JP2002221071A - エンジンの燃焼制御方法とその装置 - Google Patents

エンジンの燃焼制御方法とその装置

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JP2002221071A
JP2002221071A JP2001018265A JP2001018265A JP2002221071A JP 2002221071 A JP2002221071 A JP 2002221071A JP 2001018265 A JP2001018265 A JP 2001018265A JP 2001018265 A JP2001018265 A JP 2001018265A JP 2002221071 A JP2002221071 A JP 2002221071A
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錦洪 屠
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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】各気筒における燃料の着火時期を精度良く効率
的に推定し、この推定値を基に、各気筒における噴射発
令時期を補正して、各気筒内の燃焼のバラツキを減少さ
せるエンジンの燃焼制御方法とその装置を提供する。 【解決手段】エンジンのクランク軸の回転変動波形を回
転センサで検出し、測定データRmnから基準データR
snを算出して、各気筒毎の燃焼状態Tfを推定し、推
定した各気筒の燃焼状態Tfを基に該当する気筒の燃焼
状態を制御するエンジンの燃焼制御方法において、前記
基準データRsnを、各気筒におけるクランク角の上死
点前と上死点近傍の測定データRmnを基に、数式モデ
ルF(θ)から作成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジン出力軸の
回転変動から、各気筒内の燃料の着火時期等の燃焼状態
を検出して、各気筒毎のインジェクタの燃料の噴射の制
御パラメータを補正して、各気筒間の燃焼のバラツキを
減少するエンジンの燃焼制御方法とその装置に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】自動車等の多気筒のディーゼルエンジン
の燃料噴射においては、高圧燃料ポンプから供給された
高圧の燃料をコモンレールに貯留し、このコモンレール
から各気筒のインジェクタへ燃料を供給して燃料噴射す
るコモンレール式燃料噴射システムが知られている。
【0003】このコモンレールから各インジェクタの噴
孔に至る燃料経路には高圧の燃料の通過及び遮断を制御
するための電磁弁が備えられており、エンジンのコント
ローラにより、エンジンの運転状態に応じて、最適な条
件で燃料噴射ができるように、コモンレールの圧力と各
インジェクタ用の電磁弁の制御が行われている。
【0004】しかしながら、燃料噴射の圧力と噴射の時
期(タイミング)や噴射時間を同じ条件に設定しても、
インジェクタの燃料噴射特性にバラツキがあるために、
また、経年変化により燃料噴射特性が変化するために、
インジェクタ毎に燃料噴射量が異なってしまい、各気筒
間における燃焼状態にバラツキを生じるので、エンジン
の出力トルクが変動し、振動や騒音が発生するという問
題がある。このエンジンの振動と騒音は、特にエンジン
のアイドル運転時や低負荷運転時に大きくなり、この問
題の解決が重要課題となっている。
【0005】この問題の対処法の一つとして、各インジ
ェクタを同一の目標燃料噴射量に基づいて噴射量を制御
する場合に、燃料の実噴射量の多少に応じて各気筒にお
けるクランク軸の回転速度が増減することに着目して、
この回転速度の変動から各気筒の燃焼状態を検出して燃
焼のバラツキをなくす制御を行う燃焼制御方法が提案さ
れている。
【0006】つまり、ピストンが上死点に至るまで吸気
弁及び排気弁が共に閉じた状態にあるとすると、ピスト
ンが上死点に達する前の圧縮行程中に燃焼が開始する場
合には、燃焼室内の燃料の着火・燃焼による発生熱によ
ってピストンの上昇を抑える方向のトルクが発生するの
で、クランク軸の回転速度は減少する。反対に、ピスト
ンが上死点に達した後の膨張行程中に燃焼が開始する場
合には、燃料が着火・燃焼して燃焼室内で発生した熱を
受けた燃焼ガスによってピストンの下降を後押しするト
ルクが発生するので、クランク軸の回転速度は増加す
る。
【0007】従って、燃焼室内で燃料が燃焼すると、エ
ンジンの出力軸にトルクが発生し、このトルクがクラン
ク軸の回転速度を増減するように作用するので、回転速
度はクランク軸の回転角度に応じて時々刻々変動し、平
均回転速度の上下に変動を繰り返している。
【0008】また、モータリング等の燃料噴射しない運
転状態におけるエンジン出力軸の回転速度変動と、実際
に燃料を燃焼室に噴射した燃焼時の回転速度変動との偏
差は、燃焼室内に発生する熱に起因すると考えられるの
で、この偏差で判断すると、燃焼時の回転速度変動の性
状を捕らえることが容易となり、この偏差に着目して、
燃料噴射時期及び燃料噴射量の補正を行うことができ
る。
【0009】この知見を得て、本発明の発明者の1人
は、特願平11−6960号において、熱発生率に相当
するエンジン出力軸の回転速度を検出することにより、
各気筒の燃料噴射量のバラツキによる燃焼のバラツキを
把握し、また、燃料の着火時期のバラツキに起因する燃
焼バラツキも把握して、燃焼のタイミングも考慮して燃
焼バラツキをより一層正確に捉えて解消するエンジンの
燃焼噴射制御装置を提案している。
【0010】更に、本発明の発明者の1人は、特願平1
1−257089号において、回転センサで検出した、
エンジンのクランク軸の上死点前の所定の回転角度の範
囲における燃料着火前の実回転変動データを、上死点を
境に反転させて上死点後基準回転変動波形データとし、
この基準のデータと上死点後の計測データとの偏差に基
づいてエンジンの燃焼状態を算出するエンジンの燃焼状
態検出方法を提案している。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
エンジンの燃焼状態検出方法を使用したエンジンの燃焼
制御装置においては、実際に、車載した状態ではモータ
リング運転状態におけるクランク軸の回転速度のデータ
を得ることは困難であるため、予め、モータリング状態
におけるクランク軸の回転速度に関する基準データを用
意してコントローラに記憶させておく必要がある。
【0012】つまり、この燃焼状態検出方法では、ピス
トンが上死点通過後(以下「上死点後」という)に着火
する場合には、ピストンが上死点通過前(以下「上死点
前」という)の測定データを反転して上死点後の基準デ
ータにするので、この部分の基準データに関しては予め
記憶しておく必要がないが、上死点前に着火する場合に
は、測定データがモータリング運転状態における基準デ
ータと異なってくるので、この反転の方法で基準データ
を作ることができなくなる。
【0013】そのため、上死点前に燃料が着火する場合
には、実際の測定データと同じ運転状態の上死点前基準
回転変動波形データを計測する等して、予め用意しなけ
ればならないという問題が生じる。
【0014】しかも、このクランク軸の回転変動の波形
は、エンジンの回転速度や負荷状態等に応じて変化する
ため、この基準データの記憶には多量のメモリが必要に
なるという問題が生じる。
【0015】更に、上死点前後において燃料の着火が行
われる場合には、燃料の着火が上死点前と上死点後との
どちらかで行われているかによって、燃焼状態検出方法
が異なってくるが、上記の燃焼状態判別方法では、測定
データと予め用意した基準データとに基づいて、燃料の
着火が上死点前と上死点後とのどちらかで行われている
かを自動判別することまで考慮されて折らず、そのた
め、上死点前に着火が発生する場合には、上記の燃焼状
態判別方法を適用できないという問題がある。
【0016】本発明は、上述の知見を得て、従来技術の
問題を解決するためになされたものであり、その目的
は、クランク軸の回転変動波形を回転センサで検出し、
この検出した測定データから数式モデルを作成し、この
数式モデルから基準データを作成することによって、こ
の測定データと基準データとから、各気筒における燃料
の着火時期がピストンの上死点通過の前後のいずれかに
あるかを判別して、燃料の着火時期を推定し、更に、予
め作成された燃料着火時期マップに基づいて算出される
基準噴射発令時期との差を求めて、各気筒における噴射
発令時期を補正して、各気筒内の燃焼のバラツキを減少
させるエンジンの燃焼制御方法とその装置を提供するこ
とにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】以上のような目的を達成
するためのエンジンの燃焼制御方法は、以下のように構
成される。
【0018】1)エンジンのクランク軸の回転変動波形
を回転センサで検出して測定データを得る回転変動検出
ステップと、回転変動波形データにおける該検出された
測定データから基準データを算出する基準作成ステップ
と、該エンジンの各気筒の上死点近傍において前記測定
データと前記基準データとを比較して各気筒毎の燃焼状
態を推定する推定ステップと、該推定した各気筒の燃焼
状態を基に該当する気筒の燃焼状態を制御する制御パラ
メータを補正する補正ステップと、該補正された制御パ
ラメータにより各気筒の燃焼状態を制御する制御ステッ
プとを有してなるエンジンの燃焼制御方法において、前
記基準作成ステップが、各気筒におけるクランク角の上
死点前と上死点近傍の測定データを基に、前記基準デー
タを算出する数式モデルを作成する数式モデル作成ステ
ップを含むように構成される。
【0019】この「上死点近傍」とはピストンが上死点
を通過する前後の時期をいい、以下で使用する「上死点
前」とはピストンが上死点を通過する前の時期をいい、
「上死点後」とはピストンが上死点を通過する後の時期
をいう。
【0020】この構成によれば、制御しようとしている
運転状態で、燃焼状態の検出に使用する基準データを、
数式モデル(数学理論モデル)を用いることにより、そ
の運転状態で計測されるエンジンのクランク軸の回転変
動の測定データから作成できる。この基準データは、そ
の運転状態で、仮に燃料を着火しないあるいは燃料を噴
射しない場合(モータリング運転状態)に発生すると考
えられる回転変動波形データに相当するデータである。
【0021】数式モデルを介在させることにより、各気
筒における燃料の着火が上死点前後のどの間に発生する
かには拘らず、この基準データを推測できるので、モー
タリング運転状態における回転変動波形の基準データを
予め用意しなくても良いので、この基準データの収集の
手間が省けると共に、この基準データのために記憶メモ
リも不要になる。
【0022】2)上記のエンジンの燃焼制御方法の前記
数式モデル作成ステップにおいて、前記数式モデルを作
成する際に使用するデータを、通常の運転において着火
が発生しない上死点前の所定のクランク角度範囲内にお
ける前記測定データからサンプリングしたデータと、上
死点近傍における代表値とで構成する。
【0023】この通常の運転とは、故障などが生じない
正常の運転状態における運転のことをいい、この着火が
発生しない上死点前の所定のクランク角度範囲内は、正
常な運転状態における燃料噴射発令時期の設定時期と各
インジェクタ特性のバラツキ範囲とから予め予測できる
ので、この予測に基づいて設定される。
【0024】この構成によれば、燃料の着火が予想され
る上死点近傍以外では、測定データは、モータリング運
転状態の回転変動波形データと略同じであるので、この
測定データからのサンプリング値を採用し、燃料の着火
が予想される上死点近傍では、測定データは、モータリ
ング運転状態の回転変動波形データから大きく外れる恐
れがあるので、測定データそのものを使用せずに、測定
データから計算される代表値を使用するので、精度良
く、基準データを求めることができる。
【0025】3)上記のエンジンの燃焼制御方法の前記
数式モデル作成ステップにおいて、前記代表値を上死点
近傍における前記測定データの最低値と上死点における
測定データとの平均値とする。
【0026】この構成によれば、代表値を簡単に用意す
ることができ、数式モデルの決定が簡便にできる。
【0027】4)上記のエンジンの燃焼制御方法の前記
数式モデル作成ステップにおいて、前記数式モデルが、
θをクランク角度、Yを回転速度、m=1,2,3,・
・・Mとして、Y=F(θ)=A+B×exp(Σm
m ×cos(mθ))で表される。
【0028】この構成によれば、エンジンの出力軸であ
るクランク軸の回転速度の変動波形データを少ないパラ
メータで効率よく近似できる。そのため、演算時間やメ
モリーの節約をできる。
【0029】5)上記のエンジンの燃焼制御方法の前記
推定ステップにおいて、前記エンジンの燃焼状態として
燃料着火時期を推定するものであって、前記測定データ
と前記基準データとの差である偏差データが所定の閾値
を超える時期を検出して回転変動開始時期とし、この回
転変動開始時期から予め作成された燃料着火時期マップ
に基づいて燃料着火時期を推定すると共に、前記補正ス
テップにおいて、前記推定された燃料着火時期と燃料噴
射発令時期とを比較して該燃料噴射発令時期を補正する
ように構成される。
【0030】この構成によれば、測定データとこの測定
データから数式モデルを介して得られた基準データとの
比較により、燃料着火時期を精度良く推定でき、また、
この推定した燃料着火時期から各気筒の燃料噴射発令時
期を補正できるので、各気筒における燃料状態を、エン
ジンの運転状態から得られる目標とする最適な燃焼状態
に近づけることができる。
【0031】6)上記のエンジンの燃焼制御方法の前記
推定ステップにおいて、燃料着火時期が上死点以前であ
るか、上死点以後であるかを推定し、前記偏差データが
所定の閾値を超える時期である回転変動開始時期を検出
する際に、推定した前記燃料着火時期が上死点以前で有
る場合には前記偏差データから算出する変動値を前記所
定の閾値として採用し、推定した前記燃料着火時期が上
死点以後で有る場合には予め設定した固定値を前記所定
の閾値として採用する。
【0032】この構成によれば、燃料着火時期が上死点
以前であるか、上死点以後であるかを推定し、回転変動
開始時期を検出する際の所定の閾値をそれぞれの状態に
適した値にすることができるので、この回転変動開始時
期から得られる燃料着火時期を精度良く推定できるの
で、各気筒における燃料状態のバラツキをより効率的に
減少できる。
【0033】そして、上記のエンジンの燃焼制御方法を
実現するためのエンジンの燃焼制御装置は、以下のよう
に構成される。
【0034】1)エンジンのクランク軸の回転変動波形
を回転センサで検出して測定データを得る回転変動検出
手段と、回転変動波形データにおける該検出された測定
データから基準データを算出する基準データ作成手段
と、該エンジンの各気筒の上死点近傍において前記測定
データと前記基準データとを比較して各気筒毎の燃焼状
態を推定する燃料状態推定手段と、該推定した各気筒の
燃焼状態を基に該当する気筒の燃焼状態を制御する制御
パラメータを補正する制御パラメータ補正手段と、該補
正された制御パラメータにより各気筒の燃焼状態を制御
する燃焼制御手段とを有してなるエンジンの燃焼制御装
置であって、前記基準データ作成手段が、各気筒におけ
るクランク角の上死点前と上死点近傍の測定データを基
に、前記基準データを算出する数式モデルを作成する数
式モデル作成手段を含むように構成される。
【0035】2)上記のエンジンの燃焼制御装置におい
て、前記数式モデル作成手段が、前記数式モデルを作成
する際に使用するデータを、通常の運転において着火が
発生しない上死点前の所定のクランク角度範囲内におけ
る前記測定データからサンプリングしたデータと、上死
点近傍における代表値とで構成する。
【0036】3)上記のエンジンの燃焼制御装置の前記
数式モデル作成手段において、前記代表値を上死点近傍
における前記測定データの最低値と上死点における測定
データとの平均値とする。
【0037】4)上記のエンジンの燃焼制御装置の前記
数式モデル作成手段において、前記数式モデルが、θを
クランク角度、Yを回転速度、m=1,2,3,・・・
Mとして、Y=F(θ)=A+B×exp(Σm m ×
cos(mθ))で表されるように構成する。
【0038】5)上記のエンジンの燃焼制御装置におい
て、前記燃焼状態推定手段は、前記エンジンの燃焼状態
として燃料着火時期を推定するものであって、前記測定
データと前記基準データとの差である偏差データが所定
の閾値を超える時期を検出して回転変動開始時期とし、
この回転変動開始時期から予め作成された燃料着火時期
マップに基づいて燃料着火時期を推定すると共に、前記
制御パラメータ補正手段において、前記推定された燃料
着火時期と燃料噴射発令時期とを比較して該燃料噴射発
令時期を補正するように構成される。
【0039】6)上記のエンジンの燃焼制御装置におい
て、前記燃焼状態推定手段は、燃料着火時期が上死点以
前であるか、上死点以後であるかを推定し、前記偏差デ
ータが所定の閾値を超える時期である回転変動開始時期
を検出する際に、推定した前記燃料着火時期が上死点以
前で有る場合には前記偏差データから算出する変動値を
前記所定の閾値として採用し、推定した前記燃料着火時
期が上死点以後で有る場合には予め設定した固定値を前
記所定の閾値として採用するように構成される。
【0040】なお、上記の数式モデルとしては、Y=F
(θ)とは別の、Y=F’(θ)=A+Σm m ×co
s(mθ)のフーリエ関数の数式モデル等でも実施可能
である。但し、Y=F(θ)の場合には、m=1で十分
に正確な基準データを作成できるが、Y=F’(θ)の
場合にはm≧2が必要となる。
【0041】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて、本発明に係
る実施の形態のエンジンの燃焼制御方法及びその装置に
ついて、推定する燃焼状態を燃料着火時期とし、補正さ
れる制御パラメータと燃料噴射発令時期として説明す
る。
【0042】〔装置の構成〕このエンジンの燃焼制御装
置1は、図1に示すように、回転変動検出手段10と、
基準データ作成手段20と、燃料状態推定手段30と、
制御パラメータ補正手段40と、燃焼制御手段50とを
有して構成される。
【0043】この回転変動検出手段10は、エンジンの
クランク軸の回転状態を回転センサで、クランク軸が一
定角度回転する毎に発生するクランク角センサの出力パ
ルスの時間間隔をカウンタによって求め、時々刻々のク
ランク軸の回転速度を検出し、この回転速度の変動を示
す回転変動波形の時系列の測定データを得るものであ
る。
【0044】この回転センサは、エンジンの出力軸であ
るクランク軸の回転変動波形データを検出するが、高分
解能を有する光学式や磁気式のロータリエンコーダを使
用することができる。この光学式のロータリエンコーダ
は、クランク軸の回転と共に回転する回転円板に多数の
スリットを設け、このスリットを通過する発光素子から
の光を受光素子で受けて回転を検出する。
【0045】また、基準データ作成手段20は、検出さ
れた測定データから基準データを算出するものであり、
エンジンの各気筒におけるクランク角の上死点前と上死
点近傍の測定データを基にサンプリング値や代表値を選
出する手段21や、基準データを算出する数式モデルを
作成する数式モデル作成手段22や、数式モデルから基
準データを算出する手段23等を含んで構成される。
【0046】そして、燃料状態推定手段30は、エンジ
ンの各気筒の上死点近傍において測定データと基準デー
タとを比較して各気筒毎の燃焼状態を推定するものであ
り、燃料着火時期が上死点前後のいずれにあるかを判断
する手段31や、回転変装開始時期を検出する手段32
や、燃料着火時期を推定する手段33等を含んで構成さ
れる。
【0047】また、制御パラメータ補正手段40は、推
定した各気筒の燃焼状態を基に該当する気筒の燃焼状態
を制御する制御パラメータを補正する手段であり、ここ
では推定された燃料着火時期と、制御の指令を出してい
る燃料噴射発令時期との比較に基づいて補正量を計算す
る手段41や、制御パラメータを補正する手段42等を
含んでおり、個々では、制御パラメータの一つである燃
料噴射発令時期を補正している。
【0048】そして、燃焼制御手段50は、燃焼状態を
制御するための燃料噴射弁制御手段51やコモンレール
圧を調整する手段や吸気量をする手段やEGR量を調整
する手段等の種々の制御手段を有して構成される。
【0049】これらの各手段は、エンジンを制御するエ
ンジンコントロールユニット(ECU)と呼ばれる制御
装置の制御プログラムの一部として構成される。また、
ここで使用される回転センサからの測定データもエンジ
ンコントロールで使用している回転センサの測定データ
が利用される。
【0050】〔エンジンの燃焼制御方法〕上記の構成の
エンジンの燃料制御装置を使用して、エンジンの燃焼制
御を行う。以下に、このエンジンの燃焼制御の概略につ
いて説明するが、この燃焼制御は、図2に示すような、
フローに従って行われる。
【0051】先ず、ステップS1で、燃料の噴射制御を
行う運転状態において、クランク軸の回転変動波形デー
タの測定データRmiを得て、次のステップS2で、こ
の測定データRmiから数式モデルを介在させて、基準
データRsiを作成する。
【0052】そして、ステップS3で、この基準データ
Rsiと測定データRmiとから、燃料着火時期を推定
し、ステップS4で制御パラメータを補正し、ステップ
S5でこの補正した制御パラメータにより燃焼を制御す
る。
【0053】以下、各ステップに関して説明する。
【0054】〔回転変動検出ステップS1〕回転変動検
出ステップS1では、燃料の噴射制御を行う運転状態に
おいて、エンジンの出力軸であるクランク軸の回転を回
転センサで検出し、この検出データからクランク軸の回
転変動波形データの測定データRmnを得る。
【0055】〔基準作成ステップS2〕次に、基準作成
ステップS2では、図3に示すサブフローに従って、燃
料の噴射制御を行う運転状態において、クランク角度で
TDC(上死点)からマイナス約90度くらい前の範囲
(Za)内のエンジンの出力軸の回転変動波形データの
測定データRmiとピストンが上死点(TDC)を通過
する時期Ttdc (上死点位置情報)とから、ピストンが
上死点を通過する前後のクランク角度表示で約±90度
くらいの範囲内の基準データRsnを、数学理論モデル
に基づいて求める。
【0056】なお、この基準データRsnは、同じ運転
状態において、モータリング運転のような、燃料を着火
しないあるいは燃料を噴射しない状態、即ち、燃料の燃
焼による発熱が無い状態の回転変動波形データに対応す
る比較用のデータである。
【0057】そして、この基準作成ステップS2が実行
されると、図3に示すように、ステップS21で、測定
データRmiから基準データRsnを算出するために使
用するサンプリング値RdkをK個(図5では5点)サ
ンプリングする。
【0058】このサンプリング値Rdkは、クランク角
度でTDC(上死点)からマイナス約90度くらい前の
範囲(Za)内で、燃料の着火が発生する可能性のある
TDC近傍(Zb)を除いて、K点採用される。このサ
ンプリングはクランク角度θに関して等間隔の方がデー
タ処理が楽になるので好ましいが必ずしも等間隔でなく
てもよい。
【0059】次に、ステップS22で、燃料の着火が発
生する可能性のあるTDC近傍(Zb)における代表値
Rdtdc を算定する。この算定は、図4に示すように、
測定データRmiから最小値Rmmin とTDCにおける
実測値Rmtdc を検出して、両者の平均からTDCにお
ける代表値Rdtdc (=(Rmmin +Rmtdc )/2)
を算出する。ちなみに、燃料の着火がTDCの後で行わ
れる場合には、図5や図6に示すように、代表値Rdtd
c (≒Rmmin ≒Rmtdc ≒0)は略ゼロとなる。
【0060】そして、次に、ステップS23でサンプリ
ング値Rdkと代表値Rdtdc から、基準データRsn
の関数F(θn)、即ち、サンプリング値Rdkと代表
値Rdtdc を近似表現する非線型数学モデルで作った回
帰曲線或いは代数曲線である(1)式のパラメータA,
B,am を求める。
【0061】つまり、数式モデルF(θ)を、θを上死
点をゼロ度とするクランク角度、Yを回転速度として、
(1)式で表す。そして、この関数のパラメータA,
B,a m を未知数として、サンプリング値Rdk、Td
kと、代表値データRdtdc 、Ttdc を代入して、
(2)式及び(3)式のK+1個の連立方程式を作成
し、これを最小二乗法等により解いてパラメータA,
B,am の各数値を求める。
【0062】 Y=F(θ)=A+B×exp(Σm m ×cos(mθ)) m=1,2,3,・・・M (1) Rdk=A+B×exp(Σm m ×cos(m×Tdk)) k=1,2,3,・・・K (K+1≧M+2) (2) Rdtdc =A+B×exp(Σm m ×cos(m×Ttdc )) (3) ステップS24では、このパラメータ、A,B,am
数値を使って、(4)式により、上死点以前の基準デー
タRsiを算出する。
【0063】 Rsi=A+B×exp(Σm m ×cos(m×Tsi)) i=1,2,3,・・・I (4) そして、TDCより後の範囲(Zc)の基準データRs
jも算出する。この算出は(1)式の代数式より算出す
ることができるが、TDCより前(θのマイナス側)の
範囲(Za)の基準データRsiをTDC軸に対して反
転してTDCより後(θのプラス側)の範囲(Zc)の
基準データRsjを算出することもできる。
【0064】このTDCより前の範囲(Za)の基準デ
ータRsiとTDCより後の範囲(Zc)の基準データ
Rsjとを合わせて、基準データRsnとする。
【0065】この図3のフローによって算定された基準
データRsnと測定データRmn等を図4〜図6に示
す。
【0066】〔推定ステップS3〕次に、図2の推定ス
テップS3について説明するが、このステップS3は,
燃料の着火時期がTtdc の前後にあるかの判定するステ
ップS3Aと、上死点前に燃料が着火する場合の着火時
期を推定するステップS3Bと、上死点後に燃料が着火
する場合の着火時期を推定するステップS3Cとからな
る。 〔燃料の着火時期判定ステップS3A〕この燃料の着火
時期TfがTtdc (ピストンがTDCを通過する時期)
の前後のどちらにあるかを判定するステップS3Aは、
図4に示すようなフロー及びアルゴリズムに従って行わ
れ、測定データRmnとその偏差データΔRdnに基づ
いて、上死点Ttdc 前後のどの時期に実際の着火時期が
あるかを自動的に判別する。
【0067】先ず、最初にステップS31において、測
定データRmnの最小値Rmmin とその発生時期Tmin
を求める。
【0068】そして、ステップS32において、発生時
期Tmin +Δt’がTtdc より小さいか(前か)を判定
し、小さければ、Ttdc より前に着火していると判定
し、ステップS51に行く。このΔt’は噴射の発令か
ら着火までの時間遅れに関する調整項であり、例えばク
ランク角で3度である。
【0069】また、ステップS32において、発生時期
Tmin +Δt’がTtdc より大きければ、更に詳細に調
べるために、ステップS33に行く。
【0070】このステップS33では、図5〜図7に示
すような測定データRmnと基準データRsnから、図
8〜図12に示すような偏差データΔRdn(=Rmn
−Rsn)を作成する。この偏差データΔRdnの図
8、図10、図12は、それぞれ図5、図6、図7に対
応する。
【0071】次に、ステップS34では、図8〜図12
に示すような偏差データΔRdnから、現在の噴射発令
時期Toより所定の時間ΔT前の範囲(Zd)の間にお
ける最大偏差値ΔRdBと、現在の噴射発令時期Toよ
り後(Ze)の最小値ΔRdCを求める。
【0072】そして、ステップS35で、最小値ΔRd
Cの絶対値|ΔRdC|と最大偏差値ΔRdBとを比較
し、絶対値|ΔRdC|が大きければ、最小値ΔRdC
の発生時期Tcを主体に判定するとしてステップS36
に行き、絶対値|ΔRdC|が小さければ、最大偏差値
ΔRdBを主体に判定するとしてステップS41に行
く。
【0073】ステップS36では、更に、最小値ΔRd
Cの発生時期Tcの直前において、偏差データΔRdn
がΔRdC2=ΔRdC/2の値となる第1参照時期Tc2
を求める。
【0074】そして、ステップS37で、最小値ΔRd
Cの発生時期Tcと第1参照時期Tc2の両方が、噴射発
令時期ToとTtdc の間にあるか否かを判定する。間に
あれば、Ttdc より前に着火していると判定し、ステッ
プS51に行く。間に無ければ、ステップS42に行
く。
【0075】ステップS41では、最大偏差値ΔRdB
の発生位置Tbが噴射発令時期ToとTtdc の間で且
つ、後ろから第1番目の第1極小値ΔRdDがあるか否
か(第1極小値ΔRdDがシステムの分解能よりも大き
くて検出されるか否か)を判定する。無ければ、Ttdc
より後に着火していると判定し、ステップS52に行
く。あれば、ステップS42に行く。
【0076】ステップS42では、第1極小値ΔRdD
が発生する時期Teの直前の偏差データΔRdnがΔR
dD2=ΔRdD/2の値となる第2参照時期TD2を求め
る。そして、ステップS43で第2参照時期TD2が最小
噴射発令時期ToとTtdc の間にあるか否かを判定す
る。有れば、Ttdc より前に着火していると判定し、ス
テップS51に行く。無ければ、Ttdc より後に着火し
ていると判定し、ステップS52に行く。
【0077】以上のフローに従うと、Ttdc より前に着
火していると判定する場合は、次の3つの場合であり、
それ以外は、Ttdc より後で着火していると判定する。
【0078】先ず第1の場合は、最小値Rmmin の発生
時期Tmin がTtdc −Δt’より小さい図5に示すよう
な場合である。
【0079】また、第2の場合は、現在の噴射発令時期
Toより後(Ze)の最小値ΔRdCの絶対値が現在の
噴射発令時期Toより所定の時間ΔT前の範囲(Zd)
の間における最大偏差値ΔRdBよりも大きく、且つ、
最小値ΔRdCの発生時期Tcの直前において、偏差デ
ータΔRdnがΔRdC2=ΔRdC/2の値となる第1
参照時期TC2と、最小値ΔRdCの発生時期Tcとの両
方が、噴射発令時期ToとTtdc の間にある場合であ
る。
【0080】また、第3の場合は、噴射発令時期Toと
Ttdc の間で且つ、後ろから第1番目の第1極小値ΔR
dDに対して、第1極小値ΔRdDが発生する直前の偏
差データΔRdnがΔRdD2=ΔRdD/2の値となる
第2参照時期TD2が最小噴射発令時期ToとTtdc の間
にある場合である。
【0081】〔燃料の着火時期の推定〕次に、上死点前
後のどの間に燃料の着火があるかが推定できたので、そ
れぞれに適したアルゴリズムによって、偏差データΔR
dnが所定の判定値ΔRCを超える回転変化開始時期T
vを検出し、回転変化開始時期Tvと燃料着火時期Tf
とを対応させた図12に示すような燃料着火時期マップ
(TvとTfの関係)に基づいて燃料着火時期Tfを求
める。
【0082】この図12の燃料着火時期マップは、予め
作成してコントローラに記憶させておくものであり、燃
料噴射時期Toを変化させた場合の気筒の筒内圧力から
計算した熱発生率から求めた燃料着火時期Tf(横軸)
と、図7〜図11に示すような偏差データΔRdnから
求められる回転変化開始時期Tv(縦軸)との関係を示
すものである。
【0083】この図12から分かるように、燃料着火時
期Tfと回転変化開始時期Tvとは、実質的に一次式の
相関関係にあるので、この相関関係を考慮してこれらの
データから一次回帰で得られた回帰直線(Tf=ai×
Tv+bi)のパラメータa1,b1,a2,b2をマ
ップデータとして記憶しておき、このマップデータに基
づいて、偏差データΔRdnから求められる回転変化開
始時期のデータTvSをこの一次回帰直線にあてはめ
て、燃料着火時期TfS(=ai×TvS+bi)を算
出する。この燃料着火時期TfSが実際に発生している
と推定された燃料着火時期Tfである。
【0084】〔上死点前に燃料の着火する場合の着火時
期の推定〕上死点前に燃料着火の場合には、図8に示す
ように、偏差データΔRdnに雑音が多いので、先ず、
噴射発令時期Toの後とTtdc の前の範囲において、最
小値ΔRdCを求め、その半分ΔRdD=ΔRdC/2
を第1閾値ΔRC1とする。
【0085】そして、噴射発令時期Toの後における、
第1閾値ΔRC1より小さい偏差データΔRdnが発生
する時期を回転変化開始時期TvSとし、この回転変化
開始時期TvSの値から、燃料着火時期マップに基づい
て燃料着火時期TfSを求める。
【0086】〔上死点後に燃料の着火する場合の着火時
期の推定〕上死点後に燃料の着火する場合の燃料着火時
期Tfの推定は、図5、図6、図9〜図11に示すよう
に、特定の正の値を所定の判定値ΔRC2とし、これを
偏差データΔRdnに対する第2閾値ΔRC2にして、
この第2閾値ΔRC2を超える時期を回転変化開始時期
TvSとして、この回転変化開始時期TvSの値から、
燃料着火時期マップ(Tv−Tf)に基づいて燃料着火
時期TfSを求め、燃料着火時期Tfとする。
【0087】この第2閾値ΔRC2は固定値であり、上
死点前に燃料着火がある場合の第1閾値ΔRC1によう
に変動しない。
【0088】〔補正推ステップS4〕次に、図2の補正
ステップS4について説明する。
【0089】このステップS4は,各気筒毎に推定され
た実際の燃料着火時期Tfと各、エンジンの運転状態か
ら目標として設定される燃料着火時期Tfoを比較し、
この両者の差を、各気筒のインジェクタ毎に設定される
燃料噴射発令時期Toに反映させて、実際の燃料着火時
期Tfを目標として設定される燃料着火時期Tfoに近
付けるためのものである。
【0090】そして、この推定された実際の燃料着火時
期Tfと目標として設定される燃料着火時期Tfoとの
差ΔTf=Tf−Tfoを使用して、新たな燃料噴射発
令時期ToNをToN=To+ΔTfとして補正する。
【0091】〔制御ステップS5〕そして、図2の制御
ステップS5では、新たな燃料噴射発令時期ToNを噴
射発令時期Toとして、各気筒のインジェクタの制御弁
等を制御し、各気筒の燃焼状態を制御する。
【0092】〔効果〕以上のフローに従ったエンジンの
燃焼制御方法によれば、燃焼制御すべき運転状態におい
て、エンジンのクランク軸の実際の回転変動を回転セン
サによって検出し、燃料の着火時期Tfが上死点Ttdc
の前後のいずれかの時期にあるかを問わずに、回転変動
波形の測定データRmnと燃料の噴射発令時期(燃料の
噴射命令を出すタイミング)Toとピストンが上死点を
通過する上死点通過時期Ttdcの情報とから、測定デー
タRmnを基に作成される数学理論モデル(F(θ))
に基づいて基準データRsnを作成し、この基準データ
Rsnと測定データRmnとの比較から、燃料着火時期
Tfが上死点Ttdc の前後のいずれかにあるかを判別で
きる。
【0093】そして、燃料着火時期Tfが上死点Ttdc
以前にある場合には、偏差データΔRdnから求まる第
1閾値ΔRC1を使用し、また、燃料着火時期Tfが上
死点Ttdc の後にある場合には、偏差データΔRdnと
は関係なく事前に設定した固定値である第2閾値ΔRC
2を使用して、偏差データΔRdnがこの所定の判定値
である第1閾値ΔRC1又は第2閾値ΔRC2を超える
回転変化開始時期TvSを検出して、この検出した時期
TvSから予め作成された燃料着火時期マップ(Tv−
Tf)に基づいて、燃料着火時期Tfを推定することが
できる。
【0094】この燃料着火時期Tfと、エンジンの回転
数や負荷等から決まるエンジンの運転状態における目標
とする燃料着火時期Tfoとの差ΔTfをチェックし
て、現状の噴射発令時期Toを補正することができる。
【0095】この補正した噴射発令時期ToNで各イン
ジェクタの燃料噴射を制御することにより、各気筒にお
ける燃料着火時期Tfを,目標の燃料着火時期Tfoに
フィードバック制御することができるので、各気筒にお
ける燃料着火時期Tfのバラツキを防止できる。
【0096】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係るエン
ジンの燃焼制御方法とその装置によれば、次のような効
果を奏することができる。
【0097】エンジンのクランク軸の回転センサの出力
から回転変動波形を検出し、この回転変動波形の測定デ
ータから、仮に燃料を着火しない又は燃料を噴射しない
モーターリング運転を行った場合に出現する回転変動波
形に相当すると考えられる基準データを算出する際に、
上死点以前の測定データからサンプリングしたデータを
基に数式で表現した数式モデルを作成し、この数式モデ
ルから基準データを算出しているので、燃料着火時期が
上死点前である場合も、また、上死点後である場合も、
基準データを容易に作成することができる。
【0098】そのため、基準データをモータリング運転
から作成してそのデータを予めコントローラに入力して
おく必要がなくなり、測定データとこの測定データから
得られる基準データとから燃焼状態をきめ細かく推定で
きる。
【0099】また、数式モデル作成において、数式モデ
ルを作成する際に使用するデータを、通常の運転におい
て着火が発生しない上死点前の所定のクランク角度範囲
内からサンプリングしたデータと、上死点近傍の測定デ
ータから算出した代表値とで構成し、燃料の着火が発生
する可能性がある上死点近傍では、測定データそのもの
の使用を避けて上死点近傍における代表値を使用するの
で、燃料の着火の影響を受けない基準データを得ること
ができる。そのため、従来技術では適用できなかった燃
料着火が上死点前の場合でも燃焼状態を推定できる。
【0100】そして、エンジンの燃焼状態の一つである
燃料着火時期を推定する場合に、測定データと基準デー
タとの差である偏差データが所定の閾値を超える回転変
化開始時期を検出し、この回転変化開始時期から予め作
成された燃料着火時期マップに基づいて燃料着火時期を
推定するので、簡便に燃料着火時期を推定できる。
【0101】エンジンの燃料着火時期を推定する場合
に、燃料着火時期が上死点以前であるか、上死点以後で
あるかを判定して、偏差データから回転変動開始時期を
検出する際に使用する所定の閾値を、上死点以前では偏
差データから算出する変動値とし、上死点以後では予め
設定した固定値とすることにより、より精度良く簡便に
燃料着火時期を推定することができる。
【0102】また、この精度良く推定した燃料着火時期
から各気筒の燃料噴射発令時期を補正して、燃焼状態を
制御できるので、各気筒における燃料状態を、エンジン
の運転状態から得られる目標とする最適な燃焼状態に近
づけることができ、各気筒における燃料状態のバラツキ
をより効率的に減少できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態のエンジンの燃焼制御装置
のシステム構成図である。
【図2】本発明の実施の形態のエンジンの燃焼制御方法
の基本的なフローを示す図である。
【図3】図2の基準作成ステップの詳細なフローを示す
図である。
【図4】図2の推定ステップの燃料の着火時期が上死点
Ttdc の前後のどちらにあるかを判定するステップの詳
細なフローを示す図である。
【図5】クランク軸の回転変動波形の例を示す図で、燃
料着火が上死点前10度の場合の例である。
【図6】クランク軸の回転変動波形の例を示す図で、燃
料着火が上死点の場合の例である。
【図7】クランク軸の回転変動波形の例を示す図で、燃
料着火が上死点後10度の場合の例である。
【図8】クランク軸の回転変動波形の偏差データの例を
示す図で、燃料着火が上死点前10度の場合の例であ
る。
【図9】クランク軸の回転変動波形の偏差データの例を
示す図で、燃料着火が上死点前5度の場合の例である。
【図10】クランク軸の回転変動波形の偏差データの例
を示す図で、燃料着火が上死点の場合の例である。
【図11】クランク軸の回転変動波形の偏差データの例
を示す図で、燃料着火が上死点後5度の場合の例であ
る。
【図12】クランク軸の回転変動波形の偏差データの例
を示す図で、燃料着火が上死点後10度の場合の例であ
る。
【図13】回転変化開始時期と燃料着火時期との関係を
示す燃料着火時期マップの例を示す図である。
【符号の説明】
1 エンジンの燃焼制御装置 10 回転変動検出手段 20 基準データ作成手段 22 数式モデル作成手段 30 燃焼状態推定手段 40 制御パラメータ補正手段 50 燃焼制御手段 S1 回転変動検出ステップ S2 基準作成ステップ S23 数式モデル作成ステップ S3 推定ステップ S4 補正ステップ S5 制御ステップ Rdk サンプリングしたデータ Rdtdc 代表値 Rmn 測定データ Rmmin 最低値 Rmtdc 上死点における測定データ Rsn 基準データ ΔRdn 偏差データ ΔRC1 第1閾値(変動値) ΔRC2 第2閾値(固定値) Y=F(θ) 数式モデル Tf,TfS 燃料着火時期 Tv,TvS 回転変動開始時期 To 燃料噴射発令時期
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3G084 AA01 BA15 DA04 EA04 EA11 EC04 FA34 FA38 3G301 HA02 JA03 MA19 NA08 NA09 ND02 PE01Z PE04Z

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジンのクランク軸の回転変動波形を
    回転センサで検出して測定データを得る回転変動検出ス
    テップと、回転変動波形データにおける該検出された測
    定データから基準データを算出する基準作成ステップ
    と、該エンジンの各気筒の上死点近傍において前記測定
    データと前記基準データとを比較して各気筒毎の燃焼状
    態を推定する推定ステップと、該推定した各気筒の燃焼
    状態を基に該当する気筒の燃焼状態を制御する制御パラ
    メータを補正する補正ステップと、該補正された制御パ
    ラメータにより各気筒の燃焼状態を制御する制御ステッ
    プとを有してなるエンジンの燃焼制御方法において、 前記基準作成ステップが、各気筒におけるクランク角の
    上死点前と上死点近傍の測定データを基に、前記基準デ
    ータを算出する数式モデルを作成する数式モデル作成ス
    テップを含むことを特徴とするエンジンの燃焼制御方
    法。
  2. 【請求項2】 前記数式モデル作成ステップにおいて、
    前記数式モデルを作成する際に使用するデータを、通常
    の運転において着火が発生しない上死点前の所定のクラ
    ンク角度範囲内における前記測定データからサンプリン
    グしたデータと、上死点近傍における代表値とで構成す
    ることを特徴とする請求項1記載のエンジンの燃焼制御
    方法。
  3. 【請求項3】 前記数式モデル作成ステップにおいて、
    前記代表値を上死点近傍における前記測定データの最低
    値と上死点における測定データとの平均値とすることを
    特徴とする請求項2記載のエンジンの燃焼制御方法。
  4. 【請求項4】 前記数式モデルが、θをクランク角度、
    Yを回転速度、m=1,2,3,・・・Mとして、Y=
    F(θ)=A+B×exp(Σm m ×cos(m
    θ))で表されることを特徴とする請求項2又は3に記
    載のエンジンの燃焼制御方法。
  5. 【請求項5】 前記推定ステップにおいて、前記エンジ
    ンの燃焼状態として燃料着火時期を推定するものであっ
    て、前記測定データと前記基準データとの差である偏差
    データが所定の閾値を超える時期を検出して回転変動開
    始時期とし、この回転変動開始時期から予め作成された
    燃料着火時期マップに基づいて燃料着火時期を推定する
    と共に、 前記補正ステップにおいて、前記推定された燃料着火時
    期と燃料噴射発令時期とを比較して該燃料噴射発令時期
    を補正することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1
    項に記載のエンジンの燃焼制御方法。
  6. 【請求項6】 前記推定ステップにおいて、燃料着火時
    期が上死点以前であるか、上死点以後であるかを推定
    し、前記偏差データが所定の閾値を超える時期である回
    転変動開始時期を検出する際に、推定した前記燃料着火
    時期が上死点以前で有る場合には前記偏差データから算
    出する変動値を前記所定の閾値として採用し、推定した
    前記燃料着火時期が上死点以後で有る場合には予め設定
    した固定値を前記所定の閾値として採用することを特徴
    とする請求項5記載のエンジンの燃焼制御方法。
  7. 【請求項7】 エンジンのクランク軸の回転変動波形を
    回転センサで検出して測定データを得る回転変動検出手
    段と、回転変動波形データにおける該検出された測定デ
    ータから基準データを算出する基準データ作成手段と、
    該エンジンの各気筒の上死点近傍において前記測定デー
    タと前記基準データとを比較して各気筒毎の燃焼状態を
    推定する燃料状態推定手段と、該推定した各気筒の燃焼
    状態を基に該当する気筒の燃焼状態を制御する制御パラ
    メータを補正する制御パラメータ補正手段と、該補正さ
    れた制御パラメータにより各気筒の燃焼状態を制御する
    燃焼制御手段とを有してなるエンジンの燃焼制御装置で
    あって、 前記基準データ作成手段が、各気筒におけるクランク角
    の上死点前と上死点近傍の測定データを基に、前記基準
    データを算出する数式モデルを作成する数式モデル作成
    手段を含むことを特徴とするエンジンの燃焼制御装置。
  8. 【請求項8】 前記数式モデル作成手段が、前記数式モ
    デルを作成する際に使用するデータを、通常の運転にお
    いて着火が発生しない上死点前の所定のクランク角度範
    囲内における前記測定データからサンプリングしたデー
    タと、上死点近傍における代表値とで構成することを特
    徴とする請求項7記載のエンジンの燃焼制御装置。
  9. 【請求項9】 前記数式モデル作成手段において、前記
    代表値を上死点近傍における前記測定データの最低値と
    上死点における測定データとの平均値とすることを特徴
    とする請求項8記載のエンジンの燃焼制御装置。
  10. 【請求項10】 前記数式モデルが、θをクランク角
    度、Yを回転速度、m=1,2,3,・・・Mとして、
    Y=F(θ)=A+B×exp(Σm m ×cos(m
    θ))で表されることを特徴とする請求項8又は9に記
    載のエンジンの燃焼制御装置。
  11. 【請求項11】 前記燃焼状態推定手段は、前記エンジ
    ンの燃焼状態として燃料着火時期を推定するものであっ
    て、前記測定データと前記基準データとの差である偏差
    データが所定の閾値を超える時期を検出して回転変動開
    始時期とし、この回転変動開始時期から予め作成された
    燃料着火時期マップに基づいて燃料着火時期を推定する
    と共に、 前記制御パラメータ補正手段において、前記推定された
    燃料着火時期と燃料噴射発令時期とを比較して該燃料噴
    射発令時期を補正することを特徴とする請求項7〜10
    のいずれか1項に記載のエンジンの燃焼制御装置。
  12. 【請求項12】 前記燃焼状態推定手段は、燃料着火時
    期が上死点以前であるか、上死点以後であるかを推定
    し、前記偏差データが所定の閾値を超える時期である回
    転変動開始時期を検出する際に、推定した前記燃料着火
    時期が上死点以前で有る場合には前記偏差データから算
    出する変動値を前記所定の閾値として採用し、推定した
    前記燃料着火時期が上死点以後で有る場合には予め設定
    した固定値を前記所定の閾値として採用することを特徴
    とする請求項11記載のエンジンの燃焼制御装置。
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