JP2002316264A - 回転アーク溶接装置および溶接速度設定装置 - Google Patents

回転アーク溶接装置および溶接速度設定装置

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JP2002316264A JP2001118153A JP2001118153A JP2002316264A JP 2002316264 A JP2002316264 A JP 2002316264A JP 2001118153 A JP2001118153 A JP 2001118153A JP 2001118153 A JP2001118153 A JP 2001118153A JP 2002316264 A JP2002316264 A JP 2002316264A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高速回転アーク溶接により水平すみ肉溶接を
する場合に、過大ギャップ等があってもビード脚長不足
を防止する回転アーク溶接装置、特に比較的少ない調整
パラメータでフィードバック制御可能な回転アーク溶接
装置を提供する。 【解決手段】 アーク電圧測定装置と演算装置5と制御
装置30と溶接速度調整装置30を備え、アーク電圧測
定装置が求めたアーク回転中のアーク電圧値Vを演算装
置5が入力して、アーク回転の異なる2個の位相領域に
おけるアーク電圧のそれぞれの平均値の差として与えら
れるビード指数Bを求め、設定されたフィードバックゲ
インKpの下でビード指数の目標値Brefとの偏差Rが
小さくなるように溶接速度Sを調整することにより、溶
接ビード脚長を一定に制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、回転アーク溶接の
制御装置に関し、特にすみ肉溶接において一定のビード
脚長を得るようにした回転アーク溶接装置に関する。
【0002】
【従来の技術】高速回転アーク溶接は、溶接電圧を印加
したトーチを20〜100Hzで高速回転させながら溶
接線に沿って溶接するもので、トーチ周辺に特別な付加
装置を必要とせず、容易にリアルタイム制御ができ、平
滑な溶接ビードを得ることができる。高速回転アーク溶
接においても、ロボットや自動機を用いて溶接施工を省
人化する要望がある。すみ肉溶接の施工を機械化したと
きに管理しなければならない主な外乱要素に、溶接線ず
れとビード脚長不足がある。このうち、溶接線ずれは、
回転中のアーク電圧を測定して、溶接方向を挟んだ電圧
分布が左右で均衡するように溶接トーチの位置制御をす
ることにより解消させることができる。
【0003】ところで、すみ肉溶接では下板部材とこれ
に継ぎ合わせる立板部材の間にギャップが生じることが
ある。ギャップがあるとギャップ内に溶融金属が流入す
るため、ギャップが無い場合と比べて溶接ビードが小さ
くなり、脚長が小さくなる。ビード脚長不足はこのギャ
ップが場所によって過大になることに起因する。従来、
自動溶接装置によるすみ肉溶接は、最初に設定された溶
接条件に従って、溶接線上にギャップがあっても同じよ
うに溶接施工されていた。高速回転アーク溶接を行うと
きには、ビード平滑化効果があるため、ギャップ量が2
mm以下であれば問題にするほどのビード脚長不足は起
こらない。しかし、ギャップがこれ以上に大きくなる
と、溶融金属がギャップ内に流入するためビードを形成
する溶融金属が不足してビード脚長不足が生じることに
なる。
【0004】特開平10−263821には、高速回転
するアークを用いてすみ肉溶接するときに、安定した溶
接品質を得るようにした溶接条件適応制御方法が開示さ
れている。この開示方法では、アークの1回転分の溶接
電圧あるいは溶接電流の波形を利用し、アーク回転位置
の後方部の位相区間における電圧あるいは電流の積分値
とその残り部分における積分値との差すなわち電圧波形
差をギャップを推定するパラメータとして利用する。
【0005】開示方法では、予め実験を行って、ルート
ギャップの大きさ毎に適正と考えられる溶接条件のデー
タベースと、与えられた溶接条件におけるルートギャッ
プの大きさとパラメータ値の関係とを求めておき、記憶
装置に記録しておく。そして、溶接施工中にギャップ推
定パラメータを求め、同じ溶接条件下におけるパラメー
タ値とルートギャップの対応表から現在のギャップ量を
推定して、ギャップ量が許容値を超えないかぎり同じ溶
接条件で溶接し、ギャップ量が許容値を超えているとき
には予め求めてある別の適正溶接条件をデータベースか
ら選んで設定し直して溶接を行うようにするというもの
である。
【0006】したがって、ギャップ量毎の適正溶接条件
と、溶接条件毎のギャップ量とパラメータ値の関係とを
予め求めてデータベース化しておく必要があり、種々の
条件に適合することができるようになるまで、膨大な試
験が必要となる。さらに、溶接ビード脚長を変更したい
ときには、新たな溶接ビード脚長に対応するデータベー
スを準備する必要があり、適用範囲を変更することが容
易でない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明が解決
しようとする課題は、高速回転アーク溶接により水平す
み肉溶接をする場合に、過大ギャップ等があってもビー
ド脚長不足を防止する溶接制御方法を用いた回転アーク
溶接装置を提供することであり、特に、比較的少ない調
整パラメータでフィードバック制御可能な回転アーク溶
接装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明に係る回転アーク溶接装置は、アーク電圧測
定装置と演算装置と制御装置と溶接速度調整装置を備
え、アーク電圧測定装置が求めたアーク回転中のアーク
電圧値を演算装置に入力して、演算装置がアーク回転の
異なる2個の位相領域におけるアーク電圧のそれぞれの
平均値の差として与えられるビード指数を求め、設定さ
れたフィードバックゲイン下でビード指数の目標値との
偏差が小さくなるように溶接速度を調整することによ
り、溶接ビード脚長を一定に制御することを特徴とす
る。
【0009】溶接電圧設定値、溶接電流設定値、トーチ
とワークの距離など他の溶接条件を変化させなくても、
溶接速度を遅くすればギャップの有無にかかわらず溶接
ビードは大きくなり、溶接速度を速くすれば溶接ビード
は小さくなる。また、アーク長は溶接ビードの表面まで
の距離により決まり、アーク長の変化はアークに発生す
るアーク電圧の変化として検出することができるので、
回転アーク溶接ではビード形状の変化すなわちビード脚
長の変化をアーク回転中のアーク電圧波形パターンの変
化として観察することができる。
【0010】本発明の発明者は、鋭意研究の結果、アー
ク回転中のアーク電圧波形を用いてビード形状を的確に
反映するビード指標を得る方法を見出した。発明者は、
下板に立板をすみ肉溶接するときに、下板と立板の間に
生じるギャップ(ルートギャップともいう)が大きくな
るにつれて回転中のアーク電圧波形が変化すること、お
よび、その変化の傾向がアーク回転位相領域により異な
ることを見出した。変化の傾向は、位相位置によって安
定性が異なる。
【0011】すなわち、アークの位置が溶接進行方向前
方にあって下板に対応する領域についてアーク電圧を積
分した値はギャップが広がるにつれて低下し、この傾向
はかなり再現性が強い。また、アークが溶接進行方向の
後方にあって真後ろを挟んだ適当な領域についてアーク
電圧を積分した値は、ギャップが開くにつれて大きくな
り、この傾向も再現性が強い。他の位相領域ではアーク
電圧積分値が顕著な傾向を示さなかったり、あるいは再
現性がよくないことが分かった。
【0012】本願発明者は、このような知見に基づい
て、回転アークにおけるアーク電圧値の所定の位相領域
に亘る積分値と、それと異なる所定の領域に亘る積分値
の差をビード指標値として利用する。特に、アークが溶
接進行方向前方にあって溶接部材の下板部分に当たって
いる位相領域におけるアーク電圧積分値と、アークが溶
接進行方向の真後ろ当たる位置を挟んだ所定の角度の間
にある位相領域におけるアーク電圧積分値の差を用いる
と、ギャップすなわちビードの傾向とよく一致しかつ相
互の関連性が安定なビード指標値(ビード指数という)
となる。
【0013】ギャップがある部分をすみ肉溶接すると、
溶融金属がギャップの中に流れ込んでビードが小さくな
るので、アーク長が長くなる。しかし、回転トーチの回
転前方側では溶融池が浅いため溶融金属の表面がそれほ
ど低下しないのに対して、後方側では厚みの増した溶融
金属がアーク圧力により吹き付けられてギャップ内に押
し込まれるため、溶融金属表面の低下量が大きくなるの
で、回転後方側におけるアーク長の変化が大きい。アー
ク電圧の変動はアーク長の変動とほぼ比例する。このよ
うに、ギャップによりビードの大きさが変化すると、ア
ーク回転前方側と後方側におけるアーク電圧の差が変化
する。ビード指数がビードと関連性を有するのは、上記
のようなメカニズムによると考えられる。
【0014】なお、ギャップが大きくなるにつれてアー
ク回転の前方側のアーク電圧が小さくなる傾向は、特
に、溶接電流が一定になるようにトーチと溶接部の距離
を調整するトーチ軸方向倣い制御を行う装置においてさ
らに顕著であると考えられる。トーチ軸方向倣い制御で
は、ビードが小さいときにはトーチを下板方向に近づけ
て調整する。すると、アーク長が短くなり、アーク電圧
は低くなる。したがって、ギャップが大きくなりビード
が小さくなると、トーチが回転前方側の位相にあるとき
のアーク電圧は小さくなる。
【0015】一方、溶接進行方向の後ろ側におけるトー
チと溶融池の間の距離変化はトーチの移動距離より大き
くなるので、アーク電圧上昇の傾向はビードが小さくな
るほど顕著になる。したがって、立板と下板の間のギャ
ップが大きくなってビードが小さくなるにつれて、アー
クが溶接進行方向前方にある位相領域とアークが進行方
向後方にある位相領域におけるアーク電圧差は大きくな
り、ビードの大きさを反映することになる。
【0016】ギャップのない状態で溶接速度を高速から
低速にまた低速から高速に変化させながらすみ肉溶接を
行って、溶接速度毎にビード指数とすみ肉溶接の実際の
ど厚あるいはビード脚長の関係を検査したところ、実際
のど厚とビード指数の相関係数が実際のど厚8mm程度
まで−0.8程度、ビード脚長とビード指数の相関係数
は脚長7mm程度まで−0.6程度と極めて高い相関性
があることが実証された。
【0017】また、ギャップ量が徐々に変化するように
組んだ部材をすみ肉溶接する実験によっても、ビード指
数はギャップが2mmを超える辺りまでは変化をせず、
それより大きくなる領域ではギャップの拡大に伴ってビ
ード指数が大きくなることが確認できた。なお、高速回
転アーク溶接においては、2mm程度のギャップはビー
ド脚長に影響を与えないことも勘案すると、ビード指数
はビード脚長と極めてよく対応している。
【0018】同様に、実際のど厚に対するビード指数の
関係を調べると、ビード指数が実際のど厚2.5mm程
度から大きくなるにつれて単調に減少することが分かっ
ている。このようにビード指数はビード脚長が大きいほ
ど、また実際のど厚が大きいほど小さくなることから、
ビード指数がビードの大きさと対応することが分かる。
【0019】このビード指数によれば、特開平10−2
63821に開示された手法のように対応表を用いてパ
ラメータ値からギャップ値を推定する必要がなく、代替
変数として直接フィードバック制御に利用することがで
きる。さらに、溶接速度を加減してビード指数を一定値
に保持することにより、ある程度のギャップ量があって
も溶接ビードを一定の形状に保つことができる。なお、
ビード脚長を加減する目的で溶接ワイヤの供給量を調整
する方法も考えられる。しかし、ワイヤ供給量を制御す
る方法は、施工能率が低下しない利点があるが、ワイヤ
供給量に対応して溶接電源の溶接電圧指令値や溶接電流
指令値を調整しなければならないので、制御が複雑にな
る欠点がある。また、溶接電源が供給する溶接電圧が変
化することに伴いビード指数の特性が変化する問題も生
ずる。
【0020】なお、本発明の回転アーク溶接装置では、
溶接速度の設定をある時間間隔毎に行うようにしてもよ
い。ビード指数は、アーク回転中の所定の位相領域につ
いての積分値を用いて求めるため、少なくともトーチが
1回転するまで演算結果が出ない。また、溶接制御をロ
ボットなどの自動機械で行うときにはシーケンサなどに
より制御されるので、その制御周期より短い間隔で設定
変更指令を出しても意味がない。
【0021】すみ肉溶接においてはギャップ量が急激に
変化することはまれで、ビード形状の変化も急激には起
こらない。したがって、代替指標を用いてビード脚長の
制御を行う場合、間欠的に取得する測定値に基づいた間
欠制御によっても制御性を大きく損ねることはない。し
たがって、溶接品質に影響を与えないような適当な間隔
で指令値を算出して溶接制御装置に指示を出すようにす
ればよい。
【0022】そこで、本発明の回転アーク溶接装置で
は、トーチの1回転に必要とされる時間以上の適当な時
間間隔で溶接速度設定を行うようにすることができるよ
うに構成してもよい。なお、間欠制御を用いるときは、
制御装置の演算負荷が小さくなり高度な機能を備える必
要が無く経済的な溶接システムを構築することが可能に
なる。
【0023】また、本発明の回転アーク溶接装置では、
たとえばビード脚長6mmのところを4mmに変えるな
ど、溶接ビード形状を変更する場合には、ビード指数の
目標値を設定し直すだけで目的を達成する。なお、ビー
ド指数が変更されると、溶接条件が変化するので、新し
いビード指数に適合するフィードバックゲインを設定し
直すことが好ましい。
【0024】ビード脚長や実際のど厚に対応するビード
指数とフィードバックゲインの適正値は、簡単な実験に
より予め求めることができる。このような構成では調整
パラメータはビード指数目標値とフィードバックゲイン
の2個だけで済むので調整が簡単である。また、特開平
10−263821に開示された手法のようにギャップ
量が変化する毎に適正溶接条件等を求めておく必要もな
く、容易に適用範囲を拡大することができる。
【0025】また、本発明の回転アーク溶接装置用の溶
接速度設定装置は、演算装置と制御装置を備えて、演算
装置がアーク回転中のアーク電圧値を入力してアーク回
転の異なる位相領域におけるアーク電圧値の平均値の差
として与えられるビード指数を求め、制御装置が記録さ
れたフィードバックゲインを用いてビード指数とその所
定の目標値との偏差が小さくなるように溶接速度の設定
値を算出して出力することを特徴とする。本発明の溶接
速度設定装置は、新しい回転アーク溶接装置に組み込ん
で機能させることができるばかりでなく、既存の回転ア
ーク溶接装置に付属させることによりビード脚長制御が
可能となるので、適用対象が広くなり、経済的価値が大
きい。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、実施例に基づき本発明に係
る回転アーク溶接装置を図面を用いて詳細に説明する。
図1は本実施例の高速回転アーク溶接装置の構成例を示
す構成図、図2は高速回転アーク溶接を行う回転トーチ
の説明図、図3は本実施例におけるアーク電圧の周期変
化を示す概念図、図4は本実施例で使用する制御方法の
ブロック線図、図5は溶接ビード脚長とアーク長の関係
を説明する図面、図6はギャップ量に対して回転位相領
域のアーク電圧平均値の挙動を示すグラフ、図7はギャ
ップ量に対して異なる2個の回転位相領域のアーク電圧
平均値の差の挙動を示すグラフ、図8はビード指数を算
出する位相領域を示すグラフ、図9はビード指数と溶接
ビードの対応関係を示すグラフ、図10はビード指数と
実際のど厚の対応関係を示すグラフ、図11は溶接速度
設定値の求め方について説明する波形図、図12はビー
ド指数設定値とフィードバックゲインの設定可能範囲を
示す概念図、図13は本実施例の回転アーク溶接装置に
よって行ったすみ肉溶接の試験結果を示すグラフ、図1
4は同じく別の試験結果を示すグラフ、図15は比較の
ために本実施例の制御を行わずに溶接を行った試験結果
を示すグラフである。
【0027】本実施例の回転アーク溶接装置は、図1に
示すように、回転トーチ1、溶接ロボット2、溶接電源
3、溶接制御装置4、演算装置5からなり、ワーク6の
すみ肉溶接を自動的に行うものである。溶接電源3は、
回転トーチ1に一方の電極端子を接続し、ワーク6に他
方の電極端子を接続して、溶接ワイヤに溶接電流を供給
する。溶接制御装置4は、回転トーチ1と溶接ロボット
2と溶接電源3を総合的に制御して的確な溶接を行わせ
る。
【0028】図2は、回転トーチ1の先端部分の働きを
概念的に表したものである。同様な機構は、たとえば特
開平10−249523などにも開示されている。回転
トーチ1の電極11の根元に偏心した歯車12が取り付
けられている。歯車12は回転モータ13により回転駆
動されて最高100Hzで高速回転する。回転モータ1
3の動力は溶接制御装置4から供給することができる。
溶接ワイヤ14は、下板16と立板17がなす角のほぼ
半分の角度で当てられ、溶接線に対して平行な面内を回
転するように設けられている。
【0029】溶接ワイヤ14は図外のワイヤ供給装置に
より電極11内に供給され電極11の先端から突出して
溶接部近くで回転し、溶接電源3から供給される溶接電
流により生成するアーク15により溶融して、下板16
と立板17の間に溶融金属を置きながら両者の接合線上
を進行してすみ肉溶接をする。回転トーチ1が溶接線に
沿って移動すると、下板16と立板17の突き合わせ部
に溶接ビード18が形成されて両者が溶接される。
【0030】電極11を回転させて溶接ワイヤ14の先
端から発するアーク15を回転させると、溶接ワイヤ1
4の先端と溶接ビード18の表面までの距離が周期的に
変化するので、アーク電圧Vは溶接ワイヤ14の回転に
合わせて周期的に変化する。図3はアーク電圧の変化を
ほぼ1周期に亘って表示した線図である。すみ肉溶接が
行われているときのアーク電圧Vは、図3の実線で示す
ように、溶接ワイヤ14が溶接進行方向に対して前後方
向にあるときに上昇し、左右方向にあるときに低下す
る。
【0031】溶接ワイヤ14が下板16と立板17の真
ん中に回転中心を置いて回転しているときには、アーク
電圧Vの波形は正弦波に近いほぼ対称な形状を有する。
溶接ワイヤ14の中心位置が下板16と立板17のいず
れかに偏ると、図3の点線で示すように、進行方向左側
に当たる位相の波形と右側に当たる位相の波形が互いに
反対の方向にずれる。この性質を利用して、アーク電圧
Vの正弦波形からの誤差量をゼロにするように溶接ワイ
ヤ14の左右位置制御を行うことにより、溶接線倣い制
御を行うことができる。
【0032】溶接ロボット2は、腕先に溶接トーチ1を
把持し、溶接制御装置4の指示により溶接トーチ1の位
置と姿勢を制御して、溶接トーチ1をワーク6の溶接線
に沿って指示された速度で移動させて溶接をさせる。溶
接電源3は、溶接制御装置4の指示に従って、溶接電圧
や溶接電流を調整して必要な電力を回転トーチ1に供給
する。なお、溶接電流はワイヤ供給装置を介して供給す
るようにしてもよい。溶接トーチ1に印加されるアーク
電圧は、溶接電源3から溶接ワイヤ14に電力が供給さ
れる位置で測定され、時々刻々の測定値がデジタル変換
されて演算装置5に伝送される。なお、アーク電圧のデ
ジタル変換は演算装置5で行ってもよい。
【0033】図4は、演算装置5が実行する制御アルゴ
リズムを説明するブロック線図である。演算装置5は、
小型の電子計算機などで構成され、区間平均値演算器2
2、ビード指数演算器24、溶接速度制御器25を備
え、溶接制御装置4からアーク電圧波形を入力し、本発
明固有の演算を行ってビード指数Bを算出し、これに基
づいて適正な溶接速度Sを求めて溶接制御装置4のロボ
ット制御器30に指令する。なお、溶接制御装置4と演
算装置5の機能は適宜に分担することができる。たとえ
ば、演算装置5が、ビード指数Bを入力して溶接速度S
を求める機能のみを搭載し、残りの部分は溶接制御装置
4が実行するようにしてもよい。
【0034】溶接制御装置4は、溶接プロセス20にお
いて回転トーチ1もしくは溶接電源3で測定されたアー
ク電圧値を取得する。なお、溶接電力をワイヤ供給装置
で印加する場合は、アーク電圧を溶接ワイヤ供給装置で
測定してもよい。区間平均値演算器22は、溶接制御装
置4が溶接プロセス20から取得したアーク電圧測定値
Vを入出力インターフェースを介して入力し、下の
(1)式に従い、指定する2つの位相領域について積分
してそれぞれ区間平均値Af、Arを得る。位相領域は
アークの回転における位相範囲をいい、初めの指定領域
が溶接進行方向前方の適当な範囲(tc〜td)であ
り、もうひとつの指定領域が溶接進行方向の後方にある
適当な範囲(ta〜tb)である。 Ar=∫ta tbVdt/(tb−ta) Af=∫tc tdVdt/(td−tc) (1)
【0035】区間平均値Af、Arは、ロボット駆動タ
イミングに合わせたサンプリング器23で間欠的にビー
ド指数演算器24に取り込まれる。ビード指数演算器2
4は、下の(2)式に従い、区間平均値Aに基づいてビ
ード指数Bを算出する。 B=Ar−Af (2) 溶接速度制御器25は、ビード指数設定器あるいはビー
ド指数基準値発生器26、減算器27、溶接速度演算器
28、サンプリング器29を備えている。
【0036】ビード指数基準値発生器26は、ビード脚
長、実際のど厚など、希望するビードの大きさに基づい
て選択され設定されるビード指数Bの基準値Brefを生
成する。なお、ビード指数基準値Brefとビードの形状
の関数関係は少なくとも溶接速度に対しては変化が小さ
いので、予め簡単な実験により確認しておけばよい。し
たがって、従来技術として挙げた先行技術例におけるよ
うに条件毎に異なる関数関係を大量の実験を行って確認
しデータベース化しておく必要がない。減算器27は、
下の(3)式に従い、先に算出されたビード指数Bのビ
ード指数基準値Brefとの誤差Rを算出する。 R=Bref−B (3)
【0037】溶接速度演算器28は設定された係数Kp
を保持していて、下の(4)式に基づいて、減算器27
から入力した誤差Rに係数Kpを掛けた値を現状の溶接
速度S(k)に加えて新しい溶接速度S(k+1)を算
出して出力する。 S(k+1)=S(k)+Kp×R (4) ここで、kは演算間隔を1としたときの時刻を表す関数
で、S(k)は時刻kにおける溶接速度設定値である。
こうして求めた溶接速度S(k+1)は、溶接制御装置
4のロボット制御器30に目標値として与えられる。溶
接速度は溶接アークが溶接線に沿って移動する速さであ
り、溶接速度が遅いほど溶接ビードが成長して大きくな
るので、溶接速度を調整すればビード指数を所定の値に
保持することができる。
【0038】なお、アーク電圧は早いものでは100H
zすなわち10msに1周期分の変化をするため、アー
ク電圧測定値の積分はたとえば10ms毎に求められ
る。しかし、ロボット2の制御は、シーケンサなどの論
理回路を用いてたとえば約30ms毎に間欠的に実施さ
れる。したがって、溶接速度演算器28の演算は、ロボ
ット制御動作間隔に合わせて間欠的に行えば十分であ
る。さらに、溶接の進行速度はそれ程に速くはないの
で、溶接速度の設定値を極めて急速に変更する必要はな
い。このため、溶接速度設定値Sは、ロボット制御動作
間隔毎でなくても、適当に長い時間毎にロボット制御器
30に与えられればよいことは言うまでもない。
【0039】ロボット制御器30は、ロボット2の手先
位置と姿勢の制御を行うが、本実施例の回転アーク溶接
装置では、特に溶接速度制御器25から与えられた溶接
速度設定値に基づいて、ロボットの腕に対して保持した
回転トーチ1を所定の速度で移動させる。溶接プロセス
20は、溶接速度以外に、溶接電力や溶接ワイヤ送給速
度、アーク回転速度、溶接線倣い制御など、溶接状態に
影響を与える各種の入力関数を有し、アーク電圧以外に
も各種の指標を出力する。本実施例の制御は、これら各
種の入出力信号から特にアーク電圧を代替制御変数とし
溶接速度を操作変数とした制御ループを組むことにより
ビード脚長を制御することに特徴がある。
【0040】以下、本実施例の回転アーク溶接装置につ
いて、作動原理や実施結果を含めてさらに詳しく説明す
る。図5は、下板16と立板17の突き合わせ部にギャ
ップが存在しないときとギャップが存在するときにおけ
るアーク電圧の差を説明するために、溶接ビード18と
アーク15の状態を電極11の回転中心軸に沿って切断
して示す断面図である。ギャップが無い場合には、溶接
ビード18の表面がFnに示すように十分高いのに対し
て、ギャップがある場合は、ギャップ内に溶融金属が流
入するため溶接ビード18は図にFgとして示すように
小さくなり、それに従い脚長が小さくなる。
【0041】ギャップが無いときとギャップがあるとき
の溶接ビード18の形状の違いはアーク長の変化として
現れる。アーク長の変化は、アーク電圧Vの変化として
検出することができる。電極11を回転させてすみ肉溶
接を行うと、アーク電圧Vは図3に示すように周期的な
変化をする。特に、溶接ワイヤ14先端の回転面が溶融
状態にある溶接ビード18の表面とほぼ平行になってい
て適正なすみ肉溶接が行われているときは、アーク電圧
Vは下板側と立板側でほぼ等しい深さの谷を持った正弦
波形を示す。
【0042】下板16と立板17の間にギャップが存在
すると溶接ビードが低下し溶融金属面がなだらかにな
る。したがって、溶接進行方向後方において溶接ワイヤ
14先端から溶融池までの距離が増大してアーク電圧が
上昇する一方、進行方向前方におけるアーク長はほとん
ど変化せずアーク電圧もほとんど変化しない。なお、溶
接トーチについて溶接電流を指標とした上下方向倣い制
御を行っている場合には、溶接ビード18面が低下する
と溶接ワイヤ先端を下板表面に近づける制御を行うこと
になるので、ギャップ存在時に前方位相においてアーク
電圧が低下する。
【0043】そこで、ギャップ量とアーク電圧の関係を
確認するため、板厚12mmの板を2枚突き合わせてギ
ャップが0mmから4mmまで徐々に変化するようにし
たものを高速回転アークによりMAG溶接し、回転アー
クの回転位相毎のアーク電圧を観察したところ、図6の
ような結果を得ることができた。なお、この試験は上下
方向倣い制御を用いて行った。
【0044】図6は、横軸にはギャップ量、縦軸には代
表的な回転位相におけるアーク電圧値を適当な区間積分
して平均化した値を任意スケールでプロットしたもので
ある。図に表示した回転位相は、図3に示したP1、P
2、P3の点に対応する位置である。P1は溶接ワイヤ
が溶接方向真横から前方に約45度進相した位置で、溶
接ワイヤ先端と下板との関係をよく反映することが期待
される。P2は進行方向に対してほぼ垂直の位置であ
る。また、P3は進行方向に対してほぼ真後ろの位置に
当たる。
【0045】アーク電圧平均値は、いずれの位相につい
てもほぼ2.5mmまでは変化しない。ところが、それ
以上のギャップでは、P1を挟んだ領域のアーク電圧平
均値はギャップが増すにつれて大きくなり、P3を挟ん
だ領域のアーク電圧平均値は小さくなる。また、P2を
挟む領域のアーク電圧は顕著な傾向を持たない。これら
の変化の再現性を検査すると、P1とP3については、
十分な再現性があるが、P2については再現性が弱いこ
とが分かった。
【0046】そこで、これらアーク電圧の傾向に注目
し、P1近辺について求めたアーク電圧平均値とP3近
辺について求めたアーク電圧平均値の差を算出して、ギ
ャップ量との関係をプロットしたのが、図7のグラフで
ある。図7は、横軸にギャップ量、縦軸に平均値の差を
プロットしたものである。グラフを見ると、ギャップ量
2.5mm以上の領域においてギャップ量と1価関数的
によく対応していることが分かる。ここでは、この平均
値差をビード指数と呼ぶ。
【0047】ビード指数をオンライン制御に利用するに
は、演算しやすい方法で算出できることが要求される。
そこで、たとえば、図8に示すように、溶接ワイヤの回
転位相と関連付けた時刻に基づいて、溶接ワイヤが溶接
方向前方にある間の適当な第1の演算領域(tc〜t
d)と溶接方向後方にある間の適当な第2の演算領域
(ta〜tb)を定め、これらの領域に亘るアーク電圧
値Af、Arを積分して平均値化し、平均値の差を取っ
てビード指数Bとする。
【0048】ここで、ビードの状態とよりよく対応する
指標にするために、第1の演算領域は回転位相が進行方
向に対して真横になる点から前方に真っ直ぐ向くまでの
領域とし、第2の演算領域を進行方向の真っ直ぐ後ろの
方向を挟んで45°ずつとすることが好ましい。なお、
第1と第2の領域で位相角の幅を同じ90°とするのは
両者が同じ積分時間を有するようにして、手順を共通化
することにより演算の簡便を図ったためで、それぞれ適
当な幅の領域を指定してもよいことはいうまでもない。
【0049】ビード指数と溶接ビードの対応関係を検証
するため、下板に対してギャップがないように立板を合
わせた状態で高速回転アークですみ肉溶接して、ビード
指数とビード形状の関係を観察した結果を図9に示す。
図9は、溶接速度をパラメータとして横軸に取り、ビー
ド指数、ビード脚長、実際のど厚を縦軸に取ったもので
ある。溶接速度をパラメータとして100cm/min
から10cm/minまで減速しながら行った試験にお
いて、溶接速度が50cm/min程度まで低速化する
間は、ビード指数、実際のど厚、脚長共に余り変化しな
いが、それより低速になるとビード指数が減少すると共
に、実際のど厚と脚長が共に増大することが観察され
る。溶接速度を10cm/minから100cm/mi
nまで順次増速しながら、これらの状態を観察したとき
にも同じ傾向が見られた。この試験において、ビード指
数と実際のど厚の相関係数が−0.82、ビード指数と
脚長の相関係数が−0.59と、いずれもかなり強い相
関があることが実証された。
【0050】なお、図10は、ビード指数と実際のど厚
の関係を表すグラフである。図では、横軸に実際のど厚
をとり、縦軸にビード指数をプロットした。ビード指数
は、図6を求めた試験においてそれぞれの実際のど厚を
とった時刻の周りにおける平均値をとったものである。
この関係を観察すると、ビード指数は実際のど厚が大き
くなるにつれて単調に減少し、両者には強い対応関係が
あることが分かる。なお、実際のど厚3.7mm付近で
グラフの勾配が変化しているのは、この辺りで溶接現象
が何らかの変化を起こしているからであろう。以上か
ら、ビード指数を実際のど厚もしくは脚長の代替変数と
することができることが分かる。
【0051】本実施例の回転アーク溶接装置は、ビード
脚長の代替変数となるビード指数Bを算出し、ビード指
数設定値Brefとの偏差を求めて、これに適当なフィー
ドバック係数Kpを掛けて溶接速度設定値Sを算出し、
これに基づいて溶接ロボットの溶接電極送り速度を調整
することにより、ビード脚長を希望の値に制御するもの
である。
【0052】図11は、本実施例における溶接速度設定
値Sの求め方について説明するものである。図11は、
横軸に時間を取り目盛りにサンプル時刻をふってある。
また、縦軸にビード指数と溶接速度をとってある。な
お、ビード指数の目盛りは任意の単位でふったものであ
る。また、溶接速度について数値が与えられているが、
適当な範囲は条件により異なるので参考にすぎない。
【0053】ビード指数Bはアーク回転毎に求められる
ので、たとえば10ms毎に制御システムにとってはほ
ぼ連続的に与えられる。一方、溶接ビードの形成はこれ
と比較するとずっと遅い事象なので、溶接速度の調整は
適当な間隔で与えれば十分である。そこで、適当なサン
プリング周期を設定し、現在のサンプリングタイミング
におけるビード指数値に基づいて現在の設定値を修正し
て新しい溶接速度設定値を算定する。サンプリング間隔
は、演算装置の能力仕様および計算負荷の軽減を考慮し
て決定する。
【0054】たとえば、第50回目の溶接速度設定値S
(50)を算出するときは、サンプリング時のビード指
数B(49)を求めビード指数設定値Brefとの偏差に
フィードバックゲインである比例係数Kpを掛けた値に
より、現在の速度設定値S(49)を修正する。ビード
指数が大きくなれば溶接速度は低く設定する必要があ
る。
【0055】ビード指数設定値Brefは、目標とする溶
接ビードの大きさにより決めるが、制御の性能はフィー
ドバックゲインKpの値に左右されるため、適切な形状
をしたビードを得ようとすればさらにビード指数設定値
Brefに適合したゲインKpを決める必要がある。図1
2は、横軸にビード指数設定値Bref、縦軸にフィード
バックゲインKpをとって、両者の関係として適正な設
定可能範囲を概念的に表すものである。
【0056】ビード指数設定値Brefが小さければ溶接
ビードが大きくなる。しかし、ビード指数設定値Bref
を小さくし過ぎれば溶接ビードが大きくなりすぎて形状
が崩れてしまうし、ビード指数設定値Brefを大きくし
すぎると溶接ビードが小さくなりすぎて溶接ができなく
なる。また、フィードバックゲインKpが大きければ溶
接速度変化の応答速度が上昇するが、過剰応答状態にな
るとビードの幅が周期的に変化するような異常溶接が生
じ、応答速度が小さすぎれば外乱が発生したときにこれ
を解消することができない。なお、溶接速度の上限値を
ギャップが無い場合に適切な溶接ビードを生成できるよ
うな基準速度にしてもよい。このようにいずれのパラメ
ータも適正な設定範囲が存在するが、さらに、フィード
バックゲインKpはビード指数設定値Brefに対応する
適正な範囲が決まる。
【0057】したがって、脚長を変えるときはビード指
数設定値Brefを適正に変更すればよいが、変更値が大
きいときには、さらにフィードバックゲインKpをそれ
ぞれ最適値に設定することが好ましい。本実施例の回転
アーク溶接装置は、ビード脚長や実際のど厚を所定の値
に調整するためにこの2個のパラメータを設定すれば十
分であるので、従来の装置と比較して調整が極めて簡単
で、装置に対する性能の要求水準が低下すると共に、オ
ペレータの設定作業が簡単になる。
【0058】なお、本実施例の回転アーク溶接装置では
応答速度の調整を誤差量に掛ける比例定数で行っている
が、実質的にフィードバックゲインとして作用するもの
であれば同等の効果があり、たとえば積分係数を利用し
たり、ロボット制御器における係数設定により行ったり
しても良いことはいうまでもない。また、フィードバッ
クゲインKpを直接設定する代わりに、実質的にフィー
ドバックゲインKpに影響を与えるパラメータの値を設
定してもよいことは言うまでもない。また、演算装置は
小型の電子計算機を利用して構成したが、計算機能を備
える他の装置であっても良い。さらに、演算装置が実施
することにしている制御系中の演算を特定したが、ロボ
ット制御器など他の要素も計算機能を有するので演算を
他の要素に配分して実行してもよいこともいうまでもな
い。
【0059】図13は、本実施例の回転アーク溶接装置
によって試験的にすみ肉溶接を行った結果を例示したも
のである。横軸は任意スケールで表した溶接移動量、縦
軸は溶接速度、ギャップ量、脚長、実際のど厚である。
試験は、ギャップが0mmから4mmまで徐々に拡大す
るように立板を下板に斜めに当てて形成したワークを使
用し、ビード指数を一定に維持するように溶接速度を調
整しながら溶接線に沿って溶接したものである。
【0060】ギャップが無い方から拡大する方向に溶接
を行い、溶接中に溶接速度をモニターしておき、さらに
溶接終了後に実際のど厚と下板側脚長と立板側脚長を測
定して、結果をプロットした。ギャップ量が2.5mm
を超える辺りから溶接速度が急速に低減していることが
分かる。この結果として、実際のど厚と脚長が共に、ギ
ャップ量にかかわらずほぼ一定に形成され、良好なすみ
肉溶接が行われている。
【0061】図14は、本実施例の回転アーク溶接装置
によるすみ肉溶接の別の試験例を示す図面である。この
試験は、側面に中央で最も深くなる緩やかなくさび状の
傾斜を設けた立板を下板に当てることにより、溶接線に
沿ってギャップ量が0mmから4.5mmまで増加しそ
の後再び0mmまで減少するようにしたワークを形成し
て、本実施例の回転アーク溶接装置ですみ肉溶接を行っ
たものである。
【0062】ギャップが大きくなるにつれて溶接速度を
低下させ、その後ギャップが小さくなるにつれて溶接速
度を上昇させている。その結果、下板側脚長、立板側脚
長、実際のど厚のいずれもが極めて狭い範囲内に管理さ
れている。先の試験においては4mm程度までの制御性
能が確認できたのであるが、この試験によればギャップ
の状態によってはもっと大きなものでも良質なすみ肉溶
接ができることが分かる。
【0063】なお、図15は比較のために本実施例の制
御を行わず従来の方法で溶接したときの結果を示すもの
である。ここでは、ギャップ量に係わらず溶接速度を一
定に維持して溶接した。その結果、下板側脚長、立板側
脚長、実際のど厚のいずれも、ギャップ量が増加すると
小さくなり、ギャップ量が減少するとそれに伴って大き
くなっている。4mmのギャップに対して実際のど厚で
3mmから4mm、脚長で3mmから5mm程度の変化
が観察されている。このように、本実施例の回転アーク
溶接装置による効果は顕著であり、多少のギャップがあ
ってもビード形状を一定に管理することが可能であるこ
とが実証された。
【0064】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明の回転アーク
溶接装置を用いることにより、ワークの溶接部分に過大
ギャップ等があってもビード脚長不足を防止することが
でき、また溶接ビードの大きさを変更する場合にも比較
的少ない調整パラメータを設定することにより自動的に
高速回転アーク溶接ができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高速回転アーク溶接装置の構成例を示
す構成図である。
【図2】本実施例における高速回転アーク溶接を行う回
転トーチの説明図である。
【図3】本実施例におけるアーク電圧の周期変化を示す
概念図である。
【図4】本実施例における演算装置が実行する制御アル
ゴリズムを説明するブロック線図である。
【図5】本実施例において溶接ビードとアーク長の関係
を説明する断面図である。
【図6】本実施例においてギャップ量に対して回転位相
領域のアーク電圧平均値の挙動を示すグラフである。
【図7】本実施例においてギャップ量に対して異なる2
個の回転位相領域のアーク電圧平均値の差の挙動を示す
グラフである。
【図8】本実施例においてビード指数を算出する位相領
域を示すグラフである。
【図9】本実施例においてビード指数と溶接ビードの対
応関係を示すグラフである。
【図10】本実施例においてビード指数と実際のど厚の
対応関係を示すグラフである。
【図11】本実施例における溶接速度設定値の求め方に
ついて説明する波形図である。
【図12】本実施例におけるビード指数設定値とフィー
ドバックゲインの設定可能範囲を示す概念図である。
【図13】本実施例の回転アーク溶接装置によって行っ
たすみ肉溶接の試験結果を示すグラフである。
【図14】本実施例の回転アーク溶接装置によって行っ
たすみ肉溶接の別の試験結果を示すグラフである。
【図15】従来の回転アーク溶接装置によって行ったす
み肉溶接の試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 回転トーチ 2 溶接ロボット 3 溶接電源 4 溶接制御装置 5 演算装置 6 ワーク 11 電極 12 偏心歯車 13 回転モータ 14 溶接ワイヤ 16 下板 17 立板 15 アーク 18 溶接ビード 22 区間平均値演算器 24 ビード指数演算器 25 溶接速度制御器 30 ロボット制御器 20 溶接プロセス 23 サンプリング器 26 ビード指数基準値発生器 27 減算器 28 溶接速度演算器 29 サンプリング器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 水野 秀明 千葉県野田市二ツ塚118番地 川崎重工業 株式会社野田工場内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アーク電圧測定装置と演算装置と制御装
    置と溶接速度調整装置を備えた回転アーク溶接装置であ
    って、前記アーク電圧測定装置がアーク回転中のアーク
    電圧値を求め、前記演算装置が該アーク電圧値を入力し
    てアーク回転の異なる位相領域におけるアーク電圧の平
    均値を求めて該平均値の差として与えられるビード指数
    を求め、前記制御装置が設定されたフィードバックゲイ
    ンを用いて前記ビード指数とその所定の目標値との偏差
    が小さくなるように前記溶接速度調整装置を制御し、該
    溶接速度調整装置が前記制御装置に従って溶接速度を調
    整することにより、溶接ビード脚長を一定に制御するこ
    とを特徴とする回転アーク溶接装置。
  2. 【請求項2】 前記アーク回転中の異なる位相領域の一
    方はアークが溶接進行方向前方にあるときの所定の位相
    領域であり、他方がアークが溶接進行方向の後方にある
    ときの所定の位相領域であることを特徴とする請求項1
    記載の回転アーク溶接装置。
  3. 【請求項3】 前記アーク回転中の異なる位相領域の一
    方はアークが溶接進行方向前方にあって溶接部材の下板
    部分に当たっている位相領域であり、他方の位相領域が
    アークが溶接進行方向の真後ろ当たる位置を挟んだ所定
    の角度の間にある位相領域であることを特徴とする請求
    項2記載の回転アーク溶接装置。
  4. 【請求項4】 前記制御装置が前記溶接速度の設定を適
    当な時間間隔毎に行うことを特徴とする請求項1から3
    のいずれか記載の回転アーク溶接装置。
  5. 【請求項5】 前記制御装置が前記ビード指数の目標値
    を調整することによって溶接ビード脚長を決めることを
    特徴とする請求項1から4のいずれか記載の回転アーク
    溶接装置。
  6. 【請求項6】 前記制御装置が前記ビード指数に対応し
    て選択されるフィードバックゲインを入力し、該フィー
    ドバックゲインを用いることによって制御性能を向上さ
    せることを特徴とする請求項5記載の回転アーク溶接装
    置。
  7. 【請求項7】 演算装置と制御装置を備えた回転アーク
    溶接装置用の溶接速度設定装置であって、前記演算装置
    がアーク回転中のアーク電圧値を入力してアーク回転の
    異なる位相領域におけるアーク電圧値の平均値を求めて
    該平均値の差として与えられるビード指数を求め、前記
    制御装置が記録されたフィードバックゲインを用いて前
    記ビード指数とその所定の目標値との偏差が小さくなる
    ように溶接速度の設定値を算出して出力することを特徴
    とする溶接速度設定装置。
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