JP2002326972A - 共沸蒸留方法 - Google Patents

共沸蒸留方法

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JP2002326972A
JP2002326972A JP2002036205A JP2002036205A JP2002326972A JP 2002326972 A JP2002326972 A JP 2002326972A JP 2002036205 A JP2002036205 A JP 2002036205A JP 2002036205 A JP2002036205 A JP 2002036205A JP 2002326972 A JP2002326972 A JP 2002326972A
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carboxylic acid
aliphatic carboxylic
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acid ester
oil phase
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Motomiki Numata
元幹 沼田
Takayuki Isogai
隆行 磯貝
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Mitsubishi Chemical Corp
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Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 複雑な蒸留プロセスを用いることなく低減さ
れたエネルギーで実施可能な共沸蒸留方法を提供する。 【解決手段】 少なくとも以下の工程(1)〜(5)を
有する共沸蒸留方法。工程(1): 水、脂肪族カルボ
ン酸及び脂肪族カルボン酸エステルを含む蒸留対象溶液
を、エントレーナーを用いて共沸蒸留して、含水量の低
減された脂肪族カルボン酸と、水分の濃縮された塔頂留
出物を得る工程。 工程(2): 該塔頂留出物を凝縮させて、ガスと、水
相及び油相の2相に分れた凝縮液とを得る工程。 工程(3): 該凝縮液の水相及び油相を分取する工
程。 工程(4): 該分取で得られた水相の一部または全部
を蒸留して、上記脂肪族カルボン酸エステルを含み、含
水量の低減された塔頂留出物を得る工程。 工程(5): 工程(4)にて得られた塔頂留出物を、
工程(3)で分取した油相の一部又は全部と共に蒸留
し、該蒸留によって得られる上記脂肪族カルボン酸エス
テルの一部又は全部を系外へ回収する工程。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は共沸蒸留方法に関す
る。本発明は共沸蒸留により、脂肪族カルボン酸、たと
えば酢酸を含有する水性供給流から、水を分離して脂肪
族カルボン酸を回収する場合に特に効果を奏する。本発
明は脂肪族カルボン酸を含む溶媒中での液相酸化反応に
より芳香族カルボン酸を製造する方法において、溶媒と
して用いられる脂肪族カルボン酸の回収に適した方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】共沸蒸留方法においては、蒸留分離が困
難な混合物に、成分物質のいずれかと共沸混合物を形成
するような物質(共沸剤またはエントレーナー)を添加
することにより、蒸留の分離性が向上する。共沸蒸留方
法の工業的適用例として、酢酸と水の混合液に、水と共
沸混合物を形成する酢酸n−プロピルまたは酢酸n−ブ
チルを添加して共沸蒸留することによって、酢酸と水の
混合液から純度の高い酢酸を得る方法等がある。共沸蒸
留方法の適用が考えられる分野の一つとして、芳香族カ
ルボン酸の製造がある。即ち芳香族カルボン酸製造プロ
セスからの溶媒の回収過程において共沸蒸留方法の適用
が可能である。
【0003】テレフタル酸等の芳香族カルボン酸の製造
は、一般に、酢酸等の脂肪族カルボン酸を含む溶媒中で
実施される。しかし該製造工程中で水が生成するので、
反応系中に水が蓄積するのを防ぐ必要がある。このた
め、反応器より脂肪族カルボン酸と水の混合蒸気を取り
出し、この蒸気の凝縮液を含む供給流を蒸留して水を脂
肪族カルボン酸から分離し、脱水された脂肪族カルボン
酸の少なくとも一部を反応原料液調整槽へ再循環する等
の操作が行なわれる。
【0004】脂肪族カルボン酸の内、上記溶媒として広
く使用されている酢酸について注目すると、通常、酢酸
と水との混合物からの水の分離には精留が用いられる
が、設備費及び変動費次第では共沸蒸留の方が有利とな
る。共沸蒸留の技術開発の主要な観点は、分離性、制御
性、還流比低減、共沸蒸留塔塔頂留出物の凝縮液の後処
理に大別される。一般に、還流比が大きければ運転安定
性が良く、還流比を小さくするにつれて運転安定性は次
第に悪くなる。更に、還流比がある限界値以下となる
と、共沸蒸留自体の分離性が急激に悪化する。この限界
値は一般に最小還流比と呼ばれ、その値は、供給液組
成、エントレーナーの種類、共沸蒸留塔への供給液の供
給液位置(高さ)、給液ラインの数、還流液を戻す方
法、エントレーナーを戻す方法等によって異なる。
【0005】非常に高い還流比で運転を行えば、制御性
及び分離性を満足させることは容易であるが、このよう
な運転はエネルギーを大量に消費し経済的に不利である
ので、実際には還流比を最小還流比に極力近づけてエネ
ルギー消費を可能な限り低減した運転が行われている。
酢酸と水との分離のための共沸蒸留方法は、特公昭62
−41219号、韓国特許公開94−14292号、特
開2000−72714号、WO98/45239号等
の各公報にも開示されている。
【0006】特公昭62−41219号公報には、共沸
蒸留塔塔頂蒸気凝縮物を液液分離した後に、水相側に同
伴される油相成分を低減させる方法として、特に油相成
分である酢酸イソブチルと不純物の脂肪族カルボン酸エ
ステルとに着目し、水相液をストリッピングしてこれら
を回収することが提案されている。しかし、これは水相
への油相成分の同伴による損失対策を目的としたもので
あり、不純物の脂肪族カルボン酸エステルに由来する問
題を全て解決する技術ではない。上記脂肪族カルボン酸
エステルは給液に同伴して蒸留塔に入り油相に蓄積す
る。特公昭62−41219号公報記載の方法は、この
蓄積した不純物の脂肪族カルボン酸エステルの一部が水
相から同伴して損失となることを防ぐ技術であり、油相
中に上記脂肪族カルボン酸エステルが蓄積し、濃度が上
昇していく問題には言及していない。上記脂肪族カルボ
ン酸エステルの濃度の上昇は共沸蒸留における酢酸と水
との分離性を悪化させ、有効成分(酢酸)の損失を生じ
させる。
【0007】その後も各社から、油相への不純物(脂肪
族カルボン酸エステル)の蓄積を防止するための技術が
提案されている。例えば韓国特許公開94−14292
号公報には、共沸蒸留塔塔頂蒸気を凝縮して得られたも
のを液液分離した後に、油相側に同伴される不純物の脂
肪族カルボン酸エステルを蒸留回収する方法が提案され
ている。しかし、この方法は油相中の上記脂肪族カルボ
ン酸エステルとエントレーナーとの分離性が悪いために
上記脂肪族カルボン酸エステルの分離に大量のエネルギ
ーを要するという問題がある。また、特開2000−7
2714号公報には共沸蒸留塔の塔頂蒸気を分縮し、残
留するガス中の不純物の脂肪酸カルボン酸エステルを酢
酸に吸収して回収する方法が提案されている。しかし、
この方法では分縮でエントレーナー成分を同伴するた
め、上記脂肪族カルボン酸エステルのみを取り出すこと
は出来ず、有効成分(エントレーナー成分)の損失や製
品の汚染を招く。WO98/45239号公報には共沸
蒸留塔の塔頂蒸気を分縮し残留するガスを蒸留して不純
物の脂肪族カルボン酸エステルを回収する方法が提案さ
れている。この技術も使用熱量の点で改善が見られる
が、上記脂肪族カルボン酸エステルを単離することは出
来ず、回収のための専用の経路を設ける点では他の特許
に記載の技術と同様な問題がある。さらに同公報では共
沸組成における水濃度が低いため、共沸蒸留により水を
除くためにはエントレーナーを大量に用いなければなら
ないという問題もある。共沸蒸留で使用するエントレー
ナーの量は共沸組成によって決まるが、一般的には水に
対する重量比で1倍以上、例えば2〜5倍である。従っ
て、エントレーナーそのものが大量であることに加え、
通常、エントレーナーは循環させて使用する為、酢酸よ
り沸点が低く水に溶けにくいもの(例えばテレフタル酸
の製造に於いては酢酸メチルやパラキシレン)はエント
レーナー側に蓄積する。よってその含有不純物量が増え
ると油相量が大幅に増大する。そのため不純物の一種で
ある脂肪族カルボン酸エステルを含有できる許容幅は狭
い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記の通り、不純物の
脂肪族カルボン酸エステルの回収については、蒸留系の
入りと出とをバランスさせる、分離回収のためのエネル
ギー使用量を下げる、高純度で回収する、簡単な設備で
変動損失を回避すると言った課題全てに対応しているこ
とが好ましい。そのため、これまでに不純物である脂肪
族カルボン酸エステル回収専用の設備が提案されてき
た。本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであっ
て、共沸蒸留塔塔頂留出物を凝縮して得られる凝縮液の
水相中にある不純物の脂肪族カルボン酸エステルの濃度
とエントレーナー濃度との比という着目から得られた、
新たな発想を出発点としている。この水相からの有機成
分回収がほぼ必須の操作であることは公知であるが、本
発明はそれを積極的に応用し、不純物の脂肪族カルボン
酸エステルの増加を抑えるための技術を見出した。そし
て本発明は、この技術から構築されたものであり、簡単
なプロセスを導入することによってエネルギー使用量を
低く抑え、且つ優れた分離性能を奏する共沸蒸留方法を
提供しようとする発明である。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は共沸蒸留の操作
における、共沸蒸留塔内に存在するエントレーナー中に
蓄積する不純物の脂肪族カルボン酸エステルの回収に関
する。本発明者らは共沸蒸留塔塔頂留出物の凝縮液の水
相における上記脂肪族カルボン酸エステル濃度とエント
レーナー濃度との比が油相中に比べて高いことに着目
し、水相から上記脂肪族カルボン酸エステルを回収する
ことで、従来着目されてきた経路から回収する方法に比
べて簡易かつ低いエネルギーで上記脂肪族カルボン酸エ
ステルを回収できることを見出した。本発明はこれらの
知見に基づいて成し遂げられたものである。
【0010】即ち本発明の要旨は、少なくとも以下の工
程を有する共沸蒸留方法に存する。少なくとも以下の工
程(1)〜(5)を有する共沸蒸留方法。 工程(1): 水、脂肪族カルボン酸及び脂肪族カルボ
ン酸エステルを含む蒸留対象溶液を、エントレーナーを
用いて共沸蒸留して、含水量の低減された脂肪族カルボ
ン酸と、水分の濃縮された塔頂留出物を得る工程。 工程(2): 該塔頂留出物を凝縮させて、ガスと、水
相及び油相の2相に分れた凝縮液とを得る工程。 工程(3): 該凝縮液の水相及び油相を分取する工
程。 工程(4): 該分取で得られた水相の一部または全部
を蒸留して、上記脂肪族カルボン酸エステルを含み、含
水量の低減された塔頂留出物を得る工程。 工程(5): 工程(4)にて得られた塔頂留出物を、
工程(3)で分取した油相の一部又は全部と共に蒸留
し、該蒸留によって得られる上記脂肪族カルボン酸エス
テルの一部又は全部を系外へ回収する工程。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て詳細に説明する。本明細書において、「蒸留対象溶
液」とは、精製したい目的物質と濃度を低減させたい物
質(以下「低減物質」という)とを含む混合溶液を意味
する。「エントレーナー」とは共沸蒸留を行うために加
える第三成分を意味する。また、「共沸領域」とは、そ
の領域内で液相として存在する組成全体の中でエントレ
ーナーの濃度が少なくとも0.1重量%である領域を意
味する。「共沸蒸留塔」とは、上記の蒸留対象溶液及び
エントレーナーを蒸留する蒸留塔を意味する。
【0012】[工程(1)の説明]本発明に於いてはま
ず工程(1)として、水、脂肪族カルボン酸及び脂肪族
カルボン酸エステルを含む蒸留対象溶液を、エントレー
ナーを用いて共沸蒸留して、目的物質である含水量の低
減された脂肪族カルボン酸と、水分の濃縮された塔頂留
出物を得る工程を有する。共沸蒸留により脂肪族カルボ
ン酸及び水を含有する混合物中の水の濃度を低減させる
ために、通常、塔底から水の量の低減された脂肪族カル
ボン酸を含む缶出液を得、塔頂から主に水とエントレー
ナーを含む成る共沸混合物の蒸気を得るように蒸留を行
う。この際、脂肪族カルボン酸を再使用する等の目的の
ためには、缶出液中におけるエントレーナーの濃度は1
00ppm以下であることが好ましく、また、経済性の
要請等から、共沸蒸留塔塔頂留出物の凝縮液中における
脂肪族カルボン酸の濃度は1,000ppm以下である
ことが好ましい。缶出液は原料調製液として一部、アル
キル置換芳香族炭化水素の液相酸化反応の系にリサイク
ルされる。次いで蒸留対象溶液及びエントレーナーにつ
いて説明する。本発明における蒸留対象溶液は、目的物
質と低減物質とを含む混合溶液であって、更に添加する
エントレーナーと該低減物質とが共沸混合物を生成し、
かつその共沸温度が目的物質の沸点よりも低いものであ
れば、特に制限はない。また更に、本共沸蒸留に本質的
に影響を与えないような物質を含んでいてもよい。
【0013】本発明におけるエントレーナーは、その効
果を発現する限り特に制限はない。また、単一成分であ
る必要はなく、低減物質と不均一共沸混合物を形成する
2種類以上の成分の混合物であってもよいし、また該成
分の分解物の一部が含有されていてもよい。本発明にお
ける共沸蒸留塔は、充填塔または棚段塔のいずれであっ
てもよい。蒸留対象溶液の供給位置は特に制限されない
が、通常、共沸蒸留塔の中段であり、分離効率の最適化
のために塔内組成を勘案して最適位置を決めればよい。
該共沸蒸留塔の運転は常圧下、加圧下、あるいは減圧下
のいずれの条件下でも実施でき、その方式は回分式でも
連続式でもよい。より好ましくは、常圧下に連続式に実
施される。共沸蒸留における上記脂肪族カルボン酸エス
テル濃度は任意であるが、エントレーナーを含む油相中
に3〜50重量%含有することが酢酸等の脂肪族カルボ
ン酸から水を安定かつ高い濃度で分離する点から好まし
い。
【0014】本発明において、精製したい目的物質は脂
肪族カルボン酸であり、通常、炭素数2〜6の飽和また
は不飽和の脂肪族カルボン酸である。好ましくは炭素数
2〜4の飽和脂肪族カルボン酸である酢酸、プロピオン
酸、酪酸等が挙げられる。濃度を低減させたい低減物質
は水である。また本発明において蒸留対象溶液中に含有
される不純物の脂肪族カルボン酸エステルの種類は特に
限定されないが、通常、上記目的物質の脂肪族カルボン
酸のエステルが挙げられ、具体的には例えば酢酸メチル
が挙げられる。
【0015】エントレーナーは、共存する脂肪族カルボ
ン酸の種類を勘案して選択されるが、脂肪族カルボン酸
と水とを含む混合溶液の共沸蒸留に用いられる公知の化
合物を用いることができる。例えば、ギ酸ブチル、酢酸
n−プロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、酢酸
アミル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソブ
チルなどのエステル類、ジクロルメチルエーテル、エチ
ルイソアミルエーテル、アリルイソアミルエーテル、ジ
−n−ブチルエーテルなどのエーテル類、二塩化エチレ
ン、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、塩化
アセトン、ジプロピルケトン、メチルブチルケトン、ア
リルアセトンなどのケトン類、トルエン、キシレン、エ
チルベンゼンなどの芳香族炭化水素のように、水と共沸
混合物を作ることのできる化合物が通常使用される。こ
れらのエントレーナーのうちではエステル類を使用する
のが好ましい。中でも、酢酸n−プロピルまたは酢酸n
−ブチルの使用が好適である。尚、本発明に於いては、
蒸留対象溶液がテレフタル酸等の芳香族カルボン酸の製
造に用いられた溶媒である場合などは、蒸留対象溶液中
に該芳香族カルボン酸製造原料に由来するp−キシレン
や酢酸メチル等の他の物質やエントレーナーの分解物が
含まれていてもよい。
【0016】蒸留対象溶液中の脂肪族カルボン酸及び水
の組成は任意である。通常、水の含有率が4から99重
量%の範囲、好ましくは10から70重量%の範囲にあ
る脂肪族カルボン酸および水を含む混合溶液に本発明が
適用される。本発明方法を適用する具体的な蒸留対象溶
液として、脂肪族カルボン酸を含む溶媒中でアルキル置
換芳香族炭化水素を液相酸化し精製する芳香族カルボン
酸の工程において回収されたものが挙げられる。例えば
溶アルキル置換芳香族炭化水素の液相酸化反応器からの
混合蒸気の凝縮回収物や、同反応器から出た廃ガス中の
蒸気酢酸を水で吸収した回収物などが挙げられる。また
回収された反応母液の少なくとも一部を蒸発させて凝縮
した回収物や、芳香族カルボン酸と反応母液とを固液分
離し回収した反応母液または該工程で洗浄に使用したも
のの回収物等が挙げられ、これらから任意の液と量がを
選択し、用いることが出来る。これらの液は混合されて
も、独立に処理されてもよい。
【0017】[工程(2)、(3)の説明]本発明では
工程1に続いて、工程(2):塔頂留出物を凝縮させ
て、ガスと、水相及び油相の2相に分れた凝縮液とを得
る工程、及び工程(3):凝縮液の各相を別個に分取す
る工程を有する。本発明では工程(1)の共沸蒸留によ
って、塔底からは低減物質の濃度の低減された目的物質
を含む缶出液が得られ、塔頂からは主に低減物質とエン
トレーナーとより成る共沸混合物の蒸気(塔頂留出物)
が得られる。工程(2)としては、塔頂から得られた蒸
気を凝縮し、凝縮液とガスを得る。この凝縮液は通常、
低減物質を主とする水相と、エントレーナーを主とする
油相との二相の液として得られる。ついで工程(3)と
して、この二相の凝縮液を水相、油相に分取する。該分
取手段としてはデカンター等での液液分離等が挙げられ
るが、目的が達せられれば特に限定されない。この様に
二相を分取出来るように、凝縮液を構成する水相と油相
が均一に混じり合わないような、不均一共沸混合物を与
える低減物質とエントレーナーとを用いることが好まし
い。工程(2)で得られた凝縮液の水相及び油相におい
ては、油相より回収される上記脂肪族カルボン酸エステ
ル量を、水相より回収される上記脂肪族カルボン酸エス
テル量の20倍以下とすることが好ましい。これは例え
ば、「単位時間当たりの油相流量×油相中の上記脂肪族
カルボン酸エステルの濃度」と「単位時間当たりの水相
流量×水相中の上記脂肪族カルボン酸エステルの濃度」
によって得られる。上記値が20倍を超えると、水相か
ら回収できる脂肪族カルボン酸エステルの量が少なくな
り、本発明の効果が薄くなる場合があるので、中でも1
8倍以下、特に15倍以下とするのが好ましい。分取さ
れた2相のうち、エントレーナーを主とする相(油相)
の少なくとも一部は共沸蒸留塔へリサイクルされるのが
好ましい。エントレーナーを戻す方法には、塔頂に全量
戻す方法と、一部分割して塔中段に戻す方法とがある。
共沸蒸留塔へリサイクルされるエントレーナーの量は共
沸蒸留塔より排出すべき水の量と共沸混合物組成より理
論値が与えられる。実際には共沸蒸留塔塔頂留出物の凝
縮液中の脂肪族カルボン酸濃度および缶出液中のエント
レーナー濃度より最適なエントレーナー量を求めればよ
い。尚、系外へ出て失ったエントレーナー分を補うため
に、エントレーナーを新たに供給してもよい。一方、低
減物質を主とする相(水相)は、少なくともその一部は
後述する工程(4)に供される。残余分の水相について
は還流液として共沸蒸留塔へ戻されてもよい。なお水相
の全てを工程(4)に共した後、その一部を還流液とし
て共沸蒸留塔へ戻してもよい。また、低減物質を主とす
る相(水相)の主成分である水はプロセス内で再利用さ
れた後、その一部が廃棄されてもよい。水を還流液とし
て戻す方法には、例えば、共沸蒸留塔塔頂に戻す方法と
塔中段に戻す方法とがある。水の還流量はその比(還流
水量/排出水量)により通常0.1から3程度に設定さ
れる。
【0018】[工程(4)の説明]工程(4)では分取
した水相の一部または全部を蒸留して、含水量の低減さ
れた上記脂肪族カルボン酸エステルを含む塔頂留出物を
得る。具体的には例えば、共沸蒸留塔塔頂留出物の凝縮
液から分取された(低減物質である水を主成分とする)
水相を蒸留塔に送り、この蒸留塔塔頂より含水量の低減
された上記脂肪族カルボン酸を得る方法が挙げられる。
この蒸留にて蒸留塔の塔底より得られるものは主として
水である。この水は系外へ廃棄しても、また一部を共沸
蒸留塔へ還流液として戻してもよい。 [工程(5)の説明]工程(5)では、工程(4)にて
得られた塔頂留出物を、工程(3)で分取した油相の一
部又は全部と共に蒸留し、該蒸留によって得られる上記
脂肪族カルボン酸エステルの一部又は全部を系外へ回収
する。工程(5)における蒸留塔は、エントレーナーの
回収を目的としたものである。工程(5)における蒸留
塔へは、工程(4)の塔頂留出物と、工程(3)にて分
取された共沸蒸留塔塔頂留出物の凝縮液のうちの油相の
一部又は全部とを供給し、蒸留する。この蒸留によっ
て、エントレーナーと、不純物の脂肪族カルボン酸エス
テルとを分離する。尚、本工程において脂肪族カルボン
酸エステルのうち、20%以上が、工程(4)にて得ら
れた塔頂物に由来する様に、工程(5)への被蒸留成分
の供給をコントロールするのが、エネルギー効率の点で
好ましい。エントレーナーは塔底より回収され、一部又
は全部を系外へ回収するか、一部又は全部を共沸蒸留塔
へ戻してもよい。また不純物である上記脂肪族カルボン
酸エステルは一部又は全部を系外へ回収すればよい。ま
た工程(5)における蒸留塔には、分取した油相の一部
又は全部以外の油相成分として、共沸蒸留塔塔頂留出物
の凝縮液(つまりエントレーナー及び上記脂肪族カルボ
ン酸エステルの混合物)や、工程(2)で得られたガス
を、油相と併せて供給してもよい。
【0019】尚、工程(3)にて分取された油相や工程
(5)にて得られたエントレーナーについては、特公昭
61−31091号公報に記載のように、共沸蒸留塔へ
のエントレーナーの循環流を分割して一方は共沸蒸留塔
塔頂に、他方は塔中段に戻すことで、運転条件を変更し
た効果が反映され易くし、応答を速めた方法を用いても
よい。更に、工程(2)や工程(4)にて得られる水に
ついては、特表平10−504556号公報に記載のよ
うに、共沸蒸留塔への還流液として水を塔中段へ戻し、
その量の操作で塔底における不純物濃度の制御を行うと
いう方法にも用いることができる。また、エントレーナ
ー中に蓄積するアルキル置換芳香族炭化水素を回収する
ために、これらをエントレーナーから直接分離してもよ
いし、特表平10−504556号公報に記載のように
共沸蒸留塔の中段から抜き出してもよい。さらにその抜
き出したものをWO97/29068号公報に記載のよ
うに精製することも可能である。
【0020】次に、本発明の共沸蒸留方法が適用され
た、本発明の芳香族カルボン酸の製造方法について説明
する。まず芳香族カルボン酸の製造方法自体について説
明する。目的化合物である芳香族カルボン酸は、任意の
芳香族カルボン酸を示し、例えば芳香族モノカルボン
酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族トリカルボン酸等が挙
げられる。これらが例えば芳香族環としてベンゼン環を
有する際には、これらに応するモノアルキルベンゼン、
ジアルキルベンゼン、トリアルキルベンゼン等のアルキ
ル置換芳香族炭化水素を酸化、好ましくは液相酸化する
ことによって製造される。中でも本発明の方法は、芳香
族ジカルボン酸、特に芳香族カルボン酸がテレフタル酸
である場合に適用するのが好ましく、この場合、原料と
なるアルキル置換芳香族炭化水素としてはp−キシレン
が挙げられる。
【0021】酸化反応を液相中にて行う際には、通常、
溶媒として脂肪族カルボン酸を用いる。液相酸化反応の
溶媒である脂肪族カルボン酸としては、例えば酢酸が好
ましく、該溶媒の使用量は、通常、原料アルキル置換芳
香族炭化水素に対して2〜6重量倍である。また、酸化
反応系内の水分濃度は、通常4〜25重量%、好ましく
は7〜20重量%である。アルキル置換芳香族炭化水素
を液相酸化して芳香族カルボン酸を製造する酸化反応に
おいては、通常、触媒を使用する。この触媒としては例
えばマンガン、コバルト、鉄、クロム、ニッケル等の遷
移金属化合物が用いられる。また、助触媒として臭素化
合物が用いてもよい。臭素化合物触媒を用いない場合に
は、コバルト触媒に対する促進剤としてアセトアルデヒ
ドやメチルエチルケトン等が使用される。酸化剤には分
子状酸素や空気が使用されるが、通常は空気が使用され
る。酸素ガスを混じて酸素濃度を高めた空気、逆に窒素
ガス等の不活性ガスを混じて酸素濃度を低くした空気を
用いてもよい。
【0022】液相酸化の反応温度は適宜選択すればよい
が、通常120℃から220℃である。例えば臭素化合
物触媒を使わない酸化方法においては、一般に反応温度
は160℃以下であることが好ましい。圧力も同様に適
宜選択すればよく、溶媒(例えば酢酸)が気体状態とな
りうる圧力範囲であればよい。酸化反応熱は主として含
水酢酸溶媒のフラッシュ蒸発によって除去される。即
ち、酸化反応器からの留分(排ガス)は、蒸発した酢酸
及び水を主として含み、その他に酸化反応副生物のうち
の低沸点生成物や未反応アルキル置換芳香族炭化水素等
をわずかに含んでいる。この蒸気はコンデンサーによっ
て冷却され凝縮されて液体となり、通常はその一部が再
び酸化反応溶媒として酸化反応器内に還流される。また
他の一部は酸化反応によって生成した水を除く目的で脱
水塔へ送られ、本発明の共沸蒸留に供され、脱水された
酢酸は再び酸化反応溶媒として酸化反応器は内へ送られ
る。
【0023】アルキル置換芳香族炭化水素の液相酸化は
通常1基、必要に応じて複数の反応器で行われる。酸化
反応を終えた反応液は必要であれば1基または連続した
2基以上の順次降圧された晶析器に送られ、それぞれの
圧力に対応する温度まで溶媒のフラッシュ冷却作用で冷
却され、生成した芳香族カルボン酸の大部分が結晶とし
て晶析し、スラリーとなる。スラリーは任意の結晶分離
手段、例えばロータリーバキュームフィルター法、遠心
分離法、あるいは他の適当な分離法で芳香族カルボン酸
結晶のケーキと酸化反応母液とに分離される。芳香族カ
ルボン酸結晶のケーキは、必要に応じて酢酸あるいは水
で洗浄された後、ドライヤーで付着溶媒を除去される。
さらに必要に応じて、主に水から成る反応母液中に再ス
ラリー化され、水添工程を経てから再結晶することで結
晶中の不純物を低減し、精製される。次いで固液分離、
洗浄、乾燥等の操作を経た後に芳香族カルボン酸が得ら
れる。
【0024】次に図1を用いて、本発明の共沸蒸留方
法、およびこれを用いる芳香族カルボン酸の製造方法に
ついて説明する。図1は本発明方法を適用するための蒸
留プロセスの一例を示す流れ図である。11は共沸蒸留
塔である。水、(酢酸等の)脂肪族カルボン酸及び不純
物の脂肪族カルボン酸エステルを含む蒸留対象溶液はラ
イン40、41、42等から(複数の供給ラインから供
給する場合、各蒸留対象溶液の組成は通常、相互に異な
る)、またエントレーナーはライン15から、それぞれ
共沸蒸留塔11に供給されて、共沸蒸留が行なわれる。
蒸留に必要な熱を加えるために、熱交換器14によって
加熱する。加熱源として加熱油や加圧蒸気を用いる。こ
こでは酢酸の常圧沸点より温度の高い、具体的には0.
35MPa蒸気を用いる例を示している。
【0025】共沸蒸留によって濃度を低減させたい低減
物質およびエントレーナーを含む共沸混合物蒸気(共沸
蒸留塔塔頂留出物)は、共沸蒸留塔11の塔頂より冷却
器12に送られ、ここで凝縮される。得られた凝縮液は
液液分離槽13で2相に分離され、ここから分取され
る。分離手段は共沸混合物の性質により適切なものを選
択すればよい。図1においては、液液分離槽13におい
て低減物質を主成分とする相(水相)の一部はライン1
7を通ってストリッピング塔21に送られる。また水相
の一部はライン16を通して共沸蒸留塔11への水還流
としてもよい。エントレーナーはライン15を通って循
環される。ライン15およびライン16は必要により共
沸蒸留塔11の塔頂または塔中段に接続される。この共
沸蒸留塔11へのライン15および16の本数はそれぞ
れ1本または複数本のいずれであってもよい。更には共
通のラインを使用して、エントレーナー及び低減物質を
一緒に共沸蒸留塔11へ戻してもよいし、個別のライン
によって戻してもよい。共沸蒸留塔11の塔底よりライ
ン19を通って水含量の低減された目的物質(例えば脂
肪族カルボン酸)を主成分とする液が取り出される。ま
た目的物質が、本発明の芳香族カルボン酸の製造方法に
用いられた脂肪族カルボン酸である際には、塔の中段の
ライン22より主に水及び芳香族カルボン酸の原料であ
るアルキル置換芳香族炭化水素からなる液が抜き出され
る。
【0026】ストリッピング塔21では有機成分、(本
発明の芳香族カルボン酸の製造方法においては主とし
て、不純物の脂肪族カルボン酸エステル)を回収し、共
沸蒸留により分離された水などの低減物質はライン18
を通して芳香族カルボン酸製造プロセスに循環され、そ
こにおいて有効利用されるかまたは廃棄される。ストリ
ッピング塔21で回収された有機成分はライン23を通
ってエントレーナー回収塔24へ送られ、ここでエント
レーナーと不純物の脂肪族カルボン酸エステルとに分離
される。エントレーナーは塔底より回収され、ライン2
5及び15を通って共沸蒸留塔11へ戻される。上記脂
肪族カルボン酸エステルはライン26を通って回収され
る。この脂肪族カルボン酸エステルは、所望に応じて貯
蔵しても、また芳香族カルボン酸を製造する酸化反応工
程に一部又は全部を循環させてもよい。また、このエン
トレーナー回収塔24にはライン27で分岐させたエン
トレーナー及び上記脂肪族カルボン酸エステルの混合物
の少なくとも一部が直接導入される。また図示してはい
ないが、冷却器12にて発生したガスをエントレーナー
回収塔24に導入することも可能である。
【0027】本発明に従って不純物の脂肪族カルボン酸
エステルを回収する方法について図1に従って具体的に
説明する。系外に回収される上記脂肪族カルボン酸エス
テルの量、つまり工程(5)にて得られるその量は、ラ
イン26より排出される当該物質の量として示される。
この排出流にはエントレーナーや水、脂肪族炭化水素等
の不純物が含まれていてもよく、液、ガスまたはその混
合物である。共沸蒸留塔11の塔頂留出物凝縮液相の水
相液を経由して回収工程に導入される上記脂肪族カルボ
ン酸エステルの量は、ライン17を経由して流れる当該
物質の量として示される。系外に回収される上記脂肪族
カルボン酸エステルの総量に対し、回収比率は20%以
上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上
が、水相を経由して回収工程に導入するのがエネルギー
効率の点から好ましい。なお、エントレーナー回収工程
において、エントレーナー回収塔24の缶出液25に、
極僅かではあるが上記脂肪族カルボン酸エステルが同伴
しうる。そこで本発明では、水相経由及び油相経由で回
収工程に導入される脂肪族カルボン酸エステルの量にお
ける、水相経由の脂肪族カルボン酸エステル量の割合を
もって上記回収比率を算出する。水相を経ない上記脂肪
族カルボン酸エステルの流れは、ライン27に通ってエ
ントレーナー回収塔24に導入される。この流れはガス
もしくは液もしくはその混合物のいずれでもよく、WO
98/45239号公報に記載されているように冷却器
12にて発生したガスの併用も可能である。尚、液液分
離槽13から抜き出される油相中における不純物の脂肪
族カルボン酸エステルとエントレーナーとの濃度比は、
通常1:100〜1:2であり、該油相のみから上記脂
肪族カルボン酸エステルを回収するのは不利である。一
方、水相における濃度を見ると、この比は通常1:1〜
15:1であり、上記脂肪族カルボン酸エステルの回収
に有利である。従って、水相からの上記脂肪族カルボン
酸エステルの回収比率が下がるほど回収工程での負荷が
上がることとなり、当該回収比率が低すぎると、エネル
ギー使用量の増大が顕著となる。従って、より好ましく
は、該回収比率が20%以上である。該回収比率の調節
は、ライン27に示される経路の流量やライン28に示
される経路の流量調節によって行なうことができる。な
お、ライン28に示される経路による調節の場合、水還
流量の総量は変わらないように調節されることが好まし
い。また、ストリッピング塔21から排出される水をデ
カンター13に再循環させて該回収比率を上げることも
可能である。
【0028】なお本発明では、例えば液液分離槽13で
液液分離した際の、不純物である脂肪族カルボン酸エス
テルの分配は、(水相中の当該物質合計量)/(油相中
の当該物質合計量)で示される比率が大きいほど、本発
明方法の効果が大きい。それは例えば(単位時間当たり
の水相流量×水相中の上記脂肪族カルボン酸エステルの
濃度)/(単位時間当たりの油相流量×油相中の上記脂
肪族カルボン酸エステルの濃度)で得ることが出来る。
通常、油相中の上記脂肪族カルボン酸エステルの濃度は
1〜50重量%であるが、この濃度は、ライン25に示
される経路から回収しようとする上記脂肪族カルボン酸
エステルの量及び、水相と油相それぞれへの当該物質の
分配比率に依存する。
【0029】当該物質の水相からの回収量が同じ条件で
エントレーナーの種類を変更する場合には、油相への分
配比率が高いエントレーナーであるほど、油相中の上記
脂肪族カルボン酸エステルの絶対量が増加する。これは
油相に同伴する該物質の量が多くなること、すなわちエ
ントレーナーを含む油相総量の増加を意味しており、設
備的およびエネルギー的なデメリットを生ずる。特に、
エネルギーに関しては、エントレーナーを塔頂より全量
回収するため、使用熱量が増加することとなる。ただ
し、ライン16のような水還流を実施するプロセスで
は、ライン17からの当該物質の流出量を維持しながら
も、ライン16の水還流量を減らすことにより、エント
レーナー増加分の熱量増加を低減させることができる。
WO98/45239号公報には油相に同伴する不純物
の脂肪族カルボン酸エステルが多く、水還流を実施して
いない例が示されている。
【0030】従って、本発明は、油相に同伴する不純物
の脂肪族カルボン酸エステルの量が、水相に同伴する上
記脂肪族カルボン酸エステルの量の20倍以下、好まし
くは17倍以下、より好ましくは15倍以下での実施、
又は水還流を実施していることが好ましい。なお、ここ
での同伴量は該物質濃度と経路を流通する液流量の積に
よって決まる。なお、図1においては回収工程を2つの
蒸留塔で表記しているが、塔21と24を連結し、塔2
4のリボイラーを省略した工程とすることも可能であ
る。
【0031】本発明は、不純物の脂肪族カルボン酸エス
テルの分離回収を必要とする共沸蒸留において、より大
きな効果をもたらす。上記した本発明の適用例の更に好
ましい一態様として、共沸蒸留塔の塔頂液中に於ける脂
肪族カルボン酸濃度が1,000ppm以下、かつ、該
共沸蒸留塔の缶出液中におけるエントレーナー濃度が1
00ppm以下、エントレーナー中の不純物の脂肪族カ
ルボン酸エステルの濃度が25%以下となるように共沸
蒸留塔の運転条件を制御する方法が挙げられる。
【0032】
【実施例】以下、本発明の具体的態様を実施例により更
に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限
り、下記の実施例によって限定されるものではない。 実施例1 蒸留対象溶液として酢酸及び酢酸メチルを含有する水混
合物を、エントレーナーとして酢酸n−ブチルを使用
し、図1に示す蒸留プロセスによって連続的に蒸留処理
を実施した。蒸留対象溶液は、p−キシレンの液相酸化
によってテレフタル酸を製造するプロセスの各工程から
回収されたものであって、その単位時間当たりの総供給
量は酢酸116.9重量部、水25.5重量部、酢酸メ
チル1.3重量部からなる混合物であるが、それらを3
つの異なる組成のフィードとして理論段数21段の共沸
蒸留塔11の7段、16段、21段にそれぞれ供給し
た。共沸蒸留塔の塔底より缶出液として濃縮酢酸を単位
時間当たり128.2重量部で抜き出した。缶出液中の
酢酸ブチル濃度は250ppm以下とした。
【0033】p−キシレンはライン22より中段抜き出
しして回収し、酢酸メチルは理論段数13段のエントレ
ーナー回収塔24により蒸留回収した。共沸蒸留塔11
の塔頂からは共沸組成の水及びエントレーナーを含む蒸
気が得られ、これを冷却してデカンター13に回収し
た。デカンター13で分離した2液相のうち水相液は、
ライン17を通って全量が理論段数8段のストリッピン
グ塔21へ導入され、有機成分を除去した後にライン1
8と28とに分けられる。ライン18は廃水、ライン2
8は共沸蒸留塔11への還流水とした。廃水の量(W
w)と還流水として戻される量(Wr)とから、Wr/
Wwで定義される水還流比が所望の値となるように還流
水量を決めた。本実施例においては、排出される水相液
の量(Ww)が単位時間当たり17.3重量部、還流水
(Wr)が11重量部で水還流比が0.64の条件で実
施した。ストリッピング塔21で回収された有機成分は
ライン23を通ってエントレーナー回収塔24へ移され
る。エントレーナーはデカンター13で液液分離した
後、ライン15から共沸蒸留塔11へ循環供給した。エ
ントレーナーの損失分はライン30より補給した。ま
た、酢酸メチル回収のために所望に応じてエントレーナ
ーをエントレーナー回収塔24の8段目に導入するライ
ン27を設けた。このライン27を流れるエントレーナ
ー量を調整して、系外へ回収される酢酸メチルの量と塔
頂凝縮液の水相液を経由して回収工程に導入される酢酸
のメチルの量との比を設定した。具体的には、系外へ回
収される酢酸メチルの量はライン26を通る酢酸メチル
の量、塔頂凝縮液の水相液を経由して回収工程に導入さ
れる酢酸メチルの量はライン17を通る酢酸メチルの量
として計算した。系外へ回収される酢酸メチルの量に対
して塔頂凝縮液の水相液を経由して回収工程に導入され
る酢酸メチルの量が24%、ライン26からの回収酢酸
メチル中の酢酸n−ブチルの濃度が0.90%で、エン
トレーナー回収塔24の使用熱量は1.3Gcal/h
rであった。
【0034】実施例2 実施例1において、系外へ回収される酢酸メチルの量に
対して塔頂凝縮液の水相液を経由して回収工程に導入さ
れる酢酸メチルの量を15%に下げた以外は、実施例1
と同様に蒸留処理を実施した。エントレーナー回収塔2
4での使用熱量は2.0Gcal/hrであった。この
ように、油相から直接酢酸メチルを回収する比率が増え
ると、使用熱量が増大することが確認された。
【0035】
【発明の効果】本発明により、複雑な蒸留プロセスを用
いることなく、低減されたエネルギーで共沸蒸留を運転
することができる。従って、本発明の方法は、変動費上
または環境保護上大きな効果をもたらし、さらにはその
単純さの故に安定性が高く、有効成分の流出を低減する
効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するための蒸留プロセスの一例を
示す流れ図である。
【符号の説明】
11 共沸蒸留塔 13 液液分離槽(デカンター) 21 ストリッピング塔 24 エントレーナー回収塔

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも以下の工程(1)〜(5)を
    有する共沸蒸留方法。 工程(1): 水、脂肪族カルボン酸及び脂肪族カルボ
    ン酸エステルを含む蒸留対象溶液を、エントレーナーを
    用いて共沸蒸留して、含水量の低減された脂肪族カルボ
    ン酸と、水分の濃縮された塔頂留出物を得る工程。 工程(2): 該塔頂留出物を凝縮させて、ガスと、水
    相及び油相の2相に分れた凝縮液とを得る工程。 工程(3): 該凝縮液の水相及び油相を分取する工
    程。 工程(4): 該分取で得られた水相の一部または全部
    を蒸留して、上記脂肪族カルボン酸エステルを含み、含
    水量の低減された塔頂留出物を得る工程。 工程(5): 工程(4)にて得られた塔頂留出物を、
    工程(3)で分取した油相の一部又は全部と共に蒸留
    し、該蒸留によって得られる上記脂肪族カルボン酸エス
    テルの一部又は全部を系外へ回収する工程。
  2. 【請求項2】 共沸蒸留における油相中の上記脂肪族カ
    ルボン酸エステル濃度が、3〜50重量%であることを
    特徴とする請求項1に記載の共沸蒸留方法。
  3. 【請求項3】 工程(3)で分取した油相の少なくとも
    一部を共沸蒸留塔に戻すことを特徴とする請求項1また
    は2に記載の共沸蒸留方法。
  4. 【請求項4】 工程(5)にて得られる脂肪族カルボン
    酸エステルの20%以上が、工程(4)にて得られた塔
    頂留出物に由来することを特徴とする請求項1乃至3の
    いずれか1項に記載の共沸蒸留方法。
  5. 【請求項5】 工程(5)にて得られる脂肪族カルボン
    酸エステルのうち、分取した油相の一部または全部に由
    来するものが80%以下であることを特徴とする請求項
    1乃至4のいずれか1項に記載の共沸蒸留方法。
  6. 【請求項6】 工程(5)にて得られる脂肪族カルボン
    酸エステルの一部を共沸蒸留塔に戻すことを特徴とする
    請求項1乃至5のいずれか1項に記載の共沸蒸留方法。
  7. 【請求項7】 工程(3)で分取した水相の少なくとも
    一部を還流液として共沸蒸留塔に戻すことを特徴とする
    請求項1乃至6のいずれか1項に記載の共沸蒸留方法。
  8. 【請求項8】 工程(5)において、工程(4)にて得
    られた塔頂留出物を、工程(3)で分取された油相の一
    部又は全部及び工程(2)で得られたガスと共に蒸留す
    ることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記
    載の共沸蒸留方法。
  9. 【請求項9】 工程(2)で得られた凝縮液の油相から
    回収される上記脂肪族カルボン酸エステルの量を、該凝
    縮液の水相から回収される上記脂肪族カルボン酸エステ
    ルの量の20倍以下とすることを特徴とする請求項1乃
    至8のいずれか1項に記載の共沸蒸留方法。
  10. 【請求項10】 脂肪族カルボン酸溶媒中でアルキル置
    換芳香族炭化水素を酸化して芳香族カルボン酸を製造す
    る方法において、酸化反応で得られる水と脂肪族カルボ
    ン酸を主として含む留分を蒸留対象溶液として請求項1
    乃至9のいずれかに記載の共沸蒸留方法を行なうことを
    特徴とする芳香族カルボン酸の製造方法。
  11. 【請求項11】 工程5で回収された脂肪族カルボン酸
    エステルの少なくとも一部を、アルキル置換芳香族炭化
    水素を酸化して芳香族カルボン酸を製造する工程のいず
    れかにリサイクルすることを特徴とする請求項10に記
    載の芳香族カルボン酸の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016530989A (ja) * 2013-07-11 2016-10-06 セラニーズ アセテート,エルエルシー セルロースエステルの製造におけるエネルギー回収プロセス

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