JP6194696B2 - マルテンサイト系Bi快削ステンレス鋼 - Google Patents

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Description

この発明はマルテンサイト系快削ステンレス鋼に関し、詳しくは快削元素としてのPbを含まず、BiをS,Teとともに複合添加することで被削性を確保したマルテンサイト系Bi快削ステンレス鋼に関する。
従来、マルテンサイト系ステンレス鋼の被削性を高める手段として快削元素を鋼に添加することが一般に行われている。
快削元素としてはS,Pb,Te,Se,Ca等の種々の元素があり、従来これら元素を単独で又は組み合せて添加している。
これら元素のうちS,Pbは快削元素として主流をなすもので、従来からステンレス鋼に快削性を付与する成分として広く用いられている。
例えば下記特許文献1にはS,PbをTeとともに複合添加したマルテンサイト系快削ステンレス鋼が開示されている。
鋼に添加されたSは、鋼中でMnSを主体とする硫化物系介在物を生じ、切屑形成時にこの介在物に応力が集中することで鋼の被削性が高まる。
硫化物系介在物の主体となるMnSは鋼の圧延方向に延びた形態で鋼中に存在するのに対して、快削元素としてのPbは、その一部が微細な粒(直径1〜1.5μm程度)として鋼中に単独で分布し、或いはMnSの周囲に付着し、切削の際に生じた熱で溶融して工具と切屑間との間で潤滑作用をなし、鋼の被削性を高める。
しかしながら、近年の環境意識の高まりから鋼において非Pb化が求められており、そこでPbに代えて快削元素としてPbと同様の潤滑効果を有するBiを添加することが考えられる。
しかしながらPbよりも融点が低いBiはPbと比べて熱間加工性への悪影響が大きく、マルテンサイト系ステンレス鋼の製造性を悪化させる問題があり、Pbに置換する形でBiを快削元素として加えるに際しては、こうした問題を解決することが必須である。
尚本発明に対する先行技術として、下記特許文献2には「硫化ガス放出を抑制した快削マルテンサイト系ステンレス鋼部品およびその製造方法」についての発明が示され、そこにおいてMn/Sの比率を8.5以上に大きくすることで硫化ガスの発生を抑える点が開示されている。
この特許文献2に記載のものはSを必須元素として、またBi,Teを選択元素として添加するものであるが、Bi,Teを添加している実施例は3つしかない上に、それぞれを単独に添加しており、表1で示すようにS,Bi,Teをともに添加した実施例はなく、本発明とは異なる。
他の先行技術文献として、下記特許文献3には「熱間加工性に優れた高耐食快削ステンレス鋼」についての発明が示され、そこにおいてSを必須元素,Bi,Teを選択元素として添加する点が開示されているが、S,Bi,Teをともに添加した例はなく、本発明とは異なる。
更に他の先行技術として、下記特許文献4には「高強度電磁部品用マルテンサイト系ステンレス鋼」についての発明が示されている。但しこの特許文献4においてもS,Bi,Teをともに添加した実施例はなく、本発明とは異なる。
更に他の先行技術として、下記特許文献5には「被削性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼部品およびその製造方法」についての発明が、また下記特許文献6には「被削性と耐食性に優れた高周波焼入れ用高硬度鋼」についての発明が示され、それぞれにおいてS,Bi,Teをともに添加した例が示されているが、何れのものも本発明で必須とする関係式を満たすものではなく、本発明とは別異のものである。
更に他の先行技術として、下記特許文献7には「耐食性,冷鍛性および熱間加工性に優れた快削ステンレス鋼」についての発明が示されている。
但しそこにはBiの添加例はあるものの、本発明において必須とするBiとTeとの複合添加の例は開示されておらず、本発明とは異なる。
更に他の先行技術として、下記特許文献8には「被削性に優れた快削ステンレス鋼」についての発明が、また特許文献9には「表面仕上性に優れた高耐食快削ステンレス鋼」についての発明が示され、それぞれにおいてSを必須添加元素とし、Bi,Teを選択添加元素とする点が開示されている。
しかしながら、これら特許文献の何れにおいてもBi,Teの何れか一方だけをSとともに添加している例のみで、Bi,Teを複合添加している例はなく、本発明とは異なっている。
特開2008−111186号公報 特開2001−152297号公報 特開2001−164339号公報 特開2005−2381号公報 特開2000−282185号公報 特開2000−282184号公報 特開2006−97039号公報 特開2006−97040号公報 特開2001−98352号公報
本発明は以上のような事情を背景とし、快削元素としてPbに代えてBiを添加することで鋼の非Pb化を図るとともに、非Pb化によって熱間加工性の低下する問題を解決できるマルテンサイト系Bi快削ステンレス鋼を提供することを目的としてなされたものである。
而して請求項1のものは、質量%でC:0.10超〜0.35%未満,Si:0.10〜2.0%,Mn:0.80〜2.0%,P:0.005〜0.050%,S:0.10〜0.30%,Cr:10.0〜18.0%,Bi:0.01〜0.30%,Te:0.01〜0.10%,O:0.005〜0.030%,B:0.0005〜0.0100%,N:0.04%以下,Cu:0.5%以下,Ni:0.5%以下,残部Fe及び不可避的不純物の組成を有し、下記式(1)
5×[C]+2×[S]+10×[Te]+3×[Bi]≦2.90・・式(1)
を満たすとともに、下記式(2),式(3)
3.0≦[Mn]/[S]≦15.0・・式(2)
10≦[S]/[O]≦40・・式(3)
(式(1),式(2),式(3)中[ ]は各元素の含有質量%を示す)
を満たし、且つ円相当径が2.0μm以上で、アスペクト比が10以下である硫化物が総量として、面積率で0.50〜10.0%存在することを特徴とする。
請求項2のものは、請求項1において、下記式(4)
2×[S]+8×[Te]+3×[Bi]≧1.00・・式(4)
(但し式(4)中[ ]は各元素の含有質量%を示す)
を満たすことを特徴とする。
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、質量%でMo:0.01〜2.0%を更に含有していることを特徴とする。
請求項のものは、請求項1〜の何れかにおいて、質量%でCa:0.0001〜0.02%,Mg:0.0001〜0.02%,REM:0.0001〜0.02%の1種又は2種以上を更に含有していることを特徴とする。
請求項のものは、請求項1〜の何れかにおいて、質量%でW:0.01〜2.0%を更に含有していることを特徴とする。
請求項のものは、請求項1〜の何れかにおいて、質量%でNb:0.01〜0.50%,Ta:0.01〜0.50%,V:0.01〜0.50%の1種又は2種以上を更に含有していることを特徴とする。
発明の作用・効果
本発明では、快削成分としてSとBiとTeとを複合添加する。
Sは硫化物系介在物を形成し、切屑形成時に介在物を応力集中源として働かせることで被削性を高める。
またBiは、Pbと同様に切削時の熱で溶融して工具と切屑との間で潤滑効果を発揮し、被削性を高める。
Teもまた潤滑材として働き、被削性を改善する。Teはまた、鋼中で圧延方向に延びたMnS介在物の両端に存在して、MnS介在物が圧延方向に長く延び切らないように抑制し、介在物のアスペクト比を制御することで、鋼の機械的特性の異方性が大きくなるのを抑制する働きをなす。
本発明ではS,Bi,Teの上記の働きの相乗効果によって、マルテンサイト系ステンレス鋼の被削性を効果的に高める。
一方でこれらS,Bi,Teは、鋼の熱間加工性に対して悪影響を及ぼすことから、特にPbをBiに置換することで悪影響の度合が増すことから、本発明ではこれらの各成分の熱間加工性への影響度に応じてS,Bi,Teの添加量をバランスさせる。
具体的には、式(1)を満足するようにS,Bi,Teの添加量をCの添加量とともに規制し、良好な熱間加工性を確保しつつ被削性を高める。
ここで式(1)の左辺は、熱間加工性に対する悪影響の度合を示すもので、左辺における各元素の係数は、各元素ごとの熱間加工性への影響度、即ち熱間加工性低下に対する寄与率を表す。
尚、左辺のCは鋼の硬さを硬くし変形抵抗を増大させることで熱間加工性を悪化させるもので、他の快削元素とは影響の仕方が異なる。
本発明では、式(1)に加えて式(2),式(3)を満たすようにMn,S,Oの各元素の含有量をバランスさせるとともに、鋼中に円相当径が2.0μm以上でアスペクト比が10以下である硫化物が総量として、面積率で0.50〜10.0%存在するようにすることを他の特徴点としている。
かかる本発明によれば、快削元素として有効なPbを用いることなく、良好な熱間加工性を確保しながら、マルテンサイト系ステンレス鋼の被削性を高めることができる。
次に本発明における各化学成分等の限定理由を以下に説明する。
C:0.10超〜0.35%未満
Cは焼入れ時にマルテンサイト組織にするために必須の元素である。十分な硬さを得るために0.10%を超える量で添加する。
但しC添加量が過剰になると熱間加工時の変形抵抗が上昇し、製造性が悪化するため、0.35%未満とする。
Si:0.1〜2.0%
Siは鋼の脱酸剤として作用する。その効果を得るために0.10%以上とする。好ましくは0.2%以上とする。
但し過剰に添加するとδフェライトの生成量が増加し、熱間加工性が低下するため、上限を2.0%とする。望ましくは1.5%未満とする。
Mn:0.8〜2.0%
MnはS,Teと共に存在することによりMnS,MnTeを形成する。これらの化合物は切削時に応力集中源となることで被削性を向上させる。この効果を得るために0.8%以上添加する。より好ましくは0.90%を超える量で添加する。
但し過剰に添加すると耐食性を劣化させるため、2.0%以下とする。
S:0.10〜0.30%
SはMnと共に存在することによりMnSを形成する。その化合物が切削時に応力集中源になることで被削性を向上させる。この効果を得るために0.10%以上添加する。好ましくは0.2%以上とする。
但し過剰に添加すると耐食性を劣化させ、また同時に熱間加工性も低下させるため、添加量を0.30%以下とする。
Cr:10.0〜18.0%
Crは耐食性を向上させる元素である。その効果を得るために10.0%以上添加する。好ましくは11.0%を超える量で、更に望ましくは11.5%以上の量で添加する。
但し過剰に添加するとδフェライトの生成量が増加し、熱間加工性が低下するため、添加量を18.0%以下とする。望ましくは16.0%未満とする。
Bi:0.01〜0.30%
Biは被削性を向上させるのに有効な元素である。その効果を得るために0.01%以上添加する。好ましくは0.05%以上とする。
但し過剰に添加すると熱間加工性を悪化させるため、添加量を0.30%以下とする。好ましくは0.20%以下、より好ましくは0.15%以下とする。
Te:0.01〜0.10%
Teは被削性を向上させるのに有効な元素である。また、圧延時に硫化物が伸長することで材料の異方性,機械的特性の異方性が大きくなるのを抑制する。その効果を得るために添加量を0.01%以上とする。好ましくは0.02%以上とする。
但し過剰に添加すると熱間加工性を悪化させるため、添加量を0.10%以下とする。好ましくは0.06%以下とする。
O:0.005〜0.030%
Oは、被削性を向上させるのに必要な硫化物の形成に関わる元素である。詳しくは、OはMnS等硫化物形成の核となる酸化物を介在物として分散生成する。MnS等硫化物はその核の存在の下に核を中心として生成し易い。従ってMnS介在物を上手く分散状態で良好に形成するために一定量のOを必要とする。そのため本発明ではOを0.005%以上とする。
但しOが過剰になると、被削性の向上に有効でない酸化物が生成し易くなるため、含有量を0.030%以下とする。
B:0.0005〜0.0100%
Bは熱間加工性を向上させるのに有効な元素である。その効果を得るために0.0005%以上とする。但し過剰に含有させると熱間加工性を低下させる化合物を形成するため、0.0100%以下とする。
P:0.005〜0.050%
Pは不純物となるもので、粒界に偏析し、粒界腐食に対する感受性を高める。また熱間加工性の低下、靭性の低下を招く。このため含有量を0.050%以下に規制する。
但しPの含有量を必要以上に低減することは製造コストの上昇を招く。そのため製錬技術などを考慮し、規制の下限を0.005%とする。
N:0.04%以下
Nは被削性の向上に有効でない窒化物を生成させるため0.04%以下とする。その含有量は極力低い方が良いが、製造コストとの兼ね合いになるが好ましくは0.03%以下とする。
5×[C]+2×[S]+10×[Te]+3×[Bi]≦2.90・・式(1)
S,Te,Biは何れも被削性を向上するために必要な元素であるが、過剰に添加すると熱間加工性を低下させる。またCは含有量が増えることにより熱間加工時の変形抵抗が高くなり、熱間加工性を低下させる。
そこで本発明では、各元素ごとの熱間加工性への影響の程度を考慮して、式(1)の左辺の値が2.90以下となるように各元素の含有量をバランスさせる。
式(1)中の左辺のより望ましい値は2.70以下である。
3.0≦[Mn]/[S]≦15.0・・式(2)
式(2)は次のような意味を有している。
鋼中に生成する硫化物系介在物はMnSを主体とするが、鋼にMnとCrとがSとともに含有されている場合、介在物にはMnSに加えてCrSが含まれる。
但しMnSの方がCrSよりも生成エネルギーが低いのでMnSが優先的に生成する。ここでMnSは被削性向上効果が大きいが、耐食性は低い。
一方CrSは被削性を良くする働きは有するものの、被削性向上効果はMnSに比べて小さい。一方で耐食性は高い。
鋼中に硫化物系介在物を生成させるに際して、これらMnSとCrSの生成をバランスさせることが、被削性及び耐食性の観点から必要である。
この場合において[Mn]/[S]が3.0未満であると、MnSの生成量が相対的に少なく、CrS生成量が適正バランスよりも多くなって、S添加量の割には十分な被削性向上効果が得られず、またCrSは熱間加工性に対する悪影響の度合がMnSに比べて大きいために熱間加工性が悪化する。
逆に[Mn]/[S]の比率が15.0を超えて高くなると、硫化物中のMn含有量が過剰となって硫化物中に必要なCr含有量を確保できない。即ちCrSの量がMnSの量に対し適正バランスを超えて過少となり、結果として硫化物介在物の耐食性が著しく劣化し、そのことが鋼の耐食性の劣化を招く。
そこで本発明では[Mn]/[S]を3.0〜15.0の範囲内とする。好ましくは3.0〜10.0の範囲内とする。
10≦[S]/[O]≦40・・式(3)
[S]/[O]が10未満の場合、割合としてSが低いと十分な被削性が得られず、また割合としてOが多いと、被削性に有効でない硬質な酸化物が多くなる。
逆に40を超えると、相対的にOに対してSが過剰又はSに対してOが過少となる。Sが過剰となると、熱間加工性を低下させ、一方Oが過少となると、被削性に有効な大きさの硫化物が得られにくくなり、被削性が低下する。
従って[S]/[O]は10〜40とする。好ましくは15〜40の範囲内とする。
円相当径が2.0μm以上でアスペクト比が10以下である硫化物が総量として、面積率で0.50〜10.0%
硫化物の存在形態及び存在量を上記のようにすることで、鋼に優れた被削性を与えることができる。
上記面積率の上限は10.0%である。それを超えると耐食性,靭性,疲労強度等の異方性が大きくなるなど、特性が劣化する。
2×[S]+8×[Te]+3×[Bi]≧1.00・・式(4)
S,Te,Biは何れも被削性を向上する元素である。各元素の被削性への寄与率は異なっており、十分な切削性を発動させるためにS,Te,Bi複合快削ステンレス鋼においては、式(4)の左辺の値を1.00以上とする。このようにすることで鋼の良好な被削性を確保することができる。好ましくは1.20以上とする。
Mo:0.01〜2.0%
Moは耐食性を向上させることが可能な元素である。この効果を得るためには、Mo含有量の下限を0.01%以上とする。好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.1%以上である。
但し、過剰に添加すると熱間加工性が低下する。また、製造コストが上昇する。そのため、Mo含有量の上限を2.0%とする。好ましくは1.0%以下である。
Cu:0.5%以下
本発明においてCuは不純物となる元素で、過剰に含有すると熱間加工性が低下するため、0.5%以下に含有量を規制する。
Ni:0.5%以下
Niもまた不純物となる元素で、その含有量が多くなると焼入れ時に求める硬さが得られない。そのため、0.5%以下に含有量を規制する。
Ca:0.0001〜0.02%
Mg:0.0001〜0.02%
REM:0.0001〜0.02%
Ca,Mg,REMは熱間加工性を向上させるのに有効な元素である。そのために必要に応じて含有させても良い。その効果を得るためCa,Mg,REM何れも0.0001%以上、好ましくは0.005%以上含有させる。
但し過剰に含有させると熱間加工性を低下させるため、何れも含有量を0.02%以下とする。好ましくは0.01%以下である。
W:0.01〜2.0%
Wは耐食性や強度をより向上させる効果がある。そのため必要に応じて0.01%以上含有させる。
但し過剰に添加すると、熱間加工性を低下させる。また、製造コストが上昇する。そのために含有量を2.0%以下とする。好ましくは1.0%以下とする。
Nb:0.01〜0.50%
Ta:0.01〜0.50%
V:0.01〜0.50%
Nb,Ta,Vは炭窒化物を形成して結晶粒を微細化し、靭性を高める効果がある。その効果を得るために必要に応じて0.01%以上含有させることができる。
但し過剰に添加するとコスト上昇を招くため、含有量を0.50%以下とする。
次に本発明の実施例を以下に詳しく説明する。
表1に示す化学組成の鋼50kgを高周波誘導炉を用いて溶製した後、冷却して各インゴットを作製した。
次いで、各インゴットを1000〜1200℃に加熱し、熱間鍛造により直径60mmと直径20mmの丸棒、および、幅60mm、高さ30mmの角棒に加工した。
次いで、それら丸棒を更に860℃で1時間加熱した後、徐冷(焼きなまし処理)し、そして熱処理を行った試験片を用いて下記方法で各種特性調査を実施した。
Figure 0006194696
Figure 0006194696
<硫化物面積率>
硫化物特性調査として実施例および比較例のステンレス鋼中に存在する硫化物につき、面積率を測定した。
測定方法は20mmの丸棒から10mm角の資料を採取し、鍛伸方向が測定面になるように樹脂に埋め込み、鏡面研磨した角ステンレス鋼の表面について、代表的なミクロ写真を光学顕微鏡を用いて200倍で50視野撮影した。
その後、硫化物(介在物)の色抽出を行い、画像処理により、各硫化物の円相当径(等しい面積の円としたときの直径)、アスペクト比を測定し、その中から円相当径2μm以上、アスペクト比が10以下である硫化物の総面積率を求めた。
<焼入れ焼戻し硬さ>
各ステンレス鋼につき、20mmの丸棒から直径20mm、高さ10mmの円柱形状の試験片を準備した。各試験片を1000℃に加熱し30分間保持した後、油冷して焼入れ処理した。その後、150℃に加熱し1時間保持した後、空冷して焼戻し処理し、その後、ロックウェル硬さ(Cスケール)にて硬さを測定した。
<被削性>
被削性評価は旋削試験とドリル穿孔試験とを実施することにより行った。
前者の旋削試験では60mmの丸棒を使い、旋削加工後の工具摩耗量および切屑形状を相対評価した。
ここでは旋削工具として超硬バイト(UTi20T)を用い、周速150mm/min、切込み量1.0m、送り量0.2mm/revの条件にて、潤滑油を使わない乾式で旋削加工を行った。
上記工具摩耗量は、工具逃げ面の平均摩耗量を測定して評価した。この工具摩耗量が30μm以下であった場合を「A+」、31〜50μmであった場合を「A」、51〜80μmであった場合を「B」、81〜100μmであった場合を「C」、101μm以上であった場合を「D」とした。
また、上記切屑形状は、目視観察により確認した。切屑のおおよその長さが50mm以下であり破砕性が良好であったものを「A+」、数巻き程度で破砕し、長さが100mm以下であったものを「A」、おおよその長さが101〜300mmであったものを「B」、破砕性が悪く絡まった形状の切屑であったものを「C」と評価した。
一方、後者のドリル穿孔試験では、幅60mm、高さ30mm、長さ2000mmの試験片を使い、工具寿命(穿孔不能)が5000mmとなる切削速度および切屑形状を相対評価した。
ここではハイスドリルSKH51(直径5mm)を用い、孔深さ15mm、1回転当りの送り量0.07mm/revの条件にて、潤滑油を使わない乾式でドリル加工を実施し、切削速度を変動させて工具寿命距離を測定した。
評価は、上記切削速度が50m/minを越え、高速であった場合を「A+」、41〜50m/minであった場合を「A」、31〜40m/minであった場合を「B」、21〜30m/minであった場合を「C」、20m/min以下であり低速であった場合を「D」とした。
また、上記切屑形状の評価は切削速度20m/minでドリル加工したときの初期切屑を目視によって観察することにより行った。そして、切屑のおおよその長さが10mm以下であり破砕性が良好であったものを「A+」、数巻き程度で破砕し、長さが50mm以下であったものを「A」、おおよその長さが51〜100mmであったものを「B」、破砕性が悪く絡まった形状の切屑であったものを「C」と評価した。
<熱間加工性>
熱間加工性はインゴットから20mmの丸棒への熱間鍛造時の外観、および高温高速引張試験(グリーブル試験)の2つで評価した。
前者の鍛造時の外観は、疵の発生程度で評価し、疵が無かったものを「」、グラインダーで削れる程度の僅かな疵が発生したものを「」、大きな疵が発生したものを「×」とした。
高温高速引張試験は鋳造ままの状態から直径6mm、長さ110mmの高温高速試験片を切り出し、1000℃における絞り値で評価を行った。
これらの結果が表2に示してある。
Figure 0006194696
表2により、次のことが分かる。
比較例1は、JISに規定されるSUS410であり、快削元素のひとつであるSが極めて少なく、快削ステンレス鋼ではない。そのため、硫化物がほとんど存在せず、熱間加工性に優れているが、被削性が極めて悪いことが分かる。
一方、比較例2はJISに規定させるSUS416であり、SUS410に比べ、快削元素のひとつであるSが添加されている。そのため、介在物である硫化物の存在により被削性が改善されている。しかしながら、高い被削性を求められる場合には不十分である。
比較例3、4、5は実施例と同様のS、Bi、Te添加の快削鋼である。そのため、非常に良好な快削性を示す。しかし、5×[C]+2×[S]+10×[Te]+3×[Bi]の値がそれぞれ2.91,3.10,3.08と本発明の上限値である2.90を超えて大きく、熱間加工性が悪化して鍛造製品が製造できない。
比較例6は[Mn]/[S]の値が2.9で本発明の下限値3.0よりも小である。Sに対してMnの割合が低く、生成されるMnSの割合が低く、被削性への寄与が小さいCrSの割合が高くなる。そのため、十分な被削性を確保できない。
比較例7、8は[S]/[O]の値がそれぞれ61.5,41.4で本発明の上限値である40を超えて大であり、硫化物の形成核となる酸化物が少なくなるため、硫化物量が減る。そのため、十分な被削性を確保できない。
比較例9はBi非添加であり、十分な被削性を確保できていない。
比較例10はTe非添加であり、十分な被削性を確保できていない。
これらに対し、実施例1〜21はS、Bi、Te添加し、3.0≦[Mn]/[S]≦15.0、10≦[S]/[O]≦40を満たすことにより高い被削性を確保しながら、5×[C]+2×[S]+10×[Te]+3×[Bi]≦2.90を満たすことで、熱間加工性を確保している。

Claims (6)

  1. 質量%で
    C:0.10超〜0.35%未満
    Si:0.10〜2.0%
    Mn:0.80〜2.0%
    P:0.005〜0.050%
    S:0.10〜0.30%
    Cr:10.0〜18.0%
    Bi:0.01〜0.30%
    Te:0.01〜0.10%
    O:0.005〜0.030%
    B:0.0005〜0.0100%
    N:0.04%以下
    Cu:0.5%以下
    Ni:0.5%以下
    残部Fe及び不可避的不純物の組成を有し、下記式(1)
    5×[C]+2×[S]+10×[Te]+3×[Bi]≦2.90・・式(1)
    を満たすとともに、下記式(2),式(3)
    3.0≦[Mn]/[S]≦15.0・・式(2)
    10≦[S]/[O]≦40・・式(3)
    (式(1),式(2),式(3)中[ ]は各元素の含有質量%を示す)
    を満たし、且つ円相当径が2.0μm以上で、アスペクト比が10以下である硫化物が総量として、面積率で0.50〜10.0%存在することを特徴とするマルテンサイト系Bi快削ステンレス鋼。
  2. 請求項1において、下記式(4)
    2×[S]+8×[Te]+3×[Bi]≧1.00・・式(4)
    (但し式(4)中[ ]は各元素の含有質量%を示す)
    を満たすことを特徴とするマルテンサイト系Bi快削ステンレス鋼。
  3. 請求項1,2の何れかにおいて、質量%で
    Mo:0.01〜2.0%
    を更に含有していることを特徴とするマルテンサイト系Bi快削ステンレス鋼。
  4. 請求項1〜の何れかにおいて、質量%で
    Ca:0.0001〜0.02%
    Mg:0.0001〜0.02%
    REM:0.0001〜0.02%
    の1種又は2種以上を更に含有していることを特徴とするマルテンサイト系Bi快削ステンレス鋼。
  5. 請求項1〜の何れかにおいて、質量%で
    W:0.01〜2.0%
    を更に含有していることを特徴とするマルテンサイト系Bi快削ステンレス鋼。
  6. 請求項1〜の何れかにおいて、質量%で
    Nb:0.01〜0.50%
    Ta:0.01〜0.50%
    V:0.01〜0.50%
    の1種又は2種以上を更に含有していることを特徴とするマルテンサイト系Bi快削ステンレス鋼。
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