JP2002097425A - 接着シート及び再帰反射標識 - Google Patents

接着シート及び再帰反射標識

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JP2002097425A
JP2002097425A JP2000274789A JP2000274789A JP2002097425A JP 2002097425 A JP2002097425 A JP 2002097425A JP 2000274789 A JP2000274789 A JP 2000274789A JP 2000274789 A JP2000274789 A JP 2000274789A JP 2002097425 A JP2002097425 A JP 2002097425A
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adhesive
polymer
sheet
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peeling
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JP2000274789A
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Yoshinori Araki
好則 荒木
Hidetoshi Abe
秀俊 阿部
Yorinobu Takamatsu
頼信 高松
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Original Assignee
3M Innovative Properties Co
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 80℃の様な比較的高温条件での熱間保持力
が改良され、長期にわたり安定にシートの接着を保持で
きる、接着シートを提供する。 【解決手段】 表面及びその表面と対向する裏面とを備
えるシート状の基材と、その基材の裏面に固定された接
着層とを備えてなる接着シートにおいて、前記接着層
が、粘着性ポリマーと熱架橋成分とを含んでなる接着剤
組成物からなり、前記粘着性ポリマーが、分子内に、ヒ
ドロキシル基と、フェニル基と、前記熱架橋成分と反応
する架橋官能基とを有するポリマーである接着シート。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明の1つの形態は、再帰
反射シート等の接着シート及び再帰反射標識における、
被着体に対する接着性能の改良に関する。本発明の接着
シートに含まれる接着層は、特定の粘着性ポリマー(ta
ckifyingpolymer)を含むので、長期にわたり安定にシ
ートの接着を保持できる。また、上記粘着性ポリマー
は、ポリカプロラクトンとの混和性(相溶性や親和性)
が改良されているので、この様な粘着性ポリマーをポリ
カプロラクトンと共に含む接着剤組成物は、改良された
接着性と熱剥離容易性とを同時に有する。すなわち、本
発明によれば、被着体に接着した後、長期にわたり安定
にシートの接着を保持できると同時に、所望の時に、前
記ポリカプロラクトンの融点よりも高い温度に加熱し
て、加熱する前の値よりも低い値にまで剥離強度を低下
させて剥離容易状態にすることが可能な接着シート(熱
剥離性接着シート)を提供することができる。この様な
熱剥離性接着シートは、たとえば、再帰性反射シート、
屋外看板フィルム、内装フィルムまたは電子部品の製造
工程で用いられるマスキングテープ(マスキングフィル
ム)として使用できる。また、熱剥離性接着シートの基
材としてシート状の再帰反射材を用い、再帰反射標識を
製造するのにも有用である。
【0002】
【従来の技術】たとえば、屋外で使用される接着シート
には、道路標識用の再帰反射シートなどがある。再帰反
射シートは、通常、シート状の再帰反射材からなる再帰
反射シートとして市販されている他、シート状再帰反射
材からなる基材の、被着体と接する側の面に接着剤を含
む接着層が固定されている、接着剤(接着層)付き再帰
反射シートとして市販されている。この様な再帰反射シ
ートの接着層は、通常、粘着性ポリマーを含有する接着
剤組成物からなる。
【0003】従来の再帰性反射シートでは、接着層の接
着剤として、たとえば特開昭56−125470号公報
に開示の接着組成物が使用されている。この接着剤組成
物は、粘着性ポリマー(アクリレート重合体等)100
質量部あたりに、20質量部以上の粘着性化樹脂(ロジ
ンまたは変性ロジン等)を添加して調製され、熱活性可
能な接着剤である。また、この接着剤組成物は、好適に
はフェノール樹脂を含有する。
【0004】一方、粘着性ポリマーの分子内にいろいろ
な官能基を導入して、接着剤組成物の接着性能を改良す
ることが、従来からいろいろ試みられている。たとえ
ば、粘着性ポリマー分子内にフェニル基を導入し、凝集
力を低下させることなく、無極性被着体に対する接着力
を向上させることが提案されている。この様な粘着性ポ
リマーを含有する接着剤としては、たとえば、特公平2
−30353号公報に開示のものがある。この公報に開
示の接着剤は、粘着性ポリマーとして、分子内に、
(i)炭素数4〜10のアルキル基を有するアクリルレ
ートモノマーと、(ii)炭素数3以下のアルキル基を有
するアクリルレートモノマー、または/及び酢酸ビニル
モノマーと、(iii)不飽和カルボン酸モノマーと、(i
v)フェノキシエチル(メタ)アクリレートモノマーと
を含有する出発モノマー混合物を共重合させて得たアク
リル系ポリマーを含む、感圧性接着剤である。なお、こ
の公報には、接着剤中に熱架橋成分を配合して、粘着性
ポリマーを架橋することは開示されていない。
【0005】さらに、粘着性ポリマーと結晶性ポリマー
とを組合せて含有する接着剤や接着剤組成物も知られて
いる。たとえば、特開2000−119624号公報
は、特定の粘着性ポリマーと、ポリカプロラクトン等の
ポリエステルとを含んでなる接着剤組成物を開示してい
る。ここに開示の接着剤組成物は、熱圧着して(加熱し
た後で圧着して、または加熱しながら圧着して)、被着
体に物品を接着することができる。また、ポリカプロラ
クトンは熱可塑性ポリマーとして有効に作用し、ポリカ
プロラクトンとの相溶性が良好な粘着性ポリマーと組合
せて、加熱するまでは、表面タックの無い接着剤も形成
できる。なお、ここに開示の粘着性ポリマーは、分子内
に、ヒドロキシル基とフェニル基との2つの官能基を有
することを必須としている。これらの官能基の作用によ
り、ポリカプロラクトンとの相溶性が良好になる。
【0006】また、米国特許5,412,035号(特表平6−
510548号に対応)には次の様な接着剤組成物(感
圧接着剤)が開示されている。すなわち、20℃から4
0℃の範囲の、少なくとも1つの温度で感圧接着剤とな
る感圧接着剤組成物であって、(1)組成物全固形分に
基づいて、少なくとも50質量%の高分子感圧接着剤成
分、および(2)組成物全固形分に基づいて、0質量%
より大きく50質量%未満の結晶性高分子からなる。結
晶性高分子は、通常、常温で非粘着性で、前記高分子感
圧接着剤成分と親密に混合されている。上記結晶性高分
子自体の融点Tm℃とすると、前記組成物中で測定した
とき結晶性高分子の融点Ta℃はTmより低く、Tm−Ta
は、好ましくは1℃〜9℃である。なお、Tmは、好ま
しくは20℃〜102℃であるとされている。前記組成
物は、Taよりも低いある温度での剥離強さP1[g/c
m]よりも、Taよりも高いある温度での剥離強さP2
[g/cm]が小さくなる、いわゆる熱剥離容易性を有
する接着剤である。なお、この公報には、結晶性高分子
として、ポリカプロラクトンが使用できることは開示さ
れていない。
【0007】一方、熱剥離容易性に関する記載は無い
が、米国特許5,192,612号(対応日本特許第30216
46号)には、感圧接着剤基礎樹脂(アクリル系ポリマ
ー等の粘着性ポリマー)と、脱粘着樹脂と脱粘着微粒子
とを含有する、接着剤組成物(感圧接着剤)が開示され
ている。脱粘着樹脂の具体的かつ好適な例として、約3,
000から約342,000の分子量を有する実質的にリニアなポ
リカプロラクトンが開示されている。ポリカプロラクト
ンは、常温(約15℃〜30℃)では非粘着性を示す結
晶性ポリマーである。
【0008】上記の感圧接着剤は、常温で、被着体に向
かって押圧して接着可能である。一方、上記の様な脱粘
着樹脂は、脱粘着粒子と共同して、常温での接着剤表面
のタックを効果的に軽減し、再剥離性を高めている。
「再剥離性」とは、最終的に接着する前に、接着−剥離
−再接着−再剥離が可能で、再位置決めまたは位置調整
が容易な性質である。再剥離性は、Repositionability
等の用語としても、当業界で知られている。なお、この
感圧接着剤に含まれる、感圧接着剤基礎樹脂の量は全体
の55〜98質量%、脱粘着樹脂の量は全体の1〜30
質量%が良いとされている。しかしながら、上記公報で
は、最終的に接着した後、使用中または使用完了後に剥
離することは想定されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、これまで知
られている感圧性接着剤は、屋外で使用される接着シー
トの接着層に使用される場合、長期にわたり安定にシー
トの接着を保持できる性質(保持力)には、いまだ改良
の余地があった。たとえば、80℃の様な比較的高温条
件での熱間保持力の改良がいまだ不十分であった。従来
の粘着性ポリマーを熱架橋成分で架橋して形成した感圧
性接着剤では、たとえば、10mm×10mmの接着面積で
もってアルミニウムからなる被着体の略鉛直面に接着
し、1.5Kgの荷重を鉛直方向にかけ続けた時、168
時間(1週間=10,080分)以上、接着を保持する
様なレベルの高い熱間保持力は得られなかった。
【0010】一方、熱剥離容易性の改良の観点からも、
従来技術を用いた接着シートではいまだ不十分であっ
た。たとえば、従来の熱剥離容易性接着剤を用いた場
合、次の様な特性においていまだ改良の余地があった。
すなわち、 (i)剥離容易状態を、所定の時間維持可能にする(剥
離容易時間を長くする)。 (ii)被着体に接着剤(粘着性ポリマー等のポリマー成
分)を残す(いわゆる、「糊残り」する)ことなく、き
れいに剥離可能にする。従来の接着シートでは、上記の
様な熱剥離容易効果は、被着体の温度が所定の温度を下
回ると、比較的すみやかに失われる。たとえば、加熱さ
れた後、2〜3分程度で、加熱する前とほぼ同じレベル
にまで接着剤の剥離強度が回復し、剥離が困難になる。
【0011】たとえば、この様な接着剤を、屋外用の接
着シート(外装用装飾シートや標識用反射シート等)の
接着層に使用し、冬季等の環境温度が比較的低い条件で
剥離作業を行う場合、シート全面を剥離する前に、被着
体の温度が所定の温度未満にまで冷却(自然冷却)され
てしまう。また、比較的大きな面積(通常400cm2
以上)を有する、標識用再帰反射シート等の接着シート
の場合には次の様な問題が生じる。すなわち、接着シー
トの上から被着体のある部分を加熱した後、別の部分を
加熱している間に、一度加熱したある部分では冷却が始
まる。また、全体を均一に加熱できた場合であっても、
ある部分で接着シートを剥離している間に、別の部分で
冷却が始まる。すなわち、剥離可能時間が短い場合、剥
離作業が困難になる。
【0012】一方、比較的長期間(数ヶ月以上)使用し
た後、接着シートを被着体から剥離することが要求され
る場合がある。この様に長期間使用し続けた後、物品を
被着体から剥離する場合、接着層が凝集破壊し、被着体
に糊残りする傾向が強い。この様な糊残りは、被着体を
リサイクルする場合、特に防止されるべきである。とこ
ろが、前掲の公報には、上記の様な課題(i)及び(i
i)を解決するための具体的な手段については、何ら開
示されていない。さらに、前掲の公報では、剥離した後
に、再接着可能な熱剥離容易性接着剤については開示さ
れていない。この様に、剥離後に接着シートが再接着可
能であることは、被着体である標識用基板等の基板の交
換やリサイクル、基板面の接着位置の変更が必要な場合
に重要な特性である。この様な用途では、圧着操作のみ
で容易に再接着が可能な接着剤が特に有利である。
【0013】したがって、本発明の第1の目的は、80
℃の様な比較的高温条件での熱間保持力が改良され、長
期にわたり安定にシートの接着を保持できる、接着シー
トを提供することにある。また、本発明の第2の目的
は、(I)被着体に接着した後、所望の時に、所定の温
度に加熱して、加熱する前の値よりも低い値にまで剥離
強度を低下させて剥離容易状態にし、(II)その剥離容
易状態を所定の時間維持可能で、(III)被着体に糊残
りすることなく剥離可能で、かつ、(IV)剥離した後
に、容易に被着体(交換後の別の被着体も含む。)に再
接着可能である、熱剥離容易性を有する接着シートを提
供することにある。さらに、本発明の第3の目的は、標
識基板の再利用、リサイクル可能な再帰反射標識を提供
することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、第1主面及び
その第1主面と対向する第2主面とを備える基材と、そ
の基材の第2主面に固定された接着層とを備えてなる接
着シートにおいて、前記接着層が、粘着性ポリマーと熱
架橋成分とを含んでなる接着剤組成物からなり、前記粘
着性ポリマーが、分子内に、(a)ヒドロキシル基と、
(b)フェニル基と、(c)前記熱架橋成分と反応する
架橋官能基とを有するポリマーであることを特徴とす
る、接着シート;前記接着剤組成物が、ポリカプロラク
トンをさらに含有し、そのポリカプロラクトンの融点よ
りも高い温度において前記ポリカプロラクトンと前記粘
着性ポリマーとが相溶し、それにより前記接着剤組成物
は熱剥離容易性を有する、上記本発明の接着シート;お
よび標識用基板と、その標識用基板の少なくとも1つの
面に前記接着層を介して接着された、基材がシート状再
帰反射材である接着シートを備えてなり、前記再帰反射
材表面に標識イメージが配置されている、再帰反射標識
を提供し、上記課題を解決する。
【0015】
【発明の実施の形態】(接着シート)本発明の接着シー
トの接着層は、粘着性ポリマーと熱架橋成分とを含んで
なる接着剤組成物からなり、前記粘着性ポリマーが、分
子内に、(a)ヒドロキシル基と、(b)フェニル基
と、(c)前記熱架橋成分と反応する架橋官能基とを有
するポリマーであることを特徴としている。粘着性ポリ
マーがこの様な化学組成を有し、かつ架橋されているの
で、80℃の様な比較的高温条件での熱間保持力が改良
され、長期にわたり安定にシートの接着を保持できる。
一方、粘着性ポリマーが、上記の様な化学組成を有する
ので、ポリカプロラクトンの融点よりも高い温度におい
てポリカプロラクトンと粘着性ポリマーとが相溶可能で
あり、かつ、前記熱架橋成分により架橋可能である。し
たがって、前記接着剤組成物がポリカプロラクトンをさ
らに含有する場合、本発明の接着シートは、改良された
熱剥離容易性を有する接着シートとしても機能する。
【0016】上記改良された熱剥離容易性を有する接着
シートの接着層は、<1>ポリカプロラクトンを含み、
<2>粘着性ポリマーが、ポリカプロラクトン自体の融
点以上の温度に加熱した時に前記ポリカプロラクトンと
相溶可能であり、<3>かつ、粘着性ポリマーが架橋さ
れていることを特徴とする。これにより、 所望の時に、所定の温度に加熱して、加熱する前の値
よりも低い値にまで剥離強度が低下し、基材を破壊する
ことなく剥離容易状態にする、熱剥離容易性を高めるこ
と、 剥離容易状態を維持可能にし、剥離容易時間を所定の
時間まで長くすること、 被着体に糊残りすることなく剥離できる、剥離清浄性
(Removal Cleanliness)を高めること、及び 剥離した後に、被着体に向けて圧着することにより再
接着でき、その後、熱剥離する前と同様に、長期にわた
り接着を保持できる様に、再接着性を高めることが可能
な、熱剥離容易性を接着シートに付与することができ
る。
【0017】上記<1>の要件、すなわち、ポリカプロ
ラクトンを含むことは、特に、上記に効果的に寄与す
る。ポリカプロラクトンは、ポリカプロラクトン自体の
融点以上の温度に加熱されると容易に溶融し、前記粘着
性ポリマーと相溶し、剥離容易性を高める。また、ポリ
カプロラクトンは非粘着性ポリマーであるので、剥離清
浄性を効果的に高め、剥離した後の被着面に糊残りがな
い様にできる。上記<2>の要件は、特に、上記及び
に効果的に寄与する。すなわち、上記の様な化学組成
を有する粘着性ポリマーが、溶融したポリカプロラクト
ンと相溶可能であるので、ポリカプロラクトンの、加熱
後の結晶化(再結晶化)を遅らせることができる。ま
た、接着層中でのこの様なポリカプロラクトンの溶融−
再結晶は、実質的に可逆的な物理反応(現象)である。
したがって、加熱後、再接着する時または再接着した
後、接着層が、加熱前と実質的に同じ相状態に戻る。し
たがって、初期に(最初に)使用する時と同様にして再
接着できる。また、再接着後に、再度、加熱して剥離す
ることもできる。
【0018】なお、本発明による熱剥離容易性を有する
接着シートは、好ましくは、加熱した後、または加熱し
ながら圧着することより接着するのが良い。さらに、熱
剥離した後、接着層が冷却されない内に、被着体への再
接着操作を行っても良い。上記<3>の要件は、特に、
上記及びに効果的に寄与する。架橋により凝集力が
効果的に高められるので、剥離の際に、粘着性ポリマー
が被着体に残ることが効果的に防止される。また、剥離
容易状態では、ポリカプロラクトンは、架橋された粘着
性ポリマーと相溶している。したがって、ポリカプロラ
クトンの、溶融−再結晶反応を妨げる様なポリカプロラ
クトン自体の架橋を必要とすること無く、接着層全体と
しての糊残りを効果的に防止できる。また、再接着後の
保持力を効果的に高め、熱剥離する前と同様に、長期に
わたり接着を保持できる。
【0019】なお、この様な観点から、接着剤組成物が
架橋剤(架橋成分)をさらに含有する場合、ポリカプロ
ラクトンとは実質的に化学反応しない架橋成分を使用す
るのが好ましい。ポリカプロラクトンは、通常、分子両
末端にヒドロキシル基を有するので、粘着性ポリマー
は、その架橋成分と反応可能な架橋官能基として、ヒド
ロキシル基以外の官能基(たとえば、カルボキシル基)
を、分子内に有するのが良い。この様な官能基と架橋成
分については、詳細に後述する。
【0020】接着シートが、上記の様な熱剥離容易性を
有する場合、粘着性ポリマーの含有割合は、接着剤組成
物全質量を基礎として48〜90質量%の範囲であり、
ポリカプロラクトンの含有割合は、接着剤組成物全質量
を基礎として9〜51質量%の範囲であるのが好まし
い。粘着性ポリマーの含有割合が48質量%未満である
と、特に上記の効果が得られないおそれがあり、反対
に90質量%を超えると、特に上記及びの効果が得
られないおそれがある。一方、ポリカプロラクトンの含
有割合が9質量%未満であると、特に上記〜の効果
が得られないおそれがあり、反対に51質量%を超える
と、特に上記の効果が得られないおそれがある。これ
らの理由から、粘着性ポリマーの含有割合は、好適には
58〜85質量%、特に好適には60〜80質量%であ
る。また、ポリカプロラクトンの含有割合は、好適には
14〜41質量%、特に好適には19〜39質量%であ
る。また、本発明による熱剥離容易性を有する接着シー
トを、感熱性接着シートとして用いる場合、好適なポリ
カプロラクトンの含有割合は19〜51質量%で、好適
な粘着性ポリマーの含有割合は48〜80質量%であ
る。
【0021】(再帰反射シート)上記の様な、改良され
た熱剥離容易性を有する接着シートは、標識等において
使用される再帰反射シートとして有用に利用できる。す
なわち、本発明による再帰反射シートは、基材がシート
状再帰反射材であり、再帰反射材の反射面と反対側の面
に固定された接着層が、上記熱剥離容易性を有する接着
剤組成物からなる、接着層付き再帰反射シートである。
【0022】基材としての再帰反射材(retroreflectiv
e material)としては、市販の再帰反射シート等のシ
ート状再帰反射材が利用できる。前述の様に、市販の再
帰反射シートには、接着層を持つものと、接着層を持た
ないシート状再帰反射材からなるものとがある。接着層
付き再帰反射シートを利用する場合、接着層を除いた部
分を、シート状再帰反射材として使用できる。この様な
シート状再帰反射材としては、カプセル化ビーズレンズ
型(encapsulated beads lens type;通常、単に「カプ
セルレンズ型」とも呼ぶ。)、プリズムレンズ型等が使
用できる。
【0023】カプセル化ビーズレンズ型再帰反射材は、
複数の透明ビーズレンズが表面に配置された結合層を備
え、それらビーズレンズの光入射表面を露出させ、光透
過性被覆シートと結合層との間にそれらビーズレンズを
カプセル封入した(encapsulated)構造を有する。一
方、プリズムレンズ型再帰反射材は、複数のキューブコ
ーナープリズム等のプリズムレンズが表面に配置された
光透過性被覆シートを備え、それらプリズムレンズの表
面を露出させ、光透過性被覆シートと結合層との間にそ
れらプリズムレンズをカプセル封入した構造を有する。
また、カプセル封入構造以外の封入レンズ構造を有する
タイプも使用できる。
【0024】この様なシート状再帰反射材を備える市販
の再帰反射シートの具体例としては、たとえば、3M
(米国)社製プリズムレンズ型反射シート「品名:ダイ
ヤモンドグレードシリーズ」、同社製カプセルレンズ型
反射シート「品名:ハイインテンシティグレードシリー
ズ」、同社製埋設封入レンズ型反射シート「品名:エン
ジニアグレードシリーズ」等の商品名で入手できるもの
を挙げることができる。
【0025】上記の様なカプセル封入構造を有する再帰
反射材では、上記光透過性被覆シートが表面及び裏面を
有し、その光透過性被覆シートの裏面側に所定の間隔を
もって離間配置された上記結合層と、上記光透過性被覆
シートとが部分的に接着される。すなわち、上記結合層
は、上記光透過性被覆シートの裏面と対向する表面を有
し、その結合層表面に配置された結合部壁(または、
「シールレッグ」とも呼ばれる。)によって、上記結合
層と、上記光透過性被覆シートとが部分的に接着されて
いる。結合部壁は、結合層と被覆シートとの間に複数の
カプセルを形成する仕切り壁である。たとえば、カプセ
ル化ビーズレンズ型では、複数の透明ビーズが、上記カ
プセルの中で結合層から部分的に露出する状態で埋設さ
れ、そのカプセル中に透明ビーズがカプセル封入されて
いる。透明ビーズ表面は、カプセル内の気体(通常は空
気)との界面を有する。透明ビーズは、通常1.4〜
3.0の範囲の屈折率を有するガラスビーズである。ま
た、通常、透明ビーズの焦点曲面に大略沿って配置され
た反射層を備えている。
【0026】上記の様なカプセル封入構造を有する再帰
反射反射体を基材として含む、接着層付き再帰反射シー
ト(接着シート)では、基材が、結合層と部分的にしか
接着されていない被覆シートを含んでいる。したがっ
て、被着体に再帰反射シートを接着した後、剥離する際
に、基材が破損しやすい。この様な部分的接着部位を含
む基材を備える接着シートは、前述の様な熱剥離容易性
を有する接着層を介して、被着体に接着するのが特に好
ましい。これにより、所望の時に、所定の温度に加熱し
て、加熱する前の値よりも低い値にまで剥離強度を低下
させ、基材を破損させることなく剥離可能である。ま
た、被着体に糊残りすることなく剥離できるので、被着
体の再利用やリサイクルが可能となる。さらに、剥離し
た後、被着体に向けて圧着することにより再接着でき、
その後、熱剥離する前と同様に、長期にわたり接着を保
持できるので、被着体の交換を容易に行うことができ
る。再帰反射材を基材として用いた場合、接着層が固定
される再帰反射材の部分は、通常、前述の様な結合層等
の樹脂層である。この様な樹脂層の樹脂としては、たと
えば、アクリル樹脂、アクリル変性樹脂(アクリル化ポ
リウレタン等)、ポリエステルが良い。アクリル樹脂及
びアクリル変性樹脂は、本発明で使用される接着剤組成
物からなる接着層との密着性が高いので、特に好適であ
る。また、接着層との密着性を特に高めたい場合は、プ
ライマー層を配置したり、コロナ処理等の物理的表面処
理を行えば良い。上記の樹脂層は、本発明の効果を損な
わない限り、顔料等の着色剤を含むこともできる。
【0027】(再帰反射標識)本発明の接着シートを再
帰反射シートとして用いる場合、標識基板からなる被着
体に接着し、道路標識等の再帰反射標識として利用する
のが好ましい。再帰反射標識は、通常、屋外で使用され
るので、長期にわたり安定にシートの接着を保持できる
のが良い。また、資源の再利用等のエコロジー的な要求
から、標識基板の再利用、リサイクルが望まれている。
この様な場合は、接着層が、前述の熱剥離容易性を有す
る接着剤を含有するのが特に好ましい。
【0028】本発明による再帰反射標識は、(I)標識
用基板と、(II)その標識用基板の少なくとも1つの面
に、前述の熱剥離容易性を有する接着層を介して接着さ
れた再帰反射シートを備える。その再帰反射シートの再
帰反射材表面には、標識イメージが配置される。標識イ
メージは、光透過性着色材による印刷や、光透過性接着
フィルムを、再帰反射シート表面に接着し、形成するこ
とができる。また、標識用基板は、通常、アルミニウム
板であるが、本発明の効果を損なわない限り、その他の
材料からなる基板も利用できる。
【0029】本発明による熱剥離容易性の接着層を有す
る再帰反射シートは、シートを剥離したい時には、加熱
することにより、たとえ標識基板とシートとが室温(約
25℃)まで冷えたとしても、所定時間は、アルミニウ
ム基板に糊残りすることのない剥離モードで、容易に剥
離可能である。また、剥離後、基板に再接着した後、室
温で所定の時間置いておけば、屋外でもシートが剥離す
ることがないレベルの、強固な接着力を再現することも
できる。この様な再帰性反射シートは、通常、熱圧着装
置を用いて、標識基板に接着するのが好ましい。標識と
して求められるレベルの強固な接着力(剥離強度)が、
容易に得られるからである。熱圧着温度は通常50〜9
0℃以上、圧着時間は通常1〜5分である。市販の加熱
圧着装置の具体例としては、たとえば、3M(米国)社
製の真空加熱圧着装置「商品名:ヒートランプバキュー
ムアプリケーター(以下、HLVAと略することもあ
る。)等を挙げることができる。
【0030】上記の様にして熱圧着した後、一定の時間
(たとえば、30分以上)室温で放置した後に、再帰反
射シートを剥がそうとすると、前述の光透過性被覆シー
トのみが剥離するモードでシートが剥離される。このモ
ードでは、基板に被覆シート以外の残りの部分が残って
しまう。一方、熱剥離処理後(詳細は後述する。)、た
とえ基板とシートとが室温まで冷えてしまった後でも、
所定の時間(たとえば、5分間)は、基板と接着層との
界面で剥離するモードで容易に剥離可能である。本発明
において使用される熱剥離容易性の接着剤組成物は、通
常、室温(約25℃)ではほとんどタックを持たない。
したがって、一度位置合わせのためにハンドローラーな
どで仮貼り付けを行った直後でも、再帰反射シートを容
易に剥離でき、再位置決めが可能である。
【0031】(ポリカプロラクトン)本発明において用
いられるポリカプロラクトンは、常温(約25℃)で実
質的に非粘着性であり、かつ加熱により溶融可能な結晶
性を有するものであれば良い。ポリカプロラクトンと
は、(i)カプロラクトンを含有する出発物質を重合し
て得られるポリカプロラクトン、または、(ii)カプロ
ラクトンの開環重合により得られた重合単位(ユニッ
ト)を、分子内に含むポリカプロラクトンである。粘着
性ポリマーとポリカプロラクトンとを含む組成物では、
ポリカプロラクトンの結晶化により、常温では粘着性を
ほとんど無くすこともできる。しかしながら、常温で、
または加熱しながら被着体に対して圧着することで、所
定の接着力を発現することができる。なお、より強固な
接着が必要な場合、熱圧着するのが好ましい。
【0032】上記ポリカプロラクトンの融点は、分子量
によっても異なるが、通常30〜70℃であり、好適に
は35〜65℃であり、特に好適には40〜60℃であ
る。上記ポリカプロラクトンの分子量は、所定の接着力
が発揮される範囲であれば良く、重量平均分子量が、通
常1,000〜300,000、好ましくは1,500
〜250,000、特に好ましくは2,000〜50,0
00の範囲である。分子量が小さすぎると、接着力が低
下するおそれがあり、反対に大きすぎると、粘着性ポリ
マーとの相溶性が低下するおそれがある。この様な相溶
性の低下は、熱剥離時の剥離強度を低くすることを困難
にする傾向があり、基材が前述の様な再帰反射材の場
合、基材を破損することなく熱剥離することを困難にす
るおそれがある。なお、接着層は、本発明の効果を損な
わない限り、ポリカプロラクトン以外の結晶性ポリマー
を含有しても良い。また、本発明の効果を損なわない限
り、ジイソシアネート化合物とポリカプロラクトンとが
反応して、鎖延長されたウレタン変成ポリマーを形成し
ていても良い。
【0033】(粘着性ポリマー)本発明で用いられる粘
着性ポリマーは、常温(約25℃)で粘着性を示すポリ
マーである。また、前述の様な官能基を分子内に有する
ので、前記ポリカプロラクトン自体の融点以上の温度に
加熱した時に、前記ポリカプロラクトンと相溶可能であ
って、かつ架橋可能なポリマーである。なお、接着剤組
成物を、熱剥離容易性接着剤として使用する場合も、粘
着性ポリマーは架橋されている必要がある。また、粘着
性ポリマーがアクリル系ポリマーである場合、電子線等
の放射線を照射してラジカル架橋することもできる。粘
着性ポリマーが、ポリカプロラクトン自体の融点以上の
温度に加熱した時に、ポリカプロラクトンと相溶可能で
あるかどうかは、接着剤組成物の透明度、すなわちヘイ
ズの変化(低下)で判定できる。たとえば、粘着性ポリ
マーとポリカプロラクトンとを含有する接着剤組成物か
らなり、厚みが30〜60μmの範囲のフィルム接着剤
(フィルム状の接着剤)について、ポリカプロラクトン
の融点以上に加熱した時と、ポリカプロラクトンの融点
未満(常温、約25℃で良い。)の時とを比べる。常温
では、ポリカプロラクトンは、通常、複数の微細な結晶
を形成し、粘着性ポリマーを含むマトリックス中に分散
しているので、透明度は比較的高いが、色差計を用いて
測定されたヘイズは少なくとも5%以上(通常20%以
下)である。一方、ポリカプロラクトンが融解し、粘着
性ポリマーと相溶した状態ではヘイズが低下し、フィル
ム接着剤ほとんど透明になる。また、ポリカプロラクト
ンが融解しても、粘着性ポリマーと相溶しない場合は、
ヘイズはほとんど変化しない。この様な場合、ヘイズが
小さいほど相溶性が良いことを示す。したがって、色差
計を用いて測定されたヘイズは、ポリカプロラクトンと
粘着性ポリマーとが相溶した状態では好適には3%以
下、特に好適には2%以下である。
【0034】また、ポリカプロラクトンと粘着性ポリマ
ーとを含有する溶液が透明であるか否かによっても、簡
易的にこれら2つのポリマー成分の相溶性について判定
できる。すなわち、粘着性ポリマーとポリカプロラクト
ンとの相溶性が良好であるための最低条件の1つは、粘
着性ポリマーを溶解して含む透明な第1溶液と、ポリカ
プロラクトンを溶解して含む透明な第2溶液とを混合し
た時、透明な混合液になることである。
【0035】また、偏光顕微鏡を用いて、偏光の透過性
を調べることによっても確認することができる。良く知
られている様に、2枚の偏光板の偏光軸を直交させる
と、光は透過しなくなり、視野がほとんど真っ暗にな
る。この様に直交させた2枚の偏光板の間に、本発明の
接着剤組成物からなるフィルム接着剤を置いて観察す
る。常温では、ポリカプロラクトンの微結晶は、フィル
ム接着剤に入射した光の偏光面を回転させ、2枚の偏光
板を透過させる。結晶軸の方向は、通常ランダムである
ので、光の偏光面をちょうど90度回転させて2枚の偏
光板を透過する結晶と、光が通り難い結晶とが混在す
る。ポリカプロラクトンの微結晶が小さく分散している
ほど、粘着性ポリマーとの相溶性が高いことを示す。し
たがって、互いのポリマーの相溶性が高いほど結晶サイ
ズが小さくなって、顕微鏡視野(100〜200倍)内
ではフィルム全体がうすく明るく見える。互いのポリマ
ーの相溶性が低い場合、結晶サイズが大きく、暗い下地
に点在する明るい点として結晶が視認可能である。な
お、ポリカプロラクトンが融解し、粘着性ポリマーと相
溶した状態では、フィルム接着剤に含まれるこれらポリ
マーの混合物は、光学的に等方性であるので、常温の場
合に比べて暗くなる。
【0036】粘着性ポリマーは、たとえば、アクリル系
ポリマー、ニトリル−ブタジエン系共重合体(NBR
等)、スチレン−ブタジエン系共重合体(SBR等)、
ポリウレタン、シリコーン系ポリマー等である。粘着性
ポリマーは、これらのポリマー1種単独、または2種以
上の混合物から構成される。前述の様に、粘着性ポリマ
ーは、分子内に(a)ヒドロキシル基と(b)フェニル
基とを必須官能基として有する。また、架橋性を付与す
るために、(c)架橋官能基も必須官能基として有する
のが好ましい。架橋官能基は、電磁波(紫外線を含
む)、電子線などの照射、または加熱により、架橋反応
可能な官能基であり、通常、接着剤組成物に含有させる
架橋成分と反応する官能基である。架橋官能基、及び架
橋成分の、詳細については後述する。
【0037】分子内に上記の(a)〜(c)の必須官能
基を含むポリマーは、分子内にヒドロキシル基を有する
モノマーと、分子内にフェニル基を有するモノマーと、
分子内に架橋官能基を有するモノマーとを含む混合モノ
マー(出発モノマー)を用いて重合して得ることができ
る。あるいは、重合後、分子内のカルボキシル基を反応
させて、ヒドロキシル基およびフェニル基に変換しても
良い。
【0038】ここで、本発明で用いることができるアク
リル系ポリマーの好適な1例について説明する。この様
なポリマーは、(A)分子内にヒドロキシル基を有する
(メタ)アクリルモノマーと、(B)分子内にフェニル
基を有する(メタ)アクリルモノマーと、(C)分子内
に架橋官能基を有する(メタ)アクリルモノマーと、
(D)炭素数4〜10のアルキル基を持つアルキルアク
リレートとを含んでなる混合モノマーを重合して得たア
クリル系ポリマーである。この様なポリマーは、通常の
方法、たとえば、溶液重合等により共重合させて調製す
ることができる。
【0039】上記(A)成分としては、たとえば、アク
リル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキ
シプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシメチル、メタク
リル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロ
キシプロピル、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピ
ルアクリレート等を挙げることができる。この(A)成
分としては、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル
アクリレート等の、分子内にヒドロキシル基とフェニル
基との両方を含むモノマーが好適である。これにより、
粘着性ポリマーのポリカプロラクトンに対する相溶性を
特に効果的に高めることができる。
【0040】上記(B)成分としては、たとえば、フェ
ノキシエチルアクリレート、フェノキシプロピルアクリ
レート等のフェノキシ基をフェニル基として有するもの
が好ましい。
【0041】上記(C)成分としては、たとえば、(メ
タ)アクリル酸等の不飽和酸、グリシジル(メタ)アク
リレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリルモノマー
等の熱架橋官能基を有するものが使用できる。上記
(D)成分としては、たとえば、アクリル酸n−ブチ
ル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソオクチル、
アクリル酸2−エチルヘキシル等を挙げることができ
る。なお、上記(D)成分は、分子内に前記(a)〜
(c)の官能基を持たない。
【0042】上記の様な粘着性ポリマー全体の重合単位
に占める、(A)成分および(B)成分に由来する単位
の合計の割合(質量パーセンテージ)は、通常40〜9
0質量%、好適には41〜85質量%、特に好適には4
2〜80質量%である。上記(A)成分および(B)成
分に由来する単位の合計量が少なすぎると、ポリカプロ
ラクトンとの相溶性が低下するおそれがあり、反対に多
すぎて、他の官能基を有する成分が少なすぎると、架橋
性や粘着性が低下し、前述の様な所定の性能が効果的に
高められないおそれがある。たとえば、架橋性の低下
は、糊残り防止効果を損なうおそれがある。また、粘着
性ポリマー自体の粘着性の低下は、被着物と被着体との
圧着により接着できること、すなわち、圧着性能を低下
させるおそれがある。
【0043】また、ポリマー全体の重合単位に占める、
(B)成分に由来する単位の割合は、通常0.5モル%
以上、好適には1モル%以上、特に好適には5〜25モ
ル%である。(B)成分に由来する単位が少なすぎる
と、ポリカプロラクトンとの相溶性が低下するおそれが
あり、反対に(B)成分に由来する単位が多すぎると、
圧着性能が低下するおそれがある。一方、粘着性ポリマ
ー全体の重合単位に占める、上記(C)成分に由来する
単位の合計の割合(質量比)は、通常0.5〜15質量
%、好適には0.7〜10質量%、特に好適には1〜7
質量%である。
【0044】上記粘着性ポリマーは、本発明の効果を損
なわない限り、上記必須官能基(ヒドロキシル基、フェ
ニル基、及び架橋官能基)を含むポリマーに加えて、こ
れらの官能基を持たないポリマーと併用することもでき
る。しかしながら、粘着性ポリマー全体(総質量)に占
める、これらの必須官能基を含むポリマーの割合は、通
常50質量%以上、好適には60質量%以上、特に好適
には70質量%以上である。
【0045】本発明で用いられる粘着性ポリマーの分子
量は、所定の接着力が発揮される範囲であれば良く、通
常は重量平均分子量で10,000〜1,000,00
0の範囲である。また、従来の感圧性接着剤と同様に、
粘着性ポリマーとともに粘着付与剤を使用することもで
きる。
【0046】(架橋官能基)粘着性ポリマーの架橋官能
基は、(a)ヒドロキシル基とは異なる官能基であっ
て、熱架橋成分と反応可能なものが良い。好適には、架
橋官能基が、カルボキシル基またはエポキシ基の少なく
ともいずれか一方を含むのが良い。また、両方を同時に
含んでいても良い。この様な場合、好適な熱架橋成分と
しては、粘着性ポリマーの架橋官能基である、カルボキ
シル基または/およびエポキシ基と反応可能な、2以上
の架橋用官能基を分子内に有する化合物であれば特に限
定されない。この様な化合物は、通常モノマー又はオリ
ゴマーである。
【0047】粘着性ポリマーの架橋官能基と、熱架橋成
分との好適な組合せとして、次のものを挙げることがで
きる。 架橋官能基がカルボキシル基の場合、熱架橋成分とし
ては、ビスアミド系架橋剤またはエポキシ樹脂が好適で
ある。 架橋官能基がエポキシ基の場合、熱架橋成分として
は、分子内にカルボキシル基を有するロジン(カルボキ
シルロジン)が好適である。架橋官能基がカルボキシル
基およびエポキシ基のいずれの場合も、粘着性ポリマー
のヒドロキシル基とフェニル基の持つ、ポリカプロラク
トンとの相溶化作用を妨げることなく、熱架橋を可能に
することができる。また、接着剤としての耐熱性や糊残
り防止効果を高めるのに十分な程度の架橋密度を、熱架
橋反応により容易に達成することができる。なお、上記
の場合、カルボキシルロジンを併用することができ、
また、上記の場合、エポキシ樹脂または/及びビスア
ミド系架橋剤を併用することができる。
【0048】(架橋成分)エポキシ樹脂は、粘着性ポリ
マーのカルボキシル基と反応し、粘着性ポリマーを熱架
橋する様に作用する。エポキシ樹脂としては、たとえ
ば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノール
F型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹
脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が使用でき
る。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、通常70〜40
0、好適には80〜300である。ビスアミド系架橋剤
としては、たとえば、イソフタロイルビス(2−メチル
アジリジン)等の二塩基酸のビスアジリジン誘導体が利
用できる。ビスアミド系架橋剤は、カルボキシル基を有
する粘着性ポリマーと常温で反応可能で、十分な架橋密
度を容易に得ることができる点で特に好ましい。
【0049】一方、粘着性ポリマーが分子内にエポキシ
基を有する場合、架橋成分として好適には、カルボキシ
ロジンである。カルボキシロジンは、分子内にカルボキ
シ基を有し、粘着性ポリマーと反応して、粘着性ポリマ
ーを熱架橋する様に作用する。カルボキシロジンとして
は、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、また
はそれらを化学変性したもの(たとえば、重合ロジン)
が使用できる。 なお、カルボキシロジンは、1種単独
でまたは2種以上の混合物として使用することができ、
また、本発明の効果を損なわない限り、カルボキシル基
を実質的に持たないロジンを併用することもできる。上
記の様な架橋成分を用いる場合の接着剤全体(総質量)
に占める割合は、通常0.01〜20質量%、好適には
0.05〜10質量%である。また、エポキシ樹脂等の
架橋成分の反応促進剤を添加することもできる。これに
より、加熱による架橋条件をマイルドにすることもでき
る。架橋成分は、上記のものに限定されず、架橋官能基
の種類や、架橋条件にしたがって選択できる。
【0050】(接着シートの製造方法)前述の接着剤組
成物は、通常の混合操作により、各原料を均一に混合し
て調製できる。たとえば、粘着性ポリマー、ポリカプロ
ラクトン、架橋剤、溶剤等を、ホモミキサ−、プラネタ
リーミキサー等の混合装置で混合し、各材料を均一に溶
解または分散させ、液体の組成物を調製することができ
る。この液体の組成物は、通常、前記粘着性ポリマーを
溶解して含む第1溶液と、前記ポリカプロラクトンを溶
解して含む第2溶液とを混合し、前記粘着性ポリマーと
前記ポリカプロラクトンとを均一に溶解して含む前駆体
溶液として調製でき、この前駆体溶液を乾燥し、前述の
接着剤組成物を形成することができる。この様にすれ
ば、結晶性のポリカプロラクトンと、それと相溶性が良
好な粘着性ポリマーとの特異なモルフォロジー(相互連
結構造)を形成でき、前述の様な性能(常温での非粘着
性および高接着力)を、特に効果的に発揮させることが
できる。なお、架橋成分を添加する場合、通常、架橋成
分を含む第3溶液を上記前駆体溶液に添加する。
【0051】たとえば、上記の様にして調製された前駆
体溶液を、基材上に塗布、乾燥し、接着剤組成物からな
る接着層を形成できる。塗布手段には、ナイフコータ
ー、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター等の
公知の手段が使用できる。上記基材としては、後述する
様なものが使用できる。また、基材に代えて、ライナー
の上に塗布、乾燥して接着層を形成し、このライナー付
き接着層と、基材とをラミネート法により積層し、接着
シートを形成することもできる。接着層を形成する際の
乾燥は、通常60〜180℃の温度にて行われる。乾燥
時間は、通常、数十秒から数分である。接着層の厚み
は、通常5〜1,000μm、好適には10〜500μ
m、特に好適には15〜100μmである。
【0052】接着シートの基材としては、前述のシート
状再帰反射材の他、従来から接着シートに用いられてい
る基材(支持体)、たとえば、紙、金属フィルム、ポリ
マーフィルム等が使用できる。フィルムのポリマーとし
ては、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、アクリル系ポリマ
ー、ポリエステル(PET等)、ポリウレタン、ポリオ
レフィン系ポリマー(エチレン系共重合体を含む。)等
の合成ポリマーが使用できる。なお、基材の厚みは、通
常5〜500μm、好適には10〜300μmである。
基材は、可視光や紫外線を透過するものであっても良い
し、光を反射するものでも良い。また、着色されたもの
や、印刷等ににより装飾が施されたものであっても良
い。その場合、本発明の接着剤組成物からなる接着層に
含む接着シートは、装飾シートやマーキングフィルムと
して有用である。接着層の接着面は、通常ライナーで保
護しておく。ライナーは、通常、紙、プラスチックフィ
ルム、またはこれら両者を積層したフィルムから形成さ
れる。
【0053】本発明による接着シートは、それを適当な
被着体に接着して使用する場合、たとえば、被着体に積
層した後、1〜50kg/cm2(約0.1〜4.9MP
a)の範囲の加圧条件で、圧着操作を用いて接着を完了
させることができる。また、圧着の際に、加熱し、冷却
(自然冷却)して接着力を高めることもできる。被着体
としては、(1)アルミニウム、ステンレス、銅、亜鉛
鋼板等の金属、(2)ポリイミド、アクリル樹脂、ポリ
ウレタン、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル等
の樹脂、(3)セラミック、ガラス等の無機酸化物材料
等から形成された表面、すなわち被着面を有するものが
使用できる。また、被着面として塗装面を有するものも
使用できる。
【0054】本発明による熱剥離容易な接着シートで
は、前記粘着性ポリマーとポリカプロラクトンとを含有
する接着剤組成物からなる接着層を備える。したがっ
て、常温での粘着性をほとんど無くすこともでき、スラ
イダビリティ(ease of sliding)を良好にすることが
できる。スライダビリティが良好な場合、接着操作にお
いて被着体に対して位置決めが特に容易である。一方、
位置決め後、そのまま圧着、または加熱圧着して冷却
し、接着可能である。この様な位置決め容易で、かつ圧
着可能な接着シートは、比較的大面積(通常400cm
2以上)の接着面を有する接着シート、たとえば、内装
または外装用の化粧シート(装飾シート)や、比較的大
型の道路標識用の再帰反射シートとして好適に使用でき
る。また、被着体に対して所望の剥離強度をもって接着
(密着)でき、しかも、所望の時に加熱して糊残り無く
剥離可能であるので、アプリケーションテープ(または
フィルム)や、電子部品製造用のマスキングテープ(ま
たはフィルム)としても利用できる。
【0055】熱剥離容易な接着シートの場合、接着層と
基材との間の密着性は、可及的に強固であるのが好まし
い。接着層と基材との間の密着性が弱いと、接着シート
を剥離する際に、被着面に接着層の一部または全部を残
してしまうからである。基材と接着層との間の密着性を
高めるには、基材の接着層配置面に、プライマーを適用
するのが良い。また、コロナ処理、プラズマ処理、紫外
線・電子線照射に代表される物理的表面処理を行うこと
もできる。
【0056】また、基材(支持体)を形成するフィルム
のポリマーとして、少なくともポリウレタン及びエチレ
ン−アクリル酸共重合体のうちのいずれか一方を含んで
なるのが好ましい。これらのポリマーフィルムは、プラ
イマーを利用することなく、前述の接着剤組成物からな
る接着層に対して、特に強固に密着可能だからである。
さらに、接着層には、本発明の効果を損なわない限り、
従来公知の添加剤を加えることができる。たとえば、粘
度調整剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化
防止剤、顔料、防黴剤等の無機粒子、粘着性ポリマーた
は非粘着性のゴム系ポリマーからなる弾性微小球、粘着
付与剤(Tackifier)、架橋反応を促進するための触媒
等である。
【0057】熱剥離を行う場合は、通常50〜120℃
の温度で、30秒〜5分間加熱すれば良い。また、本発
明の接着剤組成物を接着層に用いているので、剥離のた
めに加熱した後、少なくとも5分以上の剥離容易時間を
有する。なお、剥離容易状態は、被着体及び接着層が常
温(約25℃)付近まで冷却された後も持続可能である
が、冷却後約15分で接着力(剥離強度)が再び上昇
し、再接着を完了することができるのが好ましい。熱剥
離操作の際に、被着体または/及び接着シートを加熱す
るために、アイロン、ドライヤー、赤外線(遠赤外線)
ランプ等の加熱装置を用いることができる。また、基材
が金属箔を含む場合、電磁誘導加熱法によって接着シー
トを加熱することもできる。さらに、液体や水蒸気を熱
媒として用い、加熱することもできる。
【0058】接着シートの剥離強度は、剥離のために加
熱する前では、90度剥離、300mm/分の剥離速度
で測定した値で、通常21N/25mm以上、好適には
22〜50N/25mm、特に好適には23〜45N/
25mmである。熱剥離操作前の剥離強度が低すぎる
と、通常の接着シートと同様にして使用できないおそれ
があり、反対に高すぎると、熱剥離操作時の剥離強度が
高すぎて、剥離容易性が高められないおそれがある。熱
剥離操作時の剥離強度の最適な範囲は、基材の機械的強
度(弾性率や破断伸び等)や、剥離操作条件(剥離速
度)によって適宜決定できる。剥離操作を迅速に行うと
いう観点からは、90度剥離、300mm/分の剥離速
度で測定した値で、20N/25mm以下であるのが好
ましい。
【0059】
【実施例】(実施例1)本例は、ポリカプロラクトンを
含む熱剥離容易性の接着層を備える、接着シートの実施
例である。次の様にして本例で使用される接着剤組成物
を調製した。まず、下記のように調製した粘着性ポリマ
ーを含む溶液(溶媒は、酢酸エチル85質量%/メチル
エチルケトン15質量%の混合溶媒;不揮発分濃度=3
0質量%)と、下記のポリカプロラクトンを含むトルエ
ン溶液(不揮発分濃度=35質量%)と、熱架橋成分ビ
スアミド(イソフタロイルビス(2−メチルアジリジ
ン))を混合し、組成物溶液を作製した。各成分に含有
割合は、粘着性ポリマー:ポリカプロラクトン:架橋成
分=70:30:0.2(不揮発分質量比)であった。
この溶液は透明であった。この組成物溶液を、ライナー
の剥離表面に塗布し、95℃オーブン中で5分間乾燥
し、ライナー上に本例の接着剤組成物からなる接着層を
形成した。この接着層の厚さは30μmであった。この
様にして形成した接着層と、基材としてのシート状再帰
反射材とを70℃の温度で圧着して固定し、本例の接着
シート、すなわち再帰反射シートを得た。
【0060】本例で用いた基材は、前掲のカプセルレン
ズ型再帰反射材であった。このカプセルレンズ型再帰反
射材は、3M社(米国)製反射シート「品名:ハイイン
テンシティグレードシリーズ」の品番2870から接着
層を除いたものであった。ポリカプロラクトンは、ダイ
セル化学工業(株)社製「商標:PLACCEL H7(重量平
均分子量Mw=220,000、融点Tm=60℃)、表
中の記号=PCL1」であった。粘着性ポリマーは、
(A)分子内にフェノキシ基とヒドロキシル基とを有す
るモノマー(記号HPPA:2−ヒドロキシ−3−フェ
ノキシプロピルアクリレート;東亜合成化学工業株式会
社製「アロニクス(商標)M−5700」)と、(B)
分子内にフェノキシ基を有するモノマー(記号PEA:
フェノキシエチルアクリレート;大阪有機化学工業株式
会社製「ビスコート(商標)#192」)と、(C)ア
クリル酸(記号AA:和光純薬工業株式会社製)と、
(D)n-ブチルアクリレート(記号BA:東亜合成化
学工業株式会社製)とを含有する混合モノマーを、上記
混合溶媒中にて溶液重合して調製した共重合体であっ
た。なお、粘着性ポリマー(表中の記号=TAP1)の
組成は、PEA:HPPA:BA:AA=55:15:
25:5であった。
【0061】(実施例2)ポリカプロラクトンを、ダイ
セル化学工業(株)社製「PLACCEL(商標)220N
(重量平均分子量Mw=3,800、融点Tm=50
℃)、表中の記号=PCL2」に変えた以外は、実施例
1と同様にして、本例の再帰反射シートを得た。
【0062】(実施例3)粘着性ポリマーを以下に示さ
れる組成のポリマー(表中の記号=TAP2)に変えた
以外は、実施例2と同様にして本例の再帰反射シートを
得た。粘着性ポリマーの組成は、PEA:HPPA:B
A:AA=30:15:50:5であった。
【0063】(比較例1)接着層を、前掲の特開昭56
−125470号公報に開示の熱活性接着剤から形成し
た以外は、実施例1と同様にして本例の再帰反射シート
を得た。この熱活性接着剤はアクリル系粘着性ポリマー
を含むが、ポリカプロラクトンを含まなかった。また、
アクリル系粘着性ポリマーの組成は、イソオクチルアク
リレート(IOA):メチルアクリレート(MA):A
A=57.5:35:7.5であった。
【0064】上記各例の接着シートを用い、以下の様に
して評価を行った。 評価方法 ・再位置決め性:各例の再帰反射シートを、150mm
長さ×25mm幅にカットして試験片を作製した。この
試験片を、脱脂剤で表面を清浄したアルミニウム基板
に、室温(約25℃)で2Kgの重さのハンドロールを
用いて仮貼り付けを行った。仮貼り付け直後にシートを
剥離し、シートを破損せずに接着面から剥離でき、再度
仮貼り付けできる場合を再位置決め性が良好(OK)と
判定し、剥離の際にシートが破損した場合を再位置決め
性が不良(NG)と判定した。
【0065】・剥離試験 剥離試験を、熱剥離操作を施し、熱剥離容易性の効果が
発揮されている状態と、熱剥離操作の前後で、熱剥離容
易性の効果が発揮されていない状態(「常態」と呼ぶ。)
において行った。 「常態1」上記の再位置決めの場合と同様にして、各例
の試験片を、アルミニウム基板に室温で仮貼り付けし、
次いでHLVA(前掲の熱圧着装置)を用い、約70℃
/90秒の条件で、本貼り付けを行った。本貼り付け
後、室温で24時間放置し、引張試験機(オリエンテッ
ク(株)社製「テンシロン(商標)」)を用い、300
mm/分、剥離方向90度で、剥離試験を行った。この
時の剥離の様子(剥離モード)について観察した結果
を、「常態1」の剥離モードとした。なお、光透過性被
覆シートが結合層から剥離され(実質的にはシールレッ
グ部の凝集破壊)、結合層が基板に残った場合を剥離モ
ードAとし、基板から接着層ごと容易に剥離され、糊残
りしなかった場合を剥離モードBと判定した。 *熱剥離操作:上記「常態1」の場合と同様にして、本
貼り付け後、室温で24時間放置した試験片に対して、
工業用ドライヤーで100℃に加熱した後、室温で5分
間冷却し、上記「常態1」の場合と同様にして剥離試験
を行った。この時に観察された剥離モードを、「熱剥離
操作」の剥離モードとした。 「常態2」上記「熱剥離操作」を同様に繰り返し、工業
用ドライヤーで加熱した後、室温で30分間冷却し、上
記「常態1」の場合と同様にして剥離試験を行った。こ
の時に観察された剥離モードを、「常態2」の剥離モー
ドとした。なお、剥離モードAの時の剥離強度は20N
/25mmであった。すなわち、接着層自体の剥離強度
がこの値より大きい場合、この剥離モードで剥離が起こ
る。
【0066】
【表1】
【0067】実施例1〜3の熱剥離操作時の剥離モード
は、すべて「B」あり、剥離強度はそれぞれ、19N/
25mm(実施例1)、10N/25mm(実施例
2)、及び10N/25mm(実施例3)であった。
【0068】(実施例4)本例は、ポリカプロラクトン
を含まない接着層を備える接着シートの実施例である。
実施例3と同様にして粘着性ポリマーを含有する溶液を
得た。このポリマー溶液に、架橋剤としてイソフタロイ
ルビス(2−メチルアジリジン)を添加した後、50μ
m厚の剥離フィルム(剥離面を有するPETフィルム)
上に塗布、100℃オーブン中で20分間乾燥し、本例
の接着剤組成物からなる接着層(厚さ=30μm)を得
た。その接着層に、135μmのアルミ箔を加熱せずに
常温で圧着し、アルミ箔からなる基材に接着層を転写、
固定し、本例の接着シートを形成した。粘着性ポリマー
の組成=前出のTAP2と同じ。 架橋剤:粘着性ポリマー=0.2:100 (質量比)
【0069】本例の接着シートから、30mm×10m
mの試験片を作成し、次の様にして熱間保持力を評価し
た。まず、上記試験片の剥離フィルムを除去し、接着面
に、135μmのアルミ箔からなる被着体を加熱せずに
常温で圧着(2kgのローラー2往復)して形成した、
積層体を用意した。なお、接着面積は、10mm×10
mmとした。次に、上記試験片の未接着部分が、接着分
よりも鉛直方向下側になる様にし、この未接着部分にク
リップで1.5Kgの質量のおもりを取り付け、上記積
層体を80℃のオーブン中に吊るした。この状態で、被
着体から接着シートが完全に剥がれ落ちるまでの時間を
測定し、その時間(分)をもって熱間保持力の評価値と
した。
【0070】比較例2 イソオクチルアクリレート−アクリル酸共重合体(組
成;IOA:AA=90:10 質量比)からなる粘着
性ポリマーを用いた以外は、実施例4と同様にして形成
した接着シートに対して、同様にして熱間保持力を評価
した。実施例4の接着シートの熱間保持力は、25,0
00分以上(25,000分経過しても剥がれ落ちなか
った)であった。これに対し、比較例2の接着シートで
は、粘着性ポリマーが架橋されているのにもかかわら
ず、80℃のオーブン中に吊るした後、196分で、被
着体から接着シートが剥がれ落ちた。
【0071】(実施例5)本例も接着層がポリカプロラ
クトンを含まない実施例である。粘着性ポリマーの組成
を以下に示すものに変更した以外は、実施例4と同様に
して本例の接着シートを得た。粘着性ポリマーの組成=
前出のTAP1と同じ。 PEA/HPPA/BA/AA (55:15:25:
5 質量比) 本例の接着シートに対して、実施例4と同様にして熱間
保持力を評価した。本例の接着フィルムの熱間保持力
は、25,000分以上であった。
【0072】(実施例6)基材として25μm厚さのP
ETフィルムを用いた以外は、実施例5と同様にして、
本例の接着シートを得た。本例の接着シートを、ステン
レス板(SUS−304)からなる被着体に、加熱せず
に常温で圧着(2kgのローラー2往復)した後、18
0度方向、300mm/分の速度で引張り、剥離強度を
測定した。剥離強度は、26N/25mmであった。
【0073】(比較例3)比較のため、接着層を比較例
2の接着層に代えた以外は、実施例6と同様にして作製
した接着シートについても同様に、剥離強度を測定し
た。剥離強度は、30N/25mmであった。
【0074】(実施例7および8)これら実施例は、基
材としてPETフィルムを用いた例である。ここで用い
たPETフィルムは、厚さ50μmの易接着処理透明ポ
リエステルフィルム(帝人デュポン(株)社製、商標:
MELINEX709、表2中の記号=PET2)であ
った。表2に示される組成の接着剤組成物をそれぞれ用
い、基材として上記PETフィルムを用いた以外は、実
施例1と同様にして実施例7及び実施例8の接着シート
を得た。これらの例の接着シートについて、実施例1と
同様にして、再位置決め性の評価及び剥離試験を行っ
た。結果を表2に示す。これらの例では、常態1及び2
の場合の剥離操作では、基板から接着層ごと接着シート
が剥離できたが、剥離強度は比較的高かった。一方、熱
剥離操作では、剥離強度は比較的低く(ともに20N/
25mm未満)、剥離が容易であった。
【0075】(実施例9〜17)基材としての再帰反射
材と、接着剤組成物の組成との組合せを、表2に示すも
のに換えた以外は、実施例1と同様にして各例の接着シ
ートを得た。なお、表中記号「VIP」で表される再帰
反射材は、前掲のプリズムレンズ型のシート状再帰反射
材、「3M社製、商標:ダイヤモンドグレード、品番:
VIP 2990I」から接着層を除いたものであっ
た。また、表中記号「HIS」で表される再帰反射材
は、実施例1で用いた再帰反射材と同じものであった。
各例の接着シートについて、実施例1と同様にして、再
位置を決め性の評価及び剥離試験を行った。結果を表2
に示す。常態1及び2の場合、各例とも、剥離の様子は
剥離モードAであった。一方、熱剥離操作では、剥離の
様子は剥離モードBであり、基板から接着層ごと容易に
剥離でき、糊残りしなかった。
【0076】
【表2】 表2注) PET2:厚さ50μmの易接着処理透明ポリエステル
フィルム(帝人デュポン(株)社製 商標:MELINE
X 709) VIP:3M社製のシート状再帰反射材(ダイヤモンド
グレード(商標)、品番:VIP29901)から接着
層を除いたもの。 HIS:実施例1で用いたものと同じ再帰反射材。 TAP1、TAP2、PCL1およびPCL2:それぞ
れ前掲のものと同じ粘着性ポリマーとポリカプロラクト
ン。 剥離強度:剥離角90度、剥離速度300mm/分での
測定値。単位はN/25mm。
【0077】
【発明の効果】以上の結果から、本発明による接着シー
トでは、従来の粘着性ポリマーを使用した場合と同レベ
ルの剥離強度を有しながら、熱間保持力が飛躍的に高め
られることが分った。したがって、本発明によれば、長
期にわたり安定にシートの接着を保持できる、接着シー
トを提供できる。一方、接着層がポリカプロラクトンを
含む場合、良好な熱剥離容易性を有し、糊残り無く、被
着体から剥がすことができる。また、基材が、カプセル
封入構造を有する再帰反射材等、比較的破損しやすいも
のであっても、基材を破損することなく、接着シートを
被着体から容易に熱剥離することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) E01F 9/00 E01F 9/00 (72)発明者 高松 頼信 神奈川県相模原市南橋本3−8−8 住友 スリーエム株式会社内 Fターム(参考) 2D064 BA01 CA03 CA05 DA05 DA06 EB22 EB25 EB26 JA01 4F100 AH03H AK01B AK25 AK25G AL05B AT00A AT00C BA02 BA03 BA06 BA07 CB00B EC01 EH46 EJ05B EJ86 GB90 JK06 JL11B JL13B JL14B JN06A YY00B 4J004 AA15 AB01 AB05 CC03 FA01 4J040 ED011 GA05 JA09 JB09

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1主面及びその第1主面と対向する第
    2主面とを備える基材と、その基材の第2主面に固定さ
    れた接着層とを備えてなる接着シートにおいて、 前記接着層が、粘着性ポリマーと熱架橋成分とを含んで
    なる接着剤組成物からなり、 前記粘着性ポリマーが、分子内に、(a)ヒドロキシル
    基と、(b)フェニル基と、(c)前記熱架橋成分と反
    応する架橋官能基とを有するポリマーであることを特徴
    とする、接着シート。
  2. 【請求項2】 前記接着剤組成物が、ポリカプロラクト
    ンをさらに含有し、そのポリカプロラクトンの融点より
    も高い温度において前記ポリカプロラクトンと前記粘着
    性ポリマーとが相溶し、それにより前記接着剤組成物は
    熱剥離容易性を有する、請求項1に記載の接着シート。
  3. 【請求項3】 前記粘着性ポリマーの含有割合は、前記
    接着剤組成物全質量を基礎として48〜90質量%の範
    囲であり、前記ポリカプロラクトンの含有割合は、前記
    接着剤組成物全質量を基礎として9〜51質量%の範囲
    である、請求項2に記載の接着シート。
  4. 【請求項4】 前記基材が再帰反射性である、請求項2
    に記載の接着シート。
  5. 【請求項5】 標識用基板と、その標識用基板の少なく
    とも1つの面に前記接着層を介して接着された請求項4
    の接着シートを備えてなり、前記再帰反射材表面に標識
    イメージが配置されている、再帰反射標識。 【請求講6】 第1主面及びその第1主面と対向する第
    2主面とを備えるシート状の基材と、その基材の第2主
    面に固定された接着層とを備えてなる接着シートにおい
    て、 前記接着層が、架橋された粘着性ポリマーとポリカプロ
    ラクトンとを含んでなる接着剤組成物からなり、 前記粘着性ポリマーが、分子内に、ヒドロキシ基と、フ
    ェニル基と、炭素数が4〜10のアルキル基とを有する
    ポリマーであり、前記ポリカプロラクトンの融点よりも
    高い温度において前記ポリカプロラクトンと前記粘着性
    ポリマーとが相溶し、それにより熱剥離容易性を有する
    ことを特徴とする、接着シート。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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