JP5835385B2 - 無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法 - Google Patents

無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5835385B2
JP5835385B2 JP2014054926A JP2014054926A JP5835385B2 JP 5835385 B2 JP5835385 B2 JP 5835385B2 JP 2014054926 A JP2014054926 A JP 2014054926A JP 2014054926 A JP2014054926 A JP 2014054926A JP 5835385 B2 JP5835385 B2 JP 5835385B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
magnesium
sample
magnesium hydroxide
solution
magnesium oxide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014054926A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014209101A (ja
Inventor
藤本 京子
京子 藤本
匡生 猪瀬
匡生 猪瀬
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2014054926A priority Critical patent/JP5835385B2/ja
Publication of JP2014209101A publication Critical patent/JP2014209101A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5835385B2 publication Critical patent/JP5835385B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Food Science & Technology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Investigating Or Analyzing Non-Biological Materials By The Use Of Chemical Means (AREA)
  • General Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Geology (AREA)
  • Remote Sensing (AREA)
  • Environmental & Geological Engineering (AREA)

Description

本発明は無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法に関するものである。特に、製鉄プロセスで製造されるスラグなどの無機化合物系試料中に含まれる酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法に関するものである。
製鉄プロセスで製造されるスラグ(単にスラグと称することもある)は、骨材や路盤材等に用いられるセメント用の原料として利用されている。しかし、スラグを例えば路盤材に用いた場合、路盤材中に割れや破壊が発生するという問題がある。これはスラグの体積膨張によるものであり、膨張要因の一つとして酸化マグネシウムによる膨張があり、水和反応による水酸化マグネシウムの生成により体積が2.2倍となることはよく知られている。
このため、スラグを路盤材等の道路用に使用する場合には、JIS A 5015(道路用鉄鋼スラグ)に準じて、3ヶ月以上のエージング及び水浸膨張比1.5%以下である条件を満足させることになっている。しかしながら、酸化マグネシウムによる膨張は発現が遅いため、現行JIS A 5015では酸化マグネシウムによる膨張性が評価できない。
これに対して、スラグ中のマグネシウム量を定量する代表的方法として、XRDによる方法があげられる。また、Na2CO3+NaHCO3溶液(pH9.5〜10.5)中にスラグを浸漬し、「840分後の溶解量」から「60分後の溶解量」を差し引く方法(特許文献1)、重水(D2O)または重水酸化ナトリウム(NaOD)(in D2O)中にスラグを浸漬後、赤外吸収スペクトルを測定しMg(OD)2による吸収ピークを基に定量する方法(特許文献2)、固体25Mg-NMRを用いてMgO(MgS外部標準)で直接測定する方法が報告されている(非特許文献1)。
特開2007-309842号公報 特許第4676891号公報
金橋ら:「材料とプロセス(CAMP-ISIJ)」日本鉄鋼協会、 25、 520 (2012)
しかしながら、XRDによる方法では1%未満の酸化マグネシウムは検出できない。
特許文献1に記載の方法は、化合物選択性、再現性に乏しい。
特許文献2に記載の方法は、完全に酸化マグネシウムを水和させて水酸化マグネシウムに変化させる必要があるため、評価に長時間が必要で実用的でない。
非特許文献1に記載の方法は、多核測定機能を搭載した高機能の分析装置が必要なのに加え、測定に長時間(2%で2-3日)を要するという課題があり汎用性がない。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、短期間で精度良く簡便に行うことができる無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため検討を行った結果、以下の知見を得た。
例えば、スラグ中に存在するマグネシウム化合物のうち、酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムがヨウ素含有アルコール溶液に選択的に溶解すること、及び、スラグの熱重量分析法では水酸化マグネシウムの脱水量から水酸化マグネシウムが定量可能であり、選択的に溶解した酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの量と水酸化マグネシウムの量の差分から酸化マグネシウムが定量できることを知見した。そして、以上の知見により、本発明を完成するに至った。なお、本発明においては、JIS K0129(2005年)記載の熱重量測定(TG;試料の温度を一定のプログラムによって変化又は保持させながら、その試料の質量を温度又は時間の関数として測定する方法)を熱重量分析と称する。
本発明は上記知見に基づくものであり、特徴は以下の通りである。
[1]無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法であり、前記試料を溶解液であるヨウ素含有アルコールと接触させることにより、溶解液中に前記試料に含まれる酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムを溶解させ、溶解したマグネシウム量を求め、次いで、前記試料に対して熱重量分析を行い、水酸化マグネシウムの脱水に起因する質量減量から水酸化マグネシウム量を算出し、次いで、前記溶解したマグネシウム量から前記熱重量分析から算出されるマグネシウム量を差し引いて得られるマグネシウム量を基に、酸化マグネシウム量を求めることを特徴とする無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法。
[2]無機化合物系試料が、鉄鋼スラグであることを特徴とする前記[1]に記載の無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法。
[3]前記溶解液のアルコール成分が、1価のアルコールとエチレングリコールの混合物であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法。
[4]前記溶解液の温度が70℃以上90℃未満であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法。
[5]前記溶解液のヨウ素含有率が3質量%以上10質量%以下であることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法。
[6]前記熱重量分析は、前記試料をエチレングリコール溶液中で加熱処理した後に熱重量分析に供し、質量減量のベースライン補正を行うことを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載の無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法。
[7]前記熱重量分析において、用いる試料質量は50mg以上であり、昇温は不活性ガス雰囲気下で行うことを特徴とする前記[1]〜[6]のいずれかに記載の無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法。
[8]前記試料は、粒度:100μm以下の試料であることを特徴とする前記[7]に記載の無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法。
本発明によれば、無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムを短期間で精度良く簡便に定量分析できる。
さらに、本発明の無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法を用いることで、路盤材中に割れや破壊が発生するかどうかを予見することができ、水和反応に起因する割れ、破壊を抑制し路盤材の品質、耐久性を向上させることができる。
スラグを例えば路盤材に用いた場合、体積が膨張し路盤材中に割れや破壊が発生する原因となる酸化マグネシウムを事前に評価でき、有用である。
処理温度(溶解液温度)とマグネシウム分析値(Mg分析値)との関係を示す図である。 溶解液中ヨウ素含有率と酸化マグネシウム溶解率との関係を示す図である。 熱重量曲線及びその微分曲線を示す図である。 エチレングリコール処理前後のスラグの熱重量曲線及びその微分曲線を示す図である。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明において、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量分析を行う対象となる試料は、無機化合物系試料である。特に、製鉄プロセスで製造されるスラグが好適に用いられる。
そして、製鉄プロセスで製造されるスラグとは、鉄鋼の製造過程で発生するスラグであり、高炉スラグと製鋼スラグに大別され、路盤材に用いられるのは主に製鋼スラグである。製鋼スラグとは、溶銑やスクラップ等を精錬して鋼を製造する際に同時に製造される転炉スラグ、電気炉スラグ及びそのほか製鋼工程で製造される溶銑予備処理スラグ(溶銑を転炉に装入する前に溶銑の脱硫、脱珪、脱燐等の処理をする際に生成されるスラグであり、予備処理の内容に応じて生成されるスラグを脱硫スラグ、脱珪スラグ、脱燐スラグ等と称する)、二次精錬スラグ(転炉等から出鋼した溶鋼に脱硫、脱燐、脱ガス等の処理をする際に生成されるスラグ)、スロッピングスラグ(転炉吹錬中に炉内から飛び出し、炉下に落下したスラグ)、鋳造スラグ(溶鋼を鋳型又は連続鋳造機に注入した後、溶鋼鍋に残留したスラグ)、及び混銑炉スラグ(混銑炉から排出されたスラグ)を意味する。より具体的には、製鋼スラグは、鉄鋼製造プロセスにおいて生成されるものであり、CaO、SiO2、FeO、Fe3、MgO、MnO、Pを主成分、Al、S等を副成分として含有するものである。
以上からなる試料に対して、本発明では、まず、溶解液であるヨウ素含有アルコールと接触させることにより、溶解液中に試料中に含まれる酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムを溶解し、溶解したマグネシウム量を求める。また、一方で試料の熱重量分析を行い、水酸化マグネシウムの脱水に起因する質量減量から水酸化マグネシウム量を算出する。次いで、前記溶解したマグネシウム量から前記熱重量分析から算出されるマグネシウム量を差し引いて得られるマグネシウム量を基に酸化マグネシウム量を求める。すなわち、ヨウ素含有アルコール溶液を溶解液として、無機化合物試料と接触させる処理をすることにより、マグネシウム化合物のうちで酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムを選択的に溶解させて溶液中のマグネシウムを定量し、試料中の酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムに含まれるマグネシウムの合量を求める。また、一方で、試料を熱重量分析することにより、加熱過程での水酸化マグネシウムの脱水に起因する質量減量を測定し、そこから試料中の水酸化マグネシウム量を求める。さらに、上記で求めた酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムに含まれるマグネシウムの合量から熱重量分析で求めた水酸化マグネシウムに含まれるマグネシウム量を差し引いて試料中の酸化マグネシウムに含まれるマグネシウム量を求めることで、試料中の酸化マグネシウム量と水酸化マグネシウムの量を求める。
酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの溶解について説明する。
溶解液であるヨウ素含有アルコールと接触させることにより、溶解液中に酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムを溶解させ、溶解したマグネシウム量を求める。
この時、溶解液として用いるアルコールについては特に限定しない。メタノール、エタノール等を用いることができる。さらに、溶解液のアルコール成分が、1価のアルコールとエチレングリコールの混合物であることが好ましい。
また、溶解液のヨウ素含有率は3質量%以上10質量%以下であることが好ましい。なお、ヨウ素の含有率(%)は、ヨウ素とアルコールの合量を100%とした時のヨウ素の含有率である。
また、溶解液の温度は、70℃以上90℃未満が好ましい。
以下に、製鋼スラグを例にとり、上記を限定するに至った経緯、理由について説明する。
製鋼スラグ中に、マグネシウムは主にマグネシオフェライト(MgO-Fe又はMgO-2Fe)やマグネシウムシリケート(MgSiO)等の複合酸化物、あるいはトリカルシウムシリケート((Mg、Ca、Mn、Fe)SiO)のような形で存在し、製法や製造容器起因のMgOが少量存在する。マグネシオフェライトやマグネシウムシリケート等はヨウ素含有アルコール溶液中では安定に存在することが知られており、ヨウ素含有アルコール中で鉄鋼を加熱溶解して鉄マトリックスを溶解し、種々の酸化物を選択的に沈殿(固形分)として採取する方法が鋼中の標準的な介在物分析法として広く用いられている。しかし、鉄やケイ素と複合酸化物を形成しない単体の酸化マグネシウムはこの方法では溶解することも知られている。そこで上記を基に、本発明では、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムを選択的に溶解するにあたり、溶解液としてヨウ素含有アルコールに着目した。検討した結果、試料を溶解液としてヨウ素含有エタノールと接触させると、溶解液中に酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムが溶解することがわかった。同様に、溶解液としてヨウ素含有メタノールを用いた場合でも溶解液中に酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムが溶解することがわかった。さらに、溶解液のアルコール成分が、1価のアルコールとエチレングリコールの混合物の場合でも同様の結果が得られた。
図1は、篩目75μm以下に粉砕した、2種類の製鋼スラグに対して、8質量%ヨウ素−エタノール−エチレングリコール溶液(エチレングリコール70質量%−エタノール30質量%)、8質量%ヨウ素−メタノール−エチレングリコール溶液(エチレングリコール70質量%−メタノール30質量%)、8質量%ヨウ素−メタノール溶液を各々25ml添加し、必要に応じて処理温度(溶解液の温度)を変えて、1時間処理し、溶解液中のマグネシウム量を定量し分析した結果である。なお、図1上のマグネシウム分析値(Mg分析値)は、溶解液中のマグネシウム量をICP発光分析法により求め、溶解液に浸漬させた製鋼スラグ量に対する百分率で示した。
図1より、70℃にて処理を行なった場合、8質量%ヨウ素含有−エタノール−エチレングリコール溶液、8質量%ヨウ素含有−メタノール−エチレングリコール溶液とも酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムが溶解し、同じ結果が得られた。ただし、8質量%ヨウ素含有−メタノール−エチレングリコール溶液でより高い温度での処理を試みたところ、メタノールが揮発する結果、溶解液の組成が変化し、ヨウ素が析出してきてしまう、また、毒性の高いメタノールが放出され安全上好ましくないなどの問題が生じる場合があった。このため、メタノールの揮発を防ぐためには還流装置などを設けることが好ましい。さらに、大気中からの水分をも濃縮し溶解液中に混入させてしまうことによるばらつきを防ぐためには、還流装置以外に更に、脱水装置を設けることが好ましい。
8質量%ヨウ素−メタノール溶液を用い65℃にて処理を行なった場合でも、2種類の製鋼スラグとも、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムは溶解し、溶解液としてヨウ素含有メタノールを用いることができることがわかった。しかし、8質量%ヨウ素含有−エタノール−エチレングリコール溶液を用いた場合と比較して、約90質量%のマグネシウム化合物しか溶解しなかった。
以上より、溶解液としてヨウ素含有アルコールを用いることにより、無機化合物系試料よりマグネシウム化合物(酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウム)を、溶解液中に溶解させることができる。さらに、上述したように、試料の溶解処理を簡便にするためには、アルコールとしては、エタノールが好ましい。そして、溶解液中のアルコールとしては、メタノール、エタノールなどの1価のアルコール単独の場合よりも、エチレングリコールとの混合物が好ましく、アルコールとして、エタノールとエチレングリコール、もしくはメタノールとエチレングリコールとの混合物を用いることで定量的に、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムを抽出溶解することができる。この理由としては、エチレングリコールを混合することにより、溶解時の処理温度をより高温にでき高温で反応させることができる事、また、特にスラグなど酸化カルシウム、水酸化カルシウムを多く含む無機固体が試料の際には、エチレングリコールが、酸化カルシウム、水酸化カルシウムを溶解するので、固体試料中に散在するマグネシウム化合物(酸化マグネシウムと水酸化マグネシウム)を余すことなく溶解することができる事などが考えられる。
エチレングリコールと1価のアルコールの割合は、ヨウ素の溶解性および酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムの溶解性を調査して適宜設定することが可能であるが、通常、質量比で、エチレングリコール:1価のアルコールが9:1〜6:4が好ましい。
また、図1より、60℃以下ではマグネシウム分析値が低いが、70℃以上で一定値を示し、試料中のマグネシウム化合物(酸化マグネシウムと水酸化マグネシウム)が余すことなく溶解されたことがわかる。スラグCでは70℃から90℃で一定のマグネシウム分析値が得られるが、スラグDでは90℃でさらにマグネシウム分析値が増大する。そこで、元々のスラグC及びD中のマグネシウムの存在状態を確認するため、電子顕微鏡やEPMA(電子線マイクロアナライザー)でこれらのスラグ中のマグネシウムの存在状態を比較したところ、スラグD中にはマグネシウム比率の高いアルミネートやフェライトの存在が認められ、必要以上に高い温度で処理することによりこれらの化合物が溶解したものと考えられる。この結果から処理温度すなわち処理液の温度は70℃以上90℃未満が好適である。
ここで、アルコールとしてメタノールとエチレングリコールを用いる場合、70℃が上限である。したがって、溶解処理の好適な温度範囲70℃以上90℃未満を安定的に保持するためには、アルコールとしてエタノールとエチレングリコールを用いることが好ましい。
処理温度すなわち溶解液の温度は試薬を溶解する場合には高いほうが溶解時間を短縮でき、さらに、試料固体中に含有される酸化マグネシウムや水酸化マグネシウムをよく抽出溶解できる。しかし、上記結果から、実際の製鋼スラグに適用した場合には70℃以上90℃未満で処理した場合にもっとも精度の良い分析結果が得られることになる。
試料を溶解液であるヨウ素含有アルコールと接触させる時間については特に限定しない。処理時間が短すぎると試料を充分に溶解させることができず、長すぎると溶解液への水分の吸収などが発生してくるので、1時間〜2時間が好ましい。
次に、選択的に溶解液中に酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムを溶解させるための溶解液中のヨウ素含有率を調査した。ヨウ素含有率を変化させ、エチレングリコール、ヨウ素の良溶媒であるエタノールとの混合溶媒を用い、試薬の酸化マグネシウム10mgに対してヨウ素−エタノール−エチレングリコール溶液(エチレングリコール70質量%−エタノール30質量%)25mlを添加し、80℃で1時間処理後、酸化マグネシウム溶解率(MgO溶解率)を求めた。なお、酸化マグネシウム溶解率は溶解液中のマグネシウム量をICP発光分析法により求め、それを基に算出した。得られた結果を図2に示す。図2より、ヨウ素含有率3質量%で75質量%以上、7質量%以上では全量の酸化マグネシウムが溶解することがわかる。さらに、加熱時間を2時間に延長したところ、ヨウ素含有率3質量%でも全量の酸化マグネシウムが溶解可能であった。以上の結果、溶解液のヨウ素含有率は3質量%以上が好ましい。一方、ヨウ素含有率が10質量%を超えると処理後の溶液中にヨウ素が析出してその後の分析処理が困難になるので、10質量%以下であることが好ましい。
また、酸化マグネシウムの代わりに他のマグネシウム含有試薬を用い、3質量%ヨウ素−エタノール−エチレングリコール溶液(エチレングリコール70質量%−エタノール30質量%)25mlを添加した以外は上記と同様の処理を行い、溶解液中のマグネシウム量をICP発光分析法により求めて、各マグネシウム含有試薬の溶解率を求めた。得られた結果を表1に示す。
Figure 0005835385
表1より、酸化マグネシウムと同様に水酸化マグネシウムも全量溶解することがわかる。一方、製鋼スラグ中マグネシウムの主要成分であるフェライト、シリケート、アルミネートはほとんど溶解しないことが確認できた。また、マグネシウムの硫化物、硫酸塩、リン酸塩は、酸化物と同様、ヨウ素3質量%以上のヨウ素−エタノール−エチレングリコール溶液に溶解することがわかる。しかし、例えば、試料として製鋼スラグを用いる場合は、製鋼スラグ中に存在するマグネシウムの硫化物、硫酸塩、リン酸塩の合計の割合は0.1質量%以下で、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムに比べて少量であるため、分析結果への影響はほとんどない。
一方、無機化合物系試料中にマグネシウムの硫化物、硫酸塩、リン酸塩がある程度含まれる場合は、マグネシウムの硫化物、硫酸塩、リン酸塩は水溶性であり、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムは水溶性でないことを利用して、別途、試料を水と接触させ水溶性マグネシウム化合物を水中に溶出させることで上記の水溶性マグネシウム化合物を定量してこの結果をもとに分析値を補正することにより、より正確さの高い分析結果を得ることができる。すなわち、無機化合物系試料中にマグネシウムの硫化物、硫酸塩、リン酸塩がある程度含まれる場合は、まず、試料を水と接触させ水溶性マグネシウム化合物を水中に溶出させることで水溶性マグネシウム化合物のマグネシウム量(Mgaq)を定量しておく。また、一方で、本発明の定量方法を用い、溶解液であるヨウ素含有アルコールと接触することで溶解液中に酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウム及び水溶性マグネシウム化合物を溶解させ、溶解したマグネシウム量(Mgsol)を求め、そこから上記で求めておいた水溶性マグネシウム化合物のマグネシウム量を差し引き(Mgsol −Mgaq)、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムのマグネシウム量を求める。また、一方で、後述する熱重量分析を行い、水酸化マグネシウムの脱水に起因する質量減量からマグネシウム量を算出する。次いで、上記で求められた酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムのマグネシウム量から熱重量分析により算出されるマグネシウム量を差し引いて得られるマグネシウム量を基に酸化マグネシウム量を求める。
以上の条件で溶解処理し、溶解液中のマグネシウムを定量することにより、試料中の酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムに含まれるマグネシウムの合量が求められる。溶液中のマグネシウムの定量は特に規定されるものではないが、原子吸光法やICP(誘導結合プラズマ)発光分析法などを用いれば簡便、高精度にマグネシウム量を求めることができる。
次に、熱重量分析について、説明する。
試料に対して熱重量分析を行い、水酸化マグネシウムの脱水に起因する質量減量から水酸化マグネシウム量を算出する。この時、熱重量分析法による水酸化マグネシウムの定量においては、分析精度を向上させるためには、試料量の増大と熱重量曲線のベースライン補正、及び共存成分の干渉除去を行うことが好ましい。具体的には、用いる試料質量は50mg以上とするのが好ましい。試料をエチレングリコール溶液中で加熱処理した後に熱重量分析に供し、質量減量のベースライン補正を行うことが好ましい。昇温は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
詳細を以下に説明する。
図3に粒度:75μm以下(篩目が75μmの篩を通る粒度)とした製鋼スラグを試料とし、試料量を10mg(通常測定)と100mgとした場合のアルゴンガス雰囲気下、昇温速度10℃/分で測定した熱重量曲線、及びその微分曲線を示す。なお、TGは熱重量曲線における質量減量率(%)、DTGは熱重量曲線の微分曲線である。試料量の増大により、試料量10mgでは不明確だった390℃近傍の水酸化マグネシウムの脱水による熱重量曲線及び微分曲線の変化が明確になっていることがわかる。
次に、試料量を10mg、50mg、100mgに変化させ、アルゴンガス雰囲気、昇温速度10℃/分で測定した際の質量減量率を調べた。試料量100mgについては大気雰囲気下でも測定した。得られた結果を表2に示す。なお、質量減量率は、330〜420℃の範囲の中で熱重量曲線および微分曲線の形状から水酸化マグネシウムの脱水に相当する部分を読み取り、その部分における質量減量率である。
Figure 0005835385
表2より、アルゴンガス雰囲気下で昇温測定することによって酸化物の炭酸化を抑制し、分析値の精度、正確さが向上することがわかる。
また、試料量を10mgから100mgに増大させることによって質量減量率の精度は大幅に向上した。また、大気雰囲気下での昇温では酸化カルシウムや酸化マグネシウムの炭酸化の影響で、測定値のばらつきが大きいが、アルゴンのような不活性ガス雰囲気下では、このような影響も受けにくいことが確認できた。
以上より、熱重量分析において、用いる試料質量は50mg以上であり、昇温は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
さらに、水酸化マグネシウムの脱水による質量減少を求める際のベースライン補正について検討した。スラグの遊離酸化カルシウムの定量法(JCAS I-01-1997)としても用いられているように、製鋼スラグ中の酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムは溶解するのに対しマグネシウム化合物は全く溶解しないことが確認されているエチレングリコール中での製綱スラグの加熱処理を行ない、図4に見られるような420℃から480℃近傍で生じる水酸化カルシウムの脱水による減量の影響の除去を試みた。分析試料をあらかじめエチレングリコール中での加温処理(70±5℃)をして、酸化カルシウムと水酸化カルシウムを溶解し、真空乾燥後、上記と同様の条件にて熱重量分析を行った。
図4にエチレングリコール処理前後のスラグの熱重量曲線及びその微分曲線を示す。図4より、事前にエチレングリコール処理を行うことで、試料より水酸化カルシウムを除去できたため、水酸化マグネシウムの脱水温度域に干渉していた水酸化カルシウムの脱水減量は消失したことがわかった。また、水酸化マグネシウムによる脱水が起こる前および後の温度領域においても干渉していた水酸化カルシウムの脱水による質量減少の影響も除去されたため、その温度領域での熱重量曲線がほぼ一定の傾きを持つ直線となり、水酸化マグネシウムの脱水減量を定量するためのベースラインとして熱重量曲線の傾き補正に用いることができることがわかった。鉄鋼スラグでは、室温から水酸化マグネシウムの脱水温度域まで連続的に質量減少し、水酸化マグネシウムの定量に影響を与える場合が多い。そのためベースラインの傾き補正の必要があるが、水酸化カルシウムを事前に除去することにより適切なベースライン補正が可能になった。エチレングリコール中での加熱処理は通常60〜80℃で、30分〜2時間行えばよく、場合により、マグネティックスターラーなどで攪拌してもよい。また、試料(スラグ)は、粒度:100μm以下(篩目が100μmの篩を通る粒度)とすることが好ましい。そして、このようにベースラインが補正され、これに基づき水酸化マグネシウムを定量することで、より正確に、高精度な分析が可能となる。
以上より、試料をあらかじめエチレングリコール溶液中で加熱処理した後に熱重量分析に供し、前記質量減量のベースライン補正を行うことが好ましい。
なお、水酸化マグネシウムの脱水による質量減量を計算する温度範囲、および補正のためのベースラインとして用いる温度範囲は、熱重量曲線やその微分曲線の形状より適宜決めることができるが、通常、それぞれ、350〜415℃、285〜350℃である。また、熱重量測定における昇温速度は通常5℃/分〜20℃/分の範囲で行うことが好ましい。
上記に加え、試料として、粒度:100μm以下(篩目が100μmの篩を通る粒度)とした試料を用いることが好ましい。100μm以下とすることで、より精度の高い分析が可能となる。試料粒度が100μmを超えると粒内に内包された水酸化マグネシウムの脱水が完全に行われなかったり、昇温に伴う脱水に時間がかかって脱水のシグナルがブロードになったりして分析精度が低下する場合がある。なお、無機化合物系試料をあらかじめ粉砕し篩い分けなどにより粒度が100μm以下となるようにして用いることができる。
以上より、例えば、0.5質量%以下の含有率の少ない水酸化マグネシウムを定量する場合には、50mg以上の試料を用いることが好ましい。また、試料としてスラグを用いる場合には、炭酸化の影響を除去するために窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で昇温することが好ましい。試料に含まれる水酸化カルシウムの脱水やその他化合物の形態変化に起因する連続的な質量変化を補正するためには、事前にエチレングリコール中で試料を加熱処理し水酸化カルシウムを溶出させた試料を熱重量分析し、水酸化マグネシウムの脱水温度の直前あるいは直後の温度域の質量変化を基準にベースライン補正を行うことが好ましい。このような補正を行うことによって水酸化マグネシウムの脱水による質量変化を高精度で測定でき、正確さに優れた分析値が得られることになる。なお、当然のことながら、水酸化カルシウム(および酸化カルシウム)を除去した後の試料(スラグ)は元々の試料より軽くなっているため、エチレングリコールによる加熱処理前(水酸化カルシウム・酸化カルシウム除去前)の試料の質量とエチレングリコールによる加熱処理(水酸化カルシウム・酸化カルシウム除去)を行い乾燥した後の試料の質量との比率を求めておき、熱重量分析によって得られた水酸化マグネシウムの量をエチレングリコールによる加熱処理前の試料(スラグ)に対する含有率として換算することはいうまでもない。
次に、酸化マグネシウム量の定量について、説明する。
ヨウ素−アルコール溶解液を用いて溶解されたマグネシウム量から前記熱重量分析から算出されるマグネシウム量を差し引いて得られるマグネシウム量を基に、酸化マグネシウム量を求める。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
実際の転炉スラグ中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウム量を定量した。分析試料として、製造場所が異なり、マグネシウム含有率(トータルMg)がほぼ同等で、水浸膨張特性が異なる2種のスラグA、スラグBを3ヶ月間大気エージング処理をしたもの、及び上記スラグAを100℃で3日間蒸気エージング処理したもの、の3種類を用いた。なお、トータルMgは、酸分解後、残渣をアルカリ融解法で分解・溶液化して合液し、ICP発光分析法で測定した。
次いで、上記3種類の試料を粉砕し、75μmの篩目を通るように75μm以下に粒度調整後、0.1gを秤り取って、密閉可能な反応容器に各々入れた。この反応容器に、8質量% ヨウ素−エタノール−エチレングリコール溶液(エチレングリコール70質量%、エタノール30質量%)25mlを正確に加え、あらかじめ80±5℃に調節した湯浴中で、マグネティックスターラーで攪拌しながら60分間加温した。次いで、流水で室温まで冷却後、メンブランフィルター(0.45μm)でろ過し、ろ液の一部を希釈して溶液中のマグネシウム量をICP発光分析法で定量し、8質量% ヨウ素−エタノール−エチレングリコール溶液25mlに溶解したマグネシウム量を求めた。定量結果を表3にMg as [MgO+Mg(OH)2]として示す。それぞれ3回ずつ測定した。3回の平均値もあわせて表3示す。また、下記の方法により、水浸膨張試験を行い水浸膨張率を求めた。併せて表3に示す。
水浸膨張試験はJIS A5015に従って行い、80℃での6時間処理を断続的に10日間行った後の水浸膨張率を測定した。
Figure 0005835385
表3より、Mg as [MgO+Mg(OH)2]定量値の再現性は良好で、スラグA、Bはトータルマグネシウム含有率はほぼ同程度であるにもかかわらず、膨張特性の良好な大気エージング処理したスラグBは、大気エージング処理および蒸気エージング処理したスラグAに比べて、酸化マグネシウムと水酸化マグネシウム起因のマグネシウム量が少なく、遊離酸化マグネシウム起因の膨張特性をほぼ評価できることが確認できた。
引き続き、上記試料に対して、熱重量分析を行った。試料は上記と同様75μm以下に粒度調整後、0.15gを秤り取ってエチレングリコールを加え、70±5℃に調節した湯浴中で、マグネティックスターラーで攪拌しながら60分間加熱した。次いで、流水で室温まで冷却後、メンブランフィルター(0.45μm)でろ過し、エタノールで十分に洗浄後、真空デシケーター中で乾燥させた。なお、エチレングリコールでの加熱処理前の試料(スラグ)とエチレングリコールでの加熱処理・乾燥後の試料の質量を測定した。
上記エチレングリコールでの加熱処理後の試料0.1gに対して、熱分析装置を用いてアルゴン雰囲気下で常温から500℃まで10℃/分で昇温し、質量減量を測定した。この時350〜415℃の質量変化量の絶対値を[TG(1)(%)]、285〜350℃の質量変化量の絶対値を[TG(2)(%)]とし、式(1)から水酸化マグネシウム含有率[加熱処理後Mg(OH)2(%)]を算出し、さらに式(2)から水酸化マグネシウム体のマグネシウム含有率[加熱処理後Mg as Mg(OH)2]を算出し、さらに、式(3)より、エチレングリコールでの加熱処理前の試料(スラグ)に対する水酸化マグネシウム体のマグネシウム含有率(Mg as Mg(OH)2)を求めた。得られた結果を表4に示す。
また、上記8質量% ヨウ素−エタノール−エチレングリコール溶液による溶解により求められたMg as [MgO+Mg(OH)2]と上記熱重量分析により求められたMg as Mg(OH)2との差分から酸化マグネシウム体のマグネシウム量(Mg as MgO)を求めた。これら結果を、トータルMg含有率と共に併せて表4に示す。
[加熱処理後Mg(OH)2(%)]= ( [TG(1)(%)]−[TG(2)(%)] )×(58.326/18.016)
・・・・・式(1)
[加熱処理後Mg(%) as Mg(OH)2 ]= [加熱処理後Mg(OH)2(%)]×(24.305/58.326)・・式(2)
Mg(%) as Mg(OH)2 = [加熱処理後Mg(%) as Mg(OH)2 ]×(エチレングリコールでの加熱処理後の試料質量)/(エチレングリコールでの加熱処理前の試料質量)・・・式(3)
Figure 0005835385
表4より、スラグA、スラグBともに、大気エージング処理のスラグでは水酸化マグネシウム体のマグネシウム含有率は0.01質量%未満であるが、蒸気エージング処理のスラグでは水酸化マグネシウム体のマグネシウム含有率は0.05〜0.06質量%となっている。この水酸化マグネシウム体のマグネシウム含有率の違いはエージング処理の違いによるものと考えられ、大気エージング処理のエージング効果が認められたことがわかる。このように、本発明では、エージング処理の効果を簡便に調査することができることがわかる。
また、水浸膨張率と酸化マグネシウム量は非常によい相関関係を有しており、結果として、本発明により酸化マグネシウムを定量することにより、水浸膨張率を正確に予想することができることがわかる。
本発明の定量方法の正確さを検証するために、実施例1に用いたスラグA(大気エージング処理)に試薬の酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムを段階的に添加して分析を行った。具体的にはスラグAを粉砕し、75μmの篩目を通るように75μm以下に粒度調整後、表5に示すような量の酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムを添加、混合した。また、表5に、スラグAのトータルMgおよび実施例1において求められたスラグAの酸化マグネシウムとしてのマグネシウム量、水酸化マグネシウムとしてのマグネシウム量、およびそれらの合計量を示し(表5中No1)、さらに、その量をベースに試薬添加量から計算したそれぞれのマグネシウム量を記載した(表5中No2〜No7)。
なお、酸化マグネシウムは1000℃で加熱して恒量化したものを用い、試薬の添加、混合操作は乾燥窒素雰囲気のグローブボックス内で行った。
Figure 0005835385
上記の酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムを添加した調製試料について、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムを実施例1と同様の方法により定量した。得られた結果を表6に示す。
また、表5中の試料No3およびNo6については、8質量% ヨウ素−エタノール−エチレングリコール溶液(エチレングリコール70質量%、エタノール30質量%)の替わりに、10質量% ヨウ素-メタノール溶液25ml、および10質量% 臭素-メタノール溶液25mlを用い、あらかじめ60±5℃に調節した湯浴中で、マグネティックスターラーで攪拌しながら60分間加温し、その他の条件や測定法はすべて実施例1と同様の方法で行った。そして、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムを実施例1と同様の方法により定量した。得られた結果を表7に、それぞれNo3Y、No6Y(10質量% ヨウ素-メタノール溶液)、およびNo3S、No6S(10質量% 臭素-メタノール溶液)として示す。
Figure 0005835385
Figure 0005835385
表6より、分析結果は、添加した酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウム量から計算した表5の値とよく合致し、本発明法がスラグ中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウム分析法として有効なことが確認できた。
表7より、No3YおよびNo6Yは、何れも表5に示した計算値よりも2〜3割程低い値を示した。これは、メタノールのみを溶媒とした方法では、蒸発の影響があり、60℃以上に反応温度を上げることができず、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムを十分に抽出することができないことが要因と考えられる。また、No3S、No6Sは、何れも表5に示した計算値よりも1〜2割程高い値を示した。これは、臭素はヨウ素よりも酸化力が強いため目的の酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウム以外のマグネシウム化合物も溶解してしまったことによるものと考えられる。
以上のように、本発明がスラグ中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウム分析法として有効であることが確認された。
試料として製鉄プロセスで製造されるスラグを用いる場合などに対して好適である。

Claims (8)

  1. 無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法であり、
    前記試料を溶解液であるヨウ素含有アルコールと接触させることにより、溶解液中に前記試料に含まれる酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムを溶解させ、溶解したマグネシウム量を求め、
    次いで、前記試料に対して熱重量分析を行い、水酸化マグネシウムの脱水に起因する質量減量から水酸化マグネシウム量を算出し、
    次いで、前記溶解したマグネシウム量から前記熱重量分析から算出されるマグネシウム量を差し引いて得られるマグネシウム量を基に、酸化マグネシウム量を求めることを特徴とする無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法。
  2. 無機化合物系試料が、鉄鋼スラグであることを特徴とする請求項1に記載の無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法。
  3. 前記溶解液のアルコール成分が、1価のアルコールとエチレングリコールの混合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法。
  4. 前記溶解液の温度が70℃以上90℃未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法。
  5. 前記溶解液のヨウ素含有率が3質量%以上10質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法。
  6. 前記熱重量分析は、前記試料をエチレングリコール溶液中で加熱処理した後に熱重量分析に供し、質量減量のベースライン補正を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法。
  7. 前記熱重量分析において、用いる試料質量は50mg以上であり、昇温は不活性ガス雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法。
  8. 前記試料は、粒度:100μm以下の試料であることを特徴とする請求項7に記載の無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法。
JP2014054926A 2013-03-26 2014-03-18 無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法 Active JP5835385B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014054926A JP5835385B2 (ja) 2013-03-26 2014-03-18 無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013063914 2013-03-26
JP2013063914 2013-03-26
JP2014054926A JP5835385B2 (ja) 2013-03-26 2014-03-18 無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014209101A JP2014209101A (ja) 2014-11-06
JP5835385B2 true JP5835385B2 (ja) 2015-12-24

Family

ID=51903391

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014054926A Active JP5835385B2 (ja) 2013-03-26 2014-03-18 無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5835385B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN106885752A (zh) * 2017-03-24 2017-06-23 中国建筑材料科学研究总院 水泥中方镁石质量百分含量的测定方法
CN106908343A (zh) * 2017-03-24 2017-06-30 中国建筑材料科学研究总院 水泥中方镁石水化程度的测定方法
CN106969996A (zh) * 2017-03-24 2017-07-21 中国建筑材料科学研究总院 差减法定量测定水泥中方镁石质量百分含量的方法

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7401415B2 (ja) 2020-09-08 2023-12-19 株式会社神戸製鋼所 製鋼スラグの膨張抑制処理方法、製鋼スラグの利用方法および低f‐CaO含有スラグの製造方法
CN114486614A (zh) * 2022-01-19 2022-05-13 江西广源化工有限责任公司 一种水镁石中氢氧化镁含量的检测方法
CN115791499A (zh) * 2022-09-29 2023-03-14 无锡普天铁心股份有限公司 一种取向硅钢用氧化镁水化率测定方法

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN106885752A (zh) * 2017-03-24 2017-06-23 中国建筑材料科学研究总院 水泥中方镁石质量百分含量的测定方法
CN106908343A (zh) * 2017-03-24 2017-06-30 中国建筑材料科学研究总院 水泥中方镁石水化程度的测定方法
CN106969996A (zh) * 2017-03-24 2017-07-21 中国建筑材料科学研究总院 差减法定量测定水泥中方镁石质量百分含量的方法
CN106908343B (zh) * 2017-03-24 2019-04-02 中国建筑材料科学研究总院 水泥中方镁石水化程度的测定方法
CN106885752B (zh) * 2017-03-24 2019-04-02 中国建筑材料科学研究总院 水泥中方镁石质量百分含量的测定方法
CN106969996B (zh) * 2017-03-24 2019-04-02 中国建筑材料科学研究总院 差减法定量测定水泥中方镁石质量百分含量的方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014209101A (ja) 2014-11-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5835385B2 (ja) 無機化合物系試料中の酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムの定量方法
KR102214879B1 (ko) 슬래그의 분석 방법 및 용융 철의 정련 방법
CA3134962A1 (en) Methods for recovering a target metal from iron or steel slag using at least one of a carbothermic reduction process and a pyro-hydrometallurgical process
JP2014196218A (ja) 路盤材の製造方法
Ma et al. Detoxification and reclamation of hydrometallurgical arsenic-and trace metals-bearing gypsum via hydrothermal recrystallization in acid solution
Jiang et al. Formation of spinel phases in oxidized BOF slag under different cooling conditions
Diao et al. Mineralogical characterisation of vanadium slag under different treatment conditions
US10287644B2 (en) Molten steel desulfurization method, molten steel secondary refining method, and molten steel manufacturing method
JP4833735B2 (ja) 製鉄スラグ中の硫酸マグネシウムの定量方法
Han et al. Particle size distribution of metallic iron during coal-based reduction of an oolitic iron ore
Nishinohara et al. Powder X-ray diffraction analysis of lime-phase solid solution in converter slag
EP2743683B1 (en) Molten iron desulfurization method
JP2009008586A (ja) 金属試料中の着目元素の固溶含有率を求める方法
JP6269229B2 (ja) 高清浄鋼の溶製方法
JP5324141B2 (ja) 鋼中のCaO含有介在物の分析方法
Zinngrebe et al. Analysis and Significance of Non-metallic Inclusions in Non Grain-oriented Electrical Steel
JP5940701B2 (ja) 土壌改良材
JP4777142B2 (ja) 酸化物系無機材料中の遊離酸化マグネシウム定量方法
JP5903404B2 (ja) ヒ素低減材、ヒ素低減材の製造方法、及びヒ素低減方法
Rodriguez et al. Evolution of the Inclusion Population During the Processing of Al-killed Steel
RU2495134C2 (ru) Способ получения наноструктурированного науглероживателя для внепечной обработки высокопрочного чугуна с шаровидным и вермикулярным графитом
JP2002340885A (ja) 鋼中のCaO含有介在物の分析方法
RU2410448C2 (ru) Высокоосновный агломерат (варианты) и шихта (варианты) для его производства
JP4901565B2 (ja) 酸化物材料中のアルカリ土類金属酸化物含有量の定量方法
RU2403294C2 (ru) Промывочный агломерат и способ его производства

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20141027

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20150916

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20151006

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20151019

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5835385

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250