JP2002212681A - フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents

フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法

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JP2002212681A JP2001006483A JP2001006483A JP2002212681A JP 2002212681 A JP2002212681 A JP 2002212681A JP 2001006483 A JP2001006483 A JP 2001006483A JP 2001006483 A JP2001006483 A JP 2001006483A JP 2002212681 A JP2002212681 A JP 2002212681A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 プレス成形性がコイル全域にわたって良好な
フェライト系ステンレス冷間圧延鋼板を製造する。 【解決手段】 重量%で、C:0.03%以下、Si:
1.5%以下、Mn:1.5%以下、Cr:11〜16
%、Nb:1.0%以下、Ti:0.5%以下を含み、
残部がFeおよび不可避不純物から成る溶鋼を溶製し
(s1)、連続鋳造でスラブを鋳造し(s2)、スラブ
を熱間圧延し(s4)、コイル状の熱間圧延鋼板に時効
温度:400〜600℃、時効時間:8〜50時間の時
効処理を行い(s5)、その後、冷間圧延を行い(s
7)、均熱温度:900〜1100℃、均熱時間0〜1
分間の仕上焼鈍を行う(s8)。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車の排気系部
材などに好適に適用することのできるフェライト系ステ
ンレス鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】フェライト系ステンレス鋼板は、耐応力
腐食割れ性などに優れた材料であり、その特性を生かし
て各種厨房器具および自動車部品などの分野で幅広く使
用されている。
【0003】フェライト系ステンレス冷間圧延鋼板は、
通常フェライト系ステンレス鋼のスラブを熱間圧延し、
その後、熱延板焼鈍、酸洗、冷間圧延、さらに仕上焼鈍
の各工程を経て製造される。このうち、熱延板焼鈍およ
び酸洗は焼鈍酸洗設備において連続して行われる。すな
わち、熱延板焼鈍は焼鈍酸洗設備のカテナリ形連続焼鈍
炉において行われ、酸洗はカテナリ形連続焼鈍炉の出側
に配置される酸洗槽において行われる。熱延板焼鈍工程
では、熱間圧延鋼板は、たとえば900℃以上の温度に
急速加熱され、短時間均熱後、急速冷却される。熱延板
焼鈍は、熱間圧延の加工歪を除去するために行われる。
このようにして製造されるフェライト系ステンレス冷間
圧延鋼板には、オーステナイト系ステンレス冷間圧延鋼
板に比べるとプレス成形性が劣るという問題がある。こ
の問題を解消するために多数の先行技術が開示されてい
る。
【0004】特開平8−253818には、フェライト
系ステンレス鋼の化学成分から算出される指標値γpを
予め定める範囲の値に設定し、熱間圧延工程の粗圧延の
少なくとも1パスの圧延を予め定める圧延条件で行い、
さらに熱延板焼鈍工程において、コイル状の熱間圧延鋼
板に750〜950℃で1時間以上保持し、かつその降
温過程において600〜750℃で1時間以上保持する
熱延板焼鈍を行うフェライト系ステンレス鋼帯の製造方
法が開示されている。これによって、日本工業規格Z2
254に規定されるr値が優れ、しかもr値の面内異方
性が小さく、強度−伸びバランスに優れるフェライト系
ステンレス鋼帯を製造することができる。
【0005】特開平8−199235には、Nbを0.
1〜1.0%含むフェライト鋼素材を熱間圧延した後、
コイル状の熱間圧延鋼板に650〜900℃の温度範囲
で1〜30時間保持する時効処理を行い、その後、冷間
圧延し、続いて800〜930℃の温度範囲で10分以
下保持する仕上焼鈍を行うNb含有フェライト鋼板の製
造方法が開示されている。これによって、加工性、高温
耐力および耐食性については、従来の良好なレベルを維
持したまま再結晶温度を低下させることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らの調査によ
れば、前記先行技術には厳しい加工が行われる場合、プ
レス加工性が不安定であり、プレス加工時に加工割れが
発生しやすいという問題がある。たとえば、厳しい張出
し加工および深絞り加工が行われる自動車の排気系部材
に適用するとき、加工割れが発生しやすいという問題が
ある。本発明者らは、この加工割れの発生原因について
種々検討を重ねた結果、次のような知見を得た。
【0007】(1)前記先行技術では、熱延板焼鈍ある
いは時効処理の加熱温度が比較的高温(実施例では80
0〜860℃)に設定されているので、熱間圧延鋼板中
に析出する析出物の大きさが大きくなるとともに、析出
物の分散状態が不均一になる。
【0008】(2)この不均一な析出物の分散によって
薄鋼板のプレス成形性に関連する特性値のコイル内変動
が大きくなる。すなわち、前記r値の平均値およびr値
の面内異方性Δrなどの特性値がコイルの幅方向および
長さ方向位置によって大きく変動する。したがって、こ
れらの特性値の低下したコイル内位置においてプレス加
工時に加工割れが発生しやすくなる。
【0009】本発明はこのような知見に基づいて成され
たものであり、本発明の目的は、厳しい加工が行われる
場合でもコイル全域にわたって加工割れを発生させるこ
となく、安定して加工することができるプレス成形性の
優れたフェライト系ステンレス鋼板を提供することであ
る。また本発明の他の目的は、プレス成形性の優れたフ
ェライト系ステンレス鋼板を容易に、かつ確実に製造す
ることのできる製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、重量%で、
C:0.03%以下、Si:1.5%以下、Mn:1.
5%以下、Cr:11〜16%、Nb:1.0%以下、
Ti:0.5%以下を含み、残部がFeおよび不可避不
純物から成り、平均粒径が1.0μm以下である析出物
を有し、さらに rm=(r0+2r45+r90)/4 Δr=(r0−2r45+r90)/2 ここで、r0:圧延方向における日本工業規格Z225
4に規定されたr値 r45:圧延方向に対して45°の方向のr値 r90:圧延方向に対して90°の方向のr値 で定義されるr値の平均値rmおよびr値の面内異方性
Δrが、rm≧1.0、Δr≦0.5であることを特徴
とするフェライト系ステンレス鋼板である。
【0011】本発明に従えば、Cr、Si、Mn、N
b、Tiが充分に含まれているので、Crによる耐食性
の向上に加えて、Si、Mnによる耐酸化性の向上、N
bによる高温強度の向上およびTiによる張出し性およ
び深絞り性の向上を図ることができる。また析出物が平
均粒径:1.0μm以下の微細析出物であるので、析出
物の平均粒径が大きい場合に比べて析出物の分散状態を
均一化させることが容易であり、プレス成形性に関連す
る特性値のコイル内変動を小さくすることができる。ま
た、析出物の平均粒径が1.0μm以下であり、r値の
平均値rmが1.0以上であり、r値の面内異方性Δr
が0.5以下であるので、後述の図1および図2に示す
ようにプレス成形性が良好であり、厳しい加工が行われ
る場合でも、コイル全域にわたって加工割れを発生させ
ることなく安定してプレス加工を行うことができる。
【0012】また本発明は、重量%で、C:0.03%
以下、Si:1.5%以下、Mn:1.5%以下、C
r:11〜16%、Nb:1.0%以下、Ti:0.5
%以下を含み、残部がFeおよび不可避不純物から成る
鋼のスラブを熱間圧延してコイル状に巻取り、コイル状
の熱間圧延鋼板に400〜600℃の温度範囲で8〜5
0時間保持する時効処理を行い、その後、脱スケール、
冷間圧延を経て、900〜1100℃の温度範囲で0〜
1分間保持する仕上焼鈍を行うことを特徴とするフェラ
イト系ステンレス鋼板の製造方法である。
【0013】本発明に従えば、コイル状の熱間圧延鋼板
の時効処理が従来よりも低温の温度範囲で長時間行われ
るので、熱間圧延鋼板中に微細な析出物を均一に分散さ
せることができる。これによって、後続する冷間圧延後
の仕上焼鈍時に、プレス成形性の良好な再結晶集合組織
をコイル内に均一に形成することができる。したがっ
て、コイル内全域にわたって良好なr値の平均値および
r値の面内異方性Δrを有するフェライト系ステンレス
冷間圧延鋼板、すなわちプレス成形性の優れたフェライ
ト系ステンレス冷間圧延鋼板を容易に、かつ確実に製造
することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明のフェライト系ステンレス
冷間圧延鋼板は、自動車の排気系部材などに用いられ
る。自動車の排気系部材には、複雑な形状に加工するた
めの優れた加工性、高温の排気ガスとの接触に耐えるた
めの優れた耐酸化性および高い高温強度などの特性が要
求される。
【0015】本発明の実施の一形態であるフェライト系
ステンレス冷間圧延鋼板は、重量%で、C:0.03%
以下、Si:1.5%以下、Mn:1.5%以下、C
r:11〜16%、Nb:1.0%以下、Ti:0.5
%以下を含み、残部がFeおよび不可避不純物から成
り、平均粒径:1.0μm以下の析出物を有し、さらに
r値の平均値rmが1.0以上であり、r値の面内異方
性Δrが0.5以下である。
【0016】フェライト系ステンレス鋼の成分がこのよ
うに限定されるのは次の理由による。Cは、鋼を強化す
る元素である。C含有量が0.03%以下に限定される
のは、上限値を超えるC%では、張出し加工性および深
絞り加工性が低下するからであり、さらにマルテンサイ
ト相などの好ましくない組織が出現しやすくなるからで
ある。望ましいCの上限値は、0.02%である。Cの
下限値は、後述する真空脱ガス設備における仕上精練で
の脱炭精練時間の過度な増加を回避するために、0.0
01%に限定することが好ましい。
【0017】Siは、耐酸化性を向上させる元素であ
る。Si含有量が1.5%以下に限定されるのは、上限
値を超えるSi%では、靭性が低下するからである。S
iは、耐酸化性向上元素として、かつ脱酸剤として0.
05%以上含まれることが好ましい。Mnは、Siと同
様に耐酸化性を向上させる元素である。Mn含有量が
1.5%以下に限定されるのは、上限値を超えるMn%
では、加工性が低下するからである。Mnは耐酸化性向
上元素として、かつ脱酸剤として0.10%以上含まれ
ることが好ましい。
【0018】Crは、ステンレス鋼の耐食性を担う元素
である。Cr含有量が11〜16%に限定されるのは、
下限値未満のCr%では、充分な耐食性を確保すること
ができないからであり、上限値を超えるCr%では加工
性が低下するからである。Nbは、高温強度を向上させ
る元素である。Nb含有量が1.0%以下に限定される
のは、上限値を超えるNbでは、靭性が低下するからで
ある。Nbは、高温強度向上元素として0.2%以上含
まれることが好ましい。Tiは、張出し性および深絞り
性を向上させる元素である。Ti含有量が0.5%以下
に限定されるのは、上限値を超えるTi%では、表面性
状および製造性が低下するからである。Tiは張出し性
および深絞り性向上元素として0.1%以上含まれるこ
とが好ましい。
【0019】このようにフェライト系ステンレス冷間圧
延鋼板の鋼成分にはCr、Si、Mn、Nb、Tiが充
分含まれているので、Crによる耐食性の向上に加え
て、Si、Mnによる耐酸化性の向上、Nbによる高温
強度の向上およびTiによる張出し性および深絞り性の
向上を図ることができる。したがって、本発明のフェラ
イト系ステンレス冷間圧延鋼板を自動車の排気系部材と
して好適に用いることができる。
【0020】本発明のフェライト系ステンレス冷間圧延
鋼板は、前述のように平均粒径:1.0μm以下の析出
物を有し、さらにr値の平均値rmが1.0以上であ
り、r値の面内異方性Δrが0.5以下である。r値は
ランクフォード値と呼ばれる塑性歪比であり、薄鋼板の
プレス成形性に関連する特性値として用いられる。r値
は、日本工業規格Z2254に規定されているように、
板状引張試験片を一様に変形させたときの幅方向真歪ε
wと板厚方向真歪εtとの比で表される。引張試験片の
幅、厚さおよび標点距離をそれぞれW0、t0およびd
0とし、引張試験片にε%の伸びを与えた後の引張試験
片の幅、厚さおよび標点間の長さをW、t、dとする
と、r値は(1)式によって求められる。伸びεは、通
常15%または20%である。 r=εw/εt=ln(W0/W)÷ln(t0/t) =ln(W0/W)÷ln(W・d/W0・d0) …(1)
【0021】このr値は、引張試験片の方向、すなわち
引張試験片の長手方向と圧延方向との成す角度によって
異なる値を示す。通常r値は圧延方向、圧延方向に対し
て45°の方向、圧延方向に対して90°の方向の3方
向について求められる。圧延方向、圧延方向に対して4
5°の方向、圧延方向に対して90°の方向のr値をそ
れぞれr0、r45、r90とすると、r値の平均値r
mおよびr値の面内異方性Δrは(2)および(3)式
によって求められる。 rm =(r0+2r45+r90)/4 …(2) Δr =(r0−2r45+r90)/2 …(3)
【0022】析出物の平均粒径、r値の平均値rmおよ
びr値の面内異方性Δrが前述のようにそれぞれ1.0
μm以下、1.0以上および0.5以下に限定されるの
は、次の試験結果によるものである。
【0023】図1は析出物の平均粒径とr値の平均値r
mとプレス成形性との関係を示すグラフであり、図2は
析出物の平均粒径とr値の面内異方性Δrとプレス成形
性との関係を示すグラフである。図1および図2に示す
試験データの測定に用いた供試材は板厚2.0mmのフ
ェライト系ステンレス冷間圧延鋼板である。また図1お
よび図2中の○印、△印、×印はプレス成形性の評価結
果を表す記号であり、○印はプレス成形加工時に加工割
れの発生が全く認められないことを表し、△印はプレス
成形加工時に微少な加工割れの発生が認められることを
表し、×印はプレス成形加工時に明瞭な加工割れの発生
が認められることを表す。プレス成形加工は、厳しい張
出し加工および深絞り加工が行われる排気系部材を対象
に実施した。
【0024】図1および図2から次のことが判る。 (a)析出物の平均粒径が小さくなるにつれてr値の平
均値rmが大きくなる。 (b)析出物の平均粒径が1.0μm以下で、かつr値
の平均値rmが1.0以上の領域においてプレス成形性
が良好である。 (c)析出物の平均粒径が小さくなるにつれてr値の面
内異方性Δrが小さくなる。 (d)析出物の平均粒径が1.0μm以下で、かつr値
の面内異方性Δrが0.5以下の領域においてプレス成
形性が良好である。
【0025】前記(a)および(c)の結果は、析出物
の平均粒径が小さくなるにつれてプレス成形性の良好な
再結晶集合組織が形成されやすくなることによるものと
考えられる。また、析出物の平均粒径、r値の平均値、
r値の面内異方性およびプレス成形性のコイル内変動を
調査した結果、析出物の平均粒径が小さくなるにつれて
析出物の分散状態が均一になり、r値の平均値、r値の
面内異方性およびプレス成形性のコイル内変動が小さく
なること、析出物の平均粒径が大きくなるにつれて析出
物の分散状態が不均一になり、r値の平均値、r値の面
内異方性およびプレス成形性のコイル内変動が大きくな
ることが判明した。
【0026】このように、本実施の形態のフェライト系
ステンレス冷間圧延鋼板は、平均粒径:1.0μm以下
の微細析出物を有するので、析出物の粒径が大きい場合
に比べて析出物を均一に分散させることが容易であり、
プレス成形性に関連する特性値のコイル内変動を小さく
することができる。またr値の平均値rmが1.0以上
であり、かつr値の面内異方性Δrが0.5以下である
ので、プレス成形性が良好であり、厳しい加工が行われ
る場合でも、コイル全域にわたって加工割れを発生させ
ることなく安定してプレス加工を行うことができる。し
たがって、本実施の形態のフェライト系ステンレス冷間
圧延鋼板を、自動車の排気系部材として好適に用いるこ
とができる。
【0027】次にフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板
の製造方法について説明する。図3は本発明の実施の一
形態であるフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板の製造
工程を簡略化して示す図である。ステップs1の製鋼工
程では、電気炉で溶解されたフェライト系ステンレス溶
銑が転炉で粗精錬され、粗精錬された溶鋼が真空脱ガス
設備で仕上精練され、前述のような成分を有するフェラ
イト系ステンレス溶鋼が溶製される。
【0028】ステップs2では、連続鋳造が行われ、ス
ラブが鋳造される。ステップs3では、スラブの疵取り
が研削といしによって行われる。ステップs4では、ス
ラブの熱間圧延が行われる。この熱間圧延工程では、ス
ラブが加熱炉で加熱された後、粗圧延機で粗圧延され、
さらにタンデム式熱間圧延機で仕上圧延される。熱間圧
延工程における製造条件は、たとえばスラブの加熱温
度:1230℃、仕上圧延の仕上温度:830℃、仕上
圧延後の冷却:水冷である。
【0029】ステップs5では、熱間圧延鋼板の時効処
理が行われる。熱間圧延鋼板は、コイル状に巻取られた
状態で箱形焼鈍炉に装入されて時効処理される。時効処
理は、熱間圧延鋼板中に析出物を析出させるために行わ
れる。時効処理条件は、時効温度:400〜600℃、
時効時間8〜50時間に設定される。
【0030】時効処理条件の時効温度の下限値が400
℃に限定されるのは、下限値未満の時効温度では、析出
物を析出させるためのエネルギが不足し、析出物を析出
させることができないからである。時効温度の上限値が
600℃に限定されるのは、上限値を超える時効温度で
は析出物の平均粒径が1.0μmよりも大きくなり、前
述のようにプレス成形性、r値の平均値rmおよびr値
の面内異方性Δrが悪化するとともに、各特性値のコイ
ル内変動が大きくなるからである。時効処理条件の時効
時間が8〜50時間に限定されるのは、下限値未満の時
効時間では、析出物を析出させるための時間が不足し、
析出物を析出させることができないからであり、上限値
を超える時効時間では析出物の平均粒径が1.0μmよ
りも大きくなるからである。
【0031】ステップs6では、脱スケールが焼鈍酸洗
設備で行われる。脱スケールは焼鈍酸洗設備のカテナリ
形連続焼鈍炉を消火し、中性塩電解槽および硝弗酸溶液
槽などの酸洗槽を用いて行われる。ステップs7では、
冷間圧延がセンジミアミルによって行われる。冷間圧延
の冷間圧下率は、40%以上に設定することが好まし
い。
【0032】ステップs8では、仕上焼鈍が焼鈍酸洗設
備で行われる。仕上焼鈍は、加工硬化した冷間圧延鋼板
を再結晶させるとともに、プレス成形性の良好な再結晶
集合組織を形成するために行われる。仕上焼鈍条件は、
均熱温度:900〜1100℃、均熱時間0〜1分間に
設定される。均熱温度の下限値が900℃に限定される
のは、下限値未満の均熱温度では、冷間圧延鋼板の再結
晶が充分に生じないからである。均熱温度および均熱時
間の上限値が1100℃および1分間に限定されるの
は、上限値を超える均熱温度および均熱時間では、冷間
圧延鋼板の結晶粒度が粗大化する恐れがあるからであ
る。仕上焼鈍後、焼鈍酸洗設備で引続いて酸洗が行わ
れ、さらに調質圧延機で形状修正が行われてフェライト
系ステンレス冷間圧延鋼板の製造が終了する。
【0033】このように、熱間圧延鋼板の時効処理が従
来よりも低温の時効温度で、かつ長時間の時効時間で行
われるので、熱間圧延鋼板中に1.0μm以下の微細な
析出物を均一な分散状態で析出させることができる。こ
れによって、後続する冷間圧延後の仕上焼鈍時にプレス
成形性の良好な再結晶集合組織をコイル内に均一に形成
することができるので、r値の平均値rmが1.0以上
であり、かつr値の面内異方性Δrが0.5以下である
プレス成形性の良好なフェライト系ステンレス冷間圧延
鋼板を容易に、かつ確実に製造することができる。また
熱間圧延鋼板全域に1.0μm以下の微細な析出物が析
出しているので、フェライト系ステンレス冷間圧延鋼板
のr値の平均値rmおよびr値の面内異方性Δrのコイ
ル内変動を小さくすることができる。
【0034】(実施例)本発明の製造条件を全て満たす
実施例1〜7のフェライト系ステンレス冷間圧延鋼板
と、本発明の製造条件から少なくとも1つの条件が外れ
ている比較例1〜7のフェライト系ステンレス冷間圧延
鋼板とを製造し、析出物の平均粒径を測定して比較し
た。実施例1〜7および比較例1〜7の化学成分は、全
てC:0.012%、Si:1.0%、Mn:1.2
%、Cr:15.5%、Nb:0.4%、Ti:0.3
%、残部Feおよび不可避不純物であり、冷間圧延の圧
下率は50%であり、冷間圧延後の板厚は2.0mmで
あり、仕上焼鈍の均熱温度は970℃であり、均熱時間
は30秒であった。
【0035】実施例1〜7および比較例1〜7の時効処
理条件および析出物の平均粒径の測定結果を表1に示
す。また、r値の平均値rmおよびr値の面内異方性Δ
rの測定結果を測定値の範囲として表1の脚注に示す。
比較例1は時効処理に相当する熱処理として従来の熱延
板焼鈍を焼鈍酸洗設備のカテナリ形連続焼鈍炉で行っ
た。実施例1〜7および比較例2〜7の時効処理は箱形
焼鈍炉で行った。また本発明者らの調査によれば、時効
処理後の析出物の平均粒径と仕上焼鈍後の析出物の平均
粒径とはほぼ同一であるので、析出物の平均粒径は仕上
焼鈍後に測定した。
【0036】
【表1】
【0037】表1から次のことが判る。 (e)実施例1〜7の析出物の平均粒径は、全て1.0
μm以下である。 (f)時効処理の時効温度が下限値未満である比較例
2、6は、時効時間にかかわらず析出物の析出が認めら
れない。 (g)時効処理の時効温度が上限値を超える比較例4、
5、7における析出物の平均粒径は時効時間にかかわら
ず1.0μm超である。 (h)時効処理の時効温度が上限値で、時効時間が下限
値未満である比較例3は析出物の析出が認められない。 (i)時効処理に相当する熱処理として従来の熱延板焼
鈍が行われた比較例1の析出物の平均粒径は1.0μm
超である。
【0038】このように、比較例1〜7の析出物の平均
粒径は1.0μm以上の大きな粒径であるか、析出しな
いかのいずれかであるので、表1、図1および図2に示
すように1.0以上のr値の平均値rmおよび0.5以
下のr値の面内異方性Δrを確保することはできない。
またこれらの特性値のコイル内変動も大きい。したがっ
て、フェライト系ステンレス冷間圧延鋼板全域にわたっ
て良好なプレス成形性を得ることができない。
【0039】これに対して、実施例1〜7の析出物の平
均粒径は、全て1.0μm以下の微細粒径であるので図
1および図2に示すように1.0以上のr値の平均値r
mおよび0.5以下のr値の面内異方性Δrを確保する
ことが可能である。またこれらの特性値のコイル内変動
も小さい。これによって、本発明によれば厳しい加工が
行われる場合でもコイル全域にわたって加工割れを発生
させることなく安定してプレス成形加工を行うことが可
能であり、成形性がコイル全域にわたって良好なフェラ
イト系ステンレス冷間圧延鋼板を製造できることが確認
された。したがって、本発明のフェライト系ステンレス
冷間圧延鋼板は自動車の排気系部材として好適に適用可
能である。
【0040】
【発明の効果】以上のように請求項1記載の本発明によ
れば、析出物が平均粒径:1.0μm以下の微細析出物
であるので、析出物の平均粒径が大きい場合に比べて析
出物の分散状態を容易に均一化させることが可能であ
り、プレス成形性に関連する特性値のコイル内変動を小
さくすることができる。またr値の平均値rmが1.0
以上であり、r値の面内異方性Δrが0.5以下である
ので、プレス成形性が良好であり、厳しい加工が行われ
る場合でもコイル全域にわたって加工割れを発生させる
ことなく安定してプレス加工を行うことができる。
【0041】また請求項2記載の本発明によれば、コイ
ル状の熱間圧延鋼板の時効処理が従来よりも低温の温度
範囲で長時間行われるので、熱間圧延鋼板中に微細な析
出物を均一に分散させることができる。これによって、
後続する冷間圧延後の仕上焼鈍時にプレス成形性の良好
な再結晶集合組織をコイル内に均一に形成することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】析出物の平均粒径とr値の平均値rmとプレス
成形性との関係を示すグラフである。
【図2】析出物の平均粒径とr値の面内異方性Δrとプ
レス成形性との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の実施の一形態であるフェライト系ステ
ンレス冷間圧延鋼板の製造工程を簡略化して示す図であ
る。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.03%以下、Si:
    1.5%以下、Mn:1.5%以下、Cr:11〜16
    %、Nb:1.0%以下、Ti:0.5%以下を含み、
    残部がFeおよび不可避不純物から成り、平均粒径が
    1.0μm以下である析出物を有し、さらに rm=(r0+2r45+r90)/4 Δr=(r0−2r45+r90)/2 ここで、r0:圧延方向における日本工業規格Z225
    4に規定されたr値 r45:圧延方向に対して45°の方向のr値 r90:圧延方向に対して90°の方向のr値 で定義されるr値の平均値rmおよびr値の面内異方性
    Δrが、rm≧1.0、Δr≦0.5であることを特徴
    とするフェライト系ステンレス鋼板。
  2. 【請求項2】 重量%で、C:0.03%以下、Si:
    1.5%以下、Mn:1.5%以下、Cr:11〜16
    %、Nb:1.0%以下、Ti:0.5%以下を含み、
    残部がFeおよび不可避不純物から成る鋼のスラブを熱
    間圧延してコイル状に巻取り、コイル状の熱間圧延鋼板
    に400〜600℃の温度範囲で8〜50時間保持する
    時効処理を行い、その後、脱スケール、冷間圧延を経
    て、900〜1100℃の温度範囲で0〜1分間保持す
    る仕上焼鈍を行うことを特徴とするフェライト系ステン
    レス鋼板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN104120356A (zh) * 2014-06-25 2014-10-29 宝钢不锈钢有限公司 一种管式换热器用铁素体不锈钢及其制造方法
CN110283979A (zh) * 2019-06-05 2019-09-27 无锡光旭新材料科技有限公司 一种同时提高铁素体不锈钢强度和塑性的方法

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