JP4417584B2 - メカニカルシール及びそのメカニカルシール用の炭化珪素焼結密封環の製造方法 - Google Patents

メカニカルシール及びそのメカニカルシール用の炭化珪素焼結密封環の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化珪素焼結部品並びにその部品を用いるメカニカルシール及びその製造方法に係わるものである。更に詳しくは、摩擦抵抗の小さい摺動部品、耐食部品、耐摩耗部品と成る炭化珪素焼結部品と、その炭化珪素焼結部品の密封環を設けたメカニカルシールと、炭化珪素の微粉末と大粉末と黒鉛とを配合して造られた炭化珪素の結晶粒界の間に黒鉛が介在する結晶組織であって、耐食性と低摩擦とを発揮する炭化珪素焼結部品の製造方法の技術分野に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本発明の炭化珪素焼結部品の先行技術として、特公平5−69066号公報(対応する米国特許第5,080,378号明細書も存在する)が存在する。この特公平5−69066号公報の図面には、図に示すメカニカルシールが開示されている。
【0003】
はポンプ及び冷凍機などに用いられているメカニカルシール100の片側断面図である。
に於いて、回転軸130とケーシング140との間にはメカニカルシール100が配置されている。そして、このメカニカルシール100は、ポンプ又は冷凍機などに用いられて水などの液体をシールするものである。
【0004】
メカニカルシール100は、多孔質炭化珪素焼結製のシールリング101が回転軸130に嵌合している。この回転環101には、側面にシール面102が設けられている。更に、回転環101における内径面の段部103には、回転軸130との間をシールするためにパッキング120A、120Bが設けられている。 このパッキング120A、120Bは、押えリング105により押さえられて回転軸130と回転環101との間をシールする。更に、ソケットねじ108により回転軸130に固定された支持リング109は、ばね装置106を支持すると共に、ばね装置106を介して押さえリング105を弾発に支持している。
【0005】
又、シール面102と密接摺動する対向シール面111が、固定リング110に設けられている。この固定リング110は、ケーシング140に於ける回転軸130が貫通する孔に、Oリング115、115を介して、固着されている。
この固定リング110の材質はカーボンである。
この様に構成された従来のメカニカルシール100は、シールリング101と固定リング110との密接により高圧P1側と低圧P2側とをシールする。
このシールリング101は、球状をした平均気孔径が0.010から0.040mmの気孔が結晶組織内に点在して摺動特性を改良した炭化珪素焼結体である。
【0006】
次に、この先行技術には、炭化珪素焼結体についての技術も開示されている。この摺動面に有する気孔は、焼結前にポリスチレンビーズを添加し、仮焼結時に分解・昇華して気孔を形成するものであるから、結晶粒内に気孔が点在する欠点を有し、又、焼結によりポリスチレンビーズを分解するものであるから、焼結部品の摺動リングとして強度に問題がある、
【0007】
この先行技術に開示されている気孔径と気孔率は、炭化珪素焼結体自身の機能を向上させる特性に基づく数字から形成されたものではない。この気孔径0.010〜0.040mmの限定は、0.010mmの下限が、起動時に於いて気孔内に浸透している潤滑液が外表面に短時間にはみ出す目安であり、0.040mmの上限が、貫通気孔による漏洩を無くする範囲から決められたものであり、更には、相手の摺動密封環がカーボンの場合には、弱いカーボンを炭化珪素焼結体の気孔径により荒削りさせない範囲から決められたものであり、その根拠が炭化珪素の配合粉末の大きさや、材質とはあまり関係しない技術である。
従って、摺動部品特有の炭化珪素の配合割合から生起する機能とか、焼結温度によってもたらされるとかの技術的根拠から決められたものではなく、潤滑油の点から決められた技術である。
【0008】
又、気孔率についても、油溜まりとしての作用が生起すると思われる程度の大きさであって、しかも、連続気孔になっていない独立気孔として存在する範囲であることが必要であるとして、この数字が決められている。つまり、気孔率が3vol%未満では、油溜まりの潤滑効果が見られないとしており、又、気孔率が13%を越えると強度の大幅な低下を来すと共に、液漏れの原因となる連続気孔に形成される可能性が強いとするものである。実際に、仮焼き工程中に樹脂粉末を分解消滅する方法は、気孔の形状を球形にして、しかも、独立気孔にすることは圧縮成形が伴うので困難である。
【0009】
更に、この先行技術の製法に於いても、、多孔質炭化珪素としての気孔の形成は、粒子径が0.020mm前後のポリスチレンビーズを添加し、このポリスチレンビーズにより焼結中に気孔を形成するものである。このポリスチレンビーズは粒子径が0.020mmと大きいのに対し、母材の炭化珪素粒子は0.00045mmと小さく、成形上問題を惹起する。又、この炭化珪素粉末は全体が微粉末であるから、コスト高になる問題がある。
更には、この様にして形成される気孔の存在は、炭化珪素焼結体の強度を低下させることにる。
更に、炭化珪素粉末にこの粉末より大きい粉末粒子径のポリスチレンビーズを混入するために、粉末圧縮成形において品質が不安定になる問題が存在し、更に、ポリスチレンビーズを分解・昇華させるために仮焼結工程等が増加してコストが増加する問題がある。
【0010】
更に、他の先行技術として、例えば、特開昭59−102872号公報が存在する。この炭化珪素・黒鉛複合焼結体は、0.0008mm以下の微細な炭化珪素粉末に、微細なカーボン粉末を配合して焼結するものである。この炭化珪素粉末の大きさは従来技術と何ら相違しない微粉末である。又、カーボンブラックは焼結助剤として配合される粉末径の大きさであり、その作用効果も従来知られている範囲である。従来と相違する点は配合量であるから、このカーボンブラックの添加は、潤滑作用を発揮させるものである。ただ、炭化珪素の結晶を改善せずにカーボンブラックにより潤滑効果を発揮させようとすると界面からの破壊の問題が惹起する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、先行技術の炭化珪素焼結体は、摺動時の摩擦を気孔に含油させた潤滑油が摺動時の摩擦熱で容易に滲み出させて低減するものである。又、黒鉛を結晶粒界の間に介在させるのみでは破壊や腐食の問題が解決しない。このため、摺動面における過酷な挙動状態では、多くの問題が惹起する。例えば、摺動面の摩擦熱により発生する熱応力により疲労破壊の問題、更に、摺動面の摩擦熱による潤滑油の爆裂反応による破損の問題、更に又、摺動面の高温に伴う腐食の問題等が惹起する。
【0012】
更に、炭化珪素焼結自体の機能に於いても、炭化珪素焼結部品の気孔を炭化珪素の粉末にポリスチレンビーズを添加し、仮焼結時に消滅させて形成させるものにあっては、潤滑油を保持するために、単に気孔を形成させる手段に過ぎないから、外部、使用環境条件による耐酸性、耐熱性、耐食性、そして、強度向上を期待することは困難である。特に、高温の過酷な条件に於ける摩擦係数の低減や、耐食性を従来の技術に期待することは困難である。
【0013】
本発明は上述のような問題点に鑑み成されたものであって、発明が解決しようとする課題は、炭化珪素焼結密封環の耐食性を向上させると共に、摩擦係数を低減して耐摩耗性を向上させることにある。同時に、炭化珪素焼結密封環の強度を向上させることにある。
更に、多孔質の炭化珪素焼結密封環に構成しても強度が低下しないようにして耐熱、或いは耐酸化性、又は、耐食性を発揮できるようにすることにある。そして、具体的な用途として、メカニカルシールの回転用及び固定用密封環として採用できるようにすることにある。
更には、そのメカニカルシール用の炭化珪素焼結密封環の製造方法を得ることにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述のような技術的課題を解決するために成されたものであって、その解決するための手段は、以下のように構成されている。
【0015】
請求項1に係わる本発明のメカニカルシールは、平均粒径が0.0003から0.0009mmの大きさの炭化珪素微粉末を80から95重量%と、平均粒径が0.010から0.030mmの大きさの炭化珪素大粉末を5から20重量%との配合割合から形成される炭化珪素結晶粒の平均径が0.010mmから0.030mmの結晶粒界の間に結晶粒平均径が0.005から0.050mmの大きさの黒鉛を面積比で2から15%含有する炭化珪素焼結体から成るシール面を設けた密封環を有するものである。
【0018】
請求項に係わる本発明のメカニカルシールでは、炭化珪素焼結密封環は、平均粒径が0.0003から0.0009mmの大きさの炭化珪素微粉末が80から95重量%に対し、平均粒径が0.010から0.030mmの大きさの炭化珪素大粉末が5から20重量%の配合割合に構成されている。このため、大粉末の粒子径は、粉砕工程が少ないためにほぼ均一に形成される。更に、粒子径が大きいほど比面積が小さくなるから、これに付着する焼結助剤の量も少なくなる。その結果、大粉末に付着する焼結助剤の濃度も低濃度となり、焼結の際の拡散が抑制されて結晶粒子の成長が粗大化することもないので強靱さを発揮する。
【0019】
これに対し、相対に粒子径の小さい炭化珪素微粉末は、比面積が大きいため、これに付着する焼結助剤の量も多くなる。このために0.0003から0.0009mmの炭化珪素微粉末は、付着する焼結助剤の濃度が高濃度になるので、大粉末に比べて結晶粒が拡散し成長する。このため結晶組織により耐食性を発揮する。しかし、黒鉛は微粉末と混合しているから結晶粒が粗大化するのは、黒鉛により適度に抑制される。
【0020】
本発明のメカニカルシール密封環は、この炭化珪素の二つの粒径の組合せからなる結晶組織により耐食性を発揮する。
一方、第3の粉末として黒鉛が炭化珪素結晶粒界の間に介在するので、結晶粒界の谷間に沿って黒鉛が微細で均一に結晶として結合する。炭化珪素大粉末が結晶した結晶間に微粉末の結晶が成長して介在し、同時に、この結晶粒界に微細な黒鉛層として介在する黒鉛が密封環摺動面の摺動抵抗を低減し、潤滑効果を長期に渡り発揮する。
又、炭化珪素の焼結組織は黒鉛を保護しながら、黒鉛により摺動抵抗を低減するように作用し、且つ、高温蒸気雰囲気中でも、耐腐食性能力を発揮すると共に、摺動面の摩耗を防止する。
【0023】
請求項に係わる本発明のメカニカルシール用の炭化珪素焼結密封環の製造方法は、平均粒径が0.0003から0.0009mmの大きさの炭化珪素微粉末を80から95重量%と、平均粒径が0.010から0.030mmの大きさの炭化珪素大粉末を5から20重量%とを配合した炭化珪素粉末100重量部に対し黒鉛2から15重量部を混合すると共に焼結助剤を添加して造粒粉を形成し、この造粒粉を成形型内で加圧成形し、次いで、この成形体を不活性ガス雰囲気中で焼結することにより前記成形体の結晶平均粒径が0.01から0.030mmの大きさに形成されているものである。
【0024】
請求項に係わる本発明のメカニカルシール用の炭化珪素焼結密封環の製造方法では、平均粒径が0.0003から0.0009mmの大きさの炭化珪素微粉末を80から95重量%と、平均粒径が0.010から0.030mmの大きさの炭化珪素大粉末を5から20重量%とを配合すると共に、焼結助剤を添加して造粒粉を形成し、これを圧縮成形するので、大きな粉末の間に微粉末が介在して圧縮成形されると、微粉末が大きな粉末の間に介在して焼結時に結晶粒に成長し、焼結助剤と共に結合力を高める。従って、結合強度を向上させることがでる。特に、結晶粒界の腐食が防止されて耐食性を発揮する。又、高温に於いても強度が低下することなく、耐熱性、耐食性を発揮する。
【0025】
又、炭化珪素の結晶粒界の間に黒鉛が均一に介在するから長期に渡り摺動抵抗を低減することが可能になる。
又、炭化珪素の粉末平均径が大きい程比表面積が小さくなるから、この大きい炭化珪素粉末に付着する焼結助剤の量が少なくなり、焼結助剤濃度を低下させることができる。このために結晶粒度の粗大成長を抑えることができるので、強度を維持することができる。
【0026】
これに対して、炭化珪素粉末の平均径が小さい微粉末ほど比表面積が大きくなるから、炭化珪素微粉末に付着する焼結助剤の量も多くなる。このために焼結助剤濃度が高濃度となって大粉末に比較して結晶粒度が成長するが、黒鉛がこの成長を適度に抑制し、結晶粒の結合力と強度とを促進する効果が期待できる。
【0027】
又、従来の製法に於いては、炭化珪素の微粉末を100%使用していたが、この微粉末は約0.030mm前後の炭化珪素の粉末を粉砕・分級して製造するためにコストが上昇していた。しかし、粉砕しないままの大きい炭化珪素の粉末を添加するために、その分工程が少なくなり、炭化珪素の材料を安価にすることが可能になる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の炭化珪素焼結密封環を用いたメカニカルシール及びそのメカニカルシール用の炭化珪素焼結密封環の製造方法について詳述する。
【0029】
本発明の炭化珪素焼結部品は、粒子平均径が0.010から0.030mmの大きさの炭化珪素大粉末を5から20重量%と、粒子平均径が0.0003から0.0009mmの大きさの炭化珪素微粉末を80から95重量%の配合割合で含有する。そして、この2種類の炭化珪素粉末を配合して炭化珪素粉末を100重量部を製造する。
【0030】
この炭化珪素粉末100重量部に対し、粒径が0.010から0.040mmの黒鉛、例えば、鱗状黒鉛を3から10重量部添加する。更に、焼結助剤として炭化硼素粉末0.2から0.4重量部と、カーボンブラック粉末0.6から2.0重量部と、アルミナ粉末0.5から2重量部とを配合するものである。
更に、結合材として、ポリビニルアルコール1から5重量部を添加する。
【0031】
これらの配合した粉末に水を加えて30から50%濃度、好ましくは40%前後の濃度のスラリーを造り、ボールミルの中で約10時間撹拌混合した後に、スプレードライヤにより平均粒径0.070から0.090mm、好ましくは0.080mm前後の造粒粉を得る。この造粒粉を成形型に充填して成形プレスにより110から180MPa、好ましくは120MPa前後の圧力でプレス成形する。
【0032】
この成形体を不活性雰囲気中、例えばアルゴンガス(この他、N2 などが利用される )で約2100°Cの温度で約2時間に渡り焼結する。この結晶組織は、炭化珪素の結晶粒径の大きさが、0.010から0.020mmとなると共に、黒鉛の面積比率は2から15%、好ましくは8%前後になる
この様にして得られた炭化珪素焼結密封環は、必要に応じて機能面(シール面)を研削加工される。又は、取付部は取付箇所に応じた形に機械加工される。そして、焼結体の炭化珪素の結晶粒界の間には、微細な黒鉛が粒界にそって全面に渡り均一に分布形成されている。
【0033】
炭化珪素の大粉末と微粉末との混合による互いの比表面積の相違から、各粉末に付着する結晶助剤の濃度を大粉末では低濃度になると共に、微粉末では高濃度になるので、焼結の際に、高濃度に比例して結晶の成長を促進させるので、微粉末の方の結晶が促進される。これに対して大粉末の結晶は、粗大成長を抑制して最適な結晶組織に構成する。そして、黒鉛が微少粉末の成長を適度に抑制する働きもする。その結果、結晶組織の強度を効果的に強化する働きをする。このため、耐食性、耐熱性、更に、摩擦係数を小さくして耐摩耗性を向上させる。
【0034】
次に、本発明に係わる実施の形態のメカニカルシール1を図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明の炭化珪素焼結部品を密封環として取り付けたメカニカルシール1の断面図である。
【0035】
図1は、ハウジング60と回転軸80との間の中空部65に本発明のメカニカルシール1を装着した断面図である。
図1に於いて、1はメカニカルシールである。メカニカルシール1のシール部は、固定用相対密封環50と、回転用密封環3から構成されている。このメカニカルシール1を構成する一方のシール装置2には、密封環3が設けられている。尚、この密封環3と相対密封環50は、共に本発明の炭化珪素焼結部品を取り付けたものである。又、この密封環の一方を必要に応じて、カーボン材製や、耐酸化性の成分を含有する含有層を設けたカーボン材製にすることもできる。この含有層を有する密封環は、特開平9−87067号公報に記載された耐酸化性カーボン材等を利用したものである。
【0036】
そして、この密封環3を外周ケース12から離脱しないように保持すると共に、シール面6が相対シール面51に接面するように保持されている。この密封環3を案内するT形状の案内支持部13は、密封環3の外周の対称を成す両側に外周ケース12と一体で図示左側へ突出する形に設けられている。更に、密封環3を弾発に押圧する弾発手段15を内装した金属材製の外周ケース12が、回転軸80に嵌着状態に取り付けられている。
【0037】
密封環3は、内周面が回転軸80と摺動自在に嵌通する嵌合面10に形成されている。この嵌合面10のOリング溝7に第1Oリング8が装着されて密封環3と回転軸80との嵌合面間をシールしている。又、密封環3のシール面6は、対向する相対密封環50の相対シール面51と摺動可能に密接して中空部65の流体領域65Aと大気領域65Bとをシールする。
【0038】
更に、密封環3のシール面6側外周には、フランジ5が形成されている。このフランジ5には、ほぼ対称を成す2カ所の位置に、側面から見て軸方向へ貫通する溝部9と溝部9より幅のある段状凹部11との組み合わせによるT型溝に形成された連結係止部4が一対を成すように設けられている。
そして、このT形溝の連結係止部4に案内支持部13の先端のT形部14が係合し、密封環3が弾発手段15により押圧されて移動しても先端部で両者が係止するものである。この密封環3は強度があるためにこのようにして直接外周ケース12に取り付けることが出来る。
【0039】
これに対し、固定用の相対密封環50に設けられた相対シール面51が対向するシール面6と密封接触する。そして、この相対密封環50は、ハウジング60取付孔に第2Oリン55を介して密封するように固着されている。
この密封環3と相対密封環50は、結晶粒平均径が0.010から0.030mmの大きさに形成されてその結晶組織の結晶粒界の間に沿って黒鉛の結晶が均一に分配結合している。そして、炭化珪素の大きな結晶粒により耐摩耗性を発揮すると共に、結晶粒界の緻密な結合により耐食性の効果を奏し、結晶粒界に沿って介在する黒鉛により摺動抵抗を低減する。
【0040】
この様に構成されたメカニカルシール1は、高温高圧等の雰囲気中の過酷な状態で摺動しても、密封面3と相対密封面51との摺動面が黒鉛により摩擦抵抗を低減し、耐摩耗性を発揮する。更に、高温の乾燥摩擦状態に於いても低摩擦状態を継続することが可能になる。更に又、高温蒸気雰囲気中においても耐食性を発揮する。
【0041】
【実施例1】
以下に本発明の実施例を述べる。
平均粒径が0.0006mmの炭化珪素微粉末90%と、平均粒径が0.015mmの炭化珪素大粉末10%を配合して炭化珪素100重量部を製造した。この炭化珪素100重量部に対し、0.010から0.040mmの大きさの天然黒鉛の1種のである鱗状黒鉛を5部を添加して混練し、焼結助剤である炭化硼素粉末0.3重量部と、アルミナ粉末1.0重量部と、カーボンブラック粉末1.0重量部を配合した。これに結合材としてポリビニルアルコール3.0重量部を添加すると共に、水を加えて撹拌し、40%濃度のスラリーを製造した。このスラリーをスプレイドライヤを用いて平均粒径が0.080mmの造粒に形成した。この造粒を成形型に充填してプレス成形し、粉末成形体に加工した。この成形圧力は120MPaである。そして、これらの粉末成形体を温度2100°Cのアルゴン雰囲気中で2時間かけて焼結し、炭化珪素焼結部品を製造した。
【0042】
この炭化珪素焼結部品の測定結果は、炭化珪素の結晶粒径が0.010から0.020mmである。又、炭化珪素の結晶組織の結晶粒界間に介在する黒鉛の結晶層は全体の面積比で8%前後である。又、ビッカース圧子で炭化珪素焼結部品の圧痕及び亀裂を測定した。そして、押し込み加重、圧痕の対角線長さ、亀裂の長さ及び弾性率から破壊靭性値を求めるIF法により、この炭化珪素焼結部品の破壊靭性値を測定した結果は3.0MPam1/2 である。この値は従来のものに対して高い値である。
【0043】
この炭化珪素焼結部品を3×4×37の直方体に加工し、300°Cで40MPaの30wt%アンモニア水中に100時間浸積させて浸食度試験を実施した。
その結果は、浸食度は0.05%の重量減少である。
【0044】
【比較例1】
一方、比較例として、平均粒径0.0006mmの炭化珪素微粉末100重量部に対し気孔形成用のポリスチレンビーズを3重量部を混合して実施例と同様な製造方法で焼結した。この焼結部品は0.002から0.008mmの結晶粒径である。
【0045】
この比較例1について、実施例1と同一の浸食度試験をしたところ0.13%の重量減少が生じた。
【0046】
【実施例2】
次に、炭化珪素焼結部品を固定密封環と回転密封環に加工し、図2に示す摩擦摩耗試験器に取り付けて、以下の条件で試験を実施した。
1)被密封流体は、 :水
2)摺動面の周速度は、 :7.8m/s
3)摺動した時間は、 :100時間
4)被密封流体の温度は、 :90°C
5)被密封流体の圧力は、 :0.7MPa
6)試験結果。
(a)平均した摩擦係数は、 :0.04
(b)固定用摺動部品の摩耗量は、 :0.0002mm
(c)回転用摺動部品の摩耗量は、 :0.0002mm
【0047】
この図2は、以上の試験に利用した摩擦摩耗試験機の断面図である。図2に於いて、20は、摩擦摩耗試験機である。摩擦摩耗試験機20は試験用の高温水が入れられた液槽25が設けられており、液槽25の上部に回転軸22が設けられていると共に、下部に保持部23が設けられている。そして、回転軸22に炭化珪素焼結部品である回転用摺動部品21Aを取り付けると共に、回転用摺動部品21Aに対向する位置の保持部23に炭化珪素焼結部品の固定用摺動部品21Bが取り付けられている。尚、回転軸22側に取り付けられた回転用摺動部品21Aが実施例のテスト用摺動部品である。
液槽25内には熱電対26が設けられている。又、固定用摺動部品21B側の保持部23には、ロードセル27とカンチレバ28が設けられている。そして、24は軸受である。
【0048】
【比較例2】
結晶粒径が0.010から0.020mmのもので、気孔径が0.003mm、気孔率が1.2容量%の焼結部品を固定用摺動部品と回転用摺動部品に加工し、上述と同様に図2の摩擦摩耗試験機を用いて実験をした。
その結果は、
1)摩擦係数は、 :0.08
2)固定用摺動部品の摩耗量 :0.0004mm
3)回転用摺動部品の摩耗量 :0.0004mm
【0049】
【発明の効果】
本発明に係わる炭化珪素焼結部品によれば、以下のような効果を奏する。
二種類の炭化珪素粉末が結晶組織となった炭化珪素焼結部品の結晶粒平均径が0.010から0.030mmの大きさに形成されるので、焼結部品の強度を向上させると共に、耐食性に優れた効果を奏する。特に、高温高圧蒸気の雰囲気中でも優れた耐食性を発揮する。
【0050】
更に、炭化珪素の大粉末と、微粉末とを圧縮するので大粉末の介在により、効果的に圧縮成形されて成形寸法を高めることが期待できる。焼結時に炭化珪素の微粉末の結晶粒を設定通りの大きさの結晶組織に成長させるので、大粉末の焼結時の結晶と協同して結合力を高め、炭化珪素焼結部品の強度を向上させる効果を奏する。そして、結晶粒界環には黒鉛が均等にして微細に介在した組織になるので、強度を阻害することなく潤滑能力を付与する効果が期待できる。
【0051】
又、メカニカルシールの密封環に於いても、従来品のように炭化珪素粉末に混入した樹脂粉末を焼結時に焼却して気孔を形成するものに比べて、強度の向上と共に、耐食性と耐摩耗性を向上させる効果を奏する。特に、摺動摩擦熱の発生状態、又は、高温高圧環境状態に於ても耐食性と共に、耐摩耗性が向上する。又、高温の乾燥摩擦状態でも、摩擦係数を小さく押さえてカジリによる損傷や摩耗が防止できる効果を奏する。このため、炭化珪素焼結部品は、メカニカルシールの密封環として優れた効果を発揮する。更に、乾燥摩擦状態に於いてもメカ鳴きを効果的に防止する。
【0052】
又、製造方法に於いても、炭化珪素の混合粉末は、コストの安い大粉末を添加するから、大粉末の配合により生産コストを低減できる効果を奏する。又、大粉末の添加により粉末成形を容易にし、成形不良を低減する効果が期待できる。更に、炭化珪素の結晶粒の大きさが設定されるから、焼結温度の管理が容易になり、品質管理を容易にさせる効果が期待できる。又、焼結気孔形成のための樹脂粉末の添加やその仮焼結を省略できるので、生産工程が簡素化できる。更に、炭化珪素の結晶粒の大きさの設定により機能設計が容易になる。そして、炭化珪素の大粉末と微粉末との配合により設定された結晶組織にすることにより、耐摩耗性、耐食性を発揮する効果を奏すると共に、摩擦抵抗を低減する効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるメカニカルシールの断面図である。
【図2】本発明に係わる炭化珪素焼結部品を試験した摩擦摩耗試験機の断面図である。
【図3】従来のメカニカルシールの断面図である。
【符号の説明】
1 メカニカルシール
2 シール装置
3 密封環
4 連結係止部
5 フランジ
6 シール面
7 Oリング溝
8 第1Oリング
9 溝部
10 嵌合面
11 段状凹部
12 外周ケース
13 案内支持部
14 T型部
15 弾発手段
50 相対密封環
51 相対シール面
55 第2Oリング

Claims (2)

  1. 平均粒径が0.0003から0.0009mmの大きさの炭化珪素微粉末を80から95重量%と、平均粒径が0.010から0.030mmの大きさの炭化珪素大粉末を5から20重量%との配合割合から形成される炭化珪素結晶粒の平均径が0.010mmから0.030mmの結晶粒界の間に結晶粒平均径が0.005から0.050mmの大きさの黒鉛を面積比で2から15%含有する炭化珪素焼結体から成るシール面を設けた密封環を有することを特徴とするメカニカルシール。
  2. 平均粒径が0.0003から0.0009mmの大きさの炭化珪素微粉末を80から95重量%と、平均粒径が0.010から0.030mmの大きさの炭化珪素大粉末を5から20重量%とを配合した炭化珪素粉末100重量部に対し黒鉛2から15重量部を混合すると共に焼結助剤を添加して造粒粉を形成し、この造粒粉を成形型内で加圧成形し、次いで、この成形体を不活性ガス雰囲気中で焼結することにより前記成形体の炭化珪素結晶の平均粒径が0.01から0.030mmの大きさに形成されていることを特徴とするメカニカルシール用の炭化珪素焼結密封環の製造方法。
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