JP2004083960A - 真空成膜装置用部品とそれを用いた真空成膜装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】真空成膜装置で高ストレス膜などを成膜する場合においても、成膜工程中に付着する成膜材料の剥離を再現性よく防止する。
【解決手段】真空成膜装置用部品1は、装置部品本体2と、この部品本体2の表面に形成されていると共に、20質量%以下のAlを含有し、残部が実質的にCuからなるCu合金溶射膜とを具備する。Cu合金溶射膜3は表面側に酸素含有領域Xが形成されており、かつCu合金溶射膜3の厚さTmに対する酸素含有領域Xの深さToの比(To/Tm)が0.05〜0.4の範囲に制御されている。スパッタリング装置などの真空成膜装置は、このような部品1を被成膜試料保持部、成膜源保持部、防着部品などとして具備する。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スパッタリング装置やCVD装置などの真空成膜装置に用いられる真空成膜装置用部品とそれを用いた真空成膜装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体部品や液晶表示部品などにおいては、スパッタリング法やCVD法などの成膜方法を利用して各種配線や電極などを形成している。具体的には、半導体基板やガラス基板などの被成膜基板上にスパッタリング法やCVD法などを適用して、Cu、Al、Ti、Mo、W、Ta、Mo−W合金などの導電性金属やWSi、TiSiなどの導電性金属化合物の薄膜を形成している。これら各薄膜は配線層、電極層、バリア層、下地層(ライナー材)などとして利用される。
【0003】
ところで、上述した金属薄膜や金属化合物薄膜の形成に使用されるスパッタリング装置やCVD装置などの真空成膜装置においては、成膜工程中に成膜装置内に配置されている各種部品(装置構成部品)にも成膜材料が付着、堆積することが避けられない。このような部品上に付着、堆積した成膜材料(付着物)は、成膜工程中に部品から剥離することによりパーティクルの発生原因となる。このようなパーティクルが被成膜基板(被成膜試料)上に成膜中の薄膜に混入すると、配線形成後にショートやオープンなどの配線不良を引き起こし、製品歩留りの低下を招くことになる。
【0004】
このようなことから、従来のスパッタリング装置などにおいては、防着板やターゲット固定部品などの装置構成部品の表面に、ターゲット材もしくはそれと熱膨張率が近い材料の被膜を形成することが行われている。また、部品表面への被膜の形成方法に関しても種々の提案がなされており、特に部品本体との密着性や成膜材料の付着性などに優れる溶射法が適用されている(例えば特開昭61−56277号公報、特開平9−272965号公報など参照)。このような部品表面に形成した被膜(溶射膜など)によって、装置構成部品上に付着、堆積した成膜材料(付着物)の剥離、脱落を防止している。
【0005】
上記したような従来の付着物の剥離防止策によっても、ある程度の効果が得られているが、W、Taおよびそれらの窒化物に代表される高ストレス膜を成膜する場合には、その内部応力に起因して装置構成部品上に付着、堆積した成膜材料(付着物)の剥離が生じやすいという問題がある。上記したW、Taおよびそれらの窒化物などの薄膜はCu配線の実用化に伴って、バリア層やコンタクト層などとして利用されるようになってきている。そこで、W、Taおよびそれらの窒化物に代表される高ストレス膜の成膜装置においては、付着物の剥離を抑制するために、部品表面に形成する被膜に高ストレス膜の応力を緩和する効果を持たせることが強く求められている。
【0006】
また、最近の半導体素子においては、256M、1Gというような高集積度を達成するために、配線幅の狭小化(狭ピッチ化/例えば0.18μm、さらには0.1μm以下)が進められている。このように狭小化された配線やそれを有する素子においては、例えば直径0.2μm程度の極微小粒子(微小パーティクル)が混入しても、配線不良や素子不良などを引起こすことになるため、装置構成部品に起因する微細なパーティクルの発生を抑制することが強く望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の真空成膜装置の構成部品における付着物の剥離防止対策では、W、Taおよびそれらの窒化物などに代表される高ストレス膜を成膜する際に、部品表面に付着した成膜材料(付着物)の剥離を十分に抑制することができず、比較的短期間で容易に付着物の剥離が生じてしまう。このため、付着物が剥離するまでの部品寿命が短く、1部品あたりのウェハー処理数が低下して、結果的に成膜部品(半導体素子など)の生産性が低下したり、また成膜コストが上昇するなどの問題を招いている。
【0008】
すなわち、高ストレス膜を成膜するための真空成膜装置においては、従来の付着物の剥離防止対策が十分に機能せず、生産性の低下や成膜コストの増加などを招いている。さらに、高ストレス膜は被成膜基板に対する付着力も弱いため、成膜時に基板温度を高く設定する場合が多く、このような際には部品温度も例えば500℃前後まで上昇する。このようなことから、装置構成部品の表面に形成する被膜(溶射膜など)には、高温環境下での使用に耐え得ると共に、高ストレス膜の応力を緩和して付着物の剥離を抑制することが強く求められている。
【0009】
このような点に対して、特開2001−247957号公報には低硬度の溶射膜(例えばHv100以下のCu系溶射膜)を部品表面に形成した真空成膜装置用部品が記載されている。低硬度のCu系溶射膜は高ストレス膜などの応力緩和効果や耐高温特性などに優れているものの、例えば溶射膜にCu単体を適用した場合には、Cu溶射膜が容易に酸化して付着物の密着性などが劣化しやすい。このため、パーティクルの発生量が経時的に増加しやすいという傾向を有する。また、Cu溶射膜自体の密着強度も必ずしも高いとは言えない。
【0010】
また、上記公報にはCu溶射膜と他の金属溶射膜との積層膜やCu合金(例えばCu−Al合金)の溶射膜などを適用し得ることが記載されている。例えば、Cu合金はその合金組成に基づいてCu単体より耐食性を高めることができるものの、単にCu合金の溶射膜を形成しただけでは、溶射膜の酸化の進行を確実にかつ再現性よく防ぐことができない場合があり、付着物の剥離抑制効果のばらつきが大きい。これは装置構成部品によってはパーティクルの発生量が増加することを意味することから、Cu系溶射膜による付着物の剥離抑制効果を再現性よく高めることが望まれている。
【0011】
本発明はこのような課題に対処するためになされたもので、高ストレス膜を成膜するような場合においても、成膜工程中に付着する成膜材料の剥離を有効にかつ再現性よく防止することによって、生産性の低下や成膜コストの増加を抑制することを可能にした真空成膜装置用部品、さらに成膜した膜中へのパーティクルの混入を再現性よく抑制し、高集積化された半導体素子などへの対応を図ると共に、成膜コストの低減などを図ることを可能にした真空成膜装置を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の真空成膜装置用部品は、請求項1に記載したように、装置部品本体と、前記装置部品本体の表面に形成されていると共に、20質量%以下のAlを含有し、残部が実質的にCuからなるCu合金溶射膜とを具備する真空成膜装置用部品であって、前記Cu合金溶射膜は表面側に酸素含有領域が形成されており、かつ前記Cu合金溶射膜の厚さTmに対する前記酸素含有領域の深さToの比(To/Tm)が0.05〜0.4の範囲であることを特徴としている。
【0013】
本発明の真空成膜装置用部品において、Cu合金溶射膜は請求項3に記載したようにCuを85〜95質量%の範囲で含むことが好ましい。また、Cu合金溶射膜は請求項4に記載したように、ビッカース硬さでHv300以下の硬度を有することが好ましい。このようなCu合金溶射膜を得る上で、Cu合金溶射膜は請求項5に記載したように350℃以上の温度で真空加熱処理が施されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明の真空成膜装置用部品においては、請求項6に記載したように、Cu合金溶射膜の膜厚が50〜500μmの範囲で、かつCu合金溶射膜の表面粗さが算術平均粗さRaで15〜40μmの範囲であることが好ましい。さらに、請求項7に記載したように、Cu合金溶射膜は装置部品本体との熱膨張率の差が20×10−6/℃以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の真空成膜装置用部品においては、装置部品本体の表面に20質量%以下(例えば1〜20質量%の範囲)のAlを含有するCu合金溶射膜を形成している。このようなCu合金溶射膜は装置部品本体との熱膨張差が小さく、溶射膜自体の密着性に優れることに加えて、容易に低硬度化(例えばビッカース硬さでHv300以下)を図ることが可能であることから、例えば前述したような高ストレス膜に対して優れた応力緩和効果を示す。すなわち、Cu合金溶射膜はその上に付着した成膜材料(付着物)の内部応力を良好に緩和する機能を有することから、高ストレス膜を成膜する場合においても部品上に堆積した付着物の剥離を安定かつ有効に抑制することができる。
【0016】
さらに、適量のAlを含むCu合金溶射膜においては、AlがCuに比べて酸化しやすいという性質を利用することによって、溶射膜の表面側に適切な範囲で酸素含有領域(酸素侵入領域)、言い換えると酸化領域を溶射時に形成することができるため、その後のCu合金溶射膜の内部酸化を防止することが可能となる。すなわち、Cu合金溶射膜の厚さTmに対する酸素含有領域の深さToの比(To/Tm)が0.05〜0.4の範囲となるように、Cu合金溶射膜の表面側に酸素含有領域を形成することによって、その後の内部酸化を有効かつ確実に防ぐことができる。従って、Cu合金溶射膜の内部酸化の進行に伴う膜質や膜特性の経時的な劣化が抑制され、その結果としてパーティクルの発生を長期間にわたって安定に抑制することが可能となる。
【0017】
本発明の真空成膜装置は、請求項8に記載したように、真空容器と、前記真空容器内に配置される被成膜試料保持部と、前記真空容器内に前記被成膜試料保持部と対向して配置される成膜源と、前記成膜源を保持する成膜源保持部と、前記被成膜試料保持部または前記成膜源保持部の周囲に配置された防着部品とを具備し、前記被成膜試料保持部、前記成膜源保持部および前記防着部品から選ばれる少なくとも1つが、上記した本発明の真空成膜装置用部品からなることを特徴としている。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態による真空成膜装置用部品の要部構成を示す断面図である。同図に示す真空成膜装置用部品1は、装置部品本体(基材)2の表面に設けられたCu合金溶射膜3を有している。なお、装置部品本体2の構成材料は特に限定されるものではないが、例えば装置部品の構成材料として一般的なステンレス鋼などが用いられる。装置部品本体2の被膜形成面はアンカー効果が得られるように、予めブラスト処理などで粗らしておくことが好ましい。
【0020】
Cu合金溶射膜3の形成材料には、Alを20質量%以下の範囲で含有し、残部が不可避的不純物を除いて実質的にCuからなるCu基合金が用いられる。Cu合金溶射膜3のAl含有量が20質量%を超えると、ステンレス鋼などからなる装置部品本体2との熱膨張差が大きくなりすぎて、成膜時の熱収縮差により付着物が剥離しやすくなる。ここで、Cu合金溶射膜3と装置部品本体2との熱膨張率の差は10×10−6/℃以下であることが好ましい。さらに、あまり多量のAlを含有するとCu合金溶射膜3の低硬度化が困難になり、高ストレス膜を成膜する際に、部品1上に付着した成膜材料(付着物)の応力緩和効果、すなわち剥離抑制効果が得られなくなる。Cu合金溶射膜3のAl含有量は、耐食性(具体的には後述する酸素含有領域に基づく内部酸化の抑制など)や装置部品本体2への密着性などを考慮して1質量%以上、さらには5質量%以上とすることが好ましい。
【0021】
特に、付着物の応力緩和効果や耐食性の改善効果などを十分に得る上で、Cu合金溶射膜3はCuの含有比率が85〜95質量%の範囲のCu基合金で構成することが好ましい。このようなCu合金を適用することによって、Cu合金溶射膜3の硬度を例えばビッカース硬さでHv300以下とすることができると共に、Cu合金溶射膜3の表面側に形成される酸素含有領域に基づく内部酸化の抑制効果を再現性よく得ることが可能となる。なお、Cu合金溶射膜3はその低硬度特性に加えて、溶射膜内に微小な気孔が存在する内部構造によって、付着物の応力緩和機能を発揮するものである。
【0022】
上述したようなCu合金溶射膜3は、アーク溶射法、プラズマ溶射法、超高速フレーム溶射法などにより装置部品本体2の表面に形成される。特に、Cu合金溶射膜3は大気のような酸素含有雰囲気中で溶射して形成することが好ましい。例えば、大気中でのアーク溶射によりCu合金溶射膜3を形成した場合、Cuに比べてAlが酸化しやすいことなどに基づいて、酸素含有雰囲気(大気など)の影響を受けやすい表面側に、Alの酸化物を含む酸素含有領域(酸素侵入領域)X、言い換えると酸化領域が形成される。このような酸素含有領域Xの幅(表面からの深さ)を適切な範囲に制御することによって、その後のCu合金溶射膜3の内部酸化を防止することが可能となる。
【0023】
すなわち、Cu合金溶射膜3の膜厚をTm、溶射時に形成される酸素含有領域Xの表面からの深さをToとしたとき、これらの比(To/Tm比)を0.05〜0.4の範囲に制御することによって、その後のCu合金溶射膜3の内部酸化を有効にかつ確実に防ぐことができる。Cu合金溶射膜3のTo/Tm比が0.05未満であると、酸素含有領域(酸化領域)Xによる酸素のトラップ効果が十分に得られず、真空成膜装置に適用した際にCu合金溶射膜3の内部酸化が進行してしまう。言い換えると、Cu合金溶射膜3の表面側に形成された酸素含有領域Xで、Cu合金溶射膜3への酸素の侵入を食い止めることができなくなる。
【0024】
Cu合金溶射膜3の内部酸化が進行すると、それに伴ってCu合金溶射膜3の膜質や膜特性が変化することで付着物の剥離抑制効果が低下し、成膜時に真空成膜装置用部品1に起因するパーティクルの発生を安定して抑制することができなくなる。なお、Cu合金溶射膜3の最表面に一様な酸化膜を形成したような状態では、その後の内部酸化を抑制することができても、Cu合金溶射膜3による付着物の剥離抑制効果自体も低下してしまうため、やはりパーティクルの発生を安定して抑制することはできない。
【0025】
一方、Cu合金溶射膜3のTo/Tm比が0.4を超えると、酸素含有領域Xが多すぎることに起因して、Cu合金溶射膜3本来の付着物の剥離抑制効果を十分に得ることができなくなる。すなわち、Cu合金溶射膜3による付着物の応力緩和効果が低下してしまう。このような場合にも成膜時におけるパーティクルの発生を安定して抑制することができない。Cu合金溶射膜3のTo/Tm比は特に0.1〜0.4の範囲とすることが好ましい。このような厚さ比を有する酸素含有領域XをCu合金溶射膜3に予め形成しておくことによって、経時的な内部酸化を有効に抑制した上で、Cu合金溶射膜3本来の付着物の剥離抑制効果を十分にかつ再現性よく得ることが可能となる。
【0026】
ここで、本発明におけるCu合金溶射膜3の表面側に形成される酸素含有領域Xの深さToは、Cu合金溶射膜3の表面からアルゴンイオンなどでエッチングしながら深さ方向の酸素濃度分布(通常は表面から深さ方向に対して濃度傾斜している)を測定し、この測定した酸素濃度の最大値(通常は最表面)の半量の値となる深さを示すものとする。酸素濃度の深さ方向の分布は、例えばオージェ電子分光装置(日本電子製JAMP−10S)を用い、加速電圧5kV、試料電流5.0×10−7A、ビーム径φ30μm、Arイオンエッチングレート6nm/minで測定するものとする。酸素含有領域Xの深さToは、このような測定を3箇所以上について実施し、その平均値で示すことが好ましい。
【0027】
上述したように、Cu合金溶射膜3の表面側にTo/Tm比が0.05〜0.4の範囲の酸素含有領域(酸化領域)Xを形成しておくことによって、溶射膜内部の経時的な酸化をより安定的にかつ再現性よく防ぐことが可能となる。従って、Cu合金溶射膜3本来の付着物の剥離抑制効果を十分にかつ長期間にわたって安定して得ることできるため、そのようなCu合金溶射膜3を有する真空成膜装置用部品1を適用することによって、例えばW、Taおよびそれらの窒化物に代表される高ストレス膜を成膜する場合においても、部品1上に付着、堆積した成膜材料(付着物)の剥離を再現性よく抑制することが可能となる。これはパーティクルの防止、言い換えると成膜部品(半導体素子など)の歩留りの向上に大きく寄与するものである。また、パーティクルの発生を長期間にわたって抑制することで、成膜部品の生産性の向上や成膜コストの低下などを図ることができる。
【0028】
上記したTo/Tm比が0.05〜0.4の範囲の酸素含有領域(酸化領域)Xを有するCu合金溶射膜3を形成するためには、大気などの酸素含有雰囲気中で溶射を行うことに加えて、適度な量の酸素を含有する溶射材(例えばCu合金の線材や粉末など)を用いることも重要である。具体的には、酸素含有量が1〜10質量%の範囲の溶射材を用いて大気溶射などを行うことによって、酸素含有領域(酸化領域)Xの深さを適切な範囲に制御することが可能となる。溶射材の酸素含有量が少なすぎると、大気溶射を適用しても酸素含有領域Xを十分に形成することができないおそれがある。一方、溶射材の酸素含有量が多すぎると、酸素含有領域Xの形成範囲が深くなりすぎるおそれがある。
【0029】
なお、Cu合金溶射膜3を形成する際には、電流、電圧、ガス流量、圧力、溶射距離、ノズル径、材料供給量などの溶射条件をコントロールすることによって、Cu合金溶射膜3の膜厚や表面粗さなどを制御する。Cu合金溶射膜3を成膜した部品1には、後に詳述するように膜の軟化や脱ガスなどを目的として真空加熱処理を施すことが好ましい。
【0030】
Cu合金溶射膜3の硬度はビッカース硬さでHv300以下とすることが好ましい。ビッカース硬さがHv300以下のCu合金溶射膜3は、その上部に堆積する付着物の内部応力を緩和する効果に優れるだけでなく、それ自体の内部応力も十分に緩和されていることから、Cu合金溶射膜3自体の剥離も有効に防ぐことができる。すなわち、Cu合金溶射膜3の内部応力を十分に緩和することによって、成膜工程時に外部応力(例えば熱応力)が負荷された際に、Cu合金溶射膜3の内部からの破壊の進行を有効に抑制することができる。これによって、Cu合金溶射膜3自体の剥離をより一層有効に防ぐことが可能となる。Cu合金溶射膜3の硬度はHv200以下とすることがより好ましい。
【0031】
ここで、本発明で規定するCu合金溶射膜3のビッカース硬さは、以下のようにして測定した値を示すものとする。すなわち、まずCu合金溶射膜3の表面を研磨して平坦化する。次いで、平坦化した面に荷重200gでダイヤモンド圧子を30秒間押し付ける。これにより生じた圧痕の長さをXおよびY方向に測定し、その平均長さからビッカース硬さ値に変換する。このような測定を5回行い、その平均値を本発明のビッカース硬さとする。
【0032】
Cu合金溶射膜3は、さらに50〜500μmの範囲の膜厚を有することが好ましい。すなわち、膜厚が50μm以上のCu合金溶射膜3は優れた応力緩和効果を示すことから、高ストレス膜を成膜する場合においても、部品1上に堆積した付着物の剥離、脱落をより確実に抑制することができる。一方、Cu合金溶射膜3の膜厚が500μmを超えると、Cu合金溶射膜3の緻密性が低下して装置部品本体2から脱落しやすくなる。
【0033】
また、Cu合金溶射膜3の表面粗さはJIS B 0601−1994で規定する算術平均粗さRaで15〜40μmの範囲であることが好ましい。Cu合金溶射膜3はその形成過程に基づいて複雑な表面形態を有することから、付着物に対して良好な密着性を示すが、その表面粗さがあまり小さいと成膜材料(付着物)の密着性(アンカー効果)が低下して剥離、脱落が生じやすくなる。特に、成膜材料の堆積量が増加した際に、その内部応力などにより剥離、脱落が生じやすくなる。一方、Cu合金溶射膜3の表面粗さがあまり大きくなりすぎると、成膜材料の付着形態が不安定となって、成膜中のプラズマ放電や熱変化で付着物の脱落が逆に生じやすくなるおそれがある。
【0034】
真空成膜装置用部品1に適用するCu合金溶射膜3には、装置部品本体2の表面に形成した後に、膜の軟化や脱ガスなどを目的として真空加熱処理(VT処理)を施すことが好ましい。真空加熱処理は例えば4×10−2Pa以下の真空中にて350℃以上の温度で実施することが好ましい。真空加熱処理温度が350℃未満であると、Cu合金溶射膜3の軟化効果や脱ガス効果を十分に得ることができない。なお、真空加熱処理温度が高すぎると、例えば装置部品本体2に熱変形が生じたり、またCu合金溶射膜3に剥がれが生じるおそれがあるため、真空加熱処理温度は500℃以下とすることが好ましい。
【0035】
上述したCu合金溶射膜3は、付着物の内部応力を吸収する応力緩和効果やそれ自体の安定性(経時的な内部酸化の抑制能など)に優れることから、高ストレス膜を成膜する場合においても、部品1上に堆積した付着物の剥離を長期間にわたって安定かつ有効に抑制することができる。さらに、Cu合金溶射膜3はそれ自体の密着性にも優れ、Cu合金溶射膜3自体の剥離も安定かつ有効に抑制することができる。
【0036】
従って、真空成膜装置用部品1上に堆積する付着物の剥離や被膜(溶射膜)自体の剥離などによるパーティクルの発生を抑えることができ、装置クリーニングや部品交換の回数を大幅に減らすことが可能となる。言い換えると、成膜装置用部品1の寿命を大幅に延ばすことができる。このように、成膜装置用部品1を長寿命化することによって、成膜装置の稼働率の向上(生産性の向上)、ひいては成膜コストの削減を実現することができる。さらに、真空成膜装置で形成する各種の膜(高ストレス膜など)、それを用いた素子や部品などの歩留りを高めることが可能となる。
【0037】
本発明の真空成膜装置用部品1は、W、Ta、Ti、Al、Pt、Nb、Si、Fe、Ni、Cr、およびCoから選ばれる金属元素の単体、もしくはこれら金属元素を含む合金または化合物(例えば窒化物)の薄膜、すなわち内部応力が大きい高ストレス膜を成膜する真空成膜装置に好適に用いられるものである。具体的には、スパッタリング装置やCVD装置などの真空成膜装置の構成部品として用いられ、特にスパッタリング装置に好適である。また、真空成膜装置用部品1は成膜工程中に成膜材料が付着する部品であれば種々の部品に対して適用可能である。
【0038】
次に、本発明の真空成膜装置の実施形態について説明する。図2は本発明の真空成膜装置をスパッタリング装置に適用した一実施形態の要部構成を示す図である。同図において、11はバッキングプレート12に固定されたスパッタリングターゲットである。スパッタリングターゲット11には各種の金属材料や化合物材料などが用いられ、例えば上述したような高ストレス膜を成膜するための材料(WやTaなど)が適用される。
【0039】
成膜源としてのスパッタリングターゲット11の外周部下方には、アースシールド13が設けられている。アースシールド13の下方には、さらに上部防着板14および下部防着板15が配置されている。被成膜試料である基板16は、スパッタリングターゲット11と対向配置するように、被成膜試料保持部としてのプラテンリング17により保持されている。これらは図示を省略した真空容器内に配置されている。真空容器には、スパッタガスを導入するためのガス供給系(図示せず)と真空容器内を所定の真空状態まで排気する排気系(図示せず)とが接続されている。
【0040】
この実施形態のスパッタリング装置においては、アースシールド13、上部防着板14、下部防着板15およびプラテンリング17を、上述した本発明の真空成膜装置用部品1で構成している。真空成膜装置用部品1の具体的な構成は前述した通りである。なお、Cu合金溶射膜3はいずれもスパッタリングターゲット11からスパッタされた粒子が付着する面に形成されている。
【0041】
上述したスパッタリング装置においては、成膜工程中にアースシールド13、上部防着板14、下部防着板15、プラテンリング17などの表面にスパッタされた成膜材料(ターゲット11の構成材料や反応性スパッタによる化合物など)が付着するが、この付着物の剥離は部品表面のCu合金溶射膜3により安定かつ有効に防止される。また、Cu合金溶射膜3自体も安定で長寿命である。これらによって、パーティクルの発生量、さらには基板16に形成される膜中への混入量を大幅に抑制することができる。従って、256M、1Gというような高集積度の半導体素子や液晶表示素子などの製造歩留りを大幅に高めることが可能となる。
【0042】
さらに、付着物やCu合金溶射膜3自体の剥離を安定かつ有効に抑制することが可能であることから、装置クリーニングや部品交換の回数を大幅に減らすことができる。この装置クリーニングや部品交換回数の低減に基づいて、スパッタリング装置の稼働率の向上(生産性の向上)を図ることができる。すなわち、スパッタリング装置のランニングコストを低減することができ、ひいては各種薄膜の成膜コストを削減することが可能となる。
【0043】
上記した実施形態においては、アースシールド13、上部防着板14、下部防着板15、プラテンリング17を本発明の部品で構成した例について説明したが、これら以外にバッキングプレート12、ターゲット外周押え(図示せず)、シャッタ(図示せず)などを本発明の真空成膜装置用部品で構成することも有効である。さらに、これら以外の部品についても、成膜工程中に成膜材料の付着が避けられない部品であれば、本発明の真空成膜装置用部品は有効に機能する。
【0044】
なお、上記実施形態では本発明の真空成膜装置をスパッタリング装置に適用した例について説明したが、これ以外に真空蒸着装置(イオンプレーティングやレーザーアブレーションなどを含む)、CVD装置などに対しても本発明の真空成膜装置は適用可能であり、上述したスパッタリング装置と同様な効果を得ることができる。
【0045】
【実施例】
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。
【0046】
実施例1
まず、図2に示したスパッタリング装置のアースシールド13、上部防着板14、下部防着板15およびプラテンリング17の部品基材(部品基材は全てSUS 304)について、ブラストによる下地処理を施した後、基材表面にアーク溶射法でCu合金溶射膜を成膜した。Cu合金溶射膜はCuを90質量%含有するCu−Al合金により形成した。90質量%Cu−Al合金の熱膨張率は17.2×10−6/℃であり、部品基材(SUS 304/熱膨張率=15×10−6/℃)との熱膨張率の差は2.2×10−6/℃である。
【0047】
Cu合金溶射膜は、溶射材として90質量%Cu−Al合金を線径1.6mmの線材に加工したものを使用し、これを大気中でアーク溶射することにより形成した。溶射材としてのCu−Al合金の酸素含有量は2.3質量%であった。アーク溶射の条件は電流100A、電圧30V、空気圧80PSI、溶射距離150mmとした。このようにして、各部品の表面に膜厚が250μm、表面粗さがRaで28μmのCu合金溶射膜を形成した。膜厚は膜厚計測器(alpha−step 2000)を用いて測定し、また表面粗さは粗さ測定器(Taylor Hobson社製)を用いて測定した。
【0048】
次に、上記した各部品の溶射面(溶射膜表面)をクリーニング処理した後、アニールおよび脱ガス処理として真空加熱処理を施した。真空加熱処理は各部品を真空炉に入れ、3〜4×10−2Paの真空雰囲気中にて600℃で2時間保持した後、100℃まで降温して炉内をArガスで常温まで戻し、この状態で1時間保持した。さらに、Arガスで炉内を完全に置換した後、30℃前後まで降温してから各部品を炉内から取り出した。このような各装置部品を後述する特性評価に供した。各装置部品は炉内から取り出した後に、防湿袋により真空密閉しておくことが好ましい。
【0049】
上述した真空加熱処理後のCu合金溶射膜の硬度はビッカース硬さでHv98であった。溶射膜のビッカース硬さは前述した方法に基づいて測定した値である。さらに、前述した方法にしたがってCu合金溶射膜の表面から深さ方向への酸素濃度分布を測定し、酸素濃度の測定値が最大値の半量になるまでの深さに基づいて酸素含有領域の深さToを求めたところ、このToの値は25μmであった。この実施例1のCu合金溶射膜の厚さTmは250μmであるため、To/Tm比は0.1であった。さらに、上記した部品を大気中に1週間放置した後に、同様にして酸素含有領域の深さToを求めたところ、Toの値は25μmと変化しておらず、To/Tm比も放置前と同様に0.1であった。
【0050】
実施例2〜4
表1に示す各溶射材(Cu−Al合金の線材)を用いる以外は、実施例1と同様にして、アースシールド13、上部防着板14、下部防着板15およびプラテンリング17の各基材上にCu合金溶射膜をそれぞれ形成した。各Cu合金溶射膜の膜厚および表面粗さRaは表1に示す通りである。次に、各部品の溶射面をクリーニング処理した後、表2に示す温度で真空加熱処理(温度条件以外は実施例1と同一条件)を施して、後述する特性評価に供した。各装置部品は炉内から取り出した後に防湿袋により真空密閉しておくことが好ましい。真空加熱処理後のCu合金溶射膜の硬度、To/Tm比(作製直後および1週間放置後)はそれぞれ表2に示す通りである。
【0051】
比較例1
溶射材にCu単体を用いる以外は、実施例1と同様にして、アースシールド13、上部防着板14、下部防着板15およびプラテンリング17の各基材上にCu溶射膜を形成した。各Cu溶射膜の膜厚および表面粗さRaは表1に示す通りである。次に、各部品の溶射面をクリーニング処理した後、表2に示す温度で真空加熱処理(温度条件以外は実施例1と同一条件)を施して、後述する特性評価に供した。真空加熱処理後のCu溶射膜の硬度、To/Tm比(作製直後および1週間放置後)はそれぞれ表2に示す通りである。
【0052】
比較例2〜3
表1に示す各溶射材(Al含有量が20質量%を超えるCu−Al合金線材)を用いる以外は、実施例1と同様にして、アースシールド13、上部防着板14、下部防着板15およびプラテンリング17の各基材上にCu合金溶射膜をそれぞれ形成した。各Cu合金溶射膜の膜厚および表面粗さRaは表1に示す通りである。次に、各部品の溶射面をクリーニング処理した後、表2に示す温度で真空加熱処理(温度条件以外は実施例1と同一条件)を施して、後述する特性評価に供した。真空加熱処理後のCu合金溶射膜の硬度、To/Tm比(作製直後および1週間放置後)はそれぞれ表2に示す通りである。
【0053】
比較例4〜5
表1に示す各溶射材(比較例4:酸素含有量が10質量%を超えるCu−Al合金線材、比較例5:酸素含有量が1質量%未満のCu−Al合金線材)を用いる以外は、実施例1と同様にして、アースシールド13、上部防着板14、下部防着板15およびプラテンリング17の各基材上にCu合金溶射膜をそれぞれ形成した。各Cu合金溶射膜の膜厚および表面粗さRaは表1に示す通りである。次に、各部品の溶射面をクリーニング処理した後、表2に示す温度で真空加熱処理(温度条件以外は実施例1と同一条件)を施して、後述する特性評価に供した。真空加熱処理後のCu合金溶射膜の硬度、To/Tm比(作製直後および1週間放置後)はそれぞれ表2に示す通りである。
【0054】
比較例6
表1に示す溶射材(酸素含有量が10質量%を超えるCu−Al合金線材)を用いる以外は、実施例1と同様にして、アースシールド13、上部防着板14、下部防着板15およびプラテンリング17の各基材上にCu合金溶射膜を形成した。Cu合金溶射膜の膜厚および表面粗さRaは表1に示す通りである。これら各部品を真空加熱処理することなく、後述する特性評価に供した。Cu合金溶射膜の硬度、To/Tm比(作製直後および1週間放置後)はそれぞれ表2に示す通りである。
【0055】
比較例7〜8
溶射材にAl単体を用いて、アースシールド13、上部防着板14、下部防着板15およびプラテンリング17の各基材上にAl溶射膜をそれぞれ形成した。なお、アーク溶射の条件は電流80A、電圧25V、空気圧80PSI、溶射距離150mmとした。各Al溶射膜の膜厚および表面粗さRaは表1に示す通りである。次に、各部品の溶射面をクリーニング処理した後、表2に示す温度で真空加熱処理(温度条件以外は実施例1と同一条件)を施して、後述する特性評価に供した。真空加熱処理後のAl溶射膜の硬度は表2に示す通りである。
【0056】
比較例9
実施例1と同様なアースシールド13、上部防着板14、下部防着板15およびプラテンリング17の各基材表面にブラスト処理のみを施して、後述する特性評価に供した。なお、各部品には表2に示す温度で真空加熱処理(温度条件以外は実施例1と同一条件)を施した。部品表面(ブラスト面)の表面粗さRaは表1に示す通りである。
【0057】
参考例1
実施例1と同様にして、アースシールド13、上部防着板14、下部防着板15およびプラテンリング17の各基材上にCu合金溶射膜を形成した。Cu合金溶射膜の膜厚および表面粗さRaは表1に示す通りである。次に、各部品の溶射面をクリーニング処理した後、300℃で真空加熱処理(温度条件以外は実施例1と同一条件)を施して、後述する特性評価に供した。真空加熱処理後のCu合金溶射膜の硬度はHv400と高かったものの、To/Tm比(作製直後および1週間放置後)はそれぞれ表2に示すように実施例1と同等であった。
【0058】
参考例2
溶射方法をプラズマ溶射に変更する以外は、実施例1と同様にして、アースシールド13、上部防着板14、下部防着板15およびプラテンリング17の各基材上にCu合金溶射膜を形成した。Cu合金溶射膜の表面粗さはRaで10μmと低かった。次に、各部品の溶射面をクリーニングした後、300℃で真空加熱処理(温度条件以外は実施例1と同一条件)を施して、後述する特性評価に供した。真空加熱処理後のCu合金溶射膜の硬度、To/Tm比(作製直後および1週間放置後)はそれぞれ表2に示す通りである。
【0059】
なお、上記した実施例、比較例、参考例における各溶射膜のCuとAlの比率は、溶射材料と実質的に同一であった。
【0060】
【表1】
Figure 2004083960
【0061】
【表2】
Figure 2004083960
【0062】
上述した実施例1〜4、比較例1〜9、および参考例1〜2による各部品を用いて、それぞれマグネトロンスパッタリング装置を組立てた。これら各マグネトロンスパッタリング装置に表3にターゲットをセットしてマグネトロンスパッタリングを行い、6インチのSi基板上に表3に示す薄膜をそれぞれ成膜した。スパッタ条件は、TaN薄膜についてはスパッタ圧3×10−5Pa、Ar流量15sccm、N流量30sccm、WN薄膜についてはスパッタ圧3×10−5Pa、Ar流量20sccm、N流量30sccmとし、Ta薄膜およびW薄膜についてはスパッタ圧3×10−5Pa、Ar流量30sccmとした。
【0063】
上述した各スパッタリング装置の1ライフの投入電力量を120kWhとし、各薄膜上の直径0.2μm以上のパーティクル数(個数/1ウェハ)をパーティクルカウンタ(WM−3)で測定した。パーティクル数の測定結果は、初期10ロット(成膜初期)の平均値と1ライフの平均値とに分けてそれぞれ表3に示す。
【0064】
【表3】
Figure 2004083960
【0065】
表2および表3から明らかなように、実施例1〜4による装置部品はいずれも1週間放置後においてもTo/Tm比の変化量が少なく、Cu合金溶射膜の内部酸化が安定して抑制されていることが分かる。このような装置部品を用いたスパッタリング装置によれば、成膜初期および1ライフ平均共にパーティクルの発生数が少なく、成膜部品の歩留りの向上や成膜コストの低減などを図ることができる。
【0066】
一方、Cu溶射膜を適用した比較例1の装置部品は1週間放置後のTo/Tm比が大きく、Cu溶射膜の内部酸化が確実に進行していることが分かる。従って、このような装置部品を用いたスパッタリング装置では、成膜初期および1ライフ平均共にパーティクルの発生数が多い。Al含有量が多いCu合金溶射膜を適用した比較例2、3の装置部品は、部品基材(部品本体)との熱膨張差が大きく、また比較例2は膜厚も厚すぎるために、そのような装置部品を用いたスパッタリング装置では使用していくにしたがってパーティクル数が増加していくことが分かる。比較例3の装置部品は、さらにCu合金溶射膜が硬いことから、成膜初期の段階からパーティクルの発生数が多いことが分かる。
【0067】
また、比較例4の装置部品は当初のTo/Tm比が0.4を超えており、Cu合金溶射膜本来の特性が維持されていないことから、そのような装置部品を用いたスパッタリング装置では実施例に比べてパーティクルの発生数が多いことが分かる。比較例5の装置部品は当初のTo/Tm比が0.05未満であることから、1週間放置後にはTo/Tm比が増加している。従って、このような装置部品を用いたスパッタリンスパッタリング装置では使用していくにしたがってパーティクル数が増加していくことが分かる。
【0068】
比較例6の装置部品は当初のTo/Tm比が0.4を超えていることに加えて、Cu合金溶射膜の硬度が大きいことから、そのような装置部品を用いたスパッタリング装置では成膜初期の段階からパーティクルの発生数が多いことが分かる。Al溶射膜を適用した比較例7、8の装置部品は、Cu合金溶射膜に比べて部品基材(部品本体)との熱膨張差が大きいことから、そのような装置部品を用いたスパッタリング装置ではパーティクルの発生数が多いことが分かる。また、ブラスト処理のみとした比較例9の装置部品では、パーティクルの発生数を抑制することができないことが分かる。
【0069】
なお、Cu合金溶射膜の硬度が大きい参考例1の部品では、その上に付着した成膜材料(付着物)の応力を十分に緩和することができず、これによって成膜初期段階のパーティクル数が多いことが分かる。Cu合金溶射膜の膜表面粗さが小さい参考例2の部品では、その上に付着した成膜材料(付着物)の密着性が低いことから、1ライフとしてのパーティクル数が増加してしまうことが分かる。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の真空成膜装置用部品によれば、剥離防止用の溶射膜自体の安定性などに優れることから、成膜工程中に付着する成膜材料の剥離を長期間にわたって有効にかつ再現性よく防止することが可能となる。また、このような真空成膜装置用部品を有する本発明の真空成膜装置によれば、配線膜や素子の不良発生原因となる膜中へのパーティクルの混入を抑制することができると共に、生産性の向上並びに成膜コストの低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による真空成膜装置用部品の要部構造を示す断面図である。
【図2】本発明の真空成膜装置を適用したスパッタリング装置の一実施形態の要部構造を示す図である。
【符号の説明】
1……真空成膜装置用部品,2……部品本体,3……Cu合金溶射膜,11……スパッタリングターゲット,12……バッキングプレート,13……アースシールド,14、15……防着板,16……被成膜基板

Claims (9)

  1. 装置部品本体と、前記装置部品本体の表面に形成されていると共に、20質量%以下のAlを含有し、残部が実質的にCuからなるCu合金溶射膜とを具備する真空成膜装置用部品であって、
    前記Cu合金溶射膜は表面側に酸素含有領域が形成されており、かつ前記Cu合金溶射膜の厚さTmに対する前記酸素含有領域の深さToの比(To/Tm)が0.05〜0.4の範囲であることを特徴とする真空成膜装置用部品。
  2. 請求項1記載の真空成膜装置用部品において、
    前記To/Tm比が0.1〜0.4の範囲であることを特徴とする真空成膜装置用部品。
  3. 請求項1記載の真空成膜装置用部品において、
    前記Cu合金溶射膜はCuを85〜95質量%の範囲で含むことを特徴とする真空成膜装置用部品。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の真空成膜装置用部品において、
    前記Cu合金溶射膜はビッカース硬さでHv300以下の硬度を有することを特徴とする真空成膜装置用部品。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の真空成膜装置用部品において、
    前記Cu合金溶射膜には350℃以上の温度で真空加熱処理が施されていることを特徴とする真空成膜装置用部品。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の真空成膜装置用部品において、
    前記Cu合金溶射膜は50〜500μmの範囲の膜厚を有し、かつ前記Cu合金溶射膜の表面粗さが算術平均粗さRaで15〜40μmの範囲であることを特徴とする真空成膜装置用部品。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載の真空成膜装置用部品において、
    前記Cu合金溶射膜は前記装置部品本体との熱膨張率の差が10×10−6/℃以下であることを特徴とする真空成膜装置用部品。
  8. 真空容器と、
    前記真空容器内に配置される被成膜試料保持部と、
    前記真空容器内に前記被成膜試料保持部と対向して配置される成膜源と、
    前記成膜源を保持する成膜源保持部と、
    前記被成膜試料保持部または前記成膜源保持部の周囲に配置された防着部品とを具備し、
    前記被成膜試料保持部、前記成膜源保持部および前記防着部品から選ばれる少なくとも1つが、請求項1ないし請求項7のいずれか1項記載の真空成膜装置用部品からなることを特徴とする真空成膜装置。
  9. 請求項8記載の真空成膜装置において、
    前記成膜装置はスパッタリング装置であることを特徴とする真空成膜装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2022092404A (ja) * 2020-12-10 2022-06-22 キヤノントッキ株式会社 成膜装置、成膜方法及び電子デバイスの製造方法

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