JP2002339978A - 玉軸受用保持器及び玉軸受 - Google Patents

玉軸受用保持器及び玉軸受

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JP2002339978A
JP2002339978A JP2001145240A JP2001145240A JP2002339978A JP 2002339978 A JP2002339978 A JP 2002339978A JP 2001145240 A JP2001145240 A JP 2001145240A JP 2001145240 A JP2001145240 A JP 2001145240A JP 2002339978 A JP2002339978 A JP 2002339978A
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pocket
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ball
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Hiroya Achinami
博也 阿知波
Minoru Kobari
実 小針
Manda Noda
万朶 野田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 保持器音の発生を防止しつつ、動トルクの低
減を図る。 【解決手段】 各ポケット10、10の内面の粗さを最
大高さRy で3μm以上10μm未満とする。これ共
に、凹凸の平均間隔Sm をこの最大高さRy の4以上
で、保持器の径方向に関する上記各ポケットの内面の幅
の1/2以下とする。これらにより、上記各ポケット1
0、10の内面と玉の転動面との間に必要且つ十分の油
膜が安定して形成される様にして、上記課題を解決す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明の玉軸受用保持器及び
玉軸受は、ハードディスクドライブ装置(HDD)、ビ
デオテープレコーダ(VTR)、デジタルビデオディス
ク(DVD)、ミニディスク(MD)のスピンドルモー
タ等の各種電気機器等、各種装置の回転支持部に組み込
む玉軸受、並びに、この玉軸受に組み込んで、複数の玉
を転動自在に案内する保持器の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】各種装置を構成する回転軸等の回転部分
を、ハウジング等の固定部分に対して回転自在に支持す
る為に、図1に示す様な玉軸受1が広く使用されてい
る。この玉軸受1は、外周面に内輪軌道2を形成した内
輪3と、内周面に外輪軌道4を形成した外輪5とを同心
に配置し、上記内輪軌道2と外輪軌道4との間に複数個
の玉6、6を、転動自在に設けて成る。これら複数個の
玉6、6は、保持器8により転動自在に保持している。
上記外輪5の両端部内周面には、それぞれ円輪状のシー
ルド板7、7の外周縁を係止し、これら両シールド板
7、7によって、上記玉6、6を設置した部分に存在す
るグリースが外部に漏洩したり、或は外部に浮遊する塵
芥がこの設置部分に進入したりするのを防止している。
尚、密封装置として、上記非接触型のシールド板7、7
に代えて、接触型のシール板を使用する場合もある。
又、HDD用の玉軸受の場合には、シールド板或はシー
ル板を、軸方向片側にのみ設ける事もある。
【0003】図示の例の場合、上記保持器8は、所謂冠
型保持器と呼ばれるもので、図2〜5に詳示する様に構
成している。この保持器8は、円環状の主部9と、この
主部9の軸方向片面に等間隔に設けられた複数のポケッ
ト10、10とを備える。これら各ポケット10、10
は、互いに間隔をあけて配置した1対ずつの弾性片1
1、11と、上記主部9の片面(図3〜4の上面)でこ
れら1対ずつの弾性片11、11の間部分に設けた凹面
部12とから構成したもので、それぞれ上記保持器8の
内径側と外径側とに開口している。そして、上記各ポケ
ット10、10に上記玉6、6を1個ずつ、転動自在に
保持自在としている。この様に構成する各ポケット1
0、10の内面は、単一曲率半径の球状凹面や、円筒状
或は円すい状の凹面と球状凹面とを連続させた複合曲面
等になっている。何れにしても上記各ポケット10、1
0の内面の曲率半径は、上記玉6、6を転動自在に保持
する為に、これら各玉6、6の転動面の曲率半径よりも
僅かに大きくしている。この様な保持器8は、合成樹脂
を射出成形する事により、一体に形成している。
【0004】上記各玉6、6は、上記各ポケット10、
10を構成する1対ずつの弾性片11、11の先端部同
士の間隔を弾性的に押し広げつつ、これら1対の弾性片
11、11の間に押し込む。そして、押し込んだ状態で
は、図5に示す様に、上記各玉6、6を上記各ポケット
10、10内に転動自在に保持する。この状態で、上記
各玉6、6の転動面と上記各ポケット10、10の内面
との間には、微小な隙間が存在する。従って、上記各玉
6、6を上記各ポケット10、10内に保持した状態で
は、上記保持器8がこれら各玉6、6を円周方向に関し
て等間隔に保持すると共に、これら各玉6、6によって
上記保持器8の直径方向位置を規制する。
【0005】上述の様な保持器8を組み込んだ玉軸受1
の潤滑は、一般的には1対のシールド板7、7同士の間
に注入したグリース等の潤滑剤により行なう。このグリ
ース等の潤滑剤の潤滑に基づき、上記玉軸受1の回転が
円滑に行なわれる様にする為には、上記各玉6、6の転
動面と上記各ポケット10、10の内面との間に、適正
量の潤滑剤を存在させる必要がある。この様な事情に鑑
みて、特開平10−68421号公報には、各ポケット
の内面に微細な凹凸を形成した、玉軸受用保持器が記載
されている。上記公報に記載された従来技術の場合に
は、この様な微細な凹凸の存在に基づき、各玉の転動面
と各ポケットの内面との間に油膜を形成し、これら各玉
の転動面とこれら各ポケットの内面との対向部分の全面
に亙り上記油膜を介在させる様にしている。尚、上記微
細な凹凸の大きさとしては、中心線平均粗さで2〜10
μmRa 程度が好ましい事が、上記公報に記載されてい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】各玉の転動面と各ポケ
ットの内面との潤滑のみを考慮した場合には、上述した
公報に記載された従来技術で足りる場合も多いが、玉軸
受の動トルクの低減を図る場合には問題が生じる事があ
る。即ち、内面に微細な凹凸を形成したポケット内に入
り込んだグリース等の潤滑剤は、このポケットの内面と
玉の転動面とのうち、互いに対向している部分のほぼ全
面に行き渡る。言い換えれば、上記ポケットの内面と上
記玉の転動面との間に存在する微小隙間全体をほぼ埋め
つくし、これら両面同士の間に薄い油膜を形成する。こ
の様な薄い油膜部分では、玉の転動時に比較的大きな剪
断抵抗が発生してこの玉の転動に要する力が増大し、上
記動トルクを上昇させる。又、上記各ポケット内に保持
されたグリース等の潤滑剤は、上記玉の転動面に付着し
て内輪軌道及び外輪軌道との転がり接触面に運ばれ、こ
の転がり接触面の潤滑状態を良好にするが、その分、転
がり抵抗を増大させて上記動トルクを上昇させる。
【0007】上述の様な原因で発生する動トルクの増大
は、玉軸受内に封入する潤滑剤の粘度を低くしたり量を
少なくする事で或る程度防止できるが、この様な方法を
採用した場合には、低トルク化を図れる代わりに、ポケ
ットの内面と玉の転動面との間に存在するグリース等の
潤滑剤の油膜強度或は量が不足し易くなる。そして、こ
れら両面同士の摩擦状態が不安定になって、保持器音と
呼ばれる騒音や振動が発生し易くなる他、玉の転動面と
内輪軌道及び外輪軌道との転がり接触部の潤滑状態が悪
化して、これら各転がり接触部で金属同士が油膜を介さ
ずに直接接触し易くなって早期摩耗が発生し、運転時の
騒音や振動が上昇する場合がある。
【0008】一方、近年に於けるHDDの高密度化や省
エネルギ化の要求に対応して、回転非同期振れ(NR
R)をより小さく抑えられる玉軸受に対する要求が高ま
っている。NRRが発生する原因はいくつかあるが、保
持器と玉との係合部に起因する成分(回転非同期振れの
保持器成分=「NRR−fc 」)が大きな割合を占める
事が知られている。このNRR−fc を低減する為に
は、保持器に保持する複数の玉の真円度及び直径相互差
等の精度を向上させると共に、保持器に設けた複数のポ
ケットの内径を各玉の転動面の直径に近くする事が効果
的である。このうちの真円度及び直径相互差等の精度
は、近年の加工技術の向上により、比較的低コストで十
分な精度を得る事が可能になっている。
【0009】一方、上記各ポケットの内径を各玉の転動
面の直径に近くすると、これら各玉の転動面に付着した
潤滑剤が、これら各玉の転動に伴って上記各ポケットの
開口縁部で掻き取られ、これら各ポケットの内面と上記
各玉の転動面との間に存在する潤滑剤が不足し易くな
る。そして、上記保持器音と呼ばれる騒音や振動が発生
し易くなる他、やはり玉の転動面と内輪軌道及び外輪軌
道との転がり接触部の潤滑状態が悪化して、これら各転
がり接触部で金属同士が油膜を介さずに直接接触し易く
なって早期摩耗が発生し、運転時の騒音や振動が上昇す
る場合があり、十分な耐久性を確保する事が難しくな
る。この様な事情で発生する保持器音や耐久性の低下
は、前述した特開平10−68421号公報に記載され
た様な、粗さが2〜10μmRa の微細な凹凸を各ポケ
ットの内面に形成しただけでは十分に低減できない場合
がある。本発明の玉軸受用保持器及び玉軸受は、この様
な事情に鑑みて発明したものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の玉軸受用保持器
及び玉軸受のうち、請求項1に記載した玉軸受用保持器
は、前述の図1〜5に示した従来の保持器と同様、複数
の玉を転動自在に保持すべく、全体を円環状に形成し、
円周方向複数個所にそれぞれが外径側と内径側とに開口
するポケットを設けている。特に、請求項1に記載した
玉軸受用保持器に於いては、上記各ポケットの内面の粗
さを最大高さRy で3μm以上10μm未満とする共
に、凹凸の平均間隔S m を、この最大高さRy の4倍以
上で、且つ、上記玉軸受用保持器の半径方向に関する上
記各ポケットの内面の幅の1/2以下としている。
【0011】又、本発明の玉軸受用保持器及び玉軸受の
うち、請求項2に記載した玉軸受は、前述の図1に示し
た玉軸受と同様、外周面に内輪軌道を形成した内輪と、
内周面に外輪軌道を形成した外輪と、これら内輪の外周
面と外輪の内周面との間に、これら内輪及び外輪に対す
る相対回転自在に配置された玉軸受用保持器と、この玉
軸受用保持器に設けた複数のポケット内にそれぞれ転動
自在に保持された状態で、上記内輪軌道と上記外輪軌道
との間に配置された玉とを備える。特に、請求項2に記
載した玉軸受に於いては、上記玉軸受用保持器が請求項
1に記載した玉軸受用保持器である。
【0012】
【作用】前述の様に構成する本発明の玉軸受用保持器
は、ポケットの内面に形成した凹凸のうちの凹部にグリ
ース等の潤滑剤を保持できる。この様に凹部に保持され
た潤滑剤は、玉の転動面とポケットの内面の間に油膜を
形成してこの玉の円滑な転動を行なわせる。又、この玉
の転動面に付着した潤滑剤は、この転動面と内輪軌道及
び外輪軌道との転がり接触部に送られて、これら各転が
り接触部分の潤滑状態を良好にする。
【0013】尚、上記凹凸の最大高さをRy で10μm
以上にすると、保持器に設けた各ポケットの内面の精度
を十分に確保する事が難しくなって、NRR−fc が大
きく、しかも安定しなくなる。即ち、各ポケットの内面
の凹凸の最大高さをRy で10μm以上にし、しかも高
精度の保持器を、合成樹脂の射出成形により造る事は難
しくなる。これに対して上記凹凸の最大高さをRy で3
μm未満にすると、凹部の深さが不足してこの凹部に溜
まる潤滑剤の量が不足し、上記各ポケットの内面と各玉
の転動面との間に十分な潤滑剤を介在させられなくなっ
て、保持器を組み込んだ玉軸受の音響特性が悪化する。
これらの理由により、上記各ポケットの内面の粗さを、
最大高さRy で3μm以上10μm未満とした。
【0014】又、凹凸の平均間隔Sm に関しては、この
平均間隔Sm を上記最大高さRy の4倍未満とした場合
には、各凸部の先端が先鋭となる。そして、保持器を玉
軸受に組み込んで使用した場合に、これら各凸部の先端
が玉の転動面との押し付け合い及び擦れ合いにより、著
しく押し潰されたり著しく摩耗したりする。この結果、
上記最大高さRy に関して初期の値を維持できなくな
る。これに対して、上記平均間隔Sm を、玉軸受用保持
器の半径方向に関する上記各ポケットの内面の幅の1/
2を越えて大きくした場合には、これら各ポケットの内
面に、上記半径方向に関する両側を凸部により仕切られ
た凹部を、必ずしも形成する事ができなくなる。この結
果、上記各ポケットの内面に潤滑剤を溜める作用が乏し
くなるだけでなく、これら各ポケットの内面形状が不均
一になって玉の保持が不安定になり、回転非同期振れの
保持器成分(NRR−fc )が不安定になる。これらの
理由により、上記凹凸の平均間隔Sm を、上記最大高さ
y の4倍以上で、且つ、上記玉軸受用保持器の半径方
向に関する上記各ポケットの内面の幅の1/2以下とし
た。
【0015】
【実施例】次に、本発明者が本発明を完成する過程で行
ない、同時に本発明の効果を確認した実験に就いて説明
する。第一の実験は、各ポケットの内面の粗さの値が、
回転非同期振れの保持器成分(NRR−fc )に及ぼす
影響を知る為に行なった。実験に使用した玉軸受は、内
径が4mm、外径が10mmのミニアチュア玉軸受である。
この玉軸受に組み込む、合成樹脂を射出成形して成る冠
型保持器のポケットの内面の粗さを、最大高さRy で1
〜21μmの範囲で変化させ、この最大高さRy と上記
NRR−fc との関係を求めた。尚、凹凸の平均間隔S
m は、この最大高さRy の10〜25倍の範囲内で、且
つ、冠型保持器の径方向に関する上記ポケットの内面の
幅(0.5mm)の1/2(0.25mm)以下に納めた。
又、上記玉軸受の運転時には、この玉軸受に7.85N
のアキシアル荷重を付与した状態で、内輪を4200mi
n- 1 で回転させた。雰囲気温度は25℃とした。
【0016】この様な条件で行なった実験の結果を、図
6に示す。この図6は、横軸に最大高さRy を、縦軸に
NRR−fc を、それぞれ表している。この図6から明
らかな通り、保持器のポケット内面の粗さの最大高さR
y が10μm未満の場合には、この保持器を組み込んだ
玉軸受のNRR−fc を低くしかも安定させる事ができ
る。これに対して、上記粗さの最大高さRy が10μm
以上になると、上記NRR−fc が大きくしかも不安定
になる。この事から、上記最大高さRy を10μm未満
とする事が、玉軸受のNRR−fc を低くしかも安定さ
せる為に必要である事が分かる。
【0017】次に、第二の実験は、各ポケットの内面の
粗さの値が、玉軸受の運転を継続した後の振動上昇の程
度に及ぼす影響を知る為に行なった。実験に使用した玉
軸受は、上述した第一の実験の場合と同様に、内径が4
mm、外径が10mmのミニアチュア玉軸受である。この玉
軸受に組み込む、合成樹脂を射出成形して成る冠型保持
器のポケットの内面の粗さを、最大高さRy で1〜21
μmの範囲で変化させ、この最大高さRy と、所定時間
玉軸受の運転を継続した後の振動上昇値との関係を求め
た。尚、本例の場合も、凹凸の平均間隔Sm は、この最
大高さRy の10〜25倍の範囲内で、且つ、冠型保持
器の径方向に関する上記ポケットの内面の幅(0.5m
m)の1/2(0.25mm)以下に納めた。又、上記玉
軸受の運転は、この玉軸受に7.85Nのアキシアル荷
重を付与した状態で、内輪を4200min-1 で1000
時間回転させ、運転開始後1000時間経過した時点で
の振動上昇値を求めた。雰囲気温度は70℃とした。
【0018】この様な条件で行なった実験の結果を、図
7に示す。この図7は、横軸に最大高さRy を、縦軸に
運転開始直後の状態に対する1000時間運転後の振動
上昇の値(振動上昇値)を、それぞれ表している。この
図7から明らかな通り、保持器のポケット内面の粗さの
最大高さRy が3μm以上の場合には、この保持器を組
み込んだ玉軸受の振動上昇値を低くしかも安定させる事
ができる。これに対して、上記粗さの最大高さRy が3
μm未満になると、上記振動上昇値が大きくしかも不安
定になる。尚、この最大高さRy が低い場合に振動上昇
値が大きくしかも不安定になる理由は、ポケット内面の
凹部の深さが不足してこの凹部に溜まる潤滑剤の量が不
足する為である。
【0019】即ち、この潤滑剤の量が不足する為、上記
各ポケットの内面と各玉の転動面との間に十分な潤滑剤
を介在させられなくなり、これら両面同士の摺動部の摩
擦が不安定となって保持器音が発生すると共に、上記各
ポケットの内面と各玉の転動面との摺動部の潤滑状態も
悪化して、これら両面同士が油膜を介さずに直接接触
(金属接触)してこれら両面が著しく摩耗し、上記振動
上昇値が大きくなる。本実験では、上記最大高さRy
3μm未満の場合には、アキシアル方向の振動が急激に
大きくなり、上記最大高さRy が3μm以上の場合に
は、上記振動上昇値はこの最大高さRy の値に拘らずほ
ぼ一定であった。この事から、上記最大高さRy を3μ
m以上とする事が、玉軸受の振動上昇値を低くしかも安
定させる為に必要である事が分かる。
【0020】次に、第三の実験は、最大高さRy に対す
る平均間隔Sm の比(Sm /Ry )が、玉軸受の運転を
継続する前後のポケット内面の粗さの変化の程度に及ぼ
す影響を知る為に行なった。実験に使用した玉軸受は、
前述した第一の実験及び上述した第二の実験の場合と同
様に、内径が4mm、外径が10mmのミニアチュア玉軸受
である。この玉軸受に組み込む、合成樹脂を射出成形し
て成る冠型保持器のポケットの内面の粗さを、最大高さ
y で6〜8μmとし、凹凸の平均間隔Sm を、この最
大高さRy の2〜25倍の範囲内で変化させた。従っ
て、何れの場合も、上記平均間隔Sm は、冠型保持器の
径方向に関する上記ポケットの内面の幅(0.5mm)の
1/2(0.25mm)以下である。又、上記玉軸受の運
転は、この玉軸受に7.85Nのアキシアル荷重を付与
した状態で、内輪を4200min-1で1000時間回転
させた。雰囲気温度は70℃とした。
【0021】この様な条件で行なった実験の結果を、図
8に示す。この図は、横軸に試験前に於ける最大高さR
y に対する平均間隔Sm の比(Sm /Ry )を、縦軸に
試験前後に於ける最大高さRy の比を、それぞれ表して
いる。この図8から明らかな通り、最大高さRy に対す
る平均間隔Sm の比(Sm /Ry )が4倍以上の場合に
は、試験前後に於けるポケット内面の凹凸の性状があま
り変化していないのに対して、上記比が4倍未満(特に
3倍未満)の場合には、凸部の先端が摩耗する結果、試
験後に於ける最大高さRy の値が、試験前の最大高さR
y の値よりもかなり小さくなった。この事から、十分な
耐久性を得る為には、上記の比(Sm /Ry )を4倍以
上にすれば良い事が分かる。尚、上記平均間隔Sm をポ
ケットの内面の幅の1/2以下に抑えるのは、ポケット
の内面に潤滑剤を溜める作用を確保すると共に、回転非
同期振れの保持器成分(NRR−fc )を安定させる為
である。即ち、前述した通り、上記平均間隔Sm をポケ
ットの幅の1/2を越えて大きくした場合には、このポ
ケットの内面に、その両側を凸部により仕切られた凹部
を、必ずしも形成する事ができなくなる。この結果、上
記各ポケットの内面に潤滑剤を溜める作用が乏しくなる
だけでなく、これら各ポケットの内面形状が不均一にな
って玉の保持が不安定になり、回転非同期振れの保持器
成分(NRR−fc )が不安定になる。
【0022】又、上述の様な凹凸をポケットの内面に形
成する方法としては、ショットブラストや、ショットピ
ーニング等により予め加工媒体(金型)に加工を施し、
これを被加工物(保持器)に転写する方法を採用する事
が好ましい。これは、加工媒体を被加工物に転写する条
件(圧力、時間等)を調節する事により、上記最大高さ
y 及び平均間隔Sm を所望の値にする事が容易だから
である。又、この方法により、ポケットの内面に、ばら
つきの少ない安定した凹凸を形成する事ができる。
【0023】
【発明の効果】本発明の玉軸受用保持器及び玉軸受は、
以上に述べた通り構成され作用する為、保持器音等の有
害な騒音や振動の発生を防止し、しかも十分な耐久性を
確保しつつ、玉軸受の動トルクの低減を図れる。この
為、玉軸受を組み込んだ各種回転機器の性能向上や省エ
ネルギ化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の対象となる保持器を組み込んだ玉軸受
の1例を示す断面図。
【図2】本発明の対象となる保持器の1例を示す半部平
面図。
【図3】同じく斜視図。
【図4】図3のA−A断面を、切断部分以外を省略して
示す図。
【図5】図4のB−B断面を、玉を組み込んだ状態で示
す図。
【図6】ポケット内面の粗さの最大高さが保持器と玉と
に起因する回転非同期振れの大きさに及ぼす影響を知る
為に本発明者が行なった実験の結果を示す線図。
【図7】同じく振動上昇値に及ぼす影響を知る為に本発
明者が行なった実験の結果を示す線図。
【図8】ポケットの内面の粗さの凹凸の平均間隔が玉軸
受使用開始後の粗さの最大高さに及ぼす影響を知る為に
本発明者が行なった実験の結果を示す線図。
【符号の説明】
1 玉軸受 2 内輪軌道 3 内輪 4 外輪軌道 5 外輪 6 玉 7 シールド板 8 保持器 9 主部 10 ポケット 11 弾性片 12 凹面部 13 突起 14 凹溝
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 野田 万朶 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 Fターム(参考) 3J101 AA02 AA32 AA42 AA52 AA62 BA25 BA44 DA14 FA01 FA31 GA53

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の玉を転動自在に保持すべく、全体
    を円環状に形成し、円周方向複数個所にそれぞれが外径
    側と内径側とに開口するポケットを設けた玉軸受用保持
    器に於いて、これら各ポケットの内面の粗さを最大高さ
    y で3μm以上10μm未満とする共に、凹凸の平均
    間隔Sm を、この最大高さRy の4倍以上で、且つ、上
    記玉軸受用保持器の半径方向に関する上記各ポケットの
    内面の幅の1/2以下とした事を特徴とする玉軸受用保
    持器。
  2. 【請求項2】 外周面に内輪軌道を形成した内輪と、内
    周面に外輪軌道を形成した外輪と、これら内輪の外周面
    と外輪の内周面との間に、これら内輪及び外輪に対する
    相対回転自在に配置された玉軸受用保持器と、この玉軸
    受用保持器に設けた複数のポケット内にそれぞれ転動自
    在に保持された状態で、上記内輪軌道と上記外輪軌道と
    の間に配置された玉とを備えた玉軸受に於いて、上記玉
    軸受用保持器が請求項1に記載した玉軸受用保持器であ
    る事を特徴とする玉軸受。
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Cited By (1)

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