JP2002309186A - 接着性物品剥離システム、接着構造体、及び接着性物品の剥離方法 - Google Patents

接着性物品剥離システム、接着構造体、及び接着性物品の剥離方法

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JP2002309186A
JP2002309186A JP2001119078A JP2001119078A JP2002309186A JP 2002309186 A JP2002309186 A JP 2002309186A JP 2001119078 A JP2001119078 A JP 2001119078A JP 2001119078 A JP2001119078 A JP 2001119078A JP 2002309186 A JP2002309186 A JP 2002309186A
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Hidetoshi Abe
秀俊 阿部
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YAMAGATA 3M Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 接着された物品面積が比較的大きい場合で
も、施工現場で人の手作業により、接着性物品を被着体
から容易に剥離することを可能にする接着性物品剥離シ
ステム、接着構造体、及び接着性物品の剥離方法を提供
する。 【解決手段】 基材と、前記基材の少なくとも一方の主
面に配置された接着層とを備え、前記接着層は、(I)
結晶性ポリマーと、(II)前記結晶性ポリマーの融点以
上において前記結晶性ポリマーと相溶可能な粘着性ポリ
マーとを含有する接着剤組成物からなる熱剥離可能な接
着性物品と、前記接着層を介して前記接着性物品が接着
された被着体とを備えている接着構造体と、前記結晶性
ポリマーの融点を超える所定の加熱温度に前記接着性物
品を加熱する加熱装置とを備えている接着性物品剥離シ
ステムである。前記接着性物品が前記加熱温度に加熱さ
れたことを確認可能な温度モニターをさらに備えてい
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、粘着性ポリマー
と、結晶性ポリマーとを含有する接着剤組成物からなる
接着層を有する熱剥離可能な(熱剥離性の)接着性物品
を、それが接着された被着体から剥離するのに適した、
接着性物品剥離システム、接着構造体、及び剥離方法に
関する。本発明による接着性物品は、たとえば、装飾
用、標識用、電子部品用等の用途において特に好適に使
用される。なお、接着性物品は、たとえば、接着フィル
ム、接着シート及び接着テープの形態を包含する。
【0002】
【従来の技術】 粘着性ポリマーを主成分とする接着剤
は、感圧性接着剤(粘着剤)として使用可能で、圧力を
加えるだけで容易かつ強力に接着することができる。し
たがって、この様な接着剤からなる接着層を、基材の少
なくとも一方の主面(表面または裏面)に備えている接
着性物品は、被着体への接着作業が容易で、人(作業
者)の手で行うことができる。また、粘着性ポリマーと
結晶性ポリマーとを含有する接着剤及び接着性物品も知
られている。
【0003】 たとえば、米国特許第5,192,61
2号(日本対応特許第3021646号)には、次の様
な接着剤組成物(感圧接着剤)が開示されている。すな
わち、感圧接着剤基礎樹脂(アクリル系ポリマー等の粘
着性ポリマー)と、脱粘着樹脂と脱粘着粒子とを含有す
る感圧接着剤が開示されている。脱粘着樹脂の具体的か
つ好適な例として、約3,000から約342,000
の分子量を有する実質的にリニアなポリカプロラクトン
が開示されている。ポリカプロラクトンは、常温(約1
5℃〜30℃)では非粘着性を示す結晶性ポリマーであ
る。この感圧接着剤は、常温で、被着体に向かって押圧
して接着可能である。一方、上記の様な脱粘着樹脂は、
脱粘着粒子(シリカ等の無機粒子)と共同して、常温で
の接着剤表面のタックを効果的に軽減し、接着作業にお
ける位置決めを容易にする再剥離性を高めている。な
お、この公報に開示の技術では、最終的に接着した後、
使用中または使用完了後に加熱して剥離することは想定
されていない。
【0004】 特開2000−119624公報は、特
定の粘着性ポリマーと、結晶性のポリカプロラクトンと
を含んでなる接着剤組成物を開示している。ここに開示
の接着剤組成物は、熱圧着して(加熱した後で圧着し
て、または加熱しながら圧着して)、被着体に物品を接
着することができる。なお、ここに開示の粘着性ポリマ
ーは、分子内に、ヒドロキシ基とフェニル基との2つの
官能基を有することを必須としている。これらの官能基
の作用により、ポリカプロラクトンとの相溶性が良好に
なる。この様な接着剤では、ポリカプロラクトンの様な
ポリオール単位を分子内に有する結晶性ポリマーの作用
により、常温(約25℃)における接着面のタックをほ
とんどなくすことができる。
【0005】 一方、米国特許第5,412,035号
(日本対応特表平6−510548号)には、次の様な
熱剥離性の接着剤組成物(感圧接着剤)が開示されてい
る。すなわち、20℃から40℃の範囲の少なくとも1
つの温度で感圧接着剤となる感圧接着剤組成物であっ
て、高分子感圧接着剤成分(粘着性ポリマー)、および
結晶性ポリマーからなる組成物である。熱剥離性とは、
加熱されることにより剥離が可能になる性質である。
【0006】 結晶性ポリマーは、通常、常温で非粘着
性で、前記高分子感圧接着剤成分と親密に混合されてい
る。結晶性ポリマー自体の融点はTm(℃)であり、前
記組成物中で測定したとき結晶性ポリマーの融点Ta
(℃)はTmより低く、Tm−Taは、好ましくは1℃
〜9℃である。なお、Tmは、好ましくは20℃〜10
2℃であるとされている。この組成物は、Taよりも低
いある温度での剥離強さP1[g/cm]よりも、Ta
よりも高いある温度での剥離強さP2[g/cm]が小
さくなる。
【0007】 この公報は、従来の熱剥離性接着剤の使
用方法において、接着剤または接着剤を備えた物品が結
晶性ポリマーの融点よりも高い温度にある時に、被着体
から剥離すれば、上記融点より低い温度(たとえば、約
25℃の常温)にある時に剥離する場合よりも、剥離が
容易である(剥離容易性を有する)ことを教示してい
る。
【0008】 実際、この公報に記載の剥離試験(IM
TI剥離強さ試験)では、接着性物品(接着フィルムの
小片)を被着体から剥離する直前に加熱し、直ちに剥離
している。すなわち、接着性物品を、結晶性ポリマーの
融点を超える温度まで加熱を続けながら、またはその温
度から冷却されない様にして、接着性物品の剥離を行っ
ている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】 ところで、実際の熱
剥離性の接着構造(被着体と、熱剥離可能な接着性物品
とから構成されている。)が形成されている現場(施工
現場)において、人の手で剥離作業を行うことを想定し
て実験してみると、次の様な問題が生じることが分っ
た。
【0010】 被着体の被着面面積、すなわち接着され
た接着性物品の接着面積が比較的大きい(たとえば1m
2以上)場合、通常の手段(ドライヤー等)で接着性物
品の全体を均一に加熱することは難しい。たとえば、比
較的大きな面積の看板用や車体装飾用の接着シートの場
合、施工現場で接着シート全体を均一に加熱することは
困難である。したがって、従来の方法では、加熱された
接着性物品の温度を知らないまま作業を行っていた。
【0011】 また、接着シート全体を同時に加熱する
ことが困難な場合、ある部分を加熱した後、別の部分を
加熱しなければならない。ところが、別の部分を加熱し
ている間に、一度加熱したある部分は冷却されるので、
温度を高めにして加熱作業をする傾向があった。しかし
ながら、加熱された接着性物品の温度を知らないまま、
この様な加熱作業を続けると、接着性物品の温度が高く
なりすぎ、接着性物品、特に基材が軟化または溶融し、
剥離の際に破壊されることがあり、剥離作業が困難にな
ることが分った。また、接着性物品の温度が高すぎる
と、人が手で触れて作業することができなくなり、剥離
作業が困難になることもあった。
【0012】 一方、従来の熱剥離性の接着剤を用いた
場合、加熱された接着性物品の温度を知らないまま、加
熱及び剥離作業を行うと、次の様な問題も生じることが
分った。すなわち、前述の様に、接着シートのある部分
を加熱した後、別の部分を加熱している間に、一度加熱
した部分は冷却されて剥離困難な元の状態に戻ってしま
い、剥離作業が困難になることがあった。
【0013】 したがって、本発明の目的は、接着され
た物品面積が比較的大きい場合でも、施工現場で人の手
作業により、接着性物品を被着体から容易に剥離するこ
とを可能にする各種の方策(すなわち、接着性物品剥離
システム、接着構造体、及び接着性物品の剥離方法)を
提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】 本発明によれば、基材
と、前記基材の少なくとも一方の主面に配置された接着
層とを備え、前記接着層は、(I)結晶性ポリマーと、
(II)前記結晶性ポリマーの融点以上において前記結晶
性ポリマーと相溶可能な粘着性ポリマーとを含有する接
着剤組成物からなる熱剥離可能な接着性物品と、前記接
着層を介して前記接着性物品が接着された被着体、とを
備えている接着構造体と、前記結晶性ポリマーの融点を
超える所定の加熱温度に前記接着性物品を加熱する加熱
装置とを備えている接着性物品剥離システムにおいて、
前記接着性物品が前記加熱温度に加熱されたことを確認
可能な温度モニターをさらに備えていることを特徴とす
る接着性物品剥離システム、が提供される。
【0015】 上記において、粘着性ポリマーが架橋さ
れていることが好ましく、また、前記結晶性ポリマー
が、(X)分子内に炭素数が4〜6のアルキレン骨格を
含むポリオール単位を有する結晶性ポリマーであり、前
記粘着性ポリマーが、(Y)分子内に、炭素数が4〜
8のアルキル基または/及びアリール基と、極性基と
を含む粘着性ポリマーであることが好ましい。
【0016】 また、本発明によれば、基材と、前記基
材の少なくとも一方の主面に配置された接着層とを備
え、前記接着層は、(I)結晶性ポリマーと、(II)前
記結晶性ポリマーの融点以上において前記結晶性ポリマ
ーと相溶可能な粘着性ポリマーとを含有する接着剤組成
物からなる熱剥離可能な接着性物品と、前記接着層を介
して前記接着性物品が接着された被着体、とを備えてい
る接着構造体において、前記接着性物品が前記結晶性ポ
リマーの融点を超える所定の加熱温度に加熱されたこと
を確認可能な温度モニターをさらに含んでなることを特
徴とする接着構造体、が提供される。
【0017】 さらに本発明によれば、基材と、前記基
材の少なくとも一方の主面に配置された接着層とを備
え、前記接着層は、(I)結晶性ポリマーと、(II)前
記結晶性ポリマーの融点以上において前記結晶性ポリマ
ーと相溶可能な粘着性ポリマーとを含有する接着剤組成
物からなる熱剥離可能な接着性物品と、前記接着層を介
して前記接着性物品が接着された被着体、とを備えてい
る接着構造において、前記被着体から前記接着性物品を
加熱して剥離する方法において、前記粘着性ポリマーは
架橋されており、かつ前記接着性物品を、前記結晶性ポ
リマーの融点を超える所定の加熱温度に加熱してから加
熱を止め、加熱を止めた後、所定時間内に前記接着性物
品を剥離することを特徴とする接着性物品の剥離方法、
が提供される。また、上記剥離方法においては、前記接
着性物品が前記加熱温度を下回る温度になるまで放置し
た後、剥離を行うことが望ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】 本発明に係る接着性物品剥離シ
ステムでは、上記接着剤組成物からなる接着層を介して
被着体に接着された接着性物品と、前記接着性物品を加
熱する加熱装置に加えて、さらに、前記接着性物品が、
前記結晶性ポリマーの融点を超える所定の加熱温度に加
熱されたことを確認可能な温度モニターを備えているこ
とを特徴とする。
【0019】 したがって、本発明においては、接着性
物品の温度が高くなりすぎること(過剰加熱)を防止
し、接着性物品や基材が剥離の際に破壊されることを効
果的に防止できる。また、人が手で触れて作業できない
様な温度まで接着性物品が加熱されない様にすることも
できる。したがって、接着された物品面積が比較的大き
い場合でも、施工現場で人の手作業により、接着性物品
を被着体から容易に剥離することができる。
【0020】 温度モニターの詳細については後述する
が、温度モニターは、たとえば、加熱装置とともに用い
る温度検知装置(温度計等)の形態を採ることができ
る。また、温度モニターは、接着性物品に組み込んだ
り、被着体に組み込むこともできる。これにより、接着
された物品面積が比較的大きい場合でも、施工現場で人
の手作業により、接着性物品を被着体から容易に剥離す
ることが可能な接着構造体を提供できる。さらに、温度
モニターを接着性物品に組み込むことにより、同様の効
果を有する接着性物品を提供できる。
【0021】 一方、接着剤組成物が、結晶性ポリマー
と粘着性ポリマーとを含んでなり、前記粘着性ポリマー
が前記結晶性ポリマーの融点よりも高い温度において前
記結晶性ポリマーと相溶可能であることに加え、前記粘
着性ポリマーが架橋されている場合、従来の熱剥離性の
接着剤と異なり、次の様な効果を有する。
【0022】 粘着性ポリマーの架橋は、熱剥離性の接
着剤組成物の剥離可能時間(加熱を止めてから剥離容易
な状態が継続する時間)を効果的に長くする様に作用す
る。したがって、加熱を止めてから所定時間放置し、接
着性物品が加熱温度を下回る温度まで冷却された場合で
も、所定時間内であれば剥離容易な状態が継続する。す
なわち、接着された物品面積が比較的大きい場合でも、
施工現場で人の手作業による接着性物品の剥離作業がい
っそう容易になる。
【0023】 なお、「剥離容易な状態」とは、所定の
温度(結晶性ポリマーの融点以上)に加熱して、加熱す
る前の値よりも低い値にまで剥離強度が低下した状態で
あって、被着体に糊残りすることなく剥離できる状態で
ある。また、加熱温度は、それ以上の温度に接着性物品
を加熱してはならない上限温度以下で、結晶性ポリマー
の融点を超える範囲に含まれる、幅を持った温度領域で
あっても良い。加熱温度領域の幅は特に限定されない
が、通常0.2〜5℃の範囲である。
【0024】(熱剥離性の接着剤組成物)本発明で用い
られる接着剤組成物では、特に、粘着性ポリマーが、融
解した結晶性ポリマーと相溶可能であるので、融解した
結晶性ポリマーの再結晶化を遅らせるのに有利である。
組成物中でのこの様な結晶性ポリマーの融解−再結晶
は、実質的に可逆的な物理反応(現象)である。粘着性
ポリマーの架橋は、この再結晶化反応を遅らせると同時
に、剥離の際に接着剤成分が被着体に残ること(糊残
り)を効果的に防止する。
【0025】 剥離容易状態では、結晶性ポリマーは、
架橋された粘着性ポリマーと相溶している。したがっ
て、融解−再結晶化反応を妨げる様な、結晶性ポリマー
自体の架橋を必要とすること無く、接着層全体としての
糊残りを効果的に防止できる。なお、この様な観点か
ら、接着剤組成物が架橋剤(架橋成分)を含有する場
合、結晶性ポリマーとは実質的に化学反応しない架橋成
分を使用するのが好ましい。
【0026】 本発明による熱剥離性接着性物品では、
粘着性ポリマーを比較的多く含有する場合、感圧接着性
が高く、常温(約15〜30℃)で圧着するだけでも接
着可能である。また、粘着性ポリマーの量が比較的少な
い場合や、接着し難い被着体に接着する等の場合、熱圧
着により接着可能である。さらに、加熱剥離した後、接
着剤が冷却されない内に被着体への再接着操作を行って
も良い。
【0027】 上記の様な本発明による効果を得るため
に、粘着性ポリマーの含有割合は、組成物全質量を基礎
として50〜98質量%の範囲である。粘着性ポリマー
の含有割合が50質量%未満であると、感圧接着性が低
下するおそれがあり、反対に98質量%を超えると、剥
離可能時間を長くできないおそれがある。一方、結晶性
ポリマーの含有割合は、組成物全質量を基礎として1〜
49質量%の範囲である。結晶性ポリマーの含有割合が
1質量%未満であると、剥離可能時間を長くできないお
それがあり、反対に49質量%を超えると、感圧接着性
が低下するおそれがある。これらの議論から、粘着性ポ
リマーの含有割合は、好適には52〜95質量%、特に
好適には55〜90質量%である。また、結晶性ポリマ
ーの含有割合は、好適には4〜47質量%、特に好適に
は9〜44質量%である。
【0028】(結晶性ポリマー)本発明で用いられる結
晶性ポリマーは、通常、分子内に炭素数が4〜6のアル
キレン骨格を含むポリオール単位を有するポリマーであ
る。上記の様なアルキレン骨格を含むポリオール単位は
結晶性が比較的高い。この様な結晶性ポリオールに由来
するポリオール単位を繰り返し単位として有するポリマ
ーは、熱剥離性及び剥離可能時間を高めるのに好適であ
る。結晶性ポリオール単位は、側鎖ではなく主鎖分子内
に存在するのが良い。
【0029】 なお、本明細書において、「ポリオー
ル」という用語は、常温(約25℃)で実質的に非粘着
性であり、分子内に、2またはそれ以上の水酸基を有す
るポリマーまたはオリゴマーからなる化合物を意味す
る。また、「結晶性」とは、加熱により融解可能な性質
のことである。結晶性ポリマーの融点は、通常、繰り返
し単位として含まれるポリオールの融点で決まる。融点
は、通常30〜70℃であり、好適には35〜65℃の
ものを、特に好適には40〜60℃のものを選択するの
が良い。
【0030】 結晶性ポリマーの分子量は、所定の接着
力が発揮される範囲であれば良く、重量平均分子量が、
通常5,000〜200,000、好ましくは10,0
00〜150,000の範囲である。なお、本明細書に
おいて「分子量」とは、GPCを用いて測定したスチレ
ン換算分子量である。
【0031】 上記の様な結晶性ポリマーとしては、好
適には、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオ
ール、ポリエーテルポリオール、ポリカボネートポリオ
ール等の結晶性ポリオール、または、これらポリオー
ルと、ジイソシアネート化合物とを含有する原料組成物
を重合して得た結晶性ポリウレタンである。これらの結
晶性ポリマーからなる群から選択された1または2種以
上を組合せて用いることができる。
【0032】 前述のポリウレタン中のポリオール単位
は、結晶性ポリオールから形成される。すなわち、ジイ
ソシアネート等のイソシアネート化合物との反応によ
り、結晶性ポリオールがウレタン分子内に組み込まれ、
繰り返し単位として、結晶性ポリオール単位を形成す
る。結晶性ポリオールは、たとえば、ポリエステルポリ
オール、ポリエーテルポリオール、ポリカボネートポリ
オール等の中から、結晶性のものを選択する。たとえ
ば、ポリウレタンの結晶性(結晶化度や結晶化速度)の
制御が容易である観点から、好適なポリエステルポリオ
ールとしては、ポリカプロラクトンである。また、同様
の観点から、好適なポリエーテルポリオールとしては、
ポリテトラメチレングリコールである。なお、ポリオー
ル化合物は、1種または2種以上の混合物であっても良
い。
【0033】 ポリウレタンの原料となる結晶性ポリオ
ールの重量平均分子量は、通常1,000〜200,0
00、好適には1,500〜50,000、特に好適に
は3,000〜15,000である。
【0034】 イソシアネート化合物は、通常、分子内
に2個のイソシアネート基を有するジイソシアネートで
ある。ジイソシアネートとしては、たとえば、イソホロ
ンジイソシアネート(IPDI)、ジフェニルメタンジ
イソシアネート(MDI)、水添MDI、トリレンジイ
ソシアネート(TDI)及び1,6−ヘキサンジオール
ジイソシアネート(HDDI)からなる群から選ばれた
1種または2種以上のジイソシアネートを含む混合物が
使用できる。また、上記ジイソシアネートどうしを反応
させて得た、ビウレット構造またはイソシアヌレート構
造を有する化合物なども利用できる。
【0035】 結晶性ポリマーの好適な1例として、ポ
リカプロラクトンが挙げられる。ポリカプロラクトン
は、前述の様にポリウレタンの原料として用いることも
できるが、結晶性ポリマーとしても使用できる。本発明
において用いられるポリカプロラクトンとは、(i)カ
プロラクトンを含有する出発物質を重合して得られるポ
リカプロラクトン、または、(ii)カプロラクトンの開
環重合により得られた重合単位(ユニット)を、分子内
に含むポリカプロラクトンである。
【0036】 ポリカプロラクトンを含有する熱剥離性
の接着性物品では、熱剥離性及び剥離可能時間を高める
のが特に容易である。また、ポリカプロラクトンの結晶
化により、常温では粘着性をほとんど無くすこともでき
る。一方、常温で、または加熱しながら被着体に対して
圧着することで、所定の接着力を発現することができ
る。なお、より強固な接着が必要な場合、熱圧着するこ
ともできる。
【0037】(粘着性ポリマー)本発明で用いられる粘
着性ポリマーは、常温(約25℃)で粘着性を示すポリ
マーであり、前記結晶性ポリマーの融点以上の温度に加
熱した時に、結晶性ポリマーと相溶可能である。また、
粘着性ポリマーは架橋可能であるのが好ましい。接着剤
組成物を、熱剥離性接着剤として好適に使用するために
は、粘着性ポリマーを架橋する。
【0038】 粘着性ポリマーが、結晶性ポリオールの
融点以上の温度に加熱した時に、結晶性ポリマーと相溶
可能であるかどうかは、接着剤組成物の透明度、すなわ
ちヘイズの変化(低下)で判定できる。
【0039】 たとえば、本発明で使用される接着剤組
成物からなり、厚みが20〜60μmの範囲のフィルム
接着剤(フィルム状の接着剤)について、結晶性ポリオ
ールの融点以上に加熱した時と、融点未満(常温、約2
5℃で良い。)の時とを比べる。常温では、結晶性ポリ
マーは通常、複数の微細な結晶を形成し、粘着性ポリマ
ーを含むマトリックス中に分散しているので、透明度は
比較的高いが、色差計を用いて測定されたヘイズは少な
くとも5%以上(通常20%以下)である。一方、ポリ
オールの融点以上で、結晶性ポリマーが融解し、結晶性
ポリマーと粘着性ポリマーとが相溶した状態ではヘイズ
が低下し、フィルム接着剤はほとんど透明になる。ま
た、結晶性ポリマーが融解しても、結晶性ポリマーと粘
着性ポリマーとが相溶しない場合は、ヘイズはほとんど
変化しない。この様な場合、ヘイズが小さいほど相溶性
が良いことを示す。したがって、色差計を用いて測定さ
れたヘイズは、結晶性ポリマーと粘着性ポリマーとが相
溶した状態では好適には3%以下、特に好適には2%以
下である。
【0040】 また、結晶性ポリマーと粘着性ポリマー
とを含有する溶液が透明であるか否かによっても、簡易
的にこれら2つの相溶性について判定できる。すなわ
ち、粘着性ポリマーと結晶性ポリマーとの相溶性が良好
であるための最低条件の1つは、粘着性ポリマーを溶解
して含む透明な第1溶液と、結晶性ポリマーを溶解して
含む透明な第2溶液とを混合した時、透明な混合液にな
ることである。
【0041】 また、偏光顕微鏡を用いて、偏光の透過
性を調べることによっても確認することができる。良く
知られている様に、2枚の偏光板の偏光軸を直交させる
と、光は透過しなくなり、視野がほとんど真っ暗にな
る。この様に直交させた2枚の偏光板の間に、本発明の
接着剤組成物からなるフィルム接着剤を置いて観察す
る。常温では、結晶性ポリマーの微結晶は、フィルム接
着剤に入射した光の偏光面を回転させ、2枚の偏光板を
透過させる。結晶軸の方向は、通常ランダムであるの
で、光の偏光面をちょうど90度回転させて2枚の偏光
板を透過する結晶と、光が通り難い結晶とが混在する。
結晶性ポリマーの微結晶が小さく分散しているほど、結
晶性ポリマーと粘着性ポリマーとの相溶性が高いことを
示す。したがって、互いのポリマーの相溶性が高いほど
結晶サイズが小さく、顕微鏡視野(100〜200倍)
内ではフィルム全体がうすく明るく見える。互いのポリ
マーの相溶性が低い場合、結晶サイズが大きく、暗い下
地に点在する明るい点として結晶が視認可能である。な
お、結晶性ポリマーが融解し、粘着性ポリマーと結晶性
ポリマーとが相溶した状態では、フィルム接着剤に含ま
れるこれらポリマーの混合物は、光学的に等方性である
ので、常温の場合に比べて暗くなる。
【0042】 粘着性ポリマーは、たとえば、アクリル
系ポリマー、ニトリル−ブタジエン系共重合体(NBR
等)、スチレン−ブタジエン系共重合体(SBR等)、
非結晶性ポリウレタン、シリコーン系ポリマー等であ
る。粘着性ポリマーは、これらのポリマー1種単独、ま
たは2種以上の混合物から構成される。
【0043】 結晶性ポリマーが、前述の分子内に炭素
数が4〜6のアルキレン骨格を含むポリオール単位を有
する結晶性ポリマーである場合、次の様な粘着性ポリマ
ーが好ましい。すなわち、分子内に、炭素数が4〜8
のアルキル基または/及びアリール基と、極性基とを
含む粘着性ポリマーである。この様な粘着性ポリマー
は、分子内に炭素数が4〜6のアルキレン骨格を含む前
述の結晶性ポリマーとの相溶性が高く、熱剥離性及び剥
離可能時間を効果的に高めることができる。
【0044】 アリール基とは、化学構造にベンゼン環
を含む官能基である。たとえば、フェニル基、フェノキ
シ基、ベンジル基、ベンゾイル基、ナフチル基、ビフェ
ニル基等である。極性基としては、カルボキシル基、水
酸基等の活性水素含有基や、ニトリル基、ピリジニル
基、アルキルジ置換アミノ基等の窒素含有官能基などが
好ましい。アルキル基の炭素数は、より好適には6以下
(すなわち、炭素数4、5または6)であるのが好まし
い。
【0045】 この様な粘着性ポリマーの好適なものと
して、次の様なものを挙げることができる。たとえば、
粘着性ポリマー分子に含まれる、前記の極性基が活性
水素含有基であり、前記のアルキル基を含むモノマー
単位(前記アルキル基を有する出発モノマーに由来する
繰り返し単位)の割合が60〜99モル%であり、かつ
前記アルキル基はブチル基を必ず含む粘着性ポリマーで
ある。ブチル基と活性水素含有基とを分子内に有する粘
着性ポリマーは、結晶性ポリマーの融点よりも高い温度
において結晶性ポリマーと相溶が良好なので、熱剥離性
を高めることができる。活性水素含有基として好適に
は、カルボキシル基または水酸基である。
【0046】 分子内にブチル基と活性水素含有基とを
有する粘着性ポリマーの、結晶性ポリマーに対する相溶
性が良好である理由は明らかではない。しかしながら、
次の様に考えられる。通常、結晶性ポリオールの分子主
鎖には、炭素数が3以上のアルキレン基が含まれる。こ
の結晶性ポリオールのアルキレン基の部分と、粘着性ポ
リマーのブチル基とは互いに構造が類似しているので、
互いのポリマーを相溶させるきっかけさえあれば、互い
のポリマーは相溶するものと考えられる。一方、ポリオ
ール分子主鎖には、酸素原子を含む結合(エステル結
合、エーテル結合等)が含まれる。また、粘着性ポリマ
ーには、活性水素含有基が含まれる。この活性水素含有
基の水素部分と、ポリオール分子主鎖の含酸素結合の酸
素原子とが引き合い、互いのポリマーを相溶させるきっ
かけとなるものと考えられる。なお、上記引き合いは、
主に水素結合に起因するものと考えられる。
【0047】 粘着性ポリマー分子に含まれる、炭素数
4〜8のアルキル基を含むモノマー単位の割合が60モ
ル%未満では、接着剤組成物の低温での(10℃未満)
接着性を効果的に高めることができない。一方、炭素数
4〜8のアルキル基を含むモノマー単位の含有割合が9
9モル%を超えると、活性水素含有基を含むモノマー単
位の含有割合が少なすぎる場合があり、その様な場合、
結晶性ポリマーと粘着性ポリマーとの相溶性が低下す
る。相溶性の低下は、接着剤組成物の熱剥離性の低下を
招く。したがって、低温接着性と熱剥離性とをバランス
良く高めるには、炭素数4〜8のアルキル基を含むモノ
マー単位の含有割合は、好適には65〜98モル%、特
に好適には70〜95モル%の範囲である。
【0048】 また、上記粘着性ポリマ−のTg(ガラ
ス転移温度)は、通常−50〜−10℃、好適には−4
0〜−12℃、特に好適には−30〜−15℃である。
粘着性ポリマーのTgが高すぎると、低温接着性が低下
するおそれがあり、反対にTgが低すぎると、熱剥離性
が低下するおそれがある。
【0049】 別の好適な粘着性ポリマーは、分子内
に、上記の官能基としてフェニル基を、上記の官能
基としてヒドロキシ基を有するポリマーである。この様
な粘着性ポリマーにおいて、上記2種の官能基に加え
て、炭素数が4〜10のアルキル基を有する場合、常温
(約25℃)における圧着による接着力(剥離強度)を
効果的に高めることができる。
【0050】 一方、架橋性を付与するために、前記
及びの官能基以外の官能基として、粘着性ポリマーが
さらに架橋官能基を有しても良い。架橋官能基は、光
(紫外線、電子線を含む)の照射、または加熱により、
架橋反応可能な官能基であり、通常、接着剤組成物に含
有させる架橋成分と反応する官能基である。また、粘着
性ポリマーどうしが、この架橋官能基を介して直接架橋
可能であっても良い。
【0051】 ここで、本発明において用いることがで
きるアクリル系粘着性ポリマーの好適な1例について説
明する。この様なポリマーは、(A)分子内に、炭素数
が4〜8のアルキル基または/及びアリール基を有する
(メタ)アクリルモノマーと、(B)分子内にカルボキ
シル基または/及び水酸基を有する(メタ)アクリルモ
ノマー、とを含んでなる混合モノマーを重合して得たア
クリル系ポリマーである。この様なポリマーは、通常の
方法、たとえば、溶液重合等により共重合させて調製す
ることができる。
【0052】 粘着性ポリマー全体の重合単位に占める
上記(A)及び(B)成分に由来する単位は、結晶性ポ
リマーとの相溶性に寄与するので、可及的に多く含まれ
るのが良い。したがって、粘着性ポリマー全体の重合単
位に占める、上記(A)及び(B)成分に由来する単位
の合計割合(質量比)は、通常65質量%以上、好適に
は70質量%以上である。
【0053】 本発明で用いられる粘着性ポリマーの分
子量は、所定の接着力が発揮される範囲であれば良く、
通常は重量平均分子量で10,000〜1,000,0
00の範囲である。また、従来の感圧性接着剤と同様
に、粘着性ポリマーとともに粘着付与剤を使用すること
もできる。
【0054】(粘着性ポリマーの架橋)粘着性ポリマー
は、前述の極性基が活性水素含有基である場合、その活
性水素含有基を介してポリマーどうしを架橋することが
できる。また、極性基が活性水素含有基である場合で
も、それとは異なる官能基(たとえば、エポキシ基や光
架橋性官能基)を分子内に有する様にしても良い。
【0055】 たとえば、架橋に動員される官能基(架
橋官能基)がカルボキシル基の場合、熱架橋成分として
は、ビスアミド系架橋剤またはエポキシ樹脂が好適であ
る。架橋官能基がカルボキシル基およびエポキシ基のい
ずれの場合も、粘着性ポリマーのヒドロキシ基とフェニ
ル基の持つ、結晶性ポリマーとの相溶化作用を妨げるこ
となく、熱架橋を可能にすることができる。また、接着
剤としての耐熱性や糊残り防止効果を高めるのに十分な
程度の架橋密度を、熱架橋反応による行うことが容易で
ある。本発明の効果を損なわない範囲で、イソシアネー
ト系架橋剤を使用することもできる。
【0056】 エポキシ樹脂は、粘着性ポリマーのカル
ボキシル基と反応し、粘着性ポリマーを熱架橋する様に
作用する。エポキシ樹脂としては、たとえば、ビスフェ
ノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ
樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノー
ルノボラック型エポキシ樹脂等が使用できる。エポキシ
樹脂のエポキシ当量は、通常70〜400、好適には8
0〜300である。
【0057】 ビスアミド系架橋剤は、たとえば、イソ
フタロイルビス(2−メチルアジリジン)等の二塩基酸
のビスアジリジン誘導体が利用できる。ビスアミド系架
橋剤は、カルボキシル基を有する粘着性ポリマーと常温
で反応可能で、十分な架橋密度を容易に得ることができ
る点で特に好ましい。
【0058】 上記の様な架橋成分を用いる場合の接着
剤全体(総質量)に占める割合は、通常0.01〜20
質量%、好適には0.05〜10質量%である。
【0059】 また、エポキシ樹脂等の架橋成分の反応
促進剤を添加することもできる。これにより、加熱によ
る架橋条件を緩和することもできる。なお、架橋成分
は、上記のものに限定されず、架橋官能基の種類や、架
橋条件にしたがって選択できる。
【0060】 一方、粘着性ポリマーが、追加の官能基
として光架橋性官能基をさらに含んでなる場合、接着剤
組成物は、熱架橋性かつ光架橋性の接着剤として使用で
きる。光架橋性官能基として好適には、ベンゾフェノン
等の芳香族ケトンに由来する光活性基であって、活性化
されてラジカルを生成するラジカル生成基である。
【0061】(接着剤組成物の製造方法)本発明で用い
られる接着剤組成物は、通常の混合操作により、各原料
を均一に混合して調製できる。たとえば、粘着性ポリマ
ー、結晶性ポリマー、架橋剤、溶剤等を、ホモミキサ
ー、プラネタリーミキサー等の混合装置で混合し、各材
料を均一に溶解または分散させ、液体の組成物を調製す
ることができる。
【0062】 この液体の組成物は、通常、前記粘着性
ポリマーを溶解して含む第1溶液と、前記結晶性ポリマ
ーを溶解して含む第2溶液とを混合し、前記粘着性ポリ
マーと前記結晶性ポリマーとを均一に溶解して含む液体
(塗料)を調製し、これを乾燥し、接着剤組成物からな
る接着層を形成することができる。この様にすれば、結
晶性ポリマーと、それと相溶性が良好な粘着性ポリマー
との特異なモルフォロジー(相互連結構造)を形成で
き、前述の様な性能(常温での非粘着性および高接着
力)を、特に効果的に発揮させることができる。なお、
架橋成分を添加する場合、通常、架橋成分を含む第3溶
液を上記塗料に添加する。
【0063】(接着性物品)本発明において用いられる
接着性物品は、基材と、前記基材の少なくとも一方の主
面に配置された接着層とを備え、前記接着層は、結晶性
ポリマーと、前記結晶性ポリマーの融点以上において前
記結晶性ポリマーと相溶可能な粘着性ポリマーとを含有
する接着剤組成物からなり、前記結晶性ポリマーの融点
を超える加熱温度まで加熱されて被着体から剥離可能に
なるという特性を有するものである。
【0064】 基材は、シートまたはフィルム状のもの
や、電子部品、機械部品である。また、標識や看板用
の、プラスチック、金属等からなる基板も、基材として
使用できる。
【0065】 接着性物品は、たとえば、上記の様にし
て得た接着剤組成物を含有する塗料を、塗布、乾燥して
接着層を形成し、その接着層を基材に固定して製造する
ことができる。たとえば、ライナーの剥離面に接着剤組
成物の塗料を塗布、乾燥して接着層を形成する。この接
着層の上に基材を重ねて圧着し、本発明の接着性物品を
完成させる。
【0066】 ライナー剥離面には微細な凹凸が形成さ
れていても良い。この様にして形成した接着層の表面
(接着面)には、前記ライナー剥離面の凹凸(ネガ凹
凸)が転写された凹凸(ポジ凹凸)が形成される。な
お、上記凹凸は、それが配置された面(接着面やライナ
ー剥離面)上に、規則的に繰り返されたパターンを持っ
て配列されていても良く、また、不規則パターンを有す
る粗さからなる凹凸であっても良い。
【0067】 また、基材の表面(または表裏両面)に
塗布、乾燥して接着層を形成し、その接着層にライナー
を圧接し、接着層の接着面をライナーで被覆して接着性
物品を完成させることもできる。
【0068】 接着層を形成する際の乾燥は、通常60
〜180℃の温度にて行われる。乾燥時間は、通常、数
十秒から数分である。接着層の厚みは、通常5〜1,0
00μm、好適には10〜500μm、特に好適には1
5〜100μmである。塗布手段には、ナイフコータ
ー、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター等の
公知の手段が使用できる。
【0069】 ライナーは、通常、紙またはプラスチッ
クフィルムから形成される。紙ライナーは、通常、紙の
表面に、ポリエチレンコート、シリコーンコート等の剥
離コート(剥離層)を積層して形成される。また、シリ
コーン剥離コートを積層する場合、通常、紙の上にクレ
ーコート、ポリエチレンコート等のアンダーコートを積
層した後、剥離コートを積層する。
【0070】 接着性物品が接着シート(接着フィル
ム)である場合、基材としては、たとえば、紙、金属フ
ィルム、ポリマーフィルム等が使用できる。フィルムの
ポリマーとしては、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、アク
リル系ポリマー、ポリエステル(PET等)、ポリウレ
タン、ポリオレフィン系ポリマー(エチレン−酢酸ビニ
ル共重合体変性ポリオレフィン、エチレン−アクリル酸
共重合体等のエチレン系共重合体を含む。)等の合成ポ
リマーが使用できる。また、再帰反射シートを基材とし
て用いても良い。なお、基材の厚みは、通常5〜500
μm、好適には10〜300μmである。
【0071】 基材は、可視光や紫外線を透過するもの
であっても良いし、光を反射するものでも良い。また、
着色されたものや、印刷等により装飾が施されたもので
あっても良い。その場合、本発明の接着性物品は、装飾
シートやマーキングフィルムとして有用である。
【0072】 なお、接着層には、本発明の効果を損な
わない限り、従来公知の添加剤を加えることができる。
たとえば、粘度調整剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線
吸収剤、酸化防止剤、顔料、防黴剤、粘着性ポリマーま
たは非粘着性のゴム系ポリマーからなる弾性微小球、粘
着付与剤(Tackifier)、架橋反応を促進するための触
媒等である。
【0073】 本発明において好適に使用される接着性
物品は、接着性物品が所定の加熱温度まで加熱されたこ
とを確認可能な温度モニターを、物品内に備えている。
温度モニターとしては、たとえば、示温フィルムやサー
モラベルとも呼ばれる熱変色(温度変色)フィルムが好
ましい。この様な熱変色フィルムは、通常、基材の表面
に接着して使用でき、視覚的に接着性物品が所定の温度
まで加熱されたことを確認することが容易である。示温
フィルムについては、詳細に後述する。
【0074】(接着構造体)本発明による接着構造体
は、前述の様にして形成された接着性物品を、被着体に
接着して形成できる。たとえば、接着性物品と被着体と
を、接着性物品の接着層を被着体に向けて積層した後、
1〜50kg/cm2(約0.1〜4.9MPa)の範囲
の加圧条件で圧着操作を行い、接着を完了させる。ま
た、圧着の際に、加熱してから冷却(自然冷却)して接
着力を高めることもできる。
【0075】 被着体としては、(1)アルミニウム、
ステンレス、銅、亜鉛鋼板等の金属、(2)ポリイミ
ド、アクリル樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、エポ
キシ樹脂、塩化ビニル等の樹脂、(3)セラミック、ガ
ラス等の無機酸化物材料等から形成された表面、すなわ
ち被着面を有するものが使用できる。また、被着面とし
て塗装面を有するものも使用できる。
【0076】 接着構造体において、被着体から接着性
物品を加熱剥離する場合、前述の様に所定の加熱温度ま
で加熱する。加熱するには、詳細は後述するが、加熱装
置を用いるのが良い。
【0077】 接着性物品の剥離強度は、剥離のために
加熱する前では、180度剥離、300mm/分の剥離
速度で測定した値で、好適には15N/25mmを超
え、特に好適には16〜40N/25mmの範囲であ
る。また、熱剥離操作時の剥離強度の最適な範囲は、基
材の機械的強度(弾性率や破断伸び等)や、剥離操作条
件(剥離速度)によって適宜決定できる。剥離操作を迅
速に行うという観点からは、180度剥離、300mm
/分の剥離速度で測定した値で、15N/25mm以下
であるのが好ましい。
【0078】(接着性物品剥離システム)本発明による
剥離システムで使用される接着構造体は、前述のものを
使用する。この剥離システムで使用される加熱装置は、
たとえば、スチーム(加圧蒸気)吹き付け装置、アイロ
ン、ヒートガン(熱風または温風吹き付け装置で、ドラ
イヤーを含む。)、ヒーター(ストーブや赤外線ヒータ
ーを含む。)、温水クッション(内部に温水を含む袋
等)、などである。これらの装置を用い、接着性物品を
直接加熱するか、または、被着体を直接加熱し、接着層
を熱剥離容易状態にする。
【0079】 また、本発明による剥離システムで使用
される温度モニターは、放射温度計、熱電対温度計、熱
変色フィルムなどである。
【0080】 熱変色フィルムは、示温フィルムやサー
モラベルとも呼ばれるもので、支持体の表面に、または
透明支持体の中に、可逆性または非可逆性熱変色材料を
含む熱変色層を有するフィルムである。この様な熱変色
材料としては、従来公知の材料、たとえば、液晶組成
物、熱変色インク等を使用できる。熱変色インクとは、
異なる温度域で少なくとも2色以上の異なる色を可逆的
に呈色可能な色素を含有するインクである。熱変色材料
は、通常、加熱温度(または加熱温度領域の下限温度)
を変色温度に持つものを用いる。すなわち、加熱温度の
下限未満では第1の色を呈し、加熱温度(または加熱温
度領域の下限温度)を超える温度で第2の色へと変わる
ものを用いる。熱変色フィルムは、通常、接着性物品に
接着して使用する。また、本発明の効果を損なわない限
り、被着体に接着しても良い。被着体に接着して使用す
る場合、接着性物品の近傍に配置されるのが良い。
【0081】 上記熱変色フィルムとして、結晶性ポリ
マー含有フィルムを用いても良い。結晶性ポリマー含有
フィルムは、加熱温度(または加熱温度領域の下限温
度)に一致する融点を持つ結晶性ポリマーを含有するフ
ィルムである。この様なフィルムでは、所定の温度未満
では不透明であるか、または白濁しており、その温度を
超える温度では結晶性ポリマーが融解して透明性が高く
なる。結晶性ポリマーは、たとえば、前述の接着剤組成
物において使用可能なポリマーである。好適には、接着
性物品の接着層に含まれる結晶性ポリマーと同一のもの
を用いるのが良い。
【0082】 結晶性ポリマー含有フィルムは、通常、
支持体と、その支持体の裏面に固定された接着層とを備
え、その接着層を介して接着性物品または被着体に接着
して使用する。結晶性ポリマーは、通常、支持体の表面
に配置される熱変色層に含まれる。この場合、支持体は
不透明(光透過率20%以下)であるのが好ましい。熱
変色層の濁度(透明性)の変化が視認されやすいからで
ある。支持体は、通常、黒色または暗い色をしている。
より好ましくは、金属光沢を持つ支持体である。金属光
沢を持つ支持体を用いた場合、熱変色層の濁度(透明
性)の変化がいっそう視認されやすい。
【0083】 なお、支持体が透明な場合、接着層に結
晶性ポリマーが含まれていても良い。この場合、結晶性
ポリマーに加えて粘着性ポリマーを含有させても良い。
接着層に含有される結晶性ポリマーの割合は、結晶性ポ
リマーと粘着性ポリマーとの合計量に対して、通常5%
以上である。また、透明な支持体と、接着層との間に熱
変色層を配置することもできるし、結晶性ポリマーを含
有するポリマー組成物から支持体を形成しても良い。
【0084】 接着性物品に接着される熱変色フィルム
の平面寸法は、接着性物品の平面寸法と同じであっても
良いし、それより小さくても良い。熱変色フィルムの平
面寸法が接着性物品の平面寸法よりも小さい場合、1つ
の接着性物品に接着される熱変色フィルムの数は、1つ
でも、2以上でも良い。たとえば、使用される加熱装置
によって一度に加熱可能な面積当たりに少なくとも1つ
あれば良い。また、異なる変色温度を持つ2または3以
上の熱変色フィルムを同時に用いても良い。
【0085】 一方、加熱温度が高くなりすぎない様に
制御するには、たとえば、温水またはスチームを熱媒と
して用いた加熱装置を用いるのが良い。温水またはスチ
ームを熱媒として用いた加熱装置では、熱媒温度を加熱
温度の上限温度以下に設定することが容易であり、確実
に過剰加熱を回避できる。また、比較的大きな面積を同
時に加熱できるので、接着性物品全体の加熱の均一性を
高めるのが容易である。
【0086】 スチームは、通常、吹き付け装置を用い
て接着性物品に接触させる。スチーム吹き付け装置は、
通常、水を入れるタンクと、水を加熱してスチームに変
えるためにタンクに結合されたの加熱ユニットと、タン
ク内に圧縮ガスを送り込む圧縮ユニットと、上記タンク
に一端が結合された輸送管と、輸送管の他端に結合され
た吹き出しノズルとを備えている。ノズルは、スチーム
吹き出し口となる開口を有する。この開口を通じて加圧
して吹き出したスチームを、接着性物品の被吹き付け面
に接触させて接着性物品を加熱することができる。ノズ
ル開口面積は、通常400〜2,000cm2である。
ノズルから吹き出したスチームは、通常1〜400KP
aの圧力で吹き付けられる。また、吹き付けノズルと被
吹き付け面とがほとんど接触した状態で、加熱作業を行
うのが良い。
【0087】 また、熱媒として温水を用いる場合、加
熱装置として温水クッションを使用するのが良い。温水
クッションは、袋の内部に加熱のための熱媒となる温水
を入れ、袋の外面を接着性物品に密着させて使用する。
【0088】 袋としては、プラスチック、ゴム、布等
の材料のフィルムなどからなるものが使用できる。この
ような袋の肉厚はその内部に収容された温水の温度が、
表示フィルム表面へ効率良く伝わるように、かつ、温水
の重みや圧力で破損しない程度の強度を有するように選
択すべきであるが、通常、10〜1,000μmの範囲
である。
【0089】 プラスチックフィルムとしては、好適に
は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、
ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリウレタン、ポ
リアクリロニトリル等のホモポリマー、または、これら
を主成分とする共重合体のフィルムである。
【0090】 温水クッションは、温水を所定の温度に
加熱した後、袋に入れて接着性物品に密着させることも
できるが、まず袋に水を入れ、水の入った袋を接着性物
品に密着させた後、袋外から、ドライヤー等の別の加熱
装置で水を加熱し温水にすることもできる。
【0091】 また、温水に換えて、別の熱媒である、
油、オイル状物、ゲル状物、ゼリー状物等が使用でき
る。
【0092】 前述の様に、被着体に接着された接着性
物品を、接着層の結晶性ポリマーの融点を超える所定の
加熱温度まで加熱してから加熱を止め、加熱を止めた
後、所定時間内に接着性物品を剥離する。この時、接着
性物品が前記加熱温度を下回る温度になるまで放置した
後、剥離を行うのが良い。さらに、接着性物品の加熱を
止めた後、所定時間放置して前記接着性物品の温度が4
0℃以下になってから、接着性物品を剥離するのが好ま
しい。40℃以下であれば人が手で触れても熱いと感じ
難く、手作業での剥離が迅速に行えるからである。な
お、40℃以下になってからでも剥離容易状態を効果的
に保つには、次の様な接着剤組成物から接着性物品の接
着層を形成するのが良い。すなわち、(X)分子内に炭
素数が4〜6のアルキレン骨格を含むポリオール単位を
有する結晶性ポリマーと、(Y)分子内に、炭素数が
4〜8のアルキル基または/及びアリール基と、極性
基とを含む粘着性ポリマーとを組合せて形成された接着
剤組成物である。なお、上記(X)成分及び(Y)成分
は、前述したものを用いるのが好ましい。
【0093】(接着性物品の剥離方法)本発明による剥
離方法では、(i)被着体に、前述の接着剤組成物から
なる接着層を介して接着された接着性物品を、前記結晶
性ポリマーの融点を超える、所定の温度領域(加熱温
度)まで加熱した後加熱を止め、(ii)加熱を止めてか
ら所定時間内に前記接着性物品を剥離することを特徴と
する。すなわち、接着性物品の加熱温度を所定の範囲内
に制御するので、加熱を止めてから所定時間放置して加
熱温度を下回る温度まで冷却された場合でも、所定時間
内であれば剥離容易な状態が継続し、接着性物品の剥離
が可能である。したがって、接着された物品面積が比較
的大きい場合でも、施工現場で人の手作業により、接着
性物品を被着体から容易に剥離できる。
【0094】 なお、加熱を止めてからの所定時間は特
に限定されず、通常の作業では数秒以上であるが、好適
には30秒以上10分未満、特に好適には1〜5分の範
囲である。
【0095】 結晶性ポリマーと粘着性ポリマーとの相
溶化を促進し、剥離強度を効果的に低下させるには加熱
温度は高い方が望ましい。一方、加熱温度が高すぎ、か
つ加熱を止めてからの放置時間が短すぎる場合、接着性
物品が剥離の際に破壊され、剥離作業が困難になること
がある。また、加熱温度が高すぎると、人が手で触れて
作業できる温度まで接着性物品を放置冷却する時間が長
くなり、作業効率が低下するおそれがある。この様な観
点から、加熱温度は、結晶性ポリマーの融点以上の所定
範囲に含まれる様に制御するのが良く、加熱温度は、結
晶性ポリマーの融点を15℃以上超えかつ130℃以下
の範囲に含まれるが好適であり、前記結晶性ポリマーの
融点を20℃以上超えかつ120℃以下の範囲に含まれ
るのが特に好適である。
【0096】 また、加熱を止めた後、接着性物品が前
記加熱温度を下回る温度になるまで放置した後、剥離を
行うのが好ましい。これにより、手で触れやすい温度ま
で接着性物品を冷却可能であり、剥離のための手作業が
すばやくでき、作業効率が向上する。
【0097】
【実施例】 次に本発明の実施例について説明する。 (実施例1〜3) 1.粘着性ポリマーの調製 各実施例において共通して用いた粘着性ポリマーを次の
様にして調製した。まず、アクリロニトリル3質量部、
ブチルアクリレート93質量部、アクリル酸4質量部か
らなる混合モノマーから、溶液重合させて粘着性ポリマ
ーを得た。溶媒は、トルエン/酢酸エチル(質量比=3
/7)で、得られた粘着性ポリマー溶液の固形分濃度は
30質量%であった。上記粘着性ポリマーの重量平均分
子量(Mw)は590,000、ガラス転移点(粘弾性
測定による。)は−21℃であった。
【0098】2.結晶性ポリマー 結晶性ポリマーとして、2つのポリカプロラクトンを用
いた。カプロラクトン1は、ダイセル化学工業社製のポ
リカプロラクトン(プラクセル(Placcel)TM、品番2
20、Mw=5,700、Mw/Mn=2.0、融点=
59℃)を用いた。カプロラクトン2は、ダイセル化学
工業社製のポリカプロラクトン(プラクセルTM、品番2
40、Mw=11,000、Mw/Mn=1.9、融点
=64℃)を用いた。これらのポリカプロラクトンのト
ルエン溶液(不揮発分濃度=21質量%)を用い、次に
説明する様にして、接着剤組成物溶液を調製した。
【0099】 なお、結晶性ポリマーの融点は、パーキ
ンエルマー社製の示差走査熱量計(型番DSC−2C
C)を用い、−60℃〜180℃の温度範囲で10℃/
分の速度で昇温して測定し、得られたチャートのピーク
温度から特定した。
【0100】3.接着剤組成物溶液の調製 上記の様にしてそれぞれ用意した、粘着性ポリマー溶液
とポリカプロラクトン溶液とを、不揮発分の質量部比が
90:10になる様に混合し、その混合溶液に架橋剤と
してイソフタロイルビス(2−メチルアジリジン)を
0.2質量部添加し、接着剤組成物溶液(以降、「接着
剤溶液」と呼ぶこともある。)を得た。実施例のすべて
の接着剤溶液は、透明であった。なお、各実施例におい
て用いたカプロラクトンの種類は、表1に示す通りであ
った。
【0101】4.接着性物品の作製 各実施例の接着剤溶液を、ライナーの剥離面上にナイフ
コータを用いて塗布し、90℃、5分間の条件で乾燥さ
せ、ライナー上に厚さが45μmの接着剤組成物からな
る接着層を形成した。この接着層に、厚さ80μmのエ
チレン酢酸ビニル共重合体変性ポリオレフィンフィルム
からなる基材をドライラミネートし、各実施例の接着性
物品(片面に接着層を有する接着シート)を得た。
【0102】5.加熱装置、及び温度モニター 上記の様にして作製した各実施例の接着シートを用い、
それぞれに、以下に示す加熱装置及び温度モニターを表
1に示す通りに組合せて剥離システムを構成した。各実
施例の剥離システムを用い、後述する様にして熱剥離試
験を行った。
【0103】 スチームは、ケルヒャー社製(KARCHE
R)のスチーム吹き付け装置(品番:DE4002)を
用いた。ドライヤーは、ボッシュ社製(BOSCH)の工業
用ドライヤー(品番:PHG600CE)を用いた。
【0104】 サーモラベルは、日油技研工業(株)社
製のサーモラベル(品番:3K−95)で、変色温度が
95℃、100℃、及び105℃の3種類の熱変色層を
有し、支持体表面にそれらの熱変色層を並べて配置され
ているものを使用した。放射温度計は、安立計器(株)
社製の〔商標:デュアルサーモ(品番:AR−150
0)〕を用いた。
【0105】6.評価 (1)初期接着力 各実施例の接着シートを、200mm×25mmに裁断
し、被着体としてのパルテック(株)社製のメラミン焼
き付け塗装板に、20℃の環境下で圧着ローラを用いて
接着し、各実施例の接着構造体を作製した。シートの接
着はJIS Z0237 8.2.3に準ずる方法で行
った。接着完了後、同温度下で48時間放置後、加熱せ
ずに、300mm/分の剥離速度における180度方向
の剥離強度をテンシロンで測定した。結果を表1に示
す。
【0106】(2)熱剥離強度(熱剥離システムの評
価) 表1に示される加熱装置と温度モニターとを組合せて用
いた以外は、上記初期接着力の測定の場合と同様にし
て、各実施例において、加熱後の剥離強度をテンシロン
で測定した。なお、サーモラベル(平面寸法=10mm
×6mm)は、接着シートの表面(基材表面)のほぼ中
央に感圧接着剤を介して接着した。
【0107】 各実施例の熱剥離操作では、表1に記載
の加熱温度まで加熱し、加熱を止めてから室温(20
℃)で約4分間冷却した後、剥離強度を測定した。加熱
時間は、ドライヤーの場合で約10秒、スチーム吹き付
けの場合で約15秒であった。また、加熱を止めてから
4分後、接着シート及び被着体の温度は20℃であっ
た。結果を表1に示す。
【0108】 なお、接着シートの剥離後、各被着体の
被着面を観察したところ、糊残りは認められなかった。
【0109】(比較例1)温度モニターを用いなかった
以外は、実施例3と同様にして接着性物品剥離システム
を構成した。結果を表1に示す。
【0110】 比較例1では、加熱温度を制御しない
で、ドライヤーで1分ほど加熱を続けたが、接着シート
はかなり高温になった。そのため、フィルムが軟化して
破損しやすい状態になり、破損することなく剥離するこ
とは困難であった。また、加熱を止めた直後は、接着シ
ートに人が手で触れるには熱くなりすぎていた。
【0111】 なお、別途、同じ条件にて1分間加熱し
た時の接着シートの温度を測定したところ、上記加熱操
作では、接着シートが120〜130℃になっていたこ
とが分った。
【0112】(比較例2)ポリカプロラクトンを含まな
い接着剤組成物を用い、サーモラベルの代わりに放射温
度計を用いた以外は、実施例3と同様にして接着性物品
剥離システムを構成した。結果を表1に示す。この接着
剤組成物は、結晶性ポリマーを含まないので熱剥離性は
低かった。
【0113】
【表1】
【0114】
【発明の効果】 以上詳細に説明した通り、本発明の接
着性物品剥離システム、接着構造体、及び接着性物品の
剥離方法によれば、接着された物品面積が比較的大きい
場合であっても、施工現場で手作業により、接着性物品
を被着体から容易に剥離することができる。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材と、前記基材の少なくとも一方の主
    面に配置された接着層とを備え、前記接着層は、(I)
    結晶性ポリマーと、(II)前記結晶性ポリマーの融点以
    上において前記結晶性ポリマーと相溶可能な粘着性ポリ
    マーとを含有する接着剤組成物からなる熱剥離可能な接
    着性物品と、 前記接着層を介して前記接着性物品が接着された被着
    体、とを備えている接着構造体と、 前記結晶性ポリマーの融点を超える所定の加熱温度に前
    記接着性物品を加熱する加熱装置とを備えている接着性
    物品剥離システムにおいて、 前記接着性物品が前記加熱温度に加熱されたことを確認
    可能な温度モニターをさらに備えていることを特徴とす
    る接着性物品剥離システム。
  2. 【請求項2】 前記粘着性ポリマーが架橋されている請
    求項1記載の接着性物品剥離システム。
  3. 【請求項3】 前記結晶性ポリマーが、(X)分子内に
    炭素数が4〜6のアルキレン骨格を含むポリオール単位
    を有する結晶性ポリマーであり、前記粘着性ポリマー
    が、(Y)分子内に、炭素数が4〜8のアルキル基及
    び/又はアリール基と、極性基とを含む粘着性ポリマ
    ーである請求項1記載の接着性物品剥離システム。
  4. 【請求項4】 基材と、前記基材の少なくとも一方の主
    面に配置された接着層とを備え、前記接着層は、(I)
    結晶性ポリマーと、(II)前記結晶性ポリマーの融点以
    上において前記結晶性ポリマーと相溶可能な粘着性ポリ
    マーとを含有する接着剤組成物からなる熱剥離可能な接
    着性物品と、 前記接着層を介して前記接着性物品が接着された被着
    体、とを備えている接着構造体において、 前記接着性物品が前記結晶性ポリマーの融点を超える所
    定の加熱温度に加熱されたことを確認可能な温度モニタ
    ーをさらに含んでなることを特徴とする接着構造体。
  5. 【請求項5】 基材と、前記基材の少なくとも一方の主
    面に配置された接着層とを備え、前記接着層は、(I)
    結晶性ポリマーと、(II)前記結晶性ポリマーの融点以
    上において前記結晶性ポリマーと相溶可能な粘着性ポリ
    マーとを含有する接着剤組成物からなる熱剥離可能な接
    着性物品と、 前記接着層を介して前記接着性物品が接着された被着
    体、とを備えている接着構造体において、前記被着体か
    ら前記接着性物品を加熱して剥離する方法において、 前記粘着性ポリマーは架橋されており、かつ前記接着性
    物品を、前記結晶性ポリマーの融点を超える所定の加熱
    温度に加熱してから加熱を止め、加熱を止めた後、所定
    時間内に前記接着性物品を剥離することを特徴とする接
    着性物品の剥離方法。
  6. 【請求項6】 前記接着性物品が前記加熱温度を下回る
    温度になるまで放置した後、剥離を行う請求項5記載の
    接着性物品の剥離方法。
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