JP2002256037A - コア・シェル構造重合体粒子および該粒子を含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物 - Google Patents

コア・シェル構造重合体粒子および該粒子を含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物

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JP2002256037A
JP2002256037A JP2001052807A JP2001052807A JP2002256037A JP 2002256037 A JP2002256037 A JP 2002256037A JP 2001052807 A JP2001052807 A JP 2001052807A JP 2001052807 A JP2001052807 A JP 2001052807A JP 2002256037 A JP2002256037 A JP 2002256037A
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shell
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aromatic vinyl
pet
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Taiji Nishi
泰治 西
Takashi Yamashita
山下  隆
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Kuraray Co Ltd
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Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 PET系樹脂が有する高い透明性を良好に維
持しながら、PET系樹脂に耐衝撃性を付与することが
でき、取り扱い性、分散性に優れるコア・シェル構造重
合体粒子、該粒子を含む粒子混合物、およびそれらを含
有するPET系樹脂組成物の提供。 【構成】 芳香族ビニル化合物系重合体よりなるコア
(i)とアルキル基の炭素数2〜8のアルキルアクリレー
ト系重合体よりなるシェル(ii)を有し、シェル(ii)の含
量率が10質量%以上、コア(i)の平均粒径が150〜500
nmで且つシェル(ii)の厚みが5〜25nmであるコア・シ
ェル構造重合体粒子、該コア・シェル構造重合体粒子と
芳香族ビニル系重合体粒子との粒子混合物、並びに前記
コア・シェル構造重合体粒子又は粒子混合物を含有する
PET系樹脂組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はコア・シェル構造重
合体粒子、該コア・シェル構造重合体粒子と芳香族ビニ
ル系重合体粒子よりなる粒子混合物、および該コア・シ
ェル構造重合体粒子または該粒子混合物を含有するポリ
エチレンテレフタレート系樹脂組成物に関する。より詳
細には、本発明は、耐衝撃性に優れ、しかも透明性に極
めて優れるポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物、
並びにそのようなポリエチレンテレフタレート系樹脂組
成物の製造に有効に用いられるコア・シェル構造重合体
粒子、および該コア・シェル構造重合体粒子と芳香族ビ
ニル系重合体粒子との粒子混合物に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、
透明性、力学的特性、ガスバリアー性、耐薬品性、耐熱
性、安全性などに優れており、そのような特性を活かし
て、例えば、清涼飲料、ジュース類、調味料、油、洗
剤、化粧品などの容器として汎用されている。また、前
記した用途以外にも、フィルム、シート、レンズ、包装
材料などとしても広く用いられている。液体類を充填し
たポリエチレンテレフタレート系樹脂容器(いわゆるP
ETボトル)では、その搬送時や販売時などに苛酷な取
り扱いを受けることがあり、落下や衝突などによっても
破損しない、高い耐衝撃性が強く求められている。PE
T系樹脂の耐衝撃性の向上は、ボトルに限らず、他の用
途においても必要である。
【0003】透明性に優れるものの耐衝撃性に劣る合成
樹脂に対して、透明性を損なわないようにしながら耐衝
撃性を改善する目的で、コア・シェル構造重合体粒子を
配合することが従来から提案されている。そのような従
来技術として、特開平6−145263号公報を挙げる
ことができ、この公報には、共役ジエン、アルキルアク
リレート、芳香族ビニル、又はこれらの混合物よりなる
ゴム状ポリマーからなるコアと、スチレン系モノマーよ
りなるガラス状ポリマーからなるシェルを有するコア・
シェルポリマーが記載されている。そしてこの公報に
は、そのコア・シェルポリマーを、ポリメチルメタクリ
レート樹脂、ポリ(アクリロニトリル−メチルメタクリ
レート−スチレン)樹脂、ポリ(メチルメタクリレート
−スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ(アクリ
ロニトリル−スチレン)樹脂などの透明なビニル系熱可
塑性樹脂に、コア・シェルポリマーの屈折率Yとビニル
系熱可塑性樹脂の屈折率Xの差が0.005未満であ
り、且つコア・シェルポリマーのコアの屈折率y1およ
びシェルの屈折率y2およびビニル系熱可塑性樹脂の屈
折率Xとの関係が、式;y1≦X≦y2を満たすようにし
て配合することが記載されている。
【0004】しかしながら、本発明者らが、前記公報に
記載されている技術を、ビニル系熱可塑性樹脂とは構造
および物性の大きく異なるポリエチレンテレフタレート
系樹脂に適用しようと試みたが、ポリエチレンテレフタ
レート系樹脂の屈折率が特異的に高いことに起因して、
該コア・シェルポリマーをポリエチレンテレフタレート
系樹脂に配合しても、透明性と耐衝撃性の両立は困難で
あった。すなわち、ゴム状ポリマーからなるコアとガラ
ス状スチレン系ポリマーからなるシェルを有するコア・
シェルポリマーにおいて、シェルを構成するスチレン系
ポリマーとコアを構成するゴム状ポリマーとの屈折率の
差を小さくすると共にコア・シェルポリマー全体の屈折
率をポリエチレンテレフタレート系樹脂の高い屈折率に
近づけるためには、コアの屈折率を高めるためにコアを
構成するゴム状ポリマー中でのスチレン単位の割合を高
める必要があるが、コアを構成するポリマーにおけるス
チレン単量体の割合を高めると、コアのゴム的性質が低
下して、コア・シェルポリマーが耐衝撃性の向上機能を
失うという不都合を生ずる。
【0005】また、本出願人は、ポリエチレンテレフタ
レート系樹脂に対して、ガラス転移温度が−10℃以下
のポリマーからなるコアと、ラジカル重合性単量体より
製造したガラス転移温度50℃以上のポリマーからなる
シェルを有するコア・シェル構造重合体粒子であって、
該コア・シェル構造重合体粒子のコアの屈折率、シェル
の屈折率が、ポリエチレンテレフタレート系樹脂の屈折
率と特定の関係を満たし、さらにコアの重量分率が特定
の関係式を満たす重合体粒子をポリエチレンテレフタレ
ート系樹脂に配合すると、透明性および耐衝撃性に優れ
るポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物が得られる
ことを見出して先に出願した(特開平10−10191
7号公報)。そしてこの発明では、コア・シェルポリマ
ーにおけるコアをジエン系化合物と芳香族メタクリレー
トおよび/またはスチレンとの共重合体から形成するこ
とが推奨され、シェルはメタクリル酸エステル、芳香族
ビニル化合物および/またはアクリロニトリルなどから
形成することが推奨されている。この公知技術による場
合は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂の透明性を大
きく損なうことなく、耐衝撃性の向上を図ることができ
る。しかし、ここで用いられているコア・シェル構造重
合体粒子は、そのコア部分がジエン系化合物を用いて形
成されているために耐候性が十分とは言えず、より高い
耐候性が要求される用途等においては、ジエン化合物を
用いないコア・シェルポリマー粒子の開発が求められて
いる。また、透明性の点においても、より透明性の高い
ポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物の開発が望ま
れている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ポリ
エチレンテレフタレート系樹脂本来の透明性を良好に維
持しながら、ポリエチレンテレフタレート系樹脂に耐衝
撃性を付与することのできる、コア・シェル構造重合体
粒子などの耐衝撃性改善材を提供することである。そし
て、本発明の目的は、ポリエチレンテレフタレート系樹
脂が本来有する優れたガスバリアー性、耐薬品性、耐熱
性、耐候性、力学的特性などの特性を十分に維持しなが
ら、耐衝撃性に優れ、しかも透明性により優れるポリエ
チレンテレフタレート系樹脂組成物を提供することであ
る。さらに、本発明の目的は、耐衝撃性に優れ、しかも
ポリエチレンテレフタレート系樹脂自身の有する上記し
た優れた特長が効果的に発揮される成形品を提供するこ
とである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記の目的を達成すべ
く本発明者らは鋭意検討を重ねてきた。その結果、芳香
族ビニル化合物から主としてなる重合体よりなるコア
と、アルキル基の炭素数が2〜8であるアルキルアクリ
レートから主としてなる重合体よりなるシェルを有し、
且つコアの平均粒径およびシェルの厚みが特定の数値範
囲にあり、しかもシェルの含有割合が特定量以上である
コア・シェル構造重合体粒子が、ポリエチレンテレフタ
レート系樹脂の耐衝撃性の向上剤として優れていて、該
コア・シェル構造重合体粒子をポリエチレンテレフタレ
ート系樹脂に配合すると、極めて高い透明性を保ちなが
ら、耐衝撃性の改善されたポリエチレンテレフタレート
系樹脂組成物および成形品が得られることを見出した。
そして、本発明者らは、前記したコア・シェル構造重合
体粒子において、コアを、芳香族モノビニル化合物およ
び芳香族ポリビニル化合物から主としてなる重合体から
形成することが好ましいこと、シェルをアルキル基の炭
素数が2〜8であるアルキルアクリレートから主として
なり且つ多官能性(メタ)アクリレートおよび/または
(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を有している重
合体より形成することが好ましいこと、またコアおよび
シェルの一方または両方が多層構造を有していることが
より好ましいことを見出した。
【0008】さらに、本発明者らは、そのようなコア・
シェル構造重合体粒子を単独でポリエチレンテレフタレ
ート系樹脂に配合しても耐衝撃性に優れ且つ透明性に優
れるポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物が得られ
るが、該コア・シェル構造重合体粒子に芳香族ビニル化
合物系重合体粒子を更に混合して粒子混合物をつくり、
その粒子混合物をポリエチレンテレフタレート系樹脂に
配合すると、コア・シェル構造重合体粒子の取り扱い
性、ポリエチレンテレフタレート系樹脂中への分散性、
ポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物や成形品の透
明性および耐衝撃性が一層向上することを見出した。ま
た、本発明者らは、そのような粒子混合物において、芳
香族ビニル化合物から主としてなる重合体粒子が、平均
粒径50〜120nmの微細粒子であることがより好ま
しいこと、コア・シェル構造重合体粒子の質量に対して
芳香族ビニル化合物から主としてなる重合体粒子を1〜
15質量%の割合で混合することが好ましいこと、該粒
子混合物はコア・シェル構造重合体粒子を含むラテック
スと芳香族ビニル化合物から主としてなる重合体粒子を
含むラテックスとのラテックスブレンド法に調製するこ
とがより好ましいことを見出した。さらに、本発明者ら
は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂に対する前記し
たコア・シェル構造重合体粒子または粒子混合物の配合
量を特定の範囲にすると、透明性、耐衝撃性などの物性
により優れるポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物
が得られることを見出し、それらの種々の知見に基づい
て本発明を完成した。
【0009】すなわち、本発明は、 (1) 芳香族ビニル化合物から主としてなる重合体
よりなるコア(i)とアルキル基の炭素数が2〜8であ
るアルキルアクリレートから主としてなる重合体よりな
るシェル(ii)を有するコア・シェル構造重合体粒子で
あって; シェル(ii)の含有割合が、コアシェル構造重合体
粒子の質量に基づいて10質量%以上である; コア(i)の平均粒径が150〜500nmであ
る;および、 シェル(ii)の厚みが5〜25nmである;ことを
特徴とするコア・シェル構造重合体粒子である。
【0010】そして、本発明は、 (2) コア(i)が、芳香族モノビニル化合物および
芳香族ポリビニル化合物から主としてなる重合体よりな
る前記した(1)のコア・シェル構造重合体粒子; (3) シェル(ii)が、アルキル基の炭素数が2〜8
であるアルキルアクリレートから主としてなり且つ多官
能性(メタ)アクリレートおよび/または(メタ)アク
リル酸に由来する構造単位を有している重合体よりなる
前記した(1)または(2)のコア・シェル構造重合体
粒子;および、 (4) コア(i)およびシェル(ii)の一方または両
方が、多層構造を有している前記した(1)〜(3)の
いずれかのコア・シェル構造重合体粒子;を好ましい態
様として包含する。
【0011】さらに、本発明は、 (5) 前記した(1)〜(4)のいずれかのコア・シェル
構造重合体粒子、および芳香族ビニル化合物から主とし
てなる重合体粒子からなる粒子混合物である。
【0012】そして、本発明は、 (6) 芳香族ビニル化合物から主としてなる重合体粒
子の平均粒径が50〜120nmである前記した(5)
の粒子混合物; (7) コア・シェル構造重合体粒子の質量に対して、
芳香族ビニル化合物から主としてなる重合体粒子を1〜
15質量%の割合で含有する、前記した(5)または
(6)の粒子混合物; (8) ラテックスブレンド法により得られたものであ
る前記した(5)〜(7)のいずれかの粒子混合物;を好ま
しい態様として包含する。
【0013】さらに、本発明は、 (9) ポリエチレンテレフタレート系樹脂、および前
記した(1)〜(4)のいずれかのコア・シェル構造重
合体粒子または前記した(5)〜(8)のいずれかの粒
子混合物を含有することを特徴とするポリエチレンテレ
フタレート系樹脂組成物である。そして、本発明は、 (10) [ポリエチレンテレフタレート系樹脂]:
[前記した(1)〜(4)のいずれかのコア・シェル構
造重合体粒子または前記した(5)〜(8)のいずれか
の粒子混合物]の含有割合が、70:30〜99:1
(質量比)である前記した(9)のポリエチレンテレフ
タレート系樹脂組成物を好ましい態様として包含する。
【0014】そして、本発明は、 (11) 前記した(9)または(10)のポリエチレ
ンテレフタレート系樹脂組成物よりなる成形品である。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明
する。本発明のコア・シェル構造重合体粒子[以下「コ
ア・シェル重合体粒子(A)」ということがある]は、
上記した要件〜、すなわち、 芳香族ビニル化合物から主としてなる重合体(以下
「芳香族ビニル系重合体」という)よりなるコア(i)
と、アルキル基の炭素数が2〜8であるアルキルアクリ
レートから主としてなる重合体(以下「アルキルアクリ
ート系重合体」という)よりなるシェル(ii)を有する
コア・シェル構造重合体粒子であって; シェル(ii)の含有割合が、コアシェル構造重合体
粒子の質量に基づいて10質量%以上である; コア(i)の平均粒径が150〜500nmであ
る;および、 シェル(ii)の厚みが5〜25nmである;という
要件〜を満足するコア・シェル構造重合体粒子であ
る。
【0016】最初に、本発明のコア・シェル重合体粒子
(A)における要件について説明する。コア・シェル
重合体粒子(A)のコア(i)を構成する芳香族ビニル
系重合体は、比較的高い屈折率を有するため、コア・シ
ェル重合体粒子(A)の全体の屈折率を、ポリエチレン
テレフタレート系樹脂(以下「PET系樹脂」という)
の屈折率に近づける機能を有する。コア(i)を構成す
る芳香族ビニル系重合体は、芳香族ビニル化合物に由来
する構造単位を、芳香族ビニル系重合体の質量[コア
(i)の質量]に基づいて50質量%以上の割合で有し
ていることが、透明性などの点から好ましく、80質量
%以上の割合で有していることがより好ましい。コア
(i)を構成する芳香族ビニル系重合体を形成する芳香
族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、ビニルト
ルエン、α−メチルスチレンなどの芳香族モノビニル化
合物、ジビニルベンゼンなどの芳香族ポリビニル化合物
などを挙げることができる。コア(i)を構成する芳香
族ビニル系重合体は、これらの芳香族ビニル化合物の1
種から形成されていても、または2種以上から形成され
ていてもよい。
【0017】また、コア(i)を構成する芳香族ビニル
系重合体において、芳香族ビニル化合物と共に少量成分
として用い得る他の単量体としては、例えば、ブチルア
クリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアル
キルアクリレート;メチルメタクリレートなどのアルキ
ルメタクリレートなどのような1官能性単量体;ヘキサ
ンジオールジアクリレートなどのアルカンポリオールポ
リアクリレートなどの架橋性単量体;アリルメタクリレ
ートなどの不飽和カルボン酸アリルエステルなどのグラ
フト用単量体などを挙げることができる。
【0018】コア(i)は、芳香族ビニル系重合体から
構成されている限りは、コア(i)全体でその化学構造
が均一であっても、またはコア(i)内で化学構造上不
均一になっていてもよい。例えば、コア(i)の全体が
単量体組成(構造単位組成)が同じである1種類の芳香
族ビニル系重合体のみから形成されている単層構造であ
ってもよいし、コア(i)が単量体組成の異なる(各単
量体単位の共重合割合の異なる)複数の芳香族ビニル系
重合体によって層状に形成されている多層構造であって
もよいし、またコア(i)を構成する芳香族ビニル系重
合体において、芳香族ポリビニル化合物単位および/ま
たは他の単量体単位の含有率がコア(i)の中心部から
の距離に応じて連続的に変化していてもよい。
【0019】コア(i)を構成する芳香族ビニル系重合
体は、スチレンなどの芳香族モノビニル化合物(1官能
性芳香族ビニル化合物)のみから形成されていてもよい
し、スチレンなどの芳香族モノビニル化合物と1官能性
の他の単量体のみから形成されていてもよいし、または
スチレンなどの芳香族モノビニル化合物と多官能性ビニ
ル化合物(芳香族ポリビニル化合物や他の多官能性単量
体)から形成されていてもよい。そのうちでも、コア
(i)は、芳香族モノビニル化合物と、ジビニルベンゼ
ンなどの芳香族ポリビニル化合物および/または他の多
官能性単量体からなる架橋用および/またはグラフト用
の多官能性単量体とを共重合してなる芳香族ビニル系重
合体から構成されているか、或いは芳香族モノビニル化
合物および他の1官能性単量体と、ジビニルベンゼンな
どの芳香族ポリビニル化合物および/または他の多官能
性単量体からなる架橋用および/またはグラフト用の多
官能性単量体とを共重合してなる芳香族ビニル系重合体
から構成されていることが好ましい。コア(i)が多官
能性単量体を共重合してなる芳香族ビニル系重合体から
構成されている場合には、コア(i)を構成する芳香族
ビニル系重合体に適度な架橋密度および/またはグラフ
ト化率が実現されて、コア・シェル重合体粒子(A)を
PET系樹脂に混合する際に、コアシェル構造の破壊が
防止されて、PET系樹脂組成物における透明性の低
下、耐衝撃性の低下などの不都合が生ずるのを抑制する
ことができる。
【0020】特に、架橋用および/またはグラフト用の
多官能性単量体として、ジビニルベンゼンなどのような
特に高い屈折率を発現し得る芳香族ポリビニル化合物を
用いると、コア・シェル重合体粒子(A)をPET系樹
脂に配合する際のコア・シェル構造の破壊防止という上
記した効果と併せて、コア・シェル重合体粒子(A)の
屈折率が一層高くなり、PET系樹脂組成物の透明性が
一層向上することがある。それに加えて、架橋によっ
て、PET系樹脂との混合時や成形時にコア・シェル重
合体粒子(A)の変形が防止されて、コア・シェル重合
体粒子(A)が真球状を保つようになり、コア・シェル
重合体粒子(A)を配合したPET系樹脂組成物の透明
性が一層良好になる。コア(i)を構成する芳香族ビニ
ル系重合体の全質量に対して芳香族ポリビニル化合物の
使用割合が10質量%を超える場合は、コア・シェル重
合体粒子(A)の架橋度が極めて高くなることにより、
PET系樹脂に混合するための溶融混練や成形時に剪断
力を受けてもコア・シェル重合体粒子(A)の変形率は
20%程度にまで抑制できることが可能になる。PET
系樹脂とコア・シェル重合体粒子(A)とは屈折率が異
なるため、コア・シェル重合体粒子(A)の変形率が高
くなると、コア(i)の平均粒径が大き過ぎる場合と同
様に、可視光波長が屈折して透明性が低下する傾向があ
るが、コア・シェル重合体粒子(A)の変形率を低くす
ることで、コア・シェル重合体粒子(A)を配合したP
ET系樹脂組成物における透明性の低下を防止すること
が可能となる。
【0021】コア(i)を構成する芳香族ビニル系重合
体において、芳香族ポリビニル化合物やその他の多官能
性単量体に由来する構造単位の割合が多くなり過ぎる
と、コア(i)を構成する芳香族ビニル系重合体の製造
時に、ビニル基(不飽和基)の一部しか反応せず、芳香
族ビニル系重合体の外側部分に多量のビニル基が残留す
るようになる。そして、そのような芳香族ビニル系重合
体よりなるコア(i)粒子の存在下にシェル(ii)形成
用の単量体を重合させてシェル(ii)を形成すると、グ
ラフト重合率が高くなり過ぎて、シェル(ii)を構成す
る重合体のゴム的性質が損なわれ易くなる。その結果、
そのようなコア・シェル構造重合体粒子をPET系樹脂
に配合しても、耐衝撃性の改善が十分に得られにくくな
る。そのため、コア(i)全体をジビニルベンゼンなど
の芳香族ポリビニル化合物やその他の多官能性単量体に
由来する構造単位の含有率の低い芳香族ビニル系重合体
から構成するか、或いは該多官能性単量体に由来する構
造単位の含有率を高くする場合は、コア(i)を多層構
造にし、コア(i)の外側部分を芳香族ポリビニル化合
物や他の多官能性単量体に由来する構造単位の含量率が
ゼロまたは少ない芳香族ビニル系重合体層から構成し、
コア(i)の内側部分を芳香族ポリビニル化合物や他の
多官能性単量体に由来する構造単位の含量率の高い芳香
族ビニル系重合体層から構成するようにするのがよい。
【0022】前記した2層構造のコア(i)は、何ら限
定されるものではないが、例えば、コア(i)の形成に
用いる芳香族モノビニル化合物の一部[例えばコア
(i)の形成に用いる芳香族モノビニル化合物の全質量
の70〜90質量%]と芳香族ポリビニル化合物の全部
または殆どを用いて芳香族ポリビニル化合物に由来する
構造単位の含有率の高い芳香族ビニル系重合体層(中心
層)を製造し、次いで芳香族モノビニル化合物の残部
(例えば30〜10質量%)および場合により少量の芳
香族ポリビニル化合物を用いて前記中心層上に芳香族ポ
リビニル化合物に由来する構造単位の含量率がゼロまた
は低い芳香族ビニル系重合体層を形成させることにより
製造することができる。
【0023】コア(i)を構成する芳香族ビニル系重合
体の製造時に、ジビニルベンゼンなどの特に高い屈折率
を発現し得る芳香族ポリビニル化合物を多く用いると
(一般に全単量体の質量に対して10質量%以上の割合
で用いると)、重合速度が遅くなって生産性が低下する
ことがあるので、重合速度の低下を抑制し得る適当な界
面活性剤を選択し、その適量を使用することが好まし
い。例えば、乳化重合によってコア(i)用の芳香族ビ
ニル系重合体を製造する場合は、使用する単量体に対し
て十分な乳化力を有する界面活性剤を使用することが望
ましい。ジビニルベンゼンなどの特に高い屈折率を発現
し得る芳香族ポリビニル化合物の比率が高くなると、疎
水性が強くなり、乳化されにくくなるので、乳化力の強
い界面活性剤を使用したり、界面活性剤の使用量を多く
する必要がある。コア(i)を構成する芳香族ビニル系
重合体の製造時に、重合系に界面活性剤を一度に添加す
ると、シード重合時に新粒子が生成して、目標通りの粒
径が得られないことがあるので、重合系への単量体の段
階的供給と合わせて、界面活性剤を段階的に添加するこ
とが好ましい。例えば、芳香族ビニル系重合体を形成す
る単量体に可溶な界面活性剤(ジオクチルスルホコハク
酸ナトリウムなど)を使用する場合は、重合系に段階的
に供給する単量体中に、単量体の全質量に基づいて0.
2〜1.5質量%の割合で界面活性剤を溶解させて供給
することが好ましい。
【0024】コア(i)を構成する芳香族ビニル系重合
体では、PET系樹脂への配合時や成形時におけるコア
・シェル重合体粒子(A)の変形防止、高い屈折率の発
現などの点から、芳香族ポリビニル化合物や他の多官能
性単量体などの多官能性単量体に由来する構造単位、特
にジビニルベンゼンなどの芳香族ポリビニル化合物に由
来する構造単位の含有率が、コア(i)を構成する芳香
族ビニル系重合体の全質量に対して、0.2〜30質量
%であることが好ましく、0.5〜20質量%であるこ
とがより好ましく、0.5〜15質量%であることが更
に好ましい。その際に、コア(i)の外側部分を構成す
る芳香族ビニル系重合体では、コア(i)へのシェル
(ii)用アルキルアクリート系重合体のグラフト重合率
が高くなり過ぎないようにするために、コア(i)の外
側部分を構成する芳香族ビニル系重合体の質量に対し
て、芳香族ポリビニル化合物や他の多官能性単量体など
の多官能性単量体に由来する構造単位、特に芳香族ポリ
ビニル化合物に由来する構造単位の含有率が、0〜15
質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であ
ることがより好ましく、1〜7質量%であることが更に
好ましい。
【0025】次に、コア・シェル重合体粒子(A)のシ
ェル(ii)は、アルキル基の炭素数が2〜8であるアル
キルアクリレートから主としてなる重合体(アルキルア
クリート系重合体)から構成される。このアルキルアク
リート系重合体は、ゴム的性質を有しており、本発明の
コア・シェル重合体粒子(A)に耐衝撃性向上機能を付
与する。シェル(ii)を構成するアルキルアクリート系
重合体は、アルキル基の炭素数が2〜8であるアルキル
アクリレートに由来する構造単位を、アルキルアクリー
ト系重合体の質量[シェル(ii)の質量]に基づいて、
85質量%以上の割合で有していることが、ゴム的性質
の付与、耐衝撃性向上などの点から好ましく、90質量
%以上の割合で有していることがより好ましい。
【0026】シェル(ii)を構成するアルキルアクリー
ト系重合体を形成するアルキル基の炭素数が2〜8であ
るアルキルアクリレートとしては、例えば、エチルアク
リレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレ
ート、t−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレ
ート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシル
アクリレート、n−ヘプチルアクリレート、n−オクチ
ルアクリレートなどを挙げることができる。シェル(i
i)を構成するアルキルアクリート系重合体は、これら
のアルキルアクリレートの1種または2種以上を用いて
形成されていることができる。そのうちでも、シェル
(ii)を構成するアルキルアクリート系重合体は、n−
ブチルアルキルアクリレートおよび/または2−エチル
ヘキシルアルキルアクリレートから主として形成されて
いることが、ゴム的性質の付与、耐衝撃性向上などの点
から好ましい。
【0027】また、シェル(ii)を構成するアルキルア
クリート系重合体において、アルキル基の炭素数が2〜
8であるアルキルアクリレートと共に少量成分として用
い得る他の単量体としては、例えば、スチレンやジビニ
ルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物;メチルメタクリ
レート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート
などのアルキルメタクリレート;アルキル基の炭素数が
2〜8以外であるメチルアクリレート、ラウリルアクリ
レートなどのアルキルアクリレート;フェニル(メタ)
クリレートなどの芳香族(メタ)クリレート;アクリル
酸、メタクリル酸;ヘキサンジオールジアクリレートな
どのアルカンポリオールポリアクリレートなどの架橋性
単量体;アリルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸
アリルエステルなどを挙げることができる。シェル(i
i)を構成するアルキルアクリート系重合体は、これら
の他の単量体の1種または2種以上に由来する構造単位
を有することができる。シェル(ii)を構成するアルキ
ルアクリート系重合体が、アルキル基の炭素数が2〜8
であるアルキルアクリレート[以下「アルキル
(C2〜8)アクリレート」ということがある]と少量の
他の単量体との共重合体である場合は、該共重合体のガ
ラス転移温度が−35℃以下となるように、該他の単量
体の種類および使用割合を選択することが、コア・シェ
ル重合体粒子(A)に高い耐衝撃性向上機能を付与し得
る点から好ましい。
【0028】シェル(ii)は、アルキル基の炭素数が2
〜8であるアルキルアクリレートから主としてなるアル
キルアクリート系重合体から構成されている限りは、シ
ェル(ii)全体でその化学構造が均一であっても、また
はシェル(ii)内で化学構造上不均一になっていてもよ
い。例えば、シェル(ii)の全体が単量体組成(構造単
位組成)が同じである1種類のアルキルアクリート系重
合体のみから形成されている単層構造であってもよい
し、シェル(ii)が単量体組成の異なる(各単量体単位
の共重合割合の異なる)複数のアルキルアクリート系重
合体によって層状に形成されている多層構造であっても
よいし、またシェル(ii)を構成するアルキルアクリー
ト系重合体において、アルキル(C2〜8)アクリレート
および/または他の単量体単位の含有率がシェル(ii)
の内側から外側へと連続的に変化していてもよい。
【0029】シェル(ii)を多層構造にする場合は、そ
の外側の層を、アルキル(C2〜8)アクリレートに少量
のアクリル酸および/またはメタクリル酸を共重合させ
たアルキルアクリート系重合体から形成すると、PET
系樹脂とコア・シェル重合体粒子(A)の相容性が向上
し、溶融混練によりコア・シェル重合体粒子(A)をP
ET系樹脂中に均一に分散させ易くなる。特に、PET
系樹脂の粘度が低かったり、溶融混練装置の混練能力が
低くて、溶融混練時に十分な剪断応力が得られない場合
には、外側の層を形成するアルキルアクリート系重合体
中にカルボキシル基が存在すると、PET系樹脂への分
散性が良好になる。シェル(ii)を多層構造にし、その
外側の層をアクリル酸および/またはメタクリル酸を共
重合したアルキルアクリート系共重合体から形成する場
合は、相容性向上の点から、該アルキルアクリート系共
重合体におけるアクリル酸および/またはメタクリル酸
に由来する構造単位の含有率は1〜40質量%であるこ
とが好ましく、2〜20質量%であることがより好まし
い。
【0030】シェル(ii)を多層構造にする場合には、
内側の層と外側の層の厚さ比、質量比などは特に制限さ
れないが、シェル(ii)が2層構造のときには、例え
ば、シェル(ii)を構成するアルキルアクリート系重合
体の製造に用いる全単量体の50〜90質量%を用いて
内側の層[コア(i)と隣接する層]を形成し、該全単
量体の50〜10質量%を用いて外側の層[コア・シェ
ル重合体粒子(A)の表面層]を形成する。
【0031】シェル(ii)を構成するアルキルアクリー
ト系重合体は、ジビニルベンゼンなどの芳香族ポリビニ
ル化合物や上記した他の多官能性単量体などのような多
官能性単量体に由来する構造単位を少量含有していても
よい。アルキルアクリート系重合体が多官能性単量体に
由来する構造単位を有すると、官能性単量体に由来する
構造単位が架橋および/またはグラフト機能を発揮し
て、シェル(ii)を構成するアルキルアクリート系重合
体において適度な架橋密度およびグラフト化率が実現さ
れて、コア・シェル重合体粒子(A)をPET系樹脂に
配合したときに耐衝撃性を一層向上させることができ
る。コア・シェル重合体粒子(A)を配合したPET系
樹脂における透明性および耐衝撃性の両立の点から、シ
ェル(ii)を構成するアルキルアクリート系重合体にお
ける多官能性単量体の割合は、アルキルアクリート系重
合体の製造に用いられる全単量体に対して、0.25〜
3質量%であることが好ましく、0.5〜1質量%であ
ることがより好ましい。シェル(ii)が2層構造を有し
ている場合に、内側の層[コア(i)と接する層]のみ
を、多官能性単量体に由来する構造単位を有するアルキ
ルアクリート系重合体から形成してもよい。その場合の
多官能性単量体の割合は、内側の層を構成するアルキル
アクリート系重合体の製造に用いられる単量体に対し
て、0.25〜3質量%であることが好ましく、0.5
〜1質量%であることがより好ましい。
【0032】次に、本発明のコア・シェル重合体粒子
(A)に係る要件について説明する。上記のように、本
発明のコア・シェル重合体粒子(A)は、シェル(ii)
の含有割合が、コアシェル重合体粒子(A)の質量[コ
ア(i)およびシェル(ii)の合計質量]に基づいて、
10質量%以上であることが必要である。シェル(ii)
の含有割合が10質量%未満であると、耐衝撃性の向上
効果が弱くなり、PET系樹脂に配合したときに耐衝撃
性の改善が不十分になる。コア・シェル重合体粒子
(A)を配合したPET系樹脂の透明性の点からはコア
・シェル重合体粒子(A)におけるシェル(ii)の含有
割合が少ないほど透明性が良好になるが、少なすぎると
(10質量%未満であると)、上記したように、コア・
シェル重合体粒子(A)の耐衝撃性向上作用が弱くな
る。一方、コア・シェル重合体粒子(A)におけるシェ
ル(ii)の含有割合が高くなり過ぎると、そのようなコ
ア・シェル重合体粒子(A)をPET系樹脂に配合して
なるPET系樹脂組成物の透明性が損なわれ、しかもコ
ア・シェル重合体粒子(A)の表面の粘着性が大きくな
ってコア・シェル重合体粒子(A)同士の膠着や凝集を
生じて、取り扱い性、PET系樹脂への分散性、PET
系樹脂に配合した時の溶融混練性などが不良になり易
い。かかる点から、コア・シェル重合体粒子(A)の取
り扱い性、PET系樹脂への分散性、コア・シェル重合
体粒子(A)を配合してなるPET系樹脂組成物の透明
性および耐衝撃性などの点から、コア・シェル重合体粒
子(A)におけるシェル(ii)の含有割合は、10〜4
0質量%[コア(i)の含有割合が90〜60質量%]
であることが好ましく、20〜30質量%[コア(i)
の含有割合が80〜70質量%]であることがより好ま
しい。
【0033】次に、本発明のコア・シェル重合体粒子
(A)に係る要件およびについて説明する。本発明
のコア・シェル重合体粒子(A)は、コア(i)の平均
粒径、すなわちコア(i)のみからなる部分の平均粒径
が150〜500nmであることが必要である(要件
)。コア(i)の平均粒径が150nm未満である
と、PET系樹脂中での分散性が不良になり、しかも耐
衝撃性の向上作用が十分に発揮されない。一方、コア
(i)の平均粒径が500nmを超えると、そのような
コア・シェル重合体粒子(A)をPET系樹脂に配合し
たときに透明性が不十分となる。PET系樹脂への均一
分散性、PET系樹脂に配合した時の耐衝撃性向上作用
および透明性などの点から、コア・シェル重合体粒子
(A)におけるコア(i)の平均粒径は200〜430
nmであることが好ましい。
【0034】さらに、本発明のコア・シェル重合体粒子
(A)は、シェル(ii)の厚み、すなわちシェル(ii)
のみの部分の厚みが5〜25nmであることが必要であ
る(要件)。シェル(ii)の厚みが5nm未満である
と、コア・シェル重合体粒子(A)のゴム的性質が低下
して、PET系樹脂に対する耐衝撃性向上作用を十分に
発揮されにくくなる。一方、シェル(ii)の厚みが25
nmを超えると、そのようなコア・シェル重合体粒子
(A)をPET系樹脂に配合したときに、透明性が不十
分となる。PET系樹脂への均一分散性、PET系樹脂
に配合した時の耐衝撃性向上作用および透明性などの点
から、コア・シェル重合体粒子(A)におけるシェル
(ii)の厚みは8〜20nmであることが好ましい。
【0035】本発明のコア・シェル重合体粒子(A)に
おけるコア(i)の平均粒径は、例えば、コア・シェル
重合体粒子(A)の電子顕微鏡観察に基づくコア(i)
部分の平均径測定、コア・シェル構造重合体粒子を製造
する途中で、コア(i)を製造するための重合工程で得
られた芳香族ビニル系重合体粒子の粒径を動的光散乱法
で測定する方法などににより求めることができる。ま
た、本発明のコア・シェル重合体粒子(A)におけるシ
ェル(ii)の厚みは、コア・シェル重合体粒子(A)の
粒径を前記した電子顕微鏡観察や動的光散乱法で測定
し、それにより得られたコア・シェル構造重合体粒子の
平均粒径と上記で測定されたコア(i)の平均粒径との
差の2分の1として求めることができる。なお、上記の
電子顕微鏡観察に基づく測定は、例えば、電子染色法に
よりコア・シェル重合体粒子(A)の所定の層を選択的
に染色し、透過電子顕微鏡(TEM)または走査電子顕
微鏡(SEM)を使用して、コア(i)の直径またはコ
ア・シェル重合体粒子(A)全体の直径を実測し、その
平均値を求める方法により行うことができる。また、上
記の動的光散乱法は、粒子のブラウン運動が、大きな粒
子では遅く、小さな粒子になるほど速くなる原理を利用
した測定法である。
【0036】コア・シェル重合体粒子(A)の屈折率と
PET系樹脂の屈折率との差の絶対値が0.015より
も大きいと、そのようなコア・シェル重合体粒子(A)
を配合してなるPET系樹脂組成物の透明性が不十分に
なり易い。そのため、コア・シェル重合体粒子(A)の
屈折率とそれを配合するPET系樹脂の屈折率の差の絶
対値が0.015未満であることが好ましい。但し、コ
ア・シェル重合体粒子(A)の屈折率とPET系樹脂の
屈折率との差の絶対値をあまり小さくしようとすると、
耐衝撃性の向上作用に優れるコア・シェル重合体粒子
(A)の製造が困難になるので、コア・シェル重合体粒
子(A)の屈折率とPET系樹脂の屈折率との差の絶対
値が0.006〜0.015、特に0.006〜0.0
10程度になるようにすることが好ましい。
【0037】PET系樹脂の屈折率は通常1.565〜
1.580の範囲内にあることが多く、また本発明のコ
ア・シェル重合体粒子(A)の屈折率はPET系樹脂の
屈折率よりも低いことが多い。そのため、本発明のコア
・シェル重合体粒子(A)の屈折率を、1.550〜
1.574の範囲にすると、PET系樹脂の屈折率とコ
ア・シェル重合体粒子(A)の屈折率の差の絶対値が上
記した0.006〜0.015の範囲になり、透明性に
優れるPET系樹脂組成物が得られ易くなる。コア・シ
ェル重合体粒子(A)およびPET系樹脂の屈折率は、
それぞれ常法に従って測定することができ、例えば、コ
ア・シェル重合体粒子(A)またはPET系樹脂を用い
て成形した平板状試験片を使用して屈折率計で測定する
ことができる。なお、PET系樹脂が2種類以上のPE
T系樹脂の混合物である場合は、本明細書でいうPET
系樹脂の屈折率とは該混合物の屈折率をいう。
【0038】本発明のコア・シェル重合体粒子(A)
は、上記した要件〜を満足するコア・シェル構造重
合体粒子である限りは、その製法は特に制限されず、一
般的なコア・シェル構造重合体粒子を製造するための公
知の方法に準じて製造することができる。例えば、公知
のシード重合法に従い、所定の単量体を段階的に反応系
に添加することによってコア(i)を構成する芳香族ビ
ニル系重合体およびシェル(ii)を構成するアルキルア
クリート系重合体を順次形成させることによって製造す
ることができる。重合後、生成したコア・シェル構造重
合体粒子(A)の反応系からの取り出しは、凍結法、塩
析法などの方法によって行うことができる。凍結法によ
って取り出す場合には、PET系樹脂に加えて溶融混練
したときにPET系樹脂中に均一に分散し易いコア・シ
ェル重合体粒子(A)を取得するために、コア・シェル
構造重合体粒子を1000ミクロン以下の凝集粒径で取
り出すことが好ましく、500ミクロン以下の凝集粒径
で取り出すことがより好ましい。
【0039】本発明のコア・シェル重合体粒子(A)
は、該コア・シェル重合体粒子(A)を単独でPET系
樹脂に配合しても、透明性および耐衝撃性に優れるPE
T系樹脂組成物を得ることができる。但し、本発明のコ
ア・シェル重合体粒子(A)は、ゴム的性質を有するシ
ェル(ii)がコア・シェル重合体粒子(A)の外側に露
出して存在するため、コア・シェル重合体粒子(A)同
士の膠着や凝集が生ずる場合があり、またコア・シェル
重合体粒子(A)をPET系樹脂に配合して溶融混練し
たときにPET系樹脂との相容性の不足に伴う分散不良
から耐衝撃性向上作用を十分に発揮できない場合があ
る。そのため、コア・シェル重合体(A)粒子に、例え
ば、芳香族ビニル化合物系重合体粒子またはメタクリレ
ート系重合体粒子を混合することが好ましく、特に芳香
族ビニル化合物から主としてなる重合体粒子(以下「芳
香族ビニル系重合体粒子(B)」ということがある)を
予め混合して粒子混合物[以下粒子混合物(AB)」と
いうことがある]をつくり、その粒子混合物(AB)を
PET系樹脂に配合することが好ましい。
【0040】コア・シェル重合体粒子(A)と混合して
用いる芳香族ビニル系重合体粒子(B)の粒径は、コア
・シェル重合体粒子(A)への混合効果を高めるうえ
で、できるだけ小さくすることが望ましいが、乳化重合
による方法が芳香族ビニル系重合体粒子を工業的に再現
性よく製造し易いこと、コア・シェル構造重合体粒子と
の混合性などを考慮すると、芳香族ビニル系重合体粒子
(B)の平均粒径は50〜120nmであることが好ま
しく、50〜90nmであることがより好ましい。
【0041】芳香族ビニル系重合体粒子(B)を形成す
る芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、ビ
ニルトルエン、α−メチルスチレンなどの芳香族モノビ
ニル化合物、ジビニルベンゼンなどの芳香族ポリビニル
化合物などを挙げることができる。芳香族ビニル系重合
体粒子(B)は、これらの芳香族ビニル化合物の1種か
ら形成されていても、または2種以上から形成されてい
てもよい。
【0042】また、芳香族ビニル系重合体粒子(B)
は、芳香族ビニル化合物と共に少量の他の単量体との共
重合体からなる粒子であってもよい。その際の他の単量
体としては、例えば、ブチルアクリレート、2−エチル
ヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート;メチ
ルメタクリレートなどのアルキルメタクリレートなどの
ような1官能性単量体;ヘキンサンジオールジアクリレ
ートなどのアルカンポリオールポリアクリレートなどの
架橋性単量体;アリルメタクリレートなどの不飽和カル
ボン酸アリルエステルなどのグラフト用単量体などを挙
げることができる。
【0043】芳香族ビニル系重合体粒子(B)は、芳香
族ビニル化合物から主としてなる重合体から形成されて
いる限りは、芳香族ビニル系重合体粒子(B)全体でそ
の化学構造が均一であっても、または芳香族ビニル系重
合体粒子(B)内で化学構造上不均一になっていてもよ
い。例えば、芳香族ビニル系重合体粒子(B)は、単量
体組成(構造単位組成)が同じである1種類の芳香族ビ
ニル系重合体のみから形成されている単層構造であって
もよいし、2層以上の多層構造粒子であってもよい。例
えば、芳香族ビニル系重合体粒子(B)を、芳香族ビニ
ル化合物から主としてなる重合体よりなるコア層と、ポ
リメチルメタクリレートよりなるシェル層とからなる2
層構造にすると、芳香族ビニル系重合体粒子(B)の外
側のポリメチルメタクリレート層が存在することによっ
てPET系樹脂との相容性が向上し、分散効果を一層高
めることができる。その際の、コア層とシェル層の含有
割合は特に制限されないが、コア・シェル重合体粒子
(A)と芳香族ビニル系重合体粒子(B)との粒子混合
物(AB)をPET系樹脂に混合したときの分散性の向
上、透明性の保持などの点から、芳香族ビニル系重合体
粒子(B)におけるコア層の含有割合は、50〜90質
量%(シェル層の含有割合が50〜10質量%)である
ことが好ましく、70〜85質量%(シェル層の含有割
合が30〜15質量%)であることがより好ましい。
【0044】また、芳香族ビニル系重合体粒子(B)
を、スチレンなどの芳香族モノビニル化合物と適量の多
官能性単量体(ジビニルベンゼンなどの芳香族ポリビニ
ル化合物、他の多官能性単量体)との共重合体から形成
すると、芳香族ビニル系重合体粒子(B)に適度な架橋
密度およびグラフト化率が実現され、粒子構造の破壊に
よる透明性の低下、耐衝撃性の低下などの不都合を抑制
でき、好ましい。その際の、多官能性単量体の共重合割
合としては、例えばジビニルベンゼンなどの芳香族ポリ
ビニル化合物を用いる場合は、芳香族ビニル系重合体粒
子(B)の製造に用いられる全単量体の質量に対して、
0.1〜15質量%であることが好ましく、1〜10質
量%であることがより好ましい。
【0045】また、芳香族ビニル系重合体粒子(B)の
屈折率をPET系樹脂の屈折率と等しくするか、または
近似したものとしておくことにより、透明性に優れるP
ET系樹脂組成物を得ることができる。
【0046】本発明で使用する芳香族ビニル系重合体粒
子(B)は、一般的な乳化重合方法に準じて製造するこ
とができる。例えば、公知のシード重合法に従って所定
の単量体を段階的に反応系に添加して重合することによ
って製造できる。重合後、生成した芳香族ビニル系重合
体粒子(B)を含むラテックスを反応系から取り出し
て、以下に説明するラテックスブレンド法によってコア
・シェル重合体粒子(A)を含むラテックスに添加して
もよいし、芳香族ビニル系重合体粒子(B)を含むラテ
ックスから芳香族ビニル系重合体粒子(B)を分離し
て、コア・シェル重合体粒子(A)を含むラテックスに
添加するか、コア・シェル重合体粒子(A)そのものと
直接混合してもよい。
【0047】コア・シェル重合体粒子(A)と芳香族ビ
ニル系重合体粒子(B)との粒子混合物(AB)におけ
る両粒子の混合割合は特に制限されないが、芳香族ビニ
ル系重合体粒子(B)の混合割合が少なすぎると、該粒
子混合物(AB)をPET系樹脂に添加したときにコア
・シェル重合体粒子(A)の分散不良を生じて耐衝撃性
向上効果が発揮されない場合があり、一方芳香族ビニル
系重合体粒子(A)の混合割合が多すぎると、粒子混合
物(AB)をPET系樹脂に配合した時にPET系樹脂
組成物が脆化することがある。かかる点から、コア・シ
ェル重合体粒子(A)と芳香族ビニル系重合体粒子
(B)との粒子混合物(AB)では、コア・シェル重合
体粒子(A)の質量に対して、芳香族ビニル系重合体粒
子(B)の割合が1〜15質量%であることが好まし
く、2〜10質量%であることがより好ましい。
【0048】コア・シェル重合体粒子(A)と芳香族ビ
ニル系重合体粒子(B)の粒子混合物(AB)を調製す
る際の両粒子の混合方法は特に制限されないが、ラテッ
クスブレンド法が、両方の粒子が均一に混合した粒子混
合物が得られるので好ましく採用される。すなわち、コ
ア・シェル重合体粒子(A)の重合反応(製造反応)の
終了段階において、重合により生成したコア・シェル重
合体粒子(A)を含むラテックスに、芳香族ビニル系重
合体粒子(B)を含むラテックスを混合し、該ラテック
ス混合物を凍結乾燥して粒子混合物(AB)を得る方
法、或いは該ラテックス混合物を濾過して固形分を分離
・回収した後に乾燥して粒子混合物(AB)を得る方法
が好ましく採用される。
【0049】上記した要件〜を備える本発明のコア
・シェル重合体粒子(A)をPET系樹脂に配合する
か、または該コア・シェル重合体粒子(A)と芳香族ビ
ニル系重合体粒子(B)とからなる粒子混合物(AB)
をPET系樹脂に配合することによって、本発明のPE
T系樹脂組成物が得られる。
【0050】本発明のPET系樹脂組成物に用いるPE
T系樹脂は、エチレンテレフタレート単位を主たる構造
単位とするポリエステル樹脂であって、そのジカルボン
酸単位は主としてテレフタル酸単位からなり、そのジオ
ール単位は主としてのエチレングリコール単位からな
る。本発明のPET系樹脂組成物に用いるPET系樹脂
は、ジカルボン酸単位として少量(好ましくはPET系
樹脂を構成するジカルボン酸単位の全量に対して30モ
ル%以下)であれば、テレフタル酸以外のジカルボン酸
に由来する構造単位を共重合単位として有していてもよ
い。また、本発明のPET系樹脂に用いるPET系樹脂
は、ジオール単位として少量(好ましくはPET系樹脂
を構成するジオール単位の全量に対して30モル%以
下)であれば、エチレングリコール以外のジオールに由
来する構造単位を共重合単位として有していてもよい。
【0051】本発明で用いるPET系樹脂が共重合単位
として有し得るテレフタル酸単位以外のジカルボン酸単
位としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6
−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカル
ボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アン
トラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテル
ジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウムなど
の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、アゼ
ライン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン
酸;1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シ
クロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;
それらのエステル形成性誘導体(例えばメチルエステ
ル、エチルエステルなどの低級アルキルエステルなど)
に由来するジカルボン酸単位を挙げることができる。本
発明で用いるPET系樹脂は、これらのジカルボン酸単
位の1種または2種以上を有していることができる。
【0052】本発明で用いるPET系樹脂が共重合単位
として有し得るエチレングリコール単位以外のジオール
単位としては、例えば、プロピレングリコール、ネオペ
ンチルグリコール、2−メチルプロパンジオール、1,
5−ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、
シクロヘキサンジオールなどの炭素数2〜10の脂肪族
ジオール;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコ
ール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテト
ラメチレングリコールなどの分子量6000以下のポリ
アルキレングリコールなどに由来するジオール単位を挙
げることができる。本発明で用いるPET系樹脂は、こ
れらのジオール単位の1種または2種以上を有している
ことができる。
【0053】また、本発明で用いるPET系樹脂は、P
ET系樹脂の全構造単位に対して1モル%以下の少量で
あれば、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパ
ン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリ
ット酸などの3官能以上の単量体に由来する構造単位の
1種または2種以上を共重合単位として有していてもよ
い。
【0054】本発明で用いるPET系樹脂の極限粘度は
必ずしも限定されず、PET系樹脂組成物の使用目的や
用途などに応じて適当な極限粘度を選択することができ
る。例えば、本発明のPET系樹脂組成物を、成形品の
製造に用いる場合は、一般に、極限粘度が0.4〜1.
6dl/gの範囲にあるPET系樹脂が好ましく用いら
れる。
【0055】本発明のPET系樹脂組成物で用いるPE
T系樹脂は、1種類のPET系樹脂のみからなっていて
もよいし、化学構造および/または物性(極限粘度やそ
の他の物性)が相違する2種以上のPET系樹脂の混合
物であってもよい。例えば、本発明のPET系樹脂組成
物で用いるPET系樹脂は、結晶性PET系樹脂と非晶
性PET系樹脂との混合物であってもよいし、極限粘度
が互いに相違する2種類のPET系樹脂の混合物であっ
てもよい。なお、本発明で用いるPET系樹脂が、極限
粘度が互いに相違する2種類のPET系樹脂の混合物で
ある場合は、該混合物の極限粘度をもって、本発明で使
用するPET系樹脂の極限粘度とすることができる。
【0056】また、本発明のPET系樹脂組成物では、
PET系樹脂の一部または全部として、使用済みのPE
Tボトルなどから回収されたリサイクル用PET系樹脂
を用いてもよい。リサイクル用PET系樹脂は、未使用
(バージン)のPET系樹脂と比較して、熱履歴を多く
受けているために、一般に分子量が低下しており、耐衝
撃性に一層劣っている。本発明では、そのようなリサイ
クル用PET系樹脂にコア・シェル重合体粒子(A)ま
たは粒子混合物(AB)を配合することによって、その
耐衝撃性が大幅に向上されるので、リサイクル用PET
系樹脂の利用範囲を拡大することができる。
【0057】PET系樹脂にコア・シェル重合体粒子
(A)を配合してなる本発明のPET系樹脂組成物、ま
たはPET系樹脂にコア・シェル構造重合体粒子と芳香
族ビニル系重合体粒子(B)との粒子混合物(AB)を
配合してなる本発明のPET系樹脂組成物では、PET
系樹脂組成物の使用目的や用途、PET系樹脂組成物を
構成しているPET系樹脂、コア・シェル重合体粒子
(A)、粒子混合物(AB)などの種類や性質などに応
じて、PET系樹脂組成物に対するコア・シェル重合体
粒子(A)または粒子混合物(AB)の配合割合を調整
することができる。一般的には、[PET系樹脂]:
[コア・シェル重合体粒子(A)または粒子混合物(A
B)]の使用割合を、70:30〜99/1の質量比に
することが好ましく、80:20〜96:4の質量比に
することがより好ましく、85:15〜95:5の質量
比にすることが更に好ましい。PET系樹脂と、コア・
シェル重合体粒子(A)または粒子混合物(AB)の使
用割合を前記した範囲にすることにより、PET系樹脂
自体が有する優れた物性を活かしながら、特に極めて良
好な透明性を保ちながら、PET系樹脂において不足し
ている耐衝撃性の改善を行うことができる。
【0058】本発明のPET系樹脂組成物は、本発明の
効果を損なわない範囲内において、必要に応じて、酸化
防止剤、粘度向上剤、耐熱安定剤、膠着防止剤などの他
の成分の1種または2種以上を含有することができる。
【0059】本発明のPET系樹脂組成物は、PET系
樹脂と同等またはそれに極めて近い透明性を有してお
り、通常、80%以上の全光線透過率と10%以下のヘ
イズ値を有している。
【0060】本発明のPET系樹脂組成物の調製方法は
特に制限されず、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の調
製に従来から採用されている方法に準じて製造すること
ができる。PET系樹脂とコア・シェル重合体粒子
(A)または粒子混合物(AB)、および場合によりそ
の他の成分は、予め混合せずに、射出成形装置、押出成
形装置、ブロー成形装置などの成形装置にそのまま直接
供給して成形装置で溶融混練しながら成形を行ってもよ
いし、或いはPET系樹脂とコア・シェル重合体粒子
(A)または粒子混合物(AB)、および場合によりそ
の他の成分を混合し溶融混練してPET系樹脂組成物を
予め調製しておき、該PET系樹脂組成物を用いて成形
などを行ってもよい。それらのうちでも、PET系樹脂
組成物を予め調製しておく後者の方法が、コア・シェル
重合体粒子(A)をPET系樹脂中に均一に分散させ得
ることができるので好ましく採用される。PET系樹脂
組成物の調製は、例えば、スクリュー型単軸押出機、ス
クリュー型2軸押出機などを用いて行うことができる。
【0061】PET系樹脂組成物の調製に当たっては、
PET系樹脂組成物の調製に用いる成分の全量を一度に
混合しても、或いはPET系樹脂組成物の調製に用いる
成分の一部を予め溶融混合した後に成形前または成形時
に残りの部分を溶融混合するようにしてもよい。特に、
コア・シェル重合体粒子(A)または粒子混合物(A
B)をPET系樹脂の一部と混合し溶融混練してコア・
シェル重合体粒子(A)または粒子混合物(AB)を高
濃度で含有するPET系樹脂組成物(マスターバッチ)
を予め調製し、該マスターバッチを、成形前または成形
時に残りのPET系樹脂と混合して溶融混練する方法を
採用すると、PET系樹脂中にコア・シェル重合体粒子
(A)が均一に分散したPET系樹脂組成物を調製する
ことができるので好ましい。該マスターバッチの調製に
当たっては、[PET系樹脂]:[コア・シェル重合体
粒子(A)または粒子混合物(AB)]の混合比が、4
0:60〜70:30の質量比になるようにしておくこ
とが好ましい。
【0062】PET系樹脂組成物の調製、およびPET
系樹脂組成物からな成形品の製造に当たっては、PET
系樹脂の熱劣化および加水分解をできるだけ抑制し得る
条件を採用することが好ましい。そのため、PET系樹
脂または上記したマスターバッチを事前に十分に乾燥し
ておくこと(例えば120℃で4時間以上加熱して水分
含量を0.2質量%以下にしておく)、水分を排出し得
るベント機構を有する溶融混練装置を用いることなどが
推奨される。また、マスターバッチや最終的なPET系
樹脂組成物を調製するための溶融混練時の温度を200
〜300℃の範囲にすると共に、コア・シェル重合体粒
子(A)または粒子混合物(AB)をPET系樹脂中に
均一に分散させるに足る最小限の滞留時間で溶融混練す
ることが好ましい。
【0063】本発明のPET系樹脂組成物は、PET系
樹脂が従来から用いられている各種用途に有効に使用で
き、任意の形状や寸法の成形品などをすることができ
る。成形品を製造する場合は、例えば、押出成形、射出
成形、ブロー成形、カレンダー成形、注型、プレス成形
などにより成形することができ、また溶融紡糸により繊
維を製造することもできる。
【0064】本発明のPET系樹脂組成物は、PET系
樹脂組成物に用いたPET系樹脂と同等またはそれに近
い透明性を有しており、そのため本発明のPET系樹脂
組成物を用いて透明性に優れる成形品などを製造するこ
とができるが、成形品における透明性を一層向上させ得
る点から、PET系樹脂として結晶性の低いPET系樹
脂または非晶性のPET系樹脂を使用すること、および
/または結晶化が生じにくい成形条件を採用することが
好ましい場合がある。前記した条件の採用は、射出成形
により肉厚の成形品を製造する際に特に有効である。例
えば、結晶性のPET系樹脂を使用する場合には、非晶
性PET系樹脂(例えばナフタレンジカルボン酸、イソ
フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸などを共重合し
たPET系樹脂)を、結晶性PET系樹脂100質量部
に対して非晶性PET系樹脂を10〜100質量部の割
合で配合し、それにコア・シェル重合体粒子(A)また
は粒子混合物(AB)を配合したPET系樹脂組成物を
用いると、結晶化速度が低下して、射出成形時に結晶化
が生じにくくなり、透明性が一層良好になる。また、射
出成形時に、金型温度を低くする、金型での冷却時間を
長くするなどの成形条件を採用した場合にも結晶化が生
じにくくなり、透明性が一層良好になる。
【0065】本発明のPET系樹脂組成物は、PET系
樹脂が本来有する優れた力学的特性、ガスバリアー性、
耐薬品性、耐熱性、安全性などの特性と共に、耐衝撃性
および透明性に優れており、それらの特性を活かして、
各種の成形品や製品に広く用いることができる。限定さ
れるものではないが、本発明のPET系樹脂組成物は、
例えば、シート、フィルム、機械部品、自動車部品、電
気・電子部品、スポーツ用品、繊維、各種容器、櫛、バ
ケツ、ハンガー、ペン軸、下敷き、ケースなどの文房
具、部品ケース、看板、機器筺体などの成形品や製品の
製造に有効に用いられる。
【0066】
【実施例】以下に実施例などにより本発明について具体
的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定され
るものではない。以下の例において、コア・シェル構造
重合体粒子の平均粒径、コア・シェル構造重合体粒子に
おけるコア(i)の平均粒径、シェル(ii)の厚み、コ
ア・シェル構造重合体粒子の屈折率、コア・シェル構造
重合体粒子におけるコア(i)およびシェル(ii)のガ
ラス転移温度、芳香族ビニル系重合体粒子の平均粒径お
よび屈折率、PET系樹脂組成物(成形品)の耐衝撃性
強度および透明性(全光線透過率およびヘイズ値)は、
以下のようにして測定した。
【0067】(1)コア・シェル構造重合体粒子の平均
粒径:以下の例で得られたコア・シェル構造重合体粒子
を含むラテックスの適量(約1ml)を採取して、イオ
ン交換水で100mlに希釈し、それを測定セルに入
れ、動的光散乱法による粒径測定装置(大塚電子株式会
社製「パートIII」)のセル室にセットし、基準散乱強
度値が8000〜12000の範囲になるように調節し
て、粒子にレーザー光を照射した。散乱光のゆらぎを光
子相関法を用いて解析することにより粒径を求め、それ
をコア・シェル構造重合体粒子の平均粒径とした。 (2)コア・シェル構造重合体粒子のコア(i)の平均
粒径:以下の例で、コア(i)を製造するための重合工
程(1段階目のシード重合)により得られたコア(i)
となる粒子を含むラテックスの適量(約1ml)を採取
し、以後は上記(1)と同様にして粒子の粒径を求め、
それをコア・シェル構造重合体粒子のコア(i)の平均
粒径とした。 (3)コア・シェル構造重合体粒子のシェル(ii)の厚
み:上記(1)で求めたコア・シェル構造重合体粒子の
平均粒径から、上記(2)で求めたシェル(ii)の厚み
を減じ、その1/2の値をシェル(ii)の厚みとした。
【0068】(4)コア・シェル構造重合体粒子の屈折
率:以下の例で得られたコア・シェル構造重合体粒子を
用いて圧縮成形(温度210℃、圧力4MPa)を行っ
て厚さ1.2mmの平板状試料を作製し、この試料につ
いて、アッベ屈折率計(アタゴ社製「RX−200
0」)を用いて、JISK7105に準拠した方法で2
3℃における屈折率を測定し、それをコア・シェル構造
重合体粒子の屈折率とした。 (5)コア・シェル構造重合体粒子におけるコア(i)
とシェル(ii)のガラス転移温度:以下の例で得られた
コア・シェル構造重合体粒子を用いて圧縮成形(温度2
10℃、圧力4MPa)を行って厚さ1.2mmの平板
を作製し、この平板から幅×長さ=5mm×30mmの
試験片を切り出し、該試験片を用いた粘弾性測定に基づ
いて、コア(i)およびシェル(ii)のガラス転移温度
を求めた。すなわち、粘弾性測定装置(レオロジ社製
「DVE−V4」)を使用して、試験片に対し、周波数
を固定して一定のひずみ振幅を強制的に与え、温度を変
化させながら応力を測定し、その測定結果からコア
(i)とシェル(ii)を構成する重合体の動的損失(t
anδ)の温度分散を求め、損失ピークを示す温度をコ
ア(i)およびシェル(ii)のそれぞれのガラス転移温
度とした。
【0069】(6)芳香族ビニル系重合体粒子の平均粒
径:以下の例で得られた芳香族ビニル系重合体粒子を含
むラテックスの適量(約1ml)を採取して、以後は上
記(1)と同様にして粒子の粒径を求め、それを芳香族
ビニル系重合体粒子の平均粒径とした。 (7)芳香族ビニル系重合体粒子の屈折率:以下の例で
得られた芳香族ビニル系重合体粒子を用いて圧縮成形
(温度210℃、圧力4MPa)を行って厚さ1.2m
mの平板を作製し、この平板から幅×長さ=5mm×3
0mmの試験片を切り出し、この試験片を用いて上記
(5)と同様にして、芳香族ビニル系重合体粒子のガラ
ス転移温度を求めた。
【0070】(8)耐衝撃性強度:以下の例で得られた
PET系樹脂組成物よりなる成形品に切削工具にてノッ
チを入れ、JIS K7110に規定する3.0mm厚
さのアイゾット衝撃試験片を作製した。この試験片を用
いて、温度23℃、湿度47%の条件で、前記したJI
S K7110に準拠して衝撃値を測定した。同じ試験
を10回行って、その平均値を耐衝撃性強度として採用
した。 (9)透明性(全光線透過率およびヘイズ値):以下の
例で得られたPET系樹脂組成物よりなる成形品(1.
0mm厚さの平板)について、JIS K6714に準
拠した方法で全光線透過率およびヘイズ値を測定し、同
じ試験を2回行い、その平均値を採用した。
【0071】《実施例1》 (1)コア・シェル構造重合体粒子[コア・シェル重合
体粒子(A−1)]の製造: (a) 還流冷却器付きの10リットル容量の重合容器
内に、イオン交換水5000gおよびジオクチルコハク
酸ナトリウム5.5gを仕込み、窒素気流下に撹拌しな
がら80℃に昇温した。これに、コア(i)全体量に対
して約5質量%に相当するスチレン100.6gおよび
ジビニルベンゼン4.0gからなる単量体混合物を一括
添加し、20分かけて乳化させた後、ペルオキソ2硫酸
カリウム105mgを添加し、1時間撹拌することによ
って、コア(i)を形成するための最初のシード重合を
行い、ついでペルオキソ2硫酸カリウム1898mgを
添加し、5分間撹拌した。これに、コア(i)を形成す
るための残部である、スチレン1911.9gおよびジ
ビニルベンゼン76.5gにジオクチルコハク酸ナトリ
ウム10.0gを溶解させた単量体混合物を2時間かけ
て連続的に供給して、コア(i)を形成するためのシー
ド重合を行った後、1時間熟成した。これにより得られ
たコア(i)用の重合体粒子の平均粒径を上記した方法
で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0072】(b) 次いで、ペルオキソ2硫酸カリウ
ム388mgを添加して5分間撹拌した。これに、ブチ
ルアクリレート387.5gおよびアリルメタクリレー
ト1.94gにジオクチルコハク酸ナトリウム1.9g
を溶解させてなる単量体混合物を30分間かけて連続的
に供給し、シェル(ii)の内層を形成するためのシード
重合を行った後、1時間熟成した。 (c) 次に、ペルオキソ2硫酸カリウム100mgを
添加して5分間撹拌した。これに、ブチルアクリレート
90.0gおよびメタクリル酸10.0gにジオクチル
コハク酸ナトリウム0.5gを溶解させてなる単量体混
合物を10分間かけて連続的に供給し、シェル(ii)の
外層を形成するためのシード重合を行った後、1時間熟
成した。 (d) 次いで、室温まで冷却し、目開き150μmの
プラスチック製網で濾過することによって、コア・シェ
ル構造重合体粒子[コア・シェル重合体粒子(A−
1)]を含むラテックスを得た。これにより得られたコ
ア・シェル構造重合体粒子[コア・シェル重合体粒子
(A−1)について、その平均粒径、シェル(ii)の厚
み、屈折率並びにコア(i)とシェル(ii)のガラス転
移温度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に
示すとおりであった。
【0073】(2)芳香族ビニル系重合体粒子[芳香族
ビニル系重合体粒子(B−1)]の製造: (a) 還流冷却器付きの10リットル容量の重合容器
内に、イオン交換水6000gおよびジオクチルコハク
酸ナトリウム30.0gを仕込み、窒素気流下に撹拌し
ながら80℃に昇温した。これに、スチレン1222.
5g、ジビニルベンゼン42.8gおよびアリルメタク
リレート6.11gからなる単量体混合物を一括添加
し、30分かけて乳化させた後、ペルオキソ2硫酸カリ
ウム1271mgを添加し、2時間撹拌することによっ
て1段目のシード重合を行った。 (b) 次に、ペルオキソ2硫酸カリウム278mgを
添加して5分間撹拌した後、メチルメタクリレート25
2.5g、メチルアクリレート13.9gおよびメタク
リル酸11.1gにジオクチルコハク酸ナトリウム0.
28gを溶解させてなる単量体混合物を60分間かけて
連続的に供給し、2段目のシード重合を行い、その後1
時間熟成した。 (c) 次いで、室温まで冷却し、目開き150μmの
プラスチック製網で濾過することによって、芳香族ビニ
ル系重合体粒子[芳香族ビニル系重合体粒子(B−
1)]を含むラテックスを得た。これにより得られた芳
香族ビニル系重合体粒子(B−1)の平均粒径および屈
折率を上記した方法で測定したところ、平均粒径は80
nmであり、屈折率は1.575であった。
【0074】(3)粒子混合物[粒子混合物(AB−
1)]の調製: (a) 上記(1)で得られたコア・シェル重合体粒子
(A−1)のラテックスに、上記(2)で得られた芳香
族ビニル系重合体粒子(B−1)のラテックスを、コア
・シェル構造重合体粒子(A−1)100質量部に対す
る芳香族ビニル系重合体粒子(B−1)の混合量が3.
5質量部になるような割合で混合してラテックス混合物
とし、それを30分間放置して均一に分散させた。 (b) 次いで、上記(a)のラテックス混合物を−3
0℃にて凍結させ、吸引濾過器で脱水洗浄した後、60
℃にて一昼夜送風乾燥して、粒子混合物(AB−1)を
得た。
【0075】(4)PET系樹脂組成物の調製: (a) 非晶性PET系樹脂(イーストマンケミカル社
製「GN071」;屈折率1.565)1000質量部
に、上記(3)で得られた粒子混合物(AB−1)10
00質量部および酸化防止剤(チバスペシャリティーケ
ミカルズ社製「イルガノックス1010」)10質量部
を混合し、該混合物を2軸押出機に供給し、温度240
℃で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、切断し
て、ペレット状のマスターバッチを製造した。 (b) 上記(a)で得られたペレット状マスターバッ
チ200質量部を、結晶性PET系樹脂(株式会社クラ
レ製「KS750RC」;屈折率1.575)800質
量部と共に射出成形に供給して、280℃に設定したス
クリューで混練した後、所定厚さの平板状成形品を製造
した。これにより得られた平板状成形品を用いて、上記
した方法でその耐衝撃性試験および透明性試験を上記し
た方法で行ったところ、下記の表5に示すとおりであっ
た。
【0076】《実施例2》 (1)コア・シェル構造重合体粒子[コア・シェル重合
体粒子(A−2)]の製造:下記の表1に示す化合物を表1
に示す量で用いて、実施例1の(1)と同様にしてコア
・シェル重合体粒子(A−2)のラテックスを製造し
た。この実施例2の(1)で得られたコア・シェル重合
体粒子(A−2)におけるコア(i)の平均粒径、コア
・シェル構造重合体粒子の平均粒径、シェル(ii)の厚
み、屈折率並びにコア(i)とシェル(ii)のガラス転
移温度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に
示すとおりであった。 (2)粒子混合物[粒子混合物(AB−2)]の調製:
上記(1)で得られたコア・シェル重合体粒子(A−
2)のラテックスに、実施例1の(2)で得られたのと
同じ芳香族ビニル系重合体粒子(B−1)のラテックス
を、コア・シェル重合体粒子(A−2)100質量部に
対する芳香族ビニル系重合体粒子(B−1)の混合量が
3.5質量部になるような割合で混合してラテックス混
合物とし、以下実施例1の(3)と同様にして、粒子混
合物(AB−2)を得た。 (3)PET系樹脂組成物の調製:粒子混合物(AB−
1)の代わりに、上記(2)で得られた粒子混合物(A
B−2)を用いる以外は、実施例1の(4)の(a)と
同様にしてペレット状のマスターバッチ(PET系樹
脂)を製造した後、実施例1の(4)の(b)と同様に
して所定厚さの平板状成形品を製造し、それを用いて、
上記した方法でその耐衝撃性試験および透明性試験を上
記した方法で行ったところ、下記の表5に示すとおりで
あった。
【0077】《実施例3》 (1)コア・シェル構造重合体粒子[コア・シェル重合
体粒子(A−3)]の製造: (a) 還流冷却器付きの10リットル容量の重合容器
内に、イオン交換水5000gおよびジオクチルコハク
酸ナトリウム6.5gを仕込み、窒素気流下に撹拌しな
がら80℃に昇温した。これに、コア(i)全体量に対
して約5質量%に相当するスチレン66.9gおよびジ
ビニルベンゼン11.8gからなる単量体混合物を一括
添加し、20分かけて乳化させた後、ペルオキソ2硫酸
カリウム79mgを添加し、1時間撹拌することによっ
て、コア(i)の内層を形成するための最初のシード重
合を行い、ついでペルオキソ2硫酸カリウム1496m
gを添加し、5分間撹拌した。これに、コア(i)の内
層を形成するための残部である、スチレン1271.9
gおよびジビニルベンゼン224.5gにジオクチルコ
ハク酸ナトリウム15.0gを溶解させた単量体混合物
を2時間かけて連続的に供給して、コア(i)の内層を
形成するためのシード重合を行った後、1時間熟成し
た。 (b) 次いで、ペルオキソ2硫酸カリウム375mg
を添加して5分間撹拌した後、スチレン375.0gお
よびジビニルベンゼン15.0gにジオクチルコハク酸
ナトリウム1.9gを溶解させてなる単量体混合物を3
0分間かけて連続的に供給し、コア(i)の外層を形成
するためのシード重合を行った後、1時間熟成した。こ
れにより得られたコア(i)用の重合体粒子の平均粒径
を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すと
おりであった。
【0078】(c) 次に、ペルオキソ2硫酸カリウム
450mgを添加して5分間撹拌した。これに、ブチル
アクリレート450.0gおよびアリルメタクリレート
2.30gにジオクチルコハク酸ナトリウム2.3gを
溶解させてなる単量体混合物を30分間かけて連続的に
供給し、シェル(ii)の内層を形成するためのシード重
合を行った後、1時間熟成した。 (d) 次に、ペルオキソ2硫酸カリウム100mgを
添加して5分間撹拌した。これに、ブチルアクリレート
90.0gおよびメタクリル酸10.0gにジオクチル
コハク酸ナトリウム0.5gを溶解させてなる単量体混
合物を10分間かけて連続的に供給して、シェル(ii)
の外層を形成するためのシード重合を行った後、1時間
熟成した。 (e) 次いで、室温まで冷却し、目開き150μmの
プラスチック製網で濾過することによって、コア・シェ
ル重合体粒子(A−3)を含むラテックスを得た。これに
より得られたコア・シェル重合体粒子(A−3)につい
て、その平均粒径、シェル(ii)の厚み、屈折率並びに
コア(i)とシェル(ii)のガラス転移温度を上記した
方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであっ
た。
【0079】(2)粒子混合物[粒子混合物(AB−
3)]の調製:上記(1)で得られたコア・シェル重合
体粒子(A−3)のラテックスに、実施例1の(2)で
得られたのと同じ芳香族ビニル系重合体粒子(B−1)
のラテックスを、コア・シェル重合体粒子(A−3)1
00質量部に対する芳香族ビニル系重合体粒子(B−
1)の混合量が3.5質量部になるような割合で混合し
てラテックス混合物とし、以下実施例1の(3)と同様
にして、粒子混合物(AB−3)を得た。 (3)PET系樹脂組成物の調製:粒子混合物(AB−
1)の代わりに粒子混合物(AB−3)を用いる以外
は、実施例1の(4)の(a)と同様にしてペレット状
のマスターバッチ(PET系樹脂)を製造した後、実施
例1の(4)の(b)と同様にして所定厚さの平板状成
形品を製造し、それを用いて、上記した方法でその耐衝
撃性試験および透明性試験を上記した方法で行ったとこ
ろ、下記の表5に示すとおりであった。
【0080】《実施例4》 (1)コア・シェル構造重合体粒子[コア・シェル重合
体粒子(A−4)]の製造:下記の表1に示す化合物を表1
に示す量で用いて、実施例3の(1)と同様にしてコア
・シェル重合体粒子(A−4)のラテックスを製造し
た。この実施例4の(1)で得られたコア・シェル重合
体粒子(A−4)におけるコア(i)の平均粒径、コア
・シェル重合体粒子(A−4)の平均粒径、シェル(i
i)の厚み、屈折率並びにコア(i)とシェル(ii)の
ガラス転移温度を上記した方法で測定したところ、下記
の表1に示すとおりであった。 (2)粒子混合物[粒子混合物(AB−4)]の調製:
上記(1)で得られたコア・シェル重合体粒子(A−
4)のラテックスに、実施例1の(2)で得られたのと
同じ芳香族ビニル系重合体粒子(B−1)のラテックス
を、コア・シェル重合体粒子(A−4)100質量部に
対する芳香族ビニル系重合体粒子(B−1)の混合量が
3.5質量部になるような割合で混合してラテックス混
合物とし、以下実施例1の(3)と同様にして、粒子混
合物(AB−4)を得た。 (3)PET系樹脂組成物の調製:粒子混合物(AB−
1)の代わりに、粒子混合物(AB−4)を用いる以外
は、実施例1の(4)の(a)と同様にしてペレット状
のマスターバッチ(PET系樹脂)を製造した後、実施
例1の(4)の(b)と同様にして所定厚さの平板状成
形品を製造し、それを用いて、上記した方法でその耐衝
撃性試験および透明性試験を上記した方法で行ったとこ
ろ、下記の表5に示すとおりであった。
【0081】《実施例5》 (1)コア・シェル構造重合体粒子[コア・シェル重合
体粒子(A−5)]の製造:下記の表2に示す化合物を表2
に示す量で用いて、実施例3の(1)と同様にしてコア
・シェル重合体粒子(A−5)のラテックスを製造し
た。この実施例5の(1)で得られたコア・シェル重合
体粒子(A−5)におけるコア(i)の平均粒径、コア
・シェル重合体粒子(A−5)の平均粒径、シェル(i
i)の厚み、屈折率並びにコア(i)とシェル(ii)の
ガラス転移温度を上記した方法で測定したところ、下記
の表2に示すとおりであった。 (2)PET系樹脂組成物の調製:粒子混合物(AB−
1)の代わりに、上記で得られたコア・シェル重合体粒
子(A−5)を用いる以外は、実施例1の(4)の
(a)と同様にしてペレット状のマスターバッチ(PE
T系樹脂)を製造した後、実施例1の(4)の(b)と
同様にして所定厚さの平板状成形品を製造し、それを用
いて、上記した方法でその耐衝撃性試験および透明性試
験を上記した方法で行ったところ、下記の表6に示すと
おりであった。
【0082】《実施例6》 (1)コア・シェル構造重合体粒子[コア・シェル重合
体粒子(A−6)]の製造: (a) 下記の表2に示す化合物を表2に示す量で使用
して、実施例1の(1)の(a)と同様にして、コア
(i)を形成するためのシード重合を行った後、1時間
熟成した。これにより得られたコア(i)用の重合体粒
子の平均粒径を上記した方法で測定したところ、下記の
表2に示すとおりであった。 (b) 次いで、下記の表2に示す化合物を表2に示す
量で使用して、実施例1の(1)の(c)と同様の方法
で、シェル(ii)を形成するためのシード重合を行っ
て、コア・シェル重合体粒子(A−6)のラテックスを
製造した。この実施例6で得られたコア・シェル重合体
粒子(A−6)におけるコア(i)の平均粒径、コア・
シェル重合体粒子(A−6)の平均粒径、シェル(ii)
の厚み、屈折率並びにコア(i)とシェル(ii)のガラ
ス転移温度を上記した方法で測定したところ、下記の表
2に示すとおりであった。 (2)PET系樹脂組成物の調製:粒子混合物(AB−
1)の代わりに、上記で得られたコア・シェル重合体粒
子(A−6)を用い、またPET系樹脂として非晶性P
ET系樹脂[イーストマンケミカル社製「GN07
1」)のみを使用し、それ以外は実施例1の(4)の
(a)と同様にしてペレット状のマスターバッチ(PE
T系樹脂)を製造した後、実施例1の(4)の(b)と
同様にして所定厚さの平板状成形品を製造し、それを用
いて、上記した方法でその耐衝撃性試験および透明性試
験を上記した方法で行ったところ、下記の表6に示すと
おりであった。
【0083】《実施例7》 (1)コア・シェル構造重合体粒子[コア・シェル重合
体粒子(A−7)]の製造:下記の表2に示す化合物を表2
に示す量で用いて、実施例1の(1)と同様にしてコア
・シェル重合体粒子(A−7)のラテックスを製造し
た。この実施例7の(1)で得られたコア・シェル重合
体粒子(A−7)におけるコア(i)の平均粒径、コア
・シェル重合体粒子(A−7)の平均粒径、シェル(i
i)の厚み、屈折率並びにコア(i)とシェル(ii)の
ガラス転移温度を上記した方法で測定したところ、下記
の表2に示すとおりであった。 (2)芳香族ビニル系重合体粒子[芳香族ビニル系重合
体粒子(B−2)]の製造: (a) 還流冷却器付きの10リットル容量の重合容器
内に、イオン交換水6000gおよびジオクチルコハク
酸ナトリウム30.0gを仕込み、窒素気流下に撹拌し
ながら80℃に昇温した。これに、スチレン1117.
5g、ジビニルベンゼン39.1gおよびアリルメタク
リレート5.59gからなる単量体混合物を一括添加
し、30分かけて乳化させた後、ペルオキソ2硫酸カリ
ウム1162mgを添加し、2時間撹拌することによっ
て1段目のシード重合を行った。 (b) 次に、ペルオキソ2硫酸カリウム382mgを
添加して5分間撹拌した後、メチルメタクリレート35
2.1g、メチルアクリレート19.1gおよびメタク
リル酸11.2gにジオクチルコハク酸ナトリウム0.
38gを溶解させてなる単量体混合物を60分間かけて
連続的に供給し、2段目のシード重合を行い、その後1
時間熟成した。 (c) 次いで、室温まで冷却し、目開き150μmの
プラスチック製網で濾過することによって、芳香族ビニ
ル系重合体粒子(B−2)を含むラテックスを得た。こ
れにより得られた芳香族ビニル系重合体粒子(B−2)
の平均粒径および屈折率を上記した方法で測定したとこ
ろ、平均粒径が80nm、屈折率が1.565であっ
た。 (3)粒子混合物[粒子混合物(AB−7)]の調製:
上記(1)で得られたコア・シェル重合体粒子(A−
7)のラテックスに、上記(2)で得られた芳香族ビニ
ル系重合体粒子(B−2)のラテックスを、コア・シェ
ル重合体粒子(A−7)100質量部に対する芳香族ビ
ニル系重合体粒子(B−2)の混合量が3.5質量部に
なるような割合で混合してラテックス混合物とし、以下
実施例1の(3)と同様にして、粒子混合物(AB−
7)を得た。 (4)PET系樹脂組成物の調製:粒子混合物(AB−
1)の代わりに粒子混合物(AB−7)を用い、またP
ET系樹脂として非晶性PET系樹脂[イーストマンケ
ミカル社製「GN071」)のみを使用し、それ以外は
実施例1の(4)の(a)と同様にしてペレット状のマ
スターバッチ(PET系樹脂)を製造した後、実施例1
の(4)の(b)と同様にして所定厚さの平板状成形品
を製造し、それを用いて、上記した方法でその耐衝撃性
試験および透明性試験を上記した方法で行ったところ、
下記の表6に示すとおりであった。
【0084】《実施例8》 (1)コア・シェル構造重合体粒子[コア・シェル重合
体粒子(A−8)]の製造:下記の表2に示す化合物を表2
に示す量で用いて、実施例3の(1)と同様にしてコア
・シェル重合体粒子(A−8)のラテックスを製造し
た。この実施例8の(1)で得られたコア・シェル重合
体粒子(A−8)におけるコア(i)の平均粒径、コア
・シェル重合体粒子(A−8)の平均粒径、シェル(i
i)の厚み、屈折率並びにコア(i)とシェル(ii)の
ガラス転移温度を上記した方法で測定したところ、下記
の表2に示すとおりであった。 (2)粒子混合物[粒子混合物(AB−8)]の調製:
上記(1)で得られたコア・シェル重合体粒子(A−
8)のラテックスに、実施例7の(2)で得られたのと
同じ芳香族ビニル系重合体粒子(B−2)のラテックス
を、コア・シェル重合体粒子(A−8)100質量部に
対する芳香族ビニル系重合体粒子(B−2)の混合量が
3.5質量部になるような割合で混合してラテックス混
合物とし、以下実施例1の(3)と同様にして、粒子混
合物(AB−8)を得た。 (3)PET系樹脂組成物の調製:粒子混合物(AB−
1)の代わりに粒子混合物(AB−8)を用い、またP
ET系樹脂として非晶性PET系樹脂[イーストマンケ
ミカル社製「GN071」)のみを使用し、それ以外は
実施例1の(4)の(a)と同様にしてペレット状のマ
スターバッチ(PET系樹脂)を製造した後、実施例1
の(4)の(b)と同様にして所定厚さの平板状成形品
を製造し、それを用いて、上記した方法でその耐衝撃性
試験および透明性試験を上記した方法で行ったところ、
下記の表6に示すとおりであった。
【0085】《比較例1〜4》 (1)コア・シェル構造重合体粒子[コア・シェル重合
体粒子(A−9)〜コア・シェル重合体粒子(A−1
2)]の製造:下記の表3に示す化合物を表3に示す量
で用いて、実施例1の(1)と同様にして、コア・シェ
ル重合体粒子(A−9)〜(A−12)のラテックスをそ
れぞれ製造した。これらの比較例1〜4の(1)で得ら
れたコア・シェル重合体粒子(A−9)〜(A−12)
におけるコア(i)の平均粒径、コア・シェル構造重合
体粒子の平均粒径、シェル(ii)の厚み、屈折率並びに
コア(i)とシェル(ii)のガラス転移温度を上記した
方法で測定したところ、下記の表3に示すとおりであっ
た。 (2)粒子混合物の調製[粒子混合物(AB−9)〜
(AB−12)]の調製:上記(1)で得られたコア・
シェル重合体粒子(A−9)〜(A−12)のラテック
スのそれぞれに、実施例1の(2)で得られたのと同じ
芳香族ビニル系重合体粒子(B−1)のラテックスを、
コア・シェル重合体粒子(A−9)〜(A−12)10
0質量部に対する芳香族ビニル系重合体粒子(B−1)
の混合量が3.5質量部になるような割合で混合してラ
テックス混合物とし、以下実施例1の(3)と同様にし
て、粒子混合物(AB−9)(比較例1)、粒子混合物
(AB−10)(比較例2)、粒子混合物(AB−1
1)(比較例3)および粒子混合物(AB−12)(比
較例4)をそれぞれ調製した。 (3)PET系樹脂組成物の調製:粒子混合物(AB−
1)の代わりに、上記(2)で得られた粒子混合物(A
B−9)、粒子混合物(AB−10)、粒子混合物(A
B−11)または粒子混合物(AB−12)を用いる以
外は、実施例1の(4)の(a)と同様にしてペレット
状のマスターバッチ(PET系樹脂)を製造した後、実
施例1の(4)の(b)と同様にして所定厚さの平板状
成形品を製造し、それを用いて、上記した方法でその耐
衝撃性試験および透明性試験を上記した方法で行ったと
ころ、下記の表7に示すとおりであった。
【0086】《比較例5》 (1)コア・シェル構造重合体粒子[コア・シェル重合
体粒子(A−13)]の製造:下記の表4に示す化合物
を表4に示す量で用いて、実施例1の(1)と同様にし
て、コア・シェル重合体粒子(A−13)のラテックス
を製造した。この比較例5の(1)で得られたコア・シ
ェル重合体粒子(A−13)におけるコア(i)の平均
粒径、コア・シェル重合体粒子(A−13)の平均粒
径、シェル(ii)の厚み、屈折率並びにコア(i)とシ
ェル(ii)のガラス転移温度を上記した方法で測定した
ところ、下記の表4に示すとおりであった。 (2)粒子混合物[粒子混合物(AB−13)]の調
製:上記(1)で得られたコア・シェル重合体粒子(A
−13)のラテックスに、実施例1の(2)で得られた
のと同じ芳香族ビニル系重合体粒子(B−1)のラテッ
クスを、コア・シェル重合体粒子(A−13)100質
量部に対する芳香族ビニル系重合体粒子(B−1)の混
合量が3.5質量部になるような割合で混合してラテッ
クス混合物とし、以下実施例1の(3)と同様にして、
粒子混合物(AB−13)を調製した。 (3)PET系樹脂組成物の調製:粒子混合物(AB−
1)の代わりに、上記(2)で得られた粒子混合物(A
B−13)を用いる以外は、実施例1の(4)の(a)
と同様にしてペレット状のマスターバッチ(PET系樹
脂)を製造した後、実施例1の(4)の(b)と同様に
して所定厚さの平板状成形品を製造し、それを用いて、
上記した方法でその耐衝撃性試験および透明性試験を上
記した方法で行ったところ、下記の表8に示すとおりで
あった。
【0087】《比較例6》 (1)コア・シェル構造重合体粒子[コア・シェル重合
体粒子(A−14)]の製造:下記の表4に示す化合物
を表4に示す量で用いて、実施例1の(1)と同様にし
て、コア・シェル重合体粒子(A−14)のラテックス
を製造した。この比較例6の(1)で得られたコア・シ
ェル重合体粒子(A−14)におけるコア(i)の平均
粒径、コア・シェル重合体粒子(A−14)の平均粒
径、シェル(ii)の厚み、屈折率並びにコア(i)とシ
ェル(ii)のガラス転移温度を上記した方法で測定した
ところ、下記の表4に示すとおりであった。 (2)PET系樹脂組成物の調製:粒子混合物(AB−
1)の代わりに、上記(1)で得られたコア・シェル重
合体粒子(A−14)を用いた以外は、実施例1の
(4)の(a)と同様にしてペレット状のマスターバッ
チ(PET系樹脂)を製造した後、実施例1の(4)の
(b)と同様にして所定厚さの平板状成形品を製造し、
それを用いて、上記した方法でその耐衝撃性試験および
透明性試験を上記した方法で行ったところ、下記の表8
に示すとおりであった。
【0088】《比較例7》 (1)コア・シェル構造重合体粒子[コア・シェル重合
体粒子(A−15)]の製造: (a) 下記の表4に示す化合物を表4に示す量で使用
して、実施例1の(1)の(a)と同様にして、コア
(i)を形成するためのシード重合を行った後、1時間
熟成した。これにより得られたコア(i)用の重合体粒
子の平均粒径を上記した方法で測定したところ、下記の
表4に示すとおりであった。 (b) 次いで、下記の表4に示す化合物を表4に示す
量で使用して、実施例1の(1)の(c)と同様の方法
で、シェル(ii)を形成するためのシード重合を行っ
て、コア・シェル重合体粒子(A−15)のラテックス
を製造した。この比較例7で得られたコア・シェル重合
体粒子(A−15)におけるコア(i)の平均粒径、コ
ア・シェル重合体粒子(A−15)の平均粒径、シェル
(ii)の厚み、屈折率並びにコア(i)とシェル(ii)
のガラス転移温度を上記した方法で測定したところ、下
記の表4に示すとおりであった。 (2)PET系樹脂組成物の調製:粒子混合物(AB−
1)の代わりに、上記(1)で得られたコア・シェル重
合体粒子(A−15)を用いる以外は、実施例1の
(4)の(a)と同様にしてペレット状のマスターバッ
チ(PET系樹脂)を製造した後、実施例1の(4)の
(b)と同様にして所定厚さの平板状成形品を製造し、
それを用いて、上記した方法でその耐衝撃性試験および
透明性試験を上記した方法で行ったところ、下記の表8
に示すとおりであった。
【0089】《参考例1》実施例1で用いた結晶性PE
T系樹脂[結晶性PET(株式会社クラレ製「KS75
0RC」)と非晶性PET(イーストマンケミカル社製
「GN071」)の800/95(質量比)の混合物]
のみを用いて、実施例1の(4)の(b)と同様にして
射出成形を行って、所定厚さの平板状成形品を製造し、
それを用いて、上記した方法でその耐衝撃性試験および
透明性試験を上記した方法で行ったところ、下記の表8
に示すとおりであった。
【0090】《参考例2》実施例1の(3)で用いた非
晶性PET系樹脂(イーストマンケミカル社製「GN0
71」)を単独で用いて、実施例1の(4)の(b)と
同様にして射出成形を行って、所定厚さの平板状成形品
を製造し、それを用いて、上記した方法でその耐衝撃性
試験および透明性試験を上記した方法で行ったところ、
下記の表8に示すとおりであった。
【0091】なお、以下の表において、「部」は質量部
を示す。また、以下の表1〜4で用いた略号と化合物の
内容は次のとおりである。 ・St:スチレン ・MMA:メチルメタクリレート ・MA:メチルアクリレート ・MMA:メタクリル酸 ・BA:ブチルアクリレート ・ALMA:アリルメタクリレート ・DVB:ジビニルベンゼン ・HDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート ・SDOSS:ジオクチルコハク酸ナトリウム(界面活
性剤) ・KPS:ペルオキソ2硫酸カリウム(重合開始剤)
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】
【表5】
【0097】
【表6】
【0098】
【表7】
【0099】
【表8】
【0100】上記の表1〜表8の結果にみるように、上
記の要件〜を満たすコア・シェル構造重合体粒子を
PET系樹脂に含有させた実施例5および6のPET系
樹脂組成物、並びに要件〜を満たすコア・シェル構
造重合体粒子と芳香族ビニル系重合体粒子との粒子混合
物をPET系樹脂に含有させた実施例1〜4および実施
例7〜8のPET系樹脂組成物では、これらの実施例の
PET系樹脂組成物から製造した成形品は、耐衝撃性に
優れ、しかも全光線透過率が82%以上で、ヘイズ値が
9.7%以下であり、透明性に極めて優れている。
【0101】一方、比較例1、2および6のPET系樹
脂組成物では、PET系樹脂に配合したコア・シェル構
造重合体粒子におけるコア(i)の平均粒径が530n
mまたは130nmであって、本発明における要件か
ら外れているために、PET系樹脂組成物から得られる
成形品の透明性が実施例1〜8に比べて大幅に劣ってお
り、しかも比較例2および6では耐衝撃性の向上効果も
低い。また、比較例3および4のPET系樹脂では、P
ET系樹脂に配合したコア・シェル構造重合体粒子にお
けるシェル(ii)の厚みが27.1nmまたは4.7m
mであって、本発明における要件から外れているため
に、比較例3では成形品の透明性が劣っており、また比
較例4では成形品の耐衝撃性が低いものとなっている。
さらに、比較例5では、PET系樹脂に配合したコア・
シェル構造重合体粒子におけるシェル(ii)の含有割合
が7.0質量%であって、本発明における要件を満た
していないために、成形品の透明性および耐衝撃性のい
ずれも大きく劣っている。また、比較例7では、PET
系樹脂に配合したコア・シェル構造重合体粒子における
コア(i)の平均粒径が130nmおよびシェル(ii)
の厚みが1.14nmであって、本発明における要件
およびを満たしていないために、成形品の耐衝撃性が
極めて低いものとなっている。
【0102】
【発明の効果】要件〜を備える本発明のコア・シェ
ル構造重合体粒子をPET系樹脂に配合すると、極めて
高い透明性を保ちながら、耐衝撃性の改善されたPET
系樹脂組成物および成形品を得ることができる。要件
〜を備える本発明のコア・シェル構造重合体粒子と芳
香族ビニル系重合体粒子からなる本発明の粒子混合物
は、粘着性が低減されていてコア・シェル構造重合体粒
子同士の膠着や凝集がなく、取り扱い性、PET系樹脂
への分散性に優れており、該粒子混合物をPET系樹脂
に配合してなる本発明のPET系樹脂組成物および成形
品は、透明性および耐衝撃性により優れている。要件
〜を備える本発明のコア・シェル構造重合体粒子は、
共役ジエンに由来する構造単位を含まないために、耐候
性に優れており、そのため該コア・シェル構造重合体粒
子を配合したPET系樹脂組成物の良好な耐候性を発揮
する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 51:06) C08L 51:06) Fターム(参考) 4F071 AA22X AA33X AA46 AA77 AD02 AH05 AH07 AH12 AH17 BC01 BC04 BC07 4J002 BN202 CF061 GC00 GG01 GK00 GM00 GN00 GQ00 4J011 AA05 PA65 PB40 4J026 AA17 AA18 AA45 AA46 AC15 BA05 BA07 BA25 BA27 BA28 BB03 DA04 DA07 DA16 DB04 DB08 DB16 DB24 FA07 GA06 GA08 GA09 GA10

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 芳香族ビニル化合物から主としてな
    る重合体よりなるコア(i)とアルキル基の炭素数が2
    〜8であるアルキルアクリレートから主としてなる重合
    体よりなるシェル(ii)を有するコア・シェル構造重合
    体粒子であって; シェル(ii)の含有割合が、コアシェル構造重合体
    粒子の質量に基づいて、10質量%以上である; コア(i)の平均粒径が150〜500nmであ
    る;および、 シェル(ii)の厚みが5〜25nmである;ことを
    特徴とするコア・シェル構造重合体粒子。
  2. 【請求項2】 コア(i)が、芳香族モノビニル化合物
    および芳香族ポリビニル化合物から主としてなる重合体
    よりなる請求項1に記載のコア・シェル構造重合体粒
    子。
  3. 【請求項3】 シェル(ii)が、アルキル基の炭素数が
    2〜8であるアルキルアクリレートから主としてなり且
    つ多官能性(メタ)アクリレートおよび/または(メ
    タ)アクリル酸に由来する構造単位を有している重合体
    よりなる請求項1または2に記載のコア・シェル構造重
    合体粒子。
  4. 【請求項4】 コア(i)およびシェル(ii)の一方ま
    たは両方が、多層構造を有している請求項1〜3のいず
    れか1項に記載のコア・シェル構造重合体粒子。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載のコ
    ア・シェル構造重合体粒子、および芳香族ビニル化合物
    から主としてなる重合体粒子からなる粒子混合物。
  6. 【請求項6】 芳香族ビニル化合物から主としてなる重
    合体粒子の平均粒径が50〜120nmである請求項5
    に記載の粒子混合物。
  7. 【請求項7】 コア・シェル構造重合体粒子の質量に対
    して、芳香族ビニル化合物から主としてなる重合体粒子
    を1〜15質量%の割合で含有する請求項5または6に
    記載の粒子混合物。
  8. 【請求項8】 ラテックスブレンド法により得られたも
    のである請求項5〜7のいずれか1項に記載の粒子混合
    物。
  9. 【請求項9】 ポリエチレンテレフタレート系樹脂、お
    よび請求項1〜4のいずれか1項に記載のコア・シェル
    構造重合体粒子または請求項5〜8のいずれか1項に記
    載の粒子混合物を含有することを特徴とするポリエチレ
    ンテレフタレート系樹脂組成物。
  10. 【請求項10】 [ポリエチレンテレフタレート系樹
    脂]:[請求項1〜4のいずれか1項に記載のコア・シ
    ェル構造重合体粒子または請求項5〜8のいずれか1項
    に記載の粒子混合物]の含有割合が、70:30〜9
    9:1(質量比)である請求項9に記載のポリエチレン
    テレフタレート系樹脂組成物。
  11. 【請求項11】 請求項9または10のポリエチレンテ
    レフタレート系樹脂組成物よりなる成形品。
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