JP2002233930A - Ncプログラムの作成方法、ncプログラムの作成装置及び記録媒体 - Google Patents

Ncプログラムの作成方法、ncプログラムの作成装置及び記録媒体

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JP2002233930A
JP2002233930A JP2001370644A JP2001370644A JP2002233930A JP 2002233930 A JP2002233930 A JP 2002233930A JP 2001370644 A JP2001370644 A JP 2001370644A JP 2001370644 A JP2001370644 A JP 2001370644A JP 2002233930 A JP2002233930 A JP 2002233930A
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cutting
end mill
feed path
program
machining
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JP2001370644A
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English (en)
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Yoshiaki Kakino
義昭 垣野
Heizaburo Nakagawa
平三郎 中川
Hirotoshi Otsuka
裕俊 大塚
Masakazu Tabata
雅和 田端
Hisashi Otsubo
寿 大坪
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Yasuda Kogyo KK
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GRAPHIC PROD KK
Yasuda Kogyo KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 エンドミルの送り経路の全域に亘って適正な
送り速度を予め定め、送り経路との組み合わせにより、
常に略一定の切削抵抗下にて加工を行わせ得るNCプロ
グラムを自動作成する。 【解決手段】 エンドミルの送り経路の各部における前
記エンドミルの各切れ刃による最大切りくず厚さtm
び切削円弧長Lを算出し、更に必要な場合、先端切削関
与角θを算出し、これらを説明変数とする応答曲面に適
用して、送り経路の各部での切削抵抗Fxy又はFxyz
予測値を求め、求められた切削抵抗Fxy又はFxyz の予
測値が適正値になるように、最大切りくず厚さtm の算
出式に含まれる送り速度を決定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンドミルを工具
とするNC工作機械により、金型等の複雑な形状の加工
を行わせる際に、加工用の工具の摩耗及び損傷を低減し
ながら、高能率での加工を可能とするNCプログラムを
作成する方法に関し、またこの方法の実施に用いる装置
及び記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】種々の
工業製品の成形用の金型は、多くの場合、エンドミルを
工具とするNC工作機械により、素材を切削加工するこ
とにより製造される。このような金型の製造は、まずC
AD(Computer Aided Design)システムによる形状設計
を行い、次いでCAM(Computer Aided Manufacturin
g)システムにより加工のための工程設計を行って、こ
の工程設計の結果に従ってNC工作機械に加工動作を行
わせる手順により実現されている。
【0003】ところが、以上の手順においてCAMシス
テムでの工程設計は、CADシステムから与えられる形
状データに基づいて、加工に用いる工具(エンドミル)
を選択し、選択された工具の送り経路を決定する等、幾
何的な形状処理に限られているのが現状であり、実際の
加工を行わせるには、CAMシステムにおいてなされた
工程設計の結果に基づいてNCプログラムを作成する必
要がある。
【0004】このNCプログラムは、前述の如く決定さ
れる工具の送り経路の各部における加工条件を設定する
ものである。この設定は、一般的には、NC工作機械の
オペレータが過去の経験に従って手作業により行われて
おり、例えば、前記エンドミルを工具とする場合、主た
る加工条件として送り経路上での送り速度、より具体的
には、エンドミルの周上に並ぶ切刃の1刃当りの送り量
(mm/刃)が設定される。
【0005】しかしながら、NCプログラムの作成にお
いては、工具の摩耗を抑制し、またチッピング等の工具
の損傷を防止して工具寿命を延ばす一方、加工時間を可
及的に短縮するという相反する要求を併せて満足するこ
とが切望されており、このような要求を満足するNCプ
ログラムの作成は、多くの経験を有する熟練したオペレ
ータにとっても多大の時間を必要とする煩雑な作業であ
る上、特に、複雑な加工形状を有する金型加工用のNC
プログラムの作成においては、送り経路の全般に亘って
最適な送り速度を設定することは実質上不可能である。
【0006】このような事情によりNCプログラムの作
成においては、工具の摩耗、損傷の防止を優先し、送り
速度等の加工条件を適宜の安全度を見込んで低めに設定
するようにしており、加工時間の短縮という一方の要求
を満足し得ないという問題があった。
【0007】このような問題を解決するため、予め作成
されたNCプログラムに従って加工が行われている間、
工具に実際に加わる負荷を検出して、この検出結果に基
づいて加工条件の数値制御指令をフィードバック補正し
つつ加工を行わせるようにしたNC工作機械が研究され
ている。更に、再公表特許WO98/19822号公報
には、工具に実際に加わる負荷を検出し、この検出結果
に基づいて現状よりも先の送り経路上での加工状態をシ
ミュレートして、この結果に基づいて加工条件の数値制
御指令をフィードフォワード補正しつつ加工を行わせる
ようにしたNC工作機械が開示されている。
【0008】ところが、工具負荷の検出結果に基づいて
フィードバック制御を行う前者の装置においては、急激
な負荷変動の発生時に加工条件の補正が遅れる虞れがあ
り、この不具合を解消すべく制御ゲインを大とした場
合、前記負荷変動に応じて過剰な補正が行われる虞れが
あり、これらを回避すべく行われる制御ゲインの適正な
設定が難しいという問題があった。
【0009】一方、工具負荷の検出結果に基づいてフィ
ードフォワード制御を行う後者の装置においては、削り
屑の工具への巻き付き、素材特性の局所的な変動等の外
乱要因による負荷変動の検出に応じてシミュレーション
が実施されたとき、この結果に基づいて加工条件の誤っ
た補正がなされる虞れがあり、この不具合を解消すべく
制御ゲインを小とした場合、正規の負荷変動の発生時に
加工条件の補正が遅れる虞れがあり、制御ゲインの適正
な設定が難しい。
【0010】また、前述したフィードバック制御及びフ
ィードフォワード制御における不具合を相互に補完すべ
く、両者を併せて実施することも可能であるが、この場
合、制御系の構成が複雑となり、夫々の制御ゲインの適
正な設定が一層難しくなるという問題がある。
【0011】本発明は斯かる事情に鑑みてなされたもの
であり、CAMシステム等においてなされる工程設計に
より決定された送り経路が与えられたとき、この送り経
路の各部における加工条件を、簡易な方法により予め決
定することができ、この加工条件を含めてNCプログラ
ムを自動作成することを可能とするNCプログラムの作
成方法を提供し、またこの方法の実施に使用する装置及
び記録媒体を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明に係るNCプログ
ラムの作成方法は、周上に複数の切刃を有し軸回りに回
転するエンドミルを、加工面上に設定された送り経路に
沿って送り移動させて、前記加工面を所定形状に加工せ
しめるNC加工のためのプログラムを作成する方法にお
いて、加工に用いるエンドミルのサイズ、該エンドミル
の径方向の切り込み深さ、及び切刃一枚当たりの移動量
とを用い、前記送り経路の各部における前記エンドミル
の各切刃による切削前の最大切りくず厚さ、切削円弧長
及び先端切削関与角を算出し、これらの算出結果を、前
記切削前の最大切りくず厚さ、切削円弧長及び先端切削
関与角を説明変数とする応答曲面に適用して、前記送り
経路の各部での切削抵抗の予測値を求め、求められた切
削抵抗の予測値を適正値に保つべく、前記送り経路の各
部におけるエンドミルの送り速度を決定することを特徴
とする。
【0013】また本発明に係るNCプログラムの作成装
置は、周上に複数の切刃を有し軸回りに回転するエンド
ミルを、加工面上に設定された送り経路に沿って送り移
動させて、前記加工面を所定形状に加工せしめるNC加
工のためのプログラムを作成する装置において、加工に
用いるエンドミルのサイズ、該エンドミルの径方向の切
り込み深さ、及び切刃一枚当たりの移動量とを用い、前
記送り経路の各部における前記エンドミルの各切刃によ
る切削前の最大切りくず厚さ、切削円弧長及び先端切削
関与角を算出する手段と、該手段による算出結果を、前
記切削前の最大切りくず厚さ、切削円弧長及び先端切削
関与角を説明変数とする応答曲面に適用して、前記送り
経路の各部での切削抵抗の予測値を求める手段と、該手
段により求められた切削抵抗の予測値を適正値に保つべ
く、前記送り経路の各部におけるエンドミルの送り速度
を決定する手段とを備えることを特徴とする。
【0014】更に本発明に係る記録媒体は、周上に複数
の切刃を有し軸回りに回転するエンドミルを、加工面上
に設定された送り経路に沿って送り移動させて、前記加
工面を所定形状に加工せしめるNC加工のためのプログ
ラムを作成する手順をコンピュータに実行させるコンピ
ュータプログラムを記録してあるコンピュータ読み取り
可能な記録媒体であって、加工に用いるエンドミルのサ
イズ、該エンドミルの径方向の切り込み深さ、及び切刃
一枚当たりの移動量とを用い、前記送り経路の各部にお
ける前記エンドミルの各切刃による切削前の最大切りく
ず厚さ、切削円弧長及び先端切削関与角をコンピュータ
に算出させるプログラムコード手段と、これらの算出結
果を前記切削前の最大切りくず厚さ、切削円弧長及び先
端切削関与角を説明変数とする応答曲面に適用して、前
記送り経路の各部での切削抵抗の予測値をコンピュータ
に求めさせるプログラムコード手段と、求められた切削
抵抗の予測値を適正値に保つべく、前記送り経路の各部
におけるエンドミルの送り速度をコンピュータに決定さ
せるプログラムコード手段とを含むコンピュータプログ
ラムを記録してあることを特徴とする。
【0015】本発明においては、CADシステムによる
形状設計、CAMシステムによる工程設計を経て決定さ
れたエンドミルの送り経路の各部において、対応する加
工面との間の幾何学的な関係に基づいてエンドミルの各
切刃による切削前の最大切りくず厚さ、切削円弧長及び
先端切削関与角を算出し、得られた算出結果をこれらを
説明変数とする応答曲面に適用して、エンドミルに加わ
る切削抵抗の予測値を高精度に求め、各位置での予測値
が予め設定された適正値に保たれるように、切削前の最
大切りくず厚さを求める式中に含まれる送り速度を決定
する。なお、ここでの送り速度とは、前述した如く、エ
ンドミルの周上に並ぶ切刃の1刃当りの送り量(mm/
刃)である。
【0016】
【発明の実施の形態】以下本発明をその実施の形態を示
す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係るNC
プログラム作成方法(以下本発明方法という)の実施に
用いるNCプログラム作成装置の構成を示すブロック図
である。本図に示す如くNCプログラム作成装置1は、
演算処理部としてのCPU(Central Processing Unit
)10、本発明方法の手順を記憶させてあるROM(Rea
d Only Memory)11、加工前後の加工面の形状、加工に
用いるエンドミルのサイズ、該エンドミルに設定された
送り経路等、後述する演算に用いる変数値(演算途中の
状態量を含む)を一時記憶するRAM(Random Access
Memory)12を備えるコンピュータとして構成されてい
る。
【0017】図示のNCプログラム作成装置1は、入出
力インターフェイス13を介してCAMシステム2及びN
C制御装置3に接続されている。CAMシステム2にお
いては、図示しないCADシステムにより設計された被
加工物(金型)を切削加工により製作するための工程設
計が行われる。なおこの工程設計は、加工の手順(加工
に用いるエンドミルの選択、選択されたエンドミルの送
り経路の決定等)を定めると共に、夫々の手順における
作業内容を定め、更に、CLデータを作成するまでの過
程を含んでいる。この工程設計の結果は、入出力インタ
ーフェイス13を介してNCプログラム作成装置1に与え
られており、NCプログラム作成装置1においては、C
AMシステム2から与えられる工程設計の結果を用いて
NCプログラムの作成が行われる。
【0018】NC制御装置3は、NCプログラム作成装
置1において作成され、入出力インターフェイス13を介
して与えられるNCプログラムに従って、図示しないN
C工作機械に加工を行わせるための制御動作をなす装置
である。なお、図1においては、NCプログラム作成装
置1とCAMシステム2及びNC制御装置3との間の情
報の授受をオンラインにて行わせる構成としてあるが、
各装置をオフラインに構成し、相互間の情報の授受を、
磁気ディスク、光ディスク等の適宜の記録媒体を介して
行わせることも可能である。
【0019】また、以下の演算を行うNCプログラム作
成装置1をCAMシステム2に含めて構成し、CADシ
ステムから与えられる金型の形状データに基づいて、工
程設計からNCプログラムの作成までを一貫して行わせ
るようにしてもよく、更には、前記CADシステムをも
含めて構成し、金型設計から、工程設計を経てNCプロ
グラムの作成までを一貫して行わせることも可能であ
る。
【0020】更に、NCプログラム作成装置1には、キ
ーボード、マウス等の入力操作部14がオペレータによる
操作可能に備えられ、また、CRTディスプレイ、液晶
ディスプレイ等の表示部15が、後述の如く行われる演算
の各段階における各種の表示のために備えられており、
該表示部15による表示に従う入力操作部14の操作によ
り、後述の如く行われる演算処理の各段階におけるオペ
レータの介入が可能とされている。
【0021】以上の如く構成されたNCプログラム作成
装置1においては、前述の如くCAMシステム2から工
程設計の結果として与えられる金型加工用のエンドミル
の送り経路の各部において、該エンドミルの送り速度を
決定する演算が行われ、この演算により得られた送り速
度と前記送り経路との組み合わせにより金型加工用のN
Cプログラムが作成される。
【0022】図2及び図3は、エンドミルによる加工の
様子を示す斜視図である。図2に示すエンドミルEは、
先端が平坦化された円柱形状を有し、先端面の中央部か
ら放射状に延設され、該端面近傍の外周面に螺旋状に周
設された複数枚の切刃を備えてなるストレートエンドミ
ルであり、また図3に示すエンドミルEは、先端が半球
形に成形された円柱形状を有し、全端の半球面の全面に
その中央部から放射状に延設された切刃を備えてなるボ
ールエンドミルである。これらによる被加工物5の加工
は、前記エンドミルEを各図中に矢符により示す如く回
転させつつ、白抜矢符により示す向きに送り移動せしめ
て行われる。
【0023】図4は、エンドミルによる加工の様子を示
す平面断面図である。エンドミルEによる加工の様子
は、軸に直交する方向の一断面において見た場合、前記
ストレートエンドミル及びボールエンドミルの双方にお
いて同じであり、図中にハッチングを施して示す被加工
物(金型)5の一断面は、図示の如く円形断面を有する
エンドミルEが、図中に矢符により示す向きに回転しつ
つ、前記一断面の外側に設定された送り経路6に沿っ
て、図中に白抜矢符により示す向きに送り移動せしめら
れる間に、前記エンドミルEの外面に前述の如く備えら
れた切刃により切削加工される。
【0024】前記被加工物5の一断面の外面形状は、図
中に5aとして示す直線部、図中に5bとして示す内側円弧
部、及び図中に5cとして示す外側円弧部の組み合わせに
よって構成される。内側円弧部5bは、曲率中心が被加工
物5の外側に位置し、内側に向けて凸となった部分であ
り、逆に外側円弧部5cは、曲率中心が被加工物5の内側
に位置し、外側に向けて凸となった部分である。このよ
うな内側円弧部5a及び外側円弧部5cは、円、楕円、放物
線、双曲線等、種々の形態をなす曲線の適宜の組み合わ
せにより構成され得るが、本発明においては、これらの
円弧部5b,5cの夫々を、単一の円弧又は複数の円弧の組
み合わせにより近似し、更に必要であれば、単一の円弧
と直線との組み合わせ又は複数の円弧と直線との組み合
わせにより近似して以下の手順を実行する。
【0025】以上の如き送り経路6は、CAMシステム
2における工程設計の過程において加工に用いるエンド
ミルEの軸方向の切り込み量Ad (図2及び図3参照)
に対応するピッチ毎に与えられる被加工物5の加工対象
断面の夫々に対し、素材の形状から最終的な金型の仕上
げ形状に至るまで、径方向の切り込み深さRd (図2及
び図3参照)で与えられるピッチ毎に複数段階に亘って
設定される。このように設定される送り経路6は、前記
エンドミルEのサイズ、種類等、以下に示す送り速度の
演算に必要な他の情報と共にNCプログラム作成装置1
に与えられる。
【0026】図5は、NCプログラム作成装置1におい
て実施される送り速度の演算方法の説明図であり、図5
(a)は、被加工物5の直線部5aの加工状態を示してい
る。本図に示す如く直線部5aの加工は、これと平行をな
して設定された送り経路6上に軸心を沿わせたエンドミ
ルEが、前述の如く、図中に矢符により示す向きに回転
しつつ白抜矢符により示す向きに送り移動せしめられる
間に、径方向の切り込み深さ(=Rd )分を逐次削り取
ることによりなされる。このときエンドミルEには、よ
り詳しくは、該エンドミルEの周上に並ぶ切刃には、送
り移動の方向の切削抵抗(=Fy )と送り移動の方向と
直交する方向の切削抵抗(=Fx )との合力が、送り経
路6を含む2次元平面(XY平面)内での切削抵抗(=
xy)として加わる。なお、以下に示す手順にて行われ
る本発明方法は、エンドミルEを前記矢符に示す向きに
回転させて行われるダウンカットに限らず、エンドミル
Eを矢符と逆向きに回転させて行われるアップカットに
おいても適用可能であることは言うまでもない。
【0027】本発明においては、前記送り経路6の各部
においてエンドミルEに加わる切削抵抗Fxyを予測し、
この予測値を、切刃の摩耗、損傷を防ぐことを条件とし
て定められた適正範囲内に保つべく、前記エンドミルE
の送り速度を決定する。このためには、切削加工中のエ
ンドミルEに加わる切削抵抗Fxyの予測値を求める必要
があり、この予測は、以下に示す如く、各種の設計問題
においてその最適化に利用されている近似化手法である
応答曲面法によって行う。なお、エンドミルEの法線方
向の倒れによる切り残し量の変動を防止し、切り残し量
を一定とすることを目的として、送り移動の方向と直交
する方向の前記切削抵抗Fx の予測値を同様にして求め
ることもまた可能である。
【0028】ここで、加工に用いられているエンドミル
Eが、図2に示すストレートエンドミルである場合、該
エンドミルEに加わる切削抵抗Fx ,Fy は、軸方向の
切り込み量Ad の長さ範囲内の各断面において略同じで
あり、これらの合力として与えられる切削抵抗Fxyの予
測値は、前記切り込み量Ad が一定であるという加工条
件下において、図5中にtm として示す切削前の最大切
りくず厚さと、同じくLとして示す切削円弧長とを説明
変数とする2変数の応答曲面に基づいて求めることがで
きる。
【0029】ここで、切削前の最大切りくず厚さ(以下
単に切りくず厚さという)tm は、エンドミルEの周方
向に並ぶ複数枚の切刃の夫々が削り取ると予想される最
大切りくずの厚さであり、また切削円弧長Lは、切削中
のエンドミルEの周面が被加工物5の加工面に接触する
部分の長さであって、これらは、図5(a)に示す直線
部5aの切削状態においては、幾何学的な関係から下式に
より求められる。
【0030】 L=R・Aen …(1) tm =fz ・sinAen …(2)
【0031】これらの式中のRは、エンドミルEの半径
であり、CAMシステム2による工程設計の結果として
NCプログラム作成装置1に与えられる既知数である。
またfz は、切刃1枚当りの送り量(mm/刃)であり、
送り経路6上でのエンドミルEの送り速度(mm/min
)、回転数及び周上に並ぶ切刃の刃数を乗じて求めら
れる。以下の手順においては、この切刃1枚当りの送り
量fz を送り速度として求める。更にAenは、平面切削
関与角、具体的には、切削中のエンドミルEの周面が被
加工物5に接触する部分の加工面内での平面的な中心角
である。この切削関与角Aenは、エンドミルEの半径R
と径方向の切り込み深さRd とを用いて下式により算出
される。
【0032】 Aen=cos-1{(R−Rd )/R} …(3)
【0033】いま、切削に関与する切刃の数が、エンド
ミルEの位相及び回転角の如何に拘らず常に1枚である
とすると、該当する切刃について(1),(2)式によ
り求められるL,tm がエンドミルEに加わる切削抵抗
xyを支配する。
【0034】図6は、エンドミルEの周上に並ぶ切刃の
幾何学的な配置を示す図である。図の横軸は、エンドミ
ルEの周方向位置、縦軸は、同じく軸方向位置を夫々示
している。エンドミルEの切刃は、該エンドミルEの外
周に螺旋状をなして形成されており、図示の如く、横軸
に対して所定の傾斜角度αを有し、該横軸に沿って並設
数に対応するピッチにて並ぶ直線刃として表される。
【0035】図6において、エンドミルEの回転は横軸
方向の移動に対応するから、エンドミルEの軸方向の切
り込み量がAd である場合、適宜の回転位置において切
削に関与する切刃の数は、縦軸方向にAd なる長さ範囲
(図中にハッチングを施して示す範囲)内に存在する刃
数となる。従って、前記切り込み量Ad を切刃の並設ピ
ッチに対応する長さに設定することにより、図示の如
く、常に1枚の切刃が切削に関与する加工状態を得るこ
とができる。
【0036】例えば、周方向に並ぶ切刃の前記傾斜角度
αが45°であり、直径が10mmである6枚刃のエンドミル
E(ストレートエンドミル)を用いる場合、軸方向の切
り込み量Ad を5.24mm(=10π/6)としたとき、常に
1枚の切刃が切削に関与する前述した加工状態を実現す
ることができる。以下の説明においては、このような加
工状態が実現されているものとする。
【0037】なお、前述した切り込み量Ad (=5.24m
m)の整数倍の切り込み量を設定することにより、複数
枚の切刃が同時に切削に関与する加工状態を得ることも
可能である。この場合、前記切削抵抗Fxyを複数枚の切
刃により分担することとなるから、以下の手順にて求め
られる送り速度を切削に関与する切刃の枚数を考慮して
補正した送り速度を採用すればよい。
【0038】また、前記のいずれとも異なる任意の切り
込み量が設定された場合、切削に関与する切刃の数がエ
ンドミルEの回転中に変化するが、この場合、多い方の
数の切刃が切削に関与するとして以下の演算を行えば、
得られた送り速度は、切刃の摩耗、損傷に対して安全側
となる。
【0039】応答曲面は、複数の説明変数Xi (i=1
〜n)により予測値Yを求めるための2次の多項式とし
て与えられるものであり、説明変数が2つ(X1
2 )である場合の応答曲面は、一般的には下式により
与えられる。
【0040】 Y=β0 +β1 1 +β2 2 +β111 2 +β222 2 +β121 2 …(4)
【0041】従って、前記切りくず厚さtm 及び切削円
弧長Lを説明変数とし、前記切削抵抗Fxyを予測値とす
る応答曲面は、前記(4)式のX1 ,X2 をtm ,Lに
置き換え、同じくYをFxyに置き換えてなる下式により
与えられる。
【0042】 Fxy=β0 +β1 m +β2 L+β11m 2 +β222 +β12m L …(5)
【0043】式中の未知の係数βは、回帰分析により最
小二乗法を用いて、複数の測定点と夫々に対する応答値
との組を利用して求められる。ここで、切削円弧長L
は、前記CAMシステム2から与えられる工程設計の結
果を前記(1)式に適用することにより一義に決定され
るのに対し、前記(2)式により表される切りくず厚さ
m は、前述した如く、エンドミルEの送り速度の関数
として与えられる切刃1枚当りの移動量fz を含んでい
る。従って、適宜の送り速度を仮定して切りくず厚さt
m を定め、(1)式により決定された切削円弧長Lと共
に前記(5)式に適用して切削抵抗Fxyの予測値を求め
ることができ、このようにして求められた予測値が、前
述の如く、切刃の摩耗、損傷を防ぐことを条件として定
められた適正範囲内に収まるようにすれば、適正な送り
速度を決定することができる。
【0044】なお、(5)式に示す数学モデルが成立す
るためには、切削に伴って発生する切りくずがエンドミ
ルEに巻き付くことなく排出され、切削抵抗の増加原因
とならないことが必要である。近年の金型製作において
は、高硬度の素材を超硬合金製のエンドミルにより直接
切削する加工法が普及しており、この場合、適切な加工
条件を選択すると、切りくずの巻き付きが殆ど生じない
良好な切削状態を保つことが可能であり、(5)式を用
いて切削抵抗Fxyを高精度に予測することができる。
【0045】ここで、切削円弧長Lを求めるための
(1)式、及び切りくず厚さtm を求めるための(2)
式は、図5(a)に示す直線部5aの切削状態下にて成立
するものであり、図5(b)に示す内側円弧部5bの切削
においては、切削円弧長Lは大きくなり、切りくず厚さ
m は小さくなる。逆に、図2に示す外側円弧部5cの切
削においては、切削円弧長Lは小さくなり、切りくず厚
さtm は大きくなる。
【0046】内側円弧部5b及び外側円弧部5cにおける
L,tm は、当該円弧部5b,5cの曲率半径R0 (図2参
照)の影響を受ける。図7は、実験により得られた切削
抵抗が一定となる曲線であり、種々の曲率半径R0 のも
とでの切削円弧長Lと切りくず厚さtm との関係を示し
ている。図中のS点は、曲率半径R0 が無限大、即ち、
直線部5aにおけるL,tm の値を示しており、前記S点
の左側に並ぶ各点は、内側円弧部5bにおけるL,tm
値を、同じく右側に並ぶ各点は、外側円弧部5cにおける
L,tm の値を夫々示している。また各点に付した数値
は、エンドミルEの半径Rに対する円弧部5b,5cの曲率
半径R0 の比である。
【0047】本図に示す如く、曲率半径R0 が大きい領
域での内側円弧部5bの切削、及び略全領域での外側円弧
部5cの切削、即ち、図中のA領域での切削においては、
前記切削円弧長L及び切りくず厚さtm の変化程度が相
互に対応し、前記S点を通るなだらかな曲線上に分布す
るのに対し、曲率半径R0 が小さい(R0 /Rが1に近
い)領域、即ち、前記A領域から幾何学的に大きく離れ
たB領域での内側円弧部5bの切削においては、切りくず
厚さtm が小さいため、寸法効果により切削特性が大き
く変化し、切削抵抗Fxyが急増することが予想される。
【0048】図8は、種々の曲率半径を有する内側円弧
部5bの切削加工を、直線部5aを対象とした前記(5)式
によって、直線切削での切削抵抗と同じになるように求
められた切刃1枚当りの移動量fz を与えて行った場合
の切削抵抗Fxyを実測した結果を示す図である。この切
削加工は、直径10mmのエンドミルEを用い、径方向の切
り込み深さRd を 0.5mm(一定)として行っている。
【0049】図中の白丸は、切刃1枚当りの移動量fz
を、また黒丸は、切削抵抗Fxyの実測値を夫々示し、更
に破線は、同条件での直線切削におけるFxyの予測値を
示している。本図により前記(5)式によるFxyの予測
値は、曲率半径R0 が15mm以上(R0 /Rが3.0以
上)である条件下において実測値と良好に一致すること
が明らかである。ここで図7を参照すると、R0 /Rが
3.0以上である内側円弧部5bの切削状態は、直線切削
に対応する前記S点を通り、略全領域での外側円弧部5c
の切削状態を示す各点を通るなだらかな直線上に位置し
ており、図7中のA領域内での切削抵抗Fxyは、直線切
削を前提として構成された(5)式を用いて精度良く予
測することが可能である。
【0050】一方、R0 /Rが3.0未満であり、図7
中にBとして示す領域内では、切削円弧長Lと切りくず
厚さtm との関係が前記A領域内でのそれらと明らかに
異なることから、前記(5)式による切削抵抗Fxyの予
測値に高い精度を期待することはできず、切りくず厚さ
m 及び切削円弧長Lを説明変数とし、前記(5)式と
異なる係数γを備える(6)式に従って切削抵抗Fxy
予測値を算出する。
【0051】 Fxy=γ0 +γ1 m +γ2 L+γ11m 2 +γ222 +γ12m L …(6)
【0052】なお、この式中の未知の係数γは、前記β
と同様に、該当する条件下での前記B領域内における複
数の測定点と、夫々に対応する応答値との組を利用し、
最小二乗法によって定めることができる。
【0053】更に、外側円弧部5cの切削状態は、前記図
7に示す如く、R0 /Rが1.6 程度となるまでの広い範
囲に亘ってA領域内に含まれており、前記(5)式によ
る切削抵抗Fxyの正確な予測が可能である。また、A領
域を外れた条件下であったとしても、切削抵抗Fxyの予
測誤差は実測値を上回る側に発生する上、小曲率の外側
円弧部5cの連続長は短いことが多く、前記(5)式によ
るFxyの予測値を用いて送り速度を決定することに何ら
の支障もない。
【0054】下記の表1は、前記(5),(6)式に含
まれる係数β,γの数値例である。
【0055】
【表1】
【0056】図9は、NCプログラム作成装置1の動作
内容を示すフローチャートである。NCプログラム作成
装置1は、CAMシステム2での工程設計により決定さ
れた送り経路を示すデータが与えられ、前記入力操作部
14により所定の動作開始操作がなされたことを条件とし
て動作を開始し、まず、前記送り経路のデータから内側
円弧部5b及び外側円弧部5cを抽出し(ステップ1)、次
いで抽出された内側円弧部5b及び外側円弧部5cの夫々
を、単一の円弧又は複数の円弧の組み合わせにより近似
する(ステップ2)。
【0057】その後、各部分について切りくず厚さtm
及び切削円弧長Lを算出し(ステップ3)、次いで、円
弧近似された内側円弧部5bの内、曲率半径が小さく前述
した領域Bに属する部分を抽出し、これらの部分に対し
ては前記(6)式により表される応答曲面に、また他の
部分に対しては前記(5)式により表される応答曲面に
前記tm ,Lの算出値を適用して切削抵抗Fxyの予測値
を求め(ステップ4)、求められた切削抵抗Fxyの予測
値が予め設定された適正値となるように送り速度を決定
する(ステップ5)。
【0058】なお、以上の説明においては、内側円弧部
5bに対し、その曲率半径に応じて領域Aと領域Bとに分
け、2つの式(5),(6)を使い分けることとしてあ
るが、更に細分化された領域を設定し、各領域に対して
別個の予測式を用いて送り速度を算出するようにしても
よい。また外側円弧部5cについては、直線部5aと共通す
る式(5)を用いることとしてあるが、内側円弧部5bに
おけると同様の予測式を別個に定めてもよい。
【0059】以上の如く各部分での送り速度の算出を終
えた後、NCプログラム作成装置1は、各部分間の移行
部(図2中にA1 ,A2 として示す部分)における送り
速度を求め(ステップ6)、これらを送り経路上の各部
分に対応づけてNCプログラムを作成し(ステップ
7)、作成されたNCプログラムをNC制御装置3に出
力して一連の動作を終える。
【0060】ステップ4においてなされる移行部での送
り速度の算出は、以下の理由により必要なものである。
例えば、図2中に破線により示す如く、エンドミルEが
直線部5aから内側円弧部5bへの移行点A1 に位置してい
る状態において、該エンドミルEによる実際の切削部分
は、内側円弧部5bへの移行を既に終えており、図示の状
態から送り速度の変更を行った場合、直線部5aに対して
求められた大なる送り速度にて内側円弧部5bの切削がな
され、エンドミルEに過大な切削抵抗が加わる不具合が
発生する。同様に、内側円弧部5bから外側円弧部5cへの
移行点A2 に位置しているエンドミルEに対し送り速度
の変更を行った場合、外側円弧部5cの初期の切削が内側
円弧部5bに対して求められた小なる送り速度にてなさ
れ、これらの積み重ねにより、被加工物5全体に対して
必要な加工時間が長くなる不具合が発生する。
【0061】このような不具合をなくすため、ステップ
4においては、移行点A1 ,A2 の前方に移行領域を設
定し、この領域内において移行点A1 ,A2 の前後に対
して夫々求められた送り速度間にて比例的に漸増又は漸
減する送り速度の設定がなされる。前記移行領域は、移
行点A1 ,A2 前後の内側円弧部5b又は外側円弧部5cの
半径R0 、移行点A1 ,A2 における連続形態、使用す
るエンドミルEの半径R、及び径方向の切り込み深さR
d の組み合わせに応じて異なる長さに設定されるべきで
あり、種々の組み合わせについて予め定めておき、夫々
の移行部において適正な長さの移行領域を選定できるよ
うにしておく。
【0062】NCプログラム作成装置1においては、以
上の手順により送り速度が決定されるから、CAMシス
テム2による工程設計の結果として与えられる工具経路
の各部に適正な送り速度を容易に設定することができ、
複雑な形状を有する金型加工用のNCプログラムを、熟
練を要することなく短時間に作成することが可能とな
る。前記送り速度は、工具としてのエンドミルEに過大
な負荷をかけない範囲において可及的に大きい速度に設
定することができ、作成されたNCプログラムに従う加
工の実施により、エンドミルEに発生する摩耗、損傷を
抑制し、高い精度を確保しながら、加工時間の短縮を図
ることができる。
【0063】なお 以上の実施の形態においては、本発
明方法の実施に専用の装置(NCプログラム作成装置
1)を用いる場合について述べたが、前述した手順をコ
ンピュータによる読み取りが可能なプログラムとして記
録してある記録媒体を用い、この記録媒体を汎用のコン
ピュータに装着して前記プログラムをロードさせ、該コ
ンピュータに装備された演算処理部としてのCPU、記
憶部としてのRAM等を利用して本発明方法を実施する
こともできる。
【0064】図10は、このような実施の形態を示す模式
図である。図中7は、光ディスク、磁気ディスク等の記
録媒体であり、この記録媒体7には、図9に示すフロー
チャートの各ステップに対応する処理をコンピュータに
行わせるプログラムコードを含むコンピュータプログラ
ム70が記録してある。
【0065】このような記録媒体7を、キーボード、マ
ウス等の入力手段80、及びCRTディスプレイ、液晶デ
ィスプレイ等の表示手段81を備える汎用コンピュータ8
のディスクドライブ82に装着して読込みのための処理を
行う。これにより記録媒体7に記録されたコンピュータ
プログラム70がコンピュータ8にロードされ、該コンピ
ュータ8により本発明方法を実施することが可能とな
る。
【0066】また以上の実施の形態においては、加工に
用いられるエンドミルEがストレートエンドミルであ
り、軸方向の切り込み量Ad を一定に保って行われる特
殊な加工の場合について説明したが、本発明方法は、加
工に用いられるエンドミルEが図3に示すボールエンド
ミルである場合、軸方向の切り込み量Ad が変動する場
合等、より一般的な加工の場合においても、前記切りく
ず厚さtm 及び切削円弧長Lに加えて、図3中にθとし
て示す先端切削関与角を説明変数とする3変数の応答曲
面を用いることにより全く同様に適用可能である。な
お、図2に示すストレートエンドミルを用いた加工にお
いて、前記先端切削関与角θは軸方向の切り込み量Ad
に相当する。
【0067】図11は、ボールエンドミルにおける先端切
削関与角θの説明図である。本図に示す如く先端切削関
与角θは、エンドミルEの半円形をなす先端部が被加工
物5と接触する各点と、該エンドミルEの軸心線とが軸
断面内においてなす角度であり、切削に関与する部分の
軸断面の外縁に沿った長さを示すものである。本図に示
すような水平面内での加工において、先端切削関与角θ
の切削に関与する範囲は、図からわかるように、0≦θ
≦cos-1(1−Ad /R)となる。
【0068】このような(ボール)エンドミルを用いた
加工においては、該エンドミルEの被加工物5との接触
点の夫々に、前記切削抵抗Fx ,Fy と共に、軸方向の
切削抵抗Fz が発生し、これら夫々の大きさが、当該接
触点における先端切削関与角θによっても変化する。従
って、これらの切削抵抗Fx ,Fy ,Fz の合力として
エンドミルEに加わる切削抵抗Fxyz の予測は、以下に
示す如く、前記切りくず厚さtm 及び切削円弧長Lに加
えて、先端接触関与角θをも説明変数とする応答曲面を
用いてなされる。なおこの場合においても、エンドミル
Eの法線方向の倒れによる切り残し量の変動を防止し、
切り残し量を一定とすることを目的として、送り移動の
方向と直交する方向の前記切削抵抗Fx の予測値を同様
にして求めることもできる。
【0069】説明変数が3つ(X1 ,X2 ,X3 )であ
る場合の応答曲面の一般式は、下式により与えられる。
【0070】 Y=β0 +β1 1 +β2 2 +β3 3 +β111 2 +β222 2 +β333 2 +β121 2 +β131 3 +β232 3 …(7)
【0071】従って、前記切削抵抗Fxyz の予測値は、
前記(7)式のX1 ,X2 ,X3 を切りくず厚さtm
切削円弧長L及び先端接触関与角θに夫々置き換え、同
じくYをFxyz に置き換えてなる下式により求めること
ができる。
【0072】 Fxyz =β0 +β1 m +β2 L+β3 θ+β11m 2 +β222 +β33θ2 +β12m L+β13m θ+β23Lθ …(8)
【0073】下記の表2は、この(8)式中に含まれる
係数βの数値例である。
【0074】
【表2】
【0075】また前記先端切削関与角θは、図12(a)
に示す如く、被加工物5の加工面がエンドミルEとの接
触側が上となるように傾斜している上向き切削状態にお
いては、θ1 ≦θ≦θ2 (但し、θ1 は加工面の傾斜
角)となり、この場合の切削抵抗Fxyz は、下記(9)
式により求められる。
【0076】 Fxyz =f(tm ,L,θ2 )−f(tm ,L,θ1 ) …(9)
【0077】逆に図12(b)に示す如く、被加工物5の
加工面がエンドミルEとの接触側において低くなるよう
に傾斜している下向き切削状態において、先端切削関与
角θは、−θ3 ≦θ≦θ1 となり、この場合の切削抵抗
xyz は、下記の(10)式により求められる。
【0078】 Fxyz =f(tm ,L,θ1 )+f(tm ,L,θ3 ) …(10)
【0079】なお、図12に示す上向き又は下向き切削状
態において、エンドミルEの送り方向は、図中に方向を
示すマークにより示すように、紙面と直交する方向であ
る。
【0080】最後に本発明方法の効果を調べるべく行っ
た実証試験の結果について述べる。この実証試験は、図
13に3面図を示すキャビティ金型を、送り速度を一定と
する従来の方法と切削抵抗の一定化を図った本発明方法
とに従って夫々切削加工し、夫々の加工中に工具として
用いたエンドミルに加わる切削抵抗を測定し、これらを
相互に比較する手順により行った。
【0081】試験条件は、以下に示すとおりである。 工具 φ10mmストレートエンドミル(粗削り用) R5mmボールエンドミル (仕上げ削り用) いずれも、MMCコベルコ社製 切削条件 主軸(エンドミル)回転数 9600rpm 切刃1枚当りの標準送り量fz 0.1mm/刃 軸方向の切り込み量Ad 5.0mm (ストレートエンドミル) 2.0mm (ボールエンドミル) 径方向の切り込み深さRd 0.5mm エンドミル突き出し量 30mm 切削方式 ダウンカット クーラント 0.5MPaドライエア ワーク材質 SKD61(HRC53) エンドミルの振れ ≦5.0μm コレット スプリングコレット 工作機械 安田工業社製YBM850V
【0082】図14は、図13に示すキャビティ金型の粗加
工時における一つの工具パスを示す平面図であり、図15
は、この工具パスに沿った粗加工時における切削抵抗の
測定結果を示す図であり、図15(a)は、送り速度を一
定とする従来方法による結果を、図15(b)は、切削抵
抗の一定化を図った本発明方法による結果を夫々示して
いる。
【0083】図14の工具パスは、直線部5a、内側円弧部
5b及び外側円弧部5cにパターン分けし、夫々にセクショ
ン番号を付して示してある。これらの内のセクション1
は、前後のパスへの移行セクションであり、図示の工具
パスによる切削加工は、STARTとして示す開始位置
を起点とし、セクション2からセクション13への昇順に
行われる。図15には、この間の切削抵抗Fxy(及び
x ,Fy )の測定値がセクション番号と共に示してあ
る。
【0084】図15(a),(b)を比較した場合、従来
方法による図15(a)においては、全セクションに亘っ
て切削抵抗Fxyが変動しているのに対し、本発明方法に
よる図15(b)においては、セクション4から5への移
行部、及びセクション5から6への移行部におけるわず
かな変動部分を除いて、全セクションに亘って切削抵抗
xyが略一定に保たれている。図14を参照すれば、セク
ション4から5への移行部、及びセクション5から6へ
の移行部は、エンドミルの送り方向が略直角に変更され
るコーナ部分であり、本発明方法によれば、切削抵抗が
適正に保たれた望ましい切削状態が前記コーナ部分を除
く工具パスの全般に亘って実現されることが明らかとな
った。
【0085】図15には、単一の工具パスにおける結果が
示されているが、図13に示すキャビティ金型の削り出し
のために、粗削り用のφ10mmストレートエンドミル
及び仕上げ削り用のR5mmボールエンドミルの夫々に
対して設定された全ての工具パス(送り経路)において
同様の結果が得られており、本発明方法によれば、切削
抵抗が一定化された望ましい切削状態を、簡易に、しか
も確実に実現し得ることが確かめられた。
【0086】
【発明の効果】以上詳述した如く本発明に係るNCプロ
グラムの作成方法及びNCプログラムの作成装置におい
ては、別途に設定されたエンドミルの送り経路と加工面
との関係から最大切りくず厚さ、切削円弧長及び先端切
削関与角を算出し、これらを説明変数とする応答曲面に
適用して切削抵抗を予測し、この予測値を適正値に保つ
べく送り経路の各部における送り速度を決定するから、
送り経路の全般に亘ってエンドミルに加わる切削抵抗が
適正に保たれた望ましい切削状態を実現し得るNCプロ
グラムを、高度の熟練及び煩雑な作業を要求することな
く作成することが可能となる。
【0087】また本発明に係る記録媒体においては、汎
用のコンピュータに装着することにより本発明に係るN
Cプログラムの作成方法を実施することができ、望まし
い切削状態を実現し得るNCプログラムを簡易に作成す
ることが可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の実施に用いるNCプログラム作成
装置の構成を示すブロック図である。
【図2】ストレートエンドミルによる加工の様子を示す
斜視図である。
【図3】ボールエンドミルによる加工の様子を示す斜視
図である。
【図4】エンドミルによる加工の様子を示す平面断面図
である。
【図5】送り速度の演算方法の説明図である。
【図6】エンドミルの周上に並ぶ切刃の幾何学的な配置
を示す図である。
【図7】種々の曲率半径のもとでの切削円弧長と最大切
りくず厚さとの関係を示す図である。
【図8】種々の曲率半径を有する内側円弧部の切削加工
時における切削抵抗の実測結果を示す図である。
【図9】NCプログラム作成装置の動作内容を示すフロ
ーチャートである。
【図10】本発明の他の実施の形態を示す模式図であ
る。
【図11】先端切削関与角の説明図である。
【図12】上向き切削状態及び下向き切削状態の説明図
である。
【図13】本発明の実証試験において被加工物として用
いたキャビティ金型の3面図である。
【図14】図13に示すキャビティ金型の粗加工時におけ
る一つの工具パスを示す平面図である。
【図15】図14に示す工具パスに沿った粗加工時におけ
る切削抵抗の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
1 NCプログラム作成装置 2 CAMシステム 3 NC制御装置 5 被加工物 6 送り経路 7 記録媒体 70 コンピュータプログラム
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (71)出願人 000117618 安田工業株式会社 岡山県浅口郡里庄町大字浜中1160番地 (72)発明者 垣野 義昭 京都府京都市左京区岩倉花園町256番5号 (72)発明者 中川 平三郎 滋賀県彦根市開出今町1700番地 (72)発明者 大塚 裕俊 大分県大分市中島西1−5−20 (72)発明者 田端 雅和 東京都豊島区高田2丁目17番22号 株式会 社グラフィックプロダクツ内 (72)発明者 大坪 寿 岡山県浅口郡里庄町大字浜中1160番地 安 田工業株式会社内 Fターム(参考) 5H269 AB05 AB37 BB08 EE01

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 周上に複数の切刃を有し軸回りに回転す
    るエンドミルを、加工面上に設定された送り経路に沿っ
    て送り移動させて、前記加工面を所定形状に加工せしめ
    るNC加工のためのプログラムを作成する方法におい
    て、 加工に用いるエンドミルのサイズ、該エンドミルの径方
    向の切り込み深さ、及び切刃一枚当たりの移動量とを用
    い、前記送り経路の各部における前記エンドミルの各切
    刃による切削前の最大切りくず厚さ、切削円弧長及び先
    端切削関与角を算出し、 これらの算出結果を、前記切削前の最大切りくず厚さ、
    切削円弧長及び先端切削関与角を説明変数とする応答曲
    面に適用して、前記送り経路の各部での切削抵抗の予測
    値を求め、 求められた切削抵抗の予測値を適正値に保つべく、前記
    送り経路の各部におけるエンドミルの送り速度を決定す
    ることを特徴とするNCプログラムの作成方法。
  2. 【請求項2】 周上に複数の切刃を有し軸回りに回転す
    るエンドミルを、加工面上に設定された送り経路に沿っ
    て送り移動させて、前記加工面を所定形状に加工せしめ
    るNC加工のためのプログラムを作成する装置におい
    て、 加工に用いるエンドミルのサイズ、該エンドミルの径方
    向の切り込み深さ、及び切刃一枚当たりの移動量とを用
    い、前記送り経路の各部における前記エンドミルの各切
    刃による切削前の最大切りくず厚さ、切削円弧長及び先
    端切削関与角を算出する手段と、 該手段による算出結果を、前記切削前の最大切りくず厚
    さ、切削円弧長及び先端切削関与角を説明変数とする応
    答曲面に適用して、前記送り経路の各部での切削抵抗の
    予測値を求める手段と、 該手段により求められた切削抵抗の予測値を適正値に保
    つべく、前記送り経路の各部におけるエンドミルの送り
    速度を決定する手段とを備えることを特徴とするNCプ
    ログラムの作成装置。
  3. 【請求項3】 周上に複数の切刃を有し軸回りに回転す
    るエンドミルを、加工面上に設定された送り経路に沿っ
    て送り移動させて、前記加工面を所定形状に加工せしめ
    るNC加工のためのプログラムを作成する手順をコンピ
    ュータに実行させるコンピュータプログラムを記録して
    あるコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、 加工に用いるエンドミルのサイズ、該エンドミルの径方
    向の切り込み深さ、及び切刃一枚当たりの移動量とを用
    い、前記送り経路の各部における前記エンドミルの各切
    刃による切削前の最大切りくず厚さ、切削円弧長及び先
    端切削関与角をコンピュータに算出させるプログラムコ
    ード手段と、 これらの算出結果を前記切削前の最大切りくず厚さ、切
    削円弧長及び先端切削関与角を説明変数とする応答曲面
    に適用して、前記送り経路の各部での切削抵抗の予測値
    をコンピュータに求めさせるプログラムコード手段と、 求められた切削抵抗の予測値を適正値に保つべく、前記
    送り経路の各部におけるエンドミルの送り速度をコンピ
    ュータに決定させるプログラムコード手段とを含むコン
    ピュータプログラムを記録してあることを特徴とするコ
    ンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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