JP2002338367A - 炭化珪素焼結部品並びにその炭化珪素焼結部品を用いたメカニカルシール及びその製造方法 - Google Patents

炭化珪素焼結部品並びにその炭化珪素焼結部品を用いたメカニカルシール及びその製造方法

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JP2002338367A
JP2002338367A JP2001154397A JP2001154397A JP2002338367A JP 2002338367 A JP2002338367 A JP 2002338367A JP 2001154397 A JP2001154397 A JP 2001154397A JP 2001154397 A JP2001154397 A JP 2001154397A JP 2002338367 A JP2002338367 A JP 2002338367A
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Akira Kani
明 可児
Hiroki Masutani
裕樹 桝谷
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Eagle Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 炭化珪素の結晶粒を均一にして強度と共に、
耐食性を向上させる炭化珪素焼結部品を得ることにあ
る。 【解決手段】 炭化珪素の結晶粒の大きさを0.010
から0.030mmの範囲の結晶組織に形成すると共
に、結晶粒のアスペクト比を小さくして均一化を図るこ
とにある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭化珪素焼結部品
並びにその炭化珪素焼結部品を用いたメカニカルシール
及びその製造方法に関する。更に詳しくは、耐食性に優
れた摺動部品、耐熱部品、耐摩耗部品としての炭化珪素
焼結部品と、その炭化珪素焼結部品の密封環を設けたメ
カニカルシールと、炭化珪素の微細な粉末と大きな粉末
とから造られる結晶粒によって耐食性が得られる炭化珪
素焼結部品の製造方法との技術分野に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】本発明の炭化珪素焼結部品の先行技術と
して、特公平5−69066号公報(対応する米国特許
第5,080,378号明細書も存在する)が存在す
る。この米国特許明細書及び図面には、図5に示すメカ
ニカルシールが開示されている。
【0003】図5はポンプ及び冷凍機などに用いられて
いるメカニカルシール100の半断面図である。図5に
於いて、回転軸130とケーシング140との間にはメ
カニカルシール100が配置されている。そして、この
メカニカルシール100は、ポンプ又は冷凍機などに用
いられて水などの液体をシールするものである。
【0004】メカニカルシール100は、多孔質の炭化
珪素焼結製のシールリング101が回転軸130に嵌合
している。この回転環101には、側面にシール面10
2が設けられている。更に、回転環101における内径
面の段部103に設けられたパッキング120A、12
0Bは、押えリング105により押さえられて回転軸1
30と回転環101との間をシールする。更に、ソケッ
トねじ108により回転軸130に固定された支持リン
グ109は、ばね装置106を支持すると共に、ばね装
置106を介して押さえリング105を弾発に支持して
いる。
【0005】又、シール面102と密接摺動する対向シ
ール面111が設けられた固定リング110は、ケーシ
ング140に於ける回転軸130が貫通する孔に、Oリ
ング115、115を介して、固着されている。この固
定リング110の材質はカーボンである。この様に構成
された従来のメカニカルシール100は、シールリング
101と固定リング110との密接により高圧P1側と
低圧P2側とをシールする。このシールリング101
は、球状をした平均気孔径が0.010から0.040
mmの気孔を結晶組織内に点在させ、その気孔内に潤滑
剤を介在させて摺動特性を改良した炭化珪素焼結体であ
る。
【0006】次に、この先行技術には、炭化珪素焼結体
についての技術も開示されている。この摺動面に有する
気孔は、焼結前にポリスチレンビーズを添加し、仮焼結
時に分解・昇華して気孔を形成するものであるから、結
晶粒内に意図しない気孔が点在する欠点を有し、製造法
に於いてもポリスチレンビーズの変形があるため高圧圧
縮成形が困難であり、成形した寸法に問題が惹起する。
また、焼結によりポリスチレンビーズを分解するもので
あるから、焼結部品の摺動リングとして強度に問題があ
る、
【0007】又、炭化珪素焼結体に設けられた気孔径と
気孔率は、炭化珪素焼結体自身の機能を向上させる特性
に基づく数字から形成されたものではない。この気孔径
0.010〜0.040mmの限定は、0.010mm
の下限が、起動時に於いて気孔内に浸透している潤滑液
が外表面に短時間にはみ出す目安であり、0.040m
mの上限が、貫通気孔による漏洩を無くする範囲から決
められたものであり、更には、相手の摺動密封環がカー
ボンの場合には、弱いカーボンを炭化珪素焼結体の気孔
径により荒削りさせない範囲から決められたものであ
り、その根拠が炭化珪素の配合粉末の大きさや、材質と
はあまり関係しない技術である。従って、摺動部品特有
の炭化珪素の配合割合から生起する機能とか、焼結温度
によってもたらされるとかの技術的根拠から決められた
ものではない。
【0008】又、気孔率についても、油溜まりとしての
作用が生起すると思われる程度の大きさであって、しか
も、連続気孔になっていない独立気孔として存在する範
囲であることが必要であるとして、この数字が決められ
ている。つまり、気孔率が3vol%未満では、油溜ま
りの潤滑効果が見られないとしており、又気孔率が13
%を越えると、強度が大幅な低下を来すと共に、液漏れ
の原因となる連続気孔に形成される可能性が強いとする
ものである。実際に、仮焼き工程中に樹脂粉末を分解消
滅する方法は、気孔の形状を球形にして、しかも、独立
気孔にすることは圧縮成形が伴うので困難である。
【0009】更に、この先行技術の製法に於いても、、
多孔質の炭化珪素としての気孔の形成は、粒子径が0.
020mmのポリスチレンビーズを7重量部又は11重
量部添加し、このポリスチレンビーズにより焼結中に気
孔を形成するものである。このポリスチレンビーズは粒
子径が0.020mmと大きいのに対し、母材の炭化珪
素粒子は0.00045mmと小さく、成形上問題を惹
起する。又、この炭化珪素粉末は全体が微粉末であるか
ら、コスト高になる問題がある。そして、これらの配合
物を添加して混合し、顆粒させて加圧成形し、それを仮
焼結して気孔を形成する方法では、このポリスチレンビ
ーズの粒子径は、大きいから、気孔率を大きくすればす
るほど連続気孔が形成されることになる。更に、この連
続気孔は、連続なるが故に、炭化珪素焼結体の強度を低
下させることにる。
【0010】更に、炭化珪素粉末にこの粉末より大きい
粉末粒子径のポリスチレンビーズを混入するために、粉
末圧縮成形において品質が不安定になる問題が存在し、
更に、ポリスチレンビーズを分解・昇華させるために仮
焼結工程等が増加してコストが増加する問題がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、先行
技術に於いては、炭化珪素焼結体は、気孔に含油させた
潤滑油が摺動時の摩擦熱で容易に滲み出させて油膜を形
成するものである。更に、気孔率は、油溜まりとしての
作用が認められる程度に大きく、連続気孔になっていな
い独立気孔として存在する範囲である。この様に炭化珪
素焼結体を潤滑油と協同させて摺動抵抗の低減や耐摩耗
性を求める方法では、過酷な条件になればなるほど多く
の問題が惹起する。
【0012】更に、炭化珪素焼結体の気孔は、炭化珪素
の粉末にポリスチレンビーズを添加し、それを仮焼結時
に消滅させて形成させるものである。従って、単に気孔
を形成させる手段に過ぎないから、耐酸性、耐熱性、耐
食性、そして、強度向上を期待することは困難である。
特に、高温の過酷な条件に於ける摩擦係数の低減や、耐
食性を従来の技術に期待することは困難である。
【0013】本発明は上述のような問題点に鑑み成され
たものであって、発明が解決しようとする課題は、炭化
珪素焼結部品の耐食性を向上させると共に、摩擦係数を
小さくして耐摩耗性を向上させることにある。同時に、
炭化珪素焼結部品の強度を向上させることにある。更
に、多孔質の炭化珪素焼結部品に構成しても強度が低下
しないようにして耐熱部品、或いは耐酸化性部品、又
は、耐食性部品として利用できるようにすることにあ
る。そして、具体的な用途として、メカニカルシールの
回転用及び固定用密封環として採用できるようにするこ
とにある。更には、その炭化珪素焼結部品の製造方法を
得ることにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、上述のような
技術的課題を解決するために成されたものであって、そ
の解決するための手段は、以下のように構成されてい
る。
【0015】請求項1に係わる本発明の炭化珪素焼結部
品は、炭化珪素結晶粒の平均径が0.010mmから
0.030mmで前記結晶粒のアスペクト比が1から2
の範囲に形成されているものである。
【0016】請求項1に係わる本発明の炭化珪素焼結部
品では、炭化珪素結晶粒の平均径が0.010mmから
0.030mmで前記結晶粒のアスペクト比が1から2
の範囲に形成された結晶組織のものである。このため、
従来の結晶粒径よりも大きい結晶粒径を持つ焼結組織と
して、単位面積あたりの結晶粒の粒界長さが短く構成さ
れる。従って、結晶粒界の腐食が少なく、高温高圧の熱
水又はアンモニア水であっても耐食性を発揮することが
期待できる。更に、結晶粒の粒径に対するアスペクト比
が小さく、更に、焼結組織として結晶の成長過程で粗大
化しないので、強靱性を発揮する
【0017】請求項2に係わる本発明の炭化珪素焼結部
品は、平均粒径が0.0002から0.0008mmの
大きさの炭化珪素微粉末を75から90重量%と、平均
粒径が0.010から0.030mmの大きさの炭化珪
素大粉末を10から25重量%との配合割合で形成され
た炭化珪素結晶粒の平均径が0.010mmから0.0
30mmで前記結晶粒のアスペクト比が1から2の範囲
に形成されているものである。
【0018】請求項2に係わる本発明の炭化珪素焼結部
品では、平均粒径が0.0002から0.0008mm
の大きさの炭化珪素微粉末を75から90重量%と、平
均粒径が0.010から0.030mmの大きさの炭化
珪素大粉末を10から25重量%との配合割合に構成さ
れているので、大粉末の粒子径は、アスペクト比が小さ
く均一に形成されており、又、粒子径が大きいほど比面
積が小さくなるから、これに付着する焼結助剤の量も少
なくなる。このために焼結助剤の濃度も低濃度となり、
焼結の際の拡散が抑制されて結晶粒子の成長が小さく、
成長が粗大化するのを抑制する。
【0019】これに対し、相対に粒子径の小さい炭化珪
素微粉末は、比面積が大きいため、これに付着する焼結
助剤の量も多くなる。このために0.0002から0.
0008mmの炭化珪素微粉末は、付着する焼結助剤の
濃度が高濃度になるので、大粉末に比べて結晶粒が拡散
し成長して平均径が大きくなる。そして、この炭化珪素
の結晶粒の平均径の大きさは、焼結強度を低下させる範
囲ではない。その結果、、極めて過酷な条件、例えば高
温高圧の蒸気雰囲気中でも、強度が低下することもな
く、耐食性を発揮する。
【0020】請求項3に係わる本発明のメカニカルシー
ルは、炭化珪素焼結部品が固定密封環又は回転密封環と
して有するものである。
【0021】請求項3に係わる本発明のメカニカルシー
ルでは、固定用密封環と回転用密封環は強度を有し、摺
動中に摺動面が摩耗や損傷するのを防止する。更に、炭
化珪素大粉末が結晶した結晶間に微粉末の結晶が成長し
て介在することにより、この境界層に気孔が形成されて
も独立しているから被密封流体の透過を防止し、密封環
のシール能力を向上させる。又、高温蒸気雰囲気中で
も、耐腐食性能力を発揮すると共に、摺動面の摩耗を防
止する。
【0022】請求項4に係わる本発明の炭化珪素焼結部
品の製造方法は、平均粒径が0.0002から0.00
08mmの大きさの炭化珪素微粉末を75から90重量
%と、平均粒径が0.010から0.030mmの大き
さの炭化珪素大粉末を10から25重量%とを配合する
と共に、焼結助剤を添加して造粒粉を形成し、この造粒
粉を成形型内で加圧成形し、次いで、この成形体を焼結
するものである。
【0023】請求項4に係わる本発明の炭化珪素焼結部
品の製造方法では、平均粒径が0.0002から0.0
008mmの大きさの炭化珪素微粉末を75から90重
量%と、平均粒径が0.010から0.030mmの大
きさの炭化珪素大粉末を10から25重量%とを配合す
ると共に、焼結助剤を添加して造粒粉を形成し、これを
圧縮成形するので、大きな粉末の間に微粉末が介在して
圧縮成形されると、微粉末が大きな粉末の間に介在して
焼結時に結晶粒に成長し、焼結助剤と共に結合力を高め
る。従って、結合強度を向上させることがでる。特に、
結晶粒界の腐食が防止されて耐食性を発揮する。又、高
温に於いても強度が低下することなく、耐熱性、耐食性
を発揮する。
【0024】又、大きな粉末の間に微粉末が介在するか
ら独立気孔が形成されると共に、強度が向上し、被密封
流体の透過又は潤滑油の透過を防止して密封機能を発揮
する。又、炭化珪素の粉末平均径が大きい程比表面積が
小さくなるから、この大きい炭化珪素粉末に付着する焼
結助剤の量が少なくなり、焼結助剤濃度を低下させるこ
とができる。このために結晶粒度の粗大成長を抑えるこ
とができるので、強度を向上させることが可能となる。
【0025】これに対して、炭化珪素粉末の平均径が小
さい微粉末ほど比表面積が大きくなるから、炭化珪素微
粉末に付着する焼結助剤の量も多くなる。このために焼
結助剤濃度が高濃度となって大粉末に比較して結晶粒度
が成長するから、結合力を促進する効果が期待できる。
【0026】又、従来の製法に於いては、炭化珪素の微
粉末を100重量%使用していたが、この微粉末は約
0.030mm前後の炭化珪素の粉末を粉砕・分級して
製造するためにコストが上昇していた。しかし、粉砕し
ないままの大きい炭化珪素の粉末を添加するために、炭
化珪素の材料を安価にすることが可能になる。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態の炭化
珪素焼結部品並びにそれを用いたメカニカルシール及び
その製造方法について詳述する。
【0028】本発明の炭化珪素焼結部品は、粒子平均径
が0.010から0.030mmの大きさの炭化珪素大
粉末を10から25重量%と、粒子平均径が0.000
2から0.0008mmの大きさの炭化珪素微粉末を7
5から90重量%の配合割合で含有する。そして、この
2種類の炭化珪素粉末を配合して炭化珪素粉末を100
重量部を製造する。
【0029】この炭化珪素粉末100重量部に対し、焼
結助剤として炭化硼素粉末0.2から0.4重量部と、
カーボンブラック粉末0.6から2.0重量部と、アル
ミナ粉末0.5から2重量部とを配合するものである。
更に、結合材として、ポリビニルアルコール1から5重
量部を添加する。
【0030】これらの配合した粉末に水を加えて30か
ら50%濃度、好ましくは40%前後の濃度のスラリー
を造り、ボールミルの中で約10時間撹拌混合した後
に、スプレードライヤにより平均粒径0.070から
0.090mm、好ましくは0.080mm前後の造粒
粉を得る。この造粒粉を成形型に充填して成形プレスに
より110から180MPa、好ましくは120MPa
前後の圧力でプレス成形する。
【0031】この成形体を不活性雰囲気中、例えばアル
ゴンガス(この他、N などが利用される )で約21
00°C前後の温度で約2時間に渡り焼結する。そし
て、アスペクト比2以下、好ましくは1.5前後で、結
晶粒平均径が0.010から0.030mm、好ましく
は0.020mm前後の結晶粒を製造した。この結晶粒
の大きさは、0.002から0.008mmの微粉末が
焼結時に結晶組織として成長させる範囲である。この様
にして得られた炭化珪素焼結部品は、必要に応じて機能
面を研削加工するとか、取付箇所に応じて機械加工する
とかの加工をする。そして、焼結体には、微細な独立気
孔率が形成されている。
【0032】炭化珪素の大粉末と微粉末との混合による
互いの比表面積の相違から、各粉末に付着する結晶助剤
の濃度を大粉末では低濃度になると共に、微粉末では高
濃度になるので、焼結の際に、高濃度に比例して結晶の
成長を促進させる。そして、微粉末の方の結晶が促進さ
れるのに対し、大粉末の結晶は、粗大成長を抑制して最
適な結晶組織に構成する。このため、強度を効果的に強
化する働きをさせる。又、微粉末は、大粉末の間に存在
して焼結の際に結合力を高めて炭化珪素焼結部品として
の高強度を実現する。更に、耐食性、耐熱性、耐摩耗性
も向上する。
【0033】次に、本発明に係わる実施の形態のメカニ
カルシールを図面に基づいて詳述する。図1は、本発明
の炭化珪素焼結部品を固定密封環として取り付けたメカ
ニカルシール1の断面図である。
【0034】図1は、ハウジング60と回転軸80との
間の中空部65に本発明のメカニカルシール1を装着し
た断面図である。図1に於いて、1はメカニカルシール
である。メカニカルシール1のシール部は、固定用相対
密封環50と、回転用密封環3から構成されている。こ
のメカニカルシール1を構成する一方のシール装置2に
は、密封環3が設けられている。尚、密封環3と相対密
封環50は、本発明の炭化珪素焼結部品である。この密
封環3は、カーボン材や耐酸化性の成分を含有する含有
層を有するカーボン材製にすることもできる。この含有
層を有する密封環は、特開平9−87067号公報に記
載された耐酸化性カーボン材等を利用したものである。
【0035】そして、この密封環3を外周ケース12か
ら離脱しないように保持すると共に、シール面6が対抗
シール面51に接面するように保持されている。この密
封環3を案内するT形状の案内支持部13が、密封環3
の外周の対称を成す両側に外周ケース12と一体で図示
左側へ突出する形に設けられている。更に、密封環3を
弾発に押圧する弾発手段15を内装した金属材製の外周
ケース12が、その内周孔を回転軸80に嵌着してい
る。
【0036】密封環3は、環状体を成して内周面が回転
軸80と摺動自在に嵌合し、この嵌合面10にOリング
溝7が設けられており、このOリング溝7に第1Oリン
グ8が装着されて密封環3と回転軸80との嵌合面間を
シールしている。又、密封環3のシール面6は、対向す
る相対密封環50の相対シール面51と摺動可能に密接
して中空部65の流体領域65Aと大気領域65Bとを
シールする。
【0037】更に、密封環3のシール面6側外周には、
フランジ5が形成されている。このフランジ5には、ほ
ぼ対称を成す2カ所の位置に、側面から見て軸方向へ貫
通する溝部9と、溝部9より幅のある段状凹部11とを
組み合わせたT型溝に形成されている。このT型溝を成
す連結係止部4が一対を成すように両側に設けられてい
る。そして、このT形溝の連結係止部4に案内支持部1
3の先端のT形部14が係合するように構成され、密封
環3が弾発手段15により押圧されて移動しても先端部
で両者が係止するものである。この密封環3は、炭化珪
素焼結部品にすることにより金具を取り付けることなく
直接外周ケース12に取り付けることが可能になる。
【0038】これに対し、固定用の相対密封環50に
は、シール面6と密封接触する相対シール面51が設け
られている。そして、この相対密封環50は、ハウジン
グ60の取付孔に第2Oリン55を介して密封するよう
に固着されている。これらの密封環3と相対密封環50
は、粒子平均径が0.010から0.030mmの大き
さの炭化珪素大粉末を10から25重量%と、粒子平均
径が0.0002から0.0008mmの大きさの炭化
珪素微粉末を75から90重量%の配合割合により形成
された0.010から0.030mmの大きさの結晶粒
による結晶組織である。
【0039】この様に構成されたメカニカルシール1
は、高温高圧等の雰囲気中の過酷な条件で摺動しても、
密封面3と相対密封面51との摺動面が強靱で、しか
も、耐摩耗性を発揮する。更に、高温の乾燥摩擦状態に
於いても低摩擦状態を継続することが可能になる。更に
又、高温蒸気雰囲気中においても耐食性を発揮する。
【0040】
【実施例1】以下に本発明の実施例を述べる。平均粒径
が0.0006mmの炭化珪素部微粉末85%と、平均
粒径が0.020mmの炭化珪素大粉末15%を配合し
て炭化珪素100重量部を製造した。この炭化珪素10
0重量部に対し、焼結助剤である炭化硼素粉末0.3重
量部と、アルミナ粉末1.0重量部と、カーボンブラッ
ク粉末1.0重量部を配合した。これに結合材としてポ
リビニルアルコール3.0重量部を添加すると共に、水
を加えて撹拌し、40%濃度のスラリーを製造した。こ
のスラリーをスプレイドライヤを用いて平均粒径が0.
080mmの造粒に形成した。この造粒を成形型に充填
してプレス成形し、粉末成形体に加工した。この成形圧
力は120MPaである。そして、これらの粉末成形体
を温度2000°C前後のアルゴン雰囲気中で2時間か
けて焼結し、炭化珪素焼結部品を製造した。
【0041】この炭化珪素焼結部品の端面を研磨して摺
動面とし、この摺動面を顕微鏡を用いて結晶組織を撮影
したのが図2(A)と図2(B)の写真である。この写
真図2(B)で白い結晶粒イは、0.010から0.0
30mmの大きさである。又、黒色部ロが気孔である。
更に又、黒線部ハは結晶粒界である。尚、図2(A)
は、実物を100倍に拡大した写真である。又、図2
(B)は400倍に拡大した写真である。この測定結果
は、結晶粒径は0.015から0.025mmで、結晶
粒平均径が0.020mmである。又、ビッカース圧子
で炭化珪素焼結部品の圧痕及び亀裂を測定した。そし
て、押し込み加重、圧痕の対角線長さ、亀裂の長さ及び
弾性率から破壊靭性値を求めるIF法により、この炭化
珪素焼結部品の破壊靭性値を測定した結果は3.0MP
am1/2 である。この値は従来のものに対して高い
値である。
【0042】この炭化珪素焼結部品を3×4×37の直
方体に加工し、300°Cで40MPaの30wt%ア
ンモニア水中に100時間浸積させて浸食度試験を実施
した。その結果は、浸食度は0.05%の重量減少であ
る。
【0043】
【比較例1】一方、比較例として、平均粒径0.000
6mmの炭化珪素微粉末100重量部に対し気孔形成用
のポリスチレンビーズを3重量部を混合して実施例と同
様な製造方法で焼結した。この焼結部品は0.002か
ら0.008mmの結晶粒径である。
【0044】この各比較例について、実施例と同一の浸
食度試験をしたところ0.13%の重量減少が生じた。
【0045】
【実施例2】実施例1と同様に加圧成形して得られた粉
末成形体を温度2100°Cのアルゴン雰囲気中で2時
間かけて焼結し、炭化珪素焼結部品を製造した。この炭
化珪素焼結部品の端面を研磨して摺動面とし、この摺動
面を顕微鏡を用いて結晶組織を撮影したのが図3(A)
と図3(B)の写真である。この写真で白い結晶粒イ
は、0.010から0.030mmの大きさである。
又、黒色部ロが気孔である。更に又、黒線部ハは結晶粒
界である。尚、図3(A)は実物を100倍に拡大した
写真である。又、図3(B)は400倍に拡大した写真
である。
【0046】
【実施例3】実施例1と同様に加圧成形して得られた粉
末成形体を温度2150°Cのアルゴン雰囲気中で2時
間かけて焼結し、炭化珪素焼結部品を製造した。この炭
化珪素焼結部品の端面を研磨して摺動面とし、この摺動
面を顕微鏡を用いて結晶組織を撮影したのが図4(A)
と図4(B)の写真である。この写真で白い結晶粒イ
は、0.010から0.030mmの大きさである。
又、黒色部ロが気孔である。更に又、黒線部ハは結晶粒
界である。尚、図4(A)は実物を100倍に拡大した
写真である。又、図4(B)は400倍に拡大した写真
である。
【0047】
【発明の効果】本発明に係わる炭化珪素焼結部品によれ
ば、以下のような効果を奏する。炭化珪素焼結部品の結
晶粒平均径が0.010から0.030mmの大きさで
アスペクト比が2以下になるように焼結されるので、焼
結部品の強度を向上させると共に、耐食性に優れた効果
を奏する。特に、高温高圧蒸気の雰囲気中でも優れた耐
食性を発揮する。
【0048】更に、炭化珪素の大粉末と、微粉末とを圧
縮するので大粉末の介在により、効果的に圧縮成形され
て成形寸法を高めることが期待できる。焼結時に炭化珪
素の微粉末の結晶粒を設定通りの大きさの結晶組織に成
長させるので、アスペクト比を小さくして結晶粒界の長
さを短くし、大粉末の焼結時の結晶と協同して結合力を
高め、炭化珪素焼結部品の強度を向上させる効果を奏す
る。更に、結晶粒界の長さを短くして耐食性向上と共
に、結晶粒界から被密封流体が浸透して漏洩することを
効果的に防止することができる。
【0049】又、メカニカルシール1の密封環に於いて
も、従来品のように炭化珪素粉末に混入した樹脂粉末を
焼結時に消却して気孔を形成するものに比べて、強度の
向上と共に、耐食性と耐摩耗性を向上させる効果を奏す
る。特に、高温に於ける耐食性と共に、耐摩耗性が向上
する。又、高温の乾燥摩擦状態でも、摩擦係数を小さく
押さえてカジリによる損傷や摩耗が防止できる効果を奏
する。このため、炭化珪素焼結部品は、メカニカルシー
ルの密封環として優れた効果を発揮する。
【0050】炭化珪素の混合粉末は、コストの安い大粉
末を添加するから、大粉末の配合により生産コストを低
減出きる効果を奏する。又、大粉末の添加により粉末成
形を容易にし、成形不良を低減する効果が期待できる。
更に、炭化珪素の結晶粒の大きさが設定されるから、焼
結温度の管理が用になり、品質管理を容易にさせる効果
が期待できる。又、焼結気孔形成のための樹脂粉末の添
加やその仮焼結を省略できるので、生産工程が簡素化で
きる。更に、炭化珪素の結晶粒の大きさの設定により機
能設計が容易になる。そして、耐食性に優れた炭化珪素
焼結部品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるメカニカルシールの断面図であ
る。
【図2】図2(A)は本発明に係わる実施例1に於ける
炭化珪素焼結部品の結晶組織の顕微鏡写真、図2(B)
は本発明に係わる実施例1に於ける炭化珪素焼結部品の
結晶組織を更に拡大した顕微鏡写真である。
【図3】図3(A)は本発明に係わる実施例2に於ける
炭化珪素焼結部品の結晶組織の顕微鏡写真、図3(B)
は本発明に係わる実施例2に於ける炭化珪素焼結部品の
結晶組織を更に拡大した顕微鏡写真である。
【図4】図4(A)は本発明に係わる実施例3に於ける
炭化珪素焼結部品の結晶組織の顕微鏡写真、図4(B)
は本発明に係わる実施例3に於ける炭化珪素焼結部品の
結晶組織を更に拡大した顕微鏡写真である。
【図5】従来のメカニカルシールの断面図である。
【符号の説明】
1 メカニカルシール 2 シール装置 3 密封環 4 連結係止部 5 フランジ 6 シール面 7 Oリング溝 8 第1Oリング 9 溝部 10 嵌合面 11 段状凹部 12 外周ケース 13 案内支持部 14 T型部 15 弾発手段 50 相対密封環 51 対向シール面 55 第2Oリング
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3J041 AA01 BA04 BB01 BC02 DA14 4G001 BA03 BA22 BA60 BB03 BB22 BB60 BC13 BC23 BC52 BC54 BD11 BD13 BD37 BE22 BE23

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭化珪素結晶粒の平均径が0.010m
    mから0.030mmで前記結晶粒のアスペクト比が1
    から2の範囲に形成されていることを特徴とする炭化珪
    素焼結部品。
  2. 【請求項2】 平均粒径が0.0002から0.000
    8mmの大きさの炭化珪素微粉末を75から90重量%
    と、平均粒径が0.010から0.030mmの大きさ
    の炭化珪素大粉末を10から25重量%との配合割合か
    ら形成される炭化珪素結晶粒の平均径が0.010mm
    から0.030mmで前記結晶粒のアスペクト比が1か
    ら2の範囲に形成されていることを特徴とする炭化珪素
    焼結部品。
  3. 【請求項3】 前記炭化珪素焼結部品が固定密封環又は
    回転密封環として有することを特徴とするメカニカルシ
    ール。
  4. 【請求項4】 平均粒径が0.0002から0.000
    8mmの大きさの炭化珪素微粉末を75から90重量%
    と、平均粒径が0.010から0.030mmの大きさ
    の炭化珪素大粉末を10から25重量%とを配合すると
    共に焼結助剤を添加して造粒粉を形成し、この造粒粉を
    成形型内で加圧成形し、次いで、この成形体を焼結する
    ことを特徴とする炭化珪素焼結部品の製造方法。
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