JP2002340885A - 鋼中のCaO含有介在物の分析方法 - Google Patents

鋼中のCaO含有介在物の分析方法

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JP2002340885A
JP2002340885A JP2001146512A JP2001146512A JP2002340885A JP 2002340885 A JP2002340885 A JP 2002340885A JP 2001146512 A JP2001146512 A JP 2001146512A JP 2001146512 A JP2001146512 A JP 2001146512A JP 2002340885 A JP2002340885 A JP 2002340885A
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JP2001146512A
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Yuichi Kanzaki
祐一 神崎
Ikuo Hoshikawa
郁生 星川
Koji Kanatsuki
宏治 金築
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋼中非金属介在物、特に鋼中のCaO含有介
在物の定量分析および/または粒度分布測定を精度よく
行うことのできる方法を提案する。 【解決手段】 予め800〜1100℃で3〜10分間
の溶体化処理を施した鉄鋼試料を、pH5〜7に調整し
た塩化第一鉄水溶液中で定電流電解に付することによっ
て得られたCaO含有介在物を、定量分析および/また
は粒度分布測定に供するようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼中のCaO含有
介在物の有用な分析方法、およびこの様な分析方法を用
いて鋼中のCaO含有介在物の個数を制御した鋼材に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】近年の高清浄度鋼化の要求に伴い、例え
ば鋼板加工時の割れ等の原因となり易いCaO含有介在
物の低減が必要とされている。前記CaO含有介在物の
起源として、取鍋および連続鋳造タンディシュ内のスラ
グ、または鋳造時に用いるモールドパウダーが挙げら
れ、これらを起源とするCaO含有介在物を製造時に生
じさせないようにする技術として、鋳造速度を低下させ
てモールドパウダーに起因するCaO含有介在物を低減
させる方法が提案されている。また鋳型内のモールドパ
ウダーを高粘度化させることによって、モールドパウダ
ー系の介在物による欠陥を減少させる方法が既に報告さ
れている(CAMPS−ISIJ vol.8(1995) p.1061)。しか
しながら、この様に製造時におけるCaO含有介在物の
低減技術が進んでも、なお存在する鋼中の微量CaO含
有介在物を精度よく評価することができなければ、上記
技術によるCaO含有介在物低減の程度、および介在物
低減による種々の特性の改善効果を確認することができ
ず、最終製品の品質を保証することは難しい。
【0003】従って、製品に有害なCaO含有介在物を
低減するにあたっては、上記製造プロセスの改善ととも
に、改善効果を確認するための評価技術が必要なのであ
る。
【0004】従来より、鋼中非金属介在物の分析に際し
て該介在物を抽出する方法として、代表的なものに酸分
解法、非水溶媒電解法、ハロゲン溶解法、およびスライ
ム法等が挙げられる。更に抽出した介在物を定量する方
法として、残渣(介在物)を全量溶解して化学成分分析
に供する方法や、走査型電子顕微鏡またはエネルギー分
散型X線分光分析装置等を用いて介在物粒子の化学成分
組成とサイズを1個ずつ測定していく方法等が挙げられ
る。
【0005】上記酸分解法とは、85〜90℃程度に加
熱した硫酸、硝酸またはその混合酸等の水溶液中で鉄鋼
試料の鉄マトリックスを溶解し、残渣として残る介在物
の組成やサイズを測定する方法である。この方法は操作
が比較的簡便であり、また残渣中に介在物とともに存在
する炭化物や水酸化鉄の量が少ないため、顕微鏡やX線
分光分析装置等による介在物の観察および測定が比較的
容易であるという特長を有する。
【0006】しかしながら上記酸分解法は、Al23
定量には適しているものの、酸に対して不安定であるC
aOを含有する介在物に適用すると、その一部あるいは
全部が抽出時に溶解してしまうため、CaO含有介在物
の組成やサイズを精確に定量することができないといっ
た問題がある。
【0007】上記ハロゲン溶解法として、例えば、ヨウ
素−メタノール法や臭素−メタノール法が挙げられ、非
水溶媒定電流電解法として、溶媒にアセチルアセトン−
テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノール系
や、サリチル酸メチル−テトラメチルアンモニウムクロ
ライド−メタノール系等を用いたものが挙げられる。上
記ハロゲン溶解法および非水溶媒定電流電解法は、いず
れも介在物抽出工程において、介在物が溶媒中に溶解し
てその組成やサイズが変化してしまうといったことが少
ないので、CaO含有介在物の抽出においても、該Ca
O含有介在物の溶損・欠損がほとんど生じないという点
で抽出精度に優れている。しかし、ヨウ素−メタノール
等のハロゲン類や、アセチルアセトンやサリチル酸メチ
ル等の非水系溶媒は、鉄イオンの溶解度がかなり小さい
ので、多量の鉄鋼試料を溶解させることができず、1鉄
鋼試料分の現実的な溶解量は1〜5g程度にとどまる。
従って上記方法を清浄鋼に適用した場合には、精度よく
定量できるほど介在物を確保することが難しく、清浄鋼
の介在物評価に適した方法とはいえない。
【0008】上記スライム法は、定電流電解分析法の1
種であり、塩化第一鉄(FeCl2)水溶液を電解液に用い
て鉄鋼試料中の鉄マトリックスを溶解し、残渣として残
った介在物の評価を顕微鏡やX線分光分析装置等を用い
て行うというものである。この方法の特長は、数kgと大
量の鉄鋼試料を用いることができるので、鋼中介在物量
の少ない清浄鋼であっても信頼性のあるデータが得られ
る点にある。
【0009】しかしながら従来のスライム法は、精確な
データが得られるものの、電解時に生成する水酸化鉄や
炭化物が介在物とともに残渣として多量に残留すること
から、その後の介在物の定量分析や粒度分布の測定が困
難であるといった問題を抱えていた。従来では、この様
な介在物以外の不要残渣に対処するため、介在物と不要
残渣の比重差を利用して流水中で介在物を分離する、い
わゆる水簸法が用いられ、その装置として、介在物を分
離するための概逆円錐型容器と複数の管を組み合わせた
ものが一般に使用されていた(鉄と鋼 61 (1975),249
0、鉄と鋼 60 (1974),S654)。しかし前記水簸法は、作
業自体が煩雑であるのに加えて、目的とする介在物の散
逸や損傷などの外乱が無視できないため、介在物のサイ
ズや組成を精度よく測定することができないという問題
を有している。
【0010】この様にスライム法は、介在物量の少ない
清浄鋼の介在物分析に適した方法であるにもかかわら
ず、上述の様な問題が存在するため、今まで有効に用い
られていなかったというのが実情である。
【0011】これまでにも上記スライム法を改善した技
術が提案されており、特開昭63−115047号公報
には、定電流電解に用いる電解液のpHを5.5〜7.
2に制御し、かつ電解液の補給と排出を継続的に行い溶
液中の水酸化鉄量を減少させて、酸化物系介在物を抽出
する方法が示されている。しかしこの方法では、抽出時
に生じる水酸化鉄は減少するものの、多量に析出する炭
化物に対しては対策がなされていないため、結果的に介
在物のサイズや成分組成を精度良く測定することができ
ない。また、電解液の補給および排出といった大掛かり
な装置を要し、かつ作業も煩雑であることから簡便性に
欠けるものでもある。
【0012】上述の様に、鉄鋼試料の鉄マトリックスを
溶解した場合、介在物の他に不要な炭化物の残渣が残
る。該炭化物の残存量が多すぎると、介在物の化学成分
分析や粒度分布測定等に悪影響が及ぶので何らかの低減
対策が必要である。
【0013】この様な炭化物の析出を抑制する方法とし
て、例えば特許第2930536号公報には、介在物抽
出に際して試料に脱炭処理を施す方法が提示されてい
る。詳細には、厚みが5mm以下の鉄鋼試料を用い、水
素−水蒸気ガス雰囲気中、800〜1000℃で50〜
100時間の熱処理を行い、鋼中炭素含有量を0.01
質量%以下にまで低減させることによって、介在物とと
もに残る抽出時の炭化物を少量に抑え、介在物定量に対
する炭化物の影響を小さくするといったものである。
【0014】しかしこの方法では、CaO含有介在物を
構成する酸化物のうち、化学的に不安定なSiO2、A
23、MnOおよびFeO等が水素−水蒸気ガスによ
り還元されてしまい、介在物の化学組成が変化してしま
う恐れがあるので、CaO含有介在物の如く化学的に不
安定な介在物の抽出方法としては適当でない。また上記
方法では、効率よく脱炭することを目的に、試料厚みを
5mm以下と薄くしているが、数kgオーダーの鉄鋼試料
を用いる場合には準備作業が煩雑となり簡便性に欠け
る。
【0015】また別の炭化物低減技術として、介在物抽
出に際して鉄鋼試料に溶体化処理を施す方法も提案され
ている(CAMPS−ISIJ vol.7(1994) p.380)。前記文献
では、軸受鋼を対象とし、酸分解法や臭素−メタノール
法で鉄マトリックスを溶解する前に、予め鉄鋼試料に1
100℃で溶体化処理を施して、酸化物系介在物の定量
に与える炭化物の影響を小さくすることが報告されてい
る。しかしながら、前記技術で採用している酸分解法
は、上述の様に、酸に対して不安定であるCaO含有介
在物の一部あるいは全部が抽出時に溶解してしまうとい
った問題を有し、また臭素−メタノール法では多量の鉄
鋼試料を溶解できないことから、いずれにしてもCaO
含有介在物を精度よく測定することは難しい。
【0016】また特開2000−206108号公報に
は、鉄鋼試料に溶体化処理を施し、該試料を非水系溶媒
中で電気分解した後、種々の薬品で二次処理を行って、
含Ca酸化物系、含Na酸化物系および含K酸化物系介
在物を定量的に回収する方法が提案されている。しかし
この方法では、二次処理まで行う必要があることから、
迅速にCaO含有介在物の定量等を行うには適さない。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述の様な
問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、介在
物の定量を阻害する炭化物の影響を最小限に抑制し、化
学的に不安定なCaO含有介在物を損失・欠損させるこ
となく抽出して、清浄鋼中のCaO含有介在物を精度よ
く定量することのできる方法、およびこの様な分析方法
でCaO含有介在物を制御した鋼材を提供することにあ
る。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明に係る鋼中のCa
O含有介在物の分析方法とは、予め800〜1100℃
で3〜10分間の溶体化処理を施した鉄鋼試料を、pH
5〜7に調整した塩化第一鉄水溶液中で定電流電解に付
することによりCaO含有介在物を抽出し、該CaO含
有介在物の定量分析および/または粒度分布測定を行う
ことを要旨とするものであるが、前記方法で抽出された
CaO含有介在物のうち、孔径20μmのフィルタを通
過しないCaO含有介在物を対象として前記定量分析お
よび/または粒度分布測定を行うことを好ましい形態と
する。
【0019】また本発明には、C:0.2質量%以下、
Cr:0.2質量%以下を満たし、かつ前記方法で抽出
された長径20μm以上のCaO含有介在物の個数が5
0個/kg以下である鋼材も含む。
【0020】尚、上記CaO含有介在物とは、Al
23、SiO2、MnO、MgO、Na2O、およびFe
Oよりなる群から選択される少なくとも1種の酸化物と
CaOとの複合酸化物(例えばCaO−Al23、Ca
O−SiO2、CaO−Al23−SiO2等が挙げられ
る)であって、CaOの割合が5質量%以上のものをい
う。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明者らは、前述した様な状況
の下で、清浄鋼中のCaO含有介在物を精確に定量評価
することを最終目標に、数kgオーダーの鉄鋼試料を用い
ることができ、介在物の定量を阻害する炭化物の影響を
最小限に抑制して、化学的に不安定なCaO含有介在物
を溶損・欠損させることなく抽出できる、鋼中CaO含
有介在物の分析方法の実現を目指して鋭意研究を行っ
た。その結果、介在物抽出に際して鉄鋼試料の溶体化処
理を行うとともに、pHを一定範囲内に制御した塩化第
一鉄水溶液を電解液に用いて定電流電解を行えば、Ca
O含有介在物の定量分析および/または粒度分布の測定
を精度よく行えることが分かった。以下、各条件につい
て規定した理由を詳述する。
【0022】炭化物が介在物定量に及ぼす悪影響を最小
限に抑制するには、介在物の抽出に際して、鉄鋼試料に
溶体化処理を施すことが大変有効である。しかしその処
理温度が低すぎると、炭化物の分解効果が不十分であ
り、抽出時に該炭化物がCaO含有介在物とともに多量
に残渣として残ってしまう。従って、溶体化処理の温度
は800℃以上とする必要があり、好ましくは900℃
以上である。一方、溶体化処理の温度が高すぎる場合に
は、鉄酸化物が析出し、抽出時にCaO含有介在物とと
もに該鉄酸化物が残存することとなるので、介在物の顕
微鏡観察を良好に行うことができない。従って、溶体化
処理は1100℃以下、好ましくは1000℃以下で行
うようにする。また適正な温度で溶体化処理を行う場合
であっても、その処理時間が短すぎると炭化物を十分に
分解させることができないので、3分間以上、好ましく
は5分間以上行うようにする。一方、溶体化処理時間が
長すぎると、酸化鉄が多量に析出して介在物の定量に悪
影響を及ぼすので、10分間以下、好ましくは8分間以
下とする。
【0023】図1中の(a)および(b)は、電解抽出
に際して行う溶体化処理の有無が抽出残渣量に及ぼす影
響を示したグラフであり、実験試料には低炭素鋼の熱延
板1kgを用い、前記図1(b)の試料には溶体化処理
(1000℃×5分間)を施した。この図1における
(a)と(b)を比較すると、溶体化処理を行うことに
よって、抽出残渣量が溶体化処理を行わない場合の10
分の1程度にまで減少していることが分かる。このこと
は、鉄鋼試料に溶体化処理を施すことによって、鋼中に
多量に存在している炭化物を固溶させ、抽出時の不要残
渣である炭化物の析出量を低減させることができたこと
を示している。
【0024】清浄鋼中の介在物を精確に定量できるほど
十分な介在物を確保するには、数kgオーダーの鉄鋼試料
を用い、多量の鉄マトリックスを溶解することが必須で
ある。従って介在物抽出時に用いる溶媒には、鉄イオン
の溶解度が大きい液体を採用する必要がある。この様に
鉄イオンの溶解度が大きい液体を溶媒に用いた方法とし
て、塩化第一鉄水溶液を電解液とした定電流電解法、い
わゆるスライム法が大変有効である。
【0025】本発明では、CaO含有介在物の抽出方法
として上記スライム法を適用することとし、該CaO含
有介在物の定量分析および/または粒度分布測定を精度
良く行うべく、その詳細な条件について下記の通り検討
を行った。
【0026】図2は、スライム法で用いる塩化第一鉄水
溶液のpH値を上昇させた場合のCaO含有介在物の溶
損率の変化を調べた結果であり、試料別(RH脱ガス前
のスラグ、RH脱ガス後のスラグ、およびモールドパウ
ダー)に示している。
【0027】実験には、CaO含有介在物の模擬試料と
して、鋳造中の実機の鋳型から採取したモールドパウダ
ー、およびRH脱ガス処理前後の取鍋やタンディッシュ
内で採取したスラグを冷却後に粉砕して、10〜44μ
m程度に粒度を調整した粉末スラグを用いた。pHを所
定の値に調整した塩化第一鉄水溶液中に、前記粉末スラ
グおよびモールドパウダーを所定時間浸漬し、その後の
水溶液中のCa濃度を測定して前記粉末スラグおよびモ
ールドパウダーの溶損率を求めた。前記図2より、塩化
第一鉄水溶液のpHが3の場合には、いずれの試料につ
いても溶損率が高いことから、精確に鋼中のCaO含有
介在物の定量または粒度分布の測定を行うことができな
いと考えられる。本発明では、塩化第一鉄水溶液のpH
を5以上に高めることによって、上記粉末スラグおよび
モールドパウダーの溶損率、即ち抽出時のCaO含有介
在物の溶損率を20質量%以下と介在物抽出に問題のな
いレベルにまで抑えることができたのである。
【0028】一方、上記塩化第一鉄水溶液のpHが高す
ぎても、抽出時に水酸化鉄が析出しやすくなり、その後
の介在物定量に悪影響を及ぼすので、上記塩化第一鉄水
溶液のpHは7以下となるよう制御する必要がある。
尚、前記塩化第一鉄水溶液のpHの好ましい下限は5.
5で、上限は6.5である。
【0029】CaO含有介在物は、上記スライム法で鉄
マトリックス溶解後の溶液をフィルタで濾過した後の残
渣として得られる。以下では、濾過に用いるフィルタの
孔径について調べた。
【0030】前記図1の(b)および(c)は、上述の
条件(1000℃×5分間)で溶体化処理を行った試料
を用いて定電流電解を行った後、孔径の異なるフィルタ
(φ20μmおよびφ1μm)を用いてそれぞれ濾過を
行い、得られた抽出残渣の量を比較したものである。
尚、前記図1の(c)も、前述の図1における(a)お
よび(b)と同様に低炭素鋼の熱延板1kgを用いて実験
を行ったものである。
【0031】この図1の(b)と(c)を比較すると、
孔径φ20μmのフィルタを用いた場合には、抽出残渣
量が孔径φ1μmの場合の4分の1程度にまで減少して
いることが分かる。これは、フィルタの孔径が小さすぎ
る場合には、適切な条件で溶体化処理を行ってもなお分
解しきれずに存在する炭化物が、濾過時に残渣として捕
捉されることを示している。この様に炭化物がCaO含
有介在物とともに残渣として残ると、その後のCaO含
有介在物の定量に悪影響を及ぼすため好ましくない。
【0032】一方、フィルタの孔径が20μmを超える
場合には、最終製品の欠陥の原因となるサイズのCaO
含有介在物を十分に確保することができず、該介在物と
孔拡げ性、疲労寿命等の特性との関連を正確に把握し難
い。従って本発明では、孔径φ20μmのフィルタを用
いて濾過を行うのがよいのである。
【0033】以上の方法を採用することによって、スラ
イム法の種々の特長を享受することができ、数kgオーダ
ーの鉄鋼試料を溶解して、電解抽出時に発生する炭化物
の析出量を影響のないレベルにまで抑制し、鋼中のCa
O含有介在物を溶損・欠損させることなく精確に定量す
ることができるのである。
【0034】本発明で規定する条件で溶体化処理を行っ
て鋼中の炭化物を十分に分解させ、CaO含有介在物の
成分組成やサイズを精度よく測定するには、C量が0.
2質量%以下、好ましくは0.1質量%以下で、Cr量
が0.2質量%以下、好ましくは0.1質量%以下の鋼
材を用いるのがよい。
【0035】また、この様にCおよびCrがともに0.
2質量%以下の鋼材を用い、上述の方法で抽出した長径
が20μm以上のCaO含有介在物の個数を50個/kg
以下とすることによって、優れた孔拡げ性、疲労強度等
の特性を確保できることが分かった。上記CaO含有介
在物の個数は、好ましくは40個/kg以下である。尚、
上記個数の測定は、波長分散型またはエネルギー分散型
のSEM(scanning electron microscopy)またはEP
MA(electron probe microanalyzer)装置を用いて行
ったものである。
【0036】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限
を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範
囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、そ
れらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0037】製鋼段階での条件(鋳造速度、鋳型内モー
ルドパウダーの粘性)を変化させて製造した、代表的な
化学成分が表1で示されるハイテン薄鋼板に、溶体化処
理(1000℃×5分間)を施し、該熱延板から各々試
料2kg(3.2mm×100mm×50mmの試料を16枚)を採取し
た。前記試料を電解液であるpH6.0に調整した塩化
第一鉄水溶液に浸漬させて定電流電解法(電流密度:2
00A/m2)により鉄マトリックス等1kg分を分解し
た後、孔径20μmのフィルタを用いて濾過を行い、C
aO含有介在物を含む残渣を得た。そして得られた残渣
を用い、波長分散型SEM装置で長径が20μm以上の
CaO含有介在物の個数を求めた。
【0038】上記ハイテン薄鋼板は、強加工が施される
ことの多い鋼材であり、該鋼材中に大型介在物として存
在しやすいCaO含有介在物があると、該介在物が応力
集中の起点となって加工時に割れが発生しやすい。従っ
て本実施例では、長径20μm以上のCaO含有介在物
が孔拡げ性に及ぼす影響について調べた。実験には、上
記介在物分析に用いた鋼材から、孔拡げ試験用の試料を
採取し、孔拡げ試験(JFS T 1001)を行って孔拡げ率λ
(%)を測定した。これらの結果を併せて表2に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】表2より、実験No.1〜4は、長径20
μm以上のCaO含有介在物の個数が50個/kgを超え
るものであり、λ値が小さくなっている。これに対し実
験No.5〜9は、長径20μm以上のCaO含有介在
物の個数が50個/kg以下と少ないことから、λ値が大
きく孔拡げ性に優れていることが分かる。
【0042】これらの結果より、上記本発明法で測定し
た長径20μm以上のCaO含有介在物の個数とλ値と
の間に顕著な関連性が存在することがわかる。つまり、
本発明の方法で得られた長径20μm以上のCaO含有
介在物の個数を50個/kg以下となるよう制御すれば、
確実に100%以上のλ値が得られ、優れた孔拡げ性を
確保することができるのである。
【0043】
【発明の効果】本発明は以上のように構成されており、
介在物抽出に際して本発明で規定する如く鉄鋼試料の溶
体化処理を行うとともに、pHを一定範囲内に制御した
塩化第一鉄水溶液を電解液に用いて定電流電解を行うこ
とによって、鋼中の非金属介在物、特にCaO含有介在
物の組成とサイズを精度よく測定できるようになった。
この様な分析方法の実現によって、最終ユーザーにまで
鉄鋼製品のCaO含有介在物に関する品質を保証できる
こととなった他、製品開発時の介在物の評価手段として
有用な方法を提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶体化処理の有無および濾過時のフィルタ孔径
が抽出残渣量に及ぼす影響を示したグラフである。
【図2】スライム法における電解液(塩化第一鉄水溶
液)のpH上昇がCaO含有介在物の溶損率に及ぼす影
響を、試料別(RH脱ガス前のスラグ、RH脱ガス後の
スラグ、およびモールドパウダー)に示したグラフであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 1/28 X (72)発明者 金築 宏治 兵庫県加古川市金沢町1番地 株式会社コ ベルコ科研内 Fターム(参考) 2G052 AA12 AB01 AD32 AD55 EA03 EB11 FD09 GA11 GA21 GA35 HC24 JA09 2G055 AA03 BA01 BA20 CA03 CA25 EA01 EA04 FA02

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 予め800〜1100℃で3〜10分間
    の溶体化処理を施した鉄鋼試料を、pH5〜7に調整し
    た塩化第一鉄水溶液中で定電流電解に付することにより
    CaO含有介在物を抽出し、該CaO含有介在物の定量
    分析および/または粒度分布測定を行うことを特徴とす
    る鋼中のCaO含有介在物の分析方法。
  2. 【請求項2】 孔径20μmのフィルタを通過しないC
    aO含有介在物を対象として定量分析および/または粒
    度分布測定を行う請求項1に記載の鋼中のCaO含有介
    在物の分析方法。
  3. 【請求項3】 C:0.2質量%以下、Cr:0.2質
    量%以下を満たし、かつ請求項1または2に記載の方法
    で抽出された長径20μm以上のCaO含有介在物の個
    数が50個/kg以下であることを特徴とする鋼材。
JP2001146512A 2001-05-16 2001-05-16 鋼中のCaO含有介在物の分析方法 Withdrawn JP2002340885A (ja)

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