JP2008106306A - フェライト系快削ステンレス鋼 - Google Patents
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Abstract
【目的】被削性及び耐食性に優れたフェライト系快削ステンレス鋼を提供すること。【解決手段】重量%で、C:0.005〜0.020%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.05〜0.50%、P:0.005〜0.10%、S:0.20〜0.35%、Cr:17.0〜25.0%、Pb:0.03〜0.30%、Te:0.01〜0.10%、O:0.005〜0.020%、N:0.005〜0.030%、Nb:0.03〜0.50%、Al:0.001〜0.100%等、を含有し、[Nb]≧4×([C]+[N])…式(1)、[Te]/[S]≧0.5…式(2)、10≦[S]/[O]≦50…式(3)を満たし、更に、円相当径が2.0μm以上でアスペクト比が10以下である硫化物の総量が面積率で0.50%以上であり、ビッカース硬さが160以下である残部が実質的にFeからなるフェライト系快削ステンレス鋼。
【選択図】なし
【選択図】なし
Description
本発明は、フェライト系快削ステンレス鋼に関し、更に詳しくは、被削性及び耐食性に優れたフェライト系快削ステンレス鋼に関する。
切削加工により製造される機器・部品の生産性向上のために使用される鉄系材料の快削性付与元素として、S、Pb、Se、Bi、Te、Caなどが知られている。例えば、SやTeを含有させることにより、MnSやMnTe等の介在物を生成させ、介在物に対する切屑形成時の応力集中効果を得ることができる。また、Pbを含有させることにより、工具と切屑間の潤滑作用により被削性や研削性を高める効果を得ることができる。そのため、寸法精度確保のため精密な仕上げ加工が要求される部品や、加工代の大きい複雑形状の部品等、被削性向上が重視される部品は、快削性付与元素の含有量が増加傾向にある。快削性付与元素は、単独添加で用いられるほか、複合添加して用いられる。
しかしながら、鉄系材料で被削性向上のために広く用いられているSは、Mn系硫化物となり腐食起点となるため、その鋼種の耐食性を大きく低下させるという問題があった。そこで、MnをCrで置換することにより高耐食性が得られ、しかも、快削性付与元素を用いることにより被削性を向上させたフェライト系快削ステンレス鋼が提案されている。
その例として、特許文献1には、重量%で、C:0.12%以下、N:0.05%以下、Si:0.10〜2.0%、Mn:1.0%以下、Cr:15.0〜25.0%の量で含有させ、S、Seの何れか一種または二種を、S :0.50%以下、Se:0.30%以下(但し、S+Se≧0.10%)の量で、Mn/(S+Se)比を2以下に調整し、硫化物、セレン化物中に20%以上のCrを含有し、且つ、長さ10μm以上の硫化物、セレン化物系の介在物の個数割合が80%以上であることを特徴とする残部実質的にFeから成る組成を有する耐食性に優れた快削フェライト系ステンレス鋼が開示されている。
また、快削性付与元素を複合添加した例として、特許文献2には、重量で、C:0.1%以下、Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下、Cr:19〜25%およびS:0.20〜0.35%を含み、更に、(1)Pb:0.4%以下、Bi:0.3%以下、Te:0.3%以下、Se:0.4%以下およびCa:0.3%以下の1種または2種以上、又は、(2)Nb,Ta,Ti,V,WおよびAlの1種または2種以上を(2種の場合は合計量で)0.01〜0.50%含有するフェライト系快削ステンレス鋼が開示されている。
しかしながら、特許文献1や2に開示されたフェライト系快削ステンレス鋼は、CおよびNの量がNbと炭窒化物を形成するのに必要な量より相対的に多いため、マトリックス中へ固溶するCやNの量が多くなり鋼が硬くなり、被削性に悪影響を及ぼすという問題があった。また、硫化物の形態制御が充分でないため、鋼中の硫化物が小さく紐状になり、被削性を充分向上させることができないという問題があった。
また、特許文献2に開示されたフェライト系快削ステンレス鋼は、Sの他に、Pb、Se、Bi、Te、Caのいずれか一種又は二種以上を快削性付与元素として含有するが、これらの合計量が多いため、熱間加工性を低下させるという問題があった。また、Seは、人体に対して有害であることが知られている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被削性及び耐食性に優れたフェライト系快削ステンレス鋼を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係るフェライト系快削ステンレス鋼は、重量%で、C:0.005〜0.020%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.05〜0.50%、P:0.005〜0.10%、S:0.20〜0.35%、Cu:0.01〜0.60%、Ni:0.01〜0.60%、Cr:17.0〜25.0%、Mo:0.01〜1.0%、Pb:0.03〜0.30%、Te:0.01〜0.10%、B:0.003〜0.008%、O:0.005〜0.020%、N:0.005〜0.030%、Nb:0.03〜0.50%、Al:0.001〜0.100%、を含有し、
以下の式(1)〜式(3)([ ]内は各元素の重量%を示す):
[Nb]≧4×([C]+[N])…式(1)
[Te]/[S]≧0.05 …式(2)
10≦[S]/[O]≦50 …式(3)
を満たし、更に、円相当径が2.0μm以上でアスペクト比が10以下である硫化物の総量が面積率で0.50%以上であり、ビッカース硬さが160以下であることを要旨とし、残部が実質的にFe及び不可避的不純物からなるものである。
以下の式(1)〜式(3)([ ]内は各元素の重量%を示す):
[Nb]≧4×([C]+[N])…式(1)
[Te]/[S]≧0.05 …式(2)
10≦[S]/[O]≦50 …式(3)
を満たし、更に、円相当径が2.0μm以上でアスペクト比が10以下である硫化物の総量が面積率で0.50%以上であり、ビッカース硬さが160以下であることを要旨とし、残部が実質的にFe及び不可避的不純物からなるものである。
この場合に、更に、重量%で、Bi:0.01〜0.30%、を含有してもよい。
また、更に、重量%で、Ca、Mg、及び、REMからなる群のいずれか1種又は2種以上を、Ca:0.0001〜0.05%、Mg:0.0001〜0.02%、REM:0.0001〜0.02%、含有してもよい。
また、更に、重量%で、V、W、Ta、Tiからなる群のいずれか1種又は2種以上を、V:0.01〜0.50%、W:0.01〜0.50%、Ta:0.01〜0.50%、Ti:0.01〜0.50%、含有してもよい。
また、更に、重量%で、Ca、Mg、及び、REMからなる群のいずれか1種又は2種以上を、Ca:0.0001〜0.05%、Mg:0.0001〜0.02%、REM:0.0001〜0.02%、含有してもよい。
また、更に、重量%で、V、W、Ta、Tiからなる群のいずれか1種又は2種以上を、V:0.01〜0.50%、W:0.01〜0.50%、Ta:0.01〜0.50%、Ti:0.01〜0.50%、含有してもよい。
本発明に係るフェライト系快削ステンレス鋼は、Nb、C、Nを所定量含有するとともに、式(1)を満たすため、被削性の向上に寄与するNbを相対的に多くする一方、マトリックス中へ固溶するCおよびNを少なくすることができるため、鋼が硬くならず、被削性を向上させることができる。
本発明に係るフェライト系快削ステンレス鋼は、Te、Sを所定量含有するとともに、式(2)を満たすため、硫化物の両端にTeを存在させることができ、これによって硫化物を被削性の向上に寄与する紡錘形状とすることができる。
本発明に係るフェライト系快削ステンレス鋼は、S、Oを所定量含有するとともに、式(3)を満たすため、余分な酸化物を形成させないで、硫化物の核となる酸化物を形成させ、被削性に有効な大きさを持つ硫化物を生成させることができる。
本発明に係るフェライト系快削ステンレス鋼は、Te、Sを所定量含有するとともに、式(2)を満たすため、硫化物の両端にTeを存在させることができ、これによって硫化物を被削性の向上に寄与する紡錘形状とすることができる。
本発明に係るフェライト系快削ステンレス鋼は、S、Oを所定量含有するとともに、式(3)を満たすため、余分な酸化物を形成させないで、硫化物の核となる酸化物を形成させ、被削性に有効な大きさを持つ硫化物を生成させることができる。
本発明に係るフェライト系快削ステンレス鋼は、円相当径が2.0μm以上でアスペクト比が10以下である硫化物の総量が面積率で0.50%以上であるから、被削性が良い。
本発明に係るフェライト系快削ステンレス鋼は、ビッカース硬さが160以下であるから被削性が良い。
本発明に係るフェライト系快削ステンレス鋼は、ビッカース硬さが160以下であるから被削性が良い。
本発明に係るフェライト系快削ステンレス鋼は、Mnを0.05〜0.50%の範囲で含有し、Crを17.0〜25.0%の範囲で含有するものであるから、形成される硫化物は、腐食起点となるMnリッチな硫化物が少なく、Crリッチなものになるため、耐食性に優れる。
以下に本発明の一実施形態に係るフェライト系快削ステンレス鋼の含有成分及びその含有量の限定理由について説明する。尚、以下の説明においては、「鋼」は、特に説明がない限り、鋳造→熱間加工(圧延、鍛造)→焼鈍→試験片加工を経て得られるフェライト系快削ステンレス鋼を指し、「%」は、特に説明がない限り、そのフェライト系快削ステンレス鋼の全体重量に対する「重量%」を意味する。
また、本発明の一実施形態に係るフェライト系快削ステンレス鋼は、以下に示す成分以外の残部が、実質的にFe及び不可避的不純物からなる。
また、本発明の一実施形態に係るフェライト系快削ステンレス鋼は、以下に示す成分以外の残部が、実質的にFe及び不可避的不純物からなる。
C:0.005〜0.020%
Cは、代表的な固溶強化元素であるが、耐食性及び常温靭性を低下させるため、その含有量が低い方が望ましい。具体的には、Cは、その含有量が0.020%を超えると被削性向上に対し効果的ではない単体の炭化物が多量に生成し、その素材硬さが上昇する。そこで、Cの含有量は、0.020%以下とする。より好ましいCの含有量は、0.015%以下である。一方で、Cの含有量の必要以上の低減は、製造コストの上昇を招く。そこで、Cの含有量は、0.005%以上とする。
Cは、代表的な固溶強化元素であるが、耐食性及び常温靭性を低下させるため、その含有量が低い方が望ましい。具体的には、Cは、その含有量が0.020%を超えると被削性向上に対し効果的ではない単体の炭化物が多量に生成し、その素材硬さが上昇する。そこで、Cの含有量は、0.020%以下とする。より好ましいCの含有量は、0.015%以下である。一方で、Cの含有量の必要以上の低減は、製造コストの上昇を招く。そこで、Cの含有量は、0.005%以上とする。
Si:0.10〜0.50%
Siは、鋼の脱酸剤であり、かつ、固溶強化元素である。Siを脱酸剤として機能させるためには、Siを0.10%以上含有させる必要がある。そこで、Siの含有量は、0.10%以上とする。一方で、Siは、その含有量が過大になると固溶加熱処理後の硬さを硬くし、冷間加工性に悪影響を及ぼし、δ−フェライトの形成量を増し、鋼の熱間加工性を低下させる。そこで、Siの含有量は、0.50%以下とする。熱間加工性を重視すると、より好ましいSiの含有量は、0.20〜0.40%である。
Siは、鋼の脱酸剤であり、かつ、固溶強化元素である。Siを脱酸剤として機能させるためには、Siを0.10%以上含有させる必要がある。そこで、Siの含有量は、0.10%以上とする。一方で、Siは、その含有量が過大になると固溶加熱処理後の硬さを硬くし、冷間加工性に悪影響を及ぼし、δ−フェライトの形成量を増し、鋼の熱間加工性を低下させる。そこで、Siの含有量は、0.50%以下とする。熱間加工性を重視すると、より好ましいSiの含有量は、0.20〜0.40%である。
Mn:0.05〜0.50%
Mnは、鋼の脱酸剤として作用するほか、Sと被削性に有効なMn系硫化物を形成するため、含有させる必要がある。そこで、Mnの含有量は、0.05%以上とする。一方で、Mn系硫化物は、腐食起点となり耐孔食性を劣化させ、冷間加工性を阻害する。そこで、Mnの含有量は、0.50%以下とする。特に、耐食性を重視した場合には、Mnの含有量は、0.40%以下とするとよい。より好ましいMnの含有量は、0.35%以下である。
Mnは、鋼の脱酸剤として作用するほか、Sと被削性に有効なMn系硫化物を形成するため、含有させる必要がある。そこで、Mnの含有量は、0.05%以上とする。一方で、Mn系硫化物は、腐食起点となり耐孔食性を劣化させ、冷間加工性を阻害する。そこで、Mnの含有量は、0.50%以下とする。特に、耐食性を重視した場合には、Mnの含有量は、0.40%以下とするとよい。より好ましいMnの含有量は、0.35%以下である。
P:0.005〜0.10%
Pは、粒界に偏析し、粒界腐食感受性を高めるほか、靭性の低下を招くため、含有量が低いほうが望ましいが、必要以上の含有量の低減は製造コストの上昇を招く。そこで、Pの含有量は、0.005%以上0.10%以下とする。より好ましいPの含有量は、0.035%以下である。
Pは、粒界に偏析し、粒界腐食感受性を高めるほか、靭性の低下を招くため、含有量が低いほうが望ましいが、必要以上の含有量の低減は製造コストの上昇を招く。そこで、Pの含有量は、0.005%以上0.10%以下とする。より好ましいPの含有量は、0.035%以下である。
S:0.20〜0.35%
Sは、快削性付与元素であり、被削性を向上させるのに有効な硫化物の構成元素となり、切り屑の切れ性を良くし、工具寿命を延ばす。これらの効果は、Sの含有量が0.20%以上になると明瞭になることから、Sの含有量は、0.20%以上とする。一方、Sの過剰添加は、熱間加工性を低下させる。そこで、Sの含有量は、0.35%以下とする。被削性を向上させるのに有効な硫化物(MnS)を形成するのに充分なSの含有量と、熱間加工性を低下させるSの含有量とのバランスから、より好ましいSの含有量は、0.23〜0.30%である。
Sは、MnとCrとが共存する環境下では、Mnがリッチな硫化物を形成しやすく、Mnの次にCrと硫化物を形成しやすい性質を示す。
Sは、快削性付与元素であり、被削性を向上させるのに有効な硫化物の構成元素となり、切り屑の切れ性を良くし、工具寿命を延ばす。これらの効果は、Sの含有量が0.20%以上になると明瞭になることから、Sの含有量は、0.20%以上とする。一方、Sの過剰添加は、熱間加工性を低下させる。そこで、Sの含有量は、0.35%以下とする。被削性を向上させるのに有効な硫化物(MnS)を形成するのに充分なSの含有量と、熱間加工性を低下させるSの含有量とのバランスから、より好ましいSの含有量は、0.23〜0.30%である。
Sは、MnとCrとが共存する環境下では、Mnがリッチな硫化物を形成しやすく、Mnの次にCrと硫化物を形成しやすい性質を示す。
Cu:0.01〜0.60%
Cuは、耐食性、特に還元性酸環境中での耐食性を向上させるのに有効であることから、必要に応じて添加することができるが、オーステナイト生成元素であり、フェライト相を不安定にする。また、Cuの過剰添加は、熱間加工性を低下させる。そこで、Cuの含有量は、0.01%以上0.60%以下とする。より好ましいCuの含有量は、0.30%以下である。
Cuは、耐食性、特に還元性酸環境中での耐食性を向上させるのに有効であることから、必要に応じて添加することができるが、オーステナイト生成元素であり、フェライト相を不安定にする。また、Cuの過剰添加は、熱間加工性を低下させる。そこで、Cuの含有量は、0.01%以上0.60%以下とする。より好ましいCuの含有量は、0.30%以下である。
Ni:0.01〜0.60%
Niは、耐食性を向上させるのに有効であり、特に、Crを含有させるだけでは十分でない耐食性を補填するために必要な元素である。一方、Niは、オーステナイト生成元素であり、フェライト相を不安定にする。また、Niの過剰添加は製造コストの上昇を招く。そこで、Niの含有量は、0.01%以上0.60%以下とする。ただし、配合コストを考慮すると、より好ましいNiの含有量は、0.30%以下である。
Niは、耐食性を向上させるのに有効であり、特に、Crを含有させるだけでは十分でない耐食性を補填するために必要な元素である。一方、Niは、オーステナイト生成元素であり、フェライト相を不安定にする。また、Niの過剰添加は製造コストの上昇を招く。そこで、Niの含有量は、0.01%以上0.60%以下とする。ただし、配合コストを考慮すると、より好ましいNiの含有量は、0.30%以下である。
Cr:17.0〜25.0%
Crは、耐食性の確保に必須の元素である。Crを含有させることにより、十分な耐食性を持たせるには、Crの含有量は、17.0%以上とする必要がある。一方、Crの過剰添加は、製造コストの上昇を招くだけでなく、熱間加工性を低下させる。そこで、Crの含有量は、17.0%以上25.0%以下とする。なお、既述したように、Sは、Mnと結合して硫化物を形成した後、Crと結合することにより硫化物を形成するが、本実施形態ではMnを少なく、Crを多く含有させたことから、硫化物はCrリッチなものになる。そのため、鋼の耐食性が確保されるのである。
Crは、耐食性の確保に必須の元素である。Crを含有させることにより、十分な耐食性を持たせるには、Crの含有量は、17.0%以上とする必要がある。一方、Crの過剰添加は、製造コストの上昇を招くだけでなく、熱間加工性を低下させる。そこで、Crの含有量は、17.0%以上25.0%以下とする。なお、既述したように、Sは、Mnと結合して硫化物を形成した後、Crと結合することにより硫化物を形成するが、本実施形態ではMnを少なく、Crを多く含有させたことから、硫化物はCrリッチなものになる。そのため、鋼の耐食性が確保されるのである。
Mo:0.01〜1.0%
Moは、固溶強化元素であり、耐食性や強度をより向上させることができる。しかし、Moの過剰添加は、熱間加工性を低下させるほか、製造コストの上昇を招く。そこで、Moの含有量は、0.01%以上1.0%以下とする。製造コストの上昇を考慮すると、より好ましいMoの含有量は、0.6%以下である。
Moは、固溶強化元素であり、耐食性や強度をより向上させることができる。しかし、Moの過剰添加は、熱間加工性を低下させるほか、製造コストの上昇を招く。そこで、Moの含有量は、0.01%以上1.0%以下とする。製造コストの上昇を考慮すると、より好ましいMoの含有量は、0.6%以下である。
Pb:0.03〜0.30%
Pbは、被削性を向上させるのに有効な元素であり、鋼中にPb単体で分散し、工具と切り屑間の潤滑作用により工具寿命を延ばす。この効果が明瞭となるのは、Pbの含有量を0.03%以上としたときである。一方、Pbを0.30%を超えて含有させると、熱間加工性を低下させる。そこで、Pbの含有量は、0.03%以上0.30%以下とする。被削性を向上させるのに十分なPbの含有量と、熱間加工性を低下させるPbの含有量とのバランスを考慮すると、より好ましいPbの含有量は、0.06〜0.18%である。
Pbは、被削性を向上させるのに有効な元素であり、鋼中にPb単体で分散し、工具と切り屑間の潤滑作用により工具寿命を延ばす。この効果が明瞭となるのは、Pbの含有量を0.03%以上としたときである。一方、Pbを0.30%を超えて含有させると、熱間加工性を低下させる。そこで、Pbの含有量は、0.03%以上0.30%以下とする。被削性を向上させるのに十分なPbの含有量と、熱間加工性を低下させるPbの含有量とのバランスを考慮すると、より好ましいPbの含有量は、0.06〜0.18%である。
Te:0.01〜0.10%
Teは、被削性を向上させるのに有効な元素であり、硫化物が伸展するのを抑制し、材料強度の異方性を小さくし、加工性、被削性を向上させる。Teは、鋼中において、硫化物の両端に存在するが、鋼材が圧延されると、硫化物は柔らかいため、伸長した紐状を呈するが、Teが両端に存在することにより、圧延方向に伸展することが抑制され、被削性に有効な紡錘状の形態を呈する。
一方、Teの過剰添加は、上記の効果を飽和させるとともに、鋼材の熱間加工性を低下させる。そこで、Teの含有量は、0.01%以上0.10%以下とする。被削性を向上させるのに十分なTeの含有量と、熱間加工性を低下させるTeの含有量とのバランスを考慮すると、より好ましいTeの含有量は、0.05%以下である。
Teは、被削性を向上させるのに有効な元素であり、硫化物が伸展するのを抑制し、材料強度の異方性を小さくし、加工性、被削性を向上させる。Teは、鋼中において、硫化物の両端に存在するが、鋼材が圧延されると、硫化物は柔らかいため、伸長した紐状を呈するが、Teが両端に存在することにより、圧延方向に伸展することが抑制され、被削性に有効な紡錘状の形態を呈する。
一方、Teの過剰添加は、上記の効果を飽和させるとともに、鋼材の熱間加工性を低下させる。そこで、Teの含有量は、0.01%以上0.10%以下とする。被削性を向上させるのに十分なTeの含有量と、熱間加工性を低下させるTeの含有量とのバランスを考慮すると、より好ましいTeの含有量は、0.05%以下である。
B:0.003〜0.008%
Bは、熱間加工性を向上させるのに有効な元素であり、その効果が明瞭になるのは、Bを0.003%以上含有させたときである。一方、Bの過剰添加は、製造コストの上昇を招く。そこで、Bの含有量は、0.003%以上0.008%以下とする。熱間加工性と製造コストとのバランスを考慮すると、より好ましいBの含有量は、0.004%〜0.006%である。
Bは、熱間加工性を向上させるのに有効な元素であり、その効果が明瞭になるのは、Bを0.003%以上含有させたときである。一方、Bの過剰添加は、製造コストの上昇を招く。そこで、Bの含有量は、0.003%以上0.008%以下とする。熱間加工性と製造コストとのバランスを考慮すると、より好ましいBの含有量は、0.004%〜0.006%である。
O:0.005〜0.020%
Oは、被削性を向上させるために必要な硫化物の形成に関わる元素である。すなわち、Oは、AlやSi等と、硫化物が生成するときの核となる酸化物を生成する。そのために必要なOの含有量は、0.005%以上である。一方、Oは、過剰添加すると、被削性の向上には効果的ではない酸化物を形成するため、その含有量は、0.020%以下とする。製造コストを考慮すると、より好ましいOの含有量は、0.015%以下である。
Oは、被削性を向上させるために必要な硫化物の形成に関わる元素である。すなわち、Oは、AlやSi等と、硫化物が生成するときの核となる酸化物を生成する。そのために必要なOの含有量は、0.005%以上である。一方、Oは、過剰添加すると、被削性の向上には効果的ではない酸化物を形成するため、その含有量は、0.020%以下とする。製造コストを考慮すると、より好ましいOの含有量は、0.015%以下である。
N:0.005〜0.030%
Nは、代表的な固溶強化元素であり、Nb、Cと炭窒化物(Nb(C,N))を形成して鋼の結晶粒を微細化し、靭性を高める効果がある。この効果を得るために、Nの含有量は、0.005%以上とする。一方で、Nは、被削性の向上には効果的ではない窒化物を形成するため、極力その含有量を低減すべきであるが、その含有量を極端に低減すると製造コストの上昇を招く。そこで、Nの含有量は、0.030%以下とする。製造コストと靭性、被削性とのバランスを考慮すると、より好ましいNの含有量は、0.010〜0.020%である。
Nは、代表的な固溶強化元素であり、Nb、Cと炭窒化物(Nb(C,N))を形成して鋼の結晶粒を微細化し、靭性を高める効果がある。この効果を得るために、Nの含有量は、0.005%以上とする。一方で、Nは、被削性の向上には効果的ではない窒化物を形成するため、極力その含有量を低減すべきであるが、その含有量を極端に低減すると製造コストの上昇を招く。そこで、Nの含有量は、0.030%以下とする。製造コストと靭性、被削性とのバランスを考慮すると、より好ましいNの含有量は、0.010〜0.020%である。
Nb:0.03〜0.50%
Nbは、N、Cと、炭窒化物を形成して、鋼の結晶粒を微細化し、靭性を高める効果があるとともに、マトリックスに固溶するC、Nを炭窒化物として固定し、マトリックス硬さを低減する。そのため、Nbの含有量は、Nb系炭窒化物が形成される0.03%以上とする。一方、Nbの過剰添加は、製造コストの上昇を招く。そのため、Nbの含有量は、0.50%以下とする。より好ましいNbの含有量は、0.30%以下である。
Nbは、N、Cと、炭窒化物を形成して、鋼の結晶粒を微細化し、靭性を高める効果があるとともに、マトリックスに固溶するC、Nを炭窒化物として固定し、マトリックス硬さを低減する。そのため、Nbの含有量は、Nb系炭窒化物が形成される0.03%以上とする。一方、Nbの過剰添加は、製造コストの上昇を招く。そのため、Nbの含有量は、0.50%以下とする。より好ましいNbの含有量は、0.30%以下である。
Al:0.001〜0.100%
Alは、鋼の脱酸剤であり、その効果を得るために、その含有量を0.001%以上とする。また、Alは、鋼の被削性を得るために必要な硫化物を生成させるための核となる酸化物(Al2O3)を形成するが、それが必要以上の量を超えると、被削性に悪影響を及ぼす酸化物を形成するため、その含有量を0.100%以下とする。より好ましいAlの含有量は、0.050%以下である。
Alは、鋼の脱酸剤であり、その効果を得るために、その含有量を0.001%以上とする。また、Alは、鋼の被削性を得るために必要な硫化物を生成させるための核となる酸化物(Al2O3)を形成するが、それが必要以上の量を超えると、被削性に悪影響を及ぼす酸化物を形成するため、その含有量を0.100%以下とする。より好ましいAlの含有量は、0.050%以下である。
Bi:0.01〜0.30%
Biは、鋼中にBi単体で分散し、工具と切り屑間の潤滑作用により工具寿命を延ばす。すなわち、Biは、鋼の被削性を更に向上させるのに有効な元素であるため、必要に応じて添加することができる。この効果が認められるのは、Biの含有量を0.01%以上にしたときである。そこで、Biの含有量は、0.01%以上とする。一方、Biの過剰添加は、熱間加工性を低下させる。そこで、Biの含有量は、0.30%以下とする。
Biは、鋼中にBi単体で分散し、工具と切り屑間の潤滑作用により工具寿命を延ばす。すなわち、Biは、鋼の被削性を更に向上させるのに有効な元素であるため、必要に応じて添加することができる。この効果が認められるのは、Biの含有量を0.01%以上にしたときである。そこで、Biの含有量は、0.01%以上とする。一方、Biの過剰添加は、熱間加工性を低下させる。そこで、Biの含有量は、0.30%以下とする。
Ca:0.0001〜0.05%、Mg:0.0001〜0.02%、REM:0.0001〜0.02%
Ca、Mg、REM(Rare Eatrh Metal)は、鋼の熱間加工性を向上させるのに有効な元素であることから、含有させることができる。一方、これらの過剰添加は、その効果を飽和させ、逆に熱間加工性を低下させる。そのため、Caの含有量は、0.0001%以上0.05%以下とし、Mgの含有量は、0.0001%以上0.02%以下とし、REMの含有量は、0.0001%以上0.02%以下とする。
Ca、Mg、REM(Rare Eatrh Metal)は、鋼の熱間加工性を向上させるのに有効な元素であることから、含有させることができる。一方、これらの過剰添加は、その効果を飽和させ、逆に熱間加工性を低下させる。そのため、Caの含有量は、0.0001%以上0.05%以下とし、Mgの含有量は、0.0001%以上0.02%以下とし、REMの含有量は、0.0001%以上0.02%以下とする。
V:0.01〜0.50%、W:0.01〜0.50%、Ta:0.01〜0.50%、Ti:0.01〜0.50%
V、W、Ta、Tiは、炭窒化物を形成して鋼の結晶粒を微細化し、強靱性を高める。従って、その効果を得るため、V、W、Ta、Tiの含有量は、いずれも、0.01%以上とする。一方、これらの過剰添加は、余剰V、W、Ta、Tiの固溶強化により被削性を劣化させる。そのため、これらの含有量は、0.50%以下とする。
V、W、Ta、Tiは、炭窒化物を形成して鋼の結晶粒を微細化し、強靱性を高める。従って、その効果を得るため、V、W、Ta、Tiの含有量は、いずれも、0.01%以上とする。一方、これらの過剰添加は、余剰V、W、Ta、Tiの固溶強化により被削性を劣化させる。そのため、これらの含有量は、0.50%以下とする。
[Nb]≧4×([C]+[N])…式(1)
式(1)に示したように、[Nb]を([C]+[N])の4倍以上としたのは、マトリックス中のC、Nを低減させ、NbをC、Nに比して相対的に多くするためである。すなわち、Nbは、C、Nと炭窒化物を形成するのに全て使い切ってしまう量と同等またはそれ以上の量とする。これにより、マトリックス中のC、Nを炭窒化物として固定し、マトリックスの硬さを低減できる。
式(1)に示したように、[Nb]を([C]+[N])の4倍以上としたのは、マトリックス中のC、Nを低減させ、NbをC、Nに比して相対的に多くするためである。すなわち、Nbは、C、Nと炭窒化物を形成するのに全て使い切ってしまう量と同等またはそれ以上の量とする。これにより、マトリックス中のC、Nを炭窒化物として固定し、マトリックスの硬さを低減できる。
[Te]/[S]≧0.05 …式(2)
式(2)に示したように、[Te]の[S]に対する比を0.05以上としたのは、これによって、Teを硫化物(MnS)の両端に存在させることができるからである。これにより、鋼を圧延等しても硫化物が変形しにくくなり、その形状が紡錘状になる。
式(2)に示したように、[Te]の[S]に対する比を0.05以上としたのは、これによって、Teを硫化物(MnS)の両端に存在させることができるからである。これにより、鋼を圧延等しても硫化物が変形しにくくなり、その形状が紡錘状になる。
10≦[S]/[O]≦50 …式(3)
式(3)に示したように、[S]の[O]に対する比を10以上50以下としたのは、酸化物を硫化物生成の起点となる核とするためである。Oが少なすぎると、硫化物が小さく、被削性向上へ大きな寄与が認められない。また、一方で、Oが多すぎると、被削性に悪影響を及ぼす硬い酸化物が単独で存在する。そこで、本実施形態では、式(3)を満たすことを条件としている。
式(3)に示したように、[S]の[O]に対する比を10以上50以下としたのは、酸化物を硫化物生成の起点となる核とするためである。Oが少なすぎると、硫化物が小さく、被削性向上へ大きな寄与が認められない。また、一方で、Oが多すぎると、被削性に悪影響を及ぼす硬い酸化物が単独で存在する。そこで、本実施形態では、式(3)を満たすことを条件としている。
条件1:「円相当径が2.0μm以上でアスペクト比が10以下である硫化物の総量が面積率で0.50%以上であること」
本実施形態に係るフェライト系快削ステンレス鋼が条件1を満たすこととしたのは、被削性に寄与する大きな硫化物(MnS)が鋼中で多くの面積を占めれば、より被削性を向上させるからである。
本実施形態に係るフェライト系快削ステンレス鋼が条件1を満たすこととしたのは、被削性に寄与する大きな硫化物(MnS)が鋼中で多くの面積を占めれば、より被削性を向上させるからである。
条件2:「ビッカース硬さが160以下」
本実施形態に係るフェライト系快削ステンレス鋼が条件2を満たすこととしたのは、本実施形態に係るフェライト系快削ステンレス鋼は、焼鈍後において、ビッカース硬さが160以下であればよいからである。
なお、式(1)〜式(3)を満たすことは、条件1及び2を満たすことに関係する。
本実施形態に係るフェライト系快削ステンレス鋼が条件2を満たすこととしたのは、本実施形態に係るフェライト系快削ステンレス鋼は、焼鈍後において、ビッカース硬さが160以下であればよいからである。
なお、式(1)〜式(3)を満たすことは、条件1及び2を満たすことに関係する。
(供試片の作製)
表1及び表2に示した成分組成(残部はFe及び不可避的不純物からなる)のフェライト系快削ステンレス鋼を高周波誘導炉で溶製した後、冷却して、50kgのインゴットを作製した。次に、各インゴットを1000〜1200℃に加熱し、熱間鍛造により60mmと20mmの丸棒に加工した。各丸棒を更に780℃で4時間加熱した後、空冷(焼鈍処理)し、供試片とした。
表1及び表2に示した成分組成(残部はFe及び不可避的不純物からなる)のフェライト系快削ステンレス鋼を高周波誘導炉で溶製した後、冷却して、50kgのインゴットを作製した。次に、各インゴットを1000〜1200℃に加熱し、熱間鍛造により60mmと20mmの丸棒に加工した。各丸棒を更に780℃で4時間加熱した後、空冷(焼鈍処理)し、供試片とした。
(供試片の評価試験)
次に、供試片の評価試験を行ったのでその評価試験について説明する。表3に、供試片の評価に供した評価項目及び結果をまとめて示す。
次に、供試片の評価試験を行ったのでその評価試験について説明する。表3に、供試片の評価に供した評価項目及び結果をまとめて示す。
(面積率)
まず、20mmの丸棒から1辺およそ10mm角になるように(測定面)、試料を採取し、長手方向が測定面になるように樹脂に埋設後、鏡面研磨した各ステンレス鋼の表面について、代表的なミクロ写真を、光学顕微鏡を用いて200倍で50視野撮影した。その後、硫化物(介在物)の色抽出を行い、画像処理により、各硫化物の円相当径、アスペクト比を測定した。
表3に示す「面積率」は、「円相当径が2μm以上でアスペクト比が10以下の硫化物」が占める面積の総面積に対する割合を示す。
まず、20mmの丸棒から1辺およそ10mm角になるように(測定面)、試料を採取し、長手方向が測定面になるように樹脂に埋設後、鏡面研磨した各ステンレス鋼の表面について、代表的なミクロ写真を、光学顕微鏡を用いて200倍で50視野撮影した。その後、硫化物(介在物)の色抽出を行い、画像処理により、各硫化物の円相当径、アスペクト比を測定した。
表3に示す「面積率」は、「円相当径が2μm以上でアスペクト比が10以下の硫化物」が占める面積の総面積に対する割合を示す。
(ビッカース硬さ)
表3に示すビッカース硬さは、ビッカース硬さ試験(JIS Z2244)に準じて、加重200gfで測定した。
表3に示すビッカース硬さは、ビッカース硬さ試験(JIS Z2244)に準じて、加重200gfで測定した。
(熱間加工性)
熱間加工性の評価は、鍛造時における疵の発生程度を目視により確認して行った。表3に示す「熱間加工性」は、疵が無かったものを「○」、グラインダーで削れる程度のわずかな疵が発生したものを「△」、大きな疵が発生したものを「×」とした。
熱間加工性の評価は、鍛造時における疵の発生程度を目視により確認して行った。表3に示す「熱間加工性」は、疵が無かったものを「○」、グラインダーで削れる程度のわずかな疵が発生したものを「△」、大きな疵が発生したものを「×」とした。
(被削性)
被削性の評価は、旋削加工後の工具摩耗量、切屑形状及び加工時初期の旋削抵抗により評価した。
表3に示す「工具摩耗」は、工具横逃げ面平均摩耗量(μm)を意味し、この値が50μm以下だったものを「小」、50μm超100μm未満だったものを「中」、100μm以上だったものを「大」とした。
表3に示す「切屑形状」は、その評価を目視観察により行ったものであり、破砕性が良好だったものを「良」、数巻き程度に破砕したものを「中」、破砕性が悪く切屑がつながったものを「劣」とした。
表3に示す「旋削抵抗」は、超硬バイトを用いて周速200mm/min、一回転あたりの切込量1.0mm、一回転あたりの送り量0.2mm/revの条件で乾式にて旋削加工を行ったときの旋削動力計の目盛り(N)を読み取ることにより測定したものである。これは、旋削抵抗が100N以下であるものを「低」、100N超200N未満であるものを「中」、200N以上であるものを「高」とした。
被削性の評価は、旋削加工後の工具摩耗量、切屑形状及び加工時初期の旋削抵抗により評価した。
表3に示す「工具摩耗」は、工具横逃げ面平均摩耗量(μm)を意味し、この値が50μm以下だったものを「小」、50μm超100μm未満だったものを「中」、100μm以上だったものを「大」とした。
表3に示す「切屑形状」は、その評価を目視観察により行ったものであり、破砕性が良好だったものを「良」、数巻き程度に破砕したものを「中」、破砕性が悪く切屑がつながったものを「劣」とした。
表3に示す「旋削抵抗」は、超硬バイトを用いて周速200mm/min、一回転あたりの切込量1.0mm、一回転あたりの送り量0.2mm/revの条件で乾式にて旋削加工を行ったときの旋削動力計の目盛り(N)を読み取ることにより測定したものである。これは、旋削抵抗が100N以下であるものを「低」、100N超200N未満であるものを「中」、200N以上であるものを「高」とした。
(発錆の有無)
耐食性の評価は、塩水噴霧試験(JIS Z2371)を用いて発錆の有無を確認することによって行った。まず、各供試片をφ20の丸棒から直径10mm、高さ50mmの円柱に切り出した。次に、各供試片の表面をエメリー紙により番手#400まで研磨加工し、脱脂洗浄した。次に、各供試片を35℃、5%NaClの塩水噴霧雰囲気中に96h保存した。そして、目視による外観判定により、発錆の有無を見た。各実施例及び各比較例の結果は、発錆が確認されなかったものを「無」、発錆が確認されたものを「有」とした。
耐食性の評価は、塩水噴霧試験(JIS Z2371)を用いて発錆の有無を確認することによって行った。まず、各供試片をφ20の丸棒から直径10mm、高さ50mmの円柱に切り出した。次に、各供試片の表面をエメリー紙により番手#400まで研磨加工し、脱脂洗浄した。次に、各供試片を35℃、5%NaClの塩水噴霧雰囲気中に96h保存した。そして、目視による外観判定により、発錆の有無を見た。各実施例及び各比較例の結果は、発錆が確認されなかったものを「無」、発錆が確認されたものを「有」とした。
(冷間加工性)
冷間加工性の評価は、次の試験によって行った。まず、各供試片をφ20の丸棒から直径12mm、高さ18mmの円柱に切り出した。次に、600t油圧プレスにより一気圧縮試験を行い、変形抵抗を測定した。
変形抵抗は、材料を変形させるために要する単位面積あたりの力をいうが、この試験においては、供試片が変形し始めた時点における力を変形抵抗として測定した。
冷間加工性の評価は、次の試験によって行った。まず、各供試片をφ20の丸棒から直径12mm、高さ18mmの円柱に切り出した。次に、600t油圧プレスにより一気圧縮試験を行い、変形抵抗を測定した。
変形抵抗は、材料を変形させるために要する単位面積あたりの力をいうが、この試験においては、供試片が変形し始めた時点における力を変形抵抗として測定した。
(供試片の評価結果)
実施例1〜16は、いずれも要求特性を満足した。
実施例1〜16は、いずれも要求特性を満足した。
(面積率)
実施例1〜16は、Te、Sを所定量含有するとともに、式(2)を満たすため、硫化物を紡錘形状とすることができ、所定の面積率を確保したい「アスペクト比が10以下の硫化物」が得られたものと考えられる。その理由は、硫化物の両端にTeを存在させることができたからといえる。また、実施例1〜16は、S、Oを所定量含有するとともに、式(3)を満たすため、所定の面積率を確保したい「円相当径が2μm以上の硫化物」を生成できたものと考えられる。その理由は、余分な酸化物を形成させないで、硫化物の核となる酸化物を形成させ、その周りに被削性を向上させる大きな硫化物を生成させることができたと考えられるからである。そして、面積率を0.50%以上とできたのは、式(2)及び式(3)の両者を満たすことによる相乗効果によるものと考えられる。
これに対して比較例1〜9は、いずれも面積率を0.50%以上とすることができなかった。その理由は、比較例1、4については、Teを含有させていない、又は、含有させていたとしても少量であったため、硫化物の両端にTeを存在させることができなかったからと考えられ、比較例5は、硫化物の核となる酸化物を十分に生成できなかったからと考えられる。
実施例1〜16は、Te、Sを所定量含有するとともに、式(2)を満たすため、硫化物を紡錘形状とすることができ、所定の面積率を確保したい「アスペクト比が10以下の硫化物」が得られたものと考えられる。その理由は、硫化物の両端にTeを存在させることができたからといえる。また、実施例1〜16は、S、Oを所定量含有するとともに、式(3)を満たすため、所定の面積率を確保したい「円相当径が2μm以上の硫化物」を生成できたものと考えられる。その理由は、余分な酸化物を形成させないで、硫化物の核となる酸化物を形成させ、その周りに被削性を向上させる大きな硫化物を生成させることができたと考えられるからである。そして、面積率を0.50%以上とできたのは、式(2)及び式(3)の両者を満たすことによる相乗効果によるものと考えられる。
これに対して比較例1〜9は、いずれも面積率を0.50%以上とすることができなかった。その理由は、比較例1、4については、Teを含有させていない、又は、含有させていたとしても少量であったため、硫化物の両端にTeを存在させることができなかったからと考えられ、比較例5は、硫化物の核となる酸化物を十分に生成できなかったからと考えられる。
(ビッカース硬さHv)
実施例1〜16は、ビッカース硬さを160以下とすることができたが、比較例1〜9はいずれもこの特性を満たすことができなかった。実施例1〜16は、いずれも、Nb、C、Nを所定量含有するとともに、式(1)を満たすため、被削性の向上に寄与するNbを相対的に多くすることで、マトリックス中へ固溶するCおよびNを少なくすることができたためと考えられる。比較例はいずれも、Nbが含有されていないため、このような効果が得られなかったと考えられる。
実施例1〜16は、ビッカース硬さを160以下とすることができたが、比較例1〜9はいずれもこの特性を満たすことができなかった。実施例1〜16は、いずれも、Nb、C、Nを所定量含有するとともに、式(1)を満たすため、被削性の向上に寄与するNbを相対的に多くすることで、マトリックス中へ固溶するCおよびNを少なくすることができたためと考えられる。比較例はいずれも、Nbが含有されていないため、このような効果が得られなかったと考えられる。
(熱間加工性)
実施例1〜16は、熱間加工性が良好であった。実施例では熱間加工性を低下させないように各成分元素の含有量を調整しているからと考えられる。それに対して、比較例7〜9は、疵が発生した。その理由は、それぞれ、Mo、Te、Pbの過剰添加によるものと考えられる。
実施例1〜16は、熱間加工性が良好であった。実施例では熱間加工性を低下させないように各成分元素の含有量を調整しているからと考えられる。それに対して、比較例7〜9は、疵が発生した。その理由は、それぞれ、Mo、Te、Pbの過剰添加によるものと考えられる。
(被削性)
実施例1〜16は、被削性の善し悪しの指標となる工具摩耗、切屑形状、旋削抵抗が全て良好であった。実施例では、式(2)や式(3)により、MnSの形態制御がなされているためと考えられる。一方、比較例は全てが良好であったものがなかった。比較例1は、快削性付与元素が添加されておらず、被削性が悪い。比較例2は、Nbが添加されておらず、マトリックス硬さが高いため、被削性が劣る。比較例3は、Nbが添加されていない上に、Mn含有量が多いので被削性が劣る上に耐食性が悪い。比較例4は、Teの添加量が少ないため硫化物が紐状となり被削性が劣る。比較例5は、Oの含有量が低く、硫化物が細かくなり被削性に劣る。比較例6は、酸素の含有量が高く、硬質な酸化物が多くなり被削性が悪い。
実施例1〜16は、被削性の善し悪しの指標となる工具摩耗、切屑形状、旋削抵抗が全て良好であった。実施例では、式(2)や式(3)により、MnSの形態制御がなされているためと考えられる。一方、比較例は全てが良好であったものがなかった。比較例1は、快削性付与元素が添加されておらず、被削性が悪い。比較例2は、Nbが添加されておらず、マトリックス硬さが高いため、被削性が劣る。比較例3は、Nbが添加されていない上に、Mn含有量が多いので被削性が劣る上に耐食性が悪い。比較例4は、Teの添加量が少ないため硫化物が紐状となり被削性が劣る。比較例5は、Oの含有量が低く、硫化物が細かくなり被削性に劣る。比較例6は、酸素の含有量が高く、硬質な酸化物が多くなり被削性が悪い。
(発錆の有無)
実施例1〜16は、発錆が無かったが、その理由は、Mn量を減らしてCr量を多くすることにより、Crリッチな硫化物が生成されたためと考えられる。一方、比較例3は、発錆が有ったが、その理由は、Mn量が多かったためMnSが腐食起点となったためと考えられる。
実施例1〜16は、発錆が無かったが、その理由は、Mn量を減らしてCr量を多くすることにより、Crリッチな硫化物が生成されたためと考えられる。一方、比較例3は、発錆が有ったが、その理由は、Mn量が多かったためMnSが腐食起点となったためと考えられる。
(冷間加工性)
実施例1〜16は、変形抵抗が良好であったが、比較例1〜9は、変形抵抗が高い。比較例4、5は、硫化物の形態制御が十分ではないために冷間加工性が悪くなったと考えられる。
実施例1〜16は、変形抵抗が良好であったが、比較例1〜9は、変形抵抗が高い。比較例4、5は、硫化物の形態制御が十分ではないために冷間加工性が悪くなったと考えられる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。
本発明に係るフェライト系快削ステンレス鋼は、被削性及び耐食性に優れるため、切削加工にて製造される機器・部品の鉄系材料として好適であり、特に、メンテナンスフリー化が求められる機器・部品の鉄系材料として好適である。
Claims (4)
- 重量%で、
C:0.005〜0.020%、
Si:0.10〜0.50%、
Mn:0.05〜0.50%、
P:0.005〜0.10%、
S:0.20〜0.35%、
Cu:0.01〜0.60%、
Ni:0.01〜0.60%、
Cr:17.0〜25.0%、
Mo:0.01〜1.0%、
Pb:0.03〜0.30%、
Te:0.01〜0.10%、
B:0.003〜0.008%、
O:0.005〜0.020%、
N:0.005〜0.030%、
Nb:0.03〜0.50%、
Al:0.001〜0.100%、を含有し、
以下の式(1)〜式(3)([ ]内は各元素の重量%を示す):
[Nb]≧4×([C]+[N])…式(1)
[Te]/[S]≧0.05 …式(2)
10≦[S]/[O]≦50 …式(3)
を満たし、更に、円相当径が2.0μm以上でアスペクト比が10以下である硫化物の総量が面積率で0.50%以上であり、ビッカース硬さが160以下であることを特徴とする残部が実質的にFe及び不可避的不純物からなるフェライト系快削ステンレス鋼。 - 更に、重量%で、
Bi:0.01〜0.30%、を含有することを特徴とする請求項1に記載のフェライト系快削ステンレス鋼。 - 更に、重量%で、Ca、Mg、及び、REMからなる群のいずれか1種又は2種以上を、
Ca:0.0001〜0.05%、
Mg:0.0001〜0.02%、
REM:0.0001〜0.02%、含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のフェライト系快削ステンレス鋼。 - 更に、重量%で、V、W、Ta、Tiからなる群のいずれか1種又は2種以上を、
V:0.01〜0.50%、
W:0.01〜0.50%、
Ta:0.01〜0.50%、
Ti:0.01〜0.50%、含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフェライト系快削ステンレス鋼。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2006290290A JP2008106306A (ja) | 2006-10-25 | 2006-10-25 | フェライト系快削ステンレス鋼 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2018131670A (ja) * | 2017-02-17 | 2018-08-23 | 新日鐵住金ステンレス株式会社 | フェライト系快削ステンレス線材 |
JP2021008647A (ja) * | 2019-06-28 | 2021-01-28 | 大同特殊鋼株式会社 | フェライト系快削ステンレス鋼及びその鋼材の製造方法 |
CN114829650A (zh) * | 2019-12-23 | 2022-07-29 | 杰富意钢铁株式会社 | 易切削钢及其制造方法 |
CN115466910A (zh) * | 2022-06-15 | 2022-12-13 | 福建青拓特钢技术研究有限公司 | 一种含碲易切削不锈钢套标及其制备方法 |
-
2006
- 2006-10-25 JP JP2006290290A patent/JP2008106306A/ja active Pending
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