JP2002291208A - 永久磁石交流発電機用回転子鉄心の製造方法 - Google Patents

永久磁石交流発電機用回転子鉄心の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鍛造技術のみにより爪部の側部に永久磁石係
止用の段差部を備えた回転子鉄心を製造すること。 【解決手段】 所定体積の素材を連結板部3aの下面延
長面との間の角度が70度である複数の爪部4aを備え
た概形品に成形し、次いでその概形品の連結板部3aの
外周縁及び爪部4aの両側に生じた鍛造バリを打ち抜き
除去し、その後、概形品の中央ボス部2aの軸孔2bを
上型m2aのポンチpで打ち抜き、同時に上型m2aの
外周部で爪部4aをしごき加工して延伸しつつ連結板部
3aと90度の角度になるまで折曲するとともに、これ
によって爪部4aの内面側を下型m2bの爪部成形用の
成形面に圧接してその両側部に永久磁石係止用の段差部
4bを形成し、更に概形品を整圧して精密な所定寸法の
成品を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数の爪部を有す
る一対の回転子鉄心を対面状態に結合し、かつ対面する
回転子鉄心の爪部間に永久磁石を係止した回転子を備え
た交流発電機、特に車両用乃至船舶用の永久磁石交流発
電機用回転子鉄心の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種の交流発電機の回転子は、中央の
ボス部と、このボス部の外周から外端面に同一面で放射
方向に張り出した連結板部と、上記ボス部の中心軸線に
平行に上記連結板部の外周部から突出した複数の爪部と
からなる回転子鉄心を二個組み合わせて構成したものが
一般的である。二個の回転子鉄心は、両ボス部を相互に
対面させた状態で接合し、かつ相互の爪部が、相互の爪
部の間の谷部に挿嵌されるように組み合わせられ、両ボ
ス部の軸孔には回転シャフトが嵌合固着されるものであ
る。
【0003】多くの場合は、前記ボス部の外周には界磁
巻線が配設され、該界磁巻線が励磁されると、各爪部が
円周方向に交互に異極を構成するようになっており、こ
のように構成された回転子が回転することにより外側に
配設される電機子に回転磁界が与えるられるようになっ
ている。
【0004】近時、車両用の交流発電機に於いて、前記
界磁巻線に代えて前記爪部間に永久磁石を配置すること
が試みられており、この場合も同様に、これを備えた回
転子を回転させれば、その周囲に配設した電機子に回転
磁界が与えられることとなるのは云うまでもない。そし
てこの場合には、回転子鉄心の爪部の側部に対応する永
久磁石を係止するための段差部を形成することが必要に
なる。
【0005】この種の交流発電機の回転子鉄心の製造方
法には、従来、一般的には、熱間鍛造方法、冷間鍛造方
法又は板金折曲方法があり、それらの技術は各々独立し
て開発され、実施されてきた。それぞれには固有の種々
の問題があるが、技術の発展性の観点から、鍛造技術を
中心とする製造方法が優れており、本件出願人は、主と
して鍛造技術を中心にその改良を繰り返してきた。
【0006】因みに、本件出願人が現在行っている交流
発電機の回転子鉄心の製造方法(以下現行製法と言う)
は、次の通りである(特公平7−118891号)。
【0007】所定体積の素材を、後記爪部成形用の空間
が後記連結板部成形用の空間の下面延長面上から45度
〜80度の範囲の角度で立ち上がっている内部形状の型
を用いた鍛造により、成品に対して近似的な寸法の中央
ボス部及びその外周に連続する連結板部と、上記連結板
部より定角度間隔で突出し、成品より若干短寸かつ上記
連結板部の下面延長面との間の角度が45度〜80度で
ある複数の爪部とからなる概形品に成形し、次いで上記
工程で上記概形品の連結板部の外周縁及び爪部の両側に
生じた鍛造バリを打ち抜き除去し、その後上記概形品の
中央ボス部の軸孔を打ち抜き、同時に爪部を連結板部と
90度の角度になるまで折曲するとともにしごき加工し
て延伸し所定の寸法を得、更に上記概形品を整圧して精
密な所定寸法の成品を得るようにした交流発電機の回転
子鉄心の製造方法である。
【0008】上記現行製法は、それまで行ってきた熱間
鍛造、冷間鍛造及び機械切削加工の組み合わせ技術によ
る交流発電機の回転子鉄心の製造方法(既存製法)の問
題点を解決したものである。
【0009】改良点の一は、既存製法の工程の内、最初
に行われる素材を熱間鍛造により、成品に近似的な形状
である概形品に成形する工程にある。
【0010】その工程は、概ね「所定体積の素材を熱間
鍛造により、完成品に近似的寸法である中央ボス部及び
その外周に連続する連結板部と、上記連結板部より突出
する若干短寸の複数の爪部とからなる概形品に成形」す
る工程であり、該概形品は、文字通り、概形品であるか
ら、その爪部は、この時点で既に連結板部となす角度は
90度に成形されており、また該概形品を成形する型は
上記連結板部を成形する空間の外周付近で上型と下型と
に分割されているものであった。
【0011】それ故、その成形動作時に、下型とこれに
載置された素材とに上型による下方への押圧力が加えら
れても、上記上型の下方への押圧力は、直ちには、90
度に立ち上がった上記各爪部を成形する成形空間の上部
方向への素材の流れを生じさせることはなく、上記上型
と上記下型との間、即ち、連結板部の外周付近に一定以
上の鍛造バリを張り出させることになり、このことによ
り型の内圧を高めて上記各爪部を成形する成形空間の上
部までの素材の上向きの流れを確保するものであった。
【0012】そのため、上記工程では、相当する鍛造バ
リの張り出しは、爪部の所定の長さまでの延びを確保す
るためには必然的なものであり、それ故、上記鍛造バリ
の分だけの素材の過剰体積分が不可欠であり、結果とし
て前記既存製法に於いては、過剰体積分の歩留まりの低
下は避けがたいものであった。
【0013】前記現行製法では、上記歩留まりの問題点
を、最初の概形品を成形する工程で、連結板部より突出
する爪部を該連結板部との角度が45度〜80度になる
ように成形することとしたことにより、型の爪部を成形
する成形空間内への素材の流れを良好にし、型内圧の上
昇のために鍛造バリを生成させるという必要性をなくす
ることにより解決したものである。
【0014】改良点の二は、得られた概形品を適正体積
に補正する工程にある。既存製法のこの工程は、概ね
「前記熱間鍛造で得られた概形品を徐冷し、次いでその
概形品の中央ボス部の両端面及び連結板部の外面部を切
削加工して適正体積に補正」する工程であり、この工程
は、一連の鍛造工程中に含まれる性格の異なる機械切削
加工の工程であり、このことにより全工程の自動化が困
難になるものでもある。
【0015】現行製法では、この工程は、その前工程
を、既述のように、変更することにより、その精度を高
めて、これを省略したものである。
【0016】現行製法は、以上のように、既存製法の歩
留まりの問題及び工程に性格の異なる機械切削加工が含
まれることによる問題を解決したものである。
【0017】このような現行製法及び既存製法は、いず
れも界磁巻線を備えた回転子を構成するための回転子鉄
心の製造方法である。そこでこれらの回転子鉄心の製造
方法を前提として、永久磁石発電機用回転子鉄心、即
ち、既述のように、爪部の側部に永久磁石を係止するた
めの段差部を備えた回転子鉄心を製造することを検討し
た。
【0018】その結果によれば、既存製法では、鍛造工
程で爪部の側部に永久磁石係止用の段差部を成形するこ
とは容易ではなく、切削加工等によりこれを形成せざる
を得ないとの結論に達した。即ち、この場合には、前記
のように、概形品を成形する際に、爪部を中央ボス部と
平行に、見方を変えれば、連結板部と90度の状態に形
成しているため、その後の工程で、該爪部の側面に段差
部を形成しようとしても、それを可能とする型の構成も
困難になるためである。
【0019】一方、現行製法は、既述のように、上記既
存製法の歩留まりの向上を図り、かつ性格の異なる工程
を省略して鍛造工程のみに限定することにより全自動化
を可能にするとの目的の下に改良がなされ、これを実現
したものであるが、この製法を改良することにより、性
格の異なる加工技術である切削加工等を利用することな
く、爪部の側部に永久磁石を係止するための段差部を形
成することの可能性を見出した。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、精度の高い
優れた加工技術である鍛造技術を利用することにより、
かつ他の切削加工等の機械加工技術を利用することな
く、爪部の側部に永久磁石係止用の段差部を備えた回転
子鉄心を製造する永久磁石交流発電機用回転子鉄心の製
造方法を提供することを解決の課題とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】本発明は、所定体積の素
材を、後記爪部成形用の成形空間が後記連結板部成形用
の成形空間の下面延長面上から45度〜80度の範囲の
角度で立ち上がっている内部形状の型を用いた鍛造によ
り、成品に対して近似的な寸法の中央ボス部及びその外
周に連続する連結板部と、上記連結板部より定角度間隔
で突出し、成品より若干短寸かつ上記連結板部の下面延
長面との間の角度が45度〜80度である複数の爪部と
からなる概形品に成形し、次いで上記工程で上記概形品
の連結板部の外周縁及び爪部の両側に生じた鍛造バリを
打ち抜き除去し、その後、上記概形品の中央ボス部の軸
孔を打ち抜き、同時に爪部をしごき加工して延伸しつつ
連結板部と90度の角度になるまで折曲するとともに、
これによって該爪部の内面側を下型の爪部成形用の成形
面に圧接してその両側部に永久磁石係止用の段差部を形
成し、更に上記概形品を整圧して精密な所定寸法の成品
を得るようにした永久磁石交流発電機用回転子鉄心の製
造方法である。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明は、順次、概形品の成形工
程、鍛造バリの打ち抜き工程、爪部形成工程及び整圧工
程を行うことにより、永久磁石交流発電機用回転子鉄心
を製造する製造方法である。
【0023】前記概形品の成形工程は、所定体積の素材
を所定の型で概形品に成形することにより行う。上記所
定体積の素材は、たとえば、丸鋼を所定寸法にプレス切
断することにより得ることができる。その後、該素材
を、図1(a)、(c)に示すように、爪部4a、4a…を成
形する成形空間x、x…と、連結板部3aを成形する成
形空間yの下面の延長面zとの角度θが45度〜80度
の範囲である内部形状の型M1を用いて成品に近似的な
形状寸法の概形品に鍛造成形する。
【0024】前記型M1は、詳しくは、内部の成形空間
の内、前記爪部4a、4a…成形用の成形空間x、x…
が前記連結板部3a成形用の成形空間yの下面延長面z
に対して45度〜80度の範囲の角度θで立ち上がって
いる型であって、前記内部の成形空間を構成する面の
内、下面側、即ち、上向きの要素を持った面側を下型に
より、上面側、即ち、下向きの要素を持った面側を上型
により構成した型である。
【0025】前記型M1による鍛造は熱間、温間又は冷
間のいずれによることも可能である。勿論、型M1の強
度とか、必要な圧力等をそれぞれに対応させるべきこと
は言うまでもない。
【0026】また前記鍛造により得られる概形品は、詳
しくは、図1(c)に示すように、成品に近似的な寸法形
状である中央ボス部2a及びその一端から周方向に連続
する連結板部3aと、上記連結板部3aより突出し、成
品より若干短寸で、上記連結板部3aの下面延長面zと
の間の角度θが45度〜80度である複数の爪部4a、
4a…とを備えたものである。それ故、この後、上記概
形品を成品にするために、該爪部4a、4a…を折曲す
る角度は10度〜45度ということになる。
【0027】前記角度θは実験的・経験的に定められた
もので、下型に載置した素材を上型で押圧すると、上記
角度θのために、及び上型と下型とを上記のように分割
したために、上記素材は、型M1の爪部4a、4a…を
成形する成形空間x、x…への流れ込みがきわめて良好
になる。より具体的には、前記構成の結果、押圧時に上
型と下型の間のような素材の逃げ場所がなくなっている
こと及び素材の流れ方向が良好であることである。なお
該角度θを前記範囲外の角度に設定した場合には以上の
ような作用は得られない。
【0028】前記鍛造バリの打ち抜き工程は、以上の概
形品の成形工程に引き続いて、図1(b)に示すように、
該概形品の成形工程で生じた連結板部3a及び爪部4
a、4a…の周囲に薄く生じた鍛造バリ9を打ち抜き除
去する工程である。
【0029】前記爪部形成工程は、以上の鍛造バリの打
ち抜き工程の後、図1(d)に示すように、型M2を用い
て、その上型中心のポンチpと下型中心のダイdとによ
り前記概形品の中央ボス部2aに軸孔を打ち抜き、同時
に上型の爪部成形用の成形空間を形成する面で爪部4
a、4a…をしごき加工して延伸しつつ連結板部3aに
対して90度の角度になるまで折曲するとともに、この
折曲によって該爪部4a、4a…の内面側を下型の爪部
成形用の成形面に圧接してその両側部に永久磁石係止用
の段差部を形成するものである。
【0030】なお前記段差部は、各爪部4の両側部に於
いて、中央ボス部2a側が切り欠かれた状態に形成され
るものである。
【0031】前記下型の爪部成形用の成形面は、図1
(d)に示すように、成形された爪部4の両側部の段差部
に対応する反転状態の段差部を備えたものであり、この
反転状態の段差部を備えた成形面に、前記のように、該
爪部4aに対する既述の折曲動作によって、該爪部4a
の内面側が押圧されることにより、その両側部に対応す
る段差部が容易に形成されることとなるものである。
【0032】最後に、前記整圧工程は、以上の爪部形成
工程で得られた概形品を整圧して精密な所定寸法の成品
を得るようにするものである。
【0033】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照しながら
詳細に説明する。図2〜図11はこの実施例の工程を順
次示したものである。
【0034】まず初めに、図2に示すように、丸鋼を所
定寸法にプレス切断し、所定体積の素材1を形成する。
該素材1の体積は、材料ロスをできるだけ少なくするこ
と及び後工程を容易にするためにできるだけ正確にする
ことが好ましい。また使用される丸鋼は、種々あり得る
が、一般的には低炭素品で交流発電機の回転子鉄心とし
て適切な磁性材料とする。
【0035】次に、上記素材1を加熱し、これを、図3
に示すように、内部空間の内、爪部4a、4a…を成形
する成形空間x、x…と連結板部3aを成形する成形空
間yの下面の延長面10との角度αが70度である空間
形状の型m1を用いて成品に近似的な概形品に鍛造成形
する。内部空間の内、他の部分の形状は、後述する形状
の概形品を成形するために適したものであることは云う
までもない。また上記型m1は、上記内部空間を構成す
る面のうち下面側、即ち、上向きの要素を持った面側を
下型により、上面側、即ち、下向きの要素を持った面側
を上型により構成したものである。
【0036】図4(a)、(b)は、以上の熱間鍛造によって
成形された概形品を示している。即ち、上記概形品は、
成品に近似的な寸法形状のボス部2a及び連結板部3a
と、成品に比較して若干短寸で、上記連結板部3aの下
面の延長面10との角度αが70度に成形された爪部4
a、4a…とからなるように成形されたものである。
【0037】上記のように、型m1を前記の部位で上型
と下型とに分割し、前記角度αを70度に定めたので、
鍛造成形時に、前記素材1は、爪部4a、4a…を成形
する成形空間x、x…への流れがきわめて良好になっ
た。これは素材1の流れの方向が適切になったこと及び
素材1の逃げ場所がなくなったことに起因するものと考
えられる。
【0038】それ故、この結果、素材1の流れを良好に
するために、特別に型内圧の上昇を図るという必要性は
なくなり、そのための手段である大きな鍛造バリの生成
というようなことは不要となった。こうして前記素材1
は、その体積について、前記のような大きな鍛造バリ生
成のための過剰体積分を考慮する必要がなくなり、成品
体積より僅かに大きい程度のものにすれば良いことにな
る。
【0039】なお前記ボス部2aには、この工程ではま
だ軸孔は形成されない。またこの工程では、図4(a)、
(b)に示すように、前記素材1の若干の過剰体積分が薄
い鍛造バリ9となって連結板部3a及び爪部4a、4a
…の周囲に生成する。
【0040】そこで次の工程では、直ちに、上記概形品
の鍛造バリ9を除去する。これは、プレス装置を使用
し、かつ打ち抜き型を用いた打ち抜き法によって行われ
る。一般的な技法である。図5(a)、(b)は打ち抜き後の
概形品の姿を示している。
【0041】以上の打ち抜き工程の後、徐冷する。この
徐冷は、熱間鍛造の工程の後、成形された概形品を自然
に冷却するまで放置することで行われ得る。そしてこの
徐冷は、特別な焼鈍工程を経ることなく焼鈍効果を与え
るものであって、後の工程に好ましい効果を与える。
【0042】前記徐冷の後、図6(a)、(b)に示すよう
に、型m2を用いて、前記概形品の中央ボス部2aに軸
孔2bを打ち抜き、爪部4a、4a…をしごき加工して
延伸しつつ連結板部3aとの間の角度が90度になるま
で折曲するとともに、該爪部4a、4a…の両側部に永
久磁石係止用の段差部4bを形成する。これは該型m2
を用いて一瞬の動作で行われる。
【0043】前記型m2は、図6(a)、(b)に示すよう
に、その上型m2aの中央に軸孔2bの打ち抜き用のポ
ンチpを有し、かつ外周側には爪部4a、4a…をしご
き加工しながら連結板部3aに対して90度になるよう
に折曲するための成形面を備えた成形空間を有している
ものである。
【0044】また前記型m2は、図6(a)、(b)に示すよ
うに、その下型m2bの中央に中央ボス部2a用の空間
を備え、該空間の中央下部に前記ポンチpに対応する孔
を備えたダイdが形成されており、かつ外周側には、爪
部4の両側部の段差部4bに対応する反転状態の段差部
fを備えたものである。なお前記段差部4bは、図7
(a)、(b)及び図8に示すように、各爪部4の両側部に於
いて、中央ボス部2a側が切り欠かれた状態に形成され
るものであり、前記下型m2bの段差部fはこれに対し
て反転状態に形成されたものである。
【0045】したがって、型m2を用い、図6(a)、(b)
に示すように、その下型m2b上に概形品を下向きに載
せ、上型m2aを下降動作させると、まず初めにその中
心のポンチpの下端が該概形品の中央ボス部2aの中心
に当接し、これを抑えた状態になるとともに打ち抜きが
開始される。そしてその直後に上型m2aの外周側成形
面が該概形品の爪部4a、4a…に当接して同様に該概
形品を抑えることとなる。それ故、ポンチpと上型m2
a外周側成形面との双方による概形品の抑え作用によ
り、安定した状態で、該ポンチp及びダイdによる軸孔
2bの打ち抜き、並びに該上型m2a外周側成形面及び
下型m2b外面側成形面による爪部4a、4a…のしご
き延伸、折曲及び段差部4b、4b…の形成が良好に行
われることとなる。
【0046】以上のように、前記上型m2aの下降に伴
って、同時に、該上型m2aの爪部成形用の成形空間を
形成する面で爪部4a、4a…をしごき加工して延伸し
つつ該爪部4a、4a…を前記連結板部3aとの間の角
度が90度になるまで折曲し、更にその折曲によって該
爪部4a、4a…の内面側を下型m2bの爪部成形用の
成形面に圧接させてその両側部に永久磁石係止用の段差
部4b、4bを形成するものである。したがってこの場
合は、最終的には、該爪部4a、4a…が下型m2bの
該当する成形面に概ね直角に圧接されることとなるの
で、良好に段差部4b、4bの成形が行われることとな
るものである。
【0047】前記のように、下型m2bの外周側には、
爪部4の両側部の段差部4b、4bに対応する反転状態
の段差部fが備えられているので、図7(a)、(b)及び図
8に示すように、爪部4の両側には、云うまでもなく、
該段差部fに対して反転状態に段差部4b、4bが形成
される。
【0048】以上の工程の後、得られた概形品を、図9
に示すように、型m3を用いて、整圧する。該型m3
は、精密な所定寸法形状の成品に内形を対応させた上型
m3a及び下型m3bで構成したものであり、これは、
該下型m3bに該概形品をセットし、上型m3aを下降
させて整形圧縮することで行うものである。
【0049】以上の整圧によって、図10(a)、(b)に示
すように、過剰体積分が鍛造バリ11として、連結板部
3aの周囲に張り出すこととなる。この鍛造バリ11
は、引き続いてプレス機械を用いた打ち抜き工程によっ
て除去する。こうして、図11(a)、(b)に示すように、
精密な所定寸法の成品を得ることができる。
【0050】
【発明の効果】したがって本発明によれば、爪部の両側
部に永久磁石を係止するための段差部を備えた回転子鉄
心、即ち、永久磁石発電機用回転子鉄心を、その工程中
に性格の異なる機械切削加工の工程を含むことのない、
鍛造技術のみでの工程で、容易に製造することができる
こととなったものである。特に、永久磁石を係止するた
めの爪部両側の段差部を、他の工程ではなく、爪部を延
伸しつつ折曲する工程で形成することとしたため、極め
て合理的にそれを形成することができることとなったも
のである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は素材から概形品を成形するために用いる
型の概要を示した断面概略説明図。(b)は上記型で成形
され、鍛造バリが除去されていない概形品の概略平面説
明図。(c)は上記型で成形され、鍛造バリが除去された
(c)の概形品をその中心を通過させて両側の爪部間で断
面した概略断面説明図。(d)は鍛造バリを除去した概形
品に軸孔をあけ、かつその爪部に永久磁石係止用の段差
部を成形するために用いる型の該概形品をセットした状
態の断面概略説明図。
【図2】プレス切断された素材を示した概略斜視図。
【図3】素材から概形品を成形するために用いる型の概
要を示した断面概略説明図。
【図4】(a)は上記型で成形された概形品をその中心を
通過させて両側の爪部間で断面した概略断面説明図。
(b)は上記型で成形された概形品の概略平面説明図。
【図5】(a)は鍛造バリを打ち抜き除去した概形品をそ
の中心を通過させて両側の爪部間で断面した概略断面説
明図。(b)は鍛造バリを打ち抜き除去した概形品の概略
平面説明図。
【図6】(a)は鍛造バリを除去した概形品をその下型に
セットし、その上型を下降させて、軸孔をあけ、かつ爪
部を連結板部に対して90度に折曲し、かつ該爪部の両
側部に永久磁石係止用の段差部を成形しようとしてい
る、型の断面概略説明図。(b)は下型にセットした鍛造
バリを除去した概形品を、上型を下降させて、軸孔をあ
け、かつ爪部を連結板部に対して90度に折曲し、かつ
該爪部の両側部に永久磁石係止用の段差部を成形した状
態を示した型の断面概略説明図。
【図7】(a)は上記型で軸孔をあけ、爪部を加工した状
態の概形品をその中心を通過させて両側の爪部間で断面
した概略断面説明図。(b)は上記型で軸孔をあけ、爪部
を加工した状態の概形品の平面説明図。
【図8】図7(b)のA部の拡大図。
【図9】軸孔をあけ、爪部を加工した状態の概形品を整
圧するための型で該概形品を整圧した状態を示した概略
断面説明図。
【図10】(a)は整圧した概形品をその中心を通過させ
て両側の爪部間で断面した概略断面説明図。(b)は整圧
した概形品の平面説明図。
【図11】(a)は完成品の回転子鉄心をその中心を通過
させて両側の爪部間で断面した概略断面説明図。(b)は
完成品の回転子鉄心の平面説明図。
【符号の説明】
1 素材 2a 中央ボス部 2b 軸孔 3a 連結板部 4 成品の爪部 4a 爪部 4b 段差部 9 鍛造バリ 10 連結板部の下面の延長面 11 鍛造バリ M1 型 M2 型 m1 型 m2 型 m2a 上型 m2b 下型 m3 型 m3a 上型 m3b 下型 d ダイ f 段差部 p ポンチ x 爪部成形用の成形空間 y 連結板部成形用の成形空間 z 連結板部成形用の成形空間の下面延長面 θ 連結板部成形用の成形空間の下面延長面と爪部成
形用の成形空間との角度 α 爪部を成形する成形空間と連結板部を成形する成形
空間の下面の延長面との角度
フロントページの続き (72)発明者 加藤 克美 茨城県日立市多賀町1丁目18番3号 株式 会社加藤鐵工所内 (72)発明者 吉沢 雅春 茨城県日立市多賀町1丁目18番3号 株式 会社加藤鐵工所内 Fターム(参考) 5H615 AA01 BB02 PP02 PP04 PP06 SS03 SS25 5H622 CA01 CA06 CB03 PP01 PP10 QA06

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定体積の素材を、後記爪部成形用の成
    形空間が後記連結板部成形用の成形空間の下面延長面上
    から45度〜80度の範囲の角度で立ち上がっている内
    部形状の型を用いた鍛造により、成品に対して近似的な
    寸法の中央ボス部及びその外周に連続する連結板部と、
    上記連結板部より定角度間隔で突出し、成品より若干短
    寸かつ上記連結板部の下面延長面との間の角度が45度
    〜80度である複数の爪部とからなる概形品に成形し、 次いで上記工程で上記概形品の連結板部の外周縁及び爪
    部の両側に生じた鍛造バリを打ち抜き除去し、 その後、上記概形品の中央ボス部の軸孔を打ち抜き、同
    時に爪部をしごき加工して延伸しつつ連結板部と90度
    の角度になるまで折曲するとともに、これによって該爪
    部の内面側を下型の爪部成形用の成形面に圧接してその
    両側部に永久磁石係止用の段差部を形成し、 更に上記概形品を整圧して精密な所定寸法の成品を得る
    ようにした永久磁石交流発電機用回転子鉄心の製造方
    法。
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