JP2002501742A - 単純ヘルペスウイルス変異体およびその使用方法 - Google Patents

単純ヘルペスウイルス変異体およびその使用方法

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ラッチマン、デヴィッド、セイモア
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、機能的なICP27遺伝子を有し、かつ少なくとも機能的なICP4遺伝子および機能的なICP34.5遺伝子を欠損する単純ヘルペスウイルス株を提供する。本発明はまた、哺乳動物の神経系の疾患または損傷の治療における、少なくとも機能的なICP4遺伝子および機能的なICP34.5遺伝子を欠損する単純ヘルペスウイルス株の使用方法も提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】発明の分野 本発明は、不活性化して非病原性にする突然変異を有する単純ヘルペスウイル
ス変異体に関する。本発明はまた、遺伝子療法および遺伝子機能のアッセイ法に
おけるそのような単純ヘルペスウイルス変異体の使用方法にも関する。
【0002】発明の背景 単純ヘルペスウイルス(HSV)は、神経系にとって好適なベクターとしてしばし ば提言されてきた。それは、その神経栄養的なライフスタイルおよび細胞が生存
する間、神経細胞に保持される能力によるものである。しかし、野生型HSVは病 原性が高く、ほとんどのウイルスベクターと同様、いくつかの方法には利用でき
ない。HSVの病原性作用は、ウイルスの溶解性感染の結果生じ、従って、ベクタ ーとしてのHSVの使用には、溶解性周期を中断させる突然変異を担持すると同時 に無症状性の潜伏性感染の確立を可能にする株の開発が必要である。
【0003】 HSVベクターは、必須極初期(IE)遺伝子ICP4(Dobsonら、1990およびChioccaら 、1990)の欠失により、以前に製造され、in vivoで試験された。該ベクターは、
培養で増殖させるためには相補されなければならないものである。溶解性感染に
おいて、ウイルスの初期遺伝子および後期遺伝子の転写活性化には、ICP4を必要
とする。従って、この遺伝子を欠損するウイルスは、細胞に容易に感染すること
ができるが、溶解的に増殖することはできない。別の必須遺伝子はICP27であり 、その遺伝子産物は高い細胞毒性を有する。高い細胞毒性はおそらく、大部分が
スプライシングされないヘルペスRNAからの翻訳に有利となるように、プレmRNA のスプライシングを妨げるという該遺伝子産物の第2の役割によるものである。
HSV株は、ICP27における欠失(ICP27単独で(例えば、Reef HardyおよびSandri-
Goldin、1994ならびにRiceおよびKnipe、1990)またはICP4と組み合わせて(例え
ば、米国特許第5,658,724号))により作製された。
【0004】 IE遺伝子ICP0、IE遺伝子ICP6、チロシンキナーゼ(TK)、US5またはVMW65などの
非必須遺伝子においても、突然変異が作製された。in vivoにおける完全な病原 性には、それらの遺伝子全てを必要とするが、培養における増殖には必須ではな
い(CoffinおよびLatchman、1996により概説された)。これらの型の突然変異に
より、欠失は、培養で増殖させるためには相補される必要がないというさらなる
有利性が得られた。このことは、ウイルスと、増殖中の細胞系における相補的な
配列との間の相同的組換えにより、非病原性の表現型から野生型の表現型への転
換をもたらす場合があることにより以前に示されている。しかし、これらの各場
合においては、非必須遺伝子の突然変異は、ウイルスの複製を完全には妨げない
。何故なら、in vivoでは、高力価の接種は複製に対する阻止に打ち勝つであろ うからである。
【0005】 ICP34.5は、いわゆる神経毒性因子であり、in vivoにおける神経毒性には絶対
的に必要であるが、培養における増殖には必須ではない(Chouら、1990)。ICP34.
5における突然変異により、HSVを失活させ得る巧妙な機構が提供される。ICP34.
5は、神経細胞における増殖性の感染に対する通常の宿主応答(これにより(ICP3
4.5の非存在下では)細胞死が引き起こされ、従って感染を初期感染細胞のみに制
限する)を妨げると考えられている。ICP34.5は、この応答に優位に立ち、完全 な溶解性の複製を起こさせると考えられる。従って、ICP34.5の非存在下では、 失活したウイルスが増殖性の感染をどのような理由にせよ再確立したとしても、
ICP34.5の突然変異により、保護的な宿主応答がウイルスの複製を少数の細胞の みに制限することを確実とするであろう。
【0006】 しかし、単一の欠陥を担持するウイルスが最終的なヒトの使用に十分安全であ
ると認められるとは考えられない。高力価接種の可能性およびさらなる安全性は
、非必須遺伝子の不活性化と共に、複製の絶対的な阻止をもたらす(従って培養
において相補されなければならない)必須IE遺伝子の不活性化により達成するこ
とができる。
【0007】発明の概要 本発明者らは、少なくともICP4およびICP34.5における不活性化突然変異を( 場合によってはVMW65および/またはvhsにおける不活性化突然変異とともに)担
持する単純ヘルペスウイルスが、ICP34.5のみ、VMV65と共にICP34.5、またはVMW
65およびvhsと共にICP34.5において突然変異を担持するウイルス株に比べて毒性
レベルの減少を示したことを見出した。それらのウイルスは、ICP4のみを欠失さ
せたウイルスよりも安全である。しかし、これらの高度に変異した株はなお、IC
P4を相補する細胞系を用いた培養において効率的に増殖することができ、ウイル
スの保存調製を可能にする。さらに、本発明のこれらのHSV株は、哺乳動物細胞 に異種遺伝子を送達するのに好適なベクターであることが示された。
【0008】 このように、本発明は、機能的なICP27遺伝子を有し、かつ少なくとも機能的 なICP4遺伝子および機能的なICP34.5遺伝子を欠損する単純ヘルペスウイルス(HS
V)を提供する。前記ウイルスは、好ましくは前記ICP34.5遺伝子以外に1つ以上 の機能的な非必須遺伝子をさらに欠損する。例えば、該ウイルスは、VMW65、vhs
、ICP0、ICP6およびTKより選択される1つ以上の機能的な非必須遺伝子をさらに 欠損してもよい。従って、これらの非必須遺伝子のうちの2つまたは3つでさえ
、不活性化することができる。
【0009】 特に、in vivoにおける毒性を低減させるために、本発明者らは、本発明のHSV
の非必須遺伝子VMW65に不活性化突然変異を挿入して、極初期(IE)遺伝子の発現 を減少させ、従ってこれらのタンパク質により調節される遺伝子の発現レベルも
減少させた。さらに、本発明者らは、ビリオン宿主シャットオフ(shut-off)タン
パク質(vhs)をコードする遺伝子において欠失を有する単純ヘルペスウイルスを も製造した。vhsは、ビリオン中に担持されるタンパク質であり、mRNAを不安定 化する原因となり、従って宿主のタンパク質合成を減少させ、野生型ウイルスの
感染に付随する、より迅速に産生されるウイルスRNAからの翻訳に有利とする。
【0010】 従って、本発明の好ましい実施形態においては、本発明のHSVは、機能的なvhs
遺伝子および/または機能的なVMW65遺伝子をも(前記VMW65遺伝子の転写活性化
活性を破壊する該遺伝子における突然変異により)欠損する。本発明の特に好ま
しいウイルスは、機能的なICP4遺伝子、機能的なICP34.5遺伝子、機能的なvhs遺
伝子および、機能的なVMW65遺伝子を(VMW65遺伝子の場合は、その転写活性化活
性を破壊する該遺伝子における突然変異により)欠損する。
【0011】 本発明の単純ヘルペスウイルスを用いて、例えば、神経系の疾患または損傷の
治療方法において治療用の遺伝子を送達することができる。こうした神経系の疾
患または損傷としては、パーキンソン病、脊髄損傷もしくは脊髄卒中、または眼
、心臓、もしくは骨格筋の疾患、または悪性腫瘍などが挙げられる。本発明はま
た、哺乳動物細胞における遺伝子の機能の研究方法、例えば、細胞の機能障害を
相補する遺伝子の同定、または野生型もしくは変異型哺乳動物細胞における変異
遺伝子の発現効果の研究にも関する。特に、疾患に関与する遺伝子の機能的研究
のために、本発明の方法を用いることができる。
【0012】 本発明はさらに、異種遺伝子を担持する本発明のHSVを提供する。異種遺伝子 という用語は、HSVゲノムに見出されない任意の遺伝子を包含することを意図す る。異種遺伝子は、野生型遺伝子の任意の対立遺伝子変異体であってもよく、ま
たは突然変異遺伝子であってもよい。異種遺伝子は、哺乳動物細胞、好ましくは
中枢神経系もしくは末梢神経系の細胞または眼、心臓もしくは骨格筋の細胞、よ
り好ましくは中枢神経系もしくは末梢神経系の細胞において前記異種遺伝子の発
現を許容する制御配列に機能し得る形で連結されるのが好ましい。従って、本発
明のHSVを用いて、異種遺伝子を発現させる哺乳動物細胞に該遺伝子を送達する ことができる。そのようなベクターは、様々な用途、例えば、遺伝子療法、また
はin vitroアッセイ法、またはHSV遺伝子調節の研究に有用である。
【0013】 異種遺伝子は、好ましくは治療に使用し得るポリペプチドをコードし、該ポリ
ペプチドの例としては、細胞毒性を有するか、または前駆体プロドラッグを細胞
毒性化合物に変換することができるポリペプチドが挙げられる。
【0014】 本発明はさらに、ヒトおよび動物の治療に使用するための、異種遺伝子を担持
する本発明の単純ヘルペスウイルスを提供する。例えば、神経系の疾患または損
傷の治療にそのようなウイルスを用いることができる。そのような疾患または損
傷としては、パーキンソン病、脊髄損傷もしくは脊髄卒中または眼、心臓もしく
は骨格筋の疾患、あるいは悪性腫瘍が挙げられる。
【0015】 本発明のHSVはまた、哺乳動物細胞における遺伝子機能の研究のための方法、 例えば、細胞の機能障害を相補する遺伝子の同定、または野生型もしくは変異型
哺乳動物細胞における変異遺伝子の発現効果の研究にも用いることができる。特
に、疾患に関与する遺伝子の機能的研究に本発明の方法を用いることができる。
【0016】 本発明はまた、本発明の単純ヘルペスウイルスの製造方法も提供する。該方法
は、単純ヘルペスウイルスのICP34.5およびICP4遺伝子(場合によっては、VMW65
および/またはvhs遺伝子)を、前記遺伝子は機能的に不活性となるがICP27遺伝
子はインタクトで、および/または機能的に保持されるように改変することを含
む。
【0017】発明の説明 A.ウイルス株 本発明の単純ヘルペスウイルスは、例えば、HSV1もしくはHSV2株、またはそれ
らの誘導体、好ましくはHSV1から誘導することができる。誘導体には、HSV1およ
びHSV2株からのDNAを含有するタイプ間組換え体が含まれる。誘導体は、好まし くはHSV1またはHSV2ゲノムのどちらかと少なくとも70%、より好ましくは少なく とも80%、さらに好ましくは少なくとも90または95%の配列相同性を有する。本発
明のウイルスを取得するのに使用し得る他の誘導体には、ICP4、ICP34.5、VMW65
またはvhsのいずれかに既に突然変異を有する株、例えば、1716株(MacLeanら、1
991)、R3616株およびR4009株(ChouおよびRoizman、1992)、ならびにR930株(Chou
ら、1994)(これらの全てがICP34.5に突然変異を有する)、ICP4に欠失を有す るd120株(DeLucaら、1985)が含まれる。これらの株の使用により、本発明のHSV 変異株を製造するのに必要な工程数が減少する。
【0018】 種々のHSV遺伝子を記載するのに用いられる用語は、CoffinおよびLatchman、1
996に見られるとおりである。
【0019】 B.相補する細胞系 本発明のウイルスを、ICP4を発現する細胞系、例えば、E5細胞(DeLucaら、198
5)またはB4細胞(実施例1を参照のこと。)、好ましくはB4細胞上で増殖する。
【0020】 ICP4発現細胞系は、哺乳動物細胞を共トランスフェクトすることにより、例え
ば、Vero細胞またはBHK細胞を、1つのベクター(好ましくは、前記細胞において
発現され得る機能的なHSV ICP4遺伝子を含むプラスミドベクター)ともう1つの ベクター(好ましくは例えばネオマイシン耐性などの選択可能マーカーをコード
するプラスミドベクター)とで共トランスフェクトすることにより製造すること
ができる。その後、選択可能マーカーを有するクローンをさらにスクリーニング
して、例えば、それらがICP4- HSV株の増殖を支持する能力に基づいて、当業者 に公知の方法を用いて機能的なICP4をも発現するクローンを決定する。
【0021】 ICP4-のHSV変異株を機能的なICP4を有する株に転換させない細胞系を、上記の
ごとく作製し、機能的なICP4遺伝子を含むベクターがICP4-変異ウイルスにおい て保持される配列と重複する(すなわち、相同な)配列を含まないことを確実に
する。
【0022】 C.突然変異の方法 該ICP4、ICP34.5、vhsおよび他のHSV遺伝子を、当技術分野においてよく知ら れたいくつかの技術により、機能的に不活性にすることができる。例えば、それ
らは、欠失、置換または挿入、好ましくは欠失により機能的に不活性にすること
ができる。欠失とは、遺伝子の一部または遺伝子全体を除去することである。例
えば、たった1個のヌクレオチドの欠失がなされても、フレームシフトを引き起
こす。しかし、より大きな欠失、例えば、全コード配列および非コード配列のう
ちの少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%(または、絶対数では、少な
くとも10ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも100ヌクレオチド、さらに好 ましくは少なくとも1000ヌクレオチド)の欠失がなされるのが好ましい。遺伝子
全体およびそのフランキング配列のいくつかを除去するのが特に好ましい。挿入
される配列には、以下に記載の異種遺伝子が含まれる。特に、異種遺伝子をICP4
中に挿入するのが好ましい。VMW65遺伝子の場合、該遺伝子は、必須構造タンパ ク質をコードするので、遺伝子全体は欠失させないが、VMW65がIE遺伝子の転写 を活性化する能力を失わせる、小規模な不活性化挿入を行う(例えば、Aceら、1
989、SmileyおよびDuncan、1997、または同様の効果が得られる他の突然変異) 。
【0023】 当業者によく知られた相同的組換え法、あるいは線状化したHSVゲノムDNA中へ
の直接ライゲーション、または当業者により知られた、もしくは開発された任意
の他の手段により、単純ヘルペスウイルスにおける突然変異を行う。例えば、HS
VゲノムDNAを、相同なHSV配列を隣接させた変異配列を含むベクター、好ましく はプラスミドベクターでトランスフェクトする。変異配列は、欠失、挿入または
置換を含んでもよく、その全ては日常的な技術により構築することができる。挿
入物には、例えば、β‐ガラクトシダーゼ活性により組換えウイルスをスクリー
ニングするための、例えばlacZなどの選択可能マーカーが含まれる。
【0024】 D.異種遺伝子およびプロモーター 本発明のHSV変異株を改変して、異種遺伝子、すなわちHSVゲノム中に存在する
遺伝子以外の遺伝子を担持させることができる。用語「異種遺伝子」は、HSVゲ ノム中に存在する遺伝子以外の任意の遺伝子を含む。異種遺伝子は、野生型遺伝
子の任意の対立遺伝子変異体でもよく、または突然変異遺伝子でもよい。用語「
遺伝子」は、少なくとも転写はされ得る核酸配列をカバーすることを意図する。
従って、mRNA、tRNAおよびrRNAをコードする配列もこの定義内に含まれる。核酸
は、例えば、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)またはそれらの類似体
であってもよい。配列は、プロモーターに関してセンスまたはアンチセンスの向
きにあってもよい。アンチセンス構築物を用いて、公知の技術により細胞中の遺
伝子発現を阻害することができる。mRNAをコードする配列は、場合によっては、
自然に転写はされるが翻訳はされない5’および/または3’のフランキング配列
、または翻訳されるコード配列に結合した5’および/または3’のフランキング
配列の一部または全部を含む。それはさらに場合によっては、例えば、転写終結
シグナル、ポリアデニル化部位および下流エンハンサーエレメントなどの転写さ
れる配列に正常に結合する、関連転写制御配列を含む。
【0025】 例えば、HSV配列を隣接させた異種遺伝子を担持するプラスミドベクターと共 にHSV株を相同的に組換えることにより、異種遺伝子をHSVゲノム中に挿入するこ
とができる。当技術分野でよく知られたクローニング技術を用いて、HSV配列を 含む適当なプラスミドベクター中に異種遺伝子を導入することができる。該ウイ
ルスがなお増殖できるような任意の位置でHSVゲノム中に異種遺伝子を挿入する ことができる。異種遺伝子は、必須遺伝子ICP4中に挿入するのが好ましい。
【0026】 異種遺伝子の転写される配列は、哺乳動物細胞、好ましくは中枢神経系および
末梢神経系の細胞において異種遺伝子を発現させる制御配列に機能し得る形で連
結されるのが好ましい。用語「機能し得る形で連結される」とは、記載の構成要
素が意図された様式で機能することを可能にする関係において並置されているこ
とを指す。コード配列に「機能し得る形で連結された」制御配列を、コード配列
の発現が制御配列と共存できる条件下で達成されるような方法でライゲートする
【0027】 該制御配列は、異種遺伝子の発現を可能にするプロモーターおよび転写終結シ
グナルを含む。該プロモーターは、哺乳動物、好ましくはヒト細胞において機能
的なプロモーターより選択される。該プロモーターは、真核生物遺伝子のプロモ
ーター配列から誘導することができる。該プロモーターは、例えば、異種遺伝子
の発現する細胞のゲノム、好ましくは哺乳動物の中枢または末梢神経系の細胞の
ゲノムから誘導されたプロモーターであってよい。真核生物のプロモーターに関
しては、それらは遍在的な様式で機能するプロモーター(β‐アクチン、チュー
ブリンのプロモーターなど)、または組織特異的な様式で機能するプロモーター
(ピルビン酸キナーゼ遺伝子のプロモーターなど)であってもよい。また、それ
らは特異的な刺激物に応答するプロモーター、例えば、ステロイドホルモン受容
体に結合するプロモーターであってもよい。ウイルスプロモーター、例えば、モ
ロニーマウス白血病ウイルスの長い末端繰り返し配列(MMLV LTR)のプロモーター
またはHSV遺伝子のプロモーターを用いることもできる。
【0028】 HSVのLATプロモーターおよびLATプロモーター領域のエレメントを含有するプ ロモーターが特に好ましい。何故なら、潜伏中に異種遺伝子の長期間の発現を達
成する可能性があるからである。特に、LATのP2領域から本質的になる発現カセ ットは、それ自体はここでプロモーターとして働かず、プロモーターおよび異種
遺伝子にその順序で連結されているのが特に好ましい(WO 98/30707)。
【0029】 用語「長期間の発現」は、本発明の単純ヘルペスウイルスに感染した細胞中に
おいて、単純ヘルペスウイルスが侵入して潜伏した後でさえ、異種遺伝子が発現
されることを意味するものとする。好ましくはこの期間は、少なくとも2週間、
より好ましくは感染後少なくとも1ヶ月または2ヶ月、さらに好ましくは細胞の
寿命の間である。
【0030】 該発現カセットはさらに、第2のプロモーターおよび第2の異種遺伝子を含ん でもよく、この場合、該プロモーターおよび該異種遺伝子は、前記HSV LAT P2領
域にその順序で、かつ第1のプロモーターおよび第1の異種遺伝子と反対の向き
に機能し得る形で連結される。ここで、第2のプロモーターおよび第2の異種遺
伝子は、第1のプロモーターおよび第1の異種遺伝子と同じか、または異なる。
このように、反対の向きにある1対のプロモーター/異種遺伝子構築物は、単一
のLAT P2領域に隣接し、異種遺伝子対の長期間の発現を可能にする。異種遺伝子
対は、同じであっても異なってもよく、同じかまたは異なるプロモーターにより
駆動されてもよい。さらに、第1の異種遺伝子の産物は、適当な生理学的条件下
で第2の異種遺伝子の発現を調節しても(またはその逆でも)よい。
【0031】 当業者に公知の日常的なクローニング技術(例えば、Sambrookら、1989、Mole
cular Cloning - a laboratory manual; Cold Spring Harbor Press)を用いて 、該発現カセットを構築することができる。さらに、そのような発現カセットを
含む特定のHSV株の構築は、実施例に記載されている。
【0032】 LAT P2領域は、本明細書において、HSV1株17+中のHSV1のヌクレオチド118866 〜120219(GenBank HE1CG: PstI-BstXI部位から)、この領域の断片または誘導体 (HSV2株およびHSV1の他の株の相同な領域を含む)であって、それらが連結され
るプロモーターに対する長期間の発現能を提供することが可能であるものと定義
される。
【0033】 また、異種遺伝子の発現レベルが細胞の寿命中に調節され得るような誘導性を
有することがプロモーターには有益であろう。誘導性とは、プロモーターを用い
て得られる発現レベルが調節され得ることを意味する。例えば、2つ以上の異種 遺伝子がHSVゲノム中に挿入される好ましい実施形態においては、HSVゲノム中の
同じ部位においても、または異なる部位においても、1つの挿入されたプロモー
ターは、以前に報告されたtetリプレッサー/VP16転写アクチベーター融合タン パク質(GossenおよびBujard、1992、Gossenら、1995)に応答し、発現を調節すべ
き異種遺伝子を駆動させるプロモーターを含む。第2の挿入されたプロモーター
は、tetリプレッサー/VP16融合タンパク質を発現させる強力なプロモーター(例
えば、CMV IEプロモーター)を含む。従って、この実施例においては、第1の異 種遺伝子の発現は、テトラサイクリンの存在または非存在に依存するだろう。2 つ以上のプロモーター/発現レベルを調節すべき異種遺伝子のカセットを、本発
明の実施形態においてHSVゲノム中に挿入することができ、例えば、使用に際し て調節可能なプロモーターからの発現レベルを調節できるテトラサイクリンまた
は他の物質の投与により、複数の遺伝子の発現レベルを調節することが可能とな
る。
【0034】 さらに、これらのプロモーターのうち任意のものを、さらなる調節配列、例え
ば、エンハンサー配列(LAT領域のエレメントを含む)を付加することにより、 改変することができる。上記の2つ以上の異なるプロモーターからの配列エレメ
ントを含むキメラプロモーター、例えば、MMLV LTR/LAT融合プロモーター(Loken
sgardら、1994)、またはLAT領域のエレメントを含むプロモーター(上記参照。 )を用いることもできる。
【0035】 該異種遺伝子は、例えば、神経栄養増殖因子(脳由来神経栄養因子、グリア細
胞由来神経栄養因子、NGF、NT3、NT4およびNT5、GAP43など)、サイトカイン( α‐、β‐もしくはγ‐インターフェロン、IL-1、IL-2などのインターロイキン
、腫瘍壊死因子、またはインスリン様増殖因子IもしくはIIなど)、プロテイン キナーゼ(MAPキナーゼなど)、プロテインホスファターゼおよび上記のうちの 任意のものに対する細胞受容体を含む分裂促進増殖因子などの細胞分裂の調節に
関与するタンパク質をコードしてもよい。該異種遺伝子はまた、例えば、アミノ
酸生合成もしくは生分解(チロシンヒドロキシラーゼなど)、プリンもしくはピ
リミジン生合成もしくは生分解、および神経伝達物質の生合成もしくは生分解(
ドーパミンなど)に関与する酵素などの細胞代謝経路に関与する酵素、またはプ
ロテインキナーゼおよびプロテインホスファターゼなどの該経路の調節に関与す
るタンパク質をコードしてもよい。該異種遺伝子はまた、例えば、Brn3ファミリ
ーのメンバー(Brn3a、Brn3bおよびBrn3cなど)もしくはRbファミリー(Rbもし くはp107など)のポケットタンパク質、膜タンパク質(ロドプシンなど)、構造
タンパク質(ジストロフィンなど)、または熱ショックタンパク質(hsp27、hsp
65、hsp70およびhsp90など)などの、転写因子またはその調節に関与するタンパ
ク質をコードしてもよい。
【0036】 好ましくは、該異種遺伝子は、治療に使用し得るポリペプチド、または、その
機能もしくは機能の欠損が疾患のプロセスに重要であるポリペプチドをコードす
る。例えば、上記のタンパク質のうち、チロシンヒドロキシラーゼはパーキンソ
ン病の治療に用いることができ、ロドプシンは眼の障害の治療に用いることがで
き、ジストロフィンは筋ジストロフィーの治療に用いることができ、そして熱シ
ョックタンパク質は虚血性ストレスに関連する心臓および脳の障害の治療に用い
ることができる。また治療に使用し得るポリペプチドには、リシンなどの細胞毒
性ポリペプチド、または、例えば、ウイルス標的酵素プロドラッグ療法もしくは
遺伝子標的酵素プロドラッグ療法などにおける使用のために前駆体プロドラッグ
を細胞毒性化合物に変換させることができる酵素が含まれ得る。後者の場合、酵
素が、酵素自体を細胞表面に誘導するための適当なシグナル配列を確実に有する
ことが望ましい。好ましくは、シグナル配列は、該酵素が細胞表面の外側に曝露
されるが、細胞膜にアンカーされたままにすることを可能にするものである。適
当な酵素としては、WO93/08288に開示された大腸菌ニトロレダクターゼなどの細
菌のニトロレダクターゼ、またはカルボキシペプチダーゼ、特にWO88/07378に開
示されたカルボキシペプチダーゼCPG2などが挙げられる。他の酵素は、EP-A-415
731の参照により見出される。適当なプロドラッグとしては、ナイトロジェンマ スタードプロドラッグならびにWO88/07378、WO89/10140、WO90/02729およびWO93
/08288(参照により本明細書に組み入れる)に記載されたものなどの他の化合物
が挙げられる。
【0037】 異種遺伝子はまた、ワクチンとして使用するための抗原性ポリペプチドをコー
ドしてもよい。好ましくは、そのような抗原性ポリペプチドは、病原性生物(細
菌もしくはウイルスなど)、または腫瘍から誘導される。
【0038】 異種遺伝子はまた、マーカー遺伝子(例えば、β‐ガラクトシダーゼもしくは
グリーン蛍光タンパク質をコードする遺伝子)、または遺伝子産物が他の遺伝子
の発現を調節する遺伝子(例えば、上記のtetリプレッサー/VP16転写アクチベ ーター融合タンパク質などの転写調節因子)を含んでもよい。
【0039】 遺伝子療法および他の治療の用途には、複数の遺伝子の投与がおそらく必要で
あろう。複数の遺伝子の発現は、例えば複数の神経栄養因子を用いた様々な症状
の治療に有益であろう。HSVは、他のウイルスベクター系の限定されたパッケー ジング能力を有さないので、非常に適している。従って、複数の異種遺伝子をそ
のゲノム内に収容できる。例えば、これを達成するためには少なくとも2つの方
法がある。例えば、2つ以上の異種遺伝子および関連制御配列を、特定のHSV株に
導入することができる。また、中心に位置するLAT P2エレメントから逆向きに向
かうプロモーター対(同じかまたは異なるプロモーター)を使用することもでき
る。これらのプロモーターは各々、上記のごとく異種遺伝子(同じかまたは異な
る異種遺伝子)を発現させる。また、異種遺伝子をHSVゲノム内の複数の部位に 挿入することもできる。
【0040】 E.投与 本発明の単純ヘルペスウイルス変異体を用いて、治療を要するヒトまたは動物
に治療用の遺伝子を送達することができる。本発明の単純ヘルペスウイルス変異
体を用いた治療用の遺伝子の送達を用いて、例えば、パーキンソン病、神経系の
障害、脊髄損傷、脊髄卒中またはグリオーマなどの悪性腫瘍を治療することがで
きるであろう。
【0041】 投与される遺伝子療法の1つの方法は、上記のごとく、本発明の単純ヘルペス
ウイルス変異体のゲノムに治療用の遺伝子を挿入すること、次いで、得られた組
換えウイルスと製薬上許容される担体または希釈剤とを組み合わせて医薬組成物
を製造することを含む。適当な担体および希釈剤としては、等張性生理食塩水、
例えばリン酸緩衝生理食塩水などが挙げられる。非経口、筋肉内、静脈内、皮下
、眼球内、または経皮投与のために該組成物を製剤化することができる。
【0042】 遺伝子療法のための治療用の遺伝子を含有する変異ウイルスが、適切な領域で
細胞中に取り込まれるような方法で、該医薬組成物を投与する。例えば、遺伝子
療法の標的が中枢神経系または末梢神経系である場合、シナプス末端が位置する
領域に該組成物を投与することができる。典型的には、定位固定接種により該医
薬組成物を脳に投与する。該医薬組成物を眼に投与する場合、典型的には、網膜
下注入が用いられる技術である。
【0043】 投与するウイルス量は、104〜1010pfu、好ましくは105〜108pfu、より好まし くは約106〜107pfuの範囲である。注入するとき、典型的には製薬上許容される 適当な担体または希釈剤中の1〜10μlのウイルスを投与する。
【0044】 記載された投与経路および用量は、単なる指標にすぎない。何故なら、通常の
知識を有する専門家ならば、特定の患者および症状のための最適な投与経路およ
び用量を容易に決定し得るからである。
【0045】 F.アッセイ法 本発明の単純ヘルペスウイルス変異体はまた、科学的研究の方法にも用いるこ
とができる。従って、本発明のさらなる態様は、in vitroまたはin vivoにおい て哺乳動物細胞における遺伝子の機能をアッセイする方法に関する。異種遺伝子
の機能は、 (a)前記異種遺伝子を本発明の単純ヘルペスウイルス変異体に導入すること、 (b)得られるウイルスを哺乳動物細胞系に導入すること、および (c)前記哺乳動物細胞系における前記異種遺伝子の発現効果を測定すること、 を含む方法により決定することができる。
【0046】 例えば、該細胞系は細胞分裂において温度感受性の欠陥を有する場合もある。
本発明による異種遺伝子を含むHSV株を該欠陥を有する細胞系に導入し、該細胞 系を制限的な温度で増殖した場合、当業者は、該異種遺伝子が細胞分裂における
該欠陥を相補できるかどうかを容易に決定することができるであろう。同様に、
他の公知の技術を適用して、該異種遺伝子の発現が哺乳動物細胞系における観察
可能な変異表現型を修正できるかどうかを決定することができる。
【0047】 この方法を用いて、異種遺伝子の体系的な突然変異誘発を実施し、該遺伝子に
よりコードされるタンパク質のどの領域が変異表現型の修復に関与しているかを
確認することもできる。
【0048】 この方法はまた、いわゆる「遺伝子ノックアウト」を担持する、マウスなどの
動物に用いることもできる。野生型の異種遺伝子を、本発明のHSV変異株を用い て該動物に導入し、当業界で公知の種々の行動学的、組織化学的または生化学的
アッセイを用いて、該動物に対する効果を決定することができる。あるいは、変
異異種遺伝子を、野生型または「遺伝子ノックアウト」の動物に導入して、疾患
関連性病状が誘導されるかどうかを決定することができる。この例としては、プ
リオンをコードする遺伝子を用いて、クロイツフェルト‐ヤコブ病およびげっ歯
類の中枢神経系における他のプリオン型疾患を誘導することが挙げられる。他の
疾患モデルとしては、アルツハイマー病、運動ニューロン病またはパーキンソン
病に関するモデルが挙げられる。
【0049】 HSVゲノムの大きな容量により、少なくとも2つの異なる異種遺伝子を1個の 細胞に導入することが可能であるため、2つ以上の遺伝子産物間の相互作用につ
いて研究することも可能である。
【0050】 従って、本発明の方法は、特に疾患に関与する遺伝子の機能的研究に用いるこ
とができる。
【0051】 本発明は、以下の実施例を参照して説明されるが、単なる例示を意図するもの
であって、本発明を限定するものではない。
【0052】実施例 実施例1 ウイルス変異体の製造 ウイルス VMW65の転写活性化活性の機能的な不活性化を引き起こす変異を有するICP34.5
欠失変異体を、ICP34.5の双方のコピーにおいて欠失を含有する1716株(MacLean ら、1991)と、機能的に不活性化されたVMW65遺伝子を含有するin1814株(Aceら、
1989)とを共培養(3 mM HMBAを含有するBHK細胞において)することにより製造 した。得られたプラークのゲノム構造を、当業者に公知の方法(精製ゲノムDNA の制限消化およびサザンブロッティング)により解析し、in1814株および1716株
の両方の変異を有するウイルスをさらに5回プラーク精製し、1764ウイルス株を
得た。VMW65のトランス活性化活性に影響するin1814変異または他の突然変異( 例えば、SmileyおよびDuncan、1997に記載されている)を有するウイルスの増殖
は、ウイルス増殖の際に用いる培地中にヘキサメチレンビスアセトアミドを含有
させることにより増強することができる(McFarleneら、1992)。
【0053】 プラスミドpR15とHSV 1764株のDNAとの相同的組換えによりvhs/ICP34.5/VMW65
欠失変異体を製造して、ICP34.5、VMW65およびvhsを欠失し、かつvhsのコード領
域中に挿入されたモロニーマウス白血病ウイルスの長い末端繰り返し配列(MMLV
LTR)プロモーター(Shinnickら、1981)により駆動されるlacZ遺伝子を有するウイ
ルス1764/pR15を作製した。プラスミドpR15は、MMLVLTR/lacZ/pAカセットをvhs 遺伝子中の唯一のNruI部位に挿入することにより構築されたものである。このよ
うに、HSV1の17+株のゲノムからの制限断片KpnI-iを、プラスミドpAT153(Northu
mbria Biologicals Ltd)のPstI部位中にクローニングした。
【0054】 1716株および1764/pR15株からICP4の双方のコピーを除去した。これは、精製 された1716株または1764/pR15株のゲノムDNAと、プラスミドpΔ4/GFPとの相同的
組換えにより達成された。ICP4フランキング配列(pSP72[Promega]に由来するXba
IおよびSalI部位により分離された断片のヌクレオチド123,459〜126,774[Sau3aI
-Sau3aI]およびヌクレオチド131,730〜134,792[SphI-KpnI]。これらを用いて構 築物を作製した。)を用いて、pΔ4/GFPを構築した。ICP34.5のコード領域を含む
約0.8 kbのNotI断片(ヌクレオチド124,945〜125,723)も除去して、1716株または
1764/pR15株との相同的組換えの際のICP34.5欠失の修復を防止した。次いで、CM
V/GFP/pAカセットを、唯一のXbaI部位に挿入して、pΔ4/GFPを得た。先ず、AgeI
およびNotIを用いてpEGFPN1(Clontech)から該CMV遺伝子を切り出し、pcDNA3(Inv
itrogen)のEcoRIおよびNotI部位間に挿入して、pcDNA3GFPを得た。次いで、ICP4
隣接領域中に挿入するために、NruIおよびBbsIを用いて該CMV/GFP/pAカセットを
pcDNA3GFPから切り出すことができた。次に、上記のごとく相同的組換えにより1
716株および1764/pR15株にpΔ4/GFPを導入して、B4細胞上の蛍光顕微鏡検査およ
びプラーク精製(以下に記載)によりGFP発現プラークを同定し、1716/Δ4ウイ ルス株および1764/pR15Δ4ウイルス株を得た。プラーク精製したウイルスは、IC
P4を発現しないBHK細胞に増殖性の感染をすることができなかった。
【0055】 17+株のゲノムDNA、およびICP34.5遺伝子がNotI断片の除去により欠失されて いないICP4隣接領域を含有するプラスミドを用いたことを除いては、上記のよう
に、17+/Δ4ウイルス株を調製した。
【0056】 ヌクレオチド番号は、HSV1の17+株の配列(Genbank no.HE1CG)を指す。
【0057】相補細胞系を用いたHSV変異株の増殖 プラスミドpICP4 DNAとネオマイシン耐性をコードするプラスミドpMamNeo(In
vitrogen)とをBHK細胞中に共トランスフェクトし、ネオマイシン耐性クローン を選択することにより、ICP4欠失ウイルスを増殖させ得る相補細胞系(B4)を作製
した。プラスミドpICP4は、ICP4コード領域およびプロモーターを含有するHSV1 ゲノム由来のDdeI-SphI断片[ヌクレオチド126,764〜131,730]であってpSP72(Pro
mega)のEcoRV部位およびSphI部位間にクローニングしたものを含む。
【0058】 HSV1のICP4欠失変異体を高度に増殖させるクローン(B4)をウイルス増殖に対し
て選択した。
【0059】実施例2 本発明のHSV1株を用いたin vitroにおける非神経細胞の感染 本発明のHSV株を、Samaniegoら, 1998に類似した方法を用いて、細胞培養にお
ける持続性について高い感染多重度(MOI)でベロ細胞上で試験した。ウイルスゲ ノムからの遺伝子発現が再刺激され得るようなウイルスゲノムの持続性により、
細胞に対するウイルスの細胞傷害性の程度が示唆される。ここで、24穴プレート
中でベロ細胞に1764/pR15Δ4、1716/Δ4および17+/Δ4の各々をMOI 20で感染さ せた。次いで、該実験の残りの工程は、該細胞を34℃/5% CO2でインキュベート
した。GFP蛍光はその期間中観察され、さらに様々な時点(2日、1週間、2週 間および1ヶ月)において、細胞培養物をHSVのzΔMN+株(これはICP27遺伝子中
にlacZ挿入物を含有する;Howardら、1998)によってMOI 20で重感染させた。
【0060】 これらの実験により、各々のウイルスについて2日後には各々の培養物中の95%
を超える細胞において強い蛍光を観察することができることが示されたが、細胞
傷害性の徴候は、1716/Δ4および17+/Δ4に感染した培養物において明らかであ った(正常な細胞形態がいくらか失われたことが観察できた)。1764/pR15Δ4に
感染した細胞は、細胞分裂速度の一過性の減少が観察されたが、非感染対照細胞
と同じ細胞形態を示した。これは、このウイルスの毒性が減少したことを示唆し
ている。感染の1週間後およびその後1ヶ月までの時点において、非重感染細胞
は、各々の場合においてGFP蛍光の減少を示した。しかし、1週間の時点では、 この蛍光はすべての場合においてある程度まではウイルスzΔMN+の感染により再
刺激されたが、2週間および1ヶ月の時点では、GFP蛍光は元々1764/pR15Δ4に よって感染した細胞において有意に再刺激され得たのみであった。このことによ
り再びこのウイルスの毒性が減少したことが実証される。
【0061】実施例3 本発明のHSV1株を用いたin vitroにおける初代神経細胞の感染 腸ニューロンの初代培養物(7日齢のSprague-Dawleyラットの腸に由来する−
Saffreyら、1991)を用いて、in vitroにおける毒性について本発明のHSV株を試
験した。これらの培養物は、1716、1764、17+/Δ4または1764/pR15と比較すると
、2x106 pfu/ウェルの1764/pR15Δ4によって96穴マイクロタイターディッシュ中
で処理した後の培養においては3日後にもかなり延長された生存(トリパンブル ー染色により評価した)および神経細胞形態の維持を示した。このように、1764
/pR15Δ4の場合、1764/pR15に感染した約20%の細胞および17+/Δ4に感染した35%
の細胞と比較して、感染した80%の細胞が3日後にも神経細胞のプロセスを維持し
た。
【0062】 1764/pR15Δ4、17+/Δ4または1764/pR15を用いると、90%を超える生存細胞が マーカー遺伝子活性(用いたウイルスに依存してGFPおよび/またはlacZ)を示 したが、これはin vitroにおいて該ウイルスベクターを用いると効果的に遺伝子
が導入されることを示している。他のウイルスを用いる場合と比較して、1764/p
R15Δ4では毒性がかなり減少することは、in vivoにおいてウイルスをベクター として用いる場合、特に長期間の遺伝子発現が必要とされる場合には有益な点で
あるだろう。
【0063】 ICP4と共にICP34.5を除去すると、ICP4のみを欠失させた場合に比べてウイル スの安全特性が著しく改善する。これは、ICP34.5遺伝子が培養におけるウイル スの増殖に相補を必要とせず、従って、ウイルスの増殖中に突然変異が修復され
る環境にないからである。従って、たとえICP4がウイルスの増殖中に組換えによ
り修復されても、得られるウイルスは依然としてICP34.5を欠失しており、従っ て、in vivoにおいてベクターとして依然として安全に使用することができるで あろう。in vivoにおいて試験動物の脳に注入される場合には、ICP34.5のみを欠
失したウイルスは非神経毒性的である(Chouら、1990を参照のこと。)さらに、VM
W65およびvhsにおける不活性化突然変異により、さらに毒性が低減する。
【0064】実施例4 in vivoにおける遺伝子送達 Hamilton Syringeに接続したUltraMicroPump(World Precision Instruments) および注入のためのMicroFilニードル(World Precision Instruments)を用いて 、各ウイルスの5x107 pfu/mlストック5μlを、10分間かけてSprague-Dawleyラッ
トの線条へ定位固定接種した後、in vivoにおける遺伝子送達の効率について、1
764/pR15Δ4、1716/Δ4、および17+/Δ4株を評価した。接種後2日目、2週間目
および1ヶ月目にラットのペアを殺し、リン酸緩衝液中に溶解した2%パラホルム
アルデヒド中での灌流により固定し、切片化し、蛍光顕微鏡によりGFP発現につ いて検査した後、遺伝子送達を評価した。
【0065】 2日後には全てのウイルスの接種部位周辺の大多数の細胞において、高レベル のGFP発現が認められた。従って、ICP4のみを欠失したウイルスと、ICP4および
ICP34.5を欠失したウイルスとの間で、初期の遺伝子送達の効率は同程度である 。従って、たとえICP34.5を欠失したウイルスがICP4のみを欠失したウイルス以 上の改善した安全性という利点を有していても、ICP34.5の欠失によっては、ICP
4を欠失したウイルスのベクターとしての効率を低減しない。しかし、2週間後に
は、1716/Δ4および17+/Δ4を接種した動物においてGFP+ve細胞は比較的少数の みが観察され、1764/pR15Δ4を接種した動物においてはGFP+ve細胞がかなり多数
観察された。このことは、このウイルスの毒性が減少したことをさらに示してい
る。1ヶ月目においては、1716/Δ4および17+/Δ4を接種した動物においてはGFP+
ve細胞が観察されなかったが、1764/pR15Δ4を接種した動物においてはいくらか
のGFP+ve細胞が残存しており(GFPはここではCMV IEプロモーターにより駆動さ れる)、このことは再びこの点をさらに示している。X-galで染色した場合、176
4/pR15Δ4を接種して1ヶ月目の動物由来の脳切片は、GFP+ve細胞よりもかなり青
い染色細胞(lacZ活性を示す)を示した。これはおそらく、lacZを駆動するため
に本明細書で用いたプロモーターの活性を反映しており、HSVの潜伏期にin vivo
において遺伝子を発現することが以前に示されたプロモーターと非常に類似して
いる(Lokensgardら、1994)。
【0066】引用文献 Coffin RS, Latchman DS. Herpes simplex virus-based vectors.「単純ヘルペ スウイルスに基づくベクター」、Latchman DS(編)、Genetic manipulation of t
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characterisation of their expression of a reporter gene in stably and t
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───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 15/09 C12N 15/00 A (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM ,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM) ,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG, BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,D K,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM ,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE, KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,L T,LU,LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX ,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE, SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,U A,UG,US,UZ,VN,YU,ZW (72)発明者 コフィン、ロバート、スチュアート イギリス国 ダブリュ1ピー 6ディーピ ー ロンドン、クリーヴランド ストリー ト 46、ザ ウィンデイヤー ビルディン グ、デパートメント オブ モレキュラー パソロジー、ディヴィジョン オブ パ ソロジー、ユーシーエル メディカル ス クール (72)発明者 ラッチマン、デヴィッド、セイモア イギリス国 ダブリュ1ピー 6ディーピ ー ロンドン、クリーヴランド ストリー ト 46、ザ ウィンデイヤー ビルディン グ、デパートメント オブ モレキュラー パソロジー、ディヴィジョン オブ パ ソロジー、ユーシーエル メディカル ス クール (72)発明者 フィニー、ニコラス、ジェームズ イギリス国 エスオー23 0エヌワイ ウ ィンチェスター、ガーベット ロード 7 Fターム(参考) 4B024 AA01 BA07 BA80 DA02 EA02 GA11 HA01 4B065 AA90X AA95X AB01 AC14 AC20 BA01 CA24 CA44 4C084 AA13 BA44 DA32 NA06 NA10 ZA012 4C087 AA01 BC83 CA12 NA06 NA10 ZA01

Claims (27)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 機能的なICP27遺伝子を有し、かつ少なくとも機能的なICP4 遺伝子および機能的なICP34.5遺伝子を欠損する、単純ヘルペスウイルス(HSV)。
  2. 【請求項2】 ICP34.5遺伝子以外に1つ以上の機能的な非必須遺伝子をさ らに欠損する、請求項1に記載のウイルス。
  3. 【請求項3】 機能的なvhs遺伝子を欠損する請求項2に記載のウイルス。
  4. 【請求項4】 VMW65遺伝子の転写活性化活性を破壊する該遺伝子の変異に 起因して機能的な該遺伝子を欠損する、請求項2または3に記載のウイルス。
  5. 【請求項5】 機能的なICP4、ICP34.5および/または非必須遺伝子の欠損 が前記遺伝子内の欠失または挿入に起因するものである、請求項1〜4のいずれ
    か1項に記載のウイルス。
  6. 【請求項6】 機能的なICP27遺伝子を有し、かつ機能的なICP4遺伝子、機 能的なICP34.5遺伝子、機能的なvhs遺伝子を欠損し、さらにVMW65遺伝子の転写 活性化活性を破壊する該VMW65遺伝子の変異に起因して機能的なVMW65遺伝子を欠
    損する、単純ヘルペスウイルス。
  7. 【請求項7】 HSV1株、HSV2株またはそれらの誘導体から選択される、請求
    項1〜6のいずれか1項に記載のウイルス。
  8. 【請求項8】 HSV1株である請求項7に記載のウイルス。
  9. 【請求項9】 少なくとも1つの異種遺伝子を担持する請求項1〜8のいず
    れか1項に記載のウイルス。
  10. 【請求項10】 前記異種遺伝子が、哺乳動物細胞において前記異種遺伝子
    を発現させるための制御配列に機能しうる形で連結された、請求項9に記載のウ
    イルス。
  11. 【請求項11】 前記哺乳動物細胞が、哺乳動物の中枢神経系または末梢神
    経系の細胞である請求項10に記載のウイルス。
  12. 【請求項12】 前記哺乳動物細胞が、哺乳動物の眼、心臓または骨格筋の
    細胞である請求項10に記載のウイルス。
  13. 【請求項13】 前記異種遺伝子が、治療用のポリペプチドをコードする請
    求項9〜12のいずれか1項に記載のウイルス。
  14. 【請求項14】 前記遺伝子が、細胞毒性を有するポリペプチドをコードす
    る請求項13に記載のウイルス。
  15. 【請求項15】 前記遺伝子が、前駆体プロドラッグを細胞毒性化合物に変
    換し得るポリペプチドをコードする請求項13に記載のウイルス。
  16. 【請求項16】 前記異種遺伝子が、細胞分裂の調節に関与するタンパク質
    、代謝経路に関与する酵素、転写因子および熱ショックタンパク質をコードする
    遺伝子より選択される、請求項10〜13のいずれか1項に記載のウイルス。
  17. 【請求項17】 前記異種遺伝子を哺乳動物細胞に送達するのに用いられる
    請求項10に記載のウイルス。
  18. 【請求項18】 ヒトまたは動物の体の治療方法に用いられる請求項10〜
    17のいずれか1項に記載のウイルス。
  19. 【請求項19】 哺乳動物の神経系の疾患または損傷の治療に用いられる請
    求項18に記載のウイルス。
  20. 【請求項20】 ヒトまたは動物の体の治療に用いられる薬剤の製造におけ
    る請求項10〜17のいずれか1項に記載の単純ヘルペスウイルスの使用方法。
  21. 【請求項21】 哺乳動物の神経系の疾患または損傷の治療における請求項
    20に記載の単純ヘルペスウイルスの使用方法。
  22. 【請求項22】 請求項10〜17のいずれか1項に記載のHSV株と、製薬 上許容される担体または希釈剤とを共に含む医薬組成物。
  23. 【請求項23】 哺乳動物細胞における異種遺伝子の機能を研究する方法で
    あって、 (a) 前記異種遺伝子を、請求項1〜8のいずれか1項に記載の単純ヘルペスウ
    イルスに導入する工程、 (b) 得られる単純ヘルペスウイルスを、前記哺乳動物細胞に導入する工程、お
    よび (c) 前記哺乳動物細胞における前記異種遺伝子の発現の効果を測定する工程、
    を含む前記方法。
  24. 【請求項24】 前記異種遺伝子が、疾患を引き起こす上で関与する野生型
    または変異型遺伝子である請求項23に記載の方法。
  25. 【請求項25】 前記哺乳動物細胞が機能障害を有し、前記異種遺伝子が野
    生型であり、かつ前記異種遺伝子の発現の効果が細胞機能についてのアッセイに
    より測定されることを特徴とする、請求項23または24に記載の方法。
  26. 【請求項26】 前記哺乳動物細胞が、突然変異により不活性化された1つ
    以上の内因性遺伝子を有する請求項23または24に記載の方法。
  27. 【請求項27】 単純ヘルペスウイルスの少なくともICP4遺伝子およびICP3
    4.5遺伝子を改変して前記遺伝子を機能的に不活性化し、その際必ずICP27遺伝子
    が完全な状態で、および/または機能的に保持されるようにすることを含む、請
    求項1に記載の単純ヘルペスウイルスの製造方法。
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