JP2002363728A - 真空成膜装置用部品とそれを用いた真空成膜装置 - Google Patents

真空成膜装置用部品とそれを用いた真空成膜装置

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JP2002363728A JP2001171465A JP2001171465A JP2002363728A JP 2002363728 A JP2002363728 A JP 2002363728A JP 2001171465 A JP2001171465 A JP 2001171465A JP 2001171465 A JP2001171465 A JP 2001171465A JP 2002363728 A JP2002363728 A JP 2002363728A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 真空成膜装置で内部応力が大きい薄膜を成膜
する際に、成膜工程中に付着する成膜材料の剥離を安定
かつ有効に防止し、装置クリーニングや部品の交換など
に伴う生産性の低下や成膜コストの増加を抑える。 【解決手段】 Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、R
u、Pd、Ir、Pt、Ag、AuおよびInから選ば
れる金属元素の単体、もしくは前記金属元素を含む合金
または化合物の薄膜を成膜する真空成膜装置の構成部品
である。装置構成部品1は、部品本体2と、この部品本
体2の表面に形成され、Al、Ti、Zr、Nb、T
a、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Pt、
Ag、ZnおよびSnから選ばれる少なくとも1種の元
素を含有するCu合金(Cuの含有比率が65〜95質量
%)の溶射膜3とを具備する。Cu合金溶射膜3ビッカ
ース硬さでHv200以下の硬度を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スパッタリング装
置やCVD装置などの真空成膜装置に用いられる真空成
膜装置用部品とそれを用いた真空成膜装置に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体部品や液晶部品などにおいては、
スパッタリング法やCVD法などの成膜方法を利用して
各種の配線や電極などを形成している。具体的には、半
導体基板やガラス基板などの被成膜基板上に、スパッタ
リング法やCVD法などを適用して、各種の金属薄膜や
金属化合物薄膜を形成している。これら各薄膜は配線
層、電極層、バリア層、下地層(ライナー材)などとし
て利用される。
【0003】ところで、上述した金属薄膜や金属化合物
薄膜の形成に使用されるスパッタリング装置やCVD装
置などの真空成膜装置においては、成膜工程中に成膜装
置内に配置されている各種部品にも成膜材料が付着、堆
積することが避けられない。このような部品上に付着、
堆積した成膜材料(付着物)は、成膜工程中に部品から
剥離することによりダストの発生原因となる。このよう
なダストが被成膜基板上の薄膜中に混入すると、配線形
成後にショートやオープンなどの配線不良を引き起こ
し、製品歩留りの低下を招くことになる。
【0004】このようなことから、従来のスパッタリン
グ装置などにおいては、防着板やターゲット固定部品な
どの装置構成部品の表面に、ターゲット材もしくはそれ
と熱膨張率が近い材料の被膜を形成することが行われて
いる。また、部品表面への被膜の形成方法に関しても種
々の提案がなされており、特に部品本体との密着性や成
膜材料の付着性などに優れる溶射法が適用されている
(例えば特開昭61-56277号公報、特開平9-272965号公報
など参照)。このような部品表面の被膜によって、装置
構成部品上に付着、堆積した成膜材料(付着物)の剥
離、脱落を防止している。
【0005】上記したような従来の付着物の剥離防止対
策によっても、ある程度の効果が得られている。しか
し、例えばWやTaに代表される高融点の金属を成膜材
料として用いて、金属薄膜や化合物薄膜を成膜した場合
には、薄膜の内部応力が大きいことに起因して、装置構
成部品上に付着、堆積した成膜材料(付着物)の剥離が
生じやすいという問題がある。特に、窒化物や酸化物な
どの化合物薄膜は内部応力が顕著であることから、付着
物の装置構成部品に対する密着力が低下して容易に剥離
してしまう。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、従来
の真空成膜装置の構成部品における付着物の剥離防止対
策では、W膜、Ta膜、WN膜、TaN膜などに代表さ
れる内部応力が大きい薄膜を成膜する際に、部品表面に
付着した成膜材料(付着物)の剥離を十分に抑制するこ
とができず、比較的短期間で付着物の剥離が生じてしま
うという問題がある。付着物の剥離が発生すると急激に
ダストの発生量が増加するため、装置のクリーニングや
部品の交換が必要となり、結果的に生産性の低下や成膜
コストの上昇などが生じてしまう。
【0007】すなわち、内部応力が大きい金属薄膜や化
合物薄膜を成膜するための真空成膜装置においては、従
来の付着物の剥離防止対策が十分に機能せず、生産性の
低下や成膜コストの増加などを招いている。さらに、内
部応力が大きい薄膜は、被成膜基板に対する付着力も弱
いため、成膜時に基板温度を高く設定する場合が多く、
このような際には部品温度も例えば500℃前後まで上昇
する。このため、装置構成部品の表面に形成する被膜に
は、高温環境下での使用に耐え得るような特性を有する
ことが求められている。
【0008】また、最近の半導体素子においては、256
M、1Gというような高集積度を達成するために、配線幅
の狭小化(例えば0.18μm、さらには0.1μm以下)が進
められている。このように狭小化された配線やそれを有
する素子においては、例えば直径0.2μm程度の極微小粒
子(微小パーティクル)が混入しても、配線不良や素子
不良などを引起こすことになるため、装置構成部品に起
因する微細なダスト(パーティクル)の発生をより一層
抑制することが強く望まれている。
【0009】本発明はこのような課題に対処するために
なされたもので、内部応力が大きい薄膜を成膜する際
に、成膜工程中に付着する成膜材料の剥離を安定かつ有
効に防止し、装置クリーニングや部品の交換などに伴う
生産性の低下や成膜コストの増加を抑えると共に、微細
なダストの発生を抑制することを可能にした真空成膜装
置用部品、さらに成膜した膜中へのダストの混入を抑制
し、高集積化された半導体素子などへの対応を図ると共
に、稼働率の改善により成膜コストの低減などを図るこ
とを可能にした真空成膜装置を提供することを目的とし
ている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の真空成膜装置用
部品は、請求項1に記載したように、Ti、Zr、H
f、Nb、Ta、W、Ru、Pd、Ir、Pt、Ag、
AuおよびInから選ばれる金属元素の単体、もしくは
前記金属元素を含む合金または化合物の薄膜を成膜する
真空成膜装置の構成部品であって、部品本体と、前記部
品本体の表面に形成されたCu合金膜とを具備すること
を特徴としている。
【0011】本発明の真空成膜装置用部品において、C
u合金膜には例えば請求項2に記載したように、Al、
Ti、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、F
e、Co、Ni、Pt、Ag、ZnおよびSnから選ば
れる少なくとも1種の元素を含有するCu合金が用いら
れる。本発明においては、特に請求項3に記載したよう
にCu−Al合金を適用することが望ましい。また、C
u合金膜は請求項4に記載したように、Cuの含有比率
が65〜95質量%の範囲のCu合金で構成することが好ま
しい。
【0012】また、本発明の真空成膜装置用部品におい
ては、請求項5に記載したように、Cu合金膜がビッカ
ース硬さでHv200以下の硬度を有することが好ましく、
さらに請求項6に記載したように、Cu合金膜が200μm
以上の膜厚を有することが好ましい。本発明の真空成膜
装置用部品において、部品本体表面へのCu合金膜の形
成方法としては、溶射法、真空蒸着法、イオンプレーテ
ィング法などが適用可能であるが、特に請求項8に記載
したダストの低減効果に優れる溶射膜を適用することが
望ましい。
【0013】本発明の真空成膜装置用部品においては、
部品本体の表面にCu合金膜を形成している。例えば、
ビッカース硬さがHv200以下のCu合金膜は良好な応力
緩和効果を有している。Cu合金膜による応力緩和効果
は、その膜厚を200μm以上としたり、また溶射膜を適用
することでより一層向上する。すなわち、Cu合金膜は
その上に付着した成膜材料(付着物)の内部応力を緩和
する機能を有することから、上述したような内部応力が
大きい金属の単体薄膜、合金薄膜または化合物薄膜を成
膜する場合においても、部品上に堆積した付着物の剥離
を安定かつ有効に抑制することができる。
【0014】従って、真空成膜装置用部品上に堆積する
付着物の剥離によるダスト(パーティクル)の発生を抑
えることができると共に、装置クリーニングや部品交換
の回数を大幅に減らすことができる。ダスト(パーティ
クル)の発生量の低減は、真空成膜装置で形成する各種
の薄膜、さらにはそれを用いた素子や部品の歩留り向上
に大きく寄与する。また、装置クリーニングや部品交換
回数の低減は、生産性の向上並びに成膜コストの削減に
大きく寄与する。
【0015】ここで、応力緩和効果はCu合金膜より低
硬度化が可能なCu膜の方が優れることが考えられる
が、Cu膜は耐食性に劣り、容易に酸化してしまうとい
う欠点を有する。このように、Cu膜は膜特性の経時変
化が大きく、付着物の密着性などが経時的に劣化しやす
いため、結果的にダストの発生量などが増加しやすい傾
向を有する。また、被膜の酸化は部品取付け後の装置内
真空度にも悪影響を及ぼす。さらに、Cu膜の酸化物を
除去するために、水素雰囲気中で熱処理して還元するこ
とも考えられるが、このような処理を施すと水素脆化に
より部品本体との密着性が低下してしまう。また、Cu
膜自体の密着強度も高いとは言えない。
【0016】このような点に対して、Cu合金膜はCu
膜に比べて耐食性に優れることから、膜特性の経時変化
が抑制され、その結果としてダストの発生を長期間にわ
たって安定に抑制することが可能となる。また、Cu合
金膜は部品本体に対する密着強度もCu膜に比べて大き
く、さらに水素脆化をもたらす還元処理などを施す必要
がないため、部品本体からのCu合金膜自体の剥離を安
定的に抑制することができる。このようなことからも、
装置クリーニングや部品交換回数の低減を図ることが可
能となる。
【0017】本発明の真空成膜装置用部品において、部
品本体上に形成する被膜はCu合金膜の単層構造に限ら
れるものではない。すなわち、請求項10に記載したよ
うに、Cu合金膜上にそれとは異種の金属材料からなる
第2の金属膜を設けてもよい。第2の金属膜には、例え
ば薄膜の構成元素などが使用される。
【0018】本発明の真空成膜装置は、請求項11に記
載したように、真空容器と、前記真空容器内に配置され
る被成膜試料保持部と、前記真空容器内に前記被成膜試
料保持部と対向して配置され、Ti、Zr、Hf、N
b、Ta、W、Ru、Pd、Ir、Pt、Ag、Auお
よびInから選ばれる金属元素の単体、もしくは前記金
属元素を含む合金または化合物の薄膜を成膜するための
成膜源と、前記成膜源を保持する成膜源保持部と、前記
被成膜試料保持部または前記成膜源保持部の周囲に配置
された防着部品とを具備し、前記被成膜試料保持部、前
記成膜源保持部および前記防着部品から選ばれる少なく
とも1つが、上記した本発明の真空成膜装置用部品から
なることを特徴としている。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施するための形
態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態
による真空成膜装置用部品の要部構成を示す断面図であ
る。同図に示す真空成膜装置用部品1は、部品本体(基
材)2の表面に設けられたCu合金膜3を有している。
なお、部品本体2の構成材料は特に限定されるものでは
ないが、例えば装置部品の構成材料として一般的なステ
ンレス材などが用いられる。部品本体2の被膜形成面は
アンカー効果が得られるように、予めブラスト処理など
で荒らしておくことが好ましい。
【0020】上記したCu合金膜3は溶射法、真空蒸着
法、イオンプレーティング法などの種々の被膜形成方法
を適用して形成することができるが、特にダストの低減
効果に優れる溶射法を適用して形成することが望まし
い。このようなCu合金溶射膜3は、パーティクルの発
生を低減するために、その表面形態が制御可能な溶射法
を適用して形成することが好ましい。
【0021】具体的には、部品本体2の構成材料や形
状、使用される環境条件、溶射材料などに応じて、アー
ク溶射法、プラズマ溶射法、超高速フレーム溶射法など
を適宜選択して使用する。溶射材料には、例えば線材や
粉末などが用いられる。そして、電流、電圧、ガス流
量、圧力、溶射距離、ノズル径、材料供給量などの溶射
条件をコントロールすることによって、Cu合金溶射膜
3の膜厚や表面粗さなどを制御することができる。溶射
した部品1には、膜の軟化や脱ガスなどを目的としてア
ニーリング処理が施される。
【0022】Cu合金溶射膜3には、例えばAl、T
i、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、
Co、Ni、Pt、Ag、ZnおよびSnから選ばれる
少なくとも1種の元素(以下、M元素と記す)を含有す
るCu合金が用いられる。さらに、Cu合金溶射膜3は
Cuの含有比率が65〜95質量%の範囲のCu合金で構成
することが好ましい。このようなCu合金を適用するこ
とによって、Cu合金溶射膜3の硬度を再現性よくビッ
カース硬さでHv200以下とすることができる。ここで、
本発明のCu合金溶射膜3においては、合金元素(M元
素)の一部が単体として存在していてもよい。すなわ
ち、Cu合金溶射膜3はM元素を固溶点以上に含んでい
てもよく、またCu原料とM元素原料を用いた複合溶射
によって形成したものであってもよい。
【0023】上述したようなCu合金溶射膜3によっ
て、成膜工程中に部品1上に付着、堆積した成膜材料
(付着物)の剥離が防止される。すなわち、Cu合金溶
射膜3の低硬度特性に加えて、溶射膜の気孔を多数含む
内部構造などによって、付着物の内部応力を吸収して緩
和することができる。特に、ビッカース硬さがHv200以
下のCu合金溶射膜3は優れた応力緩和効果を示すこと
から、内部応力が大きい金属の単体薄膜、合金薄膜また
は化合物薄膜を成膜する場合においても、部品1上に堆
積した付着物の剥離、脱落を長期間にわたって安定かつ
有効に抑制することができる。
【0024】ここで、応力緩和効果はCu合金膜より低
硬度化が可能なCu膜の方が優れることが考えられる
が、Cu膜は耐食性に劣り、容易に酸化してしまうとい
う欠点を有する。例えば、Cu膜を大気中で溶射すると
容易に酸化されてしまう。また、真空中で溶射した場合
においても、その後の大気放置により容易に酸化されて
しまう。このように、Cu膜は膜特性の経時変化が大き
く、付着物の密着性などが経時的に劣化しやすいため、
結果的にダストの発生量などが増加しやすい傾向を有す
る。また、被膜の酸化は部品取付け後の装置内真空度に
も悪影響を及ぼす。さらに、Cu膜の酸化物を除去する
ために、水素雰囲気中で熱処理して還元することも考え
られるが、このような処理を施すと水素脆化により部品
本体との密着性が低下してしまう。また、Cu膜自体の
密着強度も高いとは言えない。低硬度被膜としてはAl
膜やNi膜も挙げられるが、これらは高温特性や部品本
体に対する密着性に劣るものである。
【0025】このような点に対して、上述したようなC
u合金で構成したからなるCu合金溶射膜3は、Cu膜
に比べて耐食性に優れることから、膜特性の経時変化が
抑制され、その結果としてダストの発生を長期間にわた
って安定に抑制することが可能となる。合金化による耐
食性の向上効果は、上述したM元素のいずれか1種以上
の元素を含有させたCu合金を用いることにより得るこ
とができる。Cu合金溶射膜3は耐食性に加えて耐熱性
にも優れるものである。
【0026】さらに、Cu合金溶射膜3は部品本体2に
対する密着強度もCu膜に比べて大きい。すなわち、C
u溶射膜の部品本体2に対する密着強度は13MPa程度で
あるのに対して、例えばAlを10質量%程度含むCu−
Al合金からなるCu合金溶射膜3の密着強度はその2
〜3倍程度になる。さらに、Cu合金溶射膜3を用いた
場合には、水素脆化をもたらす還元処理などを施す必要
がないため、部品本体2からのCu合金膜溶射膜3自体
の剥離を安定的に抑制することができる。
【0027】上述したような付着物の応力緩和効果、さ
らには耐食性や密着強度の改善効果を得る上で、Cu合
金溶射膜3にはCuの含有比率が65〜95質量%の範囲の
Cu合金を用いることが好ましい。Cuの含有比率が95
質量%を超えると、耐食性や密着強度の改善効果が十分
に得られないおそれがある。一方、内部応力が大きい薄
膜を成膜する際に、部品1に堆積した付着物の応力緩和
効果を十分に得る上で、Cu合金溶射膜3の硬度はビッ
カース硬さでHv200以下とすることが好ましく、このよ
うな硬度はCuの含有比率を65質量%以上とすることで
得ることができる。Cu合金溶射膜3のCu含有比率は
80〜95質量%の範囲とすることがより好ましい。
【0028】Cu合金溶射膜3の硬度は上記したように
ビッカース硬さでHv200以下とすることが好ましい。ビ
ッカース硬さがHv200以下のCu合金溶射膜3は、その
上部に堆積する付着物の内部応力を緩和する効果に優れ
るだけでなく、それ自体の内部応力も十分に緩和されて
いることから、Cu合金溶射膜3自体の剥離も有効に防
ぐことができる。すなわち、Cu合金溶射膜3の内部応
力を十分に緩和することによって、成膜工程時に外部応
力(例えば熱応力)が負荷された際に、Cu合金溶射膜
3の内部からの破壊の進行を有効に抑制することができ
る。これによって、Cu合金溶射膜3自体の剥離をより
一層有効に防ぐことが可能となる。Cu合金溶射膜3の
硬度はHv150以下とすることがより好ましい。
【0029】ここで、本発明で規定するCu合金膜3の
ビッカース硬さは、以下のようにして測定した値を示す
ものとする。すなわち、まずCu合金膜3の表面を研磨
して平坦化する。次いで、平坦化した面に荷重200gでダ
イヤモンド圧子を30秒間押し付ける。これにより生じた
圧痕の長さをXおよびY方向に測定し、その平均長さか
らビッカース硬さ値に変換する。このような測定を5回
行い、その平均値を本発明のビッカース硬さとする。
【0030】また、Cu合金溶射膜3を構成するCu合
金中に含有させる合金元素は、上述したM元素のいずれ
であってもよいが、特にAlを用いることが好ましい。
すなわち、本発明におけるCu合金溶射膜3は特にCu
−Al合金で構成することが望ましい。この際のAlの
含有量は5〜15質量%の範囲とすることが好ましい。こ
のようなCu−Al合金によれば、Cu合金溶射膜3の
部品本体2に対する密着性や耐食性などを高めることが
可能であると共に、より一層の低硬度化を実現すること
ができる。
【0031】Cu合金溶射膜3はCu膜などに比べて耐
食性に優れるが、特にCuに固溶していないM元素、例
えばAlの一部をCu合金溶射膜3の表面近傍で酸化さ
せ、Cu合金溶射膜3の表面にCu以外の元素の酸化物
を形成することが好ましい。このようなCu合金溶射膜
3表面の酸化物は、予めCuに対して固溶点を超えるM
元素(例えばAl)を含有させておくことで形成するこ
とができる。固溶点を超えるAlはCu合金溶射膜3の
最表面を層状に覆うため、大気中で溶射した場合にはC
u合金溶射膜3の表面にAl酸化物層が形成される。複
合溶射の場合には、最表面をAl溶射層としておけばよ
い。
【0032】上記したように、Al酸化物などでCu合
金溶射膜3の表面を覆うことによって、膜内部の経時的
な酸化をより安定的に防ぐことができる。特に、Alは
その酸化物が安定であることに加えて、Cu合金溶射膜
3の表面に酸化物を形成しやすい。このようなことから
も、Cu−Al合金は本発明のCu合金溶射膜3に好適
である。Cu合金溶射膜3の表面に形成する酸化物層の
厚さは数nm〜数10nm程度あれば十分である。具体的に
は、30〜40nm程度のAl酸化物層などを形成することが
好ましい。
【0033】上述したCu合金溶射膜3は、さらに200
μm以上の膜厚を有することが好ましい。すなわち、膜
厚が200μm以上のCu合金溶射膜3は優れた応力緩和効
果を示すことから、内部応力が大きい金属の単体薄膜、
合金薄膜または化合物薄膜を成膜する場合においても、
部品1上に堆積した付着物の剥離、脱落をより確実に抑
制することができる。Cu合金溶射膜3の膜厚は400μm
以上とすることがより好ましい。Cu合金溶射膜3の膜
厚の上限は必ずしも規定されるものではないが、あまり
厚くしてもそれ以上の効果が得られないだけでなく、C
u合金溶射膜3自体の剥離が発生しやすくなるため、そ
の膜厚は1mm以下とすることが好ましい。Cu合金溶射
膜3の膜厚は、特に付着物の応力緩和効果に優れると共
に、それ自体の内部応力も小さい400〜600μmの範囲と
することが望ましい。
【0034】Cu合金溶射膜3はその形成過程に基づい
て複雑な表面形態を有することから、付着物に対して良
好な密着性を示す。すなわち、Cu合金溶射膜3の表面
粗さがあまり小さいと、成膜材料(付着物)の堆積量が
増加した際に、その内部応力などにより剥離、脱落が生
じやすくなるおそれがある。このようなことから、Cu
合金溶射膜3の表面粗さはJIS B 0601-1994で規定する
算術平均粗さRaで15μm以上であることが好ましい。
【0035】一方、Cu合金溶射膜3の表面粗さが大き
くなりすぎると、付着物の形態が不安定となって、逆に
脱落が生じやすくなるおそれがある。すなわち、Cu合
金溶射膜3表面の凹凸が大きくなりすぎると、付着物が
パーティクルの発生しやすい付着形態となり、さらに付
着物がCu合金溶射膜3全体に付着せずに空孔が残るた
め、そこを起点として付着物の剥離、脱落が起こるおそ
れがある。従って、Cu合金溶射膜3の表面粗さは算術
平均粗さRaで35μm以下であることが好ましい。Cu合
金溶射膜3の表面粗さは算術平均粗さRaが18〜30μmの
範囲となるように制御することがより好ましい。
【0036】上述したようなCu合金溶射膜3は、それ
自体の安定性や付着物の内部応力を吸収する応力緩和効
果に優れることから、内部応力が大きい金属の単体薄
膜、合金薄膜または化合物薄膜を成膜する場合において
も、部品1上に堆積した付着物の剥離を長期間にわたっ
て安定かつ有効に抑制することができる。さらに、Cu
合金溶射膜3はそれ自体の密着性にも優れ、Cu合金溶
射膜3自体の剥離も安定かつ有効に抑制することができ
る。
【0037】従って、真空成膜装置用部品1上に堆積す
る付着物の剥離や被膜(溶射膜)自体の剥離などによる
ダスト(パーティクル)の発生を抑えることができ、さ
らには装置クリーニングや部品交換の回数を大幅に減ら
すことが可能となる。言い換えると、装置構成部品1の
寿命を大幅に延ばすことができる。このように、装置構
成部品1を長寿命化することによって、成膜装置の稼働
率の向上(生産性の向上)、ひいては成膜コストの削減
を実現することができる。さらに、真空成膜装置で形成
する各種の膜(高応力膜)、それを用いた素子や部品な
どの歩留りを高めることが可能となる。
【0038】真空成膜装置用部品1に適用するCu合金
溶射膜3には、部品本体2の表面に形成した後に、膜の
軟化や脱ガスなどを目的としてアニール処理を施すこと
が好ましい。アニール処理は例えば300〜800℃の温度で
施される。アニール処理温度が300℃未満であると、C
u合金溶射膜3の軟化効果や脱ガス効果を十分に得るこ
とができない。一方、アニール処理温度が800℃を超え
ると部品本体2に熱変形が生じたり、またCu合金溶射
膜3に剥がれが生じるおそれがある。
【0039】さらに、アニール処理はCu合金溶射膜3
中のガス成分の除去を促進する上で、例えば1.33×10-3
Pa以下の真空雰囲気中で実施することが好ましい。Cu
合金溶射膜3や部品本体2の含有ガス成分の除去が不十
分であると、部品1を真空成膜装置に使用した際に、装
置内の圧力が必要な真空度(例えば1×10-5Pa前後)に
到達するまでに時間を要するほか、成膜した膜特性に悪
影響を及ぼすおそれがある。
【0040】このようなことから、Cu合金溶射膜3を
有する部品1の含有ガス成分量は、部品1を室温から50
0℃まで加熱したときに、部品1から発生するガス発生
量が水素(H2)、窒素(N2)、酸素(O2)、一酸化
炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)およびメタン(C
4)の総量で50μL/10g以下であることが好ましい。こ
のようなガス発生量を満足させることによって、真空成
膜装置に使用した際の作業性、信頼性、特性などを高め
ることが可能となる。
【0041】ここで、本発明における部品1からのガス
発生量は、以下のようにして求めた値を指すものとす
る。すなわち、まず厚さ3mmの板材に膜厚500μmのCu
合金溶射膜を形成し、これを10×10mmに切断して測定試
料とし、この試料のガス発生量をガス抽出分析器で測定
する。ガス発生量の測定は、まず試料を室温(常温)か
ら100℃まで昇温し、100℃で15分間保持する。この100
℃で保持している間のガス発生量を測定する。同様にし
て、100℃から200℃、200℃から300℃、300℃から400
℃、400℃から500℃まで、それぞれの温度で15分間ずつ
保持しながら昇温する。そして、各温度で保持している
間のガス発生量をそれぞれ測定し、これらの合計量をガ
ス発生量とする。これを試料10g当りのガス発生量に換
算する。
【0042】本発明の真空成膜装置用部品1において、
部品本体2上に形成する溶射膜はCu合金溶射膜3の単
層構造に限られるものではない。例えば図2に示すよう
に、Cu合金溶射膜3上にそれとは異種の金属材料から
なる第2の金属溶射膜4を設けてもよい。このような第
2の金属溶射膜4には、例えば付着物との熱膨張率の差
が小さい金属材料(例えば熱膨張率の差が15×10-6/K以
下の金属材料)、さらには成膜材料と同一材料などが用
いられる。このような構成を採用することによって、成
膜した薄膜のコンタミなどを防止することができる。第
2の金属溶射膜4の膜厚は50〜150μmの範囲とすること
が好ましい。
【0043】上述した本発明の装置構成部品1は、T
i、Zr、Hf、Nb、Ta、W、Ru、Pd、Ir、
Pt、Ag、AuおよびInから選ばれる金属元素の単
体、もしくは前記金属元素を含む合金または化合物の薄
膜、すなわち内部応力が大きい薄膜を成膜する真空成膜
装置に用いられる。具体的には、スパッタリング装置や
CVD装置などの真空成膜装置の構成部品として用いら
れ、特にスパッタリング装置に好適である。また、装置
構成部品1は成膜工程中に成膜材料が付着する部品であ
れば種々の部品に対して適用可能である。
【0044】次に、本発明の真空成膜装置の実施形態に
ついて説明する。図3は本発明の真空成膜装置をスパッ
タリング装置に適用した一実施形態の要部構成を示す図
である。同図において、11はバッキングプレート12
に固定されたスパッタリングターゲットである。スパッ
タリングターゲット11には、Ti、Zr、Hf、N
b、Ta、W、Ru、Pd、Ir、Pt、Ag、Auお
よびInから選ばれる金属元素の単体、もしくは前記金
属元素を含む合金または化合物の薄膜を成膜するための
材料が用いられる。
【0045】成膜源としてのスパッタリングターゲット
11の外周部下方には、アースシールド13が設けられ
ている。アースシールド13の下方には、さらに上部防
着板14および下部防着板15が配置されている。被成
膜試料である基板16は、スパッタリングターゲット1
1と対向配置するように、被成膜試料保持部であるプラ
テンリング17により保持されている。これらは図示を
省略した真空容器内に配置されている。真空容器には、
スパッタガスを導入するためのガス供給系(図示せず)
と真空容器内を所定の真空状態まで排気する排気系(図
示せず)とが接続されている。
【0046】この実施形態のスパッタリング装置におい
ては、アースシールド13、上部防着板14、下部防着
板15およびプラテンリング17を、上述した本発明の
真空成膜装置用部品1で構成している。真空成膜装置用
部品1の具体的な構成は前述した通りである。なお、C
u合金溶射膜3はいずれもスパッタリングターゲット1
1からスパッタされた粒子が付着する面に形成されてい
る。
【0047】上述したスパッタリング装置においては、
成膜工程中にアースシールド13、上部防着板14、下
部防着板15、プラテンリング17などの表面にスパッ
タされた成膜材料(ターゲット11の構成材料)が付着
するが、この付着物の剥離は部品表面のCu合金溶射膜
3により安定かつ有効に防止される。また、Cu合金溶
射膜3自体も安定で長寿命である。これらによって、パ
ーティクルの発生量、さらには基板16に形成される膜
中への混入量を大幅に抑制することができる。従って、
256M、1Gというような高集積度の半導体素子や液晶表示
素子などの製造歩留りを大幅に高めることが可能とな
る。すなわち、配線幅が0.2μm以下というように狭小で
かつ高密度の配線網を形成する配線膜であっても、微小
パーティクル(例えば直径0.2μm以上)の混入を大幅に
抑制できることから、配線不良を大幅に低減することが
可能となる。これにより、素子歩留りが向上する。
【0048】さらに、付着物やCu合金溶射膜3自体の
剥離を安定かつ有効に抑制することが可能であることか
ら、装置クリーニングや部品交換の回数を大幅に減らす
ことができる。この装置クリーニングや部品交換回数の
低減に基づいて、スパッタリング装置の稼働率の向上
(生産性の向上)を図ることができる。すなわち、スパ
ッタリング装置のランニングコストを低減することがで
き、ひいては各種薄膜の成膜コストを削減することが可
能となる。
【0049】上記した実施形態においては、アースシー
ルド13、上部防着板14、下部防着板15、プラテン
リング17を本発明の部品で構成した例について説明し
たが、これら以外にバッキングプレート12、ターゲッ
ト外周押え(図示せず)、シャッタ(図示せず)などを
本発明の真空成膜装置用部品で構成することも有効であ
る。さらに、これら以外の部品についても、成膜工程中
に成膜材料の付着が避けられない部品であれば、本発明
の真空成膜装置用部品は有効に機能する。
【0050】なお、上記実施形態では本発明の真空成膜
装置をスパッタリング装置に適用した例について説明し
たが、これ以外に真空蒸着装置(イオンプレーティング
やレーザーアブレーションなどを含む)、CVD装置な
どに対しても本発明の真空成膜装置は適用可能であり、
上述したスパッタリング装置と同様な効果を得ることが
できる。
【0051】
【実施例】次に、本発明の具体的な実施例について述べ
る。
【0052】実施例1、比較例1〜3 まず、図3に示したスパッタリング装置のアースシール
ド13、上部防着板14、下部防着板15およびプラテ
ンリング17(部品基材は全てSUS 304)について、ブ
ラストによる下地処理を施した後、基材表面にアーク溶
射法でCu合金溶射膜を形成した。Cu合金溶射膜はA
lを9.5質量%含有するCu−Al合金で構成した。
【0053】Cu合金膜の溶射は、予め純Cuに9.5質
量%のAlを添加し、これを溶融して合金化した材料を
線材(線径16mm)に加工し、このCu−Al合金線材を
溶射材として用いて実施した。アーク溶射の条件は電流
100A、電圧30V、空気圧80PSI、溶射距離150mmとし、大
気中でアーク溶射した。このようにして、膜厚が250μ
m、表面粗さがRaで18μmのCu−Al合金溶射膜を形
成した。
【0054】次に、上記した部品のCu溶射面をクリー
ニング処理した後、アニールおよび脱ガス処理として3
×10-2Pa以下の真空雰囲気中にて600℃×3時間の条件で
熱処理を施した。熱処理後のCu合金溶射膜の硬度はビ
ッカース硬さでHv130であった。
【0055】一方、本発明との比較例として、純Cuに
よる溶射膜(比較例1)、純Niによる溶射膜(比較例
2)、純Alによる溶射膜(比較例3)をそれぞれ部品
表面に形成する以外は、実施例1と同様にして各部品を
作製した。各溶射膜の膜厚および表面粗さは実施例1と
同様とした。また、各比較例による部品については3×1
0-2Pa以下の真空雰囲気中にて500℃×3時間の条件で熱
処理を施した。
【0056】このようにして作製した実施例1および比
較例1〜3による各部品を用いて、それぞれマグネトロ
ンスパッタリング装置を組立てた。これら各マグネトロ
ンスパッタリング装置に高純度Tiターゲット11をセ
ットし、マグネトロンスパッタリングを行った。具体的
に、まず6インチSiウェハー上にTi薄膜を形成し、
さらにその上にN2ガスを導入しながらマグネトロンス
パッタリングを行ってTiN薄膜を形成した。スパッタ
条件は、スパッタ圧4×10-1Pa、スパッタ電流5A、Ar
流量15sccm、N2流量0/30sccmとした。また、スパッタ
リングはヒータ加熱で500℃とした装置内で実施した。
【0057】得られたTi/TiN薄膜上の直径0.2μm
以上のダスト数をパーティクルカウンタで測定した。こ
のような操作を連続して行い、50ロット毎にダスト数を
測定した。さらに、膜剥離が発生するまでスパッタ操作
を続け、膜剥離までの寿命(ロット数)を調べた。これ
らの結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】表1から明らかなように、Cu−Al合金
溶射膜を形成した部品を用いることによって、膜剥離ま
での寿命を延ばすことができると共に、ダスト数も低減
できることが分かる。このように、実施例1のCu−A
l合金溶射膜は部品寿命の改善並びにダストの低減に有
効である。
【0060】実施例2、比較例4〜6 上記した実施例1および比較例1〜3と同様にして作製
した各部品を用いて、それぞれマグネトロンスパッタリ
ング装置を組立てた。これら各マグネトロンスパッタリ
ング装置に高純度Taターゲット11をセットし、マグ
ネトロンスパッタリングを行った。具体的に、まず6イ
ンチSiウェハー上にTa薄膜を形成し、さらにその上
にN2ガスを導入しながらマグネトロンスパッタリング
を行ってTaN薄膜を形成した。スパッタ条件は、スパ
ッタ圧4×10-1Pa、スパッタ電流5A、Ar流量15sccm、
2流量30sccmとした。また、スパッタリングはヒータ
加熱で500℃とした装置内で実施した。
【0061】得られたTa/TaN薄膜上の直径0.2μm
以上のダスト数をパーティクルカウンタで測定した。こ
のような操作を連続して行い、10ロット毎にダスト数を
測定した。さらに、膜剥離が発生するまでスパッタ操作
を続け、膜剥離までの寿命(ロット数)を調べた。これ
らの結果を表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】表2から明らかなように、Cu−Al合金
溶射膜を形成した部品を用いることによって、膜剥離ま
での寿命を延ばすことができると共に、ダスト数も低減
できることが分かる。このように、実施例2のCu−A
l合金溶射膜は部品寿命の改善並びにダストの低減に有
効である。
【0064】実施例3 上記した実施例1と同様にして、Cu−Al合金溶射膜
(膜厚:250μm,表面粗さRa:18μm)を作製した各部
品に対して、それぞれ以下の条件で熱処理を施した。試
料1は実施例1と同一条件で熱処理した。試料2はAr
雰囲気中にて600℃×3時間の条件で熱処理した。試料3
には熱処理を施さなかった。
【0065】これら各試料(試料1〜3)の室温から50
0℃まで加熱したときのガス発生量を前述した方法にし
たがって測定した。これら各試料の測定結果を表3〜5
にそれぞれ示す。さらに、各表には各試料に相当する部
品を用いたスパッタリング装置の真空到達時間(1×10
-5Paに到達するまでの時間)を併せて示す。なお、スパ
ッタリング装置の真空到達時間は300℃で4時間ベーキン
グした後に測定した。
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】表3〜5から明らかなように、Cu合金溶
射膜に真空雰囲気中で熱処理を施すことによって、ガス
発生量を低減することができることが分かる。これによ
って、スパッタリング装置の真空到達時間を短くするこ
とが可能となる。
【0070】実施例4、比較例7〜9 図3に示したスパッタリング装置のアースシールド1
3、上部防着板14、下部防着板15およびプラテンリ
ング17(部品基材は全てSUS 304)について、ブラス
トによる下地処理を施した後、基材表面にアーク溶射法
でCu−Al合金溶射膜を形成した。Cu−Al合金溶
射膜は膜厚が400μm、表面粗さRaが15μmであり、溶射
条件は実施例1と同様とした。
【0071】次に、上記したCu−Al合金溶射膜上に
プラズマ溶射法でTi溶射膜を形成した。Ti溶射は、
溶射材として平均粒径が65μmのTi粉末原料を用い、
電流500A、電圧65V、Ar流量73L/min、H2流量8L/min
の条件下で実施した。2層溶射膜(Cu−Al合金+T
i)の最表面の表面粗さRaは12μmとした。この後、部
品の溶射面をクリーニング処理し、さらにアニールおよ
び脱ガス処理として、3×10-2Pa以下の真空雰囲気中に
て600℃×3時間の条件で熱処理を施した。
【0072】一方、本発明との比較例として、1層目を
純Cu溶射膜(比較例7)、純Ni溶射膜(比較例
8)、純Al溶射膜(比較例9)とする以外は、それぞ
れ実施例4と同様にして、Ti膜との2層溶射膜を有す
る部品を作製した。各溶射膜の膜厚および表面粗さは実
施例4と同様とした。また、各比較例による部品の熱処
理条件は、比較例7(Cu+Ti)と比較例8(Ni+
Ti)については3×10-2Pa以下の真空雰囲気中にて600
℃×3時間、比較例9(Al+Ti)については3×10-2
Pa以下の真空雰囲気中にて400℃×3時間とした。
【0073】このようにして作製した実施例4および比
較例7〜9による各部品を用いて、それぞれマグネトロ
ンスパッタリング装置を組立てた。これら各マグネトロ
ンスパッタリング装置に高純度Tiターゲット11をセ
ットし、マグネトロンスパッタリングを行った。スパッ
タリング条件は実施例1と同一とし、それぞれTi/T
iN薄膜を形成し、これらTi/TiN薄膜上の直径0.
2μm以上のダスト数をパーティクルカウンタで測定し
た。このような操作を連続して行い、50ロット毎にダス
ト数を測定した。さらに、膜剥離が発生するまでスパッ
タ操作を続け、膜剥離までの寿命(ロット数)を調べ
た。これらの結果を表6に示す。
【0074】
【表6】
【0075】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の真空成膜
装置用部品によれば、成膜工程中に付着する成膜材料の
剥離を安定かつ有効に防止できると共に、剥離防止用の
被膜自体の安定性を高めることが可能となる。従って、
装置のクリーニングや部品の交換回数を削減することが
できる。また、このような真空成膜装置用部品を有する
本発明の真空成膜装置によれば、配線膜や素子の不良発
生原因となる膜中へのダストの混入を抑制することが可
能となると共に、生産性の向上並びに成膜コストの低減
を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態による真空成膜装置用部
品の要部構造を示す断面図である。
【図2】 本発明の真空成膜装置用部品の他の構成例を
示す断面図である。
【図3】 本発明の真空成膜装置を適用したスパッタリ
ング装置の一実施形態の要部構造を示す図である。
【符号の説明】
1……真空成膜装置用部品,2……部品本体,3……C
u合金溶射膜,4……第2の金属溶射膜,11……スパ
ッタリングターゲット,12……バッキングプレート,
13……アースシールド,14、15……防着板,16
……被成膜基板,17……プラテンリング
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01L 21/285 H01L 21/285 C S (72)発明者 佐藤 道雄 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内 (72)発明者 中村 隆 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内 (72)発明者 高阪 泰郎 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内 Fターム(参考) 4K029 DA09 DA10 DC20 JA01 4K030 DA06 GA02 KA12 KA47 4K031 AA04 AA08 AB02 AB03 AB07 AB09 CB31 CB35 DA03 DA04 FA01 4K044 AA03 AB10 BA02 BA06 BB01 BB03 BC00 BC02 CA11 CA62 4M104 BB04 BB06 BB07 BB08 BB09 BB13 BB14 BB17 BB18 BB30 DD39 DD44 HH20

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、R
    u、Pd、Ir、Pt、Ag、AuおよびInから選ば
    れる金属元素の単体、もしくは前記金属元素を含む合金
    または化合物の薄膜を成膜する真空成膜装置の構成部品
    であって、 部品本体と、前記部品本体の表面に形成されたCu合金
    膜とを具備することを特徴とする真空成膜装置用部品。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の真空成膜装置用部品にお
    いて、 前記Cu合金膜は、Al、Ti、Zr、Nb、Ta、C
    r、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Pt、Ag、
    ZnおよびSnから選ばれる少なくとも1種の元素を含
    有するCu合金からなることを特徴とする真空成膜装置
    用部品。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の真空成膜装置用部品にお
    いて、 前記Cu合金膜は、Cu−Al合金からなることを特徴
    とする真空成膜装置用部品。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし請求項3のいずれか1項
    記載の真空成膜装置用部品において、 前記Cu合金膜は、Cuの含有比率が65〜95質量%の範
    囲のCu合金からなることを特徴とする真空成膜装置用
    部品。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし請求項4のいずれか1項
    記載の真空成膜装置用部品において、 前記Cu合金膜はビッカース硬さでHv200以下の硬度を
    有することを特徴とする真空成膜装置用部品。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし請求項5のいずれか1項
    記載の真空成膜装置用部品において、 前記Cu合金膜は200μm以上の膜厚を有することを特徴
    とする真空成膜装置用部品。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし請求項6のいずれか1項
    記載の真空成膜装置用部品において、 前記Cu合金膜の表面には、前記Cu合金中のCu以外
    の元素の酸化物が形成されていることを特徴とする真空
    成膜装置用部品。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし請求項7のいずれか1項
    記載の真空成膜装置用部品において、 前記Cu合金膜は溶射膜であることを特徴とする真空成
    膜装置用部品。
  9. 【請求項9】 請求項1ないし請求項8のいずれか1項
    記載の真空成膜装置用部品において、 前記部品を室温から500℃まで加熱したときに、前記部
    品から発生するガス発生量が水素、窒素、酸素、一酸化
    炭素、二酸化炭素およびメタンの総量で50μL/10g以下
    であることを特徴とする真空成膜装置用部品。
  10. 【請求項10】 請求項1ないし請求項9のいずれか1
    項記載の真空成膜装置用部品において、 さらに、前記Cu合金膜上に設けられ、前記Cu合金膜
    とは異種の金属材料からなる第2の金属膜を具備するこ
    とを特徴とする真空成膜装置用部品。
  11. 【請求項11】 真空容器と、 前記真空容器内に配置される被成膜試料保持部と、 前記真空容器内に前記被成膜試料保持部と対向して配置
    され、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、Ru、P
    d、Ir、Pt、Ag、AuおよびInから選ばれる金
    属元素の単体、もしくは前記金属元素を含む合金または
    化合物の薄膜を成膜するための成膜源と、 前記成膜源を保持する成膜源保持部と、 前記被成膜試料保持部または前記成膜源保持部の周囲に
    配置された防着部品とを具備し、 前記被成膜試料保持部、前記成膜源保持部および前記防
    着部品から選ばれる少なくとも1つが、請求項1ないし
    請求項10のいずれか1項記載の真空成膜装置用部品か
    らなることを特徴とする真空成膜装置。
  12. 【請求項12】 請求項11記載の真空成膜装置におい
    て、 前記成膜装置はスパッタリング装置であることを特徴と
    する真空成膜装置。
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