JP2004060053A - 半田付け性に優れる錫めっき鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋼板表面上に、溶錫処理によって形成されたFe−Sn合金層を介して被覆率が99%超えとなる付着量5.0〜20.0g/m2の錫めっき層を有し、該錫めっき層の上層にPとSiを含有する化成皮膜を有し、該化成皮膜中のPおよびSiの付着量をそれぞれ0.5〜10mg/m2および30〜150mg/m2の範囲とすることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、家電製品のシャーシーや部品ケース等に用いられる半田付け性を要求される鋼板に関するものであって、特に、Pbを全く含まないPbフリー半田に対する濡れ性に優れた錫めっき鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、オーディオ製品やパソコン等の家電製品においては、Pb−Sn合金半田を用いた接合が行われてきたが、この半田中のPbが人体に有害であることからPbの使用が規制され、Pbを使わないPbフリー半田に切り替えられてきている。家電製品のシャーシーや部品ケースには、従来のPb−Sn半田付け性に適したPb−Sn合金めっき鋼板が使われていたが、Pb使用規制に対応するためPbを使用せずにPbフリー半田付け性に優れる新たな鋼板が求められている。
【0003】
さらに、従来のPb−Sn合金めっき鋼板では、表面にクロメート処理がなされているが、家電業界では有害な6価Crを使用しない方向にあるため、新たな半田付け用の鋼板にはクロメート処理以外の化成処理を使用することが望まれている。
【0004】
Pbを使わない半田付け用の鋼板としては、例えば、特許文献1および2に記載されているように、鋼板上に形成したSn−Zn、Zn−Ni、Sn−Ni、Fe−Niを主体とする皮膜上にクロメート皮膜を形成した鋼板がある。
【0005】
【特許文献1】
特公平6−99837号公報
【特許文献2】
特公平6−33466号公報
【0006】
しかしながら、上掲特許文献1および2に記載された鋼板はいずれも、Znを使用しているためにPbフリー半田付け性に劣り、またクロメート皮膜を有するために家電業界には受け入れられないものである。
【0007】
また、特許文献3には、SnめっきまたはSn合金めっきの表面にCrを含有させず、Siを含有する後処理皮膜を有する表面処理鋼板が開示されているが、鋼板とSnめっき層との間にFe−Sn合金層を有するものではないため、鋼板とSnめっき層との密着性が悪く、またPbフリー半田付け性にも問題があった。
【0008】
【特許文献3】
特開2001−32085号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の目的は、環境上の問題から望ましくないとされるPbおよびCrを使用することなく、Pbフリー半田付けにおける濡れ性に優れ、また耐食性およびホイスカー性にも優れた錫めっき鋼板を提供することにある。
【0010】
【課題を解決しようとするための手段】
以下にこの発明をさらに詳細に説明する。
Pb−Sn合金半田は、37%Pbを含有するもので融点が184℃と低いが、Pbフリー半田は、主流となりつつあるSn−3.5%Ag−0.75%Cu合金半田は融点が219℃と高いため、Pb−Sn合金半田に比べて半田付け作業性が悪くなっている。このため、半田付け用の鋼板には従来以上の半田付け性が要求されている。
また、半田付け用鋼板には耐食性および耐ホイスカー性が要求される。
【0011】
このため、発明者らは、Pbフリー半田の主成分であるSnを主体とする錫めっきを元に、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、溶錫処理によって形成されたFe−Sn合金層を介して所定量の錫めっき層を有し、その上層に、PとSiを含有した化成皮膜を形成した場合には、上記性能の全てを満足させることができることを見出した。
【0012】
より具体的には、錫めっき層の上層に、好ましくはPとシランカップリング剤を含有する化成処理液により、適正量のPとSiを含有する化成皮膜を形成することによって、優れたPbフリー半田との濡れ性が得られ、特にこの化成皮膜が有効な保護皮膜として経時劣化を抑制するので加速劣化試験後においても優れたPbフリー半田との濡れ性が確保される。加えて、この化成皮膜によって優れた耐食性および耐ホイスカー性が得られることも見出した。
【0013】
本発明の錫めっき鋼板は、鋼板表面上に、溶錫処理によって形成されたFe−Sn合金層を介して被覆率が99%超えとなる付着量5.0〜20.0 g/m2の錫めっき層を有し、該錫めっき層の上層に、好適にはPとシランカップリング剤を含有する化成処理液を用いて、PとSiを含有する化成皮膜を有し、該化成皮膜中のPおよびSiの付着量をそれぞれ0.5〜10mg/m2および30〜150 mg/m2の範囲とするものである。なお、化成皮膜中のSi/Pの比(質量比)は5〜30の範囲にすることが好ましい。
【0014】
また、前記錫めっき鋼板は、鋼板上に公知の電気錫めっき法でSnめっきを施した後、溶錫処理(リフロー処理)によって、一旦溶融させて鋼板との界面にFe−Sn合金層を中間層として形成させるが、Fe−Sn合金層形成後の金属Sn層の付着量は5.0〜20.0g/m2であることが好適である。
さらに、前記シランカップリング剤は、エポキシ基を有することがより好適である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明の構成を詳細に説明する。
この発明の錫めっき鋼板は、鋼板表面上に、溶錫処理によって形成されたFe−Sn合金層を介して錫めっき層を形成したものであり、この錫めっき層は、下地表面のほぼ全面を覆うように、具体的には被覆率が99%超えとなるように形成されたものである。錫めっき層がFe−Sn合金層を被覆する割合、すなわち表面積での被覆率が99%以下であると十分な半田付け性が得られないばかりでなく、耐食性も不十分となるからである。
なお、被覆率99%超えとするには、溶錫処理時に溶融したSnが十分塗れ広がることができるようにフラックスなどの溶錫処理条件を適宜調整すればよい。
【0016】
本発明においては、鋼板上に公知の電気錫めっき法でSnめっきを行った後、鋼板をSnの融点以上に加熱し、一旦Snめっきを溶融させる溶錫処理(リフロー処理ともいう)を行う。電気めっきされたままのSn層には電着応力が存在し、この電着応力を開放しようとするエネルギーによってSn表面からホイスカーと称される針状結晶が成長する。ホイスカーが成長すると電気回路での短絡事故を引き起こしかねないため、ホイスカーの成長が無いことが要求される。電気めっきされたSn層を一旦溶融すると、電着応力が開放されてホイスカーの発生がほとんど無くなるため、本発明では溶錫処理が必須である。
【0017】
溶錫処理によって鋼板とSn層との界面にFe−Sn合金層が形成される。この合金層は鋼板と錫めっき層の密着性を向上させて、加工時の錫めっき層の剥離を防止するとともに、Pbフリー半田付け時に錫めっき層が半田浴に溶解した際の鋼板と半田との濡れ性を確保するため、極めて重要である。したがって、本発明では、鋼板と錫めっき層との間にFe−Sn合金層が存在すること、すなわち鋼板表面上に溶錫処理によって形成されたFe−Sn合金層を介して錫めっき層を有することが必要である。上記効果を発揮するためには、Fe−Sn層の生成量は、付着量にして0.05g/m2以上とすることが好ましい。一方、この合金層は錫めっき層に比べて硬い合金層であるため、生成量が多くなると加工性を低下させるので、この観点からは合金生成量を少なく抑える事が好ましく、Fe−Sn合金層の生成量は、付着量にして1g/m2以下とすることが好ましく、0.7g/m2以下とすることがより好ましい。
【0018】
Niフラッシュめっき処理やNi拡散処理などNi系の前処理を行った鋼板を用いると、溶錫処理時に形成される合金層の生成量が抑制されるので、これらNi前処理は適宜用いることができる。
【0019】
溶錫処理後の合金化していない錫めっき層の付着量は、5.0〜20.0g/m2であることが好ましい。前記錫めっき層の付着量が5.0g/m2未満だと、十分なPbフリー半田との濡れ性が得られないばかりでなく、耐食性も不十分である。また、前記錫めっき層の付着量を20.0g/m2超えにしても、性能の向上効果が期待できず、厚めっきとするのに長時間を要するとともに、コスト高になるため、錫めっき層の付着量は20.0g/m2以下とすることが好ましい。なお、錫めっき層の付着量は、電量法または蛍光X線による表面分析により測定できる。ここで、蛍光X線分析にて錫めっき層の付着量を測定する場合は、まず、錫めっき鋼板について蛍光X線分析により錫めっき層中およびFe−Sn合金層中の錫付着量の合計となる錫付着量を測定した後、錫めっき層を5%NaOH(1%KIO3含有)溶液などにより溶解し、鋼板上にFe−Sn合金層のみが残った状態としてから蛍光X線分析によりFe−Sn合金層中の錫付着量を測定し、先に求めた合計の錫付着量からFe−Sn合金層中の錫付着量を差し引くことにより錫めっき層の付着量を求めることができる。
【0020】
そして、この発明の構成上の主な特徴は、該錫めっき層の上層に、好ましくはPとシランカップリング剤を含有する化成処理液を用いて、PとSiを含有する化成皮膜を有し、該化成皮膜中のPおよびSiの付着量を、それぞれ0.5〜10mg/m2および30〜150 mg/m2の範囲とすることにある。
【0021】
(1)化成皮膜中のPの付着量を0.5〜10mg/m2の範囲とすること
化成皮膜中のPは、りん酸塩としてSn表面を覆い、SnとSi化合物間のバインダーとして働き化成皮膜を形成する。このバインダー効果は表面粗さなどの鋼板表面の構造による影響を受けにくく、表面粗さなどの鋼板表面の構造に依らず化成皮膜中のPの付着量、すなわち、化成皮膜中のPの含有量をその付着量にして0.5〜10mg/m2の範囲とすることが必要である。P付着量が0.5mg/m2未満では、化成皮膜の被覆が不十分であり時間の経過とともにSn表面で酸化Snが成長して半田濡れ性が劣るようになるからである。また、P付着量が10mg/m2を超えると、半田とSn層の接触が阻害されて半田濡れ性が劣るからである。なお、P付着量の測定は、蛍光X線による表面分析により行った。
【0022】
(2)化成皮膜中のSiの付着量を30〜150mg/m2の範囲とすること
本発明では前述のように溶錫処理することを必須としている。溶錫処理時には、電気めっきされたSnが溶融状態となって流動性を有するようになり、めっき母板である鋼板の表面粗さの凹部に流れ込み、凹部でSn量が多くなるとともに凸部でSn量が少なくなる。このため、十分な半田濡れ性、耐食性を得るにはSn量が少ない凸部を十分被覆するだけの化成皮膜中のSi量が必要となるが、工業的に生産される鋼板(めっき母板)の表面粗さ範囲(中心線平均粗さRaで概ね0.1〜5.0μm程度)では、化成皮膜中のSiの付着量は本発明のように30mg/m2以上であれば、溶錫処理を行なう場合でも、めっき母板に依らず十分な半田濡れ性および耐食性を得ることができる。
【0023】
化成皮膜中に含有するSiの付着量が30mg/m2未満だと、化成皮膜の被覆が不十分となる場合があり、時間の経過とともにSn表面で酸化錫が成長して半田濡れ性が劣るようになり、また耐食性が問題となる場合もある。一方、Siの付着量が150mg/m2を超えると、半田とSn層の接触が阻害されて半田濡れ性が劣る。このため、化成皮膜中のSiの付着量、すなわち化成皮膜中のSiの含有量をその付着量にして30〜150mg/m2の範囲とする。
なお、Si付着量の測定は、蛍光X線による表面分析により行なった。
【0024】
本発明において、化成皮膜中に含有するSiは、好ましくは、化成処理液中に含有させたシランカップリング剤によって含有させたものである。シランカップリング剤の一般化学式は、X−Si−OR2or3(OR:アルコキシ基)である。
【0025】
シランカップリング剤は、アルコキシシリル基(Si−OR)が水により加水分解されてシラノール基を生成し、金属表面のOH基との脱水縮合反応により密着し強固な皮膜を形成する。
【0026】
尚、シランカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アミノ基の存在する、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシランなどが使用できるが、特にシランカップリング剤の一般化学式におけるX−Si−OR2or3のXにエポキシ基が存在する2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランや3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好適である。
【0027】
また、PとSiを含有する化成皮膜の形成方法としては、例えば、リン酸系化成処理によって行なうことが好ましく、この場合、化成処理液中のPの供給源としてはリン酸イオン換算で1〜80g/lのリン酸、リン酸ナトリウム、リン酸アルミニウム、リン酸カリウム等の金属塩、および/または、1水素リン酸塩など使用することがより好適である。Siの供給源としては、前述したシランカップリング剤を含有する化成処理液を用いることが好ましいが、かかる場合、化成処理液中のpHを1.5〜5.5の範囲に調整すれば、シランカップリング剤を化成処理液中に均一に溶解することができる。
【0028】
尚、化成処理液には、Sn、Fe、Niの金属塩、例えば、SnCl2、FeCl2、NiCl2、SnSO4、FeSO4、NiSO4などの金属塩を適宜添加することができる。この場合には、促進剤として塩素酸ナトリウム、亜硝酸塩などの酸化剤、フッ素イオンなどのエッチング剤を適宜添加してもよい。また、化成処理液の均一処理性を向上させる目的でラウリル硫酸ナトリウム、アセチレングリコールなどの界面活性剤を適宜添加しても良い。
【0029】
りん酸系化成処理を用いた化成皮膜の形成は、上記化成処理液の鋼板への塗布または浸漬処理を行った後、乾燥させることによって行えば良い。
【0030】
以上のことから、この発明では、鋼板表面に形成した錫めっき層の上層に、P及びSiを上記適正範囲で含有する化成皮膜を形成することによって、Pbフリー半田との濡れ性、耐食性および耐ホイスカー性の全ての性能を満足させることに成功したのである。
【0031】
次にこの発明に従う具体的な製造方法の一例を説明する。
冷延鋼板にSnめっきを施した後、錫の融点(231.9℃)以上の温度で加熱溶融(リフロー)処理を行い、Fe−Sn合金からなる中間層と上層の金属Sn層を形成させ、引き続き、浸漬処理によって化成処理を行う。尚、リフロー処理後に表面に生成した錫酸化物を除去するため、15g/lの炭酸ナトリウム水溶液中で1C/dm2の陰極処理を行ってもよい。
【0032】
化成処理液としては、リン酸イオン換算で1〜80g/lのリン酸、錫イオン換算で0.001〜10g/lの塩化第一錫、0.1〜1.0 g/lの塩素酸ナトリウムを含有し、さらにシランカップリング剤を0.5〜20.0 mass%添加した水溶液を用いる。
【0033】
化成処理の条件は、温度を40〜80℃、処理(浸漬)時間を1〜5秒間とすることが好ましい。化成処理液中に浸漬した後の錫めっき鋼板は、80〜150℃で乾燥させ、その後、水洗し、温風で乾燥する。
【0034】
尚、上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【0035】
【実施例】
次に、この発明の実施例について以下で詳細に説明する。
実施例1〜6
板厚0.4〜1.8 mmの低炭素鋼または極低炭素鋼からなる冷延鋼板(表面粗さ:Ra=0.4〜2.5μm)の両面に、溶錫処理を施すことによって形成したFe−Sn合金層を介して、表1に示す片面当たりのSn付着量およびSn被覆率の錫めっき層を形成した後、表2に示す3種類の化成処理液A〜Cから選んだ表1に示す化成処理液を用いて種々のPおよびSi付着量の化成皮膜を形成した。
【0036】
比較例1〜5
比較のため、この発明の適正範囲外である錫めっき鋼板についても製造した。
【0037】
なお、上記実施例および比較例に用いためっき母板である冷延鋼板の表面粗さRaは、東京精密社製の「サーフコム500A」にてカットオフ=0.8mmで測定した中心線平均粗さである。
化成皮膜に含有されるP、Siの付着量は蛍光X線により測定した。
錫めっき付着量は、錫めっき鋼板について蛍光X線分析により錫めっき層中およびFe−Sn合金層中の錫付着量の合計となる錫付着量を測定した後、錫めっき層を5%NaOH(1%KIO3含有)溶液により溶解し、鋼板上にFe−Sn合金層のみが残った状態としてから蛍光X線分析によりFe−Sn合金層中の錫付着量を測定し、先に求めた合計の錫付着量からFe−Sn合金層中の錫付着量を差し引くことにより求めた。
また、Fe−Sn合金層の付着量は、蛍光X線分析により求めたFe−Sn合金層中の錫付着量からFe−Sn合金層(FeSn2)の付着量に換算して求めた。
さらに、Sn被覆率(面積率)は走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、倍率5000倍に拡大した表面を観察(10視野)し、各視野にてSnが被覆している面積率を求め、これら測定した面積率の平均値をSn被覆率として表1に示した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
(性能評価)
実施例および比較例の各錫めっき鋼板について、Pbフリー半田濡れ性、耐食性および耐ホイスカー性の性能評価を行った。
【0041】
(1)半田濡れ性の評価
Pbフリー半田として、千住金属製のSn−3.5%Ag−0.75%Cu半田を用いた。半田温度を245℃とし、レスカ製「SAT−5100」装置を用いて平衡法にて、半田が濡れるまでのゼロクロスタイムを測定し、半田濡れ性の評価とした。なお、サンプルは板厚0.6mmのものを用い、温度105℃−湿度100%RHで圧力1.22×105Paの試験槽に8時間曝して加速劣化させた後評価した。サンプルの半田槽への浸漬は浸漬速度3mm/sec、浸漬深さ3mmとした。ゼロクロスタイムは3秒以下を合格レベルとした。表1にその評価結果を示す。
【0042】
(2)耐食性の評価
塩水噴霧(JIS Z 2371準拠)8時間と噴霧休止16時間とを1サイクルとするサイクル腐食試験を3サイクル行い、赤錆びの発生面積率(%)で耐食性を評価した。表1にその評価結果を示す。
【0043】
(3)ホイスカー試験
サンプルを曲げ半径5mmで曲げ、−25℃と120℃の繰返し熱サイクルを500回行ったのち、曲げ部表面を走査型電子顕微鏡で観察し、ホイスカーの発生状況を観察した。ホイスカーの発生および長さで耐ホイスカー性を評価した。表1にその評価結果を示す。
【0044】
表1の評価結果から明らかなように、実施例1〜6はいずれも、半田濡れ性、耐食性および耐ホイスカー性の全性能について優れていた。一方、比較例1〜5はいずれも、半田濡れ性、耐食性および耐ホイスカー性のいずれかの性能が悪く、実用レベルにないことがわかる。
【0045】
【発明の効果】
この発明は、鋼板表面上に溶錫処理によって形成されたFe−Sn合金層を介して錫めっき層を有し、該錫めっき層の上層にPとSiを含有する化成皮膜を有することにより、特に半田濡れ性、耐食性および耐ホイスカー性に優れた錫めっき鋼板を提供することができるという顕著な効果を奏する。
Claims (3)
- 鋼板表面上に、溶錫処理によって形成されたFe−Sn合金層を介して被覆率が99%超えとなる付着量5.0〜20.0 g/m2の錫めっき層を有し、該錫めっき層の上層にPとSiを含有する化成皮膜を有し、該化成皮膜中のPおよびSiの付着量をそれぞれ0.5〜10mg/m2および30〜150mg/m2の範囲とすることを特徴とする半田付け性に優れる錫めっき鋼板。
- 前記化成皮膜は、Pとシランカップリング剤を含有する化成処理液を用いて形成することを特徴とする請求項1に記載の錫めっき鋼板。
- 前記シランカップリング剤がエポキシ基を有することを特徴とする請求項1または2に記載の錫めっき鋼板。
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