JP2002194527A - 電子ビーム励起プラズマを用いた窒化処理装置 - Google Patents

電子ビーム励起プラズマを用いた窒化処理装置

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JP2002194527A
JP2002194527A JP2000397584A JP2000397584A JP2002194527A JP 2002194527 A JP2002194527 A JP 2002194527A JP 2000397584 A JP2000397584 A JP 2000397584A JP 2000397584 A JP2000397584 A JP 2000397584A JP 2002194527 A JP2002194527 A JP 2002194527A
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plasma
electrons
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Yoshitoku Kasa
良徳 嵩
Makoto Riyuuji
真 龍治
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Kawasaki Heavy Industries Ltd
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Kawasaki Heavy Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 被処理部材表面における窒化層の生成速度が
大きく、かつ窒化物層や拡散層の制御が可能な窒化処理
装置を提供する。 【解決手段】 放電プラズマを生成する放電室と、処理
材料を載置する試料台37と原料ガス供給口を設けた窒
化処理室3とを備え、窒化処理室内に加速電極31を設
けて、加速電極により放電プラズマから電子を窒化処理
室に引き出し加速して室内の窒素を含む原料ガスをプラ
ズマ化して処理材料35の表面に作用させる。窒素ガス
を原料ガスとして使用すること、処理材料は電子の流入
方向に対して平行に、かつ電子流の中心から離れて配置
されることが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子ビーム励起プ
ラズマを用いた窒化処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】金属表面を窒化処理することにより金属
表面の耐摩耗性や耐食性など材料性能を大幅に向上でき
ることはよく知られている。金属窒化処理にはイオン窒
化法が広く用いられてきた。イオン窒化法は、グロー放
電により発生する窒素イオンを被処理物に衝突させて、
叩き出された金属原子をプラズマ中の窒素と反応させて
窒化物とし、被処理物表面に吸着させることにより窒化
物層を形成させるものである。表面に吸着された窒化物
は温度とイオン衝撃により変成しながら順次内部に侵入
して窒化層を形成するので、窒化層の厚さや組織は温度
と処理時間に依存する。
【0003】イオン窒化法は塩浴法などと異なり、シア
ン酸塩や硫化物を必要とせず、比較的無害なアンモニア
ガスや窒素ガスなどを使用するので無公害であると共に
処理速度が速いという長所がある。しかし、イオン窒化
法には、高速イオンにより被処理物表面がスパッタリン
グを受けるため製品の粗度が低下すること、グロー放電
の電流密度が処理品の形状に左右され処理温度やプラズ
マ分布にむらが生じるため均一な窒化層が得にくいこ
と、窒素化合物層の制御が難しいことなど、改善を要す
る点がある。したがって、たとえば、部材表面の平滑性
が要求される場合や白層と呼ばれる窒素化合物層が邪魔
になる場合は、処理後の化学処理や研磨が欠かせなかっ
た。
【0004】これら問題点のいくつかを解決する方法と
して、たとえば特開平6−220606に開示されてい
るようなラジカル窒化法がある。従来のラジカル窒化法
は、直流グロー放電により低いエネルギ状態のプラズマ
を発生させイオン化率を抑えながら高活性なラジカルを
有効に発生させ窒化処理を行う。ラジカル窒化法では、
窒化反応に有効な反応種が部材の表面に吸着し、吸着さ
れた窒素が表面層に固溶した後に部材内部へ拡散すると
考えられる。処理部材は、放電とは別の外部加熱ヒータ
により所定の温度に保持される。具体的には、真空容器
を排気後外部加熱装置により処理物を加熱昇温し、その
後水素とアンモニアの混合ガスを流量制御しながら真空
容器に導入し、被処理部材を載置した陰極と陽極になる
真空室壁の間に発生させる直流グロー放電により処理ガ
スをプラズマ化しラジカルを発生させて窒化処理する。
【0005】従来のラジカル窒化法で用いるプラズマ
は、反応ガスとして水素とアンモニアの混合ガスを用
い、グロー放電によりイオン化率やエネルギ状態を低く
抑え反応性の高いラジカルの割合を大きくするところに
特徴があり、プラズマによって処理部材は殆ど加熱され
ない。ラジカル窒化法では、印加電圧、反応ガス混合
比、処理温度など制御可能なパラメータを調整すること
により目的に適合したプラズマ反応状態を作り出すこと
ができるので、処理条件を選択して表面状態を保持した
高硬度の拡散層のみを形成したり、さらに拡散層の上に
化合物層を形成したりすることができる。また、スリッ
ト内面や細孔内面などの細かな部分の窒化処理も可能
で、複雑な形状を有する部材の加工もでき、表面状態を
保持して窒化処理すれば部材表面の平滑化処理などの工
程を省略することもできる。
【0006】しかし、従来のラジカル窒化法ではグロー
放電によりプラズマを発生させるので、窒素イオンやラ
ジカル窒素の密度が極めて低いため窒化層の生成速度が
遅い。また、反応ガスとして有毒のアンモニアや危険な
水素を用いるので、取扱に注意が必要である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明が解決
しようとする課題は、被処理部材表面における窒化層の
生成速度が大きく、かつ窒化物層や拡散層の制御が可能
な窒化処理装置を提供することである。また、危険な反
応ガスを用いず、安全な窒素ガスを使用して目的を達成
できる窒化処理装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明の窒化処理装置は、放電プラズマを生成する
放電室と、処理材料を載置する試料台と反応ガス供給口
を設けた窒化処理室とを備え、窒化処理室内に加速電極
を設けて、加速電極により放電プラズマから電子を窒化
処理室に引き出し加速して室内の窒素を含む反応ガスを
プラズマ化して金属材料の表面に作用させることを特徴
とする。なお、窒素ガスを反応ガスとして使用すること
が好ましい。また、処理材料は電子の流入方向に対して
平行に、かつ電子流の中心から離れて配置されているこ
とが好ましい。
【0009】本発明の窒化処理装置によれば、放電室で
生成された放電プラズマから引き出した大電流の電子流
により窒化処理室内の反応ガスをプラズマ化したいわゆ
る電子ビーム励起プラズマを利用するので、従来のプラ
ズマ源と比較して数10倍の解離度を有する大容量の窒
素プラズマを用いた高速な窒化処理が可能である。な
お、反応ガスとして、従来のイオン窒化法やラジカル窒
化法と同様、窒素と水素の混合ガスや水素とアンモニア
の混合ガスなども使用できるが、本発明では電子ビーム
励起プラズマを使用することから加速電圧により電子流
のエネルギ分布を選択すれば全く安全な純窒素ガスでも
窒化処理に十分な密度の窒素プラズマを発生させること
ができる。
【0010】窒化処理室内における電子流は加速電極に
向けて流れるので、被処理物を加速電極上に配置して、
被処理物に垂直な方向に電子ビームを加速して打ち込む
ようにすると、窒化処理室内のガス圧が低いときは高エ
ネルギーの電子ビーム成分が被処理物に直接入射して表
面電位を下げ、その結果プラズマ中のイオンによる物理
的エッチング作用が大きくなり表面が損傷を受ける場合
がある。しかし、被処理物を電子流に対して平行かつ電
子流の中心から離れた位置に配置すると、被処理物に高
速電子が衝突しないため、高エネルギーのイオン入射に
よる表面粗度の劣化が生じない。また、プラズマ濃度分
布が平坦化するので被処理物表面における窒化物の吸着
が均等化して良質の製品を得ることができる。
【0011】さらに、本発明の窒化処理装置は、窒化処
理装置が前記放電室にカソードと中間電極と放電陽極を
この順に設け、窒化処理室に加速電極を設け、中間電極
に細孔を設けて、細孔により圧力勾配を持たせてカソー
ド付近に供給される放電用ガスを窒化処理室に流入させ
て排気するようにした圧力勾配型電子ビーム励起プラズ
マ発生装置であって、カソード付近に放電用ガスを流入
させ、カソードと放電陽極の間に放電プラズマを生成
し、放電室から電子を引き出し加速して窒化処理室に導
入し窒素ガスをプラズマ化して試料台上の処理材料表面
に作用させるものであって、処理材料が電子の流入方向
に対して平行に電子流の中心から離れて設置されている
ものであってもよい。
【0012】圧力勾配型電子ビーム励起プラズマ発生装
置は、高価な差動排気ポンプを使用しない非常にコンパ
クトな装置である。また、カソードと放電陽極の間に流
れる放電電流と放電部のガス圧力により引き出し元とな
る放電部のプラズマ密度を調整し、放電陽極と加速電極
の間に印加する加速電圧により電子のエネルギを調整す
るから、引き出す電子ビームの電流とエネルギを独立に
制御ができるところに特徴がある。このため、窒素ガス
に関するプラズマ化条件を容易に設定することができ
る。
【0013】また、本発明の窒化処理装置は、リング状
電子放射型電子ビーム励起プラズマ発生装置であって、
電子を引き出す複数の隘路を有し、放電プラズマを充満
する隔室を窒化処理室に突出するように設けてあり、窒
化処理室内に隔室を取り巻くように加速電極が設けられ
ていて、被処理物の処理材料が隘路から噴出する電子流
に対してほぼ平行に設置され、加速電極に印加される加
速電圧により隘路を通して放電プラズマから電子を引き
出し加速して窒化処理室内の窒素ガスをプラズマ化する
ものであってもよい。窒化処理するときにはプラズマ密
度分布を調整して試料台上の処理材料表面に作用させ
る。なお、放電室にカソードと中間電極と放電陽極を備
え、カソードと放電陽極間の放電でアルゴンガスプラズ
マが生成されるようにしてもよい。
【0014】リング状電子放射型電子ビーム励起プラズ
マ発生装置は、多数の隘路を通して隔室から広がる方向
に大電流の電子流を放出するので比較的小さな窒化処理
室内に高密度で大きなプラズマを発生させることができ
る。また、プラズマ領域内におけるプラズマ分布がより
平坦なため、大きな面積に亘って均質な窒化処理を高速
に行うことができ、大型の処理材料を効率よく処理する
ことができる。特に、放電室に設けた中間電極を介して
カソードと放電陽極間の放電で放電プラズマが生成され
るようにしたものは、効率よく大電流を生成するので、
より高密度の窒素ガスプラズマを生成させてより効率の
よい窒化処理を行うことができる。なお、本発明の窒化
処理装置は、金属材料を対象とすることができることは
いうまでもない。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る電子ビーム励
起プラズマを用いた窒化処理装置の実施の形態を、図面
を用い実施例に基づいて詳細に説明する。
【0016】
【実施例1】図1は本発明の窒化処理装置の第1実施例
を説明するブロック図である。本実施例の窒化処理装置
は、圧力勾配型電子ビーム励起プラズマ発生装置により
窒素プラズマを生成するものであって、図1に示すよう
に、カソード室1と放電プラズマ室2からなる放電室と
窒化処理室3で構成される。放電室にはカソード11と
中間電極13と放電陽極23をこの順に設け、さらに窒
化処理室3に加速電極31を設けてある。カソード室1
と放電プラズマ室2は中間電極13で隔てられている。
カソード室1には、熱電子を放出するフィラメントを備
えたカソード11が設けられ、またガスノズル12が設
けられアルゴンガス等の不活性ガスが供給される。中間
電極13は、中央に連通孔14を備えて不活性ガスと電
子が放電プラズマ室2に流入できるようになっている。
【0017】放電プラズマ室2は中間電極13と放電陽
極23の間に形成され、カソード11と放電陽極23に
より供給される電子流により不活性ガスのプラズマが生
成される。また、放電陽極23の中心部に引出し隘路2
4が設けられている。引出し隘路24の外側にはコイル
25が設置されていて、中間電極の隘路14を通過した
電子流の大部分が直接放電陽極23に流入せずに引出し
隘路24を通過して窒化処理室3に流入するようになっ
ている。また、コイル25によって、窒化処理室3に流
入する電子流の軌道を調整しプラズマ形状を調整するこ
とができる。窒化処理室3には、加速電極31と、窒素
を含む反応ガスを導入するガスノズル32と、図外の真
空排気装置につながる排気口33が設けられている。加
速電極31は引出し隘路24に対向する位置に設けら
れ、また、引出し隘路24と加速電極31を結ぶ直線を
挟んで加熱ヒータ38を備えた試料台37が設けられて
いる。試料台37は、窒化処理の対象となる金属試料3
5を窒素プラズマの中心から適当な距離をおいて把持す
る。
【0018】上記の各電極11,13,23,31は、
直列に接続された加熱用電源51と放電用電源52と加
速用電源53とから形成される外部の直流電源と接続さ
れていて、プラズマ形成とプラズマ反応に必要な電流・
電圧が供給されている。すなわち、加熱用電源51がカ
ソード11のフィラメントに加熱電流を供給し、カソー
ド11と放電陽極23の間に放電用電源52の両端子が
接続されていて両者の間に放電電圧を供給し、さらに、
加速用電源53の陽極が加速電極31と接続されていて
放電プラズマ室2の放電プラズマから電子を引き出し加
速する加速電圧を供給する。なお、中間電極13は放電
電源52の陽極と抵抗器55を介して接続されている。
また、試料台34は直流電源装置または高周波電源装置
54に接続されていて、必要に応じて適当なDCバイア
スまたはRFバイアスを印加することにより試料表面の
イオン照射エネルギーを制御できるようにしてもよい。
【0019】本実施例の装置を利用して金属の窒化処理
を行うときには、被処理金属材料35を加熱ヒータ38
に取り付けて、窒化処理室3を真空ポンプにより排気す
る。窒化処理室3の真空度がたとえば1×10-6Torrr
以下の所定圧力に到達した後、加熱ヒータ38により試
料35をたとえば530℃など所定の温度になるまで加
熱し、そのまま保持する。次に、カソード11に、たと
えば35A程度の電流を流して加熱し、十分脱ガスを行
った上で、カソード室1に、たとえば10sccmなど所定
の流量のArガスを供給する。カソード11と放電陽極
23の間にたとえば100Vの放電電圧を印加して放電
させ、放電プラズマ室2内にアルゴンプラズマを充満さ
せて、放電電流を必要とする電子流に対応した所定の電
流、たとえば15Aに設定する。
【0020】窒化処理室3に反応性ガスである窒素ガス
をたとえば10sccmなど所定の流量供給しながら、必要
なプラズマ濃度が得られるような所定の圧力、たとえば
5×10-3Torrrになるように調整する。さらに、窒素
ガスのプラズマ化に適合した所定の加速電圧、たとえば
100Vを印加し、放電プラズマ室2で発生したArプ
ラズマ内の電子を加速電極31に向けて引き出し加速し
て、窒化処理室3内に窒素プラズマを発生させながら、
必要な厚さの窒化層を形成するために必要な所定の時
間、たとえば97分間その状態に保持する。その後、加
熱用電源51と放電用電源52と加速用電源53を切っ
て、窒素プラズマを消滅させる。試料が室温になるまで
真空中で自然冷却した後、窒化処理室3を大気に戻し試
料を取り出す。
【0021】なお、窒素プラズマによる窒化処理前に、
水素ガスやアルゴンガスなどのプラズマを用いて試料表
面をクリーニングする工程を挿入してもよい。前処理と
してクリーニングをすることにより、より均質な高品質
の製品を得ることができる。また、窒化処理室とバルブ
を介して接続したロードロック室を設け、ロードロック
室に試料を納めて予め真空中で加熱し脱ガスしてからバ
ルブを開けて試料を窒化処理室内に搬入するようにして
もよい。ロードロック室を用いることにより、窒化処理
室内に不純物の持ち込みを抑制し製品の品質を向上させ
ることができる。さらに、処理後の製品を200℃など
適当な温度まで自然冷却した後に、窒素ガスを導入して
冷却を促進すると、より速やかに製品を取り出せるよう
になり、生産の効率が向上する。
【0022】本実施例の装置によれば、放電プラズマ室
2から放出される電子流のエネルギを自由に調整し窒素
ガスの効率的な解離を行うことができ、また放電室から
大容量の電子流を供給することができるため、窒化処理
室3内に極めて高濃度な窒素プラズマを発生させること
ができる。さらに、放電室から放出される電子流に対し
て平行に金属材料を配置するので、処理対象物に作用す
るプラズマの濃度分布にむらが少なく、広い範囲につい
て均質な表面加工が行える。このように、本実施例の装
置により、金属材料を効率よく窒化処理することができ
る。
【0023】図2は、本実施例の装置により得られた窒
化処理金属材料の断面硬度分布図である。図面は横軸に
材料の表面からの深さを取り、縦軸に硬度をプロットし
たものである。処理温度500℃、処理時間97分の条
件で処理したダイス鋼(SKD61)について断面表面
におけるビッカース硬度の測定結果を表す。圧子の押し
込み加重は100gである。ダイス鋼はイオン衝撃によ
る表面粗度の増加を防ぐためにプラズマ中から離れた位
置に設置した。図から、窒化処理された材料のビッカー
ス表面硬度は約1200であり、表面から25μmの深
さまで1100以上の高い硬度が保たれていることが分
かる。また、本実施例の装置により、従来の窒化処理時
間が半減した。
【0024】
【実施例2】図3は本発明の窒化処理装置の第2実施例
を説明するブロック図である。本実施例の窒化処理装置
は、リング状電子放射型電子ビーム励起プラズマ発生装
置を利用して電子ビームを生成するようにしたものであ
る。実施例1の窒化処理装置と比較すると、電子ビーム
の引出し方向が異なるが、構造と作用は共通するところ
が多いので、同じ機能を有する要素については同じ参照
番号を付して、詳しい説明を繰り返さない。
【0025】本実施例の窒化処理装置は、図3に示すよ
うに、カソード室1と放電プラズマ室2と窒化処理室3
および隔室4が鉛直方向に配置され、放電陽極23は中
間電極13の直下、隔室4の直上に位置し、さらに隔室
内に挿入した放電陽極部分26を持つ。カソード11と
放電陽極23により供給される電子流により、放電プラ
ズマ室2内で不活性ガスのプラズマが生成される。な
お、図には示されていないが、中間電極13には1対の
空芯コイルが連通孔14に対して同軸に仕込んでもよ
い。また、放電陽極23の内部に空芯コイルを埋め込
み、中間電極の隘路14を通過した電子流の大部分が直
接放電陽極23に流入せずに放電陽極23の隘路24を
通過して隔室4内の放電陽極挿入部26に流入するよう
にしてもよい。
【0026】隔室4は窒化処理室3中に突出する筒状の
形状を有し、流入した電子流により生成された放電プラ
ズマが充満する。隔室4の外周には多数の連通孔42が
設けられ電子ビームのための引出し隘路を形成してい
る。引出し隘路42は図中水平方向に電子ビームを放出
する方向に開口している。窒化処理室3には、加速電極
36と、反応ガスを導入するガスノズル32と、図外の
真空排気装置につながる排気口33が設けられている。
加速電極36は隔室4の周囲を巡るリング型電極で、引
出し隘路42に対向する位置に設けられる。加速電極は
グラファイトやモリブデンなどの耐熱材料で構成しても
よいし、電極内の空洞に冷却媒体を循環させて前工程に
おける脱ガスや工程中の電極冷却を行うようにしてもよ
い。また、隔室4に対向する位置に上面に加熱ヒータ3
8を備えた試料台37が設けられている。試料台37
は、窒化処理の対象となる金属試料35を載置して、回
転したり上下方向に動かすことができる構造になってい
る。
【0027】加熱用電源51がカソード11に加熱電流
を供給し、放電用電源52がカソード11と放電陽極2
3の間に放電電圧を供給し、さらに、加速用電源53が
加速電極36に加速電圧を供給して隔室4中の放電プラ
ズマから電子を引き出し加速する。なお、中間電極13
は放電電源52と抵抗器55を介して接続されている。
必要に応じて、直流電源装置または高周波電源装置54
が試料台34に適当なDCバイアスまたはRFバイアス
を印加して試料表面のイオン照射エネルギーを制御する
ようにしてもよい。
【0028】カソード室1にプラズマ種となるアルゴン
ガスが供給され、カソード11に加熱用電源51からの
電流が流れると周囲に熱電子が放出され、アルゴンガス
の供給下で放電陽極23に放電用電源52の電圧がかか
ると中間電極13の間に生じる初期放電を仲介としてカ
ソード11と放電陽極23の間に放電が生じる。その結
果、隔室4内ではカソード室1から流入した不活性ガス
が効率よくプラズマ化される。
【0029】反応ガスは窒化処理室3に設けられたガス
供給口32から供給され排気口33から排出される。窒
化処理室3内の圧力は図示しない圧力調整機構によりプ
ラズマ反応中一定に保たれる。放電陽極23と窒化処理
室3内に設けた加速電極36の間に加速用電源53の電
圧を印加すると、引出し隘路42を介して隔室4内の放
電プラズマから窒化処理室3に電子流が引き出される。
放電プラズマから引き出される電子流の流出方向は放電
プラズマ室2における放電電流の方向に対してほぼ垂直
である。
【0030】隔室4内の放電プラズマから引き出された
電子流が、窒化処理室3内の材料ガス分子または原子を
電離・解離しプラズマ状にしてプロセスプラズマを生成
する。引出し隘路42は隔室4の周囲に多数設けられて
おり、さらに窒化処理室3における電子ビームのエネル
ギは加速電圧により窒素分子のプラズマ化に適合した値
に集中するように調整されているため、窒素を含む反応
ガスの電離・解離効率が高く、高密度の反応ガスプラズ
マを生成することができる。プラズマ化した反応ガス
は、試料台37上で加熱ヒータ38により適当な温度に
昇温した試料35と反応してそれぞれの目的に応じた表
面窒化層を有する製品を形成する。
【0031】本実施例の電子ビーム励起プラズマを用い
た金属窒化処理装置は、電子流が窒化処理室3内に放射
状に噴出し、試料35がこれに対して平行に配置される
ので、電子流が試料35の表面に直接的に衝突しないか
ら、試料表面における浮遊電位は電子の流入による沈み
込みが少なくなり均一になる。その結果、高エネルギー
のイオンビーム入射による表面粗度の劣化がない。ま
た、噴出する電子流と試料表面の間に適当な距離がある
ため、大きな面積を有する試料を用いてもプラズマ反応
は全面積に亘って均等で、十分均質な製品を製作するこ
とができる。なお、上記いずれの実施例でも試料の加熱
を窒化処理室内に設置した試料台に備えた加熱ヒータで
行っているが、窒化処理室外にいわゆる外熱式ヒータを
設置して加熱してもよい。外熱式ヒータは反応ガスの影
響を受けないためヒータ寿命が長いという長所を有す
る。
【0032】
【発明の効果】以上詳細に説明した通り、本発明の窒化
処理装置は、金属材料表面における窒化層の生成速度が
大きく、しかも窒化物層や拡散層の制御が容易で、表面
改質した金属材料を効率よく得ることができる。また、
危険な反応ガスを用いず、安全な窒素ガスを使用して目
的を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の窒化処理装置の第1実施例を説明する
ブロック図である。
【図2】本発明の窒化処理装置により得られる製品の性
能を示す線図である。
【図3】本発明の窒化処理装置の第2実施例を説明する
ブロック図である。
【符号の説明】
1 カソード室 2 放電プラズマ室 3 窒化処理室 4 隔室 11 カソード 12 ガスノズル 13 中間電極 14 連通孔 23 放電陽極 24 連通孔 25 コイル 26 放電陽極挿入部 31 加速電極 32 ガスノズル 33 排気口 34 試料台 35 金属試料 36 加速電極 37 試料台 38 加熱ヒータ 42 引出し隘路 51 加熱用電源 52 放電用電源 53 加速用電源 54 高周波電源装置 55 抵抗器

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 放電プラズマを生成する放電室と、処理
    材料を載置する試料台と窒素を含む反応ガスを供給する
    ガス供給口を設けた窒化処理室とを備える窒化処理装置
    であって、前記窒化処理室内に加速電極を設けて、該加
    速電極により前記放電プラズマから電子を前記窒化処理
    室に引き出し加速して前記反応ガスをプラズマ化して前
    記処理材料の表面に作用させることを特徴とする窒化処
    理装置。
  2. 【請求項2】 前記反応ガスが窒素ガスであることを特
    徴とする請求項1記載の窒化処理装置。
  3. 【請求項3】 前記処理材料が前記電子の流入方向に対
    して平行に電子流の中心から離れて配置されていること
    を特徴とする請求項1または2記載の窒化処理装置。
  4. 【請求項4】 前記窒化処理装置が前記放電室にカソー
    ドと中間電極と放電陽極をこの順に設け、前記窒化処理
    室に加速電極を設け、前記中間電極に細孔を設けて、該
    細孔により圧力勾配を持たせて前記カソード付近に供給
    される放電用ガスを前記窒化処理室に流入させて排気す
    るようにした圧力勾配型電子ビーム励起プラズマ発生装
    置であって、前記カソード付近に放電用ガスを流入さ
    せ、前記カソードと前記放電陽極の間に放電プラズマを
    生成し、前記放電室から電子を引き出し加速して前記窒
    化処理室に導入して前記窒素ガスをプラズマ化して前記
    試料台上の処理材料表面に作用させるものであって、前
    記処理材料が前記電子の流入方向に対して平行に電子流
    の中心から離れて設置されていることを特徴とする請求
    項1から3のいずれかに記載の窒化処理装置。
  5. 【請求項5】 前記窒化処理装置がリング状電子放射型
    電子ビーム励起プラズマ発生装置であって、前記放電室
    と前記窒化処理室の間に前記放電プラズマを充満し電子
    を引き出す複数の隘路を有する隔室を介装し、該隔室は
    前記窒化処理室に突出し前記隘路が前記処理材料に対し
    てほぼ平行に電子が噴出する方向に開口されており、前
    記窒化処理室内には該隔室を取り巻くようにリング状に
    加速電極が設けられていて、該加速電極で前記隘路を通
    して前記放電プラズマから電子を引き出し加速して窒化
    処理室内の窒素ガスをプラズマ化するときにプラズマ密
    度分布を調整して前記試料台上の処理材料表面に作用さ
    せることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載
    の窒化処理装置。
  6. 【請求項6】 前記放電室にカソードと中間電極と放電
    陽極を備え、前記カソードと前記放電陽極間の放電で前
    記放電プラズマが生成されることを特徴とする請求項5
    記載の窒化処理装置。
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