JP2002267926A - 光学系の設計手法 - Google Patents

光学系の設計手法

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JP2002267926A
JP2002267926A JP2001064836A JP2001064836A JP2002267926A JP 2002267926 A JP2002267926 A JP 2002267926A JP 2001064836 A JP2001064836 A JP 2001064836A JP 2001064836 A JP2001064836 A JP 2001064836A JP 2002267926 A JP2002267926 A JP 2002267926A
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optical system
optical
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evaluation function
eccentric
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JP2001064836A
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English (en)
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Kazuhito Hayakawa
和仁 早川
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Olympus Corp
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Olympus Optical Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 コンピュータで実行するのに適し、諸収差等
の光学設計に加えて、製造誤差による光学系の性能変化
を抑制した光学系の設計を効率良く行うための光学系の
設計手法。 【解決手段】 複数の構成要素で表現される光学系が所
望の特性となるように、その複数の構成要素の値を変更
し、各構成要素の値が光学系全体として最適な構成要素
の値へと近づいていることを評価する評価関数を所望の
値へと近づけることで、最適な構成要素の値を得る光学
系の設計手法において、光学系の光学作用面の少なくと
も1面からなる光学群の偏心収差係数を計算する手段
と、少なくとも1つの偏心収差係数からなる評価関数の
項を少なくとも1つ含む評価関数とを有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学系の設計手法
に関し、特に、コンピュータ等の計算処理装置での実行
に適した光学系の設計手法、及び、光学系の設計プログ
ラムを記録した記録媒体、及び、本光学系の設計手法乃
至光学系の設計プログラムを用いて設計した光学系及び
光学装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】光学系の設計手法では、最急降下法、共
役勾配法、最小二乗法等が利用されている。何れの方法
も、最適化手法と呼ばれるもので、複数の変数を有する
評価関数が用いられる。これらの最適化手法を光学系の
設計に用いた場合、評価関数の変数に相当するのが評価
項目(例えば、収差係数)である。この評価項目は、光
学作用面の曲率半径、面間隔、及び、屈折率等といった
光学系の構成要素の値に基づいて算出される。よって、
構成要素の値を変化させると評価項目の値が変化し、評
価項目の値が変化すると評価関数の値が変化する。そこ
で、構成要素の値を様々に変化させ、評価関数の最適値
(例えば、最小値や極小値)を求める処理を行う。この
ようにして評価関数の最適値が得られると、そのときに
おける各構成要素の値の組み合わせが最適な光学系を表
すことになる。この結果、理想状態に近い光学系の構成
要素の値が得られる。なお、評価関数の最適値を求める
際には、同時に評価項目も所望の目標値へと近づけるこ
とを行う。このように、光学系の設計は、評価関数が最
適値となり、かつ、評価項目が目標値の範囲内に到達す
るような、光学系の構成要素の値の組み合わせを求める
ものである。
【0003】上述のように、光学系の設計に際しては、
基本的な変数として、光学作用面の曲率半径、面間隔、
及び、屈折率を用いるのが一般的である。また、評価関
数は、光線収差や光学系の仕様で決まる制限条件等を評
価項目として用いるのが一般的である。
【0004】しかしながら、従来の光学系の設計では、
理想的な状態で光学系を設計しているため、光学系の製
造誤差の影響を無視した設計となる傾向がある。そのた
め、製造誤差による光学系の性能の変化を考慮に入れ
た、最適な光学系の構成要素の値の組み合わせ(設計
値)を得ることが困難であった。
【0005】従来の技術においては、設計者の経験や知
識といったノウハウ等に基づいて、製造誤差による光学
系の性能の変化が少なくなるように、コンピュータで得
た設計値から設計者自身の手作業によって設計値に若干
の修正を加えたり、光学系の変数の一部を固定値とし、
変数の数に制限をかける等をして、最適な光学系の設計
値を得るといった作業を行う必要があった。
【0006】このため、コンピュータの計算速度の向上
にもかかわらず、従来の光学系の設計では人手と時間が
必要で、効率的な光学系の設計が行えなかった。また、
製造誤差による性能の変化を小さく抑え、かつ、設計性
能が所望の値となる最適な光学系の設計値を得るのが難
しい。
【0007】近年、上記の問題点を鑑み、特開平11−
30746号公報、特開平11−223764号公報、
特開平11−223769号公報、特許第300661
1号公報等で新たな設計法が提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】特開平11−3074
6号で開示されている方法においては、注目している光
学群以外の偏心収差係数の絶対値が急激に悪化して、結
果的に製造誤差の影響を受ける設計値が得られてしま
う。これを回避するため、その都度注目する光学群の偏
心収差係数を増やしていくことは、結果的に人手や時間
が必要となり、効率的な設計という観点で問題がある。
【0009】特開平11−223764号、特開平11
−223769号で開示されている方法においては、球
面収差係数とコマ収差係数のみに注目しているため、光
学系の偏心による非点収差や像面の傾きによる性能変化
の顕著な光学系においては、製造誤差の影響を受け難い
設計解が得られなくなり、問題がある。
【0010】特許第3006611号で開示されている
方法においては、複数の光学部材で構成される光学系に
対して、全ての製造誤差を考慮した設計状態を実現する
こと、全ての状態での評価関数を定義することが必要で
あったり、評価関数が複雑となるために評価関数の計算
量が莫大となってしまい、コンピュータの計算速度の向
上にもかかわらず、結果的に人手や時間が必要となり、
効率的な設計という観点で問題がある。
【0011】本発明は従来技術の上記問題に鑑みてなさ
れたものであり、その目的は、コンピュータで実行する
のに適し、諸収差等の光学設計に加えて、製造誤差によ
る光学系の性能変化を抑制した光学系の設計を効率良く
行うための光学系の設計手法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明は、評価関数を用いて設計を行う光学系の設計手法に
おいて、前記評価関数は少なくとも1つの評価項目を変
数として有し、前記評価項目は、前記光学系の光学作用
面の少なくとも1面の偏心収差係数を含むことを特徴と
する手法である。
【0013】この場合、前記光学系の全ての光学作用面
の光軸と前記光学系の基準軸が一致した状態で近軸光線
の諸量を計算する過程と、該状態で前記光学系の光学作
用面の少なくとも1面の収差係数を計算する過程とを備
え、前記収差係数と前記近軸量とから前記偏心収差係数
を計算する過程を備えることが望ましい。
【0014】また、複数の光学作用面から偏心収差係数
の冪乗和を計算する過程を備え、前記評価項目は前記偏
心収差係数の冪乗和を含むことが望ましい。
【0015】また、前記偏心収差係数の冪乗和は、偏心
コマ収差係数の冪乗和にしてもよい。
【0016】また、前記偏心収差係数の冪乗和は、偏心
非点収差係数の冪乗和にしてもよい。
【0017】また、前記偏心収差係数の冪乗和は、偏心
ペッツバール収差係数の冪乗和にしてもよい。
【0018】本発明は、評価関数を用いて設計を行う光
学系の設計プログラムにおいて、前記評価関数は少なく
とも1つの評価項目を変数として有し、前記評価項目
は、前記光学系の光学作用面の少なくとも1面の偏心収
差係数を含むことを特徴とする光学系の設計プログラム
を含むものである。
【0019】また、上記の光学系の設計プログラムを記
録したことを特徴とする光学系の設計プログラムの記録
媒体を含むものである。
【0020】さらに、本発明は、上記の何れかの光学系
の設計手法、又は、上記光学系の設計プログラムを用い
て設計、あるいは、製造されたことを特徴とする光学系
を含むものである。
【0021】また、本発明は、上記の何れかの光学系の
設計手法、又は、上記光学系の設計プログラムを用いて
設計、あるいは、製造されたことを特徴とする光学装置
を含むものである。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。まず、本発明で用いる偏心収差係数につい
て説明する。
【0023】光学系を構成する光学作用面、又は、少な
くとも1面の光学作用面よりなる光学群の光軸が、光学
系の基準軸に対して一致していない状態を偏心状態とい
う。この中、図2に示すように、上記光軸が基準軸に対
して平行にずれた状態を平行偏心、図3に示すように、
上記光軸が基準軸に対して傾きを持って交わるような状
態を傾き偏心とする。光学系に前述のような平行偏心乃
至傾き偏心が発生した状態の光学系の収差は、 (収差)=(偏心のない状態での収差)+(偏心により発生する収差) (1) で定義される。式(1)から明らかなように、光学系の
一部が偏心することによって生ずる収差(偏心収差)に
よって、光学系の性能は変化してしまう。現実の光学系
では、偏心はレンズの製造、あるいは、レンズの組み立
て時の製造誤差(組み立て誤差)として現れる。このよ
うに、偏心(製造誤差)は、理想的な光学系の性能を得
ることを困難ならしめる要因の1つとなっている。
【0024】光学作用面や光学群が偏心することによっ
て、光学系の結像性能に変化が発生するが、この変化を
代弁する指標の1つに、偏心収差係数がある。偏心収差
係数には、偏心コマ収差、偏心非点収差、偏心ペッツバ
ール収差(偏心による像面の傾きの収差)、偏心デスト
ーション(偏心歪曲収差)、偏心による像のずれがあ
る。これら偏心収差係数は、近軸光線の追跡結果と3次
の収差係数により記述される。
【0025】なお、偏心収差並びに偏心収差係数の導出
方法は、松居吉哉著「偏心の存在する光学系の3次の収
差論」((社)日本オプトメカトロニクス協会、199
0年)に、3次の収差係数の導出については、松居吉哉
著「収差論」((社)日本オプトメカトロニクス協会、
1989年)に詳述されているため、割愛し、偏心収差
係数と偏心収差の定義のみを記述する。
【0026】まず、偏心収差係数を導出に必要な光学系
の第i面における近軸光線の諸量と3次の収差係数を、
【0027】
【数1】 と定義する。ここで、近軸光線の諸量とは、光学系の面
に入射する光線の入射光線高と入射角である。
【0028】前述のように、偏心状態には平行偏心と傾
き偏心の2種類の状態があるが、先に平行偏心の状態に
おける偏心収差係数と光学系の収差について論じ、次に
傾き偏心の状態における偏心収差係数と光学系の収差に
ついて論ずる。
【0029】光学系がn面の光学作用面により構成され
ている光学系において、図2のように、j面からk面で
構成される第i群が光学系の基準軸に対して、δi だけ
平行偏心した場合を考える。この場合、光学系の平行偏
心による光線の横収差ΔYδ、ΔZδを冪で展開する
と、
【0030】
【数2】 で定義される。ただし、h、r、φr 、φωは、図1よ
り、
【0031】
【数3】 で定義される。Nは光学系の物体側の屈折率、ωは物点
と物体側主点Hとを結ぶ直線が光軸となす角、φωはそ
のアジムス、また、rは物体側主平面上に換算した入射
瞳半径で、φr がそのアジムスである。
【0032】また、平行偏心コマ収差係数(IIδ)
i は、
【0033】
【数4】 と、平行偏心非点収差係数( IIIδ)i は、
【0034】
【数5】 と、平行偏心ペッツバール収差係数(Pδ)i は、
【0035】
【数6】 と、平行偏心ディストーション収差係数(Vδ1 ,Vδ
2 )は、
【0036】
【数7】 と、平行偏心による像のずれ((δ)i )は、
【0037】
【数8】 と定義できる。
【0038】平行偏心と同様に、光学系がn面の光学作
用面により構成されている光学系において、図3のよう
に、j面からk面で構成される第i群が光学系の基準軸
に対して、εi だけ傾き偏心した場合を考える。この場
合の、光学系の傾き偏心による光線の横収差ΔYε、Δ
Zεを冪で展開すると、
【0039】
【数9】 で定義される。このとき、傾き偏心コマ収差係数(II
ε)i は、
【0040】
【数10】 と、傾き偏心非点収差係数( IIIε)i は、
【0041】
【数11】 と、傾き偏心ペッツバール収差係数(Pε)i は、
【0042】
【数12】 と、傾き偏心ディストーション収差係数(Vε1 ,Vε
2 )は、
【0043】
【数13】 と、傾き偏心による像のずれ((ε)i )は、
【0044】
【数14】 と定義できる。ただし、Pj ,P’k ,qj ,q’
k は、図3に示すように、それぞれ、 pj :光学群の傾きの回転中心から光学群の入射瞳面
までの距離 p’k :光学群の傾きの回転中心から光学群の射出瞳面
までの距離 qj :光学群の傾きの回転中心から光学群の物体面ま
での距離 q’k :光学群の傾きの回転中心から光学群の像面まで
の距離で定義される量である。
【0045】次に、従来の評価関数FO を用いた光学系
の設計手法について、例として、最小二乗法の一種であ
る減衰最小二乗法(DLS法)を用いた場合で説明す
る。ここで、従来の評価関数FO は、光学系に偏心が生
じていないことを前提としている。
【0046】DLS法での評価関数Fは、
【0047】
【数15】 で定義される。DLS法の場合、評価関数FO の値がの
極小値となったときに、各収差が良好に補正され、か
つ、全体としても収差のバランスが取れた光学系とな
る。この評価関数FO の極小値を求めるためには、
【0048】
【数16】 を満足するxb の組を求めればよい。ここで、fa は光
学系の収差に関し、waを第a番目の収差のウェイト、
a をa番目の収差の値、Ta を第a番目の収差の目標
値としたとき、 fa =wa (Ra −Ta 2 で定義される。ただし、各収差値Ra は設計パラメータ
1 ,x2 ,・・・・,xn の関数である。また、設計
パラメータxb は曲率半径や面間隔、屈折率等の光学系
の構成要素の値、xObは設計開始時点における設計パラ
メータ、Dはダンピングファクターをそれぞれ表してい
る。ダンピングファクターDは、設計パラメータが設計
開始時点での値(初期値)から離れることを適度に防ぐ
働きをする。また、mは評価を行う収差の数、nは設計
に用いるパラメータの数をそれぞれ表している。
【0049】上記のような評価関数FO において、初期
値近傍では各収差値が設計パラメータの線形関数として
近似できる。このため、式(19)はxb に対して線形
な連立方程式となるので、最小二乗法により解くことが
可能であり、コンピュータを用いることで、高速かつ容
易に計算することができる。
【0050】DLS法以外の手法においても、各手法に
則した評価関数が定義されている。また、コンピュータ
を用いることで、高速かつ容易に評価関数の所望の値を
求めることができる。よって、これらの手法とコンピュ
ータを組み合わせれば、最適な光学系の設計値を高速か
つ容易に得ることができる。
【0051】評価関数の所望の値は、上記DLS法に示
した極小値とする場合以外に、極大値とする場合等、設
計手法により様々である。
【0052】さて、本発明の実施形態にかかる光学系の
設計手法について説明する。本発明の実施形態である評
価関数Fは、
【0053】
【数17】 で定義される。ただし、FO は、従来の設計手法におけ
る評価関数を表す。また、Fdec は、(IIδ)i 、( I
IIδ)i 、(Pδ)i 、(IIε)i 、( IIIε) i
(Pε)i の中、少なくとも1つの偏心収差係数により
定義される評価関数の項である。このような評価関数を
用いることで、従来の評価関数FO では考慮しなかった
偏心による光学性能の変化成分を、光学系の設計に加味
することができる。よって、光学群の偏心により発生す
る光学系の性能劣化が抑制され、かつ、偏心のない状態
での光線収差が小さい、最適な光学系の設計値を求める
ことが可能となる。
【0054】さらに好ましくは、Fdec は、各光学群で
生ずる偏心収差係数の絶対値の冪乗和の項からなるとよ
い。このような評価関数を用いることで、偏心収差係数
の絶対値が大きい光学群があったとしても、その偏心収
差係数の絶対値を小さくすることができる。しかも、同
時に、他の光学群の偏心収差係数の絶対値が大きくなる
ことを抑制することができる。この結果、評価関数の最
適値をより速く求めることができる。よって、本発明の
設計手法では、従来の設計手法よりも効率的な設計がで
きる。
【0055】例えば、n個の光学群よりなる光学系にお
いて、平行偏心コマ収差係数に着目する場合、F
dec は、式(21)のように定義することが好ましい。
ただし、ωは設計者自身の定めるウェイト、kは任意の
実数である。
【0056】
【数18】 このような評価関数を用いることで、平行偏心コマ収差
係数の絶対値が大きい光学群の平行偏心コマ収差係数の
絶対値を小さくすると同時に、他の光学群の平行偏心コ
マ収差係数の絶対値が大きくなり難くすることができ、
従来の設計手法よりも効率的な設計ができる。
【0057】上記では、平行偏心コマ収差係数の場合に
ついて述べているが、平行偏心コマ収差係数を平行偏心
非点収差係数、平行偏心ペッツバール収差係数、傾き偏
心コマ収差係数、傾き偏心非点収差係数、傾き偏心ペッ
ツバール収差係数と変更しても、同様の効果が得られる
ことは言うまでもない。
【0058】また、評価関数の項(変数)を1つの偏心
収差係数の絶対値の冪乗の和ではなく、複数の偏心収差
係数の和の絶対値の冪乗や、絶対値の和の冪乗とするこ
ともできる。この場合、前述と同様な効果が得られるこ
とは言うまでもなく、さらに、光学群内でそれぞれの偏
心収差をバランス良く小さくすることができるので好ま
しい。
【0059】また、上述の複数の偏心収差係数について
冪乗したものについて和をとり、それを評価関数の評価
項目とすることもできる。このようにすれば、光学系全
体でそれそれの偏心収差をバランス良く小さくすること
ができるので好ましい。
【0060】また、任意の実数kは、1≦k≦4なる条
件を満たすことがよい。上記条件を外れると、収差値の
最適化と製造誤差による光学系の性能変化の抑制を両立
させることが難しくなってしまい、問題となってしま
う。
【0061】さらに好ましくは、k=2とすることで、
本発明における光学系の設計手法を最も有効に働かせる
ことができ、さらに、コンピュータの計算を高速にでき
るので、最も望ましい。
【0062】図4は、本実施形態にかかる光学系の設計
手法の手順を示すフローチャートである。ステップ1
で、光学系の初期データを用意する。ステップ2で、諸
収差の目標値とウェイトといった従来の評価関数にかか
る諸パラメータ、及び、本設計手法で導入した評価関数
にかかる諸パラメータを設定する。ステップ3で、ダン
ピングファクターを設定する。ここで、通常はダンピン
グファクターのデフォルト値が設定される。以上のステ
ップで、評価関数を決定する。次に、ステップ4におい
て、評価関数についての行列式、すなわち、連立方程式
を作成し、解を得る。続くステップ5で、評価関数の値
を評価し、評価関数の値が所望の値に到達したと判定し
た場合、続くステップ6へと進み、到達し得ない場合、
ステップ3へと戻る。ステップ6において、得られた設
計値が設計目標を満足するならば、設計を終了し、不満
足ならば、ステップ2に戻り、設計条件を変更して設計
を続行する。上述したフローにおいて、ステップ3から
ステップ5までがコンピュータのプログラムに適してい
る。
【0063】以下に、本発明の実施形態を用いて設計し
た光学系の実施例を示す。
【0064】実施例1は、デジタルカメラの光学系に、
本発明の平行偏心コマ収差係数を用いた光学系の設計手
法を適用した場合について示す。図5に示すような光路
図を持ち、以下の表1に示すような設計開始時のレンズ
データを持つ光学系の結像性能を表すMTFは、図6の
通りである。ただし、図5において数字1〜12は面番
号を示し、符号A〜Eはレンズエレメント番号を示す。
なお、光学系の仕様は、焦点距離=3.9mm、Fナン
バー=2.8、理想像高=2.4mmであり、像評価に
用いるMTFは、空間周波数50本/mmでの評価とす
る。図6(a)は軸上でのMTF、図6(b)は像高の
0.7でのMTFであり、横軸はデフォーカスであり、
実線はサジタル方向の値、破線はメリジオナル方向の値
である。
【0065】この光学系のレンズエレメントを光学群の
単位とし、各エレメントが光軸に対して0.1mm平行
偏心した場合、軸上光束の結像性能の変化を表したもの
が表2である。ただし、R(%)はサジル方向のMTF
の変化値、T(%)はメリジオナル方向の変化値であ
る。この表の値が小さい程、光学群が偏心しても性能へ
の影響が小さいことに対応している。
【0066】このような光学系に対して、DLS法を基
に評価関数を式(22)と定義した本発明の設計方法を
適用した結果、図7に示すような光路図を持ち、以下の
表3に示すような設計終了時のレンズデータを持つよう
な光学系が得られる。
【0067】
【数19】 このときの結像性能を表す図6と同様のMTFは図8の
通りであり、設計開始時点での結像性能と略同等であ
る。この光学系の各レンズが光軸に対して0.1mm平
行偏心した場合、結像性能が表4のような変化となる。
このことから、設計開始時点と略同等の性能を達成し、
かつ、各レンズの平行偏心による性能の変化が発生し難
い光学系の設計値を得ることができる。また、平行偏心
コマ収差係数の絶対値の二乗和は、表5のように小さく
なっている。
【0068】以下に、設計開始時点と設計後の光学系デ
ータを示す。ただし、光学系データの非球面は、コーニ
ック係数:K、曲率:c(c=1/曲率半径)、4次の
非球面係数AC4 、・・・を用いて、以下の式で定義され
る。
【0069】Z=cr2 /[1+√{1−(1+K)c
2 2 }]+ AC44 ・・・ ここで、Zは光軸に沿った座標軸、rはZ軸からの半径
である。
【0070】 表1 面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数 物体面 ∞ ∞ 1 8.9512 0.8000 1.48749 70.23 2 2.2965 3.9071 3 224.8333 1.8986 1.83400 37.16 4 -4.8216 0.8000 絞り面 ∞ 2.8850 6 -3.1214 0.8000 1.84666 23.78 7 4.5368 4.0000 1.78590 44.20 8 -4.9428 0.1937 9 7.7737(非球面) 3.3651 1.56384 60.67 10 -11.3280 1.9084 11 ∞ 2.5000 1.51633 64.14 12 ∞ 1.1013 像 面 ∞ 非球面係数 面番号 K AC4 9 0.0 -8.8037×10-4
【0071】
【0072】 表3 面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数 物体面 ∞ ∞ 1 -1447.5433 0.8000 1.48749 70.23 2 3.1192 3.7577 3 18.5526 1.8222 1.83400 37.16 4 -6.7327 0.8000 絞り面 ∞ 2.8871 6 -3.6762 0.8000 1.84666 23.78 7 5.4479 4.0000 1.77250 49.60 8 -5.2921 0.1934 9 8.1262(非球面) 3.1860 1.56384 60.67 10 -10.4919 2.1689 11 ∞ 2.5000 1.51633 64.14 12 ∞ 1.2598 像 面 ∞ 非球面係数 面番号 K AC4 9 0.0 -9.7855×10-4
【0073】
【0074】
【0075】以上、本発明の光学系の設計手法をその原
理と実施例に基づいて説明してきたが、本発明はこれら
実施例等に限定されず種々の変形が可能である。
【0076】以上の本発明の光学系の設計手法は、例え
ば次のように構成することができる。
【0077】〔1〕 複数の構成要素で表現される光学
系が所望の特性となるように、前記複数の構成要素の値
を変更し、前記各構成要素の値が前記光学系全体として
最適な構成要素の値へと近づいていることを評価する評
価関数を所望の値へと近づけることで、最適な構成要素
の値を得る光学系の設計手法において、前記光学系の光
学作用面の少なくとも1面からなる光学群の偏心収差係
数を計算する手段と、少なくとも1つの前記偏心収差係
数からなる評価関数の項を少なくとも1つ含む前記評価
関数とを有することを特徴とする光学系の設計手法。
【0078】〔2〕 前記光学系の近軸光線を計算する
手段と、前記光学系の光学作用面の少なくとも1面から
なる光学群の収差係数を計算する手段と、前記収差係数
と前記近軸光線とからなる偏心収差係数を計算する手段
とを有することを特徴とする上記1記載の光学系の設計
手法。
【0079】〔3〕 n個の光学群よりなる前記光学系
において、偏心収差係数の冪乗和を計算する手段と、少
なくとも1つの偏心収差係数の冪乗和からなる評価関数
の項を有する前記評価関数とを有することを特徴とする
上記2記載の光学系の設計手法。
【0080】〔4〕 偏心コマ収差係数の冪乗和からな
る評価関数の項を有する前記評価関数を有することを特
徴とする上記3記載の光学系の設計手法。
【0081】〔5〕 偏心非点収差係数の冪乗和からな
る評価関数の項を有する前記評価関数を有することを特
徴とする上記3の光学系の設計手法。
【0082】〔6〕 偏心ペッツバール収差係数の冪乗
和からなる評価関数の項を有する前記評価関数を有する
ことを特徴とする上記3の光学系の設計手法。
【0083】〔7〕 複数の構成要素で表現される光学
系が所望の特性となるように、前記複数の構成要素の値
を変更し、前記各構成要素の値が前記光学系全体として
最適な構成要素の値へと近づいていることを評価する評
価関数を所望の値へと近づけることで、最適な構成要素
の値を得る光学系の設計プログラムにおいて、前記光学
系の光学作用面の少なくとも1面からなる光学群の偏心
収差係数を計算する手段と、少なくとも1つの前記偏心
収差係数からなる評価関数の項を少なくとも1つ含む前
記評価関数とを有することを特徴とする光学系の設計プ
ログラム。
【0084】〔8〕 上記7記載の光学系の設計プログ
ラムを記録したことを特徴とする光学系の設計プログラ
ムの記録媒体。
【0085】
〔9〕 上記1から6の何れか1項記載の
光学系の設計手法、又は、上記7記載の光学系の設計プ
ログラムを用いて設計されたことを特徴とする光学系。
【0086】〔10〕 上記1から6の何れか1項記載
の光学系の設計手法、又は、上記7記載の光学系の設計
プログラムを用いて設計されたことを特徴とする光学装
置。
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
の光学系の設計手法によると、諸収差等の光学設計に加
えて、製造誤差による光学系の性能変化を抑制した光学
系の設計を効率良く行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光学系を模式的に示す光軸を含む断面図であ
る。
【図2】光学系の平行偏心を説明するための図である。
【図3】光学系の傾き偏心を説明するための図である。
【図4】本発明の1実施形態にかかる光学系の設計手法
の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の1実施例の設計開始時のレンズ系の光
路図である。
【図6】図5のレンズ系のMTFを示す図である。
【図7】本発明の1実施例の設計終了時のレンズ系の光
路図である。
【図8】図7のレンズ系のMTFを示す図である。
【符号の説明】
1〜12…第1面〜第11面 A〜E…レンズエレメント

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 評価関数を用いて設計を行う光学系の設
    計手法において、 前記評価関数は少なくとも1つの評価項目を変数として
    有し、 前記評価項目は、前記光学系の光学作用面の少なくとも
    1面の偏心収差係数を含むことを特徴とする光学系の設
    計手法。
  2. 【請求項2】 前記光学系の全ての光学作用面の光軸と
    前記光学系の基準軸が一致した状態で近軸光線の諸量を
    計算する過程と、該状態で前記光学系の光学作用面の少
    なくとも1面の収差係数を計算する過程とを備え、前記
    収差係数と前記近軸量とから前記偏心収差係数を計算す
    る過程を備えることを特徴とする請求項1記載の光学系
    の設計手法。
  3. 【請求項3】 複数の光学作用面から偏心収差係数の冪
    乗和を計算する過程を備え、前記評価項目は前記偏心収
    差係数の冪乗和を含むことを特徴とする請求項2記載の
    光学系の設計手法。
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