JPH1053866A - ガス制御式アーク装置とその方法 - Google Patents

ガス制御式アーク装置とその方法

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JPH1053866A
JPH1053866A JP11016697A JP11016697A JPH1053866A JP H1053866 A JPH1053866 A JP H1053866A JP 11016697 A JP11016697 A JP 11016697A JP 11016697 A JP11016697 A JP 11016697A JP H1053866 A JPH1053866 A JP H1053866A
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JP
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cathode
gas
deposition
plasma
arc
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JP11016697A
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English (en)
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Alexander F Rogozin
エフ. ロゴジン、アレクサンダー
Raymond P Fontana
ピー. フォンタナ、レイモンド
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Multi-Arc Inc
Original Assignee
Multi-Arc Inc
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    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J37/00Discharge tubes with provision for introducing objects or material to be exposed to the discharge, e.g. for the purpose of examination or processing thereof
    • H01J37/32Gas-filled discharge tubes
    • H01J37/32009Arrangements for generation of plasma specially adapted for examination or treatment of objects, e.g. plasma sources
    • H01J37/32055Arc discharge
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C14/00Coating by vacuum evaporation, by sputtering or by ion implantation of the coating forming material
    • C23C14/22Coating by vacuum evaporation, by sputtering or by ion implantation of the coating forming material characterised by the process of coating
    • C23C14/24Vacuum evaporation
    • C23C14/32Vacuum evaporation by explosion; by evaporation and subsequent ionisation of the vapours, e.g. ion-plating
    • C23C14/325Electric arc evaporation
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J37/00Discharge tubes with provision for introducing objects or material to be exposed to the discharge, e.g. for the purpose of examination or processing thereof
    • H01J37/32Gas-filled discharge tubes
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    • H01J37/3244Gas supply means

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 改良されたガス制御式アーク蒸気蒸着工程及
び装置を提案する。処理ガスは選択的に導入されて陰極
20の陰極蒸着表面20aを通り、陰極蒸着表面の直近に処
理ガス活性化ゾーンを生成し保持する。中に処理ガス通
路が形成された陰極構造と通気性物質で形成された多孔
性の陰極を使用する。 【解決手段】 処理ガス活性化ゾーンに於ける導入ガス
13の集中は処理ガス原子及び分子の励起、解離、電離レ
ベルを著しく増大させ、これが陰極蒸着表面20aでの合
成反応の限界値を急激に低下させ、陰極スポットの性質
及び作用を変化させる。処理ガス活性化ゾーンからの高
電荷プラズマ粒子50をより多く基板37に到達させるた
め、蒸着被膜処理は低チャンバ気圧に於いて実行され、
より効果的で蒸着率の高い、粗大粒子がなく密で平滑な
硬質の被膜を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、排気された雰囲気
に於いて基板を被膜するための物理蒸着法に関し、特に
処理ガスを低チャンバ圧で使用し、改良された基板被膜
を製造するための改良型電気アーク物理蒸着装置とその
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に物理蒸着技術は、排気された蒸着
チャンバ内に於いて基板表面に被膜層を付加、または蒸
着させる技術を含んでいる。この技術に於いて処理工程
を実施するための変型及び技術は、多数開発されている
が、概してその工程は全ての物理蒸着技術に於いて同一
である。被膜される基板は蒸着チャンバ内に置かれ、同
チャンバは通常、蒸着被膜工程間は排気され負圧レベル
で維持される。一般に、蒸着される被膜材料の少なくと
も一部は、非気体状で蒸着チャンバ内に存在し、典型的
な固体の電気防食用ソース物質となっている。ソース物
質は、ソース物質を被膜材料の蒸気プラズマに変換させ
るエネルギー刺激によって作用する。被膜用の固形ソー
ス物質を気体/蒸気プラズマに変換するのに使用される
最も一般的な物理蒸着技術は、抵抗または誘導加熱、電
子ビームまたはイオンボンバード、及び電気アークとい
ったものである。本発明は電気アークによる物理蒸着工
程に関するものである。
【0003】電気アークによる物理蒸着工程に於いて
は、電気アークは一般に陰極として機能するように電気
的にバイアスされている被膜用ソース物質と陰極から隔
たれた陽極との間で打撃され、維持される。一般に30ア
ンペアから数百アンペアに及ぶ高電流密度のアークは、
アークが陰極に「接触」する場所のソース物質を気化さ
せる。気化したソース物質は、アーク放電の陰極領域に
於いて中性原子、残留ガスまたは反応ガス(使用されて
いる場合)の分子、イオン化された原子及び分子などを
含むプラズマを形成する。
【0004】陰極蒸着面は、電気アークが接触する陰極
またはソースの表面であり、また陰極蒸着面上で目視可
能なアークの終点または付着点は一般に「陰極スポッ
ト」と称されている。陰極表面にはアークの電流レベル
に応じて1つまたは複数のこうした陰極スポットが存在
し得る。チャンバ内に反応ガスを入れると、化合物被膜
が基盤上に蒸着、及び/または形成される。こうした反
応ガスは陰極から気化したソース物質と結合し、被膜プ
ラズマの一部を形成する。物理蒸着アーク処理は、周知
のように米国特許第3,625,848号明細書(スネイパ
ー)、同第3,793,179号明細書(サブレブら)、及び同
第4,448,799号明細書(バーグマンら)に記載されてい
る。関連する当業者は、ここに参考文献として開示して
いるこうした明細書を参照し、本技術に関連する先行技
術のさらに詳細な説明に通じる一助として戴きたい。
【0005】この物理蒸着アーク処理が他の先行する物
理蒸着技術を上回る優位点は、陰極蒸着面上の活性陰極
スポットからプラズマジェットを生成する陰極真空アー
ク放電の基本特性に負うところが大きい。この技術の主
な優位点は、濃厚で高度にイオン化されたプラズマフロ
ーを製造する際の、その簡易性及びプラズマソースの経
済的使用にある。但し、陰極真空アーク技術は、逆に激
しい高エネルギー陰極スポットによって陰極蒸着面にプ
ラズマが形成されるというこの方法に関連して幾つか固
有の問題を抱えている。
【0006】電気アークは本来、多数の好ましくない飛
沫やマクロ粒子を陰極蒸着面から生成する。こうしたマ
クロ粒子はプラズマの流れに入るが、これが被膜される
基板上に蒸着した場合、とりわけ蒸着された被膜面の有
孔性及び荒さが増加することによって、蒸着されたフィ
ルムの特性が低下する。こうした蒸着被膜に於けるマク
ロ粒子の存在は、光学及び電子といった需要の高い分野
での本技術の使用をかなり妨げており、その適用は主と
して摩擦関連のものに限定されている。従って、マクロ
粒子及び/またはアーク蒸着工程に於けるそれらの生成
を最小化する、または除去することが望まれており、こ
の問題に対してかなりの研究が行われてきている。
【0007】基板上へのプラズマ被膜の蒸着に先立って
プラズマストリームからマクロ粒子を取り除くために使
用されてきた技術の1つは、適当なシールドまたはフィ
ルタを使用してマクロ粒子を物理的に捕捉する、または
基板表面から偏向させる方法である。こうした方法は当
業界では一般に「アーク濾過処理」として知られてい
る。先行技術によるマクロ粒子フィルタ装置の一例は、
米国特許第4,452,686号明細書(アキセノフら)に於い
て示されている。アーク濾過処理はマクロ粒子を除去す
るが有効性の面で不適である。基板上に衝突する被膜用
プラズマから物理的にマクロ粒子を除去すると、陰極面
で生成された被膜プラズマのかなりの部分が濾過工程に
おいて失われ、それによってシステムの被膜効率が大幅
に減少する。
【0008】アークプラズマ被膜内のマクロ粒子を減少
させるその他の試みとしては、陰極蒸着面でのその形成
を最小化させるというものがある。これは、強磁界を使
用して陰極蒸着面でのアークの動きを制限または制御す
ることによってある程度実現可能であり、時に操作モー
ド「アーク制御」と称されてきた。この技術は特許第WO
85/03954号「制御された真空アーク物質蒸着の方法と装
置」(ラマリンガム、1985年)に記載されている。
【0009】蒸着被膜に於けるマクロ粒子を最小化する
さらに他の技術は、米国特許第5,458,754号明細書(サ
スラムら)に詳細に記載されているような強磁界を使用
して、陰極蒸着面でのその形成を最小化し、同時に生成
されたマクロ粒子を気化するというものである。この処
理は、アーク濾過処理技術に於けるようなコーティング
の面での非効率性を欠点としてもたない高活性被膜プラ
ズマを生成する。しかしながら、この技術には活性フィ
ールドを作り出すための特殊な磁界生成手段が必要であ
り、従来のアーク蒸着システムの普遍的改善方法として
の魅力に欠けている。
【0010】物理的蒸着アーク処理技術に於いては長ら
く、窒素、酸素、メタンなどのガスを排気されたチャン
バに入れて気化したソース物質と反応させ、合成被膜プ
ラズマを形成可能であることが知られてきた。しかしな
がら、電気アーク蒸着処理に於いてはソース蒸着処理に
於いてマクロ粒子の形成を排除、または最小化する際に
こうしたガスの使用が効果的に採用されていない。幾つ
かの出版物(A.F.ロゴジン、L.U.ルシン共著「化学的活
性真空アークプラズマの分子ビーム診断:アルゴン及び
窒素の影響」(ソビエト化学物理、1987年度版、6巻、
第1号、45-51ページ)、及びV.M.アキモフ、A.F.ロゴジ
ン、L.U.ルシン共著「化学的活性真空アークプラズマの
分子ビーム診断」(ソビエト化学物理、1986年度版、5
巻、第9号、1243-1248ページ))は、放電工程に反応ガ
スを導入することによってアーク蒸着処理に於けるプラ
ズマフローの密度が制御可能であることを示唆してい
る。しかしながら、これを効果的に達成する方法に関す
る詳細は何も示されていない。陰極で生成されるマクロ
粒子の粒度分布を制御できる程のガス流量を単純に蒸着
チャンバへと導入すれば、必然的に真空チャンバ内のガ
ス圧が増大し、同システムの蒸着率は劇的に減少するで
あろう。こうしたシステムの他の欠点は、チャンバ内の
ガス圧が増加すると被膜用基板表面のイオン衝撃表面調
製(これは被膜の際の基板表面の準備に必要な技術であ
ることが判明している)が、背景ガス圧の存在によって
不可能または著しく無効にされることにある。
【0011】米国特許第4,929,322号明細書(スーら)
は、開端を有する伸長部材によって陰極を取り囲んで
「陰極チャンバ」を形成し、さらにガスの流れをその陰
極チャンバを通るように方向付けることによって、排気
されたアーク蒸着チャンバ内へと導入される不活性ガス
を制御することを示唆している。記載されたシステムの
反応ガスは陰極の外周縁に沿って陰極チャンバに導かれ
るため、反応ガスの濃度は、陰極チャンバ内の方が蒸着
チャンバの残余部分より大きい。明示されたこの構造の
目的は、陰極チャンバ内のアークを調製することによ
り、この領域のプラズマ圧や温度を増加させ、アークを
最大限に陰極蒸着面に閉じこめて、被膜装置の連続的な
安定した長期運転ができるようにすることである。しか
しながらこの技術は、システムへのガス導入方法の制御
に対して1つの事由を提供してはいるが、陰極蒸着面に
於けるマクロ粒子を最小化する問題には触れていない。
スー氏のこの技術は、蒸着率の減少及び基板表面のイオ
ン衝突による調製能力の低下といった先行技術と同じ欠
点を有している。蒸着システムへのガス導入の制御に関
する陰極チャンバ技術のさらなる欠点は、大部分のマク
ロ粒子が陰極スポットにより陰極面に対して約10度乃至
30度の投射角で射出されるため、陰極面から外側に突起
する陰極チャンバの伸長壁が、そうでなければ基板に到
達するはずのない生成されたマクロ粒子の方向を事実上
基板表面へと変えさせる可能性があることである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、マクロ粒子
の生成を減少させ、排除しようとする技術上の前記ニー
ズ、及び電気アーク蒸着工程に於けるマクロ粒子の形
成、取り扱い、及び除去に関する周知の先行技術の問
題、及び欠陥に同時に対処できる簡単で効果的な方法を
提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、滑らかで高密
度の蒸着被膜を高蒸着率で効率的に提供する改良された
アーク蒸着処理とその処理を実施するための装置を提供
する。本発明のガス制御式アーク蒸着処理は、蒸着シス
テムに入れられる処理ガスの導入と流れを選択式且つ正
確に制御する。本発明の1つの態様に於いては、処理ガ
スは陰極蒸着面を通って導入される。処理ガスを導入す
るためのこうした技術は、「処理ガス活性化領域または
ゾーン」を陰極蒸着面に近接して生成する。この生成さ
れたゾーンは、陰極の電圧降下が発生するラングミュア
シースの真上に位置する。原子または分子のイオン化と
励振、及び導入された処理ガスのガス分子の解離などの
活性化工程は、処理ガス活性化ゾーンで行われる。処理
ガス活性化ゾーンの厚さは、近接する電極プラズマに於
ける初期処理用の断面の比率、及び陰極面から放射され
る荷電粒子の濃度によって決定される。処理ガス活性化
ゾーン内での活性化工程は主に、高電荷陰極物質イオン
からの電荷移動メカニズムを通して、またラングミュア
シースに於いて加速されたプラズマ電子と処理ガス原子
または分子の間の非弾性衝突によって発生する。その結
果、こうした活性化工程は、陰極スポットの形成と作用
に影響を及ぼす高レベルのイオン化され励起されたガス
核種を生成する。本発明は、結合エネルギーに影響し物
質の電子仕事関数を低下させる陰極表面上の放射−活性
位相化合物の形成について配慮し、陰極蒸着面上の熱陰
極スポット及びこうした熱陰極スポットにより生成され
るマクロ粒子を最小化、または除去する。
【0014】本発明の処理ガス制御式アーク工程は、陰
極蒸着面に隣接するその微細な領域内で、最も必要とさ
れる場所へと処理ガスの制御式導入を行うが、蒸着チャ
ンバに於ける全体的なガス圧に著しい影響を及ぼすこと
はない。このため、低チャンバ圧での蒸着システムの運
転が可能となり、プラズマがチャンバを通して陰極蒸着
面から基板に移動する間の再結合及び不活性化に起因す
る荷電され活性化されたプラズマ分子の喪失が防止され
る。これによって効率的な高蒸着率、効果的イオン衝突
による被膜用基板表面の調製、及び基板上への緻密で滑
らかで非常に堅い被膜の付加が可能となる。本発明は、
ガス核種の存在下で最小のマクロ粒子を有する効果的な
基板の調製を考慮しているため、プラズマ基板調製、ガ
ス注入、ガス窒化などの用途に経済的なイオンソースを
供給する際には本方法の使用が可能である。本発明は、
陰極スポットによるマクロ粒子生成が少なく、高蒸着率
の安定した真空アーク放電を具現する簡単で効果的な技
術を提供する。この工程は、異なる陰極物質に対する処
理ガス流量を個別に正確に制御できるため、AINなどの
以前は蒸着被膜が困難とされたものへの滑らかで緻密な
蒸着、及び(TiAl)Nなどの異なる多数の陰極ソース物
質からの被膜蒸着に適用が可能である。こうした多数陰
極ソース蒸着では、粉末冶金技術を使用して作られるよ
うな高価な合成陰極を使用する必要がない。
【0015】本発明の態様の1つに於いては、蒸着チャ
ンバ内の電気アークによって電気防食用陰極の陰極蒸着
面から生成されるプラズマを強化する方法を開示してい
る。本方法は、既定流量で処理ガスを蒸着チャンバに選
択的に導入し、陰極蒸着面に近接してプラズマの活性化
を強化する処理ガス活性化ゾーンを生成する工程で構成
される。本発明のさらなる態様に於いては、処理ガスは
陰極の陰極蒸着面を通して導入される。処理ガスはま
た、陰極及び陰極蒸着面を通じて形成される1つまたは
複数の経路を通して導入が可能であり、またその陰極
は、処理ガスが陰極蒸着面へ向かう途中で通過する同陰
極内の毛細管状経路を限定する多孔性物質の少なくとも
一部を形成可能である。本発明は、陰極がコールドレジ
ームモード及びホットレジームモードの何れのモードに
よる運用に於いても冷却されるような方法の実行を意図
している。陰極は、金属、炭素、またはドーピングまた
は温度の関数として導電性になるような物質を含む導電
物質とすることが可能である。処理ガスは、反応性また
は非反応性ガス、またはこの2種のガスまたは蒸気の化
合物である。処理ガスゾーンは、プラズマが生成される
間に陰極蒸着面上で発生するラングミュアシース(Langm
uir sheath)(ここでは陰極の電圧降下が開始される)
を越えた位置にある。
【0016】処理ガスは、陰極物質の高荷電イオンから
の電荷移動によって、及び/またはプラズマ電子とプラ
ズマガスの原子及び分子との非弾性衝突を起こすことに
よって、処理ガス活性化ゾーン内で活性化される。本発
明は、処理ガス活性化ゾーンを使用して陰極蒸着面上の
熱陰極スポットの生成を減少させ、プラズマへのマクロ
粒子導入を減らしている。また、処理ガス活性化ゾーン
の生成は、陰極表面上への放射−活性位相化合物の形成
を可能にするため、陰極蒸着面に於ける合成反応の限界
値が低くなる。処理ガス活性化ゾーンを生成する処理ガ
スの既定流量は、陰極を形成する物質のタイプ、及び使
用する処理ガスタイプの関数であり、またアークの放電
電流の関数であって次の値[I(Qcr/Isr]と同等
またはそれ以上である。
【0017】さらに本発明の一態様に於いては、以下の
工程で構成される電気アーク真空蒸着処理が提供されて
いる。 (a)真空蒸着チャンバ内に陽極、第1電気防食用陰極ソ
ース、及び基板を機能的に構成する工程と、(b)チャ
ンバを排気する工程と、(c)第1処理ガスをチャンバに
導入し、第1陰極ソースの陰極蒸着面に近接して第1処理
ガス活性化ゾーンを生成する工程と、(d)第1陰極の陰
極蒸着面と陽極との間で電気アークを打撃並びに維持す
ることによって、部分的に第1陰極蒸着面を気化し、第1
プラズマを生成する工程と、(e)基板との嵌入に第1プ
ラズマを方向付けする工程。
【0018】基板表面の調製、基板表面の窒化、または
基板表面上へのプラズマ被膜の形成は、方向付けされた
プラズマを使用して行うことが可能である。こうした蒸
着工程では、第1処理ガスは第1陰極の陰極蒸着面を通し
て導入されることが望ましい。本発明のさらなる態様に
於いては、前記の蒸着工程は、真空蒸着チャンバ内に陽
極及び基板に関連させて第2電気防食用陰極ソースを構
成すること、第2処理ガスをチャンバに導入し第2陰極の
陰極蒸着面に近接して第2処理ガス活性化ゾーンを生成
すること、及び陽極と第2陰極の陰極蒸着面との間で電
気アークを打撃し維持して第2陰極を部分的に気化さ
せ、第2プラズマを生成することが含まれている。
【0019】さらに本発明のその他の態様に於いては、
電気防食用陰極ソースを有する形式の電気アーク蒸着チ
ャンバ内に於いてプラズマを生成する方法であって、
(a)蒸着チャンバ内に陽極、陰極ソース、及び基板を
機能的に構成する工程と、(b)第1ガス圧までチャンバ
を排気する工程と、(c)処理ガスを既定流量で陰極の
陰極蒸着面を通してチャンバに選択的に導入する工程
と、(d)陰極蒸着面と陽極との間で電気アークを打撃
し維持することによって、陰極物質と処理ガスからプラ
ズマを生成する工程と、(e)基板へとプラズマを方向
付ける工程で構成される方法が提示されている。
【0020】この方法は蒸着チャンバ内の平均圧力を第
1ガス圧に維持する工程を含み、また陰極蒸着面上での
熱陰極スポットの生成を排除するものである。
【0021】本発明のさらなる態様に於いては、電気ア
ーク蒸着に使用する電気防食用陰極であって、電気アー
クが蒸着チャンバ内の陰極と陽極との間で打撃され、
(a)アークによって打撃される陰極蒸着面の少なくと
も1つを限定するように構成されたソース物質の実体積
と、(b)ソース物質の体積が、ソース物質を通して形
成され入口端から出口端に伸長するガス通路を限定し、
出口端が陰極蒸着面まで開口していることとを含む陰極
が提示されている。こうしたソース物質は、金属、炭
素、またはドーピングまたは温度と相関して導電性とな
るような物質を含む導電物質とすることができる。こう
した物質には、例えばチタンのような金属、グラファイ
ト物質のような非金属、または合金が含まれる。ソース
物質は適切な形状加工され、陰極蒸着面上の陰極スポッ
トのアークの動きを制限するため、ガス通路の出口端を
取り囲むように適正に形状加工すること、またこのよう
に成型された窪みを含めることができる。陰極物質は陰
極蒸着面の真下にその全体または一部を多孔性物質から
形成することができるため、処理ガスは多孔性物質及び
陰極蒸着面を通過していく。
【0022】本発明のさらなる態様に於いては、電気ア
ーク蒸着システムであって、(a)真空蒸着チャンバ
と、(b)蒸着チャンバ内に存在する、またはその一部
を形成する陽極と、(c)蒸着チャンバ内の電気防食用
陰極ソース物質(陰極は陰極蒸着面を有している)と、
(d)陰極の蒸着面からのプラズマ物質を受取るように
調製及び配置された蒸着チャンバ内の基板と、(e)チ
ャンバの排気を行うために蒸着チャンバに有効に接続さ
れた手段と、(f)陰極蒸着面と陽極の間でアークを開
始及び維持するために、陽極と陰極を有効に接続する電
源と(これによってソース物質のプラズマが生成され
る)、(g)選択的に処理ガスを蒸着チャンバに配給
し、陰極蒸着面に近接して処理ガス活性化ゾーンを形成
するように蒸着チャンバと陰極に有効に接続された処理
ガス配給システムと、で構成されるシステムが提示され
ている。
【0023】本発明の説明は、本発明の原理を開示、実
践する幾つかの好適な実施例に関して、また記載の工程
と装置の実施に於いて使用される任意のソース物質とガ
スに関して行っていくが、本発明の範囲内で他の装置ガ
ス及び物質が使用可能であることは当業者には容易に理
解されるはずである。さらに、本発明の方法によって実
践された原理は、その他の周知のアーク蒸着技術と共
に、アーク蒸着処理を強化して被膜形成を行うために適
用または使用することも可能であることが理解されるで
あろう。本発明のこれら及び他の態様は、特定の実施
例、例示、及び具現に適用された本発明に関する以下の
詳細な説明によってさらに完全に理解されるであろう。
【0024】
【発明の実施の形態】まず図面について説明する。複数
の図面に於ける同一数字は、全体を通じて同一部分を表
わしている。図1は本発明との共通して使用が可能であ
る一般的な従来型電気アーク真空蒸着システムの線図を
示している。図1はこうした蒸着システムの単なるアウ
トラインであり、本発明の論議に関連する電気アーク真
空蒸着システムの基本部分を一般的、概略図的に図示し
たものに過ぎない。当業者であれば欠けている要素を容
易に認識し、図を完成して作業システムを提示すること
ができるであろう。電気アーク真空蒸着システム及びそ
の様々な部分に関する詳細なる説明については、米国特
許第3,793,179号明細書(サブレブら)、同第4,485,759
号明細書(ブランドルフ)、同第4,448,799号明細書
(バーグマンら)、同第3,625,848号明細書(スネイパ
ー)を参照することができる。こうした追加的開示が本
発明を理解する上で必要な範囲に限り、または請求の範
囲を支持するためにこうした特許の開示及び教示を参考
文書として本文に組み入れるものとする。
【0025】図1では、基板被膜用蒸着チャンバを限定
する密閉された内部空洞11を形成するために互いに接続
された(図示されていない)第1壁チャンバ部分10a及び
第2壁チャンバ部分10bを有する真空蒸着チャンバが10で
表されている。12で略示されている真空ポンプシステム
は、空洞11の出口ポート11aを経て内部空洞11と通じて
おり、当業者には周知の方法によって本チャンバを適切
に排気可能としている。蒸着工程中に反応性または不活
性の処理ガスを内部空洞11へ挿入するための適切な処理
ガスソース手段は概して13で表されており、14で示され
るフロー制御調整手段及びガスフロー経路15(詳細は以
下に記述する)を通して内部空洞11と通じている。
【0026】図1に於いて「陰極」として言及されてい
る被膜物質のソース20は、被膜蒸気の源泉(origin)、ま
たは蒸着被膜処理の場合の「プラズマ」に相当し、また
アーク生成装置の1電極となっている。電気アーク蒸着
システムに於いては、こうした被膜物質ソースは概ね、
固体形状である被膜物質の物理的質量を表す。ソース物
質の物理的形状は、当業者には周知の通り、円筒状か
ら、方形、不定形状に及ぶ変形が可能である。またソー
ス物質の形式も、金属または炭素のような導電物質か
ら、ホウ素、ケイ素、またはゲルマニウム、及びそれら
の化合物や合金のようにドーピングまたは温度の関数と
して導電体となる物質に至るまで大幅に変更することが
できる。本発明の好適な実施例では、ソース物質は導電
性金属、特にチタンが好適である。ソース物質20は、図
中の概して22で表される適切な据え付け手段によって蒸
着空洞11に据え付けられている。同手段は少なくとも部
分的に外方向にチャンバ壁の1つを通して周辺空中に突
き出している。図1の線図では、据え付け手段22は第2チ
ャンバ壁部分10bを通して突き出た形で示されている。
電気アーク蒸着工程中は陰極を高電流レベルが通過する
ため、陰極は極度に高温となり、外部的な冷却を必要と
する。こうした冷却は一般に、システムに水を通すこと
によって行われるが、その給水系は図1では24で略示さ
れ、液体流路手段16により陰極据え付け装置22と通じて
いる。概して17で示されている適切な真空シーリング及
び電気的絶縁手段が、蒸着チャンバ11内の真空を維持す
るため、またソース20を蒸着チャンバ壁部分10から電気
的に絶縁するために設けられている。
【0027】システムの電気アークエネルギーを生成、
維持するための主電源は30で示されている。図示した例
では、DC電源の負端子(V−)が陰極据え付け手段22を
通して陰極ソース20に電気的に接続されて示されてい
る。電源30の正端子(V+)は、電気アークシステムの
主陽極に直に接続されている。陽極は空洞11内で別構造
を構成する場合もあるが、図1に於いて正端子(V+)
がチャンバ壁10へ接続がされているように、チャンバ壁
が陽極として機能することが多い。図示されていない
が、陽極にはまた周知の方法で適切な冷却手段が設けら
れる場合がある。DC電源以外のものが使用可能であるこ
とは理解されるであろう。
【0028】一般に、電気アークは32で示されるトリガ
ーアッセンブリ手段により蒸着チャンバ空洞11内で開始
される。トリガーアッセンブリ32は、例えば米国特許第
4,448,799号明細書の空気圧式トリガー装置のような形
式の任意の適切な構造、または陰極ソース20と陽極10と
の間でアークの開始を操作できるようなその他の構造と
することができる。一般にこうしたトリガーアッセンブ
リは通常32aで示される移動式接触ロッド部材を含んで
いる。同部材は移動式であり、陰極蒸着面20aとの電気
的接点に出入りする。陰極表面20a上でアークを開始す
るための電力は、電源30の(V+)出力端子から抵抗器
33、及び34で示されるような適切な信号流路を経由して
トリガーアッセンブリ32に供給される。信号流路34は、
通常35で示される絶縁シール部材手段によりチャンバ壁
10bを通過している。アーク開始用トリガー装置の操
作、及びアーク真空蒸着チャンバの一般操作は周知であ
るため、本文では詳述しない。
【0029】チャンバ11内で被膜される物品は通常基板
と称され、図1の37で示されている。基板はチャンバ内
に適切に据え付けられるが、これはまた、図示のように
基板バイアス供給機能ブロック38によって電気的にバイ
アスを掛けることもできる。このブロック38は39で示さ
れる適切な信号流路によって基板に有効に接続されてい
る。基板はまた、適切な加熱(または冷却)手段(図示
されていない)によって加熱(冷却)することができ
る。信号流路39は、通常40で図示される適切な電気的絶
縁体及びシール手段によってチャンバ壁10aから電気的
に絶縁されている。図1に於ける陰極、陽極、及び基板
のような構成要素間の相対スペーシング及び配置は、本
来図式上のものであって、実際の縮尺で表されておら
ず、また実際の運用システムに於ける正確な関連性を表
すものではないことは理解されるであろう。
【0030】陰極蒸着面20aと陽極(蒸着チャンバ10の
内壁)との間で生成され維持された電気アークはプラズ
マ50を生成する。同プラズマは周知のように基板37また
はその選択された部分と結合し、それを被膜するために
陰極蒸着面20aから外側に方向付けされる。こうしたプ
ラズマは、中性原子、チャンバ11に導入された反応ガス
または残留ガスの分子、及びイオン化された原子及び分
子を含んでいる。従来型のアーク真空蒸着工程に於いて
は、アークはまた大量のマクロ粒子を生成する。反応ガ
スを反応ガスソース13からチャンバに導入すると合成被
膜が生成される。こうした反応ガスは、陰極ソース20か
らの気化物質と化合する。
【0031】陰極蒸着面20a上の目視可能なアーク到達
点または付着点は概して、「陰極スポット」と言われ
る。アークに於ける電流レベルに依って、陰極蒸着面上
には1つまたは複数のこうした陰極スポットが存在す
る。こうした陰極スポットの寸法または半径は、ソース
物質のタイプ及びアーク中のエネルギーによって変化す
る。こうした陰極スポットの数値測定を数多く行なった
結果、陰極スポットという用語が実際には幾つかの大幅
に異なるタイプのスポットを指示していることが発見さ
れた(例としてA.パルフェノフ著「陰極スポットのタイ
プについて」プラズマサイエンスに関するIEEE会報、PS
-13巻、第5号、1985年を参照)。測定した陰極スポット
は通常、「爆発性」スポットと「熱」スポットの2タイ
プに分けることができる。爆発性スポットは、陰極表面
にミクロンまたはそれ以下の大きさの微小クレータであ
る特徴的な軌跡を残す爆発性放射中心の周期的運動を表
している。熱陰極スポットは爆発性陰極スポットとは本
質的に異なっている。熱スポットはアーク放電が開始さ
れた後の期間にのみ現れ、また爆発性スポットがその瞬
間まで作用していた領域に限って発生する。熱スポット
は最も強固な陰極浸食を作りだし、好ましくないマクロ
粒子生成の最も大きな源泉である。本発明では、制御さ
れた独自の方法による蒸着システムへの処理ガス導入に
よってプラズマを強化すれば基板及び被膜の蒸着を調製
できることが判っている。システムへの処理ガス導入を
このように選択的且つ精密に制御することによって、本
発明は、たとえ極度に高い放電電流(即ち、約300アン
ペア)下であっても、また非常に低い処理ガス流量であ
っても低速移動性の熱スポットの形成を防止することが
可能である。こうして陰極蒸着面上の熱スポットの形成
を防止すること、または少なくともこれを最小化するこ
とにより、マクロ粒子の生成は、たとえ見通し陰極/基
板構成であっても最小化し、事実上除去することが可能
であり、これによって基板37上に滑らかで緻密な被膜が
供給される。
【0032】本発明は、本明細書の「従来の技術」に記
載した米国特許第4,929,322号明細書に開示されている
ような陰極蒸着面上に形成した陰極チャンバにガスの導
入を行う先行技術の蒸着構造とは大幅に異なる。こうし
た先行技術の構造は、蒸着工程に於いて陰極蒸着面での
熱陰極スポットの形成を防止するため最も必要とされる
陰極蒸着面への処理ガスの導入と維持を適切に行なわ
ず、また本文で定義しているような処理ガス活性化ゾー
ンを生成していない。また、本発明が提供しているその
他の処理上の優位点を供給していない。
【0033】陰極スポットを通る、また陰極蒸着面を通
って陰極に入るアークエネルギーは、固形の陰極物質の
一部を「プラズマジェット」物質に変換する。プラズマ
ジェットは、被膜プラズマの一部として陰極蒸着面上の
真空チャンバに強制的に射出される。真空チャンバへ反
応性ガスまたは処理ガスを導入する先行技術は、例の第
4,929,322号特許に記載されたようなものであっても、
プラズマジェットが事実上の圧力波を生成し、先行技術
の構造である導入ガスを強制的に上昇させ陰極蒸着面か
ら飛散させてしまうため、ガスを効果的に陰極蒸着面に
「降ろす」ことができない。これとは対照的に、本発明
はそれが最も必要とされる位置である陰極蒸着面上及び
その直上へ処理ガス分子が適度に集中することを保証し
ている。本発明の好適な実施例による処理ガスは陰極蒸
着面を通して蒸着システムの中に導入されるため、陰極
蒸着面に於ける高度の処理ガス分子集中が確保されてい
る。本発明のガス導入工程は、陰極蒸着面に近接して処
理ガス活性化領域またはゾーンを生成しており、それに
よって陰極スポットの生成及び作用に影響を及ぼす高度
にイオン化及び活性化したガス核種が生成される。この
処理ガス活性化ゾーンは、陰極電圧の降下が発生するラ
ングミュアシースを越えた(陰極蒸着面から垂直に遠ざ
かる方向で計測した場合)場所に位置する。ラングミュ
アシース現象に関する徹底した論議については、G.A.ル
ビモフ、v.I.ラクホフスキー共著「真空アークの陰極ス
ポット」(Sov.Phy.Usp.21(8)、1978年8月)を参照され
たい。原子または分子のイオン化及び励振のような活性
化処理、及び処理ガス分子の解離は、本発明により生成
された処理ガス活性化ゾーンで行われる。
【0034】処理ガス活性化ゾーンの厚みは、近接する
電極プラズマに於ける素反応に対する断面の相対値、及
び陰極表面から放出される荷電粒子の濃度によって決定
される。活性化ゾーンの厚みは以下の式に等しい。
【0035】h≦(lie)max 但し、li,leは各々、陰極物質イオン及び処理ガス中の
電子の平均自由行路である。こうした平均自由行路は次
の式(数2)により決定することができる。
【0036】
【数2】 i,e=l/ngσi,e 但し、ngはガス原子または分子の濃度、σi,eは反応の
断面である。
【0037】活性化ゾーンの厚みの定義から判るよう
に、その大きさは陰極物質と処理ガスタイプとの組み合
わせに依存する。処理ガスとしては、アルゴン、クリプ
トン、キセノンのような不活性ガス、または酸素、窒
素、水素のような反応性ガス、またはCH4、C2H2などの
ようなガス化合物が使用できることに注意するべきであ
る。さらに処理ガスは、前記物質の化合物、または分圧
とすることも可能である。
【0038】処理ガス活性化ゾーンの長さは、γ≦最小
値(li,le,lem)とされる空間電荷層(ラングミュアシ
ース)の厚みよりは数桁分大きいことに注意する必要が
ある。ここでli,le,lemは各々、陰極物質イオン、プラ
ズマの電子、及び放出された電子の平均自由行路であ
る。陰極物質原子の濃度は、約1019−1020cm-3であ
るが、処理ガスの濃度は、処理ガス制御式アークの場合
であっても約1016−1017cm-3である(このゾーンに
於けるガス分子の追加ソースは、陰極スポットの作用に
起因する陰極作用面からの処理ガスの脱離である)。さ
らに、陰極物質の素反応(例えばイオン化)に関する断
面は原則として、処理ガスに関するものより大きい。従
って、空間電荷層は、処理ガス活性化ゾーンに比べて無
視できる程に小さい。この場合、このゾーンの厚みは陰
極作用表面から計測可能である。
【0039】本分析は、低ガス圧のチャンバ内で被膜蒸
着を行いながら、高濃度の局部的ガスによる陰極作用を
可能にするこの技術の主要な優位点を示している。これ
によって、処理ガス活性化ゾーンに於けるガス分子の濃
度は1016−1017cm-3にまで増大するが、これは従来
型処理の陰極近辺領域に於けるガス分子濃度より2桁分
大きい。
【0040】処理ガス活性化ゾーンに於ける処理ガス分
子及び原子のイオン化及び励振は、多くのメカニズムが
作用して発生するが、主として高荷電性陰極物質の原子
からの電荷移動メカニズムによって、及びラングミュア
シース中で加速されたプラズマ電子と処理ガスの原子ま
たは分子との非弾性衝突によって発生する(詳細は以
下)。特定の活性化メカニズムの性能はいずれも、陰極
物質の特定的組合せ、及び使用する処理ガスまたは混合
ガスのタイプに依存する。また、処理ガス活性化ゾーン
は、結合エネルギーに影響を及ぼし物質の電子仕事関数
を減少させる放出−活性位相化合物の陰極蒸着面上への
形成を可能にし、陰極蒸着面上の熱陰極スポットの形成
及びそれによって生成されるマクロ粒子を最小化、また
は除去する。
【0041】以下の説明及び本発明の実施例から判るよ
うに、システムへ処理ガスを導入し、プラズマガス活性
化ゾーンを生成するこの独自の方法は、周知の先行技術
による被膜よりはるかに優れた品質を有する蒸着被膜を
作り出す被膜及びクリーニングプラズマの生成に備え、
またこうした被膜を施すために必要な処理工程を簡素化
させている。例えば、蒸着処理は比較的低いチャンバガ
ス圧で行うことができるため、基板のプラズマ調製を効
果的に行うことが可能であり、また本発明を使用して生
成が可能なタイプの活性化されたプラズマによってこれ
がさらに強化される。本発明はさらに、非常に低い放電
電流により安定状態レジームに於いて非常に安定したア
ーク作用を供給し、また先行技術ではソース物質の蒸着
が困難であったような蒸着を行うことが可能である。
【0042】前記の通り、処理ガス活性化ゾーン内での
処理ガスの活性化は、多くのメカニズムを通して達成さ
れる。処理ガス活性化に於けるこうした主要メカニズム
の一つは、次式(数3)で示すような高荷電イオンから
の電荷移動により実行される。
【0043】
【数3】 但し、Mは陰極物質のイオン、Gは処理ガスの原子または
分子、Zはイオン荷である。このような反応は陰極表面
に近接する処理ガス原子または分子の濃度が高い場合に
最も効果的となる。これによってプラズマフラックスに
於ける高荷電イオンの含有率が減少し、処理ガスイオン
化レベルが増加する。
【0044】処理ガス活性化に於いて2番目に重要なメ
カニズムは、ラングミュアシースに於いて加速されたプ
ラズマ電子と処理ガス原子及び分子との非弾性衝突によ
るものである。
【0045】反応ガスの原子または分子とプラズマ電子
との相互作用の確率は以下の式(数4)で書き表すこと
ができる。
【0046】
【数4】We 〜Σneg<σe(Ve)> 但し、neは処理ガス活性化ゾーンに於ける電子の平均
密度または濃度、ngは同ゾーンに於ける処理ガス原子
または分子の濃度、σe(Ve)は特定処理の断面、Veは
電子と原子または分子の相対速度、< >は分布関数の
平均化を示している。加算は非弾性相互作用の全ての形
式について行う。
【0047】前記式(数4)から明らかなように、陰極
表面付近に於ける処理ガス濃度の増加は、窒化物(炭化
物、酸化物、他)合成反応の限界値、及び被膜中の窒素
(炭素、酸素等)含有率の増加を急激に低下させる処理
ガス分子の励振、解離及びイオン化の度合いの大幅な増
加に付随している。従って、プラズマの電子及びイオン
要素と陰極を通して加えられるガスとの相互作用工程が
反応ガスの状態に及ぼす相互的影響は、反応ガスの活性
化の度合いの雪なだれ式増加を引き起こし、ガスの事実
上の完全な解離及び電離の結果として飽和へと急速に発
展していく。従来のアーク処理にはこうしたガス活性化
工程がある程度存在してはいるが、先行技術に於いては
ほとんど効果をあげていない。しかしながら、本発明が
示すようなシステムに処理ガスを導入すれば、処理ガス
の活性化の度合いが飛躍的に増大する。さらに、真空チ
ャンバに於いて低ガス圧力下で蒸着工程を実行できると
いう可能性は、他の場合では(先行技術の装置に於ける
ように)荷電粒子がチャンバ内に存在する先行技術によ
る処理ガスを通って陰極の蒸着表面から基板へと進行し
ていく間にその再結合または不活性化によって起こり得
る、処理ガスの活性化ゾーンに生成される荷電粒子及び
励起粒子の損失を回避するのに役立つ。従って、処理ガ
ス活性化ゾーンに於いて処理ガス種を高レベルで活性化
すること、及びこうして活性化されたガス種が真空チャ
ンバに於いて比較的低いガス圧力によって基板に有効に
到達することができることに於いて、本発明は先行技術
による従来のアーク蒸着工程に比べて著しい優位点を提
供している。
【0048】本発明固有の陰極を通じた処理ガス噴射を
物理的に実現する方法は種々存在する。陰極を通じてこ
うしたガス噴射を達成する方法の1つは、陰極を完全に
または部分的に図4が示すような「多孔性金属」から製
造することによって実現可能である。この場合、噴射さ
れたガスは圧力下で陰極の一部の相互に結合し合う多孔
によって形成された毛細管システムへと浸透していく。
技術上一般に「多孔性物質」と呼ばれるこうした材料
は、アストロ・メット社のような会社から市販されてい
る(Astro Met社:"AMPORMAT"という商標名で販売)。
こうした材料としては、金属及び合金、並びにセラミッ
ク、酸化物が含まれ、例えば15%から95%の範囲で希望す
るどんな多孔度/密度をも構成することができる。その
他、反応ガスを、図2及び図3が示すように陰極を通して
形成または穴あけされた1つまたは複数の穴を通じて、
または陰極内へと形成または穴あけされた穴システムを
通じて噴射することも可能である。図2及び図3について
説明すると、陰極20は、軸方向に形成され陰極蒸着表面
20aから陰極本体を形成する物質を抜けて陰極裏面20cに
至る単一のガス噴射路20bを有している。図2及び図3が
示す構造に於いては、陰極蒸着面20aが軸方向に位置づ
けられた円錐形状の窪みを限定し、この窪みが通路20b
と協同的及び連続的に一体化している。従って、通路20
bを通じて噴射される処理ガスは陰極蒸着面20a全体を覆
い、これとただちに結合する。こうして、陰極の作業面
と陰極スポットが生成するプラズマジェットとの間のイ
ンタフェースに適切な濃度の処理ガス分子が提供される
(図2及び図3に表示されるガスの流れ線参照)。
【0049】表面反応の運動性は陰極表面の温度に強く
依存していることから、陰極の表面温度は浸食を減じる
層形成の反応度を決定する一因子と考えることができ
る。従って、本発明の異なる2つの実施例に於いては、2
つの異なるタイプの冷却構造が、2つの操作モード、即
ち「コールド」モード(図2が示すような直冷陰極)と
「ホット」モード(図3が示すような間冷陰極)によっ
て作動する陰極を搭載している。「ホット」陰極操作モ
ードの場合、陰極のスポット動作への影響に関しては陰
極表面の温度分布の他に陰極の結晶構造の変換について
考慮しなければならない。
【0050】図2に於いて、陰極20は「コールド」操作
モードのための設置手段22´に固定されたものとして表
示されている。設置手段22´は中心に主軸22a´を有し
ており、スタッド部材23´の一部が主軸内にネジ切りさ
れて通っている。設置部材22´は中空となって入口22c
´と出口22d´を有する環状流路22b´を限定している。
この入口と出口は協同式に、主冷却ソース手段24に至る
流体流路16(図1)と流体によって連絡している。環状
流路22b´に於いて陰極20の「裏」面20cと対向する部分
は開いており、流体の流れによって陰極20の裏面20cと
直接結合している。図2及び図3が示す好適な実施例で
は、冷却液は水であることが望ましい。陰極20には、図
2が示すようにその裏面20cを通してスタッド部材23´が
ネジ切りされているため、陰極20の裏面20cは、設置手
段の環状外端22e´及び主軸22a´の対応する上面と堅く
結合されている。環状流路22b´のシールは、1対のOリ
ング22f´及び22g´によって陰極20cの下面で閉じら
れ、保持されている。
【0051】主軸22a´の下部には、内側の軸方向通路2
5aを限定している下方スタッド部材25が主軸を延長する
形でネジ切りされている。主軸22a´は軸方向に位置調
整された通路の中央部分22h´を限定しており、ネジ切
りされたスタッド部材23´はまたその中を通る軸方向通
路23a´を限定している。軸方向通路である25a、22h
´、23a´は共通サイズであり、下方スタッド部材25の
下部から陰極20内に形成された流路20bに至る連続した
流路を提供するように位置調整されている。
【0052】図1が示すように25a、22h´、23a´によっ
て限定される共通路の内部には、円筒形のスリーブ部材
26が固定されており、下方スタッド部材25、主軸22a
´、上方スタッド23を通じて密封されたガス流路を提供
している。スリーブ部材26は流体流れ線15(図1)と流
体連絡式に接続されており、主ガス供給手段13からの処
理ガスの圧縮供給を受ける。
【0053】図3には、ホット操作モード用として陰極2
0を設置する場合の好適な構造が示されている。この場
合、構造的には図2が示すコールド操作モードの場合と
かなり似かよっているが、陰極の下面20cが冷却ソース
流体と直に流体連絡していない点、及び陰極と陰極ホル
ダーとの熱接点が最少化されている点が相違している。
図3のホットモード陰極ホルダー形状に於いては、環状
流路22b´´の上面が図のように主軸22a´´の横伸長部
によって完全に閉じられている。この陰極設置構造で
は、主軸22a´´の上面全体22e´´が陰極20の下面20c
のシートを形成し、拡大された主軸22a´´の材質を通
じて陰極への熱伝導冷却を提供している。主軸22a´´
は次に環状流路22b´´を通過する冷却用流体と流体式
に連絡する。他の点では、図3のホットモード設置形状
の陰極設置構造は、図2のコールドモード設置形状で説
明した先の構造と同一である。陰極20の下面20cは、ス
タッド23´´で下方にネジ切りすることにより主軸22a
´´の上面22e´´へと直接勘合させるか、図3が示すよ
うに軸方向に僅かに間隔をあけて配置させることができ
る。
【0054】陰極材料自体の中に形成された毛細管を通
じて処理ガスを直接噴射することができるように陰極ま
たは陰極の一部が多孔性物質によって製造されている場
合、陰極設置形状には陰極の裏面20cと直に流体連絡す
る密閉式マニフォールドを包含することができる。この
場合、マニフォールドは主処理ガス供給装置13に通じる
ガス供給管15とも直に流体連絡している。その他、陰極
は図4が示すようなガス分配用マニフォールド20dを提供
するように構成することもできる。この場合、多孔性陰
極材料による挿入部分20eはマニフォールド部分20dの上
になって共動するように配置され、スリーブ26及び通路
20b´を通ってマニフォールド20dへと導入される処理ガ
スは、多孔性挿入材料の毛細管を通って多孔性の陰極材
料表面に形成される上部陰極蒸着面20a´へと流れる。
【0055】従って本発明による装置及び方法は、マク
ロ粒子を低減し、蒸着率を増大させ、被膜工程を単純化
し、蒸着被膜の性質を向上させるための新たな技術を提
案している。本発明のこの方法は、発明者達によって
「ガス制御式アーク」処理またはGCA処理と呼ばれてい
る。この方法は一部、陰極表面上への放射活性相の生
成、及び陰極材料の表面層の融点と仕事関数を変えるこ
とによる陰極のスポット動作特性の変更を基礎としてい
る。使用する処理ガスは、蒸着物質の材質によって反応
性のもの、非反応性のもの、またはこうしたガスまたは
蒸気の化合物の何れともすることができる。例えば、窒
素、アルゴン、酸素、水素、炭化水素、クリプトン、キ
セノン等のような処理ガスを使用可能である。例とし
て、本発明は、真空チャンバに反応性ガスを加えて反応
性ガスと遷移金属とを合成化合させるようなアーク蒸着
の反応工程に於いて実現可能である。陰極表面上の微小
粗度及び様々な介在物は、その大きさ、特性、及び量次
第で陰極スポット移動率を増大させ、また局部に止まる
ことによる陰極表面の限定部分への拘束を促進し得るこ
とが知られている。アーク焼成に於いては、放射活性相
の介在物の大きさと量によって異なった状況が発生する
ことがある。例えば、窒化チタン及び他の複合被膜
(例、遷移金属の酸化物、炭化物、オキシ・カーボ・ナ
イトライト)の蒸着中に、陰極表面上にこうした放射活
性相の形成が確認されている。純粋なチタンの仕事関数
が3.95eVであるのに対して、窒化チタン(TiN)の仕事
関数は2.92eVである。チタンの融点は僅か1600℃である
が、TiNの融点は2700℃である。従って、陰極表面上に
薄膜が形成されると、結合エネルギーを増大させ、電子
の仕事関数を低減することができ、その間に陰極の蒸着
表面上に存在する陰極スポットのタイプを変えることが
できる。
【0056】本発明は、陰極表面上に実際に放射活性相
の薄膜(チタン陰極と窒素処理ガスの場合はTiN)を生
成しており、これが陰極物質の浸食を減少させている。
これは、蒸着工程中に処理ガス活性化ゾーンに於いてや
や高濃度の処理ガスを存在させることにより可能となる
(約5-10mTorr)。蒸着チャンバのその他の部分では処
理ガスの圧力を低値に保持しながら処理ガス活性化ゾー
ンのみで行なうこうした陰極表面の局部「被毒」は、従
来技術によるアーク蒸着技術では実現し得なかったもの
である。例えば、チタン陰極表面は窒素のような反応性
ガスの存在下で約5-10mTorrの圧力により被毒すること
は知られている。また、こうした被毒が作用表面域及び
陰極電流といった他のパラメータにも依存していること
は周知である。しかしながら、こうした高ガス圧力を、
先行技術の場合に必要とされるように蒸着チャンバ全体
で実行した場合、蒸着率が著しく低減する。このような
チャンバを通した高ガス圧力はまた、陰極及び基板間で
増加する処理ガス原子との衝突、酸素による汚染、及び
基板表面上のアークにより、処理ガス存在下での基板表
面のイオン衝撃をますます不可能にする。従って、陰極
の被毒に続いて基板を被膜しようとする先行技術の試み
は、被膜の品質との不整合をもたらしている。本発明
は、陰極蒸着表面及びその最近隣部分に於ける(即ち、
処理ガスの活性化ゾーンのみに於ける)高濃度処理ガス
の局部導入、及び真空チャンバの残りの部分を通じた、
特に陰極と被膜を行なう基板表面の間の部分に於ける低
ガス圧力を考慮したものである。本発明の好適な実施例
では、これは処理ガスを陰極を「通して」噴射し、これ
が事実上陰極表面を流れるようにすることにより達成さ
れている。
【0057】重要な点は、陰極表面へ確実に十分な量の
処理ガスを供給することにある。陰極スポットが生成す
るプラズマジェットは高濃度であり、処理ガスの拡散
(先行技術による方法に基づくもの)の蒸着チャンバか
ら陰極表面域への戻りが防止されることは周知である。
こうした高濃度のプラズマジェットは、一般に蒸着チャ
ンバに導入される処理ガスを陰極表面域の外へとポンプ
式に押し出す「プラズマピストン」のように作用する。
本発明は、先行技術装置のこの欠点を克服している。本
発明に於いては、処理ガスの活性化ゾーンに必要な処理
ガスの流量を、次のような関係式(数5)に従ってアー
ク放電電流の一関数として決定している。
【0058】
【数5】但し、Qは流量(単位:sccm)、Iはアーク放電
電流(単位:アンペア)、Qcrは標準アーク放電電流100
アンペアに対する処理ガス流量限界値、Isは基準放電電
流、γは電流領域に関するパラメトリック係数である。
チタンの場合、イオン電流範囲を250アンペアまでとす
ると、γは1として考えることができる。より広範囲の
異なる材質及び異なる電流レベルの場合、γは当業者に
とって周知であるものに適当に調整する必要がある。定
数Λの大きさは、陰極材料と処理ガスのタイプとの組合
せに依存する。チタン製の陰極と窒素の場合、Λは0.2
である。この条件を満たせば、陰極蒸着表面上の適正タ
イプの陰極スポット、ひいては適正な被膜平滑度が保証
される。限界流量とは、真空チャンバからガスを抜きな
がら、またはポンプ式に排出しながら任意のチャンバ排
気ポンピング速度値に於いて有効な陰極表面被毒を提供
し、真空チャンバ内(処理ガス活性化ゾーンの外)の圧
力を既定値に保持するような処理ガスの流れである。
【0059】図2及び図3が示すような本発明を実行する
陰極構造(処理ガスが陰極内部の通路を通して導入され
る)に於いては、十分なガス流量を供給して本発明の目
的を達成するために必要な陰極内の処理ガス流路の断面
直径は、次のような式(数6)によって決定する。
【0060】
【数6】Re=(4mQ)/(πKμTD) 但し、Reはレイノルズ数、mは分子の質量、μはガスの
粘性、Qはガスの流量、Kはボルツマン定数、Tはガスの
温度、Dはガス吸入路の直径である(パラメータは全て
国際単位表示)。
【0061】本発明の原理のより完全な理解は、本発明
のGCA処理を実践して行った以下の実験テストの精査に
よって明確化されるであろう。 被膜特性の比較 本発明によるGCA処理と通常のまたは従来型のアーク処
理とを使用して達成された各々の被膜特性の比較調査
を、被膜の平滑度、蒸着率、微小硬さ、及び粘着性とい
った特性の比較評価によって実行した。2つの処理方法
を比較し、また従来型のアーク処理に対するGCA処理の
優位性を明確にするため、十分に理解されているチタン
-窒素(Ti-N2)を比較システムとして使用した。処理ガ
ス流れ及びアーク電流は、GCA及び従来型の両処理共に
同じにした。GCA処理は、2つの操作モードに於いて「コ
ールド」及び「ホット」陰極レジームによって実施し
た。HSSクーポン上へのTiN被膜の蒸着は、同一の蒸着条
件によって行ったが、蒸着技術は異なるものを使用し
た。唯一の相違は、N2処理ガスをシステムへ導入する方
法である。GCA処理の場合、処理ガスは、それぞれ「コ
ールド」陰極レジーム及び「ホット」陰極レジームを表
わす図2及び図3が示すように陰極反応表面の中央に配置
された入口を通じて導入した。従来型の処理に於いて
は、処理ガスは、一般に先行技術に於いて行われている
ように、陰極装置に隣接する壁の中の入口を通じて真空
チャンバへと導入した。表1は、こうした実験の結果を
示したものである。
【0062】
【表1】 図5a(FIG.5a)及び図5b(FIG.5b)は、それぞれ前記のGCA
アーク処理及び従来型のアーク蒸着処理によって生成さ
れた被膜表面の走査電子顕微鏡写真である。この両写真
から容易に観察されるように、GCA処理によって生成さ
れた被膜表面(図5a)には、従来型アーク蒸着技術によ
って生成された被膜表面(図5b)に見られる大きな瑕疵
や「リプル(ripple)」効果が存在していない。同様に、
GCA及び従来型アーク処理によって生成された被膜の砕
片断面の走査電子顕微鏡写真(図6a(FIG.6a)、図6b(FI
G.6b))は、GCA処理によって生成された表面の特性が向
上していることを示している。こうした実験テストで得
た結果は、陰極蒸発表面と基板との間の見通し配置に於
いて磁場を使用せずに導かれたものであり、本発明の原
理を他の周知の被膜強化技術と組み合わせれば、さらに
良好な結果を得ることができたと思われる点に留意され
たい。
【0063】表1で明らかなように、被膜特性は両GCA処
理(ホット及びコールド陰極状況)の方が先行技術であ
る従来型アーク技術によるものよりも優れている。これ
は、本発明によるGCA処理は一般的または従来型のアー
ク蒸着処理に比べてマクロ粒子の生成を極度に減少さ
せ、被膜強化を可能にする、という決定的結論を認める
のに十分な結果である。 浸食率の計測 アーク蒸着処理中の陰極劣化に関わる浸食率は、次の式
(数7)で示されるような放電量による陰極質量の変化
との関係に於いて決定されることが知られている。
【0064】
【数7】Δm=kIΔt 但し、mは陰極の質量、kは浸食率、Iはアーク電流、tは
時間である。
【0065】最適な処理ガスフローを決定するため、ガ
スフローを15sccmから160sccmへと変化させた。試験
は、GCA処理及び従来型蒸着処理の双方に関して行っ
た。何れの試験も、真空計を使用してガスフロー値に対
応する定常状態処理ガス圧力をモニターした。計測は、
蒸着の前後に30分間、アーク電流100アンペアに於いてT
i陰極の質量を決定することによって行った。この試験
の結果は図7の通りである。ここには、従来型アーク蒸
着処理及びGCA処理に於ける浸食率と窒素処理ガスフロ
ーの関係を表す曲線が示されており、2つの処理間の著
しい相違が強調されている。
【0066】ガス圧力と流量の比較 従来型アーク蒸着処理及びGCA処理の双方について、放
電電流100アンペアでの窒素処理ガス圧力とN2流量との
関係性を調べる試験を行った。試験結果は、新たな皿形
陰極を使用した従来型アーク蒸着の場合を図8に、GCA処
理の場合を図9に曲線で示している。図8では、ガスは従
来の方法でチャンバへ導入されているが、図9では、先
に説明したように陰極を通じてシステムに導入されてい
る。図8-10では、「○」記号は、処理ガスがシステムへ
と導入されるにつれて圧力が増加する実験結果のプロッ
トを表している。これに対して、「□」記号は、ガスが
システムから回収されるにつれて圧力が低下する実験結
果のプロットを表している。図8及び図9のプロットによ
る結果の比較は、GCA処理の場合には陰極表面上へのTiN
層の形成が低流量に於いて生じるという事実を示してい
る。スロットルを使用してポンピング速度を変化させる
と、ガス流量がQ≧Qcr(Qcrは数式4の限界流量)のと
きには陰極の浸食率に重大な相違はないことが解った。
これは、陰極表面を通じた処理ガスの導入によって、ガ
ス流量が低値であっても陰極表面と準中性プラズマとの
間のインタフェース(即ち、処理ガスの活性化ゾーン)
に必要濃度のガス分子が提供されることを実証してい
る。従って、本発明によるGCA処理の場合、処理ガスフ
ローは、陰極表面上に希望する化学反応を起こさせる限
定因子ではない。
【0067】表面形態の比較 この点に関しては、前記試験に使用した陰極の表面形態
の走査電子顕微鏡写真を異なった処理ガス流量と比較し
てみると興味深い。図13のFig.13〜18は、こうした陰
極の表面形状写真を示したものである。Fig.13及びFig.
14は、それぞれコールド及びホットモードで運用された
処理ガス流量20sccmの場合の従来型陰極表面の写真であ
る。Fig.15は、ガス流量120sccmに於いてコールドモー
ドで運用された従来型陰極の写真である。Fig.16及びFi
g.17は、それぞれ処理ガス流量120sccm及び20sccmに於
いてコールドモードでGCA処理によって運用された本発
明に一致する構成である陰極の表面形態の写真である。
Fig.18は、処理ガス流量20sccmに於いてホットモードで
GCA処理によって運用された陰極の写真である。薄膜組
成(窒素濃度を含む)は、走査電子顕微鏡写真に於ける
EDXによって決定した。分析結果は、窒化チタン層が化
学量論的には測定精度の範囲内(5%)にあることを示し
ている。表面形態の写真は、流量が20sccmであってもGC
A処理で使用した陰極の表面(Fig.17)は従来型アーク
蒸着処理で使用した陰極(Fig.13)の場合ほどは溶解し
ていないことを示していて興味深い。
【0068】放電アーク電圧降下測定値とガス流量 GCAシステムに於いて放電アーク電圧降下を測定するこ
とにより、仕事関数が低く融点の高い陰極表面上に於け
る層(「浸食低減層」とも称される)の形成過程をモニ
ターした。チタン陰極GCA処理システムの放電アーク電
圧降下は、窒素フローの関数として計測した。結果は、
図10に示している。この結果は、放電アーク電圧降下が
浸食防止層の存在に非常に敏感であり、工程管理及び診
断用に使用可能であることを示している。またこの結果
から、GCA処理には浸食防止層の形成に対して非常に高
い親和性のあることが解る。浸食防止層は非常に低い処
理ガス流量で形成されることから、非常に低い投入ガス
圧力で蒸着処理を実行してマクロ粒子の生成を低減させ
ると同時に蒸着率を向上させるという可能性を生じさせ
ている。
【0069】スペクトル計測値の比較 GCA処理及び従来型アーク蒸着処理の双方で使用した陰
極について、様々な窒素流量(0-60sccm)で陰極表面付
近(即ち、その周囲20mm)に於けるアーク放電のスペク
トル測定を行った。結果は、図11及び図12に示してい
る。図11は、チタンのスペクトル線(TiI、γ=5210オン
グストローム)の相対的強度変化を陰極電流100アンペ
アに於ける窒素流量の関数として表示したものである。
図12は、N2 +スペクトル線(N2II、γ=3914オングストロ
ーム)の相対的強度変化を陰極電流100アンペアに於け
る窒素流量の関数として示している。先に陰極表面の浸
食率に関して観測したように、チタンのスペクトル線の
強度は、浸食低減層を形成させるガス流量に於いて、ま
たはその周辺で低下する。この事実は、過度の金属中性
蒸気を発生させる熱性陰極スポットが高速で動作する爆
発性陰極スポットに転換することをただちに確定するも
のである。爆発性陰極スポットは、極く少量の中性金属
蒸気とより多くのイオン化原子を発生させる。プラズマ
フローに於ける中性粒子の減少は、無孔性の密な被膜の
蒸着にとって非常に有効である。従って、本発明による
GCA処理は、従来型の処理に比べると明白な優位性を示
している。図12では、N2 +線のスペクトル強度が陰極表
面に於けるTiN層の形成に対応する処理ガス流量に於い
て急激に上昇することが解るであろう。低い流量に於い
ては、GCA処理の方が窒素分子イオンの形成に関して優
位であることが示されている。
【0070】被膜例 本発明による処理は、多量の陰極材料とプラズマジェッ
トに於ける低濃度のマクロ粒子を使用した安定的な真空
アーク放電を実現可能であることから、多成分ガスと金
属化合物の直接合成及び三元被膜を行なう独自の可能性
を幾つか提供している。例えば、アルミニウム性の陰極
を使用する場合、陰極表面に於けるアーク放電は不安定
であり、真空アークは大量の小滴またはマクロ粒子を発
生させることから、平滑な被膜の蒸着には重大な問題が
存在する。しかしながら、本発明のGCA処理を使用すれ
ば、アルミニウム製陰極と陰極内の穴を通じる窒素ガス
フローによって問題なく安定した真空アークを得ること
ができる。陰極表面に形成される窒化アルミニウムの薄
膜が陰極スポットの性質及びその動作を変え、マクロ粒
子の形成が格段に減少する。さらに、陰極ガス入路を通
じた処理ガスの導入によって、アーク放電が非常に安定
したものになる。従って、本発明の原則は、粉末冶金技
術で製造された非常に高価な複合TiAl陰極を使用する代
わりに純粋アルミニウム製及び純粋チタン製の2つの陰
極を使用することにより、(TiAl)Nの直接合成を可能
にしている。
【0071】本発明による方法はまた、処理ガスの活性
化によって被膜の機械的性能を向上させる可能性を提供
している。相組成及び材料構成に敏感な被膜の微小硬さ
が、凝縮液中の窒素含有量とその構造の明確な特徴によ
って、耐可塑性の一般値を特徴づけている。GCA処理に
よる高度の処理ガス活性化はまた、バイアスのない複合
被膜の蒸着に見通しを与えている。実験からは、基板上
にDCまたはRFバイアスが存在することのない、良好な粘
着性を有するプラスチック製及びガラス製基板上へのTi
N蒸着の可能性が実証されている。
【0072】本発明の原理に基づいて生成された3例の
被膜を、次のような実施例に従って蒸着した。
【0073】
【実施例1】GCA処理に基づいて、超高度の微小硬さを
有するTiNの蒸着を行った。蒸着パラメータ及び本被膜
の被膜特性は、表2の最初の欄に示されている。
【0074】
【実施例2】従来型のアーク処理によりアルミニウム製
陰極を使用して蒸着された被膜が非常に粗いことはよく
知られている。この粗さは、アルミニウム陰極が多くの
マクロ粒子を放出する結果生じるものである。GCA蒸着
処理を使用すると、高度に平滑化された窒化アルミニウ
ム被膜が首尾良く蒸着される。蒸着パラメータ及びAlN
被膜の被膜特性は、表2の2番目の欄に示されている。
【0075】
【実施例3】前記説明の通り、本発明は、粉末冶金技術
で製造された非常に高価な複合TiAl陰極を使用する代わ
りに純粋アルミニウム製及び純粋チタン製の2つの陰極
を使用して(TiAl)Nを直接合成する可能性を提供して
いる。(TiAl)N被膜は、本発明のGCA処理に従い、純粋
チタン製及び純粋アルミニウム製の2つの陰極を使用し
て蒸着した。この被膜薄膜の蒸着パラメータ及び被膜特
性は、表2の3番目の欄に示されている。表2が示す結果
から明らかなように、GCA処理によって生成された被膜
の被膜特性の方が、複合TiAl陰極を使用した従来型のア
ーク処理よりも優れている。
【0076】
【表2】 以上の説明から、本発明によるガス制御式アーク蒸着処
理に従って蒸着された被膜は、従来のアーク蒸着処理に
比べて次のような望ましい特徴を含んでいることが認め
られるであろう。 (1)プラズマフローに於けるマクロ粒子の減少による
超低値の表面粗度。チタンの場合、これは5倍以上も低
減される。他の金属では10倍以上も可能である。 (2)陰極材料の中性成分及び処理ガスの最小化による
高密度被膜。 (3)以下の点を理由とする(遷移金属の窒化物のよう
な)被膜の高い微小硬さ。 (a)マクロ粒子を理由とする空隙の低減または除去に
よる高い被膜密度。 (b)薄膜への金属中性種組み込みの低減化。 (c)より強力な蒸着処理に繋がる低チャンバガス圧力
で薄膜を蒸着させ、密度を増大させる能力。 (4)改良された以下のような被膜結晶特性の制御。 (a)薄膜の肌理または結晶構造の配向。 (b)粒子または結晶サイズ。
【0077】本発明を特定の実施例及び陰極構造形状、
処理ガスの導入方法、そのための冷却状況に関して説明
してきたが、様々な代替実施例、設計オプション、その
変更例も当業者にとっては明白であろう。さらに本発明
は、好適な実施例に関する説明及び例示によって実証さ
れたような任意材料の蒸着への適用に関して、及び任意
タイプの処理ガスに関して説明してきたが、本発明はこ
うした例またはこうした処理ガスに限定されるものでは
ない。また、本発明の原理は、こうした従来のシステム
をさらに改良するためにその他のプラズマ及び被膜強化
技術及び方法を使用したアーク蒸着システムへと容易に
組み込みが可能であることも認められるであろう。例え
ば、業者間で良く知られた方法に於いて磁場を使用する
ことにより、プラズマ生成を強化することが可能であ
る。また、本発明は曲線または操向性アークタイプシス
テムのような非見通し線蒸着システムと共用することが
できる。本発明のこうした適用、及びその他の適用の可
能性は、当業者には容易に理解されるであろう。従っ
て、本発明は、発明の説明に使用した好適な実施例の何
れの詳細事項によってではなく、特許請求の範囲によっ
てのみ限定されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の原理を採用した電気アーク物理蒸着
システム構成の線図である。
【図2】 図1の構成の陰極と冷却支持部分による第1実
施例の拡大断面図であり、コールドモードで運転中の陰
極を示している。
【図3】 図1の構成の陰極と冷却支持部分による第2実
施例の拡大断面図であり、ホットモードで運転中の陰極
を示している。
【図4】 本発明の原理によって構築された陰極形状に
よる第3実施例の拡大断面線図であり、コールドモード
で運転中の多孔性陰極構成を示している。
【図5】 FIG.5aは、本発明のガス制御式アーク処理に
よって蒸着された被膜の表面組織の走査電子顕微鏡写真
である。FIG.5bは、先行技術の従来型電気アーク蒸着処
理によって蒸着された被膜の表面組織の走査電子顕微鏡
写真である。
【図6】 FIG.6aは、FIG5aの被膜の破断面の走査型電
子顕微鏡写真である。FIG.6bは、FIG5bの被膜の破断面
の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】 本発明の原理によって構成されたシステムに
於いて作用する陰極と従来型アーク蒸着処理に於いて作
用する陰極を比較した場合の窒素流量に対する陰極浸食
率の実験結果グラフである。
【図8】 従来型アーク蒸着処理に関するチャンバに導
入されたガス流量に対するアーク蒸着チャンバ内の処理
ガスの部分圧力の実験結果グラフである。
【図9】 本発明の原理を実施するアーク蒸着処理に於
ける、陰極を通してチャンバに導入されるガス流量に対
するアーク蒸着チャンバ内の処理ガスの部分圧力の実験
結果グラフである。
【図10】 本発明の原理を実施する処理に於ける、処
理ガス流量に対する放電アーク電圧降下の実験結果グラ
フである。
【図11】 本発明の原理によって構成されたシステム
に於いて作用する陰極と従来型アーク蒸着処理に於いて
作用する陰極とを比較した、窒素流量の関数としてのチ
タンスペクトルライン(TiI,λ=5210オングストロー
ム)の相対強度変化を示す実験結果比較グラフである。
【図12】 本発明の原理によって構成されたシステム
に於いて作用する陰極と従来型アーク蒸着処理に於いて
作用する陰極とを比較した、窒素流量の関数としてのN2
+スペクトルライン(N2II,λ=3914オングストローム)
の相対強度変化を示す実験結果グラフである。
【図13】 Fig.13は従来型アーク蒸着チャンバに於い
て処理ガス流量が20sccmのコールドモードで作用する陰
極の表面組織の走査電子顕微鏡写真である。Fig.14は従
来型アーク蒸着チャンバに於いて処理ガス流量が20sccm
のホットモードで作用する陰極の表面組織の走査電子顕
微鏡写真である。Fig.15は従来型アーク蒸着チャンバに
於いて処理ガス流量が120sccmのコールドモードで作用
する陰極の表面組織の走査電子顕微鏡写真である。Fig.
16は本発明の原理により構成され、処理ガス流量が120s
ccmのコールドモードで作用する陰極の表面組織の走査
電子顕微鏡写真である。Fig.17は本発明の原理により構
成され、処理ガス流量が20sccmのコールドモードで作用
する陰極の表面組織の走査電子顕微鏡写真である。Fig.
18は本発明の原理により構成され、処理ガス流量が20sc
cmのホットモードで作用する陰極の表面組織の走査電子
顕微鏡写真である。
【符号の説明】
10 真空蒸着チャンバ 10a 第1壁チャンバ部分 10b 第2壁チャンバ部分 11 内部空洞 12 真空ポンプシステム 13 ガスソース手段 14 フロー制御調整手段 15 ガスフロー経路 16 液体流路手段 17 真空シーリング及び電気的絶縁手段 20 陰極ソース 22 据え付け手段 24 給水系 30 主電源 32 トリガーアッセンブリ手段 32a 移動式接触ロッド部材 33 抵抗器 35 絶縁シール部材手段 37 基板 38 バイアス供給機能ブロック 39 信号流路 40 電気的絶縁体及びシール手段 50 プラズマ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 フォンタナ、レイモンド ピー. アメリカ合衆国、ニュージャージー 07463、ウォルドウィック、マンハッタン アベニュー 114

Claims (37)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 蒸着チャンバ内でアークによって電気防
    食用陰極の陰極蒸発表面から生成されるプラズマを強化
    する方法であって、陰極蒸発表面に隣在するプラズマ活
    性化を拡大させる処理ガス活性化ゾーンを生成するため
    に、既定流量で処理ガスを蒸着チャンバへと局部的に導
    入する工程を含むプラズマ強化方法。
  2. 【請求項2】 コールド状態またはホット状態の何れか
    で操作するための陰極を設置する工程をさらに含む方法
    であって、前記処理ガスが反応性ガスまたは無反応性ガ
    スまたは反応性及び無反応性ガスまたは蒸気の化合物で
    構成され、処理ガスを導入する工程が、前記処理ガスを
    陰極内に形成された1つまたは複数の通路及びその陰極
    蒸着表面へと通過させることによって前記処理ガスを前
    記陰極の陰極蒸着表面へと導入する工程を含む請求項1
    に記載の方法。
  3. 【請求項3】 陰極蒸着表面を形成する少なくとも1つ
    の部分が、同表面に通じる多孔性物質によって所定の毛
    細路を形成し、前記処理ガスが前記毛細路を通して導入
    される請求項2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 陰極が金属、炭素、またはドーピングま
    たは温度の関数として導電性となる材質を含む群の導電
    物質である請求項1に記載の方法。
  5. 【請求項5】 処理ガス活性化ゾーンの幅が、処理ガス
    に於ける陰極材料イオン及び電子の平均自由行路に比例
    している請求項1に記載の方法。
  6. 【請求項6】 処理ガス活性化ゾーンの幅hが、h≦
    (lie)max(但し、liは陰極物質イオンの電子の
    平均自由行路、leは処理ガス中の電子の平均自由行路)
    によって規定される請求項1に記載の方法。
  7. 【請求項7】 処理ガスゾーンが、プラズマ生成時に陰
    極蒸着表面上に発生するラングミュアシース、即ち陰極
    電圧降下が始まる点、を越えたところに位置する請求項
    1に記載の方法。
  8. 【請求項8】 陰極材料の高電荷イオンから電荷を変換
    することによって、処理ガス活性化ゾーンに於いて処理
    ガスを活性化させる工程を含む請求項1に記載の方法。
  9. 【請求項9】 プラズマ電子とプラズマガスの原子及び
    分子との弾性外衝突を引き起こすことによって処理ガス
    活性化ゾーンに於いて処理ガスを活性化させる工程を含
    む請求項1に記載の方法。
  10. 【請求項10】 前記処理ガス活性化ゾーンによって陰
    極蒸着表面上に於ける熱陰極スポット生成を減少させ、
    これによりプラズマへのマクロ粒子の導入を低減させる
    工程を含む請求項1に記載の方法。
  11. 【請求項11】 処理ガス活性化ゾーンによって陰極表
    面に放射活性相の化合物を形成し、これにより陰極蒸着
    表面に於ける合成反応の限界値を低減させる工程を含む
    請求項1に記載の方法。
  12. 【請求項12】 予め定められたガス流量が、前記陰極
    を形成する材料のタイプ及び前記処理ガスのタイプの関
    数である請求項1に記載の方法。
  13. 【請求項13】 前記既定流量がアーク放電電流の関数
    である請求項1に記載の方法。
  14. 【請求項14】 前記既定流量が、下記式(数1)に等
    しいかまたはそれ以上である請求項1に記載の方法。 【数1】 但し、Iはアーク放電電流(単位:アンペア)、Qcrは標
    準アーク放電電流100アンペアに対する処理ガス流量限
    界値(単位:sccm)、Isは基準放電電流、γは電流領域
    に関するパラメトリック係数である。
  15. 【請求項15】 蒸気蒸着チャンバに於いて前記方法に
    よって生成されたプラズマを基板に適用する工程をさら
    に含む請求項1に記載の方法。
  16. 【請求項16】 請求項15に記載の方法によって生成
    されたプラズマによって被覆された基板。
  17. 【請求項17】 アーク真空蒸着プロセスであって、
    (a) 真空蒸着チャンバ内に有効に陽極、第1電気防食用
    陰極ソース、及び基板を配置する工程と、(b) チャンバ
    を排気する工程と、(c) 最初の既定流量で最初の処理ガ
    スをチャンバへと導入して第1陰極ソースの陰極蒸着表
    面に近接する第1処理ガス活性化ゾーンを生成する工程
    と、(d) 前記第1陰極の陰極蒸着表面と前記陽極との間
    でアークを衝突させて保持し、これにより前記処理ガス
    と化合して第1プラズマを形成する前記第1陰極蒸着表
    面上の部分を蒸発させる工程と、(e) 前記第1プラズマ
    を前記基板と結合するように方向付ける工程とを含む、
    アーク真空蒸着工程。
  18. 【請求項18】 前記第1プラズマを前記基板と結合す
    るように方向付ける前記工程が、前記第1プラズマによ
    って前記基板の表面を調節することを含む請求項17に
    記載のプロセス。
  19. 【請求項19】 前記第1プラズマを前記基板と結合す
    るように方向付ける前記工程が前記第1プラズマによっ
    て前記基板の表面を窒化することを含む請求項17に記
    載のプロセス。
  20. 【請求項20】 前記第1プラズマを前記基板と結合す
    るように方向付ける前記工程が前記第1プラズマによっ
    て前記基板の表面を被覆することを含む請求項17に記
    載のプロセス。
  21. 【請求項21】 第1処理ガスを導入する前記工程が、
    前記第1陰極内に形成された1つまたはそれ以上の流体
    流路へと第1処理ガスを通過させることにより前記第1
    処理ガスを第1陰極の陰極蒸着表面を通して導入するこ
    とを含む請求項17に記載のプロセス。
  22. 【請求項22】 予め定められた減圧レベルにまでチャ
    ンバを排気し、蒸着工程中は既定の減圧レベルを保持す
    る工程をさらに含む請求項17に記載のプロセス。
  23. 【請求項23】 請求項17に記載のプロセスであっ
    て、(a) 真空蒸着チャンバ内に前記陽極及び前記基板と
    の関連に於いて第2電気防食用陰極ソースを有効に配置
    する工程と、(b) 前記第2陰極の陰極蒸着表面と前記陽
    極との間でアークを衝突させて保持し、これにより前記
    第2陰極を部分的に蒸発させて第2プラズマを生成する
    工程、及び前記第2プラズマを前記基板と結合するよう
    に方向付けする工程と、をさらに含むプロセス。
  24. 【請求項24】 第2処理ガスを前記チャンバに導入し
    て前記第2陰極の陰極蒸着表面に近接した第2処理ガス
    活性化ゾーンを生成する工程を含む請求項23に記載の
    プロセス。
  25. 【請求項25】 前記第1プラズマ及び前記第2プラズ
    マによって前記基板の表面を被覆する工程をさらに含む
    請求項23に記載の工程。
  26. 【請求項26】 請求項20に記載の方法で生成された
    プラズマによって被覆された基板。
  27. 【請求項27】 請求項25に記載の方法で生成された
    プラズマによって被覆された基板。
  28. 【請求項28】 アーク蒸気蒸着に使用するための電気
    防食用陰極であって、蒸気蒸着チャンバに於いてアーク
    が陰極及び陽極間で衝突させられ、(a) アークが衝突す
    る少なくとも1つの陰極蒸着表面を限定するように配置
    されたソース物質の固体容積によって構成され、(b) ソ
    ース物質の前記容積が前記ソース物質を通して形成され
    入口端から出口端まで伸長する所定のガス通路を形成
    し、前記出口端が前記陰極蒸着表面を通じて開いている
    電気防食用陰極。
  29. 【請求項29】 前記ソース物質が金属、炭素、または
    ドーピングまたは温度の関数として導電性となる材質を
    含む群の導電物質である請求項28に記載の陰極。
  30. 【請求項30】 前記ソース物質が合金によって構成さ
    れる請求項28に記載の陰極。
  31. 【請求項31】 前記陰極蒸着表面が前記ガス通路の出
    口端を囲むように成形された窪みを所定の位置に配置さ
    れている請求項28に記載の陰極。
  32. 【請求項32】 前記陰極蒸着表面を形成する前記ソー
    ス物質の前記固体容積の少なくとも一部分が多孔性構造
    をしており、前記ガス通路の前記出口端がそこを通るガ
    スが前記多孔性物質を通るように方向付けし、これによ
    り前記ガスが前記陰極蒸着表面を通っていく請求項28
    に記載の陰極。
  33. 【請求項33】 前記陰極物質の多孔性が15乃至85
    パーセントの範囲内である請求項32に記載の陰極。
  34. 【請求項34】 アーク蒸気蒸着システムであって、
    (a) 真空蒸着チャンバと、(b) 前記蒸着チャンバ内に存
    在する、またはその一部を形成している陽極と、(c) 陰
    極が陰極蒸着表面を有するような、前記蒸着チャンバ内
    に存在する電気防食用陰極ソースと、(d) 前記陰極の蒸
    着表面からプラズマ物質を受容するために前記蒸着チャ
    ンバ内に配置され形成された基板と、(e) 前記チャンバ
    の排気を行うために前記蒸着チャンバに有効に接続され
    た手段と、(f) ソース物質のプラズマを生成するため前
    記陽極と前記陰極とを有効に接続して前記陰極蒸着表面
    と前記陽極との間にアークを開始し保持するための電源
    と、(g) 前記蒸着チャンバと前記陽極とを有効に接続し
    て処理ガスを前記蒸着チャンバへ局部的に送り、前記陰
    極蒸着表面の直近に処理ガス活性化ゾーンを形成する処
    理ガス送り出しシステムとを含むアーク蒸気蒸着システ
    ム。
  35. 【請求項35】 前記処理ガス送り出しシステムが陰極
    の陰極蒸着表面を通じて処理ガスを送り出すための手段
    を含む請求項34に記載の蒸着システム。
  36. 【請求項36】 前記処理ガス送り出しシステムが前記
    電気防食用陰極ソースによって、また同ソースを通じて
    限定されるガス通路を含む請求項35に記載の蒸着シス
    テム。
  37. 【請求項37】 前記処理ガス送り出しシステムが陰極
    蒸着表面を限定する前記陰極ソースの少なくとも1部分
    を形成する多孔性物質を含み、処理ガスが多孔性物質を
    通って前記陰極蒸着表面へと流れていく請求項35に記
    載の蒸着システム。
JP11016697A 1996-04-12 1997-04-11 ガス制御式アーク装置とその方法 Pending JPH1053866A (ja)

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