JP2002309352A - 冷鍛性・高温加熱後の耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼 - Google Patents

冷鍛性・高温加熱後の耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 各種プラント、産業機械、精密機械、自動車
部品等の材料として用いられる、冷鍛性、高温加熱後の
耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼を提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.005〜0.05
%、Si:0.5%以下、Mn:0.5%以下、Cr:
16.00〜19.00%、Nb:0.10%超〜0.
50%、N:0.005〜0.05%、C+N:>0.
02%、残部がFeおよび不可避不純物からなり、且つ
1<Nb/(C+N)<25であることを特徴とする冷
鍛性、高温加熱後の耐食性に優れたフェライト系ステン
レス鋼。上記にさらに加えて、質量%で、Al:0.0
01〜0.10%、S:0.01%以下、Ti:0.0
5%以下、B:0.01%以下、O:0.005%以下
を1種または2種以上含有した冷鍛性、高温加熱後の耐
食性に優れたフェライト系ステンレス鋼。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種プラント部
品、産業機械部品、精密機械部品および自動車部品等の
材料として用いられる、冷鍛性、高温加熱後の耐食性に
優れたフェライト系ステンレス鋼を提供する。
【0002】
【従来の技術】従来、各種プラント、産業機械、精密機
械および自動車部品には、17Cr系のフェライト系ス
テンレス鋼が使用されており、切削による成形が主流で
あったために、快削元素であるSを含有したSUS43
0Fを用いていた。ところが、複雑形状を呈する部品は
切削による削り代が大きく歩留まりが悪いため、コスト
ダウンを目的として冷鍛による成形が行われるようにな
った。これに伴い材料もそれほど快削性を求められなく
なり、SUS430Fから快削元素を含まないSUS4
30へと変更された。
【0003】しかしながら、汎用のSUS430は変形
抵抗が高いため、必ずしも冷鍛性に優れているとは言え
ず、変形抵抗を低下させるためCやNを低減させると結
晶粒の粗大化を招き、かえって冷鍛性を悪化させる結果
となっていた。このため、例えば特開平11−2165
6号公報では、変形抵抗の低下と割れ感受性を高める析
出物の制御を目的として、CおよびNを低減し、且つこ
れらの有害元素を固定するためにTiとNbを適量複合
添加することにより、冷鍛性に優れた材料を得るとして
いる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが最近では、ニ
アネットシェイプ型のような厳しい冷間加工や、コスト
削減のため工程の中間焼鈍なしの過酷な冷間加工が増加
しており、より優れた冷鍛性が要求されるようになって
いる。上記特許の内容では、TiとNbを複合適量添加
することにより冷鍛性を改善するとしているが、Tiは
NbよりもCおよびNと親和力が強いため析出物を生成
しやすく、Ti系析出物はNb系析出物に比べて巨大で
角型の形状を呈しているため、割れの起点になりやす
い。このため、TiとNbの複合添加では、過酷な冷間
加工に対して、必要とされる冷鍛性を確保したフェライ
ト系ステンレス鋼を得るには不十分である。
【0005】また、部品の接合時に行う溶接等の影響に
よって、材料自身が800℃以上に加熱された場合、冷
却後の接合部において、鋭敏化による粒界腐食が生じる
ことがあり、高温加熱後の優れた耐食性も必要とされる
が、TiとNb各0.10%以下の少量の添加では十分
な耐食性は得られない。そこで、本発明の目的は、冷鍛
性および高温加熱後の耐食性に優れたフェライト系ステ
ンレス鋼を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記問題を解決するにあ
たり、本発明者らが鋭意研究を進めた結果、CとNを低
減させ、更に、これらの元素を固定するためにNb単独
添加とすることで最も優れた冷鍛性が得られることを見
出した。更に、Nb添加の範囲について特開平11−2
1656号公報では0.01〜0.10%としている
が、0.10%超〜0.50%とすることで、冷鍛性の
改善に加え、800℃以上の高温加熱後の耐食性にも優
れた材料となることも見出した。TiとNbの複合添加
に比べNbのみの添加の場合、微細なNb系析出物が均
等に粒内に点在するため、結晶粒の成長抑制による冷鍛
性向上の効果も大きく、Cを固定し、鋭敏化抑制による
高温加熱後の耐食性向上も効果的に行われているといえ
る。また、TiはC,Nを固定するには強力元素である
が、割れの起点となる巨大析出物を生成する可能性が高
いため、無添加または制限添加とすることが好ましい。
このような条件とすることで、優れた冷鍛性、高温加熱
後の耐食性を有するフェライト系ステンレス鋼を得る。
【0007】すなわち、本発明の要旨とするところは、 (1)質量%で、C:0.005〜0.05%、Si:
0.5%以下、Mn:0.5%以下、Cr:16.00
〜19.00%、Nb:0.10%超〜0.50%、
N:0.005〜0.05%、C+N:>0.02%、
残部がFeおよび不可避不純物からなり、且つ1<Nb
/(C+N)<25であることを特徴とする冷鍛性、高
温加熱後の耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼。 (2)質量%で、Al:0.001〜0.10%、S:
0.01%以下、Ti:0.05%以下、B:0.01
%以下、O:0.005%以下を1種または2種以上含
有した上記(1)に記載の、冷鍛性、高温加熱後の耐食
性に優れたフェライト系ステンレス鋼にある。
【0008】
【発明の実施の形態】以下に本発明鋼の成分限定理由に
ついて説明する。 CおよびN:0.005〜0.05% CおよびNは、Nbと炭化物を形成し、結晶粒の粗大化
を抑制するため、0.005%以上必要であるが、多量
になると冷鍛性や耐食性を劣化させるため、上限を0.
05%とした。さらに望ましくは、C、Nともに上限
0.03%である。 C+N:>0.02% CおよびNが上記成分範囲内であっても、C+N量が
0.02%以下の場合では、結晶粒の成長を抑制するの
に必要な炭窒化物が不足するため、0.02%超とし
た。
【0009】Si:0.50%以下 Siは、脱酸に有効な元素であるが、多量になると固溶
強化し冷鍛性を悪化させるため、上限は0.50%とし
た。 Mn:0.50% Mnは、Siと同様に脱酸元素であるが、多量になると
冷鍛性、耐食性を劣化させるため、上限を0.50%と
した。
【0010】S:0.01%以下 Sは、Mn,Cr等と硫化物を生成し被削性を向上させ
るが、多量になると冷鍛性、耐食性を劣化させるため、
上限を0.01%とした。 Cr:16.00〜19.00% Crは、フェライト層を安定させ、耐食性向上に有効な
元素であるが、16.00%未満では耐食性改善効果が
得られず、19.00%を超えると冷鍛性を劣化させる
ため、その範囲を16.00〜19.00%とした。
【0011】Nb:0.10%超〜0.50% Nbは、CやNを固定して炭化物や窒化物を生成し、結
晶粒を微細化させて冷鍛性を向上するとともに、Cr系
炭窒化物の粒界析出を抑制するため、耐食性の改善にも
効果的である。これらの効果を得るためには、少なくと
も0.10%の添加が必要であり、0.50%を超える
と冷鍛性を劣化させるため、その範囲を0.10%超〜
0.50%とした。
【0012】Al:0.001〜0.10% Alは、脱酸に有効な元素であるが、硬質の球状酸化物
を生成しやすい。0.001%未満では脱酸の効果が得
られず、0.10%を超えると球状酸化物が増加して表
面疵が発生し、冷鍛性も劣化するため、その範囲を0.
001〜0.10%とした。 Ti:0.05%以下 Ti系炭窒化物はNb系炭窒化物よりも添加量の増加に
伴って巨大になりやすく、角型をしているため冷鍛性の
劣化させる可能性が高くなる。Tiは無添加とし、不純
物レベルで含有するTiでも0.05%を超えてしまう
と冷鍛性が損なわれるため、その上限を0.05%とし
た。
【0013】O:0.005%以下 Oは多量になると、酸化物が多くなり冷鍛性に有害であ
るため、その上限を0.005%とした。 B:0.01%以下 Bは粒界強度を上昇させるが、多量の添加は加工性を劣
化させるため、上限を0.010%とした。
【0014】1<Nb/(C+N)<25 CおよびN量がNb量に対して多すぎた場合は、Cおよ
びNがNbによって十分に固定されないため、耐食性は
改善されない。また、CおよびN量がNb量に対して少
なすぎた場合は、Nbが過剰になり固溶してマトリクス
を硬化させるため、冷鍛性を劣化させる。よって、C及
びN量とそれらを固定するNb量の比率は重要であり、
1<Nb/(C+N)<25とした。
【0015】
【実施例】表1に供試材の化学成分を示す。冷鍛性につ
いては、変形抵抗、切欠限界据込で評価を行った。変形
抵抗はφ14mm×高さ21mmの棒状試験片を用い、
据込率(H0 −H/H0 )×100(%)が40%のと
きの値が700MPa以下のものを○、700MPa〜
750MPaを△、750MPa以上を×とした。切欠
限界据込率はφ14mm×高さ21mmのノッチ付き試
験片を用い、限界割れが生じるまでの限界据込率を測定
した。測定を10回繰り返し行って平均値を計算し、据
込率75%以上のものを○、70〜75%を△、70%
以下を×とした。
【0016】また、高温加熱後の耐食性については、据
込率50%の冷間加工後、1000℃−5s保持(降
温:10℃/s)の熱処理を施した試験片を用いて、塩
水噴霧試験(5%NaCl、35℃−16h)を実施し
評価を行った。素材ままの耐食性に優れていても高温加
熱後の耐食性が劣る場合には、用途上、耐久性が低いと
されてしまう。評価は、発銹なしが○、やや発銹が△、
発銹ありが×とした。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】表2に各種試験結果を示す。No.1〜8
の本発明鋼は変形抵抗、限界据込率、高温加熱後の耐食
性の全てに優れており、良好な結果である。一方、比較
鋼9は、Nb添加が0.1%以下、かつNb/(C+
N)<1であり、CおよびNの固定が十分にされていな
いため、限界据込率と高温加熱後の耐食性が悪化してい
る。比較鋼10は、Tiが0.05%を超えているた
め、限界据込率が劣化し、高温加熱後の耐食性において
も若干劣っている。Tiは無添加とし、含有される場合
でも、0.05%以下と制限することが必要である。ま
た、比較鋼11は成分は満足しているが、C+Nが0.
02%以下、かつNb/(C+N)>25であり、Cお
よびNに対するNbが過剰になっているため、比較鋼1
0と同等の結果である。
【0020】比較鋼12は、CおよびNが高いため変形
抵抗が高く、Nb無添加でCが固定されないためCr系
の粒界析出炭化物が多く、高温加熱後の耐食性にも劣っ
ている。比較鋼13はSやMnが高く硫化物を生成しや
すいため、冷鍛性、高温加熱後の耐食性の劣化が著し
い。比較鋼14は比較鋼12と同様にNb無添加である
が、Cが低いため変形抵抗のみ若干良好である。Tiと
Nbを複合添加した比較鋼15は、Cが低いため変形抵
抗は良好であるが、限界据込率、高温加熱後の耐食性に
ついては、若干劣っている。
【0021】
【発明の効果】以上述べたように、本発明は、各種プラ
ント、産業機械、精密機械および自動車部品等の材料と
して用いられる、冷鍛性と高温加熱後の耐食性に優れた
フェライト系ステンレス鋼を提供できる。
フロントページの続き (72)発明者 磯本 辰郎 兵庫県姫路市飾磨区中島字一文字3007番地 山陽特殊製鋼株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C:0.005〜0.05%、 Si:0.5%以下、 Mn:0.5%以下、 Cr:16.00〜19.00%、 Nb:0.10%超〜0.50%、 N:0.005〜0.05%、 C+N:>0.02% 残部がFeおよび不可避不純物からなり、且つ1<Nb
    /(C+N)<25であることを特徴とする冷鍛性、高
    温加熱後の耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
  2. 【請求項2】 質量%で、 Al:0.001〜0.10%、 S:0.01%以下、 Ti:0.05%以下、 B:0.01%以下、 O:0.005%以下 を1種または2種以上含有した請求項1に記載の、冷鍛
    性、高温加熱後の耐食性に優れたフェライト系ステンレ
    ス鋼。
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