JP2002277376A - 近接場光プローブおよび近接場光記録再生装置 - Google Patents

近接場光プローブおよび近接場光記録再生装置

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JP2002277376A
JP2002277376A JP2001075653A JP2001075653A JP2002277376A JP 2002277376 A JP2002277376 A JP 2002277376A JP 2001075653 A JP2001075653 A JP 2001075653A JP 2001075653 A JP2001075653 A JP 2001075653A JP 2002277376 A JP2002277376 A JP 2002277376A
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opening
reflector
optical
probe
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JP2001075653A
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Katsutaro Ichihara
勝太郎 市原
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Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 近接場光記録において、プローブ開口周囲の
反射体からの加熱による記録媒体上の不必要な溶融を防
止し、開口サイズ程度の記録マークを高感度かつ広いパ
ワーマージンで形成する。 【解決手段】 波長未満のサイズの開口を有する光学プ
ローブの周囲に形成される反射体の膜厚を、記録媒体に
対向する開口周囲では薄く設定し、それ以外の領域で厚
く形成して、開口周囲の反射体の熱を後方あるいは側方
に逃がすヒートシンク構造にする。反射膜の周囲に、放
熱フィンあるいは熱絶縁体を設けると放熱効率がさらに
高まる。また、媒体の最表層に高屈折率膜を配すること
で、開口と媒体のカップリング効率を高める。光学プロ
ーブの開口形状を、長方形状、長円形状などのスリット
状にし、かつ、開口に入射する光電界の振動方向が開口
の長軸と平行になるように入射光を導く。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、近接場光を利用し
て情報を記録する近接場光記録再生装置および近接場光
記録に用いられる近接場光プローブに関する。
【0002】
【従来の技術】光ビームを集光系を介して絞込み、記録
媒体に照射して情報の記録を行う光記録装置は、大容量
性、非接触高速アクセス性を有する記憶装置として実用
に供されている。従来の光記録装置においては、記録密
度は媒体に照射する光の波長(λ)と対物レンズの開口
数(NA)で制限されており、λ/(4NA)が光学系
の分解能であり、この分解能以下の記録マークを再生す
ることはできなかった。
【0003】例えば、次世代光記録装置への採用が提案
されている波長400nmの青紫色レーザと、開口数
(NA)が0.85の対物レンズを用いた場合、再生可
能なマークのサイズもしくは間隔は、約120nmに制
限されることになる。このような分解能の限界が、従来
の記録密度を制限していた。
【0004】このような通常の対物レンズを用いた集光
系の検出分解能の限界を打破するため、近年では、新た
な集光方式として、近接場光が注目を集めている。近接
場光とは、屈折率の高い媒質から低い媒質に臨界角以上
の角度で電磁波を導入するとき、低屈折率の媒質側に、
境界面から1波長程度の深さまで浸透している非伝伝播
性の電磁場(エバネセント場)である。たとえば光記録
プローブの微小光学開口の近傍には、光ファイバの先端
を絞り込んだプローブの先端と空気との境界の、空気側
に、エバネセント場が生じる。この非伝播性のエバネセ
ント場に記録媒体表面が入るように、記録媒体をプロー
ブ先端に近接して配置すると、近接場相互作用により伝
播性の光が生じる。エバネセント場に生じる伝播性の光
を利用して記録、再生を行なうのが近接場光記録再生で
ある。
【0005】このとき、光学プローブの光出射部に設け
られる微小光学開口の周囲は、通常、反射体によって被
覆され、開口以外の部分からの漏れ光が媒体へ入射する
のを防止する。また、光学プローブの中核となる光ファ
イバの光出射部(すなわち先端部)以外の部分の径は、
プローブを導波する光の伝播損失を低減化する目的で、
光の波長程度あるいはそれ以上に設定される。
【0006】記録動作は、記録媒体表面のうち、照射し
た部分を光エネルギーでアモルファス状態にし、照射を
停止して急速に温度を下げることによって、アモルファ
ス状態のまま固化する。再生は、記録が行なわれている
アモルファス状態の部分と、記録されていない結晶状態
の部分との反射光を調べることによって、情報を読み出
す。エバネセント場に生じた伝播性の光の強度もしくは
位相は、媒体の光学情報を担うため、通常の検出手段に
よって、媒体上に記録した情報を得ることができる。情
報検出手段は透過型でも反射型でも構わないが、反射型
の方が媒体設計の自由度が高い。
【0007】近接場光記録再生の分解能は、波長や対物
レンズの開口数ではなく、プローブ先端の微小光学開口
のサイズで決定される。例えば、直径500nmの光フ
ァイバー先端を絞り込み、数10nmの光学開口を残し
てその他の先端部を金属などの反射体で被覆した場合、
分解能は、ほぼ光学開口のサイズに一致する数10nm
にすることができる。すなわち、近接場光を利用するこ
とによって、対物レンズを用いた集光系よりも格段に分
解能が向上する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これまで提案
されている近接場光記録は、分解能が著しく向上すると
いう利点を有する反面、光学プローブに入射した光のほ
とんどは、絞り込まれた先端近傍で光学開口の周囲に設
けられた反射体に吸収され、反射体からの加熱により、
記録媒体の表面が溶融するという重大な問題があった。
すなわち、波長よりも一桁程度小さい微小開口を設けた
近接場光プローブにおいては、光入射側からみた場合、
反射体の面積は開口の面積に比較して、桁違いに広い。
このため、入射光のごく一部だけが開口から媒体側へ出
射し、大半は反射体に照射されて反射体の温度上昇を招
く。本来は開口から照射した光によって媒体加熱して記
録マークの形成を行いたいのだが、開口直下の媒体温度
上昇よりも先に反射体の温度が媒体の記録温度以上に昇
温してしまうため、反射体からの伝熱によってマークが
形成されてしまう。この結果、開口サイズに対応した記
録マークが形成されずに、反射体部分相当の大きな記録
マークができてしまうのである。
【0009】従来この問題に対しては、主に光学プロー
ブ先端をさらに先鋭化し、反射体側壁と媒体との距離を
離す手段が用いられていた。図9は、先端を先鋭化した
従来の光プローブの例を示す。テーバ状に加工した光伝
播部103の側壁に、一定の膜厚の反射体102が形成
されている。しかし、光プローブ100の先端をいくら
先鋭化したとしても、開口101の周囲には、有限の厚
みtを持った反射体103が存在するという状況に変わ
りはななく、記録媒体105に形成される記録マーク1
04のサイズは、開口101の内径dと反射体103の
厚みtで決定され、予定する解像度が達成できないとい
う問題が残る。
【0010】また、先端がテーバ状に先鋭化された光学
プローブは、テーバ状になった部分での光損失が大き
く、光の伝播効率が著しく低くなるという問題もあっ
た。
【0011】さらにまた、有限な厚みを有する開口部の
伝播効率は、長方形あるいは長円形の開口を用い、光電
界の振動方向が開口の長辺あるいは長軸と平行となるよ
うな直線偏光を入射させると、格段に改善されることが
知られている(たとえば特願平11−373067号)
が、端部が先鋭化された光学プローブでは、長方形状も
しくは長円形状の開口を設けること自体が困難だった。
【0012】さらにまた、開口を介して反射型の再生を
行う際に、直線偏光の光を用い、検出系で反射体からの
反射光に対して消光を取ることによって、再生SNRを
格段に改善することが提案されている(特願2000−
200259号)が、先端が先鋭化された従来の光学プ
ローブでは、入射光のうち、先鋭化された部分を取り巻
く反射体からの反射光が、プローブ内部で多重散乱され
て偏光面が乱れるため、反射体からの戻り光に対して消
光を取るのが困難であった。
【0013】そこで本発明は、上述した従来技術が抱え
ていた問題点を解決する近接場光プローブと近接場光記
録装置を提供することを目的とする。
【0014】すなわち、本発明の第1の目的は、開口周
囲の反射体の過度な温度上昇による記録マークの膨張を
防止し、所望とする記録マークを正確に形成することの
できる近接場光プローブと、近接場光記録装置を提供す
ることにある。
【0015】第2の目的は、光プローブおよびその開口
自体を伝播効率の高いものとし、このような光プローブ
と開口と組合わせた場合にも、開口と同程度のサイズの
マークが記録可能な近接場光プローブと近接場光記録装
置を提供することにある。
【0016】第3の目的は、光プローブを反射体からの
戻り光に対して消光が取りやすい構成とし、このような
構成のプローブを用いた場合においても、開口と同程度
のサイズのマークが記録可能である近接場光プローブお
よび近接場光記録装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記目的のうち、反射体
による媒体過熱を防止するために、第1として、ヒート
シンク構造の反射体を使用する、第2として、バルクの
ヒートシンクと反射体とを熱的に接触させる、第3とし
て、開口周囲の反射体と媒体の間に熱絶縁体を設けるこ
とが挙げられる。
【0018】具体的には、本発明の第1の特徴である近
接場光プローブは、入射光を伝播させる光伝播部と、光
伝播部の端部に形成され、入射光の波長未満のサイズを
有する光学開口と、光学開口の周囲および光伝播部の周
囲を覆う反射体とを備える。光伝播部は、その径が前記
入射光の波長よりも大きい第1領域と、その径が前記入
射光の波長よりも小さい第2領域とを有し、反射体は、
光伝播部の第1領域を覆う反射体の膜厚が、開口周囲の
反射体の膜厚よりも大きく設定されている。
【0019】開口周囲の反射体の厚みは、開口部以外か
らの光の漏れがない程度に厚く、かつ、開口部での伝播
損失を可能な限り低減できる程度に薄い。反射体として
Ag,Au,Cu,Alなどの高反射率の金属を用いた
場合、開口周囲での膜厚は50−200nm、より好ま
しくは75−150nm程度である。前述したように、
この部分は開口のサイズに比べるてかなり大きく、入射
光の多くの部分を吸収して高温になりやすい。本発明で
は、開口から離れた部分、すなわち光伝播部の第1領域
を覆う反射体の厚みを、開口付近の厚みよりも厚く形成
する。これにより開口付近の反射体の熱が、開口から離
れて反射体部に速やかに伝わり、反射体の過度な過熱を
防止する。開口から離れた反射体部、すなわち光学プロ
ーブ内径が光の波長程度に広がっている第1領域では、
光損失がなく、入射光により加熱されない。このような
冷却状態にある位置に、開口近傍の加熱された反射体の
熱を積極的に逃がすのが、ヒートシンク構造である。
【0020】したがって、冷却状態にある第1領域の反
射体の膜厚は、十分なヒートシンク体として作用する程
度の厚みであることが好ましいが、製造性を極端に損ね
ない程度には薄いことが好ましい。反射体としてAg,
Au,Cu,Alを用いた場合には、冷却状態にある反
射体の厚みは数100nm−数10μm、好ましくは数
μmである。
【0021】光伝播領域の第2領域は、たとえばテーバ
状にその径が減少する。この場合、反射体は、開口から
第2領域に沿って第1領域に至るまで、その厚さが連続
的に増大する構成とする。このような膜厚の傾斜は、た
とえば光学プローブの先端を加工した後に、開口の設け
られるべき部分の斜め後方から反射体をスパッタもしく
は蒸発させ、プローブを回転させれば形成できる。開口
近傍の反射体の膜厚は重要な因子なので、必要に応じて
上記した回転斜め後方スパッタの前か後に、開口の設け
られるべき位置の正面から反射体をスパッタするなどし
てもよい。
【0022】反射体による媒体の過度な昇温を防止する
第二の手段として、少なくとも開口周囲と第1領域の周
囲の反射体のさらに周囲に、バルク型の放熱フィンを設
ける。
【0023】すなわち、近接場光プローブは、(i)入射
光を伝播させ、その径が前記入射光の波長よりも大きい
第1領域と、その径が前記入射光の波長よりも小さい第
2領域とを有する光伝播部と、(ii)光伝播部の第2領域
の端部に形成され、入射光の波長未満のサイズを有する
光学開口と、(iii)開口の周囲および光伝播部の周囲を
覆う反射体と、(iv)少なくとも前記開口および第2領域
に形成された反射体の周囲を取り巻く放熱フィンとを有
する。
【0024】反射体の膜厚は、上述のヒートシンク型と
同様に、開口周囲での膜厚よりも第1領域での膜厚が大
きくなる構成でもよいし、ほぼ均一な膜厚としてもよ
い。バルク放熱フィン型のプローブの形成は、光伝播部
周囲に反射体を形成した後に、Al合金製のバルク放熱
フィンに光学プローブの外径程度の孔を設けて、この孔
にプローブを挿入する。プローブ側壁の反射体と放熱フ
ィンの熱接触を良好にする上では、プローブを挿入する
前に放熱フィンを過熱してフィンに設けた孔を熱膨張さ
せる。あるいは、プローブを冷却してプローブの外径を
熱収縮させた後に、プローブをフィンの孔に挿入し、フ
ィンを室温に冷却するか、プローブを室温に昇温するか
すれば、プローブとフィンは熱的に一体化する。光照射
時にプローブ先端の反射体の熱がフィンに放熱されて、
反射体の過度な温度上昇を防止することができる。
【0025】反射体による媒体の過度な温度上昇を防止
する第3の手段は、開口周囲の反射体と媒体の間に熱絶
縁体を設けることである。すなわち、近接場光プローブ
は、(i)入射光を伝播させる光伝播部であって、その径
が前記入射光の波長よりも大きい第1領域と、その径が
前記入射光の波長よりも小さい第2領域とを有する光伝
播部と、(ii)光伝播部の第2領域の端部に形成され、前
記入射光の波長未満のサイズを有する光学開口と、(ii
i)開口の周囲および前記光伝播部の周囲を覆う反射体
と、(iv)少なくとも開口および第2領域に形成された反
射体の周囲を取り巻く熱絶縁体とを有する。
【0026】熱絶縁体は、たとえば、開口の先端部に対
して反射体を媒体面からリセスさせ、このリセス部に熱
伝導率の低い熱絶縁体を設ければ、先鋭化された先端形
状のプローブでなくとも、反射体による媒体の加熱を防
止することができる。開口周囲の反射体は、開口部の光
出射部において実質的に厚みがゼロになる様に加工する
のがよい。このような加工は反射体もしくは開口部をテ
ーパ加工することで実施可能である。これにより、媒体
への光出射部の周囲の反射体による加熱を防止できる。
上述した加熱防止プローブは、従来型の先端が先鋭化さ
れたプローブに対しても有用であるが、先端が比較的平
坦面を為すプローブを用いた場合に、さらに有用であ
る。従来は先端を平坦にすると、媒体に近接する反射体
部の面積が増大して、反射体による媒体の過度な過熱は
より広い領域に拡大し高密度の記録が困難となったが、
本発明を用いれば、先端が平坦なプローブを用いても反
射体による媒体の過度な加熱を防止できる。
【0027】先端が平坦なプローブの利点は、伝播効率
が高い点、開口形状の自由度が高い、近接光プローブ搭
載ヘッドとしての阻止形成が容易な点などである。プロ
ーブ先端の内側は緩やかなテーパ状でも平面状でもよい
し、テーパは多段に設けられていても良い。プローブ先
端の外側は開口よりも広い範囲に亘り媒体面と平行な面
が設けられている。この平行な面の媒体側最表面は反射
体そのもの、もしくは熱絶縁体、もしくは摩耗特性上必
要に応じて設けられるDLC(diamond-like carbon)
などの硬質膜、もしくはパーフローロカーボン系の潤滑
層である。いずれの場合においても、反射体による媒体
の過度な加熱を防止するのは、反射体のヒートシンク構
造、放熱フィン構造、もしくは熱絶縁体構造である。
【0028】上記の先端が平坦なプローブを用いること
で、伝播効率の高い長方形状もしくは長円形状の開口の
形成が容易になり、反射体からの戻り光に対して消光を
取るのが容易になる。
【0029】本発明の第2の特徴である近接場光プロー
ブは、入射光を伝播させ、入射側と反対側に端部を有す
る光伝播部と、光伝播部の端部に設けられたスリット状
の光学開口と、光学開口の周囲および前記光伝播部の周
囲を覆う反射体とを備える。反射体は、光学開口周囲に
おける膜厚よりも、開口周囲以外の部分での膜厚が大き
く設定される。また、スリット状の光学開口の長軸は、
入射光の波長の0.43倍以上、1倍未満に設定され
る。
【0030】本発明の第3の特徴として、上述した光プ
ローブを用いた近接場光記録再生装置を提供する。この
光記録再生装置は、光源と、光源から照射される照射光
の波長よりも小さいサイズの光学開口を有する光プロー
ブと、光源からの光を光プローブに導く第1の光学系
と、媒体を前記光プローブの光学開口に近接対向して配
置させる位置制御手段とを備える。光プローブは、照射
光を前記開口に導く光伝播部と、光学開口の周囲および
前記光伝播部の周囲を覆う反射体とを有し、反射体の膜
厚は、媒体に対向する光学開口の周囲での膜厚よりも、
開口周辺以外の部分での膜厚が大きく設定される。
【0031】光学開口はスリット状の開口であり、第1
の光学系は、前記照射光の光電界方向が、前記開口にお
いて、開口の長軸方向と平行になるように照射光を導
く。これにより、高い伝播率で照射光を媒体状の所望の
位置に照射させ、開口サイズに相当する記録マークを形
成することが可能になる。開口の形状として、好ましく
は、照射光の波長をλとしたときに、開口の長軸の長さ
が0.43λ以上、λ未満である。この範囲では、照射
光のTE成分とTM成分の双方が高い透過率で開口を通
過することが可能になる。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態を説明する。
【0033】<第1実施形態>第1実施形態では、光学
プローブ単体の構成について説明する。
【0034】図1は光学プローブを含む光ヘッドの主要
部の概略構成例である。図1(a)は、光源の光をフォ
トカプラ3を介して、ファイバーもしくは導波路2によ
りプローブ1へ導くタイプ、図1(b)は、面発光レー
ザダイオードもしくは端面発光LD4から照射される光
をテーパ状の導波路5によりプローブ1に導くタイプ、
図1(c)は、対物レンズ6を介してプローブ1へ光を
導くタイプの構成例である。
【0035】図1において、一点鎖線で示す矢印は、ア
クセス時(記録時)の光の進行方向を示している。プロ
ーブ1は、その先端に光学開口(図2)を有し、その直
下に記録媒体(不図示)が配される。反射型の再生を行
う場合には、図1で矢印で示す光の方向とは逆向きに再
生光が進行する。
【0036】図2(a)〜(e)は、第1実施形態に係
る光学プローブの構成例を示す。図2(a)および2
(b)はヒートシンク構造の光学プローブを、図2
(c)はバルク放熱体構造の光学プローブを、図2
(d)、(e)は熱絶縁体構造の光学プローブの例であ
る。
【0037】図2(a)および(b)に示すヒートシン
ク型の光学プローブは、光伝播部13の周囲に、反射体
12を有し、プローブ先端に光学開口11を有する。光
伝播部13は、たとえば光ファイバである。光伝播部1
3の光入射側(図2の上側)では、その内径が光の波長
よりも大きくなるように設定され、開口11の付近でテ
ーパ状(図2(a))もしくは平面状(図2(b))に
絞り込まれ、開口の内径は波長よりも小さく設定され
る。伝播部13の光入射側の内径は、たとえば数μmか
ら数10μmである。一方、開口11のサイズは記録密
度で決定されるが、100nm以下、好ましくは数10
nm程度である。第1実施形態では、開口11の内径を
25nm(1インチ平方あたり1Tbの面密導に相当)
に設定する。
【0038】伝播部13の内径が波長よりも大きい領域
では、光は直進し、反射体12は光を吸収しないため、
加熱が起こらない。伝播部13の内径が波長よりも小さ
くなっている領域、すなわち図2(a)においてはテー
バ状になっている領域、図2(b)においては、平面状
に絞られた開口11において、入射光の一部は反射体1
2に吸収され、反射体12を加熱する。
【0039】図2(a)および2(b)に示すヒートシ
ンク構造のプローブの特徴は、反射体のうち、光によっ
て加熱される領域12aの厚みtに比べて、光による加
熱を受けない領域(冷却部)12bの反射体の厚みの方
が厚く形成されている点と、開口11付近の加熱領域1
2aと冷却部12bが熱的に連結している点にある。こ
の2つの特徴によって、入射光によって加熱された加熱
領域12aの熱は、効率的に、冷却領域12bに逃げ
る。図2(a)の構成では、熱は斜め上方に逃げ、図2
(b)の構成では、加熱部12aの熱は水平方向に逃げ
る。
【0040】開口11までの伝播してきた光の一部は、
開口から出射して近接場(エバネセント場)を形成し、
近接場領域内に存在する媒体と相互作用を起こし、媒体
への記録もしくは媒体からの再生を行う。開口11近傍
の反射体12の膜厚は、開口以外の部分から光が外部に
漏れない程度に厚く、又、開口通過時の光の伝播損失を
抑える程度に薄い。反射体12としてAg,Au,C
u,Alを用いた場合、入射光が可視の波長領域にある
場合、加熱部12aの膜厚tは50〜200nm、より
好ましくは75−150nm程度、典型的には100n
m程度である。開口以外の部分から光が出射しないため
には、最低50nmの膜厚が必要だからである。開口1
1付近で100nm程度の厚みを有する反射体12は、
光伝播部を伝播してきた入射光により加熱されるが、上
述したヒートシンク構造、すなわち、加熱部12aより
も冷却部12bの膜厚が大きく、かつ加熱部12aは冷
却部12bに直結されているという構造により、プロー
ブ先端に対応する加熱部12aの熱は、効率良く後方の
冷却領域12bに放熱されるので、開口11付近の反射
体12が過度に加熱されるのを防止できる。
【0041】図2(a)の膜厚分布型のヒートシンク構
造を形成するには、例えば、プローブの光進行方向の軸
を回転軸として回転させながら、開口11が設けられる
べき先端部の斜め後方から、反射体材料をスパッタもし
くは蒸着させれることによって形成される。スパッタ源
もしくは蒸発源とプローブの角度を調整することによ
り、所望の膜厚分布を有するヒートシンク構造のプロー
ブを得ることができる。必要に応じてプローブ先端部付
近にマスクをかけて反射体の形成を行っても良い。
【0042】図2(b)の平面状先端部11を有するプ
ローブの場合は、プローブを回転させながらプローブの
横側から反射体を形成するか、開口11付近にマスキン
グしてから横側成膜を行った後に、開口の設けられる下
面から所定の膜厚反射体を形成し、最後にFIB(focu
sed ion beam)加工などで開口を設ければよい。
【0043】図2(c)は、バルク放熱フィン構造の近
接場光プローブである。上述した放熱構造は、バルクの
放熱フィン構造を用いても同様に実現できる。図2
(c)の構造では、バルク放熱フィン14を有するの
で、反射体12自体の膜厚は伝播部周囲において膜厚が
変化して分布しても、均一であっても構わない。この近
接場光プローブを作製するには、放熱フィンの付いたバ
ルク放熱体14の中央部にプローブ外径よりもやや小さ
い程度の孔を空けておき、放熱体14を加熱して、熱膨
張により孔のサイズを大きくした状態で、所望の形状に
加工し反射体12を設けた伝播部(光ファイバなど)1
3を挿入して冷却すると、熱接触の良好な放熱体一体型
プローブを形成することができる。
【0044】放熱体14はプローブ外壁先端部まで設け
てもよいし、適当に記録媒体面側からリセスさせてもよ
い。又、図2(c)ではプローブ先端部が2段階にテー
パ状に絞り込まれている例を示したが、単純な一段テー
パでも、三段以上の多段テーパでも平面状でも構わな
い。この点については、他のタイプのプローブにも共通
に言えることである。
【0045】このような放熱フィンは図2(a)、
(b)の構成に比較して冷却効果が高い。他方で、図2
(a)、(b)の光プローブが薄膜プロセスで比較的容
易に形成されることに対し、バルクを用いるので、作製
工程が若干増える。
【0046】図2(d),(e)は、熱絶縁体型光プロ
ーブの例を示す。このタイプの光プローブの特徴とし
て、反射体12を取り囲んで、記録媒体と対向する面
に、耐熱部材16および低熱伝導率の熱絶縁体15が設
けられている。反射体12から記録媒体面への加熱を防
止する目的であるので、図2(a)〜(c)のようなヒ
ートシンクや放熱フィンを有さない代わりに、光伝導部
13の先端近傍の反射体12の膜厚をできる限り小さく
し、開口出射部での実質的な膜厚をゼロに設定するのが
よい。また、開口周囲の耐熱部材16で開口11以外の
部分から外部への光の漏れを防止し、かつ、耐熱部材1
6および熱絶縁体15で、記録媒体表面への加熱を防止
している。
【0047】もっとも、熱絶縁体15を図2(a)〜
(c)のヒートシンク構造または放熱フィン構造と併用
する場合は、開口周囲の反射体12は、100nm程度
の膜厚を有してもよい。
【0048】図2(d)のような単純なテーパ構造は、
図2(a)と同様に、回転斜め後方スパッタ法で形成す
ることができる。図2(e)のような、平面構造におけ
るテーパの形成は、例えば、電界放出エミッターの製法
として知られているスピント法(回転斜め蒸着法)など
を適用すればよい。熱絶縁体15としては、無機誘電
体、特に酸化物、硫化物のように熱伝導率の低いものか
らも選べるし、さらに熱伝導率の低い有機物から選ぶこ
ともできる。有機物を選択した場合、テトラフローロエ
チレンのようにに耐熱性の良いものは別として、耐熱性
に乏しい材料を選択する場合には、図2(d)に示すよ
う無機誘電体などからなる耐熱部材16を、プローブ外
壁と熱絶縁体15の間に設けるのがよい。熱絶縁体1
5、耐熱部材16ともに、バルク材料を用いてもよい
し、薄膜プロセスを利用して形成してもよい。有機系熱
絶縁体の薄膜プロセスには、プラズマ重合法が好適であ
る。
【0049】図2に示す第1実施形態の各種光学プロー
ブの中では、(a),(d)に示す先端部が一段テーパ
のプローブよりも、(b),(c),(e)に示す先端
部が平面状もしくは多段テーパ状のプローブの方が、プ
ローブとしての伝播効率は格段に良好であり好ましい。
なお、図2は本発明の実施形態の一部を例示したに過ぎ
ず、図2に示した構成の組み合わせ、あるいは形状のバ
リエーションは、自由に選択することが可能である。
【0050】<第2実施形態>図3は本発明の第2実施
形態に係る近接場光記録再生装置の一例を示す。第2実
施形態では、第1実施形態で説明した光学プローブを静
止記録装置に適用して、記録再生を行うものである。
【0051】図3の記録再生装置は、光源501、カプ
ラ506、ファイバ507、光学プローブ508を含む
光ヘッド部と、記録媒体510と、開口と記録媒体との
相対位置を制御するための位置制御系、および再生ピッ
クアップ系を含む。
【0052】より具体的には、図3の近接場記録再生装
置の光ヘッド部は、記録再生用光源501、偏光子50
2、入射側1/2波長板、入射側1/4波長板504、
ビームスプリッタ505、カプラ506、ファイバ50
7、光学プローブ508を含む。光学プローブ508
は、図2に示した第1実施形態の光プローブであり、ビ
ームの波長よりはるかに小さい光学開口509を有す
る。このプローブを用いることにより、記録媒体510
を不必要な領域にまで加熱することはなく、開口509
のサイズに相当する記録マークを形成することができ
る。
【0053】位置制御系は、光学開口509と記録媒体
510との位置関係を制御する位置制御系は、レーザ5
17、光検出器508、ロックインアンプ519、ピエ
ゾ素子520、ピエゾステージ521、ステージコント
ローラ522、シアフォースコントローラ523を含
む。
【0054】再生ピックアップ系は、検出側1/4波長
板511、検光子512、アバランシェフォトダイオー
ド(APD)513、フォトンカウンター514を含
む。
【0055】位置制御系およびピックアップ系は、コン
ピュータ515に接続される。コンピュータにはまた、
ディスプレイあるいはプリンタなどの出力装置516が
接続される。
【0056】図3において、記録動作に必須な構成は、
光源501、カプラ506、ファイバー507、光学プ
ローブ部508からなる光ヘッド部、記録媒体510、
位置制御系のみであり、他は省略してもよい。また、再
生動作についても、SNRに問題がない場合には、偏光
子502、入射側λ/2板503、入射側λ/4板50
4、検出側λ/4板511、検光子512は必ずしも必
要ではない。また、図3の例では、光ヘッド部に、図1
(a)のタイプを用いているが、図1(b),(c)い
ずれのタイプにも置き換えることができる。
【0057】光学プローブ部508として、図2に示し
た各種のプローブを取り付けて記録再生実験を行ない、
比較例として、図9に示した従来技術の光学プローブを
取り付けて同様の実験を行った。この実験で用いたプロ
ーブは全て光入射側の内径を2μm(断面ほぼ真円形)
とし、開口形状はほぼ真円形、開口直径は50nmとし
た。反射体としてはAgを用い、反射体の開口周囲部の
厚みは100nmとした。
【0058】媒体サンプル510としては、通常の光記
録に用いられている材料系をそのまま用いることが可能
であり、例えば、光磁気媒体、相変化媒体、色素系媒
体、再生専用媒体などが挙げられる。光磁気媒体を用い
る場合は、図3の記録再生装置は、媒体に記録磁界を印
加するための手段を有するのが好ましい。
【0059】近接場光による記録で用いる記録媒体の通
常の媒体との違いは、媒体最表層近傍に記録層が設けら
れている点である。媒体の構成は相変化媒体の場合に
は、例えば、基板、反射層、干渉層、記録層、保護層で
ある。基板はガラス、Siなど、表面が平坦平滑なもの
が好ましいが、ファイバーと媒体間の距離は能動制御さ
れているので、通常の光記録媒体に用いられているポリ
カーボネイト基板の使用も可能である。反射層と干渉層
は特に必須ではないが、再生時のコントラスト比をエン
ハンスする上では設けた方が望ましい。
【0060】反射層は、例えばAl,Ag,Au,Cu
及びそれらを主成分とする合金である。干渉層はSi−
O,Si−N,Zn−S,Zn−S+Si−O,Al−
N,Al−O,Zn−O,In−O等、金属酸化物、金
属窒化物などから幅広く選択することができる。上記の
表記において、金属もしくは半導体元素と、酸素もしく
は窒素との間のハイフンは、化学両論組成から多少ずれ
ても使用できることを意味している。
【0061】記録層は例えば10nm厚のGe−Sb−
Te合金である。保護層は特に設けなくてもよいが、記
録層の酸化防止と機械的保護のために設けるのが望まし
い。保護層は例えば5nm厚のDLC(diamond-like c
arbon)膜である。各層の形成はスパッタリング法を用
いて行うのが代表的であり、成膜後、初期化装置もしく
は真空加熱炉などを用いて、記録層を初期結晶化する。
初期結晶化は必ずしも必要ではないが、繰り返し記録特
性を保持する上では初期結晶化するのがよい。
【0062】図3の近接場記録再生装置を用いた記録再
生動作は、以下の通りである。
【0063】まず、ピエゾステージ521の上に媒体サ
ンプル510を載せた後、ファイバー507を粗動調整
して媒体表面に近付ける。位置決め用光源517から位
置検出光をファイバー507の先端部付近に照射し、反
射光を位置決め用光検出器518で検出する。検出器5
18の信号はロックインアンプ519で増幅され、増幅
信号がピエゾ素子520を駆動して、ファイバー先端部
を微動調整する。これにより、プローブ508の開口5
09を、サンプル510の表面に数10nm程度の距離
に近接配置する。
【0064】ロックインアンプ519の出力はまた、シ
アフォースコントローラ523にも入力される。シアフ
ォースコントローラ523は、ロックインアンプ519
の出力とコンピューター515からの位置信号を受け
て、サンプル510と開口509の間隔を保持した状態
で、サンプルを面内方向に移動させる信号を出力する。
この出力信号はステージコントローラ522に入力さ
れ、ピエゾステージ521を媒体面方向に駆動して、サ
ンプル上の所定の位置への記録を可能とする。
【0065】このような位置制御状態を維持したまま、
記録用光源501を点灯し、記録光を出射させ、偏光子
502、λ/2板503、λ/4板504、ビームスプ
リッタ505、カプラ506を介してファイバー507
に導く。偏光子502は、光源501からの出射光を直
線偏光にし、λ/2板503で偏光方向を調整し、λ/
4板504で、ファイバ507で生じる楕円偏光を相殺
し、開口508で所望の方向の直線偏光になるようにあ
らかじめ調整する。
【0066】記録光は、ファイバ507をほとんど無損
失で伝播し、光学プローブ部508に到達する。光学プ
ローブ508内を伝播する入射光の一部が、光学開口5
09付近に近接場光を形成する。この近接場光は、開口
509に近接配置された媒体サンプル510の表面記録
層と相互作用して、記録マークの形成を行う。
【0067】第2実施形態では、記録光はパルス的に照
射し、サンプル510と開口509の間隔を位置制御し
た状態のまま、ピエゾステージ521により、サンプル
510をサンプルの水平面方向に数10μm/secの
速度でゆっくりと送り、所定の長さの記録マークを形成
する。サンプル510が相変化媒体である場合、記録は
非晶質マークを形成することによって行われる。すなわ
ち、光源501から、記録パワーレベルの光を照射し
て、サンプル表面近傍の記録層を溶融してアモルファス
状態にし、その後急冷して室温に非晶質状態をクエンチ
する。非晶質マークと非晶質マークの間は結晶スペース
であり、マークの位置、長さ、スペースの位置、長さな
どを情報信号列として利用することができる。
【0068】マークの消去(結晶化)は、記録レベルよ
りも低い消去パワーレベルの光を照射して、記録層を結
晶化温度以上、融点未満に保持して行われる。再生は記
録層が結晶化温度未満に保持される程度の再生パワーレ
ベルの光を照射して、非晶質マークと結晶スペースの光
学コントラストを検出して行う。コントラストは反射率
差であっても位相差であってもよい。
【0069】本発明においては、記録・消去・再生いず
れもファイバーを介して実施することができるが、再生
は透過モードを採用してもよい。その場合は図3の媒体
サンプルの下側に信号検出系が配置される。
【0070】反射型の再生動作では、図3に示すよう
に、サンプル510からの反射光を再度開口509を介
して光学プローブ508に導き、ファイバー507、カ
プラ506を介してビームスプリッタ505で90℃屈
折させ、λ/4板511、検光子512を介して信号検
出用の光検出器513に入射させる。光検出器513は
アパランシェフォトダイオード以外のものを用いてもよ
い。検出器513の出力はフォトカウンタ514に入力
され、信号強度がカウントされる。このカウント値はコ
ンピュータ515に入力され、記録信号として再生され
る。再生信号は最終的にディスプレー516の画面上に
出力されるとともに、コンピュータに内蔵されたHDD
に記録される。
【0071】図3の構成の記録再生装置に、図2に示す
種類の光学プローブ、および図9に示す従来の光プロー
ブを用いて行った記録実験を以下に説明する。
【0072】記録用光源501として波長633nmの
He−Neレーザを用い、A/O(acoustic/optical)
変調器を介してパルス的に光を照射した。媒体サンプル
としては前述した相変化媒体を使用し、開口と媒体表面
の間の距離は20nmに保持した。記録パルス幅と、フ
ァイバー入射端における光パワーをパラメータとして静
止記録実験を行い、記録後に記録閾値パワー(Pth)
の1/10のパワーの光をスキャンして非晶質マークの
観察を行った。
【0073】図4は、この記録実験結果を示す。図4に
おいて、縦軸は記録実験後に再生系を用いて観察した非
晶質記録マークのサイズ(直径)、横軸はファイバーへ
入射する記録光のパワー(Pi)を示している。図4の
例では、記録光のパルス幅(τ)は10μsecとし、
媒体静止であるパワーのパルスを一回照射した後、記録
位置を変えて異なるパワーのパルスを一回照射する、と
いう実験を繰り返した後、再生光をスキャンしながら記
録したマークのサイズを観察した。
【0074】図4のグラフ中の3本の曲線のうち、左側
の曲線は、図9に示す従来の光プローブを用いて記録し
たもの、右側の曲線が、図2(a)および(d)に示す
本発明の光学プローブを用いて記録したもの、真ん中の
曲線が図2(b)、(c)、(e)に示す本発明の光学
プローブを用いて記録したマークの観察結果である。
【0075】プローブ(b)、(c)、(e)の間で
は、マークサイズとパワーの関係に大きな差異は見られ
なかったので、プローブ(b)を用いて得られた結果を
代表として描いてある。同様にプローブ(a)、(b)
も大差がなかったので、プローブ(a)の結果を代表と
して描いてある。プローブ(b)の曲線上に示したPth
は記録しきい値パワーを、Pabは記録マークの中央部付
近に記録膜の熱的損傷が発生した時点のパワーを示して
いる。他の曲線に関しても、マークサイズがゼロから立
ち上がり始めるパワーをPth、曲線の右端に×印で示し
たパワーがPabである。
【0076】図4からわかるように、図2に示す本発明
の光学プローブを用いた場合、開口サイズ(50nm)
とほぼ同等のサイズの記録マークが、比較的幅広いパワ
ーマージンで形成できるのに対し、比較例としての従来
の光プローブを用いた場合は、開口と同等のサイズのマ
ークはPthのごく近傍で、ほとんどパワーマージンのな
いパワー領域で形成されるだけである。このような従来
のプローブの出力特性では、開口サイズ相当のマークを
安定して記録するのは困難である。図4の曲線に現われ
るように、従来のプローブで安定して記録できるマーク
サイズは、250nm付近であり、この値は、開口の内
径に、それを取り囲む反射体の厚みを加えたものであ
る。従来のプローブでは、膨張したサイズの記録マーク
が形成されることから、開口を出射した光による記録が
起こる前に、反射体による媒体加熱が発生していること
がわかる。
【0077】また、本発明の光学プローブの中では、先
端が平面をあるいは多段テーパ状になっている(b)、
(c)、(e)のプローブの方が、先端が一段テーパ状
をなす(a)、(d)のプローブよりも、記録感度が一
桁程度、優れていることがわかる。これは、(b),
(c),(e)の平面型や多段テーパ型では、開口部に
至るまで記録光がほぼ無損失で伝播するのに対して、一
段テーパ型ではテーパ側壁、特にテーパ部内径が波長未
満になっている領域(開口近傍)での伝播損失が顕著に
なるためと考えられる。
【0078】図4の例では、記録パルス幅が10μms
ecと比較的長い場合を示したが、本発明の光学プロー
ブを用いて、パルス幅を変化させながら同様の実験を行
い、開口とほぼ同一の50nm径の記録マークが形成さ
れたパワー(Pi)とパルス幅(τ)との関係を調べ
た。結果を図5に示す。
【0079】図5の結果から、50nm径の記録マーク
が形成されたときの入射パワーと、パルス幅との積は、
ほぼ一定の関係にあることがわかる。すなわち、高パワ
ーの記録ビームを用いれば、短パルスでも記録できるの
で、高速データ記録が可能になる。なお、図5の実験に
おいて、記録ビームのPthは、50nmのマークが形成
されたパワーの約1/2、Pabは50nmのマークが形
成されたパワーの約3倍程度であった。
【0080】ここで図4,5の実験結果について、実験
的に得られたパワーとパルス幅の妥当性について、伝播
損失を考慮しながら考察する。
【0081】通常のファーフィールド光学プローブを用
いた相変化記録、例えば波長650nm、開口数(N
A)が0.6のDVD−RAMにおいては、8.2m/
sの線速における典型的な記録パワーは、媒体表面で1
0mW(ミリワット)程度であり、このレベルのパワー
で約0.55μm(550nm)程度のサイズのマーク
を記録している。ここではオーダエスティメートを目的
とするので、光強度分布は直径0.55μm以内の範囲
で一様に近似する。このように近似すると、ファーフィ
ールド系の相変化記録においては、所定のサイズのマー
クを記録するために必要なパワー密度は、10mWをビ
ームの断面積で除算して、約4×106W/cm2 と求
まる。また、記録に必要なエネルギー密度は、パワー密
度にスポット通過時間を掛けて、ほぼ0.3J/cm2
と算定できる。
【0082】同様のエネルギー密度の算定方法から、本
発明の実施形態で用いた50nmの開口の場合に必要な
記録パワーを求めると、パルス幅10μsecのときに
記録に必要な光パワーは、媒体表面で約0.6μWと求
めることができる。実際の実験結果では、パルス幅1μ
secで50nmのマークが記録されたファイバー入射
側でのパワーは、図4に明確に示されるように、プロー
ブ(b)、(c)、(e)において15mW程度、プロ
ーブ(a)、(d)において150mW程度である。
【0083】ファイバーに入射された記録光は、ファイ
バー内を伝播し、開口を通過する過程で一部を損失す
る。したがって、媒体表面で記録に必要な光パワーの計
算値(約0.6μW)の、実際に実験で得られたファイ
バー入射端での記録パワー(15mWもしくは150m
W)に対する比を、ファイバー入射端から開口出射端に
至るまでの光の伝播効率とみなすことができる。
【0084】伝播効率は、図2に示すファイバ(伝播
部)13のうち、内径を一定に維持している伝播領域で
の効率と、伝播領域の終端(下端)から開口11に至る
損失領域での効率と、有限の厚みを有する開口を伝播す
る際の効率の積で決定される。
【0085】2番目の損失領域での入射損失は、波長を
直径とする円の面積に対する開口の面積の比で近似でき
る。図2(b)、(c)、(e)に示す先端が平面型も
しくは多段テーパ型のプローブでは、損失領域の上端部
では直径が2μmの円を断面とするが、開口までの入射
損失を考える場合は、断面直径が波長未満になる領域
(すなわち実際に損失が発生する領域)の面積と、開口
面積とを考えればよい。したがって、第2実施形態で用
いた波長633nm、開口直径50nmの例では、伝播
領域下端から開口までの入射効率は、約6×10-3と求
められる。
【0086】3番目の開口での伝播効率については、後
述する導波路伝播解析結果(図6)を用いれば、直径が
50nm、Ag反射体の厚みが100nmの開口に対し
て、7×10-3と求められる。従って、先端が平面もし
くは多段テーパ状のプローブの場合、伝播部での効率を
100%と近似して、トータルな伝播効率は、4×10
-5と計算される。この値を平面型もしくは多段テーパ型
プローブで得られたファイバー入射端のパワー(15m
W)に乗算すると、媒体表面で必要な記録パワーの算定
値(0.6μW)に一致する。
【0087】また、0.6μWの算定値は、パルス幅が
10μsecに対するものであるが、算定のプロセスか
ら考えて、パルス幅と記録に必要なパワーの積は一定で
ある。このことは、図5に示す結果をよく説明してい
る。一段テーパ型のプローブ(a)、(d)では、記録
に必要なパワーのファイバ入射端での実験値が、平面型
もしくは多段テーパ型に比べ10倍程度高いが、この分
がテーパ状になっている伝播部内壁の伝播損失に相当す
ると考えられる。
【0088】<第3実施形態>第2実施形態では、開口
形状がほぼ真円形のプローブを用いた場合を述べたが、
より高い伝播効率を得る上では、長円形状もしくは長方
形状の開口を用い、開口の長軸に平行に光電界が設定さ
れていることが好ましい。
【0089】図6は、幅がW、長さが十分に長い長方形
状の開口を光が伝播する際の損失αを解析的に求めた結
果である。解析に用いた波長は650nm、反射体の素
材は銀(Ag)とし、開口部でのファイバとの境界面を
空気とした場合の解析例である。
【0090】αは1cm当りの損失率であり、反射体の
厚みをtとした場合(図2参照)、伝播効率はexp
(−αt)で与えられる。図6において、TEは長軸に
対して光電界が垂直な場合を、TMは長軸に対して光電
界が平行(すなわち磁界が垂直)な場合を示している。
図6から明らかなように、TEはTMに比べ、Wが狭い
領域で非常に損失が大きいことがわかる。例えば、開口
幅50nm、反射体厚み100nmにおける伝播効率を
TEとTMで比較すると、TEの場合の伝播効率は7×
10-3程度と非常に低いのに対して、TMの場合は約9
9%の伝播効率を有し、幅方向にほとんど伝播損失がな
い。
【0091】Wの値を大きくしていくと、280nmあ
たりではTMと直交する方向に振動するTE成分も、大
きな損失なしに伝播することがわかる。図5の例では、
波長λが650nmの光に対して、最低260nm(お
およそ0.43λ)の幅を確保すればTEとTMの双方
が透過する。実際の開口では、その長さは有限である
が、波長の約0.43倍以上の長さに設定すれば、TE
成分も高い伝播効率が得られる。
【0092】このことから、長方形状もしくは長円形状
のスリット開口を用い、かつ開口の長軸に平行な方向に
光電界を設定すれば、短軸を波長の1/100程度に縮
小した場合においても極めて高い伝播効率を得ることが
可能となる。この値の幅であってもTM成分はほとんど
透過するからである。
【0093】長方形状もしくは長円形状の開口は、例え
ばFIB加工などにより形成することができる。実際に
Ag反射体を図2(b)の先端平面型のヒートシンク構
造のプローブ先端に形成した後、FIB加工により、短
軸が50nm、長軸が300nmの長方形状開口を形成
したプローブを用い、第2実施形態と同様の記録実験を
行った。結果を図7に示す。
【0094】図7は、図5と同様に、開口サイズとほぼ
同一のサイズのマークが得られたときのパワーとパルス
幅の関係を示している。図5におけるほぼ真円形の開口
に比較して、図7では記録感度が100倍程度増加して
いる。この結果により、図6の解析結果の妥当性が検証
されるとともに、半導体レーザのような比較的低パワー
の光源を記録光源として用いる場合を想定しても、十分
に高いデータ転送速度が得られる可能性が検証された。
【0095】ここで、媒体状に実際に記録されたマーク
サイズは、図5の例では直径50nmのほぼ真円形、図
7の例では幅50nm、長さ約150nmの長方形状で
あった。図7の場合に、記録されたマークの長さが開口
の長さの半分程度なのは、開口から出射する光の強度分
布が、開口の長さ方向に対してほぼガウス型を呈するた
めであり、ガウス型分布のほぼFWHM(半値全幅)以
上のパワー領域で記録が起こっていることを示してい
る。
【0096】形成したマークサイズだけを単独で比較す
ると、図5に比べて図7では記録密度は1/3に低下す
ると推定されるが、実際の記録系では、媒体を高速に移
動させながら記録パルスを色々なストラテジーを用いて
照射できる。例えば本実施例に用いた相変化媒体の場
合、長方形の開口を用いてトラック方向に長い長方形の
アモルファス状態のマークを記録した直後、例えば媒体
が開口の長軸方向に沿って50nmステップ移動した後
に、再度、結晶化パワーレベルの光を照射すれば、最初
記録された150nmの長さのマークのうち、後方の1
00nmは結晶化することが可能になる。したがって、
真円形の開口を用いた場合と同等の記録密度が得られる
ものと予測される。
【0097】長円形状もしくは長円形状の開口を用いた
場合は、伝播効率が大幅に改善されるため、従来の光学
プローブでその開口をスリット状にした場合は、開口直
下の媒体の加熱に拍車をかけることになる。しかし、図
2に示す本発明の光学プローブを用いると、反射体に対
向する部分の媒体表面温度を積極的に抑制する効果があ
るので、図2に示す第1実施形態の光学プローブと、第
3実施形態におけるスリット開口とを組み合わせること
で、より顕著な効果を達成することができる。
【0098】すなわち、ヒートシンク構造のプローブ、
放熱フィンを配したプローブ、熱絶縁体を先端部に配し
たプローブのいずれにおいても、長方形状もしくは長円
形状の開口と組み合わせることで、媒体上の不必要な加
熱を防止すると同時に、高い伝播効率を達成することが
できる。また、図2(b)、(c)、(e)に示すよう
な先端が平面型もしくは多段テーパ型の構造であれば、
開口形状の自由度が高く、長方形状もしくは長円形状の
開口でも容易に形成することができる。
【0099】伝播効率を高める手段としては、スリット
状態の開口と直線偏光の記録光を組み合わせて用いる以
外に、記録媒体の最表面に高屈折率層を配するのも有用
である。このようにすると、開口と媒体のカップリング
効率が増加して、開口直下の媒体の温度上昇が促進され
る。媒体最表層の薄膜の屈折率の値が1高くなると、カ
ップリング効率はほぼ2倍に改善される。好ましい最表
層材料は、波長にも依存するが、可視領域では、第2実
施形態に用いたDLCの他に、Si,Ge,Ge−S
i,Ti−Oなどを用いるのがよい。
【0100】<第4実施形態>第1実施形態から第3実
施形態においては、本発明の光学プローブを用いた記録
動作における効果について説明した。第4実施形態で
は、高SNRの再生効果について説明する。
【0101】用いた装置は図3と同様であり、図3に示
した構成の全てを活用した。第4実施形態では、主に再
生信号が含まれている反射体からの反射光(バックグラ
ウンド光もしくはノイズ光)を抑制し、高いSNRで再
生する手段を実現した。記録は図7において、50nm
幅のマークが得られた条件で行った。図3の構成におい
て、入射側の1/2波長板503は媒体510に入射す
る偏光の向きを変えるためのものである。入射側の1/
4波長板504は、ファイバー507が偏光面保存型の
場合にはなくても構わない。ファイバーが507が偏光
面保存型でないい場合、あるいは、偏光面保存型ファイ
バーであっても若干のリターデーションを有する場合に
は、光学開口から媒体に照射する光が直線偏光になるよ
うに、1/4波長板504を回転調整して、ファイバー
のリターデーションを補償するのが望ましい。比較例と
しての従来の光学プローブを用いて再生する場合にも、
1/4波長板504の角度を調整すれば、光学開口から
出射する光を従来技術の円偏光とすることができる。
【0102】一方、検出側の1/4波長板511は、被
検体からの反射光の楕円偏光成分を直線偏光にしてコン
トラスト比をさらに増加させる機能を有するが、第4実
施形態において必ずしも必須ではない。なお、比較例に
おいては、検出側の1/4波長板511と検光子512
は用いない。検出系は、図3の示すように、フォトカウ
ンターを用いてもよいが、光源501と偏光子502の
間にチョッパーを設けて、APD513の出力をロック
インアンプによって差動増幅し、コンピュータ515に
入力してもよい。
【0103】媒体510は、反射率変化、位相変化、凹
凸などの光学変化を有するものなら何でもよい。第4実
施形態では、媒体として相変化媒体を用いたが、磁気光
学応答を有するものを選んでもよい。その場合にも、磁
気光学応答を有さない媒体と同一の光ピックアップ及び
光学装置を使用することができる。磁気光学応答を有す
る被検体の場合、偏光検出によってもたらされる効果
は、従来通りの磁気光学効果によるものの他に、本実施
例に関連するファイバー先端の反射体からのバックグラ
ウンド光を抑制する効果が重畳する。
【0104】上記した構成で、以下の手順で本発明を実
施した。第2実施形態と同様の手順で作製した媒体を、
図3の近接場光記録再生装置のステージ521に取り付
けた。光源501を動作して記録光を出射し、偏光子5
02を通じて直線偏光を得、必要に応じて1/2波長板
503を配置して、偏光方向を制御した。偏光方向は、
第3実施形態と同様に、長方形状光学開口の長軸に平行
な方向に光電界が振動するように設定した。
【0105】第3実施形態と同様の記録動作を行ない、
次に、光パワーを記録時のPthの1/10程度に低下さ
せて反射光の再生(読み取り)試験を行った。媒体表面
で反射された再生光は、再度開口509を通過し、光学
プローブ508に導かれ、ファイバー507、カプラ5
06を通過して、ビームスプリッタ505により検出系
に導かれる。この信号光と同時に、プローブ内部でファ
イバ開口周囲に形成された反射体から反射したバックグ
ラウンド光も、信号光と同様のパスを通って、検出系に
導かれる。信号光は記録層の状態に依存した光学応答を
担っており、第4実施形態の場合は、記録層の非晶質マ
ーク部と結晶部分の光学反射率差を担っている。
【0106】検出系に戻った光の99%程度は、開口周
囲に被覆された反射体により複数回反射されたバックグ
ラウンド光である。このバックグラウンド光は前記信号
光のノイズ成分として寄与する。信号光とバックグラウ
ンド光は、1/4波長板511を介して検光子512に
入射する。検光子は信号光を選択的に透過、バックグラ
ウンド光を選択的に遮断して、高コントラスト比の信号
検出を実現する。さらにコントラスト比を最適化する上
では、検光子の通過軸を最適設定するのが望ましく、例
えば記録層の結晶部上に光学開口を配した際の出力信号
が極小となるように、検光子の通過軸を調整するとよ
い。
【0107】また逆に、開口が非晶質マーク上にある時
に出力信号が極小となるように通過軸を調整してもよ
い。検光子を通過した信号光はAPD513で増幅さ
れ、フォトカウンター514で電気信号に変換される。
この信号は制御系としてのコンピュータ515に入力さ
れ、適当な処理を施された後に、ディスプレー、プリン
タなどからなるモニター516上に画像として表示され
る。
【0108】記録再生装置としての光路は上記した通り
であるが、第4実施形態の記録再生装置には、第2実施
形態と同様に、記録再生光学系以外に、媒体と開口の位
置制御系が設けられている。位置制御系は、レーザ51
7、光検出器518、ロックインアンプ519、シアフ
ォースコントローラ523、ステージコントローラ52
2、ピエゾステージ521からなる。ロックインアンプ
519に内蔵されたローカルオシレータからファイバー
加振用ピエゾ素子520を駆動し、それにより加振され
たファイバー先端部に、レーザ517の出射光を照射
し、反射光を検出器518で検出する。検出器の出力は
ロックインアンプで増幅され、シアフォースコントロー
ラ523に入力される。シアフォースコントローラは、
検出器から得られた信号振幅が一定となる様にステージ
コントローラ522を介してピエゾステージ521を駆
動し、開口と媒体の間隔を制御する。同時にステージコ
ントローラおよびピエゾステージは媒体の位置制御も行
う。
【0109】比較例として、再生光に直線偏光を用いず
に、同様の実験を行ない、観察結果を比較した。すなわ
ち、比較例では、図3の構成において、入射側の1/4
波長板504を角度調整して入射光を円偏光とし、検出
側から1/4波長板と検光子を除いた他は、図3と同一
の構成とした。
【0110】上記の操作を行い、被検体の10μm2
領域の像を観察した。図2に示す本発明の光学プローブ
による再生動作で得られた像と、比較例で得られた像を
モニター上で比較した所、本発明の像は極めてコントラ
ストが高く鮮明だったのに対し、比較例の像は非晶質マ
ークと結晶部の境界領域がぼけて不鮮明だった。画像処
理装置を用いてコントラスト比を定量的に比較した所、
本実施形態による画像は、比較例よりも10倍以上コン
トラスト比が高く、直線偏光を用いる効果が証明され
た。
【0111】なお、第4実施形態では、被検体として相
変化記録層を用いたが、観察対象は反射率変化、位相変
化、凹凸変化など、光学的に変化している表面を有する
ものであれば何でもよいことは自明である。又、磁気光
学応答を有する被検体、例えば、光磁気記録層に代表さ
れる磁性薄膜を対象とする場合においても、本発明に従
えば、単に従来の磁気光学効果のみによるコントラスト
だけではなく、光学開口周囲を被覆する反射体からのバ
ックグラウンド光を抑制する効果を有するために有用で
ある。
【0112】図2に示す第1実施形態の光学プローブ
に、第4実施形態で述べた直線偏光の再生光を組合わせ
た場合、反射体の放熱が良好に行なわれ、温度が低く保
たれている態様においては、反射体の温度上昇に伴うバ
ックグラウンド揺らぎが少ない。このため、バックグラ
ウンドの消光が取りやすく、よりコントラストが上がる
という効果が得られる。
【0113】また、第3実施形態で述べたように、長方
形状もしくは長円形状の開口を用いて直線偏光の光を用
いて記録を行えば、極めて伝播効率が高く、開口直下の
媒体温度だけを効果的に上昇できる。再生時も直線偏光
の光を利用すると、記録と再生で全く同一の光学系を用
いることができるので、装置の小型化、低価格化にも効
果が大きい。
【0114】上記した実施形態では、媒体を開口に対し
て静止させて記録、ゆっくりとスキャンさせて再生させ
た例を述べたが、パルス記録実験結果を見てもわかるよ
うに、本発明は開口程度のマークを記録する上で十分な
感度とパワーマージンを有しており、媒体を開口に対し
て高速に移動、例えば回転移動させる態様においても実
施例と同等の効果を示す。
【0115】開口と媒体間の位置制御は、例えば、光学
プローブをスライダーに取り付けて浮上動作させて行っ
ても良いし、コンタクトパッドを設けて接触摺動させて
も、光学プローブ部をスライダー摺動面からリセスさせ
て行っても良い。また、図1(b)の様に面発光LDも
しくは端面発光LDを記録再生光源として用いる場合
は、LDと光学系をスライダー搭載してもよい。
【0116】<第5実施形態>図8は、図2に示す第1
実施形態の光学プローブをスライダーに搭載した実施形
態の概略図である。図8の例では、図2(a)、(b)
に示すヒートシンク型プローブを搭載する。
【0117】図8(a)は、記録媒体真上に配置された
スライダの側面図、図8(b)および(c)は、スライ
ダ先端に取り付けられた光学プローブの拡大図である。
図8(b)はテーバ-型、図8(c)は平面型プローブ
である。
【0118】図8(a)に示すように、媒体21上に、
スライダ22がサスペンションアーム23によって保持
されている。媒体21は、記録膜31と基板32とを有
する。スライダ22は、スライダ本体33と、その空気
流出端に設けられた光学プローブ34と、光学プローブ
から延びるファイバ38とを含む。ファイバ38は、光
学Pローブ34と、光源(不図示)および光検出系とを
連通する。サスペンションアーム23は、アーム本体3
1と、アーム31とスライダ22とを連結するジンバル
36とを有する。
【0119】図8(b)および(c)に示すように、光
学プローブ34は、伝播部46の周囲に形成された反射
体45と、光出射開口47とを有する。光学プローブ3
4は、カプラ44を介してファイバ38に接続される。
【0120】図示はしないが、アーム本体35は回転駆
動系に連結しており、媒体21の表面上を走査して所定
の記録トラックにアクセスする。スライダ22とアーム
本体35とを接続するジンバル36は、球形の金属チッ
プまたは圧電素子からなり、スライダ22が空気流に従
って浮上動作するのを可能にする。媒体21を回転さ
せ、図において媒体が右側から左側に移動すると媒体表
面近傍に空気流が形成されて、スライダ22を浮上動作
させる。スライダ22のサイズ、形状は、基本的にHD
Dに搭載されるものと同様のものを用いることができ
る。
【0121】光学プローブ34の構成は図8(b)、
(c)に示すように比較的簡単であり、図示する以外に
も各種の変形例がある。たとえばバルク素子を用いても
よいし(図2(c)参照)、薄膜プロセスで形成しても
よい。
【0122】一例として、スライダ自体を、加工前は薄
膜プロセス対応のウエファ基板である場合の形成方法を
説明する。この場合、図8(a)の側面図に示すスライ
ダ本体33の横方向が、ウエファの厚さ方向になる。
【0123】まず、ウエファ上に、下側反射体膜をスパ
ッタリングで形成する。図8(b)、(c)のプローブ
周囲の反射膜のうち、右側の反射膜が、形成時の下側反
射膜に対応する。下側反射膜の厚さは、ヒートシンクと
して放熱機能を十分に有する厚さである。その後、PE
P工程、エッチング工程によりパターニングする。パタ
ーニングした反射膜および基板上に、クラッド、コア、
クラッドと順次誘電体を堆積して、伝播膜46を形成す
る。再度、PEP,エッチングにより伝播膜を所定形状
にパタニングする。さらにその上に上側反射体(図8
(b)、(c)の左側反射膜)45を形成して同様にパ
タニングする。スライダパターンはウエファ上に多数一
括形成され、形成後、個別のスライダにカットされる。
【0124】より具体的には、図8(c)の平坦型プロ
ーブを形成する場合は、パターニングによりウエファ上
に島状に点在する光学プローブ素子(下側反射膜、伝播
膜、上側反射膜が形成された島状領域)の、開口が設け
られる端面側から、反射体材料を斜方スパッタして開口
部近傍に光出射側の薄い反射膜を形成し、斜め後方から
FIB加工することによって開口47と、その周囲の薄
い反射体を形成することができる。
【0125】あるいは、フレームメッキ法を用いて開口
部47周囲の反射体45を形成してもよい。この場合
は、下側の反射体をフレームメッキ形成した後、伝播部
となる領域を透明材料で形成する。透明材料の膜厚は、
スリット状開口の短軸の長さに相当する。その後、透明
膜の端面を開口の長軸方向に加工して開口47部を形成
する。そして、開口となる端面側側壁と透明膜上部に、
再度フレームメッキで上側反射体膜を形成する。
【0126】図8(b)の形状では、開口側壁の一部が
反射体側壁と一致する構造なのでプロセス的に有利であ
る。すなわち、下側反射体をパターニングした後、クラ
ッドを形成して先端をテーパエッチング加工し、次にコ
アを形成して、やはり先端をテーパ加工し、さらにクラ
ッドを形成して先端をテーパ加工する。開口はコア材料
と同一としても異ならせてもかまわない。開口の加工
は、テーパ加工と別途行なう。その上に、上部反射対を
成膜して加工すれば、テーバ状プローブが完成する。ウ
エファのプローブの開口と反対側の端面に、必要に応じ
てカプラ44を設けさらにファイバ38に連結する。プ
ローブとファイバのクラッドおよびコア材料の屈折率を
一致させれば、特にカプラは用いなくてもよい。
【0127】第5実施形態のように、スライダに光学プ
ローブを搭載する構成では、光学プローブの位置をピエ
ゾ素子等で制御する必要がないので、機械系の構成が簡
素化される。浮上量変動による信号強度の変動が大きい
場合は、コンタクトパッド付きスライダを用いて接触摺
動させれば浮上量変動を抑制することができる。
【0128】
【発明の効果】本発明によれば、周囲を反射体で被覆さ
れた微小光学開口を介して近接記録する系において、反
射体の加熱による媒体の過度な温度上昇が避けられるの
で、開口サイズに近いサイズのマークを感度良く、かつ
広いパワーマージンで形成することができる。この結
果、光記録の密度を大きく向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の近接場光プローブを搭載する光ヘッド
の構成例である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る近接場光プローブ
先端部の拡大構成例である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る近接場光記録装置
の一例を示す図である。
【図4】図2に示す本発明の光学プローブと従来のプロ
ーブの近接場光記録特性を示すグラフであり、ファイバ
端への入射パワーと、形成されるマークサイズとの関係
を示す図である。
【図5】図2に示す本発明の光学プローブのパワー特性
を示すグラフであり、パルス幅と入射パワーとの関係を
示す図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る光学開口部の伝播
損失の解析例である。
【図7】光学開口をスリット状態の開口とした場合の本
発明のパワー特性を示すグラフである。
【図8】図2に示す本発明の光学プローブをスライダに
搭載した構成例を示す図である。
【図9】従来の近接場用光学プローブの図である。
【符号の説明】
1、34、508 光学プローブ 2 ファイバー導波路 3、44、506 カプラ 4 光源 5 テーパ状導波部 6 対物レンズ 11、509 光学開口、 12、45 反射体 13、46 伝播部 14 放熱体 15 熱絶縁体 16 耐熱部材 21 記録媒体 22 スライダ 23 サスペンションアーム 38 光ファイバ 501 記録再生用光源 502 偏光子 503 入射側λ/4板 504 入射側λ/2板 505 ハーフミラー 507 ファイバー 510 記録媒体 511 検出側λ/4板 512 検光子 513 光検出器 514 フォトンカウンター 515 コンピュータ 516 モニター 517 位置制御用光源 518 位置制御用光検出器 519 ロックインアンプ 520 ピエゾ素子 521 ステージ 522 ステージコントローラ 523 シアフォースコントローラ

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 入射光を伝播させる光伝播部であって、
    その径が前記入射光の波長よりも大きい第1領域と、そ
    の径が前記入射光の波長よりも小さい第2領域とを有す
    る光伝播部と、 前記光伝播部の第2領域の端部に形成され、前記入射光
    の波長未満のサイズを有する光学開口と、 前記開口の周囲および前記光伝播部の周囲を覆う反射体
    とを備え、前記反射体は、前記光伝播部の第1領域を覆
    う反射体の膜厚が、前記開口周囲の反射体の膜厚よりも
    大きく設定されることを特徴とする近接場光プローブ。
  2. 【請求項2】 前記第2領域は、前記開口に向けてテー
    バ状に先細りし、前記反射体の膜厚は、前記開口から前
    記第2領域に沿って前記第1領域まで増大することを特
    徴とする請求項1に記載の近接場光プローブ。
  3. 【請求項3】 前記第2領域は、多段ステップ状にその
    径が小さくなることを特徴とする請求項1に記載の近接
    場光プローブ。
  4. 【請求項4】 前記反射体は、前記開口の周囲に、前記
    第1領域の径よりも広い範囲にわたって、前記入射光の
    進行方向と垂直な方向に広がる平坦面を有することを特
    徴とする請求項1に記載の近接場光プローブ。
  5. 【請求項5】 入射光を伝播させる光伝播部であって、
    その径が前記入射光の波長よりも大きい第1領域と、そ
    の径が前記入射光の波長よりも小さい第2領域とを有す
    る光伝播部と、 前記光伝播部の第2領域の端部に形成され、前記入射光
    の波長未満のサイズを有する光学開口と、 前記開口の周囲および前記光伝播部の周囲を覆う反射体
    と、 少なくとも前記開口および第2領域に形成された反射体
    の周囲を取り巻く放熱フィンとを有することを特徴とす
    る近接場光プローブ。
  6. 【請求項6】 入射光を伝播させる光伝播部であって、
    その径が前記入射光の波長よりも大きい第1領域と、そ
    の径が前記入射光の波長よりも小さい第2領域とを有す
    る光伝播部と、 前記光伝播部の第2領域の端部に形成され、前記入射光
    の波長未満のサイズを有する光学開口と、 前記開口の周囲および前記光伝播部の周囲を覆う反射体
    と、 少なくとも前記開口および第2領域に形成された反射体
    の周囲を取り巻く熱絶縁体とを有することを特徴とする
    近接場光プローブ。
  7. 【請求項7】 入射光を伝播させ、前記光の入射側と反
    対側に端部を有する光伝播部と、 前記光伝播部の端部に設けられたスリット状の光学開口
    と、 前記光学開口の周囲および前記光伝播部の周囲を覆う反
    射体とを備え、前記反射体は、前記光学開口周囲におけ
    る膜厚よりも、前記開口周囲以外の部分での膜厚が大き
    く設定され、前記開口の長軸は、前記入射光の波長の
    0.43倍以上、1倍未満であることを特徴とする近接
    場光プローブ。
  8. 【請求項8】 光源と、 前記光源から照射される照射光の波長よりも小さいサイ
    ズの光学開口を有する光プローブと、 前記光源からの光を前記光プローブに導く第1の光学系
    と、 媒体を前記光プローブの光学開口に近接対向して配置さ
    せる位置制御手段とを備え、前記光プローブは、 前記照射光を前記開口に導く光伝播部と、 前記光学開口の周囲および前記光伝播部の周囲を覆う反
    射体と、を有し、前記反射体の膜厚は、前記媒体に対向
    する光学開口の周囲での膜厚よりも、前記開口周辺以外
    の部分での膜厚が大きく設定されることを特徴とする近
    接場光記録再生装置。
  9. 【請求項9】 前記光学開口はスリット状の開口であ
    り、前記第1の光学系は、前記照射光の光電界方向が、
    前記開口において、開口の長軸方向と平行になるように
    照射光を導くことを特徴とする請求項8に記載の近接場
    光記録再生装置。
  10. 【請求項10】 前記照射光の波長をλとすると、前記
    光学開口の長軸の長さが0.43λ以上、λ未満である
    ことを特徴とする請求項9に記載の近接場光記録再生装
    置。
  11. 【請求項11】 前記照射光は、前記媒体上に前記光学
    開口のサイズに対応する密度で情報を記録し、 前記近接場光記録再生装置は、前記媒体からの反射光を
    利用して前記情報を再生する第2の光学系をさらに有
    し、前記第2の光学系は、前記光プローブの反射体から
    の光を消光する手段を有することを特徴とする請求項8
    〜10のいずれかに記載の近接場光記録再生装置。
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US8213272B2 (en) 2009-06-11 2012-07-03 Tdk Corporation Multilayered waveguide having protruded light-emitting end

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