JP2016191295A - 人工浅場又は干潟 - Google Patents
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また、従来の人工浅場や干潟において、中詰材として設置された浚渫土は、その内部の水分が脱水されることで、長期的に圧密沈下(体積減少)が生じる。干潟面積は、満潮と干潮の間に干出する部分であることから、中詰材(浚渫土)の沈下により覆砂層の天端高が低下すると、干潟面積が減少することになる。
しかし、この方法では、中詰材として膨大な量の浚渫土が使用されるため、大量の固化材が必要であり、材料コストや混合処理のためのコストが嵩み、全体の施工コストが高くなる問題がある。
また、浚渫土の有効利用の観点からは、中詰材としてなるべく多くの浚渫土を使用することが好ましいが、上述したように土留め用の潜堤の高さには制約があることや、中詰材の浚渫土を急勾配(例えば、1:10程度の急勾配)とすることができないため、中詰材として使用できる浚渫土の量が制限される。
また、本発明の他の目的は、上記の点に加えて、潜堤を設置する地盤部分の地盤改良の規模を小さくすることにより、施工コストを大幅に低減することができ、また、潜堤からの中詰材(浚渫土)の吸出しを適切に防止することができる人工浅場又は干潟を提供することにある。
[1]浅場又は干潟の造成水域を囲むようにして設けられる土留め用の潜堤(A)と、該潜堤(A)の岸側に、その側面(但し、側面が法面である場合を含む。)に接して設けられ、潜堤(A)を補強する所定幅の補強土層(B)と、該補強土層(B)の岸側に設けられる、浚渫土を中詰材とする中詰層(C)と、補強土層(B)と中詰層(C)の表層上に設けられる覆砂層(D)を備える人工浅場又は干潟であって、
補強土層(B)は、浚渫土及び/又は土砂に水和反応を生じさせる改質材を混合した補強土で構成されるとともに、補強土層(B)の表層の一部又は全部が岸側に向かって高くなる勾配を有することを特徴とする人工浅場又は干潟。
[3]上記[1]又は[2]の人工浅場又は干潟において、補強土層(B)の表層は、潜堤(A)の天端部よりも低い位置で潜堤(A)の側面(但し、側面が法面である場合を含む。)に接していることを特徴とする人工浅場又は干潟。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの人工浅場又は干潟において、補強土層(B)の表層の前記勾配が1:3〜1:5であることを特徴とする人工浅場又は干潟。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかの人工浅場又は干潟において、補強土層(B)を構成する補強土は、水中での単位体積質量が潜堤(A)の構成材の水中での単位体積質量よりも小さいことを特徴とする人工浅場又は干潟。
[7]上記[6]の人工浅場又は干潟において、補強土層(B)を構成する補強土は、水中での単位体積重量が10kN/m3未満であることを特徴とする人工浅場又は干潟。
また、補強土層Bを構成する補強土は、潜堤Aの構成材(石材など)に較べて間隙が小さく、しかも所定の強度を有するものであるため、補強土層Bによって潜堤Aからの中詰材の吸出しを適切に防止することができる。
このような本発明の構造では、勾配を有する補強土層Bが土留め機能を果たすため、潜堤Aの天端高が従来構造と同じであっても、補強土層Bの岸側に設ける中詰層Cの天端高を高くする(嵩上げする)ことができ、これにより覆砂層Dの勾配を緩くすることができる。このため、従来の人工浅場と較べて、(i)干潟面積を大幅に拡大することができる、(ii)特に粗い粒度の覆砂材を用いなくても覆砂層Dの高い波浪安定性が得られる、若しくは、使用可能な覆砂材の粒径範囲が広くなり、干潟生物の生息環境が改善される、という効果が得られる。さらに、中詰層Cの天端高を高くすることができるため、長期的に中詰材(浚渫土)に沈下が生じても、干潟面積の減少を抑えることができる。また、浚渫土を中詰材とする中詰層Cの天端高を高くすることができるため、従来構造に較べて人工浅場の造成に用いる浚渫土量を増加させることができる。
また、補強土層Bを、水中での単位体積質量が潜堤Aの構成材の水中での単位体積質量よりも小さい補強土で構成した場合には、補強土層Bが土留め機能を果たすとともに、補強土のせん断強度の効果により従来よりもすべり破壊が生じにくくなるため、潜堤Aの規模を従来に較べて小さくすることができ、原地盤に作用する荷重が小さくなるため、潜堤Aを設置する地盤部分の地盤改良の規模(地盤改良幅)を従来に較べて格段に小さくすることができる。
この人工浅場は、浅場又は干潟の造成水域を囲むようにして設けられる土留め用の潜堤Aと、この潜堤Aの岸側に、その側面1(法面)に接して設けられ、潜堤Aを補強する所定幅の補強土層Bと、この補強土層Bの岸側に設けられる、浚渫土を中詰材とする中詰層Cと、補強土層Bと中詰層Cの表層上に設けられる覆砂層Dを備えている。
潜堤Aの構成材としては、一般に天然石材が用いられるが、例えば、コンクリートブロック、鉄鋼スラグを主原料とする炭酸固化体ブロック、鉄鋼製造スラグを主原料とする水和硬化体ブロック(例えば、鉄鋼スラグ水和固化体)、塊状の鉄鋼スラグなどを用いてもよく、天然石材を含めたこれらの材料の1種以上を用いることができる。
地盤改良部Eは、サンドコンパクションパイル工法、置換工法、ドレーン工法、混合処理工法など、任意の工法で設けることができるが、人工浅場では、地盤内に砕石や砂などを用いた柱状体を設けることで地盤強度を増加させるサンドコンパクションパイル工法が用いられることが多い。なお、このサンドコンパクションパイル工法では、地盤改良部Eの最上部の盛上り土の上に敷砂(図示せず)が敷設され、その上に潜堤Aを築造する。
補強土層Bは、覆砂層Dに接する表層b(すなわち表層bの全部)が岸側に向かって高くなる勾配を有している。本実施形態の補強土層Bは上面が断面山状に構成され、海側(潜堤A側)の斜面部10の上面が覆砂層Dに接する表層bを構成し、岸側(反潜堤A側)の斜面部11が中詰層Cの下側に位置する。断面山状の頂部が補強土層Bの天端12である。
なお、表層bの勾配は、図5及び図6の実施形態のように、表層bの一部(海側の領域)にのみ付けてもよい。
補強土層Bの表層bは、潜堤Aの天端2よりも低い位置で潜堤Aの側面1(法面)に接している。なお、補強土層Bの表層bは、後述する図5及び図6の実施形態のように、潜堤Aの天端2の位置で潜堤Aの側面1(法面)に接するようにしてもよい。
補強土層B表層bの勾配(角度)の大きさは任意であるが、急勾配とすると補強土層Bの表面を保護するための砕石が安定しないため、勾配は1:3〜1:5程度が望ましい。
浚渫土は、事前に乾燥処理(例えば、天日乾燥など)や脱水処理(薬剤を添加して凝集させた後に脱水・減容化する方法)を施したものであってもよい。土砂は建設残土などでもよい。改質材としては、水和反応を生じさせるものであれば特に種類を問わないが、例えば、セメント、石灰、製鋼スラグなどの鉄鋼スラグ、コンクリート廃材などが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。
これら改質材の種類と混合量を選択することで、補強土の強度(一軸圧縮強さ)を調整することができる。
なお、潜堤Aと浚渫土を中詰材とする中詰層Cの間に、上記のような強度を有する補強土からなる補強土層Bを設けることにより、中詰材(浚渫土)が潜堤を透過して周辺海域に流出すること、すなわち潜堤からの中詰材の吸出しをより適切に防止することができる。
なお、中詰層Cの高さにもよるが、一般的には圧密沈下量1〜2m程度であり、標準的な構造・規模の人工浅場では、斜面部10の勾配を1:3とすると、補強土層Bの表層bの幅wB1は3〜6m程度になることが多い。
覆砂層Dには、通常、天然砂が用いられるが、粒状の鉄鋼スラグなどのような他の材料を用いてもよい。
なお、中詰層Cの上の覆砂層Dにも岸側に向かって高くなる勾配が付けられており、この勾配を形成するために、中詰層C、覆砂層Dの1つ以上の敷設厚さが調整される。
(i)干潟面積を大幅に拡大することができる。
(ii)特に粗い粒度の覆砂材を用いなくても覆砂層Dの高い波浪安定性が得られる。若しくは、使用可能な覆砂材の粒径範囲が広くなり、干潟生物の生息環境が改善される。
という有利な効果が得られる。
本実施形態のような人工浅場において、覆砂層Dの勾配に特別な制限はないが、上記の理由から、1:50未満の緩い勾配、例えば1:70〜1:130程度の緩い勾配とすることが可能である。
干潟面積とは、潮汐による海水面の上下変動により、陸地と海面下になることを繰り返す地形の面積のことであり、当然、人工浅場は干潟面積ができるだけ広くなるように造成されることが好ましい。図3に示されるように、本発明構造は、従来構造と較べて覆砂層Dの勾配が緩くなり、この例では、従来構造における覆砂層D0の勾配が1:40であるのに対して、本発明構造における覆砂層Dの勾配は1:110になっている。このため、造成された人工浅場(但し、常時陸地となる造成部分は除く)の沖合方向への造成幅140mに対する干潟面積の幅(沖合方向への幅)は、従来構造では40mであるのに対して、本発明構造では110mであり、従来構造の3倍近い干潟面積となっている。
一般に、本発明構造では、造成された人工浅場(但し、常時陸地となる造成部分は除く)の面積の50〜80%程度を干潟面積とすることができ、このため従来構造の2〜3倍程度の干潟面積を確保することができる。
本発明構造では、覆砂層Dの勾配が緩くなることで、従来構造と較べて覆砂層Dの波浪安定性が向上し、より高い波浪に対しても覆砂層Dの浸食が抑えられる。一方、波浪安定性を従来の人工浅場と同程度にした場合には、より粒径の小さい覆砂材を使用でき、使用可能な覆砂材の粒径範囲が広くなるため、干潟生物の生息環境が改善され、多様な生物種が生息可能となる。
海浜勾配の汀線の浸食・堆積の条件は、下記(1)式のC値で推定することができ、C値>18では浸食傾向、C値<9では堆積傾向を示す。下記(1)式は、図4(海の自然再生ワーキンググループ、海の自然再生ハンドブック−その計画・技術・実践−、第2巻 干潟編、株式会社ぎょうせい、平成15年11月10日、77頁「図-4.19」)を根拠とする。
この実施形態は、潜堤の規模を従来に較べて小さくすることにより、原地盤に作用する荷重が特に小さくなるようにし、潜堤を設置する地盤部分の地盤改良の規模(地盤改良幅)を従来に較べて小さくできるようにしたものである。
潜堤Aは、図1及び図2に示す実施形態と同様、断面台形状の捨石式傾斜堤であり、この潜堤Aの構造自体は従来と同様であるが、本実施形態では、潜堤Aを設置する地盤部分の地盤改良の規模(地盤改良幅)を小さくするため、図10に示すような従来の潜堤A0に較べて高さが低く、幅も小さく構成されている。
潜堤Aの大きさは、設置する海域の水深や環境などによっても異なるので特に制限はないが、本実施形態のように潜堤Aのサイズを小さくする場合では、潜堤材(一般的には、20〜200kg程度の天然石材)による施工可能な潜堤断面として、高さ2〜3m程度、天端幅2m前後、法面勾配1:1.5前後となる。
補強土層Bは、図1及び図2に示す実施形態と同様、潜堤Aの背後(岸側)に潜堤Aと接するようにして所定幅で設けられる。
この補強土層Bは、水中での単位体積質量が潜堤Aの構成材(例えば天然石材)の水中での単位体積質量よりも小さい補強土で構成される。
補強土層Bの表層bの勾配(角度)の大きさは任意であるが、あまり急勾配にすると斜面が安定しないため、勾配は1:3〜1:5程度が望ましい。なお、天端12を緩傾斜状にしてもよいが、その場合には覆砂層Dと同程度の勾配が適当である。
補強土層Bの幅wB0は特に制限はないが、この幅wB0が小さすぎると潜堤Aを補強する効果が低下する恐れがあり、また、斜面部11の勾配が急になるので水中施工が難しくなる。一方、幅wB0が大きすぎると施工コストが増加するとともに、補強土層Bの容積が増加することに伴い中詰層Cの容積が相対的に減少するため、中詰材として使用する浚渫土の量が少なくなってしまう。本実施形態では、補強土層Bの幅wB0は、潜堤Aの底面の幅wAの2〜7倍程度が好ましい。
その他の構成や機能、作用効果は図1及び図2の実施形態と同様であるので、構成について同一の符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。
この実施形態では、図5及び図6の実施形態と同様に、潜堤Aの規模を小さくして地盤改良部Eの規模(地盤改良幅)を小さくする一方で、図1及び図2の実施形態と同様に、補強土層Bの天端を高くすることで中詰層Cの天端高を高くしている。
なお、その他の構成や機能、作用効果は図5及び図6の実施形態と同様であるので、構成について同一の符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。
原地盤が軟弱であり、地盤改良が必要な水深8mの海域に図8に示す構造の人工浅場(又は干潟)を造成した。この人工浅場については、中詰材(浚渫土)の圧密沈下量を2.0mと予測した。
地盤改良部Eは、サンドコンパクションパイル工法(SCP工法)で施工し、改良率25%、改良杭の長さ10m、幅(地盤改良幅)38mとした。また、SCP工法による盛上り土(図示せず)の高さ1.0m、敷砂(図示せず)の高さ1.0mとした。
土留用の潜堤Aは、水中での単位体積質量が10kN/m3の天然石材を用いた捨石式傾斜堤とし、高さ6.0m、底部幅20m、天端高−2.0m、天端幅2.0m、法勾配1:1.5とした。
補強土層Bを構成する補強土としては、浚渫土70体積%と転炉系製鋼スラグ30体積%の混合土を用いた。室内配合試験の結果、この混合土は、水中での単位体積質量が8.2kN/m3、28日養生後の一軸圧縮強さが160kN/m2であった。
補強土層Bの岸側(陸上側)に、浚渫土(水中での単位体積重量4.5kN/m3、粘着力1.5kN/m2)を中詰材とする中詰層Cを設けた。さらに、中詰層Cの表層と補強土層Bの表層bの上に天然砂による覆砂層Dを設けた。覆砂層の厚さは0.5mとした。
原地盤が軟弱であり、地盤改良が必要な水深10mの海域に図9に示す構造の人工浅場(又は干潟)を造成した。
地盤改良部Fは、サンドコンパクションパイル工法(SCP工法)で施工し、改良率25%、改良杭の長さ12m、幅(地盤改良幅)21mとした。また、SCP工法による盛上り土の高さ1.0m、敷砂の高さ1.0mとした。
土留用の潜堤Aは、水中での単位体積質量が10kN/m3の天然石材を用いた捨石式傾斜堤とし、高さ3.0m、底部幅11m、天端幅2.0m、天端高−5.0m、法勾配1:1.5とした。
補強土層Bを構成する補強土としては、浚渫土80体積%と転炉系製鋼スラグ20体積%の混合土を用いた。室内配合試験の結果、この混合土は、水中での単位体積質量が6.2kN/m3、28日養生後の一軸圧縮強が160kN/m2であった。
以上のように、本実施例の人工浅場(又は干潟)では、従来構造では潜堤の一部が設けられていた部分に、水中単位体積質量が潜堤構成材の水中単位体積質量よりも小さく、且つ所定の強度を有する補強土を設けた構造としたことにより、原地盤に作用する荷重が小さくなり、且つ補強土のせん断抵抗によって従来よりもすべり破壊が生じにくくなるため、従来構造に較べて地盤改良幅を大幅に縮小する(従来構造の0.7倍程度)ことができた。
B 補強土層
C 中詰層
D 覆砂層
E 地盤改良部
b 表層
1 側面(法面)
2 天端
10,11 斜面部
12 天端
Claims (7)
- 浅場又は干潟の造成水域を囲むようにして設けられる土留め用の潜堤(A)と、該潜堤(A)の岸側に、その側面(但し、側面が法面である場合を含む。)に接して設けられ、潜堤(A)を補強する所定幅の補強土層(B)と、該補強土層(B)の岸側に設けられる、浚渫土を中詰材とする中詰層(C)と、補強土層(B)と中詰層(C)の表層上に設けられる覆砂層(D)を備える人工浅場又は干潟であって、
補強土層(B)は、浚渫土及び/又は土砂に水和反応を生じさせる改質材を混合した補強土で構成されるとともに、補強土層(B)の表層の一部又は全部が岸側に向かって高くなる勾配を有することを特徴とする人工浅場又は干潟。 - 補強土層(B)の天端部が潜堤(A)の天端部よりも高い位置にあることを特徴とする請求項1に記載の人工浅場又は干潟。
- 補強土層(B)の表層は、潜堤(A)の天端部よりも低い位置で潜堤(A)の側面(但し、側面が法面である場合を含む。)に接していることを特徴とする請求項1又は2に記載の人工浅場又は干潟。
- 補強土層(B)の表層の前記勾配が1:3〜1:5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の人工浅場又は干潟。
- 補強土層(B)を構成する補強土は、浚渫土又は/及び土砂に改質材として製鋼スラグを混合したものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の人工浅場又は干潟。
- 補強土層(B)を構成する補強土は、水中での単位体積質量が潜堤(A)の構成材の水中での単位体積質量よりも小さいことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の人工浅場又は干潟。
- 補強土層(B)を構成する補強土は、水中での単位体積重量が10kN/m3未満であることを特徴とする請求項6に記載の人工浅場又は干潟。
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