JP2002275657A - 表面処理鋼板 - Google Patents
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Abstract
理鋼板、特に、塗料密着性及び耐錆性に優れた表面処理
鋼板を提供することにある。 【解決手段】 鋼板表面上に、FeおよびNiのうちから選
んだ1種または2種を含有する錫合金層を有し、その上
層にPとSiを含有する化成皮膜を有し、該化成皮膜中の
PおよびSiの付着量を、それぞれ0.5〜100mg/m2および
0.1〜250mg/m2の範囲とすることを特徴とする表面処
理鋼板。
Description
般缶などに使用される缶用表面処理鋼板に関するもので
あって、特に、塗料密着性および耐錆性に優れた表面処
理鋼板に関するものである。
きと称される錫めっき鋼板が広く用いられており、かか
る錫めっき鋼板は、通常、ぶりき原板に錫めっきを施し
た後に、重クロム酸、クロム酸などの6価のクロム化合
物を使った水溶液中に浸漬もしくはこの溶液中で電解す
ることによって化成処理するのが一般的であり、この化
成処理によって錫めっき層の上層に形成されたクロメー
ト皮膜は、塗料との密着性及び耐錆性を向上させる作用
を有する。
のクロム化合物を使った水溶液で浸漬処理または電解処
理を行う場合、作業環境上の安全性確保及び廃水処理に
多大な費用を要するだけでなく、万が一、事故等でクロ
メート処理液が漏洩した場合には環境に大きな被害を及
ぼす危険性が大きい。昨今の環境問題から、クロムを規
制する動きが各分野で進行しており、缶用表面処理鋼板
においてもクロムを使わずに、塗料密着性及び耐錆性を
向上させる化成処理の必要性が増大している。
る化成処理に関する技術としては、例えば、特公昭55-2
4516号公報に、リン酸系溶液中で錫めっき鋼板を陰極と
して直流電解することにより、錫めっき鋼板上にCrを含
有しない化成皮膜を形成した錫めっき鋼板の表面処理法
が開示されており、また、特公平1-32308号公報には、
化成皮膜中にPもしくはPとAlを含有させて、Crを含有
しない化成皮膜を錫めっき層表面に施したシームレス缶
用電気めっきぶりきが開示されている。
性能を総合的に見た場合、上掲公報に記載された化成皮
膜はいずれも、従来の重クロム酸やクロム酸溶液によっ
て形成したクロメート皮膜に比べると上記性能が十分に
得られているとはいえない。
合金層の上層に形成される化成皮膜中に、その皮膜特性
を向上させる作用を有するものの環境上の問題から望ま
しくないとされるCrを含有させることなく、塗料密着性
および耐錆性に優れた表面処理鋼板を提供することにあ
る。
をさらに詳細に説明する。錫合金層の上層に、上記従来
技術を用いてCrを含有しない化成皮膜を形成した場合に
は、塗料密着性および耐錆性の双方を満足させることは
困難であった。
ける上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、錫合
金層の上層にPとSiを含有する化成皮膜を形成させた場
合には、塗料密着性および耐錆性の双方を満足させるこ
とができることを見出した。
しくはPとシランカップリング剤を含有する化成処理液
により、適正量のPとSiを含有する化成皮膜を形成する
ことによって、このシランカップリング剤に存在する反
応基が配向して塗料との密着性に大きく寄与することが
わかった。すなわち、上記化成皮膜は、塗料との相溶性
及び反応性を向上させ、この相乗効果により優れた塗料
密着性を示す。加えて、化成皮膜のバリヤ効果により、
耐錆性が向上することも見出した。
FeおよびNiのうちから選んだ1種または2種を含有する
錫合金層を有し、その上層に、好ましくはPとシランカ
ップリング剤を含有する化成処理液により形成した、P
とSiを含有する化成皮膜を有し、該化成皮膜中のPおよ
びSiの付着量を、それぞれ0.5〜100mg/m2および0.1〜25
0mg/m2の範囲とするものである。尚、化成皮膜中のSi
/P比(質量比)を0.05〜100の範囲にすることが好ま
しい。
中のSnの付着量が0.1〜3.0g/m2であることが好まし
い。さらに、前記シランカップリング剤は、エポキシ基
を有することがより好適である。
明する。この発明の表面処理鋼板は、通常のぶりき原板
に錫合金層を形成したものであり、本発明における錫合
金層とは、FeおよびNiのうちから選んだ1種または2種
を含有する錫合金層である。
た後、そのままか、あるいはSnを加熱溶融するための一
般的な加熱処理(リフロー処理)を施すが(この場合、ぶ
りき原板とSnめっき層との間にFe-Sn合金層が形成され
ることになる。)、表面の大部分は金属Snであるため、
使用されるまでの保管期間が長いと、金属Snの表面でSn
酸化物が成長する。このSn酸化物は脆いため、塗装後に
このSn酸化物を起点として塗膜剥離が生じやすく塗料密
着性を著しく悪化させる。
ト処理を施すこと対処していたが、クロメート処理を施
したとしても、金属Snの表面で生じがちなSn酸化物の成
長を完全には抑制することはできない。
錫合金層の上層に化成皮膜を形成することとし、これに
よって、優れた塗料密着性を得ることができる。
き後の加熱処理でSnを地鉄と完全に合金化させてFe-Sn
合金層とすることが良く用いられる。またこの場合地鉄
表面にNi系の前処理を施して置けばより緻密なFe-Sn-Ni
合金層が得られる。
処理や、Niめっき後に熱処理するNi拡散処理がよく用い
られている。Niフラッシュめっき処理では、その上層に
施したSnめっきと常温でも合金化が進み、NiとSnの比が
1:3のときに合金化するので、Ni量とSn量の比を1:
3にしておけば、熱処理なしでNi−Sn合金層が得られ
る。また、Ni拡散処理では、錫合金層の下層にNi拡散層
であるFe−Ni合金層が存在する。
めっき後の拡散合金化反応によらず、Feイオンおよび/
またはNiイオンを含有させたSnめっき液を用いてSn合金
めっきを施すことによって錫合金層を形成してもよい。
だ1種または2種を含有する錫合金層を有する表面処理
鋼板であるが、これは上述したように、優れた塗料密着
性を具備する合金系として実績があるからである。
量が0.1〜3.0g/m2の範囲であることが好ましい。錫
合金層中のSn付着量が0.1g/m2未満だと十分な耐錆性が
得られなくなるおそれがあるからであり、また、3.0g/
m2超えだと、性能は十分であるがコスト高になるので好
ましくないからである。特に熱処理による合金化の場合
には、合金化を高温かつ長時間で行う必要があり、生産
性の点からも好ましくない。尚、Sn付着量は、電量法又
は蛍光X線による表面分析により測定できる。
びNiのうちから選んだ1種または2種を含有する錫合金
層であればよく、特に限定はしないが、Sn-Fe合金層の
場合には、FeSn2合金層またはFeSn合金層であることが
好ましく、Sn-Ni合金層の場合には、Sn3Ni合金層または
SnNi合金層であることが好ましく、Sn-Fe-Ni合金層の場
合には、(Fe・Ni)Sn2合金層または(Fe・Ni)Sn合金層
であることが好ましい。
該錫合金層の上層にPとSiを含有する化成皮膜を有し、
該化成皮膜中のPおよびSiの付着量を、それぞれ0.5〜1
00mg/m2および0.1〜250mg/m2の範囲とすることにあ
る。
して0.5〜100mg/m2の範囲とすること 化成皮膜中のP含有量は、その付着量にして0.5〜100mg
/m2の範囲とすることが必要である。 0.5mg/m2未満で
は、塗料密着性が十分に得られず、また、100mg/m2超え
では化成皮膜に欠陥が生じやすくなり、塗料密着性が劣
化するからである。尚、P付着量の測定は、蛍光X線に
よる表面分析により行った。
としては、例えば、リン酸系化成処理によって行なうこ
とが好ましく、この場合、化成処理液中のPの供給源と
してはリン酸イオン換算で1〜80g/lのリン酸、リン酸
ナトリウム、リン酸アルミニウム、リン酸カリウム等の
金属塩、及び/又は、1水素リン酸塩など使用すること
がより好適である。
塩、例えば、SnCl2、FeCl2、NiCl2、SnSO4、FeSO4、NiS
O4などの金属塩を適宜添加することができる。この場合
には、促進剤として塩素酸ナトリウム、亜硝酸塩などの
酸化剤、フッ素イオンなどのエッチング剤を適宜添加し
てもよい。
系化成処理液に浸漬または電解処理することによりPを
含有させた化成皮膜を形成することができる。
して0.1〜250mg/m2の範囲とすること 化成皮膜中に含有するSiは、好ましくは処理液中に含有
させたシランカップリング剤によって含有させたもので
ある。シランカップリング剤の一般化学式は、X-Si-O
R2or3(OR:アルコキシ基)である。
ル基(Si-OR)が水により加水分解されてシラノール
基を生成し、金属表面のOH基との脱水縮合反応により
密着する。また、鋼板の上層には、一般化学式のXにあ
たる反応基が配向し塗料などの樹脂と相溶もしくは結合
する。
メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2-
(3,4-エポキシシクロヒキシル)エチルトリメトキ
シシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラ
ン、N-2-(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメ
トキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピ
ルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエ
トキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメ
トキシシラン、3‐メルカプトプロピルメトキシシラ
ン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルト
リエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキ
シ)シラン、アミノ基の存在する、N-2(アミノエチ
ル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-
(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシ
シラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシランなどが
使用できるが、特にシランカップリング剤の一般化学式
におけるX-Si-OR2o r3のXにエポキシ基が存在する2
-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキ
シシランや3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラ
ンが好適である。これは、缶の内面に使用されるエポキ
シ系塗料との相溶性と反応性に優れるためである。
付着量は、密着性向上効果が顕著に現われる0.1〜250mg
/m2の範囲とする。0.1mg/m2未満だと、密着性向上
効果が十分に得られないからであり、また、250mg/m2
超えでは、未反応のシランカップリング剤が自己縮合す
るため、密着性向上効果が低減するからである。尚、Si
付着量の測定は蛍光X線による表面分析により行った。
ては、前述のリン酸系化成処理液を用いてPを含有させ
た化成皮膜を形成させ、さらにシランカップリング剤を
水に希釈した溶液で処理することによって行うことがで
きる。尚、シランカップリング剤を水に希釈した溶液で
処理した場合に、表面の濡れ性が悪いためはじきが発生
するときは、アルコールで希釈した溶液を使用すること
ができる。例えば、エタノールを50mass%以上、シラン
カップリング剤を0.5〜20mass%、残りを水とした溶液
にて均一に処理することができる。シランカップリング
剤を含有する溶液を用いた処理は、溶液の塗布、乾燥あ
るいは浸漬処理によって行えば良い。
あるリン酸系化成処理溶液にシランカップリング剤を含
有させることで、1液でPとSiを含有する化成皮膜を形
成することもできる。この場合、pHを1.5〜5.5の範囲
にすることが好ましい、即ち、化成処理液のpHを1.5
〜5.5の範囲に調整すれば、シランカップリング剤を化
成処理液中に均一に溶解することができ、優れた塗料密
着性が得られる。pHが上記範囲外であるとシランカッ
プリング剤を化成処理液に均一に溶解させることが難し
くなり、塗料密着性向上効果が十分に得られなくなる傾
向があるからである。
に形成した錫合金層の上層に、P及びSiを上記適正範囲
で含有する化成皮膜を形成することによって、塗料密着
性及び耐錆性の双方を満足させることに成功したのであ
る。
例を説明する。通常のぶりき原板あるいはNiフラッシュ
めっき処理を施した原板若しくはNi拡散処理を施した原
板にSnめっきを施した後、錫の融点(231.9℃)以上の
温度で加熱溶融(リフロー)処理を行ってSnを地鉄と合金
化し、引き続き、浸漬処理によって化成処理を行う。
尚、リフロー処理後に、化成処理の反応性を向上させる
ため、15g/lの炭酸ナトリウム水溶液中で1C/dm2の陰極
処理を行ってもよい。
1〜80g/lのリン酸、錫イオン換算で0.001〜10g/lの塩
化第一錫、0.1〜1.0 g/lの塩素酸ナトリウムを含有し、
さらにシランカップリング剤を0.5〜20.0mass%添加し
た水溶液を用いる。
(浸漬)時間を1〜5秒とすることが好ましい。化成処理
後の表面処理鋼板は、35〜150℃の温風で乾燥する。
しては、シランカップリング剤を含まない上記化成処理
液で処理した後、シランカップリング層を形成するため
のシランカップリング処理液、例えば、エタノールを50
mass%以上、シランカップリング剤を0.5〜20mass%、
残りを水とした溶液を均一に塗布し、鋼板表面温度が50
〜150℃に到達するよう乾燥する方法がある。
態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の
変更を加えることができる。
に説明する。 ・実施例1〜9 板厚0.1〜1.0mmの低炭素鋼または極低炭素鋼からなるぶ
りき原板に、片面当り0.1〜3.0g/m2の付着量の錫合金層
を形成させた表1に示す表面処理鋼板に、4種類の化成
処理条件(A〜D)で化成皮膜を形成させた。このとき
形成した化成皮膜の組成については表1に示し、また、
4種類の化成処理条件(A〜D)については表2に示
す。
くとも一方がこの発明の適正範囲外である表面処理鋼板
についても製造した。
理鋼板について、塗料密着性及び耐錆性の性能評価を行
った。
表面処理鋼板を50℃の恒温室に3ヶ月間保管し、その
後、各表面処理鋼板の表面に、付着量50mg/dm2のエポキ
シフェノール系塗料を塗布した後、210℃で10分間の焼
付を行った。次いで、上記塗布・焼付を行った2枚の表
面処理鋼板を、塗装面がナイロン接着フィルムを挟んで
向かい合わせになるように積層した後、圧力2.94×105P
a,温度190℃,圧着時間30秒の圧着条件下で貼り合わ
せ、その後、これを5mm幅の試験片に分割し、この試験
片を引張試験機を用いて強度測定を行い、この測定結果
から1次塗料密着性を評価した。また、別の試験片は、
55℃の1.5質量%NaCl+1.5質量%クエン酸溶液に7日間
浸漬し、その後、同様に引張試験機を用いて行った強度
測定結果から、2次塗料密着性を評価した。その評価結
果を表1に示す。尚、表1では、試験片幅5mmあたりの
測定強度が、68.6〔N〕以上の場合を「◎」、49.0
〔N〕以上68.6〔N〕未満の場合を「○」、29.4〔N〕
以上49.0〔N〕未満の場合を「△」及び29.4〔N〕未満
の場合を「×」として示してある。
高湿状態と、温度25℃、相対湿度60%の乾燥状態とを30
分ごとに交互に繰り返す環境下に曝し、表面に錆が発生
するまでの日数を調べ、これによって耐錆性を評価し
た。その評価結果を表1に示す。尚、表1では、錆の発
生が30日間以上認められない場合を「○」、錆の発生が
15日間以上30日間未満の間で認められた場合を「△」、
錆の発生が15日間未満で認められた場合を「×」として
示してある。
〜10はいずれも、塗料密着性及び耐錆性の双方とも優れ
ていた。一方、比較例1〜5は、塗料密着性及耐錆性の
いずれかの性能が悪く、実用レベルにないことがわか
る。
る化成皮膜層中に、その皮膜特性を向上させる作用を有
するものの環境上の問題から望ましくないとされるCrを
含有させることなく、特に、塗料密着性及び耐錆性に優
れた表面処理鋼板を提供することができるという顕著な
効果を奏する。
Claims (4)
- 【請求項1】 鋼板表面上に、FeおよびNiのうちから選
んだ1種または2種を含有する錫合金層を有し、その上
層にPとSiを含有する化成皮膜を有し、該化成皮膜中の
PおよびSiの付着量を、それぞれ0.5〜100mg/m2および
0.1〜250mg/m2の範囲とすることを特徴とする表面処
理鋼板。 - 【請求項2】 前記化成皮膜は、Pとシランカップリン
グ剤を含有する化成処理液により形成することを特徴と
する請求項1に記載の表面処理鋼板。 - 【請求項3】前記錫合金層中のSnの付着量が0.1〜3.0g
/m2であることを特徴とする請求項1又は2に記載の
表面処理鋼板。 - 【請求項4】 前記シランカップリング剤がエポキシ基
を有することを特徴とする請求項2または3に記載の表
面処理鋼板。
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