JP2002320409A - 人工ヨシ原およびその造成方法 - Google Patents

人工ヨシ原およびその造成方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ヨシを汽水域の塩分でも枯れないように植栽
して、汽水域に人工的なヨシ原を創出する。 【解決手段】 汽水域Aを人工ヨシ原Bの予定区域に、
石塁11aなどの透水性の堤11を築く。堤11の内側
に、ヨシの植栽土壌12を入れ、その地盤高を平均潮位
より高めに設定して、土壌間隙水の塩分を実用塩分で1
4PSU以下になるようにする。かかる植栽土壌12に
ヨシを株植えして人工ヨシ原Bを構築する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、淡水と海水とが混
じり合った汽水域に、人工的にヨシを植栽する技術に関
し、特に塩分被害を受けずにヨシの生育環境を人工的に
創出する技術である。
【0002】
【従来の技術】近年、水環境の汚染が著しく、大きな社
会問題となっている。例えば、大きな湖などでは、湖周
辺の宅地化が急速に進み、住環境から流される洗濯水な
どの生活排水、雑排水により湖が富栄養化してその汚染
が進行している。豊富な漁業資源により支えられていた
湖など沿岸漁業も、水質の悪化に伴う急激な漁業資源の
減少に伴い、廃業を余儀なくされている場合も見られ
る。
【0003】かかる汚染状況の改善は、急務の課題であ
り、今までに多数の改善手法が提案されてきた。かかる
種々の改善手法が提案されるなかで、最近、水辺植物で
あるヨシの水質浄化に果たす役割が見直されている。従
来は、湖や川などの周辺に、群落をなして自然に生えて
いたヨシも、近年の湖、川周辺の宅地化に伴いその多く
は姿を消している。
【0004】しかし、ヨシ原の群落により、ヨシ原が存
在する湖などの水質の自然浄化が行われていたことが、
最近の研究で分かってきた。
【0005】そこで、水質の悪化した湖などでは、人工
的にヨシ原を再現する取り組みが行われるようになって
きた。従来のヨシ原を人工的に造成しようとする試み
は、周囲と区画する堰堤または土塁を築き、かかる堰堤
または土塁の内側に、植栽土壌を入れて、この植栽土壌
にヨシを株または地下茎などにより植え付けることによ
行われていた。
【0006】因みに、ヨシは、漢字で「葦」と記載し、
「あし」とも呼ばれる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来構成
の人工的なヨシ原の造成方法では、川や、淡水湖などの
淡水水域では十分にヨシの生育方法が確立されているも
のの、淡水と海水とが混ざった汽水域での造成にはその
まま適用できない場合も多かった。ヨシの生育が、汽水
中の塩分により阻害されるためである。
【0008】従来、ヨシ原を人工的に造成しようとする
現地の汽水中の塩分、および潮位変動などに対して、ヨ
シを植え付ける植栽床の構造(土質、地盤高さ)につい
ては、どのような構成が好ましいかという明確な基準は
なかった。淡水域での植栽状況を試行錯誤的に当てはめ
て、汽水域でのヨシ原復元がなされてきたのである。
【0009】そのため、汽水域に設けた従来構成の人工
ヨシ原では、汽水中の塩分などの影響を受け、ヨシが水
中の塩分により枯れたりなどして、確実にヨシを生育す
ることが困難であった。すなわち、従来は、ヨシの塩分
耐性、適地選定の基準が明確でなかったのである。
【0010】本発明者らは、かかるヨシ原造成に際して
の基準を明確にして、ヨシの生育に対する塩分の被害を
最小限にくい止め、確実なヨシ原の造成を積極的に図
り、自然な形での水質浄化を強く進める必要があると考
えた。
【0011】併せて、従来構成の人工ヨシ原では、植栽
土壌として、園芸などで使用する造園用土が使用されて
おり、広範なヨシ原の造成を行うに当たっては、施工コ
ストの低減という観点から割高であると本発明者は考え
た。園芸用土を使用せずに、施工コストの低減化が積極
的に図れる使用土壌の検討も必要と考えた。
【0012】また、従来は、硫化物を多く含む底泥など
は、ヨシの根圏が嫌気化するためヨシの生育が困難とな
ることが指摘されていた。しかし、航路確保などのため
に浚渫される浚渫土を利用することができれば、施工コ
ストの観点からは極めて有利である。そこで、本発明者
は、かかる浚渫土の利用についての検討も必要と考え
た。
【0013】本発明の目的は、ヨシが汽水域の塩分でも
枯れないように植栽して、汽水域に人工的なヨシ原を創
出することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、汽水域に人工
的にヨシ原を造成する人工ヨシ原であって、ヨシを植栽
する植栽土壌と、前記植栽土壌を囲み、前記植栽土壌の
流亡を防止する透水性の土壌流亡防止堤とを有すること
を特徴とする。あるいは、汽水域に人工的にヨシ原を造
成する人工ヨシ原であって、ヨシを植栽する植栽土壌
と、前記植栽土壌を囲む透水性の堤とを有することを特
徴とする。前記堤と、前記植栽土壌との間には、前記植
栽土壌の流亡を防止する土壌流亡防止層が介在されてい
ることを特徴とする。
【0015】前記植栽土壌の前記ヨシの地下茎が発達す
る深度範囲の土壌内では、土壌内間隙水の平均塩分の最
大値が、塩分実用単位で14PSU以下に設定されてい
ることを特徴とする。前記深度範囲とは、地表下25c
mまでの範囲内であることを特徴とする。
【0016】前記植栽土壌の地盤高は、前記植栽土壌が
設けられた前記汽水域の朔望平均高潮位以下で、平均潮
位より高く設定されていることを特徴とする。前記平均
潮位は、前記植栽土壌に植栽されたヨシの地上茎が生長
する期間の平均潮位であることを特徴とする。
【0017】前記植栽土壌が設けられた前記汽水域の表
層の平均塩分の最大値が、塩分実用単位で14PSU以
下に設定されていることを特徴とする。前記平均塩分と
は、前記植栽土壌に植栽されたヨシの地上茎の生長する
期間の平均塩分であることを特徴とする。
【0018】前記植栽土壌は、前記ヨシの地下茎が植栽
される植栽床土壌と、前記植栽床土壌の下に設けられる
植栽床下土壌とから構成されることを特徴とする。前記
植栽床土壌は、シルト・粘土混じり砂質土、あるいは小
礫混じり砂質土であることを特徴とする。
【0019】上記いずれかの構成では、潮汐の変動に伴
う地下水位の変動は、地表下5cmより深い深度まで行な
われることを特徴とする。また、前記植栽土壌は、地表
下25cmの深さまでは、透水係数が1×10-4cm/s以
上の土壌で形成されていることを特徴とする。
【0020】あるいは、前記植栽土壌は、地表下25c
mの深さまでは、透水係数が1×10-6〜1×10-4cm
/sの土壌で形成され、前記植栽土壌には、地表下5cm
より深い深度まで地下水位の変動を起こす排水層及び/
または排水路が設けられていることを特徴とする。前記
排水層は、前記構成の植栽床下土壌であり、前記植栽床
下土壌には、砂利、砕石、粗砂などの排水材が使用され
ていることを特徴とする。
【0021】本発明は、汽水域に人工的にヨシ原を造成
する人工ヨシ原造成方法であって、汽水域の人工ヨシ原
造成区域に沿って、透水性の堤を築き、堤内にヨシを植
え付ける植栽土壌を流亡しないように投入し、前記植栽
土壌の地盤高を、植栽土壌内のヨシの地下茎の発達する
範囲内での土壌間隙水中の塩分が塩分実用単位で14P
SU以下となるように設定し、前記植栽土壌にヨシを植
え付けることを特徴とする。
【0022】本発明は、汽水域に人工的にヨシ原を造成
する人工ヨシ原造成方法であって、前記人工ヨシ原の地
盤高を、ヨシ根圏の地下水の塩分がヨシの生育限界を満
たしていることを条件として設定することを特徴とする
人工ヨシ原造成方法。前記ヨシ根圏の地下水の塩分は、
造成予定地の汽水域の潮位に対しての前記ヨシ根圏の干
出率を考慮して算出されることを特徴とする。前記ヨシ
根圏の地下水の塩分は、造成予定地の汽水域の潮位より
干出している場合は塩分0と見做して算出された所定期
間にわたっての平均であることを特徴とする。
【0023】本発明は、汽水域に人工的にヨシ原を造成
する人工ヨシ原造成方法であって、造成予定地の汽水域
の潮位に対して、造成しようとする人工ヨシ原の地盤高
を仮設定して、前記造成予定地に人工ヨシ原を造成した
とする場合のヨシ根圏の干出率を求めるヨシ根圏干出率
算出工程と、前記造成予定地の汽水域の表層塩分と、前
記ヨシ根圏干出率算出工程で求められた干出率とから、
前記ヨシ根圏の地下水塩分を求めるヨシ根圏地下水塩分
算出工程と、前記ヨシ根圏地下水塩分算出工程で求めた
前記ヨシ根圏の地下水塩分と、前記ヨシ根圏干出率算出
工程で求めた前記干出率とから、前記ヨシ根圏より地下
水位が低下する期間のヨシ根圏の地下水塩分を0と見做
して、前記干出率を考慮したヨシ根圏の地下水塩分を算
出する干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分算出工程とを有
し、前記干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分算出工程で算出
された前記干出率を考慮したヨシ根圏の地下水塩分が、
ヨシの塩分に対する生育限界を満たすように、造成予定
の人工ヨシ原の地盤高を設定することを特徴とする。
【0024】なお、PSUは、塩分実用単位( Practi
cal Salinity Unit )と呼ぶ塩分の単位である。例え
ば、30PSUとは、1kgの海水に30gの塩類が溶
けていることを表す。
【0025】
【発明の実施の形態】(実施の形態1)以下、本発明の
実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、
本発明の人工ヨシ原の造成状況を示す斜視図である。図
2は、図1のA−A線で切断した様子を示す断面図であ
る。
【0026】図1に示す場合には、汽水湖などの汽水域
Aの水際のコンクリート護岸10を背にして、人工ヨシ
原Bが設けられている。人工ヨシ原Bは、図1に示すよ
うに、コンクリート護岸10に沿った所定範囲の前方を
略コ字形に透水性の堤11が築かれ、内側に植栽土壌1
2が設けられて構成されている。図1に示す場合には、
堤11は、石塁11aに構成されている。
【0027】石塁11a(11)は、汽水域Aのコンク
リート護岸10側の水際、すなわち、コンクリート護岸
10の構築位置から所定距離汽水域Aの沖側に向けて構
築され、所定距離沖側に進んだ地点で、コンクリート護
岸10に沿って構築され、所定長さ構築した地点で、コ
ンクリート護岸10に向けて構築され、上方から見た場
合に略コ字形になるように構築されている。
【0028】石塁11aは、図2に示すように、捨石1
3を、汽水域Aの漸次深くなる原地地盤である底面14
に沿って、中央部が盛り上がるように断面山形に積み上
げて構築すればよい。捨石13で築いた石塁11aを堤
11として使用することにより、積み上げた捨石13の
隙間を通して水が通り抜け、堤11の透水性が確保でき
る。石塁11aの中央部の高さは、植栽土壌12の地表
レベルに合わせて設定しておけばよい。
【0029】図2の断面図に示すように、石塁11aの
内側には、石塁11aの内面に沿って所定の厚さで土壌
流亡防止層15が構築されている。土壌流亡防止層15
は、例えば、砂を充填した土嚢、あるいは砕石などを積
み上げて構築すればよい。かかる構成の土壌流亡防止層
15の高さは、植栽土壌12の高さに合わせて構築され
ている。
【0030】石塁11aに構成した堤11により植栽土
壌12の波浪などによる浸食が防止される。併せて、石
塁11aを構成する捨石13の隙間から水が石塁11a
の外側と内側とを行き来することで、透水性が確保され
ている。植栽土壌12の表面が冠水し、その後水が引い
た状態で水が溜まると、そのままの状態では干出時に植
栽土壌の塩分が濃縮されて高くなるが、かかる干出時で
も、堤11に透水性を持たせておけば、水が堤11を通
って植栽土壌12内に通ってくるので塩分が高くならな
いように抑えることができる。
【0031】堤11の内側に設けた土壌流亡防止層15
により植栽土壌12の流亡をより効果的に抑えることが
できる。なお、堤11の透水性を確保できる構造であれ
ば、上記構成の石塁11a以外の構成であってもよい。
石塁11a以外の堤11を構成することにより、十分な
透水性を確保することができると共に、土壌流亡防止機
能をも持たせることができれば、前記説明の土壌流亡防
止層15の構成を設けなくても構わない。かかる構成に
ついては、後記する実施の形態4で詳細に述べる。
【0032】内側に土壌流亡防止層15を設けた石塁1
1aにより囲まれた範囲には、植栽土壌12が入れられ
ている。植栽土壌12は、図2に示すように、植栽床下
土壌12aと、植栽床土壌12bとから構成されてい
る。植栽床下土壌12aには、砂利、砕石、砂質土など
透水性の良好な土壌を使用すればよい。このようにして
透水性を確保することにより、石塁11aを通過する汽
水域Aの水を、さらに植栽土壌12内に進入させて通過
してきた水を浄化させることができる。
【0033】また、ヨシ植栽床下土壌12aの透水性を
良好にすることにより、その上のヨシ植栽床土壌12b
の透水性も併せて良好にすることができ、ヨシCの根の
周りが好気的となり、ヨシの地下茎の発達を良くするこ
ともできる。
【0034】このように植栽床下土壌12aに透水性の
良好な土壌を使用することが、植栽床土壌12bの透水
性を確保するためには好ましいが、しかし、植栽床土壌
12bに、ヨシの地下茎の発達に必要な透水性を十分に
確保できる土壌を使用することができれば、植栽床下土
壌12aには、透水性の低い、あるいは透水性のない土
壌を使用しても構わない。
【0035】また、堤11は、ヨシ原の外側に向けて、
穏やかな緩い勾配が付けられている。これは、ヨシ原周
囲からハゼ類などの魚類、アシワラガニなどの甲殻類、
カワザンショウガイなどの貝類のような生物がヨシ原内
に進入し易いようにするためである。かかる底生生物の
進入を確保することで、自然のヨシ原に見られる生物環
境の復元が行われる。単に水質浄化の目的だけではな
く、自然の生物環境を復元することで、豊かな生態系の
再現が図れるのである。堤の内外で大きな段差を設けて
は、かかる生物の進入が図れない。
【0036】かかる植栽床下土壌12aは、汽水域Aの
底面14に沿って投入され、植栽床土壌12bの地表面
12cからの深度が25cm以上低いレベルで平らにな
るように投入される。このようにして平らになるように
投入された植栽床下土壌12aの上に、地盤高さが、平
均潮位より高くなるように植栽床土壌12bを平らに入
れる。
【0037】植栽床土壌12bは、地表面12cから2
5cm以上の深度範囲に設けられ、ヨシCの地下茎の生
長が促進される土壌を客土して投入すればよい。客土と
しては、例えば、建設残土や、汽水湖の航路確保のため
に浚渫する浚渫土壌などを使用することができる。植栽
床土壌12bとして使用する土壌の土質は、例えば、砂
質土、あるいはシルト・粘土分を含んだ砂泥質土、小礫
混じりの砂質土で透水性の良好なものが好ましい。透水
性としては、少なくとも1×10-4cm/s以上あるこ
とが望ましい。
【0038】砂分を含まない礫、略粘性土100%の土
質は好ましくない。砂分を含まない礫では、土壌空隙率
が大きくなり、根が生長してもヨシが不安定になりやす
いため好ましくない。粘土などの略粘性土100%で
は、透水性がなく、好気的環境を必要とするヨシCの地
下茎の根圏の環境を嫌気的とすることや、干出時間が長
い時期では粘性土が硬化するため、地下茎の発達を遅ら
すばかりでなく、場合によっては根腐れを発生する虞も
あり、その使用は好ましくない。
【0039】さらには、汽水域Aの塩分が高い場合に
は、例えば、表層の塩分を塩分実用単位で14PSUを
基準値として、この基準値より高い場合には、地盤高
を、例えば汽水域Aの4月から8月までの5カ月間の月
平均潮位より高く設定することが好ましい。かかる地盤
高を設定しておけば、ヨシCの生長が見込まれる、すな
わち生長率が高い4月から8月までの時期は、植栽床土
壌12b内へ進入する汽水に基づくヨシの生育に及ぼす
塩分の影響を極力少なくすることができる。
【0040】上記構成では、平均潮位として月平均潮位
を地盤高の設定基準としたが、平均を算出する期間を月
に限定する必要はなく、現地の状況に合わせて平均的な
潮位が算出できる期間を設定して構わない。
【0041】かかる平均潮位は、塩分のヨシの生育に及
ぼす影響を極力抑えようとするために、地盤高をどの程
度の高さに設定すれば良いかの基準を設定するために求
める値である。そのため、平均潮位は、ヨシの地上茎の
生長期間の潮位の動向を示すことができる期間内である
ことが必要である。
【0042】前述の説明では、4月〜8月までの5カ月
間の月平均潮位としたのは、日本におけるヨシの生育が
著しいヨシの生長期間が、大体4月〜8月までであるた
めである。かかる期間の塩分の影響を抑制することによ
り、ヨシの生長を極力阻害しないで済むこととなる。
【0043】従って、人工ヨシ原の造成地の地理的状況
によって、例えば、寒冷地環境、温暖環境、あるいは日
本国内の環境か、あるいは外国の環境なのかによって
も、さらには、ヨシの種類によっても、かかる平均潮位
を算出する期間は変わり得るものであり、厳密には個々
の条件に合わせた設定をすればよい。
【0044】造成地域、あるいはヨシの種類により、生
長期間は各々異なる場合も考えられ、例えば、4月〜8
月の期間範囲よりも短い期間となる場合も、あるいは長
期間となる場合も、さらには、算出期間が全く上記期間
範囲に重ならない場合も考えられるのである。要は、造
成予定地におけるヨシの生長期間を十分に把握して、そ
の期間内で平均潮位を求めるようにすればよい。
【0045】因みに、上記4月〜8月の期間は、ヨシ
(Phragmites communis )を植栽した場合であるが、日
本国内では、ほぼかかる期間内であれば、自生するヨシ
の生長期間の見積としては十分な期間であると考えられ
る。
【0046】しかし、汽水域Aの表層の塩分の低い部分
が水深の深い処まで形成される場合には、4月から8月
頃までの表層の月平均塩分が塩分実用単位で14PSU
以下の水深が植栽床土壌12の下面以下になるように設
定すれば、その分、地盤高を低く設定することができ
る。
【0047】汽水域の表層としては、例えば、植栽土壌
厚と同等にすればよく、0〜0.25mの範囲を想定す
ればよい。かかる表層の平均塩分として、月平均塩分を
地盤高の設定の基準としたが、上記平均潮位の説明でも
述べたように、平均をかかる月平均塩分に限定する必要
はない。現地の汽水状況に合わせて表層範囲を設定し、
その平均的な塩分が把握できる期間を設定すればよい。
さらに、かかる平均塩分の算出期間においても、前述の
平均潮位の算出に関する説明と同様に、ヨシの生長期間
の平均塩分が求められるように算出すべきであることは
言うまでもない。
【0048】塩分を塩分実用単位で14PSUであれば
よいという点に関しては、ヨシの生育に関しては、塩分
はより少ない方が好ましいため、その最大塩分値を設定
しておくことが、汽水域で人工的にヨシ原を造成するに
際しては、重要なことである。実験により、14PSU
であれば十分に良好なヨシの生長が見られるということ
である。14PSU以下とは、0、若しくは0に限りな
く近い値でも構わないということで、かかる場合は淡水
域における人工ヨシ原の造成に繋がることとなる。
【0049】従来は、かかる汽水域の表層の塩分と、ヨ
シの植栽土壌の地盤高との関係が明らかにはされておら
ず、本発明者により初めて明らかにされたものである。
これにより、汽水域でも、塩分により生育を阻害される
ことなくヨシ原を人工的に造成することができることと
なる。
【0050】植栽床土壌12bの地表面は、極力平らに
形成して、大きな不陸部分を形成しないように留意する
ことが必要である。これは、地表面に汽水の水たまりが
極力できないようにするためである。水たまりができる
と、干出時に水たまりの塩分が濃縮され、ヨシCの生育
に影響する可能性があるためで、かかる影響を極力排除
するためである。
【0051】かかる構成の本発明の人工ヨシ原造成地の
ヨシ生育に関する有効性について、以下実験により検証
した。検証に際しては、実際の汽水湖に実験区域を設定
して行った。
【0052】実験は、図3に示すように、湖西市知波田
の前河岸沖で、松見ヶ浦に注いでいる今川河口に堆積し
た干潟の北寄りにヨシ植栽実験区として設定した。今川
と前河岸水路に挟まれた干潟の内、岸中央より東へ50
m、南北30mの範囲に設定した。
【0053】かかる範囲に設定した実験区は、図4に示
す表−1のような概要を有している。実験区をA〜Dま
で区画し、ヨシを植える植栽土壌の床形状を、全て直径
5mの盛土高0.5mの円形台状に形成した。土壌構成
は、シルト・粘土分の少ない砂礫質で透水係数が10-3
cm/sec以上の土壌Xと、シルト・粘土分の多い砂
質土で透水係数が10-5cm/sec以下の土壌Yとに
構成した。
【0054】実験区A、Cには、土壌Xを使用し、実験
区B、Dには、土壌Yを使用した。さらに、地盤高の影
響をみるために、ヨシの植栽床土壌の造成高を、実験区
A、Bでは、TP. +0.15mとし、実験区C、Dで
は、TP. 0.00mに設定した。なお、TP. は、Tok
yo Peilの略であり、東京湾平均海面を示す。
【0055】併せて、実験区A〜Dの状況の有効性を、
天然ヨシ原と比較するため、現場の汽水域に対照区Eを
設けた。対照区Eでは、ヨシ床形状は、原地形のままと
した。土壌構成は、原地形では砂質土であり、地盤高は
TP. 0mと同程度であることが確認された。
【0056】(実験1)本実験では、かかる構成の実験
区A〜D、および対照区Eにおけるヨシの生育環境につ
いて調べた。ヨシの生育環境におけるヨシの植栽土壌の
地下水位の変動状況を比較した。その結果を、図5のグ
ラフに示す。図中、途中にグラフの欠損部分があるが、
ここは地盤高より潮位の高い部分で、地下水位の変動は
求められない部分である。
【0057】図5のグラフは、縦軸に地下水位を、横軸
に測定日時をとった。地下水位の上下高の差が大きい
程、水の出入りの大きさを示す透水厚が大きいと判断で
きる。図5からは、砂質土壌にヨシの根が発達した天然
ヨシ原は透水厚が大きく、また砂質土を主体に構成した
実験区A、Cの透水厚が大きかった。一方、シルト・粘
土分の多い土壌で造成したヨシ原の実験区B、Dは、地
下水位の変化が乏しく、透水厚が小さかった。
【0058】すなわち、図5のグラフからは、ヨシの植
栽土壌への水の出入りは、対照区Eの天然ヨシ原、実験
区A、Cが大きく、次いで実験区B、Dであることが分
かる。
【0059】(実験2)本実験では、ヨシの植栽床土壌
の干出水没時間などに関して調査した。月別平均潮位、
日平均水深、日平均水没時間の調査結果は、図6の表−
2に示した。表−2からは、ヨシの植栽床土壌の地盤高
の違いにより、ヨシ植栽床土壌の水没時間が異なること
がはっきり分かる。
【0060】地盤の高い方の実験区A、Bでは、ヨシの
生育が見込まれる9月頃までは、平均潮位が地盤高より
低く、10月のみ平均潮位が地盤高より高かった。すな
わち、平均的に干出していたこととなる。6月から9月
までの平均潮位は、地表から0〜20cmの深さであ
り、植栽したヨシの株根の当たる高さに相当していた。
【0061】従って、降雨の見込まれるこれらの期間に
おいて、汽水表層の塩分の低い部分が、ヨシ株根の根圏
の土壌深度にほぼ位置していたことが地下茎の発達に影
響したと考えられる。すなわち、ヨシの生育環境におけ
る塩分は、実験区A、Bは、実験区C、D、対照区Eに
比較して低いことが分かる。
【0062】一方、日水没時間の月平均値は、9月まで
10時間以下であり、年間でも最も平均潮位が上昇する
のに加えて異常潮位が記録された10月を除いて、11
月以降も12時間以下であった。すなわち、低塩分で、
且つ水没時間も短いこととなる。
【0063】地盤の低い方の実験区C、Dについては、
7月から11月までが、平均潮位が地盤高以上であり、
それ以外の月では、地盤高以下であることが分かる。つ
まり、ヨシが生長する9月頃までは、平均潮位が地盤高
より高く、日平均水没時間は10〜15時間であった。
すなわち、ヨシの生育環境における塩分は、実験区A、
Bに比べて、高塩分に長時間曝される環境であると言え
る。
【0064】対照区Eも、実験区C、Dと同様に、7月
〜11月までは平均潮位が地盤高よりも高い状況であっ
た。
【0065】(実験3)本実験では、土壌間隙水中の塩
分について検証した。ヨシの植栽床土壌間隙水の塩分連
続測定データの一部を、図7に示す。塩分測定は、観測
孔を植栽土壌表面から所定深度で穿孔し、孔内の水中塩
分を測定した。図7に示すデータは、9月に測定した値
である。
【0066】なお、図中、途中の欠損部分は、測定器の
メンテナンスのため測定ができなかった部分である。土
壌構成が同様な実験区同士で比較すると、地盤高の比較
的高い実験区A、Bの方が、地盤高の低い実験区C、D
より土壌間隙水の塩分が低いことが分かる。
【0067】かかる結果を、図8の表−3に示した。土
壌間隙水の実用塩分の月別平均値の結果からは、地盤高
の高い実験区A、Bでは、植栽した6月から8月まで
は、13.1〜13.3PSU以下であり、9月におい
ても約20PSU以下であった。
【0068】一方、地盤の低い実験区C、Dでは、8月
でそれぞれ16.8PSU、19.6PSUであり、9
月においてはそれぞれ22.2PSU、24.8PSU
であった。
【0069】すなわち、土壌Xで造成した実験区A、C
との比較では、実験区Aの方が、実用塩分が低いことが
分かる。6月から翌年の1月までの8カ月の平均値で
は、実験区Aの方が、4.6PSU実験区Cより低いこ
とが分かる。同様に、土壌Yで造成した実験区B、Dと
の比較では、実験区Bの方が、実験区Dよりも、3.1
PSU低いことが分かる。
【0070】なお、9月、11月、12月、1月では、
月平均潮位より実験区A、Bの造成高が高かったにもか
かわらず、植栽床土壌の間隙水中の塩分が、塩分実用単
位で14PSUより高くなっている。これは、この時期
の降雨が少なく実験区域の表層まで塩分が上昇し、汽水
域が形成されなかったためと考えられる。
【0071】以上の結果より、ヨシの植栽床土壌の地盤
高の違いにより、土壌間隙水中の塩分に差異が見られる
ことが分かった。すなわち、地盤高の高さの設定如何
で、ヨシの植栽床土壌中の塩分量を少なくすることもで
き、汽水域におけるヨシの生育に適った塩分状況の設定
が可能であることが分かる。
【0072】また、地盤高による影響は、透水性の違い
による影響に比べて大きいことが、同一地盤高で造成
し、植栽床土壌の異なる実験区A、B並びに実験区C、
Dとの土壌間隙水の塩分差と、地盤高の異なる実験区の
土壌間隙水の塩分差との比較から明確に分かる。
【0073】以上の実験1〜3によって、土壌Xで地盤
高の高い実験区Aは、実験区C、Dに比して、透水厚が
大きく、且つ、ヨシの生長が見込まれる9月頃までの平
均潮位より地盤高は高く、且つ月平均水没時間も短く、
且つ、土壌間隙水の塩分も低いことが確認された。
【0074】(実験4)本実験では、上記実験区A〜
D、および対照区におけるヨシの生長量の比較を行っ
た。なお、実験区との比較のために設ける対照区とし
て、図9、図10の表−4に示すように、X1 −X
1 線、X2 −X2 線、Y1 −Y1 線、Y2 −Y2 線で囲
まれた所定範囲の実験区画の今川に近い側に、地盤高お
よび河川との位置関係により、対照区1〜対照区4まで
の4箇所を設定した。
【0075】ヨシの生育状況の確認は、ヨシの平均本数
(本/m2 )、平均茎丈(m/m2)、刈り取り後速や
かに現地で測定される平均新鮮重量(kg/m2 )、刈
り取り後105℃で乾燥して測定される平均乾燥重量
(kg/m2 )の観点から、調査した。なお、実験区に
ついては、実験区内のヨシを全て刈り取り、植え付けた
株当たりの平均値で評価した。また、対照区について
は、50×50cmの枠内のヨシを刈り取り、単位面積
当たりの平均値で評価した。
【0076】先ず、天然ヨシ原(対照区)における状況
を調査した。その結果は、図11(A)、(B)、図1
2(A)、(B)から、図11(A)に示す平均本数を
除いて、今川上流域の方が対照区(1)〜(4)より全
て良好なことが分かる。
【0077】今川上流域は淡水ヨシ原であり、対照区は
全て汽水域におけるヨシ原であることから、淡水ヨシ原
の方が汽水域のヨシ原より生長が良好であることが分か
る。また、対照区1〜4では、対照区2における生長が
良好であることが分かる。これは、地盤高が低く、今川
から流入する河川水との接触時間が長いことが原因と考
えられる。
【0078】なお、対照区3は、対照区2より今川より
にあるが、地盤高が対照区2より高いため、今川流入水
との接触時間が短く、その分生長量が対照区2より小さ
いものと考えられる。
【0079】すなわち、対照区の調査結果より、ヨシの
生育密度、地上茎の茎丈、収量(乾燥重量)のいずれ
も、今川の河川水が直接流入する区域の生育が最も良か
ったことから、ヨシの生育に塩分が影響することが確認
されたのである。
【0080】次に、実験区A〜Dにおけるヨシの生長量
を、上記対照区の観察視点と同様の視点から比較した。
【0081】ヨシを植栽する場合、ヨシの植栽床土壌の
地盤高が生育に影響することが確認された。地盤高を高
く設定した実験区A、Bについては、地上部、地下部
(地下茎)いずれでも生育状況が良好であった。一方、
地盤高を低く設定した実験区C、Dでは、地上部、地下
部(地下茎)のいずれでも生育状況は良くなく、特に地
下茎の発育が不良であった。
【0082】すなわち、図11(C)、(D)、図12
(C)、(D)の結果から、生長量の大きい順に実験区
を並べると、A>B>C>Dの順になることが分かる。
すなわち、ヨシの生育環境における塩分の影響が少ない
順に生長量が大きくなっていることが分かる。かかる結
果は、対照区で得られたヨシの生育には塩分が生長阻害
要因となるとの考察からも納得できる結果であった。
【0083】ヨシを植栽する場合には、土質の違いによ
り地上部の最終生産量に差が出ることが確認された。シ
ルト・粘土分の少ない実験区A、C(シルト・粘土分2
〜4重量%)の方が、シルト・粘土分の多い実験区B、
D(シルト・粘土分18〜21重量)より1.2〜1.
5倍多いことが確認された。
【0084】なお、地下茎については、株当たりの本数
は、シルト・粘土分の少ない実験区A、Cの方がそれぞ
れ実験区B、Dと比較すると、多い結果となったが、大
きな差は認められなかった。
【0085】かかる状況は、図13に示す表−5からも
確認できる。表−5には、ヨシは一株から複数本の地下
茎が生えるため、各実験区では3株ずつ地下茎を掘り出
して、その成長状況を確認した。土被りとは、地表から
地下茎上面までの深さに相当する。また、各株につい
て、株からの茎長さ、株の中心から茎先端までの距離を
それぞれ測定した。
【0086】株植えしたヨシの地下茎が発達する土壌深
度は、地表から平均値で8〜13cmで、最大でも実験
区Bの23cmであった。対照区(天然ヨシ原)におい
て、土壌コアサンプル調査した結果からもヨシの地下茎
は地表から約20cmの範囲で確認できた。
【0087】ヨシ株から植え付け後に発達した地下茎
は、土中で分岐しながら生長している状況は見られた
が、それらの地下茎から分岐して地上茎に生長したもの
は殆どなかった。株植えしたヨシの生長は、最初の年に
は植え付けた株からの地上部(茎、葉、穂)の発達と、
地下茎の支脈の延長であると考えられる。従って、植え
付けた株と株の間における地下茎の分岐と地上部の生長
は、地下茎の発達状態により植え付けた次の年以降にな
ると考えられる。
【0088】植え付け後の翌年に、実験区A、B、C、
Dのそれぞれにおいて、ヨシの生育状況を観察した。地
盤高の高い実験区A、Bではヨシの生長が観察された
が、実験区C、Dでは殆どの株が生長しなかった。かか
る生育状況を、図14(A)、(B)に示す。図14
(A)では面積当たりの平均地上茎丈を、図14(B)
では面積当たりの平均本数を示している。なお、地上茎
丈および本数は、各実験区の中央付近の平均的な株を5
株ずつ選定し、その株を中心に50×50cmの枠内の
地上茎丈、本数をそれぞれ3カ月毎に測定した。
【0089】図14(A)、(B)から明らかなよう
に、地盤高の高い実験区A、Bの方が、地盤高の低い実
験区C、Dより生育本数も多く、且つ、地上茎丈も大き
いことが確認される。かかる結果は、地盤高が低い実験
区C、Dの方が、実験区A、Bに比べて、潮の干満に対
する水没時間が長かったため、塩分被害をより多く受け
たものと考えられる。
【0090】また、図14(A)、(B)のいずれの場
合にも、実験区Aの方が実験区Bの場合よりも生長が良
好であることが確認できた。そこで、図14に示す実験
期間における地下水位の変動を、前記図5に示すと同様
に観察した結果、シルト・粘度成分の多い土壌で形成さ
れた実験区Bでは、その透水厚さ、すなわち地下水位の
変動巾は5cm未満であることが分かった。
【0091】そこで、図14に示す結果と、かかる地下
水位の変動との結果の双方を考慮することにより、潮の
干満との関係において、すなわち潮汐の変動に伴う地下
水位の変動巾は、地表下5cmより深い深度範囲まで行
なわれるように構成することが好ましいことが確認され
た。
【0092】また、実験区A、B、C、Dおよび対照区
Eについては、当初、図4に示す表1のように設定した
が、その後、図15の表6に示すように、土壌状況など
を詳細に実測した。表6の結果からは、植栽土壌の粒度
(%)に関して、75mm未満2mm以上の平均粒径を
有する礫分、2mm未満75μm以上の平均粒径を有す
る砂分、75μm未満の平均粒径のシルト・粘土分につ
いてそれぞれの混合割合を実測した。併せて、透水係数
(cm/sec)、湿潤密度(g/cm3 )、乾燥密度
(g/cm3 )、地盤高(TP.m)についても実測し
た。
【0093】図15に示す表6をも含めた以上の結果を
踏まえ、且つ、人工的に植栽したヨシの最良の生長状況
が確認された実験区A、および対照区Eの状況に基づけ
ば、植栽土壌は、ヨシの地下茎の発達する深度を考慮し
て地表下25cmの深さまでは、透水係数が1×10-4
cm/sの土壌で形成されていることが好ましいことが分か
る。
【0094】また、透水性の良好でない土壌、例えば実
験区B、Dなどの結果からは、植栽土壌として、地表下
25cmの深さまでを透水係数が1×10-6〜1×10
-4cm/sの土壌で形成した場合には、植栽土壌には、地表
下5cmより深い深度まで地下水位の変動を起こす排水
層及び/または排水路を設けるなどして、潮汐の干満に
よる塩分の影響を小さくするための補完処置が必要と考
えられる。
【0095】上記一連の実験を通して、浜名湖のような
汽水湖で人工的にヨシ原を造成するに際してのヨシの生
育条件の基準を得ることができ、これに基づき本発明の
人工ヨシ原、およびその造成方法が構成されているので
ある。
【0096】(実施の形態2)本実施の形態2では、植
栽土壌に上記のように透水性の良好な土壌を使用した場
合に提案できる人工ヨシ原の構成と、透水性の良好でな
い土壌を使用した場合に提案できる人工ヨシ原の構成の
それぞれについて説明する。
【0097】植栽土壌に上記のように透水係数が1×1
-4cm/s以上の土壌を使用した場合は、例えば、図1
6、17に示すように、人工ヨシ原Bを構成することが
できる。図16に示す構成は、図1に示すと同様に、コ
ンクリート護岸10を背後に、略コ字形に堤11で囲っ
て形成されている。なお、以下、図中の符合は、図1、
2と同様の構成を示す場合には、同じ符合を使用するこ
ととする。
【0098】堤11は、捨石13を積み上げ石塁11a
に構成しておけばよい。石塁11a内側には、砂を充填
した土嚢、あるいは砕石などを積み上げた土壌流亡防止
層15が設けられている。このようにして形成された土
壌流亡防止層15の内側に、上記透水係数を満足する植
栽土壌12が入れられている。図17(A)の断面図に
示すように、コンクリート護岸10から汽水域Aの漸次
深くなる原地地盤である底面14に沿って、上面が平ら
になるように基盤20を設け、その上に植栽土壌12が
入れられている。
【0099】基盤20は、前記実施の形態1で示したと
同様の植栽床下土壌12aに形成しても良いし、あるい
はそれ以外の構成に形成しても構わない。図16、17
に示す場合には、植栽土壌12に透水係数が大きい良好
な透水性土壌を使用しているため、下げ潮時に地下水を
排除して、ヨシ床の地表面から5cm以上地下水位を下
げることができ、塩分被害を小さく抑えることができ
る。
【0100】次に、植栽土壌12に、透水係数が1×1
-6〜1×10-4cm/sの土壌を使用した場合には、かか
る植栽土壌12には、地表下5cmより深い深度まで地
下水位の変動を起こすことができる排水可能な層を設け
て、潮汐の干満により塩分の影響を小さくする補完処置
が必要となる。
【0101】図18に示す場合には、図17に示す構成
の基盤20を排水層21に代えた構成である。植栽土壌
12の透水性が良好でないため、植栽土壌12の下に排
水層21を設けることにより、植栽土壌12の下に設け
た排水層21から下げ潮時に地下水を排除し、ヨシ床で
ある植栽土壌12の地表面12cから5cm以上地下水
位を下げる。
【0102】かかる排水層21は、例えば、砂利、ある
いは砕石、あるいは粗砂などの透水性の良好な排水材を
使用すればよい。なお、排水材の粒径が大きくても、排
水層21の上に設けた植栽土壌12の流亡は、土壌流亡
防止層15によりくい止められる。
【0103】排水層21は、前記実施の形態1の図2に
おける植栽床下土壌12aを排水層21に、植栽床土壌
12bを上記透水係数を有する土壌に置き換えて成立す
る構成である。
【0104】(実施の形態3)本実施の形態3では、植
栽土壌12に、透水係数が1×10-6〜1×10-4cm/s
の透水性の良好でない土壌を使用した場合において、か
かる植栽土壌12に排水路22を設けた構成について説
明する。
【0105】図19に示すように、コンクリート護岸1
0を背にして、前記実施の形態1の図1に示すようにし
て、人工ヨシ原Bが形成されている。植栽土壌12面に
は、排水溝22aが排水路22として設けられている。
排水溝22a(22)は、例えば、1〜3m間隔で、並
行に複数本設けておけばよい。なお、かかる排水溝22
aの敷設方向は、図19に示すように、複数本が並行に
なるようにしなくてもよく、例えば、格子状に複数本の
排水溝22aが交差するように設けても構わない。
【0106】かかる排水溝22aを設ける構成では、図
20(A)の断面図に示すように、植栽土壌12の下に
排水層21を設けなくても構わない。排水溝22aによ
り、植栽土壌12の排水性が十分に確保されているた
め、植栽土壌12に透水性の良好な土壌を使用した前記
図17のような構成を採用することができる。
【0107】また、排水溝22aは、図20(B)の断
面図に示すように、例えば、植栽土壌12の層厚に併せ
た深さを有するように構成しておけばよい。さらに、排
水溝22aの先端は、そのまま土壌流亡防止層15に突
き当てておけばよい。
【0108】排水溝22aの断面形状は、図20に示す
ように、断面角形でも、あるいは図21(A)に示すよ
うに、断面逆台形状に形成しても構わない。要は、植栽
土壌の排水性の改善に資する形状であればよい。
【0109】排水路22としては、上記排水溝22a以
外の構成であっても構わない。例えば、図21(B)に
示すように、植栽土壌12に敷設した排水溝22a内
に、砂利、あるいは砕石、あるいは粗砂などの排水材2
3を充填するようにしてもよい。上記排水材23の目が
粗く、周囲の植栽土壌12が排水材23の目の間から流
出する心配がある場合には、かかる排水材23の周囲
を、図21(B)に示すように、ネット、あるいは透水
性フィルムなど吸出し防止材24で包めばよい。あるい
は、土嚢に排水材23を詰めてこれを排水溝22a内に
充填するようにしてもよい。
【0110】排水路22の変形例としては、例えば、図
21(C)に示すように、排水溝22a内に、管壁の周
囲に複数の貫通孔を設けた有孔管22bを上記排水材2
3で埋める構成としてもよい。
【0111】(実施の形態4)上記実施の形態では、透
水性の堤11、堤11内の土壌流亡防止層15をそれぞ
れ設け、その内側に植栽土壌12を入れた場合について
説明したが、透水性の土壌流亡防止堤25を設けること
により、岸から離れた汽水湖の任意の位置に浮島状に人
工ヨシ原を構成する場合について説明する。
【0112】図22(A)、(B)に示すように、本実
施の形態の人工ヨシ原Bは、汽水湖中にそれぞれ独立に
離ればなれに設けられている。それぞれの人工ヨシ原B
は、土壌流亡防止堤25で周囲が囲まれた中に、植栽土
壌12が入れられて構成されている。土壌流亡防止堤2
5は、砂利、砕石、砂質土などの透水性の良好な排水材
23を、透水性容器に充填して構成されている。
【0113】図22に示す場合には、透水性容器として
土嚢25a(25)を使用した。土嚢25に上記排水材
を詰めて、円環状にそれぞれの互いに隙間が開かないよ
うに配置して、透水性の土壌流亡防止堤25が形成され
ている。かかる土壌流亡防止堤25に囲まれた範囲に、
植栽土壌12が入れられている。
【0114】植栽土壌12には、例えば、上記説明のよ
うに透水係数が1×10-4cm/s以上の土壌を使用すれば
よい。さらに、植栽土壌12の下には、基盤20を設け
て、ヨシの地下茎の生育深度である少なくとも層厚25
cmの植栽土壌12を支持できるようにしておけばよ
い。かかる構成では、基盤20には、コンクリート盤、
あるいは難透水性土壌などを使用しても構わない。この
ようにして、本発明の実施の形態では、浮島状態に、人
工ヨシ原を構築することができる。
【0115】なお、浮島状態に形成した人工ヨシ原Bに
おける植栽土壌の間隙水の塩分測定は、図23に示すよ
うに、前記実施の形態1の実験3と同様に行なえばよ
い。すなわち、植栽土壌12に、塩化ビニール管を観測
孔31として通す。塩化ビニール管の植栽土壌12内に
埋設する部分は、管壁周囲に複数の穴を設けた有孔部3
1aに構成しておき、有孔部31aの管内には、塩分セ
ンサ32を設けておく。かかる構成の観測孔31内の塩
分センサ32により、植栽土壌12の間隙水における塩
分状況をリアルタイムで観測することができる。
【0116】(実施の形態5)前記実施の形態1〜4か
らも分かるように、人工ヨシ原の造成に際しては、塩分
被害を極力抑制するために人工ヨシ原の地盤高の設定が
極めて重要であることが確認された。そこで、本実施の
形態では、かかる地盤高の設定を、システマティックに
行える手法を提案するものである。
【0117】汽水域の塩性湿地におけるヨシの生育環境
については、D.S.Ranwellらにより、J.E
col.,52,627−642(1964)に、干出
水没する場合は汽水域の表層の塩分が12PSUでヨシ
の生育が減衰し、13.5PSUが生育限界であり、常
時冠水している場合は7.6PSUが生育限界であると
報告されている。また、港湾技術研究所の実験では、汽
水域の表層の塩分が10PSU以上で生育に影響が現
れ、20PSUが限界であると報告されている。
【0118】このように従来より報告されているヨシに
対する塩分の影響は、汽水域の表層の塩分に基づき評価
されており、かかる評価を基準として人工ヨシ原を造成
しようとすると、造成予定地の汽水域の表層塩分の調査
を行い、この条件で適合するか否かの判定が行われるこ
ととなる。
【0119】しかし、前記実施の形態1〜4を通しての
説明でも明らかなように、本発明者の実験を通して、ヨ
シの生育に及ぼす塩分の影響は、植栽されるヨシの根圏
における地下水の塩分が重要な判断指標となることが分
かる。すなわち、ヨシ原の生育環境の評価としては、ヨ
シ根圏の地下水の塩分の大小で判断する必要があり、前
記従来の報告にある汽水域の表層塩分の大小では、十分
に評価できないのである。
【0120】かかる点に関しては、湖水表層の塩分とヨ
シ根圏の地下水の塩分とではその値が異なる事実、およ
び前記報告からはヨシの生育限界を超えていると思われ
る表層塩分の高塩分水域でも、実際に良好なヨシの生育
が見られる事実などを通して、首肯されることである。
【0121】本発明者は、かかる知見から、人工ヨシ原
の造成には、前記従来報告に基づく汽水域の表層塩分を
基準とした評価方法では、十分なヨシの生育環境の評価
は行えず、かかる基準では適切な人工ヨシ原の造成手順
を確立することはできないと考えた。
【0122】さらに、ヨシの生育は、ヨシがその根圏か
ら水分とともに種々の栄養素を摂取するなどして行われ
るものであることや、地下茎が発達、分岐して生長する
ことから、ヨシの生育に塩分が及ぼす影響は、かかるヨ
シ根圏の地下水の塩分状況に左右されるものと、本発明
者は考えた。しかし、上記従来文献では、塩分被害につ
いてのかかるヨシ根圏における塩分状況が大きな影響を
及ぼすとの明確な認識は見られず、汽水域の表層塩分か
ら判断したヨシの生育限界が報告されているに過ぎな
い。
【0123】また、本発明者は、ヨシ原が塩分の影響を
受ける汽水域の場合、潮汐により潮位が変動するため、
その変動に合わせてヨシ根圏が干出水没することとなる
が、ヨシ根圏の地下水の塩分状況には、かかる干出水没
を考慮する必要があるのではないかと考えた。ヨシ根圏
の干出率がヨシの生育にどの程度の影響を及ぼすかにつ
いては従来報告はなく、かかる点の造成手順への考慮も
新たに確立させる必要があると考えた。
【0124】このように湖水表層の塩分に基づく従来の
造成方法では、汽水域における人工ヨシ原の造成におけ
る地盤高をどの程度に設定したらよいかの精確な判断が
行えないのである。そこで、本発明者は、ヨシ原の根圏
における塩分、すなわちヨシ根圏の地下水の塩分と、ヨ
シ根圏の干出率との双方を考慮した形での地盤高の設定
方法を新たに提案した。
【0125】本発明の人工ヨシ原造成方法では、人工ヨ
シ原の地盤高の設定を、造成予定地の汽水域の状況に合
わせて、ヨシ根圏干出率算出工程と、ヨシ根圏地下水塩
分算出工程と、干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分算出工程
とから求めることができる。
【0126】すなわち、ヨシ根圏干出率算出工程では、
造成予定地の汽水域の潮汐により変動する潮位に対し
て、造成予定の人工ヨシ原の地盤高を仮設定して、かか
る場合におけるヨシ根圏の干出率を求める工程である。
【0127】干出率(D:%表示)は造成予定地のヨシ
原を造成したとする場合の潮汐により潮位が変動するの
に対してのヨシ根圏の月平均干出率で示せばよい。かか
る月平均干出率の算出に際しては、精確には、造成予定
地周辺のヨシ原の地下茎の調査をして、実際のヨシ根圏
の土壌深度を求めておく必要があるが、これまでの天然
ヨシ原の調査結果からは、便宜上地表下20cmをヨシ
根圏と設定しておけばよい。
【0128】しかし、かかるヨシ根圏の土壌深度は、ヨ
シ原の置かれる状況で多少の変動はあるもので、実地調
査の結果からも、ヨシ根圏が地表下25cmまで達して
いる場合も見られており、状況に応じて、20〜25c
mの範囲の深度にヨシ根圏を設定して干出率を求めるよ
うにしても構わない。
【0129】かかる干出率(D)を潮位データから算出
するには次のようにして行う。潮位データは、既存資料
がなければ現地で計測する必要がある。なるべく年間の
データを取得することが好ましいが、例えば、年間のデ
ータの入手が困難であればヨシの生長期間である3月下
旬〜9月頃のデータを取得すればよい。また、別の方法
として、現地で最低でも1カ月間潮位計測を行い、計画
地付近の検潮所のデータより年間の潮位を試算する方法
もある。
【0130】なお、ヨシの生長期間としての上記3月下
旬〜9月頃という期間設定は、あくまで日本における平
均的なヨシの生長期間を採用したものである。ヨシの生
長期間は、実際のヨシの生育環境の違いにより当然に上
記平均的期間からのずれは想定されるため、上記3月下
旬から9月頃に限定する必要はなく、必要に応じて具体
的な生長期間の設定を適宜に変更し得ることは当然であ
る。
【0131】潮位に関しては、連続計測により潮位デー
タを直接入手する場合を除いては、入手可能な潮位デー
タは、干潮、満潮の両潮位および時刻、平均潮位のみで
ある。そのためかかるデータから、月平均干出率を求め
るには、先ず任意の時刻の潮位を算出する必要がある。
【0132】例えば、10分毎の潮位を算出し、かかる
潮位データから、想定するヨシ原の地盤高のヨシ根圏
(例えば、前記の如く地表下20cmとすればよい)の
日干出時間(h/日)を求め、これから日干出率(%;
h/24h)を求めることができる。このようにして求
めた日干出率の月平均を求めることにより、月平均干出
率(%)を求めることができる。かかる平均干出率の算
出に際しては、状況に応じて、月平均でなくても、ヨシ
が生長する期間、例えば3月下旬から9月頃の期間の平
均干出率を採用することも考えられる。
【0133】次に、ヨシ根圏地下水塩分算出工程では、
かかる干出率(D)を使用して、造成予定地の汽水域の
表層塩分から、前記造成予定地にヨシ原を造成したとす
る場合のヨシ根圏の地下水塩分を求める。
【0134】造成予定地の汽水域における表層塩分
(A)は、次のようにして求めることができる。すなわ
ち、先ず、当該汽水域における既存の塩分データの有無
を確認して使用可能なデータがあればそれを利用する。
しかし、使用可能な既存データがない場合には現地で計
測して求めることとなる。極力、年間のデータを取得す
るのが好ましいが、年間のデータ取得が困難である場合
には、ヨシの生育期間である3月下旬から9月頃までの
データを取得すればよい。
【0135】一方、造成予定地の汽水域に人工ヨシ原を
造成したとする場合のかかるヨシ根圏に相当する土壌深
度での地下水塩分(B)は、汽水域の上記表層塩分Aに
比べて低いことが本発明者の実験により確認されてい
る。これは、潮位の上昇による塩分の高い汽水域の水の
地下水への侵入に対して、雨水などの地下浸透、降雨に
よる汽水域の表層の淡水化などにより、地下水の塩分が
希釈されるためと考えられる。
【0136】そこで、表層塩分(A)とヨシ根圏の地下
水塩分(B)との上記関係を考慮して、本発明者は、Δ
S=a(D×R)+bなる実験式が成立することを見出
した。ここで、ΔSは、造成予定地の汽水の表層塩分
(A:PSU表示)と、かかる造成予定地に人工ヨシ原
を造成したとする場合のヨシ根圏の地下水塩分(B:P
SU表示)との差として示される塩分低下量(PSU)
を示す。かかるΔSは、月別塩分低下量として示せばよ
い。因みに、ΔS=A−Bなる関係式が成立している。
【0137】Dは、前記ヨシ根圏干出率算出工程で算出
された干出率である。Rは造成予定地における月別降水
量(mm/月)である。気象データなどから取得するこ
とができる。あるいは、現地で実際に計測するようにし
ても一向に構わない。
【0138】a、bは、造成予定地の汽水域ごとに定ま
る値であり、事前調査、あるいは類似汽水域のヨシ原の
データを使用して求める。例えば、造成予定地で実際に
ΔSと、D×Rの値を求めておき、ΔSと(D×R)と
をプロットして得られた直線の傾きからaを、切片から
bを求めることができる。
【0139】例えば、図24は、浜名湖松見ヶ浦で調査
した天然ヨシ原の4〜9月における塩分低下量と月平均
干出率×月別降水量との相関を示すグラフ図であるが、
かかるグラフから、a=0.0671、b=2.109
7と求めることができる。あるいは、類似汽水域で、か
かるデータが既に求められていれば、それを利用しても
構わない。
【0140】次に、干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分算出
工程で、ヨシ根圏干出率算出工程で求められた干出率
(D)と、前記ヨシ根圏地下水塩分算出工程で求めた前
記ヨシ根圏の地下水塩分(B)とから、ヨシの生育限界
を見極めるのにより適合したヨシ根圏の地下水塩分
(C)の月平均値を求める。かかるヨシの生育限界の見
極めにより適合したヨシ根圏の地下水塩分(C)は、B
で示されるヨシ根圏の地下水塩分と区別するため、以
下、干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分(C)と呼ぶことに
する。
【0141】かかる干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分
(C)が、ヨシ根圏が干出している期間、すなわち、ヨ
シ根圏より地下水位が低下する期間のヨシ根圏の地下水
の塩分を0と見做して算出された塩分値である。本発明
者は、実験を通して、かかる0見做しを行うことによ
り、ヨシの根圏の地下水の塩分状況と実際のヨシの生育
状況と符合性を説明できることを見出した。
【0142】そこで、かかる干出率考慮ヨシ根圏地下水
塩分(C)の値が、ヨシの塩分に対する生育限界を満た
しているか否かを判定することにより、適切な地盤高の
設定が行えることとなる。干出率考慮ヨシ根圏地下水塩
分C(PSU)と、前記干出率D(%)、ヨシ根圏地下
水塩分B(PSU)との間には、B(1−D/100)
=Cという関係式を考えることができる。
【0143】一方、干出率Dの算出に際しては、地盤高
(H:TP.m)を種々仮設定した上で求めているた
め、上記干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分(C)も、種々
の地盤高に合わせて、複数算出されることとなる。そこ
で、複数算出された上記干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分
(C)のうち、前記生育限界を満たす場合に対応した地
盤高が、造成しようとする人工ヨシ原の適切な地盤高と
なる。
【0144】なお、かかる干出率考慮ヨシ根圏地下水塩
分(C)としては、ヨシの生長期間の4〜9カ月の期間
の月平均値が、本発明者の実験を通して、前記の如く1
4PSU以下となるように設定しておけばよいことが確
認された。なお、干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分(C)
の値としては、ヨシが生育できる状況であれば、14P
SUより大きい値を設定しても構わない。かかる場合に
は、設定した干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分(C)の値
に見合った干出率Dを前記式より逆算して、かかる干出
率Dに見合う地盤高Hを求めればよい。
【0145】上記本発明に関わる地盤高の設定方法は、
以下に説明する実際の浜名湖松見ヶ浦での実証結果から
見出されたものである。
【0146】図25は、浜名湖松見ヶ浦で実施した天然
ヨシ原の根圏地下水の塩分月平均値を示すグラフ図であ
る。図26は、各調査地点での天然ヨシ原の単位面積当
たりのヨシ生産量示す。図27は、天然ヨシ原の月平均
干出率を示すグラフ図である。図28は、根圏干出率と
ヨシ生産量との相関関係を示す。図29は、干出率を考
慮したみかけの地表下20cmの地下水の塩分月平均値
(干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分に同じ)を示すグラフ
図である。図30、31は、地表下20cmのヨシ根圏
の地下水塩分(B)の8月、9月における変動状況をそ
れぞれ示すグラフ図である。
【0147】図25からは、ヨシ根圏地下水塩分(B)
は、利木海岸天然ヨシ原が生育限界である今川河口ヨシ
原生際より高いという結果が得られたが、しかし、単位
面積当たりの生産量は、ヨシ根圏地下水塩分(B)の高
い利木海岸天然ヨシ原の方が、今川河口ヨシ原生際より
多いことが図26から確認できる。
【0148】一方、図27の月平均の干出率(D)から
は、利木海岸天然ヨシ原の方が、今川河口ヨシ原生際よ
り格段に干出率(D)が高いことが確認される。そこ
で、かかる干出率(D)の差が、塩分が高い利木海岸天
然ヨシ原のヨシ生産量がヨシ根圏の地下水塩分(B)の
小さい今川河口ヨシ原生際より多くなった要因と考えら
れた。
【0149】そこで、地表下20cmをヨシ根圏と想定
した場合の干出率(D)と、ヨシ生産量との間の相関を
調べた。その結果は、図28に示すように、良好な相関
関係を示すことが確認された。かかる図28の結果は、
干出率の算出に際しては、本来的には周囲のヨシの根圏
の調査を行い、ヨシ根圏の適切な土壌深度求めておく必
要があるが、簡便には、地表下20cmをヨシ根圏と見
做して一般的には干出率(D)を求めることができると
した仮定が有効であることをも意味している。
【0150】また、ヨシ根圏の地下水塩分の算出に際し
ては、干出率を十分に考慮するとともに、干出している
期間は地下水の塩分濃度を0と見做すことにより、より
精度の高い干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分(C)の算出
した結果を、図29に示す。
【0151】図29の結果は、干出率、および上記0見
做しを一切考慮しないヨシ根圏の地下水塩分(B)を示
す図25とは異なり、利木海岸表層>今川河口ヨシ原生
際>今川河口ヨシ原内>利木海岸天然ヨシ原の順に干出
率考慮ヨシ根圏地下水塩分(C)は小さくなり、図26
に示す結果と一致することが分かる。
【0152】かかる結果から、ヨシ根圏の地下水の塩分
がヨシの生育に大きく影響するとともに、かかるヨシ根
圏の地下水の塩分に関しては、ヨシ根圏の干出率を考慮
しなければならず、さらにヨシ根圏が干出している期間
の地下水塩分を0と見做すことが好ましいことが確認さ
れる。なお、前記図25に対応して、8月、9月におけ
るヨシ根圏の地下水の塩分状況を連続測定した結果を図
30、31に示す。かかる結果は、実測データのグラフ
図であり、地下水塩分(地表下20cm)が0になる期
間は、ヨシ根圏が干出していることを示している。
【0153】本発明は、上記実施の形態に限定されるも
のではなく、その要旨を逸脱しない範囲で必要に応じて
変更してもよい。
【0154】例えば、上記実験では、ヨシの種としてヨ
シ(Phragmites communis )を植栽した場合について説
明したが、日本国内に自生するその他の種のヨシにも適
用できると考えられる。例えば、ツルヨシ(Phragmites
japonica )、セイタカヨシ(Phragmites Karka)、ウ
ラハグサ(Phragmites marca)などのヨシ属に属する植
物への適用が考えられる。種の選定に当たっては、例え
ば、人工ヨシ原の造成地域付近に自生しているヨシを選
定して植栽するようにすれば、造成地域周辺の生態系を
維持できる点で好ましい。
【0155】また、植栽床土壌については、透水性が良
好なことが好ましいことを説明したが、本発明の構成で
は、植栽床下土壌についてはヨシの地下茎が生育する土
壌ではないので、土質は特に制限されない。例えば、極
端に透水性がよくない粘性土、例えば100%ヘドロで
も利用することができる。航路確保のために、汽水湖の
湖底浚渫により得られた底泥などの浚渫土を使用するこ
ともできる。地盤高の設定により干出時間が確保できる
ため、底泥中の硫化物を干出時に気散させて、硫化物の
影響を緩和させることができ、本発明の構成では底泥の
使用も可能となるのである。また、建設残土を使用すれ
ば、施工コストの点で有利である。
【0156】前記実施の形態4では、浮島状態に人工ヨ
シ原を構成する場合については説明したが、前記実施の
形態1などと同様に、例えばコンクリート護岸を背景に
して人工ヨシ原を構成する場合にも前記実施の形態4は
適用できる。
【0157】さらには、前記実施の形態1〜3の構成で
も、実施の形態4と同様に、浮島状態の人工ヨシ原に適
用できることは勿論である。
【0158】
【発明の効果】本発明により、表層の塩分の低い部分が
少ない汽水域においても、ヨシ根圏への塩分の影響を減
らし、確実にヨシを活着させることができる。
【0159】本発明により汽水域の当該地域に最適な地
盤高の設計基準が明確にされるので、ヨシの生育可能な
地盤高の低い部分にまで確実にヨシを植栽することがで
きる。
【0160】本発明では、植栽土壌に浚渫により発生す
る底泥も使用することができる。硫化物を含む底泥、透
水性の良くないシルト・粘土分の多い底泥などをも使用
することができ、園芸用土を使用することなく低コスト
の人工ヨシ原の造成を行うことができる。
【0161】本発明により、閉鎖性の汽水域の水際にヨ
シ原を造成することができるため、かかる閉鎖性の汽水
域の水質浄化をこのヨシ原で行うことができる。
【0162】本発明では、造成予定地の汽水域の表層塩
分、潮位などの環境条件からヨシ根圏の地下水塩分を算
出して地盤高を設定することができるので、表層塩分に
よるヨシの生育限界を評価する従来とは異なり、適切な
人工ヨシ原の造成が行える。
【0163】本発明では、汽水域の表層の塩分に対する
ヨシ原根圏の地下水の塩分低下量、および干出水没を考
慮した上でのヨシ根圏の地下水の塩分状況に合わせて地
盤高を設定することができるので、従来の表層塩分に基
づくヨシの生育限界評価からではヨシの生育が不可能と
考えられていた高塩分表層の汽水域においても、ヨシ原
を人工的に造成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の人工ヨシ原の造成状況を示す斜視図で
ある。
【図2】図1に示す人工ヨシ原のA−A線で切断した断
面図である。
【図3】実験区域の設定環境を示す説明図である。
【図4】ヨシ植栽実験区の概要を表形式で示す説明図で
ある。
【図5】ヨシ植栽実験区の地下水位の変動状況を示すグ
ラフである。
【図6】実験区ごとの月平均潮位、日平均水深、日平均
水没時間を表形式で示す説明図である。
【図7】ヨシ植栽土壌間隙水中の平均塩分を示すグラフ
図である。
【図8】ヨシ植栽土壌間隙水中の平均塩分の様子を表形
式で示す説明図である。
【図9】ヨシの地上部の生長量調査対照区の設定状況を
示す説明図である。
【図10】ヨシの地上部の調査地点の状況を表形式で示
す説明図である。
【図11】(A)、(B)は、対照区における地上茎平
均本数、平均茎丈延長からみた生長量を示すグラフ図で
ある。(C)、(D)は、実験区における地上茎平均本
数、平均茎丈延長からみた生長量を示すグラフ図であ
る。
【図12】(A)、(B)は、対照区における地上部平
均新鮮重量、平均乾燥重量からみた生長量を示すグラフ
図である。(C)、(D)は、実験区における地上部平
均新鮮重量、平均乾燥重量からみた生長量を示すグラフ
図である。
【図13】実験区のヨシの地下茎の生長量を表形式で示
す説明図である。
【図14】(A)はヨシの平均地上茎丈を示すグラフ図
であり、(B)はヨシの平均本数を示すグラフ図であ
る。
【図15】実験区および対照区における実測値を表形式
で示す説明図である。
【図16】実施の形態2における人工ヨシ原の構成を示
す斜視図である。
【図17】(A)、(B)は、植栽土壌に透水性の良好
な土壌を用いた場合の図16に示す人工ヨシ原の断面図
である。
【図18】(A)、(B)は、植栽土壌に透水性の良好
でない土壌を用いた場合の図16に示す人工ヨシ原の断
面図である。
【図19】実施の形態3に示す排水路を設けた構成の人
工ヨシ原の斜視図である。
【図20】(A)、(B)は、図19に示す人工ヨシ原
の断面図である。
【図21】(A)、(B)、(C)は、排水路の変形例
をそれぞれ示す。
【図22】(A)は実施の形態4に示す浮島状態に形成
した人工ヨシ原の斜視図であり、(B)は断面図であ
る。
【図23】植栽土壌の間隙水の塩分測定の状況を示す説
明図である。
【図24】塩分低下量と月平均干出率×月別降水量との
相関を示すグラフ図である。
【図25】地表下20cmの地下水の塩分月平均値を示
すグラフ図である。
【図26】ヨシ地上部の生産量を示すグラフ図である。
【図27】天然ヨシ原根圏の月平均干出率を示すグラフ
図である。
【図28】根圏干出率とヨシ生産量との関係を示す相関
図である。
【図29】見かけの地表下20cmの地下水の塩分(干
出率考慮ヨシ根圏地下水塩分)の算出結果を示すグラフ
図である。
【図30】ヨシ根圏の干出率を考慮しない場合の地表下
20cmの地下水塩分を8月度に連続測定した実測値を
示すグラフ図である。
【図31】ヨシ根圏の干出率を考慮しない場合の地表下
20cmの地下水塩分を9月度に連続測定した実測値を
示すグラフ図である。
【符号の説明】
10 コンクリート護岸 11 堤 12 植栽土壌 13 捨石 14 底面 15 土壌流亡防止層 20 基盤 21 排水層 22 排水路 22a 排水溝 22b 有孔管 23 排水材 24 吸出し防止材 25 土壌流亡防止堤 25a 土嚢 31 観測孔 31a 有孔管部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2B022 AB02 AB08 AB20 BA02 2D018 DA06 4D040 CC01 CC02 CC05

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 汽水域に人工的にヨシ原を造成する人工
    ヨシ原であって、 ヨシを植栽する植栽土壌と、 前記植栽土壌を囲み、前記植栽土壌の流亡を防止する透
    水性の土壌流亡防止堤とを有することを特徴とする人工
    ヨシ原。
  2. 【請求項2】 汽水域に人工的にヨシ原を造成する人工
    ヨシ原であって、 ヨシを植栽する植栽土壌と、 前記植栽土壌を囲む透水性の堤とを有することを特徴と
    する人工ヨシ原。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の人工ヨシ原において、 前記堤と、前記植栽土壌との間には、前記植栽土壌の流
    亡を防止する土壌流亡防止層が介在されていることを特
    徴とする人工ヨシ原。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれか1項に記載
    の人工ヨシ原において、 前記植栽土壌の前記ヨシの地下茎が発達する深度範囲の
    土壌内では、土壌内間隙水の平均塩分の最大値が、塩分
    実用単位で14PSU以下に設定されていることを特徴
    とする人工ヨシ原。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の人工ヨシ原において、 前記深度範囲とは、地表下25cmまでの範囲内である
    ことを特徴とする人工ヨシ原。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし5のいずれか1項に記載
    の人工ヨシ原において、 前記植栽土壌の地盤高は、前記植栽土壌が設けられた前
    記汽水域の朔望平均高潮位以下で、平均潮位より高く設
    定されていることを特徴とする人工ヨシ原。
  7. 【請求項7】 請求項6記載の人工ヨシ原において、 前記平均潮位は、前記植栽土壌に植栽されたヨシの地上
    茎が生長する期間の平均潮位であることを特徴とする人
    工ヨシ原。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし3のいずれか1項に記載
    の人工ヨシ原において、 前記植栽土壌が設けられた前記汽水域の表層の平均塩分
    の最大値が、塩分実用単位で14PSU以下に設定され
    ていることを特徴とする人工ヨシ原。
  9. 【請求項9】 請求項4、5、8のいずれか1項に記載
    の人工ヨシ原において、 前記平均塩分とは、前記植栽土壌に植栽されたヨシの地
    上茎の生長する期間の平均塩分であることを特徴とする
    人工ヨシ原。
  10. 【請求項10】 請求項1ないし9のいずれか1項に記
    載の人工ヨシ原において、 前記植栽土壌は、前記ヨシの地下茎が植栽される植栽床
    土壌と、前記植栽床土壌の下に設けられる植栽床下土壌
    とから構成されることを特徴とする人工ヨシ原。
  11. 【請求項11】 請求項10記載の人工ヨシ原におい
    て、 前記植栽床土壌は、シルト・粘土混じり砂質土、あるい
    は小礫混じり砂質土であることを特徴とする人工ヨシ
    原。
  12. 【請求項12】 請求項1ないし11のいずれか1項に
    記載の人工ヨシ原において、 潮汐の変動に伴う地下水位の変動は、地表下5cmより
    深い深度まで行なわれることを特徴とする人工ヨシ原。
  13. 【請求項13】 請求項1ないし12のいずれか1項に
    記載の人工ヨシ原において、 前記植栽土壌は、地表下25cmの深さまでは、透水係
    数が1×10-4cm/s以上の土壌で形成されていることを
    特徴とする人工ヨシ原。
  14. 【請求項14】 請求項1ないし12のいずれか1項に
    記載の人工ヨシ原において、 前記植栽土壌は、地表下25cmの深さまでは、透水係
    数が1×10-6〜1×10-4cm/sの土壌で形成され、 前記植栽土壌には、地表下5cmより深い深度まで地下
    水位の変動を起こす排水層及び/または排水路が設けら
    れていることを特徴とする人工ヨシ原。
  15. 【請求項15】 請求項14の記載の人工ヨシ原におい
    て、 前記排水層は、請求項10記載の植栽床下土壌であり、 前記植栽床下土壌には、砂利、砕石、粗砂などの排水材
    が使用されていることを特徴とする人工ヨシ原。
  16. 【請求項16】 汽水域に人工的にヨシ原を造成する人
    工ヨシ原造成方法であって、 汽水域の人工ヨシ原造成区域に沿って、透水性の堤を築
    き、堤内にヨシを植え付ける植栽土壌を流亡しないよう
    に投入し、前記植栽土壌の地盤高を、植栽土壌内のヨシ
    の地下茎の発達する範囲内での土壌間隙水中の塩分が塩
    分実用単位で14PSU以下となるように設定し、前記
    植栽土壌にヨシを植え付けることを特徴とする人工ヨシ
    原造成方法。
  17. 【請求項17】 汽水域に人工的にヨシ原を造成する人
    工ヨシ原造成方法であって、 前記人工ヨシ原の地盤高を、ヨシ根圏の地下水の塩分が
    ヨシの生育限界を満たしていることを条件として設定す
    ることを特徴とする人工ヨシ原造成方法。
  18. 【請求項18】 請求項17記載の人工ヨシ原造成方法
    において、 前記ヨシ根圏の地下水の塩分は、造成予定地の汽水域の
    潮位に対しての前記ヨシ根圏の干出率を考慮して算出さ
    れることを特徴とする人工ヨシ原造成方法。
  19. 【請求項19】 請求項18記載の人工ヨシ原造成方法
    において、 前記ヨシ根圏の地下水の塩分は、造成予定地の汽水域の
    潮位より干出している場合は塩分0と見做して算出され
    た所定期間にわたっての平均であることを特徴とする人
    工ヨシ原造成方法。
  20. 【請求項20】 汽水域に人工的にヨシ原を造成する人
    工ヨシ原造成方法であって、 造成予定地の汽水域の潮位に対して、造成しようとする
    人工ヨシ原の地盤高を仮設定して、前記造成予定地に人
    工ヨシ原を造成したとする場合のヨシ根圏の干出率を求
    めるヨシ根圏干出率算出工程と、 前記造成予定地の汽水域の表層塩分と、前記ヨシ根圏干
    出率算出工程で求められた干出率とから、前記ヨシ根圏
    の地下水塩分を求めるヨシ根圏地下水塩分算出工程と、 前記ヨシ根圏地下水塩分算出工程で求めた前記ヨシ根圏
    の地下水塩分と、前記ヨシ根圏干出率算出工程で求めた
    前記干出率とから、前記ヨシ根圏より地下水位が低下す
    る期間のヨシ根圏の地下水塩分を0と見做して、前記干
    出率を考慮したヨシ根圏の地下水塩分を算出する干出率
    考慮ヨシ根圏地下水塩分算出工程とを有し、 前記干出率考慮ヨシ根圏地下水塩分算出工程で算出され
    た前記干出率を考慮したヨシ根圏の地下水塩分が、ヨシ
    の塩分に対する生育限界を満たすように、造成予定の人
    工ヨシ原の地盤高を設定することを特徴とする人工ヨシ
    原造成方法。
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