JP2002328118A - 光音響ガスセンサ用ガス拡散フィルタの製造方法 - Google Patents

光音響ガスセンサ用ガス拡散フィルタの製造方法

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隆 木原
Hisatoshi Fujiwara
久利 藤原
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 フィルタ特性の安定したガス拡散フィルタを
簡易に、しかも制御性良く量産することのできる製造方
法を提供する。 【解決手段】 光音響ガスセンサのキャビティを形成す
るSiチップ11におけるガス通流路14の形成部位を
陽極酸化してポーラスシリコン層13を形成し、このポ
ーラスシリコン層をガス通流路内に一体に形成したガス
拡散フィルタとする。更にポーラスシリコン層を選択的
にエッチング除去し、残されたポーラスシリコン層をガ
ス拡散フィルタとする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光音響ガスセンサ
に組み込まれるガス拡散フィルタを、該光音響ガスセン
サのキャビティを形成するSi基板に一体に、しかも簡
易に設けることのできる光音響ガスセンサ用ガス拡散フ
ィルタの製造方法に関する。
【0002】
【関連する背景技術】光音響ガスセンサは、特定種類の
ガスが特定波長の赤外線を吸収して熱膨張すると言う現
象を利用して、空気等の混合ガス中の特定種類のガス、
例えばCO2の濃度を検出するものである。即ち、特定
波長を有し、経時的に強さが変化する赤外線を空気に照
射すると、空気中に存在するCO2濃度が高い程、大き
な熱膨張・熱収縮が発生する。従ってこの現象を気圧
(音圧)の変化として検出すれば、これによって空気中
のCO2濃度を検出することが可能となる。ちなみにこ
の種の光音響ガスセンサは、基本的には図3に示すよう
にガスが導入されるキャビティ1と、このキャビティ1
内に赤外線を断続的にパルス照射する光源2と、前記キ
ャビティ1の壁面の一部(天井面)をなしてキャビティ
1内の音圧に感応するマイクロホン3とを備えて構成さ
れる。
【0003】ところで最近、この種の光音響ガスセンサ
を、半導体デバイス製造技術を応用して小型化すること
が試みられている。この場合、前記キャビティ1は、赤
外光に対して透明なSi基板をエッチング加工して所定
の空間部を形成し、更にキャビティ1内にガスを導入す
るガス通流路4を設けた構造として製作される。そして
このガス通流路4には、通常、ガス拡散フィルタ5が設
けられる。このガス拡散フィルタ5は、微細な通気孔を
多数有するもので、ガスの通流を制限することでキャビ
ティ1内とその外部との間でのガス(空気)の通流(置
換)を維持しながら、前述した赤外光の吸収によるガス
の熱膨張に応じて、前記キャビティ1内の音圧を変化さ
せる役割を担う。
【0004】即ち、このガス拡散フィルタ5は、次の2
つの役割を担う。その1つは、赤外線のパルス照射によ
りキャビティ1内に発生する急激な圧力変化(音圧)に
対して大きな気流抵抗体として作用し、キャビティ1内
を実質的に密閉状態に保ってその音圧がキャビティ1の
外部に伝わらないようにする機能である。他の1つは、
温度や気圧等の外部環境変化に起因するキャビティ1内
における緩慢な圧力変化(音圧)に対しては気流抵抗体
として作用することなく、逆にキャビティ1内を外気に
開放した状態に保つ機能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで従来、この種
のガス拡散フィルタ5としては、専ら、多孔質の焼結体
(セラミック)やステンレスフリット等が用いられてい
る。そしてこのガス拡散フィルタ5をキャビティ1にお
けるスペーサ等として組み込んでいる。しかしながら多
孔質の焼結体にあっては、その多孔度が焼結条件等に大
きく依存し、フィルタ特性のバラツキが大きいことが否
めない。この為、多孔質の焼結体をガス拡散フィルタ5
として用いた場合、光音響ガスセンサのセンサ特性を一
定化することが困難である。またステンレスフリットを
用いた場合にも同様な問題があり、しかもその多孔度の
制御性や再現性が非常に悪いと言う問題がある。これ
故、センサ特性の安定した高品質な光音響ガスセンサを
大量生産する上で、如何にしてフィルタ特性の安定した
ガス拡散フィルタを実現するかと言う点で大きな課題が
残されている。
【0006】本発明はこのような事情を考慮してなされ
たもので、その目的は、フィルタ特性の安定したガス拡
散フィルタを簡易に、しかも制御性良く量産することの
できる光音響ガスセンサ用ガス拡散フィルタの製造方法
を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述した目的を達成する
べく本発明に係る光音響ガスセンサ用ガス拡散フィルタ
の製造方法は、多孔度の制御性に優れたポーラスシリコ
ンに着目してなされたもので、光音響ガスセンサのキャ
ビティを形成するSi基板におけるガス通流路の形成部
位を陽極酸化してポーラスシリコン層を形成し、このポ
ーラスシリコン層をガス拡散フィルタとしてなることを
特徴としている。
【0008】更に本発明に係る光音響ガスセンサ用ガス
拡散フィルタの製造方法は、上述した如くポーラスシリ
コン層を形成した後、更にこのポーラスシリコン層を選
択的にエッチング除去し、残されたポーラスシリコン層
をガス拡散フィルタとしてなることを特徴としている。
つまりポーラスシリコン層の選択的なエッチング除去に
より、ガス拡散フィルタとしての厚み(フィルタ長)を
調整することを特徴としている。
【0009】ちなみに前記Si基板の陽極酸化によるポ
ーラスシリコン層の形成は、例えば前記Si基板におけ
るガス通流路の形成部位の周囲を感光性ポリイミド等に
よりマスクすると共に前記Si基板の裏面側をマスク
し、このSi基板を陽極として該Si基板と共に陰極をフ
ッ酸中に浸漬し、陽極(Si基板)と陰極との間に所定
密度の電流を通電することで、前記Si基板のガス通流
路の形成部位を所定の深さに亘って陽極酸化することに
より行われる。
【0010】また前記ポーラスシリコン層の選択的なエ
ッチング除去は、例えばポーラスシリコン層におけるガ
ス拡散フィルタの形成部位を金属膜等によりマスクし、
NaOHの1%水溶液等の弱アルカリ性のエッチング液
を用いて、或いはドライエッチングにより行われる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の一
実施形態に係る光音響ガスセンサ用ガス拡散フィルタの
製造方法について説明する。図1はこの実施形態に係る
ガス拡散フィルタの製造方法を段階的に分解して示して
いる。このガス拡散フィルタは、例えば凹部空間をそれ
ぞれ設けた上下一対のセル部材(図示せず)間に介在さ
れ、上記一対のセル部材間を気密に結合して光音響ガス
センサのキャビティ(試料室)を形成するスペーサ11
に一体に設けられる。ちなみに上記一対のセル部材およ
びスペーサ11は、例えばSi基板をそれぞれ所定形状
にエッチング加工したものからなる。
【0012】さて上記スペーサ11は、例えば図1(a)
に示すように一辺が4mmの正方形状をなし、厚みが3
00μmのSiチップの中央部に一辺が2mmの正方形
状の貫通孔12を形成したものからなる。このようなS
iチップ(スペーサ11)のガス拡散フィルタを形成す
る面とは反対側の面(裏面)に、先ずAlを0.3μm厚
に蒸着し、またはAlをスパッタリングした後、真空中
にて略500℃で熱処理する。このAl膜は、後述する
陽極酸化時における電極コンタクトとして用いられる。
【0013】次いでSiチップのガス拡散フィルタを形
成する面(表面)に、例えばネガ型の感光性ポリイミド
をスピンコートする。そしてこの感光性ポリイミドの、
前記Siチップにおけるガス通流路の形成部位以外に紫
外光を照射して硬化させた後、紫外光の非照射領域の感
光性ポリイミドを選択的に除去して上記Siチップにお
けるガス通流路の形成部位を露出させる。具体的には前
記Siチップの上面に、前記貫通孔12からその外周部
に掛けて幅500μmの溝をガス通流路として形成する
場合、前記感光性ポリイミドを幅500μmに亘って除
去する。しかる後、この感光性ポリイミドをマスクとし
て前記Siチップを図1(b)に示すように陽極酸化して
ポーラスシリコン層13を形成する。
【0014】このSiチップの陽極酸化は、前述した如
くAl膜を形成したSiチップの裏面側を機械的に覆い、
またはテープ等にて覆って保護した状態で、該Siチッ
プを陰極として用いる電極(図示せず)と共にフッ酸中
に浸漬し、上記Siチップを陽極としてこれらの電極間
に所定密度の電流を通電して行われる。このSiチップ
の陽極酸化は、例えば100mA/cm2の電流密度で
略30分間に亘って行われ、これによって略100μm
の深さのポーラスシリコン層13を形成する。この際、
フッ酸にエタノールを加えることでSiチップの陽極酸
化時に発生する水素を除去することが好ましい。尚、こ
こではSiチップのマスクとして感光性ポリイミドを用
いているが、貴金属やその他の高分子材料を用いても良
いことは言うまでもない。
【0015】このようなSiチップ(スペーサ11)の
陽極酸化によるポーラスシリコン層13の形成により、
前記Siチップの上面に該ポーラスシリコン層13が埋
め込まれた、例えば500μmの幅に亘って、深さ略1
00μmのガス通流路14が溝をなして形成される。そ
してポーラスシリコン層13は、ガス通流路14を介し
て通流するガスに対してガス拡散フィルタとして機能す
ることになる。
【0016】ところで上記ポーラスシリコン層13をそ
のままガス拡散フィルタとして用いても良いが、一般的
にはそのパス長(フィルタの厚み)を調整して所望とす
るフィルタ特性を持つようにすることが望ましい。この
場合には、例えば前記ポーラスシリコン層13上に金属
膜を成膜した後、この金属膜上にレジストを塗布する。
そしてこのレジスト膜をフォトリソグラフィによりパタ
ーニングして前記ポーラスシリコン層13のガス拡散フ
ィルタとして残したい領域だけにレジスト膜を残す。そ
の後、前記金属膜を硝酸でエッチングしてマスクを形成
し、このマスクを用いて、例えばNaOHの1%水溶液
からなる弱アルカリ性のエッチング液を用いて前記ポー
ラスシリコン層13を選択的にエッチングする。このエ
ッチングにより、図1(c)に示すようにポーラスシリコ
ン層13のマスク部分だけが所定の長さに亘って、例え
ば0.1mmの長さだけ残され、そのパス長(フィルタ
の厚み)が調整されたガス拡散フィルタが実現される。
【0017】尚、ここではSiチップ(スペーサ11)
を単体で取り扱い、このSiチップを陽極酸化してポー
ラスシリコン層13からなるガス拡散フィルタを該Si
チップ(スペーサ11)と一体に形成するものとして説
明した。しかし実際的には複数のSiチップを一括して
形成するSiウェハの段階で、前述した貫通孔12の形
成に引き続いてポーラスシリコン層13を形成し、必要
に応じてこのポーラスシリコン層13を選択的にエッチ
ングしてそのパス長(フィルタの厚み)を調整した後、
上記Siウェハから個々のSiチップ(スペーサ11)を
切り出すことが望ましい。また前述した例においては、
NaOHの1%水溶液からなる弱アルカリ性のエッチン
グ液を用いて前記ポーラスシリコン層13を選択的にエ
ッチングしたが、ドライエッチングによりポーラスシリ
コン層13のパス長(フィルタの厚み)を調整すること
も勿論可能である。
【0018】かくして上述した如くしてSiチップから
なるスペーサ11の一面に、ポーラスシリコン層13か
らなるガス拡散フィルタを一体に形成するガス拡散フィ
ルタの製造方法によれば、Siチップの陽極酸化により
ポーラスシリコン層13を形成するだけなので、その製
造が非常に容易である。しかもSiの陽極酸化に伴うポ
ーラスシリコン層13の多孔度は、予め既知なるSi基
板(Siチップ)の抵抗値(比抵抗)の下で、その電流
密度を制御することで容易に調整することができる。ま
たこの陽極酸化の時間を制御することで、ポーラスシリ
コン層13の形成深さを容易に、且つ高精度に調整する
ことができる。更にはポーラスシリコン層13のエッチ
ングによる厚み(フィルタ長)の調整も非常に容易であ
り、高精度に寸法管理し得る。
【0019】従って所望とするフィルタ特性を備えたガ
ス拡散フィルタを、簡易にして精度良く製造することが
できる。また前述したようにSiウェハのまま、複数の
スペーサ11(Siチップ)に対して一括してガス拡散
フィルタを形成することができるので、フィルタ特性の
揃った品質の安定したガス拡散フィルタを量産性良く製
造し得る等の利点がある。
【0020】ところでガス拡散フィルタに要求されるフ
ィルタ特性は、図2に示すように光音響ガスセンサにお
けるキャビティの仕様、具体的にはキャビティのガス拡
散係数および圧損係数に応じて定まる。特にガス拡散フ
ィルタをなすポーラスシリコン層13の多孔度(細孔
率)は、上記ガス拡散係数および圧損係数に密接に関与
する。従ってこれらの仕様に応じて前述した陽極酸化条
件を調整し、所望とする多孔度のポーラスシリコン層1
3を形成するようにすれば良い。またガス拡散係数は、
ガス拡散フィルタのフィルタ長に大きく依存する。従っ
て上述した如く多孔度を調整(制御)したポーラスシリ
コン層13の長さをエッチングにより調整し、これによ
って所望とするフィルタ特性のガス拡散フィルタを製造
するようにすれば良い。
【0021】尚、本発明は上述した実施形態に限定され
るものではない。ここでは凹部空間をそれぞれ設けた上
下一対のセル部材間に介在されて、上記一対のセル部材
間を気密に結合して光音響ガスセンサのキャビティ(試
料室)を形成するスペーサ11にガス拡散フィルタを形
成するものとして説明した。しかしスペーサを用いるこ
となく上記一対のセル部材を直接接合してキャビティを
形成する場合には、上記セル部材の接合面にガス拡散フ
ィルタを形成するようにしても良い。またポーラスシリ
コン層13の形成幅やその深さ等は、ガス拡散フィルタ
に要求される仕様に応じて定めれば良いものであり、要
は本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実
施することができる。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、光
音響ガスセンサのキャビティを形成するSi基板におけ
るガス通流路の形成部位を陽極酸化してポーラスシリコ
ン層を形成し、このポーラスシリコン層をガス拡散フィ
ルタとして、或いは上記ポーラスシリコン層を選択的に
エッチング除去し、残されたポーラスシリコン層をガス
拡散フィルタとして用いるので、光音響ガスセンサ用ガ
ス拡散フィルタを簡易に量産性良く、しかもその特性を
揃えて高品質に製造することができ、実用的利点が多大
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る光音響ガスセンサ用
ガス拡散フィルタの製造方法を分解して示す図。
【図2】ガス拡散フィルタに要求される仕様と、Siを
陽極酸化して形成するポーラスシリコン層との関係を示
す図。
【図3】光音響ガスセンサの概略的な構成を示す図。
【符号の説明】
1 キャビティ 2 光源 3 マイクロフォン 11 スペーサ(Siチップ) 12 貫通孔 13 ポーラスシリコン層(ガス拡散フィルタ) 14 ガス通流路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 本田 宣昭 東京都渋谷区渋谷2丁目12番19号 株式会 社山武内 Fターム(参考) 2G047 AA01 CA04 EA11 GA01 GD00 2G052 AA01 AB06 AD22 AD42 EA03 EA14 GA11 JA13 2G057 AA01 AB02 AB06 AC03 BA01 BB04 2G059 AA01 BB01 CC04 DD01 EE16 GG00 KK08

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光音響ガスセンサのキャビティを形成す
    るSi基板におけるガス通流路の形成部位を陽極酸化し
    てポーラスシリコン層を形成し、このポーラスシリコン
    層をガス拡散フィルタとしてなることを特徴とする光音
    響ガスセンサ用ガス拡散フィルタの製造方法。
  2. 【請求項2】 光音響ガスセンサのキャビティを形成す
    るSi基板におけるガス通流路の形成部位を陽極酸化し
    てポーラスシリコン層を形成した後、このポーラスシリ
    コン層を選択的にエッチング除去し、残されたポーラス
    シリコン層をガス拡散フィルタとしてなることを特徴と
    する光音響ガスセンサ用ガス拡散フィルタの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記Si基板の陽極酸化は、前記Si基板
    におけるガス通流路の形成部位の周囲をマスクすると共
    に前記Si基板の裏面側をマスクし、このSi基板を陽極
    として、該Si基板と共に陰極をフッ酸中に浸漬して行
    われるものである請求項1または2に記載の光音響ガス
    センサ用ガス拡散フィルタの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記ポーラスシリコン層の選択的なエッ
    チング除去は、該ポーラスシリコン層におけるガス拡散
    フィルタの形成部位をマスクし、弱アルカリ性のエッチ
    ング液を用いてまたはドライエッチングにより行われる
    ものである請求項2に記載の光音響ガスセンサ用ガス拡
    散フィルタの製造方法。
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