JP2002358871A - 電子管用陰極 - Google Patents

電子管用陰極

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JP2002358871A
JP2002358871A JP2001166212A JP2001166212A JP2002358871A JP 2002358871 A JP2002358871 A JP 2002358871A JP 2001166212 A JP2001166212 A JP 2001166212A JP 2001166212 A JP2001166212 A JP 2001166212A JP 2002358871 A JP2002358871 A JP 2002358871A
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cathode
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metal layer
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JP2001166212A
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Hiroyuki Teramoto
浩行 寺本
Kiyoshi Saito
清 斎藤
Takashi Shinjo
孝 新庄
Takao Sawada
隆夫 沢田
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Mitsubishi Electric Corp
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Mitsubishi Electric Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 4A/cm2以上の高電流密度で動作させた
場合にも、電子放射物質の消耗、劣化が少なく安定した
エミッション特性が得られる酸化物陰極を提供する。 【解決手段】 主成分がニッケルからなる基体上に、タ
ングステンを主成分とする金属層を形成し、更にその上
に少なくともバリウムを含むアルカリ土類金属酸化物を
主成分とする電子放射物質層を備えた電子管用陰極にお
いて、当該金属層の空孔率を20〜70%とし、金属層
内部にも電子放射物質が存在し、かつ金属層上の電子放
射物質層の厚みを5〜80ミクロンとする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ブラウン管など
に使用される電子管用陰極に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図4は、特開平3-257735号公報
に開示された従来の電子管用陰極を示すものであり、図
において1は主成分がニッケルで、シリコン、マグネシ
ウム等の還元性元素を微量含む材料にて構成された基体
である。5はバリウムと、ストロンチウムあるいは/及
びカルシウムを含むアルカリ土類金属酸化物11を主成
分とし、0.1〜20重量%の酸化スカンジウムなどの
希土類金属酸化物12を含んだ電子放射物質層である。
2は、ニクロムなどで構成された陰極スリーブである。
3は、基体1内に配設されたヒータで、加熱により電子
放射物質層5から熱電子を放出させるものである。
【0003】ここで、前記のように構成された電子管用
陰極について、その製造方法及び特性について説明す
る。まず、例えばタングステンのような還元性を有する
金属をスパッタリング法などの薄膜形成方法を用いて基
体上面に膜厚が2μm程度になるように被着形成する。
次にバリウム、ストロンチウム、カルシウムの三元炭酸
塩と所定量の酸化スカンジウムをバインダー及び溶剤と
共に混合して作成した懸濁液を、基体1上にスプレー法
により約80μmの厚みで塗布する。その後、ブラウン
管の真空排気工程中にヒータ3によって加熱し、塗布し
た炭酸塩を酸化物に変える。その後、活性化工程とよば
れる加熱工程中で、気体中に存在する微量な還元剤及び
前記金属層の還元効果によってアルカリ土類金属酸化物
の一部を還元して電子放射源となる遊離バリウムを形成
する。
【0004】この工程において、アルカリ土類金属酸化
物の一部は次のように反応し、遊離バリウムが生成して
いるものと考えられる。すなわち、基体1中に含有され
たシリコン、マグネシウム等の還元剤は拡散により電子
放射物質層5と基体1の界面に移動し、アルカリ土類金
属酸化物と反応する。例えば、アルカリ土類金属酸化物
が酸化バリウム(BaO)であれば次式1、2の様な遊
離バリウム生成反応が起こる。 2BaO+1/2Si=Ba+1/2Ba2SiO・・・(1) BaO+Mg=Ba+MgO・・・・・・・・・・・・・(2) また、金属層4と電子放射物質層5の界面においては、
タングステンの持つ還元効果により酸化バリウムが還元
され、同様に遊離バリウムが生成される。 2BaO+1/3W=Ba+1/3BaWO・・・・・(3)
【0005】また、酸化スカンジウム12を電子放射物
質5中に添加するのは、前述の式(1)〜(3)で生成
された珪酸バリウム(Ba2SiO)、酸化マグネシ
ウム(MgO)、タングステン酸バリウム(Ba
)などに起因した、中間層の形成を防止すること
を目的としている。この中間層は、電子放射物質層と基
体との界面に形成され、還元剤の拡散障害を引き起こす
ものである。さらに、酸化スカンジウムにはカソード表
面に形成された遊離バリウムをトラップする働きもあ
り、カソードの長寿命化に効果がある。
【0006】なお、従来の電子管用陰極において、基体
上に形成するタングステンからなる金属層の厚さを2μ
m以下の厚さにするのは、前述の式(3)で示した遊離
バリウムの生成を行うため、気体中の還元元素の電子放
射物質中への拡散を妨げない程度の厚さとしながら、基
体と電子放射物質の被着強度を上昇させ、長期に渡り安
定して電子放出が行われるようにするためである。
【0007】このようにして得られた電子管用陰極を用
いたブラウン管用電子銃の一例を図5に示す。図におい
て、6は制御電極、7は加速電極、8は収束電極、9は
高圧電極、20は電子管用陰極である。通常のテレビセ
ットまたはディスプレイセットにおいては制御電極6、
加速電極7、収束電極8、高圧電極9に印加される電圧
は固定されており、電子管用陰極20から放出される電
子の量、すなわち陰極電流は電子管用陰極20自身に印
加される電圧を変調することによって制御される。例え
ば、制御電極6の電圧を基準とした場合、電子管用陰極
20には0V〜カットオフ電圧までの電圧が印加され
る。また加速電圧7にはプラス数百ボルトの電圧が印加
され、電子管用陰極20の電圧を制御電極6の電圧に近
づけることによって制御電極6の電子通過孔を通して加
速電極7からの電界が浸透し、電子が表示用パネルに向
かって放出される。また、収束電極8及び高圧電極9
は、電子管用陰極20から放出された電子を収束、加速
させるために配設されるものである。
【0008】しかしながら、上述したカソードにおいて
は、4A/cm以上の高電流密度で動作させた場合、
電子放射物質層固有の抵抗成分や電子放射物質と基体と
の接触抵抗に起因するジュール発熱により電子放射物質
が蒸発あるいは焼結するため、消耗、劣化が生じ、長期
に渡り安定したエミッションを得ることができないとい
う問題があった。
【0009】このような問題を解決するためには、電子
放射物質層の抵抗値あるいは基体との接触抵抗値を小さ
くすればよく、例えば、、電子放射物質層の厚みを薄く
することにより抵抗を低減する方法や、電子放射物質層
を高密度で形成することにより抵抗を低減する方法が挙
げられる。しかしながら、電子放射物質層の厚みを薄く
するとエミッション特性に重要な遊離Baの生成維持が
困難となり、寿命が短くなると共に信頼性が低下し、ま
た、電子放射物質層を高密度で形成することにより抵抗
を低減すると電子放射物質が炭酸塩から酸化物に分解す
る過程で十分にガスが抜けきらず所定のエミッションが
得られないという問題や、動作中に発生するガスにより
エミッションが劣化してしまうという問題がある。その
他、電子放射物質中に金属フィラメントを添加し電子放
射物質層の抵抗値を下げる方法や電子放射物質と基体と
の間の接触抵抗値を低減する方法なども考えられるが、
前者においては電子放出の効率が低下し、また、後者に
おいては寿命が低下することからいずれも実用化には至
っていない。
【0010】本発明はこのような課題を解決するために
なされたもので、電子放射物質層の抵抗値及び基体と電
子放射物質層との接触抵抗値を小さくすることができ、
電子放射性物質の消耗、劣化を長期間に渡り抑制でき、
長期的に安定したエミッションを得ることができる電子
管用陰極を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】上述の通り、電子放射物
質層の厚みを低減することで電子管用陰極の抵抗値を低
下させることは可能であるが、電子管用陰極としての寿
命を考慮した場合には電子放射物質層は単純に薄くする
ことができなかった。そこで発明者らは、基体の上に多
孔性の金属層を設け、この多孔性金属層の一部に電子放
射物質を含浸させ、金属層と電子放射物質層が混在した
層を形成し、その上に薄い電子放射物質のみが存在する
層を形成する構造を考案することにより、電子放射物質
層の抵抗値が低く、かつ遊離Baの安定した生成・供給
を可能とする、長寿命かつ高性能なカソードを実現する
本願発明に到達したものである。
【0012】この発明にかかる電子管用陰極は、ニッケ
ルを主成分とした基体と、基体上に形成された多孔性の
金属層と、少なくともバリウムを含むアルカリ土類金属
酸化物を主成分とする電子放射物質からなり金属層上に
形成された上層部と金属層の空孔部内に埋め込まれ上層
部と一体形成された下層部とで構成された電子放射物質
層を備えるように構成されており、電子放射物質−基体
間の接触抵抗が低減でき、かつ、電子放射物質の抵抗も
低減できるため、電子放射物質の消耗や劣化がなく、長
期に渡り安定したエミッションを得ることができる。ま
た、電子放射物質の抵抗低減とエミッション特性向上の
バランスを考慮すると、電子放射物質層の上層部の厚さ
は5〜80μmとすることが好適である。
【0013】この発明にかかる電子管用陰極は、電子放
射物質層は、表面に電子放出領域を有し、電子放出領域
下での電子放射物質の濃度が70重量%以上であるよう
に構成することができる。
【0014】この発明にかかる電子管用陰極は、電子放
射物質層は、溶媒と混合された電子放射物質を基体上に
被着形成した後、この被着形成された電子放射物質と溶
媒を真空脱泡し、金属層中に電子放射物質を含浸させる
ことにより形成することができる。
【0015】この発明にかかる電子管用陰極は、電子放
射物質が、金属層と10μm以上の厚みを有する混合層
を形成するように構成することができる。
【0016】この発明にかかる電子管用陰極は、金属層
としては、厚みが100μm以下で、20〜70%の空
孔率を有した金属層を用いることができる。
【0017】この発明にかかる電子管用陰極は、金属層
は、金属と空孔剤を混合して基体上に被着形成した後、
この被着形成された金属と空孔剤を真空中または還元性
雰囲気中にて加熱し、空孔剤を除去することにより形成
することができる。
【0018】この発明にかかる電子管用陰極は、最高温
度が800〜1100℃の加熱を行うことにより空孔剤
を蒸発させ、多孔性金属層を形成することができる。
【0019】この発明にかかる電子管用陰極は、金属層
は、空孔部の平均開口径が5μm以上であってもよい。
【0020】この発明にかかる電子管用陰極は、金属層
がタングステン、モリブデン、ニッケル、シリコン、マ
グネシウム、クロム、コバルト、ジルコニウムおよびア
ルミニウムのいずれかを主成分とすることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】実施の形態1 図1は、本発明にかかる電子管用陰極の断面構成図の一
例で、かかる電子管用陰極は基体1の上面に形成された
タングステン-ニッケルから成る金属層4と金属層4の
上に形成され、少なくともバリウムを含み、他にストロ
ンチウムあるいは/及びカルシウムを含むアルカリ土類
金属酸化物からなる電子放射物質層5にて構成されたも
のである。金属層4は厚みが60μmで空孔率が40%
となるように形成されている。
【0022】次に、このように構成された電子管用陰極
の製造方法について説明する。まず最初に、平均粒径約
5μmのタングステン粉末25重量%に対し、平均粒径
5μmのニッケル粉末50重量%および空孔剤としての
平均粒径5μmのポリメチルメタアクリレート(PMM
A)樹脂粉末を0.8重量%混合し、主剤としてテルピ
ネオールを15重量%、結合剤としてエチルセルロース
を6重量%、分散剤としてエマルゲンを3.2重量%添
加することにより印刷用ペーストを作製する。次に、ニ
ッケル基体1を溶接にて陰極スリーブ2に固定した電子
管用陰極のベース基材を用意し、250メッシュのスク
リーンを用いて、ニッケル基体1の上に前述のペースト
を約70μmの厚みが得られるよう印刷する。その後、
この電子管用陰極を水素雰囲気中、1000℃で約20
分加熱処理するとPMMAが蒸発し空孔を形成するた
め、厚みが約60μmで空孔率約50%のニッケル−タ
ングステン層が形成される。このニッケル−タングステ
ン層の空孔は、開口径がほぼ5μmから15μmの間に
分布していた。
【0023】次にこの合金層上にバリウム、ストロンチ
ウム、カルシウムの三元炭酸塩および酸化スカンジウ
ム、バインダー、溶剤および空孔剤として平均粒径が5
μmのPMMAを混合した印刷ペーストをスクリーン印
刷法により塗布して合金層上の電子放射物質層の厚みが
約30μmとなるように形成した。さらに金属層内部の
空孔にも電子放射物質が入るように、真空中で脱泡処理
を行った。
【0024】このようにして作製した電子管用陰極を高
真空チャンバー内にセットし、炭酸塩を酸化物に分解す
るため1000℃−5分の加熱処理工程と、十分なエミ
ッションを得るために900℃−1時間、約1A/cm
の電流密度で動作させるエージング工程を実施後、電
子管用陰極の抵抗値を評価した。電子管用陰極の抵抗値
R(電子放射物質+界面)を評価する手法として下記に
示したCoomesらが行った方法により測定を試みた。本測
定はカソードの熱収支が次式(4)に従うことに基づい
たものである。 Ph+R・I・2ων−φ・I・ω・ν=e・σ・T・4+Σ---(4) ここで、 Ph:ヒータパワー、R:抵抗値、I:パルス電流、
ω:パルス幅、ν:周波数、φ:仕事関数、e:放射
率、σ:ボルツマン定数、Σ:ヒートロス である。本測定では、異なる2つのデューティー(稼働
時間率)で、同じ電流量を選択した場合に、カソード温
度が同じとなるようにヒータパワーを調整する。これに
より抵抗値を求めることができる。このときφIとΣは
同一と考えて無視する。すなわち、次式(5) R=ΔPh/(I・2(ωνν)}----(5) より抵抗値が求まる。尚、上記測定方法については、例
えば、J.App.Phys.17, 647(1946) "ThePulsed Propert
ies of Oxide Cathode" に、より詳細な開示がある。
【0025】本実施の形態にかかる電子管用陰極の抵抗
値と従来の電子管用陰極(基体にタングステンを蒸着
し、その上にスプレー法により電子放射物質を塗布する
ことにより作成したもの)の抵抗値を、上記したCoomes
らが行った方法にて比較測定したところ、本実施の形態
にかかる電子管用陰極の抵抗値は従来の電子管用陰極の
抵抗値に比較し、約50%低下することが判明した。
【0026】以上、電子放射物質層を印刷法で形成した
場合には、電子放射物質は針状結晶構造を有するもの
の、針状結晶が横に寝た構造を取りやすく、接触面積が
増加するため、従来の電子管用陰極に比べると接触抵抗
は若干低下する。しかし、電子放射物質層を単に印刷法
で形成しただけでは、スプレー法で得られていたような
結晶同士が機械的に絡み合うアンカリング効果がなく、
十分な接触抵抗低減効果は得られなかった。本発明にお
いては、基体表面に所定の空孔を有する金属層を形成し
たのち、電子放射物質層を形成したことにより、良好な
特性が得られている。その理由としては、空孔の内部に
電子放射物質が入り込むことにより従来の電子管用陰極
に比べ基体との接触面積が大幅に増えたことから、電子
放射物質の分解及びエージング工程における加熱により
基体を構成する金属層と急速に反応することで、密着性
が向上したことによるものと考えられる。
【0027】図2は、従来の電子管用陰極(基体にタン
グステンを蒸着し、その上にスプレー法により電子放射
物質を塗布することにより作成したもの)と本発明にか
かる電子管用陰極を、各々、電子銃に組み込み、CRT
に適用した場合において電流密度換算で約4A/cm
の電流が得られるように印加電圧を設定し、設定電圧を
一定として電流を取り出した場合における最大取り出し
電流の経時変化の比較例を示したものである。図中、横
軸は動作時間、縦軸は最大取り出し電流(以下MIKと
も言う)の初期値比を表している。図より、本発明にか
かる電子管用陰極の場合、従来の電子管用陰極に比べ最
大取り出し電流量の低下が少なく、特に4000hから
6000hにおける従来の電子管用陰極において認めら
れた急激な低下がなく、電子放出特性が長期に渡り安定
していることが分かる。
【0028】また、多孔性金属層における空孔率は20
〜70%が望ましい。その理由は、金属層の空孔率が2
0%より小さい場合には、電子放射物質が金属層内に入
りがたく、所定のエミッションを得ようとすると電子放
射物質の厚みを従来の陰極と同等にする必要があるが、
抵抗値の低減は電子放射物質と基体との密着性の改善の
みに限られるため、寿命特性は従来の陰極と比べてあま
り改善されず、空孔率が70%より大きくなると、電子
放射物質は容易に金属層中に浸透できるものの、基体金
属と多孔性金属層の間に十分な密着性が得られず、剥が
れが生じたり、動作中に金属層の空孔部分がつぶれ厚み
が変化してしまうといった問題が生じ、好ましくないか
らである。
【0029】なお、金属層上の電子放射物質層の厚さに
ついては、5μm以下では、十分な遊離バリウムの生成
が行われず、所定のエミッションが得られない。一方、
80μm以上の場合は電子放射物質自身の抵抗値が大き
くなり、ジュール発熱が大きくなってしまう。電子管用
陰極において十分なエミッションが得られ、かつジュー
ル発熱による電子放射物質の劣化を最小限にするために
は電子放射物質層の厚みを10〜50μmとすることが
望ましい。
【0030】また、金属層自体の厚みを100μm以下
とするのは、金属層がこれ以上厚い場合、金属層の熱容
量が増加し、ヒータの電源を入れてからエミッションを
取り出すことができるまでに要する時間が数秒以上かか
ってしまい望ましくないからである。また、逆に金属層
の厚みが薄すぎると、基体と金属層との合金層の形成が
不十分となり、例えば絶縁物であるBaSiO等の
中間層の形成により還元剤の拡散が妨げられ、寿命特性
に悪影響を及ぼす可能性がある。かかる観点からは、金
属層の厚みは5μmから50μm程度であることが特に
望ましい。
【0031】さらに、電子放射物質層は、基体1上の金
属層4の全面に渡って存在する必要はなく、電子放出領
域の表面から10μmの深さ領域内において電子放射物
質が70重量%以上含まれるように構成しておけば同様
の効果が得られる。かかる局所的な電子放射物質の構成
を有する電子管用陰極は、例えば、所定のパターンを有
するスクリーン印刷法を用いて、金属層4上の所定部分
のみにペースト塗布することで作成することが可能で、
不要な電子放出物質層の形成がなく低コスト化が図れ
る。
【0032】実施の形態2 本実施の形態においては、まず少量のシリコン、マグネ
シウムを含有するニッケル基体1を陰極スリーブ2に溶
接、固定した後、タングステンをスパッタリング法によ
り10μmの厚みに形成した後、続いてニッケルを同じ
くスパッタリング法により10μmの厚みに形成した。
その後、この電子管用陰極に対し水素雰囲気中、100
0℃、0.5時間の加熱処理を施した。この加熱処理に
よりニッケルとタングステン膜はお互いに拡散し、厚さ
約30μmのニッケル-タングステン層を形成する。こ
のとき形成されるニッケルタングステン層は、ニッケル
とタングステンの拡散速度の違いにより、20%程度の
空孔が存在する層となる。また、表面に大きな凹凸を持
つ構造となるため、電子放射物質を従来と同様のスプレ
ー法により厚さ約60μmとなるよう形成すると、電子
放射物質が凹部に入り込み、その後の熱分解工程や活性
化工程中に一部電子放射物質は空孔内部に入った構造と
なる。本実施の形態のように合金層をスパッタリング等
により形成した場合、膜厚の制御が容易であり、品質が
安定しやすく、好適である。
【0033】図3は、従来の電子管用陰極(基体にタン
グステンを蒸着し、その上にスプレー法により電子放射
物質を塗布することにより作成したもの)と本発明にか
かる電子管用陰極を、各々、電子銃に組み込み、CRT
に適用した場合において電流密度換算で約4A/cm
の電流が得られるように印加電圧を設定し、設定電圧を
一定として電流を取り出した場合における最大取り出し
電流の経時変化の比較例を示したものである。図中、横
軸は動作時間、縦軸は最大取り出し電流(以下MIKと
も言う)の初期値比を表している。図より、本発明にか
かる電子管用陰極の場合、従来の電子管用陰極に比べ最
大取り出し電流量の低下が少なく、電子放出特性が長期
に渡り安定していることが分かる。
【0034】実施の形態3 本実施の形態においては、まず少量のシリコン、マグネ
シウムを含有するニッケル基体1を陰極スリーブ2に溶
接、固定した後、タングステンをスパッタリング法によ
り10μmの厚みに形成した後、続いてニッケルを同じ
くスパッタリング法により10μmの厚みに形成した。
その後、この陰極に対し、例えば、水素雰囲気中にて1
000℃、0.5時間の加熱処理を行う。この加熱処理
によりニッケルとタングステン膜はお互いに拡散し、厚
さ約30μmのニッケル-タングステン層を形成する。
このとき形成されるニッケルタングステン層は、ニッケ
ルとタングステンの拡散速度の違いにより、20%程度
の空孔が存在する層となる。また、表面は大きな凹凸を
有した構造となるため、電子放射物質を従来と同様のス
プレー法により厚さ約60μmに形成すると、電子放射
物質が凹部に入り込み、その後の熱分解工程や活性化工
程中に一部電子放射物質は空孔内部に入った構造とな
る。本実施の形態で用いた、合金層をスパッタリング等
により形成する方法は、膜厚の制御が容易であり、品質
が安定しやすいといった特徴がある。
【0035】上述のようにして作製した電子管用陰極の
抵抗値を実施の形態1と同様の方法で評価した結果、か
かる電子管用陰極の抵抗値は従来の電子管用陰極(基体
にタングステンを蒸着し、その上にスプレー法により電
子放射物質を塗布することにより作成したもの)の抵抗
値に比較し、約20%低下することが判明した。
【0036】
【発明の効果】かかる電子管用陰極においては、ニッケ
ルを主成分とした基体と、この基体上に形成された多孔
性の金属層と、少なくともバリウムを含むアルカリ土類
金属酸化物を主成分とする電子放射物質からなり金属層
上に形成された上層部と金属層の空孔部内に埋め込まれ
上層部と一体形成された下層部とで構成された電子放射
物質層を備えているため、電子放射物質層の抵抗値が低
減され、電子放射物質層における発熱が抑制でき、か
つ、高電流で動作させた場合にも安定したエミッション
が得られる。また、電子放射物質層の上層部の厚さが5
〜80μmである場合には、電子放射物質層の抵抗値低
減とエミッション特性向上がバランスよく実現でき、好
適である。さらに、かかる電子管用陰極をCRTに適用
した場合には、電流値の経時変化が少なく、輝度変化や
フォーカス劣化が抑制されたCRTが実現できる。
【0037】かかる電子管用陰極においては、電子放射
物質層が、表面に電子放出領域を有し、電子放出領域下
での電子放射物質の濃度が70重量%以上である場合に
は、電子管陰極の特性を左右する電子放出領域において
電子放出特性が良好で、かつ、長寿命特性を有した電子
管用陰極が低コストで実現できる。
【0038】かかる電子管用陰極においては、電子放射
物質層は、溶媒と混合された電子放射物質を基体上に被
着形成した後、この被着形成された電子放射物質と溶媒
を真空脱泡し、金属層中に電子放射物質を含浸させるこ
とにより形成する場合には、電子放射物質層が多孔性金
属層中に容易に浸透できるため、電子放射物質の見かけ
上の抵抗値が容易に低減され、電子放出特性が良好で、
かつ、長寿命特性を有した電子管用陰極が実現できる。
また、電子放射物質が、金属層と10μm以上の厚みを
有する混合層を形成するように構成した場合、電子放射
物質の見かけ上の抵抗値がより安定して低減され、好適
である。
【0039】かかる電子管用陰極においては、金属層
が、厚みが100μm以下で、20〜70%の空孔率を
有した金属層である場合には、空孔層中に電子放出物質
が容易に浸透し、電子放射物質層の抵抗値が低減できる
ため、電子放射物質層における発熱が抑制できる。ま
た、基体と多項性金属層との界面に特性劣化の原因とな
るBaSiO等の絶縁物の拡散の防止に効果がある
厚みを有する合金層が形成されるため、さらに電子放出
特性が良好で、かつ、長寿命特性を有した電子管用陰極
が実現できる。
【0040】かかる電子管用陰極においては、金属層
を、金属と空孔剤を混合して基体上に被着形成した後、
この被着形成された金属と空孔剤を真空中または還元性
雰囲気中にて加熱し、空孔剤を除去することにより形成
する場合には、20%〜70%の空孔層を有する金属層
が容易に作成でき、電子放出特性が良好で、かつ、長寿
命特性を有した電子管用陰極が容易に実現できる。
【0041】かかる電子管用陰極においては、加熱が、
最高温度が800〜1100℃で行われる場合には、前
述の空孔剤が容易に蒸発し、20%〜70%の空孔層を
有する金属層が作成でき、電子放出特性が良好で、か
つ、長寿命特性を有した電子管用陰極が容易に実現で
き、好適である。
【0042】かかる電子管用陰極においては、金属層の
空孔部の平均開口径が5μm以上である場合には空孔層
中に電子放出物質が容易に入り込むことができ、20%
〜70%の空孔層を有する金属層が容易に作成でき、電
子放出特性が良好で、かつ、長寿命特性を有した電子管
用陰極が容易に実現でき、好適である。
【0043】かかる電子管用陰極においては、金属層が
タングステン、モリブデン、ニッケル、シリコン、マグ
ネシウム、クロム、コバルト、ジルコニウムおよびアル
ミニウムのいずれかを主成分とする場合には20%〜7
0%の空孔層を有する金属層が容易に作成でき、また、
基体金属であるニッケルとの被着性が良好で、電子放出
特性が良好で、かつ、長寿命特性を有した電子管用陰極
が実現でき、好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明かかる電子管用陰極の断面構成説明図で
ある。
【図2】本発明にかかる電子管用陰極と従来の電子管用
陰極の最大取り出し電流の経時変化の比較図である。
【図3】本発明にかかる電子管用陰極と従来の電子管用
陰極の最大取り出し電流の経時変化の比較図である。
【図4】従来の電子管用陰極の断面構成説明図である。
【図5】従来の電子銃の断面構成説明図である。
【符号の説明】
1 基体、2 陰極スリーブ、3 ヒータ、4 金属
層、5 電子放射物質層、6 制御電極、7 加速電
極、8 収束電極、9 高圧電極、10 支持部材、1
1 アルカリ土類金属酸化物、12 希土類金属酸化
物、13 陰極支持構体、20 電子管用陰極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 新庄 孝 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内 (72)発明者 沢田 隆夫 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内 Fターム(参考) 5C027 CC01 CC05 5C031 DD09

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ニッケルを主成分とした基体と、この基
    体上に形成された多孔性の金属層と、少なくともバリウ
    ムを含むアルカリ土類金属酸化物を主成分とする電子放
    射物質からなり前記金属層上に形成された上層部と前記
    金属層の空孔部内に埋め込まれ前記上層部と一体形成さ
    れた下層部とで構成された電子放射物質層を備えてなる
    電子管用陰極。
  2. 【請求項2】 前記電子放射物質層の上層部の厚さが5
    〜80μmである請求項1に記載の電子管用陰極。
  3. 【請求項3】 前記電子放射物質層は、その表面に電子
    放出領域を有し、この電子放出領域下での前記電子放射
    物質の濃度が70重量%以上である請求項1または2に
    記載の電子管用陰極。
  4. 【請求項4】 前記電子放射物質層は、溶媒と混合され
    た前記電子放射物質を前記基体上に被着形成した後、こ
    の被着形成された前記電子放射物質と前記溶媒を真空脱
    泡し、前記金属層中に前記電子放射物質を含浸させるこ
    とにより形成されてなる請求項1から3のいずれかに記
    載の電子管用陰極。
  5. 【請求項5】 前記電子放射物質が前記金属層と10μ
    m以上の厚みを有する混合層を形成してなる請求項4に
    記載の電子管用陰極。
  6. 【請求項6】 前記金属層は、厚みが100μm以下
    で、20〜70%の空孔率を有した金属層である請求項
    1から5のいずれかに記載の電子管用陰極。
  7. 【請求項7】 前記金属層は、金属と空孔剤を混合して
    前記基体上に被着形成した後、この被着形成された金属
    と空孔剤を真空中または還元性雰囲気中にて加熱し、前
    記空孔剤を除去することにより形成されたものである請
    求項1から6のいずれかに記載の電子管用陰極。
  8. 【請求項8】 前記加熱における最高温度が800〜1
    100℃である請求項7に記載の電子管用陰極。
  9. 【請求項9】 前記金属層は、空孔部の平均開口径が5
    μm以上である請求項1から8のいずれかに記載の電子
    管用陰極。
  10. 【請求項10】 前記金属層がタングステン、モリブデ
    ン、ニッケル、シリコン、マグネシウム、クロム、コバ
    ルト、ジルコニウムおよびアルミニウムのいずれかを主
    成分とする請求項1〜9のいずれかに記載の電子管用陰
    極。
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