JP2002293757A - ベンジルエステルの製造方法 - Google Patents

ベンジルエステルの製造方法

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JP2002293757A
JP2002293757A JP2001101269A JP2001101269A JP2002293757A JP 2002293757 A JP2002293757 A JP 2002293757A JP 2001101269 A JP2001101269 A JP 2001101269A JP 2001101269 A JP2001101269 A JP 2001101269A JP 2002293757 A JP2002293757 A JP 2002293757A
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JP2001101269A
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Yuichi Sato
裕一 佐藤
Jun Tatsumi
準 辰巳
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Nippon Shokubai Co Ltd
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Nippon Shokubai Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 効率的かつ安価にベンジルエステル類を工業
的に製造する。 【解決手段】 活性成分として少なくともパラジウムを
含有する固体触媒の存在下に、ベンジル化合物とカルボ
ン酸類を分子状酸素の存在下反応させてベンジルエステ
ル類を製造する方法において、反応系内の酸素分圧が
0.098MPa以上の加圧条件下で、反応液中に分子
状酸素を供給する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、p−キシレン等の
ベンジル化合物と酢酸等のカルボン酸類とを分子状酸素
の存在下で反応させて、p−メチルベンジルアセテート
やp−キシリレンジアセテート等のベンジルエステル類
を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、p−メチルベンジルアセテート
やp−キシリレンジアセテート等の芳香族エステル(ベ
ンジルエステル)は、ポリエステル樹脂等の合成樹脂の
原料や、香料や溶剤等の各種化学薬品、或いは、これら
化学薬品の原料等として用いられている。これら芳香族
エステルの製造方法として、例えば、特開昭63−17
4950号公報には、パラジウム−ビスマス化合物およ
び/またはパラジウム−鉛化合物を触媒として用いて、
p−キシレンと酢酸とを酸素の存在下で反応させること
により、p−メチルベンジルアセテートおよびp−キシ
リレンジアセテートを製造する方法が開示されている。
また、例えば、特開昭62−273927号公報には、
パラジウムおよびビスマスを含む触媒を用いて、p−キ
シレンと酢酸とを酸素の存在下で反応させることによ
り、p−キシリレンジアセテートを製造する方法が開示
されている。
【0003】さらに、特開平8−231466号公報に
は、パラジウムおよび金を担体に担持してなる触媒を用
いて、p−キシレンと酢酸とを分子状酸素の存在下で反
応させることにより、p−キシリレンジアセテートを製
造する方法が開示されている。また、特開2000−7
0718号公報には、ベンジル化合物およびカルボン酸
を、酸素、並びに、パラジウムと、金超微粒子と、周期
表IIA族、 IIIA族、VIA族、IIB族、VB族、VIII族
およびアルカリ金属からなる群より選ばれる少なくとも
一種の元素とを含む触媒の存在下で酸化反応させてベン
ジルエステルを製造する方法が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】これらの固体触媒を用
いるベンジル化合物製造法では、反応後の反応液と触媒
との分離が容易であるという利点を有する。しかしなが
ら、特開昭63−174950号公報や特開昭62−2
73927号公報に記載されている触媒は、触媒活性が
低く、生産効率を向上させるには、触媒量を多量に用い
たり、あるいはまた、液相中の酸素濃度を上げるため
に、反応圧、特に酸素分圧を上げるなどする必要があ
る。
【0005】さらに、特開平8−231466号公報や
特開2000−70718号公報に記載されている触媒
では、前述の触媒に比して生産効率は非常に高いもの
の、パラジウムの反応液中への溶出が認められており、
その原因となるパラジウムの酸化を抑制する為に酸素分
圧を下げる必要がある。この条件では、ベンジルエステ
ルの生産効率の更なる向上は難しい。従って、高い生産
性を保持しつつ、触媒費等の面で工業的に安く且つ安全
にベンジルエステルを製造できる方法の実現が望まれ
る。
【0006】本発明はかかる課題を解決することを目的
とするものであり、ベンジルエステルを効率的に、安価
且つ安全に工業的に製造できる方法を提供することにあ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成すべく鋭意研究した結果、活性成分として少なく
ともパラジウムを含有する固体触媒の存在下に、ベンジ
ル化合物とカルボン酸類を分子状酸素の存在下反応させ
てベンジルエステルを製造する方法において、分子状酸
素の供給方法として、分子状酸素を気相部へ導入するの
ではなく、加圧条件下で液相部に供給することにより、
運転上、安全性の面で問題となる気相部酸素濃度を爆発
範囲まで上げずに、より高濃度で酸素を反応系に供給で
きる為、生産性が飛躍的に向上することを見出し、本発
明に到達したものである。
【0008】すなわち、本発明は、活性成分として少な
くともパラジウムを含有する固体触媒の存在下に、ベン
ジル化合物とカルボン酸類を分子状酸素の存在下液相で
反応させてベンジルエステルを製造する方法において、
反応系内の反応圧が0.098MPa以上の加圧条件下
で、反応液中に分子状酸素含有ガスを供給することを特
徴とするベンジルエステルの製造方法である。
【0009】更に、触媒が反応系内の酸素に過剰に曝さ
れるとパラジウムが酸化を受けて反応液中に溶出し、触
媒組成が変化し、触媒活性が低下し、十分満足できる生
産効率が得られないことから、上記反応系内の酸素分圧
は、0.020〜0.785MPaの範囲であることが
好ましいことが判った。これにより、目的の酸化反応の
進行を阻害することなく、効果的に触媒のパラジウムの
溶出を抑制でき、触媒活性を安定して高く維持すること
ができ、効率的にかつ安価にベンジルエステルを工業的
に製造することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明について更に詳述す
る。本発明の方法においては、少なくともパラジウムを
担体に担持した触媒を用いることができる。本発明の触
媒に用いる担体は、多孔質の固体であればよく、多孔質
の無機物が好適である。該担体としては、具体的には、
例えば、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム
(ジルコニア)、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニ
ウム(アルミナ)、シリカ・アルミナ、シリカ・チタニ
ア、ゼオライト、シリカゲル、酸化マグネシウム(マグ
ネシア)、シリカ・マグネシア、活性炭、粘土、ボーキ
サイト、珪藻土、軽石等が挙げられるが、特に限定され
るものではない。これら担体は、一種類のみを用いても
よく、また、二種類以上を併用してもよい。この担体
は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、および酸化アルミ
ニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の無機物
を含んでいることがより好ましい。
【0011】触媒の形状には特に制限はなく、反応形式
に応じて粉末として、若しくは成形して用いることがで
きる。懸濁床では、触媒とキシレン、酢酸、酸素の接触
を良くするため、粉末又は顆粒等が好ましく用いられ
る。固定床では、反応器の圧力損失を少なくするため、
タブレット等の打錠成形品、球状又は棒柱状等の押し出
し成形品等が好ましく用いられる。該成型担体の形状や
大きさ、成形方法等は、特に限定されるものではない。
【0012】担体の比表面積は、特に限定されるもので
はないが、50m2/g以上であることがより好まし
い。比表面積が50m2/g以上において、良好な触媒
活性を得ることができる。
【0013】触媒に用いられるパラジウム化合物として
は、特に限定されるものではなく、具体的には、例え
ば、金属パラジウム、酸化パラジウム、硝酸パラジウ
ム、硫酸パラジウム、酢酸パラジウム、ヘキサクロロパ
ラジウム酸アンモニウム、ヘキサクロロパラジウム酸ナ
トリウム、ヘキサクロロパラジウム酸カリウム、テトラ
クロロパラジウム酸アンモニウム、テトラクロロパラジ
ウム酸ナトリウム、テトラクロロパラジウム酸カリウ
ム、テトラブロモパラジウム酸カリウム、テトラシアノ
パラジウム酸カリウム、塩化パラジウム、臭化パラジウ
ム、ヨウ化パラジウム、クロロカルボニルパラジウム、
ジニトロサルファイトパラジウム酸カリウム、ジニトロ
ジアミンパラジウム、テトラアンミンパラジウム塩化
物、テトラアンミンパラジウム硝酸塩、cis-ジクロロジ
アミンパラジウム、trans-ジクロロジアミンパラジウ
ム、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロライ
ド、ジクロロ(エチレンジアミン)パラジウム等が挙げ
られる。これらパラジウム化合物は、一種類のみを用い
てもよく、また、二種類以上を併用してもよい。上記例
示のパラジウム化合物のうち、水に溶解する化合物がよ
り好ましく、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、酢酸パ
ラジウム、塩化パラジウム、およびテトラアンミンパラ
ジウム塩化物がより好ましく、酢酸パラジウム、および
テトラアンミンパラジウム塩化物が特に好ましい。尚、
パラジウム化合物は、水和物となっていてもよい。
【0014】本発明の触媒では、上記パラジウム以外の
金属化合物を更に含有していてもよい。例えば、周期表
IB族、IIA族、IIIA族、IIB族、IVA族、IVB族、
VA族、VB族、VIA族、VIB族、VIII族およびアルカ
リ金属等が挙げられる。これらの金属化合物は、触媒中
に1種または2種以上含有していてもよい。好ましく
は、金、ビスマス、モリブデン、鉄、ニッケル、亜鉛、
ランタン、銀、銅、セレン、テルル、アルカリ土類金
属、およびアルカリ金属である。
【0015】本発明の触媒は、特に金が共存することが
好ましい。金の原料としては、金、シアン化金、ジシア
ノ金酸カリウム、テトラクロロ金酸、テトラシアノ金酸
カリウム、亜硫酸金ナトリウム、テトラクロロ金酸ナト
リウム、テトラクロロ金酸カリウム、テトラクロロ金酸
アンモニウム等のテトラクロロ金酸塩類、ジメチル金ア
セチルアセトナート等を例示することができる。これら
金化合物は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類
以上を併用してもよい。金化合物は水に溶解する化合物
であることが好ましく、具体的には、例えば、テトラク
ロロ金(III) 酸「H〔AuCl4〕」、テトラクロロ金
(III) 酸ナトリウム「Na〔AuCl4〕」、ジシアノ
金(I) 酸カリウム「K〔Au(CN)2〕」、ジエチル
アミン金(III) 三塩化物「(C252NH・〔AuC
3〕」等の錯体;シアン化金(I) 「AuCN」;等が
挙げられるが、特に限定されるものではない。上記例示
の金化合物のうち、テトラクロロ金(III) 酸が特に好ま
しい。尚、金化合物は、水和物となっていてもよい。
【0016】また、その他の含有していてもよい金属化
合物としては、具体的には、例えば、酢酸ビスマス、酢
酸酸化ビスマス、フッ化ビスマス、塩化ビスマス、臭化
ビスマス、ヨウ化ビスマス、酸化ビスマス、水酸化ビス
マス、オキシ塩化ビスマス、硝酸ビスマス、塩基性炭酸
ビスマス、等のビスマス化合物;モリブデン酸、モリブ
デン酸ナトリウム、ホウ化モリブデン、塩化モリブデ
ン、酸化モリブデン、リンモリブデン酸(モリブドリン
酸)、ケイモリブデン酸(モリブドケイ酸)、酸化モリ
ブデンアセチルアセトナート、モリブデンヘキサカルボ
ニル、等のモリブデン化合物;硝酸鉄、硫酸鉄、リン酸
鉄、塩化鉄、臭化鉄、酢酸鉄、シュウ酸鉄、鉄アセチル
アセトナート、等の鉄化合物;酢酸ニッケル、塩化ニッ
ケル、臭化ニッケル、炭酸ニッケル、酸化ニッケル、水
酸化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、シアン化
ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、等のニッケ
ル化合物;酢酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜
鉛、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、リン酸
亜鉛、シアン化亜鉛、亜鉛アセチルアセトナート、等の
亜鉛化合物;酢酸ランタン、シュウ酸ランタン、塩化ラ
ンタン、臭化ランタン、炭酸ランタン、酸化ランタン、
硝酸ランタン、硫酸ランタン、ランタンアセチルアセト
ナート、等のランタン化合物;アルカリ金属の酢酸塩や
硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、酸化物、並びにアルカ
リ金属アセチルアセトナート、等のアルカリ金属化合
物;アルカリ土類金属の酢酸塩や硝酸塩、硫酸塩、ハロ
ゲン化物、酸化物、並びにアルカリ金属アセチルアセト
ナート、等のアルカリ土類金属化合物;等が挙げられる
が、特に限定されるものではない。
【0017】これらの化合物は、一種類のみを用いても
よく、また、二種類以上を併用してもよい。上記化合物
のうち、ビスマス化合物、アルカリ金属化合物、および
アルカリ土類金属化合物がより好ましく、酢酸ビスマ
ス、酢酸酸化ビスマス、硝酸ビスマス、酢酸カリウム、
酢酸ナトリウム、酢酸セシウム、硝酸カリウム、酢酸バ
リウム、および硝酸バリウムが特に好ましい。尚、これ
らの化合物は、水和物となっていてもよい。
【0018】本発明の触媒は、特に、パラジウムと金が
担体上に共存する触媒であることが好ましい。パラジウ
ム及び金の形態としては特に限定されず、例えば、元素
がナノメートル(nm)単位の粒子径の微粒子を形成し
ていることが好ましい。このような微粒子は、超微粒子
と呼ばれるものである。超微粒子を担体上に担持するこ
とにより、触媒の活性点の数が特段に多くなって触媒活
性がより向上することになる。このような超微粒子は、
担体上の全体に均一に分布していることが好ましい。
【0019】更に、一つの超微粒子に金及びパラジウム
が同時に存在するパラジウム−金複合超微粒子であるこ
とが好ましい。更に、パラジウムと、金超微粒子と、周
期表IIA族、IIIA族、IIB族、IVA族、IVB族、VA
族、VB族、VIA族、VIB族、VIII族およびアルカリ金
属からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素(以
下、「第三化合物」と称することもある)とを含む構成
であることが好ましい。この触媒は、金化合物を150
℃〜800℃で熱処理を行うことによって金超微粒子を
得た後、該金超微粒子と、パラジウム化合物と、少なく
とも一種の第三化合物とを混合する方法、または、金化
合物およびパラジウム化合物を150℃〜800℃で熱
処理を行うことによって金超微粒子およびパラジウムを
含む混合物を得た後、該混合物と、少なくとも一種の第
三化合物とを混合する方法により調製することができ
る。尚、本発明において、「超微粒子」とは、ナノメー
トル(nm)サイズの粒子径を有する粒子を示す。ま
た、上記の「周期表VIII族の元素」には、パラジウムは
含まれないこととする。
【0020】以下、更に金を超微粒子として共存させる
パラジウム−金触媒を調製する方法について具体的に述
べる。パラジウム及び金の担持方法としては特に限定さ
れず、例えば、含浸法、沈殿法、イオン交換法、沈着
法、蒸着法、析出沈殿法、共沈法等の公知の方法を用い
ることができる。これらの中でも、担体上でパラジウム
及び金が超微粒子を形成することから、沈殿法、蒸着
法、析出沈殿法、共沈法を用いることが好ましい。より
好ましくは、析出沈殿法である。上記担持方法におい
て、2種以上の元素を担体上に担持させる場合には、同
時に担持させてもよく、いずれかを先に担持させた後に
他方を担持させてもよい。
【0021】上記析出沈殿法としては、例えば、(1)
パラジウム化合物、金化合物及び必要に応じて界面活性
剤を含む水溶液を調製し、(2)この水溶液に担体を浸
漬し、必要に応じて所定時間攪拌しながら、担体上にパ
ラジウム沈殿物と金沈殿物とを析出させ、(3)パラジ
ウム沈殿物及び金沈殿物が担持された担体(担持体)を
取り出し、洗浄、乾燥し、更に、担持体を所定温度で焼
成することにより行うことができる。このような(1)
〜(3)の操作手順により、本発明における担持体を得
ることができる。この場合も、パラジウムと金とを同時
に担持させてもよく、いずれかを先に担持させた後に他
方を担持させてもよい。
【0022】上記パラジウム化合物としては特に限定さ
れず、例えば、金属パラジウム、酸化パラジウム、硝酸
パラジウム、硫酸パラジウム、酢酸パラジウム、ヘキサ
クロロパラジウム酸アンモニウム、ヘキサクロロパラジ
ウム酸ナトリウム、ヘキサクロロパラジウム酸カリウ
ム、テトラクロロパラジウム酸アンモニウム、テトラク
ロロパラジウム酸ナトリウム、テトラクロロパラジウム
酸カリウム、テトラブロモパラジウム酸カリウム、テト
ラシアノパラジウム酸カリウム、塩化パラジウム、臭化
パラジウム、ヨウ化パラジウム、クロロカルボニルパラ
ジウム、ジニトロサルファイトパラジウム酸カリウム、
ジニトロジアミンパラジウム、テトラアンミンパラジウ
ム塩化物、テトラアンミンパラジウム硝酸塩、cis−
ジクロロジアミンパラジウム、trans−ジクロロジ
アミンパラジウム、ビストリフェニルホスフィンパラジ
ウムジクロライド、ジクロロ(エチレンジアミン)パラ
ジウム等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、
2種以上を併用してもよい。また、水和物となっていて
もよい。これらの中でも、例えば、硝酸パラジウム、硫
酸パラジウム、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、テト
ラアンミンパラジウム塩化物等の水に溶解する化合物を
用いることが好ましい。より好ましくは、酢酸パラジウ
ム、テトラアンミンパラジウム塩化物である。
【0023】上記パラジウム化合物の使用量としては特
に限定されず、担体の種類や比表面積、形状、使用量等
により適宜選択すればよい。例えば、上記水溶液中のパ
ラジウム化合物の濃度が0.01〜1000mmol/
Lであることが好ましい。0.01mmol/Lより低
いと、パラジウム沈殿物の析出量が少なくなりすぎるお
それがあり、触媒活性が低くなるおそれがある。100
0mmol/Lより高いと、パラジウムが凝集しやすく
なるので、析出するパラジウム沈殿物の粒子径、すなわ
ち担体上のパラジウム粒子の粒子径が大きくなり過ぎる
おそれがある。より好ましくは0.05〜100mmo
l/Lであり、0.1〜20mmol/Lが特に好まし
い。
【0024】上記金化合物としては特に限定されず、例
えば、水に溶解するものとして、テトラクロロ金(II
I)酸「H〔AuCl4〕」、テトラクロロ金(III)酸
ナトリウム「Na〔AuCl4〕」、ジシアノ金(I)
酸カリウム「K〔Au(CN)2〕」、ジエチルアミン
金(III)酸塩化物「(C25)2NH・〔AuC
3〕」等の錯体;シアン化金(I)AuCN」等が挙
げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を
併用してもよい。また、水和物となっていてもよい。こ
れらの中でもテトラクロロ金(III)酸を用いることが好
ましい。
【0025】上記金化合物の使用量としては特に限定さ
れず、担体の種類や比表面積、形状、使用量等により適
宜選択すればよい。例えば、上記溶液中の金化合物の濃
度が0.01〜1000mmol/Lであることが好ま
しい。0.01mmol/Lより低いと、金沈殿物の析
出量が少なくなりすぎるおそれがある。1000mmo
l/Lより高いと、金が凝集しやすくなるので、析出す
る金沈殿物の粒子径、すなわち担体上の金粒子の粒子径
が大きくなり過ぎるおそれがある。より好ましくは0.
05〜100mmol/Lであり、0.1〜20mmo
l/Lが特に好ましい。
【0026】上記界面活性剤としては特に限定されず、
例えば、長鎖アルキルスルホン酸及びその塩、長鎖アル
キルベンゼンスルホン酸及びその塩、長鎖アルキルカル
ボン酸及びその塩等のアニオン性界面活性剤;長鎖アル
キル四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ポ
リアルキレングリコール、ポリオキシエチレンノニルフ
ェノールなどのノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用しても
よい。これらの中でも、アニオン性界面活性剤、ノニオ
ン性界面活性剤を用いることが好ましい。より好ましく
は、アニオン性界面活性剤である。また、アニオン性界
面活性剤の中でも、炭素数が8以上の長鎖アルキル(ア
リール)スルホン酸及びその塩、長鎖アルキル(アリー
ル)カルボン酸及びその塩を用いることが好ましい。上
記(1)の操作において、水溶液が界面活性剤を含むも
のであると、例えば、担体が成型体である場合、又は、
担体表面の等電位点が比較的低い場合等においても、担
体上にパラジウム沈殿物、金沈殿物を多く析出させるこ
とができる。
【0027】上記界面活性剤の使用量としては特に限定
されず、界面活性剤の種類、パラジウム化合物、金化合
物、担体の種類、これらの組み合わせ等に応じて設定す
ればよい。例えば、水溶液中の濃度が0.01〜100
0mmol/Lであることが好ましい。0.01mmo
l/Lよりも低いと、界面活性剤を用いることにより得
られる効果が乏しくなるおそれがある。1000mmo
l/Lよりも高くしても、更なる効果は殆ど期待できな
い上、パラジウム沈殿物及び金沈殿物を析出させた担持
体を洗浄する洗浄操作が煩雑となる。より好ましくは
0.05〜100mmol/Lである。上記(1)の操
作において、水溶液の調製方法としては特に限定され
ず、例えば、水にパラジウム化合物、金化合物及び界面
活性剤を溶解させると共に、必要に応じてそのpHを調
整することにより行うことができる。また、このとき、
必要に応じて加温してもよい。
【0028】上記水溶液のpHは、6〜10とすること
が好ましい。水溶液のpHを上記の範囲内に調節するこ
とにより、超微粒子状のパラジウム沈殿物及び金沈殿物
を生成させることができる。このように水溶液のpHを
調整する方法としては特に限定されず、例えば、アルカ
リ性を呈する化合物や酸性を呈する化合物を適宜添加す
ることにより行うことができる。上記アルカリ性を呈す
る化合物としては特に限定されず、例えば、炭酸ナトリ
ウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ム、アンモニア等が挙げられる。上記酸性を呈する化合
物としては特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、酢酸
等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよ
く、2種類以上を併用してもよい。また、これらの化合
物の添加方法としては、例えば、固体状で添加してもよ
く、水に溶解させた状態で添加してもよい。
【0029】上記(2)の操作において、水溶液に担体
を浸漬するには、水溶液を撹拌しながら担体を添加する
ことが好ましい。浸漬された担体は、撹拌されることに
より、水溶液中に分散・懸濁されると共に、その表面、
すなわち担体上にパラジウム沈殿物、金沈殿物等が析出
する。このような沈殿物としては、例えば、水酸化物、
超微粒子等が挙げられ、比較的狭い粒子径分布を有して
いる。
【0030】上記析出条件としては特に限定されず、例
えば、析出温度が、30〜80℃程度であることが好ま
しく、析出時間が、10分間〜3時間程度であることが
好ましい。また、必要に応じて、析出量を増加させるた
めに、析出する沈殿物の粒子径が大きくなりすぎない程
度において、析出操作を繰り返し行うこともできる。
【0031】上記(2)の操作により、パラジウム沈殿
物及び金沈殿物が、担体上に効率的に析出されたパラジ
ウム及び金担持体を得ることができる。尚、パラジウム
及び金担持体は、必要に応じて水洗し、その表面に付着
している界面活性剤を除去してもよい。
【0032】上記(3)の操作において、担持体を焼成
することにより、パラジウム微粒子、金微粒子が担体上
に強固に固定化される。また、パラジウム沈殿物、金沈
殿物が水酸化物である場合には、加熱によって分解され
て超微粒子となる。上記焼成を行う温度としては特に限
定されず、例えば、150〜800℃、具体的には、上
記パラジウム及び金担持体を、空気中で150〜800
℃、好ましくは300〜800℃に加熱し、焼成する。
このような焼成方法としては、例えば、焼成雰囲気は、
空気中であってもよく、窒素ガスやヘリウムガス、アル
ゴンガス等の不活性ガス中であってもよく、水素ガス等
の還元性ガス中であってもよい。また、加熱時間は、加
熱温度に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるも
のではない。例えば、空気中で焼成した後、取り出した
ものを水素ガス気流下で還元すると、触媒の活性が向上
する、反応液への金属成分の溶出が抑制されるなどの効
果が期待できる。
【0033】該パラジウム−金触媒への第三化合物の混
合方法、およびその混合順序は、特に限定されるもので
はない。また、ベンジルエステルを製造する際に、原料
であるベンジル化合物およびカルボン酸と共に、上記金
超微粒子固定化物、パラジウム化合物、および第三化合
物を反応装置に仕込むこともできる。つまり、ベンジル
エステルの製造時に、これら固定化物や化合物を反応装
置内で混合することにより触媒を調製することもでき
る。
【0034】上記の方法によって調製された触媒は、パ
ラジウムと金超微粒子と、周期表IIA族、IIIA族、VI
A族、IIB族、VB族、VIII族およびアルカリ金属から
なる群より選ばれる少なくとも一種の元素(以下「第三
金属成分」という)とを含んでいる。
【0035】パラジウムと、金超微粒子と、第三金属成
分との比、即ち、触媒の組成は特に限定されるものでは
ないが、触媒に占めるパラジウムの割合は、0.001
重量%〜10重量%の範囲内がより好ましく、0.1重
量%〜5重量%の範囲内がさらに好ましい。触媒に占め
る金超微粒子の割合は、0.001重量%〜20重量%
の範囲内がより好ましく、0.1重量%〜10重量%の
範囲内がさらに好ましい。触媒に占める第三金属成分の
割合は、0.0001重量%〜10重量%の範囲内がよ
り好ましく、0.001重量%〜2重量%の範囲内がさ
らに好ましい。パラジウムや金超微粒子が上記割合より
も少ない場合には、触媒活性が低くなるので好ましくな
い。パラジウムや金超微粒子が上記割合よりも多い場合
には、触媒の製造コストが高くなり、このためベンジル
エステルを安価に製造することができなくなる。
【0036】従って、上記パラジウム化合物、金化合物
および第三化合物は、触媒の組成が上記範囲内となるよ
うな割合でもって使用すればよい。上記の調製方法によ
って得られる触媒は、触媒活性が高く、ベンジル化合物
の酸化反応に好適に使用される。
【0037】本発明に係るベンジルエステルの製造方法
において、原料として用いられるベンジル化合物は、分
子内にベンジル基を有する化合物であればよく、特に限
定されるものではない。また、ベンジル化合物は、本発
明方法における酸化反応に対して不活性な官能基を有し
ていてもよい。該ベンジル化合物としては、例えば、下
記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0038】
【化1】
【0039】(式中、R1及びR2はそれぞれ独立して、
水素原子またはアルキル基を示し、Xは水素原子、アル
キル基、アリール基、水酸基、ハロゲン基、ニトロ基、
アミノ基、アミド基、アルキルオキシ基、アリールオキ
シ基、アルキルカルボキシル基、アリールカルボキシル
基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、ア
ルキルカルボキシアルキル基又はアリールカルボキシア
ルキル基を示し、nはXの個数を示す1〜5の整数であ
る)
【0040】ベンジル化合物としては、より具体的に
は、例えば、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピル
ベンゼン、イソプロピルベンゼン、n−ブチルベンゼ
ン、 sec−ブチルベンゼン、トリメチルベンゼン等のア
ルキルベンゼン;キシレン、エチルトルエン、n−プロ
ピルトルエン、イソプロピルトルエン、n−ブチルトル
エン、 sec−ブチルトルエン等の、o−、m−、p−ジ
アルキルベンゼン;4,4′−ジメチルビフェニル等の
アリール置換アルキルベンゼン;クレゾール等の、o
−、m−、p−ヒドロキシ置換アルキルベンゼン;クロ
ロトルエン等の、o−、m−、p−ハロゲン置換アルキ
ルベンゼン;o−、m−、p−ニトロトルエン等のニト
ロ基置換アルキルベンゼン;メチルアニリン等の、o
−、m−、p−アミノ基置換アルキルベンゼン;メチル
ベンズアミド等の、o−、m−、p−アミド基置換アル
キルベンゼン;メチルアニソール等の、o−、m−、p
−アルキルオキシ置換アルキルベンゼン;フェノキシト
ルエン等の、o−、m−、p−アリールオキシ置換アル
キルベンゼン;酢酸トリル、プロピオン酸トリル、ブタ
ン酸トリル、安息香酸トリル等の、o−、m−、p−カ
ルボキシ置換アルキルベンゼン(カルボン酸トリルエス
テル);メチルアセトフェノン、メチルベンゾフェノン
等の、o−、m−、p−カルボニル置換アルキルベンゼ
ン;メチルベンジルアセテート等の、o−、m−、p−
カルボキシアルキル置換アルキルベンゼン;等が挙げら
れる。上記例示のベンジル化合物のうち、アルキルベン
ゼン、ジアルキルベンゼンおよびカルボキシアルキル置
換アルキルベンゼンが好ましく、o−、m−、p−キシ
レンおよびo−、m−、p−メチルベンジルアセテート
がより好ましい。
【0041】尚、本発明方法で原料として用いられるベ
ンジル化合物には、前記一般式(1)中におけるベンゼ
ン環(ベンジル基)の代わりに、縮合環や複素環を有す
る化合物、具体的には、例えば、メチルナフタレンやジ
メチルピリジン等の化合物も含まれる。
【0042】本発明に係るベンジルエステルの製造方法
において、原料として用いられるカルボン酸類として
は、モノカルボン酸類が好適であり、具体的には、例え
ば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸等の脂肪族カルボン
酸;安息香酸等の芳香族カルボン酸;等が挙げられる
が、特に限定されるものではない。上記例示のカルボン
酸のうち、酢酸およびプロピオン酸がより好ましく、酢
酸が特に好ましい。
【0043】ベンジル化合物が有するベンジル基に対す
るカルボン酸類のモル比は、化学量論比よりも大きけれ
ばよく、特に限定されるものではないが、等倍モル〜2
0倍モルの範囲内がより好ましい。上記のモル比が等倍
モル未満であると、カルボン酸類が不足することになる
ので、ベンジルエステルを効率的に製造することができ
なくなる場合がある。一方、20倍モルを越えるモル比
でカルボン酸を用いても、上記のモル比で用いた場合と
比較して、収率等の更なる向上は殆ど期待できない。ま
た、カルボン酸類を多量に用いることになるので、反応
装置や、過剰のカルボン酸類を回収するための回収装置
の大型化を招来すると共に、回収コストを含む製造コス
トが嵩む場合がある。
【0044】本発明方法では、上記のベンジル化合物お
よびカルボン酸類を、前記触媒の存在下で分子状酸素に
より酸化反応させることにより、ベンジルエステルが得
られる。該酸化反応は、液相で行われ、且つ酸素ガス
(分子状酸素)は該液相(反応液)中に供給される。こ
れにより、より効率的に液相中の酸素ガス濃度を上げる
ことができ、生産性が飛躍的に向上する。酸素ガスは、
窒素ガスやヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガス
によって希釈されていてもよい。また、酸素含有ガスと
して空気を用いることもできる。
【0045】上記酸化反応の形態は、連続式、回分式、
半回分式の何れであってもよく、特に限定されるもので
はない。触媒は、反応形態として例えば回分式を採用す
る場合には、反応装置に原料と共に一括して仕込めばよ
く、また、反応形態として例えば連続式を採用する場合
には、反応装置に予め充填しておくか、或いは、反応装
置に原料と共に連続的に仕込めばよい。従って、触媒
は、固定床、流動床、懸濁床の何れの形態で使用しても
よい。
【0046】本発明では、反応の進行が、触媒の液中で
の分散や酸素ガスの液相中への吸収に支配されるのでは
なく、純粋に反応速度により支配される条件で反応を行
うことが好ましい。例えば、懸濁床型反応器で酸化反応
を行う場合、反応容器の形状(例えば底の形状(丸底、
平底等)、内径、液深等)や供給管形状(例えば直管
状、リング状等)等は特に限定されない。また、供給口
形状も特に限定されず、孔の形状や大きさ等も特に限定
されない。触媒が逆流しない様に網がかかっていても良
いが、好ましくは、上記の理由により、できるだけ酸素
含有ガスを液中に分散させるために、スパージャリング
などのような細かい気泡が液中に吹き込める形状のガス
吹き込み管を用い、できるだけ装置下方よりガスを吹き
込み、ガスの液中滞留時間を長くすることが好ましい。
【0047】本発明の方法においては、反応系内の反応
圧を0.098MPa以上とすることが必要であり、好
ましくは反応系内の酸素分圧を0.020〜0.785
MPa、より好ましくは0.196〜0.588MPa
の範囲に保持することが好ましい。反応系内の反応圧が
0.098MPa未満の場合は、酸化反応の進行が抑制
され、生産性が低くなる。また、酸素分圧は0.785
MPa以下であることが好ましく、0.785MPaを
超える場合は、触媒のパラジウムの反応液中への溶出が
顕著になり触媒活性が低下し、触媒費も嵩み、好ましく
ない。
【0048】攪拌翼形状も特に限定されず、例えば、パ
ドル翼、ターピン翼、プロペラ、湾曲翼等が挙げられ、
このうちの2種以上を併用してもよい。攪拌翼を持つ場
合その数も特に限定されないが、通常2枚以上が適当で
ある。また、邪魔板も必要に応じて使用でき、その枚数
も特に限定されない。触媒の分散や吹き込みガスの分散
ができるだけ良好な状態となる回転翼形状及び枚数で反
応を行うことが好ましい。攪拌回転数も用いる装置や攪
拌翼形状及び枚数により特に限定されないが、触媒の分
散や吹き込みガスの分散ができるだけ良好な状態となる
回転数で反応を行うことが好ましい。
【0049】ガス流量は特に限定されず、反応の進行、
気相部酸素濃度に合わせて任意に設定できるが、好まし
くは反応が酸素ガスの吸収に支配されるのではなく、反
応速度に支配されるガス流量の条件下で反応を行うこと
が好ましく、ベンジル化合物及びカルボン酸の種類や組
み合わせや仕込みの量、用いる触媒、反応条件、装置形
状、攪拌翼形状及び枚数により特に限定されない。ま
た、気相部の酸素濃度は、気相部組成物による爆発範囲
外となる酸素濃度で反応を行うことが好ましく、特に好
ましくは、爆発限界酸素濃度以下で反応を行うことが好
ましい。この爆発範囲及び爆発限界酸素濃度は、用いる
ベンジル化合物及びカルボン酸の種類や組み合わせや各
々の原料の仕込みの量、反応条件により特に限定されな
いが、爆発限界酸素濃度は通常の目安として、酸素濃度
が12%以下である。ただし、仮に酸素の供給が過剰と
なり、気相部の酸素濃度が上がった場合、爆発範囲を回
避するために気相部に直接窒素等の不活性ガスを供給す
ることで、気相部酸素濃度を下げ、前述の爆発範囲外の
酸素濃度に調整することも可能である。
【0050】ベンジル化合物に対する触媒の使用量は、
ベンジル化合物およびカルボン酸の種類や組み合わせ、
触媒の組成、反応条件等に応じて設定すればよく、特に
限定されるものではない。
【0051】反応温度や反応時間等の反応条件は、ベン
ジル化合物およびカルボン酸の種類や組み合わせ、触媒
の組成等に応じて設定すればよく、特に限定されるもの
ではないが、反応温度は80℃〜200℃の範囲内が好
適である。反応温度が80℃未満である場合には、反応
速度が遅くなりすぎ、ベンジルエステルを効率的に製造
することができなくなるおそれがある。一方、反応温度
が200℃を越える場合には、燃焼を含めた副反応が起
こり易くなるので、ベンジルエステルを効率的に製造す
ることができなくなるおそれがある。また、カルボン酸
による反応装置の腐食を招来するおそれもある。
【0052】酸化反応は、上記反応条件下においてベン
ジル化合物および/またはカルボン酸が液体状である場
合には、特に溶媒を用いる必要が無いが、両者を均一に
混合することができない場合や、反応が激しい場合に
は、反応に対して不活性な溶媒を用いて希釈することが
できる。
【0053】本発明の方法によって得られるベンジルエ
ステルである、例えばp−メチルベンジルアセテートや
p−キシリレンジアセテートは、ポリエステル樹脂等の
合成樹脂の原料や、香料や溶剤等の各種化学薬品、或い
は、これら化学薬品の原料等として好適な化合物であ
る。尚、ベンジルエステルを分離・精製する方法は、特
に限定されるものではない。
【0054】また、例えば、p−キシリレンジアセテー
トを加水分解して得られるp−キシリレングリコール
は、合成繊維や合成樹脂、可塑剤等の原料として、或い
は、ポリウレタンや炭素繊維等との複合材料を形成する
際の原料として好適な化合物であり、特に、耐熱性高分
子の原料として有用である。尚、ベンジルエステルを加
水分解する方法は、特に限定されるものではない。
【0055】
【実施例】以下、実施例および比較例により、本発明を
さらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限
定されるものではない。尚、実施例に記載の「ターンオ
ーバー数」(TOF)とは、触媒の生産性を表す尺度で
あり、下記式により定義される。
【0056】
【数1】
【0057】実施例1 テトラクロロ金酸・4水和物0.84gを水200mlに
溶解し、60℃に加温して金水溶液を調製した。この水
溶液を水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8.5に調
整した後、テトラアンミンパラジウムジクロライド0.
248gを加え溶解させた。次いで、この水溶液に界面
活性剤としてラウリン酸ナトリウム0.14gを添加し
て溶解させた後、60℃で酸化チタン(サンゴバン・ノ
ートン社製)粉体5gを添加し、さらに同温で1時間攪
拌することにより、その表面にパラジウム沈殿物及び金
沈殿物を固定化した。その後、パラジウム−金固定化物
を濾過し水洗して、120℃で6時間乾燥させた。次い
で、該パラジウム−金固定化物を空気中で400℃で3
時間焼成することにより、酸化チタン上にパラジウム−
金が担持された化合物(酸化チタン担持パラジウム−
金)を得た。該担持物におけるパラジウムの担持量は
2.0wt%、金の担持量は6.9wt%であった。
【0058】ガス供給用スパージャーリングを敷設した
500ml回転攪拌式オートクレーブに、ベンジル化合物
としてp−キシレン45.5g、カルボン酸として酢酸
104.5g、触媒として該酸化チタン担持パラジウム
−金を2.5gを加えて密封した。その後系内を窒素で
1.961MPaに加圧し、500rpmで攪拌しながら
140℃に加熱した。所定温度に達した後、内圧が2.
452MPaになるように窒素圧を調整した。その後ス
パージャーリングを経由して空気を内圧2.452MP
aを維持したまま毎分1リットルの速度で液中に流通さ
せながら供給し、1.5時間反応させた。この間、気相
部の酸素濃度は酸素濃度計にて計測し、その最高値は
7.4%であった。これは気相部の酸素分圧0.181
MPaに相当する。
【0059】反応後、反応液をガスクロマトグラフィー
で分析したところ、p−キシレンの転化率は66.4%
であり、モノエステルであるp−メチルベンジルアセテ
ートが21.09g(収率30.0%)、ジエステルで
あるp−キシリレンジアセテートが13.05g(収率
13.7%)得られた。この時のエステル化反応生成物
に対する触媒活性種であるパラジウム当たりの時間当た
りのターンオーバー数は523であった。反応液の蛍光
X線分析から、反応中に反応液に溶出したパラジウムの
量は、反応前担体上に担持されていたパラジウムの0.
04%であった。
【0060】比較例1 スパージャーリングを敷設していない500mlオートク
レーブを用い実施例1と同様に反応液、触媒を仕込ん
だ。更に系内を窒素で1.471MPaに加圧し、50
0rpmで攪拌しながら140℃に加熱した。所定温度に
達した後、内圧が1.961MPaになるように窒素圧
を調整し、更にオートクレーブ上部より気相部に純酸素
を、全圧が2.452MPaになるように加圧し、密閉
系で1.0時間反応させた。但し反応の進行に伴う酸素
の消費による反応圧の減少を、気相部に直接純酸素を加
えることで補充した。従って、酸素は気相部に充填され
たことになり、系内の酸素分圧は0.490MPaとな
る。
【0061】反応後、反応液をガスクロマトグラフィー
で分析したところ、p−キシレンの転化率は29.8%
であり、モノエステルであるp−メチルベンジルアセテ
ートが10.5g(収率14.9%)、ジエステルであ
るp−キシリレンジアセテートが5.05g(収率5.
3%)得られた。この時のエステル化反応生成物に対す
る触媒活性種であるパラジウム当たりの時間当たりのタ
ーンオーバー数は233であった。反応液の原子吸光分
析から、反応中に反応液に溶出したパラジウムの量は、
反応前担体上に担持されていたパラジウムの0.62%
であった。
【0062】比較例2 反応スタート時の気相部のガス組成を、窒素0.981
MPa、酸素1.471MPa、酸素濃度60vol%と
した以外は、比較例1と同様に反応を行なった。反応
度、反応液をガスクロマトグラフィーで分析したとこ
ろ、p−キシレンの転化率は89.5%であり、モノエ
ステルであるp−メチルベンジルアセテートが24.3
g(収率34.6%)、ジエステルであるp−キシリレ
ンジアセテートが23.2g(収率24.4%)得られ
た。この時のエステル化反応生成物に対する触媒活性種
であるパラジウム当たりの時間当たりのターンオーバー
数は761であった。反応液の原子吸光分析から、反応
中に反応液に溶出したパラジウムの量は、反応前担体上
に担持されていたパラジウムの1.55%であった。こ
れらの結果を表に示すと以下の通りとなる。
【0063】
【表1】
【0064】
【発明の効果】本発明方法によれば、p−メチルベンジ
ルアセテートやp−キシリレンジアセテート等のベンジ
ルエステルを極めて生産性よく効率的に工業的に製造す
ることができ、更に、触媒成分のパラジウムの溶出を抑
制して触媒活性を安定して高く維持できるので効率的に
かつ安価にベンジルエステルを製造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4H006 AA02 AC48 BA05 BA25 BA37 BA41 BB31 BC11 BE30 BJ50 KA10 4H039 CA66 CC30

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 活性成分として少なくともパラジウムを
    含有する固体触媒の存在下に、ベンジル化合物とカルボ
    ン酸類を分子状酸素の存在下液相で反応させてベンジル
    エステルを製造する方法において、反応系内の反応圧が
    0.098MPa以上の加圧条件下で、反応液中に分子
    状酸素含有ガスを供給することを特徴とするベンジルエ
    ステルの製造方法。
  2. 【請求項2】 反応系内の酸素分圧が0.020〜0.
    785MPaである請求項1記載のベンジルエステルの
    製造方法。
  3. 【請求項3】 固体触媒が、更に金を含有する請求項1
    又は2に記載のベンジルエステルの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005255665A (ja) * 2004-02-10 2005-09-22 Mitsubishi Rayon Co Ltd α,β−不飽和カルボン酸の製造方法
JP4612366B2 (ja) * 2004-02-10 2011-01-12 三菱レイヨン株式会社 α,β−不飽和カルボン酸の製造方法

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