JP2002265299A - BaTiO3−PbTiO3系単結晶およびその製造方法、圧電型アクチュエータならびに該圧電型アクチュエータを用いる液体吐出ヘッド - Google Patents

BaTiO3−PbTiO3系単結晶およびその製造方法、圧電型アクチュエータならびに該圧電型アクチュエータを用いる液体吐出ヘッド

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JP2002265299A JP2001382756A JP2001382756A JP2002265299A JP 2002265299 A JP2002265299 A JP 2002265299A JP 2001382756 A JP2001382756 A JP 2001382756A JP 2001382756 A JP2001382756 A JP 2001382756A JP 2002265299 A JP2002265299 A JP 2002265299A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 誘電損失や電気機械結合係数を向上させ、誘
電性、圧電性に優れ鉛含有率の低いBaTiO3 −Pb
TiO3 系単結晶とその製造方法を提供する。 【解決手段】 BaTiO3 単結晶あるいはBaTiO
3 −PbTiO3 の単結晶からなる種結晶1と、平均粒
径20μm以下の結晶粒から構成され相対密度95%以
上で、元素のモル比を0.9900<(Ba+Pb)/
Ti<1.0000の範囲とするBaTiO3 −PbT
iO3 系焼結体3とを種結晶1の{100}面、{11
0}面または{111}面を介して接合し、これを非溶
融状態で1200〜1400℃の温度範囲で加熱保持し
て単結晶育成し、BaTiO3 −PbTiO3 系単結晶
5を作製する。本発明のBaTiO3 −PbTiO3
単結晶は、転位密度が102 〜106 個/cm2 、気孔
含有量が1体積ppm〜5体積%の範囲にあり、1mm
3 以上の体積を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば圧電体とし
て利用可能なBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶およ
びその製造方法に関するものであり、さらに、BaTi
3 −PbTiO 3 系単結晶からなる圧電型アクチュエ
ータならびに該圧電型アクチュエータを用いる液体吐出
ヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】BaTiO3 単結晶は、光通信や情報処
理等に利用される非線型光学結晶であり、高解像度画像
処理、実時間フォログラム、レーザー共振器用の位相共
役波発生媒体に利用できるばかりでなく、低価格結晶が
実現できれば高性能な圧電材料としても利用できる市場
性の大きな材料である。
【0003】ところで、BaTiO3 単結晶の製造に関
しては、状態図から判断できるようにBaTiO3 融液
から直接単結晶化することが困難なため、フッ化物や塩
化物を主成分とする溶剤(フラックス)を用いるフラッ
クス法あるいは融液組成をTiO2 リッチにすることに
よって直接低温型構造のBaTiO3 単結晶を引上げる
方法(いわゆる、トップ・シーディド・ソリューション
・グロース(TSSG)法)でしか育成できなかった。
しかしながら、前記のフラックス法では、サイズが1m
3 程度以下の小さいものしか得られず、また、前記T
SSG法では、白金坩堝等の高価な貴金属坩堝を必要と
し、しかも育成速度が遅く、製造コストは非常に高くな
る。
【0004】上述の問題点を改善して、より大きなBa
TiO3 単結晶をより容易に効率よく製造するための方
法が従来から検討されている。
【0005】例えば、焼結法によりBaTiO3 単結晶
を効率よく製造しようとする試みが見られる。特開平4
−300296号公報、特開平5−155696号公
報、特開平5−155697号公報には、BaTiO3
の多結晶にBaTiO3 の単結晶を種結晶として接合
し、これを加熱することで、固相反応により前記多結晶
を単結晶化するBaTiO3 単結晶の製造方法が開示さ
れている。また、特開平9−263496号公報におい
ては、Ti/Baのモル比が1.0以上1.1以下であ
るBaTiO3 微結晶粒子集合体に温度勾配を与えて単
結晶化するBaTiO3 単結晶の製造方法が開示されて
いる。
【0006】しかしながら、これらの方法では、単結晶
成長速度のばらつきが大きく、大きなサイズの単結晶を
再現性よく育成することができなかった。また、転位密
度が高く、BaTiO3 単結晶の結晶性においても従来
のTSSG法やフラックス法に比べて見劣りのするもの
であった。
【0007】さらに、焼結法以外の固相法の例も見られ
る。特開昭59−3091号公報には、PbTiO3
BaTiO3 、SrTiO3 、CaTiO3 などの結晶
質酸化物を溶融後に急冷凝固して非晶質化した後、温度
勾配下で再結晶化する酸化物単結晶の製造方法が開示さ
れている。この方法では、結晶質酸化物を溶融する工程
を必要とするため、製造装置および製造工程が複雑にな
る。また、得られる単結晶の結晶性も悪く、気孔含有率
の高い結晶しか得られなかった。
【0008】また、TSSG法やフラックス法について
も改善検討が行われている。特開平6−321698号
公報には、フラックス法において、BaF2 、NaF、
Li 2 MoO4 などの混合物をフラックスとして用いる
BaTiO3 の製造方法が開示されている。これによっ
て、溶液へのBaTiO3 の溶解度を高め、長時間の結
晶育成によって、大きなサイズのBaTiO3 単結晶を
得ることを目的とするものであるが、製造時間と製造コ
ストの点で充分に満足できるものではなかった。特開平
9−59096号公報には、微量のMgおよびFeをド
−プしたBaTiO3 単結晶が開示されている。これは
近赤外領域において高い光屈折性を得ることを目的とす
るものであるが、MgやFeなどの圧電特性に悪影響を
及ぼす元素が含まれており、圧電材料としては好ましい
ものではなかった。また、産業レベルでは製造時間と製
造コストの点で満足できる水準ではなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】前述したように、TS
SG法やフラックス法などによるBaTiO3 単結晶の
製造方法によれば、製造時間、製造コストなどの製造効
率の問題を大幅に改善することが非常に困難であった。
また、焼結法によるBaTiO3 単結晶の製造方法にお
いては、製造効率の向上が期待されていたが、BaTi
3 単結晶の成長速度がばらつくために充分な効果を得
ることができず、同時に、得られるBaTiO3 単結晶
の結晶性もTSSG法やフラックス法等と比較して劣っ
ていた。すなわち、結晶性や物性に優れたBaTiO3
系単結晶を短時間に低コストで製造することを従来の技
術の流れにおいて実現することは困難であった。
【0010】また、圧電材料としては、PZT(Pb
(Ti,Zr)O3 )多結晶が一般的に用いられている
が、近年、地球環境への負荷を軽減するために工業製品
における鉛使用量の削減が求められており、現在一般
に、鉛使用量削減を目的とするPZT代替の有望材料と
しては、BaTiO3 多結晶、Bi0.5 Na0.5 TiO
3多結晶、(Na0.50.5 )NbO3 多結晶等が考え
られている。しかしながら、PZTは、圧電定数d33
300〜400(×10-12 C/N)、電気機械結合係
数k33=0.6〜0.7であるのに対して、BaTiO
3 多結晶は、圧電定数d33=120(×10-12 C/
N)、電気機械結合係数k33=0.4〜0.5であり、
Bi0.5 Na0.5 TiO3 多結晶は、圧電定数d33=1
10(×10-1 2 C/N)、電気機械結合係数k33
0.4〜0.6であって、その圧電特性について満足で
きるものではなかった。なお、BaTiO3 単結晶は、
圧電定数d 33=500(×10-12 C/N)、電気機械
結合係数k33=0.8〜0.9であるが、キュリー温度
(Tc )が約120℃であり、BaTiO3 多結晶と同
様に低いキュリー温度(Tc )に伴う使用可能温度領域
の狭さが従来から実用上の難点であった。そのため、鉛
を含まないか鉛含有量が低くかつ圧電特性が優れた材料
の開発が要望されているところである。
【0011】本発明者らは、焼結法によるBaTiO3
単結晶の作製において、BaTiO 3 自体に他成分を加
えることにより、単結晶成長再現性の向上および結晶性
や他の物性の向上を両立させることを試み、この観点か
ら鋭意検討した結果、BaTiO3 にPbTiO3 を加
えた系においてある特定条件を満たしたものだけが非常
に再現性よく結晶成長を引き起こすことを見出し、Ba
TiO3 −PbTiO 3 系についてさらに詳細な検討を
行い、本発明の完成に至ったものである。
【0012】すなわち、本発明は、誘電損失や電気機械
結合係数を向上させ、誘電性、圧電性、焦電性など諸物
性に優れたBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶、特
に、圧電特性ならびに生産性に優れ鉛含有率の低い圧電
材料としてのBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶を提
供するものである。
【0013】ところで、BaTiO3 −PbTiO3
単結晶は、後述する本発明以外の方法例えばフラックス
法やTSSG法等の溶融凝固法により作製することは、
BaTiO3 単結晶以上に困難であると考えられてお
り、このような方法に価値を見出すことはできない。前
述のようにBaTiO3 単結晶については、フラックス
法ではサイズが1mm3 程度以下の小さいものしか得ら
れず、また、TSSG法では、白金坩堝等の高価な貴金
属坩堝を必要とし、しかも育成速度が0.1〜0.2m
m/h程度であることから、製造コストが非常に高くな
り、さらに原料ロスが多く、大きな単結晶が得られ難い
欠点がある。このように極端な高コスト化を余儀なくさ
れ、その利用分野は非常に限られる状況にあり、工業材
料としての価値に欠けることが指摘されている。性能面
に関しても単結晶育成中に不純物が混入しやすく、本来
の性能を発揮できない場合が多い。BaTiO3 −Pb
TiO3 系単結晶についても溶融凝固法によれば同様の
問題が予想される。
【0014】また、焼結法によるペロブスカイト酸化物
単結晶の製造方法の例としては、特開平9−18859
7号公報において、Pb{(Mg1/3 Nb2/31-x
x}O3 ペロブスカイト焼結体(前記組成式におい
て、0≦x≦0.55。なお、Pbの10モル%以下が
Ba、Sr、Caなどで置換されることもある。)を種
単結晶と接触させて密閉容器内で鉛雰囲気中1000〜
1450℃の温度で加熱する工程を具備するペロブスカ
イト酸化物単結晶の製造方法が開示されている。しかし
ながら、Pbの含有モル数がBaの含有モル数よりも少
ないBaTiO3−PbTiO3 系単結晶についての開
示はなく、当然ながら、それによる効果も記載されてい
ない。また、前記ペロブスカイト焼結体のAサイトとB
サイトの比が、1.00>A/Bのときに結晶化速度が
著しく遅いという点で、後述するように本発明とは異な
る傾向を持つものである。
【0015】本発明は、誘電損失や電気機械結合係数を
向上させ、誘電性、圧電性、焦電性など諸物性に優れた
BaTiO3 −PbTiO3 系単結晶を提供することを
目的とし、特に、圧電特性ならびに生産性に優れ鉛含有
率の低い圧電材料としてのBaTiO3 −PbTiO3
系単結晶を提供することを目的とするものである。
【0016】さらに、本発明は、溶融凝固法による単結
晶育成ではなく、BaTiO3 −PbTiO3 系単結晶
を効率良く作製することができるBaTiO3 −PbT
iO 3 系単結晶の製造方法を提供することを目的とする
ものであり、また、BaTiO3 −PbTiO3 系単結
晶を用いた圧電型アクチュエータおよび液体吐出ヘッド
を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前述する
ように、従来、再現性よく単結晶育成することができな
かった焼結法によるBaTiO3 単結晶の作製におい
て、BaTiO3 自体に他成分を加えることにより単結
晶成長再現性の向上および結晶性や他の物性の向上を両
立させることを試み、この観点から鋭意検討した結果、
BaTiO3 にPbTiO3 を加えた系においてある特
定条件を満たしたものが非常に再現性よく結晶成長を引
き起こすことを見出し、本発明を完成するに至ったもの
である。
【0018】すなわち、本発明のBaTiO3 −PbT
iO3 系単結晶は、Pbの含有モル数がBaの含有モル
数よりも少ないBaTiO3 −PbTiO3 系圧粉体ま
たは焼結体を非溶融状態に保ったまま加熱することによ
り単結晶化されたことを特徴とする。このように、Pb
の含有モル数がBaの含有モル数よりも少なくなるよう
にBaTiO3 にPbTiO3 を加え、BaTiO3
PbTiO3 系圧粉体または焼結体を非溶融状態に保っ
たまま加熱することにより単結晶化することにより安定
した単結晶育成が可能となる。
【0019】本発明のBaTiO3 −PbTiO3 系単
結晶においては、転位密度が102個/cm2 以上106
個/cm2 以下であり、気孔含有率が1体積ppm以
上5体積%以下の範囲にあることが好ましい。これによ
り、本発明のBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶は、
誘電損失が小さく、電気機械結合係数の大きいものにな
る。例えば、誘電損失としては1%以下、電気機械結合
係数が85%を超えるものとなる。
【0020】本発明のBaTiO3 −pbTiO3 単結
晶においては、BaTiO3 −PbTiO3 系単結晶に
おけるPbTiO3 の含有率が45モル%以下であるこ
とが好ましい。出発物質であるBaTiO3 −PbTi
3 系圧粉体または焼結体におけるPbTiO3 の含有
率を45モル%以下とすることにより、単結晶の成長速
度がより促進されるとともに、より安定的に単結晶物質
を製造することができる。その結果得られるBaTiO
3 −PbTiO3 系単結晶におけるPbTiO 3 の含有
率は、出発物質におけるPbTiO3 の含有率と同一で
ある。さらに、本発明のBaTiO3 −PbTiO3
単結晶におけるPbTiO3 の含有率は、より好ましく
は30モル%以下であり、さらに好ましくは25モル%
以下である。PbTiO3 の含有率が多すぎると、Pb
の蒸発が顕著になり、目的組成からの組成変動とともに
得られる単結晶がポ−ラスになりやすい。このPb蒸発
を抑制するには圧力容器の利用が不可欠であり、製造コ
ストアップに導かれる欠点を伴う。また、本発明のBa
TiO3 −PbTiO3 系単結晶におけるPbTiO3
の最少含有量としては、より好ましくは0.01モル%
以上であり、さらに好ましくは0.02モル%以上であ
る。
【0021】本発明のBaTiO3 −PbTiO3 系単
結晶は、1mm3 以上の体積を有することが好ましい。
本発明のBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶は、安定
した結晶成長によって容易に1mm3 以上の体積にまで
大きくすることができ、単結晶が1mm3 以上の体積を
有することにより、大面積化などにより各種多様なサイ
ズのデバイスに対応することが可能となり好ましい。
【0022】また、本発明の別の態様は、転位密度が1
2 個/cm2 以上106 個/cm 2 以下、気孔含有率
が1体積ppm以上5体積%以下の範囲にあることを特
徴とするBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶である。
より好ましくは、PbTiO 3 の含有率を45モル%以
下とする。これにより、本発明のBaTiO3 −PbT
iO3 系単結晶は、誘電損失が小さく、電気機械結合係
数の大きいものになる。
【0023】さらに、本発明のBaTiO3 −PbTi
3 系単結晶の製造方法は、Pbの含有モル数がBaの
含有モル数よりも少ないBaTiO3 −PbTiO3
圧粉体または焼結体の含有する元素のモル比を0.98
00<(Ba+Pb)/Ti<1.0000の範囲と
し、前記圧粉体または焼結体を非溶融状態に保ったまま
加熱することにより単結晶化する工程を含むことを特徴
とする。より好ましくは、前記圧粉体または焼結体の含
有する元素のモル比を0.9900<(Ba+Pb)/
Ti<1.0000の範囲とし、さらに好ましくは0.
9950≦(Ba+Pb)/Ti≦0.9999の範囲
とする。このようにPbの含有モル数がBaの含有モル
数よりも少ないBaTiO3 −PbTiO3 系圧粉体ま
たは焼結体を非溶融状態に保ったまま加熱することによ
って、PbTiO3 を含まないBaTiO3 のみの圧粉
体または焼結体を同様に処理した場合と比較して、単結
晶成長の再現性が向上し、安定したBaTiO3 −Pb
TiO3 系単結晶の製造が可能となる。さらに、前記B
aTiO3 −PbTiO3 系圧粉体または焼結体の含有
する元素のモル比を所定の範囲にすることによって、B
aTiO3 −PbTiO3 系単結晶の結晶成長速度が速
くなる。
【0024】本発明のBaTiO3 −PbTiO3 系単
結晶の製造方法において、BaTiO3 −PbTiO3
系圧粉体または焼結体におけるPbTiO3 の含有率が
45モル%以下であることが好ましい。出発物質である
BaTiO3 −PbTiO3系圧粉体または焼結体にお
けるPbTiO3 の含有率を45モル%以下とすること
により、単結晶の成長速度がより促進されるとともに、
より安定的に単結晶物質を製造することができる。ま
た、本発明のBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶の製
造方法において、BaTiO3 −PbTiO3 系圧粉体
または焼結体におけるPbTiO3 の含有率は、より好
ましくは30モル%以下であり、さらに好ましくは25
モル%以下である。PbTiO3 の含有率が多すぎる
と、Pbの蒸発が顕著になり、目的組成からの組成変動
とともに得られる単結晶がポ−ラスになりやすい。この
Pb蒸発を抑制するには圧力容器の利用が不可欠であ
り、製造コストアップに導かれる欠点を伴う。さらに、
本発明のBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶の製造方
法においては、BaTiO3 −PbTiO3 系圧粉体ま
たは焼結体におけるPbTiO3 の最少含有量として
は、より好ましくは0.01モル%以上であり、さらに
好ましくは0.02モル%以上である。
【0025】また、本発明のBaTiO3 −PbTiO
3 系単結晶の製造方法は、好ましくは、BaTiO3
PbTiO3 系圧粉体または焼結体を1200℃以上1
400℃以下の温度範囲で加熱することにより単結晶化
する工程を含む。BaTiO 3 −PbTiO3 系圧粉体
または焼結体を前記のような所定の温度範囲で加熱する
ことによってBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶の結
晶成長速度が速くなる。
【0026】本発明のBaTiO3 −PbTiO3 系単
結晶の製造方法は、好ましくは、前記圧粉体または焼結
体を鉛雰囲気中で非溶融状態に保ったまま加熱し単結晶
化する工程を含むものである。鉛雰囲気を形成するため
の方法の一つとしては、BaTiO3 −PbTiO3
圧粉体または焼結体を非溶融状態で加熱する環境におい
て、鉛含有化合物を共存させて、前記鉛含有化合物から
鉛あるいは酸化鉛を蒸発させる方法が挙げられる。Ba
TiO3 −PbTiO3 系圧粉体または焼結体を鉛雰囲
気中で加熱することによって、BaTiO3 −PbTi
3 系圧粉体または焼結体、あるいはBaTiO3 −P
bTiO3 系単結晶からの鉛あるいは酸化鉛等の蒸発を
防止することができる。これによりBaTiO3 −Pb
TiO3系単結晶の転位密度や気孔含有率の増加を抑制
し、高品質なBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶を製
造することができる。
【0027】さらに、本発明のBaTiO3 −PbTi
3 系単結晶の製造方法は、BaTiO3 系単結晶ある
いはBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶を種結晶と
し、平均粒径20μm以下の結晶粒から構成され、相対
密度95%以上であるBaTiO3 −PbTiO3 系焼
結体を前記種結晶の{100}面、{110}面または
{111}面と接合し、非溶融状態に保ったまま加熱す
ることにより単結晶化することを特徴とする。そして、
より好ましくは、前記BaTiO3 −PbTiO 3 系圧
粉体または焼結体の含有する元素のモル比を0.995
0≦(Ba+Pb)/Ti≦0.9999の範囲とする
ものである。本発明のBaTiO3 −PbTiO3 系単
結晶の製造方法において、前述の条件でBaTiO3
PbTiO 3 系圧粉体または焼結体と種結晶を接合して
用いることにより、前記圧粉体または焼結体の種結晶と
の接合部分から安定して単結晶化が起こり、単結晶成長
の再現性が向上する。また、前記圧粉体または焼結体の
含有する元素のモル比が所定の範囲にあれば、BaTi
3 −PbTiO3 系単結晶の結晶成長速度がより速く
なる。
【0028】さらに、本発明の圧電型アクチュエータ
は、前述したBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶から
なる層を含むことを特徴とし、また、本発明の液体吐出
ヘッドは、前記圧電型アクチュエータを備えることを特
徴とする。
【0029】本発明の圧電型アクチュエータおよび液体
吐出ヘッドは、圧電材料として、高い電気機械結合係
数、高い圧電定数、高いキュリー温度を併せ持つBaT
iO3−PbTiO3 系単結晶を用いることで、高出力
で、使用可能温度領域の広い圧電型アクチュエ−タおよ
び液体吐出ヘッドの実現を可能としたものであり、さら
に鉛含有量も少なく地球環境改善の観点からも好ましい
ものである。
【0030】本発明者らは、本発明により得られたBa
TiO3 −PbTiO3 系単結晶の結晶性に関して測定
を行い、さらに、本発明のBaTiO3 −PbTiO3
系単結晶の誘電性、圧電性、焦電性など、他の物性につ
いても検討を行ったところ、本発明のBaTiO3 −P
bTiO3 系単結晶は、結晶性に関する測定により、非
常に結晶性の優れたものであることが判明し、さらに、
X線回折、電子線回折からは、結晶方位が完全に一致し
た単結晶であることを確認した。また、後述するエッチ
ピット観察による転位密度の低さから、格子欠陥の少な
い良質の結晶であることが確認され、気孔含有率も非常
に少ないものであった。
【0031】そして、本発明のBaTiO3 −PbTi
3 系単結晶の物性に関しては、特に、圧電性において
優れた特性を見出した。それは、BaTiO3 多結晶は
もちろんのこと、現在、標準的に用いられているPZT
(Pb(Ti,Zr)O3 )多結晶やTSSG法で作製
されたBaTiO3 単結晶の特性を凌駕するものであっ
た。本発明のBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶を、
圧電材料としての観点から考えてみると、優れた圧電特
性と同時に、使用可能温度領域の広さと、鉛含有量の低
さを達成している点を長所として挙げることができる。
また、地球環境への負荷を軽減するために、近年、工業
製品における鉛使用量の削減が求められているが、本発
明のBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶について、現
在、圧電材料の主流となっているPZT多結晶と比較す
ると、組成の違いから、大幅に鉛の使用量を削減するこ
とができ、さらに圧電特性が著しく向上することによ
り、同一の効果を出現するのに必要な圧電材料の使用量
自体も大幅に削減できる。
【0032】
【発明の実施の形態】本発明のBaTiO3 −PbTi
3 系単結晶は、Pbの含有モル数がBaの含有モル数
よりも少ないBaTiO3 −PbTiO3 系圧粉体また
は焼結体を非溶融状態に保ったまま加熱することにより
単結晶化されたものである。さらに、本発明のBaTi
3 −PbTiO3 系単結晶は、前記BaTiO3 −P
bTiO3 系圧粉体または焼結体の含有する元素のモル
比を0.9800<(Ba+Pb)/Ti<1.000
0の範囲とし、前記圧粉体または焼結体を非溶融状態に
保ったまま加熱することにより単結晶化することが好ま
しい。より好ましくは、前記圧粉体または焼結体の含有
する元素のモル比を0.9900<(Ba+Pb)/T
i<1.0000の範囲とし、さらに好ましくは0.9
950≦(Ba+Pb)/Ti≦0.9999の範囲と
する。
【0033】本発明のBaTiO3 −PbTiO3 系単
結晶における結晶成長の再現性向上の効果は、BaTi
3 のみの組成の圧粉体または焼結体に対して本発明の
製造方法を適用しても発現されない。そのメカニズムの
確認は行われていないが次のように推測される。BaT
iO3 −PbTiO3 系圧粉体または焼結体を非溶融状
態に保ったまま加熱すると、前記圧粉体または焼結体の
表面では鉛あるいは鉛化合物が蒸発して外部へ拡散す
る。圧粉体または焼結体の表面では鉛が不足するため、
これを補うため圧粉体または焼結体の内部から表面への
鉛の移動が起きる。このときに圧粉体または焼結体の内
部の結晶粒界が移動し易くなり、安定した結晶成長が起
きるものと考えられる。
【0034】本発明のBaTiO3 −PbTiO3 系単
結晶は、出発物質であるBaTiO 3 −PbTiO3
圧粉体または焼結体のPbTiO3 の含有率が45モル
%以下であることが好ましい。前記圧粉体または焼結体
のPbTiO3 の含有率を45モル%以下とすることに
より、単結晶の成長速度がより促進されるとともに、よ
り安定的に単結晶物質を作製することができる。その結
果得られるBaTiO 3 −PbTiO3 系単結晶の組成
は出発物質であるBaTiO3 −PbTiO3系圧粉体
または焼結体の組成とほぼ同一となる。より好ましいP
bTiO3 の含有量は、30モル%以下であり、さらに
好ましくは25モル%以下である。なお、PbTiO3
の含有量が多過ぎると、BaTiO3 −PbTiO3
圧粉体、焼結体または単結晶からの鉛の蒸発が顕著にな
る。これによって、得られるBaTiO3 −PbTiO
3 系単結晶の組成が変動して目的とする組成からのずれ
を生じる。さらに得られるBaTiO3 −PbTiO3
系単結晶がポ−ラスなものとなりやすい。この鉛の蒸発
を抑制するには圧力容器の利用が不可欠であり、製造コ
ストアップに導かれる欠点を伴う。また、前記BaTi
3 −PbTiO3系圧粉体または焼結体におけるPb
TiO3 の最少含有量としては、より好ましくは0.0
1モル%以上であり、さらに好ましくは0.02モル%
以上である。
【0035】また、本発明のBaTiO3 −PbTiO
3 系単結晶は、BaTiO3 −PbTiO3 系圧粉体ま
たは焼結体を、好ましくは1200℃以上1400℃以
下の温度範囲で加熱することにより単結晶化される。こ
のように所定の温度範囲で加熱することによって速い結
晶成長速度で製造することができる。
【0036】また、本発明のBaTiO3 −PbTiO
3 系単結晶は、BaTiO3 系単結晶あるいはBaTi
3 −PbTiO3 系単結晶等の他の単結晶を種結晶と
し、BaTiO3 −PbTiO3 系圧粉体または焼結体
に前記種結晶を接合し、これを加熱保持することによっ
てさらに安定化した結晶成長により製造することができ
る(なお、多結晶体と種結晶は、結晶構造が一致してい
ることが前提であり、多結晶体と種結晶との格子定数お
よび熱膨張係数の双方が±15%以内であることが好ま
しい)。図1の(a)〜(d)に、BaTiO3 −Pb
TiO3 系圧粉体または焼結体3に種結晶として所定の
単結晶1を接合し、非溶融状態で加熱することにより、
本発明のBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶を製造し
た時の結晶成長の様子を示す。図1の(b)に見られる
ように、BaTiO3 −PbTiO3 系圧粉体または焼
結体3の種結晶1との接合部分、特に周辺領域におい
て、結晶成長が著しく起こっていることがわかる。これ
は、前記周辺領域において特に鉛の移動が激しく起こっ
ているためと考えられ、前述の結晶成長のメカニズムを
支持する現象であると考えられる。代表的に図1の
(c)において、符号5が単結晶化した部分、符号7が
多結晶体の部分を示す。
【0037】このように種結晶を用いた場合、BaTi
3 −PbTiO3 系単結晶の結晶方位を接合した種結
晶の配向に一致させることができる。さらに、本発明の
BaTiO3 −PbTiO3 系単結晶は、BaTiO3
系単結晶あるいはBaTiO 3 −PbTiO3 系単結晶
を種結晶とし、平均粒径20μm以下の結晶粒から構成
され、相対密度95%以上であるBaTiO3 −PbT
iO3 系焼結体を前記種結晶の{100}面、{11
0}面または{111}面と接合し、非溶融状態に保っ
たまま加熱することにより単結晶化してもよい。ここで
種結晶として用いられるBaTiO3 系単結晶あるいは
BaTiO3 −PbTiO3 系単結晶は、本発明のBa
TiO3 −PbTiO3 系単結晶の製造方法で作製され
たもの、あるいは、一般的な焼結法によって作製された
ものを用いても良いし、フラックス法やTSSG法によ
って作製されたものを用いても良い。また、理由は明ら
かではないが、本発明のBaTiO3 −PbTiO3
単結晶の製造方法で作製された単結晶を種結晶として用
いた場合、フラックス法やTSSG法によって作製され
た単結晶を用いるよりも、より品質の優れたBaTiO
3 −PbTiO3 系単結晶を作製することができる。
【0038】本発明のBaTiO3 −PbTiO3 系単
結晶の製造方法は、BaTiO3 −PbTiO3 系圧粉
体または焼結体を、好ましくは鉛雰囲気中で非溶融状態
に保ったまま加熱し単結晶化する工程を含むものであ
る。鉛雰囲気を形成するための方法の一つとしては、B
aTiO3 −PbTiO3 系圧粉体または焼結体を加熱
する環境において、例えばPZT、PbTiO3 などの
鉛含有化合物を共存させて、前記鉛含有化合物から鉛あ
るいは酸化鉛を蒸発させる方法が挙げられる。このこと
により、育成中のBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶
の組成変動(特にBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶
からの鉛の蒸発)を抑制できて、さらに結晶化速度を上
げることができる。
【0039】しかしながら、PbTiO3 の含有率が3
0モル%を超えるBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶
を作製する場合、特に鉛の蒸発が顕著になり、目的組成
からの組成変動を生じ易くなる。さらに得られる単結晶
の気孔含有率が高くなりやすい。鉛の蒸発を抑制するに
は前述した様な鉛雰囲気下で加熱工程を行うだけでは不
十分となることが多い。例えば、圧力容器内で1気圧を
超える圧力下での加熱工程を行うことが好ましい。HI
P等の圧力容器を用いた焼結法による単結晶合成は比較
的長い熱処理時間(10時間以上)が必要であり、常圧
でのそれと比べて生産性とコストの面では不利となる。
本発明のBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶は、転位
密度が102 個/cm2 以上106 個/cm2 以下であ
り、気孔含有率が1体積ppm以上5体積%以下である
ことが望ましい。これにより、本発明の単結晶は、誘電
損失が小さく、電気機械結合係数の大きいものになる。
例えば誘電損失としては1%以下、電気機械結合係数が
85%を超えるものとなる。
【0040】また、本発明のBaTiO3 −PbTiO
3 系単結晶は、1mm3 以上の体積を有することが望ま
しい。1mm3 以上の体積を有することより、大面積化
などにより各種多様なサイズのデバイスに対応すること
が可能となる。
【0041】また、本発明の製造方法においてBaTi
3 −PbTiO3 系圧粉体または焼結体を作製するた
めに使用する原料粉末は、特に限定されるものではない
が、例えば以下のものを挙げることができる。固相反応
を用いる場合は、1)BaO(BaCO3 や蓚酸バリウ
ムの熱分解により得られる)とTiO2 との混合粉末の
仮焼によりBaTiO3 粉末を作製し、PbOとTiO
2 との混合粉末の仮焼によりPbTiO3 粉末を作製し
て、これらの粉末を混合したもの、さらには、2)Ba
O、PbOおよびTiO2 粉末から直接作製されたBa
TiO3 −PbTiO3 系粉末などが挙げられる。
【0042】また、共沈法や蓚酸法などの湿式法や水熱
法により得られたBaTiO3 粉末やPbTiO3 粉末
を混合したものや、共沈法や蓚酸法などの湿式法や水熱
法により得られたBaTiO3 −PbTiO3 系粉末な
どを挙げることができる。原料粉末は、その一次粒子の
平均粒径が0.05〜5μmの範囲にあることが望まし
い。また、前述したように、この原料粉末から得られて
出発物質となるBaTiO3 −PbTiO3 系圧粉体ま
たは焼結体の含有する元素のモル比が0.9800<
(Ba+Pb)/Ti<1.0000となるように原料
粉末を調整しておくことが好ましい。また、より好まし
くはBaTiO3 −PbTiO3 系圧粉体または焼結体
の含有する元素のモル比が0.9900<(Ba+P
b)/Ti<1.0000となるように原料粉末を調整
するのがよく、さらに好ましくは0.9950≦(Ba
+Pb)/Ti≦0.9999となるようにする。組成
調整された粉末は、一軸プレスや冷間静水圧プレス等の
一般的な成形を行って圧粉体とする。得られた圧粉体は
通常の条件で焼結することにより焼結体としてもよい。
これらの圧粉体または焼結体を非溶融状態で加熱するこ
とによって、BaTiO 3 −PbTiO3 系単結晶であ
る平均粒径1mm以上の粗大結晶粒が得られる。非溶融
状態での加熱は、より好ましくは1200℃以上140
0℃以下の温度範囲で行われる。さらに上述の方法で得
られた単結晶を種結晶として用いることで、より大きな
BaTiO3 −PbTiO3 系単結晶を比較的容易に作
製することもできる。
【0043】上述のように、より大きなBaTiO3
PbTiO3 系単結晶を容易に作製するためには、他の
単結晶を種結晶として用いることが好ましい。出発物質
であるBaTiO3 −PbTiO3 系圧粉体または焼結
体と種結晶を接合し、これを加熱保持することで単結晶
化を行う。好ましい種結晶としては、BaTiO3 系単
結晶、BaTiO3 −PbTiO3 系単結晶を挙げるこ
とができる。好ましい種結晶の作製方法としては、本発
明のBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶の製造方法、
一般的な焼結法、あるいはTSSG法、フラックス法な
どの溶融凝固法を挙げることができる。特に、本発明の
BaTiO3 −PbTiO3 系単結晶の製造方法による
単結晶を種結晶として用いると、得られるBaTiO3
−PbTiO3 系単結晶の結晶欠陥を抑制できる傾向に
あり好ましい。種結晶は{100}面、{110}面ま
たは{111}面を切り出して、これを研磨して接合面
とする。
【0044】また、種結晶を用いて単結晶化を行う場
合、単結晶化させるBaTiO3 −PbTiO3 焼結体
の含有する元素のモル比は0.9800<(Ba+P
b)/Ti<1.0000となるように調整することが
好ましい。より好ましくは0.9900<(Ba+P
b)/Ti<1.0000となるように調整し、さらに
好ましくは0.9950≦(Ba+Pb)/Ti≦0.
9999となるようにする。さらに、焼結体は、結晶粒
の平均粒径が20μm以下、相対密度が95%以上とな
るまで焼結しておく。焼結方法としては特に制限される
ものではないが、例えば、常圧焼結、ホットプレス、H
IP(熱間等方圧プレス)等が挙げられる。なお、焼結
体の気孔含有率が5体積%を超えると結晶成長して得ら
れた単結晶中の気孔含有率も増大し、機械的強度が低下
し好ましくない。特に鉛の含有量が多い組成において
は、単結晶育成途中の鉛の蒸発により、気孔含有率が大
きくなりやすい。したがって、この場合は特に焼結体の
気孔含有率を5体積%以下に留めることが好ましい。こ
の焼結体および種結晶の接合面は、表面粗度Ra=1.
0nm以下、平坦度λ(λ=633nm)以下にそれぞ
れ精密研磨することが好ましい。焼結体の研磨面と種結
晶の研磨面は直接接触させてもよいし、その接触面に不
純物とならないBa,Pb,Ti成分を含む有機酸また
は無機酸などを塗布してから接触させてもよい。また、
互いの研磨面を接触させた種結晶と焼結体は、自重ある
いは9.8MPa程度以下の加重下で一定時間加熱する
ことにより接合することが好ましい。さらに、接合工程
での試料表面近傍からの鉛の蒸発を抑制するためには、
鉛雰囲気中で接合を行うことが好ましい。
【0045】本発明のBaTiO3 −PbTiO3 系単
結晶体は、結晶成長を促進させる目的で、ペロブスカイ
トABO3 構造のAサイトやBサイトに置換不能または
極めて置換し難い微量の添加物を加えたり、ペロブスカ
イトABO3 構造のAサイトあるいはBサイトを他の元
素で置換したり、サイト置換の目的で他のペロブスカイ
ト構造の第三成分を固溶させてもよい。これらの量は特
に制限されるものではないが、好ましい量としては、微
量の添加物としては10重量%以下、Aサイトあるいは
Bサイトを置換する元素としては各サイトの10モル%
以下、固溶させる第三成分としては全成分の10モル%
以下である。これらの成分の種類は特に制限されるもの
ではないが、好ましくは、Na,K,Ca,Cr,C
o,Bi,Sr,La,Zr,Sn,Mg,Mn,Z
n,Nb,Ta,Niなどの元素(イオン)、あるいは
これらの元素を含む酸化物や複合酸化物を挙げることが
できる。また、結晶成長促進のための不純物成分は、結
晶成長界面の移動とともに極一部は不純物として単結晶
内の残存するが、大半の成分は成長した結晶の末端部に
移動するので、実用上は問題とならない。
【0046】ところで、圧粉体、焼結体あるいは単結晶
におけるBa,Pb,Ti等の元素分析は、蛍光X線分
析、ICP(発光プラズマ)分析、ICP−MASS
(発光プラズマ−質量)分析等の分析方法に基づいて、
それぞれ専用の分析装置を用いて行うことができる。ま
た、単結晶の結晶性や配向性は、後述する転位密度の測
定でも用いられているエッチピット像の観察や、X線回
折のin−plane測定およびout−of−pla
ne測定、電子線回折の測定等の方法によって確認する
ことができる。
【0047】焼結体および育成した単結晶中の気孔含有
率に関しては、その値が0.1体積%程度以上の場合
は、鏡面研摩した後の試料表面に露出した気孔量(気孔
面積)を反射顕微鏡、SEM(走査型電子顕微鏡)等で
測定し、測定面積との比から算出できる。また、0.1
体積%程度以下の場合はこの方法では精度に欠けるの
で、数10μm厚さ程度の薄片を作製し、透過顕微鏡の
観察視野内に存在する気孔サイズと数を測定し、観察容
積との比から求める。
【0048】また、単結晶中の転位は、単結晶の結晶面
をHCl−HF溶液等の腐食剤にて腐食することによっ
て食凹(エッチピット=転位)として顕微鏡等を用いて
観察することができる。具体的には、数100〜100
0μm2 に発生した転位(エッチピット)数をカウント
し、これを1cm2 当たりに換算することで転位密度を
求めることができる。
【0049】
【実施例】以下に具体的な実施例を挙げて本発明をさら
に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるもの
ではない。
【0050】(実施例1)TiO2 (26.7557
g),PbO(0.7440g)およびBaCO3(6
5.1209g)を湿式混合し、乾燥後1100℃で5
時間仮焼して粉砕するとともにこれを成形(直径16m
mのディスク形状)した。このとき形成した圧粉体にお
いて、含有する元素のモル比は(Ba+Pb)/Ti=
0.9950となっていた。これを1360℃で10時
間焼結して焼結体を得た。この焼結体は平均粒径約2.
0mmの粗大な結晶粒から構成されており、焼結体の組
成は99.0モル%BaTiO3 −1.0モル%PbT
iO3 となっていた。この焼結体から種結晶として粗大
結晶粒を取り出し、この結晶粒の(100)面を切り出
して、表面粗度Ra=0.2nm、平坦度λ/2に仕上
げた。一方、同じ配合を直径10mm×厚さ15mmの
ディスク形状に成形し、1280℃で3時間焼結して相
対密度97.3%の99.0モル%BaTiO3 −1.
0モル%PbTiO3 焼結体を得た。この焼結体を構成
する結晶粒の平均粒子径は約10μmであり、その組成
において(Ba+Pb)/Ti=0.9950となって
いた。この焼結体の端面を同じく表面粗度Ra=0.2
nm、平坦度λ/2に鏡面仕上げし、前述の種結晶と焼
結体の両研磨面をアセトン洗浄した後、両者を機械的に
接合させた。この状態を維持しながら、酸素雰囲気下1
360℃で40時間保持して、非溶融下で単結晶化を行
った。単結晶育成においては試料にマグネシア坩堝を被
せ、Pbの蒸発を抑制した。育成処理後は単結晶と接合
した面から約12mmまでが単結晶化していた。
【0051】この結果から、育成速度は0.3mm/h
であり、従来の溶融凝固法の育成速度より遥かに高速で
育成できることが判明した。また、種結晶を用いた焼結
法により得られた99.0モル%BaTiO3 −1.0
モル%PbTiO3 単結晶の気孔含有率は0.9体積%
であり、HCl−HF溶液中でエッチングして転位密度
を調べたところ、1×103 /cm2 であった。
【0052】(実施例2)TiO2 (26.6486
g),PbO(5.2080g)およびBaCO3(6
1.1742g)を湿式混合し、乾燥後1150℃で5
時間仮焼して粉砕するとともにこれを成形(直径20m
mのディスク形状)した。このとき形成した圧粉体にお
いて、含有する元素のモル比は(Ba+Pb)/Ti=
0.9990となっていた。これを1350℃で10時
間焼結して焼結体を得た。この焼結体は平均粒径約3.
0mmの粗大な結晶粒から構成されており、焼結体の組
成は93.0モル%BaTiO3 −7.0モル%PbT
iO3 となっていた。この焼結体から種結晶として粗大
結晶粒を取り出し、この結晶粒の(110)面を切り出
して、表面粗度Ra=0.3nm、平坦度λ/4に仕上
げた。
【0053】一方、同じ配合を直径10mm×厚さ20
mmのディスク形状に成形し、1250℃で3時間焼結
して相対密度99.1%の93.0モル%BaTiO3
−7.0モル%PbTiO3 焼結体を得た。焼結体を構
成する結晶粒の平均粒径は約8μmであった。この焼結
体の含有する元素のモル比は(Ba+Pb)/Ti=
0.9990となっていた。この焼結体の端面を表面粗
度Ra=0.2nm、平坦度λ/2に鏡面仕上げし、前
述の種結晶と焼結体の両研磨面をアセトン洗浄した後、
接合界面にBaCl3 とTiOCl2 の混合溶液(混合
比1:0.5の溶液)を塗り接合させた。この状態を維
持しながら、酸素雰囲気下1370℃で50時間保持し
て、非溶融下で単結晶化を行った。育成処理後は種結晶
と接合した面から約18mmまでが単結晶化していた。
【0054】この結果から、育成速度は0.36mm/
hであり、従来の溶融凝固法の育成速度より遥かに高速
で育成できることが判明した。また、種結晶を用いた焼
結法により得られた93.0モル%BaTiO3 −7.
0モル%PbTiO3 単結晶の気孔含有率は0.8体積
%であり、HCl−HF溶液中でエッチングして転位密
度を調べたところ、5×102 /cm2 であった。
【0055】(実施例3)TSSG法で作製された市販
のBaTiO3 単結晶を方位(100)面で5×5×
0.5mmに切り出し、この面を表面粗度Ra=0.4
nm、平坦度λ/6に研磨した。一方、水熱法で作製し
たBaTiO3 (Ba/Ti=0.9996)粉末と固
相法で作成したPbTiO3 (Pb/Ti=1.000
0)粉末を99.8モル対0.2モルの割合で混合しポ
ットミル粉砕するとともにこれを成形(直径16mmの
ディスク形状)して、1280℃で3時間焼結して相対
密度98.9%の焼結体を作製した。得られた99.8
モル%BaTiO3−0.2モル%PbTiO3焼結体
は、その含有する元素のモル比が、(Ba+Pb)/T
i=0.9996となっていた。この99.8モル%B
aTiO3 −0.2モル%PbTiO3 焼結体を構成す
る結晶粒の平均粒径は約12μmであった。この焼結体
の端面を表面粗度Ra=0.4nm、平坦度λ/6に鏡
面仕上げし、前述の種結晶と焼結体の両研磨面をアセト
ン洗浄した後、両者を機械的に接合させた。この状態を
維持しながら、酸素雰囲気下1380℃で30時間保持
して、非溶融下で単結晶化を行った。育成処理後は種結
晶と接合した面から約11mmまでが単結晶化してい
た。
【0056】この結果から、育成速度は0.37mm/
hであり、従来の溶融凝固法の育成速度より遥かに高速
で育成できることが判明した。また、種結晶を用いた焼
結法により得られた99.8モル%BaTiO3 −0.
2モル%PbTiO3 単結晶の気孔含有率は0.7体積
%であり、HCl−HF溶液中でエッチングして転位密
度を調べたところ、5×103 /cm2 であった。
【0057】(実施例4)実施例2と同一条件で焼結法
による単結晶育成を行った。但し、本実施例では150
×150×150mmの有効容積をもつモリブデンシリ
サイド発熱体の電気炉を用い、その中に試料を30個と
直径20mmのPZT焼結体を6個挿入して、100%
酸素雰囲気下で育成を行った。処理後のサンプルは長さ
18mm付近まで全て単結晶化していた。概略の生産速
度を算定すると、直径16mmで長さ18mmの試料
(容積3.6cm3 )が30個出来ているので、108
cm3/炉になる。育成に要した時間が50時間である
ので、時間当たり2.16cm 3 となり、生産性は極め
て高い。
【0058】(実施例5)1150℃で5時間仮焼して
粉砕することにより得られた固相法のBaTiO 3 (B
a/Ti=0.9973)粉末と湿式法で作製したPb
TiO3 (Pb/Ti=1.0000)粉末を75.0
モル対25.0モルの割合で湿式混合し、これを成形
(直径30mmのディスク形状)した。このとき成形し
た圧粉体において、含有する元素のモル比は(Ba+P
b)/Ti=0.9998となっていた。これを132
0℃で50時間焼結して焼結体を得た。この焼結体は粒
径約1.10mmの粗大な結晶粒から構成されており、
焼結体の組成は75.0モル%BaTiO3 −25.0
モル%PbTiO3 となっていた。この焼結体から7
5.0モル%BaTiO3 −25.0モル%PbTiO
3 粗大結晶粒(単結晶)を取り出した。
【0059】このように焼結法により得られた75.0
モル%BaTiO3 −25.0モル%単結晶の気孔含有
率は3.2体積%であり、また、HCl−HF溶液中で
エッチングして転位密度を調べたところ、1×102
cm2 であり、結晶欠陥の少ないものであった。
【0060】(実施例6)実施例5と同様の方法で作製
したBaTiO3 (Ba/Ti=0.9973)粉末と
PbTiO3 (Pb/Ti=1.0000)粉末を7
5.0モル対25.0モルの割合で湿式混合し、これを
成形(直径20mmのディスク形状)した。このとき成
形した圧粉体において、含有する元素のモル比は(Ba
+Pb)/Ti=0.9998となっていた。これを1
190℃で5時間焼結した。この焼結体の組成は75.
0モル%BaTiO3 −25.0モル%PbTiO3
あり、相対密度は97.8%となっていた。この焼結体
は平均粒径約10μm結晶粒から構成されていた。この
焼結体の端面を表面粗度Ra=0.2nm、平坦度λ/
6に加工した。次に、種結晶として用いる溶融凝固法に
よるBaTiO3 単結晶の(100)端面を同一の精度
に加工した。前記焼結体と前記種結晶を両研摩面で接触
させ、9.8MPaの圧力をかけ1200℃で1時間の
接合を行った。接合した試料とともに30.0モル%B
aTiO3 −70.0モル%PbTiO 3 焼結体をセッ
ター上に置き、MgO坩堝を被せることで鉛雰囲気を形
成し1280℃、30時間で単結晶化を行った。育成処
理後は種結晶と接合した面から約14mmまでが単結晶
化していた。
【0061】この結果から、育成速度は0.47mm/
hであり、従来の溶融凝固法の育成速度より高速で育成
できた。焼結法により得られた75.0モル%BaTi
3−25.0モル%PbTiO3 単結晶の気孔含有率
は2.1体積%であり、またHCl−HF溶液中でエッ
チングして転位密度を調べたところ、5×102 /cm
2 という結晶欠陥の少ないものであった。
【0062】(実施例7)TiO2 (26.6753
g),PbO(5.2080g)およびBaCO3(6
1.1742g) を湿式混合し、乾燥後1150℃で
5時間仮焼して粉砕するとともにこれを成形(直径20
mmのディスク形状)した。この圧粉体の含有する元素
のモル比は(Ba+Pb)/Ti=0.9980となっ
ていた。これを1350℃で10時間焼結した。得られ
た焼結体は平均粒径約3.0mmの粗大な結晶粒から構
成されており、焼結体の組成は93.0モル%BaTi
3 −7.0モル%PbTiO3 となっていた。この焼
結体から種結晶として粗大結晶粒を取り出し、この結晶
粒の(110)面を切り出して表面粗度Ra=0.3n
m、平坦度λ/4に仕上げた。
【0063】一方、同じ配合を直径10mm×厚さ20
mmのディスク形状に成形し、1250℃で3時間焼結
して相対密度99.1%の93.0モル%BaTiO3
−7.0モル%PbTiO3 を得た。この焼結体を構成
する結晶粒の平均粒子径は約7μmであり、この焼結体
の含有する元素のモル比は(Ba+Pb)/Ti=0.
9980となっていた。この焼結体の端面を表面粗度R
a=0.2nm、平坦度λ/2に鏡面仕上げし、前述の
種結晶とこの焼結体の両研磨面をアセトン洗浄した後、
接合界面にBaCl3 とTiOCl2 の混合溶液(混合
比1:0.5の溶液)を塗り接合させた。試料とPZT
焼結体を各1個をセッター上に置き、さらにMgO坩堝
を被せることによってPbを含む雰囲気を形成した。こ
の状態を維持しながら1370℃で20時間保持して、
非溶融下で単結晶化を行った。育成処理後は単結晶と接
合した面から約18mmまでが単結晶化していた。
【0064】この結果から、育成速度は0.90mm/
hであり、実施例2で示したものよりさらに高速育成で
きることが判明した。また、焼結法により得られた9
3.0モル%BaTiO3 −7.0モル%PbTiO3
単結晶は、試料表層部のPb濃度が中心部のPb濃度と
ほとんど差が無く、試料全体が均一な組成的となってい
ることを確認した。作製した93.0モル%BaTiO
3 −7.0モル%PbTiO3 単結晶の気孔含有率は
0.4体積%であり、またHCl−HF溶液中でエッチ
ングして転位密度を調べたところ、5×102 /cm2
であった。
【0065】(実施例8)実施例3と同様にTSSG法
で作製した市販のBaTiO3 単結晶を方位(111)
面で5×5×0.5mmに切り出し、この面を表面粗度
Ra=0.3nm、平坦度λ/4に研磨して種結晶とし
た。一方、蓚酸塩法で作製したBaTiO 3 (Ba/T
i=0.9993)粉末と固相法で作成したPbTiO
3 (Pb/Ti=0.9960)粉末を93.2モル対
6.8モルの割合で混合しポットミル粉砕するとともに
これを成形(直径16mmのディスク形状)して、12
00℃で1時間ホットプレス焼結して相対密度99.4
%の焼結体を作製した。得られた焼結体の組成は93.
2モル%BaTiO3 −6.8モル%PbTiO3 であ
った。焼結体の含有する元素のモル比は(Ba+Pb)
/Ti=0.9991となっており、焼結体は平均粒子
径約2μmの結晶粒で構成されていた。焼結体の端面を
表面粗度Ra=0.3nm、平坦度λ/4に鏡面仕上げ
し、前述の種結晶と焼結体の両研磨面をアセトン洗浄し
た後、両者を機械的に接合させた。接合した試料とPZ
T焼結体を各1個をセッター上に置き、さらにMgO坩
堝を被せることによってPbを含む雰囲気を形成した。
この状態を維持しながら、酸素雰囲気下1370℃で2
0時間保持して、非溶融下で単結晶化を行った。育成処
理後は種結晶と接合した面から約14mmまでが単結晶
化していた。
【0066】この結果から、育成速度は0.70mm/
hであり、従来の溶融凝固法の育成速度より遥かに高速
で育成できることが判明した。また、種結晶を用いた焼
結法により得られた93.2モル%BaTiO3 −6.
8モル%PbTiO3 系単結晶の気孔含有率は0.2体
積%であり、また、HCl−HF溶液中でエッチングし
て転位密度を調べたところ、1×103 /cm2 であっ
た。
【0067】(実施例9)実施例3と同様にTSSG法
で作製した市販のBaTiO3 単結晶を方位(100)
面で5×5×0.5mmに切り出し、この面を表面粗度
Ra=0.3nm、平坦度λ/4に研磨して種結晶とし
た。一方、蓚酸塩法で作製したBaTiO 3 (Ba/T
i=0.9990)粉末と固相法で作成したPbTiO
3 (Pb/Ti=0.9980) 粉末を90.7モル
対9.3モルの割合で混合しポットミル粉砕するととも
にこれを成形(直径16mmのディスク形状)して、1
200℃で1時間O2 −HIP(雰囲気は20%O2
圧力98MPa)焼結して相対密度99.96%の9
0.7モル%BaTiO3 −9.3モル%PbTiO3
焼結体を作製した。得られた焼結体は平均粒径約1μm
の結晶粒で構成されていた。この焼結体の含有する元素
のモル比は(Ba+Pb)/Ti=0.9989となっ
ていた。焼結体の端面を表面粗度Ra=0.3nm、平
坦度λ/4に鏡面仕上げし、前述の種結晶と焼結体の両
研磨面をアセトン洗浄した後、両者を機械的に接合させ
た。接合した試料とPZT焼結体を各1個をセッター上
に置き、さらにMgO坩堝を被せることによってPbを
含む雰囲気を形成した。この状態を維持しながら、酸素
雰囲気下1370℃で19時間保持して、非溶融下で単
結晶化を行った。育成処理後は種結晶と接合した面から
約18mmまでが単結晶化していた。
【0068】この結果から、育成速度は0.95mm/
hであり、従来の溶融凝固法の育成速度より遥かに高速
で育成できることが判明した。また、種結晶を用いた焼
結法により得られたBaTiO3 −PbTiO3 単結晶
の気孔含有率は0.0003体積%であり、試料をHC
l−HF溶液中でエッチングして転位密度を調べたとこ
ろ、1×103 /cm2 であった。
【0069】(実施例10)実施例3と同様にTSSG
法で作製された市販のBaTiO3 単結晶を方位(10
0)面で5×5×0.5mmに切り出し、この面を表面
粗度Ra=0.3nm、平坦度λ/4に研磨して種結晶
とした。一方、蓚酸塩法で作製したBaTiO3 (Ba
/Ti=0.9945)粉末と固相法で作成したPbT
iO3 (Pb/Ti=0.9952) 粉末を55.0
モル対45.0モルの割合で混合しポットミル粉砕する
とともにこれを成形(直径16mmのディスク形状)し
て、1200℃で1時間O2 −HIP(雰囲気は20%
2 ,圧力98MPa)焼結して相対密度99.96%
の55.0モル%BaTiO3 −45.0モル%PbT
iO3 焼結体を作製した。得られた焼結体は平均粒径約
3μmの結晶粒で構成されていた。この焼結体の含有す
る元素のモル比は(Ba+Pb)/Ti=0.9948
となっていた。焼結体の端面を表面粗度Ra=0.3n
m、平坦度λ/4に鏡面仕上げし、前記の種結晶と焼結
体の両研磨面をアセトン洗浄した後、両者を機械的に接
合させた。接合した試料とPZT焼結体を各1個をセッ
ター上に置き、さらにMgO坩堝を被せることによって
Pbを含む雰囲気を形成した。この状態を維持しなが
ら、酸素雰囲気下1360℃で20時間保持して、非溶
融下で単結晶化を行った。育成処理後は種結晶と接合し
た面から約13mmまでが単結晶化していたが、形成さ
れた単結晶中の気孔含有率は8.9体積%となり、ポー
ラスで利用できる状態でなかった。
【0070】この結果を基に、育成雰囲気を20%O2
−80%Ar組成でその圧力を50気圧として前記の種
結晶−焼結体の接合試料を1350℃で24時間保持し
て、非溶融下で熱処理を行った。圧力下で処理した後の
試料は、種結晶と接合した面から約15mmまでが単結
晶化しており、育成速度は0.63mm/hであり、従
来の溶融凝固法の育成速度より遥かに高速で育成できる
ことが判明した。また、種結晶を用いた焼結法により得
られた55.0モル%BaTiO3 −45.0モル%P
bTiO3 単結晶の気孔含有率は5.1体積%に低減さ
れた。試料をHCl−HF溶液中でエッチングして転位
密度を調べたところ1×104 /cm2であった。
【0071】(実施例11)TiO2 (26.7288
g),PbO(0.3720g)およびBaCO3(6
5.4498g)を湿式混合し、乾燥後1100℃で5
時間仮焼して粉砕するとともにこれを成形(直径20m
mのディスク形状)した。このとき形成した圧粉体にお
いて、含有する元素のモル比は(Ba+Pb)/Ti=
0.9960となっていた。これを1330℃で10時
間焼結して焼結体を得た。この焼結体は平均粒径約2.
6mmの粗大な結晶粒から構成されており、焼結体の組
成は99.5モル%BaTiO3 −0.5モル%PbT
iO3 となっていた。この焼結体から種結晶として粗大
結晶粒を取り出し、この結晶粒の(001)面を切り出
して表面粗度Ra=0.2nm、平坦度λ/2に仕上げ
た。また、この粗大結晶粒について電子線回折像の測定
を行い、非常に結晶方位の揃った単結晶であることを確
認した。この電子線回折像を図4に示す。
【0072】一方、同じ配合を直径10mm×厚さ20
mmのディスク形状に成形し、1250℃で3時間焼結
して相対密度96.8%の99.5モル%BaTiO3
−0.5モル%PbTiO3 焼結体を得た。焼結体を構
成する結晶粒の平均粒径は約6μmであった。この焼結
体の含有する元素のモル比は(Ba+Pb)/Ti=
0.9960となっていた。この焼結体の端面を表面粗
度Ra=0.2nm、平坦度λ/2に鏡面仕上げし、前
述の種結晶と焼結体の両研磨面をアセトン洗浄した後、
接合界面にBaCl3 とTiOCl2 の混合溶液(混合
比1:0.5の溶液)を塗り接合させた。この状態を維
持しながら、酸素雰囲気下1300℃で30時間保持し
て、非溶融下で単結晶化を行った。育成処理後は種結晶
と接合した面から約14mmまでが単結晶化していた。
【0073】この結果から、育成速度は0.47mm/
hであり、従来の溶融凝固法の育成速度より遥かに高速
で育成できることが判明した。また、種結晶を用いた焼
結法により得られた99.5モル%BaTiO3 −0.
5モル%PbTiO3 単結晶の気孔含有率は0.8体積
%であり、HCl−HF溶液中でエッチングして転位密
度を調べたところ、2×102 /cm2 であった。この
サンプルに関して行ったX線回折の測定結果を図3の
(a)(単結晶化前)および図3の(b)(単結晶化
後)に示す。(なお、図3の(b)の2θ=45°付近
にピ−クが2本見られるのは、タ−ゲットの固有X線が
Kα1 とKα2 に分離しているためである。)
【0074】(実施例12)実施例3と同様にTSSG
法で作製された市販のBaTiO3 単結晶を方位(00
1)面で5×5×0.5mmに切り出し、この面を表面
粗度Ra=0.3nm、平坦度λ/4に研磨して種結晶
とした。一方、蓚酸塩法で作製したBaTiO3 (Ba
/Ti=0.9945)粉末と固相法で作成したPbT
iO3 (Pb/Ti=0.9952) 粉末を70.0
モル対30.0モルの割合で混合しポットミル粉砕する
とともにこれを成形(直径16mmのディスク形状)し
て、1200℃で1時間O2 −HIP(雰囲気は20%
2 ,圧力98MPa)焼結して相対密度99.96%
の70.0モル%BaTiO3 −30.0モル%PbT
iO3 焼結体を作製した。得られた焼結体は平均粒径約
4μmの結晶粒で構成されていた。この焼結体の含有す
る元素のモル比は(Ba+Pb)/Ti=0.9947
となっていた。焼結体の端面を表面粗度Ra=0.3n
m、平坦度λ/4に鏡面仕上げし、前記の種結晶と焼結
体の両研磨面をアセトン洗浄した後、両者を機械的に接
合させた。接合した試料とPZT焼結体を各1個をセッ
ター上に置き、さらにMgO坩堝を被せることによって
Pbを含む雰囲気を形成した。この状態を維持しなが
ら、酸素雰囲気下1330℃で20時間保持して、非溶
融下で単結晶化を行った。育成処理後は種結晶と接合し
た面から約12mmまでが単結晶化していた。形成され
た単結晶中の気孔含有率は3.8体積%であった。試料
をHCl−HF溶液中でエッチングして転位密度を調べ
たところ7×103 /cm2 であった。
【0075】(実施例13)TiO2 (26.6246
g),PbO(3.7200g)およびBaCO3(6
2.4898g)を湿式混合し、乾燥後1100℃で5
時間仮焼して粉砕するとともにこれを成形(直径20m
mのディスク形状)した。このとき形成した圧粉体にお
いて、含有する元素のモル比は(Ba+Pb)/Ti=
0.9999となっていた。これを1300℃で10時
間焼結して焼結体を得た。この焼結体は平均粒径約2.
2mmの粗大な結晶粒から構成されており、焼結体の組
成は95.0モル%BaTiO3 −5.0モル%PbT
iO3 となっていた。この焼結体から種結晶として粗大
結晶粒を取り出し、この結晶粒の(111)面を切り出
して表面粗度Ra=0.3nm、平坦度λ/4に仕上げ
た。
【0076】一方、同じ配合を直径10mm×厚さ20
mmのディスク形状に成形し、1250℃で3時間焼結
して相対密度98.4%の95.0モル%BaTiO3
−5.0モル%PbTiO3 焼結体を得た。焼結体を構
成する結晶粒の平均粒径は約5μmであった。この焼結
体の含有する元素のモル比は(Ba+Pb)/Ti=
0.9999となっていた。この焼結体の端面を表面粗
度Ra=0.3nm、平坦度λ/4に鏡面仕上げし、前
述の種結晶と焼結体の両研磨面をアセトン洗浄した後、
接合界面にBaCl3 とTiOCl2 の混合溶液(混合
比1:0.5の溶液)を塗り接合させた。この状態を維
持しながら、酸素雰囲気下1350℃で20時間保持し
て、非溶融下で単結晶化を行った。育成処理後は種結晶
と接合した面から約12mmまでが単結晶化していた。
【0077】この結果から、育成速度は0.60mm/
hであり、従来の溶融凝固法の育成速度より遥かに高速
で育成できることが判明した。また、種結晶を用いた焼
結法により得られた95.0モル%BaTiO3 −5.
0モル%PbTiO3 単結晶の気孔含有率は0.5体積
%であり、HCl−HF溶液中でエッチングして転位密
度を調べたところ、5×102 /cm2 であった。
【0078】(実施例14)TiO2 (26.8908
g),PbO(3.7200g)およびBaCO3(6
2.4898g)を湿式混合し、乾燥後1100℃で5
時間仮焼して粉砕するとともにこれを成形(直径20m
mのディスク形状)した。このとき形成した圧粉体にお
いて、含有する元素のモル比は(Ba+Pb)/Ti=
0.9990となっていた。これを1300℃で10時
間焼結して焼結体を得た。この焼結体は平均粒径約2.
8mmの粗大な結晶粒から構成されており、焼結体の組
成は95.0モル%BaTiO3 −5.0モル%PbT
iO3 となっていた。この焼結体から種結晶として粗大
結晶粒を取り出し、この結晶粒の(001)面を切り出
して表面粗度Ra=0.3nm、平坦度λ/4に仕上げ
た。
【0079】一方、同じ配合を直径10mm×厚さ20
mmのディスク形状に成形し、1250℃で3時間焼結
して相対密度98.7%の95.0モル%BaTiO3
−5.0モル%PbTiO3 焼結体を得た。焼結体を構
成する結晶粒の平均粒径は約6μmであった。この焼結
体の含有する元素のモル比は(Ba+Pb)/Ti=
0.9990となっていた。この焼結体の端面を表面粗
度Ra=0.3nm、平坦度λ/4に鏡面仕上げし、前
述の種結晶と焼結体の両研磨面をアセトン洗浄した後、
接合界面にBaCl3 とTiOCl2 の混合溶液(混合
比1:0.5の溶液)を塗り接合させた。この状態を維
持しながら、酸素雰囲気下1350℃で30時間保持し
て、非溶融下で単結晶化を行った。育成処理後は種結晶
と接合した面から約7mmまでが単結晶化していた。
【0080】この結果から、育成速度は0.23mm/
hであり、従来の溶融凝固法の育成速度より遥かに高速
で育成できることが判明した。また、種結晶を用いた焼
結法により得られた95.0モル%BaTiO3 −5.
0モル%PbTiO3 単結晶の気孔含有率は0.6体積
%であり、HCl−HF溶液中でエッチングして転位密
度を調べたところ、1×104 /cm2 であった。
【0081】(実施例15)湿式法により作製したBa
TiO3 (Ba/Ti=0.9954)粉末とPbTi
3 (Pb/Ti=1.0000)粉末とCaTiO3
(Ca/Ti=1.0000)粉末を順に70.0:2
9.0:1.0のモル比で湿式混合し、これを成形(直
径20mmのディスク形状)した。このとき成形した圧
粉体において、含有する元素のモル比は(Ba+Pb)
/Ti=0.9868となっていた。これを1350℃
で10時間焼結して焼結体を得た。この焼結体は平均粒
径約3.3mmの粗大な結晶粒から構成されており、焼
結体の組成は70.0モル%BaTiO3 −29.0モ
ル%PbTiO3 −1.0モル%CaTiO3 となって
いた。この焼結体から種結晶として粗大結晶粒を取り出
し、この結晶粒の(001)面を切り出して表面粗度R
a=0.3nm、平坦度λ/4に仕上げた。
【0082】一方、同じ配合を直径10mm×厚さ20
mmのディスク形状に成形し、1250℃で3時間焼結
して相対密度98.9%の70.0モル%BaTiO3
−29.0モル%PbTiO3 −1.0モル%CaTi
3 焼結体を得た。焼結体を構成する結晶粒の平均粒径
は約6μmであった。この焼結体の含有する元素のモル
比は(Ba+Pb)/Ti=0.9868となってい
た。この焼結体の端面を表面粗度Ra=0.3nm、平
坦度λ/4に鏡面仕上げし、前述の種結晶と焼結体の両
研磨面をアセトン洗浄した後、9.8MPaの圧力をか
け1200℃で1時間の接合を行った。接合した試料と
ともにPZT焼結体をセッター上に置き、MgO坩堝を
被せることで鉛雰囲気を形成し1350℃、50時間で
単結晶化を行った。育成処理後は種結晶と接合した面か
ら約11mmまでが単結晶化していた。
【0083】この結果から、育成速度は0.22mm/
hであった。焼結法により得られた70.0モル%Ba
TiO3 −29.0モル%PbTiO3 −1.0モル%
CaTiO3 単結晶の気孔含有率は4.1体積%であ
り、またHCl−HF溶液中でエッチングして転位密度
を調べたところ、1×104 /cm2 であった。
【0084】(比較例1)TiO2 (27.1652
g),PbO(3.7200g)およびBaCO3(6
2.4898g)を湿式混合し、乾燥後1110℃で5
時間仮焼して粉砕するとともにこれを成形(直径16m
mのディスク形状)した。このとき形成した圧粉体にお
いて、含有する元素のモル比は(Ba+Pb)/Ti=
0.9800となっていた。これを1350℃で30時
間焼結して95.0モル%BaTiO 3 −5.0モル%
PbTiO3 焼結体を得た。この焼結体は平均粒径が僅
か50μmの結晶粒で構成されていて、種結晶として用
いるのに充分な大きさの単結晶を得ることができなかっ
た。このため、市販のTSSG法で育成されたBaTi
3 単結晶の(100)面に実施例3と同様の加工を行
って種結晶とした。
【0085】一方、同じ配合を直径10mm×厚さ10
mmのディスク形状に成形し、1250℃で3時間焼結
して相対密度98.1%の95.0モル%BaTiO3
−5.0モル%PbTiO3 焼結体を得た。焼結体を構
成する結晶粒の平均粒子径は約12μmであった。この
焼結体の含有する元素のモル比は(Ba+Pb)/Ti
=0.9800となっていた。この焼結体の端面を実施
例3と同じく表面粗度Ra=0.4nm、平坦度λ/6
に鏡面仕上げし、前記の種結晶と焼結体の両研磨面をア
セトン洗浄した後、接合界面に2NのHNO3 溶液を塗
り接合させた。この状態を維持しながら、酸素雰囲気下
1370℃で50時間保持して、非溶融下で単結晶化を
行った。
【0086】単結晶育成処理後は種結晶と接合した面か
ら僅か100μmまでしか結晶成長していなかった。こ
の結果から、育成速度は2×10-3mm/hであり、殆
ど単結晶化が進行しないことが判明した。
【0087】(比較例2)共沈法によるBaTiO3
(Ba/Ti=1.000)およびPbTiO3 (Pb
/Ti=1.0100)粉末を作製し、90.0モル対
10.0モルの割合で混合した。この混合粉末をポット
ミル中で粉砕するとともにこれを成形(直径16mmの
ディスク形状)した。このとき形成した圧粉体の含有す
る元素のモル比は(Ba+Pb)/Ti=1.0010
となっていた。これを1350℃で10時間焼結して9
0.0モル%BaTiO3 −10.0モル%PbTiO
3 焼結体を得た。この焼結体は平均粒径約3μmの微細
な結晶粒で構成されていて、種結晶として用いるのに充
分な大きさの単結晶を得ることができなかった。そこ
で、比較例1と同様にして市販のTSSG法で育成され
たBaTiO3 単結晶を種結晶とした。一方、同じ配合
を直径10mm×厚さ15mmのディスク形状に成形
し、1250℃で3時間焼結して相対密度97.8%の
90.0モル%BaTiO3 −10.0モル%PbTi
3 焼結体を得た。この焼結体の含有する元素のモル比
は(Ba+Pb)/Ti=1.0010となっていた。
この焼結体の端面を比較例1と同じく表面粗度Ra=
0.4nm、平坦度λ/6に鏡面仕上げし、前記の種結
晶と焼結体の両研磨面をアセトン洗浄した後、接合界面
にBaCl 3 とTiOCl2 の混合溶液 (混合比1:
1の溶液)を塗り接合させた。この状態を維持しなが
ら、酸素雰囲気下1390℃で30時間保持して、非溶
融下で単結晶化を行った。単結晶育成処理後は種結晶と
接合した面から1〜2グレイン幅程度(5〜10μm程
度)しか単結晶中に取り込まれておらず、単結晶化が殆
ど起こらなかった。
【0088】(比較例3)TSSG法によるBaTiO
3 −PbTiO3 単結晶の育成を行った。融液の原料と
して市販のBaTiO3 粉末、TiO2 粉末、およびP
bTiO3 粉末を用いた。原料粉末をBaTiO3 :T
iO2 :PbTiO3 =1:0.5:0.01のモル比
で用いて焼結体を作製し、この焼結体を白金坩堝に入れ
高周波誘導加熱により原料を溶融した。育成温度は14
40℃で白金ホルダ−に取りつけられた〈100〉方位
のBaTiO3 種結晶をこの融液中に浸漬し、30rp
mの回転を伴いながら0.4℃/hで温度降下させ、か
つ0.1mm/hの速度で結晶成長を行った。約200
時間後1330℃(共晶温度)付近に達したところで引
上げを終了した。得られた結晶は直径25mm、長さ1
6mm(容積7.9cm3 )であった。結晶内部には育
成途中のPb蒸発に伴う数μm〜数10μmのボイドが
多数形成された多孔体構造(気孔含有率は8体積%)で
あり、顕微鏡観察ではぺロブスカイト相以外のインクリ
ュージョンも多数発生していた。結晶中の転位密度は2
×106 /cm2 であり、本発明のBaTiO3 −Pb
TiO3系単結晶より転位密度の大きいものであった。
また、生産性は0.04cm3 /hであり、本発明のB
aTiO3 −PbTiO3 系単結晶と比べて約1/10
0にすぎない。
【0089】また、本発明者らは、本発明により得られ
たBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶の結晶性に関し
て測定を行ったところ、本発明のBaTiO3 −PbT
iO 3 系単結晶は、非常に結晶性の優れたものであるこ
とが判明した。X線回折、電子線回折からは配向が均一
に揃った単結晶であることを確認した。また、エッチピ
ット観察による転位密度の低さから、不純物あるいは格
子欠陥の少ない結晶であることが確認され、気孔含有率
も非常に少ないものであった。
【0090】さらに、本発明のBaTiO3 −PbTi
3 系単結晶の誘電性、圧電性、焦電性など、他の物性
についても検討を行ったところ、BaTiO3 −PbT
iO 3 系単結晶の物性に関しては、特に、圧電性におい
て優れた特性が見られた。それは、BaTiO3 多結晶
はもちろんのこと、現在、標準的に用いられているPZ
T(Pb(Ti,Zr)O3 )多結晶やTSSG法で作
製されたBaTiO3単結晶の特性を凌駕するものであ
った。
【0091】本発明のBaTiO3 −PbTiO3 系単
結晶を、圧電材料としての観点から考えてみると、優れ
た圧電特性と同時に、使用可能温度領域の広さと、鉛含
有量の低さを達成している点を長所として挙げることが
できる。BaTiO3 多結晶はキュリ−温度(Tc )が
約120℃であり、BaTiO3 多結晶を用いた素子に
おいてはキュリ−温度(Tc )により限定される使用可
能温度領域の狭さが従来から実用上の難点であった。こ
れに対し、本発明のBaTiO3 −PbTiO 3 系単結
晶は、BaTiO3 多結晶よりもキュリ−温度(Tc
が高く、使用可能温度領域をより広げることができる。
【0092】また、地球環境への負荷を軽減するため
に、近年、工業製品における鉛使用量の削減が求められ
ているが、本発明のBaTiO3 −PbTiO3 系単結
晶について、現在、圧電材料の主流となっているPZT
多結晶と比較すると、先ず、組成の違いから、大幅に鉛
の使用量を削減することができ、さらに圧電特性が著し
く向上することにより、同一の効果を出現するのに必要
な圧電材料の使用量自体も大幅に削減できることがわか
る。また、現在一般に鉛使用量削減を目的とするPZT
代替の有望材料としては、BaTiO3 多結晶、Bi
0.5 Na0.5 TiO 3 多結晶、(Na0.50.5 )Nb
3 多結晶が考えられているが、PZTが圧電定数d33
=300〜400(×10-12 C/N)、電気機械結合
係数k33=0.6〜0.7であるのに対して、BaTi
3 多結晶は、圧電定数d33=120(×10-12 C/
N)、電気機械結合係数k33=0.4〜0.5であり、
Bi0. 5 Na0.5 TiO3 多結晶は、圧電定数d33=1
10(×10-12 C/N)、電気機械結合係数k33
0.4〜0.6であって、その圧電特性について満足で
きるものではなかった。また、BaTiO3 −PbTi
3 系多結晶については、圧電材料として考えてみて
も、その圧電特性はPZT多結晶や本発明のBaTiO
3 −PbTiO3 系単結晶と比べて大きく劣るものであ
り、多結晶としては抜本的な圧電特性の向上はありえな
い。
【0093】また、上述した本発明の各実施例におい
て、特に実施例1、2、6によって作製されたBaTi
3 −PbTiO3 単結晶、および一般的なPZT焼結
体、BaTiO3 焼結体およびTSSG法で育成された
BaTiO3 単結晶の各圧電諸特性を表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】本発明のBaTiO3 −PbTiO3 系単
結晶においては、表1からも分かるように、Pb含有量
が増加するにつれてキュリー温度(Tc )が上昇し、約
300℃までのキュリー温度を選択することができる。
また、焼結法によるBaTiO3 −PbTiO3 単結晶
は、通常のBaTiO3 焼結体に比べ、誘電損失が小さ
く、大傾角粒界粒界の消滅に伴う電気機械結合係数の飛
躍的上昇により、電界印加時の誘起歪み量が増大し、極
めて優れた圧電特性を示すことが判る。
【0096】次に、本発明のBaTiO3 −PbTiO
3 系単結晶を用いた圧電型アクチュエータ(圧電振動
子)および該圧電型アクチュエータを用いる液体吐出ヘ
ッドについて、図2を参照して説明する。図2の(a)
および(b)に図示する液体吐出ヘッド11は、複数の
液吐出口12と、各液吐出口12に対応して設けられた
液室13と、液室13に対してそれぞれ設けられた圧電
型アクチュエータ19とを備え、圧電型アクチュエータ
19は、少なくともBaTiO3 −PbTiO3系単結
晶からなる層を含む圧電体14と該圧電体14の表面に
形成されるPt,Au,Al等の電極(不図示)および
該圧電体14に接合された振動板17とから構成され
て、圧電振動子を形成する。液体吐出ヘッド11におけ
る液吐出口12は、ノズルプレート15に所定の間隔を
もって形成され、液室13は、基板部16に液吐出口1
2にそれぞれ対応するように並列して形成されており、
各液吐出口12とそれに対応する液室13は、基板部1
6に形成された液流路16aを介して接続される。ま
た、基板部16の上面には各液室13にそれぞれ対応し
て開口部16bが形成され、基板部16の上面には開口
部16bを塞ぐように振動板17が形成され、この振動
板17の上に各液室13に対応して位置するように圧電
体14が配設される。
【0097】以上のように構成される液体吐出ヘッド1
1において、圧電型アクチュエータ19に対して外部か
ら駆動信号が印加されると、圧電型アクチュエータ19
は駆動して対応する液室13内の液体を加圧し、液室1
3に連通する液吐出口12から液体を液滴として吐出す
る。
【0098】このように圧電型アクチュエータ(圧電振
動子)を構成する圧電体として鉛含有量の少ない圧電材
料であるBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶を用いる
ことにより、既存のPZTの特性を凌ぐ極めて優れた圧
電特性を低コストで得ることができ、さらに、環境に優
しい圧電型アクチュエ−タ(圧電振動子)や液体吐出ヘ
ッドを作製することができる。
【0099】
【発明の効果】以上説明するように、本発明によれば、
BaTiO3 −PbTiO3 系圧粉体または焼結体を、
Pbの含有モル数がBaの含有モル数よりも少ない所定
の組成にし、非溶融状態に保ったまま所定の温度範囲で
加熱することにより単結晶化することができ、安定した
単結晶育成を可能にするとともに単結晶の成長速度を促
進することができる。
【0100】さらに、(Ba+Pb)/Ti比を所定の
組成範囲とするBaTiO3 −PbTiO3 系圧粉体ま
たは焼結体を非溶融状態に保ったまま所定の温度範囲で
加熱することにより単結晶化することで、単結晶成長の
再現性が向上し、安定した単結晶育成を可能にする。
【0101】また、BaTiO3 系単結晶あるいはBa
TiO3 −PbTiO3 単結晶を種結晶とし、同じく組
成調整したBaTiO3 −PbTiO3 多結晶体を作製
し、種結晶と前記圧粉体または焼結体の多結晶体を接合
して加熱処理を施すことにより、前記圧粉体または焼結
体の種結晶との接合部分から安定して単結晶化が起こ
り、高品質のBaTiO3 −PbTiO3 単結晶が得ら
れ、単結晶成長の再現性が向上する。この焼結法による
単結晶の育成速度は、Melt−Growth法に匹敵
しあるいはそれを超えている。
【0102】また、焼結法で多数の試料を同時に処理で
きるので、生産コストを大幅に低減することが可能とな
るばかりでなく、結晶中の転位密度も非常に小さく高品
質化も達成できるという生産性と特性を両立させること
ができる。
【0103】さらに、本発明のBaTiO3 −PbTi
3 単結晶は既存のPZT焼結体特性を遥かに凌駕して
おり、PZT中のPb等の有害物質削減の目的に対応す
るPbレス圧電材料として、既存のPZT系材料に匹敵
する特性を備えたBaTiO 3 −PbTiO3 系単結晶
を提供することができる。また、Pb含有量が増加する
につれてキュリー温度が上昇し、約300℃までのキュ
リー温度を適宜選択することが可能であって、キュリー
温度の問題もない。また、焼結法によるBaTiO3
PbTiO3 単結晶は、誘電損失が小さく、大傾角粒界
粒界の消滅に伴う電気機械結合係数の飛躍的上昇によ
り、電界印加時の誘起歪み量が増大し、極めて優れた圧
電特性を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶
の製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明の液体吐出ヘッドを示す図であって、
(a)はその斜視図であり、(b)は(a)のA−A線
に沿って破断して示す断面図である。
【図3】(a)は本発明の実施例11において種結晶を
接合して単結晶化する以前のBaTiO3 −PbTiO
3 系焼結体のX線回折パタ−ンであり、(b)は同じく
実施例11において種結晶を接合して単結晶化した後の
BaTiO3 −PbTiO3 系単結晶のX線回折パタ−
ンである。
【図4】本発明の実施例11において、種結晶として用
いた単結晶化後のBaTiO3−PbTiO3 系単結晶
の電子線回折像である。
【符号の説明】
1 種結晶(BaTiO3 −PbTiO3 系単結晶) 3 BaTiO3 −PbTiO3 系焼結体 5 単結晶化した部分 7 多結晶体部分 11 液体吐出ヘッド 12 液吐出口 13 液室 14 圧電体 15 ノズルプレート 16 基板部 17 振動板 19 (圧電型)アクチュエータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01L 41/08 C (72)発明者 福井 哲朗 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 池末 明生 愛知県名古屋市熱田区六野二丁目六番27− 107 Fターム(参考) 4G077 AA02 BC42 BC43 CA03 CA09 EA02 EA07 HA11 JA08

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Pbの含有モル数がBaの含有モル数よ
    りも少ないBaTiO3 −PbTiO3 系圧粉体または
    焼結体を非溶融状態に保ったまま加熱することにより単
    結晶化されたことを特徴とするBaTiO3 −PbTi
    3 系単結晶。
  2. 【請求項2】 転位密度が102 個/cm2 以上106
    個/cm2 以下、気孔含有率が1体積ppm以上5体積
    %以下の範囲にあることを特徴とする請求項1記載のB
    aTiO3 −PbTiO3 系単結晶。
  3. 【請求項3】 PbTiO3 の含有率が45モル%以下
    であることを特徴とする請求項1または2記載のBaT
    iO3 −PbTiO3 系単結晶。
  4. 【請求項4】 PbTiO3 の含有率が30モル%以下
    であることを特徴とする請求項1または2記載のBaT
    iO3 −PbTiO3 系単結晶。
  5. 【請求項5】 PbTiO3 の含有率が25モル%以下
    であることを特徴とする請求項1または2記載のBaT
    iO3 −PbTiO3 系単結晶。
  6. 【請求項6】 1mm3 以上の体積を有することを特徴
    とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のBaT
    iO3 −PbTiO3 系単結晶。
  7. 【請求項7】 転位密度が102 個/cm2 以上106
    個/cm2 以下、気孔含有率が1体積ppm以上5体積
    %以下の範囲にあることを特徴とするBaTiO3 −P
    bTiO3 系単結晶。
  8. 【請求項8】 PbTiO3 の含有率が45モル%以下
    であることを特徴とする請求項7記載のBaTiO3
    PbTiO3 系単結晶。
  9. 【請求項9】 請求項1ないし8のいずれか1項に記載
    のBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶からなる層を含
    むことを特徴とする圧電型アクチュエータ。
  10. 【請求項10】 請求項9記載の圧電型アクチュエータ
    を備えることを特徴とする液体吐出ヘッド。
  11. 【請求項11】 Pbの含有モル数がBaの含有モル数
    よりも少ないBaTiO3 −PbTiO3 系圧粉体また
    は焼結体の含有する元素のモル比を0.9800<(B
    a+Pb)/Ti<1.0000の範囲とし、前記圧粉
    体または焼結体を非溶融状態に保ったまま加熱すること
    により単結晶化する工程を含むことを特徴とするBaT
    iO3 −PbTiO3 系単結晶の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記圧粉体または焼結体の含有する元
    素のモル比を0.9900<(Ba+Pb)/Ti<
    1.0000の範囲とすることを特徴とする請求項11
    記載のBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶の製造方
    法。
  13. 【請求項13】 前記圧粉体または焼結体の含有する元
    素のモル比を0.9950≦(Ba+Pb)/Ti≦
    0.9999の範囲とする請求項11記載のBaTiO
    3 −PbTiO3 系単結晶の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記圧粉体または焼結体のPbTiO
    3 の含有率が45モル%以下であることを特徴とする請
    求項11記載のBaTiO3 −PbTiO3系単結晶の
    製造方法。
  15. 【請求項15】 前記圧粉体または焼結体のPbTiO
    3 の含有率が30モル%以下であることを特徴とする請
    求項11記載のBaTiO3 −PbTiO3系単結晶の
    製造方法。
  16. 【請求項16】 前記圧粉体または焼結体のPbTiO
    3 の含有率が25モル%以下であることを特徴とする請
    求項11記載のBaTiO3 −PbTiO3系単結晶の
    製造方法。
  17. 【請求項17】 前記圧粉体または焼結体を1200℃
    以上1400℃以下の温度範囲で加熱することにより単
    結晶化する工程を含むことを特徴とする請求項11記載
    のBaTiO3 −PbTiO3 系単結晶の製造方法。
  18. 【請求項18】 単結晶育成処理中に鉛含有化合物を炉
    内に挿入することによってPbを含む蒸気を発生させて
    BaTiO3 −PbTiO3 系単結晶を育成することを
    特徴とする請求項11記載のBaTiO3 −PbTiO
    3 系単結晶の製造方法。
  19. 【請求項19】 前記圧粉体または焼結体を鉛雰囲気中
    で非溶融状態に保ったまま加熱し単結晶化する工程を含
    むことを特徴とする請求項11記載のBaTiO3 −P
    bTiO3 系単結晶の製造方法。
  20. 【請求項20】 BaTiO3 系単結晶あるいはBaT
    iO3 −PbTiO 3 系単結晶を種結晶とし、平均粒径
    20μm以下の結晶粒から構成され、相対密度95%以
    上であるBaTiO3 −PbTiO3 系焼結体を前記種
    結晶の{100}面、{110}面または{111}面
    と接合し、非溶融状態に保ったまま加熱することにより
    単結晶化することを特徴とするBaTiO3 −PbTi
    3 系単結晶の製造方法。
  21. 【請求項21】 前記BaTiO3 −PbTiO3 系焼
    結体の含有する元素のモル比を0.9950≦(Ba+
    Pb)/Ti≦0.9999の範囲とすることを特徴と
    する請求項20記載のBaTiO3 −PbTiO3 系単
    結晶の製造方法。
  22. 【請求項22】 単結晶育成処理中に鉛含有化合物を炉
    内に挿入することによってPbを含む蒸気を発生させて
    BaTiO3 −PbTiO3 系単結晶を育成することを
    特徴とする請求項20記載のBaTiO3 −PbTiO
    3 系単結晶の製造方法。
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