JP4257888B2 - 近接場光記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、近接場光記録装置に関し、特に近接場光を利用して情報を記録する近接場光記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ビームを集光系を介して絞込み、記録媒体に照射して情報の記録を行う光記録装置は、大容量で非接触の高速アクセスが可能な記録装置として実用に供されている。従来の光記録装置においては、その記録密度は、媒体に照射する光の波長(λ)と対物レンズの開口数(NA)によって制限されている。すなわち、λ/(4NA)が光学系の分解能であり、この分解能以下のサイズの記録マークを再生することは困難であった。
【0003】
例えば、次世代の光記録装置への採用が提案されている、波長400nmの青紫色レーザとNAが0.85の対物レンズとを組み合わせた場合、再生可能なマークのサイズもしくは間隔の下限は約120nmであり、これが記録密度を制限することとなる。
【0004】
このような通常の対物レンズを用いた集光系の検出分解能の限界を打破する新しい集光方式として、「近接場光」を用いる方法が考えられる。近接場光は、微小な光学開口の近傍に形成される非伝播性の電磁場(evanescent:エバネセント場)である。ここで、微小な光学開口は、例えば、光学プローブの光出射部に設けられるものであり、その開口の周囲は好ましくは遮光体によって被覆され、開口以外の部分からの漏れ光が媒体へ入射するのを防止する。また、光学プローブの光出射部以外の部分は、プローブを導波する光の伝播損失を低減化するために、光の波長程度以上に大きく設定するとよい。
【0005】
開口近傍に形成されるエバネセント場に媒体の表面を近接して配置すると、近接場相互作用により伝播性の光が生じる。この伝播光の強度もしくは位相は、媒体の光学情報を担うため、通常の検出手段によって、被検体表面の情報を得ることができる。情報の検出手段は透過型でも反射型でも構わないが、反射型の方が媒体設計の自由度が高く好ましい。
【0006】
近接場光記録再生の分解能は、光学開口のサイズにより制限される。例えば、光ファイバー先端を光学的に絞り込み、数10nmの光学開口を残して先端部を金属などの反射体で被覆した場合、分解能は光学開口程度の数10nmにすることができ、従来の対物レンズを用いた集光系よりも格段に分解能が向上する。
【0007】
開口を通じて光を媒体に照射する近接場光記録方式は、上述したような利点を有する反面、開口からの光の出射効率が低い、という課題を抱えている。効率は開口サイズの低下に従って低下するため、記録密度と記録感度、再生光量がトレードオフの関係にあった。
【0008】
この課題に対しては、直線偏光を用いること、長方形状の開口を用いること、及び、光電界の向きを開口の長辺と平行にすることによって、効率の格段な改善が見られることが、例えばTechnical Digest of ISOM2000、Fr−J−02、pp.110−111(2000)に開示されている。この開示によれば、波長650nmの場合、光の電界ベクトルの向きと平行な方向の開口長を概ね300nm以上とすれば、光の電界ベクトルと向きと垂直な方向の開口長を10nm未満にした場合でも、極めて高い効率が得られる。ただし、長辺が300nmの開口を形成した場合には、記録トラックの長手方向もしくは記録トラックの幅方向にみた記録セルの長さが同様に300nm程度になってしまい、記録密度的に不利である、という課題が残されていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、その目的は、従来の近接場光記録装置の抱えていた課題を解決することにある。すなわち、光学開口部における光の出射効率を上げるために、長方形状の開口を形成した場合、高い効率を得るために必要な長辺の長さが数100nm程度と長くなってしまい、記録密度を高くすることが困難となるという課題を解決することをその第1の目的としている。
【0010】
さらに、この第1の目的を達成する手段を発明する過程において、本発明者はは更なる検討を進めた。その結果、記録媒体に形成されるヘッダ部の破壊を防止し且つフォーマット効率が良好な記録動作を実現する近接場光記録装置を提供することを本発明の第2の目的とする。
【0011】
さらに、再生分解能を向上し、高SNR再生を実現する近接場光記録装置を提供することを第3の目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の近接場光記録装置は、開口を介して生成した近接場光を記録媒体の記録層に作用させることにより非晶質マークを形成して情報を記録し、開口を介して生成した近接場光を記録媒体の記録層に作用させることにより情報の再生を行う近接場光記録装置であって、前記記録媒体に設けられる記録トラックの長手方向にみた前記開口の長さをLy、前記記録媒体と前記開口との相対的な移動速度をV、前記記録トラック上のヘッダ部の再生からデータ部の再生へ移行する時間間隔をtrr、前記ヘッダ部の再生から前記データ部の記録へ移行する時間間隔をtrwとした時に、以下の関係式:
trr<trw≦Ly/V
を満足し、前記記録媒体に設けられる記録トラックの幅方向にみた前記開口の長さよりも前記記録トラックの長手方向にみた前記開口の長さのほうが長く、前記記録層に照射される前記近接場光は直線偏光状態にあり、前記近接場光の電界ベクトルの向きは、前記記録トラックの長手方向と略平行であることを特徴とする。
【0012】
このようにすると、ヘッダ部に格納された情報を破壊することなく、しかもデータ部に無駄な空白領域を形成することなく、ヘッダ部の再生からデータ部の記録に移行することができる。同時に、ヘッダ部の再生からデータ部の再生へも円滑に移行することができる。
【0013】
なおここで、「ヘッダ部の再生からデータ部の再生へ移行する時間間隔」とは、ヘッダ部におけるデータの読み取りが終了した瞬間から、データ部においてデータの読み取りを開始する瞬間までの時間間隔をいう。
【0014】
また、「ヘッダ部の再生から前記データ部の記録へ移行する時間間隔」とは、ヘッダ部におけるデータの読み取りが終了した瞬間から、データ部においてデータの書き込みを開始する瞬間までの時間間隔をいう。
【0015】
記録トラックに対して開口形状と電界ベクトルの方向をこのように設定し、さらに直線偏光の近接場光を用いることにより、低損失で強い近接場光を形成して高い記録密度で記録することが可能となる。
【0016】
ここで、前記記録層と前記開口との間に超解像層が設けられ、前記超解像層は、前記記録層に記録された情報の再生のために近接場光を照射した時に前記開口よりも小さい超解像窓を形成するものとすることができる。
【0017】
「超解像窓」とは、近接場光の照射によって光透過率が低下して形成された光学開口をいうものとする。
【0018】
また一方、前記開口の周囲は、光反射体により被覆され、前記情報の再生のために前記記録層に照射する前記近接場光は直線偏光状態にあり、前記近接場光が記録層により反射された反射光を、前記開口を介して検光子を通過させ、光検出器により検出して前記記録層に記録された情報の再生を行うものとすることができる。
【0019】
このようにすれば、分解能と高いS/N比とを確保した高密度再生が可能となる。
【0020】
また、前記非晶質マークの形成に際して、前記記録層を非晶質の状態に遷移させることが可能な第1の強度の近接場光を前記記録層に照射し、その照射領域のうちの一部を前記非晶質の状態とし残りを結晶の状態とすることにより、前記照射領域よりも小さい非晶質マークを形成するものとすることができる。
【0021】
上記構成によれば、例えば、相変化記録媒体の場合、記録マークの形成のために一旦溶融した記録層の一部を再結晶化させることにより、記録マークのサイズを小さくすることができ、記録密度を高くすることができる。
【0022】
特に、長方形状の開口からは高い強度の近接場光が得られるが、そのままでは、開口の長手方向に沿ってサイズの大きい記録マークが形成されてしまう。これに対して、上記構成によれば、溶融された部分の一部を再結晶化することにより、線記録密度を大幅に上げることが可能となる。
【0023】
例えば、本発明によれば、開口の記録トラック長手方向の長さをLy、最短記録マーク長をMminとした時、媒体に照射する記録光の波形、媒体の開口に対する移動速度、媒体の熱応答、媒体の記録に関わる物性量の中の少なくもいずれかを調節することにより、以下の関係式を満足することができる。
【0024】
Mmin≦0.6Ly (1)
つまり、開口のサイズに対して小さい記録マークを形成でき、しかも記録ビームの強度を落とす必要がないので、書き込み条件のマージンも大きくとれる。
【0025】
上記(1)式を満足するための本発明として、記録時のビーム波形を調節する方法がある。
【0026】
すなわち、前記非晶質マークの形成に際して、前記記録層を前記非晶質の状態に遷移させることが可能な第1の強度の近接場光を照射して前記非晶質の状態の部分を一旦形成した後、前記記録層を前記非晶質の状態には遷移させず前記結晶の状態に遷移させる第2の強度の近接場光を照射することにより、前記非晶質の状態の部分の一部を前記結晶の状態に遷移させることにより、開口よりも小さい記録マークを形成することができる。
【0027】
例えば、相変化記録媒体を用いる場合、非晶質化ビームの照射の後、ビーム強度レベルを結晶化ビームのレベルとすることにより、溶融した部分の一部を再結晶化することができる。
【0029】
本発明においては、図1(c)に例示したような開口73を介して近接場光を形成する。そして、この開口73の記録トラック長手方向の長さLyは、前記した開示例(Technical Digest of ISOM2000、Fr-J-02、pp.110-111(2000))と同様に、例えば波長650nm付近の波長に対して300nm程度と長く設定する。記録トラック幅方向の開口の長さLxには特に制限はなく、Lyと同じ程度に長く設定した場合でも本発明の効果は得られる。但し、記録密度の観点からは、Lx<Lyとすることが望ましく、例えばLxを50nm未満程度とすることによりトラック幅方向の記録密度を高くすることができる。
【0030】
本発明の第1の特徴は、記録トラック長手方向にみた開口の長さLyを、十分に高い出射効率が得られる程度に長く設定する所にある。但し、このまま記録を行うと、トラック長手方向の記録密度は、Lyに応じて決定されてしまうので、それほど高い密度にはならない。
【0031】
そこで本発明においては、記録マークの形成に際して、一旦形成した記録マークとなるべき領域の一部を消去することにより、開口サイズよりも小さい記録マークを形成する。例えば、相変化記録媒体を用いた場合には、一旦溶融した領域のうちの一部は非晶質化させずに再結晶化させる。このようにすれば、開口サイズよりも小さな記録マークを形成することができる。
【0032】
本発明によれば、最短記録マーク長をMminとした時に、Mmin≦0.6Lyなる条件で記録することができる。Mmin≦0.6Lyを実現するための具体的に構成については後に詳述するが、記録媒体に照射する記録光の波形、線速度V、媒体の熱応答、その他媒体の記録に関わる物性量の中の少なくもいずれかを調節することによって、Mmin≦0.6Lyなる条件を満たすことが可能である。
【0033】
基本的にはオーバライトタイプの媒体を利用し、図2及び図3に例示したように、瞬間的には0.6Lyよりも長いマークを記録した後、媒体が0.6Ly移動する前に消去レベルに切換える方法を採用することもできる。消去レベルへの切換えは、相変化媒体を用いる場合は、非晶質化パワー(記録レベル)から結晶化パワー(消去レベル)への光照射パワーの切換えにより実現できる。
【0034】
また、光磁気媒体を用いる場合は、光変調オーバライトタイプの媒体に対しては、やはり照射光のパワーの切換えにより、磁界変調オーバライトタイプの媒体に対しては、外部磁界の向きを切換えることによって、それぞれ消去レベルへの切換えを実施可能である。
【0035】
このようにすることで、図3に例示したように、瞬間的に記録されたLy程度の長さのマークのリーディングエッジ付近を消去できるので、最終的にはLyよりも短いマークのみを形成することができ、トラック長手方向にみて高い記録密度を得ることが可能となる。
【0036】
光学開口の切換えのタイミングは、例えば相変化媒体を用いる場合は、線速Vの他に、媒体の融点、結晶化温度、結晶化時間等の媒体の記録に関わる物性量、媒体の熱応答特性、照射光強度、ライトストラテジー等の媒体に照射する記録光の波形から決定される。ここで「リーディングエッジ」とは、開口に対応する媒体の部分のうちで、移動する方向の上流側の部分を意味する。リーディングエッジの対語は「トレーリングエッジ」であり、開口に対応する媒体の部分のうちで、移動する方向の下流側の部分を意味する。
【0037】
次に、本発明の第2の特徴として、図7に例示したように、記録媒体に形成されるヘッダ部Hからデータ部Dへ移行するタイミングを制御する。ヘッダ部Hにはアドレス情報、可変レート情報、エラー検出情報等の制御情報が記入されており、データを所定のアドレスに記録再生するガイドとなる。記録再生動作は、このヘッダ部Hの情報を読取ってから実施されるが、トラック長手方向に長い開口73を用いた場合、タイミング制御を適切に行わないと、ヘッダ部Hに格納されている情報を破壊したり、あるいはそれに続くデータ部Dに空白領域を形成してフォーマット効率を低下してしまう。
【0038】
本発明においては、記録トラック上のヘッダ部Hの再生動作からデータ部Dの再生動作へ移行する時間間隔をtrr、ヘッダ部Hの再生動作からデータ部Dへの記録動作へ移行する時間間隔をtrwとした時に、次式により表されるタイミングで記録再生を行う。
【0039】
trr<trw≦Ly/V (2)
上式において、trr<trw なる条件は記録時にヘッダ部Hの破壊を防止し、trw≦Ly/V なる条件はフォーマット効率を向上させるためのものである。
【0040】
ヘッダ部Hの再生からデータ部Dの記録に移行する際に、データ部Dの再生動作に移行する時と同一のタイミングで行うと、ヘッダ部Hにも記録マークを形成してしまう危険性があるので、trr<trwとする。ここで、trwをtrrに比べて十分に長く取れば、ヘッダ部Hへのマークの記録は防止できるが、trwを過度に長く設定するとデータ部Dの冒頭に未記録の空白領域を長く形成することとなり、フォーマット効率(データ部の利用効率)が低下する。trwの上限をLy/Vとすれば、未記録領域が長く残るのを防止できる。
【0041】
trr<trw≦Ly/Vの中でのtwの最適値は、媒体の熱応答速度や線速度Vに依存し、熱応答が緩慢であるほど、また、Vが速いほど、trwの最適値はLy/Vに近づく。
【0042】
次に、本発明の第3の特徴として、再生分解能の向上を達成する。前述した第1の特徴により、トラック長手方向に長い開口73を用いても短いマークの形成が可能となるが、再生時にも同様の長い開口を用いるので、そのまま再生すると分解能が不十分である。すなわち、開口73の長さ(Ly)の中に2つ以上のマークが記録されていると、マークの識別が困難となる。
【0043】
そこで、記録装置と媒体の記録層との間に、超解像層814を設ける。この超解像層814は、図5に例示したような非線形の光学特性を有し、図6に例示したように、入射光スポットよりも小さい超解像窓814wを形成する。このような超解像層814は、図4に例示したように、記録層813の光入射面側に設けることができる。そして、照射光強度が低い時には透過率が低いために記録層側に光を通さず、光強度の高い時には透過率が増加して記録層側に光を通す。
【0044】
このような超解像膜814を設けることにより、Lyの方向に沿ってガウス形にやや類似した強度分布を有する光のうちの強度の低い部分、即ちリーディングエッジ付近とトレーリングエッジ付近をマスクし、開口中央部付近のみを選択的に光が透過する。これは、図6に例示した如くである。このように光が選択的に透過する部分が超解像窓814wであり、この窓を介することによって、高分解能の再生動作が実現できる。超解像膜として用いることが可能な材料としては、後に詳述するように、例えば、Sb−Te、Te、Ge−Sb−Te、Ag−O、Sb、ロイコ色素、半導体微粒子分散膜などを挙げることができる。
【0045】
媒体8に再生光が照射された時に、開口73の長さLy未満の長さの超解像窓814wを形成する。ここで、「超解像窓」とは、超解像層814に形成される光学的な開口を意味するが、本願明細書においては、光ヘッド先端部に設けられた開口73と区別するために、「超解像窓」と称する。
【0046】
次に、本発明の第4の特徴として、トラック幅方向の記録密度を向上する手段も提供する。すなわち、以上説明した本発明の実施にあたっては、開口73のトラック幅方向の長さ(Lx)には特に限定は無いが、高密度記録するためには、Lx<Lyとするのが良い。例えば、Lyが300nmの時、Lxは50nm未満とするのが良い。開口73における出射効率を高い値に保持するためには、照射光は直線偏光とし、その光電界の向きをトラック方向、即ち開口の長辺の方向に揃える。
【0047】
さらに、本発明の第5の特徴として、高SNRの再生を達成する手段を提供する。すなわち、図1に例示したように、開口73の周囲を反射体71により被覆して、開口73以外の部分からの漏れ光を遮断することにより、記録時も再生時も分解能が向上する。また、再生に際して媒体の透過光では無く反射光を用いることにより、媒体基板や媒体膜の選択範囲が拡張すると共に光学系の校正が簡素化される。さらに、再生光に直線偏光を用いることにより、図9に例示したように記録時も再生時も同一の光学系を用いることができ、かつ記録時も再生時も高い効率で開口から光を出射できる。さらに再生光の検出系に検光子102を設け、開口73以外の部分(主には反射体71)からのバックグラウンド光に対して消光を設けることで、開口73からの戻り光(媒体から反射された信号)を選択的に再生することが可能となる。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0049】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態として、例えば結晶状態と非晶質状態との間を遷移可能な記録層を有する媒体に対して、開口を介して生成した近接場光を作用させることにより記録層に非晶質状態の記録マークを形成する近接場光記録装置であって、記録媒体に設けられる記録トラックの幅方向にみた前記開口の長さよりも記録トラックの長手方向にみた開口の長さのほうが長く、記録層に照射される近接場光は直線偏光状態にあり、また、近接場光の電界ベクトルの向きは、前記記録トラックの長手方向と略平行であり、記録マークの形成に際して、記録層を非晶質状態に遷移させることが可能な第1の強度の近接場光を記録層に照射し、その照射領域のうちの一部を結晶状態とし残りを非晶質状態とすることにより、照射領域よりも小さい記録マークを形成する近接場光記録装置について説明する。
【0050】
図1は、本実施形態の近接場光記録装置の要部構成を例示する模式図である。すなわち、同図(a)は、光学系の全体構成、同図(b)は光学プローブ先端の拡大断面図、同図(c)は光学プローブを記録媒体の方向から眺めた要部拡大図である。
【0051】
図1(a)においては、光学素子の概略的な配置関係について表した。すなわち、光源1から放出された光は、偏光子2、λ/2板3、偏光ビームスプリッタ4を介して対物レンズ5により集光され、カプラ6によって光学プローブ7に結合される。光学プローブ7から放出された光は、記録媒体8に照射され、その反射光が光学プローブ7、カプラ6、レンズ5を介して偏光ビームスプリッタ4において反射され、光検出器10によって検出される。
【0052】
記録媒体8は、例えば、媒体基板82の上に記録媒体膜部81が積層形成された構造を有し、スピンドルモータ9により回転される。なお、図1では煩雑を避けるために、信号検出回路系やメカ制御系などの要素は省略した。
【0053】
一方、光学プローブ7は、図1(b)及び(c)に表したように、反射体71の内部に伝播部72が設けられ、その先端には光学開口73が形成された構造を有する。
【0054】
光源1としては、例えば、AlGaAs(アルミニウム・ガリウム・ヒ素)系LD(レーザ・ダイオード)、InGaN(インジウム・ガリウム・窒素)系LD、ZnSe(亜鉛・セレン)系LDなどの半導体レーザや、He−Ne(ヘリウム・ネオン)、Ar(アルゴン)イオン、Kr(クリプトン)イオンなどのガスレーザなどから適宜選定できる。本具体例においては、発振波長633nmのHe−Neレーザを用い、記録パルスの生成はA/O変調器により行った。
【0055】
光学プローブ7としては、光ファイバー、薄膜導波路、テーパ状バルク導波路などを用いることができる。光学プローブ7としてファイバーを用いる場合は、カプラ6を配した方が好ましいが、上述した他の要素を採用する場合には、カプラ6は必ずしも必要でない。
【0056】
また、光学プローブ7としてファイバーを用いる場合には、ファイバーの先端、特に開口73の周囲を反射体71により遮蔽することが望ましい。このような反射体としては、Al(アルミニウム)、Ag(銀)、Au(金)、Cu(銅)などが好適である。開口73の周囲を被覆する反射体71の厚みは、開口73以外の部分から記録媒体側へ光が漏れるのを防ぐ程度に厚く、また、開口部における出射効率を十分に高い値に保持する程度に薄いことが望ましい。具体的には、50nm以上500nm以下の範囲であり、さらに望ましくは70nm以上200nm以下とする。本具体例においては、開口73の周囲の反射体71の厚みは、100nmとした。
【0057】
開口73は、記録媒体8に形成される記録トラックの長手方向に長く、トラックの幅方向に短い長方形状とするのが望ましい。但し、その開口形状は厳密に長方形である必要は無く、各辺が多少乱れていても、角が丸まっていてもよい。本具体例においては、開口73のトラック幅方向の長さLxを50nm、トラック長手方向の長さLyを300nmとした。
【0058】
また、光学プローブの伝播部72の内径は、開口73に近い部分まで伝播損失が無い程度に太いことが望ましい。具体的には、伝播部72の内径は、用いる光の波長程度以上の太さを有するものとすることが望ましい。このようにすることで、光は開口73まで無損失で伝播し、反射体71と開口73の面積比程度の効率で開口73に入射する。また、光を直線偏光とし、その電界ベクトルを開口の長辺に平行な向きに設定することによって開口73の出射効率を高い値に保持することができる。
【0059】
図1に例示したような光学プローブ7は、例えばファイバーを引伸ばした後切断し、先端をエッチングで平坦化した後、ファイバーを回転させながらファイバー先端の斜め後方から反射体71をスパッタ成膜した後、ファイバー先端部に所定の膜厚の反射体をスパッタ形成し、最後にFIB(focused ion beam)加工により開口73を設けることによって作成することができる。
【0060】
一方、記録媒体膜部81としては、相変化媒体、光磁気媒体、その他のオーバライトタイプの媒体膜を採用することが可能である。相変化媒体を用いる場合の膜構成は、例えば基板82側から、反射層、干渉層、相変化記録層、保護層を順次積層した積層構造とすることができる。
【0061】
具体例としては、基板側から、100nm厚のAgPdCu(銀パラジウム銅)反射層、10nm厚のZnS−SiO2(硫化亜鉛−酸化シリコン)干渉層、10nm厚のGeSbTe(ゲルマニウム・アンチモン・テルル)記録層、5nm厚のC(炭素)保護層を順次積層した構造とすることができる。さらに、C保護層の上には、必要に応じて2−3nm厚の潤滑層を設けるのが良い。
【0062】
光照射時のGeSbTe記録層の熱応答は、tmin<Ly/Vを満足するように調整されているのが良い。このような記録膜部の形成は、スパッタリング法で実施することができる。各層をスパッタ成膜後、必要に応じて潤滑層を例えばディップコートした後、好ましくは記録層を結晶化させるために初期化される。初期化は、数100μmのサイズの長円形ビームを用いたバルク・イレイサー(bulk eraser)等により実施可能である。
【0063】
また、媒体基板82としては、ポリカーボネイト、ポリメチルメタクリレート、ポリオレフィンなどの樹脂や、ガラス、Si(シリコン)、Al(アルミニウム)等から自由に選定可能である。また、媒体膜81が設けられる面には、アドレス情報やトラッキング・ガイド・グルーブ(tracking guide groove)などを形成してもよい。
【0064】
上述のような構成を用いて、本発明は以下のようにして実施することができる。
【0065】
まず、スピンドルモータ9によって記録媒体8を所定の線速Vで回転させた状態で、光学プローブ7を媒体の記録膜部81に近接させる。近接させる手段は、図1には表していないが、ボイスコイルモータやピエゾアクチュエータなどを用いた能動制御でも良いし、光学プローブをスライダーに取り付けて浮上動作させる方法でも良い。光学プローブ先端の開口73と記録膜部81との間の距離は、開口73のトラック幅方向の長さLxよりも短く設定する。本具体例では、Lxを50nmとしたので、開口と記録膜部の間の距離は20nmとした。記録層と開口出射端との間の距離は、この20nmに潤滑層の厚みとC保護層の厚みとを足して28nmとなるが、これは十分に近接場の範囲内にある。
【0066】
次に、図1には表していないレーザ駆動系により光源1から所定の波形の記録光を出射する。記録光は偏光子2により直線偏光になり、λ/2板3により光の電界ベクトルの向きをトラック長手方向に対して平行に揃えた後、ビームスプリッタ4を通じて対物レンズ5に入射し、カプラ6を介して光学プローブ7に入射する。光学プローブの伝播部72の内径は波長よりも大きく、例えば数ミクロンに設定されており、光は実質的に無損失のまま開口73まで伝播する。開口73に達した光の一部が開口を伝播し開口73の媒体側の出射端近傍に近接場を形成する。この近接場と記録媒体との相互作用により、記録層中に非晶質の記録マークが形成される。
【0067】
次に、本発明における記録過程についてさらに詳細に説明する。
【0068】
図2(a)は、本発明における記録波形を例示するグラフ図である。また、図2(b)は、本発明における媒体の熱応答特性を例示するグラフ図である。
【0069】
図2(a)の横軸は、媒体に形成される記録トラック長手方向の位置もしくは時間を表し、縦軸は温度及び光強度を表す。また、同図において、Tx及びTmはそれぞれ記録層の結晶化温度及び融点、Iはトラック方向の光強度分布、aは非晶質化光強度Iaの光が照射された時の記録層のトラック方向の温度分布、cは結晶化光強度、rは再生光強度の光が照射された時の記録層のトラック方向の温度分布をそれぞれ表す。
【0070】
一方、図2(b)の横軸は時間、縦軸は光強度をそれぞれ表す。また、Ir、Ic、Iaは、再生光強度、結晶化光強度、非晶質化光強度をそれぞれ表し、tminは時間軸の最短データ長、Δtは媒体の記録層の応答時間を表す。
【0071】
ここで、Tsは、再生動作における媒体の特性温度である。但し、Tsは記録過程には必要ない物性量なので、詳細な説明は省略する。
【0072】
図2(a)に表した温度分布a、c、rの特徴は、以下の如くである。すなわち、分布aにおいては、記録層は融点Tm以上に昇温され、冷却過程においてTm未満Tx以上にある時間(記録時の結晶化保持時間)が記録層の結晶化に必要な時間(結晶化時間τx)よりも短い。
【0073】
また、分布cにおいては、記録層は融点Tm未満、結晶化温度Tx以上に昇温され、Tx以上に加熱されている時間(消去時の結晶化保持時間)が結晶化時間τxよりも長い。
【0074】
また、分布rにおいては、記録層の温度はTxを超えることはない。
【0075】
図2(a)の上方に開口73を概念的に併記したが、開口73から強度分布Iの光が媒体に照射されていることを表すものである。ここで、図2(a)の横軸はトラック方向の位置yと捉えても良く、媒体の時間軸上での熱応答と捉えても良い。すなわち、定常状態においては、y=Vtと書ける。
【0076】
図2(a)においては媒体は開口73に対して左から右に移動する。すなわち、開口73の左端がリーディングエッジ、右端がトレーリングエッジに対応する。開口73から出射する光の強度分布は、開口中心に対して対称形であるが、媒体の熱分布は強度分布よりもややトレーリング側に寄った形状を示す。これは、媒体に光が照射されてから所定の温度に昇温するまでに所定の時間を要するからである。
【0077】
図2(a)に表した熱分布は定常状態を示すが、図2(b)におけるΔtの時間帯は、r→a、a→c、c→aというように各熱分布の間を遷移することになる。図2(b)においては、記録波形は単純にIr、Ic、Iaの三値の間で強度変調されているが、さらに多値化されていても良く、また、時間軸に沿って見た場合に、さらに細かいパルスに分割されていても良い。
【0078】
本発明においては、記録波形は、Mmin≦0.6Lyを満足するように調整されているのが良い。記録波形、媒体の層構成(層数、各層材料、各層膜厚等)、記録層のTx、Tm及び結晶化時間τx、V及び開口形状で決まる光強度分布Iによって記録層の熱応答が決定される。本発明では、上記したパラメータの中の少なくも一つ以上が、Mmin≦0.6Lyを満足するように調整されている。
【0079】
図3は、本発明における非晶質記録マークの形成過程を説明するための模式図であり、同図(a)は図2(b)の時刻t1+Δtにおける状態、図3(b)は図2(b)のt2における状態、図3(c)は図2(b)のt2+Δtにおける状態にそれぞれ対応する。
【0080】
図3(a)〜(c)においては、上側に開口73(長方形の表示)と、記録層の溶融部もしくは非晶質マーク(ハッチング表示)を表し、下側に各時刻における記録層の温度分布を表した。
【0081】
順を追って説明すると、まず、図2(b)に表したように、再生光強度Irの光照射から、時刻t1において非晶質化光強度Iaに切換り、そのΔt後に図3(a)に表した定常熱分布が形成される。この時点で、開口73の直下の記録層のうちで、図3(a)にハッチにより表した部分が溶融していることになる。この時点での溶融部のトレーリング側の端部をy1とする。
【0082】
媒体が図3(a)の向かって右側へ線速Vで移動しながら時刻t2まで非晶質化光強度Iaの光照射が継続される。時刻t2の時点では図3(b)のy1’とy2の間の領域が溶融しており、図3(a)のy1の位置は図3(b)では、図3(a)のy1よりもトレーリング側にV×(t2−t1)だけ移動した所に位置する(図3(b)のy1)。
【0083】
y1’とy1の間の領域は図3(b)では融点以下の温度になっているが、仮に、記録時の結晶化保持時間(図3(b)のtw)が記録層の結晶化時間τxよりも短ければ、y1’とy1の間の領域は非晶質状態を維持することとなる。例えば、このままの状態で照射光強度がIrまで低下(図2(b)とは異なる)してy2の位置が開口73から外れれば、結果的にy1からy2までの長さ、即ち開口のトラック方向の長さLy程度の長さの非晶質マークが記録されることになる。これはこれでひとつの記録の形態であるが、本発明はもっと短い非晶質マークを記録することを目的としている。
【0084】
すなわち、本発明においては、例えば、図2(b)に表したように、時刻t2において光強度をIrまで低下させずに結晶化光強度Icに留めることとする。すると、時刻t2からΔt後の定常熱分布は図3(c)に表した如くとなる。図3(b)のy1とy2はさらにトレーリング側へ移動し図3(c)の位置にくる。この時、τx=teなる位置y3を考えるとy3及びこれよりもリーディング側の領域は、たとえそこが溶融していた領域であっても、再結晶化し非晶質マークは残らない。
【0085】
図3(c)の状態の次にIcレベルの光を照射したまま媒体が移動して図3(c)のy2の位置が開口73から外れると、最終的に、y3及びこれよりも後(y2の方向)の部分は結晶化して、y1からy3までの非晶質マークが形成されることになる。このマークの長さは開口73のトラック方向の長さLyよりも短く、本発明のMmin≦0.6Lyなる条件を満たす。また、時刻t2とt3の間隔を調整することによって結晶スペース長も、Lyより短く記録することができる。
【0086】
アレニウスの扱いによると、相変化膜中の結晶の占有比(x)は、結晶化保持時間をt、頻度因子をν、活性化エネルギーをEa、ボルツマン定数をkb、温度をTとおくと、x=1−exp(−kt),k=νexp(−Ea/kbT)で与えられる。従って、tが0でない限り完全に非晶質という状態はないことになり、同時にtが∞でない限り完全な結晶状態もないことになる。
【0087】
現実的には、例えば、Ea=2.3(eV),ν=3×10E27(sec−1)といった相変化膜の推定値を入れると、結晶化温度帯中の例えば430℃程度でのk=10E8(sec−1)となるので、保持時間が1nsecの場合はほぼ非晶質、100nsecの場合はほぼ結晶化、となり実用的には保持時間の二桁程度の差で、非晶質状態か、再結晶化状態かを選択できる。
【0088】
つまり、リーディング側の保持時間がトレーリング側の保持時間よりも概ね一桁、好ましくは二桁程度以上長くなるようにすれば、非晶質の記録マークのサイズを小さくすることができる。
【0089】
このように、本発明においては、例えば、図2(b)に表したように、Iaレベルの書き込みパルスの後に、Icレベルを維持することにより、Iaレベルの光照射によって溶融した記録層の一部を結晶化させ、非晶質マークのサイズを小さくすることができる。その結果として、トラック長手方向の線記録密度を高くすることができる。
【0090】
同様の効果は、記録ビームの強度分布によっても促進される。すなわち、図8に関して後に詳述するように、本発明のおいて用いる長方形状の開口73から放射される光の強度分布は、開口の長手方向に沿って見たとき、通常のガウス分布よりもブロードな分布となる。従って、このようなブロードな記録光の下で媒体が走行した場合、強度ピークを通過してからの冷却速度が緩和され、結晶化が促進される。つまり、通常のガウス分布の記録光を照射した場合には非晶質となるべきトレーリング側の部分が結晶化することにより、非晶質マークのサイズを小さくすることができる。
【0091】
なお、本発明を用いない場合の記録マークの長さは、開口73のトラック長手方向の長さLyの他に、記録光強度Iaにも依存する。記録光強度が低い場合は本発明を用いずともMmin≦0.6Lyとなるが、このような光強度で記録するとΓ(ガンマ)特性の立上り付近を用いることになるので、パワーマージンは狭い。すなわち、光強度のわずかな変動によっても書き込み漏れが生ずる虞がある。広いパワーマージンで安定して記録を行うためには、光強度分布の全半値幅程度以上の強度において、記録層を記録可能な状態まで遷移させることができることが望ましい。全半値幅は、開口長Lyの概ね60%である。
【0092】
また、記録層の熱応答は所定の時定数を持つので、従来技術では、応答時間中での媒体の移動距離分は0.6Lyよりも長いマークになる。これに対して、本発明においては、Mmin≦0.6Lyと規定している。本発明においては、原理的にMminをさらに短くすることが可能であり、好ましくはMmin≦0.4Ly、さらに好ましくはMmin≦0.25Lyとするのが良い。
【0093】
なお、上述した具体例においては、Ly>Lxなる場合について説明したが、本発明においては、LyとLxとの大小関係には関しては特に限定する必要はない。但し、後述するように、Lxを短くしても開口の出射効率を低下させないので、記録密度を上げるためには、Ly>Lxとするのが良い。
【0094】
また、本発明において用いる記録媒体は、相変化媒体以外に光磁気媒体でも良く、光変調オーバライト型の光磁気媒体の場合は、相変化媒体の場合同様、光強度を切換えるタイミングによってLyよりも短いマークが形成でき、磁界変調オーバライト型の光磁気媒体の場合は記録磁界を切換えるタイミングを制御すれば良い。
【0095】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態として、開口を介して媒体に光を照射し情報の記録再生を行う近接場光記録装置において、記録トラック長手方向に沿った開口の長さをLy、開口に対する媒体の移動速度をV、記録トラック上のヘッダ部の再生動作からデータ部の再生動作へ移行する時間間隔をtrr、ヘッダ部の再生動作からデータ部の記録動作へ移行する時間間隔をtrwとおく時、以下の関係式を満足する近接場光記録装置について説明する。
trr<trw≦Ly/V (2)
ここで、第1実施形態に関して前述したように、マークの記録は開口のトレーリング側で実施される。本実施形態は、記録開始のタイミングと再生開始のタイミングとをずらした点に特徴を有する。そこでまず、本実施形態において用いることが望ましい媒体と、開口から見た実効的な再生位置について説明する。
【0096】
図4は、本実施形態にかかる近接場光記録装置に用いて好適な記録媒体の断面構成を例示する模式図である。図1乃至図3に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付した。
【0097】
すなわち、図4に表した媒体8は、基板82の上に記録膜部81が設けられた構造を有する。記録膜部81の構造を説明すると、基板側から順に、反射層811、干渉層812、記録層813、超解像層814、保護層815が積層形成されている。また、記録層813においては、非晶質マーク部813aと結晶スペース部813cが形成されている状態が表されている。
【0098】
これらのうちで本実施形態において本質的に必須の要素は、第1実施形態の場合と同様に記録層813のみであるが、超解像層814も併せて有する媒体の方が、Lxよりも短い記録マークを分解能良く再生する上で好ましい。
【0099】
また、超解像層814以外にも、非晶質マークと結晶スペースの光学コントラスト比を向上させるために、反射層811と干渉層812が有効に作用する。また、超解像層814の保護のためには、保護層815を設けることが好ましい。
【0100】
以下、最初に、超解像層814を具備する媒体を用いた場合について説明し、その後、超解像層814が無い場合の実施態様について説明する。
【0101】
超解像層814としては、例えばTe、Sb、Sb−Te、Ge−Sb−Te、Ag−O、Coドープガラス、ロイコ系色素、半導体微粒子分散膜などを用いることができる。超解像層814を設けた分、開口と記録層との間の距離は大きくなるが、例えば開口と保護層の間を15nm、保護層厚を5nm、超解像層厚を25nmとした場合、記録層は十分に近接場の範囲内に位置する。
【0102】
図5は、超解像層814の典型的な光学特性を表すグラフ図である。同図の横軸は超解像層814に入射する光の強度Iもしくは超解像層の温度Tを表し、縦軸は超解像層814の透過率TRを表す。
【0103】
図5に表したように、超解像層814は、光強度Iに対して非線形の応答を示し、低いIに対して低い透過率を、高いIに対して高い透過率を示す。Tsは図2(a)においても表したパラメータで、ここでは超解像層814の特性温度を表し、Tsを境としてその上下で超解像層の光学特性が大幅に異なることを意味する。ここでは超解像層の透過率は、Ts未満では低く、Ts以上では高いというように扱う。
【0104】
このような光学特性は、Te、Sb、Sb−Te、Ge−Sb−Te等を超解像層として用いた場合は、再生光照射による光スポット中央部付近での材料の溶融と、それに伴う消衰係数の低下に起因して生ずる。この場合、超解像層を構成する膜材料の融点がTsに相当する。ここで、超解像層814としてGe−Sb−Teを選定する場合には、記録層813として用いるGe−Sb−Teとは組成を変えて、記録層よりも低融点でかつ結晶化時間の短い組成を選ぶのが良い。
【0105】
一方、超解像層814としてAg−Oを選ぶ場合は再生光照射によるスポット中央部付近でのAg−Oの熱分解、Coドープガラスを選ぶ場合はCoの電子遷移、ロイコ色素の場合は色素分子と発色剤分子の熱的化学反応、半導体微粒子分散膜の場合は吸収飽和現象が、それぞれ図5に表した非線形応答の原因となる。
【0106】
図5に表したような光学特性を有する超解像層814を具備する記録媒体に再生光強度Irの光を照射した場合、図6に表したように光学開口直下の超解像層に実効的な再生窓が形成される。
【0107】
すなわち、図6は、開口73から超解像層814に再生光を照射した状態を開口側から眺めた平面図である。光学開口73から眺めると、その中央部付近において、超解像層814に透過率が大きい再生窓814wが形成され、その周囲は透過率が低いマスク814mが形成されている。
【0108】
再生時の光強度分布もしくは温度分布は、図2(a)における分布Iもしくは分布rと同様である。そのため、超解像層814のうちで、特性光強度もしくは特性温度Ts以上の部分は透過率が高く、他の部分では透過率が低い。従って、図6に表したような再生窓814wが形成されることになる。
【0109】
ここで、「特性光強度」とは、超解像層が半導体微粒子分散膜のようにフォトンモード系の材料からなる時は、特性温度に相当する光強度のことを意味する。応答時間が極めて速い半導体微粒子分散膜の場合、超解像窓814wは開口の中央部に形成され、応答が比較的緩やかなヒートモード系超解像層の場合には、超解像窓は開口の中央よりもややトレーリング側にずれる。しかしながら、いづれの場合でも超解像窓が形成される位置は記録マークの形成過程においてマークが形成される位置に比べて開口の中央部に近い所に位置する。
【0110】
このような記録時と再生時における光スポットの位置の「ずれ」が、本実施形態のポイントとなる。ここで、記録消去時には、再生時の数倍から10倍の強度の光を照射するので、超解像窓814wは大きく開く(実質的に超解像層が無いのと等価となる)。従って、記録光を無用に絞って記録消去動作を阻害するような問題は生じない。
【0111】
次に、本実施形態における記録再生動作について説明する。
【0112】
図7は、本実施形態における記録再生動作を説明するための模式図であり、同図(a)は、ヘッダ部の再生動作からデータ部の記録動作へ移行する場合、同図(b)はヘッダ部の再生動作からデータ部の再生動作へ移行する場合をそれぞれ表す。
【0113】
また、図7において、TRACKは記録媒体に形成される記録トラック、Hはそのヘッダ部、Dはそのデータ部、73は開口、814wは超解像窓、814mはマスク部、y1は記録開始後の溶融領域のトレーリングエッジ、trwはヘッダ部の再生動作からデータ部の記録動作へ移行する時間間隔、trrはヘッダ部の再生動作からデータ部の再生動作へ移行する時間間隔である。ここで、trw、trrに線速Vを掛ければ図7における距離が算出できる。
【0114】
また、超解像窓814wとマスク814mは、図6に表したものと同様のものを意味し、溶融領域のトレーリングエッジy1は、図3(a)のy1と同様のものを意味する。
【0115】
また、実際の実施態様においては、開口に対して媒体が例えば左側から右側へ移動するが、図7では説明の便宜上、媒体に対して開口が、矢印Tで表したように右側から左側に移動するように表した。
【0116】
媒体のヘッダ部Hはアドレス情報や各種の制御情報を保持する重要な部分だが、これは予め基板上に「ピット列」などの形態で刻印しておいても良いし、平坦な基板上に記録膜部を形成した後に専用の記録機でサーボトラックライトしても良い。ヘッダ部Hを基板上のピット列として形成する場合は、通常の光ディスクのマスタリングプロセスと同様の手法を適用できる。但し本発明においては、超高密度の記録媒体が要求されるので、電子ビームマスタリングを用いるのが良い。
【0117】
データ部Dには特にピット列は設けないが、好ましくはトラッキングガイド用の溝が設けられる。溝を設ける場合には、溝の底部まで近接場相互作用が及ぶ程度に溝は浅くするのが良い。または、データ部Dには溝を設けず、トラッキングはヘッダ部Hにサンプルサーボ情報を記録して行うこともできる。
【0118】
開口73は、記録媒体の記録トラック上をヘッダ部H、データ部Dの順番でアクセスする。
【0119】
まず、図7(a)を参照しつつ、ヘッダ部Hの再生からデータ部Dの記録に移行する場合について説明する。ヘッダ部Hの再生は、超解像窓814wを介して行うので、ヘッダ部Hの最終端を再生する際の開口73とトラックとの位置関係は、図7(a)の中段に表した如くとなる。一方、図7(a)の下段は、データ部Dへの記録が開始される瞬間を表す。このように、データ部Dへの記録開始点において、超解像層814の溶融部814Fのトレーリングエッジy1がヘッダ部Hにはみ出さないようにするのが本実施形態のひとつの特徴である。このようにすることで、ヘッダ部Hの光学応答が変化してしまうのを防止することができる。
【0120】
ヘッダ部Hの再生からデータ部Dの記録に移行する時間間隔trwは、再生時の超解像窓814wのサイズ、記録開始時のy1の位置によって決定される。超解像窓814wのサイズは、線速V、再生光波形、超解像層の応答特性により決定され、y1の位置は、線速V、記録光波形、媒体の熱応答特性、記録層の記録パラメータ(Tx、Tm、τx)により決定される。ここで、本実施形態においては、y1の位置は開口73のトレーリングエッジに近い所に位置し、超解像窓814wは開口の中央部付近に位置する。
【0121】
次に、図7(b)を参照しつつ、ヘッダ部Hの再生からデータ部Dの再生に移行する場合について説明する。再生は、ヘッダ部H、データ部D共に超解像窓を介して行うので、ヘッダ部Hの再生からデータ部Dの再生に移行する時間間隔trrは図7(b)に表した如くとなる。但し、ヘッダ部Hとデータ部Dの再生は、同一のサイズの超解像窓(同一の再生光波形)で行っても良いし、変えても良い。また、連続的に行っても良いし、途中で休止期間を設けても良い。いづれの場合においても、trrは前記したtrwよりも長くなることはない。
【0122】
trwの下限はtrrであり、これは記録層813の熱応答が極めて速い場合に相当する。trwの上限は、超解像窓814wが開口73と同程度に大きく、かつ記録層813の熱応答が緩慢で開口73のトレーリングエッジとy1とが一致する場合に相当し、この時trwはLy/Vで与えられる。
【0123】
ここで、trwをLy/Vよりも長く設定することによっても、ヘッダ部Hに非晶質マークを記録してしまうことを防止できる。しかし、trwを過度に長くすることはデータ部Dの空白領域を増やし、利用効率を低下させるために好ましくない。そこで、本実施形態においては、trwの上限をLy/Vとする。
【0124】
上述したtrwとtrrのタイミング制御は、近接場光記録装置のドライブコントローラによりレーザを駆動することで実施可能である。装置の信号処理系、メカ制御系等については後述の具体例に関して説明する。
【0125】
以上、超解像層814を有する媒体を用いた場合について説明した。
【0126】
次に、超解像層を有しない記録媒体を用いた場合について説明する。
【0127】
超解像層が無い媒体の場合は、図7においてマスク部814mが無い場合を考えれば良い。この場合も、データ部Dの利用効率を上げるために、図7(a)の下段に表したものと同様にデータ部D開始点に近接して記録マークを形成したとする。この記録マークを再生するためには、開口73のリーディングエッジが記録マークの右端に掛かり始める時点で、データ部Dの再生を開始する必要がある。従って、trrは、やはりtrwよりも短い。trwの上限についても超解像膜が有る場合と全く同様に考えることができる。
【0128】
一方、開口73の形状に関しては、上述した具体例においてはLy>Lxなる場合を例示したが、第1実施形態の場合と同様に、本実施形態においてもLxはLyと等しくても長くても構わない。開口73の出射効率を高い値に保持したまま、高密度の記録再生を行うためには、Ly>Lxとするのが良い。さらに本実施形態においては、データ部Dの記録開始点と再生開始点を合わせるために、ヘッダ部Hからデータ部Dへ移行するタイミングを規定しているが、最短記録マーク長は0.6Ly以下である必要はない。ただし、記録線密度を高めるためには、第1実施形態と本実施形態とを組み合わせることが望ましい。
【0129】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態として、近接場光を生成する開口の縦横サイズの関係をLy>Lxとし、これに第1及び第2実施形態を組み合わせた近接場光記録装置について説明する。
【0130】
図8は、開口73を出射する光の強度分布Iと開口部を伝播する光の損失係数αの解析例を表し、同図(a)は開口の模式図とそれぞれの方向に沿ってみた光強度分布のグラフ図、同図(b)は損失係数を表すグラフ図である。
【0131】
ここで、開口73のサイズは、Ly=300nm、Lx=50nmとした。開口73を伝播する光は直線偏光であり、光電界ベクトルはLyの方向を向いている。
【0132】
開口73を出射する光の強度分布は、図8(a)に表したように、Ly方向にはガウス型にやや類似した分布であり、Lx方向にはほぼ矩形の分布となる。Ly方向の分布における全半値幅はLyの60%であり、これが第1実施形態における限定の根拠となる。
【0133】
具体的に説明すると、図8(a)に表したLy方向の光強度分布は、通常のガウス型分布よりもブロードすなわち幅広である。例えば、ピーク強度の半分の強度となる部分のビーム径(D0.5)と、ピーク強度のe−2倍(0.134倍)となる部分のビーム径(D0.134)との比率を調べてみると、通常のガウス型分布の場合には、(D0.5/D0.134)=0.6 であるのに対して、図8(a)の分布の場合には、(D0.5/D0.134)=0.65 である。
【0134】
つまり、図8(a)に表したLy方向の光強度分布のほうが、通常のガウス分布よりもブロードである。このようなブロードな光ビームを照射した場合、記録層において一旦溶融した部分の冷却速度が緩和されるため、結晶化が促進され、その分だけ非晶質マークのサイズを小さくすることができる。つまり、通常のガウス型のビームを照射した場合よりもトラックの長手方向に沿った線記録密度を高くすることができる。
【0135】
一方、図8(b)の損失係数は、光の波長が650nm、開口73の周囲を被覆する反射体がAg(銀)で、開口内部は空気の場合の具体例である。同グラフの横軸は、Lx方向に平行に光磁界ベクトルが向いているTMに対してはLxの長さ、Ly方向に平行に光電界ベクトルが向いているTEに対してはLyの長さで表した。図8(b)から、TMの損失係数は、Lxを10nm程度に短くしても低い値を保持することがわかる。一方、TEの損失係数は、Lyが300nm以上では低い値を示すが、270nm程度以下にすると急激に増加する。従って、低い損失係数即ち高い伝播効率を得て、かつ高密度記録するためには、Ly>Lxとするのが良いことがわかる。
【0136】
ここで、光電界ベクトルをLx方向に向けた場合を考えると、LxとLyが入れ替わるだけなので、やはりLxが270nm以下では損失は急増するだけで意味がない。円偏光の光の場合、光電界ベクトルはいづれの向きにも向くので、図8(a)に表した開口73ではLx方向を向いた時に損失が大きくなる。光の波長が変わった場合には、Lyの臨界的な値(前述したように波長が650nmの場合は270nm)は、波長の比率でシフトすると考えれば良く、短波長ほどLyを短くできる。
【0137】
上述したように、光電界ベクトルがLy方向を向き、且つLy>Lxなる開口を用いると、光の出射効率と高い記録密度とを両立できる。但し、このままではトラック幅方向の密度は非常に高くできるものの、トラック長手方向の線密度はLyで規定されてしまう。前述したように良好なパワーマージンで記録しようとすると、最短記録マーク長は0.6Lyよりも長くなってしまう。
【0138】
そこで、本発明の第1実施形態に従って、媒体に照射する記録光の波形、媒体の開口に対する移動速度、媒体の熱応答、媒体の記録に関わる物性量の中の少なくも一つが、Mmin≦0.6Lyを満足するように調整すると、Ly>Lxかつ光電界がLy方向を向いている態様においても、高い線密度で記録することが可能となる。
【0139】
また、トラック長手方向に長い開口73を用いる場合、ヘッダ部Hからデータ部Dへ移行する時のタイミング制御をしないと、ヘッダ部Hに記録マークを形成してしまったり、データ部Dの利用効率を著しく損ねるという問題が生ずる。そこで、本発明の第2実施形態に従って、記録トラック上のヘッダ部の再生からデータ部の再生へ移行する時間間隔をtrr、ヘッダ部の再生からデータ部の記録へ移行する時間間隔をtrwとした時、trr<trw≦Ly/Vを満足するように調整すると、Ly>Lxかつ光電界がLy方向を向いている態様においても、ヘッダ部Hの破壊が無く、かつデータ部Dの利用効率を高く、記録再生動作を実施することが可能となる。
【0140】
(実施例)
次に、本発明の実施例として、第1乃至第3実施形態に加えて、記録媒体に照射する再生光が直線偏光であり、検出系に検光子が設けられた近接場記録装置について説明する。
【0141】
図9は、本実施例の近接場光記録装置の要部構成を表す模式図である。すなわち、光源91から放出された光は、偏光子92、λ/2板93、ビームスプリッタ94、カプラ95を介して、ファイバー96に結合される。ファイバー96の先端はスライダー97に固定され、サスペンションアーム98、アーム駆動系99により、記録媒体100の上を適宜走査する。媒体100からの反射光は、ファイバー96、カプラ95を介してビームスプリッタ94により分岐され、λ/4板101、検光子102を介して光検出器103によりモニタされる。
【0142】
光検出器103の出力は、プリアンプ104、可変利得アンプ105、A/D変換回路106、線形等価回路107、データ検出回路108、デコーダ109を経てドライブコントローラ110に入力される。ドライブコントローラ110は、インタフェース111を介して外部とのデータの入出力を行い、またメカ制御系114に制御信号を出力してアーム駆動系99やスピンドルモータ115の動作を制御する。また、ドライブコントローラ110は、変調回路112を介してレーザドライバ113を制御し、光源91の発光を制御する。
【0143】
光源91としては、単色系ではHe−Neレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザなどに代表されるガスレーザや、InP系、GaAs系、GaN系、ZnSe系などの半導体レーザを用いることができる。
【0144】
入射側のλ/2板93は、入射直線偏光の偏光方向を変えるためのもので、これを回転させることによって光学開口のLyと平行な方向に光電界の向きを揃える。ファイバー96としては、好ましくは偏光面保存型のものを用いるが、λ/2板93の次にλ/4板を設置すれば偏光面保存型で無いファイバーを用いても良い。
【0145】
ファイバー96は、スライダー97の空気流出面に取り付けられる。ファイバー96の先端は、図1に例示したように加工しても良いし、スライダー97の空気流出面に図示しない薄膜導波路を設け、ファイバー96からの光を薄膜導波路に導いても良い。いづれの場合も媒体対向面には、図1に表したものと同様の光学開口73が設けられる。
【0146】
検出側の1/4波長板101は、媒体からの反射光の楕円偏光成分を直線偏光にし、コントラスト比を向上させるためのものであって、本発明の実施に必ずしも必須ではない。
【0147】
データ再生手段は、光検出系と再生信号処理回路からなる。本実施例の記録再生装置に用いる光検出系は、入射側に偏光子92、検出側に検光子102を具備する。LD出射光を偏光ビームスプリッタを用いて直線偏光とし、検出光も同じ偏光ビームスプリッタを通じて所定の通過軸に設定された検光子側に導いても良い。
【0148】
検光子102を通過した光は検出器103に入射し、電気信号に変換される。再生信号回路は、前述したように、プリアンプ104、可変利得アンプ105、A/D変換回路106、線形等化回路107、データ検出回路108、デコーダ109を有する。プリアンプ104と可変利得アンプ105は、光検出器103の出力信号を増幅する。A/D変換回路106は、増幅された信号を離散時間の量子化サンプル値であるデジタル信号に変換する。線形等化回路107は、デジタルフィルターの一種である。データ検出回路108は、例えばパーシャルレスポンス(partial response:PR)で等化した再生信号波形からデータを検出するマキシマムライクリフッド(maximum likelihood:ML)で推定する信号処理回路であり、具体的にはビタビデコーダからなる。デコーダ109は、データ検出回路108によって検出された符号ビット列を元の記録データに復元する。
【0149】
データ記録手段は、変調回路112、LDドライバ113からなる。変調回路は、ドライブコントローラ110から送出された記録データを所定の符号ビット列に変換する符号化処理を実行する。LDドライバ113は、変調回路112から出力された符号ビット列に従った記録マークを媒体100の上に記録するように光源91を駆動する。
【0150】
ドライブコントローラ110は、記録再生装置の主たる制御系であり、インタフェース111を介して、例えば図示しないパーソナルコンピュータやAV機器と接続され、記録再生データの転送制御を行なう。なお、本発明の装置は、図示はしていないが、映像情報の記録再生時には必要な動画圧縮回路、動画伸長回路、データ検出回路108により復調されたデータの誤り訂正処理を行なう誤り検出訂正回路なども適宜含むものとすることができる。
【0151】
媒体100として、例えば、相変化記録媒体を用いた場合、データを消去する信号として、記録パワーレベルよりも低い消去パワーレベルを有する消去光をDC的もしくはパルス的に変調回路112によって生成する。
【0152】
上述した構成を用い、以下の手順で記録再生を実施した。発明の効果を明確にするために、図9の構成に加え、プリアンプの出力部にスペクトラムアナライザを、データ検出回路の出力側にBER(bit error rate)測定器を取り付けた。また、比較例として、媒体に入射する光を円偏光とし、検出系から検光子を取り除いた形態でも動作を行った。媒体としては第2実施形態に関して前述したものと同様の超解像層付きの相変化媒体を用いた。
【0153】
まず、媒体100をスピンドルモータ115により回転動作させ、光源91から再生パワーレベルの光を照射して、フォーカシングとトラッキングを調節した。フォーカシングとトラッキングの手段は通常の光記録再生装置と類似であるが、フォーカシングとトラッキングの信号にも開口73周囲の反射体からのバックグラウンド光が重畳するので、本発明に従って直線偏光を用い検光子を介して信号を得るのが良い。
【0154】
次に、単一周波数のテスト信号を記録信号としてインタフェースにパソコン入力し、ドライブコントローラからの指令に従って、変調回路112、LDドライバ113を動作させて、光源から記録パルス光を出射した。記録光は偏光子92で直線偏光となり、λ/2板93により光電界ベクトルの向きを開口73のLyと平行な方向に向けられ、ビームスプリッタ94、カプラ95、ファイバー96を介して、光学開口73に導かれ媒体面に入射する。開口73のサイズは、Lxを50nm、Lyを300nmとした。
【0155】
媒体として相変化媒体を用いた場合、通常の相変化記録再生装置と同様に、記録レベルの光が照射された部分には、非晶質の記録マークが形成され、それ以外の部分は結晶スペース部となる。基準信号の周波数と媒体線速度、及びを制御して、トラック方向に長さが50nmの非晶質マークとその間に長さが50nmの結晶スペース列を記録した。トラック方向に開口のLyの1/6の長さのマークとスペースを記録する手段は、第1実施形態に関して前述した通りである。このようにして記録した記録マーク列の再生は、再生パワーレベルの光をDC的に照射することで実施される。
【0156】
再生は、直線偏光の光を用い、検出系には検光子102が配される。検光子前段のλ/4板101は媒体の反射光が楕円偏光であっても、これを直線偏光に変換し再生信号のSN比を改善するために挿入されるものであり、これが無くても本発明は実施可能である。検光子102の通過軸を調整することによって、媒体100からの反射光のみを選択的に光検出器103側に通過させ、開口73周囲の反射体71からの反射光を選択的に遮断することができるため、SN比の高い再生が可能となる点も、本実施例のポイントである。
【0157】
ここで、再生時に媒体100に入射する直線偏光の光電界ベクトルの向きをLy方向に設定すれば、記録時と同じ向きとなり、第3実施形態に関して前述した特徴と組合わせた場合に、光学系の構成が簡便になり、かつ調整が簡素化されて好ましい。ここで、第2実施形態に関して前述した超解像層を具備する媒体を用いて再生を行う形態と、直線偏光の再生光を用いて反射体71からのバックグラウンドノイズを低減化する形態を組合わせることで、以下の効果が得られる。
【0158】
まず、超解像層814を用いることにより、再生分解能、特にトラック長手方向の分解能を向上できるため、第1実施形態に関して前述したようにトラック長手方向にLyより短いマークを記録する態様と組合わせることで、記録分解能と再生分解能の両方を改善することができる。
【0159】
一方、超解像層814のマスク部814mに入射した光は超解像層に吸収されて再生信号に寄与しないので、超解像層を用いて再生した場合は、超解像層を用いないで再生した場合に比べて信号光量自体は低下する。このことは、再生時に反射体71からのバックグラウンド光をも光検出器側に通過させてしまう構成とした場合には、超解像層814を用いると信号SNが低下してしまうことを意味する。これに対して、本実施例においては、超解像層814を用いて再生する手段と直線偏光の光を用いて再生する手段とを組合わせることにより、分解能と再生SN比の両立が図れる訳である。
【0160】
このようにして本実施例において検出された基準信号の再生CNRは50dBであり、実用に供し得る値を示した。
【0161】
次に、最短マーク長が50nm、最長マーク長が180nm程度のランダムパターン信号を媒体上の5トラックに1000回オーバライト記録した後に、BERを測定した結果、いづれのトラックでもBERは10E−5以下であり、これも十分に実用的な値を示した。
【0162】
また最後に、動画像を入力して記録し再生した結果、像の歪みや欠陥の無い鮮明な再生画像を得ることができた。
【0163】
一方、比較例として、同様の構成において再生光を円偏光とし、検光子102を除いた光学系を用いて評価した結果、再生CNRは35dB未満、BERは10E−2程度という値であり、動画像の再生は全くといってよいほど実施不能であった。
【0164】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、記録装置や記録媒体の具体的な構成や材質などについては、当業者が適宜選択した用いたものも本発明と同様の作用効果が得られる限り本発明の範囲に包含される。
【0165】
また、相変化記録媒体、光磁気記録媒体あるいは超解像層の材料についても、前述した具体例には限定されず、光記録、光磁気記録あるいは超解像効果が達成される各種の材料を同様に用いて同様の作用効果が得られ、この限りにおいて本発明の範囲に包含される。
【0166】
また、本発明の近接場光記録装置は、記録媒体の脱着が可能ないわゆる「リムーバブルタイプ」のものであってもよい。
【0167】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、近接場光記録装置において、光利用効率の高いトラック方向に長い開口を用いた場合においても、この開口長未満の長さのマークを記録することができ、かつ超解像層の利用により、この開口長未満の長さのマークを分解能良く再生することができる。
【0168】
さらに、本発明によれば、記録媒体に設けられたヘッダ部を破壊せずに高いデータ利用効率で記録再生することができ、かつ超解像層を用いても高い信号SN比で再生することができるので、記録密度を格段に向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる近接場光記録装置の要部構成を例示する模式図である。
【図2】(a)は、本発明における記録波形を例示するグラフ図であり、(b)は、本発明における媒体の熱応答特性を例示するグラフ図である。
【図3】本発明における非晶質記録マークの形成過程を説明するための模式図であり、(a)は図2(b)の時刻t1+Δtにおける状態、(b)は図2(b)のt2における状態、図3(c)は図2(b)のt2+Δtにおける状態にそれぞれ対応する。
【図4】本発明の近接場光記録装置に用いて好適な記録媒体の断面構成を例示する模式図である。
【図5】超解像層814の典型的な光学特性を表すグラフ図である。
【図6】開口73から超解像層814に再生光を照射した状態を開口側から眺めた平面図である。
【図7】 本発明の実施の形態における記録再生動作を説明するための模式図であり、(a)は、ヘッダ部の再生動作からデータ部の記録動作へ移行する場合、(b)はヘッダ部の再生動作からデータ部の再生動作へ移行する場合をそれぞれ表す。
【図8】開口73を出射する光の強度分布Iと開口部を伝播する光の損失係数αの解析例を表し、(a)は開口の模式図とそれぞれの方向に沿ってみた光強度分布のグラフ図、(b)は損失係数を表すグラフ図である。
【図9】本発明の実施例の近接場光記録装置の要部構成を表す模式図である。
【符号の説明】
1 光源
2 偏光子
3 λ/2板
4 ビームスプリッタ
5 対物レンズ
6 カプラ
7 光学プローブ
8 記録媒体
9 スピンドルモータ
71 反射体
72 伝播部
73 開口
81 記録膜部
82 媒体基板
Lx 開口のトラック幅方向の長さ
Ly 開口のトラック方向の長さ
Tm 融点
Tx 結晶化温度
Ts 超解像層の特性温度
I 光強度
a 非晶質化時の温度分布
c 結晶化時の温度分布
r 再生時の温度分布
V 媒体移動速度
Ia 非晶質化光強度
Ic 結晶化光強度
Ir 再生時の光強度
tmin 最短記録パルス幅
Δt 媒体の熱応答時間
tw 記録過程における結晶化保持時間
te 結晶化時における結晶化保持時間
811 反射層
812 干渉層
813 相変化記録層
814 超解像層
815 保護層
813a 非晶質マーク
813c 結晶スペース
H ヘッダ部
D データ部
TRACK 記録トラック
trw ヘッダ部の再生からデータ部の記録へ移行する時間
trrヘッダ部の再生からデータ部の再生へ移行する時間
TE 光電界がLy方向に平行な直線偏光
TM 光磁界がLx方向に平行な直線偏光
α 開口通過時の伝播損失
91 光源
92 偏光子
93 λ/2板
94 ビームスプリッタ
95 カプラ
96 ファイバー
97 スライダー
98 サスペンションアーム
99 アーム駆動系
100 媒体
101 λ/4板
102 検光子
103 光検出器
104 プリアンプ
105 可変利得アンプ
106 A/Dコンバータ
107 線形等価回路
108 データ検出回路
109 デコーダ
110 ドライブコントローラ
111 インタフェース
112 変調回路
113 LDドライバ
114 メカ制御回路
115 スピンドルモータ

Claims (6)

  1. 開口を介して生成した近接場光を記録媒体の記録層に作用させることにより非晶質マークを形成して情報を記録し、開口を介して生成した近接場光を記録媒体の記録層に作用させることにより情報の再生を行う近接場光記録装置であって、
    前記記録媒体に設けられる記録トラックの長手方向にみた前記開口の長さをLy、前記記録媒体と前記開口との相対的な移動速度をV、前記記録トラック上のヘッダ部の再生からデータ部の再生へ移行する時間間隔をtrr、前記ヘッダ部の再生から前記データ部の記録へ移行する時間間隔をtrwとした時に、以下の関係式:
    trr<trw≦Ly/V
    を満足し、
    前記記録媒体に設けられる記録トラックの幅方向にみた前記開口の長さよりも前記記録トラックの長手方向にみた前記開口の長さのほうが長く、
    前記記録層に照射される前記近接場光は直線偏光状態にあり、
    前記近接場光の電界ベクトルの向きは、前記記録トラックの長手方向と略平行であることを特徴とする近接場光記録装置。
  2. 前記記録層と前記開口との間に超解像層が設けられ、
    前記超解像層は、前記記録層に記録された情報の再生のために近接場光を照射した時に前記開口よりも小さい超解像窓を形成することを特徴とする請求項1記載の近接場光記録装置。
  3. 前記開口の周囲は、光反射体により被覆され、
    前記情報の再生のために前記記録層に照射する前記近接場光は直線偏光状態にあり、
    前記近接場光が記録層により反射された反射光を、前記開口を介して検光子を通過させ、光検出器により検出して前記記録層に記録された情報の再生を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の近接場光記録装置。
  4. 前記非晶質マークの形成に際して、前記記録層を非晶質の状態に遷移させることが可能な第1の強度の近接場光を前記記録層に照射し、その照射領域のうちの一部を前記非晶質の状態とし残りを結晶の状態とすることにより、前記照射領域よりも小さい非晶質マークを形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の近接場光記録装置。
  5. 前記非晶質マークの形成に際して、前記記録層を前記非晶質の状態に遷移させることが可能な第1の強度の近接場光を照射して前記非晶質の状態の部分を一旦形成した後、前記記録層を前記非晶質の状態には遷移させず前記結晶の状態に遷移させる第2の強度の近接場光を照射することにより、前記非晶質の状態の部分の一部を前記結晶の状態に遷移させることを特徴とする請求項4記載の近接場光記録装置。
  6. 前記記録トラックの長手方向にみた前記記録マークの最短の長さは、前記記録トラックの長手方向にみた前記開口の長さの0.6倍以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の近接場光記録装置。
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