化合物も、それ自体 による細胞内カルシウムレベルあるいはカルバコールまたはタプシガルジンで刺 激した細胞内カルシウムの改変されたレベルを変更しなかった。したがって、塩 化物イオン分泌に対するイノシトールポリホスフェート誘導体の効果は、細胞内 カルシウム濃度に対する何らかの効果のためではない。 これらの結果は、Ins(3,4,5,6)P4の細胞浸透性誘導体が、1,2-Bt2-Ins(3,4,5, 6)P4/AMでの細胞の処理によるIns(3,4,5,6)P4の上昇した細胞内濃度から得られ るカルシウム媒介塩化物イオン分泌の減少を逆転し、それによってこれらの細胞 からカルシウム媒介塩化物イオン分泌を増強することを証明する。対照的に、立 体異性体のIns(1,4,5,6)P4の誘導体は、Ins(3,4,5,6)P4によって媒介される塩化 物イオン分泌の阻害に影響を与えない。したがって、Ins(3,4,5,6)P4の細胞浸透 性誘導体は、Ins(3,4,5,6)P4アンタゴニストとして機能する。 実施例IV Ins(3,4,5,6)P4 アンタゴニストを使用する塩化物イオン分泌のカルバコール媒 介減少の逆転 この実施例は、塩化物イオン分泌におけるカルバコール媒介減少が、Ins(3,4, 5,6)P4のアンタゴニストとして機能する細胞浸透性Ins(3,4,5,6)P4誘導体によ って逆転され得ることを示す。 上記の実施例IIIにおいて、細胞内Ins(3,4,5,6)P4を、Ins(3,4,5,6)P4を産生 するために内因性エステラーゼによって加水分解される細胞浸透性誘導体のBt2- Ins(3,4,5,6)P4/AMの添加によって増加した。この実施例では、細胞内Ins(3,4,5 ,6)P4は、カルバコールでの細胞の延長した処理によって増加する。 T84結腸上皮細胞を、D,L-1,2-シクロヘキシリデン-Ins(3,4,5,6)P4/AM、1-Bu- 2-Bt-Ins(3,4,5,6)P4/AM、Bu2-Ins(3,4,5,6)P4/AM、3-Bt-2-Bu-Ins(1,4,5,6)P4/ AM、Bu2-Ins(1,4,5,6)P4/AM、1-Bt-2-Bu-Ins(3,4,5,6)P4/AM、または3-Bu-2-Bt- Ins(1,4,5,6)P4/AMで処理し、そして短回路電流を測定した。 1セットの細胞を、イノシトールポリホスフェート誘導体とともに30分間プレ インキュベートした。他の2セットの細胞を、ビヒクル単独とプレインキュベー トした。Iscの測定を0時で開始した。5分で、カルバコール(10-4M)を、ビヒ クル単独とプレインキュベートした1セットの細胞(図5では「カルバコール」 と命名される)に、およびイノシトールポリホスフェート誘導体とプレインキュ ベートした細胞のセット(図5Aでは「カルバコール+D,L-1,2-シクロヘキシリデ ン-Ins(3,4,5,6)P4/AM」と命名される)に添加した。30分で、1μMのタプシガ ルジンを添加した。データを、n=4〜6実験について収集した。 図5Aは、D,L-1,2-シクロヘキシリデン-Ins(3,4,5,6)P4/AMを使用する実験を示 す。カルバコールの添加は、Ins(3,4,5,6)P4誘導体とプレインキュベートした細 胞で、およびカルバコール単独で処理した細胞での、短回路電流の一過性の増加 を起こした。30分で、コントロールレベルまでのΔIscの復帰後、1μMのタプシ ガルジンを添加して、増加した細胞内カルシウムを刺激した。ΔIscにおける予 測された増加を、タプシガルジン処理したコントロール細胞で観察したが、ΔIs c は、カルバコールでの延長した処理を受ける細胞で減弱された。D,L-1,2-シク ロヘキシリデン-Ins(3,4,5,6)P4/AMでの前処理は、カルシウム媒介塩化物イオン 分泌に対するカルバコールの阻害効果を逆転した。したがって、D,L-1,2-シクロ ヘキシリデン-Ins(3,4,5,6)P4/AMは、Ins(3,4,5,6)P4のアンタゴニストとして機 能する。 図5に示すように、Ins(3,4,5,6)P4誘導体である、D,L-1,2-シクロヘキシリ デン-Ins(3,4,5,6)P4/AM、1-Bu-2-Bt-Ins(3,4,5,6)P4/AM、およびBu2-Ins(3,4,5 ,6)P4/AMは、タプシガルジンによって刺激された塩化物イオン分泌のカルバコー ル媒介された阻害を逆転し、これらのIns(3,4,5,6)P4誘導体が、Ins(3,4,5,6)P4 のアンタゴニストとして機能することを示した(それぞれ図5A〜5C)。対照的に 、1-Bt-2-Bu-Ins(3,4,5,6)P4/AM、ならびに3-Bt-2-Bu-Ins(1,4,5,6)P4/AM、2,3- Bu2-Ins(1,4,5,6)P4/AM、および3-Bu-2-Bt-Ins(1,4,5,6)P4/AMは、タプシガルジ ンによって刺激された塩化物イオン分泌のカルシウム媒介阻害を逆転しなかった (それぞれ図5D〜5G)。 これらの結果は、Ins(3,4,5,6)P4の細胞浸透性誘導体が、カルシウム媒介塩化 物イオン分泌に対するカルバコールでの延長された処理の阻害効果を逆転し、し たがってIns(3,4,5,6)P4のアンタゴニストとして機能することを証明する。 実施例V 細胞内Ins(1,3,4)P3レベルの上昇はIns(3,4,5,6)P4を増加させ、そしてカルシ ウム媒介される塩化物イオン分泌を減少させる この実施例は、Ins(1,3,4)P3の細胞浸透性誘導体での細胞の処理が、Ins(3,4, 5,6)P4を増加させ、それによってカルシウム媒介塩化物イオン分泌を減少させる ことを示す。 ほぼ30のイノシトールポリホスフェートが細胞において同定されている。Ins( 1,3,4,5)P4は、5'イノシトールポリリン酸ホスファターゼによってIns(1,3,4)P3 に変換される。インビトロアッセイ系で、Ins(1,3,4)P3はイノシトール1キナー ゼを阻害し、これはIns(3,4,5,6)P4のIns(1,3,4,5,6)P5への変換を触媒する(Ta nら,J .Biol.Chem. 272:2285(1997)、これは参考として本明細書に援用される )。 細胞浸透性誘導体のD,L-Bt3-Ins(1,3,4)P3/AMを合成した。結腸上皮T84細胞を 、Ussingチャンバーにマウントする前に400μMのD,L-Bt3-Ins(1,3,4)P3/AMとと もに30分間プレインキュベートし、そしてΔIscを測定した。10分に、カルバコ ール(10-4M)を添加して、カルシウム媒介塩化物イオン分泌を一時的に刺激し た。データは、8実験の平均であり、対になっていない両側のスチューデント のt検定でp<0.04であった。 400μMのD,L-Bt3-Ins(1,3,4)P3/AMとの細胞のインキュベーションは、(3H)-イ ノシトールで標識した細胞で測定されたIns(3,4,5,6)P4で3倍の増加を引き起こ し、Ins(1,3,4)P3がインビボでIns(3,4,5,6)P4を増加させることを示した。ビヒ クルとプレインキュベートしたコントロール細胞は、15.2±2.8のピークΔIscを 有した。D,L-Bt3-Ins(1,3,4)P3/AMとプレインキュベートした細胞は、7.9±1.6 のピークΔIscを有した。したがって、カルシウム媒介塩化物イオン分泌は、細 胞浸透性D,L-Bt3-Ins(1,3,4)P3/AM誘導体で細胞を処理することによって、約50 %減少した。 これらの結果は、細胞浸透性Ins(1,3,4)P3誘導体が、減少したカルシウム媒介 塩化物イオン分泌を生じるIns(3,4,5,6)P4の細胞内濃度を上昇させ得、したがっ て、Ins(3,4,5,6)P4のアゴニストとして機能することをする。 実施例VI ヒト結腸上皮細胞のSalmonella侵襲はIns(1,4,5,6)P4の細胞内濃度を 増加させる この実施例は、Salmonellaによるヒト結腸上皮細胞の侵襲が、細胞内Ins(1,4, 5,6)P4の濃度を上昇させることを示す。 侵襲性腸内細菌は、腸上皮に入りそして通過して、基底粘膜を横切って到達し 、そして全身的感染を開始する。上皮細胞のSalmonella侵襲がイノシトールポリ ホスフェート代謝回転の増加を引き起こすことを示すこれまでの研究は、イノシ トールポリホスフェートが細菌侵襲に対する上皮細胞の応答に役割を果たし得る ことを示した(Ruschkowskiら,FEMS Microbiol .Lett. 74:121(1992))。細菌 侵襲によって誘導されたイノシトールポリホスフェートの変化を特徴づけるため に、結腸上皮細胞に対する侵襲する細菌の効果を評価した。 6ウェルプレートにおいてコンフルエントな結腸上皮T84細胞を、イノシトー ルを含まない50%ダルベッコ改変イーグル(DME)培地および5%透析ウシ新生 児血清を補充した50%Ham's F12培地中で50μCi/ウェルの(3H)-イノシトールと ともに、4日間インキュベートした。培養物を、予め温めた培地(50%DME、5 0%Ham's F12、および1mg/mlウシ血清アルブミン)で3回洗浄し、そして同じ 培地中で5×108細菌/ウェルで種々の時間にわたって感染させた。培養物を氷冷 リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、そして10%トリクロロ酢酸およ び10mMフィチン酸中で氷上にて5分間溶解した。抽出物を、FREON/アラミンを使 用して中和し、そしてAdsorbosphere SAXカラム上で分離してポリリン酸(3H)-イ ノシトールを分離した。放射活性ピークを、オンライン放射能検出器を装着した HPLCを使用して、既述のように定量した(Kachintornら,前出,1993)。HPLCで 分離されないエナンチオマーを定量するために、(3H)-Ins(3,4,5,6)P4およびIns (1,4,5,6)P4に対応するピークを、HPLCによってすべての他の(3H)-InsP4異性体 から分離し、脱塩し、次いで部分精製したIns(1,4,5,6)P43-キナーゼと、既述の ように(32P)-標識したIns(1,4,5,6)P4の内部標準とともにインキュベートした( Vajanaphanichら,前出,1994)。形成された(3H)-および(32P)-標識したIns(1, 3,4,5,6)P5の相対量を比較することによって、元のピークにおける(3H)-Ins(3,4 ,5,6)P4対(3H)-Ins(1,4,5,6)P4の比を決定した。 T84細胞の単層を、(3H)-イノシトールで標識し、そしてSalmonella dublinで 種々の時間感染させた。感染直後から60分間の間、myo-イノシトールヘキサキス ホスフェート(InsP6)またはホスホリパーゼCが活性化される場合に代表的に 蓄積するIns(1,4,5)P3のような他のイノシトールポリホスフェートのレベルの顕 著な変化がなかった。対照的に、分離されないエナンチオマー(3H)-Ins(3,4,5,6 )P4および(3H)-Ins(1,4,5,6)P4のレベルは、S.dublinでの感染後10分以内に増 加した。このピークの約85%が(3H)-Ins(1,4,5,6)P4に対応した。コントロール の非感染細胞よりも最大14倍の増加は、感染後30〜40分に到達した(表IVを参照 のこと)。(3H)-Ins(1,4,5,6)P4のレベルは40分後にゆっくりと減少し、そして 感染後3時間までにほぼベースラインに戻った(表IVを参照のこと)。類似の観 察が、別のヒト腸上皮細胞株LS174Tを使用して行われた。(3H)-Ins(1,4,5,6)P4 は、S.dublin感染後11.3倍に上昇したことが見られ、感染後の細胞イノシトー ルポリホスフェートの変化が、上皮細胞の一般的応答を表すことを示した。 別の侵襲性Salmonella株、Salmonella typhi BRD691でのT84細胞の感染はまた 、(3H)-Ins(1,4,5,6)P4レベルを増加させた(表IVを参照のこと)。対照的に、上 皮 細胞へ正常に付着するが、侵襲しないS.dublinの変異株、SB133は、(3H)-Ins(1, 4,5,6)P4レベルを最小限でのみ増加させ、このことはSalmonellaによる宿主細胞 の侵襲がこの応答を必要とすることを示した。しかし、細菌侵襲単独では、Ins( 1,4,5,6)P4レベルを増加させるには十分ではなかった。なぜならT84細胞の感染 はいくつかの他の侵襲性グラム陰性菌(Shigella flexneri、Shigella dysenter iae、Yersinia enterocolitlca、および腸侵襲性Escherichia coli(血清型 O29: NM)を含む)は、(3H)-Ins(1,4,5,6)P4レベルの小さな増加を生じたからである。 さらに、腸内出血性E.coli(血清型 O157)のような非侵襲性グラム陰性菌、また は非病原性E.coli(DH5α)のT84単層への添加は、(3H)-Ins(1,4,5,6)P4レベルに ほとんど影響しなかった。10μg/mlの細菌性リポポリ多糖(LPS)の添加は、(3H)- Ins(1,4,5,6)P4レベルに全く影響しなかった。 表IV.上皮細胞のSalmonella感染後のIns(1,4,5,6)P4レベルの増加 これらの結果は、結腸上皮細胞のSalmonellaによる侵襲が、Ins(1,4,5,6)P4の 細胞内濃度を増加させることを示す。増加した塩化物イオン分泌は、分泌性下痢 、Salmonella感染の病理的徴候を生じ、このことはIns(1,4,5,6)P4濃度との関連 性を示唆する。 実施例VII Ins(1,4,5,6)P4 は塩化物イオン分泌のEGF誘導阻害を逆転する 本実施例は、細胞を細胞侵入性Ins(3,4,5,6)P4誘導体とインキュベートするこ とによるIns(1,4,5,6)P4の細胞内濃度の増加が、上皮成長因子(EGF)によって誘 導される塩化物イオン分泌の阻害を逆転することを示す。 上記実施例IIIおよびIVにおいて、Ins(1,4,5,6)P4誘導体は、塩化物イオン分 泌におけるIns(3,4,5,6)P4媒介性減少に全く影響しなかった。Ins(1,4,5,6)P4が 塩化物イオン分泌の阻害を誘導するEGFに影響されるか否かを試験するために、T84 細胞単層を、Bt2Ins(1,4,5,6)P4/AMと30分間プレインキュベーションした。Δ Iscの測定を開始し(実施例Iを参照のこと)、そして、測定の5分後、16.3nM E GFを細胞の側底表面に添加した。さらなる15分間のインキュベーション後、100 μM カルバコールを添加して、急速に細胞内カルシウム濃度を上昇させた。コ ントロールもまた、カルバコールで刺激したが、EGFで前処理しなかった。デー タは、代表的な実験(全てで3回の実験)からの2連の測定の平均である。 図6および図7(パネルaおよびb)に示されるように、EGFは、カルバコー ル刺激塩化物イオン分泌を阻害した。内因性細胞性エステラーゼによって加水分 解されてIns(1,4,5,6)P4となる、細胞浸透性誘導体であるBt2Ins(1,4,5,6)P4/AM とのプレインキュベーションは、有意にEGF誘導される塩化物イオン分泌の阻害 を逆転した。対照的に、EGFの阻害機能は、Ins(1,3,4,5,6)P5の細胞浸透性誘導 体の添加によって減弱されなかった(図7、パネルC)。Ins(1,4,5,6)P4の鏡像 異性体である細胞浸透性Ins(3,4,5,6)P4誘導体の添加もまた、塩化物イオン分泌 に対するEGF阻害機能を減弱しなかった。Bt2Ins(1,4,5,6)P4/AMの添加は、サイ クリックAMP媒介性塩化物イオン分泌のEGF阻害を逆転せず、そのことはIns(1,4, 5,6)P4の作用が、カルシウム媒介性塩化物イオン分泌に特異的であることを示し た。 これらの結果は、細胞浸透性誘導体として細胞へ送達されるIns(1,4,5,6)P4の 増加したレベルが、塩化物イオン分泌の逆転されたEGF媒介性阻害によってカル シウム媒介性塩化物イオンの分泌が増強されることを示す。 実施例VIIIIns(1,4,5,6)P4 は、カルシウム媒介性塩化物イオン分泌におけるPtdInsP3減少を 逆転する 本実施例は、PtdInsP3の誘導体が、カルシウム媒介性塩化物イオン分泌を減少 させることを示す。細胞浸透性Ins(1,4,5,6)P4誘導体は、塩化物イオン分泌にお けるPtdInsP3媒介性減少を逆転する。 T84細胞単層を、PtdInsP3/AMで30分間プレインキュベートし、そしてΔIscを 測定した。図8に見られるように、漸増濃度のPtdInsP3/AMは、カルバコール刺 激塩化物イオン分泌を阻害し、このことは、Ins(3,4,5,6,)P4とは別のイノシト ールリン酸もまた、カルシウム媒介性塩化物イオン分泌を阻害することを示した 。 PI3-キナーゼ産物PtdInsP3のさらなる細胞浸透性誘導体を合成し、そして塩化 物イオン分泌に対する影響について試験した。細胞を、ジC16-Bt-PtdInsP3/AMま たはジC8-Bt-PtdInsP3/AMとプレインキュベーションし、そしてΔIscを実施例VI Iに記載のように測定した。 図7に見られるようにT84細胞のジC16-Bt-PtdInsP3/AMでの前処理は(図7d )、74%までカルシウムイオン媒介性塩化物イオン分泌を阻害した。同様に、ジ C8-Bt-PtdInsP3/AMは、79%まで塩化物イオン分泌を阻害した。細胞を、細胞に 侵入することが期待されないPtdInsP3で前処理した場合、カルシウム媒介塩化物 イオン分泌の阻害は観察されなかった。これらのPtdInsP3の細胞浸透性誘導体は 、カルバコール刺激後のカルシウムレベルに影響しなかった。PtdInsP3のこれら の誘導体で観察されたレベルの減少を、細胞のEGF処理によって観察された減少 と匹敵した。さらに、細胞浸透性PtdInsP3誘導体でプレインキュベーションされ た単層へのEGFの添加は、カルシウム媒介性塩化物イオン分泌のさらなる阻害を 生じ ず、このことはPtdInsP3およびEGFが同じ機構を介して作用することを示した。 T84細胞をまた、細胞浸透性Ins(1,4,5,6)P4誘導体でプレインキュベートして 、Ins(1,4,5,6)P4が、塩化物イオン分泌においてPtdInsP3媒介性減少を逆転し得 るか否かを決定する。図7dに見られるように、T84単層の膜透過性Ins(1,4,5,6 )P4誘導体とのプレインキュベーションは、塩化物イオン分泌のPtdInsP3媒介減 少を部分的に逆転した。 これらの結果は、PtdInsP3が、カルシウム媒介性塩化物イオン分泌を減少させ ることを示す。さらに、Ins(1,4,5,6)P4は、カルシウム媒介性塩化物イオン分泌 におけるPtdInsP3減少を逆転する。 実施例IX ヒト鼻上皮における塩化物イオン輸送 本実施例は、呼吸器上皮における塩化物イオン分泌を変化させる化合物の有効 性を試験するためのモデルとして有用な初代ヒト鼻上皮細胞系を提供する。 初代ヒト鼻上皮を、生検によって入手する。単層における生体電気測定および カルシウム測定について、初代ヒト鼻上皮細胞を、Oリングで固定された多孔性 Transwell Collフィルター(孔径、0.4μM; Costar)上にプレーティングし、そ して播種後5〜7日間(最大の上皮貫通潜在的分化の発生と同時に生じる時間) 研究する。細胞を、インシュリン(10μg/ml)、トランスフェリン(5μg/ml)、内 皮細胞成長補填剤(3.75μg/ml)、ヒドロコルチゾン(5nM)、内皮細胞成長補填剤 (3.75μg/ml)、トリヨードチロニン、(30nM)、および1mM CaCl2を補充された無 血清Ham F12培地において維持する。ヒト鼻上皮単層を、プレーティングの5〜 7日後、小型Ussingチャンバーにおいて取り付ける。 上皮貫通潜在的分化を、Voltage-Clamp/Pulse Generator(Physiologic Instru ments,San Diego,California)によってモニターし、そして生体電気を2つの チャネルレコーダーで記録する。単層を、ナトリウムを含まないリンゲル液に曝 露して、その天然のナトリウム吸収段階から塩化物イオン分泌段階への変化の測 定である上皮貫通塩化物イオン耐性における変化を計算する。細胞内カルシウム 測定のために、単層を、Fura-2でロードし、そして微量蛍光測定器に連結した顕 微鏡の対物レンズの上へマウントする。蛍光強度比を、30〜40細胞の場からか、 または単一の細胞からのいずれかで収集する。細胞内カルシウムレベルに対する ΔIscは、各調製において正規化する。結果が真の単層からの応答を反映してい ることを保証するために、単層をルーチン的に固定し、交差切片セグメントを試 験する。 初代ヒト鼻上皮細胞は、実施例III、IV、VII、およびVIIIにおいて記載された ようにIns(3,4,5,6)P4およびPtdInsP3のアンタゴニストでの処置に有用である。 初代鼻上皮における塩化物イオン分泌の増強に有効な化合物は、肺不全のような 嚢胞性繊維症の徴候を緩和するための良い候補である。 実施例X CFTR-T84 細胞の作製 本実施例は、嚢胞性繊維症のモデルとして有用なCFTR-T84細胞を調整するため の方法を提供する。 Ins(3,4,5,6)P4誘導体をスクリーニングするため、そして最終的にCFTRが、塩 化物イオン分泌のIns(3,4,5,6)P4媒介阻害に関与するエレメントの発現を調節す るか否かを決定するために、CFTR-T84細胞を作製する。 T84細胞におけるCFTR遺伝子(単数または複数)を、元来マウス胚幹細胞(ES細 胞)において遺伝子ノックアウト変異を作製するために開発された二重選択アプ ローチ(Mansourら、Nature 336:348(1988)(これは本明細書中に参考として援用 される))を用いて不活性化する。変異誘発CFTR標的遺伝子導入構築物を、pSSC- 9ベクター中に作製する(ChauhanおよびGottesman,Gene 120:281(1992)(これは 本明細書中に参考として援用される))。このベクターは、hsv-tk遺伝子の両側 に隣接するチミジンキナーゼプロモーターによって駆動されるネオマイシン耐性 遺伝子を有する。さらに、pSSC-9は標的遺伝子導入セグメントを挿入するために 使用され得る遺伝子の両側に都合の良いクローニング部位を有し、そして線状形 態における変異カセットを切り出すために使用され得る2つのSfil制限部位を有 する。G418の耐性によるネオマイシン遺伝子の発現のための選択は、安定にトラ ンスフェクトされたクローンのスクリーニングを可能にする。次いで、シクロビ ルを用いた、hsv-tk発現に対する選択は、構築物が標的化部位内への相同性組換 えを介して組み込まれたクローンを拡大する(Mansourら、前出、1988)。CFTR遺 伝子の8.5kbフラグメント(エキソン21を含むTE 2611E8.5)を、CFTR遺伝子配列 (Rommensら,Science 245:1059(1989);およびRommensら,Am.J.Hum.Genet. 45:9 32(1989)(これらのそれぞれは本明細書中に参考として援用される)の供給源とし て使用する。あるいは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、T84細胞由来の 適切な配列を直接クローン化し得る。CFTR遺伝子セグメントを増幅するためのい くつかのPCRプライマーが記載されている(Zielinskiら,Genomics 10:214(1991) (これは、本明細書中に参考として援用される)。少なくとも2〜4kb長のフラ グメントを、相同性組換えのための充分な配列相同性を保証するために増幅する べきである。PCRプライマーは、pSSC-9クローニング部位と互換性の制限部位伸 長を有する。 変異構築物を、DNAトランスフェクション法(例えば、リン酸カルシウムまた はエレクトロポレーションに基づくプロトコール(Molecular Biology ,A Labora tory Manual ,第2版,Sambrookら,編,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Plainview,NY(1989)(これは本明細書中に参考として援用される)を用いてT8 4 細胞へトランスフェクトする。安定なトランスフェクト体を、G418を用いて選 択し、拡大し、そしてシクロビルを用いた第2回目の選択に供する。おそらくCF TR遺伝子座へのベクターの相同性組換えによって誘導された耐性クローンを、漸 増量のG418を用いて、さらなる回の選択に供する。ES細胞を用いてマウスにおい て二重ノックアウト変異体の作製を容易にするために開発されたこのアプローチ もまた、細胞株におけるホモ接合変異体の選択のために適用し得る(Chenら,Pro c.Natl.Acad.Sci .USA 90:4528(1993)およびMortenson,Hypertension 22:646(1 993)(これらのそれぞれは、本明細書中に参考として援用される)。選択された クローンを、サザンブロットおよびPCR分析によって分析して、neoカセットがCF TR遺伝子(単数または複数)に挿入されたことを確認する。 「二重構築法」は、2つの異なる変異構築物を用いて標的遺伝子の変異を連続 的に行うことにおいて交換可能に使用され得る(Mortenson,上述、1993; Feldha usら,EMBO J. 12:2763(1993)、ならびにPorterおよびItzhaki,Eur.J.Biochem. 218:273(1993)(これらのそれぞれは、本明細書中に参考として援用される))。 これらの構築物は、neo遺伝子またはgpt遺伝子カセットを有し、それによって、 連続的なトランスフェクション、ならびにG418を用いたneo遺伝子の選択および キサンチンに加えてミコフェノール酸を用いたgpt遺伝子の選択を可能にする。T84 細胞の二重ノックアウトCFTR変異体を使用して、Ins(3,4,5,6)P4およびPtdIns P3アンタゴニストの効力を評価する。 これらの結果は、嚢胞性繊維症のモデルとして使用され得るT84細胞のCFTR-変 異体の作製を示す。これらの細胞は、嚢胞性繊維症の患者の上皮細胞に見出され る細胞と同じ遺伝的背景を提供する。CFTR-T84細胞において塩化物イオン分泌を 有効に増強するIns(3,4,5,6)P4およびPtdInsP3のアンタゴニストは、嚢胞性繊維 症患者における塩化物イオン分泌を増強するための良い候補である。 実施例11 細胞浸透性イノシトールポリホスフェート誘導体の調製 この実施例は細胞浸透性イノシトールポリホスフェート誘導体の合成を記述す る。 いくつかの細胞浸透性イノシトールポリホスフェート誘導体の合成反応は以前 に記述されている(Roemerら、前出、1996; およびRoemerら、前出、1995)。 さらなるイノシトールポリホスフェート誘導体の合成反応を以下に記述する。 図9は、細胞浸透性PtdInsP3およびdiC16-Bt-PtdInsP3/AMの構造を示す。図10は 、PtdInsP3/AM誘導体の合成スキームを示す。図11は、1,2-シクロヘキシリデンI ns(3,4,5,6)P4//AMの合成スキームを示す。図12は、myo-イノシトール1,3,4-ト リスホスフェート、および2,5,6-Bt3-Ins(1,3,4)P3/AMの構造を示す。化合物のD 配置のみを示す。図13は、細胞浸透性イノシトールポリホスフェート誘導体の合 成スキームを示す。図13において、以下の条件が用いられた:(i)Bt2O、DMAP、 ピリジン;(ii)TFA、CH3CN/H2O;(iii)a、Bu2SnO、トルエン、還流、b、BnBr、CsF 、DMF;(iv)Bt2O、DMAP、ピリジン;v Pd/C(10%)、AcOH;(vi)a、(BnO)2PNiPr2、 テトラゾール、CH3CN、b、AcOOOH、-40℃;(vii)Pd/C(10%)、AcOH;および(viii) AMBr、DIEA、CH3CN。 全ての化学試薬は入手可能な限りで最高純度のものを用いた。必要な場合には 、溶媒は使用前に乾燥および/または蒸留した。アセトニトリルは、ジメチルホ ルムアミド(DMF)でするように、酸化リン(V)から蒸留し、そして3Åのモレキュ ラーシーブと共に保存した。ピリジンおよびトルエンは4Åのモレキュラーシー ブと共に保存した。エチル-ジイソプロピルアミン(DIEA)はナトリウム線で乾燥 した。パラジウム炭素(10%)およびトリフルオロ酢酸は、Acros Chemieから入手 した。ジベンジルN,N-ジイソプロピルホスホルアミダイト(phosphoramidite)、 過酢酸(32% v/w)、テトラゾール、水素化ナトリウム、およびアセトキシメチル ブロミドは、Aldrich(Milwaukee、Wisconsin)から入手した。無水酪酸、DIEA、 およびトリス(トリフェニルホスフィン)-ロジウム(I)-クロリドは、Merckから入 手した。臭化ベンジル、臭化アリル、ヨウ化ブチル、フッ化セシウム、および4- ジメチルアミノピリジン(DMAP)は、Flukaから入手した。イオン交換樹脂Dowex 5 0 WX 8(H+-型)は、Serva(Heidelberg Germany)から入手した。その他の試薬は 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、LDC/Milton Roy UVモニターD(254nm) またはKnaur屈折率検出器と共に、LDC/Milton Roy Consta Metric IIIポンプを 用いて行われた。分析カラムは、RP 18材料(Merck、LiChrosorb:10μm)を充填し たMerck Hibar鋼管(250mm x 4mm)であった。分取HPLCは、分取LDCU V IIIモニタ ー(254nm)またはKnaur屈折率検出器と、RP 18材料(Merck、LiChrospher 100、10 μm)を充填したMerck Prepbarスチールカラム(25°mm x 50mm)と共に、Shimadzu LC 8Aポンプを用いて行われた。溶離液はメタノール-水混合物であり;組成は メタノール(MeOH)%で与えられる。 1H-NMRおよび31P-NMRスペクトルは、Brucker AM 360 AM分光計で記録された。 化学シフトは、1H-NMRスペクトルについてはテトラメチルシランに対するppmで 測定され、31P-NMRスペクトルについては85%H3PO4の外部標準を用いて測定され た。J値は、Hzで与えられた。質量スペクトルは、高速原子衝撃(FAB)イオン化に よるFinnigan Mat 8222質量分析器を使用して記録した。高分解能質量は、質量 が10%よりも大きく異ならない公知の化合物と比較することで決定された。融点 er 1231旋光計を用いて、10cmセル中のナトリウムD-線について測定された。パ ラジウム/炭触媒の限外濾過は、再生セルロースからのフィルター(Sartorius、S M 116 04)を使用して、Sartorius濾過装置SM 162 01を用いて行った(Sartorius Edgewood、New York)。元素分析は、Mikroanalytisches(Labor Beller、Gotting en、Germany)によって行った。 D-1,4,5,6-テトラ-O-ベンジル-myo-イノシトール(ent-9)およびD-3,4,5,6-テ トラ-O-ベンジル-myo-イノシトール(9)は、以前記述されたように合成した(Roem erら、前出、1996)。化合物、rac-1,2-ジ-O-シクロヘキシリデン-myo-イノシト ールは、AngyalおよびTateの方法によって合成した(AngyalおよびTate、J. Chem .Soc. 1965:6949(1965))。これは、本明細書中で参考として援用する。 ホスホリル化の一般的手順。アルゴン下、選択的に保護されたmyo-イノシトー ル誘導体およびテトラゾールを乾燥アセトニトリルに溶解し、それからジベンジ ルN,N-ジイソプロピルホスホルアミダイトを加えた。室温で指示した時間の間撹 拌した後、反応混合物を-40℃まで冷却し、そして過酢酸(32% v/w; ホスホルア ミダイトの各モル当量に対して1モル当量)を加えた。混合物が室温まで到達し た後、溶媒を減圧下で除去し、そして油状残渣を分取HPLCによって精製して所望 のイノシトールテトラキスホスフェート誘導体を得た。 水素化分解によるベンジル基の除去の一般的手順。全保護されたmyo-イノシト ールテトラキスホスフェートまたはテトラベンジル-イノシトールを、それぞれ 、水素雰囲気下、自己構築(self-built)水素化分解装置において、指示した時間 の間、酢酸中でパラジウム炭素(10%;ベンジル基の各モルに対して0.1モルのパ ラジウム)と共に激しく撹拌した。触媒を限外濾過により除去して、そして濾液 を凍結乾燥することにより、それぞれの生成物を得た。 アセトキシメチルエステルの導入の一般的手順。完全に乾燥したイノシトール テトラキスホスフェート誘導体(遊離酸)を、アルゴン下、乾燥アセトニトリルに 懸濁し、それから乾燥DIEA(ヒドロキシ基の各モルに対して2.25モルのDIEA)およ びアセトキシメチルブロミド(DIEAの各モル当量に対して1モル当量)を加えた。 暗所で室温で4日間混合物を撹拌した後、全揮発性成分を減圧下でエバポレート し、そして粗残渣を特定の溶媒を用いて分取HPLCにより精製して、シロップとし て、イノシトールテトラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステ ルを得た。 D-3,4,5,6- テトラ-Oベンジル-1-O-ブチル-myo-イノシトール(10)。乾燥9(250m g、463μmol)および乾燥酸化ジブチルスズ(116mg、167μmol)を、活性化モレキ ュラーシーブ(3Å)を入れたソックスレー装置中18時間、乾燥トルエン(100ml)中 で加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却し、減圧下で乾固するまでエバポレ ートした。油状残渣にCsF(140mg、926μmol)を加え、そして混合物を2時間高真 空下に保った。残渣のシロップを、アルゴン下乾燥DMF(10ml)に溶解し、ヨウ化1 -ブチル(300μl、2.62mmol)を加えた。溶液を48時間撹拌した後、HPLC分析(90% メタノール;1.5ml/分;tR=7.43分)では、それ以上の反応は見られなかった。過 剰のヨウ化1-ブチルおよびDMFを高真空で除去した。粗生成物を分取HPLC(93%メ タノール;40ml/分;tR=22.30分)によるクロマトグラフィーを行い、化合物10を 固体として得た(175mg、74%)。Mp: 75.4°-75.9℃(メタノールより)。[α]24 D: +8.4°(CHCl3中 c=0.98)。 D-1,4,5,6- テトラ-O-ベンジル-3-O-ブチル-myo-イノシトール(ent-10)。ジオ ールent-9での同様な反応および後処理から化合物ent-10を得た。[α]24 D-8.7° (CHCl3中 c=1.01)。スペクトルデータは、エナンチオマー10について得られたも のと一致していた。 D-3,4,5,6- テトラ-O-ベンジル-1-O-ブチル-2-O-ブチリル-myo-イノシトール(1 1)10(178mg、298μmol)、無水酪酸(210μl、596μmol)、およびDMAP(38mg、30 μmol)の乾燥ピリジン(3ml)溶液を、18時間室温で撹拌した。溶媒を高真空下で エバポレートして油状物を得た。残留ピリジンは、3回オクタンと共にエバポレ ートすることにより除去した。残渣を、tert-ブチルメチルエーテル(10ml)に溶 解し、そしてリン酸緩衝液(10ml)で1回、炭酸水素ナトリウム(10ml)で1回、硫 酸水素ナトリウム(10ml)で1回、リン酸緩衝液(10ml)でもう1回、次いでブライ ン(10ml)で1回洗った。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして濾過した。溶媒をエバ ポレートして純粋な11を油状物として得た(194mg、98%)、[α]24 D: -10.4°(CHC l3中 c-1.97)。 D-1,4,5,6- テトラ-O-ベンジル-3-O-ブチル-2-O-ブチリル-myo-イノシトール(e nt-11) 。化合物ent-10を、他のエナンチオマーについて上記されたようにブチ リル化することにより、化合物ent-11を得た。[α]24 D: +10.7°(CHCl3中 c-2.0 5)。スペクトルデータは、エナンチオマー11について得られたものと一致してい た。 D-1-O- ブチル-2-O-ブチリル-myo-イノシトール(12)。化合物11(178mg、267μm ol)を、一般的手順において記述したように、水素下パラジウム(10%)炭素で水 素化し、凍結乾燥後、固体としてテトロール12を得た(81mg、99%)。[α]24 D: +2 6.5°(MeOH中 c=2.0)。元素分析() C:計算値、54.89; 実測値54 45; H: 計算値、8.55、実測値8.56。 D-3-O- ブチル-2-O-ブチル-2-O-ブチリル-myo-イノシトール(ent-12)。全保護 された化合物ent-11での類似の反応および後処理からテトロールent-12を得た。 [α]24 D: -26.6°(MeOH中 c=0.76)。スペクトルデータは、エナンチオマー12に ついて得られたものと一致していた。 D-1-O- ブチリル-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキス(ジベンジル)ホスフェ ート(20) 。テトロール12(63mg、206μmol)およびテトラゾール(174mg、2.47mmol )のアセトニトリル(2ml)溶液を、18時間ジベンジルN,N-ジイソプロピルホスホル アミダイト(834μl、2.47mmol)と処理し、過酢酸で酸化し、そして記述したよ うに後処理した。分取HPLC(93% MeOH; 40ml/分; tR=26.45分)で精製して、化合 物20を油状物として得た(165mg、60%)。[α]24 D: -4.9°(CHCl3中 c=1.08)。 D-3-O- ブチル-2-O-ブチリル-myo-イノシトール1,4,5,6-テトラキス(ジベンジ ル)ホスフェート(ent-20) 。テトロールent-12を、化合物20について上記された ようにホスファイト化および酸化することにより、全保護されたホスフェートen t-20 を得た。[α]24 D: +4.8°(CHCl3中 c=2.09)。スペクトルデータは、エナン チオマー20について得られたものと一致していた。D-1-O- ブチル-2-O-ブチリル-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホスフェート (21) 。化合物20(160mg、118μmol)を、一般的手順において記述したように、パ ラジウム(10%)炭素で水素化し、凍結乾燥後、固体として表題化合物21を得た(7 3mg、99%)。[α]24 D: 4.1°(H2O中、pH=1.6で c=1.04)。 D-3-O- ブチル-2-O-ブチリル-myo-イノシトール1,4,5,6-テトラキスホスフェート (ent-21) 。全保護された基質ent-20での類似の反応から、凍結乾燥後、遊離酸en t-21 を得た [α]24 D: =4.1°(H2O中、pH=1.6で c=0.78)。スペクトルデータは 、エナンチオマー21について得られたものと一致していた。D-1-O- ブチル-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホスフェート(5) 。化合物21 (17mg、27μmol)を1MのKOH(260μl)と処理して、pH値を12.8に調整した。溶液を 室温で2日間撹拌した。精製するために、反応混合物を直接イオン交換カラム(Do wex 50 WX 8、Ht)に注いだ。凍結乾燥により、化合物5を得た(14mg、94%)-[α]24 D :+4.9°(H2O中、pH=1.6で c=0.53)。 D-3-O- ブチル-myo-イノシトール1,4,5,6-テトラキスホスフェート(ent-5)。上記 の方法と同様にして、基質ent-21のブチリル基を加水分解し、テトラキスホスフ ェートent-5を得た-[α]24 D: +4.6°(H2O中、pH=1.6で c=0.35)。スペクトルデ ータは、エナンチオマー5について得られたものと一致していた。D-1-O- ブチル-2-O-ブチリル-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホスフェート オクタキス(アセトキシメチル)エステル(1) 。DIEA(131μl、768μmol)およびア セトキシメチルブロミド(77μl、768μmol)を、アセトニトリル(2ml)中の化合物21 (30mg、47μmol)の懸濁液に、一般的手順において記述されたように加えた。 分取HPLC(73% MeOH、37.5ml/分、tR=19.30)により精製して、化合物1をシロップ として得た(31mg、55%)。-[α]24 D: +2.0°(トルエン中 c=1.00)。 D-3-O- ブチル-2-O-ブチリル-myo-イノシトール1,4,5,6-テトラキスホスフェート オクタキス(アセトキシメチル)エステル(ent-1) 。上記のように、ホスフェートe nt-21 をアルキル化し、オクタキス(アセトキシメチル)エステルent-1を得た。[ α]24 D: +1.9°(トルエン中 c=1.46)。スペクトルデータは、エナンチオマー1に ついて得られたものと一致していた。D-1-O- アリル-3,4,5,6-テトラ-O-ベンジル-myo-イノシトール(13) 。乾燥9(690mg 、1.28mmol)および乾燥酸化ジブチルスズ(324mg、1.3mmol)を、活性化モレキュ ラーシーブ(3Å)を入れたソックスレー装置中20時間、乾燥トルエン(150ml)中で 加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却し、減圧下で乾固するまでエバポレー トした。油状残渣にCsF(388mg、2.56mol)を加え、そして混合物を2時間高真空下 に保った。残渣のシロップを、アルゴン下乾燥DMF(10ml)に溶解し、ヨウ化1-ア リル(329μl、3.58mmol)を加えた。溶液を20時間撹拌した後、HPLC分析(95%MeO H;1.5ml/分;tR=3.20分)では、それ以上の反応は見られなかった。過剰のヨウ 化1-アリルおよびDMFを高真空で除去した。粗生成物を分取HPLC(90%MeOH;40ml /分;tR=26.15分)によるクロマトグラフィーを行い、化合物13を固体として得た (448mg、60%)。Mp: 71-72℃(メタノールより)。-[α]24 D: +4.6°(CHCl3中 c=0 .98)。 D-3-O- アリル-1,4,5,6-テトラ-O-ベンジル-myo-イノシトール(ent-13)。ジオー ルent-9での同様な反応および後処理から化合物ent-13を得た。-[α]24 D: +3.9 °(CHCl3中 c=0.82)。スペクトルデータは、エナンチオマー13について得られた ものと一致していた。D-1-O- アリル-3,4,5,6-テトラ-O-ベンジル-2-O-ブチル-myo-イノシトール(14) 。 暗所にて室温で、水素化ナトリウム(46mg、1.92mmol)を、13(445mg、767μmol) の乾燥DMF(5ml)撹拌溶液に加えた。混合物を5時間撹拌し、その後ヨウ化1-ブチ ル(306μl、2.68mmol)を加えた。懸濁液を80℃で18時間撹拌し、その後HPLC(95% MeOH; 1.5ml/分; tR=7.35)は生成物を示した。過剰のヨウ化1-ブチルおよびDMF を減圧下でエバポレートした。次いで、混合物をtert-ブチルメチルエーテル(40 ml)に溶解し、そしてリン酸緩衝液(20ml)で1回、水性ジチオン酸ナトリウム(20 ml)およびブライン(20ml)で連続して洗った。有機層をNa2SO4で乾燥し、濾過し 、そしてエーテルをエバポレートして油状物を得た。粗油状物を、分取HPLC(93 %MeOH;40ml/分;tR=37.10分)により精製して、表題化合物14を油状物として得 た(458mg、94%)。-[α]24 D: +1.5°(CHCl3中 c=2.29)。 D-3-O- アリル-1,4,5,6-テトラ-O-ベンジル-2-O-ブチル-myo-イノシトール(ent-1 4) 。化合物ent-13での同様な反応および後処理から化合物ent-14を得た。[α]24 D : -1.6°(CHCl3中 c=1.87)。スペクトルデータは、エナンチオマー14について 得られたものと一致していた。D-3,4,5,6- テトラ-O-ベンジル-2-O-ブチル-myo-イノシトール(15) 。トリス(トリ フェニルホスフィン)-ロジウム(I)クロリド(140mg、150pmol)およびDIEA(25μl 、140μmol)を、14(458mg、720μmol)の50%エタノール(90ml)懸濁液に加え、そ れから懸濁液を7時間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却し、それからト リフルオロ酢酸(7ml)を加え、溶液をさらに24時間撹拌し、その後HPLC(90% MeOH ; 1.5ml/分;tR=4.03分)は出発物質を示さなかった。2Nの水性NH4OHで中和した 後、エタノールを減圧下でエバポレートしてシロップを得た。シロップをtert- ブチルメチルエーテル(40ml)に溶解し、そしてリン酸緩衝液(20ml)およびブライ ン(20ml)で1回連続して洗った。有機層をNa2SO4で乾燥し、濾過し、そしてエー テルをエバポレートして油状物を得た。粗油状物を、分取HPLC(92%MeOH;40ml/ 分;tR-27.40分)により精製して、15を固体として得た(275mg、74%)。-[α]24 D: +24.6°(CHCl3中 c=0.97)。 C: 計算値、76.48; 実測値 76.52; H: 計算値、7.43、実測値 7.40。D-1,4,5,6- テトラ-O-ベンジル-2-O-ブチル-myo-イノシトール(ent-15) 。ジオー ルent-15での同様な反応および後処理から化合物ent-15を得た。 [α]24 D: +24 .9°(CHCl3中 c=1.00)。スペクトルデータは、エナンチオマー15ついて得られた ものと一致していた。D-3,4,5,6- テトラ-O-ベンジル-2-O-ブチル-1-O-ブチリルmyo-イノシトール(16) 。アルコール15(178mg、298μmol)の乾燥ピリジン(4ml)溶液を、無水酪酸(158μ l、447μmol)およびDMAP(38mg、29μmol)で処理し、そして室温で撹拌した。HPL C分析(90% MeOH; 1.5ml/分;tR=6.40分)でもはや出発物質が見られなかった時点 (18時間)で、反応混合物を減圧下でエバポレートして粗油状物を得た。残留ピリ ジンを除去するために、3回、油状物をオクタンに溶解してエバポレートした。 残渣を、tert-ブチルメチルエーテル(20ml)に溶解し、そしてリン酸緩衝液(10ml )で1回、炭酸水素ナトリウム(10ml)で1回、硫酸水素ナトリウム(10ml)で1回 、リン酸緩衝液(10ml)でもう1回、次いでブライン(10ml)で洗った。有機層をNa2 SO4で乾燥し、そして濾過した。溶媒をエバポレートして純粋な16を油状物とし て得た(176mg、89%)。-[α]24 D: -15.4°(CHCl3中 c=1.00)。 D-1,4,5,6- テトラ-O-ベンジル-3-O-ブチル-2-O-ブチリル-myo-イノシトール(ent -16) 。化合物ent-15を、他のエナンチオマーについて上記されたようにブチリル 化することにより、化合物ent-16を得た。-[α]24 D: +15.9°(CHCl3中 c=1.10) 。スペクトルデータは、エナンチオマー16について得られたものと一致してい た。D-2-O- ブチル-1-O-ブチリル-myo-イノシトール(17) 。化合物16(170mg、255μmol )を、一般的手順において記述したように、水素下、パラジウム(10%)炭素で水 素化し、凍結乾燥後、固体としてテトロール17を得た(75mg、97%)。[α]24 D: +4 1.9°(MeOH中 c=1.10)。C: 計算値、54.89; 実測値 54.90; H: 計算値、8.55、実測値 8.51。D-2-O- ブチル-3-O-ブチリル-myo-イノシトール(ent-17) 。全保護された化合物en t-16 での類似の反応および後処理からテトロールent-17を得た。-[α]24 D: -40. 5°(MeOH中 c=1.00)。スペクトルデータは、エナンチオマー17について得られた ものと一致していた。D-2-O- ブチル-1-O-ブチリル-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキス(ジベンジル) ホスフェート(22) 。化合物17(55mg、178μmol)およびテトラゾール(152mg、2.15 mmol)のアセトニトリル(2ml)溶液を、22時間ジベンジルN,N-ジイソプロピルホス ホルアミダイト(726μl、2.15mmol)と処理し、過酢酸で酸化し、そして記述した ように後処理した。分取HPLC(92% MeOH; 40ml/分; tR=29.00分)で精製して、化 合物22を油状物として得た(192mg、80%)。-[α]24 D: -3.4°(CHCl3中 c=1.02) 。 D-2-O- ブチル-3-O-ブチリル-myo-イノシトール1,4,5,6-テトラキス(ジベンジル) ホスフェート(ent-22) 。化合物22について上記されたように化合物ent-12をホス ファイト化および酸化して、全保護されたホスフェートent-22を得た。[α]24 D: +3.1°(CHCl3中 c=1.10)。スペクトルデータは、エナンチオマー22について得 られたものと一致していた。D-2-O- ブチル-1-O-ブチリル-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホスフェート (23) 。化合物22(190mg、141μmol)を、一般的手順において記述したように、パ ラジウム(10%)炭素で水素化し、凍結乾燥後、固体として表題化合物23を得た(8 7mg、99%)。-[α]24 D: +9.9°(H2O中、pH=1.6で c=1.10) D-2-O- ブチル-3-O-ブチリル-myo-イノシトール1,4,5,6-テトラキスホスフェート (ent-23) 。全保護された基質ent-23を用いた同様な反応により、凍結乾燥後、遊 離酸ent-23を得た。[α]24 D: -9.7°(H2O中、pH=1.6で c=1.00)。スペクトルデ ータは、エナンチオマー23について得られたものと一致していた。D-2-O- ブチル-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホスフェート(6) 。化合物23 (33mg、52μmol)を1MのKOH(453μl)と処理して、pH値を12.8に調整した。溶液を 室温で2日間撹拌した。精製するために、反応混合物を直接イオン交換カラム(Do wex 50 WX 8、H+)に注いだ。凍結乾燥により、化合物6を得た(27mg、93%)。--[ α]24 D:-1.1°(H2O中、pH=1.6で c=0.89)。 D-2-O- ブチル-myo-イノシトール1,4,5,6-テトラキスホスフェート(ent-6)。上記 の方法と同様にして、基質ent-23のブチリル基を加水分解し、テトラキスホス フェートent-6を得た。-[α]24 D: +1.6°(H2O中、pH=1.6で c=0.60)。スペクト ルデータは、エナンチオマー6について得られたものと一致していた。D-2-O- ブチル-1-O-ブチリル-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホスフェート オクタキス(アセトキシメチル)エステル(2) 。DIEA(182μl、1.06mmol)およびア セトキシメチルブロミド(107μl、1.06mmol)を、アセトニトリル(2ml)中の化合 物23(37mg、59μmol)懸濁液に、一般的手順において記述されたように加えた。 分取HPLC(72% MeOH、40ml/分、tR=21.12)により精製して、化合物2をシロップと して得た(33mg、46%)。[α]24 D+1.1°(トルエン中 c=1.07)。 D-2-O- ブチル-3-O-ブチリル-myo-イノシトール1,4,5,6-テトラキスホスフェート オクタキス(アセトキシメチル)エステル(ent-2) 。上記のように、ホスフェートe nt-23 をアルキル化し、オクタキス(アセトキシメチル)エステルent-2を得た。[ α]24 D: 1.3°(トルエン中 c=0.60)。スペクトルデータは、エナンチオマー2に ついて得られたものと一致していた。D-3,4,5,6- テトラ-O-ベンジル-1,2-ジ-O-ブチル-myo-イノシトール(18) 。暗所で 室温で、水素化ナトリウム(13mg、522μmol)を、9(94mg、174μmol)の乾燥DMF(3 ml)溶液に撹拌しながら加えた。混合物を5時間撹拌し、その後ヨウ化1-ブチル(1 20μl、1.04mmol)を加えた。HPLC(95% MeOH; 1.5ml/分; tR=7.26)で生成物を確 認した後、懸濁液を80℃で36時間撹拌した。過剰のヨウ化1-ブチルおよびDMFを 減圧下でエバポレートした。次いで、混合物をtert-ブチルメチルエーテル(30ml )に溶解し、そしてリン酸緩衝液(10ml)で1回、水性ジチオン酸ナトリウム(10ml )およびブライン(10ml)で連続して洗った。有機層をNa2SO4で乾燥し、濾過し、 そしてエーテルをエバポレートして油状物を得た。粗油状物を、分取HPLC(95%M eOH、40ml/分;tR=27.24分)により精製して、表題化合物18を油状物として得た( 100mg、88%)。[α]24 D: +1.3°(CHCl3中 c=1.00)。1H NMR (C42H53O6の計算値 653.384)D-1,4,5,6- テトラ-O-ベンジル-2,3-ジ-O-ブチル-myo-イノシトール(ent-18) 。化 合物ent-9での同様な反応および後処理から化合物ent-18を得た。[α]24 D: 1.2 °(CHCl3中 c=2.20)。スペクトルデータは、エナンチオマー18について得られた ものと一致していた。D-1,2- ジ-O-ブチル-myo-イノシトール(19) 。化合物18(100mg、153μmol)を、一 般的手順において記述したように、水素下、パラジウム(10%)炭素で水素化し、 凍結乾燥後、固体としてテトロール19を得た(40mg、92%)。(エタノールより) [ α]24 D: +18.7°(MeOH中 c=0.80)。 D-2,3- ジ-O-ブチル-myo-イノシトール(ent-19)。全保護された化合物ent-18での 同様な反応および後処理からテトロールent-19を得た。[α]24 D: -18.9°(MeOH 中 c=1.36)。スペクトルデータは、エナンチオマー19について得られたものと一 致していた。D-1,2- ジ-Oブチル-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキス(ジベンジル)ホスフェ ート(24) 。化合物19(40mg、137μmol)およびテトラゾール(115mg、1.64mmol)の アセトニトリル(2ml)溶液を、18時間ジベンジルN,N-ジイソプロピルホスホルア ミダイト(552μl、1.64mmol)で処理し、過酢酸で酸化し、そして記述したように 後処理した。分取HPLC(93% MeOH; 40ml/分; tR=26.05分)で精製して、化合物24 を油状物として得た(133mg、73%)。[α]24 D: -2.3°(CHCl3中 c-1.00)。1H NMR (CDCl3、360MHZ): D-2,3- ジ-O-ブチル-myo-イノシトール1,4,5,6-テトラキス(ジベンジル)ホスフェ ート(ent-24) 。化合物ent-19を、化合物24について上記されたようなホスファイ ト化および酸化することにより、全保護されたホスフェートent-24を得た。[α]24 D : +2.5°(CHCl3中 c=1.15)。スペクトルデータは、エナンチオマー24につい て得られたものと一致していた。D-1,2- ジ-O-ブチル-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホスフェート(7) 。化 合物24(134mg、100μmol)を、一般的手順において記述したように、パラジウム( 10%)炭素で水素化し、凍結乾燥後、固体として表題化合物7を得た(52mg、87%) 。(H2O中、pH=1.6で c=1.10)。 D-2,3- ジ-O-ブチル-myo-イノシトール1,4,5,6-テトラキスホスフェート(ent-7) 。全保護された基質ent-24での同様な反応から、凍結乾燥後、遊離酸ent-7を得 た。(H2O中、pH=1.6で c=1.00)。スペクトルデータは、エナンチオマー7につい て得られたものと一致していた。D-1,2- ジ-O-ブチル-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホスフェートオクタキ ス(アセトキシメチル)エステル(3) 。DIEA(187μl、1.00mmol)およびアセトキシ メチルブロミド(111μl、1.00mmol)を、化合物7(34mg、55μmol)のアセトニトリ ル(2ml)懸濁液に、一般的手順において記述されたように加えた。分取HPLC(73% MeOH、40ml/分、tR=20.40)により精製して、化合物3をシロップとして得た(42mg 、65%)。[α]24 D: -2.3°(トルエン中 c=1.03)。1H NMR([D]8トルエン、360MHZ) : D-2,3- ジ-O-ブチル-myo-イノシトール1,4,5,6-テトラキスホスフェートオクタキ ス(アセトキシメチル)エステル(ent-3) 。上記のように、ホスフェートent-7をア ルキル化し、オクタキス(アセトキシメチル)エステルent-3を得た。[α]24 D: +2 .5°(トルエン中 c=1.10)。スペクトルデータは、エナンチオマー3について得ら れたものと一致していた。rac-1,2- ジ-O-シクロヘキシリデン-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキス(ジベ ンジル)ホスフェート(rac-26) 。化合物rac-25(130mg、500μmol)およびテトラゾ ール(350mg、5.00mmol)のアセトニトリル(6ml)溶液を、26時間ジベンジルN,Nジ イソプロピルホスホルアミダイト(1.68ml、5.00mmol)で処理し、過酢酸で酸化し 、そして記述したように後処理した。分取HPLC(93% MeOH; 40ml/分; tR=22.35分 )で精製して、化合物rac-26を油状物として得た(306mg、47%)。 rac-1,2- ジ-O-シクロヘキシリデン-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホスフ ェート(rac-8)エチル-ジイソプロピルアミノ塩rac-26(91mg、70μmol)を乾燥 エタノール(4ml)に溶解し、それから乾燥エチル-ジイソプロピルアミン(95μl、 560μmol)を加え、続いてパラジウム(10%)炭素(84mg、840μmol)を加えた。こ の溶液を水素雰囲気下、室温で6日間撹拌した後、触媒を限外濾過によって除去 し、そして炉液を凍結乾燥して表題化合物rac-8を得た(108mg、96%)。 rac-1,2- ジ-O-シクロヘキシリデン-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホスフ ェートオクタキス(アセトキシメチル)エステル(rac-4) 。DIEA(205μl、1.20mmol )およびアセトキシメチルブロミド(120μl、1.20mmol)を、化合物rac-8(108mg、 66μmol)のアセトニトリル(2ml)懸濁液に、一般的手順において記述されたよう に加えた。分取HPLC(68% MeOH、40ml/分、tR=19.35)により精製して、化合物rac -4 をシロップとして得た(50mg、65%)。1H NMR([D]8トルエン、360MHZ): rac-3,4,5,6- テトラ-O-ベンジル-2-デオキシ-2-ヨード-1-O-(4-メトキシベンジ ル)-myo-イノシトール(rac-56) 。乾燥rac-55(rac-3,4,5,6-テトラ-O-ベンジル-1 -O-(4-メトキシベンジル)-myo-イノシトール)(1.32g、2mmol)、トリフェニルホ スフィン(2.15g、8.2mmol)、イミダゾール(549mg、8.2mmol)、およびヨウ素(1.5 2g、6mmol)の混合物を、乾燥トルエン(100ml)中41時間還流下で撹拌した。反応 混合物を室温まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100ml)を加え、そし て混合物を10分間撹拌した。ヨウ素を少量ずつ加えた。トルエン相からヨウ素に よる着色が消えなくなってから、さらに15分間撹拌した。過剰のヨウ素を、亜ジ チオン酸ナトリウム水溶液を加えることによって除去した。有機相と水相とを分 液漏斗によって分離し、そして有機層をブラインで(2回)洗った。トルエン相を Na2SO4で乾燥し、濾過した。混合物をエバポレートし、そして再結晶して純粋なrac-56 を得た(1.01g、73%)。Mp.: 131.5℃-132.4℃(メタノールより)。 rac-3,4,5,6- テトラ-O-ベンジル-2-デオキシ-1-O-(4-メトキシベンジル)-myo-イ ノシトール(rac-57) 。化合物rac-56を乾燥トルエン(150ml)に溶解し、そしてAIB N(63mg、355μmmol)およびn-Bu3SnH(1.63ml、6.3mmol)を加えた。溶液を、アル ゴン雰囲気下2時間加熱した。反応混合物を冷却し、リン酸緩衝液(30ml)で1回 、そしてブライン(30ml)で1回洗った。有機層をNa2SO4で乾燥し、濾過した。混 合物をエバポレートし、そして再結晶して57を得た(692mg、76%)。Mp.: 76.2℃ -76.8℃(メタノールより)。 rac-3,4,5,6- テトラ-O-ベンジル-2-デオキシ-myo-イノシトール(58)。化合物rac -57 (600mg、931μmmol)のCH2Cl2(10ml)溶液(少量の水(5%)を含む)に、DDQ(367m g、1.62mmol)を加えた。懸濁液を室温で28分間撹拌した後、HPLC分析(90%MeOH ;1.5ml/分;tR=4.27分)で、反応の完了を確認した。反応混合物を減圧下でエ バポレートし、そして分取HPLC(90%MeOH、40ml/分;20.00分)により精製してra c-58 を固体として得た(232mg、48%)。Mp.: 126.7℃(メタノールより)。 rac-3,4,5,6- テトラ-O-ベンジル-1-O-ブチリル-2-デオキシ-myo-イノシトール(r ac-59)rac-58(186mg、355μmol)、無水酪酸(70μl、426μmol)、およびDMAP(1 2mg、10μmol)の乾燥ピリジン(5ml)溶液を、18時間室温で撹拌した。溶媒を高真 空下でエバポレートして油状物を得た。残留ピリジンは、3回オクタンと共にエ バポレートすることにより除去した。残渣を、tert-ブチルメチルエーテル(30ml )に溶解し、そしてリン酸緩衝液(20ml)で1回、炭酸水素ナトリウム(20ml)で1 回、硫酸水素ナトリウム(20ml)で1回、リン酸緩衝液(20ml)でもう1回、次いで ブライン(20ml)で洗った。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして濾過した。溶媒をエ バポレートして純粋なrac-59を固体として得た(196mg、94%)。Mp.: 110.1℃-110 .3℃(メタノールより)。 rac-1-O- ブチリル-2-デオキシ-myo-イノシトール(rac-60)。化合物rac-59(177mg 、297μmol)を、一般的手順において記述したように、水素下、パラジウム(10% )炭素で水素化し、凍結乾燥後、固体としてテトロールrac-60を得た(68mg、98%) 。Mp.: 174.9℃-175.9℃(エタノールより)。 rac-1-O- ブチリル-2-デオキシ-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキス(ジベンジ ル)ホスフェート(rac-61) 。テトロールrac-60(44mg、190μmol)およびテトラゾ ール(160mg、2.28mmol)のアセトニトリル(2ml)溶液を、36時間ジベンジルN,N-ジイソ プロピルホスホルアミダイト(767μl、2.28mmol)で処理し、過酢酸で酸化し 、そして記述したように後処理した。分取HPLC(92% MeOH; 40ml/分; tR=21.55分 )で精製して、化合物rac-61を油状物として得た(172mg、71%)。 rac-1-O- ブチリル-2-デオキシ-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホスフェー ト(rac-62) 。化合物rac-61(165mg、130μmol)を、一般的手順において記述した ように、パラジウム(10%)炭素で水素化し、凍結乾燥後、固体として表題化合物rac-62 を得た(65mg、90%)。 rac-1-O- ブチリル-2-デオキシ-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホスフェー トオクタキス(アセトキシメチル)エステル(rac-51) 。DIEA(201μl、1.19mmol)お よびアセトキシメチルブロミド(119μl、1.19mmol)を、化合物rac-62(37mg、66 μmol)のアセトニトリル(2ml)懸濁液に、一般的手順において記述されたように 加えた。分取HPLC(69% MeOH、40.00ml/分、tR=12.10)により精製して、化合物ra c-51 をシロップとして得た(31mg、50%)。1H NMR([D]8トルエン、360MHZ): rac-2- デオキシ-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホスフェート(rac-53)。 化合物62を1MのKOH(260μl)と処理して、pH値を12.8に調製した。溶液を室温で2 日間撹拌した。精製するために、反応混合物を直接イオン交換カラム(Dowex 50 WX 8、H+)に注いだ。凍結乾燥により、化合物rac-53を得た。 rac-1-O- ベンジル-6-O-ブチリル-2,3-4,5-ジ-O-シクロヘキシリデン-myo-イノシ トール(rac-100)rac-1-O-ベンジル-2,3-4,5-ジ-O-シクロヘキシリデン-myo-イ ノシトール(200mg、465μmol)、無水酪酸(144μl、571μmol)、およびDMAP(6mg 、50μmol)の乾燥ピリジン(3ml)溶液を、36時間室温で撹拌した。溶媒を高真空 下でエバポレートして油状物を得た。残留ピリジンは、3回オクタンと共にエバ ポレートすることにより除去した。残渣を、tert-ブチルメチルエーテル(40ml) に溶解し、そしてリン酸緩衝液(20ml)で1回、炭酸水素ナトリウム(20ml)で1回 、硫酸水素ナトリウム(20ml)で1回、リン酸緩衝液(20ml)でもう1回、次いでブ ライン(20ml)で1回洗った。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして濾過した。 溶媒をエバポレートして純粋なrac-100を油状物として得た(186mg、80%)。 rac-1-O- ベンジル-6-O-ブチリル-myo-イノシトール(rac-101)rac-100(186mg、 372μmol)のCH3CN/H2O(100:1、8ml)溶液を、トリフルオロ酢酸(4ml)と共に、室 温で2時間撹拌した。溶媒を、高真空でエバポレートして表題化合物rac-101を油 状物として得た(125mg、98%)。 rac-1-O- ベンジル-6-O-ブチリル-myo-イノシトール2,3,4,5-テトラキス(ジベン ジル)ホスフェート(rac-102) 。化合物rac-101(145mg、426μmol)およびテトラゾ ール(358mg、5.11mmol)のアセトニトリル(3ml)溶液を、22時間ジベンジルN,N-ジ イソプロピルホスホルアミダイト(1.72ml、5.11mmol)と処理し、過酢酸で酸化し 、そして記述したように後処理した。分取HPLC(94% MeOH; 40ml/分; tR=22.40分 )で精製して、化合物rac-102を油状物として得た(297mg、50%)。 rac-6-O- ブチリル-myo-イノシトール2,3,4,5-テトラキスホスフェート(rac-103) 。化合物rac-102(290mg、210μmol)を、一般的手順において記述したように、パ ラジウム(10%)炭素で水素化し、凍結乾燥後、固体として表題化合物rac-103を 得た(119mg、99%)。1H NMR rac-1-O-[1,2- ジパルミトイル-sn-グリセロール]-6-O-ブチリル-myo-イノシトー ル3,4,5-トリスホスフェートヘキサキス(アセトキシメチル)エステル(rac-104) 。DIEA(190μl、1.12mmol)およびアセトキシメチルブロミド(126μl、1.26mmol) を、 化合物rac-103(40mg、70μmol)の乾燥アセトニトリル(1.5ml)懸濁液に加えた。 暗所で室温で3時間撹拌した後、1,2- ジパルミトイル-sn-グリセロール(20mg、35 μmol)を加え、そして溶液を暗所で4℃で4日間撹拌した。溶媒を高真空下でエバ ポレートし、そして粗残渣をトルエンで抽出し、表題化合物rac-104をシロップ として得た。rac-1-O-[1,2- ジオクタノイル-sn-グリセロール]-6-O-ブチリル-myo-イノシトー ル3,4,5-トリスホスフェートヘキサキス(アセトキシメチル)エステル(rac-105) 。DIEA(136μl、800μmol)およびアセトキシメチルブロミド(90μl、900μmol) を、化合物rac-103(28mg、50μmol)の乾燥アセトニトリル(1.5ml)懸濁液に加え た。暗所で室温で3時間撹拌した後、1,2- ジパルミトイル-sn-グリセロール(23mg 、70μmol)を加え、そして溶液を暗所で4℃で4日間撹拌した。溶媒を高真空下で エバポレートし、そして粗残渣をトルエンで抽出し、表題化合物rac-105をシロ ップとして得た。 材料 - 全ての化学試薬は入手可能な最高純度のものを用いた。必要な場合には 、溶媒は使用前に乾燥および/または蒸留した。アセトニトリルは、ジメチルホ ルムアミド(DMF)でするように、酸化リン(V)から蒸留し、そして3Åのモレキュ ラーシーブと共に保存した。ピリジンおよびトルエンは4Åのモレキュラーシー ブと共に保存した。エチル-ジイソプロピルアミン(DIEA)はナトリウム線で乾燥 した。パラジウム炭素(10%)およびトリフルオロ酢酸は、Acros Chemieから入手 した。ジベンジルN,N-ジイソプロピルホスホルアミダイト、過酢酸(32% v/w)、 テトラゾール、およびアセトキシメチルブロミドは、Aldrichから入手した。無 水酪酸、DIEAは、Merckから入手した。臭化ベンジル、フッ化セシウム、および4 -ジメチルアミノピリジン(DMAP)は、Flukaから入手した。その他の試薬は全てRi myo-イノシトール(1)は、以前述べられているように、myo-イノシトールから3 工程で合成された(Angyalら、J .Chem.Soc. 4116(1961); JiangおよびBaker Ca rbohydr .Chem .5:615(1986))。これらはそれぞれ本明細書中で参考として援用 される。全ての化合物はラセミ体である。3,4- ジ-O-ベンジル-5,6-ジ-O-ブチリル-1,2-シクロヘキシリデン-myo-イノシト ール(152) 。151(130mg、295μmol)、無水酪酸(193μl、1.18mmol)、およびDMAP( 40mg、33μmol)の乾燥ピリジン(2ml)溶液を、2日間室温で撹拌した。溶媒を高真 空下でエバポレートして油状物を得た。残留ピリジンは、3回オクタンと共にエ バポレートすることにより除去した。残渣を、tert-ブチルメチルエーテル(10ml )に溶解し、そしてリン酸緩衝液(10ml)で1回、炭酸水素ナトリウム(10ml)で1 回、硫酸水素ナトリウム(10ml)で1回、リン酸緩衝液(10ml)でもう1回、次いで ブライン(10ml)で1回洗った。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして濾過した。溶媒 をエバポレートして純粋な152を油状物として得た(171mg、98%)。1H NMR(M + H)+(C34H45O8の計算値 581.311)。3,4- ジ-O-ベンジル-5,6-ジ-O-ブチリル-myo-イノシトール(153)152(166mg、28 6μmol)のCH3CN/H2O(100:1、5ml)溶液を、トリフルオロ酢酸(2ml)と共に、室温 で2時間撹拌した。反応混合物を減圧下でエバポレートし、そして生成物をtert- ブチルメチルエーテルで抽出した。有機層をブラインで洗い、Na2SO4で乾燥し、 濾過し、そしてエバポレートして153を油状物として得た(140mg、99%)。 539.207(M + H)+(C34H45O8Kの計算値 581.311)。1,3,4- トリ-O-ベンジル-5,6-ジ-O-ブチリル-myo-イノシトール(154) 。乾燥153(1 43mg、286μmol)および乾燥酸化ジブチルスズ(71mg、300μmol)を、活性化モレ キュラーシーブ(3Å)を入れたソックスレー装置中4時間、乾燥トルエン(100ml) 中で加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却し、減圧下で乾固するまでエバポ レートした。油状残渣にCsF(92mg、572μmol)を加え、そして混合物を2時間高真 空下に保った。残渣のシロップを、アルゴン下乾燥DMF(5ml)に溶解し、臭化ベン ジル(270μl、2.28mmol)を加えた。溶液を18時間撹拌した後、HPLC(RP 18材料(M erck、Lichrosorb;10μm)を充填したMerck Hibar鋼管(250mm x 4mm))分析(95%M eOH;1.5ml/分;tR=3.20分)では、それ以上の反応は見られなかった。過剰の臭 化ベンジルおよびDMFを高真空で除去した。粗生成物を分取HPLC(RP 18材料(Merc k、LiChrospher;10μm)を充填したMerck Prepbarスチールカラム(250mm x 50mm) )(88%MeOH;40ml/分;tR=17.20分)によるクロマトグラフィーを行い、化合物15 4 を固体として得た(448mg、75%)。 (C35H42O8Naの計算値 613.278)。1,3,4- トリ-O-ベンジル-2,5,6-トリ-O-ブチリル-myo-イノシトール(155)154(9 8mg、166μmol)、無水酪酸(68μl、415μmol)、およびDMAP(5mg、4μmol)の乾燥 ピリジン(2ml)溶液を、2時間室温で撹拌した。化合物2について上記したように 同様に後処理して、純粋な155を油状物として得た(106mg、99%)。(C29H49O9の計算値 661.334)。2,5,6- トリ-O-ブチリル-myo-イノシトール(156)155(105mg、159μmol)を酢酸( 3ml)に溶解し、それからパラジウム(10%)炭素(80mg、795μmol)を加えた。溶液 を水素雰囲気下室温で6時間撹拌した後、触媒を限外濾過によって除去し、そし て炉液を凍結乾燥して表題化合物156を得た(53mg、86%)。Mp: 113.4℃-114.4℃ (MeOHより)。 C18H30O9について:分析計算値: C、55.37; H、7.74。実測値: C、55.43; H、7.8 4。2,5,6- トリ-O-ブチリル-myo-イノシトール1,3,4-トリス(ジベンジル)ホスフェー ト(157) 。トリオール156(48mg、123μmol)およびテトラゾール(104mg、1048mmol )のアセトニトリル(2ml)溶液を、18時間ジベンジルN,N-ジイソプロピルホスホル アミダイト(500μl、1.48mmol)と処理し、-40℃まで冷却し、そして激しく撹拌 しながら過酢酸(32%v/w、340ml、1.48mmol)で酸化した(YuおよびFraiser-Reid 、Tetrahedron Lett. 29:979(1989))。これは、本明細書中で参考として援用さ れる。混合物を室温まで昇温した。溶媒を減圧下で除去し、油状残渣を分取HPLC (92% MeOH; 40ml/分 ;tR=17.50分)で精製して、化合物157を油状物として得た(1 04mg、72%)。 2,5,6- トリ-O-ブチリル-myo-イノシトール1,3,4-トリスホスフェート(158)。遊 離酸157(100mg、85μmol)を、上記のように水素化し、凍結乾燥後、表題化合物1 58 を得た(47mg、88%)。 2,5,6- トリ-O-ブチリル-myo-イノシトール1,3,4-トリスホスフェートヘキサキス (アセトキシメチル)エステル(159) 。DIEA(209μl、1.23mmol)およびアセトキシ メチルブロミド(123μl、1.23mmol)を、化合物158(39mg、61μmol)の乾燥アセト ニトリル(2ml)懸濁液に加えた。暗所で室温で4日間撹拌した後、全揮発性成分を 減圧下でエバポレートし、そして粗残渣を分取HPLC(73% MeOH、40ml/分、tR=20. 25分)で精製して、化合物159をシロップとして得た(44mg、67%)。 本発明は、上記に提供された実施例を参照して記述しているが、種々の改変が 、本発明の意図から逸脱することなく成され得ることが理解されるべきである。 従って、本発明は請求の範囲によってのみ制限される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S D,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG ,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT ,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA, CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,F I,GB,GE,GH,HU,IL,IS,JP,KE ,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS, LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN,MW,M X,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE ,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT, UA,UG,UZ,VN,YU,ZW (71)出願人 ユニバーシティ オブ カリフォルニア, サンディエゴ アメリカ合衆国 カリフォルニア 92093 ―0910,ラ ホヤ,ジルマン ドライブ 9500,テクノロジー トランスファー オ フィス (72)発明者 トライノア―カプラン, アレクシス アメリカ合衆国 カリフォルニア 92129, サンディエゴ,カレ ジュアニト 15050 (72)発明者 シュルツ, カーステン ドイツ国 デー28211 ブレーメン, オ ルレアン シュトラーセ 34 (72)発明者 ローマー, ステファン ドイツ国 デー28211 ブレーメン, ア ン デア ゲーテ 27 (72)発明者 シュタットラー, クリストフ ドイツ国 デー28199 ブレーメン, フ リードリッヒ―エベルト―シュトラーセ 27 (72)発明者 ルドルフ, マルコ ドイツ国 デー27386 ヘムスリンゲン, ディーペンナー シュトラーセ 10

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.イノシトールポリホスフェートの細胞浸透性アンタゴニストであって、myo- イノシトール3,4,5,6-テトラキスホスフェートのアルキルもしくはアルキリデン 誘導体、または該誘導体の模倣物を含む、アンタゴニスト。 2.前記誘導体が、1-O-アルキル、2-O-アルキル、および1,2-ジ-O-アルキル誘 導体からなる群から選択されるアルキル誘導体である、請求項1に記載の細胞浸 透性アンタゴニスト。 3.前記アルキルが独立してブチルである、請求項2に記載のアルキル誘導体。 4.前記誘導体が、1,2-ジ-O-アルキル-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホ スフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項2に記載のア ルキル誘導体。 5.前記アルキルが独立してブチルである、請求項4に記載のアルキル誘導体。 6.前記誘導体が、1,2-ジ-O-ブチル-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホス フェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項5に記載のアル キル誘導体。 7.前記誘導体が、2-O-アシル-1-O-アルキル-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラ キスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項2に記 載のアルキル誘導体。 8.前記アシルがブチリルである、請求項7に記載のアルキル誘導体。 9.前記アルキル誘導体が独立してブチルである、請求項7に記載のアルキル誘 導体。 10.前記誘導体が、1-O-ブチル-2-O-ブチリル-myo-イノシトール3,4,5,6-テト ラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項9に 記載のアルキル誘導体。 11.前記誘導体が、2-O-アルキル-1-O-アシル-myo-イノシトール3,4,5,6-テト ラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項2に 記載のアルキル誘導体。 12.前記誘導体が、2-O-アルキル-1-O-ブチリル-myo-イノシトール3,4,5,6-テ トラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項1 1に記載のアルキル誘導体。 13.前記アルキルが独立してブチルである、請求項12に記載のアルキル誘導 体。 14.前記誘導体が1,2-ジ-O-アルキリデン誘導体である、請求項1に記載の細 胞浸透性アンタゴニスト。 15.前記誘導体が、D,L-1,2-ジ-O-シクロヘキシリデン-myo-イノシトール3,4, 5,6-テトラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請 求項14に記載のアルキリデン誘導体。 16.ホスファチジルイノシトール3,4,5-トリスホスフェートの細胞浸透性アン タゴニストであって、但し該アンタゴニストは、1,2-ジ-O-ブチリル-myo-イノシ トール1,4,5,6-テトラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステル でない、アンタゴニスト。 17.細胞からの塩化物イオン分泌を増強するための方法であって、該細胞をイ ノシトールポリホスフェートの細胞浸透性アンタゴニストと接触させる工程を包 含し、ここで、該アンタゴニストはイノシトールポリホスフェート誘導体または その模倣物である、方法。 18.前記イノシトールポリホスフェートが、myo-イノシトール3.4,5,6-テトラ キスホスフェートである、請求項17に記載の方法。 19.前記細胞浸透性アンタゴニストが、myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキス ホスフェートの誘導体である、請求項18に記載の方法。 20.前記誘導体が、1-O-アルキル、2-O-アルキル、および1,2-ジ-O-アルキル 誘導体からなる群から選択されるアルキル誘導体である、請求項19に記載の方 法。 21.前記アルキルが独立してメチルまたはブチルである、請求項20に記載の 方法。 22.前記アルキル誘導体が、1,2-ジ-O-アルキル-myo-イノシトール3,4,5,6-テ トラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項2 0に記載の方法。 23.前記アルキルが独立してメチルまたはブチルである、請求項22に記載の 方法。 24.前記アルキル誘導体が、1,2-ジ-O-ブチル-myo-イノシトール3,4,5,6-テト ラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項23 に記載の方法。 25.前記アルキル誘導体が、2-O-アシル-1-O-アルキル-myo-イノシトール3,4, 5,6-テトラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請 求項20に記載の方法。 26.前記アシルがブチリルである、請求項25に記載の方法。 27.前記アルキルが独立してメチルまたはブチルである、請求項25に記載の 方法。 28.前記アルキル誘導体が、2-O-ブチリル-1-O-メチル-myo-イノシトール3,4, 5,6-テトラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請 求項27に記載の方法。 29.前記アルキル誘導体が、1-O-ブチル-2-O-ブチリル-myo-イノシトール3,4, 5,6-テトラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請 求項27に記載の方法。 30.前記アルキル誘導体が、2-O-アルキル-1-O-アシル-myo-イノシトール3,4, 5,6-テトラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請 求項20に記載の方法。 31.前記アルキル誘導体が、2-O-アルキル-1-O-ブチリル-myo-イノシトール3, 4,5,6-テトラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、 請求項30に記載の方法。 32.前記アルキルが独立してメチルまたはブチルである。請求項31に記載の 方法。 33.前記誘導体が、1,2-ジ-O-アルキリデン誘導体である、請求項19に記載 の方法。 34.前記アルキリデン誘導体が、D,L-1,2-ジ-O-シクロヘキシリデン-myo-イノ シトール3,4,5,6-テトラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステ ルである、請求項33に記載の方法。 35.前記イノシトールポリホスフェートが、ホスファチジルイノシトール3,4, 5-トリスホスフェートである、請求項17に記載の方法。 36.前記細胞浸透性アンタゴニストが、myo-イノシトール1,4,5,6-テトラキス ホスフェートの誘導体である、請求項35に記載の方法。 37.前記誘導体が、1,2-ジ-O-アシル-myo-イノシトール1,4,5,6-テトラキスホ スフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項36に記載の 方法。 38.前記誘導体が、1,2-ジ-O-ブチリル-myo-イノシトール1,4,5,6-テトラキス ホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項37に記載 の方法。 39.個体における塩化物イオン分泌を増強するための方法であって、該個体に イノシトールポリホスフェートの細胞浸透性アンタゴニストを投与する工程を包 含し、ここで、該アンタゴニストはイノシトールポリホスフェート誘導体または その模倣物である、方法。 40.前記イノシトールポリホスフェートがmyo-イノシトール3,4,5,6-テトラキ スホスフェートである、請求項39に記載の方法。 41.前記細胞浸透性アンタゴニストがmyo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホ スフェートの誘導体である、請求項40に記載の方法。 42.前記誘導体が、1-O-アルキル、2-O-アルキル、および1,2-ジ-O-アルキル 誘導体からなる群から選択されるアルキル誘導体である、請求項41に記載の方 法。 43.前記アルキルが独立してメチルまたはブチルである、請求項42に記載の 方法。 44.前記アルキル誘導体が、1,2-ジ-O-アルキル-myo-イノシトール3,4,5,6-テ トラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項4 2に記載の方法。 45.前記アルキルが独立してメチルまたはブチルである、請求項44に記載の 方法。 46.前記アルキル誘導体が、1,2-ジ-O-ブチル-myo-イノシトール3,4,5,6-テト ラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項45 に記載の方法。 47.前記アルキル誘導体が、2-O-アシル-1-O-アルキル-myo-イノシトール(3, 4,5,6)テトラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである 、請求項42に記載の方法。 48.前記アシルがブチリルである、請求項47に記載の方法。 49.前記アルキルが独立してメチルまたはブチルである、請求項47に記載の 方法。 50.前記アルキル誘導体が、2-O-ブチリル-1-O-メチル-myo-イノシトール3,4, 5,6-テトラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請 求項49に記載の方法。 51.前記アルキル誘導体が、1-O-ブチル-2-O-ブチリル-myo-イノシトール3,4, 5,6-テトラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請 求項49に記載の方法。 52.前記アルキル誘導体が、2-O-アルキル-1-O-アシル-myo-イノシトール3,4, 5,6-テトラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請 求項42に記載の方法。 53.前記アルキル誘導体が、2-O-アルキル-1-O-ブチリル-myo-イノシトール3, 4,5,6-テトラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、 請求項52に記載の方法。 54.前記アルキルが独立してメチルまたはブチルである。請求項53に記載の 方法。 55.前記誘導体が、1,2-ジ-O-アルキリデン誘導体である、請求項41に記載 の方法。 56.前記アルキリデン誘導体が、D,L-1,2-ジ-O-シクロヘキシリデン(cylcohex ylidene)-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホスフェートオクタキス(アセト キシメチル)エステルである、請求項55に記載の方法。 57.前記イノシトールポリホスフェートが、ホスファチジルイノシトール3,4, 5-トリスホスフェートである、請求項39に記載の方法。 58.前記細胞浸透性アンタゴニストが、myo-イノシトール1,4,5,6-テトラキス ホスフェートの誘導体である、請求項57に記載の方法。 59.前記誘導体が、1,2-ジ-O-アシル-myo-イノシトール1,4,5,6-テトラキスホ スフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項58に記載の 方法。 60.前記誘導体が、1,2-ジ-O-ブチリル-myo-イノシトール1,4,5,6-テトラキス ホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項59に記載 の方法。 61.個体において嚢胞性線維症に関連する徴候または症状を軽減するための方 法であって、イノシトールポリホスフェートの細胞浸透性アンタゴニストを該個 体に投与する工程を包含し、ここで、該アンタゴニストはイノシトールポリホス フェート誘導体またはその模倣物である、方法。 62.前記徴候または症状が肺不全である、請求項61に記載の方法。 63.前記投与工程が吸入を介する、請求項61に記載の方法。 64.前記徴候または症状が、腸不全または膵不全からなる群から選択される、 請求項61に記載の方法。 65.前記イノシトールポリホスフェートが、myo-イノシトール3,4,5,6-テトラ キスホスフェートである、請求項61に記載の方法。 66.前記細胞浸透性アンタゴニストが、myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキス ホスフェートの誘導体である、請求項65に記載の方法。 67.前記誘導体が、1-O-アルキル、2-O-アルキル、および1,2-ジ-O-アルキル 誘導体からなる群から選択されるアルキル誘導体である、請求項66に記載の方 法。 68.前記アルキルが独立してメチルまたはブチルである、請求項67に記載の 方法。 69.前記アルキル誘導体が、1,2-ジ-O-アルキル-myo-イノシトール3,4,5,6-テ トラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項6 7に記載の方法。 70.前記アルキルが独立してメチルまたはブチルである、請求項69に記載の 方法。 71.前記アルキル誘導体が、1,2-ジ-O-ブチル-myo-イノシトール3,4,5,6-テト ラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項70 に記載の方法。 72.前記アルキル誘導体が、2-O-アシル-1-O-アルキル-myo-イノシトール3,4, 5,6-テトラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請 求項67に記載の方法。 73.前記アシルがブチリルである、請求項72に記載の方法。 74.前記アルキルが独立してメチルまたはブチルである、請求項72に記載の 方法。 75.前記アルキル誘導体が、2-O-ブチリル-1-O-メチル-myo-イノシトール3,4, 5,6-テトラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、 請求項74に記載の方法。 76.前記アルキル誘導体が、1-O-ブチル-2-O-ブチリル-myo-イノシトール3,4, 5,6-テトラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請 求項74に記載の方法。 77.前記アルキル誘導体が、2-O-アルキル-1-O-アシル-myo-イノシトール3,4, 5,6-テトラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請 求項67に記載の方法。 78.前記アルキル誘導体が、2-O-アルキル-1-O-ブチリル-myo-イノシトール( 3,4,5,6)-テトラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルであ る、請求項77に記載の方法。 79.前記アルキルが独立してメチルまたはブチルである。請求項78に記載の 方法。 80.前記誘導体が、1,2-ジ-O-アルキリデン誘導体である、請求項66に記載 の方法。 81.前記アルキリデン誘導体が、D,L-1,2-ジ-シクロヘキシリデン(cylcohexyl idene)-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホスフェートオクタキス(アセトキ シメチル)エステルである、請求項80に記載のアルキリデン誘導体。 82.前記イノシトールポリホスフェートが、ホスファチジルイノシトール3,4, 5-トリスホスフェートである、請求項61に記載の方法。 83.前記細胞浸透性アンタゴニストが、myo-イノシトール1,4,5,6-テトラキス ホスフェートの誘導体である、請求項82に記載の方法。 84.前記誘導体が、1,2-ジ-O-アシル-myo-イノシトール1,4,5,6-テトラキスホ スフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項83に記載の 方法。 85.前記誘導体が、1,2-ジ-O-ブチリル-myo-イノシトール1,4,5,6-テトラキス ホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項84に記載 の方法。 86.イノシトールポリホスフェートの細胞浸透性アゴニストであって、イノシ トールポリホスフェート誘導体またはその模倣物を含む、アゴニスト。 87.前記イノシトールポリホスフェートが、myo-イノシトール3,4,5,6-テトラ キスホスフェートである、請求項86に記載の細胞浸透性アゴニスト。 88.前記細胞浸透性アゴニストが、myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホス フェートの誘導体である、請求項87に記載の細胞浸透性アゴニスト。 89.前記誘導体が、D,L-1-O-ブチリル-2-O-デオキシ-イノシトール3,4,5,6-テ トラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチチル)エステルである、請求項 88に記載の誘導体。 90.前記細胞浸透性アゴニストが、myo-イノシトール1,3,4-トリスホスフェー トの誘導体である、請求項87に記載の細胞浸透性アゴニスト。 91.前記誘導体が、D,L-2,5,6-トリ-O-アシル-myo-イノシトール1,3,4-トリス ホスフェートヘキサキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項90に記載 の誘導体。 92.前記誘導体が、D,L-2,5,6-トリ-O-ブチリル-myo-イノシトール1,3,4-トリ スホスフェートヘキサキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項91に記 載の誘導体。 93.前記イノシトールポリホスフェートが、ホスファチジルイノシトール3,4, 5-トリスホスフェートである、請求項86に記載の細胞浸透性アゴニスト。 94.前記細胞浸透性アゴニストが、ホスファチジルイノシトール3,4,5-トリス ホスフェートの誘導体である、請求項93に記載の細胞浸透性アゴニスト。 95.前記誘導体が、ジーパルミトイル-D,L-O-アシル-ホスファチジルイノシト ール3,4,5-トリスホスフェートヘプタキス(アセトキシメチル)エステルである、 請求項94に記載の誘導体。 96.前記誘導体が、sn-ジ-O-パルミトイル-D,L-6-O-ブチリル-ホスファチジル イノシトール3,4,5-トリスホスフェートヘプタキス(アセトキシメチル)エステル である、請求項95に記載の誘導体。 97.前記誘導体が、sn-ジ-O-オクタノイル-D,L-6-O-ブチリル-ホスファチジル イノシトール3,4,5-トリスホスフェートヘプタキス(アセトキシメチル)エステル である、請求項94に記載の誘導体。 98.細胞からの塩化物イオン分泌を減少させるための方法であって、該細胞を 、請求項86に記載の細胞浸透性アゴニストと接触させる工程を包含する、方法 。 99.前記イノシトールポリホスフェートが、myo-イノシトール3,4,5,6-テトラ キスホスフェートである、請求項98に記載の方法。 100.前記細胞浸透性アゴニストが、myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホ スフェートの誘導体である、請求項99に記載の方法。 101.前記誘導体が、1,2-ジ-O-アシル-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキス ホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項100に記 載の方法。 102.前記誘導体が、1,2-ジ-O-ブチリル-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキ スホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項101に 記載の方法。 103.前記誘導体が、1,2-ジ-O-ブチリル-scyllo-イノシトール3,4,5,6-テト ラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項10 1に記載の方法。 104.前記誘導体が、D,L-1-O-ブチリル-2-O-デオキシ-イノシトール3,4,5,6- テトラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項 100に記載の方法。 105.前記細胞浸透性アゴニストが、myo-イノシトール1,3,4-トリスホスフェ ートの誘導体である、請求項99に記載の方法。 106.前記誘導体が、D,L-2,5,6-トリ-O-アシル-myo-イノシトール1,3,4-トリ スホスフェートヘキサキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項105に 記載の方法。 107.前記誘導体が、D,L-2,5,6-トリ-O-ブチリル-myo-イノシトール1,3,4-ト リスホスフェートヘキサキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項106 に記載の方法。 108.前記イノシトールポリホスフェートが、ホスファチジルイノシトール3, 4,5-トリスホスフェートである、請求項98に記載の方法。 109.前記細胞浸透性アゴニストが、ホスファチジルイノシトール3,4,5-トリ スホスフェートの誘導体である、請求項108に記載の方法。 110.前記誘導体が、ジ-パルミトイル-D,L-O-アシル-ホスファチジルイノシ トール3,4,5-トリスホスフェートヘプタキス(アセトキシメチル)エステルである 、請求項109に記載の方法。 111.前記誘導体が、sn-ジ-O-パルミトイル-D,L-6-O-ブチリル-ホスファチジ ルイノシトール3,4,5-トリスホスフェートヘプタキス(アセトキシメチル)エステ ルである、請求項110に記載の方法。 112.前記誘導体が、sn-ジ-O-オクタノイル-D,L-6-O-ブチリル-ホスファチジ ルイノシトール3,4,5-トリスホスフェートヘプタキス(アセトキシメチル)エステ ルである、請求項109に記載の方法。 113.個体における塩化物イオン分泌を減少させるための方法であって、請求 項86に記載の細胞浸透性アゴニストを該個体に投与する工程を包含する、方法 。 114.前記イノシトールポリホスフェートが、、myo-イノシトール3,4,5,6-テ トラキスホスフェートである、請求項113に記載の方法。 115.前記細胞浸透性アゴニストが、myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホ スフェートの誘導体である、請求項114に記載の方法。 116.前記誘導体が、1,2-ジ-O-アシル-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキス ホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項115に 記載の方法。 117.前記誘導体が、1,2-ジ-O-ブチリル-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキ スホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項116に 記載の方法。 118.前記誘導体が、1,2-ジ-O-ブチリル-scyllo-イノシトール3,4,5,6-テト ラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項11 6に記載の方法。 119.前記誘導体が、D,L-1-O-ブチリル-2-O-デオキシ-イノシトール3,4,5,6- テトラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチチル)エステルである、請求 項115に記載の方法。 120.前記細胞浸透性アゴニストが、myo-イノシトール1,3,4-トリスホスフェ ートの誘導体である、請求項114に記載の方法。 121.前記誘導体が、D,L-2,5,6-トリ-O-アシル-myo-イノシトール1,3,4-トリ スホスフェートヘキサキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項120に 記載の方法。 122.前記誘導体が、D,L-2,5,6-トリ-O-ブチリル-myo-イノシトール1,3,4-ト リスホスフェートヘキサキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項121 に記載の方法。 123.前記イノシトールポリホスフェートが、ホスファチジルイノシトール3, 4,5-トリスホスフェートである、請求項113に記載の方法。 124.前記細胞浸透性アゴニストが、ホスファチジルイノシトール3,4,5-トリ スホスフェートの誘導体である、請求項123に記載の方法。 125.前記誘導体が、ジ-パルミトイル-D,L-O-アシル-ホスファチジルイノシ トール3,4,5-トリスホスフェートヘプタキス(アセトキシメチル)エステルである 、請求項124に記載の方法。 126.前記誘導体が、sn-ジ-O-パルミトイル-D,L-6-O-ブチリル-ホスファチジ ルイノシトール3,4,5-トリスホスフェートヘプタキス(アセトキシメチル)エステ ルである、請求項125に記載の方法。 127.前記誘導体が、sn-ジ-O-オクタノイル-D,L-6-O-ブチリル-ホスファチジ ルイノシトール3,4,5-トリスホスフェートヘプタキス(アセトキシメチル)エステ ルである、請求項124に記載の誘導体。 128.個体において分泌性下痢に関連する徴候または症状を軽減するための方 法であって、請求項86に記載の細胞浸透性アゴニストを該個体に投与する工程 を包含する、方法。 129.前記イノシトールポリホスフェートが、myo-イノシトール3,4,5,6-テト ラキスホスフェートである、請求項128に記載の方法。 130.前記細胞浸透性アゴニストが、myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホ スフェートの誘導体である、請求項129に記載の方法。 131.前記誘導体が、1,2-ジ-O-アシル-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキス ホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項130に記 載の方法。 132.前記誘導体が、1,2-ジ-O-ブチリル-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキ スホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項131に 記載の方法。 133.前記誘導体が、1,2-ジ-O-ブチリル-scyllo-イノシトール3,4,5,6-テト ラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項13 1に記載の方法。 134.前記誘導体が、D,L-1-O-ブチリル-2-O-デオキシ-イノシトール3,4,5,6- テトラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項 130に記載の方法。 135.前記アゴニストが、myo-イノシトール1,3,4-トリスホスフェートの誘導 体である、請求項129に記載の方法。 136.前記誘導体が、D,L-2,5,6-トリ-O-アシル-myo-イノシトール1,3,4-トリ スホスフェートヘキサキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項135に 記載の方法。 137.前記誘導体が、D,L-2,5,6-トリ-O-ブチリル-myo-イノシトール1,3,4-ト リスホスフェートヘキサキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項136 に記載の方法。 138.前記イノシトールポリホスフェートが、ホスファチジルイノシトール3, 4,5-トリスホスフェートである、請求項128に記載の方法。 139.前記細胞浸透性アゴニストが、ホスファチジルイノシトール3,4,5-トリ スホスフェートの誘導体である、請求項138に記載の方法。 140.前記誘導体が、ジーパルミトイル-D,L-O-アシル-ホスファチジルイノシ トール3,4,5-トリスホスフェートヘプタキス(アセトキシメチル)エステルである 、請求項139に記載の方法。 141.前記誘導体が、sn-ジ-O-パルミトイル-D,L-6-O-ブチリル-ホスファチジ ルイノシトール3,4,5-トリスホスフェートヘプタキス(アセトキシメチル)エステ ルである、請求項140に記載の方法。 142.前記誘導体が、sn-ジ-O-オクタノイル-D,L-6-O-ブチリル-ホスファチジ ルイノシトール3,4,5-トリスホスフェートヘプタキス(アセトキシメチル)エステ ルである、請求項139に記載の方法。 143.個体において脳肥大に関連する徴候または症状を軽減するための方法で あって、請求項86に記載の細胞浸透性アゴニストを該個体に投与する工程を包 含する、方法。 144.前記イノシトールポリホスフェートが、myo-イノシトール3,4,5,6-テト ラキスホスフェートである、請求項143に記載の方法。 145.前記細胞浸透性アゴニストが、myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホ スフェートの誘導体である、請求項144に記載の方法。 146.前記誘導体が、1,2-ジ-O-アシル-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキス ホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項145に記 載の方法。 147.前記誘導体が、1,2-ジ-O-ブチリル-myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキ スホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項146に 記載の方法。 148.前記誘導体が、1,2-ジ-O-ブチリル-scyllo-イノシトール3,4,5,6-テト ラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項14 6に記載の方法。 149.前記誘導体が、D,L-O-ブチリル-2-O-デオキシ-イノシトール3,4,5,6-テ トラキスホスフェートオクタキス(アセトキシメチチル)エステルである、請求項 145に記載の方法。 150.前記アゴニストが、myo-イノシトール3,4,5,6-テトラキスホスフェート である、請求項144に記載の方法。 151.前記誘導体が、D,L-2,5,6-トリ-O-アシル-O-myo-イノシトール1,3,4-ト リスホスフェートヘキサキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項150 に記載の方法。 152.前記誘導体が、D,L-2,5,6-トリ-O-ブチリル-O-myo-イノシトール1,3,4- トリスホスフェートヘキサキス(アセトキシメチル)エステルである、請求項15 1に記載の方法。 153.前記イノシトールポリホスフェートが、ホスファチジルイノシトール3, 4,5-トリスホスフェートである、請求項143に記載の方法。 154.前記アゴニストが、ホスファチジルイノシトール3,4,5-トリスホスファ ートの誘導体である、請求項153に記載の方法。 155.前記誘導体が、ジーパルミトイル-D,L-O-アシル-ホスファチジルイノシ トール3,4,5-トリスホスフェートヘプタキス(アセトキシメチル)エステルである 、請求項154に記載の方法。 156.前記誘導体が、sn-ジ-パルミトイル-D,L-6-O-ブチリル-ホスファチジル イノシトール3,4,5-トリスホスフェートヘプタキス(アセトキシメチル)エステル である、請求項155に記載の方法。 157.前記誘導体が、sn-ジ-O-オクタノイル-D,L-6-O-ブチリル-ホスファチジ ルイノシトール3,4,5-トリスホスフェートヘプタキス(アセトキシメチル)エステ ルである、請求項154に記載の方法。
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