JP2002356764A - 電子ビーム励起プラズマを用いた窒化処理方法及び装置 - Google Patents

電子ビーム励起プラズマを用いた窒化処理方法及び装置

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JP2002356764A
JP2002356764A JP2001161167A JP2001161167A JP2002356764A JP 2002356764 A JP2002356764 A JP 2002356764A JP 2001161167 A JP2001161167 A JP 2001161167A JP 2001161167 A JP2001161167 A JP 2001161167A JP 2002356764 A JP2002356764 A JP 2002356764A
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chamber
gas
plasma
nitrogen
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Tamio Hara
民夫 原
Kazunari Taniguchi
和成 谷口
Sadao Fujii
貞夫 藤井
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Toyota Gauken
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Kawasaki Heavy Industries Ltd
Toyota Gauken
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電子ビーム励起プラズマを用いた金属窒化処
理において、窒素拡散層の生成をさらに加速し深いとこ
ろまで達する表面硬化層を容易に形成するようにした金
属材料の表面窒化処理方法とそれを実施する装置を提供
する。 【解決手段】 放電プラズマを生成する放電室1,2
と、放電プラズマから電子ビームを引き出し加速する加
速電極11と、処理材料を載置する試料台14と反応ガ
スを供給するガス供給口を設けた窒化処理室4を備えた
窒化処理装置を用いて、材料台14に鉄鋼材料15を載
置し、ガス供給口から窒素ガスと3.8vol%から7.
4vol%の間にある所定の閾値以上の濃度を有する水素
ガスを含む反応ガスを供給し、加速電極11により放電
プラズマから引き出し加速し窒化処理室4に導いた電子
ビームにより反応ガスをプラズマ化して鉄鋼材料15に
作用させることにより表面に生成する窒素化合物層を介
してその内部に窒素拡散層を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子ビーム励起プ
ラズマを用いた窒化処理方法及び装置に関し、特に鉄鋼
材料の窒化処理方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】金属材料、特に鉄鋼材料の窒化処理は、
熱処理変形が少なく浸炭焼入れよりも高い表面硬さが得
られるため、金型や耐摩耗性が要求される摺動部材など
に無くてはならない表面処理技術である。金属窒化処理
にはイオン窒化法がよく知られている。イオン窒化法の
主な窒化メカニズムは、グロー放電により発生する窒素
イオンを被処理物に衝突させて、叩き出された金属原子
をプラズマ中の窒素と反応させて窒化物とし、被処理物
表面に吸着させることにより窒化物層を形成させるもの
である。しかし、イオン窒化法には、高速イオンにより
被処理物表面がスパッタリングを受けるため製品の表面
粗度が低下する、グロー放電の電流密度が処理品の形状
に左右され処理温度やプラズマ分布にむらが生じるため
均一な窒素拡散層が得にくい、表面に白層と呼ばれる窒
素化合物層が形成されるなどの問題がある。したがっ
て、たとえば、部材表面の平滑性が要求される場合や白
層と呼ばれる窒素化合物層が邪魔になる場合は、処理後
の化学処理や研磨が欠かせなかった。
【0003】これら問題点のいくつかを解決する方法と
して、たとえば特開平6−220606に開示されてい
るようなラジカル窒化法がある。ラジカル窒化法は、反
応性の高いアンモニアガスを用いてグロー放電の出力を
抑え、より低いエネルギ状態のプラズマを発生させイオ
ン化率を抑えながら高活性なラジカルを有効に発生させ
窒化処理を行う。ラジカル窒化法では、窒化反応に有効
な反応種が部材の表面に吸着し、吸着された窒素が表面
層に固溶した後に部材内部へ拡散すると考えられる。処
理部材は、放電とは別の外部加熱ヒータにより所定の温
度に保持される。
【0004】特開平6−220606には、放電による
アンモニアガスのラジカル化を安定に行うための補助ガ
スとして水素ガスを使用することが開示されており、ア
ンモニア対水素の体積比が1/100〜1/0がよく、
1/10〜2/1が好適とされている。なお、水素ガス
を供給しない場合にもナトリウムガスの分解で発生する
水素が補助ガスとして作用するとされている。開示され
たラジカル窒化法では、高活性なアンモニアラジカルを
使用するため、ラジカル密度を高めると窒素化合物層が
形成されやすい。そのため、放電パワーを低く抑えなけ
ればならず窒素拡散層の生成速度が遅い。また、反応ガ
スとして有毒のアンモニアを用いるので、取扱いに注意
が必要である。
【0005】これに対して、本願出願人は既に、特願2
000−397584において、被処理部材表面におけ
る窒素拡散層の生成速度が大きく、かつ窒化物層や拡散
層の制御が可能な窒化処理装置を提供している。この開
示発明は、電子ビーム励起プラズマを用いた窒化処理装
置であって、放電プラズマを生成する放電室と、処理材
料を載置する試料台と反応ガス供給口を設けた窒化処理
室とを備え、窒化処理室内に加速電極を設けて、加速電
極により放電プラズマから電子を窒化処理室に引き出し
加速して室内の窒素を含む反応ガスをプラズマ化して金
属材料の表面に作用させることを特徴とする。
【0006】この窒化処理装置では、電子ビームの電流
とエネルギを独立に制御することができ、窒素分子の解
離断面積が大きい数十〜百数十eVの大電流電子ビーム
を用いて著しく効率の良い窒素解離を実現し、ラジカル
窒化法と比較すると各段に高密度の窒素ラジカルを生成
することができる。電子ビーム励起プラズマを用いた窒
化処理方法によれば、イオンのスパッタによらないため
表面粗度の悪化がなく、無毒の窒素の高密度ラジカルを
用いて表面窒素拡散層を迅速に形成することができる。
しかし、本願発明者等の研究の結果、窒素拡散層の生成
をさらに加速する方法を知得することができた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明が解決
しようとする課題は、電子ビーム励起プラズマを用いた
金属窒化処理において、窒素拡散層の生成をさらに加速
し深いところまで達する表面硬化層を容易に形成するよ
うにした金属材料の表面窒化処理方法とそれを実施する
装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明の窒化処理方法は、放電プラズマを生成する
放電室と、放電プラズマから電子ビームを引き出し加速
する加速電極と、処理材料を載置する試料台と反応ガス
を供給するガス供給口を設けた窒化処理室を備えた窒化
処理装置を用いて、試料台に鉄鋼材料を載置し、ガス供
給口から窒素ガスと所定の閾値以上の濃度を有する水素
ガスを含む反応ガスを供給し、加速電極により放電プラ
ズマから引き出し加速し窒化処理室に導いた電子ビーム
により反応ガスをプラズマ化して鉄鋼材料に作用させ
て、表面に窒素化合物層を生成しこの窒素化合物層を介
してその内部に窒素拡散層を形成することを特徴とす
る。なお、反応ガス中の水素ガス濃度は3.8vol%か
ら90vol%の濃度であることが好ましい。
【0009】放電プラズマから引き出した電子ビームに
より窒素ガスをプラズマ化して金属表面に作用させると
高濃度の窒素プラズマが生成し、白層と呼ばれる金属窒
素化合物層を形成しないで金属表面から窒素が侵入して
窒素拡散層、すなわち硬化層が形成される。光輝焼き入
れ焼き戻ししてビッカース硬度約600HVの硬さに調
整した熱間工具鋼SKD61に対して、電子ビーム励起
プラズマにより生成した窒素プラズマを3時間作用させ
た結果、800HV以上の硬度を有する硬化層が表面か
ら約70μm形成された。これは、ラジカル窒化法によ
り6時間処理した結果と同等である。なお、同じ条件で
1.5時間窒化処理を行った場合には、800HV以上
の硬度を示す硬化層は約20μmであった。
【0010】これに対して、本発明の窒化処理方法で
は、窒化処理室内の窒素ガスに水素ガスを含有させてい
る。このような水素ガスの存在により、金属表面に窒素
化合物層が形成されるが、同時に硬化層が効率よく形成
されるので、同じ処理時間でも硬化層の厚みが大きくな
る。同じ試料に対して、他の条件を同じくして本発明の
窒化処理方法を適用し、28.6vol%の水素濃度で
1.5時間処理すると、表面に粗度0.4μm厚さ6μ
m程度の白層が生成され、白層の下に約50μmの窒素
拡散層が形成される。このような白層は水素濃度が閾値
を超えたときに形成され、この閾値は鉄鋼材料について
は3.8vol%から7.4vol%の間にあって、閾値以上
では白層の厚さと粗度に大きな変化がないことが分かっ
ている。
【0011】本発明における水素ガスの作用メカニズム
については未だ明確でない。反応室内における雰囲気成
分を調査すると、NH、NH2、NH3などのNHラジカ
ル成分が存在し、水素の割合が増加するにつれてこれら
成分の割合が増加することが分かることから、NHラジ
カルが金属窒素化合物を生成し、金属表面に形成された
金属窒素化合物層が窒素プラズマより高濃度の窒素供給
源として作用するためと推測される。なお、本発明の窒
化処理方法により形成される白層は、イオンスパッタリ
ングを伴う処理による場合と比較して表面粗度がわずか
しか悪化しないので、摺動部材などとしてもそのままあ
るいは軽く研磨処理を施すことにより使用することがで
きる。本発明の窒化処理方法は、鉄鋼材料に限らず、窒
素の拡散により硬化層が形成されるものでNHラジカル
により金属窒化物が生成するような金属材料に適用でき
る。
【0012】また、上記課題を解決するため、本発明の
窒化処理装置は、放電プラズマを生成する放電室を備
え、処理材料を載置する試料台と反応ガスを供給するガ
ス供給口を設け室内に加速電極を設けた窒化処理室を備
え、さらにガス供給口に流量制御可能な水素ガス供給装
置を備え、ガス供給口から窒素ガスと所定の閾値以上の
濃度を有する水素ガスを含む反応ガスを供給して、放電
プラズマから引き出した電子ビームにより窒化処理室内
の反応ガスをプラズマ化し、試料台に載置した鉄鋼材料
に作用させて、材料表面に窒素拡散層を形成するように
したことを特徴とする。
【0013】本発明の窒化処理装置は、電子ビームで励
起することにより窒素プラズマを生成するため、従来の
プラズマ源と比較して数10倍の解離度を有する大容量
の窒素プラズマを得ることができ、高速な窒化処理が可
能となる。さらに、水素ガスを窒素ガスに対して所定の
濃度になるように調整して窒化処理室に供給するため、
被処理材料の表面に窒素化合物層を形成して、材料内部
への窒素供給量を増加させる効果が生じ、窒素拡散によ
る硬化層の発達が著しく進行するので、厚い硬化層に保
護された金属材料を得ることができる。なお、窒素化合
物層の表面は、他の方法で生じる白層と比較すると表面
粗度が小さく、そのままでもあるいは軽く表面処理する
だけで材料として使用することができる。
【0014】なお、電子ビーム励起プラズマ発生装置
は、窒化処理室のみで真空排気し放電室と電子加速室と
窒化処理室の間に適度な圧力勾配を設けてプロセスガス
が逆流しないようにした圧力勾配型電子ビーム励起プラ
ズマ発生装置であっても良く、また、放電室と窒化処理
室の間に設ける電子加速室で真空排気して放電室と窒化
処理室の気流を分離するようにした差動排気型電子ビー
ム励起プラズマ発生装置であっても良い。さらに、放電
室と窒化処理室の間に、放電プラズマを充満し電子を引
き出す複数の隘路を有する隔室を窒化処理室に突出する
ように設けて、隘路における電子ビーム噴出方向が処理
材料に対してほぼ平行になるようにし、さらに窒化処理
室内に隔室を取り巻くようにリング状に加速電極を設け
たいわゆるリング状電子放射型電子ビーム励起プラズマ
発生装置であっても良い。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る電子ビーム励
起プラズマを用いた窒化処理方法の実施の形態を、図面
を用い実施例に基づいて詳細に説明する。
【0016】
【実施例1】図1は本発明の窒化処理方法を実施する窒
化処理装置の第1実施例を説明するブロック図である。
本実施例の窒化処理装置は、差動排気型電子ビーム励起
プラズマ発生装置を利用したものである。差動排気型電
子ビームプラズマ発生装置は、カソード領域1と放電領
域2からなる放電室、電子加速室3、窒化処理室4から
なる。
【0017】放電室は中央に小孔が開いた中間電極9で
カソード領域1と放電領域2に仕切られている。カソー
ド領域1にはフィラメントを備えたLaB6カソード7が
設けられ、流量制御装置8を介してたとえばアルゴンガ
スなどの不活性ガス(以下アルゴンガスで代表して表現
する)が供給される。放電室の放電領域2は中心に小孔
が設けられた放電陽極10により電子加速室3と区切ら
れている。電子加速室3には高真空を生成する真空ポン
プと接続する排気口5が設けられ、中央に小孔を有する
加速電極11を挟んで窒化処理室4と隣接する。
【0018】窒化処理室4には、反応ガス供給口が設け
られ、窒素流量制御装置12を介して窒素ガスを所定量
供給すると共に、水素流量制御装置13を介して水素ガ
スを所定量供給することができる。また、電子加速室3
に接続される真空ポンプと真空度の異なる真空ポンプに
接続する排気口6が設けられている。窒化処理室内4に
は、ヒータと冷却器が付属した試料台14が設けられて
いる。試料台14は、電子ビームの入射路から適当に離
れた位置に電子ビームに対してほぼ平行に設けられる。
【0019】放電室においてフィラメントにより加熱さ
れたLaB6カソード7から電子が放出され、放電陽極1
0の間で放電を持続し、放電領域2内にアルゴンプラズ
マを生成する。加速電極11により放電領域2内のアル
ゴンプラズマから引き出され加速された電子は電子加速
室3で電子ビームとなる。電子ビームは窒化処理室4内
に入射して室内の気体分子と衝突し、分子を電離してプ
ラズマを生成する。予め硬さを調整し表面研磨した窒化
処理基材15を試料台14に載せ、水素プラズマによる
クリーニング処理を1時間実施し、この間に基材15を
ヒータで昇温する。表面温度を所定の温度に保持し、ビ
ーム加速電圧、ビーム電流、窒化処理室内の圧力を調整
しながら、窒素ガスと水素ガスを導入して窒化処理を行
う。
【0020】図2は、電子ビーム励起プラズマ発生装置
(グラフではEBEPと表す)による窒化処理法の効果
をグロー放電によるラジカル窒化法(グラフではDCと
表す)と比較して示すグラフである。図2は、横軸に基
材表面からの深さをとり、縦軸にビッカース硬度をと
り、処理時間をパラメータとして断面硬さ分布を表した
ものである。光輝焼き入れ焼き戻ししてビッカース硬度
約600HVの硬さに調整した熱間工具鋼SKD61に
対して、加速電圧80V、電子ビーム電流6.3A、窒
化処理室における圧力1.3mTorrの条件下で電子ビー
ム励起プラズマにより生成した窒素プラズマを3時間作
用させた結果、800HV以上の硬度を有する硬化層が
表面から約70μm形成された。これはラジカル窒化法
により6時間処理した結果と同等であり、電子ビーム励
起プラズマ発生装置を用いた窒化処理法では、水素ガス
を使用しなくても、ほぼ2倍の効率が得られることが分
かる。なお、同じ条件で1.5時間窒化処理を行った場
合には、800HV以上の硬度を示す硬化層は約20μ
mであった。
【0021】図3と図4は水素ガスを混合した窒素ガス
を用いるようにした本実施例の窒化処理方法の効果を説
明するグラフで、図3は水素濃度をパラメータとして硬
化層の深さを表したもの、図4は水素濃度変化に対する
表面粗さと窒素化合物層の厚さを表したものである。約
600HVの硬さに調整して表面研磨した熱間工具鋼S
KD61を窒化処理基材15とし、ビーム加速電圧、ビ
ーム電流、処理圧力、処理時間などの条件を同じにし
て、窒素ガスと水素ガスの混合比を変えて窒化した。
【0022】図3は、横軸に基材の表面からの深さを示
し縦軸はビッカース硬度を示す。図3から分かるよう
に、水素濃度3.8vol%では硬化層が殆ど発達してい
ないが、7.4vol%以上では表面下50μm程度まで
硬化層が形成されている。なお、水素濃度7.4vol%
以上では、濃度が変化しても硬化層の厚さは余り変化し
ない。したがって、ラジカル窒化法より効率が著しく改
善された電子ビーム励起プラズマ発生装置による窒化処
理法に、水素を上記の閾値以上の濃度になるように導入
することにより、さらに大幅に効率向上をみることがで
きる。なお、ここで発生する白層は、表面粗度の劣化が
それ程でないため、そのまま工作材料として使用するこ
ともできる。ただし、精密を要する場合には表面を研磨
して使用することがより好ましいことはいうまでもな
い。
【0023】図4は、同じ試験結果について、横軸に水
素濃度をとり、縦軸に表面粗さと白層の厚さを取ったグ
ラフである。図4から分かるように、表面粗さと窒素化
合物層(白層)は、反応ガス流の水素濃度が3.8vol
%と7.4vol%の間にある閾値を境に大きく変化す
る。すなわち、水素と窒素に対する水素の体積割合が
3.8vol%では、表面粗さが0.1μm程度で白層が
生成しないが、7.4vol%付近以上では表面粗さが
0.36μm程度で白層厚さが6μm程度になり、それ
以上の濃度では余り変化が無い。
【0024】このように、水素濃度が閾値より低いとこ
ろでは白層が生成しない代わりに硬化層が発達しない
が、水素濃度が閾値より高いところでは白層が生成し同
じ処理時間でも窒素が深くまで侵入して硬化層を形成す
る。このような白層は水素に対して適当量の窒素が存在
すれば形成され、たとえば水素濃度が90vol%程度で
あっても厚い硬化層が形成できると考えられる。なお、
窒化処理室内のガス組成を四重極型質量分析計で調べる
と、水素混合比が増加するとともにNH、NH2、NH3
の成分が増加することが分かる。すなわち、水素混合比
の増加によりNHラジカルが生成し窒素化合物が生成し
やすくなると推定することができる。
【0025】水素を閾値を超えて添加すると硬化層が著
しく効率的に形成されるメカニズムについては今のとこ
ろ明らかではない。しかし、図4に示された事実から、
水素濃度が閾値を超えると窒素化合物が生成して白層を
形成すること、および表面に生成した窒素化合物層が気
相よりも高い濃度の窒素供給源として作用することが原
因と考えられる。本実施例の説明は鉄鋼材料について窒
化処理する場合について行われたが、窒素の含浸により
硬化しかつ表面に窒素化合物層を形成する金属であれば
本発明の技術的思想が適用できることはいうまでもな
い。
【0026】
【実施例2】図5は本発明の窒化処理方法を実施する窒
化処理装置の第2実施例を説明するブロック図である。
本実施例の窒化処理装置は、圧力勾配型電子ビーム励起
プラズマ発生装置を利用したものであり、その他の事項
については実施例1におけるものと差異がないので、同
じ機能を有する要素については同じ参照番号を付して、
詳しい説明を繰り返さない。
【0027】本実施例の圧力勾配型電子ビームプラズマ
発生装置は、図5に示すように、カソード領域1と放電
領域2からなる放電室と窒化処理室4で構成される。放
電室にはカソード7と中間電極9と放電陽極10をこの
順に設け、さらに窒化処理室4に加速電極11を設けて
ある。カソード領域1と放電領域2は中間電極9で隔て
られている。カソード領域1には、熱電子を放出するフ
ィラメントを備えたカソード7が設けられ、またガスノ
ズルを介してアルゴンガス等の不活性ガスが供給され
る。中間電極9は、中央に小孔を備えて不活性ガスと電
子が放電領域2に流入できるようになっている。
【0028】放電領域2は中間電極9と放電陽極10の
間に形成され、カソード7と放電陽極10の間に発生す
る電子流により不活性ガスのプラズマが生成される。ま
た、放電陽極10の中心部に設けられる引出し隘路には
外側にコイルが設置されていて、中間電極9の小孔を通
過した電子流の大部分が直接放電陽極10に流入せずに
引出し隘路を通過して窒化処理室4に流入するようにな
っている。窒化処理室4には、加速電極11が、放電陽
極10の引出し隘路に対向する位置に設けられ、また、
引出し隘路と加速電極11を結ぶ直線を挟んで加熱ヒー
タを備えた試料台14が設けられている。試料台14
は、窒化処理の対象となる金属試料15を窒素プラズマ
の中心から適当な距離をおいて把持し、回転盤21によ
り回転する。窒化処理室4には、さらに反応ガス供給口
が設けられ、窒素流量制御装置12を介して窒素ガスを
所定量供給すると共に、水素流量制御装置13を介して
水素ガスを所定量供給することができる。また、図外の
真空ポンプに接続する排気口6が設けられている。
【0029】本実施例においても、予め光輝焼き入れ焼
き戻しして硬さを調整した窒化処理基材15を試料台1
4に載せ、材料表面を所定の温度に保持し、窒素ガスに
閾値を超える濃度の水素ガスを混合したガスを窒化処理
室4に導入して窒化処理をする。すると、極めて高濃度
の窒素プラズマ成分を含有する電子ビーム励起プラズマ
と材料表面に生成する白層の作用により、極めて短時間
で効率的に深い硬化層を得ることができる。なお、本実
施例の装置によれば、放電室から放出される電子流に対
して平行に金属材料を配置ししかも適当な速度で回転さ
せるので、処理対象物に作用するプラズマの濃度分布に
むらが少なく、広い範囲について均質な表面加工が行え
る。このように、本実施例の装置により、金属材料を効
率よく窒化処理することができる。
【0030】
【実施例3】図6は本発明の窒化処理方法を実施する窒
化処理装置の第3実施例を説明するブロック図である。
本実施例の窒化処理装置は、リング状電子放射型電子ビ
ーム励起プラズマ発生装置を利用したものであり、その
他の事項については実施例1および実施例2におけるも
のと差異がないので、同じ機能を有する要素については
同じ参照番号を付して、詳しい説明を繰り返さない。
【0031】本実施例の窒化処理装置は、図6に示すよ
うに、放電室カソード領域1と放電室放電領域2と窒化
処理室4および隔室31が鉛直方向に配置され、放電陽
極10は中間電極9の直下、隔室31の直上に位置し、
さらに隔室内に挿入した放電陽極部分32を持つ。カソ
ード11と放電陽極10により供給される電子流によ
り、放電領域2内で不活性ガスのプラズマが生成され
る。隔室31は窒化処理室4中に突出する筒状の形状を
有し、流入した電子流により生成された放電プラズマが
充満する。
【0032】隔室31の外周には多数の連通孔が設けら
れ、連通孔に対向する位置に加速電極11が設けられて
いる。加速電極11はリング型電極で、窒化処理室4内
に隔室31の周囲を巡るように設けられ、連通孔から引
き出された電子ビームを図中水平方向に放出させる。窒
化処理室4には、窒素流量制御装置12を介して窒素ガ
スを所定量供給すると共に、水素流量制御装置13を介
して水素ガスを所定量供給することができる。また、真
空ポンプに接続する排気口6が設けられている。また、
隔室31に対向する位置に上面に加熱ヒータを備えた試
料台14が設けられている。試料台14は、窒化処理の
対象となる金属基材15を載置して、回転したり上下方
向に動かすことができる構造になっている。
【0033】本実施例においても、硬さ調整し表面研磨
した窒化処理基材15の温度を所定の温度に保持し、窒
素ガスに閾値を超える濃度の水素ガスを混合したガスを
電子ビーム励起プラズマ化して窒化処理をすると、極め
て短時間で効率的に深い硬化層を得ることができる。ま
た、本実施例の金属窒化処理装置では、電子流が窒化処
理室4内に放射状に噴出し、基材15がこれに対して平
行に配置されるので、電子流が基材15の表面に直接的
に衝突しないため、高エネルギーのイオンビーム入射に
よる表面粗度の劣化がない。また、噴出する電子流と基
材表面の間に適当な距離があるため、大きな面積を有す
る材料を用いてもプラズマ反応は全面積に亘って均等
で、十分均質な製品を製作することができる。このよう
に、本実施例の装置により、金属材料を効率よく均質に
窒化処理することができる。
【0034】
【発明の効果】以上詳細に説明した通り、本発明の窒化
処理方法および装置によれば、金属材料表面における窒
素拡散層の生成速度が大きく、表面深くまで硬化させた
金属材料を効率よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の窒化処理装置の第1実施例を説明する
ブロック図である。
【図2】電子ビーム励起プラズマを用いた窒化処理方法
の効果を説明するグラフである。
【図3】本実施例の窒化処理方法により形成される窒素
拡散層の厚さを示すグラフである。
【図4】本実施例の窒化処理方法において生成する窒素
化合物層を説明するグラフである。
【図5】本発明の窒化処理装置の第2実施例を説明する
ブロック図である。
【図6】本発明の窒化処理装置の第3実施例を説明する
ブロック図である。
【符号の説明】
1 放電室カソード領域 2 放電室放電領域 3 電子加速室 4 窒化処理室 5 排気口 6 排気口 7 カソード 8 アルゴン流量制御装置 9 中間電極 10 放電陽極 11 加速電極 12 窒素流量制御装置 13 水素流量制御装置 14 試料台 15 窒化処理基材 21 回転盤 31 隔室
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 谷口 和成 名古屋市天白区久方2丁目12番1 豊田工 業大学内 (72)発明者 藤井 貞夫 千葉県野田市二ツ塚118番地 川崎重工業 株式会社野田工場内 Fターム(参考) 4G075 AA24 AA30 BA05 BC04 BD14 CA47 DA02 EC21 4K028 BA02 BA12 BA21

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 放電プラズマを生成する放電室と該放電
    プラズマから電子ビームを引き出し加速する加速電極を
    備え、処理材料を載置する試料台と反応ガスを供給する
    ガス供給口を設けた窒化処理室を備えた窒化処理装置に
    おいて、前記試料台に鉄鋼材料を載置し、前記ガス供給
    口から窒素ガスと所定の閾値以上の濃度を有する水素ガ
    スを含む反応ガスを供給し、前記加速電極により前記放
    電プラズマから引き出して加速した電子ビームを前記窒
    化処理室に導き、前記反応ガスをプラズマ化して前記鉄
    鋼材料に作用させることにより表面に生成する窒素化合
    物層を介してその内部に窒素拡散層を形成することを特
    徴とする窒化処理方法。
  2. 【請求項2】 前記反応ガス中に含まれる水素ガスが
    3.8vol%から90vol%の濃度であることを特徴とす
    る請求項1記載の窒化処理方法。
  3. 【請求項3】 放電プラズマを生成する放電室を備え、
    処理材料を載置する試料台と反応ガスを供給するガス供
    給口を設け室内に加速電極を設けた窒化処理室を備えた
    窒化処理装置であって、前記ガス供給口に流量制御可能
    な水素ガス供給装置を備えて、該ガス供給口から窒素ガ
    スと所定の閾値以上の濃度を有する水素ガスを含む反応
    ガスを供給して、前記加速電極により前記放電プラズマ
    から電子を前記窒化処理室に引き出し加速して前記反応
    ガスをプラズマ化して、前記試料台に載置した鉄鋼材料
    に作用させて、表面に窒素拡散層を形成するようにした
    ことを特徴とする窒化処理装置。
  4. 【請求項4】 前記放電室と前記窒化処理室の間に真空
    排気する電子加速室を備えるとともに、前記加速電極を
    前記窒化処理室内に配置する代わりに前記電子加速室と
    の仕切り位置に配置することを特徴とする請求項3記載
    の窒化処理装置。
  5. 【請求項5】 前記放電室と前記窒化処理室の間に、前
    記放電プラズマを充満し電子を引き出す複数の隘路を有
    する隔室を介装し、該隔室は前記窒化処理室に突出し前
    記隘路が前記処理材料に対してほぼ平行に電子が噴出す
    る方向に開口されており、前記窒化処理室内には該隔室
    を取り巻くようにリング状に加速電極が設けられている
    ことを特徴とする請求項3記載の窒化処理装置。
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